(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142658
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】液晶装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/133 20060101AFI20241003BHJP
G02F 1/1345 20060101ALI20241003BHJP
G02F 1/1368 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
G02F1/133 550
G02F1/1345
G02F1/1368
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054899
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】藤川 紳介
【テーマコード(参考)】
2H092
2H192
2H193
【Fターム(参考)】
2H092JA24
2H092JB77
2H092NA30
2H092RA05
2H192AA24
2H192FA65
2H192FA72
2H192HB04
2H192HB12
2H192HB13
2H192HB22
2H192JB02
2H193ZA04
2H193ZH21
2H193ZH30
2H193ZK03
2H193ZK09
2H193ZK14
2H193ZR04
(57)【要約】
【課題】液晶中の可動性イオンが急増する前において、可動性イオンが徐々に増えていく状況を観測できる液晶装置を提供する。
【解決手段】液晶装置は、第1電極と、液晶層と、第2電極と、測定回路と、を備え、測定回路は、第1期間において、第1電極に第1電位を供給し、第2電極に第1電位よりも高い第2電位を供給し、第2期間において、第1電極に第1電位を供給し、第2電極に第1電位よりも高く且つ第2電位よりも低い第3電位を供給し、第3期間において、第1電極に第3電位よりも高く且つ第2電位よりも低い第4電位を供給し、第2電極に第3電位を供給し、第4期間において、第1電極への電位の供給を停止し、第2電極に第3電位を供給する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
液晶層と、
前記液晶層を介して前記第1電極に対向する第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給すると共に、前記第1電極の電位を測定する測定回路と、
を備え、
前記測定回路は、
第1期間において、前記第1電極に第1電位を供給し、前記第2電極に前記第1電位よりも高い第2電位を供給し、
前記第1期間後の第2期間において、前記第1電極に前記第1電位を供給し、前記第2電極に前記第1電位よりも高く且つ前記第2電位よりも低い第3電位を供給し、
前記第2期間後の第3期間において、前記第1電極に前記第3電位よりも高く且つ前記第2電位よりも低い第4電位を供給し、前記第2電極に前記第3電位を供給し、
前記第3期間後の第4期間において、前記第1電極への電位の供給を停止し、前記第2電極に前記第3電位を供給する、
液晶装置。
【請求項2】
表示領域に設けられた画素電極をさらに備え、
前記第1電極は、前記表示領域の外に設けられる、
請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記第1期間は、前記表示領域における1フレーム期間より長く、
前記第1期間における前記第1電極と前記第2電極との電位差の絶対値は、前記表示領域における前記液晶層の最大印加電圧以上である、
請求項2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記第2期間における前記第1電極と前記第2電極との電位差の絶対値は、0Vより大きく、且つ前記液晶層の閾値電圧より小さい、
請求項2に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記第3期間は、前記表示領域における1フレーム期間より短く、
前記第3期間における前記第1電極と前記第2電極との電位差の絶対値は、0Vより大きく、且つ前記液晶層の閾値電圧より小さい、
請求項2に記載の液晶装置。
【請求項6】
前記測定回路は、
前記第4期間後の第5期間において、前記第1電極に前記第2電位を供給し、前記第2電極に前記第1電位を供給し、
前記第5期間後の第6期間において、前記第1電極に前記第4電位を供給し、前記第2電極に前記第3電位を供給し、
前記第6期間後の第7期間において、前記第1電極に前記第1電位を供給し、前記第2電極に前記第3電位を供給し、
前記第7期間後の第8期間において、前記第1電極への電位の供給を停止し、前記第2電極に前記第3電位を供給する、
請求項2に記載の液晶装置。
【請求項7】
前記第5期間は、前記表示領域における1フレーム期間より長く、
前記第5期間における前記第1電極と前記第2電極との電位差の絶対値は、前記表示領域における前記液晶層の最大印加電圧以上である、
請求項6に記載の液晶装置。
【請求項8】
前記第6期間における前記第1電極と前記第2電極との電位差の絶対値は、0Vより大きく、且つ前記液晶層の閾値電圧より小さい、
請求項6に記載の液晶装置。
【請求項9】
前記第7期間は、前記表示領域における1フレーム期間より短く、
前記第7期間における前記第1電極と前記第2電極との電位差の絶対値は、0Vより大きく、且つ前記液晶層の閾値電圧より小さい、
請求項6に記載の液晶装置。
【請求項10】
第1電極と、
液晶層と、
前記液晶層を介して前記第1電極に対向する第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給すると共に、前記第1電極の電位を測定する測定回路と、
を備え、
前記測定回路は、
第1期間において、前記第2電極に前記第1電位を供給し、前記第1電極に前記第1電位よりも高い第2電位を供給し、
前記第1期間後の第2期間において、前記第2電極に前記第1電位よりも高く且つ前記第2電位よりも低い第3電位を供給し、前記第1電極に前記第3電位よりも高く且つ前記第2電位よりも低い第4電位を供給し、
前記第2期間後の第3期間において、前記第1電極に前記第1電位を供給し、前記第2電極に前記第3電位を供給し、
前記第3期間後の第4期間において、前記第1電極への電位の供給を停止し、前記第2電極に前記第3電位を供給する、
液晶装置。
【請求項11】
前記測定回路は、
前記第1電極と電気的に接続される第1ノードと、
前記第2電極と電気的に接続される第2電極線と、
前記第1電位が印加される第1電位線と、
前記第1ノードと前記第1電位線との間に電気的に接続される第1コンデンサーと、
前記第2電極線と前記第1電位線との間に電気的に接続される第2コンデンサーと、
第1スイッチと、
第2スイッチと、
第3スイッチと、
第4スイッチと、
第5スイッチと、
第1参照電圧に対応する第1測定電位を出力する第1給電回路と、
前記第2電位を出力する第2給電回路と、
前記第3電位を出力する第3給電回路と、
前記第1参照電圧を前記第1給電回路に出力し、前記第1スイッチから前記第5スイッチを制御する制御回路と、
前記第1ノードの電位を前記第1電極の電位として測定する電位測定回路と、
を備え、
前記第1ノードは、前記第1スイッチを介して前記第1電位線と電気的に接続され、
前記第1ノードは、前記第2スイッチを介して前記第1給電回路の出力端子と電気的に接続され、
前記第2電極線は、前記第3スイッチを介して前記第1電位線と電気的に接続され、
前記第2電極線は、前記第4スイッチを介して前記第3給電回路の出力端子と電気的に接続され、
前記第2電極線は、前記第5スイッチを介して前記第2給電回路の出力端子と電気的に接続される、
請求項1から10のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項12】
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチは、第1電圧によって制御され、
前記第3スイッチ、前記第4スイッチ及び前記第5スイッチは、前記第1電圧よりも高い第2電圧によって制御される、
請求項11に記載の液晶装置。
【請求項13】
前記測定回路は、
前記第1電極と電気的に接続される第1ノードと、
前記第2電極と電気的に接続される第2電極線と、
前記第1電位が印加される第1電位線と、
前記第1ノードと前記第1電位線との間に電気的に接続される第1コンデンサーと、
前記第2電極線と前記第1電位線との間に電気的に接続される第2コンデンサーと、
第1スイッチと、
第2スイッチと、
第3スイッチと、
第4スイッチと、
第1参照電圧に対応する第1測定電位を出力する第1給電回路と、
第2参照電圧に対応する第2測定電位を出力する第4給電回路と、
前記第1参照電圧を前記第1給電回路に出力し、前記第2参照電圧を前記第4給電回路に出力し、前記第1スイッチから前記第4スイッチを制御する制御回路と、
前記第1ノードの電位を前記第1電極の電位として測定する電位測定回路と、
を備え、
前記第1ノードは、前記第1スイッチを介して前記第1電位線と電気的に接続され、
前記第1ノードは、前記第2スイッチを介して前記第1給電回路の出力端子と電気的に接続され、
前記第2電極線は、前記第3スイッチを介して前記第1電位線と電気的に接続され、
前記第2電極線は、前記第4スイッチを介して前記第4給電回路の出力端子と電気的に接続される、
請求項1から10のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項14】
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチは、第1電圧によって制御され、
前記第3スイッチ及び前記第4スイッチは、前記第1電圧よりも高い第2電圧によって制御される、
請求項13に記載の液晶装置。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか一項に記載の液晶装置を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置に用いられる液晶は、長時間のDC電圧成分の印加によって劣化する。また、液晶装置をプロジェクターのライトバルブとして使用する場合では、液晶は高強度の光入射と熱による化学的作用によっても劣化する。液晶の劣化とは、例えば、液晶中に陰イオン、陽イオンからなる可動性イオンが増加し、それによって、液晶の絶縁性が低下する現象である。絶縁性の低下は、例えば、液晶の電圧保持率の低下として現れ、液晶パネルではシミ、ムラ等の表示不良となって視認される。特許文献1には、このような液晶の劣化現象を加速評価する方法が開示されている。この方法では、液晶パネルの表示領域外に一対の劣化評価用電極を設け、当該液晶パネルに100時間の加速試験を行った後、当該劣化評価用電極間に、5Vの電圧を50μ秒印加し、その後、16.7m秒後の電圧保持率を測定することによって、液晶の劣化評価を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人の研究によれば、例えば、液晶パネルを用いて高強度の光入射を伴う加速試験を実施すると、液晶中の可動性イオンが比較的穏やかに増加する段階と、その後、液晶中の可動性イオンが急激に増加する段階があることが判っている。また、可視光以外の、例えば、UV光を液晶パネルに入射させる場合には、UV光の高エネルギーによって化学的作用が強まり、液晶の劣化が早く進行する。
【0005】
そして、液晶中の可動性イオン量が顕著になると、液晶パネルの表示品位の低下などの不具合の発生が避けられないため、予防保全の観点から液晶パネルが寿命に達する前に、液晶パネルの寿命が近いことを知りたい、という要望があった。
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、予防保全を行うことは困難であるという課題があった。詳しくは、本出願人の検証結果によれば、特許文献1の方法では、液晶中の可動性イオンが比較的穏やかに増加する段階において、可動性イオンが徐々に増加していく状況を観測することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様の液晶装置は、第1電極と、液晶層と、前記液晶層を介して前記第1電極に対向する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給すると共に、前記第1電極の電位を測定する測定回路と、を備え、前記測定回路は、第1期間において、前記第1電極に第1電位を供給し、前記第2電極に前記第1電位よりも高い第2電位を供給し、前記第1期間後の第2期間において、前記第1電極に前記第1電位を供給し、前記第2電極に前記第1電位よりも高く且つ前記第2電位よりも低い第3電位を供給し、前記第2期間後の第3期間において、前記第1電極に前記第3電位よりも高く且つ前記第2電位よりも低い第4電位を供給し、前記第2電極に前記第3電位を供給し、前記第3期間後の第4期間において、前記第1電極への電位の供給を停止し、前記第2電極に前記第3電位を供給する。
【0008】
本発明の一つの態様の電子機器は、上記態様の液晶装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の液晶装置に用いられる液晶パネルの概略的な構成を示す平面図である。
【
図3】第1実施形態の液晶装置の概略的な構成を示す説明図である。
【
図4】液晶層の物性測定方法を示す概略的なフローチャートである。
【
図5】第1実施形態における検出電極及び共通電極のそれぞれの電位の時間的な変化を示す図である。
【
図6】第1実施形態における第1測定処理及び第2測定処理の実行時における検出電極と共通電極との電位差の時間的な変化を示す図である。
【
図7】使用時間と放電特性との関係を示す図である。
【
図11】液晶層の規格化透過率と電圧との関係を示す図である。
【
図13】液晶層の劣化の進行を追跡した結果を示す第1図である。
【
図14】液晶層の劣化の進行を追跡した結果を示す第2図である。
【
図15】測定再現性を検証した結果を示す第1図である。
【
図16】測定再現性を検証した結果を示す第2図である。
【
図17】第2実施形態の液晶装置の概略的な構成を示す説明図である。
【
図18】電子機器として投射型表示装置の概略的な構成を示す説明図である。
【
図19】投射型表示装置の設定メニュー画面例を示す説明図である。
【
図20】液晶層の劣化状況を表示する表示画面例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、以下の各図においては、各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各部材の尺度を実際とは異ならせている場合がある。また、以下の各図において、必要に応じて、相互に直交する座標軸としてXYZ軸を付し、各図において、軸に沿った各矢印が指す方向を+方向とし、+方向と反対の方向を-方向とする。
【0011】
なお、+X方向を右又は右側、-X方向を左又は左側ということがある。+Z方向を上方、-Z方向を下方ということもあり、+Z方向から見ることを平面視あるいは平面的という。さらに、以下の説明において、例えば、基板に対して、「基板上に」との記載は、基板の上に接して配置される場合、基板の上に他の構造物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接して配置され、一部が他の構造物を介して配置される場合のいずれかを表すものとする。
【0012】
1.第1実施形態
1.1.液晶パネル100の構成の概要
図1は、第1実施形態の液晶装置1000に用いられる液晶パネル100の概略的な構成を示す平面図である。なお、例えば、本実施形態における液晶パネル100は、画素Pごとに画素スイッチング素子としてのTFT(Thin Film Transistor)11を備えたアクティブ駆動型の液晶パネルである。この液晶パネル100は、後述の測定回路200と組み合わされて液晶装置1000を構成するとともに、電子機器としての投射型表示装置などにおいて、光変調装置として好適に用いることができるものである。
【0013】
液晶パネル100は、素子基板10と、対向基板20とを備える。なお、対向基板20の外形線の内側に実線で記載された構成は、いずれも、対向基板20と素子基板10との間に配置された構成である。
【0014】
シール材14は、対向基板20の外縁に沿って枠状に設けられている。網点で示す見切り部27は、遮光膜よりなり、シール材14の内側で、表示領域Eの外縁に沿って、表示領域Eを取り囲むように配置される。シール材14は、光硬化樹脂や熱硬化性樹脂等からなる接着剤であり、素子基板10と対向基板20との間のギャップを所定値とするためのグラスファイバー、あるいはガラスビーズ等のギャップ材を含んでいる。
【0015】
表示領域Eには、画素Pがマトリクス状に配置される。表示領域Eとシール材14との間の周辺領域Fには、走査線駆動回路24、プリチャージ回路25などの周辺回路が配置される。また、シール材14の外側の素子基板10の対向基板20から図面下側、-Y方向に張り出した部分には、データ線駆動回路23と複数の外部接続端子18が配置される。
【0016】
対向基板20の四隅に対応して、素子基板10と対向基板20との間の電気的な導通を取るための、基板間導通部17が配置される。
【0017】
図2は、
図1のH-H’線に沿った液晶パネル100の概略的な構成を示す断面図である。素子基板10と対向基板20は、シール材14を介して配置され、素子基板10と対向基板20との間に液晶層5が配置される。
【0018】
素子基板10は、その基板10aと液晶層5との間に、画素Pごとに設けられた光透過性を有する画素電極9aと、画素電極9aに対応して配置された画素スイッチング素子としてのTFT11と、画素電極9aを覆って配置された第1配向膜12とを備える。
【0019】
対向基板20は、その基板20aと液晶層5との間に、見切り部27と、共通電極21と、共通電極21を覆って配置された第2配向膜22とを備える。
【0020】
見切り部27は、平面的に走査線駆動回路24と重なる位置に設けられている。見切り部27は、対向基板20側から入射する、不図示のレーザー光源からの光Lを、走査線駆動回路24を含む周辺回路に入射しないように遮光して、周辺回路が光Lによって誤動作することを防止する役目を果たしている。
【0021】
画素電極9aと共通電極21とは、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電材料によって形成される。基板10aと基板20aとは、それぞれ透光性を有する基板であり、例えば、ガラス基板、または、石英基板が用いられる。第1配向膜12および第2配向膜22は、酸化シリコンなどの無機材料で形成される。液晶層5は、例えば、負の誘電異方性を有する液晶から構成される。
【0022】
1.2.液晶装置1000の構成の概要
図3は、液晶装置1000の概略的な構成を示す説明図である。液晶装置1000は、液晶パネル100と、測定回路200と、を備える。
図1及び
図2では省略したが、液晶パネル100は、シール材14と表示領域Eとの間の周辺領域Fに配置された検出電極30を備える。検出電極30は、素子基板10に設けられた電極の1つであり、例えば、画素電極9aと同様に、ITOなどの透明導電材料によって形成される。検出電極30は、見切り部27の直下において、例えば、表示領域Eを囲むように配置される。なお、見切り部27は説明のため一部のみを図示している。また、シール材14については、概ね枠状に塗布された形態として図示を簡略化している。
【0023】
検出電極30は、いわゆるベタ膜パターンで形成されてもよいし、複数の画素電極9aを連結させることにより形成されてもよい。検出電極30がITO膜で形成される場合、検出電極30の電位応答を改善するために、ITO膜の下層に配置されたアルミニウムを主体とする下層配線層31を補助配線として付加してもよい。検出電極30は、複数のコンタクトホール32を介して、下層配線層31と電気的に接続される。
【0024】
検出電極30は、複数の外部接続端子18の1つである第1電極接続端子18aと電気的に接続される。検出電極30は、第1電極接続端子18aを介して、測定回路200と電気的に接続される。また、検出電極30は、導通検査端子19と電気的に接続される。導通検査端子19は、素子基板10の表面において、外部接続端子18と対向基板20との間の領域に配置される。第1電極接続端子18aと導通検査端子19との間の電気抵抗を測定することにより、第1電極接続端子18aと検出電極30との間の電気的接続を検査できる。
【0025】
基板間導通部17は、対向基板20の四隅に対応して配置され、共通電位線16を介して、互いに電気的に接続される。共通電位線16は、複数の外部接続端子18のうち、例えば、左端と右端とのそれぞれに位置する第2電極接続端子18bと電気的に接続される。すなわち、対向基板20の共通電極21は、共通電位線16及び基板間導通部17を介して、第2電極接続端子18bと電気的に接続される。共通電極21は、第2電極接続端子18bを介して、測定回路200と電気的に接続される。
【0026】
上記の構成から理解されるように、液晶パネル100の周辺領域Fにおいて、液晶層5は、検出電極30と共通電極21との間に配置される。共通電極21は、液晶層5を介して検出電極30に対向する。液晶パネル100は、表示領域Eに設けられた画素電極9aを備え、検出電極30は、表示領域Eの外に設けられる。本実施形態において、検出電極30は、第1電極に相当し、共通電極21は、第2電極に相当する。
【0027】
測定回路200は、検出電極30と共通電極21との夫々に電位を供給すると共に、検出電極30の電位を検出電極電位Vdとして測定する。測定回路200は、第1給電回路40と、第2給電回路41と、第3給電回路48と、レベルシフター42と、増幅回路43と、A/Dコンバーター44と、中央制御回路45と、測定値記憶回路46と、表示情報生成回路47と、第1スイッチSW1と、第2スイッチSW2と、第3スイッチSW3と、第4スイッチSW4と、第5スイッチSW5と、第1コンデンサーC1と、第2コンデンサーC2と、共通電極線L1と、第1電位線L2と、第1ノードN1と、を備える。
【0028】
共通電極線L1は、液晶パネル100の第2電極接続端子18bと電気的に接続される。つまり、共通電極線L1は、第2電極接続端子18bを介して、共通電極21と電気的に接続される。本実施形態において、共通電極線L1は、第2電極線に相当する。
【0029】
第1電位線L2は、第1電位V1が印加される配線である。一例として、第1電位V1は、グランド電位、すなわち0Vである。第1電位線L2は、液晶装置1000内のデジタル回路系のグランドと1点で電気的に接続される。このように構成することで、後述する測定時において、デジタル回路系がもたらす測定ノイズを抑制する効果を奏する。第1電位線L2は、第2コンデンサーC2を介して、共通電極線L1と電気的に接続される。つまり、第2コンデンサーC2は、共通電極線L1と第1電位線L2との間に電気的に接続される。例えば、第2コンデンサーC2は、0.1μF以上の容量値を有する。第2コンデンサーC2によって共通電極21の電位が安定する。従って後述する測定時において、共通電極21との間で主に液晶層5による結合容量を持つ検出電極30がうける測定ノイズを抑制する。また、液晶装置1000において、液晶パネル100は、導体で構成されたホルダー110によって保持されており、第1電位線L2は、ホルダー110と電気的に接続される。第1電位線L2をホルダー110と電気的に接続することで、後述する測定時において、検出電極30がうける測定ノイズを抑制する効果を奏する。
【0030】
測定回路200内における第1ノードN1は、液晶パネル100の第1電極接続端子18aと電気的に接続される。つまり、第1ノードN1は、第1電極接続端子18aを介して、検出電極30と電気的に接続される。第1ノードN1は、第1スイッチSW1を介して、第1電位線L2と電気的に接続される。第1ノードN1は、第2スイッチSW2を介して、第1給電回路40の出力端子と電気的に接続される。第1ノードN1は、第1コンデンサーC1を介して、第1電位線L2と電気的に接続される。つまり、第1コンデンサーC1は、第1ノードN1と第1電位線L2との間に電気的に接続される。例えば、第1コンデンサーC1は、1nFから10nF程度の容量値を有する。第1コンデンサーC1によって、後述する測定時における検出電極30がうける測定ノイズを抑制する。また第1コンデンサーC1の容量値によって、可動性イオンの増加に対する検出感度を調整できる。
【0031】
第1スイッチSW1の状態は、中央制御回路45から出力される第1制御信号S1によって制御される。例えば、第1制御信号S1として、5Vの振幅を有する論理信号が中央制御回路45から出力され、論理「H」のときに第1スイッチSW1はオン状態になる。第2スイッチSW2の状態は、中央制御回路45から出力される第2制御信号S2によって制御される。例えば、第2制御信号S2として、5Vの振幅を有する論理信号が中央制御回路45から出力され、論理「H」のときに第2スイッチSW2はオン状態になる。つまり、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2は、第1電圧(5V)によってオン状態に制御される。
【0032】
共通電極線L1は、第3スイッチSW3を介して、第1電位線L2と電気的に接続される。共通電極線L1は、第4スイッチSW4を介して、第3給電回路48の出力端子と電気的に接続される。共通電極線L1は、第5スイッチSW5を介して、第2給電回路41の出力端子と電気的に接続される。
【0033】
第3スイッチSW3の状態は、中央制御回路45からレベルシフター42を介して出力される第3制御信号S3によって制御される。例えば、第3制御信号S3として、5Vの振幅を有する論理信号が中央制御回路45から出力されるが、この論理信号は、レベルシフター42によって、例えば、15Vの振幅を有する論理信号に変換される。つまり、レベルシフター42から15Vの振幅を有する第3制御信号S3が出力され、論理「H」のときに第3スイッチSW3はオン状態になる。
【0034】
第4スイッチSW4の状態は、中央制御回路45からレベルシフター42を介して出力される第4制御信号S4によって制御される。例えば、第4制御信号S4として、5Vの振幅を有する論理信号が中央制御回路45から出力されるが、この論理信号は、レベルシフター42によって、例えば、15Vの振幅を有する論理信号に変換される。つまり、レベルシフター42から15Vの振幅を有する第4制御信号S4が出力され、論理「H」のときに第4スイッチSW4はオン状態になる。
【0035】
第5スイッチSW5の状態は、中央制御回路45からレベルシフター42を介して出力される第5制御信号S5によって制御される。例えば、第5制御信号S5として、5Vの振幅を有する論理信号が中央制御回路45から出力されるが、この論理信号は、レベルシフター42によって、例えば、15Vの振幅を有する論理信号に変換される。つまり、レベルシフター42から15Vの振幅を有する第5制御信号S5が出力され、論理「H」のときに第5スイッチSW5はオン状態になる。
上記のように、第3スイッチSW3、第4スイッチSW4及び第5スイッチSW5は、第1電圧(5V)よりも高い第2電圧(15V)によってオン状態に制御される。
【0036】
第1給電回路40は、中央制御回路45から出力される第1参照電圧Vf1に対応する第1測定電位Vs1を出力する。例えば、第1給電回路40は、第1参照電圧Vf1と同じ極性及び絶対値を有する第1測定電位Vs1を出力する。すなわち、第1給電回路40から出力される第1測定電位Vs1は、中央制御回路45によって可変制御される。このような第1給電回路40は、例えば、第1参照電圧Vf1が入力されるボルテージフォロワーによって実現できる。
【0037】
第2給電回路41及び第3給電回路48は、定電位生成回路である。第2給電回路41は、第2電位V2を出力する。一例として、第2電位V2は、+5Vである。第3給電回路48は、第3電位V3を出力する。一例として、第3電位V3は、+1.25Vである。第2給電回路41及び第3給電回路48は、例えば、シャントレギュレーターを用いた定電圧回路の出力電圧を入力したボルテージフォロワーを使用できる。あるいは、第2給電回路41及び第3給電回路48は、抵抗分圧回路で生成した電圧を入力したボルテージフォロワーを使用できる。
【0038】
増幅回路43は、検出電極30と電気的に接続された第1ノードN1の電位を増幅する。以下の説明では、第1ノードN1の電位を第1ノード電位と呼称する場合がある。増幅回路43は、増幅された第1ノード電位をA/Dコンバーター44に出力する。A/Dコンバーター44は、増幅回路43によって増幅された第1ノード電位をデジタル値に変換する。A/Dコンバーター44は、第1ノード電位のデジタル値を、検出電極電位Vdの測定値として、中央制御回路45に出力する。このように、本実施形態において、増幅回路43及びA/Dコンバーター44は、第1ノードN1の電位を検出電極30の電位として測定する電位測定回路に相当する。
【0039】
例えば、増幅回路43は、オペアンプを用いた非反転増幅回路である。増幅回路43のグランド端子は、ホルダー110、第1コンデンサーC1、及び第2コンデンサーC2が電気的に接続された第1電位線L2と電気的に接続される。このように、増幅回路43のグランド端子を第1電位線L2と電気的に接続することにより、検出電極電位Vdの測定値に、測定回路200を構成するデジタル回路系の動作に伴うノイズ成分が重畳することを抑制できる。
なお、上記の増幅回路43の構成から理解されるように、A/Dコンバーター44から得られる検出電極電位Vdの測定値は、第1ノード電位、すなわち検出電極30の電位と、第1電位V1との電位差に応じた値である。
【0040】
中央制御回路45は、液晶層5の劣化状況の測定時において、測定回路200に含まれる各回路を制御する。具体的には、中央制御回路45は、第1参照電圧Vf1を第1給電回路40に出力する。中央制御回路45は、第1制御信号S1を第1スイッチSW1に出力するとともに、第2制御信号S2を第2スイッチSW2に出力する。中央制御回路45は、第3制御信号S3から第5制御信号S5を、レベルシフター42を介して、第3スイッチSW3から第5スイッチSW5に出力する。このように、本実施形態における中央制御回路45は、第1参照電圧Vf1を第1給電回路40に出力し、第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御する制御回路に相当する。
【0041】
中央制御回路45は、A/Dコンバーター44から出力される検出電極電位Vdの測定値を、測定値記憶回路46に記憶させる。測定値記憶回路46は、中央制御回路45による制御に従って、検出電極電位Vdの測定値を記憶する。中央制御回路45は、判定回路45aを含む。判定回路45aは、測定値記憶回路46に記憶された測定値に基づいて、液晶層5の劣化状況を判定する。表示情報生成回路47は、測定値および判定結果に基づいて、液晶層5の劣化状況の表示用情報を生成する。
【0042】
なお、測定回路200を構成する各回路は、各回路が実現する機能の一部ないし全部を、例えば、中央制御回路45の制御プログラムで実現する構成としてもよい。また、測定回路200は、1つのIC(Integrated Circuit)であっても、複数のICに分割されていてもよい。
【0043】
図示は省略するが、液晶装置1000は、上記の測定回路200に加えて、液晶パネル100を制御するパネル制御回路を備えていてもよい。パネル制御回路は、液晶パネル100の通常駆動を行う回路である。言い換えれば、パネル制御回路は、液晶パネル100を光変調装置として動作させる回路である。パネル制御回路は、液晶パネル100の外部接続端子18のうち、第1電極接続端子18a及び第2電極接続端子18b以外の外部接続端子18を介して、データ線駆動回路23、走査線駆動回路24、及びプリチャージ回路25に、タイミング信号、画像信号、及び制御信号などを出力する。
【0044】
データ線駆動回路23、走査線駆動回路24、及びプリチャージ回路25がパネル制御回路によって制御されることにより、各画素PのTFT11をオン状態に切り替える走査信号が不図示の各走査線に供給されるとともに、各画素Pの画素電極9aに印加される電位が不図示の各データ線に供給される。その結果、各画素Pの光透過率は、画素電極9aと共通電極21との電位差によって決定される値となる。このように、各画素Pの光透過率がパネル制御回路によって制御されることにより、液晶パネル100が光変調装置として動作して映像を表示している状態を液晶パネル100の通常駆動時と呼ぶこととする。また、各画素Pでは、映像を表示している通常駆動時には交流駆動が実施され、表示領域Eに含まれる画素Pの透過率の状態の更新が終わる1フレーム周期毎に各画素Pの液晶層5に対する印可電圧の極性が反転する。
【0045】
なお、液晶パネル100の通常駆動時において、中央制御回路45は、+5Vの第1参照電圧Vf1を第1給電回路40に出力する。これにより、通常駆動時において、第1給電回路40から+5Vの第1測定電位Vs1が出力される。また、通常駆動時において、中央制御回路45は、第2スイッチSW2及び第5スイッチSW5をオン状態に制御し、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4をオフ状態に制御する。これにより、通常駆動時において、第1給電回路40の出力端子は、第1ノードN1を介して検出電極30と電気的に接続され、第2給電回路41の出力端子は、共通電極線L1を介して共通電極21と電気的に接続される。
【0046】
従って、通常駆動時において、+5Vの第1測定電位Vs1が検出電極30に供給され、+5Vの第2電位V2が共通電極21に供給される。つまり、通常駆動時において、検出電極30の電位は、共通電極21の電位と同じ+5Vとなる。通常駆動時において、第2給電回路41から出力される第2電位V2は、コモン電位として使用される。なお、本実施形態ではコモン電位を+5Vとして説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、+7V等に設定することもできる。その場合には、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2を7V信号で制御するように構成すればよい。同時に第1給電回路40と第2給電回路41も+7V出力に対応するようにする。中央制御回路45が出力する第1参照電圧Vf1も+7V出力に対応するようにする。
【0047】
また、通常駆動、及び後述の液晶層5の物性測定のいずれも行われない非動作時において、中央制御回路45は、第1スイッチSW1及び第3スイッチSW3をオン状態に制御し、第2スイッチSW2、第4スイッチSW4及び第5スイッチSW5をオフ状態に制御する。これにより、非動作時において、検出電極30及び共通電極21は、それぞれ、第1電位線L2と電気的に接続される。従って、非動作時において、検出電極30及び共通電極21のそれぞれの電位は、第1電位V1、つまり0Vとなる。
【0048】
液晶装置1000において、測定回路200とパネル制御回路とが同じ基板上に配置されてもよいし、或いは、測定回路200とパネル制御回路とが異なる複数の基板上に配置されてもよい。例えば、測定回路200及びパネル制御回路が配置される基板は、リジッド基板、或いはFPC(Flexible Printed Circuits)基板である。
【0049】
1.3.液晶層5の物性測定方法の概要
図4は、液晶パネル100の液晶層5の物性測定方法を示す概略的なフローチャートである。以下では、
図4を参照しながら、液晶層5の物性測定方法について説明する。
【0050】
図4に示すように、ステップS10では、所定のイベントが発生すると、液晶装置1000は、通常駆動を行う通常駆動モードから液晶層5の物性測定を行う測定モードに移行し、液晶層5の物性測定を開始する。ここで、所定のイベントには、液晶装置1000を用いた投射型表示装置の電源オンおよび電源オフ、液晶装置1000を用いた投射型表示装置における保全メニュー選択からの測定指示などがあり、これらのイベントの発生により投射型表示装置からの測定開始コマンドが送信される。測定回路200の中央制御回路45は、投射型表示装置から測定開始コマンドを受信すると、液晶層5の物性測定を開始する。
【0051】
なお、ステップS10は、測定モード移行イベントの概念を示している。実際には、例えば、保全メニュー選択からの指示は割り込み処理的なものであり、液晶装置1000を用いた投射型表示装置は電源が投入されている。また、測定モード移行イベントとしては、例示した「保全メニュー選択」、「電源オン」および「電源オフ」の全てを強制するものでもない。また、本発明において、液晶層5の物性測定は、例えば、投射型表示装置の光源が非点灯の状態で実施する。あるいは、機械的な遮光機構によって光源からの光が遮蔽される構成として実施する。液晶層5の物性測定時において、投射型表示装置の光源が非点灯の状態であれば、投射型表示装置における表示上の問題は発生しない。
【0052】
中央制御回路45は、測定開始コマンドを受信すると、まず、後述の測定処理の実行回数を示すカウント値Kを「0」にリセットする(ステップS11)。続いて、中央制御回路45は、カウント値Kに「1」を加算する(ステップS12)。続いて、中央制御回路45は、カウント値Kが奇数か否かを判定する(ステップS13)。
【0053】
中央制御回路45は、カウント値Kが奇数である場合(ステップS13:Yes)、第1測定処理を実行する(ステップS14)。一方、中央制御回路45は、カウント値Kが偶数である場合(ステップS13:No)、第2測定処理を実行する(ステップS15)。第1測定処理及び第2測定処理の具体的な内容については後述する。
【0054】
中央制御回路45は、第1測定処理または第2測定処理を実行した後に、カウント値Kが上限値Kmaxと等しいか否かを判定する(ステップS16)。中央制御回路45は、カウント値Kが上限値Kmaxと等しくない場合(ステップS16:No)、ステップS12に戻る。一方、中央制御回路45は、カウント値Kが上限値Kmaxと等しい場合(ステップS16:Yes)、後述のステップS17に移行する。なお、上限値Kmaxは予め、測定回路200の制御プログラムに設定されているものである。あるいは、図示を省略した入力手段によって数値を設定できるようにしてもよい。入力手段は、例えば、測定回路200が備える入力キーや、液晶装置1000を用いた投射型表示装置に対して有線もしくは無線接続されたPCなどである。上限値Kmaxが2以上に設定されていれば、第1測定処理もしくは第2測定処理の複数回の測定結果について平均値を計算して、再現性の良いデータを得ることができる。後述する詳細な測定例では、上限値Kmax=20であり、10回の第2測定処理の平均値を計算している。
【0055】
上記のステップS11からステップS16までの処理の説明から理解されるように、中央制御回路45は、カウント値Kが上限値Kmaxと等しくなるまで、第1測定処理と第2測定処理とを交互に実行する。例えば、上限値Kmaxが「10」である場合、第1測定処理と第2測定処理とが、それぞれ5回ずつ実行される。以下では、
図5及び
図6を参照しながら、第1測定処理及び第2測定処理について詳細に説明する。
【0056】
図5は、第1測定処理及び第2測定処理の実行時における検出電極30及び共通電極21のそれぞれの電位の時間的な変化を示す図である。
図5において、横軸は時間であり、縦軸は電圧である。
図5において、検出電極30の電位である検出電極電位Vdは一部を除いて実線によって示され、共通電極21の電位である共通電極電位Vcは点線によって示される。
【0057】
図6は、第1測定処理及び第2測定処理の実行時における検出電極30と共通電極21との電位差の時間的な変化を示す図である。
図6において、横軸は時間であり、縦軸は共通電極21を基準とした際の検出電極30の電圧である。換言すれば、検出電極30における液晶層5の印可電圧である。
図6では、共通電極電位Vcに対して、検出電極電位Vdが大きいときの電位差の極性を正極性としている。
【0058】
図5及び
図6において、時刻t1から時刻t5までの期間T10において第1測定処理が実行される。以下の説明では、第1測定処理が実行される期間T10を第1測定期間T10と呼称する場合がある。第1測定期間T10は、第1逆掃引期間T1と、第1緩和期間T2と、第1充電期間T3と、第1放電期間T4とを含む。第1逆掃引期間T1は、時刻t1から時刻t2までの期間である。第1緩和期間T2は、時刻t2から時刻t3までの期間である。第1充電期間T3は、時刻t3から時刻t4までの期間である。第1放電期間T4は、時刻t4から時刻t5までの期間である。
【0059】
図5及び
図6において、時刻t5から時刻t9までの期間T20において第2測定処理が実行される。以下の説明では、第2測定処理が実行される期間T20を第2測定期間T20と呼称する場合がある。第2測定期間T20は、第2逆掃引期間T5と、第2緩和期間T6と、第2充電期間T7と、第2放電期間T8とを含む。第2逆掃引期間T5は、時刻t5から時刻t6までの期間である。第2緩和期間T6は、時刻t6から時刻t7までの期間である。第2充電期間T7は、時刻t7から時刻t8までの期間である。第2放電期間T8は、時刻t8から時刻t9までの期間である。
【0060】
図5及び
図6において、時刻t0から時刻t1までの期間T0は、第1測定期間T10の開始前に挿入されるリセット期間である。このリセット期間T0において、中央制御回路45は、第1スイッチSW1及び第3スイッチSW3をオン状態に制御し、第2スイッチSW2、第4スイッチSW4及び第5スイッチSW5をオフ状態に制御する。これにより、リセット期間T0において、検出電極30及び共通電極21は、それぞれ、第1電位線L2と電気的に接続される。従って、リセット期間T0において、検出電極30及び共通電極21のそれぞれの電位は、第1電位V1、つまり0Vとなる。
【0061】
まず、第1測定期間T10に行われる第1測定処理について説明する。
第1逆掃引期間T1において、測定回路200は、検出電極30に第1電位V1を供給し、共通電極21に第1電位V1よりも高い第2電位V2を供給する。第1逆掃引期間T1は、第1期間に相当する。
【0062】
具体的には、第1逆掃引期間T1において、中央制御回路45は、第1スイッチSW1及び第5スイッチSW5をオン状態に制御するとともに、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4をオフ状態に制御する。
【0063】
第1逆掃引期間T1において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御することにより、検出電極30は、第1電位線L2と電気的に接続され、共通電極21は、第2給電回路41の出力端子と電気的に接続される。これにより、第1逆掃引期間T1において、検出電極30に0Vの第1電位V1が供給され、共通電極21に+5Vの第2電位V2が供給される。その結果、
図5に示すように、第1逆掃引期間T1において、検出電極電位Vdは0Vとなり、共通電極電位Vcは+5Vとなる。また、
図6に示すように、第1逆掃引期間T1において、検出電極30と共通電極21との電位差Vp1は、-5Vとなる。
【0064】
第1逆掃引期間T1後の第1緩和期間T2において、測定回路200は、検出電極30に第1電位V1を供給し、共通電極21に第1電位V1よりも高く且つ第2電位V2よりも低い第3電位V3を供給する。第1緩和期間T2は、第2期間に相当する。
【0065】
具体的には、第1緩和期間T2において、中央制御回路45は、第1スイッチSW1及び第4スイッチSW4をオン状態に制御するとともに、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3及び第5スイッチSW5をオフ状態に制御する。
【0066】
第1緩和期間T2において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御することにより、検出電極30は、第1電位線L2と電気的に接続され、共通電極21は、第3給電回路48の出力端子と電気的に接続される。これにより、第1緩和期間T2において、検出電極30に0Vの第1電位V1が供給され、共通電極21に+1.25Vの第3電位V3が供給される。その結果、
図5に示すように、第1緩和期間T2において、検出電極電位Vdは0Vとなり、共通電極電位Vcは+1.25Vとなる。また、
図6に示すように、第1緩和期間T2において、検出電極30と共通電極21との電位差Vp2は、-1.25Vとなる。
【0067】
第1緩和期間T2後の第1充電期間T3において、測定回路200は、検出電極30に第3電位V3よりも高く且つ第2電位V2よりも低い第4電位V4を供給し、共通電極21に第3電位V3を供給する。第1充電期間T3は、第3期間に相当する。
【0068】
具体的には、第1充電期間T3において、中央制御回路45は、例えば+2.5Vの第1参照電圧Vf1を第1給電回路40に出力する。これにより、第1給電回路40から+2.5Vの第1測定電位Vs1が出力される。また、第1充電期間T3において、中央制御回路45は、第2スイッチSW2及び第4スイッチSW4をオン状態に制御するとともに、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3及び第5スイッチSW5をオフ状態に制御する。
【0069】
第1充電期間T3において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御することにより、検出電極30は、第1給電回路40の出力端子と電気的に接続され、共通電極21は、第3給電回路48の出力端子と電気的に接続される。これにより、第1充電期間T3において、検出電極30に+2.5Vの第1測定電位Vs1が第4電位V4として供給され、共通電極21に+1.25Vの第3電位V3が供給される。その結果、
図5に示すように、第1充電期間T3において、検出電極電位Vdは+2.5Vとなり、共通電極電位Vcは+1.25Vとなる。また、
図6に示すように、第1充電期間T3において、検出電極30と共通電極21との電位差Vp3は、+1.25Vとなる。
【0070】
第1充電期間T3後の第1放電期間T4において、測定回路200は、検出電極30への電位の供給を停止すると共に共通電極21に第3電位V3を供給し、少なくとも1回、例えば、第1放電期間T4の終了時に検出電極電位Vdを測定する。第1放電期間T4は、第4期間に相当する。
【0071】
具体的には、第1放電期間T4において、中央制御回路45は、第4スイッチSW4をオン状態に制御するとともに、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3及び第5スイッチSW5をオフ状態に制御する。
【0072】
第1放電期間T4において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御することにより、検出電極30は、第1給電回路40及び第1電位線L2のどちらからも電気的に切断され、共通電極21は、第3給電回路48の出力端子と電気的に接続される。これにより、第1放電期間T4において、共通電極21には+1.25Vの第3電位V3が供給され続けるが、検出電極30への電位供給が停止するため、液晶層5は、第1充電期間T3に充電された電荷を放電する。その結果、
図5に示すように、第1放電期間T4において、検出電極電位Vdは、第4電位V4から共通電極21に与えられた第3電位V3に向かって緩やかに変化し、時刻t5において電位Vd1に到達する。検出電極電位Vd1の値は、液晶層5に含まれる可動性イオンの量に依存する。従って、後述するように、第1放電期間T4の終了時の検出電極電位Vd1を測定することにより、液晶層5の劣化状況を判定することができる。
なお、
図6に示すように、第1放電期間T4の終了時の検出電極電位Vd1は、共通電極21を基準とする電位差Vp10に対応する。
【0073】
中央制御回路45は、例えば、第1放電期間T4が終了する時刻t5における検出電極電位Vd1を測定する。具体的には、検出電極電位Vd1は増幅回路43によって増幅され、増幅回路43の出力がA/Dコンバーター44に入力される。中央制御回路45は、時刻t5にA/Dコンバーター44から出力されるデジタル値を、検出電極電位Vd1の測定値として取得する。中央制御回路45は、時刻t5に得られた検出電極電位Vd1の測定値を測定値記憶回路46に記憶させる。
【0074】
以上が第1測定処理の説明である。
第1逆掃引期間T1は、表示領域Eにおける1フレーム期間より長いことが好ましい。例えば、1フレーム期間が約16m秒である場合、第1逆掃引期間T1は、20m秒以上である。また、上記の説明では、第1逆掃引期間T1における検出電極30と共通電極21との電位差Vp1が-5Vである場合を例示したが、電位差Vp1の絶対値は、通常駆動における画素Pの液晶層5の最大印加電圧以上であることが好ましい。言い換えれば、電位差Vp1の絶対値は、表示領域Eにおける液晶層5の最大印加電圧以上であることが好ましい。第1逆掃引期間T1の長さと、電位差Vp1の絶対値とを上記のように設定する理由は後述する。
【0075】
上記の説明では、第1緩和期間T2における検出電極30と共通電極21との電位差Vp2が-1.25Vである場合を例示したが、電位差Vp2の絶対値は、0Vより大きく、且つ液晶層5の閾値電圧Vthより小さいことが好ましい。例えば、VA(Vertical Alignment)液晶パネル100において、ギャップが2.6μm程度のとき、液晶層5の閾値電圧Vthは約2.1Vである。なお、液晶層5の閾値電圧Vthは、液晶層5の透過率または明るさが、その最大階調比で約10%となるような駆動電圧であり、より好ましくは、液晶分子が動きはじめる直前の電圧、または、液晶分子の配向状態が変化しだす直前の電圧である。本実施形態では、ノーマリーブラック型の液晶パネル100としているために上記のような液晶層5の閾値電圧Vthを定義した。ノーマリーホワイト型の液晶パネル100とする場合には、例えば、液晶層5の閾値電圧Vthは、液晶層5の透過率または明るさが、その最大階調比で約90%となる駆動電圧のように定義できる。第1緩和期間T2における電位差Vp2の絶対値を上記のように設定する理由は後述する。
【0076】
第1充電期間T3は、表示領域Eにおける1フレーム期間より短いことが好ましい。例えば、1フレーム期間が約16m秒である場合、第1充電期間T3は、5m秒である。また、上記の説明では、第1充電期間T3における検出電極30と共通電極21との電位差Vp3が+1.25Vである場合を例示したが、電位差Vp3の絶対値は、0Vより大きく、且つ液晶層5の閾値電圧Vthより小さいことが好ましい。第1充電期間T3の長さと、電位差Vp3の絶対値とを上記のように設定する理由は後述する。
【0077】
続いて、第2測定期間T20に行われる第2測定処理について説明する。
第1放電期間T4後の第2逆掃引期間T5において、測定回路200は、検出電極30に第2電位V2を供給し、共通電極21に第1電位V1を供給する。第2逆掃引期間T5は、第5期間に相当する。
【0078】
具体的には、第2逆掃引期間T5において、中央制御回路45は、例えば+5Vの第1参照電圧Vf1を第1給電回路40に出力する。これにより、第1給電回路40から+5Vの第1測定電位Vs1が出力される。第2逆掃引期間T5において、中央制御回路45は、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3をオン状態に制御するとともに、第1スイッチSW1、第4スイッチSW4及び第5スイッチSW5をオフ状態に制御する。
【0079】
第2逆掃引期間T5において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御することにより、検出電極30は、第1給電回路40の出力端子と電気的に接続され、共通電極21は、第1電位線L2と電気的に接続される。これにより、第2逆掃引期間T5において、検出電極30に+5Vの第1測定電位Vs1が第2電位V2として供給され、共通電極21に0Vの第1電位V1が供給される。その結果、
図5に示すように、第2逆掃引期間T5において、検出電極電位Vdは+5Vとなり、共通電極電位Vcは0Vとなる。また、
図6に示すように、第2逆掃引期間T5において、検出電極30と共通電極21との電位差Vp4は、+5Vとなる。
【0080】
第2逆掃引期間T5後の第2緩和期間T6において、測定回路200は、検出電極30に第4電位V4を供給し、共通電極21に第3電位V3を供給する。第2緩和期間T6は、第6期間に相当する。
【0081】
具体的には、第2緩和期間T6において、中央制御回路45は、例えば+2.5Vの第1参照電圧Vf1を第1給電回路40に出力する。これにより、第1給電回路40から+2.5Vの第1測定電位Vs1が出力される。また、第2緩和期間T6において、中央制御回路45は、第2スイッチSW2及び第4スイッチSW4をオン状態に制御するとともに、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3及び第5スイッチSW5をオフ状態に制御する。
【0082】
第2緩和期間T6において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御することにより、検出電極30は、第1給電回路40の出力端子と電気的に接続され、共通電極21は、第3給電回路48の出力端子と電気的に接続される。これにより、第2緩和期間T6において、検出電極30に+2.5Vの第1測定電位Vs1が第4電位V4として供給され、共通電極21に+1.25Vの第3電位V3が供給される。その結果、
図5に示すように、第2緩和期間T6において、検出電極電位Vdは+2.5Vとなり、共通電極電位Vcは+1.25Vとなる。また、
図6に示すように、第2緩和期間T6において、検出電極30と共通電極21との電位差Vp5は、+1.25Vとなる。
【0083】
第2緩和期間T6後の第2充電期間T7において、測定回路200は、検出電極30に第1電位V1を供給し、共通電極21に第3電位V3を供給する。第2充電期間T7は、第7期間に相当する。
【0084】
具体的には、第2充電期間T7において、中央制御回路45は、第1スイッチSW1及び第4スイッチSW4をオン状態に制御するとともに、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3及び第5スイッチSW5をオフ状態に制御する。
【0085】
第2充電期間T7において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御することにより、検出電極30は、第1電位線L2と電気的に接続され、共通電極21は、第3給電回路48の出力端子と電気的に接続される。これにより、第2充電期間T7において、検出電極30に0Vの第1電位V1が供給され、共通電極21に+1.25Vの第3電位V3が供給される。その結果、
図5に示すように、第2充電期間T7において、検出電極電位Vdは0Vとなり、共通電極電位Vcは+1.25Vとなる。また、
図6に示すように、第2充電期間7において、検出電極30と共通電極21との電位差Vp6は、-1.25Vとなる。
【0086】
第2充電期間T7後の第2放電期間T8において、測定回路200は、検出電極30への電位の供給を停止すると共に共通電極21に第3電位V3を供給し、少なくとも1回、例えば、第2放電期間T8の終了時に検出電極電位Vdを測定する。第2放電期間T8は、第8期間に相当する。
【0087】
具体的には、第2放電期間T8において、中央制御回路45は、第4スイッチSW4をオン状態に制御するとともに、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3及び第5スイッチSW5をオフ状態に制御する。
【0088】
第2放電期間T8において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御することにより、検出電極30は、第1給電回路40及び第1電位線L2のどちらからも電気的に切断され、共通電極21は、第3給電回路48の出力端子と電気的に接続される。これにより、第2放電期間T8において、共通電極21には+1.25Vの第3電位V3が供給され続けるが、検出電極30への電位供給が停止するため、液晶層5は、第2充電期間T7に充電された電荷を放電する。その結果、
図5に示すように、第2放電期間T8において、検出電極電位Vdは、第1電位V1から共通電極21に与えられた第3電位V3に向かって緩やかに変化し、時刻t9において電位Vd2に到達する。検出電極電位Vd2の値は、液晶層5に含まれる可動性イオンの量に依存する。従って、後述するように、第2放電期間T8の終了時の検出電極電位Vd2を測定することにより、液晶層5の劣化状況を判定することができる。
なお、
図6に示すように、第2放電期間T8の終了時の検出電極電位Vd2は、共通電極21を基準とする電位差Vp20に対応する。
【0089】
中央制御回路45は、例えば、第2放電期間T8が終了する時刻t9における検出電極電位Vd2を測定する。具体的には、検出電極電位Vd2は増幅回路43によって増幅され、増幅回路43の出力がA/Dコンバーター44に入力される。なお、測定回路200の駆動電源電圧(例えば5V)を鑑みると大幅な増幅は困難である。例えば、Vd1として、+2.5Vから0.1V降下した+2.4Vを得た場合、設定可能な増幅率は2倍程度に限られる。一方、Vd2として、0Vから0.1V上昇した+0.1Vを得た場合、可能な増幅率を20倍以上とすることができる。従って、第2測定処理による検出電極電位Vd2を液晶層5の劣化判定に用いることが検出感度の観点で好ましい。中央制御回路45は、時刻t9にA/Dコンバーター44から出力されるデジタル値を、検出電極電位Vd2の測定値として取得する。中央制御回路45は、時刻t9に得られた検出電極電位Vd2の測定値を測定値記憶回路46に記憶させる。
なお、上記の説明では、第1測定処理と第2測定処理の夫々において検出電極電位Vd(Vd1、Vd2)を測定するとしたが、少なくとも一方で測定が実施されていればよい。
【0090】
以上が第2測定処理の説明である。
第2逆掃引期間T5は、表示領域Eにおける1フレーム期間より長いことが好ましい。例えば、1フレーム期間が約16m秒である場合、第2逆掃引期間T5は、20m秒以上である。また、上記の説明では、第2逆掃引期間T5における検出電極30と共通電極21との電位差Vp4が+5Vである場合を例示したが、電位差Vp4の絶対値は、通常駆動における画素Pの液晶層5の最大印加電圧以上であることが好ましい。言い換えれば、電位差Vp4の絶対値は、表示領域Eにおける液晶層5の最大印加電圧以上であることが好ましい。第2逆掃引期間T5の長さと、電位差Vp4の絶対値とを上記のように設定する理由は後述する。
【0091】
上記の説明では、第2緩和期間T6における検出電極30と共通電極21との電位差Vp5が+1.25Vである場合を例示したが、電位差Vp5の絶対値は、0Vより大きく、且つ液晶層5の閾値電圧Vthより小さいことが好ましい。既に説明したように、例えば、液晶パネル100がVA液晶パネルである場合、ギャップが2.6μm程度のとき、液晶層5の閾値電圧Vthは約2.1Vである。第2緩和期間T6における電位差Vp5の絶対値を上記のように設定する理由は後述する。
【0092】
第2充電期間T7は、表示領域Eにおける1フレーム期間より短いことが好ましい。例えば、1フレーム期間が約16m秒である場合、第2充電期間T7は、5m秒である。また、上記の説明では、第2充電期間T7における検出電極30と共通電極21との電位差Vp6が-1.25Vである場合を例示したが、電位差Vp6の絶対値は、0Vより大きく、且つ液晶層5の閾値電圧Vthより小さいことが好ましい。第2充電期間T7の長さと、電位差Vp6の絶対値とを上記のように設定する理由は後述する。
【0093】
図6から理解されるように、上記のような第1測定処理と第2測定処理とが交互に繰り返されることにより、検出電極30の領域における液晶層5は交流駆動される。これにより、液晶層5の物性測定時において、液晶層5に直流電圧が印加されることに起因して液晶層5が劣化することを抑制できる。
【0094】
以下、
図4に戻って説明を続ける。
既に述べたように、中央制御回路45は、カウント値Kが上限値Kmaxと等しくなるまで、第1測定処理と第2測定処理とを交互に実行する。そして、中央制御回路45は、カウント値Kが上限値Kmaxと等しい場合(ステップS16:Yes)、後述のステップS17に移行する。
【0095】
なお、全ての測定処理が終了した後、例えば、中央制御回路45は、+5Vの第1参照電圧Vf1を第1給電回路40に出力する。これにより、第1給電回路40から+5Vの第1測定電位Vs1が出力される。また、中央制御回路45は、第2スイッチSW2及び第5スイッチSW5をオン状態に制御し、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4をオフ状態に制御する。これにより、検出電極30は、第1給電回路40の出力端子と電気的に接続され、共通電極21は、第2給電回路41の出力端子と電気的に接続される。その結果、+5Vの第1測定電位Vs1が検出電極30に供給され、+5Vの第2電位V2が共通電極21に供給される。
【0096】
ステップS17では、表示情報生成回路47は、測定値記憶回路46に記憶された検出電極電位Vd1及びVd2の測定値に基づいて、液晶層5の劣化状況を示す表示用データを作成する。そして、液晶パネル100の通常駆動時に、中央制御回路45は、表示情報生成回路47が生成した表示データを、パネル制御回路を介して、液晶パネル100の表示領域Eに表示する。なお、液晶層5の劣化状況の表示は、液晶パネル100が寿命に近づいて、検出電極電位Vd1及びVd2の測定値が、予め設定された閾値Vd_thに達した時など、使用者への通知が必要な時にのみ行うようにしてもよい。
【0097】
また、液晶層5の劣化状況を示す表示は、後述するように液晶装置1000を用いた投射型表示装置が行ってもよい。例えば、投射型表示装置が、RGBに対応した3個の液晶装置1000を備えた3板式の投射型表示装置の場合は、液晶装置1000が個別に、液晶層5の劣化状況を表示するのではなく、投射型表示装置が3個の液晶装置1000の液晶パネル100の劣化状況を統合して表示する構成としてもよい。
【0098】
ステップS18では、中央制御回路45は、測定結果に関するデータを、液晶装置1000を用いた投射型表示装置へ送信する。投射型表示装置は、液晶層5の劣化状況を示すデータに基づいて、例えば、音声装置や警告灯などの報知手段を用いた報知処理など必要な処理を行う。なお、ステップS18は、液晶装置1000を用いた投射型表示装置の仕様によっては、省略することができる。
【0099】
液晶層5の劣化状況の測定結果は、液晶装置1000を用いた投射型表示装置の保全メニューからも表示させることができる。保全メニューは、例えば、投射型表示装置における設定メニューの一部として実装される。ステップS10では、中央制御回路45は、液晶装置1000を用いた投射型表示装置から、測定結果の表示指示コマンドを受信すると、ステップS17に進み、測定結果を液晶パネル100の表示領域Eに表示する。
【0100】
1.4.液晶パネル100の使用時間と放電特性との関係の概要
図7は、液晶パネル100の使用時間と放電特性との関係を示すグラフである。使用時間とは、例えば、累積の使用時間である。投射型表示装置では、例えば、累積の点灯時間に相当する。この累積の使用時間(点灯時間)を実験で検証するためには膨大な時間を必要とするので、実使用条件よりも入射光強度や温度を上げた連続加速試験を行った場合に得られるデータとして説明する。放電特性とは具体的には、例えば、
図5に示される第1放電期間T4における検出電極電位Vdの時間的な変化である。
図7の縦軸は、第1放電期間T4における検出電極電位Vdを示す。
図7の横軸は、第1放電期間T4における時刻を示す。
図7において、時刻t4は、
図5に示される時刻t4、すなわち第1放電期間T4の開始時刻に対応する。また、
図7において、時刻t5は、
図5に示される時刻t5、すなわち第1放電期間T4の終了時刻に対応する。例えば、時刻t5は、時刻t4から150ms後の時刻である。従って、横軸を放電開始からの経過時間とするならば時刻t4は0となり、時刻t5は150となる。
【0101】
図7において、放電曲線G0は、液晶パネル100の使用開始時、つまり、使用時間がゼロである使用時間h0における放電曲線を示し、放電曲線G3は、液晶パネル100が寿命に達する直前の使用時間h3における放電曲線を示す。放電曲線G1は、液晶パネル100の使用開始からの使用時間h1が経過した時点での放電曲線を示し、放電曲線G2は、液晶パネル100の使用開始からの使用時間h2が経過した時点での放電曲線を示している。ここで、使用時間の関係は、h0<h1<h2<h3である。
【0102】
各放電曲線において、時刻t4における検出電極電位Vdは、+2.5Vに近しいが、時刻t5における検出電極電位Vd、すなわち検出電極電位Vd1は異なる。即ち、連続加速試験下では、試験経過と共に検出電極電位Vd1は低下していく挙動となる。
【0103】
このように、液晶パネル100の使用時間が長くなるほど、時刻t5における検出電極電位Vd1は低下する。これは、液晶パネル100の使用時間に伴って、高強度光入射による化学反応によって液晶層5の可動性イオンが増加し、放電曲線を変化させた結果である。そして、本実施形態では、判定回路45aが、測定値記憶回路46に記憶された検出電極電位Vd1の測定値に基づいて、液晶層5の劣化状況を判定する。
【0104】
図8は、液晶パネル100の使用時間と時刻t5における検出電極電位Vd1との関係を示したグラフである。縦軸は、時刻t5における検出電極電位Vd1を示し、横軸は液晶パネル100の使用時間である。
【0105】
図8に示すように、時刻t5における検出電極電位Vd1の値は、液晶パネル100の使用時間h0、h1、h2、h3の長さに応じて変化し、例えば、推移線W1に沿って推移する。典型的には使用時間の増加に伴って推移線W1が示す値は漸減していく。すなわち、検出電極電位Vd1は、Vd1_h0、Vd1_h1、Vd1_h2、Vd1_h3の順で徐々に低下していく。そして、推移線W1が示す値は、使用時間h3を超えた辺りから、使用時間の増加に対して測定値Vd1の低下する割合が、急激に大きくなり、使用時間h3を超えると、液晶層5の可動性イオン量が急激に増えて、液晶パネル100が寿命に達する。このように推移線W1は、液晶パネル100の使用時間に対して非線形的に変化する。そして、表示品位でも、使用時間h3を超えて矢印ARで示した時間以降では、表示画面上におけるシミ・ムラの発生が顕著になり、それに伴い輝度の低下も起きて、表示品位が低下することが確認されている。
【0106】
判定回路45aは、検出電極電位Vd1の測定値が、閾値Vd_thより低下した場合に、液晶パネル100の寿命が近いことを使用者ないし管理者に報知するように中央制御回路45の制御プログラムが組まれている。あるいは後述するように、これまでの液晶パネル100使用時間と、検出電極電位Vd1との関係を確認できる中央制御回路45の制御プログラムが組まれている。
【0107】
なお、閾値Vd_thと比較される検出電極電位Vd1の測定値は、複数の測定値の平均値でもよい。また、液晶パネル100が使われる状況に応じて、閾値Vd_thは変更してもよい。例えば、より高い表示品位が求められる場合、或いは液晶パネル100のメンテナンスに時間がかかる場合には、早めに報知できるように、閾値Vd_thを、使用時間h2に対応する検出電極電位Vd1_h2に設定してもよい。
【0108】
また、判定回路45aは、第2放電期間T8の終了時に得られた検出電極電位Vd2の測定値に基づいて、液晶パネル100の劣化状況を判定してもよい。この場合、第2放電期間T8の終了時に得られた検出電極電位Vd2の測定値と比較される閾値Vd_thは、第1放電期間T4の終了時に得られた検出電極電位Vd1の測定値と比較される閾値Vd_thと異なる値に設定されてもよい。
【0109】
1.5.第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5の作用効果
上記のように、本実施形態では、第1測定期間T10の先頭に第1逆掃引期間T1が挿入され、第2測定期間T20の先頭に第2逆掃引期間T5が挿入される。これにより、第1測定期間T10の開始直後と、第2測定期間T20の開始直後とのそれぞれにおいて、液晶層5に含まれる可動性イオンを、共通電極21及び検出電極30のいずれか一方に効果的に初期配置できる。このように可動性イオンの初期配置が整えられることにより、測定再現性を得られやすくなる。可動性イオンによる内部電場の影響も測定値に反映されるので、可動性イオンの増加が測定値の変化として現れやすくなる。
【0110】
第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5は、それぞれ、1フレーム期間よりも長いことが好ましい。例えば、第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5は、それぞれ、20m秒以上である。これにより、液晶層5に含まれる可動性イオンのうち、移動度の小さい可動性イオンも効果的に初期配置できる。移動度の小さい可動性イオンは、液晶層5内を移動し難い。そのため、第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5が通常のフレーム期間である場合には、移動度の小さい可動性イオンの初期配置を通常のフレーム期間内で制御することは困難である。このように移動度の小さい可動性イオンの初期配置を制御できない状態で測定値を得たとしても、十分な測定再現性を得られないことがある。
【0111】
図9は、第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5の効果を示す図である。
図9以降に示す詳細な実測データは、基本的には
図6に示す電圧を液晶層5に印可して得た結果であり、第1逆掃引期間T1等の作用を説明する上で支障はない。
図9は、第2逆掃引期間T5が20m秒のケースと、第2逆掃引期間T5が100m秒のケースと、第2逆掃引期間T5が500m秒のケースとのそれぞれについて、第2放電期間T8における検出電極電位Vdを測定した結果を示す。より詳細には、
図9に示される結果は、液晶パネル100の劣化試験の極初期において、上記3つのケースのそれぞれについて、第2放電期間T8における検出電極電位Vdを11倍に増幅して測定した結果である。
【0112】
図9において、横軸は、第2放電期間T8の放電開始からの時刻を示し、縦軸は、第2放電期間T8における検出電極電位Vdの測定値を示す。第2放電期間T8は200m秒である。また、
図9において、縦軸は、検出電極電位Vdの測定値を、A/Dコンバーター44から出力されるデジタル値で表している。この測定ではA/Dコンバーター52として、10ビット仕様のA/Dコンバーターを使用し、測定値1023は約2.5Vに相当する。
【0113】
図9に示されるように、第2逆掃引期間T5が長いほど、第2放電期間T8の終了時の測定値が大きくなる。この理由は、第2測定期間T20の先頭に第2逆掃引期間T5を挿入することにより、特に移動度の小さい可動性イオンが、共通電極21及び検出電極30のいずれか一方に効果的に初期配置された結果と考えられる。このような結果は、第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5を長くすることにより、液晶パネル100の使用初期から、液晶層5の劣化の進行を感度良く追跡できることを示唆する。また、
図9は連続加速試験の極初期における差異を例示したが、試験終盤の測定においても第2逆掃引期間T5の効果を確認できた。第2逆掃引期間T5が20m秒のケースと100m秒のケースとでは、明らかに放電特性が変化した。具体的には、第2逆掃引期間T5を100m秒とした場合、第2逆掃引期間T5を20m秒とした場合よりも検出電極電位Vdの測定値が明らかに大きくなった。
【0114】
図10は、液晶層5の電気特性図を示す。横軸は液晶層5への印可電圧であり、縦軸は電流である。この電気特性は、例えば、液晶層5に対して0.1Hzの±5Vの三角波電圧を印可した際の電流を測定して得ることができる。この手法は一般的にはサイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetry)と呼ばれる測定方法である。
図10において符号Aで示されるように、典型的には、可動性イオンによる電流は、液晶層5の充電電流に対して増分電流として出現し、比較的小さい電圧においてピーク電流を示す。このピーク電流は、液晶層5の劣化の進行に伴って、例えば破線で示されるような大きなピークとなって現れる。上記のような方法では、専用の精密測定機器を用いれば、可動性イオンの存在を定量的に評価できるが、液晶装置1000を用いた投射型表示装置にこのような機能を実装することはコスト的に現実的ではない。しかるに本願の構成によれば、比較的簡便な回路構成で液晶層5の劣化状態を定量化できる。
【0115】
第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5において液晶層5に印加される電圧は、液晶パネル100の通常駆動時の最大印可電圧以上であることが好ましい。言い換えれば、第1逆掃引期間T1における電位差Vp1の絶対値と、第2逆掃引期間T5における電位差Vp4の絶対値とは、それぞれ、液晶パネル100の通常駆動時の最大印可電圧以上であることが好ましい。これにより、測定を実施する前の液晶パネル100の表示状態の影響が抑制された状態で、測定を実施できる。検出電極30は表示領域Eの外縁に沿っており、表示領域Eから基板面に沿って拡散してくる可動性イオンを観測している。ところで、各画素Pにおいて、可動性イオンの移動は駆動電圧によって制限を受け得る。つまり、可動性イオンが共通電極21側に存在するのか、検出電極30側に存在するのかは、画素Pの駆動電圧に依存し未制御である。しかるに第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5において、検出電極21における液晶層5に印加される電圧を、各画素Pにおける通常駆動時の液晶層5に印可する最大印可電圧以上とすれば、通常駆動では動かしきれない可動性イオンを制御して初期配置できる。さらに第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5を1フレームよりも長くすれば、通常駆動時よりも可動性イオンの移動距離は長くなるので、初期配置に効果を奏す。第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5において液晶層5に印加される電圧は、液晶層5の閾値電圧Vth以上の電圧であってもよい。
【0116】
図11は、液晶層5の規格化透過率と印加電圧との関係を示す図である。液晶層5のギャップ及び液晶材料によって透過率の特性は異なるが、例えば、液晶パネル100がノーマリーブラック型のVA液晶パネルであり、液晶層5のギャップが約2.6μmである場合、
図11に示すように、4V弱の電圧が印加されたときに、液晶層5の透過率は最大となる。従って、液晶パネル100の通常駆動時の保持状態にある画素Pにおいて、液晶層5の最大印可電圧は、4V弱に設定される。この場合、例えば、液晶パネル100の通常駆動時の1フレーム期間、換言すれば画素Pの極性保持期間に液晶層5の印可電圧の4V程度で動く可動性イオンが、共通電極21及び検出電極30のどちらに位置しているかは不明である。しかしながら、第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5において、液晶パネル100の通常駆動時の最大印可電圧以上の+5Vの電圧を、1フレーム期間よりも長く液晶層5に印加することにより、4V程度で動く可動性イオンも、共通電極21及び検出電極30のいずれか一方に効果的に初期配置させることができる。なお、上記の最大印可電圧はデータ線に供給される電位を観測すれば判る。例えば、共通電極21を固定電位として表示駆動されている場合には、最大印可電圧は液晶パネル100を最大階調表示とした際のデータ線供給電位の振幅のおよそ半値である。別の例では、共通電極21の電位を表示極性に応じて反転駆動としている場合には、最大印可電圧は液晶パネル100を最大階調表示とした際のデータ線供給電位の振幅とおよそ近しい。
【0117】
また、
図9から、第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5の効果があまり反映されない測定値を拾い上げることができる。具体的には、
図9に示されるように、第2放電期間T8の開始時点から50m秒付近までの期間では、3つのケースのそれぞれで得られた測定値に差がほとんどない。つまり、第2放電期間T8には、第2放電期間T8の開始時点から50m秒付近までの第1ステージと、50m秒付近から第2放電期間T8の終了時点までの第2ステージとの2つのステージが存在する。第1ステージにおける測定値は、比較的移動度の大きい可動性イオンの挙動を反映しており、第2ステージにおける測定値は、比較的移動度の小さい可動性イオンの挙動を反映していると考察できる。
【0118】
従って、比較的移動度の大きい可動性イオンに焦点を当てる場合には、第1ステージにおける測定値を採用すればよい。一方、比較的移動度の小さい可動性イオンに焦点を当てる場合には、第2ステージにおいて異なる2つの時点に得られた測定値の差を採用すればよい。例えば、第2放電期間T8の開始時点から50m秒経過した時点に得られた測定値と、第2放電期間T8の終了時点に得られた測定値との差である。従って、測定値については、第1放電期間T4や第2放電期間T8の終了時の測定値でなくてもよい。
【0119】
1.6.第1緩和期間T2及び第2緩和期間T6の効果
上記のように、本実施形態では、第1測定期間T10において第1逆掃引期間T1と第1充電期間T3との間に第1緩和期間T2が挿入され、第2測定期間T20において第2逆掃引期間T5と第2充電期間T7との間に第2緩和期間T6が挿入される。これにより、液晶層5の誘電異方性の影響を回避し、かつ集積した可動性イオンを動かさずに測定できる。
【0120】
上記のように、例えば、液晶層5の閾値電圧Vthは、2.1V程度である。つまり、第1緩和期間T2及び第2緩和期間T6において液晶層5に印加される電圧が、閾値電圧Vthより小さければ、液晶層5の誘電異方性の影響を抑制して測定できる。言い換えれば、第1緩和期間T2における電位差Vp2の絶対値と、第2緩和期間T6における電位差Vp5の絶対値とが、それぞれ、0Vより大きく、且つ閾値電圧Vthより小さければ、液晶層5の誘電異方性の影響を抑制して測定できる。換言すれば、第1充電期間T3及び第2充電期間T7において、移動度の大きい可動性イオンの移動を抑制することができる。また、小さい電圧で液晶層5の充放電を行うと、移動度の大きい可動性イオンを効率よく捕捉して測定できる。
【0121】
上記のように、本実施形態では、第1逆掃引期間T1から第1緩和期間T2に移行するときに、液晶層5の印加電圧は、極性が変わることなく、-5Vから-1.25Vへ切り替えられる。また、第2逆掃引期間T5から第2緩和期間T6に移行するときに、液晶層5の印加電圧は、極性が変わることなく、+5Vから+1.25Vへ切り替えられる。そのため、第1緩和期間T2及び第2緩和期間T6の長さは、液晶層5の応答時間を考慮して設定される。液晶層5の応答時間を考慮すると、第1緩和期間T2及び第2緩和期間T6は、1フレーム期間よりも長く設定されることが好ましい。例えば、第1緩和期間T2及び第2緩和期間T6は、20m秒、或いは50m秒等である。応答の早い液晶材料であれば、20m秒よりも短い値としてもよい。
【0122】
1.7.第1充電期間T3及び第2充電期間T7の効果
基本的に、第1充電期間T3及び第2充電期間T7は、短いほうがよい。この理由は、第1充電期間T3及び第2充電期間T7を短くすると、移動度の大きい可動性イオンの作用を測定値の変化として捕えやすくなるからである。例えば、第1充電期間T3及び第2充電期間T7は、液晶パネル100の通常駆動時の1フレーム期間より短いことが好ましい。
【0123】
本実施形態では、測定回路200によって、共通電極21及び検出電極30のそれぞれに供給される電位が制御される。共通電極21に電気的に接続される第2コンデンサーC2は、比較的大きな容量値を有する。また、共通電極線L1には第3スイッチSW3から第5スイッチSW5が電気的に接続される。これら第3スイッチSW3から第5スイッチSW5のオン抵抗が大きい場合、第1充電期間T3及び第2充電期間T7を短くすることが難しい。例えば、市販のスイッチICでは、5V駆動時のオン抵抗は1kΩ程度である。例えば、第2コンデンサーC2の容量値が0.2μFである場合、5τは1m秒である。第1充電期間T3及び第2充電期間T7の長さを5τ程度とし、検出電極電位Vdを10倍程度増幅する増幅回路43を用いる場合、この時定数τは測定値に影響を与えてしまうほど大きい。
【0124】
一方、第1放電期間T4及び第2放電期間T8においては、検出電極30と電気的に接続される第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2のオフ抵抗を、充分に大きい値にする必要がある。これら第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2のオフ抵抗が小さい場合、第1ノードN1の電位、すなわち検出電極電位Vdの保持に影響を与えてしまう。また、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2のオフ抵抗のばらつきが大きい場合、測定値に影響を与える可能性がある。
【0125】
そこで、本実施形態では、第3スイッチSW3から第5スイッチSW5のオン抵抗を小さくするために、例えば15Vという比較的大きな第2電圧を第3スイッチSW3から第5スイッチSW5に与える構成を採用した。一方、本実施形態では、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2のオフ抵抗を大きくするために、例えば5Vという比較的小さな第1電圧を第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2に与える構成を採用した。なお、5Vの第1電圧によって第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2を駆動することは、夫々のスイッチにおけるオン抵抗が大きくなることを意味する。しかし検出電極30のノードに電気的に接続された第1コンデンサーC1は、共通電極21のノードに電気的に接続された第2コンデンサーC2よりも容量値が小さいので時定数的には問題なく対応できる。
【0126】
なお、本実施形態では、液晶パネル100の通常駆動時における共通電極21の応答性を考慮し、第5スイッチSW5にも、15Vという比較的大きな第2電圧を与える構成を採用した。第1スイッチSW1から第5スイッチSW5として、例えば、市販されているスイッチICを使用できる。すなわち、第1スイッチSW1から第5スイッチSW5として使用されるスイッチICに、5V、あるいは15Vの駆動電圧が与えられる。
【0127】
図12は、第1充電期間T3及び第2充電期間T7の効果を示す図である。
図12は、第2充電期間T7が1m秒のケースと、第2充電期間T7が5m秒のケースとのそれぞれについて、第2放電期間T8における検出電極電位Vdを測定した結果を示す。より詳細には、液晶パネル100の劣化試験の極初期において、上記2つのケースのそれぞれについて、第2放電期間T8における検出電極電位Vdを11倍に増幅して測定した結果である。
【0128】
図12において、横軸は、第2放電期間T8の放電開始からの時刻を示し、縦軸は、第2放電期間T8における検出電極電位Vdの測定値を示す。一例として、第2放電期間T8は200m秒である。また、
図12において、縦軸は、検出電極電位Vdの測定値を、A/Dコンバーター44から出力されるデジタル値で表している。この測定ではA/Dコンバーター52として、10ビット仕様のA/Dコンバーターを使用し、測定値1023は約2.5Vに相当する。
【0129】
図12に示されるように、第2充電期間T7が短いほど、第2放電期間T8の終了時の測定値が大きくなる。この理由は、第2充電期間T7が短縮されることで、第2充電期間T7中の可動性イオンの移動が抑制され、移動度の大きい可動性イオンの作用を効率的に反映した結果と考えられる。このような結果は、第1充電期間T3及び第2充電期間T7を短くすることにより、液晶パネル100の使用初期から、液晶層5の劣化の進行を感度良く追跡できることを示唆する。
【0130】
なお、
図12に示される結果を詳細に観察すると、第2放電期間T8の開始時点から50m秒が経過した後は、2つのケースのそれぞれで得られた測定値は、互いにほぼ平行に移動しているように見える。つまり、前述したように、比較的移動度の大きい可動性イオンの作用によって、このような測定値の差が生じたものと考えられる。このように、第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5の長さと、第1充電期間T3及び第2充電期間T7が、測定値に及ぼす作用は異なる。
【0131】
1.8.液晶層5の劣化進行の追跡
図13は、液晶層5の劣化の進行を追跡した結果を示す第1図である。
図14は、液晶層5の劣化の進行を追跡した結果を示す第2図である。詳細には、液晶パネル100が約65℃の条件になるように冷却しながら、12W/Cm
2の青色光を表示領域Eに所定時間照射する連続加速試験を行った。
図13及び
図14は、照射時間が0時間(初期)のケースと、照射時間が166時間のケースと、照射時間が326時間のケースとのそれぞれについて、第2放電期間T8における検出電極電位Vdを測定した結果を示す。また、
図13に示される結果は、第2逆掃引期間T5が500m秒に設定され、第2充電期間T7が1m秒に設定された条件下で、第2放電期間T8における検出電極電位Vdを測定した結果である。
図14に示される結果は、第2逆掃引期間T5が100m秒に設定され、第2充電期間T7が5m秒に設定された条件下で、第2放電期間T8における検出電極電位Vdを測定した結果である。
【0132】
図13及び
図14において、横軸は、第2放電期間T8の放電開始からの時刻を示し、縦軸は、第2放電期間T8における検出電極電位Vdの測定値を示す。第2放電期間T8は200m秒である。また、
図13及び
図14において、縦軸は、検出電極電位Vdを11倍に増幅した測定値を、A/Dコンバーター44から出力されるデジタル値で表している。この測定ではA/Dコンバーター52として、10ビット仕様のA/Dコンバーターを使用し、測定値1023は約2.5Vに相当する。
【0133】
図13及び
図14に示されるように、本実施形態によれば、液晶パネル100に対する青色光の照射を開始してから、すなわち液晶パネル100の使用初期から、液晶層5の劣化の進行を感度良く追跡できることがわかる。また、実験に使用された液晶パネル100は、周辺回路等の電源配線等も実製品を反映して配置されているため、
図13及び
図14に示される実験結果は、検出電極30の寄生容量による影響が加味された実験結果である。従って、
図13及び
図14に示される実験結果から、本実施形態の液晶装置1000は、液晶層5の劣化進行を電圧値の変化として検知できる十分な実用性を備えていると言える。
【0134】
1.9.測定再現性の検証
図15は、測定再現性を検証した結果を示す第1図である。
図16は、測定再現性を検証した結果を示す第2図である。詳細には、詳細には、
図15は
図13に示した実験において、連続加速試験が326時間経過した際に取得した結果である。同様に、
図16は
図14に示した実験において、連続加速試験が326時間経過した際に取得した結果である。
図15及び
図16は、それぞれの測定条件において、第2放電期間T8における検出電極電位Vdを2回測定した結果を示す。
図15及び
図16において、測定1は、1回目の測定結果を示し、測定2は、2回目の測定結果を示す。2回目の測定は、1回目の測定から所定時間が経過した後に実施された。
【0135】
また、
図15に示される結果は、第2逆掃引期間T5が500m秒に設定され、第2充電期間T7が1m秒に設定された条件下で、第2放電期間T8における検出電極電位Vdを測定した結果である。
図16に示される結果は、第2逆掃引期間T5が100m秒に設定され、第2充電期間T7が5m秒に設定された条件下で、第2放電期間T8における検出電極電位Vdを測定した結果である。
【0136】
図15及び
図16において、横軸は、第2放電期間T8の放電開始からの時刻を示し、縦軸は、第2放電期間T8における検出電極電位Vdの測定値を示す。第2放電期間T8は200m秒である。また、
図15及び
図16において、縦軸は、検出電極電位Vdを11倍に増幅した測定値を、A/Dコンバーター44から出力されるデジタル値で表している。この測定ではA/Dコンバーター52として、10ビット仕様のA/Dコンバーターを使用し、測定値1023は約2.5Vに相当する。
【0137】
図15及び
図16に示されるように、本実施形態によれば、充分な再現性を持って測定できていることがわかる。第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5が無い場合、測定前に、液晶パネル100の液晶層5に対して電気的に何をしていたかによって、このような測定再現性を得られない可能性がある。例えば、検出電極30において±1.25Vの充放電(+1.25Vで行う第1充電期間T3、第1放電期間T4、-1.25Vで行う第2充電期間T7、第2放電期間T8)で構成される測定を行う場合、
図11の表示領域Eの電圧-透過率などの光学特性を測定する前後で測定値が変わってしまう現象が発生したりする。
【0138】
(第1実施形態の効果)
以上説明したように、第1実施形態の液晶装置1000は、検出電極30と、液晶層5と、液晶層5を介して検出電極30に対向する共通電極21と、検出電極30と共通電極21との夫々に電位を供給すると共に、検出電極30の電位を測定する測定回路200と、を備える。測定回路200は、第1逆掃引期間T1において、検出電極30に第1電位V1を供給し、共通電極21に第1電位V1よりも高い第2電位V2を供給し、第1逆掃引期間T1後の第1緩和期間T2において、検出電極30に第1電位V1を供給し、共通電極21に第1電位V1よりも高く且つ第2電位V2よりも低い第3電位V3を供給し、第1緩和期間T2後の第1充電期間T3において、検出電極30に第3電位V3よりも高く且つ第2電位V2よりも低い第4電位V4を供給し、共通電極21に第3電位V3を供給し、第1充電期間T3後の第1放電期間T4において、検出電極30への電位の供給を停止し、共通電極21に第3電位V3を供給する。
【0139】
上記のように、本実施形態では、第1充電期間T3及び第1放電期間T4の前に、第1逆掃引期間T1が挿入される。これにより、第1逆掃引期間T1において、液晶層5に含まれる可動性イオンを、共通電極21及び検出電極30のいずれか一方に効果的に初期配置できる。例えば、陽イオンは、共通電極21及び検出電極30のうち負極性の電位が供給される電極に初期配置され、陰イオンは、共通電極21及び検出電極30のうち正極性の電位が供給される電極に初期配置される。このように第1充電期間T3が始まる前に、可動性イオンの初期配置が整えられることにより、第1放電期間T4に得られる検出電極電位Vdの測定値に関して測定再現性を得ることができる。また、可動性イオンによる内部電場の影響も測定値に反映されるので、可動性イオンの増加が測定値の変化として現れやすくなる。その結果、液晶パネル100の使用初期から、液晶層5の劣化の進行を感度良く追跡できる。
【0140】
また、本実施形態では、第1逆掃引期間T1と第1充電期間T3との間に第1緩和期間T2が挿入されることにより、第1逆掃引期間T1に初期配置された可動性イオンを移動させることなく、第1逆掃引期間T1から第1充電期間T3へ移行させることができる。これにより、本実施形態によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネル100の使用初期から、液晶層5の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0141】
共通電極21は、通常駆動時における電位安定化のために、0.1μF以上の容量値を有する安定化コンデンサーを備える構成が多用される。本実施形態では、共通電極21の電位を切り替えるために汎用スイッチICが用いられるが、そのオン抵抗は数kΩ程度となる場合がある。そのため、第1充電期間T3において、共通電極21の電位を変化させると、電位変化量が大きいことが原因で、応答不足が発生し得る。従って、第1放電期間T4において共通電極21の僅かな電位変動が継続し、主に液晶層5からなる結合容量により検出電極30の電位測定値を変えてしまう。
【0142】
この点、本実施形態では、
図5に示したように第1緩和期間T2、第1充電期間T3及び第1放電期間T4において、共通電極21への供給電位が第3電位V3に固定される。なお、
図5では第1緩和期間T2における共通電極21の電位V2から電位V3への電位応答を表現して描いている。この電位応答は、共通電極21への供給電位が電位V2から電位V3に変わった結果生じるものである。同様にして、第2緩和期間T6における共通電極21の電位V1から電位V3への電位応答は、共通電極21への供給電位が電位V1から電位V3に変わった結果生じるものである。従って、第1緩和期間T2(第2緩和期間T6)では共通電極21への供給電位が第3電位V3に固定されると言える。共通電極21の時定数そのものが短縮されるわけではないが、上記のように共通電極21には定電位が供給され続けており、充電動作時には、検出電極30との主に液晶層5からなる結合容量による僅かな電位変動しか受けない。その結果、共通電極21の電位が所定の電位(V3)に回復するまでの緩和時間は短くなる。従って、充電完了までの時間が短縮され、充電開始から放電開始までの時間が短くなり、例えば、移動度の大きい可動性イオンの作用をより観測しやすくなる。言い換えれば、例えば、充電時間が5ms程である場合、高移動度イオンが充電期間中に移動してしまい、その作用を取り逃がす可能性があるが、本実施形態によれば、充電時間を1ms以下、例えば、200μs程度まで短縮できるので高移動度イオンの観測に適したものにできる。なお、例えば、単純に、共通電極21の電位を5Vに固定してしまうと、液晶層5に±5Vの電圧を印可するには10Vの電圧をスイッチに与える必要が生じる。その場合、検出電極30のホールド時にスイッチの漏れ電流が測定に悪影響を与える可能性がある。
【0143】
第1実施形態の液晶装置1000は、表示領域Eに設けられた画素電極9aをさらに備え、検出電極30は、表示領域Eの外に設けられる。
検出電極30が、表示領域Eの近傍で隣接しているので、表示領域Eで生じた可動性イオンを検知しやすくなる。従って、液晶層5の劣化に伴う可動性イオンの増加に対する感度を向上させることができる。
【0144】
第1実施形態の液晶装置1000において、第1逆掃引期間T1は、通常駆動時の表示領域Eにおける1フレーム期間より長く、第1逆掃引期間T1における検出電極30と共通電極21との電位差Vp1の絶対値は、通常駆動時の表示領域Eにおける液晶層5の最大印加電圧以上である。
このように、第1逆掃引期間T1を1フレーム期間より長く設定することにより、特に移動度の小さい可動性イオンを、共通電極21及び検出電極30のいずれか一方に効果的に初期配置させることができる。
また、第1逆掃引期間T1における電位差Vp1の絶対値、すなわち第1逆掃引期間T1に液晶層5に印加される電圧を、通常駆動時の表示領域Eにおける液晶層5の最大印加電圧以上とすることにより、最大印加電圧程度で動く可動性イオンも、共通電極21及び検出電極30のいずれか一方に効果的に初期配置させることができる。
従って、本実施形態によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネル100の使用初期から、液晶層5の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0145】
第1実施形態の液晶装置1000において、第1緩和期間T2における検出電極30と共通電極21との電位差Vp2の絶対値は、0Vより大きく、且つ液晶層5の閾値電圧Vthより小さい。
このように、第1緩和期間T2における電位差Vp2の絶対値、すなわち第1緩和期間T2に液晶層5に印加される電圧を、0Vより大きく、且つ液晶層5の閾値電圧Vthより小さく設定することにより、液晶層5の誘電異方性の影響を抑制する効果が高まる。
従って、本実施形態によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネル100の使用初期から、液晶層5の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0146】
第1実施形態の液晶装置1000において、第1充電期間T3は、通常駆動時の表示領域Eにおける1フレーム期間より短く、第1充電期間T3における検出電極30と共通電極21との電位差Vp3の絶対値は、0Vより大きく、且つ液晶層5の閾値電圧Vthより小さい。
このように、第1充電期間T3を1フレーム期間より短く設定することにより、移動度の大きい可動性イオンの作用を測定値の変化として捕えやすくなる。
また、第1充電期間T3における電位差Vp3の絶対値、すなわち第1充電期間T3に液晶層5に印加される電圧を、0Vより大きく、且つ液晶層5の閾値電圧Vthより小さく設定することにより、液晶層5の誘電異方性の影響を抑制しながら、第1放電期間T4における検出電極電位Vdを測定できる。
従って、本実施形態によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネル100の使用初期から、液晶層5の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0147】
第1実施形態の液晶装置1000において、測定回路200は、第1放電期間T4後の第2逆掃引期間T5において、検出電極30に第2電位V2を供給し、共通電極21に第1電位V1を供給し、第2逆掃引期間T5後の第2緩和期間T6において、検出電極30に第4電位V4を供給し、共通電極21に第3電位V3を供給し、第2緩和期間T6後の第2充電期間T7において、検出電極30に第1電位V1を供給し、共通電極21に第3電位V3を供給し、第2充電期間T7後の第2放電期間T8において、検出電極30への電位の供給を停止し、共通電極21に第3電位V3を供給する。
【0148】
上記のように、本実施形態では、第2充電期間T7及び第2放電期間T8の前に、第2逆掃引期間T5が挿入される。これにより、第2逆掃引期間T5において、液晶層5に含まれる可動性イオンを、共通電極21及び検出電極30のいずれか一方に効果的に初期配置できる。このように第2充電期間T7が始まる前に、可動性イオンの初期配置が整えられることにより、第2放電期間T8に得られる検出電極電位Vdの測定値に関して測定再現性を得ることができる。また、可動性イオンによる内部電場の影響も測定値に反映されるので、可動性イオンの増加が測定値の変化として現れやすくなる。その結果、液晶パネル100の使用初期から、液晶層5の劣化の進行を感度良く追跡できる。
さらに、本実施形態によれば、液晶層5が交流駆動されるため、検出電極電位Vdの測定時において、液晶層5に直流電圧が印加されることに起因して液晶層5が劣化することを抑制できる。
なお、本実施形態では第1測定処理にあたる第1測定期間T10と、第2測定処理にあたる第2測定期間T20を交互に実施するとしたが、液晶層5に対する影響が軽微であれば、第1測定期間T10または第2測定期間T20を単独で実施してもよい。あるいは第1測定期間T10または第2測定期間T20を繰り返して実施してもよい。
【0149】
本実施形態では、第2逆掃引期間T5と第2充電期間T7との間に第2緩和期間T6が挿入されることにより、第2逆掃引期間T5に初期配置された可動性イオンを移動させることなく、第2逆掃引期間T5から第2充電期間T7へ移行させることができる。これにより、本実施形態によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネル100の使用初期から、液晶層5の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0150】
本実施形態では、
図5に示したように第2緩和期間T6、第2充電期間T7及び第2放電期間T8において、共通電極21への供給電位が第3電位V3に固定される。従って、充電完了までの時間が短縮され、充電開始から放電開始までの時間が短くなり、その結果、移動度の大きい可動性イオンの作用をより観測しやすくなる。
【0151】
第1実施形態の液晶装置1000において、第2逆掃引期間T5は、通常駆動時の表示領域Eにおける1フレーム期間より長く、第2逆掃引期間T5における検出電極30と共通電極21との電位差Vp4の絶対値は、通常駆動時の表示領域Eにおける液晶層5の最大印加電圧以上である。
このように、第2逆掃引期間T5を1フレーム期間より長く設定することにより、特に移動度の小さい可動性イオンを、共通電極21及び検出電極30のいずれか一方に効果的に初期配置させることができる。
また、第2逆掃引期間T5における電位差Vp4の絶対値、すなわち第2逆掃引期間T5に液晶層5に印加される電圧を、通常駆動時の表示領域Eにおける液晶層5の最大印加電圧以上とすることにより、最大印加電圧程度で動く可動性イオンも、共通電極21及び検出電極30のいずれか一方に効果的に初期配置させることができる。
従って、本実施形態によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネル100の使用初期から、液晶層5の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0152】
第1実施形態の液晶装置1000において、第2緩和期間T6における検出電極30と共通電極21との電位差Vp5の絶対値は、0Vより大きく、且つ液晶層5の閾値電圧Vthより小さい。
このように、第2緩和期間T6における電位差Vp5の絶対値、すなわち第2緩和期間T6に液晶層5に印加される電圧を、0Vより大きく、且つ液晶層5の閾値電圧Vthより小さく設定することにより、液晶層5の誘電異方性の影響を抑制する効果が高まる。
従って、本実施形態によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネル100の使用初期から、液晶層5の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0153】
第1実施形態の液晶装置1000において、第2充電期間T7は、通常駆動時の表示領域Eにおける1フレーム期間より短く、第2充電期間T7における検出電極30と共通電極21との電位差Vp6の絶対値は、0Vより大きく、且つ液晶層5の閾値電圧Vthより小さい。
このように、第2充電期間T7を1フレーム期間より短く設定することにより、移動度の大きい可動性イオンの作用を測定値の変化として捕えやすくなる。
また、第2充電期間T7における電位差Vp6の絶対値、すなわち第2充電期間T7に液晶層5に印加される電圧を、0Vより大きく、且つ液晶層5の閾値電圧Vthより小さく設定することにより、液晶層5の誘電異方性の影響を抑制しながら、第2放電期間T8における検出電極電位Vdを測定できる。
従って、本実施形態によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネル100の使用初期から、液晶層5の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0154】
第1実施形態の液晶装置1000において、測定回路200は、検出電極30と電気的に接続される第1ノードN1と、共通電極21と電気的に接続される共通電極線L1と、第1電位V1が印加される第1電位線L2と、第1ノードN1と第1電位線L2との間に電気的に接続される第1コンデンサーC1と、共通電極線L1と第1電位線L2との間に電気的に接続される第2コンデンサーC2と、第1スイッチSW1と、第2スイッチSW2と、第3スイッチSW3と、第4スイッチSW4と、第5スイッチSW5と、第1参照電圧Vf1に対応する第1測定電位Vs1を出力する第1給電回路40と、第2電位V2を出力する第2給電回路41と、第3電位V3を出力する第3給電回路48と、第1参照電圧Vs1を第1給電回路40に出力し、第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御する中央制御回路45と、第1ノードN1の電位を検出電極30の電位として測定する電位測定回路(増幅回路43及びA/Dコンバーター44)と、を備える。
第1ノードN1は、第1スイッチSW1を介して第1電位線L2と電気的に接続される。第1ノードN1は、第2スイッチSW2を介して第1給電回路40の出力端子と電気的に接続される。共通電極線L1は、第3スイッチSW3を介して第1電位線L2と電気的に接続される。共通電極線L1は、第4スイッチSW4を介して第3給電回路48の出力端子と電気的に接続される。共通電極線L1は、第5スイッチSW5を介して第2給電回路41の出力端子と電気的に接続される。
上記の構成を有する測定回路200を用いることにより、シンプルな回路構成で測定回路200に要求される機能を実現できるとともに、検出電極30の電位測定値に含まれるノイズ成分を低減することができる。
【0155】
第1実施形態の液晶装置1000において、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2は、第1電圧(5V)によってオン状態に制御され、第3スイッチSW3、第4スイッチSW4及び第5スイッチSW5は、第1電圧よりも高い第2電圧(15V)によってオン状態に制御される。
このように、共通電極線L1と電気的に接続される第3スイッチSW3から第5スイッチSW5が、比較的高い第2電圧によってオン状態に制御されることにより、第3スイッチSW3から第5スイッチSW5のオン抵抗を小さくできるため、共通電極線L1の応答性を向上させることができ、且つ、検出電極30からのリーク電流を抑制できる。
その結果、第1充電期間T3及び第2充電期間T7を短くできるため、移動度の大きい可動性イオンの作用を測定値の変化として捕えることができるとともに、各スイッチ部品の特性バラツキが測定値に与える影響を抑制できる。また、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2は、中央制御回路45とは非一体型とすることが好ましい。例えば、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2は集積回路チップAとして実装され、中央制御回路45は集積回路チップBとして実装される。中央制御回路45は高速で駆動される回路系を含む場合があり、発熱して高温化することがある。従って、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2を、中央制御回路45とは非一体型とすれば、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2の高温化は低減され、各スイッチを通じたリーク電流は抑制される。その結果、第1放電期間T4や第2放電期間T8おける検出電極30の電位変化は可動性イオンの作用がより支配的になり、より測定に適したものとなる。
【0156】
2.第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態について説明する。以下に例示する各形態において、第1実施形態と共通の構成については、第1実施形態で使用した符号と同じ符号を付し、詳細な説明を適宜省略する。
【0157】
2.1.液晶装置2000の構成の概要
図17は、第2実施形態の液晶装置2000の概略的な構成を示す説明図である。液晶装置2000は、第1実施形態と同じ液晶パネル100と、第1実施形態と異なる測定回路300と、を備える。
【0158】
測定回路300は、第1給電回路40と、第4給電回路49と、レベルシフター42と、増幅回路43と、A/Dコンバーター44と、中央制御回路45と、測定値記憶回路46と、表示情報生成回路47と、第1スイッチSW1と、第2スイッチSW2と、第3スイッチSW3と、第4スイッチSW4と、第1コンデンサーC1と、第2コンデンサーC2と、共通電極線L1と、第1電位線L2と、第1ノードN1と、を備える。
【0159】
共通電極線L1は、液晶パネル100の第2電極接続端子18bと電気的に接続される。つまり、共通電極線L1は、第2電極接続端子18bを介して、共通電極21と電気的に接続される。第1電位線L2は、液晶装置2000内のデジタル回路系のグランドと1点で電気的に接続される。第1電位線L2は、第2コンデンサーC2を介して、共通電極線L1と電気的に接続される。つまり、第2コンデンサーC2は、共通電極線L1と第1電位線L2との間に電気的に接続される。また、第1電位線L2は、液晶パネル100のホルダー110と電気的に接続される。
【0160】
測定回路300内における第1ノードN1は、液晶パネル100の第1電極接続端子18aと電気的に接続される。つまり、第1ノードN1は、第1電極接続端子18aを介して、検出電極30と電気的に接続される。第1ノードN1は、第1スイッチSW1を介して、第1電位線L2と電気的に接続される。第1ノードN1は、第2スイッチSW2を介して、第1給電回路40の出力端子と電気的に接続される。第1ノードN1は、第1コンデンサーC1を介して、第1電位線L2と電気的に接続される。つまり、第1コンデンサーC1は、第1ノードN1と第1電位線L2との間に電気的に接続される。
【0161】
第1スイッチSW1の状態は、中央制御回路45から出力される第1制御信号S1によって制御される。例えば、第1制御信号S1として、5Vの振幅を有する論理信号が中央制御回路45から出力され、論理「H」のときに第1スイッチSW1はオン状態になる。第2スイッチSW2の状態は、中央制御回路45から出力される第2制御信号S2によって制御される。例えば、第2制御信号S2として、5Vの振幅を有する論理信号が中央制御回路45から出力され、論理「H」のときに第2スイッチSW2はオン状態になる。つまり、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2は、第1電圧(5V)によってオン状態に制御される。
【0162】
共通電極線L1は、第3スイッチSW3を介して、第1電位線L2と電気的に接続される。共通電極線L1は、第4スイッチSW4を介して、第4給電回路49の出力端子と電気的に接続される。
【0163】
第3スイッチSW3の状態は、中央制御回路45からレベルシフター42を介して出力される第3制御信号S3によって制御される。例えば、第3制御信号S3として、5Vの振幅を有する論理信号が中央制御回路45から出力されるが、この論理信号は、レベルシフター42によって、例えば、15Vの振幅を有する論理信号に変換される。つまり、レベルシフター42から15Vの振幅を有する第3制御信号S3が出力され、論理「H」のときに第3スイッチSW3はオン状態になる。
【0164】
第4スイッチSW4の状態は、中央制御回路45からレベルシフター42を介して出力される第4制御信号S4によって制御される。例えば、第4制御信号S4として、5Vの振幅を有する論理信号が中央制御回路45から出力されるが、この論理信号は、レベルシフター42によって、例えば、15Vの振幅を有する論理信号に変換される。つまり、レベルシフター42から15Vの振幅を有する第4制御信号S4が出力され、論理「H」のときに第4スイッチSW4はオン状態になる。
上記のように、第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4は、第1電圧(5V)よりも高い第2電圧(15V)によってオン状態に制御される。
【0165】
第1給電回路40は、中央制御回路45から出力される第1参照電圧Vf1に対応する第1測定電位Vs1を出力する。例えば、第1給電回路40は、第1参照電圧Vf1と同じ極性及び絶対値を有する第1測定電位Vs1を出力する。すなわち、第1給電回路40から出力される第1測定電位Vs1は、中央制御回路45によって可変制御される。このような第1給電回路40は、例えば、第1参照電圧Vf1が入力されるボルテージフォロワーによって実現できる。
【0166】
第4給電回路49は、中央制御回路45から出力される第2参照電圧Vf2に対応する第2測定電位Vs2を出力する。例えば、第4給電回路49は、第2参照電圧Vf2と同じ極性及び絶対値を有する第2測定電位Vs2を出力する。すなわち、第4給電回路49から出力される第2測定電位Vs2は、中央制御回路45によって可変制御される。このような第4給電回路49は、例えば、第2参照電圧Vf2が入力されるボルテージフォロワーによって実現できる。
【0167】
中央制御回路45は、液晶層5の劣化状況の測定時において、測定回路300に含まれる各回路を制御する。具体的には、中央制御回路45は、第1参照電圧Vf1を第1給電回路40に出力し、第2参照電圧Vf2を第4給電回路49に出力する。中央制御回路45は、第1制御信号S1を第1スイッチSW1に出力するとともに、第2制御信号S2を第2スイッチSW2に出力する。中央制御回路45は、第3制御信号S3及び第4制御信号S4を、レベルシフター42を介して、第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4に出力する。このように、第2実施形態における中央制御回路45は、第1参照電圧Vf1を第1給電回路40に出力し、第2参照電圧Vf2を第4給電回路49に出力し、第1スイッチSW1から第4スイッチSW4を制御する制御回路に相当する。
【0168】
液晶パネル100の通常駆動時において、中央制御回路45は、+5Vの第1参照電圧Vf1を第1給電回路40に出力し、+5Vの第2参照電圧Vf2を第4給電回路49に出力する。これにより、通常駆動時において、第1給電回路40から+5Vの第1測定電位Vs1が出力され、第4給電回路49から+5Vの第2測定電位Vs2が出力される。また、通常駆動時において、中央制御回路45は、第2スイッチSW2及び第4スイッチSW4をオン状態に制御し、第1スイッチSW1及び第3スイッチSW3をオフ状態に制御する。これにより、通常駆動時において、第1給電回路40の出力端子は、検出電極30と電気的に接続され、第4給電回路49の出力端子は、共通電極21と電気的に接続される。
【0169】
従って、通常駆動時において、+5Vの第1測定電位Vs1が検出電極30に供給され、+5Vの第2測定電位Vs2が共通電極21に供給される。つまり、通常駆動時において、検出電極30の電位は、共通電極21の電位と同じ+5Vとなる。通常駆動時において、第4給電回路49から出力される+5Vの第2測定電位Vs2は、コモン電位として使用される。
【0170】
また、通常駆動及び液晶層5の物性測定のいずれも行われない非動作時において、中央制御回路45は、第1スイッチSW1及び第3スイッチSW3をオン状態に制御し、第2スイッチSW2及び第4スイッチSW4をオフ状態に制御する。これにより、非動作時において、検出電極30及び共通電極21は、それぞれ、第1電位線L2と電気的に接続される。従って、非動作時において、検出電極30及び共通電極21のそれぞれの電位は、第1電位V1、つまり0Vとなる。
なお、測定回路300に含まれる回路のうち、上記で説明した回路以外の回路は、第1実施形態の測定回路200に含まれる回路と同じである。
【0171】
2.2.第2実施形態における第1測定処理及び第2測定処理の説明
第1実施形態と同様に、第2実施形態における中央制御回路45は、カウント値Kが上限値Kmaxと等しくなるまで、第1測定処理と第2測定処理とを交互に実行する。第2実施形態における第1測定処理及び第2測定処理の内容は、第1実施形態における第1測定処理及び第2測定処理の内容と異なる。これは、第2実施形態では、第2給電回路41及び第3給電回路48の代わりに第4給電回路49が用いられるためである。検出電極30と共通電極21に対する電位制御は第1実施形態と同様である。
【0172】
以下では、
図5及び
図6を参照しながら、第2実施形態における第1測定処理及び第2測定処理について詳細に説明する。なお、リセット期間T0における測定回路300の動作は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0173】
まず、第1測定期間T10に行われる第1測定処理について説明する。
第1逆掃引期間T1において、測定回路300は、検出電極30に第1電位V1を供給し、共通電極21に第2電位V2を供給する。
【0174】
具体的には、第1逆掃引期間T1において、中央制御回路45は、例えば+5Vの第2参照電圧Vf2を第4給電回路49に出力する。これにより、第4給電回路49から+5Vの第2測定電位Vs2が出力される。また、第1逆掃引期間T1において、中央制御回路45は、第1スイッチSW1及び第4スイッチSW4をオン状態に制御するとともに、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3をオフ状態に制御する。
【0175】
第1逆掃引期間T1において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第4スイッチSW4を制御することにより、検出電極30は、第1電位線L2と電気的に接続され、共通電極21は、第4給電回路49の出力端子と電気的に接続される。これにより、第1逆掃引期間T1において、検出電極30に0Vの第1電位V1が供給され、共通電極21に+5Vの第2測定電位Vs2が第2電位V2として供給される。その結果、
図5に示すように、第1逆掃引期間T1において、検出電極電位Vdは0Vとなり、共通電極電位Vcは+5Vとなる。また、
図6に示すように、第1逆掃引期間T1において、検出電極30と共通電極21との電位差Vp1は、-5Vとなる。
【0176】
第1逆掃引期間T1後の第1緩和期間T2において、測定回路300は、検出電極30に第1電位V1を供給し、共通電極21に第3電位V3を供給する。
【0177】
具体的には、第1緩和期間T2において、中央制御回路45は、例えば+1.25Vの第2参照電圧Vf2を第4給電回路49に出力する。これにより、第4給電回路49から+1.25Vの第2測定電位Vs2が出力される。また、第1緩和期間T2において、中央制御回路45は、第1スイッチSW1及び第4スイッチSW4をオン状態に制御するとともに、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3をオフ状態に制御する。
【0178】
第1緩和期間T2において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第4スイッチSW4を制御することにより、検出電極30は、第1電位線L2と電気的に接続され、共通電極21は、第4給電回路49の出力端子と電気的に接続される。これにより、第1緩和期間T2において、検出電極30に0Vの第1電位V1が供給され、共通電極21に+1.25Vの第2測定電位Vs2が第3電位V3として供給される。その結果、
図5に示すように、第1緩和期間T2において、検出電極電位Vdは0Vとなり、共通電極電位Vcは+1.25Vとなる。また、
図6に示すように、第1緩和期間T2において、検出電極30と共通電極21との電位差Vp2は、-1.25Vとなる。
【0179】
第1緩和期間T2後の第1充電期間T3において、測定回路300は、検出電極30に第4電位V4を供給し、共通電極21に第3電位V3を供給する。
【0180】
具体的には、第1充電期間T3において、中央制御回路45は、例えば+2.5Vの第1参照電圧Vf1を第1給電回路40に出力し、+1.25Vの第2参照電圧Vf2を第4給電回路49に出力する。これにより、第1給電回路40から+2.5Vの第1測定電位Vs1が出力され、第4給電回路49から+1.25Vの第2測定電位Vs2が出力される。また、第1充電期間T3において、中央制御回路45は、第2スイッチSW2及び第4スイッチSW4をオン状態に制御するとともに、第1スイッチSW1及び第3スイッチSW3をオフ状態に制御する。
【0181】
第1充電期間T3において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第4スイッチSW4を制御することにより、検出電極30は、第1給電回路40の出力端子と電気的に接続され、共通電極21は、第4給電回路49の出力端子と電気的に接続される。これにより、第1充電期間T3において、検出電極30に+2.5Vの第1測定電位Vs1が第4電位V4として供給され、共通電極21に+1.25Vの第2測定電位Vs2が第3電位V3として供給される。その結果、
図5に示すように、第1充電期間T3において、検出電極電位Vdは+2.5Vとなり、共通電極電位Vcは+1.25Vとなる。また、
図6に示すように、第1充電期間T3において、検出電極30と共通電極21との電位差Vp3は、+1.25Vとなる。
【0182】
第1充電期間T3後の第1放電期間T4において、測定回路300は、検出電極30への電位の供給を停止すると共に共通電極21に第3電位V3を供給し、少なくとも1回、例えば、第1放電期間T4の終了時に検出電極電位Vdを測定する。
【0183】
具体的には、第1放電期間T4において、中央制御回路45は、+1.25Vの第2参照電圧Vf2を第4給電回路49に出力する。これにより、第4給電回路49から+1.25Vの第2測定電位Vs2が出力される。また、第1放電期間T4において、中央制御回路45は、第4スイッチSW4をオン状態に制御するとともに、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3をオフ状態に制御する。
【0184】
第1放電期間T4において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第4スイッチSW4を制御することにより、検出電極30は、第1給電回路40及び第1電位線L2のどちらからも電気的に切断され、共通電極21は、第4給電回路49の出力端子と電気的に接続される。これにより、第1放電期間T4において、共通電極21には+1.25Vの第3電位V3が供給され続けるが、検出電極30への電位供給が停止するため、液晶層5は、第1充電期間T3に充電された電荷を放電する。その結果、
図5に示すように、第1放電期間T4において、検出電極電位Vd1は、第4電位V4から共通電極21に与えられた第3電位V3に向かって緩やかに変化し、時刻t5において電位Vd1に到達する。
【0185】
中央制御回路45は、例えば、第1放電期間T4が終了する時刻t5における検出電極電位Vd1を測定する。具体的には、検出電極電位Vd1は増幅回路43によって増幅され、増幅回路43の出力がA/Dコンバーター44に入力される。中央制御回路45は、時刻t5にA/Dコンバーター44から出力されるデジタル値を、検出電極電位Vd1の測定値として取得する。中央制御回路45は、時刻t5に得られた検出電極電位Vd1の測定値を測定値記憶回路46に記憶させる。
【0186】
続いて、第2測定期間T20に行われる第2測定処理について説明する。
第1放電期間T4後の第2逆掃引期間T5において、測定回路300は、検出電極30に第2電位V2を供給し、共通電極21に第1電位V1を供給する。
【0187】
具体的には、第2逆掃引期間T5において、中央制御回路45は、例えば+5Vの第1参照電圧Vf1を第1給電回路40に出力する。これにより、第1給電回路40から+5Vの第1測定電位Vs1が出力される。第2逆掃引期間T5において、中央制御回路45は、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3をオン状態に制御するとともに、第1スイッチSW1及び第4スイッチSW4をオフ状態に制御する。
【0188】
第2逆掃引期間T5において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第4スイッチSW4を制御することにより、検出電極30は、第1給電回路40の出力端子と電気的に接続され、共通電極21は、第1電位線L2と電気的に接続される。これにより、第2逆掃引期間T5において、検出電極30に+5Vの第1測定電位Vs1が第2電位V2として供給され、共通電極21に0Vの第1電位V1が供給される。その結果、
図5に示すように、第2逆掃引期間T5において、検出電極電位Vdは+5Vとなり、共通電極電位Vcは0Vとなる。また、
図6に示すように、第2逆掃引期間T5において、検出電極30と共通電極21との電位差Vp4は、+5Vとなる。
【0189】
第2逆掃引期間T5後の第2緩和期間T6において、測定回路300は、検出電極30に第4電位V4を供給し、共通電極21に第3電位V3を供給する。
【0190】
具体的には、第2緩和期間T6において、中央制御回路45は、例えば+2.5Vの第1参照電圧Vf1を第1給電回路40に出力し、+1.25Vの第2参照電圧Vf2を第4給電回路49に出力する。これにより、第1給電回路40から+2.5Vの第1測定電位Vs1が出力され、第4給電回路49から+1.25Vの第2測定電位Vs2が出力される。また、第2緩和期間T6において、中央制御回路45は、第2スイッチSW2及び第4スイッチSW4をオン状態に制御するとともに、第1スイッチSW1及び第3スイッチSW3をオフ状態に制御する。
【0191】
第2緩和期間T6において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第4スイッチSW5を制御することにより、検出電極30は、第1給電回路40の出力端子と電気的に接続され、共通電極21は、第4給電回路49の出力端子と電気的に接続される。これにより、第2緩和期間T6において、検出電極30に+2.5Vの第1測定電位Vs1が第4電位V4として供給され、共通電極21に+1.25Vの第2測定電位Vs2が第3電位V3として供給される。その結果、
図5に示すように、第2緩和期間T6において、検出電極電位Vdは+2.5Vとなり、共通電極電位Vcは+1.25Vとなる。また、
図6に示すように、第2緩和期間T6において、検出電極30と共通電極21との電位差Vp5は、+1.25Vとなる。
【0192】
第2緩和期間T6後の第2充電期間T7において、測定回路300は、検出電極30に第1電位V1を供給し、共通電極21に第3電位V3を供給する。
【0193】
具体的には、第2充電期間T7において、中央制御回路45は、+1.25Vの第2参照電圧Vf2を第4給電回路49に出力する。これにより、第4給電回路49から+1.25Vの第2測定電位Vs2が出力される。また、第2充電期間T7において、中央制御回路45は、第1スイッチSW1及び第4スイッチSW4をオン状態に制御するとともに、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3をオフ状態に制御する。
【0194】
第2充電期間T7において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第4スイッチSW4を制御することにより、検出電極30は、第1電位線L2と電気的に接続され、共通電極21は、第4給電回路49の出力端子と電気的に接続される。これにより、第2充電期間T7において、検出電極30に0Vの第1電位V1が供給され、共通電極21に+1.25Vの第2測定電位Vs2が第3電位V3として供給される。その結果、
図5に示すように、第2充電期間T7において、検出電極電位Vdは0Vとなり、共通電極電位Vcは+1.25Vとなる。また、
図6に示すように、第2充電期間7において、検出電極30と共通電極21との電位差Vp6は、-1.25Vとなる。
【0195】
第2充電期間T7後の第2放電期間T8において、測定回路300は、検出電極30への電位の供給を停止すると共に共通電極21に第3電位V3を供給し、少なくとも1回、例えば、第2放電期間T8の終了時に検出電極電位Vdを測定する。
【0196】
具体的には、第2放電期間T8において、中央制御回路45は、+1.25Vの第2参照電圧Vf2を第4給電回路49に出力する。これにより、第4給電回路49から+1.25Vの第2測定電位Vs2が出力される。また、第2放電期間T8において、中央制御回路45は、第4スイッチSW4をオン状態に制御するとともに、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3をオフ状態に制御する。
【0197】
第2放電期間T8において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第4スイッチSW4を制御することにより、検出電極30は、第1給電回路40及び第1電位線L2のどちらからも電気的に切断され、共通電極21は、第4給電回路49の出力端子と電気的に接続される。これにより、第2放電期間T8において、共通電極21には+1.25Vの第2測定電位Vs2が第3電位V3として供給され続けるが、検出電極30への電位供給が停止するため、液晶層5は、第2充電期間T7に充電された電荷を放電する。その結果、
図5に示すように、第2放電期間T8において、検出電極電位Vd1は、第1電位V1から共通電極21に与えられた第3電位V3に向かって緩やかに変化し、時刻t9において電位Vd2に到達する。
【0198】
中央制御回路45は、例えば、第2放電期間T8が終了する時刻t9における検出電極電位Vd2を測定する。具体的には、検出電極電位Vd2は増幅回路43によって増幅され、増幅回路43の出力がA/Dコンバーター44に入力される。中央制御回路45は、時刻t9にA/Dコンバーター44から出力されるデジタル値を、検出電極電位Vd2の測定値として取得する。中央制御回路45は、時刻t9に得られた検出電極電位Vd2の測定値を測定値記憶回路46に記憶させる。
【0199】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態の液晶装置2000において、測定回路300は、検出電極30と電気的に接続される第1ノードN1と、共通電極21と電気的に接続される共通電極線L1と、第1電位V1が印加される第1電位線L2と、第1ノードN1と第1電位線L2との間に電気的に接続される第1コンデンサーC1と、共通電極線L1と第1電位線L2との間に電気的に接続される第2コンデンサーC2と、第1スイッチSW1と、第2スイッチSW2と、第3スイッチSW3と、第4スイッチSW4と、第1参照電圧Vf1に対応する第1測定電位Vs1を出力する第1給電回路40と、第2参照電圧Vf2に対応する第2測定電位Vs2を出力する第4給電回路49と、第1参照電圧Vs1を第1給電回路40に出力し、第2参照電圧Vs2を第4給電回路49に出力し、第1スイッチSW1から第4スイッチSW4を制御する中央制御回路45と、第1ノードN1の電位を検出電極30の電位として測定する電位測定回路(増幅回路43及びA/Dコンバーター44)と、を備える。
第1ノードN1は、第1スイッチSW1を介して第1電位線L2と電気的に接続される。第1ノードN1は、第2スイッチSW2を介して第1給電回路40の出力端子と電気的に接続される。共通電極線L1は、第3スイッチSW3を介して第1電位線L2と電気的に接続される。共通電極線L1は、第4スイッチSW4を介して第4給電回路49の出力端子と電気的に接続される。
上記の構成を有する測定回路300を用いることにより、第1実施形態の測定回路200と比較して、よりシンプルな回路構成で測定回路300に要求される機能を実現できるとともに、検出電極30の電位測定値に含まれるノイズ成分を低減することができる。
【0200】
第2実施形態の液晶装置2000において、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2は、第1電圧(5V)によってオン状態に制御され、第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4は、第1電圧よりも高い第2電圧(15V)によってオン状態に制御される。
このように、共通電極線L1と電気的に接続される第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4が、比較的高い第2電圧によってオン状態に制御されることにより、これらの各スイッチのオン抵抗を小さくできるため、共通電極線L1の応答性を向上させることができる。
その結果、第1充電期間T3及び第2充電期間T7を短くできるため、移動度の大きい可動性イオンの作用を測定値の変化として捕えることができるとともに、各スイッチ部品の特性バラツキが測定値に与える影響を抑制できる。また、共通電極線L1の応答性が改善することは共通電極21の応答性の改善を意味するから、通常駆動時における表示性能を損なうことを抑制する。
【0201】
3.電子機器の概要
図18は、本実施形態に係る電子機器としての投射型表示装置の構成を示す概略構成図である。以下では、第1実施形態の液晶装置1000を備えた電子機器として、投射型表示装置10000を例に挙げて説明する。
【0202】
投射型表示装置10000は、3板式の投射型表示装置であって、光源としてのランプユニット1001と、色分離光学系としてのダイクロイックミラー1011及び1012と、青色光Bに対応する液晶装置1000Bと、緑色光Gに対応する液晶装置1000Gと、赤色光Rに対応する液晶装置1000Rと、3個の反射ミラー1111、1112及び1113と、3個のリレーレンズ1121、1122及び1123と、色合成光学系としてのダイクロイックプリズム1130と、投射光学系としての投射レンズ1140と、を備えている。投射光学系によって映像がスクリーン1200に投影される。なお、リレーレンズ1121、1122及び1123と、反射ミラー1112及び1113とは、リレーレンズ系1120を構成する。
【0203】
また、投射型表示装置10000は、液晶装置1000B、1000G及び1000Rから送信される液晶層5の劣化状況の測定データを受信し、受信した測定データに基づいて、所定の制御を行うパネル制御回路1230を備える。
【0204】
パネル制御回路1230は、液晶装置1000B、1000G及び1000Rから夫々の液晶層5の劣化状況のデータを受信すると、液晶装置1000B、1000G及び1000R毎に、液晶層5の劣化状況に関する表示情報を作成し、表示する。
【0205】
なお、パネル制御回路1230は、液晶層5の劣化状況の測定データに基づいて、液晶パネル100の寿命が近いことをパイロットランプ1240の点灯によって報知することができる。例えば、青色に対応する液晶装置1000Bの液晶パネル100の寿命が近い場合は、青色のパイロットランプ1240を点灯する。また、パネル制御回路1230は、スピーカー1250を用いて、液晶パネル100の液晶層5の劣化状態を音声で報知してよい。また、パネル制御回路1230は、液晶パネル100の液晶層5の劣化状態を、リモートコントローラー1260または不図示の携帯端末の画面に報知してもよい。上記のように液晶装置1000B、1000G及び1000Rへの表示以外に、液晶パネル100の液晶層5の劣化状態を報知する手段を設けてもよい。
【0206】
また、パネル制御回路1230は、受信した測定データから液晶パネル100の寿命が近いことを検知すると、液晶層5の劣化を遅らせるために、液晶装置1000B、1000G及び1000Rの制御に関する制御値を変更する。例えば、制御値を修正して、液晶装置1000B、1000G及び1000Rに照射するランプユニット1001の輝度を下げる、或いは、液晶装置1000B、1000G及び1000Rの階調電圧をランプユニット1001の輝度の低下に応じた電圧値に変える、などを行うことによって液晶パネル100の使用可能時間の延長を図ることができる。
【0207】
4.測定結果の表示画面例の概要
図19は、投射型表示装置10000の設定メニュー画面例を示す説明図であり、
図20は、液晶層5の劣化状況を表示する表示画面例を示す説明図である。
【0208】
図19において、スクリーン1200に投射表示された設定メニュー画面D1の中から保全Mを選択すると、保全メニューが表示され、その中の液晶パネル100の状態の表示を選択すると、パネル制御回路1230は、液晶装置1000B、1000G及び1000Rに対して、液晶層5の劣化状況の測定データの送信要求を送信し、受信した液晶装置1000B、1000G及び1000Rの液晶層5の劣化状況の測定データに基づいて、
図20に示したような表示画面D2を表示する。
【0209】
図20の表示画面D2は、液晶装置1000Bの液晶層5の劣化状況を示す画面である。なお、液晶装置1000G及び1000Rの液晶層5の劣化状況を示す画面は、画面切り替えによって個別に表示されてもよい。
【0210】
表示画面D2には、液晶装置1000Bの使用開始から現在までの測定値の履歴を示す推移線W2と、標準的使用条件下における予想推移線W3と、液晶パネル100の寿命が近いことを示す閾値Vd_thのラインが表示されている。なお、表示画面D2に、液晶装置1000G及び1000Rの情報も一緒に表示してもよい。推移線W2と予想推移線W3との比較によって、使用条件が想定より過酷であるかどうかを判断することができるから、液晶装置1000B、1000G及び1000Rに照射するランプユニット1001の輝度を制限するなどの予防保全を施すことができる。そして、推移線W2が予想推移線W3に改善したら、ランプユニット1001の輝度の制限を解除するようにしてもよい。
【0211】
測定値の履歴を示す推移線W2については、その変化トレンドを判別しやすくするために、複数の測定値を平均化して得ることのできる平滑線を表示できるようにしてもよい。また、測定値の履歴を示す推移線W2を示す以外に、単に測定値を数値として表示するようにしてもよい。このとき、測定値の表示色を閾値Vd_thと照らし合わせて変化させてもよい。例えば、閾値Vd_thより大きい状態では緑色で表示し、閾値Vd_thに近づいたら黄色で表示し、閾値Vd_th以下になったら赤色で表示するようにしてもよい。
【0212】
また、測定値は任意の値で規格化した指標値として表示してもよい。この場合、例えば、第1放電期間T4に得られた測定値から指標値を計算すると、使用開始から間もない時期において表示される指標値は、例えば、「1」に近しい値である。この値は液晶層5の劣化の進行に応じて減少していく。典型的には投射型表示装置10000の使用時間の増加に応じて減少傾向となる。
【0213】
あるいは百分率で表示するならば、例えば、「100」に近しい値である。この値は液晶層5の劣化に応じて減少していく。典型的には投射型表示装置10000の使用時間の増加に応じて減少傾向となる。あるいは、第2放電期間T8に得られた測定値から指標値を計算すると、使用開始から間もない時期において表示される指標値は、例えば、「0」に近しい値である。この値は液晶層5の劣化に応じて増加していく。典型的には投射型表示装置10000の使用時間の増加に応じて増加傾向となる。このような指標値を用いて、液晶パネル100の劣化状態を、例えば、棒グラフや、円グラフを用いて表示してもよい。
【0214】
パネル制御回路1230は、投射型表示装置10000の電源をオンした場合、電源をオフした場合、および、保全メニューから液晶層5の劣化状況の測定を指示した場合、液晶層5の劣化状況の測定指示コマンドを、液晶装置1000B、1000G及び1000Rに送信する。
図4のフローチャートのステップS10で説明したように、液晶装置1000B、1000G及び1000Rは、パネル制御回路1230から液晶層5の劣化状況の測定指示コマンドを受信すると、測定を開始する。
【0215】
一般的には、予防保全は機器を安定して稼働させるために、計画的なメンテナンスを施すことを意味する。その際の部品交換等の目安の決定には、部品の使用時間で区切る方法と、部品の劣化程度を評価する方法がある。本発明による液晶パネル100を使用すれば、液晶パネル100の液晶層5の劣化指標となる可動性イオンの増加状況を測定値として得ることができる。測定値の変化は、液晶パネル100の表示異常が発現する前から感度良く観測できるので、予防保全を実施できる。また、多数の個体における測定値の推移の傾向と比較し、機械学習を用いた解析によって、シミ及びムラ等の発生しやすい測定値の挙動を察知して予兆保全を行うこともできる。
【0216】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本開示の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0217】
第1実施形態では、液晶パネル100と、液晶パネル100の外部に設けられた測定回路200と、を備える液晶装置1000を例示したが、液晶パネル100の内部に測定回路200が設けられた構成を採用してもよい。すなわち、素子基板10上に、データ線駆動回路23及び走査線駆動回路24等と共に測定回路200が配置されてもよい。第2実施形態についても同様である。
【0218】
本実施形態では、電子機器として投射型表示装置10000を例示したが、液晶装置1000が適用される電子機器はこれに限定されない。例えば、液晶パネル100から出る光を使ってレジン液を硬化させる3Dプリンター、HUD(Head-Up Display)、HMD(Head Mounted Display)、パーソナルコンピューター、デジタルカメラ、液晶テレビなどの電子機器に適用されてもよい。例えば、液晶パネル100を用いた3DプリンターにはUV光を用いるものがあり、液晶パネル100の劣化が課題である。液晶パネル100の寿命到達が近いことに気づかずに造形を開始すると、造形途中からレジン液の硬化不良を生じ、造形が終わるまで気づかないことがあり得る。ここで本発明による液晶パネル100を使用すれば、液晶パネル100の劣化状態が判る。従って、造形を開始する前にレジン液の硬化不良等が発生することを事前に予期して、予防保全として液晶パネル100を適切な時期に交換することができる。
【0219】
上記実施形態では、液晶装置1000として、透過型の液晶装置を例示したが、液晶装置1000としては、反射型の液晶装置またはLCOS(Liquid crystal on silicon)型の液晶装置としてもよい。
【0220】
〔本開示のまとめ〕
以下、本開示のまとめを付記する。
【0221】
(付記1)第1電極と、液晶層と、前記液晶層を介して前記第1電極に対向する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給すると共に、前記第1電極の電位を測定する測定回路と、を備え、前記測定回路は、第1期間において、前記第1電極に第1電位を供給し、前記第2電極に前記第1電位よりも高い第2電位を供給し、前記第1期間後の第2期間において、前記第1電極に前記第1電位を供給し、前記第2電極に前記第1電位よりも高く且つ前記第2電位よりも低い第3電位を供給し、前記第2期間後の第3期間において、前記第1電極に前記第3電位よりも高く且つ前記第2電位よりも低い第4電位を供給し、前記第2電極に前記第3電位を供給し、前記第3期間後の第4期間において、前記第1電極への電位の供給を停止し、前記第2電極に前記第3電位を供給する、液晶装置。
【0222】
付記1に記載の液晶装置では、第3期間及び第4期間の前に、第1期間が挿入される。これにより、第1期間において、液晶層に含まれる可動性イオンを、第1電極及び第2電極のいずれか一方に効果的に初期配置できる。このように第3期間が始まる前に、可動性イオンの初期配置が整えられることにより、第4期間に得られる第1電極の電位の測定値に関して測定再現性を得ることができる。また、可動性イオンによる内部電場の影響も測定値に反映されるので、可動性イオンの増加が測定値の変化として現れやすくなる。その結果、第1電極、第2電極及び液晶層を有する液晶パネルの使用初期から、液晶層の劣化の進行を感度良く追跡できる。
【0223】
付記1に記載の液晶装置では、第1期間と第3期間との間に第2期間が挿入されることにより、第1期間に初期配置された可動性イオンを移動させることなく、第1期間から第3期間へ移行させることができる。
従って、付記1に記載の液晶装置によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネルの使用初期から、液晶層の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0224】
付記1に記載の液晶装置では、第2期間、第3期間、第4期間において、第2電極への供給電位が第3電位に固定される。第3期間における充電動作時には、第1電極から受ける僅かな電位変動しかないため、第2電極の電位が所定の電位に回復するまでの時間は短くなる。従って、充電完了までの時間が短縮され、充電開始から放電開始までの時間が短くなり、例えば、移動度の大きい可動性イオンの作用をより観測しやすくなる。言い換えれば、例えば、充電時間が5ms程である場合、高移動度イオンを取り逃がす可能性があるが、付記1に記載の液晶装置によれば、充電時間を1ms以下、例えば、200μs程度まで短縮できる。
【0225】
(付記2)表示領域に設けられた画素電極をさらに備え、前記第1電極は、前記表示領域の外に設けられる、付記1に記載の液晶装置。
【0226】
付記2に記載の液晶装置によれば、第1電極が、表示領域の近傍で隣接しているので、表示領域で生じた可動性イオンを検知しやすくなる。従って、液晶層の劣化に伴う可動性イオンの増加に対する感度を向上させることができる。
【0227】
(付記3)前記第1期間は、前記表示領域における1フレーム期間より長く、前記第1期間における前記第1電極と前記第2電極との電位差の絶対値は、前記表示領域における前記液晶層の最大印加電圧以上である、付記2に記載の液晶装置。
【0228】
付記3のように、第1期間を表示領域における1フレーム期間より長く設定することにより、特に移動度の小さい可動性イオンを、第1電極及び第2電極のいずれか一方に効果的に初期配置させることができる。
また、第1期間における電位差の絶対値、すなわち第1期間に液晶層に印加される電圧を、表示領域における液晶層の最大印加電圧以上とすることにより、最大印加電圧程度で動く可動性イオンも、第1電極及び第2電極のいずれか一方に効果的に初期配置させることができる。
従って、付記3に記載の液晶装置によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネルの使用初期から、液晶層の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0229】
(付記4)前記第2期間における前記第1電極と前記第2電極との電位差の絶対値は、0Vより大きく、且つ前記液晶層の閾値電圧より小さい、付記2または3に記載の液晶装置。
【0230】
付記4のように、第2期間における電位差の絶対値、すなわち第2期間に液晶層に印加される電圧を、0Vより大きく、且つ液晶層の閾値電圧より小さく設定することにより、液晶層の誘電異方性の影響を抑制する効果が高まる。
従って、付記4に記載の液晶装置によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネルの使用初期から、液晶層の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0231】
(付記5)前記第3期間は、前記表示領域における1フレーム期間より短く、前記第3期間における前記第1電極と前記第2電極との電位差の絶対値は、0Vより大きく、且つ前記液晶層の閾値電圧より小さい、付記2から4のいずれか一項に記載の液晶装置。
【0232】
付記5のように、第3期間を表示領域における1フレーム期間より短く設定することにより、移動度の大きい可動性イオンの作用を測定値の変化として捕えやすくなる。
また、第3期間における電位差の絶対値、すなわち第3期間に液晶層に印加される電圧を、0Vより大きく、且つ液晶層の閾値電圧より小さく設定することにより、液晶層の誘電異方性の影響を抑制しながら、第4期間における第1電極の電位を測定できる。
従って、付記5に記載の液晶装置によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネルの使用初期から、液晶層の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0233】
(付記6)前記測定回路は、前記第4期間後の第5期間において、前記第1電極に前記第2電位を供給し、前記第2電極に前記第1電位を供給し、前記第5期間後の第6期間において、前記第1電極に前記第4電位を供給し、前記第2電極に前記第3電位を供給し、前記第6期間後の第7期間において、前記第1電極に前記第1電位を供給し、前記第2電極に前記第3電位を供給し、前記第7期間後の第8期間において、前記第1電極への電位の供給を停止し、前記第2電極に前記第3電位を供給する、付記2から5のいずれか一項に記載の液晶装置。
【0234】
付記6に記載の液晶装置では、第7期間及び第8期間の前に、第5期間が挿入される。これにより、第5期間において、液晶層に含まれる可動性イオンを、第1電極及び第2電極のいずれか一方に効果的に初期配置できる。このように第7期間が始まる前に、可動性イオンの初期配置が整えられることにより、第8期間に得られる第1電極の電位の測定値に関して測定再現性を得ることができる。また、可動性イオンによる内部電場の影響も測定値に反映されるので、可動性イオンの増加が測定値の変化として現れやすくなる。その結果、第1電極、第2電極及び液晶層を有する液晶パネルの使用初期から、液晶層の劣化の進行を感度良く追跡できる。
さらに、付記6に記載の液晶装置では、液晶層が交流駆動されるため、第1電極の電位測定時において、液晶層に直流電圧が印加されることに起因して液晶層が劣化することを抑制できる。
【0235】
付記6に記載の液晶装置では、第5期間と第7期間との間に第6期間が挿入されることにより、第5期間に初期配置された可動性イオンを移動させることなく、第5期間から第7期間へ移行させることができる。
従って、付記6に記載の液晶装置によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネルの使用初期から、液晶層の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0236】
付記6に記載の液晶装置では、第6期間、第7期間、第8期間において、第2電極への供給電位が第3電位に固定される。第7期間における充電動作時には、第1電極から受ける僅かな電位変動しかないため、第2電極の電位が所定の電位に回復するまでの時間は短くなる。従って、充電完了までの時間が短縮され、充電開始から放電開始までの時間が短くなり、例えば、移動度の大きい可動性イオンの作用をより観測しやすくなる。
【0237】
(付記7)前記第5期間は、前記表示領域における1フレーム期間より長く、前記第5期間における前記第1電極と前記第2電極との電位差の絶対値は、前記表示領域における前記液晶層の最大印加電圧以上である、付記6に記載の液晶装置。
【0238】
付記7のように、第5期間を表示領域における1フレーム期間より長く設定することにより、特に移動度の小さい可動性イオンを、第1電極及び第2電極のいずれか一方に効果的に初期配置させることができる。
また、第5期間における電位差の絶対値、すなわち第5期間に液晶層に印加される電圧を、表示領域における液晶層の最大印加電圧以上とすることにより、最大印加電圧程度で動く可動性イオンも、第1電極及び第2電極のいずれか一方に効果的に初期配置させることができる。
従って、付記7に記載の液晶装置によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネルの使用初期から、液晶層の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0239】
(付記8)前記第6期間における前記第1電極と前記第2電極との電位差の絶対値は、0Vより大きく、且つ前記液晶層の閾値電圧より小さい、付記6または7に記載の液晶装置。
【0240】
付記8のように、第6期間における電位差の絶対値、すなわち第6期間に液晶層に印加される電圧を、0Vより大きく、且つ液晶層の閾値電圧より小さく設定することにより、液晶層の誘電異方性の影響を抑制する効果が高まる。
従って、付記8に記載の液晶装置によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネルの使用初期から、液晶層の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0241】
(付記9)前記第7期間は、前記表示領域における1フレーム期間より短く、前記第7期間における前記第1電極と前記第2電極との電位差の絶対値は、0Vより大きく、且つ前記液晶層の閾値電圧より小さい、付記6から8のいずれか一項に記載の液晶装置。
【0242】
付記9のように、第7期間を表示領域における1フレーム期間より短く設定することにより、移動度の大きい可動性イオンの作用を測定値の変化として捕えやすくなる。
また、第7期間における電位差の絶対値、すなわち第7期間に液晶層に印加される電圧を、0Vより大きく、且つ液晶層の閾値電圧より小さく設定することにより、液晶層の誘電異方性の影響を抑制しながら、第8期間における第1電極の電位を測定できる。
従って、付記9に記載の液晶装置によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネルの使用初期から、液晶層の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0243】
(付記10)第1電極と、液晶層と、前記液晶層を介して前記第1電極に対向する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給すると共に、前記第1電極の電位を測定する測定回路と、を備え、前記測定回路は、第1期間において、前記第2電極に前記第1電位を供給し、前記第1電極に前記第1電位よりも高い第2電位を供給し、前記第1期間後の第2期間において、前記第2電極に前記第1電位よりも高く且つ前記第2電位よりも低い第3電位を供給し、前記第1電極に前記第3電位よりも高く且つ前記第2電位よりも低い第4電位を供給し、前記第2期間後の第3期間において、前記第1電極に前記第1電位を供給し、前記第2電極に前記第3電位を供給し、前記第3期間後の第4期間において、前記第1電極への電位の供給を停止し、前記第2電極に前記第3電位を供給する、液晶装置。
【0244】
付記10に記載の液晶装置では、第1期間と第3期間との間に第2期間が挿入されることにより、第1期間に初期配置された可動性イオンを移動させることなく、第1期間から第3期間へ移行させることができる。
従って、付記10に記載の液晶装置によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネルの使用初期から、液晶層の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0245】
付記10に記載の液晶装置では、第2期間、第3期間、第4期間において、第2電極への供給電位が第3電位に固定される。第3期間における充電動作時には、第1電極から受ける僅かな電位変動しかないため、第2電極の電位が所定の電位に回復するまでの時間は短くなる。従って、充電完了までの時間が短縮され、充電開始から放電開始までの時間が短くなり、例えば、移動度の大きい可動性イオンの作用をより観測しやすくなる。言い換えれば、例えば、充電時間が5ms程である場合、高移動度イオンを取り逃がす可能性があるが、付記10に記載の液晶装置によれば、充電時間を1ms以下、例えば、200μs程度まで短縮できる。
【0246】
(付記11)前記測定回路は、前記第1電極と電気的に接続される第1ノードと、前記第2電極と電気的に接続される第2電極線と、前記第1電位が印加される第1電位線と、前記第1ノードと前記第1電位線との間に電気的に接続される第1コンデンサーと、前記第2電極線と前記第1電位線との間に電気的に接続される第2コンデンサーと、第1スイッチと、第2スイッチと、第3スイッチと、第4スイッチと、第5スイッチと、第1参照電圧に対応する第1測定電位を出力する第1給電回路と、前記第2電位を出力する第2給電回路と、前記第3電位を出力する第3給電回路と、前記第1参照電圧を前記第1給電回路に出力し、前記第1スイッチから前記第5スイッチを制御する制御回路と、前記第1ノードの電位を前記第1電極の電位として測定する電位測定回路と、を備え、前記第1ノードは、前記第1スイッチを介して前記第1電位線と電気的に接続され、前記第1ノードは、前記第2スイッチを介して前記第1給電回路の出力端子と電気的に接続され、前記第2電極線は、前記第3スイッチを介して前記第1電位線と電気的に接続され、前記第2電極線は、前記第4スイッチを介して前記第3給電回路の出力端子と電気的に接続され、前記第2電極線は、前記第5スイッチを介して前記第2給電回路の出力端子と電気的に接続される、付記1から10のいずれか一項に記載の液晶装置。
【0247】
付記11に記載の構成を備える測定回路を用いることにより、シンプルな回路構成で測定回路に要求される機能を実現できるとともに、検出電極の電位の測定値に含まれるノイズ成分を低減することができる。
【0248】
(付記12)前記第1スイッチ及び前記第2スイッチは、第1電圧によって制御され、前記第3スイッチ、前記第4スイッチ及び第5スイッチは、前記第1電圧よりも高い第2電圧によって制御される、付記11に記載の液晶装置。
【0249】
付記12のように、第2電極線と電気的に接続される第3スイッチから第5スイッチが、比較的高い第2電圧によって制御されることにより、第3スイッチから第5スイッチのオン抵抗を小さくできるため、第2電極線の応答性を向上させることができ、且つ、第1電極からのリーク電流を抑制できる。
その結果、第3期間及び第7期間を短くできるため、移動度の大きい可動性イオンの作用を測定値の変化として捕えることができるとともに、各スイッチ部品の特性バラツキが測定値に与える影響を抑制できる。
【0250】
(付記13)前記測定回路は、前記第1電極と電気的に接続される第1ノードと、前記第2電極と電気的に接続される第2電極線と、前記第1電位が印加される第1電位線と、前記第1ノードと前記第1電位線との間に電気的に接続される第1コンデンサーと、前記第2電極線と前記第1電位線との間に電気的に接続される第2コンデンサーと、第1スイッチと、第2スイッチと、第3スイッチと、第4スイッチと、第1参照電圧に対応する第1測定電位を出力する第1給電回路と、第2参照電圧に対応する第2測定電位を出力する第4給電回路と、前記第1参照電圧を前記第1給電回路に出力し、前記第2参照電圧を前記第4給電回路に出力し、前記第1スイッチから前記第4スイッチを制御する制御回路と、前記第1ノードの電位を前記第1電極の電位として測定する電位測定回路と、を備え、前記第1ノードは、前記第1スイッチを介して前記第1電位線と電気的に接続され、前記第1ノードは、前記第2スイッチを介して前記第1給電回路の出力端子と電気的に接続され、前記第2電極線は、前記第3スイッチを介して前記第1電位線と電気的に接続され、前記第2電極線は、前記第4スイッチを介して前記第4給電回路の出力端子と電気的に接続される、付記1から10のいずれか一項に記載の液晶装置。
【0251】
付記13に記載の構成を備える測定回路を用いることにより、付記10に記載の測定回路と比較して、よりシンプルな回路構成で測定回路に要求される機能を実現できるとともに、検出電極の電位の測定値に含まれるノイズ成分を低減することができる。
【0252】
(付記14)前記第1スイッチ及び前記第2スイッチは、第1電圧によって制御され、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチは、前記第1電圧よりも高い第2電圧によって制御される、付記13に記載の液晶装置。
【0253】
付記14のように、第2電極線と電気的に接続される第3スイッチ及び第4スイッチが、比較的高い第2電圧によってオン状態に制御されることにより、第3スイッチ及び第4スイッチのオン抵抗を小さくできるため、第2電極線の応答性を向上させることができ、且つ、第1電極からのリーク電流を抑制できる。
その結果、第3期間及び第7期間を短くできるため、移動度の大きい可動性イオンの作用を測定値の変化として捕えることができるとともに、各スイッチ部品の特性バラツキが測定値に与える影響を抑制できる。
【0254】
(付記15)付記1から付記14のいずれか一つに記載の液晶装置を備える電子機器。
【符号の説明】
【0255】
1000、2000…液晶装置、100…液晶パネル、200、300…測定回路、5…液晶層、30…検出電極(第1電極)、21…共通電極(第2電極)、40…第1給電回路、41…第2給電回路、42…レベルシフター、43…増幅回路(電位測定回路)、44…A/Dコンバーター(電位測定回路)、45…中央制御回路(制御回路)、48…第3給電回路、49…第4給電回路、SW1…第1スイッチ、SW2…第2スイッチ、SW3…第3スイッチ、SW4…第4スイッチ、SW5…第5スイッチ、C1…第1コンデンサー、C2…第2コンデンサー、L1…共通電極線(第2電極線)、L2…第1電位線、N1…第1ノード、T1…第1逆掃引期間(第1期間)、T2…第1緩和期間(第2期間)、T3…第1充電期間(第3期間)、T4…第1放電期間(第4期間)、T5…第5逆掃引期間(第5期間)、T6…第2緩和期間(第6期間)、T7…第2充電期間(第7期間)、T8…第2放電期間(第8期間)