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特開2024-142668異常診断システムおよび異常診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142668
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】異常診断システムおよび異常診断方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/10 20060101AFI20241003BHJP
   F15B 20/00 20060101ALI20241003BHJP
   F04B 51/00 20060101ALI20241003BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F04B49/10 311
F15B20/00 D
F04B51/00
E02F9/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054909
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長宗 和也
(72)【発明者】
【氏名】片岡 洋佑
【テーマコード(参考)】
3H082
3H145
【Fターム(参考)】
3H082BB26
3H082CC02
3H082DA06
3H082DA18
3H082DB37
3H082DB38
3H082EE02
3H145AA04
3H145AA16
3H145AA24
3H145AA42
3H145AA44
3H145BA41
3H145CA01
3H145CA09
3H145CA13
3H145DA46
3H145EA13
3H145EA17
3H145FA02
3H145FA17
3H145FA24
3H145GA02
3H145GA13
(57)【要約】
【課題】油圧ポンプの異常の有無を高精度に判定することができる異常診断システムを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る異常診断システムは、建設機械に搭載される、可変容量型の油圧ポンプ31または35に対する異常診断システムであり、油圧ポンプ31または35の吸入圧、吐出圧またはドレン圧を検出する圧力計71または72と、制御装置6を含む。制御装置6は、所定の診断条件下で前記建設機械が運転された状態において、圧力計71または72により検出される圧力に基づいて油圧ポンプ31または35の異常の有無を判定する。所定の診断条件は、油圧ポンプ31または35の回転数および負荷が一定に保たれるとともに油圧ポンプ31または35の容量が最小値よりも大きな所定値に保たれるものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械に搭載される、可変容量型の油圧ポンプに対する異常診断システムであって、
前記油圧ポンプの吸入圧、吐出圧またはドレン圧を検出する圧力計と、
所定の診断条件下で前記建設機械が運転された状態において、前記圧力計により検出される圧力に基づいて前記油圧ポンプの異常の有無を判定する制御装置と、を備え、
前記所定の診断条件は、前記油圧ポンプの回転数および負荷が一定に保たれるとともに前記油圧ポンプの容量が最小値よりも大きな所定値に保たれるものである、異常診断システム。
【請求項2】
前記油圧ポンプの容量の最小値を0%、前記油圧ポンプの容量の最大値を100%としたとき、前記所定値は50%以上100%以下である、請求項1に記載の異常診断システム。
【請求項3】
前記所定値は第1所定値であり、
前記制御装置は、前記油圧ポンプの吐出圧が第2所定値に保たれていることを確認した後に、前記油圧ポンプの異常の有無を判定する、請求項1または2に記載の異常診断システム。
【請求項4】
前記第2所定値は、1MPa以上20MPa以下である、請求項3に記載の異常診断システム。
【請求項5】
前記建設機械は一対のクローラを含む油圧ショベルであり、
前記建設機械が運転された状態は、前記油圧ショベルの一方のクローラを浮かせて駆動させた状態である、請求項1または2に記載の異常診断システム。
【請求項6】
前記建設機械は一対のクローラを含む油圧ショベルであり、
前記建設機械が運転された状態は、前記油圧ショベルを平坦な場所で旋回駆動または走行させた状態である、請求項1または2に記載の異常診断システム。
【請求項7】
建設機械に搭載される、可変容量型の圧ポンプに対する異常診断方法であって、
所定の診断条件下で前記建設機械が運転された状態において、前記油圧ポンプの吸入圧、吐出圧またはドレン圧を検出し、検出された圧力に基づいて前記油圧ポンプの異常の有無を判定し、
前記所定の診断条件は、前記油圧ポンプの回転数および負荷が一定に保たれるとともに前記油圧ポンプの容量が最小値よりも大きな所定値に保たれるものである、異常診断方法。
【請求項8】
前記油圧ポンプの容量の最小値を0%、前記油圧ポンプの容量の最大値を100%としたとき、前記所定値は50%以上100%以下である、請求項7に記載の異常診断方法。
【請求項9】
前記所定値は第1所定値であり、
前記制御装置は、前記油圧ポンプの吐出圧が第2所定値に保たれていることを確認した後に、前記油圧ポンプの異常の有無を判定する、請求項7または8に記載の異常診断方法。
【請求項10】
前記第2所定値は、1MPa以上20MPa以下である、請求項9に記載の異常診断方法。
【請求項11】
前記建設機械は一対のクローラを含む油圧ショベルであり、
前記建設機械が運転された状態は、前記油圧ショベルの一方のクローラを浮かせて駆動させた状態である、請求項7または8に記載の異常診断方法。
【請求項12】
前記建設機械は一対のクローラを含む油圧ショベルであり、
前記建設機械が運転された状態は、前記油圧ショベルを平坦な場所で旋回駆動または走行させた状態である、請求項7または8に記載の異常診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建設機械に搭載される油圧ポンプに対する異常診断システムおよび異常診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの建設機械には、油圧ポンプや油圧アクチュエータなどの油圧機器が搭載される。油圧ポンプは一般的に可変容量型のポンプである。
【0003】
例えば、特許文献1には、アキシャルピストンポンプである油圧ポンプの吐出圧を検出し、検出された吐出圧に基づいて油圧ポンプの異常を検出する異常検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-170509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、吐出圧などの油圧ポンプに関する圧力に基づいて油圧ポンプの異常の有無を高精度に判定するには、その圧力をどのような状況で検出するかが重要である。しかし、特許文献1にはこの点についての記載はない。
【0006】
そこで、本開示は、油圧ポンプの異常の有無を高精度に判定することができる異常診断システムおよび異常診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、1つの側面から、建設機械に搭載される、可変容量型の油圧ポンプに対する異常診断システムであって、前記油圧ポンプの吸入圧、吐出圧またはドレン圧を検出する圧力計と、所定の診断条件下で前記建設機械が運転された状態において、前記圧力計により検出される圧力に基づいて前記油圧ポンプの異常の有無を判定する制御装置と、を備え、前記所定の診断条件は、前記油圧ポンプの回転数および負荷が一定に保たれるとともに前記油圧ポンプの容量が最小値よりも大きな所定値に保たれるものである、異常診断システムを提供する。
【0008】
本開示は、別の側面から、建設機械に搭載される、可変容量型の圧ポンプに対する異常診断方法であって、所定の診断条件下で前記建設機械が運転された状態において、前記油圧ポンプの吸入圧、吐出圧またはドレン圧を検出し、検出された圧力に基づいて前記油圧ポンプの異常の有無を判定し、前記所定の診断条件は、前記油圧ポンプの回転数および負荷が一定に保たれるとともに前記油圧ポンプの容量が最小値よりも大きな所定値に保たれるものである、異常診断方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、油圧ポンプの異常の有無を高精度に判定することができる異常診断システムおよび異常診断方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る異常診断システムと、油圧ポンプを含む油圧システムの概略構成図である。
図2】油圧ショベルの左クローラを浮かせた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、少なくとも1つの油圧ポンプを含む油圧システムおよび前記油圧ポンプに対する一実施形態に係る異常診断システム1を示し、図2に、前記油圧システムが搭載された油圧ショベル10を示す。なお、異常診断システム1は、油圧ショベル10以外のホイールローダなどの建設機械に搭載される油圧ポンプに対しても適用可能である。
【0012】
図2に示すように、油圧ショベル10は、走行体11と、走行体11に旋回可能に支持された旋回体14を含む。走行体11は、一対のクローラとして左クローラ12および右クローラ13を含む。さらに、油圧ショベル10は、旋回体14に対して俯仰するブーム15と、ブーム15の先端に揺動可能に連結されたアーム16と、アーム16の先端に揺動可能に連結されたバケット17を含む。
【0013】
前記油圧システムは、図1に示すように、油圧アクチュエータとして、左走行モータ21、右走行モータ22、ブームシリンダ23、アームシリンダ24、バケットシリンダ25および旋回モータ26を含む。左走行モータ21および右走行モータ22はそれぞれ左クローラ12および右クローラ13を駆動し、ブームシリンダ23はブーム15を俯仰する。また、アームシリンダ24およびバケットシリンダ25はそれぞれアーム16およびバケット17を揺動し、旋回モータ26は旋回体14を旋回する。
【0014】
本実施形態では、前記油圧システムが、2つの油圧ポンプ、すなわち第1油圧ポンプ31および第2油圧ポンプ35を含む。第1油圧ポンプ31は左走行モータ21、アームシリンダ24および旋回モータ26へ作動油を供給し、第2油圧ポンプ35は右走行モータ22、ブームシリンダ23およびバケットシリンダ25へ作動油を供給する。ただし、油圧ショベル10に搭載される油圧ポンプの数は1つであってもよいし3つ以上であってもよい。
【0015】
より詳しくは、第1油圧ポンプ31は、吸入ライン33によりタンクと接続されるとともに、供給ライン41により左走行制御弁42、アーム制御弁43および旋回制御弁44と接続されている。左走行制御弁42、アーム制御弁43および旋回制御弁44は、それぞれ一対の給排ラインにより左走行モータ21、アームシリンダ24および旋回モータ26と接続されている。
【0016】
左走行制御弁42は、後述する左走行操作装置81の操作方向および操作量に応じて左走行モータ21の回転方向および回転速度を変更する。アーム制御弁43は、後述するアーム操作装置84の操作方向および操作量に応じてアームシリンダ24の動作方向および動作速度を変更する。旋回制御弁44は、後述する旋回操作装置86の操作方向および操作量に応じて旋回モータ26の回転方向および回転速度を変更する。
【0017】
本実施形態では、供給ライン41からセンターバイパスライン45が分岐しており、センターバイパスライン45が左走行制御弁42、アーム制御弁43および旋回制御弁44を通過してタンクまで延びている。ただし、センターバイパスライン45の代わりに、供給ライン41とタンクとを接続する、アンロード弁が設けられたアンロードラインが採用されてもよい。
【0018】
同様に、第2油圧ポンプ35は、吸入ライン37によりタンクと接続されるとともに、供給ライン51により右走行制御弁52、ブーム制御弁53およびバケット制御弁54と接続されている。右走行制御弁52、ブーム制御弁53およびバケット制御弁54は、それぞれ一対の給排ラインにより右走行モータ22、ブームシリンダ23およびバケットシリンダ25と接続されている。
【0019】
右走行制御弁52は、後述する右走行操作装置82の操作方向および操作量に応じて右走行モータ22の回転方向および回転速度を変更する。ブーム制御弁53は、後述するブーム操作装置83の操作方向および操作量に応じてブームシリンダ23の動作方向および動作速度を変更する。バケット制御弁54は、後述するバケット操作装置85の操作方向および操作量に応じてバケットシリンダ25の動作方向および動作速度を変更する。
【0020】
本実施形態では、供給ライン51からセンターバイパスライン55が分岐しており、センターバイパスライン55が右走行制御弁52、ブーム制御弁53およびバケット制御弁54を通過してタンクまで延びている。ただし、センターバイパスライン55の代わりに、供給ライン51とタンクとを接続する、アンロード弁が設けられたアンロードラインが採用されてもよい。
【0021】
本実施形態では、第1油圧ポンプ31および第2油圧ポンプ35がエンジン30により駆動される。エンジン30は第1油圧ポンプ31および第2油圧ポンプ35を一定の回転数で駆動する。ただし、第1油圧ポンプ31および第2油圧ポンプ35は電動機により駆動されてもよい。
【0022】
第1油圧ポンプ31および第2油圧ポンプ35のそれぞれは、可変容量型のポンプである。本実施形態では、第1油圧ポンプ31および第2油圧ポンプ35のそれぞれが、斜板ポンプや斜軸ポンプなどの傾転角が変更可能なアキシャルピストンポンプである。ただし、第1油圧ポンプ31および第2油圧ポンプ35のそれぞれは、ベーンポンプなどの他の形式のポンプであってもよい。
【0023】
第1油圧ポンプ31の容量はレギュレータ32によって変更され、第2油圧ポンプ35の容量はレギュレータ36によって変更される。本実施形態では、レギュレータ32,36が制御装置6により制御される。例えば、第1油圧ポンプ31が斜板ポンプである場合、レギュレータ32は、第1油圧ポンプ31の斜板と連結されたサーボピストンに作用する油圧を電気的に変更するものであってもよいし、第1油圧ポンプ31の斜板と連結された電動アクチュエータであってもよい。同様に、第2油圧ポンプ35が斜板ポンプである場合、レギュレータ36は、第2油圧ポンプ35の斜板と連結されたサーボピストンに作用する油圧を電気的に変更するものであってもよいし、第2油圧ポンプ35の斜板と連結された電動アクチュエータであってもよい。
【0024】
ただし、レギュレータ32,36は、必ずしも制御装置6により制御される必要はなく、作動油の圧力によって動作してもよい。例えば、レギュレータ32,36のそれぞれは、ネガティブコントロール方式またはロードセンシング方式であってもよい。
【0025】
制御装置6に関し、本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウエアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウエアである。ハードウエアは、本明細書に開示されているハードウエアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウエアであってもよい。ハードウエアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウエアとソフトウエアの組み合わせであり、ソフトウエアはハードウエアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【0026】
油圧ショベル10の旋回体14は運転室を含み、運転室内には左走行操作装置81、右走行操作装置82、ブーム操作装置83、アーム操作装置84、バケット操作装置85および旋回操作装置86が配置されている。
【0027】
左走行操作装置81および右走行操作装置82のそれぞれはペダルを有し、ペダルの操作量に応じた操作信号を出力し、ブーム操作装置83、アーム操作装置84、バケット操作装置85および旋回操作装置86のそれぞれはレバーを有し、レバーの操作量に応じた操作信号を出力する。なお、ブーム操作装置83とバケット操作装置85とが一体となってそれらでレバーが共用されてもよいし、アーム操作装置84と旋回操作装置86とが一体なってそれらでレバーが共用されてもよい。
【0028】
本実施形態では、左走行操作装置81、右走行操作装置82、ブーム操作装置83、アーム操作装置84、バケット操作装置85および旋回操作装置86が、操作信号として電気信号を出力し、出力された操作信号は制御装置6へ入力される。ただし、左走行操作装置81、右走行操作装置82、ブーム操作装置83、アーム操作装置84、バケット操作装置85および旋回操作装置86のそれぞれは、操作信号としてパイロット圧を対応する制御弁へ出力してもよい。この場合、制御弁へ出力されるパイロット圧が圧力計で検出されて制御装置6へ入力される。
【0029】
制御装置6は、左走行操作装置81、右走行操作装置82、ブーム操作装置83、アーム操作装置84、バケット操作装置85および旋回操作装置86のいずれも操作されていないときに、第1油圧ポンプ31および第2油圧ポンプ35の容量が最小値となるようにレギュレータ32,36を制御する。本実施形態では、第2油圧ポンプ35の容量の最小値が0%、最大値が100%である。なお、第1油圧ポンプ31および第2油圧ポンプ35の容量が0%のとき、第1油圧ポンプ31および第2油圧ポンプ35の吐出流量はゼロよりも大きい。
【0030】
一方、左走行操作装置81、アーム操作装置84および旋回操作装置86のいずれかが操作されたとき、制御装置6は、第1油圧ポンプ31の容量を操作装置の操作量が大きくなるほど増大させる。また、右走行操作装置82、ブーム操作装置83およびバケット操作装置85のいずれかが操作されたとき、制御装置6は、第2油圧ポンプ35の容量を操作装置の操作量が大きくなるほど増大させる。
【0031】
第1油圧ポンプ31に関する圧力は圧力計71によって検出されて制御装置6へ入力される。同様に、第2油圧ポンプ35に関する圧力は圧力計72によって検出されて制御装置6へ入力される。
【0032】
本実施形態では、圧力計71が第1油圧ポンプ31のドレンライン34に設けられて第1油圧ポンプ31のドレン圧を検出し、圧力計72が第2油圧ポンプ35のドレンライン38に設けられて第2油圧ポンプ35のドレン圧を検出する。圧力計71は第1油圧ポンプ31のケーシングに取り付けられてもよいし、第1油圧ポンプ31とタンクとを接続するドレン配管に取り付けられてもよい。同様に、圧力計72は第2油圧ポンプ35のケーシングに取り付けられてもよいし、第2油圧ポンプ35とタンクとを接続するドレン配管に取り付けられてもよい。
【0033】
ただし、圧力計71は吸入ライン33に設けられて第1油圧ポンプ31の吸入圧を検出してもよいし、供給ライン41に設けられて第1油圧ポンプ31の吐出圧を検出してもよい。同様に、圧力計72は吸入ライン37に設けられて第2油圧ポンプ35の吸入圧を検出してもよいし、供給ライン51に設けられて第2油圧ポンプ35の吐出圧を検出してもよい。
【0034】
第1油圧ポンプ31のドレン圧は、第1油圧ポンプ31に関する所定の診断条件下で油圧ショベル10が運転された状態で圧力計71により検出される。第1油圧ポンプ31に関する所定の診断条件は、第1油圧ポンプ31の回転数および負荷が一定に保たれるとともに第1油圧ポンプ31の容量が最小値よりも大きな所定値αに保たれることである。本実施形態では、所定値αが、50%以上100%以下である。ただし、所定値αは70%以上100%以下であってもよい。
【0035】
本実施形態では、第1油圧ポンプ31に関する所定の診断条件下で油圧ショベル10が運転された状態が、図2に示すように、油圧ショベル10の左クローラ12を浮かせて駆動させた状態である。具体的には、操縦者が、走行体11に対して旋回体14を左向きに旋回させ、その状態でバケット17を地面に押し付ける。このときの左走行操作装置81のペダル踏み込み方向は前進方向でも後進方向でもよい。また、ペダルの踏み込み量は、最大量であってもよいし最大量よりも小さな一定量であってもよい。
【0036】
このように左クローラ12が空中で駆動された状態で、圧力計71により第1油圧ポンプ31のドレン圧が検出される。制御装置6は、検出されたドレン圧に基づいて第1油圧ポンプ31の異常の有無を判定する。例えば、制御装置6は、検出されたドレン圧の波形を正常な波形と比較することで第1油圧ポンプ31の異常の有無を判定してもよいし、検出されたドレン圧のうちの特定のタイミングのドレン圧を閾値と比較することで第1油圧ポンプ31の異常の有無を判定してもよい。あるいは、制御装置6は、検出されたドレン圧を周波数分析することで第1油圧ポンプ31の異常の有無を判定してもよい。
【0037】
制御装置6は、第1油圧ポンプ31の吐出圧が所定値βに保たれていることを確認した後に、第1油圧ポンプ31の異常の有無を判定することが望ましい。例えば、所定値βは、1MPa以上20MPa以下である。あるいは、所定値βは1MPa以上10MPa以下であってもよい。
【0038】
第2油圧ポンプ35のドレン圧は、第2油圧ポンプ35に関する所定の診断条件下で油圧ショベル10が運転された状態で圧力計72により検出される。第2油圧ポンプ35に関する所定の診断条件は、第2油圧ポンプ35の回転数および負荷が一定に保たれるとともに第2油圧ポンプ35の容量が最小値よりも大きな所定値γに保たれることである。本実施形態では、所定値γが、50%以上100%以下である。ただし、所定値γは70%以上100%以下であってもよい。
【0039】
本実施形態では、第2油圧ポンプ35に関する所定の診断条件が満たされるように油圧ショベル10が運転された状態が、図2とは逆に、油圧ショベル10の右クローラ13を浮かせて駆動させた状態である。具体的には、操縦者が、走行体11に対して旋回体14を右向きに旋回させ、その状態でバケット17を地面に押し付ける。このときの右走行操作装置82のペダル踏み込み方向は前進方向でも後進方向でもよい。また、ペダルの踏み込み量は、最大量であってもよいし最大量よりも小さな一定量であってもよい。
【0040】
このように右クローラ13が空中で駆動された状態で、圧力計72により第2油圧ポンプ35のドレン圧が検出される。制御装置6は、検出されたドレン圧に基づいて第2油圧ポンプ35の異常の有無を判定する。例えば、制御装置6は、検出されたドレン圧の波形を正常な波形と比較することで第2油圧ポンプ35の異常の有無を判定してもよいし、検出されたドレン圧のうちの特定のタイミングのドレン圧を閾値と比較することで第2油圧ポンプ35の異常の有無を判定してもよい。あるいは、制御装置6は、検出されたドレン圧を周波数分析することで第2油圧ポンプ35の異常の有無を判定してもよい。
【0041】
制御装置6は、第2油圧ポンプ35の吐出圧が所定値εに保たれていることを確認した後に、第2油圧ポンプ35の異常の有無を判定することが望ましい。例えば、所定値εは、1MPa以上20MPa以下である。あるいは、所定値εは1MPa以上10MPa以下であってもよい。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では、第1油圧ポンプ31に関する所定の診断条件下で油圧ショベル10が運転された状態で第1油圧ポンプ31のドレン圧が検出されるので、第1油圧ポンプ31の異常の有無を高精度に判定することができる。また、第2油圧ポンプ35に関する所定の診断条件下で油圧ショベル10が運転された状態で第2油圧ポンプ35のドレン圧が検出されるので、第2油圧ポンプ35の異常の有無を高精度に判定することができる。
【0043】
しかも、本実施形態では、油圧ショベル10の左クローラ12を浮かせて駆動させた状態で第1油圧ポンプ31のドレン圧が検出されるとともに、油圧ショベル10の右クローラ13を浮かせて駆動させた状態で第2油圧ポンプ35のドレン圧が検出されるので、油圧ショベル10において第1油圧ポンプ31に関する所定の診断条件および第2油圧ポンプ35に関する所定の診断条件を簡単に達成することができる。
【0044】
<変形例>
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0045】
第1油圧ポンプ31に関する所定の診断条件下で油圧ショベル10が運転された状態は、必ずしも油圧ショベル10の左クローラ12を浮かせて駆動させた状態である必要はない。例えば、第1油圧ポンプ31に関する所定の診断条件下で油圧ショベル10が運転された状態は、油圧ショベル10を平坦な場所で旋回駆動または走行させた状態であってもよい。油圧ショベル10を旋回駆動する際は、ブーム15およびアーム16が折り畳まれた状態で旋回体14を旋回させてもよい。油圧ショベル10を走行させる際は、走行体11を前進させてもよいし後進させてもよい。ただし、平坦な場所で油圧ショベル10を走行させた状態では第1油圧ポンプ31に関する圧力が安定しないおそれがあるため、前記実施形態の方が望ましい。
【0046】
同様に、第2油圧ポンプ35に関する所定の診断条件下で油圧ショベル10が運転された状態は、必ずしも油圧ショベル10の右クローラ13を浮かせて駆動させた状態である必要はない。例えば、第2油圧ポンプ35に関する所定の診断条件下で油圧ショベル10が運転された状態は、油圧ショベル10を平坦な場所で走行させた状態であってもよい。この場合、走行体11を前進させてもよいし後進させてもよい。ただし、平坦な場所で油圧ショベル10を走行させた状態では第2油圧ポンプ35に関する圧力が安定しないおそれがあるため、前記実施形態の方が望ましい。
【0047】
<まとめ>
第1の態様として、本開示は、1つの側面から、建設機械に搭載される、可変容量型の油圧ポンプに対する異常診断システムであって、前記油圧ポンプの吸入圧、吐出圧またはドレン圧を検出する圧力計と、所定の診断条件下で前記建設機械が運転された状態において、前記圧力計により検出される圧力に基づいて前記油圧ポンプの異常の有無を判定する制御装置と、を備え、前記所定の診断条件は、前記油圧ポンプの回転数および負荷が一定に保たれるとともに前記油圧ポンプの容量が最小値よりも大きな所定値に保たれるものである、異常診断システムを提供する。
【0048】
上記の構成によれば、所定の診断条件下で建設機械が運転された状態で油圧ポンプに関する圧力が検出されるので、油圧ポンプの異常の有無を高精度に判定することができる。
【0049】
第2の態様として、第1の態様において、例えば、前記油圧ポンプの容量の最小値を0%、前記油圧ポンプの容量の最大値を100%としたとき、前記所定値は50%以上100%以下であってもよい。
【0050】
第3の態様として、第1または第2の態様において、例えば、前記所定値は第1所定値であり、前記制御装置は、前記油圧ポンプの吐出圧が第2所定値に保たれていることを確認した後に、前記油圧ポンプの異常の有無を判定してもよい。
【0051】
第4の態様として、第3の態様において、例えば、前記第2所定値は、1MPa以上20MPa以下であってもよい。
【0052】
第5の態様として、第1乃至第4の態様の何れかにおいて、前記建設機械は一対のクローラを含む油圧ショベルであり、前記建設機械が運転された状態は、前記油圧ショベルの一方のクローラを浮かせて駆動させた状態であってもよい。この構成によれば、油圧ショベルにおいて所定の診断条件を簡単に達成することができる。
【0053】
第6の態様として、第1乃至第4の態様の何れかにおいて、前記建設機械は一対のクローラを含む油圧ショベルであり、前記建設機械が運転された状態は、前記油圧ショベルを平坦な場所で旋回駆動または走行させた状態であってもよい。この構成によれば、油圧ショベルにおいて所定の診断条件を簡単に達成することができる。
【0054】
第7の態様として、本開示は、別の側面から、建設機械に搭載される、可変容量型の圧ポンプに対する異常診断方法であって、所定の診断条件下で前記建設機械が運転された状態において、前記油圧ポンプの吸入圧、吐出圧またはドレン圧を検出し、検出された圧力に基づいて前記油圧ポンプの異常の有無を判定し、前記所定の診断条件は、前記油圧ポンプの回転数および負荷が一定に保たれるとともに前記油圧ポンプの容量が最小値よりも大きな所定値に保たれるものである、異常診断方法を提供する。
【0055】
上記の構成によれば、所定の診断条件下で建設機械が運転された状態で油圧ポンプに関する圧力が検出されるので、油圧ポンプの異常の有無を高精度に判定することができる。
【0056】
第8の態様として、第7の態様において、例えば、前記油圧ポンプの容量の最小値を0%、前記油圧ポンプの容量の最大値を100%としたとき、前記所定値は50%以上100%以下であってもよい。
【0057】
第9の態様として、第7または第8の態様において、例えば、前記所定値は第1所定値であり、前記制御装置は、前記油圧ポンプの吐出圧が第2所定値に保たれていることを確認した後に、前記油圧ポンプの異常の有無を判定してもよい。
【0058】
第10の態様として、第9の態様において、例えば、前記第2所定値は、1MPa以上20MPa以下であってもよい。
【0059】
第11の態様として、第7乃至第10の態様の何れかにおいて、前記建設機械は一対のクローラを含む油圧ショベルであり、前記建設機械が運転された状態は、前記油圧ショベルの一方のクローラを浮かせて駆動させた状態であってもよい。この構成によれば、油圧ショベルにおいて所定の診断条件を簡単に達成することができる。
【0060】
第12の態様として、第7乃至第10の態様の何れかにおいて、前記建設機械は一対のクローラを含む油圧ショベルであり、前記建設機械が運転された状態は、前記油圧ショベルを平坦な場所で旋回駆動または走行させた状態であってもよい。この構成によれば、油圧ショベルにおいて所定の診断条件を簡単に達成することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 故障診断システム
10 油圧ショベル
12,13 クローラ
31,35 油圧ポンプ
6 制御装置
71,72 圧力計
図1
図2