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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142650
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】浸炭用鋼
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20241003BHJP
   C22C 38/22 20060101ALI20241003BHJP
   C22C 38/54 20060101ALI20241003BHJP
   C23C 8/20 20060101ALI20241003BHJP
   C21D 8/06 20060101ALN20241003BHJP
   C21D 1/06 20060101ALN20241003BHJP
   C21D 9/32 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
C22C38/00 301N
C22C38/22
C22C38/54
C23C8/20
C21D8/06 A
C21D1/06 A
C21D9/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054887
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 健史
(72)【発明者】
【氏名】林 幸宏
【テーマコード(参考)】
4K028
4K032
4K042
【Fターム(参考)】
4K028AA01
4K028AB01
4K032AA01
4K032AA02
4K032AA05
4K032AA09
4K032AA11
4K032AA12
4K032AA14
4K032AA16
4K032AA19
4K032AA21
4K032AA22
4K032AA23
4K032AA26
4K032AA27
4K032AA29
4K032AA31
4K032AA32
4K032AA35
4K032AA36
4K032BA02
4K032CA03
4K032CF03
4K042AA18
4K042BA03
4K042BA04
4K042CA02
4K042CA04
4K042CA05
4K042CA06
4K042CA08
4K042CA09
4K042CA10
4K042CA12
4K042CA13
4K042DA01
4K042DA02
4K042DC02
4K042DC03
4K042DC04
4K042DD03
4K042DE02
(57)【要約】
【課題】低廉でありながら、ガス浸炭を経て、高い曲げ疲労強度と面疲労強度を両立することができる浸炭用鋼を提供する。
【解決手段】質量%で、0.10%≦C≦0.30%、0.50%≦Si≦1.20%、0.05%≦Mn≦0.80%、0.30%≦Cr≦2.00%、0.01%≦Mo≦0.40%、0.02%≦Al≦0.10%を含有し、P≦0.030%、S≦0.030%、Cu≦0.3%であり、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、下記の式(1)および式(2)を満たす浸炭用鋼とする。
Cr/Mn-0.6Si≧2.0 (1)
Cr-1.82Si≧-0.7 (2)
式(1)および式(2)において、各元素記号は、質量%を単位とした各元素の含有量を示す。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
0.10%≦C≦0.30%、
0.50%≦Si≦1.20%、
0.05%≦Mn≦0.80%、
0.30%≦Cr≦2.00%、
0.01%≦Mo≦0.40%、
0.02%≦Al≦0.10%を含有し、
P≦0.030%、
S≦0.030%、
Cu≦0.3%であり、
残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、
下記の式(1)および式(2)を満たす、浸炭用鋼。
Cr/Mn-0.6Si≧2.0 (1)
Cr-1.82Si≧-0.7 (2)
前記式(1)および式(2)において、各元素記号は、質量%を単位とした各元素の含有量を示す。
【請求項2】
さらに、質量%で、
0%<Ni≦0.30%、
0%<Nb≦0.05%、
0%<Ti≦0.05%、
0%<B≦0.005%
の少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の浸炭用鋼。
【請求項3】
ガス浸炭後の粒界酸化層の深さが7.0μm未満である、請求項1または請求項2に記載の浸炭用鋼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸炭用鋼に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車等、機械的強度が求められる部材を構成する鋼材には、疲労強度や耐ピッチング性等の機械的特性を向上させる目的で、浸炭焼入れが施される場合がある。現在、浸炭の工法として、ガス浸炭が多く用いられている。ガス浸炭においては、大気炉中に、アセチレン、プロパン、エタノール等の浸炭ガスを流入させて鋼材を加熱し、浸炭ガスを不完全燃焼させて発生する一酸化炭素によって、鋼材の表面に炭素を吸収させて、表面の炭素濃度を上昇させる。ガス浸炭を経ることで、表面焼入れ硬さや焼戻し硬さが向上し、高い機械的特性が得られる。
【0003】
下記特許文献1にも説明されるように、ガス浸炭を行う際に、浸炭炉中の水分や酸素分子に由来する酸素原子が、鋼材表面から旧オーステナイト粒界に沿って酸化物を形成することで粒界酸化層を生成する。粒界酸化層は、破壊の起点となり、浸炭を経た鋼材の曲げ疲労強度を低下させるものとなる。さらに、粒界酸化層が鋼中の合金元素を吸収することで、焼入れ時にマルテンサイト組織が得られにくくなり、パーライトまたはベイナイト組織が生成して硬さが低下した浸炭異常層が形成される場合がある。浸炭異常層は欠陥として作用し、鋼材の機械的特性を悪化させる。粒界酸化層の生成を抑制するための対策の1つとして、浸炭用鋼において、酸素と反応する元素であるSiの含有量を低減する方法がある。
【0004】
一方で、焼入れを経た鋼材が、歯車等、表面が摩擦によって発熱を起こす用途に用いられる場合には、その発熱により、鋼材の表面が疑似的に焼戻しを受ける場合がある。浸炭用鋼においてSiやMoの含有量を高くしておくことで、焼戻し時の硬さの低下を小さく抑えることができる。つまり、焼戻し軟化抵抗を大きくすることができる。焼戻し軟化抵抗が向上することで、鋼材の面疲労強度が高くなる。反対に、SiやMoの含有量が少ない場合には、面疲労強度が低くなりやすい。
【0005】
このように、ガス浸炭を施して用いる浸炭用鋼において、Siの含有量を少なくすると、粒界酸化層の生成が抑制され、曲げ疲労強度の向上に効果を有する反面、焼戻し軟化抵抗が小さくなり、高い面疲労強度が得られにくくなる。そこで、Siの含有量を抑えながら、Moの含有量を多くすることで、粒界酸化層の生成を抑制しつつ、焼戻し軟化抵抗も高める手法が考えられる。また、粒界酸化層が生成したとしても、それが浸炭異常層の生成につながらないようにするという観点から、パーライトやベイナイトの析出を抑制する(焼入れ性を高める)効果を有するMoやCrを多量に浸炭用鋼に添加するという方策も考えられる。特許文献1の各実施例では、0.5質量%前後のMoが鋼材に添加されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-27142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、ガス浸炭を施す浸炭用鋼において、Siの含有量を少なく抑えて、Moの含有量を多くすれば、粒界酸化層の生成を抑制することで曲げ疲労強度を高めながら、焼戻し軟化抵抗を高めることで面疲労強度を高めることも可能である。しかし、Moは高価な金属であるため、焼戻し軟化抵抗の低下抑制や焼入れ性向上のために多量のMoを浸炭用鋼に添加すると、材料コストが高くなってしまう。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、低廉でありながら、ガス浸炭を経て、高い曲げ疲労強度と面疲労強度を両立することができる浸炭用鋼を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明にかかる浸炭用鋼は、以下の構成を有する。
[1]本発明にかかる浸炭用鋼は、質量%で、0.10%≦C≦0.30%、0.50%≦Si≦1.20%、0.05%≦Mn≦0.80%、0.30%≦Cr≦2.00%、0.01%≦Mo≦0.40%、0.02%≦Al≦0.10%を含有し、P≦0.030%、S≦0.030%、Cu≦0.3%であり、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、下記の式(1)および式(2)を満たす。
Cr/Mn-0.6Si≧2.0 (1)
Cr-1.82Si≧-0.7 (2)
前記式(1)および式(2)において、各元素記号は、質量%を単位とした各元素の含有量を示す。
【0010】
[2]上記[1]の態様において、前記浸炭用鋼は、さらに、質量%で、0%<Ni≦0.30%、0%<Nb≦0.05%、0%<Ti≦0.05%、0%<B≦0.005%の少なくとも1種を含有してもよい。
【0011】
[3]上記[1]または[2]の態様において、ガス浸炭後の粒界酸化層の深さが7.0μm未満であるとよい。
【発明の効果】
【0012】
[1]本発明にかかる浸炭用鋼は、各成分元素を上記所定の含有量で含有し、かつ、Cr,Mn,Siの含有量が上記式(1)の関係を満たすことで、Moを0.40質量%以下と少量しか含有させずに材料コストを抑制しながら、粒界酸化層の形成抑制による曲げ疲労強度の向上と、焼戻し軟化抵抗の向上による面疲労強度の向上を両立することができる。加えて式(2)を満たすことで、浸炭時に表面の炭素濃度を高めやすくなり、高硬度化によって、曲げ疲労強度の向上に高い効果が得られる。また、浸炭ガスの使用量を少なく抑えることで、浸炭に要するコストを低く抑えることができる。
【0013】
上記[2]の態様においては、浸炭用鋼が上記所定量のNi、Nb、B、Tiの少なくとも1種をさらに含有することで、浸炭を経た浸炭用鋼の材料特性をさらに高めることができる。Niは靭性の向上に寄与し、NbおよびTiは浸炭時の結晶粒粗大化による機械的特性の低下を抑制する働きを示す。また、Bは焼き入れ性を向上させる効果を示す。
【0014】
上記[3]の態様においては、ガス浸炭後の粒界酸化層の深さが7.0μm以下に抑えられていることにより、高い曲げ疲労強度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】曲げ疲労試験について説明する図である。(a)は試験前の浸炭処理の条件を示し、(b)は試験方法を示す模式図である(左:側面図、右:正面図)。
図2】面疲労試験について説明する図である。(a)は試験前の浸炭熱処理の条件を示し、(b)は試験方法を示す模式図である(左:側面図、右:正面図)。
図3】粒界酸化層が形成された試料断面の一例として、比較例7の試料断面の光学顕微顕微鏡像を示している。像中に粒界酸化層の存在する領域を破線で表示している。
図4】試験結果を示すグラフである。(a)はCr/Mn-0.6Siと粒界酸化層の深さの関係を示している。(b)はCr/Mn-0.6Siと曲げ疲労強度の関係を示している。(c)はSi含有量と面疲労強度の関係を示している。(d)はCr-1.82Siと表面炭素量の関係を示している。実施例を丸印で、比較例を三角印で示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態にかかる浸炭用鋼について詳細に説明する。本明細書において、各元素の含有量は、浸炭を経ない状態について、質量%を単位として表す。また、本明細書において、特記しないかぎり、各特性は、室温(おおむね25℃)にて評価される値とする。
【0017】
[各成分元素の含有量]
本実施形態にかかる浸炭用鋼は、所定量のC,Si,Mn,Cr,Mo,Alを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物をよりなる。添加元素の種類、含有量、および限定理由などは、以下のとおりである。
【0018】
・0.10%≦C≦0.30%
Cは、Cr等と炭化物を形成することで、鋼材の深部の硬さの向上に寄与する。硬さ向上の効果を十分に得る観点から、0.10%≦Cとされる。
【0019】
一方、Cの含有量が過剰になると、浸炭用鋼において、加工性の低下を招く。加工性を確保する観点から、C≦0.30%とされる。
【0020】
・0.50%≦Si≦1.20%
Siは、浸炭後の鋼材において、耐ピッチング性を高め、面疲労強度を向上させる効果を有する。それらの効果を十分に得る観点から、0.50%≦Siとされる。
【0021】
一方、Siの含有量が過剰になると、浸炭を経て粒界酸化層が形成されやすくなり、曲げ疲労強度の低下を招く。粒界酸化層の形成を抑える観点から、Si≦1.20%とされる。好ましくは、Si≦0.90%であるとよい。
【0022】
・0.05%≦Mn≦0.80%
Mnは、鋼材の焼入れ性を向上させる役割を果たす。焼入れ性向上の効果を十分に得る観点から、0.05%≦Mnとされる。好ましくは、0.30%≦Mnであるとよい。
【0023】
一方、Mnを多量に含有させると、後に説明する式(1)を満たしにくくなり、式(1)の充足と高い相関を有する現象である、浸炭後の曲げ疲労強度の向上の効果が、得られにくくなる。その観点から、Mn≦0.80%とされる。
【0024】
・0.30%≦Cr≦2.00%
Crは、浸炭時の平衡炭素濃度を高め、表面硬さの向上に高い効果を有する。また、焼入れ性を高める働きをする。さらに、Crは、Mnの含有量とのバランスによって式(1)を満たすことで、粒界酸化層の生成を抑え、曲げ疲労強度の向上に効果を示すものとなる。それらの効果を十分に得る観点から、0.30%≦Crとされる。好ましくは1.00%≦Crであるとよい。
【0025】
一方、材料コストを抑える観点からCr≦2.00%とされる。好ましくは、Cr≦1.60%であるとよい。
【0026】
・0.01%≦Mo≦0.40%
Moは、鋼材の焼入れ性を向上させる。また、焼戻し軟化抵抗を高めるものとなる。それらの効果を十分に得る観点から、0.01%≦Moとされる。
【0027】
一方、Moは高価な金属であり、材料コストを抑えて低廉な浸炭用鋼を得る観点から、Mo≦0.40%とされる。好ましくは、Mo≦0.30%であるとよい。
【0028】
・0.02%≦Al≦0.10%
Alは、浸炭時の結晶粒の粗大化を抑制するものとなる。その効果を十分に得る観点から、0.02%≦Alとされる。
【0029】
一方、Alは介在物を形成することで、鋼材の機械的特性を悪化させるものとなる。介在物の形成を抑制する観点から、Al≦0.10%とされる。
【0030】
本実施形態にかかる浸炭用鋼は、上記所定量のC,Si,Mn,Cr,Mo,Alに加え、P,S,Cuを含有してもよいが、それぞれ、下記の上限量以下の含有量に抑えられる。ただし、それらの元素は、浸炭用鋼に含有されることによる積極的効果がほぼないものであり、含有されなくてもよい。
【0031】
・P≦0.030%
Pは、粒界偏析によって、鋼材の機械的特性を悪化させる。粒界偏析を抑制する観点から、Pの含有量は、P≦0.030%の範囲内に抑えられる。好ましくは、P≦0.015%であるとよい。
【0032】
・S≦0.030%
Sは、MnS粗大粒を生成することで、鋼材の機械的特性を悪化させる。MnS粗大粒の生成を抑制する観点から、Sの含有量は、S≦0.030%の範囲内に抑えられる。好ましくは、S≦0.015%であるとよい。
【0033】
・Cu≦0.30%
Cuは、多くの鋼材に添加される元素であるが、本実施形態にかかる浸炭用鋼においては、添加することによる積極的な効果はほとんど得られない。添加する場合でも、材料コストを抑制する観点から、Cu≦0.30%に抑えられる。好ましくは、Cu≦0.16%であるとよい。
【0034】
本実施形態にかかる鋼材に含有されうるP,S,Cu以外の不可避的不純物としてはV≦0.1%、Co≦0.1%、O≦0.01%、N≦0.03%、Sn≦0.01%、Sb≦0.01%等を挙げることができる。また、不可避的不純物の合計量が0.1%以下に抑えられていることが好ましい。
【0035】
本実施形態にかかる鋼材は、上述した必須元素に加えて、さらに、Ni、Nb、Ti、Bより選択される少なくとも1種を任意に含有していてもよい。各元素の含有量、限定理由などは、次のとおりである。
【0036】
・0%<Ni≦0.30%
Niは、鋼材の靭性を向上させるものとなる。Niは、少量の添加でも、靭性の向上に高い効果を示すため、含有量の下限は特に定められない。
【0037】
一方、Niは、高価な元素であり、材料コストを抑制する観点から、Ni≦0.30%とされる。さらに好ましくは、Ni≦0.1%であるとよい。なお、0.05%以下程度のNiは、不可避的不純物として浸炭用鋼に含有されうる。
【0038】
・0%<Nb≦0.05%
Nbは、高温の条件や迅速に浸炭が進行する条件で浸炭を行った際に、結晶粒の粗大化、およびそれによる機械的特性の低下を抑制するのに寄与する。Nbは少量でもそれらの効果を高く示すので、含有量の下限は特に定められない。特に高い効果を得る観点からは、0.01%≦Nbであるとよい。
【0039】
しかし、Nbは、粗大な炭化物を生成することで、鋼材の機械的強度を低下させるものとなる。それらの現象を抑制する観点から、Nb≦0.05%とされる。さらに好ましくは、Nb≦0.03%であるとよい。
【0040】
・0%<Ti≦0.05%
Tiは、高温の条件や迅速に浸炭が進行する条件で浸炭を行った際に、結晶粒の粗大化、およびそれによる機械的特性の低下を抑制するのに寄与する。Tiは少量でもそれらの効果を高く示すので、含有量の下限は特に定められない。特に高い効果を得る観点からは、0.01%≦Tiであるとよい。
【0041】
しかし、Tiは、粗大な窒化物・炭化物を生成することで、鋼材の機械的強度を低下させるものとなる。それらの現象を抑制する観点から、Ti≦0.05%とされる。さらに好ましくは、Ti≦0.03%であるとよい。
【0042】
・0%<B≦0.005%
Bは、鋼材の焼入れ性を向上するのに寄与する。Bは少量でも焼入れ性向上の効果を高く示すので、含有量の下限は特に定められない。特に高い効果を得る観点からは、0.001%≦Bであるとよい。
【0043】
しかし、Bは、粗大な窒化物を生成することで、鋼材の機械的強度を低下させるものとなる。その現象を抑制する観点から、B≦0.005%とされる。さらに好ましくは、B≦0.003%であるとよい。
【0044】
[成分元素の含有量の関係]
次に、成分元素の含有量の関係について説明する。以下、成分元素の含有量の関係について規定する数式においては、各元素記号が、質量%を単位とした各元素の含有量を示すものとする。
【0045】
本実施形態にかかる浸炭用鋼は、Si,Mn,Crの含有量が、下の式(1)を満たす。また、CrとSiの含有量が、下の式(2)を満たす。
【0046】
・Cr/Mn-0.6Si≧2.0 (1)
Siは、浸炭用鋼に対してガス浸炭を行う際に、炉内の水分や酸素分子に由来する酸素原子と結合して、粒界酸化層を形成しやすい。よって、浸炭用鋼において、Siの含有量を少なくすると、粒界酸化層の形成を抑制することができる。一方、発明者らが実験により得た知見によると、理由は明らかではないが、Cr/Mnを増加させると、浸炭時の粒界酸化層の形成を抑制することができる。つまり、Cr/Mnの増大および/またはSiの減少によって、式(1)の左辺の値が大きくなると、浸炭時の粒界酸化層の形成を抑制することができる。式(1)のとおり、その値が2.0以上となるように、Si,Mn,Crの含有量を設定すると、一般的な条件でガス浸炭を行った際に形成される粒界酸化層の深さを、7.0μm未満のように浅く抑えることができる。
【0047】
粒界酸化層は、鋼材の表面に凹凸構造を形成し、破壊の起点となることで、鋼材の曲げ疲労強度を低下させる可能性がある。そこで、粒界酸化層の形成を抑制することで、鋼材の曲げ疲労強度を高めることができる。また、粒界酸化層の形成は、浸炭異常層の形成にもつながり、浸炭異常層も鋼材の機械的特性を悪化させる原因となるため、浸炭異常層の形成抑制の観点からも、粒界酸化層の形成を抑制することが好ましい。Cr/Mnを十分に大きくすること、および/またはSiを十分に少なく抑えることにより、上記式(1)を満たせば、粒界酸化層の形成、およびそれに伴う浸炭異常層の形成を効果的に抑制し、曲げ疲労強度をはじめとする鋼材の機械的特性を向上させることができる。
【0048】
一方で、式(1)の左辺においては、Cr/MnとSiが逆方向に寄与しており、Cr/Mnの値が十分に大きければ、Siをある程度大きくしても、式(1)を満たし、粒界酸化層の形成抑制を達成することができる。Siの含有量を多くすれば、浸炭後の鋼材において、焼戻し軟化抵抗が大きくなり、それに伴って、面疲労強度を高め、高い耐ピッチング性を得ることができる。つまり、Cr/MnとSiのバランスにより、式(1)を満たすことで、高い曲げ疲労強度と高い面疲労強度を両立することができる。
【0049】
・Cr-1.82Si≧-0.7 (2)
ガス浸炭を行う際に、浸炭ガス濃度によって定まるカーボンポテンシャルが同じであれば、平衡炭素濃度、つまり鋼材表面の炭素濃度に対して、Crは正の寄与を示し、Siは負の寄与を示す。つまり、平衡炭素濃度は、浸炭用鋼中のCrを増やすほど、またSiを減らすほど高くなる。平衡炭素濃度が高くなると、浸炭後の表面炭素濃度が高くなる。よって、式(2)の左辺の値が大きくなるほど浸炭後の表面炭素濃度が多くなる。つまり、式(2)の左辺の値が大きくなると、浸炭を効果的に進めることができる。式(2)のとおり、その値が-0.7以上となるように、SiおよびCrの含有量を設定すると、一般的な条件でガス浸炭を行った際、例えば930~950℃で、純鉄の表面炭素濃度が0.80%となる浸炭ガス濃度にて浸炭を行い、900℃での油焼入れと180℃での焼戻しを行った際に、表面炭素濃度を、0.74%以上のように高めることができる。
【0050】
浸炭後の鋼材において、表面炭素濃度を高めることで、表面硬さを向上させることができる。表面硬さが向上すると、鋼材の曲げ疲労強度が高くなる。式(2)を満たすことで、式(1)を満たすことによる粒界酸化層の形成抑制による効果と合わせて、曲げ疲労強度の向上に、優れた効果が得られる。また、式(2)を満たすことで、所望の平衡炭素濃度を達成するためのカーボンポテンシャルを低く設定することができるため、浸炭ガスの使用量が少なく抑えられる。これにより、浸炭に要するコストを低く抑えることができる。
【0051】
[鋼材の特性]
本実施形態にかかる浸炭用鋼は、各成分元素を上記所定量ずつ含有し、さらに式(1)および式(2)を満たすことで、粒界酸化層形成の抑制および表面硬さの向上の効果による曲げ疲労強度の向上と、焼戻し軟化抵抗の向上による面疲労強度の向上を両立することができる。Moは、焼戻し軟化抵抗の向上による面疲労強度の向上に非常に高い効果を示す元素であるが、本実施形態にかかる浸炭用鋼においては、特に式(1)を満たすことにより、Moの含有量を0.40%以下と少量に抑えながら、高い面疲労強度を得ることができる。つまり、低廉でありながら、曲げ疲労強度と面疲労強度を両立する浸炭用鋼とすることができる。Moの含有量の低減による材料コストの抑制に加え、さらに式(2)を満たすことの効果によって、浸炭ガスの使用量を低減すれば、浸炭に要するコストも抑制することができる。
【0052】
本実施形態にかかる浸炭用鋼は、一般的な条件でガス浸炭を行った際、例えば930~950℃で、純鉄の純鉄の表面炭素濃度が0.80%となる浸炭ガス濃度にて浸炭を行い、900℃での油焼入れと180℃での焼戻しを行った後の状態で、以下のような表面状態、および物性を有するものであることが好ましい。
・粒界酸化層の深さ:7.0μm未満。
・表面炭素濃度:0.74%以上。
・表面硬さ:735HV以上。
・曲げ疲労強度:後の実施例に示す曲げ疲労強度試験によって評価される値で、9.0kN以上。さらに好ましくは9.5kN以上。
・面疲労強度:後の実施例に示す面疲労試験によって評価されるローラピッチング寿命で、11.5×10回以上。さらに好ましくは14.1×10回以上。
【0053】
本実施形態にかかる浸炭用鋼の用途は特に限定されるものではない。しかし、上記のように、高い曲げ疲労強度と面疲労強度を有するものであることから、大きな力学的負荷を印加される部材に好適に適用することができる。特に摩擦等による発熱により、動作中に(疑似的な)焼戻しを受ける部材を構成するのに、好適に用いることができる。そのような部材として、歯車、プーリを例示することができる。特に、自動車において、トランスミッション用歯車やCVTプーリを構成するのに、本実施形態にかかる浸炭用鋼を好適に用いることができる。
【0054】
[浸炭用鋼の製造方法および浸炭方法]
本実施形態にかかる浸炭用鋼を製造するには、まず、所定の成分組成を有する合金を溶製し、インゴットを製造する。溶製は、真空誘導溶解法(VIF)、アーク溶解法(AF)、高炉-転炉法等の方法で行えばよい。連続鋳造によってブルームを製造してもよい。その後、鋼材に対して鍛造・圧延を行うとよい。例えば、鋳造片をA3変態点以上の温度に加熱し、鍛造・圧延を行うとよい。さらに、得られた鍛造・圧延片に対して、機械加工の容易性を高めるために、適宜、軟化熱処理を行うことが好ましい。軟化熱処理の具体例としては、必要な軟化の程度に応じて、鍛造・圧延片をA3変態点以上に加熱後に炉冷する焼鈍、鍛造・圧延片をA3変態点以上に加熱後に空冷する焼準、およびA1変態点からA3変態点の間に加熱した後、炉冷する球状化焼鈍を例示することができる。その後、得られた鋼材に対して、適宜、切削加工、熱間・冷間鍛造等を行い、歯車等、所望の製品形状への加工を行えばよい。
【0055】
以上のようにして製品形状に加工された浸炭用鋼に対して、浸炭を行えばよい。浸炭はガス浸炭によって行うことが好ましい。ガス浸炭の条件としては、例えば、900~980℃の温度で、純鉄の表面炭素濃度が0.65~0.85%となる浸炭ガス濃度にて浸炭を行う形態を、好適に適用することができる。また、浸炭後に、830~980℃での油焼入れ、さらに150~200℃での焼戻しを行うことが好ましい。
【実施例0056】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。
【0057】
[試料の作製]
試料として、実施例1~21および比較例1~10、参考例1にかかる浸炭用鋼を準備した。各金属元素を表1に示す割合で含有する合金をVIFにより溶製し、重さ150kgのインゴットを鋳造した。得られたインゴットに対し、燃焼・赤外吸収分光法により、C,Sの濃度を調査し、それ以外の成分元素については、発光分析法によって濃度を調査して、表1に示す成分組成(単位:質量%)を有することを確認した。
【0058】
上記で得られたインゴットに対し、1250℃に加熱して、鍛造を行った。この際、下に説明する曲げ疲労試験用の試料については直径22mm、面疲労試験用の試料については直径32mmの丸棒状に鍛造を行った。さらに、得られた鍛造片に対して、軟化熱処理を行った。つまり、950℃まで加熱してから炉冷し、軟化させた。このようにして得られた浸炭用鋼に対して、各試験に用いる試験片の形状に機械加工を行った。
【0059】
その後、曲げ疲労試験用試料および面疲労試験用試料に対し、ガス浸炭を行った。曲げ疲労試験用試料については図1(b)に示した形状の試験片に対し、図1(a)に示す条件で浸炭を行った。つまり、930℃にて、浸炭ガス(ガス種:アセチレン)の濃度を、純鉄の表面炭素濃度が0.80%となる濃度に制御して、130分間の浸炭を行った。その後、900℃で油焼入れし、置割れ防止のため油中にて180℃で2時間の焼戻しを行った。面疲労試験用試料については、テストローラとして、図2(b)に示した中空筒状の試験片(符号Aにて表示)に対して、図2(a)に示す条件で浸炭を行った。つまり、950℃にて、純鉄の表面炭素濃度が0.80%となる濃度に制御して、420分間の浸炭を行った。その後、900℃で油焼入れし、置割れ防止のため油中にて180℃で2時間の焼戻しを行った。
【0060】
[評価方法]
(粒界酸化層の深さ)
曲げ疲労試験用試験片を切断し、断面に対して研磨を行ったのち、光学顕微鏡により、断面を観察した。そして、観察像から、粒界酸化層の深さを見積もった。図3に、顕微鏡像の例として比較例7の試料断面の観察像を示している。暗く観察される針状の領域が粒界酸化層に相当し、画像中に破線で範囲を示すように、その粒界酸化層の深さ(長さ)を観察像から見積もった。図3では、粒界酸化層の深さが7.0μmとなっている。なお、観察像中で、粒界酸化層が存在する領域の表面を覆っている最表面の層は、断面試料作製のために形成したNiメッキ層である。
【0061】
(表面炭素濃度)
曲げ疲労試験用試験片を切断し、断面に対して研磨を行ったのち、波長分散X線分析装置(JEOL社製 EPMA1600)により、表面部分の炭素濃度を評価した。
【0062】
(表面硬さ)
曲げ疲労試験用試験片を切断し、断面に対して研磨を行ったのち、曲げ疲労試験用試験片の表面から0.05mmの位置に対し、ビッカース硬度計を用いて、試験力300gfで表面硬さを測定した。
【0063】
(曲げ疲労強度)
四点曲げにより、曲げ疲労強度を評価した。つまり、図1(b)に示すように、中央部にくびれを設けるとともに上下を平面状に切り欠いた丸棒状の曲げ疲労試験用試験片(全体の直径;19mm、くびれ部の直径:13mm、くびれ部分の曲率1.5mm)に対して、くびれを挟んで対称に80mm離れた2箇所を、円柱状の治具にて下方から支持した。また、くびれを挟んで対称に10mm離れた2箇所に、上方から同形状の治具を当接させた。そして、図中に矢印で示すように、上方の治具に下方に向かう荷重を印加する疲労を繰り返し、3本の試験片のうち2本以上が、2×10回疲労を行っても折れなかった荷重を記録し、曲げ疲労試験の結果とした。得られた荷重値が大きいほど、曲げ疲労強度が高いことが示され、荷重値が9.0kN以上であれば、曲げ疲労強度が十分に高いとみなすことができる。
【0064】
(面疲労強度)
面疲労試験を実施してローラピッチング寿命を計測し、面疲労強度を評価した。つまり、図2(b)に示すように、直径26mmの中空筒状の面疲労試験用試験片(テストローラ;図中のA)と、SUJ2調質材(硬さ58~60HRC)製で、直径130mm、クラウニング半径150mmのロードローラ(図中のB)とを接触させて配置した。そして、自動車の変速機の歯車に使用されることを想定して、エンジンオイルSAE 0W-8に相当する粘度のオートマチックトランスミッションフルードを80℃で2L/minの流量でかけながら、テストローラを2000rpm、ロードローラを560rpmの速度で、相互に反対方向に軸回転させた(図中の矢印)。両ローラ間の接触部に16.9kNの荷重をかけた状態で回転を行い、テストローラの表面が剥離し、回転に振動が発生するまでの寿命(回転回数)を計測した。計測される寿命が長いほど鋼材が高い面疲労強度を有することを示し、寿命11.5×10回以上であれば、面疲労強度が十分に高いとみなすことができる。
【0065】
[試験結果]
実施例1~21および比較例1~10、参考例1について、表1に、各成分の含有量を示す。また、表2に、Cr/Mn-0.6SiおよびCr-1.82Siの計算値とともに、各評価の結果を示す。さらに、図4に、各実施例および比較例について、成分組成と各種特性の関係を図示する。
【0066】
【表1】
【表2】
【0067】
まず、Cr/Mn-0.6Siと鋼材の特性との相関について検討する。図4(a)に、Cr/Mn-0.6Siと粒界酸化層の深さとの関係を示し、図4(b)に、Cr/Mn-0.6Siと曲げ疲労試験の結果との関係を示している(ただし、後述するように、Si単独での含有量の多さが原因で粒界酸化層が薄くなっている比較例3は除外している)。図4(a)によると、Cr/Mn-0.6Siと粒界酸化層の深さとの間に負の相関が見られるとともに、図4(b)によると、Cr/Mn-0.6Siと曲げ疲労強度の間に正の相関が見られる。これらの結果から、Cr/Mn-0.6Siが大きくなると、粒界酸化層の形成が抑えられ、それに伴って曲げ疲労強度が高くなることが分かる。表1,2も合わせて見ると、例えば実施例2,6,7等、Si,Mn,Crの個別の含有量が異なっていても、Cr/Mn-0.6Siが同程度であれば、粒界酸化層の深さおよび曲げ疲労強度が同程度となっていることが分かる。つまり、Cr/Mn-0.6Siは、粒界酸化層形成の抑制によって曲げ疲労強度を高めるためのよい指標となっている。
【0068】
図4(a),(b)に点線と矢印で示す、Cr/Mn-0.6Si≧2.0となる領域に存在する実施例1~21においては、粒界酸化層の深さが7.0μm未満に抑えられるとともに、曲げ疲労試験で得られた荷重が9.0kN以上となっている。これら実施例はいずれも、Moの含有量が0.40%以下に抑えられているにもかかわらず、0.49%のMoを含有する参考例1の場合(9.5kN;図4(b)中に実線にて表示)と同程度の高い曲げ疲労強度が得られている。一方、比較例1,6ではSi,Mn,Crの含有量のバランスにより、比較例4では主にCr含有量が少なすぎることにより、比較例5,8~10では主にMnが多すぎることにより、Cr/Mn-0.6Si<2.0となっている。それら各比較例では、粒界酸化層の深さが7.0μm以上となるとともに、曲げ疲労試験の結果が9.0kN未満となっており、十分な曲げ疲労強度が得られていない。
【0069】
ここで、Siの含有量と機械的強度の関係について検討する。比較例7では、Siの含有量が少ないが、Cr/Mn-0.6Si<2.0となっている。それに対応して、粒界酸化層の深さが7.0μm以上となるとともに、曲げ疲労試験の結果が9.0kN未満となっており、十分な曲げ疲労強度が得られていない。比較例3では、Cr/Mn-0.6Si≧2.0ではあるものの、Siの含有量が多すぎることにより、粒界酸化層の深さが7.0μm以上となるとともに、曲げ疲労試験の結果が9.0kN未満となっている。
【0070】
さらに、図4(c)に、Si含有量と面疲労強度の関係を示している。これによると、Si含有量の増大に伴って、面疲労強度が向上する傾向が見られる。図中に点線と矢印で示すように、Si含有量を0.50%以上とすることで、ローラピッチング寿命にして11.5×10回以上の高い面疲労強度が得られている。Si含有量が0.50%未満である比較例2,7では、ローラピッチング寿命にして11.5×10回未満の低い面疲労強度しか得られていない。ここまでの結果から、Cr/Mn-0.6Si≧2.0を満たす範囲でSiの含有量を多くすることで、高い曲げ疲労強度と面疲労強度を両立できると言える。
【0071】
次に、Cr-1.82Siと鋼材の特性との相関について検討する。図4(d)に、Cr-1.82Siと表面炭素濃度との関係を示している。これによると、Cr-1.82Siと表面炭素濃度の間に正の相関が見られる。さらに、表1によると、おおむね、表面炭素濃度が高い場合に、表面硬さが高くなっている。このことから、Cr-1.82Siが大きくなると、表面炭素濃度が高くなり、それに伴って、表面硬度が上昇することが分かる。
【0072】
そして、図中に点線と矢印で示すCr-1.82Si≧-0.7となっている領域にある実施例1~21において、表面炭素濃度が0.74%以上となり、表面硬さが735HV以上となっている。一方、比較例4ではCrの含有量が少なすぎることにより、比較例8,9ではCrとSiの含有量のバランスにより、Cr-1.82Si<-0.7となっており、それら比較例4,8,9では表面炭素濃度が0.74%未満となっているとともに、表面硬さが735HV未満となっている。
【0073】
以上の試験結果より、各成分の個別の含有量が本発明の範囲を満たすとともに、Cr/Mn-0.6Si≧2.0およびCr-1.82Si≧-0.7の関係を満たすように、浸炭用鋼の成分組成を設定することで、Moの含有量を抑えながら、浸炭を経て、高い曲げ疲労強度と面疲労強度を両立し、さらに高い表面硬さを有する鋼材を得られることが分かる。
【0074】
以上、本発明の実施形態、実施例について説明した。本発明は、これらの実施形態、実施例に特に限定されることなく、種々の改変を行うことが可能である。
図1
図2
図3
図4