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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142626
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241003BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/165 303
B41J2/165 101
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054846
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】倉科 朝哉
(72)【発明者】
【氏名】有賀 翔
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 暢彦
(72)【発明者】
【氏名】大川 壮志
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA23
2C056EC12
2C056EC22
2C056EC23
2C056EC36
2C056FA13
2C056HA29
2C056JA01
2C056JA04
2C056JB04
2C056JB07
2C056JB08
(57)【要約】
【課題】プラテンに対してワイパーホルダーを用紙搬送方向の上流や下流に設置しようとする場合、ワイパーホルダーを設置する為のスペースの確保が難しい。
【解決手段】記録装置は、液体吐出ヘッドと対向して配置される対向部と、液体吐出ヘッドに対して媒体搬送方向に移動することで液体吐出ヘッドのヘッド面をワイピングするワイパーと、を備え、対向部は、第1モーターの動力により媒体搬送方向に沿って移動することで、媒体に記録を行う際の位置であって液体吐出ヘッドと対向する記録位置と、記録位置から退避する退避位置とに移動可能であり、ワイパーは、対向部において、ヘッド面をワイピング可能な第1姿勢と、第1姿勢よりヘッド面から遠ざかる第2姿勢とを切り換え可能に設けられ、ワイパーが第1姿勢にある状態で対向部が媒体搬送方向に沿って移動することで、ワイパーがヘッド面をワイピングする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対し液体を吐出するノズルを複数備える液体吐出ヘッドであって、媒体搬送方向と交差する方向である媒体幅方向に長尺な前記液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドと対向して配置される対向部と、
前記液体吐出ヘッドに対して前記媒体搬送方向に移動することで前記液体吐出ヘッドのヘッド面をワイピングするワイパーと、を備え、
前記対向部は、第1モーターの動力により前記媒体搬送方向に沿って移動することで、媒体に記録を行う際の位置であって前記液体吐出ヘッドと対向する記録位置と、前記記録位置から退避する退避位置とに移動可能であり、
前記ワイパーは、前記対向部において、前記ヘッド面をワイピング可能な第1姿勢と、前記第1姿勢より前記ヘッド面から遠ざかる第2姿勢とを切り換え可能に設けられ、
前記ワイパーが前記第1姿勢にある状態で前記対向部が前記媒体搬送方向に沿って移動することで、前記ワイパーが前記ヘッド面をワイピングする、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記媒体搬送方向において前記対向部の上流に、媒体を搬送する第1搬送ローラー対を備え、
前記ワイパーは、前記媒体搬送方向において前記対向部の上流位置に設けられる、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記録装置において、前記ワイパーは、前記対向部に設けられた第2モーターの動力で回転することにより、前記第1姿勢と前記第2姿勢とを切り換える、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の記録装置において、
前記第1モーター及び前記第2モーターを制御する制御部は、
前記対向部が前記記録位置にあるとともに前記ワイパーが前記第2姿勢にある状態で、前記ワイパーを前記第1姿勢に切り換える第1ステップと、
前記対向部を前記記録位置から前記退避位置へ移動させる第2ステップと、を実行する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載の記録装置において、
前記記録位置にある前記対向部の下側に、前記ヘッド面を覆うキャップ部を備え、
前記液体吐出ヘッド及び前記キャップ部の少なくとも一方が、他方に対して進退する方向に移動可能に設けられ、前記液体吐出ヘッド及び前記キャップ部の少なくとも一方が他方に対して進出することで前記キャップ部が前記ヘッド面を覆い、
前記制御部は、
前記第2ステップの実行後、前記キャップ部が前記対向部の下側に位置する状態で前記対向部を前記退避位置から前記記録位置へ移動させる場合、前記ワイパーを前記第2姿勢にするとともに当該ワイパーが前記キャップ部の上部に位置する状態で前記対向部を所定時間停止させる、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項2に記載の記録装置において、前記媒体搬送方向において前記液体吐出ヘッドと対向する位置の下流に、媒体を搬送する第2搬送ローラー対を備え、
前記退避位置にある前記対向部は、前記第2搬送ローラー対の下側に位置する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項6に記載の記録装置において、
前記第2搬送ローラー対は、媒体において前記液体吐出ヘッドと対向する第1面と接する従動ローラー、及び前記第1面に対し反対の第2面と接する駆動ローラーを備える、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項4に記載の記録装置において、
前記記録位置にある前記対向部の下側に、前記ヘッド面を覆うキャップ部を備え、
前記液体吐出ヘッド及び前記キャップ部の少なくとも一方が、他方に対して進退する方向に移動可能に設けられ、前記液体吐出ヘッド及び前記キャップ部の少なくとも一方が他方に対して進出することで前記キャップ部が前記ヘッド面を覆い、
前記キャップ部は、前記ヘッド面に接する部位であって前記媒体搬送方向と交差する幅方向に延びる第1縁部及び前記第1縁部に対し前記媒体搬送方向の下流に位置する第2縁部とを有し、前記液体吐出ヘッドから離間した状態において前記第2縁部と前記ヘッド面との間の距離が前記第1縁部と前記ヘッド面との間の距離より長く、
前記制御部は、
前記第2ステップの実行後、前記キャップ部が前記対向部の下側に位置する状態で前記対向部を前記退避位置から前記記録位置へ移動させる場合、前記ワイパーを前記第2姿勢とし、
前記ワイパーが前記第2姿勢にある状態で前記対向部が前記退避位置から前記記録位置へ移動する際、前記ワイパーが前記第1縁部と接触する、
ことを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体吐出装置において、ワイパーが液体吐出ヘッドに対して移動して液体吐出ヘッドの吐出面を払拭する構成が開示されている。ワイパーは、専用のワイパーホルダーに設けられている。ワイパーホルダーにはラックが設けられ、ラックにはピニオンが噛み合い、ラックピニオン機構によってワイパーホルダーが吐出面に対して移動する。ワイパーホルダーは、用紙幅方向における非記録領域に設けられており、ワイパーにより吐出面を払拭する場合、液体吐出ヘッドを備えるキャリッジが前記非記録領域まで移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-68503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体吐出ヘッドが、液体吐出ノズルが用紙幅方向全域に亘って設けられたラインヘッドである場合、ワイパーが用紙幅方向に移動する様に構成すると、払拭に長い時間を要してしまう。しかしながらこの様な問題を回避する為にワイパーが用紙搬送方向に移動する様に構成しようとすると、ワイパーホルダーを設置するスペースの確保が難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明の記録装置は、媒体に対し液体を吐出するノズルを複数備える液体吐出ヘッドであって、媒体搬送方向と交差する方向である媒体幅方向に長尺な前記液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドと対向して配置される対向部と、前記液体吐出ヘッドに対して前記媒体搬送方向に移動することで前記液体吐出ヘッドのヘッド面をワイピングするワイパーと、を備え、前記対向部は、第1モーターの動力により前記媒体搬送方向に沿って移動することで、媒体に記録を行う際の位置であって前記液体吐出ヘッドと対向する記録位置と、前記記録位置から退避する退避位置とに移動可能であり、前記ワイパーは、前記対向部において、前記ヘッド面をワイピング可能な第1姿勢と、前記第1姿勢より前記ヘッド面から遠ざかる第2姿勢とを切り換え可能に設けられ、前記ワイパーが前記第1姿勢にある状態で前記対向部が前記媒体搬送方向に沿って移動することで、前記ワイパーが前記ヘッド面をワイピングすることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】プリンターの媒体搬送経路の全体を示す図。
図2】プリンターの制御系統を示すブロック図。
図3】対向部、ワイパー、ヘッド面、及びキャップ部を平面視した際のそれぞれの大きさを示す図。
図4】媒体搬送経路の一部を示す図であって、対向部が記録位置にあり、ワイパーが第2姿勢にある状態の図。
図5】媒体搬送経路の一部を示す図であって、対向部が記録位置にあり、ワイパーが第1姿勢にある状態の図。
図6】媒体搬送経路の一部を示す図であって、対向部が退避位置にあり、ワイパーが第1姿勢にある状態の図。
図7】媒体搬送経路の一部を示す図であって、対向部が退避位置から記録位置に向かう途中にあり、ワイパーが第2姿勢にある状態の図。
図8】ワイパーの姿勢切り替えをラックピニオン機構により行う構成を示す図。
図9】他の実施形態を示す図であって、対向部が記録位置にあり、ワイパーが第2姿勢にある状態の図。
図10】他の実施形態を示す図であって、対向部が記録位置から退避位置に向かう途中にあり、ワイパーが第1姿勢にある状態の図。
図11】他の実施形態を示す図であって、対向部が記録位置から退避位置に向かう途中にあり、ワイパーが第1姿勢にある状態の図。
図12】他の実施形態を示す図であって、対向部が退避位置にあり、ワイパーが第1姿勢にある状態の図。
図13】対向部を変位させるラック部材とピニオンを示す図。
図14】他の実施形態を示す図であって、対向部が退避位置にあり、ワイパーが第2姿勢にある状態の図。
図15】他の実施形態を示す図であって、対向部が退避位置から記録位置に向かう途中にあり、ワイパーが第2姿勢にある状態の図。
図16】他の実施形態に係るキャップユニットの状態推移を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係る記録装置は、媒体に対し液体を吐出するノズルを複数備える液体吐出ヘッドであって、媒体搬送方向と交差する方向である媒体幅方向に長尺な前記液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドと対向して配置される対向部と、前記液体吐出ヘッドに対して前記媒体搬送方向に移動することで前記液体吐出ヘッドのヘッド面をワイピングするワイパーと、を備え、前記対向部は、第1モーターの動力により前記媒体搬送方向に沿って移動することで、媒体に記録を行う際の位置であって前記液体吐出ヘッドと対向する記録位置と、前記記録位置から退避する退避位置とに移動可能であり、前記ワイパーは、前記対向部において、前記ヘッド面をワイピング可能な第1姿勢と、前記第1姿勢より前記ヘッド面から遠ざかる第2姿勢とを切り換え可能に設けられ、前記ワイパーが前記第1姿勢にある状態で前記対向部が前記媒体搬送方向に沿って移動することで、前記ワイパーが前記ヘッド面をワイピングすることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、前記ワイパーは、前記対向部に設けられる為、前記ワイパーを設ける為の専用のホルダーが不要となり、前記ワイパーを設置しながらも装置の大型化を抑制できる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記媒体搬送方向において前記対向部の上流に、媒体を搬送する第1搬送ローラー対を備え、前記ワイパーは、前記媒体搬送方向において前記対向部の上流位置に設けられることを特徴とする。
【0010】
媒体は前記第1搬送ローラー対によって前記液体吐出ヘッドと対向する液体吐出位置に搬送される為、前記液体吐出位置と前記第1搬送ローラー対との間の経路長が長くなると、媒体の姿勢が不安定になり易く、記録品質が低下する虞がある。
ここで、仮に前記ワイパーを前記対向部の下流位置に設けると、前記ワイパーによって前記ヘッド面をワイピングする際、前記対向部を前記媒体搬送方向の上流に移動させる必要がある為、前記液体吐出位置と前記第1搬送ローラー対との間の経路長を長くする必要があり、上述した記録品質の低下を招き易い。
しかしながら本態様によれば、前記ワイパーは、前記媒体搬送方向において前記対向部の上流位置に設けられることから、前記液体吐出位置と前記第1搬送ローラー対との間の経路長が長くなることを抑制でき、上述した記録品質の低下を抑制できる。
尚、前記ワイパーが前記対向部の上流位置に設けられるとは、前記媒体搬送方向における前記対向部の中心位置よりも前記ワイパーが上流に設けられることを意味する。同様に前記ワイパーが前記対向部の下流位置に設けられるとは、前記媒体搬送方向における前記対向部の中心位置よりも前記ワイパーが下流に設けられることを意味する。
【0011】
第3の態様は、第2の態様に従属する態様であって、前記ワイパーは、前記対向部に設けられた第2モーターの動力で回転することにより、前記第1姿勢と前記第2姿勢とを切り換えることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記ワイパーは、前記対向部に設けられたモーターの動力で回転することにより、前記第1姿勢と前記第2姿勢とを切り換えることから、前記ワイパーの姿勢切り換えのタイミングを容易に調整することができる。
【0013】
第4の態様は、第3の態様に従属する態様であって、前記第1モーター及び前記第2モーターを制御する制御部は、前記対向部が前記記録位置にあるとともに前記ワイパーが前記第2姿勢にある状態で、前記ワイパーを前記第1姿勢に切り換える第1ステップと、前記対向部を前記記録位置から前記退避位置へ移動させる第2ステップと、を実行することを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、前記対向部を前記記録位置から前記退避位置へ移動させる第2ステップにより、前記ワイパーによって前記ヘッド面をワイピングすることができる。
【0015】
第5の態様は、第4の態様に従属する態様であって、前記記録位置にある前記対向部の下側に、前記ヘッド面を覆うキャップ部を備え、前記液体吐出ヘッド及び前記キャップ部の少なくとも一方が、他方に対して進退する方向に移動可能に設けられ、前記液体吐出ヘッド及び前記キャップ部の少なくとも一方が他方に対して進出することで前記キャップ部が前記ヘッド面を覆い、前記制御部は、前記第2ステップの実行後、前記キャップ部が前記対向部の下側に位置する状態で前記対向部を前記退避位置から前記記録位置へ移動させる場合、前記ワイパーを前記第2姿勢にするとともに当該ワイパーが前記キャップ部の上部に位置する状態で前記対向部を所定時間停止させることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記制御部は、前記第2ステップの実行後、前記キャップ部が前記対向部の下側に位置する状態で前記対向部を前記退避位置から前記記録位置へ移動させる場合、前記ワイパーを前記第2姿勢にするとともに当該ワイパーが前記キャップ部の上部に位置する状態で前記対向部を所定時間停止させることから、前記ワイパーに付着した液体を前記キャップ部へ落下させ、前記キャップ部によって回収することができる。
【0017】
第6の態様は、第2の態様に従属する態様であって、前記媒体搬送方向において前記液体吐出ヘッドと対向する位置の下流に、媒体を搬送する第2搬送ローラー対を備え、前記退避位置にある前記対向部は、前記第2搬送ローラー対の下側に位置することを特徴とする。
【0018】
仮に前記対向部が前記媒体搬送方向に沿って水平に移動する場合、前記対向部の下流に配置される第2搬送ローラー対と前記対向部との干渉を避けるため、前記第2搬送ローラー対をより下流に配置する必要が生じる。前記第2搬送ローラー対をより下流に配置する場合、前記第1搬送ローラー対と前記第2搬送ローラー対との間の距離が長くなる。その結果、前記液体吐出ヘッドと対向する位置で媒体の姿勢が不安定になり易く、記録品質が低下する虞がある。
しかしながら本態様によれば、前記退避位置にある前記対向部は、前記第2搬送ローラー対の下側に位置することから、前記第2搬送ローラー対をより上流に配置することができる。その結果、上記の記録品質の低下を抑制できる。
尚、本態様は上記第2の態様に限らず、上記第3から第5の態様のいずれかに従属しても良い。
【0019】
第7の態様は、第6の態様に従属する態様であって、前記第2搬送ローラー対は、媒体において前記液体吐出ヘッドと対向する第1面と接する従動ローラー、及び前記第1面に対し反対の第2面と接する駆動ローラーを備えることを特徴とする。
【0020】
第8の態様は、第4の態様に従属する態様であって、前記記録位置にある前記対向部の下側に、前記ヘッド面を覆うキャップ部を備え、前記液体吐出ヘッド及び前記キャップ部の少なくとも一方が、他方に対して進退する方向に移動可能に設けられ、前記液体吐出ヘッド及び前記キャップ部の少なくとも一方が他方に対して進出することで前記キャップ部が前記ヘッド面を覆い、前記キャップ部は、前記ヘッド面に接する部位であって前記媒体搬送方向と交差する幅方向に延びる第1縁部及び前記第1縁部に対し前記媒体搬送方向の下流に位置する第2縁部とを有し、前記液体吐出ヘッドから離間した状態において前記第2縁部と前記ヘッド面との間の距離が前記第1縁部と前記ヘッド面との間の距離より長く、前記制御部は、前記第2ステップの実行後、前記キャップ部が前記対向部の下側に位置する状態で前記対向部を前記退避位置から前記記録位置へ移動させる場合、前記ワイパーを前記第2姿勢とし、前記ワイパーが前記第2姿勢にある状態で前記対向部が前記退避位置から前記記録位置へ移動する際、前記ワイパーが前記第1縁部と接触することを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、前記制御部は、前記第2ステップの実行後、前記キャップ部が前記対向部の下側に位置する状態で前記対向部を前記退避位置から前記記録位置へ移動させる場合、前記ワイパーを前記第2姿勢とし、前記ワイパーが前記第2姿勢にある状態で前記対向部が前記退避位置から前記記録位置へ移動する際、前記ワイパーが前記第1縁部と接触する為、前記第2縁部によって前記ワイパーに付着した液体を除去することができる。
【0022】
以下、本発明を具体的に説明する。
以下では媒体に記録を行う記録装置の一例としてインクジェットプリンター1について説明する。以下、インクジェットプリンター1を単にプリンター1と称する。
尚、各図において示すX-Y-Z座標系は、X軸方向が装置幅方向であり、記録が行われる媒体の幅方向となる。プリンター1の操作者から見て+X方向が左側となり、-X方向が右側となる。
Y軸方向は装置奥行方向であり、記録時の媒体搬送方向に沿う方向である。+Y方向は装置背面から前面に向かう方向であり、-Y方向は装置前面から背面に向かう方向である。本実施形態ではプリンター1の周囲を構成する側面のうち、+Y方向の側面が装置前面となり、-Y方向の側面が装置背面となる。
Z軸方向は鉛直方向に沿う方向であり、装置高さ方向である。+Z方向が鉛直上方向であり、-Z方向が鉛直下方向である。
尚、以下では媒体が送られていく方向を「下流」と称し、その逆方向を「上流」と称する場合がある。
【0023】
以下、図1を参照してプリンター1の媒体搬送経路について説明する。図1に示す様にプリンター1は、媒体収容部の一例である媒体収容カセット2を装置底部に備えている。符号Pは媒体収容カセット2に収容された媒体を示している。媒体の一例としては記録用紙が挙げられる。媒体収容カセット2は装置前方側から着脱可能に設けられている。
【0024】
媒体収容カセット2の上部には不図示のモーターにより駆動されるピックローラー3が設けられている。ピックローラー3は媒体収容カセット2に収容された媒体に対して進退可能であり、媒体収容カセット2に収容された媒体に接して回転することで媒体を媒体収容カセット2から+Y方向に送り出す。
媒体収容カセット2に対し下流には不図示のモーターにより駆動される給送ローラー5と不図示のトルクリミッタにより回転トルクが付与される分離ローラー6とが設けられている。媒体収容カセット2から送り出された媒体は給送ローラー5と分離ローラー6とでニップされることで分離されて、更に下流へ送られる。
【0025】
給送ローラー5と分離ローラー6との下流には不図示のモーターにより駆動される反転ローラー8が設けられている。反転ローラー8の周囲には第1ニップローラー9と第2ニップローラー10とが設けられ、媒体は反転ローラー8と第1ニップローラー9とでニップされ、更に反転ローラー8と第2ニップローラー10とでニップされ、搬送される。媒体は反転ローラー8によって搬送方向が+Y方向から-Y方向に反転され、下流へ搬送される。
【0026】
反転ローラー8の下流には、不図示のモーターにより駆動される駆動ローラー16と、従動回転可能な従動ローラー17とを備える第1搬送ローラー対15が設けられている。媒体は第1搬送ローラー対15によってラインヘッド70と対向する位置に搬送される。
尚、プリンター1は媒体収容カセット2からの媒体給送経路に加え、媒体支持部12からの媒体給送経路を備えている。媒体支持部12は媒体を傾斜姿勢に支持し、支持された
媒体は不図示のモーターにより駆動される給送ローラー13によって第1搬送ローラー対15へ搬送される。符号14は不図示のトルクリミッタにより回転トルクが付与される分離ローラーである。
【0027】
第1搬送ローラー対15の上流には、媒体検出部22が設けられている。後述する制御部50(図5参照)は、媒体検出部22の検出情報をもとにラインヘッド70に対する媒体先端の位置を位置決めすることができ、例えば媒体を記録開始位置に位置決めすることができる。
【0028】
ラインヘッド70は、媒体に液体の一例であるインクを吐出して記録する液体吐出ヘッドの一例である。ラインヘッド70は、インクを吐出するノズル74が媒体幅方向の全域をカバーする様に複数配列された液体吐出ヘッドである。ラインヘッド70は媒体幅方向に長尺であり、媒体幅方向への移動を伴わないで媒体幅全域に記録が可能な液体吐出ヘッドとして構成されている。
符号72aは、媒体と対向する面となるヘッド面である。ヘッド面72aは液体吐出面或いはノズル面と称することもできる。ヘッド面72aはプレート部材72により形成される。ノズル74はヘッド面72aの領域内に配置される。
【0029】
プリンター1は不図示のインク収容部を備えており、ラインヘッド70から吐出されるインクは、インク収容部から不図示のインクチューブを介してラインヘッド70へ供給される。
【0030】
ラインヘッド70のヘッド面72aと対向する位置には、対向部30が設けられている。本実施形態に係る対向部30は、媒体を支持することにより媒体とヘッド面72aとの間のギャップを規定する。以降において媒体とヘッド面72aとの間のギャップをプラテンギャップと称する場合がある。
対向部30は媒体搬送方向に沿って移動可能に設けられているが、これについては後に改めて説明する。
対向部30の下側には、ラインヘッド70のヘッド面72aを覆うキャップ部41が設けられている。キャップ部41は、キャップユニット40に設けられている。
【0031】
ここでラインヘッド70は対向部30に対して進退する方向即ちプラテンギャップの調整方向に移動可能に設けられている。本実施形態においてプラテンギャップの調整方向はZ軸方向に平行である。以降においてラインヘッド70が+Z軸方向に移動することを「上昇」と称し、-Z方向に移動することを「下降」と称する場合がある。
【0032】
ラインヘッド70は不図示のガイド部によってZ軸方向に案内されながら、ヘッド移動モーター55(図2参照)の動力によってZ軸方向に変位する。ヘッド移動モーター55の動力は、ラインヘッド70に設けられた不図示のラックと、当該ラックに噛み合う不図示のピニオンとで構成されるラックピニオン機構を介して伝達される。このラックピニオン機構は、ラインヘッド70に対し媒体幅方向の両端部付近に設けられる。
【0033】
図2において符号80はヘッド移動モーター55を制御する制御部である。制御部50は、プリンター1全体の制御を司る制御部である。尚、制御部50は不図示の媒体搬送用モーターやラインヘッド70なども制御するが、これらは図2では図示を省略する。
ラインヘッド70は上昇した際に不図示の上昇規制部に当接し、それ以上の上昇が規制される。制御部50は、ラインヘッド70が前記上昇規制部に当接した際のモーター駆動電流値の増加を検出することで、ラインヘッド70が上昇限度位置に位置することを把握できる。
尚、ヘッド移動モーター55には不図示のエンコーダーセンサーが設けられ、制御部50はヘッド移動モーター55の回転量を検出できる。これにより制御部50はラインヘッド70の上昇限度位置からの移動量を検出でき、即ちラインヘッド70の現在位置を把握できる。
【0034】
制御部50は、受信した印刷データに含まれる媒体種類に基づき、媒体の厚みに応じてラインヘッド70を昇降させ、プラテンギャップを調整する。例えば、普通紙に記録を行う場合のラインヘッド70の位置を第1インク吐出位置とすると、普通紙より厚みの厚い専用紙に記録を行う場合、ラインヘッド70が第1インク吐出位置よりも上昇した第2インク吐出位置に位置決めされる。
尚、ラインヘッド70の移動領域には上記の様に複数の記録位置に加え、後述するキャップ部41によりキャップされる際の位置であるキャップ位置が含まれる。
本実施形態においてラインヘッド70の上述した各位置は、+Z方向に向かって順に、キャップ位置、第1インク吐出位置、第2インク吐出位置となる。
【0035】
またキャップユニット40もラインヘッド70と同様に、Z軸方向に移動可能に設けられている。キャップユニット40は不図示のガイド部によってZ軸方向に案内されながら、キャップ移動モーター56(図2参照)の動力によってZ軸方向に変位する。本実施形態においてキャップユニット40は、上昇位置と下降位置との間で変位する。上昇位置はキャップ部41によってラインヘッド70のヘッド面72aをキャップする際の位置であり、下降位置はその他の位置である。
キャップ移動モーター56の動力は、キャップユニット40に設けられた不図示のラックと、当該ラックに噛み合う不図示のピニオンとで構成されるラックピニオン機構を介して伝達される。このラックピニオン機構は、キャップユニット40に対し媒体幅方向の両端部付近に設けられる。
【0036】
キャップユニット40は上昇した際に不図示の上昇規制部に当接し、それ以上の上昇が規制される。またキャップユニット40は下降した際に不図示の下降規制部に当接し、それ以上の下降が規制される。制御部50は、キャップユニット40が前記上昇規制部或いは前記下降規制部に当接した際のモーター駆動電流値の増加を検出することで、キャップユニット40が上昇位置或いは下降位置に位置することを把握できる。
但しキャップユニット40の位置を検出する手段はこれに限られず、例えば接触式或いは非接触式のセンサーを用いてキャップユニット40の位置を検出する様に構成しても良い。
尚、本実施形態においてキャップユニット40はキャップ移動モーター56の動力によって上昇位置と下降位置とに移動するが、キャップ移動モーター56に代えて、ソレノイド等のアクチュエータによって上昇位置と下降位置とに移動する様に構成しても良い。またキャップユニット40は、変位可能に設けることなく固定的に設けても良い。
【0037】
制御部50は、電源オフ時や記録待機状態において、対向部30を後述する退避位置に位置決めし、ラインヘッド70をキャップ位置に位置決めし、更にキャップユニット40を上昇位置に位置決めする。これによりラインヘッド70のヘッド面72aがキャップ部41によって覆われた状態となる。
【0038】
キャップ部41は媒体幅方向に長い形状を成し(図3参照)、ゴム等の弾性材料により形成される。図4に示される様に、キャップ部41は樹脂材料等により形成されるキャップ支持部42により支持される。
キャップ支持部42はベース部44によってZ軸方向に変位可能に保持されているとともに、ベース部44に形成された規制部44aによって+Z方向への移動限度が規定されている。キャップ支持部42は押圧部材の一例であるキャップばね43によって+Z方向に押圧されている。
【0039】
キャップ部41には不図示の廃液チューブが接続されている。この廃液チューブは、不図示のポンプに接続され、当該ポンプの作用によって廃液が不図示の廃液回収部へ送られる。キャップ部41がヘッド面72aを覆った状態で前記ポンプが作動すると、キャップ部41内に負圧が生じ、これによりラインヘッド70のノズル74からインクが吸引される。
尚、キャップ部41によってヘッド面72aが覆われる場合、キャップ部41はキャップばね43の押圧力に抗し、僅かに-Z方向に押し下げられ、これによりキャップ部41がヘッド面72aに密着する。
【0040】
次に、図1に戻りラインヘッド70の下流には不図示のモーターにより駆動される駆動ローラー20と従動回転可能な従動ローラー21とを備える第2搬送ローラー対19が設けられている。従動ローラー21は、媒体においてラインヘッド70と対向する第1面と接する従動ローラーであり、駆動ローラー20は、前記第1面に対し反対の第2面と接する駆動ローラーである。記録の行われた媒体は第2搬送ローラー対19によって下流に送られる。
第2搬送ローラー対19の下流には第3搬送ローラー対27が設けられ、更に第3搬送ローラー対27の下流には排出ローラー対28が設けられている。第3搬送ローラー対27と排出ローラー対28との間はフェイスダウン排出経路として構成されており、記録の行われた媒体は、直近の記録面を下にした状態で排出ローラー対28により排出トレイ29へ排出される。
【0041】
続いて、図3以降を参照して対向部30とワイパー35について詳説する。
対向部30は、図3に示す様に媒体幅方向に沿って長尺な部材であり、不図示のガイド部材によって媒体搬送方向であるY軸方向に沿って移動可能に支持されている。図4に示す様に対向部30の下部には媒体搬送方向に沿ってラック部31が形成されている。ラック部31にはピニオン歯車52が噛み合い、ラック部31とピニオン歯車52とでラックピニオン機構が構成されている。尚、このラックピニオン機構は媒体幅方向において対向部30の両端部に設けられている。ピニオン歯車52は媒体幅方向に延びる軸52aに設けられている。
【0042】
媒体幅方向における一方側の端部、一例として+X方向の端部には第1モーターの一例である対向部移動モーター51が設けられ、媒体幅方向において二つ設けられたピニオン歯車52のうち+X方向に設けられたピニオン歯車52が対向部移動モーター51により駆動される。ピニオン歯車52が対向部移動モーター51により駆動されると、対向部30がY軸方向に沿って移動する。対向部移動モーター51は、制御部50(図2参照)により制御される。
【0043】
対向部30は+Y方向の端部と-Y方向の端部にそれぞれ移動した際に不図示の移動規制部に当接し、それ以上の移動が規制される。制御部50は、対向部30が前記移動規制部に当接した際のモーター駆動電流値の増加を検出することで、対向部30が+Y方向の移動限度位置に位置することを把握でき、また或いは-Y方向の移動限度位置に位置することを把握できる。但し対向部30の位置を検出する手段はこれに限られず、例えば接触式或いは非接触式のセンサーを用いて対向部30の位置を検出する様に構成しても良い。
尚、以降において対向部30の+Y方向の移動限度位置を記録位置と称し、対向部30の-Y方向の移動限度位置を退避位置と称する。記録位置は、ラインヘッド70によって媒体に記録を行う際の対向部30の位置であり、退避位置は、キャップ部41によってラインヘッド70のヘッド面72aを覆う際の対向部30の位置である。対向部30が記録位置から退避位置へ移動することで、キャップ部41によってラインヘッド70のヘッド面72aを覆うことができる。
【0044】
次に、対向部30にはラインヘッド70のヘッド面72aをワイピングするワイパー35が設けられている。ワイパー35は、ゴム等の弾性材により形成され、ヘッド面72aに押し当たった際に弾性変形することができる。
ワイパー35は、図3に示す様に媒体幅方向に長尺な部材であり、媒体幅方向においてヘッド面72aの全域をワイピングできる長さに形成されている。
図4に示す様にワイパー35は軸34を中心に回転可能に設けられている。軸34は媒体幅方向に長尺な軸であり、対向部30に対して回転可能に支持されている。
【0045】
軸34において媒体幅方向の一方側の端部、例えば+X方向の端部には歯車33が設けられている。歯車33は、対向部30に設けられた第2モーターの一例であるワイパー回転モーター32により駆動される。ワイパー回転モーター32は制御部50(図2参照)により制御される。ワイパー回転モーター32が回転すると、ワイパー35が軸34を中心に回転する。一例として図5図6はワイパー35がヘッド面72aに接触可能な第1姿勢を示し、図4図7は第1姿勢よりもヘッド面72aから遠ざかる第2姿勢を示している。
【0046】
ワイパー35は、第2姿勢から第1姿勢に向けて回転した際に不図示の第1回転規制部によりそれ以上の回転が規制され、回転が規制された状態の姿勢が第1姿勢となる。またワイパー35は、第1姿勢から第2姿勢に向けて回転した際に不図示の第2回転規制部によりそれ以上の回転が規制され、回転が規制された状態の姿勢が第2姿勢となる。
制御部50は、ワイパー35が上記第1回転規制部に当接した際のワイパー回転モーター32の駆動電流値の上昇に基づき、ワイパー35が第1姿勢に切り換わったことを把握できる。また制御部50は、ワイパー35が上記第2回転規制部に当接した際のワイパー回転モーター32の駆動電流値の上昇に基づき、ワイパー35が第2姿勢に切り換わったことを把握できる。但しワイパー35の姿勢を検出する手段はこれに限られず、例えば接触式或いは非接触式のセンサーを用いてワイパー35の姿勢を検出する様に構成しても良い。
【0047】
ワイパー35によりヘッド面72aをワイピングする際、制御部50は第1ステップとして、図4に示す状態、即ち対向部30が記録位置にあるとともにワイパー35が第2姿勢にある状態で、ワイパー35を図5に示す様に第1姿勢に切り換える。これにより、ワイパー35がヘッド面72aに押し当たる。尚、本実施形態ではワイパー35を第1姿勢に切り換えた際にワイパー35がヘッド面72aに押し当たるが、ワイパー35を第1姿勢に切り換えた際にワイパー35がヘッド面72aより上流に位置していても良い。
次いで制御部50は第2ステップとして、図5から図6への変化で示す様に対向部30を記録位置から退避位置へ移動させる。その結果、ヘッド面72aがワイパー35によってワイピングされる。尚、ヘッド面72aがワイパー35によってワイピングされる際、ラインヘッド70は一例として第1インク吐出位置に位置するが、これに限らずその他の位置であっても良い。
【0048】
尚、ワイパー35がヘッド面72aから-Y方向に離れる場合、ヘッド面72aに押し当たって変形していたワイパー35が元の形状に戻る為、その際にワイパー35に付着していたインクが飛び散る虞がある。この様な不具合を抑制する為に、ワイパー35がヘッド面72aから離れる前に、ワイパー回転モーター32を制御してワイパー35をヘッド面72aから離れる方向に回転させ、ワイパー35がヘッド面72aに押し当たる程度を軽減させるか、或いはワイパー35がヘッド面72aから離間する様にすることも好適である。
【0049】
次に制御部50は、第3ステップとして図6の状態からワイパー35を第2姿勢に切り換え、そして第4ステップとして対向部30を退避位置から記録位置へと移動させる。
尚、ワイパー35によりヘッド面72aをワイピングする際、図4に示す状態から図5図6図7に示す状態を経て再び図4に示す状態に戻るまで、キャップユニット40は下降位置に保持される。
【0050】
ここで、第4ステップにおいて対向部30を退避位置から記録位置へ移動させる際、制御部50は図7に示す様に第2姿勢にあるワイパー35がキャップ部41の上部に位置した状態で、対向部30を所定時間停止させても良い。これにより、ワイパー35に付着したインクをキャップ部41へ落下させ、キャップ部41によって回収することができる。
尚このとき、制御部50はワイパー35を第2姿勢から第2姿勢と第1姿勢との間の中間姿勢まで第1回転速度で回転させ、前記中間姿勢から第2姿勢まで第1回転速度よりも高速の第2回転速度で切り換えることも好適である。これにより、ワイパー35に付着したインクをキャップ部41に向けて叩き落とすことができる。
【0051】
制御部50は、所定のタイミングでワイパー35によりヘッド面72aを上述の様にワイピングする。ワイパー35によるヘッド面72aのワイピングは、例えば一連の印刷ジョブが終了してキャップ部41によりヘッド面72aを覆う前や、フラッシング動作後などが挙げられる。フラッシング動作は、キャップ部41に対してラインヘッド70からインクを吐出する動作であり、前回フラッシング動作を行ってからの累積印刷枚数が所定枚数に達したタイミングなどに行われる。
【0052】
以上説明した様に、プリンター1は媒体幅方向に長尺なラインヘッド70と、ラインヘッド70と対向して配置される対向部30と、媒体搬送方向に移動することでラインヘッド70のヘッド面72aをワイピングするワイパー35と、を備える。対向部30は、対向部移動モーター51の動力により媒体搬送方向に沿って移動することで、媒体に記録を行う際の位置であってラインヘッド70と対向する記録位置と、記録位置から退避する退避位置とに移動可能である。ワイパー35は、対向部30において、ヘッド面72aをワイピング可能な第1姿勢と、第1姿勢よりヘッド面72aから遠ざかる第2姿勢とを切り換え可能に設けられる。そしてワイパー35が第1姿勢にある状態で対向部30が媒体搬送方向に沿って移動することで、ワイパー35がヘッド面72aをワイピングする。
【0053】
この様にワイパー35は、対向部30に設けられる為、ワイパー35を設ける為の専用のホルダーが不要となり、ワイパー35を設置しながらも装置の大型化を抑制できる。
またワイパー35は媒体幅方向に長尺なラインヘッド70を媒体搬送方向に沿って移動してワイピングする為、ワイピング時間を短縮できる。
【0054】
尚、本実施形態においてワイパー35の第2姿勢は、ワイパー35が鉛直下方に向かって延びる姿勢であり、媒体搬送経路から遠く離れた姿勢となる為、ワイパー35への紙粉等の付着を抑制できる。
但しワイパー35の第2姿勢は、媒体の搬送を阻害しない姿勢であればどの様な姿勢であっても良い。
【0055】
また本実施形態において、ワイパー35は、媒体搬送方向において対向部30の上流位置に設けられる。
媒体は第1搬送ローラー対15によってラインヘッド70と対向する位置、即ち液体吐出位置に搬送される為、液体吐出位置と第1搬送ローラー対15との間の経路長が長くなると、媒体の姿勢が不安定になり易く、記録品質が低下する虞がある。
ここで、仮にワイパー35を対向部30の下流位置に設けると、ワイパー35によってヘッド面72aをワイピングする際、対向部30を媒体搬送方向の上流に移動させる必要がある為、液体吐出位置と第1搬送ローラー対15との間の経路長を長くする必要があり、上述した記録品質の低下を招き易い。
【0056】
しかしながら本実施形態によれば、ワイパー35は、媒体搬送方向において対向部30の上流位置に設けられることから、液体吐出位置と第1搬送ローラー対15との間の経路長が長くなることを抑制でき、上述した記録品質の低下を抑制できる。
尚、ワイパー35が対向部30の上流位置に設けられるとは、媒体搬送方向における対向部30の中心位置(図3において位置CL)よりもワイパー35が上流に設けられることを意味する。同様にワイパー35が対向部30の下流位置に設けられるとは、媒体搬送方向における対向部30の中心位置(図3において位置CL)よりもワイパー35が下流に設けられることを意味する。
本実施形態では、ワイパー35を媒体搬送方向において対向部30の上流位置に設けたが、対向部30の下流位置に設けても良い。この場合対向部30の退避位置は、記録位置に対して媒体搬送方向の上流に設定することができる。
【0057】
また本実施形態においてワイパー35は、対向部30に設けられたワイパー回転モーター32の動力で回転することにより、第1姿勢と第2姿勢とを切り換える。これにより、ワイパー35の姿勢切り換えを行うタイミングを容易に調整することができる。
【0058】
尚、ワイパー35は、専用のモーターを用いずに回転させることもできる。図8はその様な構成の一例を示すものであり、図8の上の図はワイパー35の第2姿勢を示し、図8の下の図はワイパー35の第1姿勢を示している。
ワイパー35の回転軸である軸34には、ピニオン歯車37が設けられている。尚、ピニオン歯車37は軸34に対して固定的に設けられておらず、不図示の摩擦部材を介して連結されており、摩擦力を介してピニオン歯車37から軸34に回転トルクが伝達される様に構成されている。
対向部30Aの下にはラック部材60が配置され、ラック部材60には媒体搬送方向に沿ってラック部61が形成されている。ピニオン歯車37は、ラック部61と噛み合っている。
【0059】
対向部30Aが図8の上の図の様に記録位置にあり、ワイパー35が第2姿勢にある状態で、対向部30Aが退避位置に向けて移動すると、ピニオン歯車37がラック部61との噛み合いによって回転し、図8の上の図から下の図への変化で示す様にワイパー35が回転し、第2姿勢から第1姿勢へと切り換わる。
この様な構成によれば、専用のモーターを用いずにワイパー35を回転させることができる。
【0060】
続いて対向部30の他の実施形態について図9図13を参照して説明する。
図9において符号65は、対向部30Bを記録位置と退避位置とに案内するガイド部材である。図示は省略するが、ガイド部材65は媒体幅方向において対向部30Bを挟む様に対向部30Bの両側に配置されている。
ガイド部材65にはガイド穴65aが形成されている。ガイド穴65aは、媒体搬送方向の上流端から下流に向かって媒体搬送方向に沿って平行に延び、次いで下流に向かって下がり傾斜となり、そして再び媒体搬送方向に沿って平行に延びる様に形成されている。
【0061】
対向部30Bには、媒体幅方向の両側部にボス36が設けられている。本実施形態においてボス36は、媒体搬送方向に沿って間隔を空けて二つ設けられている。二つのボス36は、ガイド穴65aに入り込んでおり、ガイド穴65aによって案内される。
【0062】
ガイド部材65に対し更に媒体幅方向の外側には、図13に示すラック部材66が、対向部30B及びガイド部材65を挟む様に、対向部30Bに対して両側に設けられている。ラック部材66は、不図示のガイド部材によって媒体搬送方向に沿って変位可能に支持されている。対向部30Bを変位させるピニオン歯車52は、ラック部材66に形成されたラック部66aと噛み合っている。対向部移動モーター51(図2参照)の動力によってピニオン歯車52が回転すると、ラック部材66が媒体搬送方向に沿って変位する。
【0063】
ラック部材66には上下方向に延びる長穴66bが形成されている。対向部30Bに設けられたボス36の一つは、媒体幅方向における長さが他のボス36より長いとともに、長穴66bに入り込んでいる。従ってラック部材66が媒体搬送方向に変位すると、長穴66bに入り込んだボス36即ち対向部30Bが媒体搬送方向に変位する。ここでボス36がガイド穴65aの傾斜部分を通過する際、ボス36は上下方向に変位するが、ラック部材66の長穴66bは上下方向に延設されており、これによりボス36は長穴66b内を上下方向に変位することができる。この様な構成により、図13の上の図から下の図への変化で示す様に、また或いは図13の下の図から上の図への変化で示す様に、ラック部材66によってボス36即ち対向部30Bをガイド穴65aに沿って変位させることができる。
【0064】
ワイパー35によりヘッド面72aをワイピングする際、制御部50は図9に示す状態、即ち対向部30Bが記録位置にあるとともにワイパー35が第2姿勢にある状態で、ワイパー35をヘッド面72aに向けて回転させる。ここで、図10図11に示す様に対向部30Bの上流位置とヘッド面72aとの間隔は、対向部30Bの姿勢変化に応じて変化する為、制御部50は対向部30Bの位置即ち姿勢に応じ、ワイパー35の姿勢を調整する。即ち、ワイパー35がヘッド面72aに押し当たる際の力が極力均一となる様に、ワイパー35の姿勢を制御する。具体的には、本実施形態においてワイパー35とヘッド面72aとの間隔は、対向部30Bが記録位置から退避位置へ移動するに従って拡がる為、制御部50は対向部30Bが下流側に移動するに従って、図10の状態から図11の状態を経て図12の状態への変化で示す様にワイパー35を図の反時計回り方向に回転させる。この様に本実施形態ではワイパー35がヘッド面72aをワイピングする際の姿勢である第1姿勢は一定ではなく、変化することとなる。
【0065】
そして対向部30Bは、図12に示す様に退避位置にある場合、第2搬送ローラー対19の下側に位置する。これにより以下の作用効果が得られる。
仮に対向部30Bが媒体搬送方向に沿って水平に移動する場合、対向部30Bの下流に配置される第2搬送ローラー対19と対向部30Bとの干渉を避けるため、第2搬送ローラー対19をより下流に配置する必要が生じる。第2搬送ローラー対19をより下流に配置する場合、第1搬送ローラー対15と第2搬送ローラー対19との間の距離が長くなる。その結果、ラインヘッド70と対向する位置即ち液体吐出位置で媒体の姿勢が不安定になり易く、記録品質が低下する虞がある。
しかしながら上記の様に退避位置にある対向部30Bは、第2搬送ローラー対19の下側に位置することから、第2搬送ローラー対19をより上流に配置することができる。その結果、上記の記録品質の低下を抑制できる。
【0066】
続いて、図14図16を参照して更に他の実施形態について説明する。
本実施形態では、キャップユニットの構成が上述した実施形態とは異なる。図16に示す様に本実施形態に係るキャップユニット40Aは、ベース部44Aにおいてキャップ支持部42の+Z方向への移動限度を規定する規制部が、媒体搬送方向下流側の規制部44aと、媒体搬送方向上流側の規制部であって規制部44aよりも+Z方向に位置する規制部44bとで構成されている。これによりキャップ部41は、下流側の第2縁部41bが、上流側の第1縁部41aよりも-Z方向に位置する。第1縁部41aは、図3に示す様に平面視において矩形を成すキャップ部41のうち+Y方向即ち媒体搬送方向上流の縁部であり、第2縁部41bはキャップ部41のうち-Y方向即ち媒体搬送方向下流の縁部である。キャップ部41は、第1縁部41aと第2縁部41bとを含み、平面視において矩形の形状を成す。
【0067】
図16の左の図はキャップ部41がヘッド面72aから離間した状態であり、この状態で第2縁部41bとヘッド面72aとの間の距離H2は、第1縁部41aとヘッド面72aとの間の距離H1よりも長い。これによりキャップ部41が傾斜状態とされている。
但し、図16の右の図で示す様にキャップ部41がヘッド面72aを覆う状態では、キャップ部41はヘッド面72aによって押し下げられ、キャップ部41の傾斜状態は解消され、ヘッド面72aと平行になる。
【0068】
この様なキャップユニット40Aを備える構成において、ワイパー35によるヘッド面72aのワイピングが終わり、図14の状態即ち対向部30が退避位置にありワイパー35が第2姿勢にある状態から対向部30が記録位置へ戻る際、図15に示す様にワイパー35がキャップ部41の第1縁部41aと接触する様な高さ関係とする。これにより、ワイパー35に付着したインクをキャップ部41の第1縁部41aによって取り除くことができる。しかも、取り除かれたインクはキャップ部41の内側に取り込まれる為、既存の構成を利用して取り除いたインクを不図示の廃液回収部へ送ることができる。
【0069】
本発明は上記において説明した実施形態や変形例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0070】
1…インクジェットプリンター、2…媒体収容カセット、3…ピックローラー、5…給送ローラー、6…分離ローラー、7…メインフレーム、8…反転ローラー、9…第1ニップローラー、10…第2ニップローラー、12…媒体支持部、13…給送ローラー、14…分離ローラー、15…第1搬送ローラー対、16…駆動ローラー、17…従動ローラー、
19…第2搬送ローラー対、20…駆動ローラー、21…従動ローラー、22…媒体検出部、27…第3搬送ローラー対、28…排出ローラー対、29…排出トレイ、30、30A、30B…対向部、31…ラック部、32…ワイパー回転モーター、33…歯車、34…軸、35…ワイパー、36…ボス、37…ピニオン歯車、40、40A…キャップユニット、41…キャップ部、42…キャップ支持部、43…キャップばね、44…ベース部、50…制御部、51…対向部移動モーター、52…ピニオン歯車、55…ヘッド移動モーター、56…キャップ移動モーター、60…ラック部材、61…ラック部、65…ガイド部材、65a…ガイド穴、66…ラック部材、66a…ラック部、66b…長穴、70…ラインヘッド、72…プレート部材、72a…ヘッド面、74…ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16