(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014268
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/10 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
E06B7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116966
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯原 慶子
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 將之
(72)【発明者】
【氏名】石川 修一
(72)【発明者】
【氏名】矢代 幸広
【テーマコード(参考)】
2E036
【Fターム(参考)】
2E036JA06
2E036JB00
2E036JC03
2E036KA06
2E036LA06
2E036LB05
2E036LB09
(57)【要約】
【課題】外観品質を損なうことなく一方の空間の換気を十分に実施する。
【解決手段】枠体10及び障子20を備え、浴室と脱衣室との間に設けられる建具であって、枠体10を構成する上枠13は上方上枠部13A及び下方上枠部13Bを有し、これら上方上枠部13A及び下方上枠部13Bの間には浴室と脱衣室とを連通する通気通路2が設けられ、下方上枠部13Bには、障子20の外周側となる見込み面に対向する下壁部41aが設けられるとともに、通気通路2において空気を見込み方向に案内する下方案内壁部41cが設けられ、下壁部41aから下方案内壁部41cまでの高さ方向の寸法が、上方上枠部13Aに設けた湾曲壁部31dの曲率半径r以下に設定されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体及び障子を備え、一方の空間と他方の空間との間に設けられる建具であって、
前記枠体を構成する上枠は、前記一方の空間に臨む上方上枠部と、前記他方の空間に臨む下方上枠部とを有し、
これら上方上枠部及び下方上枠部の間には前記一方の空間と前記他方の空間とを連通する通気通路が設けられ、
前記下方上枠部には、前記障子の外周側となる見込み面に対向する障子対向壁部が設けられるとともに、前記通気通路において空気を見込み方向に案内する下方案内壁部が設けられ、前記他方の空間に臨む部分において前記障子対向壁部から前記下方案内壁部までの高さ方向の寸法が、前記通気通路の最小幅寸法以下に設定されていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記上方上枠部には、前記通気通路において空気を前記一方の空間に向けて漸次下方に案内する上方案内壁部が設けられ、
前記上方案内壁部の下縁は前記障子対向壁部よりも上方、かつ前記下方案内壁部以下となる範囲に位置していることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記上方案内壁部は、前記下方案内壁部の一方の空間側に位置する縁部を中心とした円弧状の凹面を構成する湾曲壁部と、前記湾曲壁部の下縁から下方に延在する垂下片とを有し、
前記障子対向壁部から前記下方案内壁部までの高さ方向の寸法が、前記湾曲壁部の曲率半径以下に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の空間と他方の空間との間に設けられる建具に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室と脱衣室との間に設けられる浴室建具のように、一方の空間と他方の空間との間に設けられる建具には、障子が閉じられた状態においても一方の空間(浴室)の換気が可能となるように構成されたものが種々提供されている。この種の建具としては、上方上枠部及び下方上枠部を上下に並設して上枠を構成することにより、上方上枠部及び下方上枠部の間に通気通路を構成し、障子が閉じられた状態においても、この通気通路を通じて空気を流通させることにより、一方の空間(浴室)の換気を行うようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の建具では、通気通路を設けた分だけ上枠の見付け方向に沿った寸法が増大することになり、看者にトップヘビーな印象を与える等、外観品質の点で必ずしも好ましいとはいえない。なお、上述の問題は、浴室建具に限定されず、上枠に通気通路が設けられたものであれば、同様に生じ得る。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、外観品質を損なうことなく通気通路を通じた換気を十分に実施することのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、枠体及び障子を備え、一方の空間と他方の空間との間に設けられる建具であって、前記枠体を構成する上枠は、前記一方の空間に臨む上方上枠部と、前記他方の空間に臨む下方上枠部とを有し、これら上方上枠部及び下方上枠部の間には前記一方の空間と前記他方の空間とを連通する通気通路が設けられ、前記下方上枠部には、前記障子の外周側となる見込み面に対向する障子対向壁部が設けられるとともに、前記通気通路において空気を見込み方向に案内する下方案内壁部が設けられ、前記他方の空間に臨む部分において前記障子対向壁部から前記下方案内壁部までの高さ方向の寸法が、前記通気通路の最小幅寸法以下に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通気通路の寸法に影響を与えることなく下方上枠部の見付け方向に沿った寸法を削減することができ、他方の空間側から見た場合にトップヘビーな印象を与えるおそれがなくなる。従って、外観品質が損なわれる事態を抑えた上で通気通路を通じて換気を十分に実施することが可能となる。また、下方上枠部の見付け方向に沿った寸法を削減することで、相対的に上枠の内周側となる見込み面が上方に位置するようになり、同じ外形寸法の枠体に対して開口面積の高さ寸法を大きく確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1である建具を浴室側から見た姿図である。
【
図4】
図1に示した建具の要部拡大縦断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態2である建具を浴室側から見た姿図である。
【
図8】
図5に示した建具の要部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる場合がある。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0010】
(実施の形態1)
図1~
図3は、本発明の実施の形態1である建具を示したものである。ここで例示する建具は、浴室(一方の空間)と脱衣室(他方の空間)との間を仕切るように設けられるもので、枠体10及び障子20を備えている。枠体10は、左右の縦枠11,12及び上枠13、下枠14を四周組して構成したものである。障子20は、長方形状を成すパネル21と、パネル21の四周に装着した左右の縦框22,23及び上框24、下框25とを備えて構成したものである。本実施の形態1では、ヒンジを介して障子20を枠体10に開閉可能に支持させた開き戸として構成してあり、ハンドル26を操作することにより一方の縦框22が浴室側に突出する方向に障子20を開くことが可能である。
【0011】
枠体10を構成する左右の縦枠11,12及び下枠14については、例えば、アルミニウム合金等の金属や樹脂によって成形した単一の押し出し形材としてそれぞれが構成してある。左右の縦枠11,12について、より具体的に説明すると、断面が長方形の中空状を成す縦枠基部11a,12aと、縦枠基部11a,12aにおいて内周側、かつ脱衣室側となる縁部から脱衣室に向けて見込み方向に延在する側方見込み壁部11b,12bと、側方見込み壁部11b,12bから内周側に向けて突出した側方戸当り壁部11c,12cとを有して縦枠11,12が構成してある。
【0012】
これに対して枠体10の上枠13は、
図4に示すように、左右の縦枠11,12の間に上方上枠部13A及び下方上枠部13Bを上下に並設することによって構成してある。上方上枠部13A及び下方上枠部13Bは、縦枠11,12や下枠14と同様、アルミニウム合金等の金属や樹脂によって成形した押し出し形材であり、長手に沿った全長にわたる部分が一様の断面形状を有するように構成してある。上方上枠部13Aは、浴室に臨む状態で配置されるもので、見込み方向に沿った寸法が縦枠11,12の見込み方向に沿った寸法とほぼ同じとなるように構成してある。下方上枠部13Bは、脱衣室に臨む状態で配置されるもので、見込み方向に沿った寸法が上方上枠部13Aよりも短く、ほぼ1/2となるように構成してある。本実施の形態1の上方上枠部13Aでは、上方中空体31、上方見込み壁部32、垂下片(上方案内壁部)33が一体に成形してあり、下方上枠部13Bでは、下方中空体41、戸当り壁部42、バルブシート壁部43が一体に成形してある。
【0013】
上方中空体31は、上方上枠部13Aにおいて浴室側に配置される異形四辺形断面の中空状を成すもので、上壁部31a、外方上縦壁部31b、内方上縦壁部31c、湾曲壁部(上方案内壁部)31dを有している。上壁部31aは、上方中空体31の上面を構成するもので、見込み方向に沿ってほぼ水平に延在している。外方上縦壁部31bは、上壁部31aの浴室側となる縁部から見付け方向に沿ってほぼ鉛直下方に延在している。内方上縦壁部31cは、上壁部31aの脱衣室側となる縁部から見付け方向に沿ってほぼ鉛直下方に延在している。内方上縦壁部31cの延在長さは、外方上縦壁部31bよりも短く構成してある。湾曲壁部31dは、上枠13の長手に沿った軸心を中心Oとする略円弧状の凹面となるもので、外方上縦壁部31bの下縁と内方上縦壁部31cの下縁との間を連続するように設けてある。図示の例では、湾曲壁部31dと外方上縦壁部31bとが、湾曲壁部31dの円弧Cの中心Oを通過する仮想の水平面Pよりも上方において互いに接合するように、湾曲壁部31d及び外方上縦壁部31bが構成してある。湾曲壁部31dにおいて上方中空体31の中空内部には、ビスホール31eが設けてある。
【0014】
上方見込み壁部32は、内方上縦壁部31cから脱衣室側に向けて延在し、延在縁部が脱衣室の天井板1との取付部となるものである。上方見込み壁部32のほぼ中間となる部分には、バルブ支持部32a及びビスホール32bが設けてある。バルブ支持部32aは、換気バルブ34を開閉可能に支持するための凹部であり、下方に向けて開口している。換気バルブ34は、支持軸部34aからフィルム状のバルブ部材34bが径方向に沿って延在したもので、支持軸部34aを介してバルブ支持部32aに回転可能に装着してある。バルブ部材34bの延在縁部において脱衣室側となる部分には、後述する下方上枠部13Bとの間の水密性及び気密性を確保するためのモヘア34cが設けてある。ビスホール32bは、バルブ支持部32aよりも浴室側となる部分において上方に開口するように設けてある。
【0015】
垂下片33は、外方上縦壁部31bと湾曲壁部31dとの接合部から見込み方向に沿ってほぼ鉛直下方に延在した板状を成すものである。垂下片33の延在寸法は、湾曲壁部31dの円弧Cの中心Oを通過する仮想の水平面Pよりも下方となるように設定してある。湾曲壁部31dの円弧Cの中心Oから垂下片33までの最小距離は、曲率半径rよりも大きい。
【0016】
上述の構成を有した上方上枠部13Aは、外方上縦壁部31bの表面が縦枠基部11a,12aの浴室に臨む見付け面とほぼ一致した状態で小口端面を縦枠11,12の見込み面に当接させ、この状態から縦枠11,12を介して2つのビスホール31e,32bにそれぞれネジを螺合することによって左右の縦枠11,12の上方となる部分に架け渡すように固定してある。
【0017】
下方上枠部13Bの下方中空体41は、下方上枠部13Bの主体となるもので、下壁部(障子対向壁部)41a、内方下縦壁部41b、下方案内壁部41c、外方下縦壁部41dを有した略台形断面の中空状を成している。下壁部41aは、下方中空体41の下面を構成し、障子20の外周側となる見込み面に対向するもので、見込み方向に沿ってほぼ水平に延在している。この下壁部41aには、障子用部品装着部41e及びビスホール41fが設けてある。障子用部品装着部41eは、下壁部41aにおいて浴室側となる部分に上方に突出するとともに下面に開口するように構成したものである。本実施の形態1では、障子20を支持するためのピボットヒンジ44が障子20の上框24との間に介在するように障子用部品装着部41eに取り付けてある。ビスホール41fは、下方中空体41の中空内部において障子用部品装着部41eに隣接する位置に設けてある。内方下縦壁部41bは、下方中空体41において脱衣室に臨んで配置されるもので、下壁部41aの脱衣室側となる縁部から見付け方向に沿ってほぼ鉛直上方に延在している。内方下縦壁部41bの延在寸法は、湾曲壁部31dの曲率半径rよりも短い寸法に設定してある。図示の例では、上方上枠部13Aに設けた垂下片33の延在寸法とほぼ同じ寸法となるように内方下縦壁部41bが構成してある。下方案内壁部41cは、内方下縦壁部41bの上縁部から浴室に向けて漸次下方となるように傾斜延在した平板状を成すものである。この下方案内壁部41cは、浴室側となる縁部が下壁部41aの浴室側となる縁部とほぼ同じとなる位置まで延在している。外方下縦壁部41dは、障子用部品装着部41eの上面と下方案内壁部41cの下面との間において見込み方向に延在するもので、障子用部品装着部41eを介して下壁部41aと下方案内壁部41cとの間を連結している。
【0018】
戸当り壁部42は、下壁部41aの脱衣室側となる縁部から見込み方向に沿ってほぼ鉛直下方に延在したもので、脱衣室に臨む見付け面が内方下縦壁部41bと同一の平面上に位置している。戸当り壁部42の下縁において浴室に臨む部分には、障子20の上框24に当接することによって互いの間の水密性及び気密性を確保するためのシール部材45が装着してある。戸当り壁部42の延在長さは、ピボットヒンジ44を介して支持した障子20の上框24に対してシール部材45が当接することができるように設定してある。つまり、戸当り壁部42の延在寸法は、障子20の上框24との関係において設定されるものであり、障子20が共通である場合にほぼ一定となる。
【0019】
バルブシート壁部43は、下方案内壁部41cの脱衣室側となる縁部から見込み方向に沿ってほぼ鉛直上方に延在した後、上縁部が浴室側に向けて屈曲したものである。バルブシート壁部43の延在寸法は、内方下縦壁部41bの延在寸法よりも小さく設定してある。バルブシート壁部43の脱衣室に臨む見付け面は、内方下縦壁部41bと同一の平面上に位置している。
【0020】
上述の構成を有した下方上枠部13Bは、上方上枠部13Aとの間に隙間を確保した状態で小口端面を縦枠11,12の見込み面に当接させ、この状態から縦枠11,12を介してビスホール41fにネジを螺合することによって左右の縦枠11,12の間に架け渡すように固定してある。より具体的に説明すると、下方上枠部13Bは、下方案内壁部41cの脱衣室側となる縁部が湾曲壁部31dの円弧Cの中心Oとほぼ一致し、かつ鉛直下方に垂下する換気バルブ34のモヘア34cがバルブシート壁部43の屈曲部に当接する状態で左右の縦枠11,12の間に配設してある。この状態においては、上方上枠部13Aに設けた垂下片33の下縁が下方上枠部13Bの下壁部41aよりも上方で、下方案内壁部41cの浴室側に位置する縁部よりも下方に位置している。
【0021】
上記のように構成した上枠13では、上方上枠部13Aと下方上枠部13Bとの間に、脱衣室と浴室との間を連通する通気通路2が構成されることになる。すなわち、上方上枠部13Aと下方上枠部13Bとの間には、上方上枠部13Aの上方見込み壁部32と下方上枠部13Bのバルブシート壁部43との間の隙間が脱衣室側の開口2aとなり、上方上枠部13Aの垂下片33と下方上枠部13Bの下壁部41aとの間の隙間が浴室側の開口2bとなるように通気通路2が構成される。この通気通路2には、脱衣室側の開口2aに換気バルブ34が配設された状態にある。従って、脱衣室の圧力が浴室よりも高くない状態においては、自重によって垂下する換気バルブ34が通気通路2の開口2aを閉塞した状態となる。これにより、例えば浴室で発生した蒸気が脱衣室に漏出する事態を招来するおそれはない。
【0022】
一方、浴室に設けられた図示せぬ換気扇を動作させ、浴室の圧力が脱衣室の圧力よりも低くなると、つまり脱衣室の圧力が浴室よりも高くなると、換気バルブ34が自重に抗して浴室側に回転することになる。この結果、脱衣室の空気が浴室に送給されることなり、浴室の換気を行うことが可能となる。ここで、上述の通気通路2においては、上方上枠部13Aの湾曲壁部31dが浴室に向けて漸次下方となるように湾曲し、さらに湾曲壁部31dの下縁部からは下方に向けて垂下片33が突出するように設けてある。従って、通気通路2を通過する空気は、浴室の下方に向けて送給されることになる。これにより、浴室の高所に換気扇が設けられている場合にも、通気通路2から流入される換気用の空気がショートカットしてそのまま浴室外部に排出される事態が招来されるおそれはなく、浴室を十分に換気することが可能となる。
【0023】
しかも、下方上枠部13Bの下方中空体41は、湾曲壁部31dの曲率半径rよりも短い寸法に構成してある。つまり、通気通路2の寸法としては十分に確保してあっても、下方上枠部13Bの下方中空体41において脱衣室に臨む内方下縦壁部41bの見付け方向に沿った寸法が通気通路2の最小幅寸法、図示の例では曲率半径rよりも小さく抑えられた状態となっている。これにより、脱衣室側から見た場合の上枠13の見付け方向に沿った寸法を抑えることができ、看者にトップヘビーな印象を与えるおそれがなくなる。特に、実施の形態1においては、浴室に露出する垂下片33についても下方上枠部13Bの下壁部41aよりも上方となる位置で終端するように構成してある。従って、浴室側から見た場合にも看者にトップヘビーな印象を与えるおそれもない。加えて、垂下片33の下縁が下方案内壁部41cよりも下方に延在しているため、例えば浴室を洗浄する際に上枠13にシャワーの水が掛かったとしても、この水が直接通気通路2を通じて脱衣室に到達するおそれはない。さらに、下方上枠部13Bの見付け方向に沿った寸法を削減することで、相対的に上枠13の内周側となる見込み面が上方に位置するようになる。これにより、同じ外形寸法の枠体10に対して開口の高さ寸法を大きく確保することが可能となり、脱衣室と浴室の間の人の出入りが容易になる等の利点がある。
【0024】
因に、通気通路2を通じて換気を行っている場合に吸気音が生じることがある。この場合には、垂下片33の寸法を適宜変更することで通気通路2の経路長を変更することができるため、吸気音を低減することが可能である。垂下片33の寸法は、その下縁が下方上枠部13Bの下壁部41aよりも上方で、かつ下方案内壁部41cの浴室側に位置する縁部の上面以下となる範囲dで調整することが好ましい。
【0025】
(実施の形態2)
図5~
図7は、本発明の実施の形態2である建具を示したものである。ここで例示する建具は、実施の形態1と同様、浴室(一方の空間)と脱衣室(他方の空間)との間を仕切るように設けられるもので、実施の形態1とは障子及び下方上枠部の構成が異なっている。以下、実施の形態1と異なる構成について主に説明し、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付して詳細説明を省略する場合がある。
【0026】
障子120は、2枚の扉体120A,120Bを折り曲げ可能に連結した、いわゆる折れ戸と称されるものである。扉体120A,120Bは、それぞれ長方形状を成すパネル121と、パネル121の四周に装着した左右の縦框122,123及び上框124、下框125とを備えたもので、隣接する縦框123,123の間が折れ曲げ可能に連結してある。この障子120は、2つの扉体120A,120Bが互いに同一の平面上に位置するように展開した場合に枠体10を閉塞することのできる大きさを有し、一方の扉体120Aがヒンジを介して枠体10に開閉可能に支持してある。他方の扉体120Bには、戸先となる部分にスライドガイド126が回転可能に装着してあるとともに、浴室側及び脱衣室側にそれぞれ把持部127,128が設けてある。すなわち、この障子120は、把持部127,128を介して他方の扉体120Bを操作すると、この扉体120Bの戸先部分が上枠13の延在方向に沿ってスライドするとともに、互い連結した縦框122,122が浴室側に突出するように折り曲げられた状態となって枠体10を開放するが可能となる。
【0027】
上枠13は、左右の縦枠11,12の間に上方上枠部13A及び下方上枠部130Bを上下に並設することによって構成してある。上方上枠部13A及び下方上枠部130Bは、アルミニウム合金等の金属や樹脂によって成形した押し出し形材であり、長手に沿った全長にわたる部分が一様の断面形状を有するように構成してある。上方上枠部13Aは、見込み方向に沿った寸法が縦枠11,12の見込み方向に沿った寸法とほぼ同じとなるように構成してあり、下方上枠部130Bは、見込み方向に沿った寸法が上方上枠部13Aよりも短く、ほぼ1/2となるように構成してある。本実施の形態2の上方上枠部13Aでは、実施の形態1と同様、上方中空体31、上方見込み壁部32、垂下片33が一体に成形してある。下方上枠部130Bでは、下方中空体141、戸当り壁部142、バルブシート壁部143が一体に成形してある。
【0028】
下方上枠部130Bの下方中空体141は、下方上枠部130Bの主体となるもので、下壁部(障子対向壁部)141a、内方下縦壁部141b、下方案内壁部141c、外方下縦壁部141dを有した略台形断面の中空状を成している。下壁部141aは、下方中空体141の下面を構成し、障子120の外周側となる見込み面に対向するもので、見込み方向に沿ってほぼ水平に延在している。この下壁部141aには、ガイドレール141e及びビスホール141fが設けてある。ガイドレール141eは、下壁部141aの下面において浴室側となる部分から下方に向けて突出したもので、上枠13の全長にわたって設けてある。このガイドレール141eには、上述した障子120のスライドガイド126がスライド可能に係合している。ビスホール141fは、下方中空体141の中空内部においてほぼ中間となる位置に設けてある。内方下縦壁部141bは、下方中空体141において脱衣室に臨んで配置されるもので、下壁部141aの脱衣室側となる縁部から見付け方向に沿ってほぼ鉛直上方に延在している。内方下縦壁部141bの延在寸法は、湾曲壁部31dの曲率半径rよりも短い寸法に設定してある。図示の例では、上方上枠部13Aに設けた垂下片33の延在寸法とほぼ同じ寸法となるように内方下縦壁部141bが構成してある。下方案内壁部141cは、内方下縦壁部141bの上縁部から浴室に向けて漸次下方となるように傾斜延在した平板状を成すものである。この下方案内壁部141cは、浴室側となる縁部が下壁部141aの浴室側となる縁部とほぼ同じとなる位置まで延在している。外方下縦壁部141dは、下方案内壁部141cの下面から見込み方向に沿って下方に延在した後、下方に向けて漸次浴室側となるように傾斜延在したもので、下壁部141aの浴室側となる端部に連結している。
【0029】
戸当り壁部142は、下壁部141aの脱衣室側となる縁部から見込み方向に沿ってほぼ鉛直下方に延在したもので、脱衣室に臨む見付け面が内方下縦壁部141bと同一の平面上に位置している。戸当り壁部142の下縁において浴室に臨む部分には、障子120の上框124に当接することによって互いの間の水密性及び気密性を確保するためのシール部材145が装着してある。戸当り壁部142の延在長さは、ピボットヒンジ44を介して支持した障子120の上框124に対してシール部材145が当接することができるように設定してある。つまり、戸当り壁部142の延在寸法は、障子120の上框124との関係において設定されるものであり、障子120が共通である場合にほぼ一定となる。
【0030】
バルブシート壁部143は、下方案内壁部141cの脱衣室側となる縁部から見込み方向に沿ってほぼ鉛直上方に延在した後、上縁部が浴室側に向けて屈曲したものである。バルブシート壁部143の延在寸法は、内方下縦壁部141bの延在寸法よりも小さく設定してある。バルブシート壁部143の脱衣室に臨む見付け面は、内方下縦壁部141bと同一の平面上に位置している。
【0031】
上述の構成を有した下方上枠部130Bは、上方上枠部13Aとの間に隙間を確保した状態で小口端面を縦枠11,12の見込み面に当接させ、この状態から縦枠11,12を介してビスホール141fにネジを螺合することによって左右の縦枠11,12の間に架け渡すように固定してある。より具体的に説明すると、下方上枠部130Bは、下方案内壁部141cの脱衣室側となる縁部が湾曲壁部31dの円弧Cの中心Oとほぼ一致し、かつ鉛直下方に垂下する換気バルブ34のモヘア34cがバルブシート壁部143の屈曲部に当接する状態で左右の縦枠11,12の間に配設してある。この状態においては、上方上枠部13Aに設けた垂下片33の下縁が下方上枠部130Bの下壁部141aよりも上方で、下方案内壁部141cの浴室側に位置する縁部よりも下方に位置している。
【0032】
上記のように構成した上枠13では、上方上枠部13Aと下方上枠部130Bとの間に、脱衣室と浴室との間を連通する通気通路2が構成されることになる。すなわち、上方上枠部13Aと下方上枠部130Bとの間には、上方上枠部13Aの上方見込み壁部32と下方上枠部130Bのバルブシート壁部143との間の隙間が脱衣室側の開口2aとなり、上方上枠部13Aの垂下片33と下方上枠部130Bの下壁部141aとの間の隙間が浴室側の開口2bとなるように通気通路2が構成される。この通気通路2には、脱衣室側の開口2aに換気バルブ34が配設された状態にある。従って、脱衣室の圧力が浴室よりも高くない状態においては、自重によって垂下する換気バルブ34が通気通路2の開口2aを閉塞した状態となる。これにより、例えば浴室で発生した蒸気が脱衣室に漏出する事態を招来するおそれはない。
【0033】
一方、浴室に設けられた図示せぬ換気扇を動作させ、浴室の圧力が脱衣室の圧力よりも低くなると、つまり脱衣室の圧力が浴室よりも高くなると、換気バルブ34が自重に抗して浴室側に回転することになる。この結果、脱衣室の空気が浴室に送給されることなり、浴室の換気を行うことが可能となる。ここで、上述の通気通路2においては、上方上枠部13Aの湾曲壁部31dが浴室に向けて漸次下方となるように湾曲し、さらに湾曲壁部31dの下縁部からは下方に向けて垂下片33が突出するように設けてある。従って、通気通路2を通過する空気は、浴室の下方に向けて送給されることになる。これにより、浴室の高所に換気扇が設けられている場合にも、通気通路2から流入される換気用の空気がショートカットしてそのまま浴室外部に排出される事態が招来されるおそれはなく、浴室を十分に換気することが可能となる。
【0034】
しかも、下方上枠部130Bの下方中空体141は、湾曲壁部31dの曲率半径rよりも短い寸法に構成してある。つまり、通気通路2の寸法としては十分に確保してあっても、下方上枠部130Bの下方中空体141において脱衣室に臨む内方下縦壁部141bの見付け方向に沿った寸法が通気通路2の最小幅寸法、図示の例では曲率半径rよりも小さく抑えられた状態となっている。これにより、脱衣室側から見た場合の上枠13の見付け方向に沿った寸法を抑えることができ、看者にトップヘビーな印象を与えるおそれがなくなる。特に、実施の形態2においては、浴室に露出する垂下片33についても下方上枠部130Bの下壁部141aよりも上方となる位置で終端するように構成してある。従って、浴室側から見た場合にも看者にトップヘビーな印象を与えるおそれもない。加えて、垂下片33の下縁が下方案内壁部141cよりも下方に延在しているため、例えば浴室を洗浄する際に上枠13にシャワーの水が掛かったとしても、この水が直接通気通路2を通じて脱衣室に到達するおそれはない。さらに、下方上枠部130Bの見付け方向に沿った寸法を削減することで、相対的に上枠13の内周側となる見込み面が上方に位置するようになる。これにより、同じ外形寸法の枠体10に対して開口の高さ寸法を大きく確保することが可能となり、脱衣室と浴室の間の人の出入りが容易になる等の利点がある。因に、実施の形態2の下方上枠部130Bには、下方中空体141の下壁部141aにガイドレール141eが下方に突出するように設けてある。しかしながら、ガイドレール141eは、下壁部141aの浴室側であって脱衣室側から見た場合に戸当り壁部142によって覆われる部分に設けられたものであり、脱衣室側から見た際の見付け方向に沿った寸法に影響を与えるものではなく、看者の印象を損なうおそれもない。
【0035】
実施の形態2においても、通気通路2を通じて換気を行っている場合に吸気音が生じることがある。この場合には、垂下片33の寸法を適宜変更することで通気通路2の経路長を変更することができるため、吸気音を低減することが可能である。垂下片33の寸法は、その下縁が下方上枠部130Bの下壁部141aよりも上方で、かつ下方案内壁部141cの浴室側に位置する縁部の上面以下となる範囲dで調整することが好ましい。
【0036】
なお、上述した実施の形態1及び実施の形態2では、いずれも浴室と脱衣室との間に設けられる浴室用の建具を例示しているが、本発明は必ずしもこれに限定されない。また、上方上枠部13Aが湾曲壁部31dを有しているが、上方上枠部13Aが湾曲壁部31dを有している必要はない。さらに、上方上枠部13Aが湾曲壁部31dを有している場合に上述した実施の形態1及び実施の形態2では、下方上枠部13B,130Bの脱衣室に臨む部分において下壁部41a,141aから下方案内壁部41c,141cまでの高さ方向の寸法が、換言すれば、内方下縦壁部41b,141bの見付け方向に沿った寸法が、湾曲壁部31dの曲率半径rよりも短く設定してあるが、本発明は必ずしもこれに限定されず、下方上枠部13B,130Bの脱衣室に臨む部分において下壁部41a,141aから下方案内壁部41c,141cまでの高さ方向の寸法は、通気通路2の最小幅寸法以下に設定されていれば良い。
【0037】
また、上述した実施の形態1及び実施の形態2では、いずれも下壁部41a,141aの下面がほぼ水平に延在しているが、必ずしも水平に延在している必要はない。また、下方上枠部13B,130Bの下方案内壁部41c,141cが浴室に向けて下方となるように傾斜しているが、本発明はこれに限定されず、下方案内壁部が水平方向に沿って延在していても良いし、脱衣室に向けて下方となるように傾斜していても構わない。いずれにおいても脱衣室に臨む部分において障子対向壁部から下方案内壁部まで高さ方向の最大寸法が通気通路の最小幅寸法以下に設定されていれば良い。
【0038】
以上のように、本発明に係る建具は、枠体及び障子を備え、一方の空間と他方の空間との間に設けられる建具であって、前記枠体を構成する上枠は、前記一方の空間に臨む上方上枠部と、前記他方の空間に臨む下方上枠部とを有し、これら上方上枠部及び下方上枠部の間には前記一方の空間と前記他方の空間とを連通する通気通路が設けられ、前記下方上枠部には、前記障子の外周側となる見込み面に対向する障子対向壁部が設けられるとともに、前記通気通路において空気を見込み方向に案内する下方案内壁部が設けられ、前記他方の空間に臨む部分において前記障子対向壁部から前記下方案内壁部までの高さ方向の寸法が、前記通気通路の最小幅寸法以下に設定されていることを特徴としている。
この発明によれば、通気通路の寸法に影響を与えることなく下方上枠部の見付け方向に沿った寸法を削減することができ、他方の空間側から見た場合にトップヘビーな印象を与えるおそれがなくなる。従って、外観品質が損なわれる事態を抑えた上で通気通路を通じて換気を十分に実施することが可能となる。また、下方上枠部の見付け方向に沿った寸法を削減することで、相対的に上枠の内周側となる見込み面が上方に位置するようになり、同じ外形寸法の枠体に対して開口面積の高さ寸法を大きく確保することが可能となる。
【0039】
また本発明は、上述した建具において、前記上方上枠部には、前記通気通路において空気を前記一方の空間に向けて漸次下方に案内する上方案内壁部が設けられ、前記上方案内壁部の下縁は前記障子対向壁部よりも上方、かつ前記下方案内壁部以下となる範囲に位置していることを特徴としている。
この発明によれば、他方の空間から一方の空間に向けて通気通路を通過する空気が上方案内壁部によって下方に案内されることになり、天井等の高所に換気扇が設けられている場合にも、一方の空間に至った空気がショートカットして外部に排出されるおそれがない。これにより、通気通路を通過する空気によって十分に換気することができる利点がある。しかも、上方案内壁部の下縁の位置を障子対向壁部よりも上方、かつ下方案内壁部以下となる範囲に設定しているため、一方の空間側から見た場合にトップヘビーな印象を与えるおそれもない。
【0040】
また本発明は、上述した建具において、前記上方案内壁部は、前記下方案内壁部の一方の空間側に位置する縁部を中心とした円弧状の凹面を構成する湾曲壁部と、前記湾曲壁部の下縁から下方に延在する垂下片とを有し、前記障子対向壁部から前記下方案内壁部までの高さ方向の寸法が、前記湾曲壁部の曲率半径以下に設定されていることを特徴としている。
この発明によれば、湾曲壁部によって通気通路を通過する空気をスムースに下方に案内することができるようになる。
【符号の説明】
【0041】
2 通気通路、10 枠体、13 上枠、13A 上方上枠部、13B,130B 下方上枠部、20,120 障子、31d 湾曲壁部、33 垂下片、41a,141a 下壁部、41b,141b 内方下縦壁部、41c,141c 下方案内壁部、C 円弧、O 中心、r 曲率半径