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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142667
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】防火面格子
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/01 20060101AFI20241003BHJP
   E06B 7/086 20060101ALI20241003BHJP
   E06B 5/16 20060101ALI20241003BHJP
   E06B 5/11 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E06B9/01 K
E06B7/086
E06B5/16
E06B5/11 Z
E06B9/01 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054908
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005005
【氏名又は名称】不二サッシ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390040800
【氏名又は名称】株式会社ナカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 榮伍
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 祥博
【テーマコード(参考)】
2E020
2E036
2E239
【Fターム(参考)】
2E020BA04
2E020BB01
2E020BC06
2E020EA06
2E036JA06
2E036JB02
2E036JC02
2E036KA03
2E036KB01
2E036LA06
2E036LB07
2E036NA05
2E036NB01
2E036QA03
2E036QB01
2E239CA22
2E239CA32
2E239CA54
2E239CA58
(57)【要約】
【課題】ルーバを全閉にした状態で火災が発生した場合にも、サッシ窓からの放熱を遮らないようにすることができる、防火面格子を提供する。
【解決手段】防火面格子1は、面格子本体34と熱感知式作動装置35とを備える。面格子本体34は、框枠体36と、ルーバ37と、連動杆69と、一方側の端部がルーバ37に固定され、他方側の端部が連動杆69に回転自在に支持されたクランク軸62と、ベース側係合部82を有するベース部材78と、連動杆69をベース部材78に対し上下方向に相対移動させることでルーバ37を開閉させるレバー79とを有する。熱感知式作動装置35は、ベース側係合部82と係合してベース部材78を正規位置に支持し、かつ、所定温度に達した場合に、ベース側係合部82との係合を解除してベース部材78の上下方向の相対移動を可能とすることでルーバ37を開動作させる。
【選択図】図43
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面格子本体と、熱感知式作動装置と、を備え、
前記面格子本体は、
矩形枠状に構成された框枠体と、
前記框枠体の内側に上下方向に並列に配置され、かつ、それぞれが前記框枠体を構成する縦框に対し水平方向に配置された中心軸回りの回転を可能に支持された、複数枚のルーバと、
前記縦框の内部に配置され、前記縦框に対して上下方向に相対移動することで前記複数枚のルーバを開閉可能とする連動杆と、
前記連動杆を上下方向の相対移動を可能に支持するとともに、ベース側係合部を有し、かつ、前記縦框の内部に配置されたベース部材と、
前記熱感知式作動装置は、前記ベース側係合部と係合して前記ベース部材を正規位置に支持し、かつ、所定温度に達した場合に、前記ベース側係合部との係合を解除して前記縦框に対する前記ベース部材の上下方向の相対移動を可能とすることで、前記複数枚のルーバを開動作させる、
防火面格子。
【請求項2】
前記ベース部材に対して下方に向いた力を付与する付勢部材をさらに備え、
前記所定温度に達した場合に、前記ベース部材を前記縦框に対して下方に移動させる、
請求項1に記載した防火面格子。
【請求項3】
前記熱感知式作動装置は、リンク機構を構成する作動機構と、前記作動機構を作動させる駆動機構とを有し、
前記作動機構は、前記ベース側係合部と係脱可能で、かつ、左右方向に移動可能なスライド部材を有する、
請求項1に記載した防火面格子。
【請求項4】
前記ベース側係合部は、前記ベース部材の上端部に備えられており、
前記作動機構は、前記框枠体を構成する上框の内部に配置されており、前記スライド部材の左右方向の端部が前記縦框の内部に挿入されている、
請求項3に記載した防火面格子。
【請求項5】
それぞれがクランク形状を有し、一方の端部が、前記ルーバの前記中心軸と同軸に配置され、前記ルーバに対し相対回転不能に固定されており、かつ、他方の端部が、前記連動杆に対し回転可能に支持された、複数本のクランク軸をさらに備える、請求項1に記載した防火面格子。
【請求項6】
前記クランク軸は、クランク板からの切断加工品である、請求項5に記載した防火面格子。
【請求項7】
前記ルーバは、波板形状を有するルーバ本体と、挿通孔を有し、かつ、前記ルーバ本体と一体に備えられた支持筒部とを有し、
前記クランク軸は、全体がアルミニウム合金製であり、前記挿通孔に挿入される挿入軸部を有し、
前記挿通孔は、矩形孔であり、
前記挿入軸部は、前記挿通孔に合致した断面形状を有する、
請求項5に記載した防火面格子。
【請求項8】
前記挿入軸部の外周面には、1乃至複数の外向突起が備えられている、請求項7に記載した防火面格子。
【請求項9】
前記外向突起は、前記挿入軸部の挿入方向に対し直交する方向に伸長している、請求項8に記載した防火面格子。
【請求項10】
前記挿通孔の内周面には、1乃至複数の内向突起が備えられている、請求項7に記載した防火面格子。
【請求項11】
前記内向突起は、前記挿通孔の中心軸線方向に伸長している、請求項10に記載した防火面格子。
【請求項12】
前記挿入軸部の外周面には、1乃至複数の外向突起が備えられており、
前記挿通孔の内周面のうちで前記外向突起と対向する面には、1乃至複数の内向突起が備えられており、
前記外向突起と前記内向突起とが、互いに直交している、
請求項7に記載した防火面格子。
【請求項13】
前記框枠体は、中方立をさらに備え、
前記複数枚のルーバのうちで、前記中方立を挟んで左右両側に配置された1対のルーバは、前記中方立に対し回転自在に支持された連結軸を介して相対回転不能に互いに連結されている、
請求項1に記載した防火面格子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッシ窓の屋外側に設置される防火面格子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マンションなどの集合住宅においては、室内換気や採光などの目的で、共用廊下に面した位置にサッシ窓を設置することが行われている。また、共用廊下に面して設置されたサッシ窓の屋外側には、防犯性やプライバシーを確保するために、面格子を設けることが行われている。
【0003】
面格子としては、従来から各種構造のものが知られているが、特開2009-46868号公報などに記載された、開閉可能なルーバを備えたルーバ面格子は、通風性や遮光性などを自由に調節できることから、近年使用例が増えている。一方、火災時の延焼などを防止するため、防火性能を向上させた面格子が近年要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-46868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
防犯性やプライバシーを確保しつつ、防火性能を向上させるには、サッシ窓の屋外側に設置したルーバ面格子のルーバを全閉にした状態で火災が発生した場合に、サッシ窓からの放熱をルーバ面格子が遮らない構造にすることが有効である。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ルーバを全閉にした状態で火災が発生した場合にも、サッシ窓からの放熱を遮らない、防火面格子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる防火面格子は、サッシ窓の屋外側に設置されるものであり、面格子本体と、熱感知式作動装置とを備える。
前記面格子本体は、矩形枠状に構成された框枠体と、複数枚のルーバと、連動杆と、複数本のクランク軸と、ベース部材と、レバーとを有する。
前記複数枚のルーバは、前記框枠体の内側に上下方向に並列に配置され、かつ、それぞれが前記框枠体を構成する縦框に対し水平方向に配置された中心軸回りの回転を可能に支持されている。
前記連動杆は、前記縦框の内部に配置されており、前記縦框に対して上下方向に相対移動することで前記複数枚のルーバを開閉可能とする。
前記ベース部材は、前記連動杆を上下方向の相対移動を可能に支持するとともに、ベース側係合部を有し、かつ、前記縦框の内部に配置されている。
前記熱感知式作動装置は、前記ベース側係合部と係合して前記ベース部材を正規位置に支持し、かつ、所定温度に達した場合に、前記ベース側係合部との係合を解除して前記縦框に対する前記ベース部材の上下方向の相対移動を可能とすることで、前記複数枚のルーバを開動作させる。
【0008】
本発明の一態様にかかる防火面格子では、前記連動杆と係合し、かつ、前記ベース部材に対し上下方向に揺動可能に支持されており、前記連動杆を前記ベース部材に対し上下方向に相対移動させることで、前記複数枚のルーバを開閉させる、レバーをさらに備えることができる。
本発明の一態様にかかる防火面格子は、前記ベース部材に対して下方に向いた力を付与する付勢部材をさらに備えることができ、前記所定温度に達した場合に、前記ベース部材を前記縦框に対して下方に移動させることができる。
【0009】
本発明の一態様にかかる防火面格子では、前記熱感知式作動装置を、リンク機構を構成する作動機構と、前記作動機構を作動させる駆動機構とを有するものとし、このうちの作動機構を、前記ベース側係合部と係脱可能で、かつ、左右方向に移動可能なスライド部材を有するものとすることができる。
【0010】
本発明の一態様にかかる防火面格子では、前記ベース側係合部を、前記ベース部材の上端部に備え、前記作動機構を、前記框枠体を構成する上框の内部に配置することができる。そして、前記スライド部材の左右方向の端部を、前記縦框の内部に挿入することができる。
【0011】
本発明の一態様に係る防火面格子では、それぞれがクランク形状を有し、一方の端部が、前記ルーバの前記中心軸と同軸に配置され、前記ルーバに対し相対回転不能に固定されており、かつ、他方の端部が前記連動杆に対し回転可能に支持された、複数本のクランク軸をさらに備えることができる。
本発明の一態様にかかる防火面格子では、前記クランク軸を、クランク板からの切断加工品とすることができる。
【0012】
本発明の一態様にかかる防火面格子では、前記ルーバを、波板形状を有するルーバ本体と、挿通孔を有し、かつ、前記ルーバ本体と一体に備えられた支持筒部とを有するものとすることができる。また、前記クランク軸を、全体がアルミニウム合金製で、前記挿通孔に挿入される挿入軸部を有するものとすることができる。
また、前記挿通孔を矩形孔とし、前記挿入軸部を、前記挿通孔に合致した断面形状を有するものとすることができる。
【0013】
本発明の一態様にかかる防火面格子では、前記挿入軸部の外周面に、1乃至複数の外向突起を備えることができる。
この場合、前記外向突起を、前記挿入軸部の挿入方向に対し直交する方向に伸長させることができる。
【0014】
本発明の一態様にかかる防火面格子では、前記挿通孔の内周面に、1乃至複数の内向突起を備えることができる。
この場合、前記内向突起を、前記挿通孔の中心軸線方向に伸長させることができる。
【0015】
本発明の一態様にかかる防火面格子では、前記挿入軸部の外周面に、1乃至複数の外向突起を備え、前記挿通孔の内周面のうちで前記外向突起と対向する面に、1乃至複数の内向突起を備え、前記外向突起と前記内向突起とを、互いに直交させることができる。
【0016】
本発明の一態様にかかる防火面格子では、前記框枠体を、中方立をさらに備えるものとし、前記複数枚のルーバのうちで、前記中方立を挟んで左右両側に配置された1対のルーバを、前記中方立に対し回転自在に支持された連結軸を介して相対回転不能に互いに連結することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の防火面格子によれば、ルーバを全閉にした状態で火災が発生した場合にも、サッシ窓からの放熱を遮らないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施の形態の第1例にかかる防火面格子を屋外側から見た模式図である。
図2図2は、実施の形態の第1例にかかる防火面格子の縦断面図である。
図3図3は、図1のA-A線断面に相当する横断面図である。
図4図4は、図1のB-B線断面に相当する横断面図である。
図5図5は、図2の上部拡大図である。
図6図6は、図2の下部拡大図である。
図7図7は、図3の左部拡大図である。
図8図8は、図3の右部拡大図である。
図9図9は、図4の左部拡大図である。
図10図10は、図4の右部拡大図である。
図11図11は、実施の形態の第1例にかかる防火面格子を、中方立などの一部の部材を省略して屋内側から見た斜視図である。
図12図12は、図11の右上部拡大図である。
図13図13は、図11の右下部拡大図である。
図14図14は、実施の形態の第1例に関して、縦框の内部で窓枠側係合部とスライド部材とが係合した状態を示す斜視図である。
図15図15は、実施の形態の第1例にかかる窓枠上部ブラケットを示す斜視図であり、(A)は左右方向一方側の窓枠上部ブラケットを示し、(B)は左右方向他方側の窓枠上部ブラケットを示す。
図16図16は、実施の形態の第1例にかかる窓枠上部ブラケットを構成する上部ブラケット本体の製造工程を説明するために示す斜視図である。
図17図17は、実施の形態の第1例にかかる窓枠下部ブラケットを示す斜視図であり、(A)は左右方向一方側の窓枠下部ブラケットを示し、(B)は左右方向他方側の窓枠下部ブラケットを示す。
図18図18は、実施の形態の第1例にかかる窓枠下部ブラケットを構成する下部ブラケット本体の製造工程を説明するために示す斜視図である。
図19図19は、図11の左上部拡大図である。
図20図20(A)は、図11に示した防火面格子に下框閉塞片を取り付けた状態を示す、図11の右下部に相当する斜視図であり、図20(B)は、防虫ネットを組み付けた変形例を示す斜視図である。
図21図21は、実施の形態の第1例にかかるルーバ及びクランク軸の組立体を示す斜視図である。
図22図22(A)は、実施の形態の第1例にかかるルーバを示す端面図であり、図22(B)は、図22(A)の部分拡大図である。
図23図23は、実施の形態の第1例に関して、框枠体を省略し、スライド部材と窓枠側係合部及びベース側係合部とのそれぞれの係合状態を示す、斜視図である。
図24図24(A)は、実施の形態の第1例にかかるクランク軸を示す図であり、図24(B)は、図24(A)の部分拡大図である。
図25図25は、実施の形態の第1例にかかるクランク軸の製造工程を説明するために示す斜視図である。
図26図26は、実施の形態の第1例に関して、ルーバの挿通孔にクランク軸の挿入軸部を挿入する工程を示す斜視図である。
図27図27は、実施の形態の第1例に関して、中方立を挟んで左右両側に配置される1対のルーバが連結軸によって連結された状態を、中方立を省略して示す斜視図である。
図28図28(A)は、実施の形態の第1例にかかる連結軸を示す図であり、図28(B)は、図28(A)の部分拡大図である。
図29図29は、実施の形態の第1例にかかる連結軸の製造工程を説明するために示す斜視図である。
図30図30は、実施の形態の第1例に関して、ルーバの挿通孔に連結軸の連結挿入軸部を挿入する工程を示す斜視図である。
図31図31は、実施の形態の第1例に関して、レバー操作に基づくルーバの開閉動作を説明するために示す斜視図であり、(A)はルーバを閉じた状態を示し、(B)はルーバを開放した状態を示す。
図32図32は、実施の形態の第1例に関して、レバー操作に基づくルーバの開閉動作を説明するために示すレバー及びその周辺部材の側面図であり、(A)はルーバを閉じた状態を示し、(B)はルーバを開放した状態を示す。
図33図33は、実施の形態の第1例にかかる面格子下部ブラケットを示す斜視図であり、(A)は左右方向一方側の面格子下部ブラケットを示し、(B)は左右方向他方側の面格子ブラケットを示す。
図34図34は、実施の形態の第1例に関して、平常状態での面格子下部ブラケットと窓枠下部ブラケットとの位置関係を示す斜視図であり、(A)は左右方向一方側の面格子下部ブラケット及び窓枠下部ブラケットを示し、(B)は左右方向他方側の面格子下部ブラケット及び窓枠下部ブラケットを示す。
図35図35は、実施の形態の第1例にかかる防火面格子の上部を屋外側から見た斜視図であり、(A)は熱感知式作動装置が作動する以前の平常時の状態を示し、(B)は熱感知式作動装置が作動した後の状態を示す。
図36図36は、実施の形態の第1例にかかる作動機構を示す斜視図であり、(A)は作動前の状態を示し、(B)は作動後の状態を示す。
図37図37は、実施の形態の第1例にかかる駆動機構を示す斜視図であり、(A)は作動前の状態を示し、(B)は作動後の状態を示す。
図38図38は、実施の形態の第1例にかかる駆動機構を示す分解斜視図である。
図39図39は、実施の形態の第1例にかかる角度規制手段を示す図である。
図40図40は、実施の形態の第1例にかかる角度規制手段の収納ケースを示す斜視図である。
図41図41は、実施の形態の第1例に関して、火災発生時における防火面格子の姿勢変化及びルーバの開動作の1例を(A)(B)の順に時系列で示す、縦断面図である。
図42図42は、実施の形態の第1例に関して、火災発生時における面格子下部ブラケットと窓枠下部ブラケットとの位置関係を(A)(B)の順に時系列で示す、斜視図である。
図43図43は、実施の形態の第1例に関して、火災発生時に、ベース側係合部とスライド部材との係合が解除されてルーバが開放される様子を(A)(B)の順に時系列で示す、斜視図である。
図44図44は、実施の形態の第1例に関して、火災発生時に、ベース側係合部とスライド部材との係合が解除されてルーバが開放される際のレバー及びその周辺部材の変化を(A)(B)の順に時系列で示す、側面図である。
図45図45は、実施の形態の第2例を示す、図6に相当する図である。
図46図46は、実施の形態の第2例を示す、図11に相当する図である。
図47図47は、実施の形態の第2例に関して、窓枠下部ブラケットと縦框の係合受部との係合態様を示す斜視図であり、(A)は左右方向一方側の窓枠下部ブラケットと係合受部との係合態様を示し、(B)は左右方向他方側の窓枠下部ブラケットと係合受部との係合態様を示す。
図48図48は、実施の形態の第2例を示す、図17に相当する図である。
図49図49は、実施の形態の第2例に関して、火災発生時における防火面格子の姿勢変化及びルーバの開動作を(A)(B)の順に時系列で示す、縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施の形態の第1例]
実施の形態の第1例について、図1図44を用いて説明する。
【0020】
本例の防火面格子1は、例えばマンションなどの共用廊下に面して取り付けられたサッシ窓2の屋外側に設置されるもので、火災が発生した場合に、自動的にルーバ37を開放し、サッシ窓2からの放熱を妨げないようにする機能を有する。以下、サッシ窓2の構造を説明した後、防火面格子1の構造を説明する。
【0021】
以下の説明で、上下方向及び左右方向とは、防火面格子1及びサッシ窓2を正面から見たときの各方向をいう。このため、上下方向は、防火面格子1及びサッシ窓2の高さ方向に一致し、左右方向は、防火面格子1及びサッシ窓2の幅方向に一致する。また、左右方向に関して内側とは、防火面格子1及びサッシ窓2の幅方向中央側をいい、左右方向に関して外側とは、防火面格子1及びサッシ窓2の幅方向外側をいう。また、屋内外方向とは、防火面格子1及びサッシ窓2の奥行方向(面外方向、厚さ方向)をいう。また、各方向は、特に断らない限り、防火面格子1及びサッシ窓2をマンションなどの建築物に取り付けた状態での各方向をいう。
【0022】
〔サッシ窓〕
サッシ窓2は、窓枠3と、窓枠3の内側に建て込まれた内障子4及び外障子5とを備えている。
【0023】
〈窓枠〉
窓枠3は、矩形枠(角部が直角である四角枠)状に構成されており、窓上枠6と、窓下枠7と、左右1対の窓縦枠8a、8bとを備えている。窓上枠6、窓下枠7及び窓縦枠8a、8bのそれぞれは、アルミニウム合金製である。
【0024】
本例の窓枠3は、サッシ窓2の屋外側に防火面格子1を揺動開放可能に設置するために、1対の窓枠上部ブラケット9a、9b及び1対の窓枠下部ブラケット10a、10bをさらに備えている。
【0025】
《窓枠上部ブラケット》
窓枠上部ブラケット9a、9bは、防火面格子1に備えられた後述の熱感知式作動装置35と協働して、平常時には、防火面格子1を閉鎖位置に保持し、火災発生時には、防火面格子1の揺動開放動作を可能とする役割を果たす。
【0026】
窓枠上部ブラケット9a、9bは、窓縦枠8a、8bのそれぞれの上端部に取り付けられている。左右方向一方側(図3の左側)の窓縦枠8aに取り付けられた窓枠上部ブラケット9aと、左右方向他方側(図3の右側)の窓縦枠8bに取り付けられた窓枠上部ブラケット9bとの、上下方向の取付位置は、互いに同じである。
【0027】
1対の窓枠上部ブラケット9a、9bは、左右方向に関して互いに対称形状を有している。図15に示すように、窓枠上部ブラケット9a、9bのそれぞれは、左右方向視で、全体が略L字形の側面形状を有しており、屋外側に向けて張り出した上部張出板部11と、上下方向に伸長した上部取付部12とを有する。
【0028】
上部張出板部11は、略矩形板状に構成されており、板厚方向を左右方向に向けて配置されている。上部張出板部11の屋内側の端部は、上部取付部12の上端部につながっている。上部張出板部11は、屋内外方向の中間部に、窓枠側係合部13を有する。本例では、窓枠側係合部13は、上部張出板部11の上端面及び左右両側面のそれぞれに開口した、略矩形状の切り欠きによって構成されている。ただし、窓枠側係合部13の形状は、切り欠きに限定されず、左右方向に移動する後述のスライド部材101a、101bと係脱可能であれば、周囲が閉じた貫通孔(スリットを含む)やフック形状などのその他の形状を採用することもできる。
【0029】
上部取付部12は、窓枠上部ブラケット9a、9bを窓縦枠8a、8bに固定する部分であり、略U字形の端面形状を有する上部挟持部14を有している。上部挟持部14は、左右方向に関して外側に開口した上部挟持溝15を上下方向にわたり有する。
【0030】
窓枠上部ブラケット9a、9bは、図7及び図8に示すように、上部挟持溝15の内側に、窓縦枠8a、8bに備えられた薄板状の縦枠ヒレ片16を圧入し、上部挟持部14によって縦枠ヒレ片16を屋内外方向両側から挟持することで、窓縦枠8a、8bに固定されている。
【0031】
本例の窓枠上部ブラケット9a、9bは、複数の部材から構成されている。窓枠上部ブラケット9a、9bのそれぞれは、上部ブラケット本体17及び上部パンチアンカー18の二つの部品から構成されている。
【0032】
図16に示すように、上部ブラケット本体17は、アルミニウム合金製の押出型材である上部ブラケット素板17xからの切削加工品(プレス加工品)であり、窓枠側係合部13を備えた上部張出板部11と、上部張出板部11の屋内側の端部から下方に向けて伸長した上部取付基板19とからなる。上部パンチアンカー18は、ステンレス鋼板製で、上部挟持部14を有している。このため、窓枠上部ブラケット9a、9bの上部取付部12は、上部ブラケット本体17の上部取付基板19に上部パンチアンカー18を固定することで構成されている。なお、本例では、上部取付基板19に上部パンチアンカー18を、ねじ20を用いて固定しているが、溶接などのその他の固定手段によって固定することもできる。
【0033】
なお、本発明を実施する場合には、窓縦枠の上端部に窓枠側係合部を直接設けることで、窓枠上部ブラケットを省略することもできる。
【0034】
《窓枠下部ブラケット》
窓枠下部ブラケット10a、10bは、火災発生時に、防火面格子1を、いわゆる外倒し窓のように揺動開放させるために、後述する面格子下部ブラケット39a、39bと協働して、防火面格子1を窓枠3の下方部分に対して揺動可能に支持する役割を果たす。
【0035】
さらに本例では、防火面格子1を揺動開放させた際に、サッシ窓2の上部と防火面格子1の上部との間を開口させるだけでなく、サッシ窓2の下部と防火面格子1の下部との間を開口させるべく、窓枠下部ブラケット10a、10b及び面格子下部ブラケット39a、39bにより、防火面格子1の下部スライド機構を構成している。
【0036】
窓枠下部ブラケット10a、10bは、窓縦枠8a、8bのそれぞれの下端部に取り付けられている。左右方向一方側の窓縦枠8aに取り付けられた窓枠下部ブラケット10aと、左右方向他方側の窓縦枠8bに取り付けられた窓枠下部ブラケット10bとの、上下方向の取付位置は、互いに同じである。
【0037】
窓枠下部ブラケット10a、10bは、左右方向に関して互いに対称形状を有している。図17に示すように、窓枠下部ブラケット10a、10bのそれぞれは、左右方向視で、全体が略L字形の側面形状を有しており、屋外側に向けて張り出した下部張出板部21と、上下方向に伸長した下部取付部22とを有する。
【0038】
下部張出板部21は、左右方向視で略J字形を有しており、板厚方向を左右方向に向けて配置されている。下部張出板部21の屋内側の端部は、下部取付部22の下端部につながっている。下部張出板部21は、傾斜案内部23と、係合受部24と、ピン受部25とを有する。
【0039】
傾斜案内部23は、下部張出板部21の上端縁に備えられている。傾斜案内部23は、屋外側に向かうほど下側に向かう方向に傾斜している。傾斜案内部23の傾斜角度は、例えば5度~20度の範囲で設定することができ、図示の例では10度である。
【0040】
係合受部24は、下部張出板部21の上端部の屋外側部分に備えられている。係合受部24は、切り欠き状に構成されており、屋内側に開口している。係合受部24には、傾斜案内部23の屋外側の端部がつながっている。本例では、下部張出板部21の屋外側端部の上端部に、側面視で略L字形状の鉤部26を設けることで、鉤部26と傾斜案内部23の屋外側の端部とで三方が囲まれた部分を、係合受部24としている。
【0041】
ピン受部25は、下部張出板部21の屋外側端部の下端部に備えられている。ピン受部25は、下側に向けて突出した突片であり、後述する支持ピン95と係脱可能な突出量を有している。
【0042】
下部取付部22は、窓枠下部ブラケット10a、10bを窓縦枠8a、8bに固定する部分であり、略U字形の端面形状を有する下部挟持部27を有している。下部挟持部27は、左右方向に関して外側に開口した下部挟持溝28を上下方向にわたり有する。
【0043】
窓枠下部ブラケット10a、10bは、図9及び図10に示すように、下部挟持溝28の内側に、窓縦枠8a、8bのそれぞれに備えられた縦枠ヒレ片16を圧入し、下部挟持部27によって縦枠ヒレ片16を屋内外方向両側から挟持することで、窓縦枠8a、8bに固定されている。
【0044】
本例の窓枠下部ブラケット10a、10bは、複数の部材から構成されている。窓枠下部ブラケット10a、10bのそれぞれは、下部ブラケット本体29及び下部パンチアンカー30の二つの部品から構成されている。
【0045】
図18に示すように、下部ブラケット本体29は、アルミニウム合金製の押出型材である下部ブラケット素板29xからの切削加工品(プレス加工品)であり、下部張出板部21と、下部張出板部21の屋内側の端部から上方に向けて伸長した下部取付基板31とからなる。下部パンチアンカー30は、ステンレス鋼板製で、下部挟持部27を有している。このため、窓枠下部ブラケット10a、10bの下部取付部22は、下部ブラケット本体29の下部取付基板31に下部パンチアンカー30を固定することで構成されている。なお、本例では、下部取付基板31に下部パンチアンカー30を、ねじ20を用いて固定しているが、溶接などのその他の固定手段によって固定することもできる。
【0046】
〈内障子及び外障子〉
内障子4及び外障子5は、窓枠3の内側にそれぞれ左右方向(水平方向)に移動可能に、かつ、引き違い式に建て込まれている。
【0047】
図2に示すように、内障子4及び外障子5は、矩形枠状の障子枠32a、32bと、障子枠32a、32bの内側に嵌め込まれた矩形板状のガラスパネル33a、33bとから構成されている。障子枠32a、32bを構成する各框(上框、下框、戸先框及び召し合わせ框)のそれぞれは、アルミニウム合金製である。
【0048】
内障子4は、窓枠3の屋内側部分に左右方向に移動可能に建て込まれており、外障子5は、窓枠3の屋外側部分に左右方向に移動可能に建て込まれている。内障子4及び外障子5のそれぞれを閉鎖位置に移動させた状態で、内障子4は、窓枠3の開口部の左右方向一方側の半部を塞ぎ、外障子5は、窓枠3の開口部の左右方向他方側の半部を塞ぐ。
【0049】
なお、本発明を実施する場合には、サッシ窓の構造は、引き違い式に限定されず、FIX窓、内開き窓、内倒し窓など、その他の構造を採用することもできる。
【0050】
〔防火面格子〕
防火面格子1は、防犯性やプライバシーを確保するために、サッシ窓2の屋外側に設置され、サッシ窓2とともに窓装置を構成する。
【0051】
本例の防火面格子1は、大別して、面格子本体34と熱感知式作動装置35とを備えている。なお、本例では、後述するように熱感知式作動装置35が、面格子本体34に設けられているため、姿勢に関する説明において、防火面格子1と面格子本体34とを区別しない。
【0052】
防火面格子1は、サッシ窓2の屋外側に揺動可能に支持されており、平常時には、熱感知式作動装置35により閉鎖位置(サッシ窓2と平行に配置され、サッシ窓2を屋外側から完全に覆う位置)に保持されているが、火災発生時には、熱感知式作動装置35が作動して揺動開放される。本例では、防火面格子1の重心位置を、揺動開始時における揺動中心となる後述の枢軸94よりも屋外側に配置しているため、熱感知式作動装置35が作動すると、防火面格子1は付勢手段などによる付勢力を得ずに揺動開放動作を開始させる。さらに本例の防火面格子1は、火災発生時に、熱感知式作動装置35が作動すると、複数枚のルーバ37をまとめて開放させる。
【0053】
以下、本例の防火面格子1を構成する各部材について説明する。なお、本例の防火面格子1は、平常時と火災発生時とでその姿勢を変化させるものであるが、熱感知式作動装置35が作動する以前の平常時の状態を基準に構造説明を行い、その後、熱感知式作動装置35の作動説明、及び熱感知式作動装置35が作動した後の防火面格子1の動作説明などを行う。
【0054】
〈面格子本体〉
面格子本体34は、框枠体36と、框枠体36の内側に開閉可能に支持された複数枚のルーバ37と、ルーバ開閉機構38と、1対の面格子下部ブラケット39a、39bとを備えている。
【0055】
《框枠体》
框枠体36は、サッシ窓2を構成する窓枠3の下方部分に対し揺動可能に支持されている。框枠体36は、上框40と、下框41と、左右の縦框42a、42bとにより、矩形枠状に構成されている。框枠体36は、屋外側に配置された矩形枠状の屋外側枠体43と、屋内側に配置された矩形枠状の屋内側枠体44とを備えている。
【0056】
屋外側枠体43の内側には、複数枚のルーバ37が支持されている。また、ルーバ37の屋内側には、屋外側枠体43の開口部を塞ぐように網戸45が取り付けられている。このため、屋内側枠体44は、網戸45と内障子4及び外障子5との間に存在する空間の四周を塞いでおり、屋外側からの遮視性及び防虫性を確保している。
【0057】
上框40は、それぞれがアルミニウム合金製の上框本体46及び上框閉塞片47からなる。
【0058】
上框本体46は、略矩形筒状に構成されており、屋外側枠体43の上辺を構成する。上框本体46の左右方向両側の端部は、後述する左右の縦框本体55a、55bの上端部に連結されている。
【0059】
上框本体46は、図19に示すように、屋内側に配置された上框屋内側壁部48の左右方向他方側部分に、屋内外方向に貫通した上框挿通部49を有する。上框挿通部49は、左右方向に長いスリット状の長孔により構成されている。上框挿通部49には、熱感知式作動装置35を構成する後述のスライド部材101bに備えられた係合爪103が左右方向に移動可能に挿通されている。
【0060】
上框閉塞片47は、略平板状に構成され、上框本体46の屋内側に配置されており、屋内側枠体44の上辺を構成する。上框閉塞片47は、防火面格子1の閉鎖状態で、上框本体46と窓上枠6との間を塞ぐ。上框閉塞片47の左右方向両側の端部は、後述する左右の縦框閉塞片56a、56bの本体部の上端部に連結されている。なお、本例では、上框本体46と上框閉塞片47とを一体に構成しているが、別体に構成しても良い。
【0061】
下框41は、それぞれがアルミニウム合金製である下框本体50及び下框閉塞片51からなる。
【0062】
下框本体50は、略矩形筒状に構成されており、屋外側枠体43の下辺を構成する。下框本体50の左右方向両側の端部は、後述する左右の縦框本体55a、55bの下端部に連結されている。
【0063】
下框閉塞片51は、略平板状に構成され、下框本体50の屋内側に配置されており、屋内側枠体44の下辺を構成する。下框閉塞片51は、防火面格子1の閉鎖状態で、下框本体50と窓下枠7との間を塞ぐ。図20(A)に示すように、下框閉塞片51には、それぞれが屋内外方向に長い複数のスリット状の排気孔54が、左右方向に配列されている。排気孔54の左右方向幅(スリット幅)は、防虫性を確保する面から1mm~2mm程度(好ましくは1.2mm~1.5mm程度)である。下框閉塞片51の左右方向両側の端部は、後述する左右の縦框閉塞片56a、56bの下端部に連結されている。なお、本例では、下框本体50と下框閉塞片51とを一体に構成しているが、別体に構成しても良い。また、図20(B)に示す変形例のように、下框閉塞片51の屋内側(上面)に防虫ネット131などを設ける場合には、排気孔54のスリット幅は2mm以上にすることができる。
【0064】
縦框42a、42bは、それぞれがアルミニウム合金製の縦框本体55a、55b及び縦框閉塞片56a、56bからなる。
【0065】
縦框本体55a、55bは、略矩形筒状に構成されており、屋外側枠体43の左右の縦辺を構成する。縦框本体55a、55bのそれぞれの上端部は、上框本体46の左右方向の端部に連結されており、縦框本体55a、55bのそれぞれの下端部は、下框本体50の左右方向の端部に連結されている。なお、縦框本体55a、55bは、複数(図示の例では2つ)の部材から構成されている。
【0066】
縦框本体55a、55bは、図14に示すように、左右方向内側に配置された縦框内側壁部57の上端部に、左右方向に貫通した縦框第1挿通部58を有している。縦框第1挿通部58は、上下方向に長いスリット状の長孔により構成されている。縦框第1挿通部58には、熱感知式作動装置35を構成する後述のスライド部材101a、101bの端部が左右方向に挿通されている。
【0067】
縦框本体55a、55bは、図12に示すように、屋内側に配置された縦框屋内側壁部59の上端部に、屋内外方向に貫通した縦框第2挿通部60を有している。縦框第2挿通部60は、上下方向に長い切り欠きによって構成されており、縦框屋内側壁部59の上端面及び屋内外方向両側面にそれぞれ開口している。平常時においては、縦框第2挿通部60には、窓枠上部ブラケット9a、9bを構成する上部張出板部11の屋外側部分が挿通されている。
【0068】
縦框本体55a、55bは、図13に示すように、縦框屋内側壁部59の下端部に、屋内外方向に貫通した縦框第3挿通部61を有している。縦框第3挿通部61は、上下方向に長い切り欠きによって構成されており、縦框屋内側壁部59の下端面及び屋内外方向両側面にそれぞれ開口している。縦框第3挿通部61には、窓枠下部ブラケット10a、10bを構成する下部張出板部21の屋外側部分が挿通されている。
【0069】
縦框閉塞片56a、56bは、断面略L字形状に構成され、縦框本体55a、55bの屋内側面に対して固定されている。縦框閉塞片56a、56bは、屋内側枠体44の左右の縦辺を構成する。縦框閉塞片56a、56bは、防火面格子1の閉鎖状態で、縦框本体55a、55bと窓縦枠8a、8bとの間を塞ぐ。縦框閉塞片56a、56bのそれぞれの上端部は、上框閉塞片47の左右方向の端部に連結されており、縦框閉塞片56a、56bのそれぞれの下端部は、下框閉塞片51の左右方向の端部に連結されている。なお、本例では、縦框本体55a、55bと縦框閉塞片56a、56bとを別体に構成しているが、一体に構成しても良い。
【0070】
本例の框枠体36は、中方立53をさらに備える。中方立53は、略矩形筒状に構成されている。中方立53の上端部は、上框本体46の左右方向中間部に連結されており、中方立53の下端部は、下框本体50の左右方向中間部に連結されている。これにより、中方立53は、屋外側枠体43の開口部を左右に二分割している。
【0071】
《ルーバ》
ルーバ37は、框枠体36を構成する屋外側枠体43の内側に、開閉可能に支持されている。ルーバ37は、帯状部材であり、長手方向を左右方向に向け、上下方向に並列に配置されている。
【0072】
本例では、図4及び図31などに示すように、ルーバ37は、中方立53を挟んで左右両側に複数枚ずつ配置されている。ルーバ37の左右方向両側の端部は、縦框42a(又は42b)及び中方立53に対し、水平方向に配置された中心軸回りの回転を可能に支持されている。
【0073】
具体的には、左右方向一方側列の複数枚のルーバ37は、左右方向一方側の端部が、縦框本体55aに対しクランク軸62を介して回転可能に支持(枢支)されており、左右方向他方側の端部が、中方立53に対し連結軸63を介して回転可能に支持されている。これに対し、左右方向他方側列の複数枚のルーバ37は、左右方向一方側の端部が、中方立53に対し連結軸63を利用して回転可能に支持されており、左右方向他方側の端部が、縦框本体55bに対し支持ピン64を介して回転可能に支持されている。
【0074】
中方立53を挟んで左右両側に配置された1対のルーバ37は、中方立53に対し回転自在に支持された連結軸63を介して相対回転不能に互いに連結されている。このため、図31に示すように、中方立53を挟んで左右両側に配置された複数組のルーバ37は、同期して回転する。
【0075】
ルーバ37のそれぞれは、アルミニウム合金製であり、図22に示すように、長尺の波板形状を有するルーバ本体65と、ルーバ本体65の裏面に備えられた支持筒部66とからなる。ルーバ本体65及び支持筒部66は、互いに一体に構成されている。
【0076】
支持筒部66は、ルーバ本体65の長手方向に全長にわたり備えられている。支持筒部66は、角筒状に構成されており、中心部に挿通孔67を有している。
【0077】
挿通孔67の中心軸は、水平方向に配置されている。本例では、挿通孔67は、矩形の断面形状を有する矩形孔である。挿通孔67の内周面には、複数の内向突起68が備えられている。具体的には、挿通孔67の内周面を構成する4つの内側面のうち、互いに対向する1組の内側面のそれぞれに、内向突起68が備えられている。内向突起68は、挿通孔67の中心軸線方向に伸長している。別の言い方をすれば、内向突起68は、クランク軸62を構成する後述の挿入軸部71の挿入方向に伸長している。複数の内向突起68は、互いに平行に配置されている。
【0078】
《ルーバ開閉機構》
ルーバ開閉機構38は、複数枚のルーバ37を同期して(まとめて)開閉動作させるためのもので、複数本のクランク軸62と、複数本の連結軸63と、連動杆69と、レバー機構部70とを有する。
【0079】
(クランク軸)
クランク軸62は、アルミニウム合金製で、クランク形状を有している。クランク軸62は、図25に示すように、アルミニウム合金製のクランク板(押出形材)であるクランク軸素板62xからの切断加工品(プレス加工品)であり、挿入軸部71と、支持軸部72と、連結部73とからなる。クランク軸62は、挿入軸部71を除く部分が、左右方向一方側の縦框42a(縦框本体55a)の内部に配置されている。
【0080】
挿入軸部71及び支持軸部72は、水平方向に配置されており、互いに平行に配置されている。連結部73は、挿入軸部71及び支持軸部72のそれぞれの左右方向近位側の端部同士を連結している。
【0081】
挿入軸部71は、矩形柱形状を有しており、クランク軸62の左右方向他方側分に備えられている。挿入軸部71は、ルーバ37に備えられた挿通孔67に合致した矩形の断面形状を有している。
【0082】
挿入軸部71は、縦框内側壁部57に備えられた図示しない通孔を左右方向に挿通しており、縦框内側壁部57に対し回転のみ可能に支持されている。挿入軸部71は、左右方向一方側列のルーバ37のそれぞれの挿通孔67の中心軸と同軸に配置され、該挿通孔67に対し相対回転不能に圧入されている。これにより、挿入軸部71は、左右方向一方側列のルーバ37に対し相対回転不能に固定されている。
【0083】
挿入軸部71の外周面には、複数の外向突起74が備えられている。具体的には、挿入軸部71の外周面を構成する4つの外側面のうち、互いに反対側を向いた1組の外側面のそれぞれに、外向突起74が備えられている。外向突起74は、挿通孔67に対する挿入軸部71の挿入方向に対し直交する方向に伸長している。すなわち、外向突起74は、挿入軸部71の周方向に伸長している。複数の外向突起74は、互いに平行に配置されている。また、外向突起74の左右方向一方側の側面は、挿入軸部71の径方向内側から径方向外側に向かうほど、挿入軸部71の先端側から基端側に向かう方向に傾斜している。つまり、外向突起74の左右方向一方側の側面は、挿通孔67に対する挿入軸部71の挿入方向とは反対側に傾斜している。
【0084】
本例では、挿通孔67に挿入軸部71を挿入(圧入)した際に、内向突起68と外向突起74とが互いに直交するように配置される。そして、内向突起68のそれぞれの先端部によって、外向突起74のそれぞれの先端部を塑性変形させて、内向突起68と外向突起74とを強く係合させている。
【0085】
支持軸部72は、矩形柱形状を有しており、クランク軸62の左右方向一方側分に備えられている。支持軸部72は、連動杆69に対し回転自在に支持されている。
【0086】
(連結軸)
連結軸63は、アルミニウム合金製で、直線形状を有している。連結軸63は、図29に示すように、アルミニウム合金製の平板(押出形材)である連結軸素板63xからの切断加工品(プレス加工品)であり、左右両側部に1対の連結挿入軸部75を有する。連結軸63の左右方向中間部は、中方立53に対し回転のみ可能に支持されている。
【0087】
連結挿入軸部75は、矩形柱形状を有しており、ルーバ37に備えられた挿通孔67に合致した矩形の断面形状を有している。本例では、左右方向一方側の連結挿入軸部75が、左右方向一方側列のルーバ37に備えられた挿通孔67の中心軸と同軸に配置され、該挿通孔67に対し相対回転不能に圧入されている。また、左右方向他方側の連結挿入軸部75が、左右方向他方側列のルーバ37に備えられた挿通孔67の中心軸と同軸に配置され、該挿通孔67に対し相対回転不能に圧入されている。これにより、左右方向一方側の連結挿入軸部75は、左右方向一方側列のルーバ37に対し相対回転不能に固定されており、左右方向他方側の連結挿入軸部75は、左右方向他方側列のルーバ37に対し相対回転不能に固定されている。
【0088】
連結挿入軸部75の外周面には、複数の外向突起76が備えられている。具体的には、連結挿入軸部75の外周面を構成する4つの外側面のうち、互いに反対側を向いた1組の外側面のそれぞれに、外向突起76が備えられている。外向突起76は、挿通孔67に対する連結挿入軸部75の挿入方向に対して直交する方向に伸長している。すなわち、外向突起76は、連結挿入軸部75の周方向に伸長している。複数の外向突起76は、互いに平行に配置されている。また、外向突起76のうち、挿通孔67に対する連結挿入軸部75の挿入方向に関する前側面は、連結挿入軸部75の径方向内側から径方向外側に向かうほど、連結挿入軸部75の先端側から基端側に向かう方向に傾斜している。つまり、外向突起76のうち、挿通孔67に対する連結挿入軸部75の挿入方向に関する前側面は、挿通孔67に対する連結挿入軸部75の挿入方向とは反対側に傾斜している。具体的には、左右方向一方側の連結挿入軸部75の左右方向一方側の側面は、連結挿入軸部75の径方向内側から径方向外側に向かうほど、左右方向他方側に向かう方向に傾斜し、かつ、左右方向他方側の連結挿入軸部75の左右方向他方側の側面は、連結挿入軸部75の径方向内側から径方向外側に向かうほど、左右方向一方側に向かう方向に傾斜している。
【0089】
本例では、挿通孔67に連結挿入軸部75を挿入(圧入)した際に、内向突起68と外向突起76とが互いに直交するように配置される。そして、内向突起68のそれぞれの先端部によって、外向突起76のそれぞれの先端部を塑性変形させて、内向突起68と外向突起76とを強く係合させている。なお、防火面格子を設置する開口部の開口面積が小さい場合、防火面格子から中方立及び連結軸を省略することもできる。
【0090】
(連動杆)
連動杆69は、矩形平板状に構成されており、長手方向を上下方向に向け、かつ、板厚方向を左右方向に向けて、左右方向一方側の縦框42a(縦框本体55a)の内部に配置されている。連動杆69は、左右方向一方側の縦框42aに対して上下方向に相対移動することで、複数枚のルーバ37を開閉可能とする。連動杆69の上下方向の一部には、中心軸が水平方向に向いた作用ピン77が固定されている。
【0091】
連動杆69は、複数本のクランク軸62のそれぞれの支持軸部72を回転自在に支持している。このため、連動杆69が上下方向に移動すると、複数本のクランク軸62がそれぞれの挿入軸部71を中心として回転する。これにより、複数枚のルーバ37をまとめて開閉させることが可能になる。具体的には、図31(A)及び図32(A)に示すように、連動杆69を上側に移動させると、複数枚のルーバ37をまとめて閉鎖させることができ、図31(B)及び図32(B)に示すように、連動杆69を下側に移動させると、複数枚のルーバ37をまとめて開放させることができる。
【0092】
(レバー機構部)
レバー機構部70は、図23に示すように、ベース部材78と、ベース部材78に対し上下方向に揺動可能に支持されたレバー79とを有し、連動杆69をベース部材78に対して上下方向に相対的に移動させる機能を有する。
【0093】
ベース部材78は、連動杆69と同様に、左右方向一方側の縦框42a(縦框本体55a)の内部に配置されており、ベース側係合部82を有する基台80と、レバー支持部81とを備える。ベース部材78は、連動杆69を上下方向の相対移動を可能に支持している。
【0094】
基台80は、矩形平板状に構成されており、長手方向を上下方向に向け、かつ、板厚方向を屋内外方向に向けた状態で、縦框本体55aの内部に上下方向の移動可能に配置されている。基台80は、連動杆69の屋内側に配置されている。基台80と下框41との間には、付勢部材に相当する引張ばね83が掛け渡されている。これにより、基台80には、引張ばね83から下方に向いた弾力が付与されている。
【0095】
ベース側係合部82は、略J字形のフック状に構成されており、基台80の上端部に備えられている。ベース側係合部82は、左右方向一方側の窓枠上部ブラケット9aに備えられた窓枠側係合部13に隣接配置されている。
【0096】
ベース側係合部82には、後述するスライド部材101aの端部が上下方向に係合されている。これにより、基台80が、引張ばね83から付与される弾力にかかわらず、下方に移動することを防止し、基台80を正規位置に支持している。火災発生時には、ベース側係合部82とスライド部材101aの端部との係合が解除される。
【0097】
レバー支持部81は、左右方向視で略T字形状の側面形状を有しており、1対の取付部84と、角度調節部85と、中間突起部86とを有する。
【0098】
1対の取付部84は、レバー支持部81の上下方向両側の端部に備えられている。レバー支持部81は、1対の取付部84のそれぞれを挿通したねじ87を利用して、基台80に固定されている。
【0099】
角度調節部85は、レバー79の揺動角度を調節保持するためのもので、レバー支持部81の上下方向中間部の屋内側端面に備えられている。角度調節部85は、複数の凹部と複数の凸部とが上下方向に交互に配置された凹凸形状を有している。本例のルーバ開閉機構38では、角度調節部85を構成する凹部の数だけ、レバー79の揺動角度、換言すれば、ルーバ37の開放角度を段階的に調節可能である。
【0100】
中間突起部86は、レバー支持部81の上下方向中間部から屋外側に向けて突出している。中間突起部86の先端部には、中心軸を水平方向に向けて配置された支点ピン88が固定されている。
【0101】
(レバー)
レバー79は、レバー支持部81に対し上下方向に揺動可能に支持されており、屋内側端部に備えられた摘まみ部89と、屋外側端部に備えられたピン挿通孔90と、摘まみ部89とピン挿通孔90との間に備えられたピン係合孔91と、ピン係合孔91と摘まみ部89との間に備えられた係止ピン92とを有している。
【0102】
ピン挿通孔90は、レバー79の長手方向に長い長孔である。ピン挿通孔90には、支点ピン88が、レバー79の長手方向への移動可動に挿通されている。
【0103】
ピン係合孔91は、レバー79の長手方向に長い長孔である。ピン係合孔91には、連動杆69に備えられた作用ピン77が、レバー79の長手方向への移動可能に係合されている。
【0104】
係止ピン92は、レバー支持部81に備えられた角度調節部85の凹部に係止されており、レバー79の揺動角度を一定に保持する。本例では、係止ピン92が角度調節部85の凹部から不用意に脱落することを防止するために、レバー支持部81に備えられた中間突起部86とレバー79との間に弾性部材が掛け渡されている。
【0105】
本例では、レバー79を、支点ピン88を中心に上下方向に揺動操作することで、複数枚のルーバ37をまとめて開閉することができる。すなわち、レバー79を、支点ピン88を中心に上下方向に揺動させることで、連動杆69の作用ピン77を上下方向に移動させ、クランク軸62を介して連動杆69に支持された複数枚のルーバ37をまとめて開閉させる。例えば、図31(A)及び図32(A)に示すように、摘まみ部89を持ち上げるようにレバー79を上側に揺動させると、複数枚のルーバ37をまとめて閉鎖させることができ、図31(B)及び図32(B)に示すように、摘まみ部89を下げるようにレバー79を下側に揺動させると、複数枚のルーバ37をまとめて開放させることができる。
【0106】
《面格子下部ブラケット》
面格子下部ブラケット39a、39bは、火災発生時に、防火面格子1を、いわゆる外倒し窓のように揺動開放させるために、窓枠下部ブラケット10a、10bと協働して、防火面格子1の下端部を窓枠3に対して揺動可能に支持する役割を果たす。また、本例では、面格子下部ブラケット39a、39bは、窓枠下部ブラケット10a、10bとともに、防火面格子1の下部スライド機構を構成する。
【0107】
面格子下部ブラケット39a、39bは、図33に示すように、左右の縦框42a、42bのそれぞれの下端部に取り付けられている。左右方向一方側の縦框42aに取り付けられた面格子下部ブラケット39aと、左右方向他方側の縦框42bに取り付けられた面格子下部ブラケット39bとの、上下方向の取付位置は、互いに同じである。
【0108】
面格子下部ブラケット39a、39bは、左右方向に関して互いに対称形状を有している。面格子下部ブラケット39a、39bのそれぞれは、屋内外方向視で略U字形の端面形状を有するブラケット枠体93と、枢軸94と、支持ピン95とを有する。
【0109】
ブラケット枠体93は、1対の側板部96a、96bと、連結板部97とからなる。一方の側板部96aは、左右方向視で略L字形の側面形状を有しており、複数のねじ98を用いて、縦框42a、42bの下端部の左右方向内側の側面に固定されている。他方の側板部96bは、左右方向視で略矩形の側面形状を有しており、一方の側板部96aの屋外側端部と対向する部分に、左右方向の隙間を介して、側板部96aと略平行に配置されている。連結板部97は、1対の側板部96a、96bのそれぞれの下端部同士を左右方向に連結している。
【0110】
枢軸94は、中心軸を水平方向に向けた状態で、一方の側板部96aの屋内側部分に固定されている。枢軸94は、窓枠下部ブラケット10a、10bに備えられた傾斜案内部23を屋内外方向に摺動可能であり、かつ、係合受部24と係合可能である。枢軸94は、防火面格子1の揺動動作開始時の揺動中心となる。また、枢軸94は、防火面格子1が屋外側へスライド移動する際の摺動部となり、かつ、防火面格子1の揺動動作終了後における支持軸となる。
【0111】
支持ピン95は、中心軸を水平方向に向けた状態で、1対の側板部96a、96bの屋外側端部同士の間に掛け渡されている。支持ピン95は、枢軸94と平行で、かつ、枢軸94よりも下方に配置されている。支持ピン95は、窓枠下部ブラケット10a、10bに備えられたピン受部25と係脱可能である。
【0112】
図34に示すように、1対の側板部96a、96b同士の間には、窓枠下部ブラケット10a、10bを構成する下部張出板部21が配置される。そして、防火面格子1の閉鎖状態では、枢軸94を、下部張出板部21の上端縁に備えられた傾斜案内部23の屋内側部分に上方から係合させる(載せる)とともに、支持ピン95を、下部張出板部21の屋外側端部に備えられたピン受部25に屋内側から係合させる。これにより、防火面格子1の重量を窓枠3によって支承するとともに、防火面格子1の下端部が屋外側に移動することを阻止している。
【0113】
なお、本発明を実施する場合には、面格子下部ブラケットを省略し、枢軸及び支持ピンを、縦框に直接設けることもできる。
【0114】
〈熱感知式作動装置〉
本例の熱感知式作動装置35は、図35に示すように、作動機構99と、作動機構99を作動させる駆動機構100とを備え、面格子本体34を構成する上框40に設置されている。
【0115】
本例の熱感知式作動装置35は、以下の2つの機能を発揮する。
第1の機能は、平常時には、防火面格子1を閉鎖位置に保持しておき、火災発生時に、防火面格子1を揺動開放させる機能である。
第2の機能は、火災発生時に、複数枚のルーバ37をまとめて開放する機能である。
【0116】
熱感知式作動装置35は、第1の機能を実現するために、窓枠3の左右の窓縦枠8a、8bのそれぞれの上部に備えられた窓枠側係合部13と係合して、防火面格子1(面格子本体34)を閉鎖位置に保持し、かつ、所定温度に達した場合に、窓枠側係合部13との係合を解除して、防火面格子1(面格子本体34)の揺動開放動作を可能とする。
【0117】
熱感知式作動装置35は、第2の機能を実現するために、ルーバ開閉機構38のベース部材78に備えられたベース側係合部82と係合して、ベース部材78を正規位置に支持し、かつ、所定温度に達した場合に、ベース側係合部82との係合を解除して縦框42aに対するベース部材78の上下方向の相対移動を可能とすることで、複数枚のルーバ37をまとめて開動作させる。
【0118】
なお、本発明を実施する場合に、熱感知式作動装置に、第1の機能と第2の機能とのうち、一方の機能のみを発揮させることもできる。
【0119】
《作動機構》
作動機構99は、上框40を構成する上框本体46の内部に配置されている。本例の作動機構99は、リンク機構を構成し、左右方向にスライド移動可能な1対のスライド部材101a、101bと、回転中心軸回りに回転可能な回転盤102とを有する。
【0120】
(スライド部材)
スライド部材101a、101bは、左右の窓縦枠8a、8bのそれぞれに備えられた窓枠側係合部13と係脱可能な形状を有する。本例では、窓枠側係合部13は、略矩形状の切り欠きによって構成されているため、スライド部材101a、101bのそれぞれを、図36に示すように、矩形板状の長板により構成している。スライド部材101a、101bのそれぞれは、長手方向を左右方向に向け、かつ、板厚方向を屋内外方向に向けて、上框本体46の内部に配置されている。
【0121】
スライド部材101a、101bのそれぞれの近位側の端部(基端部)は、回転盤102のうちで、回転中心軸を挟んで反対側部分に回転可能に支持されている。つまり、左右方向一方側に配置されたスライド部材101aの左右方向他方側の端部と、左右方向他方側に配置されたスライド部材101bの左右方向一方側の端部とは、回転盤102のうちで、回転中心軸を挟んで反対側部分に回転可能に支持されている。このため、1対のスライド部材101a、101bは、回転盤102が回転中心軸回りに回転することで、左右方向に関して互いに逆向きに同期して移動可能である。
【0122】
スライド部材101a、101bのそれぞれの遠位側の端部(先端部)は、図14及び図35(A)に示すように、左右の縦框42a、42bの縦框内側壁部57に形成された縦框第1挿通部58を通じて、縦框本体55a、55bの内部に挿入されている。つまり、スライド部材101aの左右方向一方側の端部は、縦框本体55aの内部に挿入されており、スライド部材101bの左右方向他方側の端部は、縦框本体55bの内部に挿入されている。
【0123】
そして、平常時においては、スライド部材101aの左右方向一方側の端部は、窓枠上部ブラケット9aに備えられた窓枠側係合部13と屋内外方向に係合しており、かつ、スライド部材101bの左右方向他方側の端部は、窓枠上部ブラケット9bに備えられた窓枠側係合部13と屋内外方向に係合している。具体的には、矩形板状に構成されたスライド部材101a、101bのそれぞれの左右方向の端部が、切り欠き状の窓枠側係合部13を左右方向に挿通している。これにより、防火面格子1が屋外側に倒れるように揺動することを防止し、防火面格子1を閉鎖位置に保持している。
【0124】
また、図23に示すように、スライド部材101aの左右方向一方側の端部は、ルーバ開閉機構38を構成するベース部材78に備えられたベース側係合部82と上下方向に係合している。つまり、スライド部材101aの左右方向一方側の端部に対して、フック形状のベース側係合部82が上側から引っ掛けられている。これにより、ベース部材78を構成する基台80に取り付けられた引張ばね83の付勢力にかかわらず、ベース部材78が縦框42aに対し下方に移動することを防止し、ベース部材78を正規の位置に支持している。
【0125】
本例では、1対のスライド部材101a、101bの長さ寸法が互いに異なっている。本例では、後述するように駆動機構100を上框40の左右方向他方側の端部に取り付けているため、スライド部材101a、101bのうち、駆動機構100から遠い位置に配置されたスライド部材101aの長さ寸法が、駆動機構100の近くに配置されたスライド部材101bの長さ寸法よりも長くなっている。なお、駆動機構を、上框の左右方向一方側に配置する場合には、左右方向一方側のスライド部材の長さ寸法を、左右方向他方側のスライド部材の長さ寸法よりも短くし、駆動機構を、上框の左右方向の中央位置に配置する場合には、1対のスライド部材の長さ寸法を互いに同じにする。
【0126】
駆動機構100の近くに配置されたスライド部材101bの屋内側面には、二股形状を有する係合爪103が設けられている。係合爪103の屋内側部分は、図19に示すように、上框本体46の上框屋内側壁部48に形成された上框挿通部49を通じて、上框屋内側壁部48よりも屋内側に配置されている。
【0127】
(回転盤)
回転盤102は、回転中心軸を屋内外方向に向け、上框本体46の内部の左右方向他方寄り部分に回転可能に支持されている。なお、回転盤の回転中心軸は、屋内外方向に限らず、例えば上下方向に向けて配置することもできる。
【0128】
回転盤102は、円板状に構成されており、中心部を挿通した支持ピン104を利用して、上框本体46に固定されたL字板状の台座105に回転可能に支持されている。
【0129】
回転盤102のうちで、回転中心軸を挟んで両側部分(位相が180度異なる部分)には、スライド部材101a、101bのそれぞれの近位側の端部が回動ピン106a、106bにより回動可能に支持されている。このため、回転盤102を介して連結された1対のスライド部材101a、101bは、左右方向に関して互いに逆向きに同期して移動可能である。つまり、一方のスライド部材101a(又は101b)が左右方向一方側に移動した場合には、他方のスライド部材101b(又は101a)は左右方向他方側に移動し、一方のスライド部材101a(又は101b)が左右方向他方側に移動した場合には、他方のスライド部材101b(又は101a)は左右方向一方側に移動する。
【0130】
《駆動機構》
駆動機構100は、火災が発生し、所定温度に達すると、作動機構99を作動させる。本例の駆動機構100は、作動機構99を構成する一方のスライド部材101bのみを左右方向に移動させる。特に本例では、駆動機構100は、一方のスライド部材101bを、他方のスライド部材101aに近づく方向である左右方向一方側に移動させる。
【0131】
なお、本発明を実施する場合に、スライド部材と窓枠側係合部との係合態様によっては、駆動機構により、一方のスライド部材を、他方のスライド部材から遠ざける方向に移動させることもできる。
【0132】
駆動機構100は、上框本体46の屋内側部分に固定されている。具体的には、駆動機構100は、上框本体46の上框屋内側壁部48の屋内側面のうちで、屋内外方向に関して外障子5の上框と対向する左右方向他方側の端部に固定されている。
【0133】
駆動機構100は、図37及び図38に示すように、ケーシング107と、可動板108と、固定板109と、弾性部材110と、熱伝達部材111と、融解部材112と、駆動ピン113とを有する。
【0134】
(ケーシング)
ケーシング107は、矩形筐形状を有するケーシング本体114と、平板状の取付フランジ部115とを有している。
【0135】
ケーシング本体114は、上方が開口しており、屋内外方向に対向する1対の内側面のそれぞれに、左右方向に伸長したガイド溝116が形成されている。ケーシング本体114は、下方に配置された底板部に、左右方向に伸長した長孔により構成されるガイド孔117(図19参照)を備えている。
【0136】
取付フランジ部115は、ケーシング本体114の屋外側端部から下方に垂れ下がるように備えられている。ケーシング107は、取付フランジ部115を複数のねじ118(図19参照)を用いて上框屋内側壁部48に固定することで、上框本体46に固定されている。
【0137】
(可動板)
可動板108は、上下方向視で略ロ字形状を有しており、1対のガイド溝116に対し左右方向に移動可能に係止されている。すなわち、可動板108は、上下方向に貫通し、かつ、左右方向に伸長する長孔を有する。また、可動板108は、左右方向他方側の端部に可動側凸部119を備えており、左右方向一方側の端部にフック形状の可動側係合部120を有している。
【0138】
(固定板)
固定板109は、1対のガイド溝116の左右方向他方側の端部に係止されており、ケーシング本体114に対して移動不能に固定されている。固定板109は、左右方向一方側の端部に固定側凸部121を備えている。なお、本発明を実施する場合には、ケーシング本体の一部に、固定側凸部を直接設けることで、固定板を省略することもできる。
【0139】
(弾性部材)
弾性部材110は、圧縮コイルばねにより構成されており、可動板108と固定板109との間に配置されている。具体的には、弾性部材110は、左右方向一方側の端部の内側に可動側凸部119を挿入係止し、左右方向他方側の端部の内側に固定側凸部121を挿入係止することで、可動板108と固定板109との間に圧縮変形した状態で挟持されている。これにより、弾性部材110は、可動板108に対して左右方向一方側を向いた弾力を付与している。
【0140】
(熱伝達部材)
熱伝達部材111は、アルミニウム無垢材などの熱伝導率の高い金属部品であり、ケーシング本体114の左右方向中間部に固定されている。熱伝達部材111は、可動板108の内側に、可動板108の移動を妨げないように配置されている。具体的には、ケーシング本体114の底板に備えられた円孔と、可動板108に備えられた長孔と、熱伝達部材111に備えられた円孔132と、後述の融解部材112の左右方向他方側の端部に備えられた円孔133とを、上下方向に挿通したねじ134に、ナット135を螺合することで、可動板108の左右方向の移動を妨げることなく、熱伝達部材111をケーシング本体114に固定している。なお、熱伝達部材は、省略することもできる。この場合には、融解部材の端部は、熱伝達部材に代えて、ケーシング本体に固定することできる。
【0141】
(融解部材)
融解部材112は、低融点合金製で、駆動機構100を構成するその他の部材に比べて低い融点を有している。融解部材112は、所定温度(例えば60℃~120℃程度)に達すると融解する特性を有する温度ヒューズであり、所定温度に達したことを検知する温度センサとして機能する。
【0142】
融解部材112は、薄板によって構成されており、融解する以前の状態で、可動板108と熱伝達部材111とに掛け渡すように取り付けられている。これにより、融解部材112は、弾性部材110から可動板108に付与される弾力によって、可動板108が左右方向一方側に移動するのを阻止する。
【0143】
融解部材112の左右方向他方側の端部は、熱伝達部材111にボルト固定されている。融解部材112の左右方向一方側の端部は、可動側係合部120の左右方向一方側の端部に係合している。すなわち、融解部材112の左右方向一方側の端部に備えられた係合孔122と、可動側係合部120の左右方向一方側の端部に備えられた可動側係合部120とを係合させている。可動板108と熱伝達部材111とに掛け渡すように融解部材112を取り付けた状態で、融解部材112の下面の大部分は、熱伝達部材111の上面に面接触している。
【0144】
なお、融解部材112は、それ全体が温度ヒューズでなくても良い。所定温度に達したときに溶断可能であれば、融解部材112の一部分に温度ヒューズが用いられていても良い。その際、両側の端部に銅系合金などを用いても良い。
【0145】
(駆動ピン)
駆動ピン113は、頭部を備えたねじ(トラスねじ)により構成されている。駆動ピン113は、中心軸を上下方向に向けた状態で、可動板108にねじ止め固定されている。駆動ピン113の下方側部分は、ガイド孔117を通じてケーシング本体114から下方に突出している。駆動ピン113の下方側部分は、スライド部材101bに備えられた二股状の係合爪103に対して左右方向に係合している。
【0146】
本例の駆動機構100は、平常時には、可動板108と、ケーシング本体114に固定された熱伝達部材111とに、掛け渡すように融解部材112が取り付けられているため、可動板108及び駆動ピン113の左右方向の移動は、融解部材112によって阻止される。このため、駆動ピン113と係合した係合爪103を備えたスライド部材101b、及び、回転盤102を介してスライド部材101bに連結されたスライド部材101aについても、左右方向の移動が阻止される。これにより、スライド部材101a、101bのそれぞれと窓枠側係合部13との係合が解除されることを防止し、防火面格子1を閉鎖位置に安定的に保持する。
【0147】
〈角度規制手段〉
本例の防火面格子1は、防火面格子1の開放角度(開度)を規制するために、防火面格子1と窓枠3との間に、角度規制手段123をさらに備えている。
【0148】
角度規制手段123は、図39に示すように、収納ケース124と、ワイヤ125とからなる。
【0149】
収納ケース124は、縦框本体55aの内部に固定されている。収納ケース124は、掛止部126と収納部127とを有する。掛止部126は、頭部を備えたトラスねじにより構成されており、収納ケース124に対し中心軸を水平方向に向けて固定されている。収納部127は、掛止部126よりも下方に配置されている。
【0150】
ワイヤ125は、長さ方向一方側の端部が収納ケース124のうちで掛止部126よりも上側部分に固定されており、長さ方向他方側の端部が、掛止部126の下側を屋外側から屋内側に通過して、窓枠3に直接又は間接的に固定されている。つまり、ワイヤ125の長さ方向中間部が、掛止部126の下側を屋内外方向に通過している。本例では、ワイヤ125の長さ方向一方側の端部は、ねじ128により、収納ケース124のうちで掛止部126よりも上側かつ屋内側部分に固定されており、ワイヤ125の長さ方向他方側の端部は、窓縦枠8aに固定された窓枠上部ブラケット9aに固定されている。ワイヤ125の長さ方向中間部は、防火面格子1の閉鎖状態で、左右方向視で略U字形に撓み、収納部127に収納されており、防火面格子1の開放状態で、掛止部126に対して下方から掛けられる(掛止部126を押し上げる)。
【0151】
角度規制手段123は、図41(B)に示すように、防火面格子1が揺動開放した際に、防火面格子1と窓枠上部ブラケット9aとの間でワイヤ125が突っ張ることにより、開放角度を規制する。防火面格子1の開放角度は、ワイヤの長さを変更することにより変更可能であり、開放角度をどの程度の大きさに規制するかは、防火面格子1の屋外側の環境などに基づき適宜決定することができ、例えば10度~40度程度に規制することができる。
【0152】
〔熱感知式作動装置の作動説明〕
本例の熱感知式作動装置35の駆動機構100は、火災が発生し、温度ヒューズである融解部材112が所定温度に達して溶断すると、図37の(A)→(B)に示すように、弾性部材110の弾力によって、可動板108及び駆動ピン113を、ケーシング107に対して左右方向一方側に移動させる。そして、駆動ピン113と係合した係合爪103を備えた一方のスライド部材101bのみを、他方のスライド部材101aに近づく方向である左右方向一方側に移動させる。
【0153】
これにより、図36の(A)→(B)に示すように、回転盤102を介して連結された1対のスライド部材101a、101bを、互いに近づく方向に移動させる。つまり、左右方向一方側に配置されたスライド部材101aを左右方向他方側に移動させ、かつ、左右方向他方側に配置されたスライド部材101bを左右方向一方側に移動させる。そして、図35の(A)→(B)に示すように、スライド部材101a、101bのそれぞれの端部を窓枠側係合部13から左右方向に引き抜き、スライド部材101a、101bのそれぞれと窓枠側係合部13との屋内外方向の係合を解除する。これより、防火面格子1の揺動開放動作を可能とする。
【0154】
本例では、枢軸94が防火面格子1の屋内側端部の下部に配置されているため、防火面格子1の重心位置が枢軸94よりも屋外側になり、スライド部材101a、101bのそれぞれと窓枠側係合部13との係合が解除されると、防火面格子1は、図41(A)に示すように、即座に揺動開放する。なお、防火面格子1の重心位置が、枢軸94よりも屋内側に配置されている場合には、例えば防火面格子1と窓枠3との間に、防火面格子1を屋外側に向けて付勢する付勢手段を別途設けることにより、スライド部材と窓枠側係合部との係合が解除された際に、防火面格子を揺動開放させることができる。
【0155】
さらに本例では、図43の(A)→(B)に示すように、スライド部材101aの端部をベース側係合部82から左右方向他方側に引き抜き、スライド部材101aとベース側係合部82との上下方向の係合を解除する。これにより、縦框42aに対するベース部材78の上下方向の移動を可能とする。
【0156】
本例では、ベース部材78を構成する基台80と下框41との間に引張ばね83が掛け渡されており、基台80に対し下方に向いた弾力が付与されている。このため、スライド部材101aとベース側係合部82との係合が解除されると、図43(B)及び図44(B)に示すように、ベース部材78及びレバー機構部70は縦框42aに対して下方に移動し、レバー79自体は揺動しないまま、作用ピン77を介して連動杆69を下方に移動させるため、複数枚のルーバ37をまとめて開放させることができる。なお、図41に示すように、防火面格子の揺動開放動作と、防火面格子のスライド移動動作と、ルーバの開動作とは、同時並行的に行われる。
【0157】
〔面格子本体の動作説明〕
本例では、熱感知式作動装置35が作動し、スライド部材101a、101bのそれぞれと窓枠側係合部13との係合が解除されると、図41(A)に示すように、面格子下部ブラケット39a、39bに備えられた枢軸94を揺動中心として、防火面格子1の揺動動作を開始させる。具体的には、図42(A)に示すように、枢軸94を揺動中心として、支持ピン95がピン受部25から下側に抜け出る方向へと防火面格子1を揺動させる。
【0158】
そして、支持ピン95とピン受部25との係合が解除されると、防火面格子1は、揺動動作を進行させる(開放角度を大きくする)とともに、図41(B)及び図42(B)に示すように、枢軸94を下部張出板部21の上端縁に備えられた傾斜案内部23に沿って屋外側へ摺動させることで、自重によって、屋外側へとスライド移動する。防火面格子1のスライド移動は、枢軸94が下部張出板部21に備えられた係合受部24に対して係合するまで行われる。つまり、係合受部24は、防火面格子1のスライド移動のストッパとして機能する。
【0159】
枢軸94が係合受部24に係合した時点で、角度規制手段123を構成するワイヤ125に撓みが残っていれば、防火面格子1は、枢軸94を揺動中心としてさらに揺動する。これに対して、ワイヤ125に撓みが残っていなければ、防火面格子1の揺動動作は行われない。
【0160】
枢軸94が係合受部24に係合し、防火面格子1のスライド移動及び揺動動作が停止した状態で、防火面格子1は、枢軸94を支持軸として、窓枠下部ブラケット10a、10bに対して支持される。また、防火面格子1を構成する下框41と窓下枠7との間は広く開口する。
【0161】
以上のような本例の防火面格子1によれば、ルーバ37を全閉にした状態で火災が発生した場合にも、サッシ窓2からの放熱を遮らないようにすることができる。
【0162】
すなわち、本例の防火面格子1は、熱感知式作動装置35を構成する駆動機構100が所定温度に達したことを検知すると、スライド部材101aとベース側係合部82との係合を解除して、縦框42aに対するベース部材78の上下方向の移動を可能とする。これにより、連動杆69を上下方向に移動させることが可能になるため、複数枚のルーバ37をまとめて開放させることができる。本例では、スライド部材101aとベース側係合部82との係合が解除されると、ベース部材78及びレバー機構部70が、引張ばね83の弾力により下方に移動し、作用ピン77を介して連動杆69が下方に移動することで、複数枚のルーバ37がまとめて開放される。したがって、本例の防火面格子1によれば、高温の空気を効率良く外部に逃がすことができるため、ルーバ37を全閉にした状態で火災が発生した場合にも、サッシ窓2からの放熱を遮らないようにすることができる。
【0163】
さらに本例の防火面格子1は、熱感知式作動装置35を構成する駆動機構100が所定温度に達したことを検知すると、1対のスライド部材101a、101bのうちの一方のスライド部材101bのみを左右方向に移動させる。1対のスライド部材101a、101bは、左右方向に関して互いに逆向きに同期して移動可能に構成されているため、駆動機構100により一方のスライド部材101bを左右方向に移動させると、他方のスライド部材101aを、一方のスライド部材101bとは左右方向逆向きに移動させることができる。これにより、スライド部材101a、101bのそれぞれと窓枠側係合部13との係合を解除できるため、火災発生時に、防火面格子1(面格子本体34)を揺動開放させることができる。
【0164】
特に本例では、一方のスライド部材101aと窓枠側係合部13との係合が解除されるタイミングと、他方のスライド部材101bと窓枠側係合部13との係合が解除されるタイミングとを一致させることができるため、防火面格子1とサッシ窓2とを平行に保ったまま、防火面格子1をスムーズに揺動開放させることができる。
【0165】
以上のように本例では、火災発生時に、いわゆる外倒し窓のように防火面格子1を揺動開放させて、サッシ窓2の上部と防火面格子1の上部との間を広く開口させることができ、上昇する高温の空気を効率良く外部に逃がすことができるため、サッシ窓2からの放熱性のさらなる向上を図れる。しかも本例では、複数枚のルーバ37を開放させるのとほぼ同時に、防火面格子1の揺動開放動作及び屋外側へのスライド動作を行わせることができるため、サッシ窓2からの放熱性を十分に確保できる。
【0166】
また、本例では、面格子下部ブラケット39a、39bとして、枢軸94及び支持ピン95を備えたものを使用し、かつ、窓枠下部ブラケット10a、10bとして、傾斜案内部23と係合受部24とピン受部25とを備えたものを使用しているため、防火面格子1を揺動開放させた際に、サッシ窓2の上部と防火面格子1の上部との間を開口させるだけでなく、サッシ窓2の下部と防火面格子1の下部との間を開口させることができる。したがって、サッシ窓2からの放熱性の向上を図るとともに、火災によりサッシ窓2から発生する可燃ガスの滞留を防止することができる。また、傾斜案内部23の全長を変更することで、下框41と窓下枠7との開口部の広さを自由に設定することができる。さらに、傾斜案内部23の傾斜角度を変更することで、防火面格子1のスライド動作に要する時間を調節することもできる。
【0167】
また、本例では、防火面格子1を構成する下框閉塞片51に、複数の排気孔54を設けているため、排気孔54を通じて、サッシ窓2から発生する可燃ガスを屋外側に排出することもできる。
【0168】
また、本例では、1つの熱感知式作動装置35によって、平常時に、防火面格子1を閉鎖位置に保持しておき、火災発生時に、防火面格子1を揺動開放させる第1の機能と、火災発生時に、複数枚のルーバ37をまとめて開放する第2の機能との、2つの機能を発揮させることができるため、それぞれ別々の装置により2つの機能を発揮させる場合に比べて、防火面格子1の軽量化とコンパクト化を図れる。
【0169】
また、本例では、作動機構99を1対のスライド部材101a、101bと回転盤102とから構成しているため、部品点数の少ない簡単な構成でありながら、1対のスライド部材101a、101bを、左右方向に関して互いに逆向きに同期して移動させることができる。
【0170】
また、本例では、1つの駆動機構100のみで、1対のスライド部材101a、101bを左右方向に移動させることができるため、防火面格子1の軽量化及びコスト低減を図れる。
【0171】
また、本例では、温度ヒューズとして機能する融解部材112を、アルミニウム無垢材などの熱伝導率の高い熱伝達部材111に接触させているため、融解部材112により、火災発生時における温度上昇を検知しやすくすることができる。つまり、融解部材112の温度を、サッシ窓2の屋外側近傍の温度に、より早くかつ正確に近づけることができる。
【0172】
また、本例では、作動機構99を上框本体46の内部に配置しているため、作動機構99を保護できるとともに、作動機構99を設けることによって防火面格子1の意匠の自由度が低下することを防止できる。
【0173】
また、本例では、駆動機構100を、上框屋内側壁部48の屋内側面に固定しているため、駆動機構100を設けることによって防火面格子1の意匠の自由度が低下することを抑制できる。また、駆動機構100を屋外側から操作されることを防止できる。特に本例では、駆動機構100を、上框屋内側壁部48の屋内側面のうちで、外障子5と対向する左右方向他方側の端部に固定しているため、駆動機構100と外障子5との間の隙間を小さくできる。このため、駆動機構100により、火災発生時における温度上昇を検知しやすくすることができる。
【0174】
また、本例では、1対のスライド部材101a、101bと係合する窓枠側係合部13を、左右の窓縦枠8a、8bの上端部に固定する窓枠上部ブラケット9a、9bに設けている。このため、既設のサッシ窓の屋外側に、本例の防火面格子1を設置することができる。
【0175】
また、窓枠側係合部13を、防火面格子1の閉鎖状態において、窓枠上部ブラケット9a、9bのうちで左右の縦框42a、42bの内部に挿入された部分に設けているため、窓枠側係合部13とスライド部材101a、101bとの係合部を保護することができる。
【0176】
また、本例では、窓枠上部ブラケット9a、9bのそれぞれを、窓枠側係合部13を有するアルミニウム合金製の上部ブラケット本体17と、ステンレス鋼板製の上部パンチアンカー18とから構成している。つまり、窓縦枠8a、8bに固定する部分である上部パンチアンカー18を、強度の高いステンレス鋼板製とし、窓縦枠8a、8bに固定する部分に比べて必要な強度が低い、窓枠側係合部13を有する上部ブラケット本体17を、ステンレス鋼板に比べて安価なアルミニウム合金製としている。このため、窓枠上部ブラケット9a、9bの強度確保とコスト低減との両立を図ることができる。
【0177】
本例ではさらに、窓枠下部ブラケット10a、10bのそれぞれを、下部張出板部21を有するアルミニウム合金製の下部ブラケット本体29と、ステンレス鋼板製の下部パンチアンカー30とから構成している。つまり、窓縦枠8a、8bに固定する部分である下部パンチアンカー30を、強度の高いステンレス鋼板製とし、窓縦枠8a、8bに固定する部分に比べて必要な強度が低い、下部張出板部21を有する下部ブラケット本体29を、ステンレス鋼板に比べて安価なアルミニウム合金製としている。このため、窓枠下部ブラケット10a、10bの強度確保とコスト低減との両立を図ることができる。
【0178】
また、本例では、中方立53を挟んで左右両側に配置された1対のルーバ37を、連結軸63により相対回転不能に互いに連結しているため、中方立53を備えた構造であっても、火災発生時に、中方立53を挟んで左右両側に配置されたルーバ37をまとめて開放させることができる。
【0179】
本例では、ベース部材78と下框41との間に引張ばね83を掛け渡しており、ベース部材78に対し下方に向いた弾力を付与しているため、スライド部材101aとベース側係合部82との係合が解除された際に、重力により落下する場合に比べて、ベース部材78を縦框42aに対して早期に下方に移動させることができる。このため、複数枚のルーバ37を早期に開放させることができる。
【0180】
また、本例では、ベース側係合部82とスライド部材101aとの係合部を、縦框42aの内部に配置しているため、該係合部を保護することができる。
【0181】
また、本例では、ルーバ開閉機構38を構成するクランク軸62及び連結軸63のそれぞれを、アルミニウム合金製の素板からの切断加工品としているため、樹脂製部品とする場合に比べて防火性能の向上を図れるとともに、防火面格子1の軽量化及びコスト低減を図ることができる。
【0182】
また、本例では、ルーバ37に備えられた挿通孔67の内周面に内向突起68を設けるとともに、クランク軸62を構成する挿入軸部71及び連結軸63を構成する連結挿入軸部75のそれぞれの外周面に外向突起74、76を設けているため、挿入軸部71及び連結挿入軸部75のそれぞれが挿通孔67から抜け出ることを防止できる。特に本例では、外向突起74、76のうち、挿通孔67に対する挿入軸部71及び連結挿入軸部75の挿入方向に関する前側面を、径方向内側から径方向外側に向かうほど、挿通孔67に対する挿入軸部71及び連結挿入軸部75の挿入方向に対して反対側に傾斜させているため、挿通孔67に、挿入軸部71及び連結挿入軸部75のそれぞれを挿入する際の摩擦抵抗の低減を図れるとともに、挿通孔67から挿入軸部71及び連結挿入軸部75が抜け出ることを有効に防止できる。
【0183】
また、本例では、防火面格子1の開放角度を規制するための角度規制手段123を構成するワイヤ125のうち、長さ方向一方側の端部を、収納ケース124のうちで掛止部126よりも上側部分に固定し、長さ方向他方側の端部を、掛止部126の下側を屋外側から屋内側に通過して、窓枠3に直接又は間接的に固定しているため、防火面格子1の閉鎖状態で、ワイヤ125を収納部127に収納する作業の作業性の向上を図れる。すなわち、本例では、ワイヤ125の長さ方向中間部が下側から掛止部126に掛けられているため、ワイヤ125は、収納ケース124の内側で、収納部127が配置された下側が凸となるように湾曲する。したがって、ワイヤ125のうちで収納ケース124から屋内側にはみ出した部分を、収納部127に向けて下側かつ屋外側に斜めに押し込むことで、ワイヤ125を収納部127に効率良く収納することができる。
【0184】
[実施の形態の第2例]
実施の形態の第2例について、図45図49を用いて説明する。
【0185】
実施の形態の第1例の構造においては、防火面格子1を揺動開放させた際に、サッシ窓2の上部と防火面格子1の上部との間を開口させるとともに、サッシ窓2の下部と防火面格子1の下部との間を開口させるが、本例の防火面格子1aでは、サッシ窓2の上部と防火面格子1aの上部との間部分のみを開口させる。
【0186】
このために本例では、防火面格子1a(面格子本体34a)の下部を揺動自在に支持する部分の構造を、実施の形態の第1例の構造から変更している。具体的には、窓枠下部ブラケット10c、10dの構造を、実施の形態の第1例の構造から変更するとともに、防火面格子1aから面格子下部ブラケットを省略している。その他の部分の構造については、実施の形態の第1例の構造と同じである。
【0187】
《窓枠下部ブラケット》
窓枠下部ブラケット10c、10cは、左右方向に関して互いに対称形状を有している。図48に示すように、窓枠下部ブラケット10c、10dのそれぞれは、略平板状の板状部材であり、屋外側に向けて張り出した下部張出板部21aと、下部張出板部21aの屋内側の端部に備えられた下部取付部22aと、枢軸94aとを有する。
【0188】
下部張出板部21aは、略矩形平板状に構成されており、板厚方向を左右方向に向けて配置されている。
【0189】
下部取付部22aは、窓枠下部ブラケット10c、10cを窓縦枠8a、8bに固定する部分であり、略U字形の端面形状を有する下部挟持部27aを有している。下部挟持部27aは、左右方向に関して外側に開口した下部挟持溝28aを上下方向にわたり有する。
【0190】
枢軸94aは、中心軸を水平方向に向けた状態で、下部張出板部21aの屋外側端部の下端部に設けられている。枢軸94aは、防火面格子1aが揺動開放する際の揺動中心となる。枢軸94aは、円柱形状を有しており、下部張出板部21aの左右方向に関する内側面から水平方向に突出している。枢軸94aの先端部には、外向フランジ状の抜け止め鍔部129が備えられている。
【0191】
窓枠下部ブラケット10c、10dは、下部挟持溝28aの内側に、窓縦枠8a、8bのそれぞれに備えられた縦枠ヒレ片16を圧入し、下部挟持部27aによって縦枠ヒレ片16を屋内外方向両側から挟持することで、窓縦枠8a、8bに固定されている。
【0192】
本例の窓枠下部ブラケット10c、10dは、複数の部材から構成されている。窓枠下部ブラケット10c、10dのそれぞれは、下部ブラケット本体29aと下部パンチアンカー30aと枢軸94aの三つの部品から構成されている。
【0193】
下部ブラケット本体29aは、矩形平板状に構成されている。下部パンチアンカー30aは、下部挟持部27aと、下部挟持部27aから屋外側に向けて伸長した張出板部130とを有している。このため、窓枠下部ブラケット10c、10dの下部張出板部21aは、下部パンチアンカー30aの張出板部130に下部ブラケット本体29aを固定することで構成されている。
【0194】
本例では、防火面格子1aから面格子下部ブラケットを省略する代わりに、左右の縦框42a、42bを構成する縦框閉塞片56a、56bのそれぞれの下端部に、係合受部24aを形成している。係合受部24aは、下側に開口した切り欠きにより構成されている。係合受部24aは、左右方向視で半長円形状を有しており、係合受部24aの奥部(上端部)は凹円弧状形状を有している。
【0195】
本例では、防火面格子1aの下端部を窓枠3に対して揺動可能に支持するために、左右の縦框閉塞片56a、56bのそれぞれの下端部に形成した係合受部24aを、窓枠下部ブラケット10c、10cに備えられた枢軸94aに対して上方から係合させる。具体的には、係合受部24aを、下部張出板部21aと抜け止め鍔部129との間に上方から挿入し、係合受部24aに対して枢軸94aを係合させる。これにより、防火面格子1aの下端部を、窓縦枠8a、8b(図4参照)に対して揺動可能に支持している。防火面格子1の重量は、窓枠下部ブラケット10c、10dを介して窓枠3によって支承される。
【0196】
以上のような本例の場合には、火災発生時には、熱感知式作動装置35が作動し、スライド部材101a、101bのそれぞれと窓枠側係合部13との係合が解除されると、図49の(A)→(B)に示すように、窓枠下部ブラケット10c、10dに備えられた枢軸94aを揺動中心として、防火面格子1aを揺動させる。また、本例の場合にも、熱感知式作動装置35が作動すると、図43の(A)→(B)に示したように、スライド部材101aとベース側係合部82との係合が解除され、複数枚のルーバ37がまとめて開放される。したがって、本例の防火面格子1aによれば、ルーバ37を全閉にした状態で火災が発生した場合にも、サッシ窓2からの放熱を遮らないようにすることができる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0197】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、発明の技術思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0198】
本発明は、実施の形態の各例に限定されない。例えば、窓枠側係合部とスライド部材との係合態様、及び、ベース側係合部とスライド部材との係合態様については、実施の形態の各例の構造に限定されず、その機能を発揮できる限り、従来から知られたその他の係合態様に変更することができる。
【0199】
実施の形態では、防火面格子の開放角度を規制するための角度規制手段として、ワイヤを使用した場合について説明したが、角度規制手段の構造は特に限定されず、例えばすべり出し窓などに採用されているリンク機構を利用することもできるし、丁番として開き角度が規制できるものなどを利用することもできる。また、防火面格子を屋外側に向けて付勢するための付勢手段を、角度規制手段として利用することも可能である。
【符号の説明】
【0200】
1、1a 防火面格子
2 サッシ窓
3 窓枠
4 内障子
5 外障子
6 窓上枠
7 窓下枠
8a、8b 窓縦枠
9a、9b 窓枠上部ブラケット
10a~10d 窓枠下部ブラケット
11 上部張出板部
12 上部取付部
13 窓枠側係合部
14 上部挟持部
15 上部挟持溝
16 縦枠ヒレ片
17 上部ブラケット本体
17x 上部ブラケット素板
18 上部パンチアンカー
19 上部取付基板
20 ねじ
21、21a 下部張出板部
22、22a 下部取付部
23 傾斜案内部
24、24a 係合受部
25 ピン受部
26 鉤部
27、27a 下部挟持部
28、28a 下部挟持溝
29、29a 下部ブラケット本体
29x 下部ブラケット素板
30、30a 下部パンチアンカー
31 下部取付基板
32a、32b 障子枠
33a、33b ガラスパネル
34 面格子本体
35 熱感知式作動装置
36 框枠体
37 ルーバ
38 ルーバ開閉機構
39a、39b 面格子下部ブラケット
40 上框
41 下框
42a、42b 縦框
43 屋外側枠体
44 屋内側枠体
45 網戸
46 上框本体
47 上框閉塞片
48 上框屋内側壁部
49 上框挿通部
50 下框本体
51 下框閉塞片
53 中方立
54 排気孔
55a、55b 縦框本体
56a、56b 縦框閉塞片
57 縦框内側壁部
58 縦框第1挿通部
59 縦框屋内側壁部
60 縦框第2挿通部
61 縦框第3挿通部
62 クランク軸
62x クランク軸素板
63 連結軸
63x 連結軸素板
64 支持ピン
65 ルーバ本体
66 支持筒部
67 挿通孔
68 内向突起
69 連動杆
70 レバー機構部
71 挿入軸部
72 支持軸部
73 連結部
74 外向突起
75 連結挿入軸部
76 外向突起
77 作用ピン
78 ベース部材
79 レバー
80 基台
81 レバー支持部
82 ベース側係合部
83 引張ばね
84 取付部
85 角度調節部
86 中間突起部
87 ねじ
88 支点ピン
89 摘まみ部
90 ピン挿通孔
91 ピン係合孔
92 係止ピン
93 ブラケット枠体
94、94a 枢軸
95 支持ピン
96a、96b 側板部
97 連結板部
98 ねじ
99 作動機構
100 駆動機構
101a、101b スライド部材
102 回転盤
103 係合爪
104 支持ピン
105 台座
106a、106b 回動ピン
107 ケーシング
108 可動板
109 固定板
110 弾性部材
111 熱伝達部材
112 融解部材
113 駆動ピン
114 ケーシング本体
115 取付フランジ部
116 ガイド溝
117 ガイド孔
118 ねじ
119 可動側凸部
120 可動側係合部
121 固定側凸部
122 係合孔
123 角度規制手段
124 収納ケース
125 ワイヤ
126 掛止部
127 収納部
128 ねじ
129 抜け止め鍔部
130 張出板部
131 防虫ネット
132 円孔
133 円孔
134 ねじ
135 ナット
図1
図2
図3
図4
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図26
図27
図28
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図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
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図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
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図49