(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142652
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、フェノキシ樹脂、複合樹脂組成物、樹脂シート、金属ベース基板、および電子装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/24 20060101AFI20241003BHJP
C08G 65/40 20060101ALI20241003BHJP
C08L 71/10 20060101ALI20241003BHJP
C08K 3/28 20060101ALI20241003BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20241003BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241003BHJP
C08G 59/62 20060101ALI20241003BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08G59/24
C08G65/40
C08L71/10
C08K3/28
C09K5/14 E
C08J5/18 CEZ
C08J5/18 CFC
C08G59/62
C08L63/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054890
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】大葉 昭良
(72)【発明者】
【氏名】樫野 智將
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J005
4J036
【Fターム(参考)】
4F071AA41
4F071AA42
4F071AA51
4F071AA58
4F071AB27
4F071AC12
4F071AE02
4F071AE17
4F071AE22
4F071AF10
4F071AF44
4F071AF45
4F071AG05
4F071AG28
4F071AH12
4F071AH16
4F071BA09
4F071BB03
4F071BC01
4F071BC02
4J002CD071
4J002CH082
4J002DK006
4J002EF017
4J002EJ007
4J002EJ037
4J002EN047
4J002EU117
4J002EW137
4J002GQ00
4J005AA24
4J036AB01
4J036AB07
4J036AC01
4J036AC14
4J036AD07
4J036AD10
4J036DB05
4J036DB06
4J036DB10
4J036DB16
4J036DC05
4J036DC40
4J036DD07
4J036FA01
4J036HA12
4J036JA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】その硬化物が高い熱伝導性を有する熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物(A)と、式(d-EP)で表される、2つのエポキシ基を有する2官能エポキシ化合物(B)と、を含む熱硬化性樹脂組成物であって、
R
11は、独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、R
12は、独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、
Xは、メソゲン骨格を有する2価の基である、熱硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物(A)と、
式(d-EP)で表される、2つのエポキシ基を有する2官能エポキシ化合物(B)と、
を含む熱硬化性樹脂組成物であって、
【化1】
式(1-1)において、
R
11は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、
R
12は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、
【化2】
式(d-EP)において、Xは、メソゲン骨格を有する2価の基である、
熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記ジヒドロキシ化合物(A)は、式(1-2)で表される構造を有し、
【化3】
式(1-2)において、R
11およびR
12は、前記式(1-1)におけるものと同義である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(d-EP)におけるXは、式(2)で表される2価の基を含み、
【化4】
式(2)において、R
1~R
8は、独立して、水素原子または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、*は連結位置を表す、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R1、R4、R5、およびR8は、炭素数1~4のアルキル基であり、R2、R3、R6、およびR7が水素原子である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項3に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R1、R4、R5、およびR8は、メチル基であり、R2、R3、R6、およびR7は、水素原子である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項3に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R1~R8のすべてが水素原子である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
硬化促進剤をさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
熱伝導性フィラーをさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物からなる、樹脂シート。
【請求項10】
発熱部材と、
放熱部材と、
前記発熱部材と前記放熱部材との間に設けられた熱伝導性シートと、を備える電子装置であって、
前記熱伝導性シートは、請求項9に記載の樹脂シートの硬化物からなる、電子装置。
【請求項11】
金属基板と、
熱伝導性シートと、
金属層と、をこの順で備える金属ベース基板であって、
前記熱伝導性シートは、請求項9に記載の樹脂シートの硬化物からなる、金属ベース基板。
【請求項12】
請求項11に記載の金属ベース基板を備える、電子装置。
【請求項13】
式(3)で表される構造を有するフェノキシ樹脂であって、
【化5】
式(3)において、
nは繰り返し単位を表す数であり、2~50の整数を表し、
Xは、メソゲン骨格を有する2価の基であり、
Yは、式(1-3)で表される2価の基であり、
【化6】
式(1-3)において、
R
11は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、
R
12は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、
*は、連結位置を表す、
フェノキシ樹脂。
【請求項14】
請求項13に記載のフェノキシ樹脂であって、
前記式(3)中のYは、式(1-4)で表される2価の基であり、
【化7】
式(1-4)において、R
11およびR
12は、前記式(1-3)におけるものと同義であり、*は、連結位置を表す、フェノキシ樹脂。
【請求項15】
請求項13に記載のフェノキシ樹脂であって、
前記式(d-EP)におけるXは、式(2)で表される2価の基を含み、
【化8】
式(2)において、R
1~R
8は、独立して、水素原子または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、*は連結位置を表す、フェノキシ樹脂。
【請求項16】
請求項15に記載のフェノキシ樹脂であって、
前記式(2)で表される基において、R1、R4、R5、およびR8は、炭素数1~4のアルキル基であり、R2、R3、R6、およびR7が水素原子である、フェノキシ樹脂。
【請求項17】
請求項15に記載のフェノキシ樹脂であって、
前記式(2)で表される基において、R1、R4、R5、およびR8は、メチル基であり、R2、R3、R6、およびR7は、水素原子である、フェノキシ樹脂。
【請求項18】
請求項15に記載のフェノキシ樹脂であって、
前記式(2)で表される基において、R1~R8のすべてが水素原子である、フェノキシ樹脂。
【請求項19】
エポキシ樹脂と、
熱硬化性樹脂(前記エポキシ樹脂を除く)と、
式(3)で表されるフェノキシ樹脂と、
熱伝導性フィラーと、を含む複合樹脂組成物であって、
【化9】
式(3)において、
nは繰り返し単位を表す数であり、2~50の整数を表し、
Xは、メソゲン骨格を有する2価の基であり、
Yは、式(1-3)で表される2価の基であり、
【化10】
式(1-3)において、
R
11は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、
R
12は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、
*は、連結位置を表す、
複合樹脂組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の複合樹脂組成物であって、
前記式(3)中のYは、式(1-4)で表される2価の基であり、
【化11】
式(1-4)において、R
11およびR
12は、前記式(1-3)におけるものと同義であり、*は、連結位置を表す、複合樹脂組成物。
【請求項21】
請求項19に記載の複合樹脂組成物であって、
前記式(3)中のXは、式(2)で表される2価の基を含み、
【化12】
式(2)において、R
1~R
8は、独立して、水素原子または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、*は連結位置を表す、複合樹脂組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の複合樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R1、R4、R5、およびR8は、炭素数1~4のアルキル基であり、R2、R3、R6、およびR7が水素原子である、複合樹脂組成物。
【請求項23】
請求項21に記載の複合樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R1、R4、R5、およびR8は、メチル基であり、R2、R3、R6、およびR7は、水素原子である、複合樹脂組成物。
【請求項24】
請求項21に記載の複合樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R1~R8のすべてが水素原子である、複合樹脂組成物。
【請求項25】
請求項19に記載の複合樹脂組成物であって、
前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、2,000以上10,000以下である、複合樹脂組成物。
【請求項26】
請求項19に記載の複合樹脂組成物であって、
前記熱硬化性樹脂は、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、およびベンゾオキサジン樹脂から選択される少なくとも1つを含む、複合樹脂組成物。
【請求項27】
前記熱伝導性フィラーは、窒化ホウ素を含む、請求項19に記載の複合樹脂組成物。
【請求項28】
硬化促進剤をさらに含む、請求項19に記載の複合樹脂組成物。
【請求項29】
請求項19乃至28のいずれかに記載の複合樹脂組成物からなる樹脂シート。
【請求項30】
発熱部材と、
放熱部材と、
前記発熱部材と前記放熱部材との間に設けられた熱伝導性シートと、を備える電子装置であって、
前記熱伝導性シートは、請求項29に記載の樹脂シートの硬化物からなる、電子装置。
【請求項31】
金属基板と、
熱伝導性シートと、
金属層と、をこの順で備える金属ベース基板であって、
前記熱伝導性シートは、請求項29に記載の樹脂シートの硬化物からなる、金属ベース基板。
【請求項32】
請求項31に記載の金属ベース基板を備える、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、当該熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂シート、当該樹脂シートの硬化物を熱伝導性シートとして備える電子装置、当該樹脂シートの硬化物を備える金属ベース基板、および当該金属ベース基板を備える電子装置、ならびにフェノキシ樹脂、および当該フェノキシ樹脂を含む複合樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の高集積化や電子機器の処理能力の急速な向上に伴い、処理能力の高い電子部品からは多くの熱が発生する。そのため電子部品から熱を効果的に外部へ放散させる熱対策が非常に重要な課題になっている。このような放熱対策として、プリント配線基板、半導体パッケージ、筐体、ヒートパイプ、放熱板、熱拡散板等の放熱部材には、金属、セラミックス、高分子組成物等の放熱材料からなる熱伝導性部材が適用されている。
【0003】
これらの放熱部材の中でも、エポキシ樹脂組成物から成形される熱伝導性エポキシ樹脂成形体は、電気絶縁性、機械的性質、耐熱性、耐薬品性、接着性等に優れているため、注型品、積層板、封止材、熱伝導性シート、接着剤等として電気電子分野を中心に広く使用されている。
【0004】
熱伝導性エポキシ樹脂成形体を構成するエポキシ樹脂組成物は、樹脂、ゴム等の高分子マトリックス材料中に、熱伝導率の高い熱伝導性充填剤を配合したものが知られている。熱伝導性充填剤としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、石英等の金属酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の金属窒化物、炭化ケイ素等の金属炭化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、金、銀、銅等の金属、炭素繊維、黒鉛等が用いられている。
【0005】
さらに高い熱伝導性が要求される場合には、エポキシ樹脂に特殊な熱伝導性充填剤を配合した熱伝導性エポキシ樹脂組成物や熱伝導性エポキシ樹脂成形体が提案されている(たとえば、特許文献1)。また、エポキシ樹脂自体の熱伝導率や耐熱性を向上させることも提案されている(たとえば、特許文献2)。特許文献2では、メソゲン基を有する液晶性エポキシ樹脂等を重合することにより、熱伝導性を向上させた絶縁組成物を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-193504号公報
【特許文献2】特願2004-331811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者が検討した結果、特許文献2に記載の樹脂組成物は、熱伝導性の点においてさらなる改善の余地を有することが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、特定のメソゲン骨格を有する化合物が、高熱伝導性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、以下に示す熱硬化性樹脂組成物、フェノキシ樹脂、複合樹脂組成物、樹脂シート、金属ベース基板、および電子装置が提供される。
[1]式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物(A)と、
式(d-EP)で表される、2つのエポキシ基を有する2官能エポキシ化合物(B)と、
を含む熱硬化性樹脂組成物であって、
【化1】
式(1-1)において、
R
11は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、
R
12は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、
【化2】
式(d-EP)において、Xは、メソゲン骨格を有する2価の基である、
熱硬化性樹脂組成物。
[2]項目[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記ジヒドロキシ化合物(A)は、式(1-2)で表される構造を有し、
【化3】
式(1-2)において、R
11およびR
12は、前記式(1-1)におけるものと同義である、熱硬化性樹脂組成物。
[3]項目[1]または[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(d-EP)におけるXは、式(2)で表される2価の基を含み、
【化4】
式(2)において、R
1~R
8は、独立して、水素原子または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、*は連結位置を表す、熱硬化性樹脂組成物。
[4]項目[3]に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R
1、R
4、R
5、およびR
8は、炭素数1~4のアルキル基であり、R
2、R
3、R
6、およびR
7が水素原子である、熱硬化性樹脂組成物。
[5]項目[3]に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R
1、R
4、R
5、およびR
8は、メチル基であり、R
2、R
3、R
6、およびR
7は、水素原子である、熱硬化性樹脂組成物。
[6]項目[3]に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R
1~R
8のすべてが水素原子である、熱硬化性樹脂組成物。
[7]項目[1]乃至[6]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
硬化促進剤をさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
[8]項目[1]乃至[7]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
熱伝導性フィラーをさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
[9]項目[1]乃至[8]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物からなる、樹脂シート。
[10]発熱部材と、
放熱部材と、
前記発熱部材と前記放熱部材との間に設けられた熱伝導性シートと、を備える電子装置であって、
前記熱伝導性シートは、項目[9]に記載の樹脂シートの硬化物からなる、電子装置。
[11]金属基板と、
熱伝導性シートと、
金属層と、をこの順で備える金属ベース基板であって、
前記熱伝導性シートは、項目[9]に記載の樹脂シートの硬化物からなる、金属ベース基板。
[12]項目[11]に記載の金属ベース基板を備える、電子装置。
[13]式(3)で表される構造を有するフェノキシ樹脂であって、
【化5】
式(3)において、
nは繰り返し単位を表す数であり、2~50の整数を表し、
Xは、メソゲン骨格を有する2価の基であり、
Yは、式(1-3)で表される2価の基であり、
【化6】
式(1-3)において、
R
11は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、
R
12は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、
*は、連結位置を表す、
フェノキシ樹脂。
[14]項目[13]に記載のフェノキシ樹脂であって、
前記式(3)中のYは、式(1-4)で表される2価の基であり、
【化7】
式(1-4)において、R
11およびR
12は、前記式(1-3)におけるものと同義であり、*は、連結位置を表す、フェノキシ樹脂。
[15]項目[13]または[14]に記載のフェノキシ樹脂であって、
前記式(d-EP)におけるXは、式(2)で表される2価の基を含み、
【化8】
式(2)において、R
1~R
8は、独立して、水素原子または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、*は連結位置を表す、フェノキシ樹脂。
[16]項目[15]に記載のフェノキシ樹脂であって、
前記式(2)で表される基において、R
1、R
4、R
5、およびR
8は、炭素数1~4のアルキル基であり、R
2、R
3、R
6、およびR
7が水素原子である、フェノキシ樹脂。
[17]項目[15]に記載のフェノキシ樹脂であって、
前記式(2)で表される基において、R
1、R
4、R
5、およびR
8は、メチル基であり、R
2、R
3、R
6、およびR
7は、水素原子である、フェノキシ樹脂。
[18]項目[15]に記載のフェノキシ樹脂であって、
前記式(2)で表される基において、R
1~R
8のすべてが水素原子である、フェノキシ樹脂。
[19]エポキシ樹脂と、
熱硬化性樹脂(前記エポキシ樹脂を除く)と、
式(3)で表されるフェノキシ樹脂と、
熱伝導性フィラーと、を含む複合樹脂組成物であって、
【化9】
式(3)において、
nは繰り返し単位を表す数であり、2~50の整数を表し、
Xは、メソゲン骨格を有する2価の基であり、
Yは、式(1-3)で表される2価の基であり、
【化10】
式(1-3)において、
R
11は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、
R
12は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、
*は、連結位置を表す、
複合樹脂組成物。
[20]項目[19]に記載の複合樹脂組成物であって、
前記式(3)中のYは、式(1-4)で表される2価の基であり、
【化11】
式(1-4)において、R
11およびR
12は、前記式(1-3)におけるものと同義であり、*は、連結位置を表す、複合樹脂組成物。
[21]項目[19]または[20]に記載の複合樹脂組成物であって、
前記式(3)中のXは、式(2)で表される2価の基を含み、
【化12】
式(2)において、R
1~R
8は、独立して、水素原子または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、*は連結位置を表す、複合樹脂組成物。
[22]項目[21]に記載の複合樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R
1、R
4、R
5、およびR
8は、炭素数1~4のアルキル基であり、R
2、R
3、R
6、およびR
7が水素原子である、複合樹脂組成物。
[23]項目[21]に記載の複合樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R
1、R
4、R
5、およびR
8は、メチル基であり、R
2、R
3、R
6、およびR
7は、水素原子である、複合樹脂組成物。
[24]項目[21]に記載の複合樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R
1~R
8のすべてが水素原子である、複合樹脂組成物。
[25]項目[19]乃至[24]のいずれかに記載の複合樹脂組成物であって、
前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、2,000以上10,000以下である、複合樹脂組成物。
[26]項目[19]乃至[25]のいずれかに記載の複合樹脂組成物であって、
前記熱硬化性樹脂は、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、およびベンゾオキサジン樹脂から選択される少なくとも1つを含む、複合樹脂組成物。
[27]前記熱伝導性フィラーは、窒化ホウ素を含む、項目[19]乃至[26]のいずれかに記載の複合樹脂組成物。
[28]硬化促進剤をさらに含む、項目[19]乃至[27]のいずれかに記載の複合樹脂組成物。
[29]項目[19]乃至[28]のいずれかに記載の複合樹脂組成物からなる樹脂シート。
[30]発熱部材と、
放熱部材と、
前記発熱部材と前記放熱部材との間に設けられた熱伝導性シートと、を備える電子装置であって、
前記熱伝導性シートは、項目[29]に記載の樹脂シートの硬化物からなる、電子装置。
[31]金属基板と、
熱伝導性シートと、
金属層と、をこの順で備える金属ベース基板であって、
前記熱伝導性シートは、項目[29]に記載の樹脂シートの硬化物からなる、金属ベース基板。
[32]項目[31]に記載の金属ベース基板を備える、電子装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、その硬化物が高い熱伝導性を有する熱硬化性樹脂組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る金属ベース基板の構造を示す断面模式図である。
【
図2】本実施形態に係る金属ベース基板を用いた電子装置の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「~」は特に断りがなければ「以上」から「以下」を表す。
【0013】
[熱硬化性樹脂組成物]
本発明の第一の実施形態にしたがう熱硬化性樹脂組成物は、
式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物(A)と、
式(d-EP)で表される、2つのエポキシ基を有する2官能エポキシ化合物(B)と、を含む。
【0014】
【0015】
式(1-1)において、
R11は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、
R12は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基である。
【0016】
【0017】
式(d-EP)において、Xは、メソゲン骨格を有する2価の基である。
【0018】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、上記式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物を含む。式(1-1)で表される化合物は、平面性が高く、高い剛直性を有する。よって、これを含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、高い熱伝導性を有する。
【0019】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、式(d-EP)で表される、メソゲン骨格を有するエポキシ2官能エポキシ化合物を含む。本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、このようなメソゲン骨格を有するエポキシ化合物を含むことにより、得られる硬化物は、高い熱伝導性を有する。
【0020】
以下に、第一の実施形態における熱硬化性樹脂組成物に用いられる成分について説明する。
【0021】
(ジヒドロキシ化合物)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に用いられる、ジヒドロキシ化合物は、式(1-1)で表される構造を有する。
【0022】
【0023】
式(1-1)において、
R11は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基である。R11は、好ましくは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子、または炭素数1のアルキル基(メチル基)である。
R12は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基である。R12は、、好ましくは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子、または炭素数1のアルキル基(メチル基)である。
特に好ましくは、R11およびR12の全てが、水素原子である。
【0024】
上記式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物のうち、特に平面性が高いことから、式(1-2)で表されるジヒドロキシ化合物を用いることが好ましい。
【0025】
【0026】
式(1-2)において、R11およびR12は、上記式(1-1)におけるものと同義であり、好ましい態様についても同様である。
【0027】
式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物は、市販の製品を使用してもよいし、または当該分野で公知の方法により合成してもよい。例えば、R11およびR12の全てが水素原子である式(1-2)で表される化合物は、6-ブロモ-2-ナフトールと、4-ヒドロキシフェニルボロン酸とを、溶媒中、パラジウム触媒および塩基の存在下で、カップリング反応することにより合成することができる。
【0028】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物中の上記式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物の配合量は、当該熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して、例えば、2質量%以上50質量%以下であり、好ましくは、5質量%以上40質量%である。ジヒドロキシ化合物を上記範囲内で配合することにより、得られる樹脂組成物の流動性を所望の程度に調整することができるとともに、硬化物の熱伝導性を向上することができる。
【0029】
(2官能エポキシ化合物)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に用いられる2官能エポキシ化合物は、式(d-EP)で表される化合物である。
【0030】
【0031】
式(d-EP)中のXは、メソゲン骨格を有する2価の基である。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、メソゲン骨格を有する2官能エポキシ化合物を含むことにより、得られる硬化物は、高い熱伝導性および高い耐熱性を有する。
【0032】
式(d-EP)中のX基が有するメソゲン骨格としては、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格、フェニルベンゾエート骨格、アゾベンゼン骨格、スチルベン骨格、シクロヘキシルベンゼン骨格、およびそれらの誘導体が挙げられる。X基が上記のメソゲン骨格を有することにより、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、高い熱伝導性を有し得る。
【0033】
一実施形態において、式(d-EP)のX基の少なくとも1つは、式(2)で表される基である。式(d-EP)のX基が式(2)で表されるメソゲン骨格である2官能エポキシ化合物を用いることにより、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、高い熱伝導性を有するとともに、優れた耐熱性を有する。
【0034】
【0035】
式(2)において、R1~R8は、独立して、水素原子または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、*は連結位置を表す。
【0036】
一実施形態において、上記2官能エポキシ化合物は、式(2)中のR1、R4、R5、およびR8が炭素数1~4のアルキル基であり、R2、R3、R6、およびR7が水素原子である基である化合物である。中でも、式(2)中のR1、R4、R5、およびR8が炭素数1のアルキル基(メチル基)であり、かつR2、R3、R6、およびR7が水素原子である(X基が「テトラメチルビフェニル基」)、エポキシ化合物である。このような2官能エポキシ化合物を用いることにより、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、熱伝導性と耐熱性とを優れたバランスで有し得る。
【0037】
一実施形態において、上記2官能エポキシ化合物は、式(2)中のR1、R4、R5、およびR8が炭素数1のアルキル基であり、かつR2、R3、R6、およびR7が水素原子である(X基が「ビフェニル基」)、エポキシ化合物である。このような2官能エポキシ化合物を用いることにより、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、優れた熱伝導性と耐熱性とを有する。
【0038】
一実施形態において、式(d-EP)で表される2官能エポキシ化合物は、X基として、テトラメチルビフェニル基とビフェニル基とを含む化合物であることが好ましい。このような2官能エポキシ化合物を組み合わせて含むことにより、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、熱伝導性と耐熱性とを優れたバランスで有し得る。
【0039】
上記2官能エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物中の上記式(d-EP)で表される2官能エポキシ化合物の配合量は、当該熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して、例えば、50質量%以上98質量%以下であり、好ましくは、60質量%以上95質量%である。2官能エポキシ化合物を上記範囲内で配合することにより、得られる樹脂組成物の硬化特性を適切な程度に調整することができる。
【0041】
(硬化促進剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤の種類および配合量は、特に限定されず、反応速度や反応温度、保管性などの観点から、適切なものを選択することができる。
【0042】
用いることができる硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類、有機リン化合物、3級アミン類、フェノール化合物、有機酸等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。この中でも、得られる樹脂組成物の耐熱性を高める観点から、イミダゾール類などの窒素原子含有化合物を用いることが好ましい。
【0043】
前記イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジエチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート等が挙げられる。
【0044】
前記有機リン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、1,2-ビス-(ジフェニルホスフィノ)エタン等が挙げられる。
前記3級アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等が挙げられる。
前記フェノール化合物としては、例えば、フェノール樹脂、ビスフェノールA、ノニルフェノール、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、アリルフェノール等が挙げられる。
前記有機酸としては、例えば、酢酸、安息香酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0045】
硬化促進剤の配合量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して、例えば、0.01質量%~10質量%であり、好ましくは、0.02質量%~5質量%であり、より好ましくは、0.05質量%~1.5質量%である。
【0046】
(熱伝導性フィラー)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、熱伝導性フィラーを含んでもよい。熱伝導性フィラーを配合することにより、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を、放熱部材を作製するための材料として使用することができる。熱伝導性フィラーは、たとえば、20W/m・K以上の熱伝導率を有する高熱伝導性無機粒子を含むことができる。高熱伝導性無機粒子としては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、および酸化マグネシウムが挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
熱伝導性フィラーとして、窒化ホウ素を用いる場合、窒化ホウ素は、鱗片状窒化ホウ素の、単分散粒子、凝集粒子またはこれらの混合物を含むことができる。鱗片状窒化ホウ素は顆粒状に造粒されていてもよい。鱗片状窒化ホウ素の凝集粒子を用いることによって、得られる熱硬化性樹脂組成物の熱伝導性をより一層高めることができる。凝集粒子は、焼結粒子であっても、非焼結粒子であってもよい。
【0048】
熱伝導性フィラーを用いる場合、その配合量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して、例えば、40質量%~90質量%であり、好ましくは、50質量%~80質量%である。熱伝導性フィラーを上記範囲内の量で用いることにより、得られる樹脂組成物の取扱い性を維持しつつ、その硬化物の熱伝導性を向上することができる。また熱伝導性フィラーは、シランカップリング剤で表面処理されていてもよい。
【0049】
(シランカップリング剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含んでもよい。これにより、熱硬化性樹脂組成物中における熱伝導性フィラーの相溶性を向上させることができる。カップリング剤は、熱硬化性樹脂組成物に添加してもよいし、熱伝導性フィラー表面に処理して使用してもよい。
【0050】
シランカップリング剤の配合量は、上記熱伝導性フィラーの質量に対して、0.05質量%以上3質量%以下であり、好ましくは、0.1質量%以上2質量%以下である。
【0051】
(その他の成分)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、上述した成分以外の他の成分を含むことができる。この他の成分としては、例えば、酸化防止剤、レベリング剤が挙げられる。
【0052】
(熱硬化性樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、熱伝導性フィラー以外の上記の各成分を、溶剤中に溶解、混合、撹拌することにより樹脂ワニス(ワニス状の熱硬化性樹脂組成物)を調整することができる。この混合は、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いることができる。
【0053】
上記溶剤としては特に限定されないが、アセトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、およびN-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0054】
熱硬化性樹脂組成物が熱伝導性フィラーを含む場合、上記樹脂樹脂ワニスに、熱伝導性フィラーを添加し、三本ロール等を用いて混練することにより、Bステージ状態のフィラー入り熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。混練時に添加することにより、熱硬化性樹脂中に無機フィラーをより均一に分散させることが可能であるが、これに限定されない。熱伝導性フィラーは、混練時に添加してもよいが、樹脂ワニスの混合時に添加してもよい。混練後に冷却固化し、混練物を、顆粒状、タブレット状、またはシート状に加工してもよい。
【0055】
[フェノキシ樹脂]
本発明の第二の実施形態にしたがうフェノキシ樹脂は、式(3)で表される構造を有する。
【0056】
【0057】
式(3)において、
nは繰り返し単位を表す数であり、2~50の整数を表し、好ましくは、5~40の整数であり、より好ましくは、6~30の整数であり、さらにより好ましくは、8~20の整数である。
Xは、メソゲン骨格を有する2価の基である。
Yは、式(1-3)で表される2価の基である。
【0058】
【0059】
式(1-3)において、
R11は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、好ましくは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子、または炭素数1のアルキル基(メチル基)である。
R12は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、好ましくは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子、または炭素数1のアルキル基(メチル基)である。
*は、連結位置を表す、
特に好ましくは、R11およびR12の全てが、水素原子である。
【0060】
式(3)中の「Y」として表される2価の基は、式(1-4)で表される基であることが特に好ましい。式(1-4)で表される基は、平面性が高く、よってこれを含む式(3)で表されるフェノキシ樹脂は、高い剛直性を有し、結果として、高い熱伝導性を有する。
【0061】
【0062】
式(1-4)において、R11およびR12は、前記式(1-3)におけるものと同義であり、*は、連結位置を表す。
【0063】
上記式(3)で表されるフェノキシ樹脂において、式(3)中のXは、メソゲン骨格を有する2価の基である。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に用いられるフェノキシ樹脂は、メソゲン骨格を有する構造単位(X)を含むことにより、その硬化物が高い熱伝導性および高い耐熱性を有する。
【0064】
式(3)中のX基が有するメソゲン骨格としては、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格、フェニルベンゾエート骨格、アゾベンゼン骨格、スチルベン骨格、シクロヘキシルベンゼン骨格、およびそれらの誘導体が挙げられる。X基が上記のメソゲン骨格を有することにより、このフェノキシ樹脂は、高い熱伝導性を有し得る。
【0065】
一実施形態において、式(3)のX基の少なくとも1つは、式(2)で表される基である。式(2)で表されるメソゲン骨格を有する構造を含むことにより、フェノキシ樹脂は高い熱伝導性を有するとともに、優れた耐熱性を有し、よってこれを含む本実施形態の熱硬化性樹脂は、高い熱伝導性を有し得る。
【0066】
【0067】
式(2)において、R1~R8は、独立して、水素原子または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、*は連結位置を表す。
【0068】
一実施形態において、式(2)で表される基は、好ましくは、R1、R4、R5、およびR8が炭素数1~4のアルキル基であり、R2、R3、R6、およびR7が水素原子である基である。中でも、式(2)においてR1、R4、R5、およびR8が炭素数1のアルキル基であり、かつR2、R3、R6、およびR7が水素原子である基(「テトラメチルビフェニル基」と称する)が、これらを含むフェノキシ樹脂の熱伝導性と耐熱性とを優れたバランスで両立できる点で好ましい。
【0069】
一実施形態において、式(2)で表される基は、R1、R4、R5、およびR8が炭素数1のアルキル基であり、かつR2、R3、R6、およびR7が水素原子である基(「ビフェニル基」と称する)であってもよい。このような基を含むことにより、フェノキシ樹脂は優れた熱伝導性と耐熱性とを有する。
【0070】
一実施形態において、式(3)で表されるフェノキシ樹脂は、X基として、テトラメチルビフェニル基とビフェニル基とを含むことが好ましい。これらの基を組み合わせて含むフェノキシ樹脂は、熱伝導性と耐熱性とを優れたバランスで有し得る。
【0071】
式(3)で表されるフェノキシ樹脂は、Y基として、上記式(1-3)で表される2価の基を含む。式(1-3)で表される基は、平面性が高く、高い剛直性を有する。よって、このような基を含むフェノキシ樹脂は、高い熱伝導性を有し、結果として、これを含む熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、高い熱伝導性を有する。
【0072】
式(3)で表されるフェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、たとえば、2,000~10,000であり、好ましくは、2,500~8,000であり、より好ましくは、3,000~7,000であり、さらにより好ましくは、3,500~6,500である。Mwはゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値を示す。Mwを上記範囲とすることで、フェノキシ樹脂の熱伝導性をより向上することができる。
【0073】
本実施形態において、式(3)で表されるフェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて分子量分布曲線を得ることにより測定できる。フェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分散度(PDI:Mw/Mn)は、GPC測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求めたポリスチレン換算値を用いて、算出する。
【0074】
GPCの測定条件は、たとえば以下の通りである。
東ソー(株)社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC-8320GPC
カラム:東ソー(株)社製TSK-GEL GMH、G2000H、SuperHM-M
検出器:液体クロマトグラム用UV検出器
測定温度:40℃
溶媒:THF
試料濃度:2.0mg/ミリリットル
【0075】
式(3)で表されるフェノキシ樹脂の分散度(Mw/Mn)は、例えば、1.00~7.00であり、好ましくは2.00~6.00であり、より好ましくは3.50~5.50である。分散度を上記範囲とすることで、フェノキシ樹脂の熱伝導性および流動性をより向上させることができる。
【0076】
式(3)で表されるフェノキシ樹脂は、重量平均分子量(Mw)が1000以下の低分子量フェノキシ樹脂を含んでもよい。フェノキシ樹脂が低分子量フェノキシ樹脂を含む場合、低分子量フェノキシ樹脂は、GPC測定により得られた分子量分布全体の全面積100%に占める、重量平均分子量Mwが1,000以下に該当する成分の面積総和の割合として、例えば、5%以上60%以下、好ましくは、5%以上50%以下の量である。上記範囲の量で、低分子量フェノキシ樹脂を含むフェノキシ樹脂は、流動性が改善され、取り扱い性に優れる。よって、たとえば、本実施形態の樹脂組成物をシートまたはフィルムの形態に加工する場合の加工安定性が改善される。
【0077】
式(3)で表されるフェノキシ樹脂のエポキシ当量は、本発明の効果の観点から、例えば、300~6,000g/eqであり、好ましくは、350~5,000g/eqであり、より好ましくは、400~4,500g/eqである。
【0078】
式(3)で表されるフェノキシ樹脂は、上述の構造を備えることにより、その硬化物が高い熱伝導性を有する。フェノキシ樹脂の硬化物の熱伝導率は、例えば、0.30W/(m・K)以上である。フェノキシ樹脂自体が高い熱伝導性を有することにより、これを含む樹脂組成物の硬化物もまた、高い熱伝導性を有し得、よって放熱部材等の用途に好適に使用することができる。
【0079】
(フェノキシ樹脂の製造)
本実施形態で用いられる、式(3)で表されるフェノキシ樹脂は、式(d-EP)で表される2官能エポキシ化合物と、式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物とを反応させることにより合成することができる。式(d-EP)で表される2官能エポキシ化合物は、上記第一の実施形態における式(d-EP)の二官能エポキシ化合物と同様である。また、式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物は、上記第一の実施形態における式(1-1)のジヒドロキシ化合物と同様である。
【0080】
【0081】
【0082】
上記の反応は、無溶媒下または反応溶媒の存在下で、反応触媒を用いて行うことができる。
【0083】
使用できる反応溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトフェノン、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、スルホラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンなどを好適に用いることができる。反応溶媒を用いることで初期の粘度を低減させることができ、原料モノマーの反応性が向上する。
【0084】
上記反応触媒としては、従来公知の重合触媒を用いることができ、アルカリ金属水酸化物、第三アミン化合物、第四アンモニウム化合物、第三ホスフィン化合物、および第四ホスホニウム化合物、イミダゾール化合物が好適に使用される。
【0085】
具体的には、式(d-EP)で表される2官能エポキシ化合物と、式(1-1)で表われるジヒドロキシ化合物と、反応触媒と、必要に応じて反応溶媒とを添加し、攪拌下に溶融混合する。溶融混合する際の加熱温度は90~150℃程度、混合時間は30分間~2時間程度、反応圧力は常圧で行われる。溶融混合後、混合溶液を昇温し、所定の反応温度において減圧または常圧下で重合反応を行う。反応温度は140~180℃程度、反応時間は2時間~10時間程度、反応圧力は1~760Torr程度で行われる。
【0086】
反応終了後に溶媒置換などを行なうことで好適な溶媒に溶解した樹脂として得ることが可能である。また、溶媒反応で得られたフェノキシ樹脂は、蒸発器等を用いた脱溶媒処理をすることにより、溶媒を含まない固形状の樹脂として得ることもできる。
【0087】
上記の合成方法における、出発物質の使用量、反応温度、反応時間等の反応条件を適宜選択して重合度を調整することにより、所望の重量平均分子量を有するフェノキシ樹脂を得ることができる。
【0088】
[複合樹脂組成物]
本発明の第三の実施形態にしたがう複合樹脂組成物は、
エポキシ樹脂(A)と、
熱硬化性樹脂(前記エポキシ樹脂を除く)(B)と、
式(3)で表されるフェノキシ樹脂(C)と、
熱伝導性フィラー(D)と、を含む。
ここで、式(3)で表されるフェノキシ樹脂(C)は、上記第二の実施形態にしたがうフェノキシ樹脂である。
【0089】
【0090】
式(3)において、
nは繰り返し単位を表す数であり、2~50の整数を表し、
Xは、メソゲン骨格を有する2価の基であり、
Yは、式(1-3)で表される2価の基である。
【0091】
【0092】
式(1-3)において、
R11は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、
R12は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、
*は、連結位置を表す。
【0093】
本実施形態の複合樹脂組成物は、上記組成を有することにより、高い熱伝導性を有し、たとえば、電子装置の熱伝導性シートとして好適に使用することができる。
以下に、本実施形態の複合樹脂組成物に用いられる成分について説明する。
【0094】
(エポキシ樹脂(A))
本実施形態の複合樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)を含む。エポキシ樹脂(A)としては、例えば、ビスフェノールA型、F型、S型、AD型等のグリシジルエーテル、水素添加したビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック型のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック型のグリシジルエーテル、ビスフェノールA型のノボラック型のグリシジルエーテル、ナフタレン型のグリシジルエーテル、ビフェノール型のグリシジルエーテル、ジヒドロキシペンタジエン型のグリシジルエーテル、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型のグリシジルエーテルなどが挙げられ、少なくとも1種用いることができる。
エポキシ樹脂(A)としては、本発明の効果の観点から、ナフタレン型のグリシジルエーテル、ビフェノール型のグリシジルエーテル、ジヒドロキシペンタジエン型のグリシジルエーテル、ハイドロキノン型のグリシジルエーテルから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0095】
エポキシ樹脂(A)は、好ましくはメソゲン骨格を含むエポキシ樹脂を含むことができる。これにより、樹脂組成物の硬化物の熱伝導性(放熱性)を一層高めることができる。
メソゲン骨格を含むエポキシ樹脂は、硬化時に、そのメソゲン骨格により高次構造(液晶相または結晶相)が形成されると考えられる。そして、その高次構造を熱が伝わることで熱伝導性(放熱性)が一層高まると考えられる。硬化物中の高次構造の存在は、偏光顕微鏡による観察によって確認することができる。
【0096】
メソゲン骨格としては、分子間相互作用の働きにより、液晶性や結晶性を発現しやすくする骨格全般を挙げることができる。メソゲン骨格は、好ましくは共役構造を含む。メソゲン骨格として具体的には、ビフェニル骨格、フェニルベンゾエート骨格、アゾベンゼン骨格、スチルベン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、カルコン骨格、フェナントレン骨格などが挙げられる。
【0097】
エポキシ樹脂(A)は、特に好ましくは縮合多環芳香族炭化水素骨格を含み、とりわけ好ましくは、ナフタレン骨格を含む。
【0098】
ここで、例えば、ビフェニル骨格(-C6H4-C6H4-)は、高温下では、熱運動により左記構造の中心の炭素-炭素の単結合部分が「回転」し、液晶性が低下する可能性がある。フェニルベンゾエート骨格(-C6H4-COO-C6H4-)も、同様に、高温下ではエステル結合が回転する可能性がある。しかし、ナフタレン骨格のような縮合多環芳香族炭化水素骨格では、原理的にはそのような回転による液晶性の低下は無い。つまり、エポキシ樹脂が縮合多環芳香族炭化水素骨格を含むことで、得られる樹脂硬化物の高温環境下での放熱性を一層高めることができる。
【0099】
また、多環芳香族炭化水素骨格として特にナフタレン骨格を採用することで、前記メリットを得つつ、エポキシ樹脂が剛直になりすぎることを抑制することもできる。これは、ナフタレン骨格はメソゲン骨格としては比較的小さいためである。エポキシ樹脂が剛直になりすぎないことは、本実施形態の複合樹脂組成物の硬化時の応力が緩和されやすくなることによるクラック等の抑制、などの点で好ましい。
【0100】
エポキシ樹脂(A)は、2官能以上のエポキシ樹脂を含むことが好ましい。つまり、エポキシ樹脂1分子中には2以上のエポキシ基が含まれることが好ましい。エポキシ樹脂の官能基数は、好ましくは2~6、より好ましくは2~4である。
本実施形態におけるエポキシ樹脂(A)は、本発明の効果の観点から、下記式で表される化合物から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0101】
【0102】
エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は、例えば100~200g/eq、好ましくは105~190g/eq、より好ましくは110~180g/eqである。適度なエポキシ当量を有するエポキシ樹脂を用いることで、硬化性の制御、硬化物の物性の最適化などを図ることができる。
【0103】
一実施形態において、エポキシ樹脂(A)は、室温(23℃)で液状または半固形状である他のエポキシ樹脂をさらに含むことが好ましい。具体的には、エポキシ樹脂の一部または全部は、23℃で液体状または半固形状であることが好ましい。
液状または半固形状エポキシ樹脂を用いることにより、所望の形状の硬化物を形成しやすくなる。
【0104】
一実施形態において、エポキシ樹脂(A)は、室温で液状のエポキシ樹脂と、室温で半固形または固形のエポキシ樹脂とを組み合わせて含むことが好ましい。これにより、得られる複合樹脂組成物の成形性が改善される。
【0105】
エポキシ樹脂(A)は、熱伝導性粒子(D)を含まない複合樹脂組成物の樹脂成分(100質量%)に対して、たとえば、5質量%~40質量%であり、好ましくは、7質量%~35質量%であり、より好ましくは、10質量%~30質量%である。これにより、十分な硬化性を担保することができ、高熱伝導性および絶縁性により優れた樹脂硬化物を得ることができる。
【0106】
(熱硬化性樹脂(B))
本実施形態の複合樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(B)を含む。ここで、熱硬化性樹脂(B)は、上述のエポキシ樹脂(A)を含まない。
熱硬化性樹脂(B)としては、分子内にメソゲン構造(メソゲン骨格)を含有する熱硬化性化合物や、分子内にメソゲン構造を含有しない熱硬化性化合物が挙げられる。
【0107】
熱硬化性樹脂(B)としては、例えば、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、またフェノール誘導体これらの誘導体等が挙げられ、少なくとも1種含むことができる。
【0108】
本実施形態においては、熱硬化性樹脂(B)は、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、およびベンゾオキサジン樹脂から選択される少なくとも1種含むことが好ましく、中でもシアネート樹脂を含むことがより好ましい。
これらの熱硬化性樹脂は、1分子内に反応性官能基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。
【0109】
<シアネート樹脂>
シアネート樹脂としては、本発明の効果を奏する範囲で公知のものを用いることができる。シアネート樹脂は、例えばノボラック型シアネート樹脂;ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂;ナフトールアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとの反応で得られるナフトールアラルキル型シアネート樹脂;ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂;ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型シアネート樹脂から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、本発明の効果の観点から、ノボラック型シアネート樹脂およびナフトールアラルキル型シアネート樹脂のうちの少なくとも一方を含むことがより好ましく、ノボラック型シアネート樹脂を含むことが特に好ましい。
【0110】
ノボラック型シアネート樹脂としては、例えば、下記一般式(I)で示されるものを使用することができる。
【0111】
【0112】
一般式(I)で示されるノボラック型シアネート樹脂の平均繰り返し単位nは任意の整数である。平均繰り返し単位nは、特に限定されないが、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。平均繰り返し単位nが上記下限値以上であると、ノボラック型シアネート樹脂の耐熱性が向上し、加熱時に低量体が脱離、揮発することをより一層抑制できる。また、平均繰り返し単位nは、特に限定されないが、10以下が好ましく、7以下がより好ましい。nが上記上限値以下であると、溶融粘度が高くなるのを抑制でき、複合樹脂組成物の成形性を向上させることができる。よって、複合樹脂組成物をシート状物に成形する際の製造効率が向上する。
【0113】
また、シアネート樹脂としては、下記一般式(II)で表わされるナフトールアラルキル型シアネート樹脂も好適に用いられる。下記一般式(II)で表わされるナフトールアラルキル型シアネート樹脂は、例えば、α-ナフトールあるいはβ-ナフトール等のナフトール類とp-キシリレングリコール、α,α'-ジメトキシ-p-キシレン、1,4-ジ(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ベンゼン等との反応により得られるナフトールアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとを縮合させて得られるものである。一般式(II)の繰り返し単位nは10以下の整数であることが好ましい。繰り返し単位nが10以下であると、より均一な樹脂シートを得ることができる。また、合成時に分子内重合が起こりにくく、水洗時の分液性が向上し、収量の低下を防止できる傾向がある。
【0114】
【0115】
上記一般式(II)中、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、nは1以上10以下の整数を示す。
【0116】
シアネート樹脂を用いる場合、その配合量は、熱伝導性粒子(D)を含まない複合樹脂組成物の樹脂成分(100質量%)に対して、例えば、10質量%~70質量%であり、好ましくは、15質量%~60質量%であり、より好ましくは、20質量%~50質量%である。これにより、十分な硬化性を担保することができ、さら高熱伝導性および絶縁性により優れた樹脂シートを得ることができる。
【0117】
<マレイミド樹脂>
マレイミド樹脂は、例えば分子内に少なくとも2つのマレイミド基を有するマレイミド樹脂が好ましい。
【0118】
分子内に少なくとも2つのマレイミド基を有するマレイミド樹脂としては、例えば、4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、N,N'-エチレンジマレイミド、N,N'-ヘキサメチレンジマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド等の分子内に2つのマレイミド基を有する樹脂、ビフェニルアラルキル型マレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド等の分子内に3つ以上のマレイミド基を有する樹脂等が挙げられる。
【0119】
<フェノール樹脂>
フェノール樹脂としては、たとえば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、およびレゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。フェノール樹脂の中でも、フェノールノボラック樹脂を用いることが好ましい。
【0120】
<ベンゾオキサジン樹脂>
ベンゾオキサジン樹脂としては、具体的には、o-クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、m-クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、p-クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-メチルアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-シクロヘキシルアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-m-トルイジン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-3,5-ジメチルアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA-アミン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールF-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールS-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ジヒドロキシジフェニルスルホン-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ジヒドロキシジフェニルエーテル-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾフェノン型ベンゾオキサジン樹脂、ビフェニル型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールAF-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA-メチルアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-ジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン樹脂、トリフェニルメタン型ベンゾオキサジン樹脂、およびフェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂などが挙げられる。
【0121】
熱硬化性樹脂(B)の含有量は、本発明の効果の観点から、熱伝導性粒子(D)を含まない複合樹脂組成物の樹脂成分(100質量%)に対して、例えば、0.1質量%~70質量%であり、好ましくは、0.5質量%~65質量%であり、より好ましくは、1質量%~60質量%である。
【0122】
(フェノキシ樹脂(C))
本実施形態の複合樹脂組成物は、フェノキシ樹脂(C)を含む。フェノキシ樹脂(C)は、上述の第二の実施形態にしたがうフェノキシ樹脂を使用することができる。
【0123】
フェノキシ樹脂(C)の配合量は、熱伝導性粒子(D)を含まない複合樹脂組成物の樹脂成分(100質量%)に対して、例えば、2質量%~50質量%であり、好ましくは、5質量%~40質量%であり、より好ましくは、10質量%~30質量%である。上記範囲内の量でフェノキシ樹脂(C)を用いることにより、複合樹脂組成物は、良好な取扱い性を有するとともに、良好なシート形成を有する。
【0124】
(熱伝導性フィラー(D))
本実施形態の複合樹脂組成物は、熱伝導性フィラー(D)を含む。
熱伝導性フィラー(D)は、たとえば、20W/m・K以上の熱伝導率を有する高熱伝導性無機フィラーを含むことができる。高熱伝導性無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素及び酸化マグネシウムから選択される少なくとも1種以上を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0125】
前記窒化ホウ素は、鱗片状窒化ホウ素の、単分散粒子、凝集粒子またはこれらの混合物を含むことができる。鱗片状窒化ホウ素は顆粒状に造粒されていてもよい。鱗片状窒化ホウ素の凝集粒子を用いることによって、一層に熱伝導性を高められる。凝集粒子は、焼結粒子であっても、非焼結粒子であってもよい。
【0126】
熱伝導性フィラー(D)は、前記窒化ホウ素を60質量%以上、好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上含むことができる。上限値は特に限定されないが、100質量%以下、好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下とすることができる。
【0127】
熱伝導性フィラー(D)の含有量は、複合樹脂組成物の樹脂成分(100質量%)に対して、100質量%~400質量%であり、好ましくは150質量%~350質量%であり、より好ましくは200質量%~330質量%である。前記下限値以上とすることにより、熱伝導性を向上させることができる。前記上限値以下とすることにより、プロセス性の低下を抑制することができる。
【0128】
(硬化促進剤)
本実施形態の複合樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤を含むことができる。
硬化促進剤の種類や配合量は特に限定されないが、反応速度や反応温度、保管性などの観点から、適切なものを選択することができる。
【0129】
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類、有機リン化合物、3級アミン類、フェノール化合物、有機酸等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。この中でも、耐熱性を高める観点から、イミダゾール類などの窒素原子含有化合物を用いることが好ましい。硬化促進剤の具体例は、上述の第一の実施形態にしたがう熱硬化性樹脂組成物におけるものと同様である。
【0130】
硬化促進剤の含有量は、上記のエポキシ樹脂(A)と熱硬化性樹脂(B)の合計100質量%に対して、0.01質量%~10質量%であり、好ましくは、0.02質量%~5質量%であり、より好ましくは、0.05質量%~1.5質量%である。
【0131】
(シランカップリング剤)
本実施形態の複合樹脂組成物は、シランカップリング剤を含んでもよい。これにより、複合樹脂組成物中における熱伝導性フィラー(D)の相溶性を向上させることができる。カップリング剤は、複合樹脂組成物に添加してもよいし、熱伝導性フィラー表面に処理して使用してもよい。
【0132】
(その他の添加剤)
本実施形態の複合樹脂組成物は、上述した成分以外の他の成分を含むことができる。この他の成分としては、例えば、酸化防止剤、レベリング剤が挙げられる。
【0133】
[複合樹脂組成物の製造方法]
本実施形態の複合樹脂組成物は、例えば、熱伝導性フィラー(D)以外の上記の各成分を、溶剤中に溶解、混合、撹拌することにより樹脂ワニス(ワニス状の熱硬化性樹脂組成物)を調製し、その後、この樹脂ワニスに熱伝導性フィラー(D)を混合することにより製造することができる。樹脂成分の混合は、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いることができる。
【0134】
上記溶剤としては特に限定されないが、アセトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、およびN-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0135】
樹脂ワニスに熱伝導性フィラー(D)を混練する工程は、三本ロール等を用いて実施することができる。樹脂ワニスに熱伝導性フィラーを添加することにより、樹脂中に無機フィラーをより均一に分散させることが可能であるが、これに限定されない。熱伝導性フィラーは、混練時に添加してもよいが、樹脂ワニスの混合時に添加してもよい。混練後に冷却固化し、混練物を、顆粒状、タブレット状、またはシート状に加工してもよい。複合樹脂組成物は、Bステージ状態で提供されることが好ましい。
【0136】
[樹脂シート]
本実施形態の樹脂シートは、上記熱硬化性樹脂組成物または複合樹脂組成物を成形してなるシートである。樹脂シートの具体的な形態は、キャリア基材と、キャリア基材上に設けられた、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物または複合樹脂組成物からなる樹脂層と、を備えるものである。
【0137】
上記樹脂シートは、たとえばワニス状の熱硬化性樹脂組成物または複合樹脂組成物をキャリア基材上に塗布して得られた塗布膜(樹脂層)に対して、溶剤除去処理を行うことにより得ることができる。上記樹脂シート中の溶剤含有率が、熱硬化性樹脂組成物全体または複合樹脂組成物全体に対して10質量%以下とすることができる。たとえば80℃~200℃、1分間~30分間の条件で溶剤除去処理を行うことができる。
【0138】
本実施形態の樹脂シート(樹脂層)は、Bステージ状態で提供されることが好ましい。
【0139】
また、本実施形態において、上記キャリア基材としては、例えば、高分子フィルムや金属箔などを用いることができる。当該高分子フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、シリコーンシート等の離型紙、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂シート等が挙げられる。当該金属箔としては、特に限定されないが、例えば、銅および/または銅系合金、アルミおよび/またはアルミ系合金、鉄および/または鉄系合金、銀および/または銀系合金、金および金系合金、亜鉛および亜鉛系合金、ニッケルおよびニッケル系合金、錫および錫系合金などが挙げられる。
【0140】
本実施形態の樹脂基板は、上記熱硬化性樹脂組成物または複合樹脂組成物の硬化物で構成された絶縁層を備えるものである。この樹脂基板は、LED、パワーモジュールなどの電子部品を搭載するためのプリント基板の材料として用いることができる。
【0141】
[電子装置]
樹脂シートの硬化物は、発熱体と、放熱体との間に介在する熱伝導性シートとして使用される。
【0142】
発熱体としては、半導体素子、LED素子、半導体素子やLED素子等が搭載された基板、Central Processing Unit(CPU)、パワー半導体、リチウムイオン電池、燃料電池等を挙げることができる。
放熱体としては、ヒートシンク、ヒートスプレッダー、放熱(冷却)フィン等を挙げることができる。
放熱絶縁部材は、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物または複合樹脂組成物で一部が構成されていればよく、具体的には、上記の熱硬化性樹脂組成物または複合樹脂組成物を硬化してなる放熱シート、当該放熱シートと基板とが積層された積層体(例えば、
図1の金属ベース基板100)等を挙げることができる。前記基板は、放熱性の金属基板であれば特に限定されないが、例えば、銅基板、銅合金基板、アルミニウム基板、アルミニウム合金基板であり、銅基板またはアルミニウム基板が好ましく、銅基板がより好ましい。銅基板またはアルミニウム基板を用いることで、放熱絶縁部材の放熱性を良好なものとすることができる。
前記放熱絶縁部材は、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物または複合樹脂組成物で一部が構成されており、その熱伝導率は、好ましくは12W/m・K以上、さらに好ましくは15W/m・K以上である。
放熱絶縁部材および放熱体は、発熱体の片面に形成されていてもよく、両面に形成されていてもよい。また、前記発熱体と前記放熱絶縁部材との間、または前記放熱絶縁部材と前記放熱体との間には、放熱性に影響を与えない範囲で、各種基材や層が設けられていてもよい。
【0143】
本実施形態において、前記発熱体と、前記放熱絶縁部材と、前記放熱体とは、前述のものから適宜組み合わせて、積層構造体を得ることができる。当該積層構造体は、放熱絶縁性が要求される各種用途に用いることができ、半導体装置、スマートフォン、LED電球・ライト、パワーモジュール、リチウムイオン電池、燃料電池、無線基地局、無停電電源装置等の各種用途に用いることができる。
【0144】
[金属ベース基板]
本実施形態の金属ベース基板(放熱樹脂部材)100について
図1に基づいて説明する。
図1は、金属ベース基板100の構成の一例を示す概略断面図である。
【0145】
上記金属ベース基板100は、
図1に示すように、金属基板101と、金属基板101上に設けられた絶縁層102と、絶縁層102上に設けられた金属層103と、を備えることができる。この絶縁層102は、上記の熱硬化性樹脂組成物または複合樹脂組成物からなる樹脂層、熱硬化性樹脂組成物または複合樹脂組成物の硬化物および積層板からなる群から選択される一種で構成することが可能である。これらの樹脂層、積層板のそれぞれは、金属層103の回路加工の前では、Bステージ状態の熱硬化性樹脂組成物(樹脂シート)で構成されていてもよく、回路加工の後では、それを硬化処理されてなる硬化体であってもよい。
【0146】
金属層103は絶縁層102上に設けられ、回路加工されるものである。この金属層103を構成する金属としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、鉄、錫等から選択される一種または二種以上が挙げられる。これらの中でも、金属層103は、好ましくは銅層またはアルミニウム層であり、特に好ましくは銅層である。銅またはアルミニウムを用いることで、金属層103の回路加工性を良好なものとすることができる。金属層103は、板状で入手できる金属箔を用いてもよいし、ロール状で入手できる金属箔を用いてもよい。
【0147】
金属層103の厚みの下限値は、例えば、0.01mm以上であり、好ましくは0.035mm以上であれば、高電流を要する用途に適用できる。
また、金属層103の厚みの上限値は、例えば、10.0mm以下であり、好ましくは5mm以下である。このような数値以下であれば、回路加工性を向上させることができ、また、基板全体としての薄型化を図ることができる。
【0148】
金属基板101は、金属ベース基板100に蓄積された熱を放熱する役割を有する。金属基板101は、放熱性の金属基板であれば特に限定されないが、例えば、銅基板、銅合金基板、アルミニウム基板、アルミニウム合金基板であり、銅基板またはアルミニウム基板が好ましく、銅基板がより好ましい。銅基板またはアルミニウム基板を用いることで、金属基板101の放熱性を良好なものとすることができる。
金属基板101の厚さは、本発明の目的が損なわれない限り、適宜設定できる。
【0149】
金属基板101の厚さの上限値は、例えば、20.0mm以下であり、好ましくは5.0mm以下である。この数値以下の金属ベース基板100の外形加工や切り出し加工等における加工性を向上させることができる。
【0150】
また、金属基板101の厚さの下限値は、例えば、0.01mm以上であり、好ましくは0.6mm以上である。この数値以上の金属基板101を用いることで、金属ベース基板100全体としての放熱性を向上させることができる。
【0151】
本実施形態において、金属ベース基板100は、各種の基板用途に用いることが可能であるが、熱伝導性及び耐熱性に優れることから、LEDやパワーモジュールを用いるプリント基板として用いることが可能である。
【0152】
金属ベース基板100は、パターンにエッチング等することによって回路加工された金属層103を有することができる。この金属ベース基板100において、最外層に不図示のソルダーレジストを形成し、露光・現像により電子部品が実装できるよう接続用電極部が露出されていてもよい。
【0153】
[半導体装置]
実施形態の金属ベース基板(放熱絶縁部材)100は、放熱絶縁性が要求される各種用途に用いることができ、例えば半導体装置等の電子装置に用いることができる。
図2は、金属ベース基板100を用いた半導体装置の一例を示す概略断面図である。
金属ベース基板100の金属層103上に接着層202(ダイアタッチ材)を介して半導体素子201が搭載されている。半導体素子201は、ボンディングワイヤ203を介して金属ベース基板100に形成された接続用電極部に接続されており、金属ベース基板100に実装されている。
そして、半導体素子201は、金属ベース基板100上に封止樹脂層205により一括封止されている。
【0154】
金属ベース基板100の金属基板101側には、熱伝導層206(サーマル・インターフェース材(TIM))を介してヒートシンク207が設けられている。ヒートシンク207は熱伝導性に優れた材料から構成されており、アルミニウム、鉄、銅などの金属が挙げられる。
【0155】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0156】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0157】
<実施例A1、比較例A1>
(ジヒドロキシ化合物を含む熱硬化性樹脂組成物の調製)
表1に示す配合で、各成分を混合して、樹脂組成物を得た。表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。なお、表1中の各成分の量の単位は質量部である。
【0158】
(ジヒドロキシ化合物)
・ジヒドロキシ化合物1:下記式(1-5)で表される化合物
【化30】
【0159】
・多官能フェノール樹脂1:ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製、PR-55617)
【0160】
(2官能エポキシ化合物)
・2官能エポキシ化合物1:下記式(4)で表されるテトラメチルビフェニル型エポキシ化合物(三菱ケミカル社製、YX-4000H、室温で固形)
【化31】
【0161】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:2-メチル-イミダゾール
【0162】
(熱硬化性樹脂組成物の物性測定)
(熱伝導率の測定)
実施例A1または比較例A1の樹脂組成物を、離型剤を塗布した金型にセットし、コンプレッション成形を180℃、30min行い、10mm□×厚み1mmの樹脂成形物を得た。その後、オーブンにて180℃、180minの硬化を行い、樹脂成形体1(熱伝導率測定用サンプル)を得た。
得られた樹脂成形体1から、厚み方向測定用として、10mm□×厚み1mmに加工したものを試験片とした。次に、NETZSCH社製のXeフラッシュアナライザーLFA467 HyperFlashを用いて、Xeフラッシュ法により板状の試験片の厚み方向の熱拡散率(α)[m2/s]の測定を行った。測定は、大気雰囲気下、25℃の条件下で行った。結果を以下の表1に示す。熱拡散率の値が大きいほど、熱伝導性が高いことを表す。
【0163】
【0164】
<実施例B1>
(フェノキシ樹脂の調製)
下記の方法を用いて、フェノキシ樹脂1を調製した。フェノキシ樹脂の調製に使用した原料モノマーを、以下に示す。
・エポキシモノマー1:下記式(4)で表されるテトラメチルビフェニル型エポキシ化合物(三菱ケミカル社製、YX-4000H、室温で固形)
【化32】
【0165】
・ジヒドロキシ化合物1:下記式(1-5)で表されるジヒドロキシ化合物
【化33】
【0166】
(フェノキシ樹脂1の調製)
エポキシモノマー1(75.8重量部)、ジヒドロキシ化合物1(24.2重量部)、トリフェニルホスフィン(TPP)(0.04重量部)、及び溶剤(シクロヘキサノン)(2重量部)を反応器に投下し、110℃~120℃で1時間溶融混合した。エポキシモノマー1とフェノールモノマー1との当量比(Ep/Ph)は、2.00であった。得られた混合液を170℃に昇温し、当該温度で減圧下にて溶剤を除去しながら反応させ、GPCで目的の分子量となることを確認し、反応を停止させ、フェノキシ樹脂1を得た。反応は5時間行った。反応後、室温まで冷却し、得られた固体を粉砕し褐色粉末状固体として回収した。下記式(3)で表されるフェノキシ樹脂1(式(3)中の繰り返し単位数nの平均値は3.4であり、Xはエポキシモノマー1由来の構造単位であり、Yはジヒドロキシ化合物1由来の構造単位であり、GPCによる重量平均分子量Mwは2000であり、多分散度(Mw/Mn)は3.84である)を95重量部得た。
【化34】
【0167】
(フェノキシ樹脂の熱伝導性測定)
上記で得たフェノキシ樹脂1(99質量部)と、硬化促進剤としての2-メチル-イミダゾール(1質量部)とを混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を、離型剤を塗布した金型にセットし、コンプレッション成形を180℃、30min行い、10mm□×厚み1mmの樹脂成形物を得た。その後、オーブンにて180℃、180minの硬化を行い、樹脂成形体2(熱伝導率測定用サンプル)を得た。
得られた樹脂成形体2から、厚み方向測定用として、10mm□×厚み1mmに加工したものを試験片とした。次に、NETZSCH社製のXeフラッシュアナライザーLFA467 HyperFlashを用いて、Xeフラッシュ法により板状の試験片の厚み方向の熱拡散率(α)[m2/s]の測定を行った。測定は、大気雰囲気下、25℃の条件下で行った。フェノキシ樹脂1の硬化物の熱伝導率は、0.35W/m・Kであった。
【0168】
<実施例C1~C2、比較例C1>
(複合樹脂組成物の調製)
表2に示す配合で、各成分を混合して、樹脂組成物を得た。表2中の各成分の詳細は以下のとおりである。なお、表2中の各成分の量の単位は質量部である。
【0169】
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:下記構造のエポキシ樹脂(DIC社製、HP-4032D、室温で液状)
【化35】
【0170】
・エポキシ樹脂2:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON HP-7200L、室温で固形)
・エポキシ樹脂3:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、YX-4000K、室温で固形)
【0171】
(シアネート樹脂)
・シアネート樹脂1:Lonza社製、Primaset「PT-30S」
【0172】
(フェノール樹脂)
・フェノール樹脂1:アリル基含有フェノールノボラック樹脂(明和化成株式会社製、製品名「MEH-8000H」)
【0173】
(フェノキシ樹脂)
・フェノキシ樹脂1:上記実施例B1で得られたフェノキシ樹脂1
・フェノキシ樹脂2:下記の式(7)で表されるビスフェノールA型フェノキシ樹脂(メソゲン構造なし、三菱ケミカル社製、YP-55)
【0174】
【0175】
(熱伝導性フィラー)
・熱伝導性フィラー1:凝集窒化ホウ素(水島合金鉄社製、HP40)
【0176】
(複合樹脂組成物の硬化物の物性測定)
上記で得られた複合樹脂組成物の硬化物について、以下の物性を測定した。
【0177】
(熱伝導率)
・樹脂成形体の作製
得られた熱伝導性フィラーを含有する複合樹脂組成物を用い、0.018mmの銅箔で挟みセットし、コンプレッション成形を10MPaで180℃、90minを行い、樹脂成形体3(熱伝導率測定用サンプル3)を得た。得られた成形体3から10mm□の熱拡散率測定用サンプルを切り出し、熱拡散率測定に用いた。
【0178】
・樹脂成形体の密度(比重)
密度(比重)測定は、JIS K 6911(熱硬化性プラスチック一般試験方法)に準拠して行った。試験片は、上記の樹脂成形体3から、縦2cm×横2cmに切り出したものを用いた。密度(比重)(ρ)の単位をg/cm3とする。
【0179】
・樹脂成形体の比熱
得られた上記の樹脂成形体3について、DSC法により比熱(Cp)を測定した。
【0180】
・樹脂成形体の熱伝導率の測定
得られた樹脂成形体3から、厚み方向測定用として、10mm□に切り出したものを試験片とした。次に、NETZSCH社製のXeフラッシュアナライザーLFA467 HyperFlashを用いて非定常法により板状の試験片の厚み方向の熱拡散係数(α)の測定を行った。測定は、大気雰囲気下、25℃の条件下で行った。
樹脂成形体について、得られた熱拡散係数(α)、比熱(Cp)、密度(ρ)の測定値から、下記式に基づいて熱伝導率を算出した。結果を表2に示す。
熱伝導率[W/m・K]=α[m2/s]×Cp[J/kg・K]×ρ[g/cm3]
【0181】
(吸湿率)
得られた樹脂成形体3から吸湿率測定用として、5cm□に切り出したものをエッチングにより銅箔を除去し、試験片とした。30℃/90%RH条件で48時間放置したときの処理前後の重量変化から吸湿率(%)を算出した。
【0182】
(半田耐熱性)
得られた樹脂成形体3を50mm×50mmにグラインダーソーでカットした後、エッチングにより銅箔を1/2だけ残した試料を作製し、JIS C 6481に準拠して評価した。評価は、300℃の半田槽に5分間浸漬した後で外観の異常の有無を調べた。評価基準は以下のとおりである。
<評価基準>
A:異常なし
B:異常あり(全体的に膨れの箇所がある)
【0183】
(吸湿半田耐熱性)
得られた樹脂成形体3を50mm×50mmにグラインダーソーでカットした後、JIS C 6481に従い半面エッチングを行って試料を作製した。温度40℃、湿度90%の環境下に2日間静置した後、297℃のはんだ槽に銅箔面を下にして浮かべ、1分後の外観異常の有無を調べた。評価基準は以下のとおりである。結果を表1に示す。
<評価基準>
A:異常なし
B:膨れあり(全体的に膨れの箇所がある)
【0184】