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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142680
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】水性被覆材
(51)【国際特許分類】
   C09D 143/04 20060101AFI20241003BHJP
   C09D 133/10 20060101ALI20241003BHJP
   C09D 133/08 20060101ALI20241003BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20241003BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C09D143/04
C09D133/10
C09D133/08
C09D183/04
C09D133/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054927
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 千賀
(72)【発明者】
【氏名】北脇 和智
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG031
4J038CG041
4J038CG071
4J038CG121
4J038CH131
4J038DL151
4J038GA03
4J038GA06
4J038GA15
4J038JA17
4J038JA26
4J038KA06
4J038KA08
4J038MA10
4J038NA03
4J038NA11
4J038NA12
4J038PA18
4J038PB05
4J038PC04
(57)【要約】
【課題】常温硬化性に優れ、耐割れ性、さらには耐候性等において優れた性能を発揮することができる水性被覆材を提供する。
【解決手段】本発明の水性被覆材は、樹脂固形分中のシリカ残量比率が1~40重量%、ガラス転移温度が15℃以下であるアクリルシリコン樹脂エマルション(A)、顔料(B)、顔料分散剤(C)、及び、エーテルまたはエステル溶剤(D)を含み、前記エーテルまたはエステル溶剤(D)は、水への溶解度が1g/100gHO超のエーテルまたはエステル溶剤(D1)、及び/または水への溶解度が1g/100gHO以下のエーテルまたはエステル溶剤(D2)を含むことを特徴とする。
【選択図】なし


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂エマルションを含む水性被覆材であって、
樹脂固形分中のシリカ残量比率が1~40重量%、ガラス転移温度が15℃以下であるアクリルシリコン樹脂エマルション(A)、顔料(B)、顔料分散剤(C)、及び、エーテルまたはエステル溶剤(D)を含み、
前記エーテルまたはエステル溶剤(D)は、
水への溶解度が1g/100gHO超のエーテルまたはエステル溶剤(D1)、及び/または水への溶解度が1g/100gHO以下のエーテルまたはエステル溶剤(D2)を含むことを特徴とする水性被覆材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な水性被覆材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物、土木構造物等には、被覆材による表面仕上げが施されている。このような被覆材は、各種色彩や光沢等による美観性を付与するとともに、風雨や直射日光等から基材を保護する役割も担っているため、耐候性において優れた性能を発揮することが求められる。近年では、無公害性や安全性を考慮し、樹脂エマルションをバインダーとする水性被覆材の使用が多くなっている。
【0003】
水性被覆材における耐候性を高める手段の一つとして、バインダーとしてアクリルシリコン樹脂エマルションを採用することが知られている。例えば、特許文献1(特開平8-12930号公報)には、特定のケイ素含有量、酸価、水酸基価を有する樹脂エマルションと、その架橋剤、及び顔料等を含有する水性被覆材について記載されている。
【0004】
ところで、建築物、土木構造物等に適用する水性被覆材は、屋外で塗装作業が行われるため、概ね5~40℃程度の温度範囲で成膜・硬化する性能(常温硬化性)が求められる。しかし、上記特許文献では、このような常温硬化性についての考慮が十分ではなく、常温下で塗装を行った場合、塗膜に割れ等が生じたり、塗膜の耐候性等が不十分となったりするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-12930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、常温硬化性に優れ、耐割れ性、さらには耐候性等において優れた性能を発揮することができる水性被覆材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、特定のシリカ残量比率とガラス転移温度を有するアクリルシリコン樹脂エマルション、顔料、顔料分散剤、及び特定の溶剤を含む水性被覆材に想到し、本発明を完成させるに到った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.樹脂エマルションを含む水性被覆材であって、
樹脂固形分中のシリカ残量比率が1~40重量%、ガラス転移温度が15℃以下であるアクリルシリコン樹脂エマルション(A)、顔料(B)、顔料分散剤(C)、及び、エーテルまたはエステル溶剤(D)を含み、
前記エーテルまたはエステル溶剤(D)は、
水への溶解度が1g/100gHO超のエーテルまたはエステル溶剤(D1)、及び/または水への溶解度が1g/100gHO以下のエーテルまたはエステル溶剤(D2)を含むことを特徴とする水性被覆材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性被覆材は、常温硬化性に優れ、耐割れ性、さらには耐候性等において優れた性能を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明の水性被覆材は、着色塗膜を形成する水性被覆材であって、樹脂固形分中のシリカ残量比率が1~40重量%、ガラス転移温度が15℃以下であるアクリルシリコン樹脂エマルション(A)、顔料(B)、顔料分散剤(C)、及びエーテルまたはエステル溶剤(D)を含むことを特徴とする。
【0012】
一般的に、樹脂エマルションは、ガラス転移温度(以下「Tg」ともいう)を常温以下に設定することにより、常温硬化が可能となる。アクリルシリコン樹脂エマルションも、ガラス転移温度を常温以下に設定することにより、常温硬化が可能となる。このような場合、造膜助剤として作用可能な溶剤の混合は必要ではない。
【0013】
ところが、シリコン成分を多く含むアクリルシリコン樹脂エマルションをバインダーとし、さらに顔料、顔料分散剤を混合した水性被覆材では、樹脂のガラス転移温度を低く設定しても、塗膜に割れ等が生じたり、塗膜の耐候性等が不十分となったりする不具合が生じやすい。このような不具合は、顔料分散剤がシリコン成分の反応を過剰に促すこと等に起因するものと考えられる。
【0014】
本発明は、このような水性被覆材において、上記成分に加え、特定の溶剤を必須成分とするものである。このような特定の構成を備えた本発明の水性被覆材は、耐割れ性、耐候性等において、優れた性能を発揮することができる。また、本発明の水性被覆材は、シリコン成分を高比率で含むバインダーを使用した上で安定した性能を発揮することができるため、石油由来の有機質成分を相対的に削減することができ、脱炭素化にも貢献できる。さらに、本発明の水性被覆材は、その優れた耐候性により、被塗物の長寿命化を図ることができ、トータル的にメンテナンス回数を削減することが可能となり、このような観点からも脱炭素化等に貢献できるものである。
【0015】
本発明の水性被覆材では、樹脂固形分中のシリカ残量比率が1~40重量%、ガラス転移温度が15℃以下であるアクリルシリコン樹脂エマルション(A)(以下「(A)成分」という)をバインダーとして使用する。
【0016】
このような(A)成分としては、樹脂を構成する単量体成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びアルコキシシラン化合物を含むものを使用することができる。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを合わせて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。また、本発明において「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
【0017】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルメタクリレート(Tg:105℃)、エチルメタクリレート(Tg:65℃)、tert-ブチルメタクリレート(Tg:107℃)、iso-ブチルメタクリレート(Tg:53℃)、iso-プロピルメタクリレート(Tg:81℃)、シクロヘキシルメタクリレート(Tg:83℃)、イソボルニルアクリレート(Tg:94℃)、イソボルニルメタクリレート(Tg:155℃)、ジシクロペンタニルアクリレート(Tg:120℃)、ジシクロペンタニルメタクリレート(Tg:175℃)、ジシクロペンテニルアクリレート(Tg:120℃)等のホモポリマーのTgが50℃以上である硬質(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
メチルアクリレート(Tg:8℃)、エチルアクリレート(Tg:-20℃)、プロピルアクリレート(Tg:3℃)、プロピルメタクリレート(Tg:35℃)、iso-プロピルアクリレート(Tg:-3℃)、n-ブチルアクリレート(Tg:-54℃)、n-ブチルメタクリレート(Tg:20℃)、イソブチルアクリレート(Tg:-26℃)、tert-ブチルアクリレート(Tg:43℃)、イソブチルメタクリレート(Tg:48℃)、イソアミルアクリレート(Tg:-45℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(Tg:-70℃)、2-エチルヘキシルメタクリレート(Tg:-10℃)、オクチルアクリレート(Tg:-65℃)、iso-オクチルメタクリレート(Tg:-45℃)、iso-オクチルアクリレート(Tg:-70℃)、シクロヘキシルアクリレート(Tg:15℃)、ラウリルアクリレート(Tg:10℃)、ラウリルメタクリレート(Tg:-65℃)、ステアリルアクリレート(Tg:35℃)、ヘキサデシルアクリレート(Tg:35℃)、ヘキサデシルメタクリレート(Tg:15℃)、ヘキシルアクリレート(Tg:-57℃)、ヘキシルメタクリレート(Tg:-5℃)、テトラデシルアクリレート(Tg:24℃)、テトラデシルメタクリレート(Tg:-72℃)等のホモポリマーのTgが50℃未満である軟質(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0018】
アルコキシシラン化合物としては、例えば、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン等の重合性不飽和二重結合含有シランカップリング剤;
γ-グリシドキシメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシメタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシメタクリロキシプロピルメチルジエトキシシシラン、2-(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;
N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;
γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエートキシシラン等のウレイド基含有シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロアルキル基含有シランカップリング剤;ビス(トリエートキシシリルプロピル)テトラスルファイド等のスルフィド基含有シランカップリング剤;3-イソシアネ-トプロピルトリエートキシシラン等のイソシアネ-ト基含有シランカップリング剤;
等のシランカップリング剤(i)、
【0019】
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-i-ブトキシシラン、テトラ-t-ブトキシシラン、テトラアセトキシシラン等の4官能アルコキシシラン類;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン類;
あるいは、これら4官能アルコキシシラン類またはアルキルアルコキシシラン類のアルコキシル基のうち少なくとも一部が、ポリオキシアルキレン基含有化合物、フッ素含有化合物等によって変性されてなるアルコキシシラン変性物;
等のアルコキシシラン類(ii)等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0020】
(A)成分は、樹脂構成成分として上記以外の単量体(その他の単量体)を含むものであってもよい。このようなその他の単量体としては、例えば、
アクリル酸(Tg:106℃)、メタクリル酸(Tg:185℃)、イタコン酸(Tg:100℃)、マレイン酸(Tg:130℃)等のカルボキシル基含有単量体;
スチレン(Tg:100℃)、α-メチルスチレン(Tg:168℃)等の芳香族単量体;
アクロレイン(Tg:60℃)、ダイアセトンアクリルアミド(Tg:65℃)等のカルボニル基含有単量体;
2-ヒドロキシエチルアクリレート(Tg:-15℃)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(Tg:55℃)、2-ヒドロキシブチルアクリレート(Tg:-7℃)、2-ヒドロキシブチルメタクリレート(Tg:26℃)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(Tg:-80℃)等の水酸基含有単量体;
N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート(Tg:18℃)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(Tg:18℃)、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート(Tg:20℃)等のアミノ基含有単量体;
アクリルアミド(Tg:179℃)、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(Tg:134℃)等のアミド基含有単量体;
アクリロニトリル(Tg:125℃)等のニトリル基含有単量体;
グリシジルメタクリレート(Tg:46℃)等のエポキシ基含有単量体;
2-イソプロペニル-2-オキサゾリン(Tg:100℃)のオキサゾリン基含有単量体;
2-[2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール(Tg:100℃)等のエチレン性不飽和二重結合含有紫外線吸収剤;
4-メタクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン(Tg:130℃)等のエチレン性不飽和二重結合含有光安定剤;
その他、スルホン酸含有ビニル単量体、酸無水物、塩素含有単量体、フッ素含有単量体、アルキレングリコールモノアリルエーテル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルエーテル、エチレン、プロピレン、イソブチレン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0021】
本発明では、(A)成分を構成する上記単量体として、生物由来の資源から得られた単量体、すなわちバイオマス系単量体を用いることができる。このようなバイオマス系単量体の導入により、(A)成分ひいては水性被覆材のバイオマス度を高め、石油由来化合物の使用量削減化等を図ることができる。このような材料の使用は、脱炭素化にも貢献できるものである。バイオマス系単量体としては、例えば、生物由来のアルコール、有機酸、炭化水素等を用いて製造された単量体等が使用できる。
【0022】
(A)成分は、上述の樹脂構成成分を含む単量体群を重合することにより製造することができる。重合方法としては公知の方法を採用すればよく、通常の乳化重合の他、ソープフリー乳化重合、フィード乳化重合、シード乳化重合、多段階乳化重合等を採用することもできる。多段階乳化重合では、2段または3段以上の乳化重合法等によって製造することができる。(A)成分の重合時には、例えば、乳化剤、開始剤、分散剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、連鎖移動剤、pH調整剤等を使用することができる。
【0023】
このうち乳化剤としては、乳化重合に使用可能な各種界面活性剤が使用でき、これらは重合性不飽和二重結合を有する反応性タイプ(反応性界面活性剤)であってもよい。乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等をそれぞれ単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明における(A)成分は、樹脂固形分中のシリカ残量比率が1~40重量%であり、好ましくは5~35重量%、より好ましくは10~30重量%である。(A)成分のシリカ残量比率が上記範囲内であることにより、シリコン成分を多く含むこととなり、耐割れ性等の物性を確保しつつ、優れた耐候性を発揮することができる。シリカ残量比率が上記下限値を下回る場合は、耐候性等において十分な物性が得られ難くなり、シリカ残量比率が上記上限値を上回る場合は、耐割れ性等が不十分となり、耐候性においても不利となりやすい。
【0025】
なお、シリカ残量比率とは、Si-O結合をもつ成分を900℃で焼成した際に、シリカ(SiO)となって残る重量分の比率である。一般に、アルコキシシランは、水と反応して加水分解反応が起こりシラノールとなり、さらにシラノールどうしやシラノールとアルコキシにより縮合反応を起こす性質を持っている。この反応を究極まで行うと、シリカ(SiO)となる。これらの反応は一般式、
RO(Si(OR)O)R+(n+1)HO→nSiO+(2n+2)ROH
という反応式で表される。シリカ残量比率は、この反応式をもとに残るシリカ成分の量を換算したものである。
【0026】
(A)成分においては、上記シリカ残量比率を満たすように、樹脂構成成分におけるアルコキシシラン化合物の種類及び比率を設定することができる。(A)成分におけるアルコキシシラン化合物については、例えば、(1)シランカップリング剤(i)を含む態様、(2)アルコキシシラン類(ii)を含む態様、(3)シランカップリング剤(i)及びアルコキシシラン類(ii)を含む態様、等が挙げられる。このうち、上記(2)または(3)の態様は、シリコン成分の高比率化等の点で好適である。
【0027】
(A)成分のガラス転移温度(Tg)は、15℃以下であり、好ましくは-50~10℃、より好ましくは-40~5℃、さらに好ましくは-35~0℃、特に好ましくは-30~-5℃である。(A)成分のTgが上記範囲内であることにより、耐割れ性、さらには耐候性、耐汚染性等の点で好適である。Tgが上記上限値を上回る場合は、耐割れ性等において十分な物性が得られ難くなる。なお、ガラス転移温度は、Foxの計算式により求めることができる。但し、本発明のガラス転移温度の算出において、アルコキシシラン化合物は除外する。
【0028】
(A)成分においては、上記ガラス転移温度を満たすように、樹脂構成成分における(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の単量体の種類及び比率を設定することができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、上述の硬質(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び軟質(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが望ましい。このような態様によれば、樹脂のTgを上記範囲内に設定しやすく、塗膜の耐候性、強度等の点でも有利となる。
【0029】
(A)成分の平均粒子径は、好ましくは300nm以下、より好ましくは20~250nm、さらに好ましくは50~200nmである。なお、ここに言う平均粒子径は、動的光散乱法により測定される値である。
【0030】
顔料(B)(以下「(B)成分」ともいう)は、発色性、隠蔽性、光沢性、美観性、強度等の少なくとも一つ以上に寄与する成分である。(B)成分としては、例えば、着色顔料(B1)(以下「(B1)成分」ともいう)、体質顔料(B2)(以下「(B2)成分」ともいう)等が使用できる。
【0031】
着色顔料(B1)としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、鉄‐マンガン複合酸化物、鉄‐銅‐マンガン複合酸化物、鉄‐クロム複合酸化物、鉄‐クロム‐コバルト複合酸化物、銅‐クロム複合酸化物、銅‐マンガン‐クロム複合酸化物、銅-マグネシウム複合酸化物、ビスマス-マンガン複合酸化物、弁柄、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、アルミニウム顔料、パール顔料等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。(B1)成分の平均粒子径は、好ましくは2μm以下、より好ましくは0.01~1μmである。なお、顔料(B)の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される値である。
【0032】
(B1)成分の含有量は、(A)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは250重量部以下、より好ましくは5~200重量部、さらに好ましくは10~150重量部である。(B1)成分の含有量がこのような範囲内であれば、塗膜の発色性、隠蔽性、美観性等の点で好適であり、本発明の効果発現の点でも有利である。
【0033】
体質顔料(B2)としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、カオリン、クレー、珪酸アルミニウム、焼成クレー、焼成カオリン、陶土、チャイナクレー、珪藻土、含水微粉珪酸、シリカゲル、ゼオライト、硫酸ナトリウム、アロフェン、タルク、マイカ、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、水酸化アルミニウム、多孔質炭酸カルシウム、珪質頁岩、バーミキュライト、パーライト、大谷石粉、活性白土、活性炭、シラスバルーン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。体質顔料の平均粒子径は、好ましくは0.1~100μm、より好ましくは0.3~50μmである。
【0034】
(B2)成分の含有量は、(A)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは400重量部以下、より好ましくは10~350重量部、さらに好ましくは20~300重量部である。(B2)成分の含有量がこのような範囲内であれば、塗膜の強度、美観性等の点で好適であり、本発明の効果発現の点でも有利である。
【0035】
顔料分散剤(C)(以下「(C)成分」ともいう)は、上記(B)成分の分散安定化、性能発現化等に寄与する成分である。
【0036】
(C)成分としては、市販品または公知のものの1種または2種以上を使用することができ、例えば、スチレン-マレイン酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等を樹脂骨格とするものを使用することができる。
【0037】
本発明では、(C)成分としては、酸基及び/または塩基性基を有する顔料分散剤が好適である。このような顔料分散剤は、(B)成分の分散安定性等を高めることができる。しかも、本発明では、このような顔料分散剤を使用した場合であっても、耐割れ性、耐候性等において、優れた性能を発揮することができる。
【0038】
酸基としては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。また、塩基性基としては、例えば、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基等が挙げられる。(C)成分は、これらの酸基や塩基性基を1種または2種以上有することができる。(C)成分の好適な一例として、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン-マレイン酸共重合体樹脂等のポリカルボン酸型分散剤;リグニンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸型分散剤;酸価及び/またはアミン価を有する高分子分散剤等が挙げられる。
【0039】
(C)成分の含有量は、(A)成分の固形分100重量部に対し、固形分換算で好ましくは0.01~20重量部、より好ましくは0.1~10重量部である。
【0040】
本発明の水性被覆材は、上記成分に加え、エーテルまたはエステル溶剤(D)(以下「(D)成分」ともいう)を含む。(D)成分のうち、エーテル溶剤は分子中にエーテル結合を有する溶剤であり、エステル溶剤は分子中にエステル結合を有する溶剤である。このような(D)成分を含むことにより、本発明の水性被覆材は、耐割れ性、耐候性等において、優れた性能を発揮することができる。本発明では、特に、水への溶解度が1g/100gHO超のエーテルまたはエステル溶剤(D1)(以下「(D1)成分」ともいう)と、水への溶解度が1g/100gHO以下のエーテルまたはエステル溶剤(D2)(以下「(D2)成分」ともいう)とを併用することが望ましい。これにより、本発明の効果発現の点でよりいっそう好適であり、水性被覆材が艶有りタイプである場合は、光沢性等を高めることもできる。なお、本発明における水への溶解度は、水100gに溶解し得る最大質量(g)のことである。測定温度は20℃である。
【0041】
(D1)成分としては、水への溶解度が上記範囲内のエーテル溶剤またはエステル溶剤が使用でき、具体的な化合物としては、例えば、
エチレングリコールモノメチルエーテル(水への溶解度∞、沸点125℃)、
エチレングリコールモノエチルエーテル(水への溶解度∞、沸点135℃)、
エチレングリコールモノプロピルエーテル(水への溶解度∞、沸点150℃)、
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(水への溶解度∞、沸点143℃)、
エチレングリコールモノブチルエーテル(水への溶解度∞、沸点171℃)、
エチレングリコールモノイソブチルエーテル(水への溶解度∞、沸点161℃)、
エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル(水への溶解度∞、沸点153℃)、
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(水への溶解度∞、沸点145℃)、
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(水への溶解度∞、沸点156℃)、
エチレングリコールジメチルエーテル(水への溶解度∞、沸点85℃)、
ジエチレングリコールモノメチルエーテル(水への溶解度∞、沸点194℃)、
ジエチレングリコールモノエチルエーテル(水への溶解度∞、沸点202℃)、
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(水への溶解度∞、沸点230℃)、
ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(水への溶解度∞、沸点220℃)、
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(水への溶解度∞、沸点217℃)、
ジエチレングリコールジメチルエーテル(水への溶解度∞、沸点162℃)、
ジエチレングリコールジエチルエーテル(水への溶解度∞、沸点189℃)、
トリエチレングリコールモノメチルエーテル(水への溶解度∞、沸点249℃)、
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(水への溶解度∞、沸点271℃)、
トリエチレングリコールモノエチルエーテル(水への溶解度∞、沸点255℃)、
プロピレングリコールモノメチルエーテル(水への溶解度∞、沸点120℃)、
プロピレングリコールモノエチルエーテル(水への溶解度∞、沸点133℃)、
プロピレングリールモノプロピルエーテル(水への溶解度∞、沸点150℃)、
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(水への溶解度∞、沸点190℃)、
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(水への溶解度∞、沸点242℃)、
ブチレングリコールモノメチルエーテル(水への溶解度∞、沸点161℃)、
ジプロピレングリコールジメチルエーテル(水への溶解度53g/100gHO、沸点175℃)、
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(水への溶解度23g/100gHO、沸点156℃)、
エチレングリコールジエチルエーテル(水への溶解度20g/100gHO、沸点121℃)、
ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(水への溶解度19g/100gHO、沸点209℃)、
ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(水への溶解度19g/100gHO、沸点212℃)、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(水への溶解度16g/100gHO、沸点146℃)、
プロピレングリコールジアセテート(水への溶解度8g/100gHO、沸点161℃)、
ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(水への溶解度6.5g/100gHO、沸点247℃)、
プロピレングリコールモノブチルエーテル(水への溶解度6g/100gHO、沸点170℃)、
ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(水への溶解度5g/100gHO、沸点229℃)、
ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(水への溶解度3.4g/100gHO、沸点283℃)、
トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(水への溶解度3g/100gHO、沸点274℃)、
エチレングリコールモノフェニルエーテル(水への溶解度2.7g/100gHO、沸点245℃)、
エチレングリコールモノフェニルエーテル(水への溶解度2.6g/100gHO、沸点245℃)、
ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(水への溶解度1.7g/100gHO、沸点258℃)、
エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(水への溶解度1.1g/100gHO、沸点188℃)、
等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0042】
(D1)成分の水への溶解度は1g/100gHO超であり、好ましくは2g/100gHO以上、より好ましくは5g/100gHO以上、さらに好ましくは10g/100gHO以上、特に好ましくは∞である。また、(D1)成分の沸点は、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは220℃以上である。このような物性値を満たす(D1)成分は、本発明の効果発現の点で好適である。
【0043】
(D2)成分としては、水への溶解度が上記範囲内のエーテル溶剤またはエステル溶剤が使用でき、具体的な化合物としては、例えば、
プロピレングリコールフェニルエーテル(水への溶解度1g/100gHO、沸点243℃)、
エチレングリコールモノヘキシルエーテル(水への溶解度0.99g/100gHO、沸点208℃)、
ジエチレングリコールジブチルエーテル(水への溶解度0.3g/100gHO、沸点255℃)、
ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(水への溶解度0.3g/100gHO、沸点272℃)、
エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(水への溶解度0.2g/100gHO、沸点229℃)、
エチレングリコールジブチルエーテル(水への溶解度0.2g/100gHO、沸点203℃)、
2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(水への溶解度0.09g/100gHO、沸点255℃)、
2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート(水への溶解度0.04g/100gHO、沸点282℃)
等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0044】
(D2)成分の水への溶解度は1g/100gHO未満であり、好ましくは0.5g/100gHO以下、より好ましくは0.1g/100gHO以下である。また、(D2)成分の沸点は、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上、さらに好ましくは250℃以上である。このような物性値を満たす(D2)成分は、本発明の効果発現の点で好適である。
【0045】
(D1)成分の含有量は、(A)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは0.5~30重量部、より好ましくは1~20重量部である。また、(D2)成分の含有量は、(A)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは1~40重量部、より好ましくは2~30重量部である。(D1)成分、(D2)成分の含有量がこのような範囲内であれば、常温硬化性、耐割れ性、さらには耐候性等において、よりいっそう優れた性能を発揮することができる。
【0046】
本発明において、(D1)成分と(D2)成分の両方を用いる場合、(D)成分と(D2)成分との重量比率((D1):(D2))は、好ましくは10:90~80:20であり、より好ましくは15:85~60:40、さらに好ましくは20:80~45:55である。本発明では、このような比率で両成分を併用することによって、上記効果を十分に高めることができる。
【0047】
本発明の水性被覆材では、上述の成分の他に、各種添加剤等を混合することもできる。このような添加剤としては、例えば、粘性調整剤、レベリング剤、カップリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、消泡剤、吸着剤、脱臭剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒、架橋剤、溶剤、水等が挙げられる。これらは、必要に応じ、1種または2種以上使用できる。
【0048】
本発明の水性被覆材は、上述の(A)~(D)成分、及び必要に応じ各種添加剤を常法により均一に混合することによって製造することができる。
【0049】
本発明の水性被覆材は、例えば、建築物や土木構築物等の被塗面に対する表面仕上げ等に好ましく適用できる。被塗面を構成する基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、磁器タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板、セメント板、ALC板、サイディング板、石膏ボード、合板、押出成形板、鋼板、プラスチック板等が挙げられる。これら基材の表面は、何らかの表面処理(例えば、パテ、シーラー、サーフェーサー、フィラー等による処理)が施されたものでもよく、既に塗膜が形成されたもの(例えば、旧塗膜を有するもの)等であってもよい。
【0050】
本発明被覆材を塗装する際には、例えば、スプレー、ローラー、刷毛等の各種塗装器具を使用することができる。このうち、ローラーとしては、例えば、短毛、中毛、または長毛の繊維質ローラー(ウールローラー等)が使用できる。
【0051】
塗装の際には、水を用いて希釈することも可能である。水の混合量は、塗装器具の種類、被塗面の状態、塗装時の温度等を勘案して適宜設定すればよいが、水性被覆材全体に対し、好ましくは0~20重量%である。
【0052】
本発明水性被覆材の塗付け量は、好ましくは0.05~1kg/m、より好ましくは0.1~0.8kg/m、さらに好ましくは0.15~0.6kg/mである。このような塗付け量で水性被覆材の塗装を行うことにより、美観性、耐候性等に十分に優れた塗膜を形成することができる。
【0053】
本発明水性被覆材は、常温硬化形水性被覆材として使用できる。そのため、本発明水性被覆材の塗装ないし塗装後の乾燥は、常温(好ましくは5~40℃)の環境下にて行うことができる。但し、必要に応じ加熱することも可能である。乾燥時間は、好ましくは常温で0.5~4時間程度である。塗り回数は、1回または2回以上(好ましくは1~2回)とすることができる。塗り回数が2回以上の場合は、合計の塗付け量が上記範囲内とすることが望ましい。
【実施例0054】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にするが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0055】
(水性被覆材の製造)
実施例における水性被覆材の製造には、以下の原料を用いた。
・樹脂1:アクリルシリコン樹脂エマルション(メチルメタクリレート-シクロヘキシルメタクリレート-n-ブチルアクリレート-2-エチルヘキシルアクリレート-シランカップリング剤-アルコキシシラン類を主要成分とする乳化重合物、ガラス転移温度4℃、樹脂固形分中のシリカ残量比率5重量%、固形分40重量%)
・樹脂2:アクリルシリコン樹脂エマルション(シクロヘキシルメタクリレート-2-エチルヘキシルアクリレート-シランカップリング剤-アルコキシシラン類を主要成分とする乳化重合物、ガラス転移温度-12℃、樹脂固形分中のシリカ残量比率15重量%、固形分40重量%)
・樹脂3:アクリルシリコン樹脂エマルション(シクロヘキシルメタクリレート-2-エチルヘキシルアクリレート-シランカップリング剤-アルコキシシラン類を主要成分とする乳化重合物、ガラス転移温度-12℃、樹脂固形分中のシリカ残量比率20重量%、固形分40重量%)
・着色顔料1:酸化チタン(平均粒子径0.3μm)
・顔料分散剤1:ポリカルボン酸型分散剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩の水溶液、固形分30重量%)
・溶剤1:エーテル溶剤(ジエチレングリコールモノブチルエーテル(水への溶解度∞、沸点230℃)
・溶剤2:エーテル溶剤(トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(水への溶解度∞、沸点242℃)
・溶剤3:エステル溶剤(2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、水への溶解度0.09g/100gHO、沸点255℃)
・溶剤4:エステル溶剤(2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、水への溶解度0.04g/100gHO、沸点282℃)
・増粘剤1:セルロース系増粘剤
・増粘剤2:ポリウレタン系会合性増粘剤
・消泡剤1:鉱物油系消泡剤
・消泡剤2:シリコーン系消泡剤
【0056】
○水性被覆材1
水27重量部に対し、増粘剤1を0.4重量部、消泡剤1を0.1重量部、顔料分散剤1を2.5重量部、着色顔料1を70重量部混合・撹拌することにより、着色顔料分散液を製造した。
次いで、この着色顔料分散液100重量部に対し、樹脂1を250重量部(固形分換算100重量部)、溶剤1を4重量部、溶剤3を11重量部、増粘剤2を2重量部、消泡剤2を0.2重量部混合・撹拌することにより、水性被覆材1を製造した。
【0057】
○水性被覆材2
実施例1と同様の着色顔料分散液100重量部に対し、樹脂2を250重量部(固形分換算100重量部)、溶剤1を4重量部、溶剤3を11重量部、増粘剤2を2重量部、消泡剤2を0.2重量部混合・撹拌することにより、水性被覆材2を製造した。
【0058】
○水性被覆材3
実施例1と同様の着色顔料分散液100重量部に対し、樹脂2を250重量部(固形分換算100重量部)、溶剤1を8重量部、溶剤3を11重量部、増粘剤2を2重量部、消泡剤2を0.2重量部混合・撹拌することにより、水性被覆材3を製造した。
【0059】
○水性被覆材4
実施例1と同様の着色顔料分散液100重量部に対し、樹脂2を250重量部(固形分換算100重量部)、溶剤1を8重量部、溶剤3を19重量部、増粘剤2を2重量部、消泡剤2を0.2重量部混合・撹拌することにより、水性被覆材4を製造した。
【0060】
○水性被覆材5
実施例1と同様の着色顔料分散液100重量部に対し、樹脂3を250重量部(固形分換算100重量部)、溶剤1を8重量部、溶剤3を11重量部、増粘剤2を2重量部、消泡剤2を0.2重量部混合・撹拌することにより、水性被覆材5を製造した。
【0061】
○水性被覆材6
実施例1と同様の着色顔料分散液100重量部に対し、樹脂2を250重量部(固形分換算100重量部)、溶剤2を8重量部、溶剤3を11重量部、増粘剤2を2重量部、消泡剤2を0.2重量部混合・撹拌することにより、水性被覆材6を製造した。
【0062】
○水性被覆材7
実施例1と同様の着色顔料分散液100重量部に対し、樹脂2を250重量部(固形分換算100重量部)、溶剤2を8重量部、溶剤4を11重量部、増粘剤2を2重量部、消泡剤2を0.2重量部混合・撹拌することにより、水性被覆材7を製造した。
【0063】
○水性被覆材8
実施例1と同様の着色顔料分散液100重量部に対し、樹脂2を250重量部(固形分換算100重量部)、溶剤3を19重量部、増粘剤2を2重量部、消泡剤2を0.2重量部混合・撹拌することにより、水性被覆材8を製造した。
【0064】
○水性被覆材9
実施例1と同様の着色顔料分散液100重量部に対し、樹脂2を250重量部(固形分換算100重量部)、溶剤1を19重量部、増粘剤2を2重量部、消泡剤2を0.2重量部混合・撹拌することにより、水性被覆材9を製造した。
【0065】
○水性被覆材10
実施例1と同様の着色顔料分散液100重量部に対し、樹脂2を250重量部(固形分換算100重量部)、増粘剤2を2重量部、消泡剤2を0.2重量部混合・撹拌することにより、水性被覆材10を製造した。
【0066】
○水性被覆材11
樹脂2を250重量部(固形分換算100重量部)、増粘剤2を2重量部、消泡剤2を0.2重量部混合・撹拌することにより、水性被覆材11を製造した。
【0067】
(試験方法)
各水性被覆材について、以下の方法で試験を行った。
【0068】
○試験1
ガラス板の片面に、すきま150μmのフィルムアプリケータを用いて各水性被覆材を塗り、気温0℃の恒温器内で塗面を水平に置いて2時間乾燥したときの塗膜外観を観察した。評価基準は、ひび割れが認められなかったものを「A」、僅かにひび割れが認められたものを「B」、明らかにひび割れた認められたものを「C」とした。
【0069】
○試験2
ガラス板の片面に、すきま150μmのフィルムアプリケータを用いて各水性被覆材を塗り、塗面を水平に置いて標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で48時間乾燥したときの20度鏡面光沢度(測定角度20度)を測定した。評価基準は、20度鏡面光沢度43以上のものを「A」、40超43以下のものを「B」、40以下のものを「C」とした。
【0070】
○試験3
ガラス板の片面に、すきま150μmのフィルムアプリケータを用いて各水性被覆材を塗り、塗面を水平に置いて標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で48時間乾燥したときの60度鏡面光沢度(測定角度60度)を測定した。評価基準は、60度鏡面光沢度78以上のものを「A」、75超78以下のものを「B」、75以下のものを「C」とした。
【0071】
○試験4
予めエポキシ樹脂エマルション系シーラーが塗装されたスレート板に対し、各水性被覆材をスプレーにて塗付け量0.3kg/m塗付し、標準状態で14日間乾燥させた。得られた試験体について、促進耐候性試験機(キセノンウェザーメーター)で1400時間曝露を行った後、JIS K5600-8-6の方法により白亜化の程度を評価した。評価基準は、白亜化が認められなかったものを「A」、白亜化の等級が1~2であったものを「B」、白亜化の等級が3以上であったものを「C」とした。
【0072】
(試験結果)
試験結果を表1に示す。実施例1~9(水性被覆材1~9)は、いずれの試験でも良好な結果となり、耐割れ性、光沢性、及び耐候性に優れるものであった。比較例1(水性被覆材10)は、試験1~3において不十分な結果であったため、試験4は行っていない。比較例2(水性被覆材11)は、顔料等を含まないもので、本発明の規定外であるため、試験2~4は行っていない。
【0073】
【表1】