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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142681
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】水性被覆材
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20241003BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241003BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054928
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】芝 和樹
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB061
4J038DB071
4J038DB261
4J038DB281
4J038GA06
4J038GA07
4J038GA09
4J038JA39
4J038JA40
4J038JA41
4J038JA42
4J038JB02
4J038JB04
4J038JB05
4J038JB07
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038MA08
4J038NA23
4J038NA25
4J038PA18
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】本発明は、ポットライフと速硬性の両方に優れた水性被覆材を提供する。
【解決手段】本発明の水性被覆材は、エポキシ樹脂とポリアミン化合物とを含む水性被覆材であって、さらに、3級アミン化合物及びジカルボン酸を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性エポキシ樹脂とポリアミン化合物とを含む水性被覆材であって、
前記ポリアミン化合物が、1級アミン及び/または2級アミンを含むポリアミン化合物であり、
さらに、3級アミン化合物(但し、前記ポリアミン化合物を除く)及びジカルボン酸を含むことを特徴とする水性被覆材。
【請求項2】
水性エポキシ樹脂を含む主剤と、ポリアミン化合物を含む硬化剤とを含む2液反応硬化型の水性被覆材であって、
前記ポリアミン化合物が、1級アミン及び/または2級アミンを含むポリアミン化合物であり、
さらに、3級アミン化合物(但し、前記ポリアミン化合物を除く)及びジカルボン酸を含むことを特徴とする水性被覆材。
【請求項3】
前記3級アミン化合物が、芳香族3級アミン化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水性被覆材。
【請求項4】
前記ジカルボン酸が、直鎖状ジカルボン酸であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水性被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な水性被覆材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅、工場、倉庫、スポーツ施設等の建築物の床面や屋上、あるいは、道路、歩道、歩道橋、プラットホーム、公園、広場、庭等の屋外床面に対し、被覆材による塗装を施し、美観性等を付与することが行われている。
このような床面の塗装には、一般に、塗膜強度を考慮し、エポキシ塗料等の反応硬化型の被覆材が用いられている。
このような被覆材においては、従来、溶剤系のものが主流であったが、近年、健康被害の低減や安全性の向上、大気環境汚染を低減する目的で、溶剤系から水性系への転換が図られつつある。
【0003】
例えば、水性のエポキシ被覆材として、特許文献1では、骨材と、自己乳化型常温硬化性エポキシ樹脂と親水性ポリアミンからなる舗装化粧材組成物が記載されている。特許文献1のような舗装化粧材組成物を施工した場合、エポキシ-アミンの反応により、初期の諸性能を保持することができる(段落0018記載。)。
【0004】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-48856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような舗装化粧材組成物は、エポキシとアミンを混合し、施工を行うものであり、ポットライフの時間内に施工する必要がある(段落0019記載。)が、ポットライフについては、十分には考慮されていない。即ち、特許文献1では、エポキシとアミンを混合した時のポットライフが短い場合があり、塗装作業性に支障をきたすおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討した結果、水性エポキシ樹脂とポリアミン化合物に加え、3級アミン化合物及びジカルボン酸を含む水性被覆材が、ポットライフと速硬性の両方に優れていることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の特徴を有するものである。
1.水性エポキシ樹脂とポリアミン化合物とを含む水性被覆材であって、
前記ポリアミン化合物が、1級アミン及び/または2級アミンを含むポリアミン化合物であり、
さらに、3級アミン化合物(但し、前記ポリアミン化合物を除く)及びジカルボン酸を含むことを特徴とする水性被覆材。
2.水性エポキシ樹脂を含む主剤と、ポリアミン化合物を含む硬化剤とを含む2液反応硬化型の水性被覆材であって、
前記ポリアミン化合物が、1級アミン及び/または2級アミンを含むポリアミン化合物であり、
さらに、3級アミン化合物(但し、前記ポリアミン化合物を除く)及びジカルボン酸を含むことを特徴とする水性被覆材。
3.前記3級アミン化合物が、芳香族3級アミン化合物であることを特徴とする1.または2.に記載の水性被覆材。
4.前記ジカルボン酸が、直鎖状ジカルボン酸であることを特徴とする1.または2.に記載の水性被覆材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性被覆材は、ポットライフと速硬性の両方に優れている。本発明の水性被覆材は、床用の水性被覆材として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明の水性被覆材は、エポキシ樹脂とポリアミン化合物とを含む水性被覆材であって、さらに、3級アミン化合物及びジカルボン酸を含むことを特徴とする。
本発明は、3級アミン化合物及びジカルボン酸の両方を含むことによって、ポットライフと速硬性の両方に優れた水性被覆材を得ることができる。
【0012】
本発明の水性エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂等、あるいはこれらをポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等で変性したもの等が挙げられ、これらのうち水溶型、水分散型等、また、液状、固形状等を用いることができる。本発明では、特に水分散型のエポキシ樹脂が好ましく用いられる。水分散型のエポキシ樹脂を用いることにより、ポットライフと速硬性の両方に優れた水性被覆材を得ることができる。
【0013】
本発明の水性エポキシ樹脂としては、エポキシ当量が、250g/eq以上1000g/eq以下(好ましくは300g/eq以上800g/eq以下、さらに好ましくは350g/eq以上700g/eq以下)の水性エポキシ樹脂を含むことが好ましい。このような水性エポキシ樹脂を含むことにより、ポットライフと初期硬化性の両立が実現可能となる。
本発明の水性エポキシ樹脂は、さらに、エポキシ当量が250g/eq未満(好ましくは100g/eq以上230g/eq以下)の水性エポキシ樹脂を、主剤の樹脂全量(固形分)に対し50重量%未満(好ましくは10重量%以上40重量%以下)の割合で含むことが好ましい。
特に、エポキシ当量が250g/eq以上1000g/eq以下の水性エポキシ樹脂が、水性エポキシ樹脂全量(固形分)に対し、好ましくは50重量%以上100重量%以下(より好ましくは60重量%以上90重量%以下)、エポキシ当量が250g/eq未満の水性エポキシ樹脂が、水性エポキシ樹脂全量(固形分)に対し、好ましくは0重量%以上50重量%未満(より好ましくは10重量%以上40重量%以下)の場合、特にポットライフと速硬性の両方に優れた水性被覆材を得ることができる。
また、エポキシ当量が250g/eq以上1000g/eq以下の水性エポキシ樹脂は、固形状の水性エポキシ樹脂であることが好ましく、エポキシ当量が250g/eq未満の水性エポキシ樹脂は、液状の水性エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0014】
本発明では、水性エポキシ樹脂の分子量が、300以上2000以下(好ましくは400以上1800以下、さらに好ましくは500以上1500以下)であることが好ましい。このような範囲であることにより、特にポットライフと速硬性の両方に優れた水性被覆材を得ることができる。
特に、エポキシ当量が250g/eq以上1000g/eq以下の水性エポキシ樹脂は、分子量が、500以上2000以下(好ましくは700以上1800以下、さらに好ましくは800以上1500以下)であることが好ましい。また、エポキシ当量が250g/eq未満の水性エポキシ樹脂は、分子量が、300以上1500以下(好ましくは400以上1000以下)であることが好ましい。
【0015】
本発明のアミンについて、1級アミン化合物は下記構造式(1)の構造を有する化合物であり、2級アミン化合物は下記構造式(2)の構造を有する化合物であり、本発明のポリアミン化合物は、下記構造式(1)及び/または下記構造式(2)の構造を有する化合物である。
また、3級アミン化合物は下記構造式(3)の構造を有する化合物である。本発明の3級アミン化合物は、下記構造式(3)の構造を有する化合物である。
(1)R-NH
(2)R-NH-R、
(3)R-N(-R)
(Rは炭素数1以上の有機セグメントであり、同じでも異なっていても良い。)
【0016】
本発明のポリアミン化合物としては、上記構造式(1)及び/または上記構造式(2)を有する化合物であり、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、複素環状ポリアミン、あるいは、これらポリアミン化合物のアミノ基を変性してなる変性ポリアミン化合物等が挙げられる。なお、ポリアミン化合物の変性には、公知の方法が利用でき、例えば、アミノ基のアミド化、アミノ基とカルボニル化合物のマンニッヒ反応、アミノ基とエポキシ基の付加反応、アミノ基とスチレンとの付加反応等が挙げられ、これらのうち水溶型、水分散型等を用いることができる。本発明では、特に、水溶型のポリアミン化合物が好ましく用いられる。水溶型のポリアミン化合物を用いることにより、特にポットライフと速硬性の両方によりいっそう優れた水性被覆材を得ることができる。
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブテンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロプレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、テトラ(アミノメチル)メタン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、アミノエチルプロピレンジアミン、アミノプロピルエチレンジアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン等、
脂環式ポリアミンとしては、例えば、N-アミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スピロアセタールジアミン)、ノルボルナンジアミン、トリシクロデカンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等、
芳香族ポリアミンとしては、例えば、ベンジルアミン、N-アミノエチルピペラジン、キシリレンジアミン、N-ベンジルエチレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル等、
が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0017】
本発明のポリアミン化合物は、活性水素当量が好ましくは50g/eq以上1000g/eq以下(より好ましくは80g/eq以上800g/eq以下、さらに好ましくは100g/eq以上600g/eq以下)である。このような水性ポリアミン化合物を使用することにより、ポットライフと速硬性の両方により優れた水性被覆材を得ることができ、さらに、密着性、形成塗膜の光沢性等にも優れた水性被覆材を得ることができる。
【0018】
ポリアミン化合物は、分子量が、200以上4000以下(より好ましくは400以上3000以下)であることが好ましい。このような範囲であることにより、ポットライフと速硬性の両方により優れた水性被覆材を得ることができる。
【0019】
本発明の3級アミン化合物は、上記構造式(3)で示される化合物であり、例えば、トリメチルアミン、エチルジメチルアミン、プロピルジメチルアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン、トリベンジルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ジメチルアミノシクロヘキサン、1,8-ジアザビスシクロ(5,4,0)-7-ウンデセン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
本発明では、特に、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールから選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0020】
本発明のジカルボン酸は、例えば、マロン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
本発明では、特に、脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましい。
本発明は、このような3級アミン化合物とジカルボン酸を併用することによって、ポットライフと速硬性の両方に優れた水性被覆材を得ることができる。
【0021】
エポキシ樹脂とポリアミン化合物の混合量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂の固形分100重量部に対し、ポリアミン化合物の固形分が1重量部以上100重量部以下(さらには2重量部以上80重量部以下)であることが好ましい。
また、エポキシ樹脂のエポキシ当量とポリアミン化合物の活性水素当量の当量比率は、[アミン硬化剤の活性水素当量/エポキシ樹脂のエポキシ当量]が、0.5以上1.5以下、さらには0.7以上1.4以下であることが好ましい。
また、3級アミン化合物の混合量は、ポリアミン化合物の固形分100重量部に対し、1.0重量部以上40重量部以下(さらには3重量部以上20重量部以下、さらには5.0重量部以上15重量部以下)であることが好ましい。
また、ジカルボン酸の混合量は、ポリアミン化合物の固形分100重量部に対し、1.0重量部以上40重量部以下(さらには3重量部以上20重量部以下、さらには5.0重量部以上15重量部以下)であることが好ましい。
【0022】
本発明は、上記成分以外に、本発明の効果を阻害しない程度に、適宜添加剤を添加することができる。
添加剤としては、例えば、顔料、骨材、分散剤、粘性調整剤、溶剤、造膜助剤、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、pH調整剤、沈降防止剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、乾燥調整剤、カップリング剤、脱水剤、光安定剤、酸化防止剤、水等の添加剤を含有することもできる。
また、上記ジカルボン酸以外の酸化合物としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、オクチル酸、2-エチルヘキサン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノ-ル酸、パルミチン酸、トリメリット酸、ピリメリット酸等の有機カルボン酸化合物等が挙げられる。
【0023】
顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(ベンガラ)、クロム酸鉛(モリブデートオレンジ)、黄鉛、黄色酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン等の無機系着色顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機系着色顔料、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土等の体積顔料が挙げられる。
【0024】
骨材としては、花崗岩、安山岩、玄武岩等の火山岩、石灰岩、砂岩等の堆積岩、片麻岩等の変成岩等、砕石、砂、木材、陶磁器粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、合成樹脂ビーズ、ゴム状弾性体等が挙げられる。また、表面に着色コーティングを施した骨材を使用することもできる
【0025】
分散剤としては、エポキシ樹脂、アミン化合物の分散安定性や、顔料や骨材の分散安定性を向上させるものであれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
本発明では、アニオン基及び/またはノニオン基を有する分散剤が好ましく、さらには、アニオン基及びノニオン基を有する分散剤が好ましい。具体的には、アニオン基を有するセグメント、ノニオン基を有するセグメントを有するものである。本発明では、特に、アニオン基を有するセグメント、ノニオン基を有するセグメントのどちらか一方または両方が主鎖、また、どちらか一方または両方が側鎖である、グラフトポリマーからなる分散剤が好ましい。
【0026】
増粘剤としては、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸アンモニウム、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシルプロポキシルエチルセルロース、メチルセルロース、ヘキサエチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド等の有機系増粘剤、ベントナイト等の無機系増粘剤等が挙げられる。本発明では、特に、メチルセルロース、ヘキサエチルセルロース等が好ましい。
【0027】
溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピルプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルプロピレングリコール、ブチルプロピレンジグリコール、フェニルプロピレンジグリコール、ヘキシルグリコール、ヘキシルジグリコール、2-エチルヘキシルグリコール、2-エチルヘキシルジグリコール等のグリコール類、n-メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、イソパラフィン、シクロヘキサノン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル等のエステル類、またはそれらの混合物等が挙げられる。
本発明では、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ヘキシルグリコール、ヘキシルジグリコール、2-エチルヘキシルグリコール、2-エチルヘキシルジグリコール、ブチルプロピレングリコール、ブチルプロピレンジグリコール、プロピルプロピレングリコール等が、特に造膜性、ポットライフ、硬化性をより向上させることができるため、好ましい。
【0028】
溶剤の混合量は、水性エポキシ樹脂の樹脂固形分100重量部に対し、50重量部以下(より好ましくは0.1重量部以上40重量部以下、さらに好ましくは0.3重量部以上30重量部以下)程度であればよい。
分散剤の混合量は、水性エポキシ樹脂の樹脂固形分100重量部に対し、30重量部以下(より好ましくは0.1重量部以上25重量部以下、さらに好ましくは0.3重量部以上20重量部以下)程度であればよい。
増粘剤の混合量は、水性エポキシ樹脂の樹脂固形分100重量部に対し、50重量部以下(より好ましくは0.1重量部以上40重量部以下(さらに好ましくは0.3重量部以上30重量部以下)程度であればよい。
【0029】
本発明の水性被覆材は、水性エポキシ樹脂、ポリアミン化合物、3級アミン化合物、ジカルボン酸及びそのた添加剤を混合して、1液型の水性被覆材として用いることもできるし、水性エポキシ樹脂を含む主剤と、ポリアミン化合物を含む硬化剤からなる2液反応硬化型の水性被覆材としても用いることができる。2液反応硬化型の水性被覆材として使用する場合、3級アミン化合物、ジカルボン酸は、特に限定されないが、硬化剤に3級アミン化合物及びジカルボン酸を配合することが好ましい。
【0030】
本発明の水性被覆材は、床面に対し、好適に適用されるもので、刷毛、ローラー等の塗装器具を用いて塗装すればよい。また、現場にて直接塗装することもできるし、工場等のラインで塗装することもできる。例えば、住宅、工場、倉庫、スポーツ施設等の建築物の床面や屋上、あるいは、道路、歩道、歩道橋、プラットホーム、公園、広場、庭等の屋外床面に適用することができる。具体的な材質としては、例えば、硬質の土面や石面、コンクリート、モルタル、アスファルト等が挙げられる。また、インターロッキング、ポーラスコンクリート等の床面を改修、改装する目的で用いることもできる。
本発明の水性被覆材は、優れたポットライフ、速硬性を有するため、通常常温(0℃から40℃程度)において、約3~24時間程度で硬化し、歩行可能な状態とすることができ、リコート性、密着性に優れ、さらには、上塗材の塗装性、密着性にも優れ、特に下塗材として好適に用いることができる。
本発明は特に、低温(0℃から10℃程度)でも、速硬性に優れており、約3~24時間程度で硬化し、歩行可能な状態とすることができる。
【実施例0031】
(実施例1)
下記に示す原料、表1に示す原料配合にて、各成分を常法にて均一に攪拌混合し、主剤1、硬化剤1をそれぞれ作製した。さらに、表2に示す組み合わせにて、主剤1と硬化剤1を100:50(重量比率)の割合で混合し、水性被覆材を得た。
【0032】
(ポットライフ評価)
上記水性被覆材について、ポットライフを下記の方法にて測定した。
JIS K5600-2-6:1999「ポットライフ」に基づいて、試験を行った。評価は下記に示す。結果は表2に示す。
◎:6時間以上
○:1時間以上6時間未満
△:20分以上1時間未満
×:20分未満
【0033】
(速硬性評価)
主剤1と硬化剤1を混合後5分後に、この水性被覆材を各種条件(条件1:温度5℃、相対湿度50%、条件2:温度23℃、相対湿度50%)で、スレート板(150mm×300mm×3mm)の上に、ローラーにて、塗付け量150g/mで塗付し、試験体を得た。
上記試験体について、水性被覆材を塗付した後、各種条件にて4時間及び16時間経過後、表面の硬化程度を評価した。評価は下記に示す。結果は表2に示す。
◎:塗膜表面は、ほぼ硬化しており、歩行可能な状態であった。
○:塗膜表面は、ほぼ硬化しており、ほぼ歩行可能な状態であった。
△:塗膜表面は、ややタックが残存していた。
×:塗膜表面は、タックが残存していた。
【0034】
(上塗材塗装評価)
上記試験体について、水性被覆材塗付後、各種条件にて4時間及び16時間経過後、上塗材(エポキシ樹脂系塗床材)を刷毛にて、塗付け量150g/mで塗装し、その塗装性を評価した。評価は下記に示す。結果は表2に示す。
◎:上塗材がはじくことなく、均一に塗装可能であった
○:上塗材がほぼはじくことなく、均一に塗装可能であった
△:上塗材の一部がはじいてしまい、均一に塗装することが困難であった。
×:上塗材がはじいてしまい、塗装することが困難であった。
【0035】
(原料)
水性エポキシ樹脂1:水分散型固形状エポキシ樹脂(自己乳化型ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固形分70重量%、エポキシ当量525g/eq)
水性エポキシ樹脂2:水分散型液状エポキシ樹脂(自己乳化型ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固形分55重量%、エポキシ当量215g/eq)
添加剤:分散剤、泡消剤
ポリアミン化合物1:水溶性脂肪族ポリアミン(固形分60重量%、活性水素当量135g/eq)
ポリアミン化合物2:水分散型脂肪族ポリアミン(固形分50重量%、活性水素当量155g/eq)
3級アミン:2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール
ジカルボン酸:マレイン酸
【0036】
(実施例2~8、比較例1~3)
表1に示す原料、原料配合、表2に示す組み合わせにて、実施例1と同様の方法で、水性被覆材を得、試験体を得、実施例1と同様の試験を行った。結果は表2に示す。
(実施例9)
主剤1と硬化剤2を100:65(重量比率)の割合で混合した以外は、実施例2と同様の方法で、水性被覆材を得、試験体を得、実施例2と同様の試験を行った。結果は表2に示す。
(実施例10)
主剤1と硬化剤2を100:35(重量比率)の割合で混合した以外は、実施例2と同様の方法で、水性被覆材を得、試験体を得、実施例2と同様の試験を行った。結果は表2に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】