IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小糸製作所の特許一覧

特開2024-142643配光可変ランプの制御装置、車両用灯具、ソフトウェアプログラム
<>
  • 特開-配光可変ランプの制御装置、車両用灯具、ソフトウェアプログラム 図1
  • 特開-配光可変ランプの制御装置、車両用灯具、ソフトウェアプログラム 図2
  • 特開-配光可変ランプの制御装置、車両用灯具、ソフトウェアプログラム 図3
  • 特開-配光可変ランプの制御装置、車両用灯具、ソフトウェアプログラム 図4
  • 特開-配光可変ランプの制御装置、車両用灯具、ソフトウェアプログラム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142643
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】配光可変ランプの制御装置、車両用灯具、ソフトウェアプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20241003BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20241003BHJP
   F21S 41/153 20180101ALI20241003BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20241003BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241003BHJP
   F21Y 105/10 20160101ALN20241003BHJP
   F21W 102/14 20180101ALN20241003BHJP
   F21W 102/17 20180101ALN20241003BHJP
【FI】
B60Q1/14
F21S41/143
F21S41/153
F21S41/663
F21Y115:10
F21Y105:10
F21W102:14
F21W102:17
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054877
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(72)【発明者】
【氏名】村松 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】寺山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 重之
(72)【発明者】
【氏名】杉本 篤
(72)【発明者】
【氏名】大塩 洋彦
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】菊池 賢
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA11
3K339BA22
3K339BA23
3K339BA25
3K339BA28
3K339BA30
3K339DA01
3K339DA02
3K339HA01
3K339HA03
3K339JA21
3K339KA06
3K339KA07
3K339KA09
3K339LA06
3K339LA31
3K339LA33
3K339MA01
3K339MC14
3K339MC29
3K339MC90
(57)【要約】
【課題】反射物に起因するADB制御の機能不全を抑制し、灯具システムの複雑化と高コスト化を回避する配光可変ランプの制御装置を提供する。
【解決手段】ハイビーム用ランプ110を制御する制御装置130は、ハイビーム配光パターンPHにおいて、反射物が存在し得る範囲を囲む部分領域RZを予め定めておき、この部分領域RZの光量を、部分領域RZを除くハイビーム配光パターンPHよりも常に低くするように制御する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方の物体に応じてハイビーム配光パターンを変化させる配光可変ランプの制御装置であって、
配光可変ランプは、光量を個別に制御することが可能な複数の発光素子を有する光源を含み、前記ハイビーム配光パターンに基づいて車両前方へ光を照射することが可能とされ、
前記ハイビーム配光パターンに基づき光が照射される領域のうち、所定の部分領域の光量を、該部分領域以外の領域の光量に対して、常に低くするように制御する制御装置。
【請求項2】
前記部分領域は、車両前方を撮像する撮像部により取得された画像情報に含まれる物体の位置情報のみに基づいて決定され、前記物体を囲む領域として設定し、領域の範囲は変更することが可能である請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記部分領域は、前記ハイビーム配光パターンにおける路肩または路側帯を含む自車線より外側の領域、または前記ハイビーム配光パターンにおける前方車両が存在する位置よりも上方の領域である請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記部分領域の光量は、車両前方を撮像する撮像部により取得された画像情報に含まれる物体の光量の情報によって変更しないように制御する請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記光源は、複数の発光領域がマトリックス状に配列された前記光源であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記光源は、半導体発光素子が矩形に配列され、短辺方向に20以上の発光素子が配列され、長辺方向に100以上の発光素子が配列されている請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
配光可変ランプを制御するためのソフトウェアプログラムであって、
配光可変ランプは、光量を個別に制御することが可能な複数の発光素子を有する光源を含み、
ハイビーム配光パターンを車両前方へ照射することが可能とされ、
前記ソフトウェアプログラムは、演算処理部が備えるプロセッサに、撮像部から取得した車両前方の画像情報に応じて決定された配光パターンを照射するように前記光源を制御するステップと、
前記ハイビーム配光パターンに基づき光が照射される領域のうち、所定の部分領域の光量を、該部分領域以外の領域の光量よりも常に低くするように制御するステップと、を実行させるソフトウェアプログラム。
【請求項8】
光量を個別に制御することが可能な複数の発光素子を有する光源と、
ハイビーム配光パターンを車両前方へ照射することが可能とされた配光可変ランプと、
撮像部から取得した車両前方の画像情報に応じて決定された配光パターンを照射するように前記光源を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記ハイビーム配光パターンに基づき光が照射される領域のうち、所定の部分領域の光量を、該部分領域以外の領域の光量よりも常に低くするように制御する車両用灯具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、配光可変ランプの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具において、車両用カメラが撮像した自車前方の画像に基づいて、ハイビームの配光パターンを動的、且つ適応的に変化させるADB(Adaptive Driving Beam)制御を実装した配光可変ランプが知られている。
【0003】
ADB制御は、自車前方の先行車両や対向車両(以下、前方車両と称する)や道路標識の有無を検出し、これらに対応する領域への照射光を、消灯する(遮光と称する)こと、あるいは光量を低下させる(減光と称する)ことによって、前方車両の運転者に対するグレアを低減するものである。例えば、特許文献1には、LEDアレイを用いてADB制御を実行する技術が開示されている。
【0004】
前方車両や道路標識の有無は、自車前方の撮像画像において高輝度物の光点によって検出される。高輝度物には、前方車両の前照灯やテールランプなどの自ら発光する自発光物と、道路標識や道路脇の視線誘導標(デリニエータ)などの自ら発光せず所定の広がり角度で光を再帰反射する再帰反射物(以下、反射物とする)とが含まれる。
【0005】
配光可変ランプには、自発光物か反射物か否かを判定して、照射光を変化させるものがある。例えば、特許文献2には、車両前方の撮像画像から物体を検出し、検出した物体が自発光物か反射物であるかを判定し、反射物と判定した場合は、画像中の反射物の光量に応じて、ランプの照射光を減光する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-88224号公報
【特許文献2】EP2127944
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、車両用灯具の高輝度化が進み、反射物による反射光の強度が高まる傾向にあるため、反射物に起因するグレアへの対策が求められている。特に、車両カメラにおいては、カメラが捉えることができる光量の最大値を超えた場合に、撮像画像が白く塗りつぶされる現象(白飛び)が発生することや、カメラが捉えることができる光量の最小値を下回った場合に、撮像画像が黒く塗りつぶされる現象(黒つぶれ)が発生することが一般的に知られている。
【0008】
このような撮像の不具合が発生すると、撮像画像から反射物を正しく検出できなくなり、ADB制御が機能不全に陥ってしまうことが起こり得る。このため、配光可変ランプには、反射光の光量がカメラにとって適切な範囲内に収まるようにランプの照射光を制御することが求められる。
【0009】
しかしながら、反射物と自車両との距離や位置関係によって、反射光の光量は刻一刻と変化するため、反射光の光量を正確に、且つ安定的に測定することは技術的に難易度が高いことが知られている。これを解決するには、一般的にカメラによる検出技術とランプ照射光の制御技術の両方に高い精度が必要となるため、このようにすると灯具システムが複雑になり、コストが増大する。
【0010】
本開示は、反射物に起因するADB制御の機能不全を抑制し、灯具システムの複雑化と高コスト化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本開示の技術のある態様の制御装置は、配光可変ランプを制御する制御装置に関する。配光可変ランプは、光量を個別に制御することが可能な複数の発光素子を有する光源を含み、ハイビーム配光パターンに基づいて車両前方へ光を照射することが可能とされ、制御装置は、ハイビーム配光パターンに基づき光が照射される領域のうち、所定の部分領域の光量を、部分領域以外の領域の光量よりも、常に低くするように制御する。
【0012】
この態様によると、配光可変ランプは、ある部分領域の光量を、それ以外の領域の光量に対し、予め低く設定する。すなわち、部分領域を常に減光制御したハイビーム配光パターンを形成することが可能である。このため、自車両が部分領域に反射物などの物体が存在し得る環境を走行する場合に、車両の撮像部は反射物による反射光の影響を受けずに済み、撮像画像の不具合を抑制し得る。ひいては、撮像画像に基づく物体の検出精度が向上し、ADB制御の機能不全の抑制に寄与する。
【0013】
部分領域は、画像情報に含まれる物体の位置情報のみに基づいて決定され、物体を囲む領域として設定し、領域の範囲は変更することが可能であることとしてもよい。
【0014】
この態様によると、部分領域は画像情報に含まれる物体の位置情報のみに基づいて決定され、物体が反射物か自発光物か否かの判定条件を必要としない。このため、複雑な判定ロジックを用いずに済み、複雑な判定ロジックを処理するために必要な電子部品の追加コストの発生を防ぐことができる。また、部分領域は物体を囲む領域として設定し、領域の範囲を変更することを可能とすることにより、光量を低下させる部分領域を最小範囲に抑えることができる。このため、運転者の前方の視認性が向上し得る。
【0015】
部分領域は、ハイビーム配光パターンにおける路肩または路側帯を含む自車線より外側の領域、またはハイビーム配光パターンにおける前方車両が存在する位置よりも上方の領域であるとしてもよい。
【0016】
この態様によると、部分領域を道路上の道路標識が主に存在し得る領域を予め限定して設定することができる。このため、光量を低下させる部分領域を最小範囲に抑え、運転者の前方の視認性が向上し得る。
【0017】
部分領域の光量は、車両前方を撮像する撮像部により取得された画像情報に含まれる物体の光量の情報に基づいて変更しないように制御してもよい。
【0018】
この態様によると、撮像画像における物体の光量に基づいて、部分領域の光量を制御しない。このため、部分領域の光量を増減させる複雑な制御が不要となる。もし、部分領域の光量を増減させる場合、光の照射および非照射が繰り返される、いわゆる光のちらつき現象が発生し、運転者に煩わしさを与えてしまう可能性があった。このように、部分領域の光量を制御せずに済むことによって、複雑な制御に必要な電子部品の追加を回避し、運転者に煩わしさを与えること抑制し得る。
【0019】
光源は、複数の発光領域がマトリックス状に配列された光源であるとしてもよい。
【0020】
この態様によると、従来のLEDアレイを用いた配光可変ランプと比較し、ハイビーム配光パターンが縦方向にも分解能が高まるため、一つの光源で様々な配光パターンを形成できる。また、より高精細にハイビーム配光パターンを制御することが可能となり、部分領域を形成する精度が向上し得る。
【0021】
光源は、半導体発光素子が矩形に配列され、短辺方向に20以上の発光素子が配列され、長辺方向に100以上の発光素子が配列されているとしてもよい。
【0022】
本開示の別の態様は、配光可変ランプを制御するためのソフトウェアプログラムに関する。配光可変ランプは、光量を個別に制御することが可能な複数の発光素子を有する光源を含み、ハイビーム配光パターンを車両前方へ照射することが可能とされ、ソフトウェアプログラムは、演算部処理が備えるプロセッサに、撮像部から取得した車両前方の画像情報に応じて決定された配光パターンを照射するように光源を制御するステップと、ハイビーム配光パターンに基づき光が照射される領域のうち、所定の部分領域の光量を、部分領域以外の領域の光量よりも常に低くするように制御するステップと、を実行させる。
【0023】
本開示の別の態様は、車両用灯具に関する。車両用灯具は、光量を個別に制御することが可能な複数の発光素子を有する光源と、ハイビーム配光パターンを車両前方へ照射することが可能とされた配光可変ランプと、撮像部から取得した車両前方の画像情報に応じて決定された配光パターンを照射するように前記光源を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、ハイビーム配光パターンに基づき光が照射される領域のうち、所定の部分領域の光量を、部分領域以外の領域の光量よりも常に低くするように制御する。
【0024】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、本開示の表現を、方法、装置、システム、ソフトウェアプログラムなどの間で相互に置換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0025】
本明細書によって開示される制御装置によれば、配光可変ランプシステムの複雑化と高コスト化を抑制して、反射物に起因するADB制御の機能不全を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施の形態に係る車両用灯具システムのブロック図である。
図2図1に示す光源部を概略的に示す正面図である。
図3図1に示す車両用灯具システムによる配光パターンを模式的に示す図である。
図4】第1の実施形態における配光パターンの一例を示す図である。
図5】第2の実施形態における配光パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の技術を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。以下に例示する実施形態は、本開示の技術を限定して解釈するためのものではなく、実施形態におけるすべての特徴や構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0028】
(第1の実施形態)
図1は、本開示の実施形態に係る車両用灯具システム200のブロック図である。本実施の形態に係る車両灯具は、車両前方に配置された車両用前照灯であり、車載カメラ等の様々なセンサや各制御部と適宜組み合わせられることで車両用灯具システム200を構成する。この車両用灯具システム200は、ハイビーム配光パターンを車両前方の状況に応じて、前方車両が存在する領域を遮光するADB機能を有する。
【0029】
車両用灯具システム200は、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)に対応した車両用カメラを含む撮像部206と、車両ECU(Electronic Control Unit)202と、車両用灯具100を備える。撮像部206は、車両前方を撮像する車両カメラと、撮像した画像情報に基づいて車両前方に存在する車両や道路標識等の物体を検出するカメラECUと、を有する。なお、本実施形態では、撮像部206は車両本体側に設けられているが、車両全体のどこに設けられても良く、車両用灯具内に設けてもよい。
【0030】
車両ECU202は、撮像部206が出力した撮像画像の情報に基づいて、前方車両を検出し、前方車両が存在する領域、すなわち遮光部を示す車両ROI(Region Of Interest)情報を生成する。ROI情報は、少なくとも1つの、遮光範囲の左端の位置と、右端の位置を含む。ROI情報は、さらに少なくとも1つの遮光範囲の上端の位置と、下端の位置を含んでもよい。なお、これらの位置情報は、通常は角度として表される。
【0031】
ROI情報は、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Ne
twork)などの車載通信ネットワークを介して、車両ECU202から車両用灯具100に送信される。車両用灯具100は、ハイビーム点灯時に、ROI情報を利用してADB制御を行う。
【0032】
車両用灯具100は、制御装置130と、ハイビーム用ランプ110およびロービーム用ランプ150とを備え、ハイビーム配光パターンとロービーム配光パターンを切り替え可能である。また、ハイビーム用ランプ110は、ADBの機能を有する配光可変ランプである。
【0033】
ハイビーム用ランプ110およびロービーム用ランプ150は、それぞれ異なる部分を照射する。図1に仮想鉛直スクリーン2が示されており、仮想鉛直スクリーン2には、ハイビーム配光パターンを照射することが可能な矩形領域6、およびロービーム配光パターン8が模式的に示される。矩形領域6は、ハイビーム用ランプ110から照射される第1ビームBM1によって形成され、ADB制御により車両前方の状況に応じて、矩形領域6の中の一部の領域は、遮光又は減光するなど配光パターンが適宜変化する。ロービーム配光パターン8は、ロービーム用ランプ150から照射される第2ビームBM2によって形成される。
【0034】
ハイビーム用ランプ110は、光源部120と照射光学系124を備える。光源部120は、光を出射する複数の発光素子121と、複数の発光素子121が実装される回路基板122とを有する。回路基板122は、制御装置130から後述する画素データS2を受け、それぞれの発光素子121から出射する光の光量を多階調で個別に制御することが可能である。
【0035】
制御装置130は、インタフェース回路132および演算処理部134を備える。インタフェース回路132は、車載通信ネットワークを介してROI情報を含む車両前方の画像情報S1を受ける。例えばインタフェース回路132は、CANインタフェースである。演算処理部134は、画像情報S1に基づいて、それぞれの発光素子121の画素のデータS2を生成し、ハイビームの配光パターンを形成しADB制御を行う。インタフェース回路132と演算処理部134は別々のハードウェアとて実装されていてもよいし、同一のハードウェアとして実装されてもよい。
【0036】
演算処理部134は、ソフトウェアプログラムと、当該ソフトウェアプログラムを実行するプロセッサとの組み合わせで実装することができる。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)であってもよいし、マイクロコントローラであってもよい。ソフトウェアプログラムは、プロセッサに、ハイビーム配光パターンにおいて、ROI情報を取得させる。言い換えれば、車両から遮光すべき領域の水平方向の左端の位置と右端の位置を示す遮光情報を取得させる。さらにソフトウェアプログラムは、プロセッサに、複数の発光素子121による複数の画素データS2を生成させる。
【0037】
本実施形態では、それぞれの発光素子121は、演算処理部134によって生成される画素データS2と対応する。光源部120は、それぞれの発光素子121から出射する光の光量を、発光素子121に対応する画素データS2に応じて調節することで、画像情報S1に基づく光を出射し、画像情報S1に基づく配光パターンを形成する。本実施形態では、発光素子121と画素とが1対1で対応するが、特に制限されるものではない。
【0038】
照射光学系124は、光源部120よりも前方に配置され、光源部124から出射する光を車両前方へ投影する。本実施形態における照射光学系124は、入射面および出射面が凸状に形成された投影レンズであり、照射光学系124の後方焦点は、光源部120における複数の発光素子121のいずれかの光の出射面上またはその近傍に位置している。このため、車両前方に照射される配光パターンは、光源部124が出射する光を上下左右に反転された配光パターンとなる。
【0039】
図2は、光源部120を概略的に示す正面図である。本実施形態の光源部120は、光を出射する光出射部としての複数の発光素子121と、複数の発光素子121が実装される回路基板122とを有する。複数の発光素子121としては、LED(Light Emitting Diode)を横一列に配列したLEDアレイや、LEDをマトリックス状に配列したマトリクスLEDアレイを利用することができる。なお、左右方向に配列される発光素子121の数、及び上下方向に配列される発光素子121の数は、特に限定されるものではない。また、LED以外でもマトリックス状の発光領域を個別に点消灯できるのであれば、有機EL素子や液晶シャッタ、MEMSミラーといったものも光源部120へ適用可能である。
【0040】
本実施形態の光源部120には、所謂マイクロLEDが用いられる。特に、マイクロLEDが、縦64個、横256個のマトリックス状に配列された矩形状の光源デバイスを利用し、制御装置130からの指示(画素データS2)に基づいて、各LEDは個別に駆動制御される。なお、LEDは、矩形の短辺方向に20以上の発光素子が配列され、長辺方向に100以上の発光素子が配設されていてもよい。また、該光源デバイスは、複数のLEDが一体化されているモノリシック形態のものでもよいし、複数のLEDが個々に1つの基板へ実装された形態のものでもよい。
【0041】
図3に示す配光パターンは、ロービーム用ランプ150によって形成されるロービーム配光パターンPLと、ハイビーム用ランプ110によって形成されるハイビーム配光パターンPHである。ロービーム配光パターンPLのうち、カットオフラインCLを含む上部は、ハイビーム配光パターンPHの下部とオーバーラップしている。
【0042】
ロービーム用ランプ150は、H-H線より下方の車両近傍領域を照射するように光源や光学部材が適宜選択されている。ハイビーム用ランプ110は、H-H線より上方の遠方領域を照射するように光源や光学部材が適宜選択されている。
【0043】
本実施形態では、ハイビーム配光パターンPHは、光源部120のマトリックス状の個々の発光領域と対応する複数のサブ領域PSに分割される。各サブ領域PSの光量は、対応する光源部120の発光素子121の輝度に応じて決まる。光源部120は、各発光素子121へ流す駆動電流を個別に制御することで、それぞれの輝度を調節できる。一部の発光素子121の駆動電流をゼロにするか、または減らすことで、ハイビーム配光パターンPHを構成するサブ領域PSを遮光又は減光した状態にできる。また、複数のサブ領域PSを組み合わせることで、所望の位置に、所望の大きさの遮光領域または減光領域を形成することが可能である。
これらの遮光領域または遮光領域は、前方車両や反射物などの物体を囲む領域として設定し、この領域の範囲は動的に変更することが可能である。
【0044】
これにより、ハイビーム配光パターンPHの範囲に含まれる前方車両等へのグレアを抑制する際に、遮光領域を極力小さく抑えることができ、遮光しない他の領域の光量を維持するため運転者の前方視認性が向上する。
【0045】
図4は、前方車両40や反射物(34、36、38)が存在する走行シーンにおける配光パターンの一例を示している。ここで反射物とは、デリニエータ34や道路標識などの自ら発光せず所定の広がり角度で光を再帰反射する物体のことである。また、ここで言う道路標識には、路肩または路側帯を含む自車線より外側の領域に存在する道路標識36や、道路上方の領域に存在する道路標識38が含まれる。
【0046】
前方車両40や反射物(34、36、38)が存在する場合、車両ECU202は、撮像部206が出力した撮像画像の情報に基づいて物体の位置や種類を判定し、物体の位置や種類に応じて部分的な遮光位置の決定と、減光量の決定とを行い、これらを含む画像情報S1を、車両用灯具100の制御装置130へ出力する。制御装置130は、画像情報S1に基づき所望の配光パターンを形成するように、ハイビーム用ランプ110およびロービーム用ランプ150の照射を制御する。
【0047】
図4に示すハイビーム配光パターンPHは、前方車両40の位置に相当する部分領域R10が非照射(遮光)された状態である。また、反射物であるデリニエータ34や、道路標識(36、38)の位置に相当する部分領域(R4、R6、R8)は減光された状態である。
【0048】
反射物の位置に相当する部分領域(R4、R6、R8)を減光する目的の1つは、道路標識(36、38)によって反射したハイビームの反射光が運転者に与えるグレアを抑制するためである。
【0049】
また、上記と異なる目的の1つに、撮像部206が備える車両カメラにとって、反射光の光量が適切な範囲内に収まるようにハイビーム配光パターンPHを制御することが挙げられる。カメラが捉えることができる光量の最大値を超えた場合に、撮像画像が白く塗りつぶされる現象(白飛び)が発生することや、カメラが捉えることができる光量の最小値を下回った場合に、撮像画像が黒く塗りつぶされる現象(黒つぶれ)が発生することが一般的に知られており、このような撮像の不具合が発生すると、撮像画像から反射物を正しく検出できなくなり、ADB制御が機能不全に陥ってしまうことが起こり得る。
【0050】
しかしながら、反射物と自車両との距離や位置関係によって、反射光の光量は刻一刻と変化するため、反射光の光量を正確に、且つ安定的に測定することは技術的に難易度が高いことが知られている。これを解決するには、カメラによる検出技術とランプ照射光の制御技術の両方に高い精度が必要なため、灯具システムが複雑になり、コストが増大するという問題がある。したがって、図4に示すような反射物の位置に相当する範囲に合わせて、減光する部分領域を最小範囲に設定し、ハイビーム配光を制御することは非現実的である。
【0051】
そこで、本開示の技術のより好適な実施形態について、図5を用いて説明する。
【0052】
(第2の実施形態)
図5は、本開示の技術のより好適は実施形態における配光パターンの一例を示すものである。なお、第2の実施形態は、図1の灯具システム200を用いており、構成要素やハイビーム配光PHの制御などの基本的な仕組みは、第1の実施形態と共通である。第1の実施形態との違いは、制御装置130が実行する反射物を減光するための以下の制御方法によって示される。
【0053】
制御装置130は、ハイビーム配光パターンPHにおいて、反射物が存在し得る範囲を囲む部分領域RZを予め定めておき、この部分領域RZの光量を、部分領域RZを除くハイビーム配光パターンPHに対し常に低く減光制御する。
【0054】
部分領域RZの減光制御は、ハイビーム点灯を開始する時点から実行され、ハイビーム点灯を停止するまで継続する。また、部分領域RZの減光制御は、撮像部206および車両ECU202による車両前方の物体検出とは無関係に実行される。すなわち、本実施形態では、実際に反射物が存在しているか否かは問わない。また、反射物が存在しているという情報を敢えて使わないとしてもよい。
【0055】
この態様によれば、自車両が部分領域RZに反射物が存在し得る環境を走行する場合に、車両の撮像部206は反射物による反射光の影響を受けずに済み、反射物に起因する撮像画像の不具合を抑制し得る。
【0056】
部分領域RZを設定する反射物が存在し得る範囲は、走行実験のデータや車両用灯具を開発する当業者の知識や経験に基づき、予測範囲として定めて良い。この予測範囲および予測範囲の減光量は、制御装置130の演算処理部134にソフトウェアプログラムとして実装されることで予め設定される。また、予測範囲および減光量の設定値は、車両のメンテナンス時にソフトウェアプログラムを書き換えて変更してもよい。さらに、不図示の無線通信の受信部が車両外部からOTA(On The Air)によって受信した更新プログラムを用いて予測範囲を変更するとしてもよい。
【0057】
第2の実施形態における部分領域RZの光量は、画像情報S1に含まれる物体の光量の情報に基づいて変更しないように制御してもよい。
【0058】
この態様によると、撮像画像における物体の光量に基づいて、部分領域の光量を制御しない。このため、部分領域の光量を増減させる複雑な制御が不要となる。このように、部分領域の光量を制御せずに済むことによって、複雑な制御に必要な電子部品の追加を回避することができる。
【0059】
第2の実施形態における部分領域RZは、ハイビーム配光パターンPHにおける路肩または路側帯を含む自車線より外側の領域RZO、またはハイビーム配光パターンPHにおける前方車両40が存在する位置よりも上方の領域RZUの少なくとも1つに形成されるとしてもよい。
【0060】
これにより、部分領域RZを反射物が存在し得る所望の領域に予め限定して設定することができる。図4の第1の実施形態との違いは、第1の実施形態が反射物を検知して、リアルタイムに減光領域の位置と光量を制御する必要があり、灯具システムの複雑化とコストアップが避けられなかったが、第2の実施形態では、簡易な方法で目的とする反射物への減光制御を実現でき得る。
【0061】
図5において、部分領域RZを矩形状に示しているが、光源部120によって表現でき得る配光パターンにおいて、部分領域RZの形状は特に限定しない。
【0062】
以上、実施形態に基づき、具体的な語句を用いて本開示を説明したが、実施形態は本開示の原理、応用を示しているにすぎず、請求の範囲に規定された本開示の思想を逸脱しない範囲において、実施形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものなどの変形例も本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
100…車両用灯具
110…ハイビーム用ランプ(配光可変ランプ)
130…制御装置
132…インターフェース回路
134…演算処理部
120…光源部
121…発光素子
200…車両灯具システム
202…車両ECU
206…撮像部
PH…ハイビーム配光パターン
PL…ロービーム配光パターン
PS…サブ領域
34、36、38…反射物
40…前方車両
RZ…部分領域

図1
図2
図3
図4
図5