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  • 特開-地下貯水槽およびその構築方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142636
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】地下貯水槽およびその構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/045 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E02D29/045 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054865
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000112196
【氏名又は名称】ピーエス・コンストラクション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596146821
【氏名又は名称】菱建基礎株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592086880
【氏名又は名称】丸栄コンクリート工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391034499
【氏名又は名称】鶴見コンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】砂子 洋一
(72)【発明者】
【氏名】水島 章二
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 肇
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 宗孝
(72)【発明者】
【氏名】阪口 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 英明
(72)【発明者】
【氏名】杉本 郁夫
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147AB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】敷地境界に近接して地下貯水槽を構築することができ、貯水容量の大きい地下貯水槽をより短い工期かつ低コストで構築することのできる地下貯水槽およびその構築方法を提供する。
【解決手段】この地下貯水槽は、地中に垂直に打設された複数のH型PC杭を所定の貯水空間部を形成するように水平方向に連接して一体化された側壁部と、貯水空間部内に立設された1以上の中間柱と、1以上の中間柱上に架設された頂版と、貯水空間部の底部を形成するように設けられた現場打コンクリート構造の底版とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に垂直に打設された複数のH型PC杭を所定の貯水空間部を形成するように水平方向に連接して一体化された側壁部と、
前記貯水空間部内に立設された1以上の中間柱と、
前記1以上の中間柱上に架設された頂版と
前記貯水空間部の底部を形成するように設けられた現場打コンクリート構造の底版と、
を具備する地下貯水槽。
【請求項2】
地盤に側壁部を構成する複数のH型PC杭を中掘り圧入工法により埋設し、
隣り合う前記H型PC杭の凹部内に高圧噴射撹拌工法によるソイルセメントを構築して前記側壁部を構築し、
前記側壁部によって囲まれた空間において、地下貯水槽を構築する部分の地盤を掘削し、
前記側壁部によって囲まれた空間内に複数の中間柱を構築し、
前記複数の中間柱上に頂版を構築し、
前記複数の中間柱の間に場所打ちコンクリートによって底版を構築する
地下貯水槽の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下に雨水等を貯留することができる地下貯水槽およびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に伴う異常気象により各地で洪水被害が多発し、災害に強いまちづくりの構築のため、雨水等を一次的に貯留する大容量の調整池や貯水槽の重要性が増してきている。特に都市部においては、限られた土地を最大限に有効活用するため、地下に洪水を貯留する施設を地下貯水槽として構築し、その頂版上を公園、スポーツ施設、集合住宅などの別用途に利用することが一般的となっている。
【0003】
地下貯水槽は、側壁や底版を場所打ちコンクリートやプレキャスト部材により構築することが一般的である。プレキャスト部材を利用した地下貯水槽の代表的な構造として、基礎コンクリート上に、周囲を取り囲むスタンド型端部ブロックと称するプレキャスト部材、中間ブロックと称する頂版スラブを支持する部材を並べ、スタンド型端部ブロックの底部と中間ブロックの底部間を場所打ちコンクリートで連結したものが知られている。
【0004】
また、角型筒状断面の複数の角型筒状鋼を地中に並べて埋設し、角型筒状鋼の中空部に膨張性コンクリートを注入して角型筒状鋼と一体化せしめ、角型鋼管コンクリート複合壁体パネルとして地下構造物の外壁に供する方法も知られている(特許文献1参照)。
【0005】
さらに、擁壁用の矢板として、H形またはI形断面構造のコンクリート矢板を用いる方法も知られている(特許文献2参照)。
またアンダーパスの施工にあたって、地中にプレストレストコンクリート杭を埋設し、隣接するプレストレストコンクリート杭どうしの間の空所に現場打ちによる鉄筋コンクリート構造による壁を打設して外壁を構築する技術も知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭60-014133号公報
【特許文献2】特開昭48-065716号公報
【特許文献3】特開2005-023576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように鉄筋コンクリート構造で地下貯水槽を構築する場合には仮設の土留め壁が必要となるため、地下貯水槽の本体構造部である側壁と仮設土留め壁との間には仮設足場が必要となる。仮設足場の構築には2.0m程度の幅が必要となるため、敷地境界に近接して地下貯水槽の本体構造部を構築することができず、このことが地下貯水槽の規模に制限をかけてしまう。また、一般的な規模の地下貯水槽の構築では掘削深さが3mを超えることが多く、この場合、仮設の土留め壁を支えるための腹起し、切梁などの支保工の設置が必要となり、そのための工期とコストが必要になるとともに、仮設の土留め壁を撤去する際に周辺地盤や近接構造物に影響を及ぼす可能性があり、その対策にもコストを要する。また、鉄筋コンクリート構造の側壁が土留めを兼ねた地下貯水槽では、深さが増すほど側壁が外側より受ける荷重が大きくなるため、大きな厚みを必要とすることとなり、それだけ有効貯水容量が減少する。
【0008】
以上のような事情を鑑み、本発明は、敷地境界に近接して地下貯水槽を構築することができ、貯水容量の大きい地下貯水槽をより短い工期かつ低コストで構築することのできる地下貯水槽およびその構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明にかかる地下貯水槽は、地盤に垂直に打設された複数のH型PC杭を所定の貯水空間部を形成するように水平方向に連接して一体化された側壁部と、前記貯水空間部内に立設された1以上の中間柱と、前記1以上の中間柱上に架設された頂版と、前記貯水空間部の底部を形成するように設けられた現場打コンクリート構造の底版と、を具備する。
【0010】
本発明に係る地下貯水槽の構築方法は、地盤に側壁部を構成する複数のH型PC杭を中掘り圧入工法により埋設し、隣り合う前記H型PC杭の凹部内に高圧噴射撹拌工法によるソイルセメントを構築して、前記側壁部を構築し、前記側壁部によって囲まれた空間において、地下貯水槽を構築する部分の地盤を掘削し、前記側壁部によって囲まれた空間内に複数の中間柱を構築し、前記複数の中間柱上に頂版を構築し、前記複数の中間柱の間に場所打ちコンクリートによって底版を構築する、というものである。
【0011】
本発明に係る地下貯水槽及びその構築方法によれば、地盤に垂直に打設された複数のH型PC杭を用いて地下貯水槽の側壁部が構成されるので、側壁部がそのまま仮設土留めの機能を兼ねる。このため敷地境界に近接して地下貯水槽を構築することができ、より広大な貯水空間部をもつ地下貯水槽が得られる。また、腹起し、切梁などの支保工の設置も不要となるので、より短時間かつ低コストで地下貯水槽を構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る実施形態の地下貯水槽の全体の構造を示す図である。
図2図1の地下貯水槽の縦断面図である。
図3】側壁部1の一部分の水平断面図である。
図4】一般的な現場打鉄筋コンクリート構造の地下貯水槽の構築方法を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態で説明する中間柱3および頂版4は、予め工場で製作されるプレキャストコンクリート部材であってもよく、場所打ちコンクリート部材であってもよい。
図1は、本発明に係る実施形態の地下貯水槽10の全体の構造を示す図である。
同図に示すように、本実施形態の地下貯水槽10は、側壁部1と、底版2と、複数の中間柱3と、頂版4とを備える。
側壁部1は、地盤12に垂直に打設された複数のH型PC杭1Aで構成される。これら複数のH型PC杭1Aは、実際に貯水に供される所定の貯水空間部5を形成するように互いに水平方向に連接されて構成される。本実施形態において、貯水空間部5は立方体形状をなし、側壁部1は貯水空間部5の四方の側面に各々対応する4体の側壁1-1、1-2、1-3、1-4からなる。
【0014】
複数の中間柱3は各々貯水空間部内に立設され、貯水空間部5の上部を塞ぐ頂版4を支持する。中間柱3および頂版4は例えばPC構造、鉄筋コンクリート構造の部材である。側壁部1と底版2は互いに剛結合され、側壁部1と頂版4も互いに剛結合されている。中間柱3は、一方向(X軸方向)に対向する側壁1どうしの間に所定の間隔で配置されている。
底版2は、符号5で示される貯水空間部の底部を形成するように、一方向に対向する側壁1どうしの間に所定の間隔で配置された中間柱3と中間柱3の間および中間柱3と側壁1の間に現場打コンクリートで設けられた部分である。
【0015】
本実施形態の地下貯水槽10の構築手順を説明する。
図2は本実施形態の地下貯水槽10の縦断面図である。図3は側壁部1の一部分の水平断面図である。
まず、地盤12に側壁部1を構成する複数のH型PC杭1Aを中掘り圧入工法により埋設する。図3に示すように、各々のH型PC杭1AはH型断面の凹部面どうしが向き合う向きで列状に配置される。隣り合うH型PC杭1Aの凹部内には高圧噴射撹拌工法によるソイルセメント8が構築され、これによって隣り合うH型PC杭1A間の止水性が確保された側壁部1が構築される。
【0016】
次に、側壁部1によって囲まれた空間において、地下貯水槽10を構築する部分の地盤を掘削し、掘削面上に複数の中間柱3を構築し、場所打ちコンクリートによって底版2を構築する。続いて、各中間柱3上に頂版4を構築する。以上により、地下貯水槽10が完成する。
【0017】
なお、H型PC杭1Aには、例えば、フランジ幅が1,064mm、フランジ間の長さが540-740mm、フランジ厚は96mmあるいは146mm、ウェブ厚は150mmのものなどが使用される。
【0018】
以上のように、本実施形態の地下貯水槽10は、地盤12に垂直に打設された複数のH型PC杭1Aを用いて地下貯水槽10の側壁部1が構成されるので、側壁部1がそのまま仮設土留めの機能を兼ねる。このため敷地境界Bに近接して地下貯水槽10を構築することができ、より広大な貯水空間部をもつ地下貯水槽10が得られる。一方、図4に示すように、一般的な現場打鉄筋コンクリート構造の地下貯水槽100の場合、土留め部材21と地下貯水槽100の側壁部11との間に仮設足場12を設置しなければならず、その分、貯水空間部15の容量が縮小する。本実施形態の地下貯水槽10によれば、側壁部1が仮設土留めの機能を兼ねるので、上記の仮設足場12が不要であり、敷地境界Bに近接して地下貯水槽10を構築することができる。また、腹起し、切梁などの支保工の設置も不要となるので、施工期間及び経費の削減を図れる。
【0019】
加えて、H型PC杭1Aは曲げ剛性が高く、高い先端支持力を有するので、側壁部1の断面寸法をより小さくすることができるので、貯水容量の大きい地下貯水槽10を構築することができる。より具体的には、幅:1,064mm、高さ:740mmのH型PC杭で側壁部1の壁高(根入り高さから天端までの高さ)を8.5m、幅:1,064mm、高さ:640mmのH型PC杭では8.0m、幅:1,064mm、高さ:540mmのH型PC杭では7.0mにすることでき、十分な貯水容量の地下貯水槽10が得られる。
【0020】
また、本実施形態の地下貯水槽10によれば、H型PC杭1Aを使用したことで、現場打鉄筋コンクリート構造を採用した従来工法と比較して側壁部1の構築工期を大幅に低減できるとともに、低振動・低騒音な施工が可能であることから周辺環境に与える影響を最小限に抑えることができる。
【0021】
なお、底版2、中間柱3、頂版4は高強度コンクリートで構築してもよい。これにより、耐凍害性や中性化などの耐久性に優れた地下貯水槽10が得られる。
【符号の説明】
【0022】
1 側壁部
2 底版
3 中間柱
4 頂版
5 貯水空間部
1A H型PC杭
10 地下貯水槽
図1
図2
図3
図4