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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142646
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】調整用セット
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/18 20060101AFI20241003BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20241003BHJP
   H02K 7/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E04G21/18 C
H02K7/116
H02K7/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054880
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598022956
【氏名又は名称】株式会社大同機械
(74)【代理人】
【識別番号】100154357
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】市村 元
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信也
(72)【発明者】
【氏名】山内 博史
(72)【発明者】
【氏名】落合 康全
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 金正
【テーマコード(参考)】
2E174
5H607
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA12
2E174DA37
2E174DA62
5H607BB01
5H607BB10
5H607CC03
5H607DD03
5H607DD17
5H607EE28
5H607EE35
5H607EE49
5H607FF01
5H607JJ05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】既設の鉄骨柱の上方の端部に新設の鉄骨柱を接合する際にそれらのエレクションピースを仮固定する調節治具の調整ボルトへの駆動力の伝達を改善することを可能にする構成を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る調整用セットは、既設の鉄骨柱のエレクションピースと、前記既設の鉄骨柱の上部に設けられる新設の鉄骨柱のエレクションピースとを仮固定する調節治具に着脱自在に設けられる取付部10と、前記取付部に取り付けられる駆動装置であって、前記調節治具の調整ボルトを回転駆動するように前記調整ボルトに嵌合可能であるシャフト部20と、減速機を介して前記シャフト部に接続されて前記シャフト部を回転させる回転駆動力を発生するモーターとを備えた、駆動装置とを備える。モーター22の出力軸23は、シャフト部20側へ前記減速機26側から延びる出力軸部30と略平行である。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の鉄骨柱のエレクションピースと、前記既設の鉄骨柱の上部に設けられる新設の鉄骨柱のエレクションピースとを仮固定する調節治具に着脱自在に設けられる取付部と、
前記取付部に取り付けられる駆動装置であって、前記調節治具の調整ボルトを回転駆動するように前記調整ボルトに嵌合可能であるシャフト部と、減速機を介して前記シャフト部に接続されて前記シャフト部を回転させる回転駆動力を発生するモーターとを備えた、駆動装置と
を備え、
前記モーターの出力軸は、前記シャフト部側へ前記減速機側から延びる出力軸部と略平行である、
調整用セット。
【請求項2】
前記シャフト部側へ前記減速機側から延びる前記出力軸部の軸線方向において前記出力軸部の基端側を基端方向と定義するとき、
前記モーターの前記出力軸は、前記モーター本体から前記基端方向に延出し、
前記減速機の入力軸は、前記減速機本体から前記基端方向に延出し、
前記モーターの前記出力軸と前記減速機の前記入力軸とは略平行であり、動力伝達部材を介して接続されている
請求項1に記載の調整用セット。
【請求項3】
前記減速機は、波動歯車装置を備えている、
請求項2に記載の調整用セット。
【請求項4】
前記取付部は、前記シャフト部側へ前記減速機側から延びる前記出力軸部の軸線方向に略直交する案内方向に開いた開放部を有し、
前記駆動装置を前記取付部に取り付けるべく前記駆動装置の被案内部が前記取付部の案内部に沿って案内されているとき、前記開放部に前記出力軸部が前記案内方向において進入するように、前記案内部及び前記被案内部は構成されていて、
前記出力軸部の軸線に直交する仮想面において、前記出力軸部の前記軸線と前記モーターの前記出力軸の軸線とをつなぐ方向は、前記案内方向と非平行である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の調整用セット。
【請求項5】
前記出力軸部は、前記シャフト部を支持するシャフト支持部を備え、
前記シャフト支持部の軸線方向において、前記シャフト部は進退可能である、
請求項1に記載の調整用セット。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、既設の鉄骨柱の上方の端部に新設の鉄骨柱を接合する際にそれらのエレクションピースを仮固定する治具に対して用いられる調整用セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既設の鉄骨柱の上方の端部に新設の鉄骨柱を接合する際にそれらの位置合わせと仮止めのために、その既設の鉄骨柱の上端に周方向に離してエレクションピースを設けるとともに、新設の鉄骨柱の下端に周方向に離してエレクションピースを設けている。まず、既設の鉄骨柱のエレクションピースと新設の鉄骨柱のエレクションピースとを位置合わせして仮止めし、溶接でそれら既設の鉄骨柱と新設の鉄骨柱とを接合することが行われる。溶接後、それらのエレクションピースは一般に撤去される。
【0003】
既設の鉄骨柱のエレクションピースと、それに対応するその上方に位置する新設の鉄骨柱のエレクションピースとを仮止めするときに用いるシステムの一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1が開示するシステムのセットは、調節治具である建て方治具と、この建て方治具の上部に取り付けられる駆動装置とを備える。建て方治具は、既設の鉄骨柱のエレクションピースが差し込まれるスリットと、新設の鉄骨柱のエレクションピースが差し込まれるスリットと、上下方向(Z軸方向)の調整ボルトと、転倒防止ボルトと、目違い調整用ボルトと、微調カムと、調整クサビとを備える。駆動装置は、この建て方治具の上部に取り付けられた駆動装置用荷台に載置される。駆動装置は前述の調整ボルトを回転させるようにモーター、減速機、回転軸部、及び、ユニバーシャルシャフトを備える。建て方治具の上部に取り付けられた駆動装置用荷台の四角形状の孔からユニバーシャルシャフトが下方に延びるように、駆動装置はその荷台に載置される。これにより、その荷台の四角形状の孔から下方に延びるユニバーシャルシャフトを、建て方治具の調整ボルトの頭部に嵌合させることができる。この駆動装置には、パーソナルコンピュータ等の制御装置が電気的に接続される。制御装置には、計測データを入力し、その計測データと基準値との相違を少なくする方向にモーターを必要数回転させて、Z軸方向の調整ボルトを回転させる制御信号を出力させるプログラムが組み込まれている。このようにして構成されるシステムでは、既設の鉄骨柱のエレクションピースと新設の鉄骨柱のエレクションピースに装着した上記建て方治具のZ軸方向の調整ボルトをユニバーシャルシャフトを介して必要数回転させて、新設の鉄骨柱を基準値内に建て入れ調整することが行われる。
【0004】
そして、特許文献2は、上記特許文献1のセットに対して、既設の鉄骨柱の上方の端部に新設の鉄骨柱を接合する際に上記調整ボルトを駆動する駆動装置の取付性を改善することに向けられている調整用セットを開示する。特許文献2に開示する調整用セットは、既設の鉄骨柱のエレクションピースと、その既設の鉄骨柱の上部に設けられる新設の鉄骨柱のエレクションピースとを仮固定する調節治具の上部に着脱自在に設けられ、案内部を備えた取付部と、その取付部に取り付けられる駆動装置とを備える。駆動装置は、調節治具の調整ボルトを回転駆動するように調整ボルトに嵌合可能であるシャフト部と、取付部の案内部により案内可能である被案内部とを備える。この構成により、駆動装置の被案内部を取付部の案内部に沿って案内させることで、駆動装置を調節治具に対して容易に取り付けることを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-121438号公報
【特許文献2】特開2022-182343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献2における調整用セットを使用する鉄骨柱の更なる重量化などに対応するため、モーターからシャフト部への駆動力の伝達効率を更に高めることが期待される。そこで、本開示の目的は、既設の鉄骨柱の上方の端部に新設の鉄骨柱を接合する際にそれらのエレクションピースを仮固定する調節治具の調整ボルトへの駆動力の伝達を改善することを可能にする構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、
既設の鉄骨柱のエレクションピースと、前記既設の鉄骨柱の上部に設けられる新設の鉄骨柱のエレクションピースとを仮固定する調節治具に着脱自在に設けられる取付部と、
前記取付部に取り付けられる駆動装置であって、前記調節治具の調整ボルトを回転駆動するように前記調整ボルトに嵌合可能であるシャフト部と、減速機を介して前記シャフト部に接続されて前記シャフト部を回転させる回転駆動力を発生するモーターとを備えた、駆動装置と
を備え、
前記モーターの出力軸は、前記シャフト部側へ前記減速機側から延びる出力軸部と略平行である、
調整用セット
を提供する。
【0008】
上記構成によれば、駆動装置のモーターの出力軸は、シャフト部側へ減速機側から延びる出力軸部と略平行になる。これにより、モーターの回転駆動力を効率よくシャフト部側へ伝達することが可能になる。よって、上記調整用セットは、モーターのトルク伝達に優れ、高い機械効率を発揮することができる。したがって、上記一態様の調整用セットによれば、例えばモーターの出力軸が上記出力軸部に対して直角である場合に比して、調節治具の調整ボルトへの駆動力の伝達を改善することができる。
【0009】
好ましくは、前記シャフト部側へ前記減速機側から延びる前記出力軸部の軸線方向において前記出力軸部の基端側を基端方向と定義するとき、前記モーターの前記出力軸は、前記モーター本体から前記基端方向に延出し、前記減速機の入力軸は、前記減速機本体から前記基端方向に延出し、前記モーターの前記出力軸と前記減速機の前記入力軸とは略平行であり、動力伝達部材を介して接続されているとよい。この構成によれば、モーターと減速機との間の動力伝達部材を、例えば1本の環状ベルトのみとすることができ、駆動装置におけるモーターと減速機とのよりコンパクトな配置が可能になる。
【0010】
好ましくは、前記減速機は、波動歯車装置を備える。波動歯車装置は、例えば、楕円形状を有し周囲にベアリングを有する入力部材と、外周に歯を有するリング状部を備え、前記入力部材の前記ベアリングの外輪とともに弾性変形可能である出力部材と、前記出力部材の前記外歯と異なる数の内歯を有する固定部材とを備える。この場合、前記減速機の入力軸は、前記入力部材に設けられ、前記シャフト部は、前記出力部材に接続され得る。この波動歯車装置を備える減速機によれば、トルク伝達効率をより一層向上させることができる。
【0011】
好ましくは、前記取付部は、前記シャフト部側へ前記減速機側から延びる前記出力軸部の軸線方向に略直交する案内方向に開いた開放部を有し、前記駆動装置を前記取付部に取り付けるべく前記駆動装置の被案内部が前記取付部の案内部に沿って案内されているとき、前記開放部に前記出力軸部が前記案内方向において進入するように、前記案内部及び前記被案内部は構成されていて、前記出力軸部の軸線に直交する仮想面において、前記出力軸部の前記軸線と前記モーターの前記出力軸の軸線とをつなぐ方向は、前記案内方向と非平行であるとよい。この構成によれば、案内方向に対して非平行の関係で、高い自由度を有して、モーターと出力軸部つまり減速機を配置することができる。例えば、案内方向に対して斜めに並べて、モーターと出力軸部を配置することができる。よって、例えば出力軸部の上記基端方向に配置される減速機とモーターとの配置空間をコンパクトに構成することが可能になる。
【0012】
好ましくは、前記出力軸部は、前記シャフト部を支持するシャフト支持部を備え、前記シャフト支持部の軸線方向において、前記シャフト部は進退可能であるとよい。この構成によれば、調節治具への調整用セットの取付時又は取外し時に、例えばシャフト部が調節治具に衝突することを、より好適に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の上記態様によれば、上記構成を備えるので、既設の鉄骨柱の上方の端部に新設の鉄骨柱を接合する際にそれらのエレクションピースを仮固定する調節治具の調整ボルトへの駆動力の伝達を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】鉄骨工事の自動化施工方法の一例を説明するための図である。
図2】鉄骨柱への建て起こしセットの取り付けを説明するための図であり、(a)はエレクションピースの取付状態を示し、(b)は調節治具である建て起こし治具の取付状態を示す。
図3】鉄骨柱に取り付けられた建て起こしセットを示す図である。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5】一実施形態に係る調整用セットの斜視図である。
図6図2の建て起こしセットに図5の調整用セットを取り付ける流れを示す図であり、(a)は取付部の取り付けを、(b)は取付部への駆動装置の取り付けを、(c)は駆動装置のシャフト部の建て起こし治具への嵌合を示す。
図7】鉄骨柱に取り付けられた調整用セットを示す図である。
図8図5の調整用セットにおいて、カバー部材を外した駆動装置と取付部とを示す図である。
図9図8に示す一部部材を取り外した調整用セットの取付部及び駆動装置の一部の平面図である。
図10図9の調整用セットの取付部及び駆動装置の一部の側面図である。
図11】シャフト部の図であり、(a)はシャフト部の正面図であり、(b)はその右側面図である。
図12図5の調整用セットにおける、シャフト支持部を示す図であり、(a)はシャフト支持部の軸線方向に沿った断面図であり、(b)はその端面の図であり、(c)は(a)のXIIC-XIIC線に沿った断面図である。
図13図5の調整用セットの駆動装置においてシャフト部が突出状態にあるところを示す図であり、(a)は部分断面図であり、(b)は(a)のXIIIB-XIIIB線に沿った拡大断面図である。
図14図5の調整用セットの駆動装置においてシャフト部が後退位置にあるところを示す図であり、(a)は部分断面図であり、(b)は(a)のXIVB-XIVB線に沿った拡大断面図である。
図15】取付部への駆動装置の取り付け又は取り外し途中を示す斜視図である。
図16】駆動装置の被案内部と取付部の案内部との案内関係を示す図であり、(a)は案内開始のときの図であり、(b)は案内完了のときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示に係る実施形態を添付図に基づいて説明する。同一の部品(又は構成)には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0016】
まず、本開示の一実施形態に係る調整用セットSを用いた鉄骨工事の自動化施工方法の一例を簡単に説明する。図1に示すように、新設の鉄骨柱1をタワークレーン等の揚重装置(不図示)で吊り上げて、図1に示すように、構築中の建物の所定の位置に、ここでは既設の鉄骨柱1cの上部に搬入して、新設の鉄骨柱1を鉛直方向に起立させる。一方、計測する鉄骨柱1の頂部に設けられた反射プリズム1pよりも高い位置にトータルステーション(Total Station:TS)2が設けられている。鉄骨柱1の上部に取り付けた反射プリズム1pは、トータルステーション2に向き合うように方向を設定されている。したがって、トータルステーション2の位置を基準点として、建て入れ調整する対象の鉄骨柱1における反射プリズム1pの位置をトータルステーション2で計測することができる。そして、目標値との誤差が所定の範囲内に収まるように、鉄骨柱1に設けた建て起こしセット4及び調整用セットSで、鉄骨柱1を建て入れ調整する。なお、トータルステーション2は、測量器機の一つであって、自己位置計測部を備え、距離を測る光波測距儀と角度を測るセオドライトを組み合わせ、角度と距離を同時に観測できるものである。また、トータルステーション2は、コンピュータとしての構成を備え、測量結果を自動的に記憶でき、制御装置と通信してデータ送受信も可能である。
【0017】
この鉄骨工事の自動化施工方法における、調整用セットSの適用例について以下で更に詳しく説明する。まず、調整用セットSのセッティングの前段階について説明する。
【0018】
既設の鉄骨柱1cの上部に設置した鉄骨柱1に関して図2(a)、(b)に示す建て起こしセット4を装着する。この建て起こしセット4は、エレクションピース5a、5bと、これらに取り付けられる調節治具である建て方治具6とを備える。エレクションピース5a、5bは、図2(a)に示すように、新設の鉄骨柱1と前節のつまり既設の鉄骨柱1cとの上下接合箇所に固着されている。なお、鉄骨柱1、1cの4面の各面に関してエレクションピース5a、5bが設けられる。ここでは、各面に関して1組のエレクションピース5a、5bが設けられるが、各面に関して複数組のエレクションピース5a、5bが設けられてもよい。
【0019】
図2(b)に示すように、1組のエレクションピース5a、5bに、調節治具である建て方治具6(一例として、市販の治具である建て方エース(登録商標))を装着させる。建て方治具6は、治具本体6zの対応するねじ孔にそれぞれ螺合される、上下方向(Z軸方向)の調整ボルト6aと、転倒防止ボルト6bと、目違い調整用ボルト6cと、微調カム6dと、調整クサビ6eとを備える。さらに、建て方治具6は、治具本体6zにそれぞれ設けられる、新設の鉄骨柱1のエレクションピース5aが差し込まれる第1のスリット6fと、既設の鉄骨柱1のエレクションピース5bが差し込まれる第2のスリット6gとを備える。一般に、第1のスリット6fに鉄骨柱1のエレクションピース5aを差し込んだ後、第2のスリット6gに鉄骨柱1cのエレクションピース5bを差し込むことが行われる。この過程で、左右方向に延びる目違い調整用ボルト6cで、エレクションピース5a、5bが挟まれ、鉄骨柱1cに対する鉄骨柱1の目違い、例えば左右方向のずれを調整することができる。また、建て方治具6の下部において上方に向けて延びる転倒防止ボルト6bでエレクションピース5a、5bの一体的な締め付けを行うことができる。こうして、エレクションピース5a、5bと建て方治具6とを備える建て起こしセット4が鉄骨柱1、1cの各面に取り付けられたところを図3及び図4に示す。なお、調整ボルト6aは、図3に示すように、調整クサビ6e上の微調カム6dに作用し、例えば鉄骨柱1cに対する鉄骨柱1の倒れ調整(図3の矢印A1、A2参照)を行うことを可能にする。
【0020】
図5に、上記建て起こしセット4の上部に取り付けられる調整用セットSの斜視図を示す。調整用セットSは、取付部10と、駆動装置12とを備える。
【0021】
調整用セットSの詳細な説明は後述するので、ここでは調整用セットSについて簡単に説明する。図6(a)に示すように、建て起こしセット4の建て方治具6の上部に調整用セットSの取付部10が着脱自在に取り付けられる。取付部10は、台部14と、台部14の下面側の支持枠16とを備える。支持枠16は、建て方治具6の上部及びエレクションピース5aの一部をその内部に収容するように建て方治具6の構成及びエレクションピース5aの形状に応じた形状を有する。支持枠16は建て方治具6の上部をその内部に収容するようにその上に載置され、これにより、取付部10は建て方治具6の上部に設けられる。なお、支持枠16の側部などにボルトB(図5参照)といった締結部材を設けて、このボルトBで支持枠16は建て方治具6に固定される。そして、図6(b)に示すように、この支持枠16を備える取付部10に駆動装置12が取り付けられる。
【0022】
駆動装置12は、建て方治具6の調整ボルト6aを回転駆動させる装置である。駆動装置12は調整ボルト6aの頭部に嵌合可能であるシャフト部であるユニバーシャルシャフト20を備える。ユニバーシャルシャフト20は図5及び図6(b)、(c)に示すように、駆動装置12の本体部12Bから下方に延出して突出している。そこで、駆動装置12を取付部10に取り付けるとき、そのユニバーシャルシャフト20の先端部が建て方治具6に衝突しないように、図6(b)に示すように、ユニバーシャルシャフト20は駆動装置20内に少なくとも部分的に後退させられる。駆動装置12を取付部10に取り付けた後、そのユニバーシャルシャフト20を図6(b)の矢印に従い、後退位置から突出状態になるように延出させる。これにより、図6(c)に示すように、ユニバーシャルシャフト20は駆動装置12から十分に突出し、その先端部20bは建て方治具6の調整ボルト6aの頭部のボルト穴に嵌合することができる。この調整用セットSは、鉄骨柱1、1cの4面のエレクションピース5a、5b及び建て方治具6のそれぞれに対して設けられる(図7参照)。なお、図3と同様に、図7では、鉄骨柱1、1cの裏側(紙面裏側)の建て起こしセット4及び調整用セットSは鉄骨柱1、1cにより隠れている。ただし、前述のように、鉄骨柱1、1cの各面に関して設けられるエレクションピース5a、5bの数は1組でも複数組でもよく、また、これらに取り付けられる建て方治具6においても同様であり、また、鉄骨柱1、1cの各面に設けられる調整用セットSの数は、1つでも複数でもよい。そして、調整用セットSは、鉄骨柱1、1cの4面に必ず設けられることに限定されず、4面のうち、直交関係にある2面に少なくとも設けられるとよい。
【0023】
図8に、カバー部材12aを外した駆動装置12及び取付部10を示す。駆動装置12は、ユニバーシャルシャフト20の駆動用にモーター22を備える。駆動装置12には、モーター22の駆動用のドライバ24が搭載されている。このドライバ24は通信機能を有し、カバー部材12aに外付けされた制御装置24C(図5参照)と電気的に接続される。この制御装置24Cは、コンピュータであり得、通信機能を有し、前述のモバイルコンピュータCと通信をすることができ、モバイルコンピュータCからの指令により、駆動装置12のドライバ24に作動信号を送信することができる。モバイルコンピュータCは、トータルステーション2から取得した計測データと目標値(基準値)との相違を少なくする方向にモーター22を必要数回転させる制御信号を出力させるプログラムが組み込まれている。したがって、モバイルコンピュータCは、鉄骨柱1、1cに設けた4つの建て起こしセット4のうちの1つ又は複数の建て方治具6の、上下方向を微調整するねじ手段である調整ボルト6aをユニバーシャルシャフト20を介して必要数回転させて、鉄骨柱1を基準値内に建て入れ調整することができる。
【0024】
そして、それらの後、例えばある階層の鉄骨柱の全部の建て入れ調整が終了した後に、調整用セットSを外した状態の鉄骨柱1cと鉄骨柱1との溶接工事などを行う。その後、建て方治具6を撤去して他に転用し、各鉄骨柱のエレクションピース5a、5bを切断して撤去する。
【0025】
なお、モバイルコンピュータC及び/又は制御装置24Cには、駆動装置12を取り付けてそのユニバーシャルシャフト20の先端部20bを調整ボルト6aの頭部に嵌合させたとき、肌合わせ処理用にモーター22を駆動させる制御信号を出力させるプログラムも組み込まれている。肌合わせ処理は、駆動装置12のユニバーシャルシャフト20の先端部20bと調整ボルト6aとの間の遊びなどを除去するための処理である。また、モバイルコンピュータC及び/又は制御装置24Cには、駆動装置12を取り外すとき、調整ボルト6aの頭部と先端部20bとの嵌合状態を緩める処理用にモーター22を駆動させる制御信号を出力させるプログラムも組み込まれている。駆動装置12の作動等によりユニバーシャルシャフト20が調整ボルト6aの頭部に噛み込むように嵌合した場合にも、取り外し時に駆動装置12を容易に取り外せるように、駆動装置12を取り外すとき、調整ボルト6aを動かさない範囲で駆動装置12のモーターは動かされるとよい。
【0026】
このように、本実施形態に係る調整用セットSが鉄骨柱1、1cの建て入れ作業に用いられる。調整用セットSの構成及びそれの建て起こしセット4への取り付けについて、以下詳述する。
【0027】
まず、調整用セットSの駆動装置12について説明する。図8に示すように、駆動装置12は、前述のユニバーシャルシャフト20、モーター22及びドライバ24の他、減速機26及び環状ベルト28を備える。モバイルコンピュータCからの作動信号によりドライバ24が作動することで、モーター22が作動する。モーター22は、ここではステッピングモータであるが、他の種類のモーターであってもよい。モーター22からの回転駆動力は、動力伝達部材の一例であるベルト28を介して減速機26に伝達されて、減速機26で減速される。減速機26の出力側に設けられたシャフト支持部30は、減速機26の回転軸線に一致するように、減速機26の下方に同軸に設けられている。
【0028】
シャフト支持部30はここでは略筒形状の部材により構成されていて、その長手方向に延びる軸線30aを定めることができる。シャフト支持部30は、シャフト部であるユニバーシャルシャフト20側へ減速機26側から延びる出力軸部に相当し、よってシャフト支持部30の軸線30aは出力軸部の軸線に相当する。
【0029】
ここで、図8において、第1方向D1、第2方向D2及び第3方向D3を定義する。これらの方向は互いに直交する。図7に示すような使用状態の時、第1方向D1は上下方向であり、第2方向D2は奥行き方向であり、好ましくは略水平方向である。第1方向D1及び第2方向D2に直交する第3方向D3は、図7に示すような使用状態の時、略水平方向であり、ここでは幅方向と称する。以下の説明では、これらの方向D1、D2、D3に加えて、例えば「上」「下」の用語を用いるが、これらの用語は図7に示すような使用状態のときの方向に対応する。
【0030】
図8においてドライバ24を取り外して、第1方向D1において上側から取付部10及び駆動装置12の一部を見た平面図を、図9に示す。また、図9に示す取付部10及び駆動装置12の一部の側面視を図10に示す。ただし、図10は、部分断面図であり、例えばシャフト支持部30及びユニバーシャルシャフト20は断面で示す。
【0031】
図8から図10に示すように、モーター22の出力軸23は、第1方向D1に延び、より具体的には上側に延びている。そして、減速機26の入力軸36及び出力軸部であるシャフト支持部30は第1方向D1に延び、それら入力軸36の軸線36a及びシャフト支持部30の軸線30aは減速機26の軸線方向に延び、第1方向D1に平行に延びている。したがって、モーター22の出力軸23は、ユニバーシャルシャフト20側へ減速機26側から延びるシャフト支持部30と略平行である。
【0032】
また、図10に示すように、シャフト支持部30の軸線30aの方向つまり第1方向D1においてシャフト支持部30の上側端部つまり基端30u側を基端方向D1aと定義するとき、モーター22の出力軸23は、モーター本体22Bから基端方向D1aに延出する。一方、減速機26の入力軸36は、減速機本体26Bから基端方向D1aに延出している。このように、モーター22の出力軸23の延出方向と、減速機26の入力軸36の延出方向とは同じ側である。そして、モーター22の出力軸23と減速機26の入力軸36とは略平行であり、動力伝達部材であるベルト28を介して接続されている。つまり、モーター22の出力軸23のプーリー23bと、減速機26の入力軸36のプーリー36bとは、第1方向D1つまり上下方向で概ね同じ高さに位置し、それらプーリー23b、36bにベルト28が巻回されている。なお、プーリー23bの直径は、プーリー36bの直径よりも小さい。
【0033】
更に、図9に示すように、減速機26とモーター22とは第2方向D2に真っすぐ並ぶのではなく、ずれている。したがって、シャフト支持部30の軸線30aに直交する仮想面の一例に実施的に対応する図9において、シャフト支持部30の軸線30a又は減速機26の入力軸36の軸線36aと、モーター22の出力軸23の軸線23aとをつなぐ方向D4は、第2方向D2と非平行であり、第2方向D2に対して斜めに延びる。なお、図7に示すような調整用セットSの使用状態の時、奥行き方向である第2方向D2において、モーター22は減速機26よりも手前側つまり鉄骨柱1から離れた位置に位置する(図7図9参照)。
【0034】
ここで減速機26について説明する。減速機26は、波動歯車装置を備えている。具体的には、減速機26は、株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズの波動歯車装置、例えばハーモニックドライブ(登録商標)である。一例としての構成例を説明すると、減速機26は、入力部材32と、出力部材34と、固定部材(不図示)とを備える。入力部材32は、楕円形状を有し、楕円状カムと称され得、その周囲にベアリングを有する。ベアリングの内輪は楕円状カムに固定されている。そのベアリングの外輪はベアリングのボールを介して弾性変形する。出力部材34は、外周に歯を有するつまり周方向に延びる外周面に歯が刻まれているリング状部(円筒部)を備え、例えば薄肉カップ状の弾性部材である。カップ状の出力部材34内には、入力部材32が収容される。出力部材34は、薄肉であるので、入力部材32の周囲のベアリングの外輪とともに弾性変形可能である。固定部材は、出力部材34の外歯と異なる数の内歯を有する。つまり、固定部材は、リング状部材である。その固定部材内に出力部材34は配置される。なお、固定部材は、減速機26のケーシング26aに固定されている。そして、減速機26の入力軸36は、入力部材32に一体になるように設けられる。また、出力軸部であるシャフト支持部30は、出力部材34に一体になるように設けられる。減速機26において、入力軸36の軸線36aとシャフト支持部30の軸線30aとは略一致し、略平行であり、減速機26の軸線に概ね一致する。なお、入力部材32は、所謂ウェーブ・ジェネレータであり、出力部材34は所謂フレクスプラインであり、そして、固定部材は所謂サーキュラ・スプラインである。よく知られているように、この構成を備える減速機26は、トルク伝達効率に優れる。
【0035】
図11に、シャフト部であるユニバーシャルシャフト20を示す。図11(a)及び(b)は、ユニバーシャルシャフト20の正面図及び右側面図である。ユニバーシャルシャフト20は、長手方向に延びる略棒状の部材であり、長手方向に延びる軸線20aを有する。ユニバーシャルシャフト20は左右対称に形成されていて、両端部20b、20cは同じ形状を有する。ユニバーシャルシャフト20の端部20b、20cは略球状であるとともに、図11(b)に示すように軸線20a方向から見て正六角形の形状を有する。このユニバーシャルシャフト20は、図12から図14に基づいて以下説明するようにねじ部材40、42によりシャフト支持部30に取り付けられる。
【0036】
図12(a)は、シャフト支持部30の軸線30aに沿ったシャフト支持部30の断面図である。図12(b)は、図12(a)のシャフト支持部30の右端の部分のみの側面図である。また、図12(c)は、図12(a)のシャフト支持部30のXIIC-XIIC線に沿った位置での、シャフト支持部30の断面図である。図12(a)のシャフト支持部30の右端の部分は、雄ねじ部30sを有して形成されていて、出力部材34の雌ねじ部(図13及び図14参照)へ取り付けられる部分である。なお、出力部材34へのシャフト支持部30の取り付けは、このようなねじ係合に限定されず、ねじ係合に代えて又はねじ係合とともに、溶接等の他の取付手段が採用されてもよい。このシャフト支持部30は、断面六角形の内壁面30bを有する図12(a)の左側の部分(以下、回転規制部)30cと、係合構造を有する図12(a)の右側の部分(以下、回転許容部)30dとを備える。回転許容部30dは回転規制部30cの内壁面30bを径方向外側に部分的に拡張した形状を有し、断面六角形のユニバーシャルシャフト20の端部20b、20cがシャフト支持部30の軸線30a周りに回転することを許容する。回転許容部30dでは、ユニバーシャルシャフト20はシャフト支持部30の軸線30a周りに角度θ回転することができる。角度θはここでは30°であるが、この角度に限定されない。回転規制部30cと回転許容部30dとの間の段部30eが、係合部に相当する。
【0037】
したがって、ユニバーシャルシャフト20の端部20b、20cのいずれかがシャフト支持部30の回転規制部30cにあるとき、シャフト支持部30の軸線30a周りにユニバーシャルシャフト20は実質的に回転することはできない。なお、シャフト支持部30の回転規制部30cには、図12(a)、(c)に示すようにねじ孔30p、30qが設けられている。ねじ孔30p、30qは、軸線30aに直交する1つの仮想面上に形成され、軸線30aの対角線上に設けられている。特に、ねじ孔30p、30qは、内壁面30bの断面六角形の角部に設けられている。ねじ孔30p、30qには、シャフト支持部30の内壁面30bから軸線30a側に突き出るようにねじ部材40、42が螺合される(図13(a)及び図14(a)参照)。これらねじ部材40、42を設けることで、ユニバーシャルシャフト20の両端部20b、20cはそれぞれシャフト支持部30の回転規制部30cを通過不能になる。つまり、ユニバーシャルシャフト20の両端部20b、20c間の中間部20dは、ねじ部材40、42に移動が制限されることなくシャフト支持部30をその軸線30a方向に動くことができるように、両端部20b、20cよりも小さな断面積を有して形成され、ここでは断面円形の部分として構成されている。
【0038】
そして、シャフト支持部30内には、弾性部材としてのばね部材38が挿入される。ばね部材38は付勢部材である。ユニバーシャルシャフト20の長手方向のつまり軸線20a方向の長さは、シャフト支持部30の軸線30a方向の長さよりも長い。そこで、ユニバーシャルシャフト20の突き出ている端部20bが突き出たまま、シャフト支持部30のねじ孔30p、30qにねじ部材40、42をねじ込む。これにより、ユニバーシャルシャフト20はシャフト支持部30において保持され、その先端部20bが突き出る方向にばね部材38により付勢されている状態になる。
【0039】
図13に、ユニバーシャルシャフト20が突き出た突出状態にあるところを示す。なお、突出状態とは、図14に示す後退位置よりもユニバーシャルシャフト20が突出している状態であり、シャフト支持部30の回転規制部30c内にユニバーシャルシャフト20の一方の端部20cが位置している状態である。図13(a)はシャフト支持部30の軸線30aに沿ったその周囲の駆動装置12の一部の断面図であり、突出状態にあるユニバーシャルシャフト20を示す。また、図13(b)は図13(a)のXIIIB-XIIIB線に沿った断面図であり、ユニバーシャルシャフト20が回転規制部30cの断面六角形形状の内壁面30bに即した位置にあるところを示す。ユニバーシャルシャフト20が突出状態にあるとき、シャフト支持部30内のユニバーシャルシャフト20の端部20cは回転規制部30cに位置する。したがって、ユニバーシャルシャフト20はシャフト支持部30の軸線30a周りにおいて回転できない。よって、ユニバーシャルシャフト20のもう一方の端部20bが建て方治具6の調整ボルト6aの頭部のボルト穴に嵌合するとき、調整ボルト6aにモーター22からの回転駆動力を適切に伝達することができる。なお、ユニバーシャルシャフト20が突出状態にあるとき、ユニバーシャルシャフト20の端部20cは回転規制部30cにおいてばね部材38の付勢力を受けている。したがって、ユニバーシャルシャフト20が突出状態にあって、かつ、その端部20bが調整ボルト6aに嵌合しているとき、調整ボルト6aと駆動装置12との相対的な位置関係により定まる回転規制部30cにおける位置(以下、嵌合位置)に、ユニバーシャルシャフト20の端部20cは位置付けられる。このように、ユニバーシャルシャフト20の端部20cの嵌合位置は、シャフト支持部30の回転規制部30cの軸線30a方向において変動し得る。
【0040】
図14に、ユニバーシャルシャフト20がシャフト支持部30内において後退した後退位置に係合されているところを示す。図14(a)はシャフト支持部30の軸線30aに沿ったその周囲の駆動装置12の一部の断面図であり、後退位置にあるユニバーシャルシャフト20を示す。また、図14(b)は図14(a)のXIVB-XIVB線に沿った断面図であり、ユニバーシャルシャフト20の端部20cが回転許容部30dに位置するとともに、係合部である段部30eに係合状態にあるところを示す。ユニバーシャルシャフト20が後退位置に係合されているとき、シャフト支持部30内のユニバーシャルシャフト20の端部20cは回転許容部30dに位置する。そして、端部20cが回転規制部30cを進退可能な状態から、ユニバーシャルシャフト20はシャフト支持部30の軸線30a周りに所定の方向に所定角度回転される(図14(b)参照)。ここでは、端部20cが六角形形状を有するので、上述のように所定角度は30°である。よって、駆動装置12の取り付け時、建て方治具6の調整ボルト6aの頭部からユニバーシャルシャフト20の端部20bが所定距離以上離れるほど、ユニバーシャルシャフト20はシャフト支持部30内に引っ込んだ状態に保持される。
【0041】
次に、調整用セットSの取付部10について、主に図15及び図16に基づいて説明する。取付部10は、前述のように、既設の鉄骨柱1cのエレクションピース5bと、既設の鉄骨柱1cの上部に設けられる新設の鉄骨柱1のエレクションピース5aとを仮固定する建て方治具6の上部に着脱自在に設けられるものである。取付部10は、台部14と、台部14の下面側の支持枠16とを備える。支持枠16は、略直方体の枠形状であり、上端が台部14に面し、ここでは閉じられ、下端は開いている。図15に示すように、建て方治具6の上部及びエレクションピース5aの一部をその内部に収容するように、支持枠16は、U字状の溝部16a、16b及び細長い溝部16c、16dを備えている。これら溝部16a、16b、16c、16dは、種々の形状を有して設計され得、建て方治具6の上部及びエレクションピース5aの形状及び大きさに応じて設計されるとよい。支持枠16は建て方治具6の上部をその内部に収容するようにその上に載置され、これにより、取付部10は建て方治具6の上部に設けられる。このとき、支持枠16はある程度以上の安定性を有するように設計されていて、複数のボルトBを用いて建て方治具6に固定される。
【0042】
台部14は平板状の部分である。ここでは、台部14は台本体部50を有して構成されている。台本体部50に支持枠16は溶接等により固定されている。台本体部50は平板状である。
【0043】
台本体部50は、第1方向D1及び該第1方向D1に交差する第2方向D2に開いた開放部56を有する。前述のように、図7に示すような使用状態の時、第1方向D1は上下方向であり、第2方向D2は奥行き方向であり、好ましくは略水平方向である。なお、第1方向D1及び第2方向D2に直交する第3方向D3は、図7に示すような使用状態の時、略水平方向であり、ここでは幅方向である。開放部56はここでは略U字状の溝部であるが、他の形状を有してもよい。開放部56は、第2方向D2に開き、駆動装置12の前述のシャフト支持部30及びユニバーシャルシャフト20が進退可能に構成されている。この進退の方向、例えば進入方向は、第2方向D2に対応し、出力軸部であるシャフト支持部30の軸線30aの方向(軸線方向)に略直交する案内方向に対応する。
【0044】
図16に示すように、取付部10の台部14における台本体部50には、案内部58が設けられる。案内部58はここでは3つの案内部材60、62、64を備える。案内部材60、62、64は、それぞれ、略直方体形状であり、台本体部50上において第2方向D2に延びるように取り付けられ、それらは実質的に平行に配置されている。案内部材60は、第3方向D3において台本体部50の一端側に延び、案内部材62、64は第3方向D3において台本体部50の他端側に延び、第2方向D2に所定間隔を空けて並べられている。また、台本体部50の第2方向D2の一端部つまり開放部56とは反対側にはストッパー部材66が設けられている。これら案内部材60、62、64及びストッパー部材66は、取付部10の台部14における支持枠16とは反対側の面に設けられている。
【0045】
案内部材62、64の間には、固定用レバー部材55が配置されている。固定用レバー部材55は、案内部材62、64間において第1方向D1に延びるように定められる軸線55a周りに回転可能に構成されている部材である。固定用レバー部材55は、軸線55a周囲の固定当接部55bと、固定当接部55bから軸線55aを中心として径方向に延出する取っ手部55cとを備える。固定当接部55bは、軸線55aからの距離が一定でなく滑らかに変化する外周湾曲面55dを備える。そのため、作業者が取っ手部55cを操作して固定用レバー部材55を軸線55a周りの回転方向Rに回動させることで、固定用レバー部材55の固定当接部55bにおける案内部材62、64の内側面62a、64aよりも内側つまり案内部材60側への突出量を変化させることができる。図16(a)に示すように、取っ手部55cが第3方向D3に概ね延びるように台部14に固定用レバー部材55が位置付けられているとき、案内部材62、64の内側面62a、64aよりも内側つまり案内部材60側には、固定用レバー部材55の固定当接部55bは突出しない。これに対して、取っ手部55cを開放部56側つまり案内部材62側に位置づけ、取っ手部55cが第2方向D2に概ね延びるように固定用レバー部材55を位置付けているとき、案内部材62、64の内側面62a、64aよりも内側つまり案内部材60側に、固定用レバー部材55の固定当接部55bの一部は突出する。この固定当接部55bの突出により、図16(b)に示すように、案内部材60、62、64間に案内された駆動装置12の被案内部70を押圧固定することができる。
【0046】
この取付部10の案内部58に対応する被案内部70は、駆動装置12に設けられている。被案内部70は案内部58による案内を可能にする部分であり、ここでは2本のレール部材72、74を備える。図15に示すように2本のレール部材72、74はそれぞれ第2方向D2に延びるように第3方向D3に離して、ここでは特に平行に、駆動装置12の下面に設けられている。なお、レール部材72、74には、案内部材60、62、64の内側面60a、62a、64aが接触して滑ることができる溝部72a、74aがそれらの外側に形成されている。
【0047】
取付部10の案内部58による駆動装置12の被案内部70の案内について、図16に基づいて説明する。なお、図16では、駆動装置12は、被案内部70のレール部材72、74のみを示す。図16(a)では、まず、固定用レバー部材55を図16(a)に示すように台本体部50から張り出すように位置付ける。この状態で、作業者は駆動装置12の本体部12Bの両脇の取っ手部12c、12dをつかみ、第2方向D2つまり案内方向において、駆動装置12を取付部10に進め、被案内部70のレール部材72、74を台部14の一端に載置するとともに案内部58に沿って案内方向に進める。これにより、案内部58に沿って案内方向に被案内部70が案内され、開放部56に駆動装置12のシャフト支持部30及びユニバーシャルシャフト20が案内方向において進入するようになる。案内部58による被案内部70の案内は、駆動装置12がストッパー部材66に突き当たるまで行われてもよいが、調整ボルト6aへの嵌合に適した位置にユニバーシャルシャフト20が位置するまで行われるとよい。そして、駆動装置12が取付部10において載置されたとき、図16(b)に示す回動方向R1に固定用レバー部材55を回動させることで、被案内部70は案内部材60に対して固定用レバー部材55の固定当接部55bで押圧固定され、よって駆動装置12は取付部10に固定される。
【0048】
この取付部10への駆動装置12の取り付けのとき、作業者は、ユニバーシャルシャフト20をばね部材38の力に抗して押し上げ、シャフト支持部30内の後退位置に位置付けることができる。そして、取付部10への駆動装置12の取付が概ね完了したとき、ユニバーシャルシャフト20は図12などに示す突出状態になるとよい。これにより、ユニバーシャルシャフト20が取付部10への駆動装置12の取り付けの妨げになることを好適に回避することができ、更に、ユニバーシャルシャフト20の突出している先端部20bを、建て方治具6の調整ボルト6aに好適に嵌合させることができる(図6(b)及び(c)参照)。なお、ユニバーシャルシャフト20は中間部20dがその両端部20b、20cよりも細くされていて、シャフト支持部30の軸線30aからの振れ幅を有する。したがって、建て方治具6の調整ボルト6aに、より簡単に、ユニバーシャルシャフト20の先端部20bを嵌合させることができる。
【0049】
以下、上記構成を有する調整用セットSに関して、一部の構成と、それによる作用・効果について説明する。
【0050】
調整用セットSは、既設の鉄骨柱1cのエレクションピース5bと、その上部に設けられる新設の鉄骨柱1のエレクションピース5aとを仮固定する調節治具である建て方治具6に着脱自在に設けられる取付部10と、取付部10に取り付けられる駆動装置12とを備えている。駆動装置12は、建て方治具6の調整ボルト6aを回転駆動するように調整ボルト6aに嵌合可能であるシャフト部であるユニバーシャルシャフト20と、減速機26を介してユニバーシャルシャフト20に接続されてユニバーシャルシャフト20を回転させる回転駆動力を発生するモーター22とを備えている。そして、モーター22の出力軸23は、ユニバーシャルシャフト20側へ減速機26側から延びる出力軸部であるシャフト支持部30と略平行である。したがって、この構成によれば、例えば特許文献2の調整用セットのように、モーター22の出力軸23とシャフト支持部30とが直角の関係を有する場合に比べて、モーター22の回転駆動力の方向を実質的に変えることなく、シャフト支持部30に伝達することができるので、モーター22の回転駆動力を効率よくユニバーシャルシャフト20側へ伝達することが可能になる。よって、上記調整用セットSは、モーター22のトルク伝達に優れ、高い機械効率を発揮することができる。したがって、上記調整用セットSによれば、例えばモーター22の出力軸23がシャフト支持部30に対して直角である場合に比して、建て方治具6の調整ボルト6aへの駆動力の伝達を改善することができる。
【0051】
また、上記調整用セットSでは、シャフト支持部30の軸線30aの方向においてシャフト支持部30の基端側を基端方向D1aと定義するとき、モーター22の出力軸23は、モーター本体22Bから基端方向D1aに延出し、減速機26の入力軸36は、減速機本体26Bから基端方向D1aに延出する。そして、モーター22の出力軸23と減速機26の入力軸36とは略平行であり、動力伝達部材であるベルト28を介して接続されている。この構成によれば、モーター22と減速機26との間の動力伝達部材を、1本の環状ベルト28のみとすることができるので、モーター22と減速機26とのよりコンパクトな配置が可能になる。
【0052】
更に、減速機26は、上記のように、波動歯車装置を備える。よく知られているように、この波動歯車装置はトルク伝達効率に優れるので、駆動装置12におけるトルク伝達効率をより一層向上させることができる。
【0053】
また、取付部10はシャフト支持部30の軸線30aの方向に略直交する案内方向つまり第2方向D2に開いた開放部56を有する。駆動装置12を取付部10に取り付けるべく被案内部70が案内部58に沿って案内されているとき、開放部56にシャフト支持部30が案内方向において進入するように、案内部58及び被案内部70は構成されている。そして、シャフト支持部30の軸線30aに直交する仮想面(例えば図9の紙面に平行な面)において、シャフト支持部30の軸線30aとモーター22の出力軸23の軸線23aとをつなぐ方向D4は、案内方向つまり第2方向D2と非平行である。この構成によれば、案内方向に対して非平行の関係で、高い自由度を有して、モーター22とシャフト支持部30を配置することができる。上記調整用セットSでは、案内方向つまり第2方向D2に対して斜めに並べてモーター22とシャフト支持部30を配置することができる。よって、例えばシャフト支持部30の基端方向に配置される減速機26とモーター22との配置空間をコンパクトにすることが可能になる。
【0054】
更に、シャフト支持部30の軸線30aの方向において、ユニバーシャルシャフト20は進退可能である。この構成によれば、建て方治具6への調整用セットSの取付時又は取外し時に、ユニバーシャルシャフト20が建て方治具6に衝突することなどを、より好適に防ぐことができる。
【0055】
更に、通信機能を有してモバイルコンピュータCと通信する制御装置24Cは、駆動装置12のカバー部材12aの外側に設けられている。したがって、モーター22の制御ノイズなどが、モバイルコンピュータCと制御装置24Cとの通信に影響することを防ぐことができる。なお、駆動装置12は、モーター22等の駆動のために、外部電源(不図示)からのプラグ差込部P(図12参照)を有し、外部電源からの電力でモーター22等を作動させることができる。したがって、駆動装置12の軽量化を図ることができる。なお、駆動装置12は、外部電源につなげることに加えて、あるいはそれに代えて、内臓バッテリー電源及び/又は外付けバッテリー電源を備えてもよい。
【0056】
以上、本開示に係る実施形態及びその変形例について説明したが、本開示はそれらに限定されない。本願の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1、1c 鉄骨柱
2 トータルステーション
4 建て起こしセット
5a、5b エレクションピース
6 建て方治具(調節治具)
6a 調整ボルト
6b 転倒防止ボルト
6c 目違い調整用ボルト
6d 微調カム
6e 調整クサビ
10 取付部
12 駆動装置
14 台部
16 支持枠
20 ユニバーシャルシャフト
22 モーター
26 減速機
30 シャフト支持部(出力軸部)
50 台本体部
56 開放部
58 案内部
70 被案内部
72、74 レール部材
S 調整用セット


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16