(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142685
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ストライカ
(51)【国際特許分類】
E05B 15/02 20060101AFI20241003BHJP
B62D 25/12 20060101ALI20241003BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E05B15/02 F
B62D25/12 N
B60J5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054934
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390038069
【氏名又は名称】株式会社青山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(74)【代理人】
【識別番号】100126170
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 義之
(72)【発明者】
【氏名】星野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】古賀 一博
(72)【発明者】
【氏名】廣井 雄一
(72)【発明者】
【氏名】増井 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】内出 真以
【テーマコード(参考)】
3D004
【Fターム(参考)】
3D004AA03
3D004AA11
3D004BA02
3D004CA41
(57)【要約】
【課題】ネジ部材を回転させる際のトルクのバラツキ(製品間のバラツキ)や変動が小さく、フックの水平部の高さ調整作業が容易な上、安価に製造することが可能なフードストライカを提供する。
【解決手段】フードストライカ1は、自動車のフードに固定させるための板状のベース2と、先端側に雄ネジ部12が形成されており、ベース2の板面に対して垂直状に設けられる棒状のネジ部材3と、片端に、ベース2に穿設されたフック挿通孔10にスライド可能に挿入させるための挿通部19が形成されており、他端に、ネジ部材3の雄ネジ部12と螺合する雌ネジ部18が形成されたL字状のフック4とを有している。そして、ネジ部材3の基端が、ベース2に回転可能に係着されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の開口部を閉塞する閉塞部材の裏面に取り付けられた状態で、車両のボディに設けられたロックと係合させるためのストライカであって、
前記閉塞部材に固定させるための板状のベースと、
少なくとも先端側に雄ネジ部が形成されており、前記ベースの板面に対して垂直状に設けられる棒状のネジ部材と、
片方の端縁際に、前記ベースに穿設された貫通孔にスライド可能に挿通させるための挿通部が形成されており、他方の端縁際に、前記ネジ部材の雄ネジ部と螺合する雌ネジ部が設けられたフックとを有しており、
前記ネジ部材の基端が、前記ベースに回転可能に係着されていることを特徴とするストライカ。
【請求項2】
前記ベースに挿通させた前記ネジ部材の基端にフランジ状の部分が形成されていることによって、前記ネジ部材の基端が、前記ベースに対して回転可能に係着されていることを特徴とする請求項1に記載のストライカ。
【請求項3】
前記ネジ部材の基端のフランジ状の部分と前記ベースの裏面との間に、前記フランジ状の部分よりも外径の大きなワッシャが設けられていることを特徴とする請求項2に記載のストライカ。
【請求項4】
前記ベースの裏面と前記ワッシャとの間に、前記ネジ部材のフランジ状の部分よりも外径の大きなコーンワッシャが設けられていることを特徴とする請求項3に記載のストライカ。
【請求項5】
前記フックの雌ネジ部の形成部分が、前記ベースに対して外向きに付勢されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のストライカ。
【請求項6】
前記フックが、前記雌ネジ部を形成した部材をフック本体と別個に設けたものであることを特徴とする請求項1に記載のストライカ。
【請求項7】
前記フックが、前記挿通部の外側の端縁際に周状の大径部を形成したものであることを特徴とする請求項1に記載のストライカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のフードの裏面に取り付けられた状態で、車両のボディに取り付けられたフードロックと係合させるためのストライカに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のボンネットのフードの裏面に取り付けられた状態で、自動車のボディ(本体)に取り付けられたフードロックに係合させることによって、自動車のフードをボディに対して閉じた状態で保持するための部材として、ストライカ(所謂、フードストライカ)が用いられている。また、当該フードストライカとしては、特許文献1の如く、設置位置のズレによってフードロックと係合できない事態を防止すべく、フードロックに直接的に係合させる水平状の部材の高さを調整可能としたものが知られている。
【0003】
図9は、特許文献1のフードストライカを示したものであり、フードストライカ51は、フードの裏面に固定するための受けプレート52と、内周に雌ネジ部を設けた円筒状に形成されており受けプレート52に垂直状に固着されたリベットナット53と、外周に雄ネジを設けたボルト状でリベットナット53と螺合可能なネジ部材54と、受けプレート52の挿通孔にスライド可能に挿入させるための鉛直部とネジ部材54のヘッド部に係着させる水平部とを有するL字状フック55とを備えている。
【0004】
また、L字状フック55の水平部の先端に、回転軸受け用穴が穿設されており、その回転軸受け用穴にネジ部材54のヘッド部を挿通させ、L字状フック55の水平部の先端を、ネジ部材54のヘッド部に形成されたフランジ状の支持リング56と安全リング57とで挟み込むことによって、ネジ部材54がL字状フック55の水平部の先端に対して回転可能になっている。そして、フードストライカ51は、ネジ部材54を回転させることによってL字状フック55の水平部の高さを調整することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の如き従来のフードストライカ51は、L字状フック5の高さを調節できるものの、部品点数が多く、安価に製造することが困難である。その上、フードストライカ51は、L字状フック55の水平部の先端をネジ部材54の支持リング56と安全リング57とで単純に挟み込むことによって、ネジ部材54をL字状フック55の水平部に対して回転可能とした構造であるため、ネジ部材54の回転強度(トルク)にバラツキ(製品間のバラツキ)や変動が生じ易く、ネジ部材54を回転させるためのトルクが大きくなった場合には、L字状フック55の水平部の高さ調整作業が困難なものとなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、上記従来のフードストライカにおける問題点を解消し、ネジ部材を回転させる際のトルクのバラツキ(製品間のバラツキ)や変動が小さく、L字状のフックの水平部の高さ調整作業が容易な上、安価に製造することが可能なストライカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、車両の開口部を閉塞する閉塞部材の裏面に取り付けられた状態で、車両のボディ(本体)に設けられたロックと係合させるためのストライカであって、前記閉塞部材に固定させるための板状のベースと、少なくとも先端側に雄ネジ部が形成されており、前記ベースの板面に対して垂直状に設けられる棒状のネジ部材と、片方の端縁際に、前記ベースに穿設された貫通孔にスライド可能に挿通させるための挿通部が形成されており、他方の端縁際に、前記ネジ部材の雄ネジ部と螺合する雌ネジ部(雌ネジ部を形成した部材を含む)が設けられたフックとを有しており、前記ネジ部材の基端が、前記ベースに回転可能に係着されている(枢着されている)ことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記ベースに挿通させた前記ネジ部材の基端にフランジ状の部分が形成されていることによって、前記ネジ部材の基端が、前記ベースに対して回転可能に係着されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載された発明において、前記ネジ部材の基端のフランジ状の部分と前記ベースの裏面との間に、前記フランジ状の部分よりも外径の大きなワッシャが設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載された発明において、前記ベースの裏面と前記ワッシャとの間に、前記ネジ部材のフランジ状の部分よりも外径の大きなコーンワッシャ(所謂、皿バネ)が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に記載された発明は、請求項1~4のいずれかに記載された発明において、前記フックの雌ネジ部の形成部分が、前記ベースに対して外向きに付勢されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記フックが、前記雌ネジ部を形成した部材をフック本体と別個に設けたものであることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記フックが、前記挿通部の外側の端縁際に周状の大径部を形成したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載のストライカによれば、L字状のフックの高さを調整するためにネジ部材を回転させる際のトルクのバラツキ(製品間のバラツキ)や変動が小さくなるように、容易に設計することができる。また、請求項1に記載のストライカは、ネジ部材の雄ネジ部と螺合する雌ネジ部をフックの本体(フック本体)に一体的に形成することによって、部品点数を少なくして軽量化を図ることができる。
【0016】
請求項2に記載のストライカによれば、ネジ部材を回転させる際のトルクのバラツキ(製品間のバラツキ)や変動が小さくなるように容易に設計することができるのみならず、部品点数を少なくして安価に製造することが可能となる。
【0017】
請求項3に記載のストライカは、ネジ部材のフランジ状の部分よりも外径の大きなワッシャがベースの裏面に対して摺動することによって、ネジ部材がベースに対して回転するため、ネジ部材を回転させる際のトルクのバラツキ(製品間のバラツキ)や変動が大幅に低減されるので、フックの高さ調整作業を非常に容易なものとすることができる。
【0018】
請求項4に記載のストライカによれば、コーンワッシャによってネジ部材のフランジ状の部分がベースに対して外側に付勢された状態となるため、ネジ部材をベースの板面に対して垂直に配置させる軸力を安定化させることができる。
【0019】
請求項5に記載のストライカは、フックの雌ネジ部の形成部分がベースに対して外向き(すなわち、ベースから離れる方向)に付勢されているため、自動車の走行時等にフックががたつく事態を効果的に抑制することができる。
【0020】
請求項6に記載のストライカは、ネジ部材の雄ネジ部と螺合する雌ネジ部を形成した部材をフックの本体(フック本体)と別々に作製することができるため、容易に製造することができる。また、請求項6に記載のストライカは、設計上、雌ネジ部を形成した部材をベースに近づけることが可能となるため、ベースからの高さ寸法(ベースからのネジ部材の突出寸法)を小さくすることができる。
【0021】
請求項7に記載のストライカによれば、使用時にフックがフードロックから不用意に脱離してしまった場合に、フックの挿通部の外側の先端で別部材(フードロック以外の部分・部材)を損傷させてしまう事態を、高い精度で防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】フードストライカを示す説明図(斜視図)である。
【
図2】フードストライカを示す説明図である(aは鉛直断面図であり、bはaにおけるα部分の拡大図であり、cはaにおけるβ部分の拡大図である)。
【
図3】フードストライカの使用状態を示す説明図である(aはフードストライカをフードに装着した自動車の斜視図であり、bはフードストライカの装着部分の鉛直断面図(自動車の前後方向に沿った鉛直断面図)である)。
【
図4】コーンワッシャを示す説明図である(aは正面図であり、bは平面図であり、cはbにおけるγ-γ断面図である)。
【
図5】フードストライカの使用方法を示す説明図(鉛直断面図)である。
【
図6】フードストライカの変更例示す説明図(斜視図)である。
【
図7】フックの変更例示す説明図である(aは正面図であり、bはaにおけるδ-δ断面図である)。
【
図8】フックの変更例示す説明図である(aは正面図であり、bはaにおけるε-ε断面図である)。
【
図9】従来のフードストライカを示す説明図(鉛直断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るストライカの一種としての自動車用のフードストライカの一実施形態について、図面に基いて詳細に説明する。
【0024】
<フードストライカの構造>
図1、
図2は、フードストライカを示したものである。フードストライカ1は、
図3に示すように、自動車VのボンネットのフードFの先端側の裏面に取り付けられた状態で、自動車Vのボディの開口部Wの内部のフードロックRと係合して、フードFをボディに固定するためのものである。かかるフードストライカ1は、フードFの裏面に固着させるためのベース(受けプレート)2、ベース2に回転可能に固着された(枢着される)ネジ部材(ボルト)3、ネジ部材3のベース2との枢着部分に介在させたワッシャ5およびコーンワッシャ6、先端部をネジ部材3に螺着させたL字状のフック4、フック4の先端側をベース2に対して外向きに付勢するためのバネ部材(所定のバネ定数を有する金属(鉄)製のコイルバネ)7によって構成されている。また、フードストライカ1は、前後の長さ×左右の幅=約110mm×約85mmの大きさを有している。なお、フードストライカ1は、
図3の如く、ベース2を上側にした状態となるように、自動車VのフードFに取り付けて使用するものであるが、以下の説明においては、
図1における上側をフードストライカ1の上側として説明する。
【0025】
ベース2は、ボルト等の固定手段を利用して自動車VのフードFに固定するためのものであり、所定の厚み(約1.5mm)の金属板(鉄板)によって平面視略三角形のプレート状に形成されている。また、周縁には、補強のための折り曲げ加工が施されており、前端際および左右の後端際には、自動車VのフードFに螺着するためのネジ挿通孔8,8・・が穿設されている。一方、ベース2の中央(左右方向における中央)には、表面側(上側)に突出するように膨出部9が形成されている。そして、その膨出部9の前端際(
図1における右端際)には、フック4の先端側を挿通させるためのフック挿通孔10が穿設されており、膨出部9の後端際には、ネジ部材3の基端を挿通させるためのボルト挿通孔24が穿設されている。
【0026】
また、ネジ部材3は、金属(鉄)によって所定の長さ(約85mm)を有する縦長な円柱状に形成されている(一体的に形成されている)。そして、上端には、工具(レンチ等)を嵌合させるための扁平な六角柱状のヘッド部11が設けられている。そのヘッド部11の下側には、円錐台状部が形成されており、その円錐台状部の下側が、一定の径(約10mmφ)の円柱状に形成された状態になっている。そして、その円柱状部分の上部には、フック4と螺合させるための雄ネジ部12が形成されている。なお、円柱状部分の上端際には、雄ネジを形成していない部分が設けられている。
【0027】
さらに、ネジ部材3の下端際には、肉厚(厚み=約5.0mm)で所定の外径(約24mmφ)を有する内フランジ部14が設けられている。また、ネジ部材3の下端には、カシメ加工によって、所定の外径(約16mmφ)を有する外フランジ部15が設けられている。なお、ネジ部材3の下端の中央には、カシメ加工によって生じた略円柱状の凹部21が形成された状態になっている。そして、それらの内フランジ部14と外フランジ部15との間に、ベース2と係着させるための所定の高さ(約6mm)の扁平な円柱状の係着部16が形成された状態になっている。
【0028】
また、ワッシャ(座金)5は、所謂、平ワッシャであり、所定の厚み(厚み=約1.7mm)の金属板(鉄板)によって、所定の外径(約18.0mm)を有する扁平なドーナッツ状に形成されており、中央に所定の内径(約13.0mm)を有するボルト挿通孔が形成された状態になっている。一方、
図4は、コーンワッシャ6を示したものであり、コーンワッシャ6は、バネ座金として機能するもの(所謂、皿バネ)であり、所定の厚み(厚み=約1.4mm)の金属板(鉄板)をプレス成形することによって、所定の外径(約19mmφ)および所定の高さ(無荷重時の高さ=約3.0mm)を有する扁平な円錐台状に形成されている。また、本体22の中央に所定の内径(約12.0mmφ)を有するボルト挿通孔25が形成されており、中心から放射方向に所定の幅(2.0mm)のスリット23が形成されている。
【0029】
さらに、フック6は、金属(鉄)製の四角柱状の棒材を、略直角状に折り曲げ加工することによって、略L字状に形成されており、片端側(
図1,2における水平部分の左端側)に、ネジ部材3と螺合させるための水平な螺着部17が形成され、他端側(
図1,2における鉛直部分の下端側)に、ベース2のフック挿通孔10に挿通させる(挿入させる)ための鉛直な挿通部19が形成された状態になっている。そして、螺着部17の外側の端縁際には、幅広な略四角柱状の螺着体27が形成されており、その螺着体27には、ネジ部材3を挿通させるためのボルト挿通孔26が穿設されており、そのボルト挿通孔26の内面には、ネジ部材3を螺合させるための雌ネジ部18が形成されている。一方、フック4の挿通部19の外側の端縁際には、潰し加工によって幅広で(挿通部19のその他の部分より幅広で)肉厚な板状の圧潰部20が形成された状態になっている。なお、当該圧潰部20は、フック4(挿通部19)がベース2から外れてしまう事態を防止するための抜け止めとして機能する。
【0030】
<フードストライカの製造>
上記したフードストライカ1を製造する際には、まず、ネジ部材(外フランジ部を形成していない状態のネジ部材)3に、バネ部材7を挿通させ、内フランジ部14の上側に配置させる。そして、そのネジ部材3の上橋際の雄ネジ部12に、フック6の螺着体27を螺合させる。しかる後、そのようにフック4と一体になったネジ部材3の基端を、ベース2のボルト挿通孔24に挿通させる。また、そのようにネジ部材3の基端をベース2のボルト挿通孔24に挿通させる際に、フック4の挿通部19を、ベース2のフック挿通孔10に挿通させる。
【0031】
そして、上記の如くベース2のボルト挿通孔24に挿通させたネジ部材3の基端に、コーンワッシャ6とワッシャ5とを順に挿通させ、その状態で、ネジ部材3の基端にカシメ加工を施し、ネジ部材3の基端に外フランジ部15を形成することによって、ボルト部材3の基端を、ベース2に対して回転可能に係着させる(すなわち、枢着させる)。そのようにネジ部材3の基端にカシメ加工を施すことによって、ベース2の裏面と外フランジ部15との間の係着部16に、コーンワッシャ6とワッシャ5とが、積層された状態で嵌め込まれる(外嵌される)。なお、コーンワッシャ6は、膨出した面を下側にした状態でワッシャ5の上側に嵌め込まれる。また、上記の如く、ネジ部材3の基端にカシメ加工を施すことによって、コーンワッシャ6およびワッシャ5には、上下方向の圧力が加わるため、コーンワッシャ6は、拡径して広い面積でベース2の裏面に当接した状態となる。
【0032】
<フードストライカの使用方法(作用)>
上記の如く構成されたフードストライカ1は、
図3の如く、自動車VのフードFの先端側の裏面(取付部材S等)に、取り付けられて使用される。そして、フードFを閉じたときにL字状のフック3が、ボディの開口部Wの内部に設けられたフードロックRと係合することによって、フードFが不用意に開かないように確実にロックする。
【0033】
上記の如く取り付けられるフードストライカ1においては、フードFの歪等に起因してL字状のフック3がフードロックRと係合しない事態が起こり得る。そのような場合には、
図5の如く、レンチ等の工具を利用してヘッド部11を回転させてネジ部材3全体を回転させて、ネジ部材3と螺合したフック4の高さを調整することによって、フック4をフードロックRと係合する高さに容易に配置させることができる。
【0034】
また、フードストライカ1においては、ネジ部材3の基端において、外フランジ部15とベース2の裏面との間に、大径状のワッシャ5およびコーンワッシャ6が介在しており、コーンワッシャ6が、広い面積でベース2の裏面に当接した状態になっているため、上記の如く、ネジ部材3をベース2に対して回転させる際に、トルクの変動がきわめて低いレベルに抑制される。また、コーンワッシャ6が、外フランジ部15をベース2に対して外側に付勢した状態になっているため、ネジ部材3がベース2の板面に対して垂直になろうとする軸力を安定化させることができる。
【0035】
<フードストライカの効果>
フードストライカ1は、上記の如く、フードFに固定させるための板状のベース2と、先端側に雄ネジ部12が形成されており、ベース2の板面に対して垂直状に設けられる棒状のネジ部材3と、片方の端縁際に、ベース2に穿設されたフック挿通孔10にスライド可能に挿通させるための挿通部19が形成されており、他方の端縁際に、ネジ部材3の雄ネジ部12と螺合する雌ネジ部18が設けられたL字状のフック4とを有しており、ネジ部材3の基端が、ベース2に回転可能に係着されたものである。したがって、フードストライカ1によれば、フック4の高さを調整するためにネジ部材3を回転させる際のトルクのバラツキ(製品間のバラツキ)や変動が小さくなるように、容易に設計することが可能となる。また、フードストライカ1は、ネジ部材3の雄ネジ部12と螺合する雌ネジ部18がフック4の本体(フック本体)に一体的に形成されているため、部品点数が少なく、軽量なものとなっている。
【0036】
また、フードストライカ1は、ベース2に挿通させたネジ部材3の基端に外フランジ部15が形成されていることによって、ネジ部材3の基端が、ベース2に対して回転可能に係着されているため、ネジ部材3を回転させる際のトルクのバラツキ(製品間のバラツキ)や変動が小さくなるように容易に設計することができるのみならず、部品点数を少なくして安価に製造することができる。
【0037】
また、フードストライカ1は、ネジ部材3の基端の外フランジ部15とベース2の裏面との間に、外フランジ部15よりも外径の大きなコーンワッシャ6が設けられており、そのコーンワッシャ6がベース2の裏面に対して広い面積で当接しながら摺動することによって、ネジ部材3がベース2に対して回転するため、ネジ部材3を回転させる際のトルクのバラツキ(製品間のバラツキ)や変動が大幅に低減されるので、フック4の高さ調整作業を非常に容易なものとすることができる。
【0038】
さらに、フードストライカ1は、ベース2の裏面とワッシャ5との間に、コーンワッシャ(所謂、皿バネ)6が設けられており、外フランジ部15がベース2に対して外側に付勢された状態となるため、ネジ部材3をベース2の板面に対して垂直に配置させる軸力を安定化させることができる。
【0039】
加えて、フードストライカ1は、フック4の雌ネジ部18の形成部分(すなわち、螺着体27の形成部分)が、バネ部材7によって、ベース2に対して外向き(すなわち、ベース2から離れる方向)に付勢されているため、フック4ががたつく事態を効果的に抑制することができる。
【0040】
また、フードストライカ1は、ネジ部材3の上端にヘッド部11が形成されているため、レンチ等の工具によって容易にネジ部材3を回転させて高さ調整を行うことができる。さらに、フードストライカ1は、ベース2に形成された膨出部9にボルト挿通孔24が形成されているため、ベース2をフードFに固定した場合でも、ネジ部材3の基端がフードFに接触してネジ部材3の回転に支障を来すという事態が生じない。
【0041】
<フードストライカの変更例>
本発明に係るフードストライカは、上記した実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、材質、形状、構造、大きさ等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0042】
たとえば、本発明に係るフードストライカは、上記実施形態の如く、ネジ部材の基端にカシメ加工を施すことによってフランジ状の部分を形成したものに限定されず、ネジ部材の基端が雄ネジを周設した円柱状(すなわち、ボルト状)に形成されており、そのボルト状になったネジ部材の基端をベースのボルト挿通孔に挿通させてナット等によって締着したもの等でも良い。また、そのように構成する場合には、ベースの裏面とナット等との間に、ワッシャ(平ワッシャ、コーンワッシャ、スプリングワッシャ、歯付き座金等)を介在させることも可能である。
【0043】
また、本発明に係るフードストライカは、上記実施形態の如く、ベースの裏面とネジ部材の基端に形成されたフランジ状の部分との間に、1枚のコーンワッシャと1枚の平ワッシャとを重ねて介在させたものに限定されず、コーンワッシャあるいは平ワッシャを単独で介在させたものでも良いし、複数のコーンワッシャあるいは平ワッシャと、1枚以上の平ワッシャあるいはコーンワッシャとを重ねて介在させたもの等でも良い。加えて、コーンワッシャの代わりにスプリングワッシャや歯付き座金等を用いたもの等でも良い。
【0044】
さらに、本発明に係るフードストライカは、上記実施形態の如く、ベースの形状(平面形状)が略三角形であるものに限定されず、ベースの形状を、自動車のフードとの取付構造に応じて、適宜変更することができる。また、フックのネジ部材との螺合部分がバネ部材によって外向きに(ベースに対して外向きに)付勢されているものに限定されず、バネ部材がないものでも良い。加えて、フックのネジ部材との螺合部分を付勢するバネ部材は、上記実施形態の如きコイルバネに限定されず、板バネ等に変更することも可能である。
【0045】
また、本発明に係るフードストライカは、上記実施形態の如く、フックの螺合部の先端(外側の先端)がネジ部材に直接的に螺合するもの(すなわち、雌ネジ部を形成した螺着体がL字状のフックの本体に一体的に設けられているもの)に限定されず、
図6の如く、フック4の螺着体27’が、L字状のフック4の本体(フック本体H)の螺着部17の先端と螺合可能に別個に設けられており、フック4の本体が、螺着体27’を介して、ネジ部材3に間接的に螺合するもの等でも良い。そのように、螺着体27’をフック4の本体と別個にする場合には、螺着体27’とフック4の本体とを別々に作製することができるため、容易に製造することができる。また、設計上、螺着体27’をベース2に近づけることが可能となるため、ベース2からの高さ寸法(ベース2からのネジ部材3の突出寸法)を小さくすることができる。
【0046】
一方、本発明に係るフードストライカは、上記実施形態の如く、フックの挿通部の外側(下側)の端縁際(先端際)に幅広で肉厚な板状の圧潰部を形成したものに限定されず、フックの挿通部の外側の端縁際に周状の大径部を形成したものとすることも可能である。また、そのようにフックの挿通部の外側の端縁際に周状の大径部を形成する場合には、当該周状の大径部を、
図7の如き、大径状のフランジ(扁平なドーナッツ状体)28や、
図8の如き、ロータリーかしめ加工等の方法によって形成される大径状の膨出部(上部が円錐台状で下部が下向きに凸の球面状であるもの等)29等の形状にすることができる。なお、フックの挿通部の外側の端縁際に大径状のフランジを形成する場合には、
図7の如く、フランジの外側(下側)の外周縁をR状に面取りすることも可能である。加えて、フックの挿通部の外側の端縁際に形成する周状の大径部を、扁平な多角柱状体(扁平な六角柱状体や八角柱状体等)にすることも可能である。上記の如く、フックの挿通部の外側の端縁際に周状の大径部を形成した場合には、フードストライカは、使用時に万が一フックがフードロックから不用意に脱離してしまった場合でも、フックの挿通部の外側の先端で別部材(フードロック以外の部分・部材)を損傷させてしまう(傷付けてしまう)事態を生じさせない(きわめて生じさせにくい)ものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係るフードストライカは、上記の如く優れた効果を奏するものであるから、自動車のフードの裏面に取り付けた状態で自動車のボディのフードロックと係合させることによってフードをボディに固定するための部材として、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0048】
1,1’・・フードストライカ、2・・ベース、3・・ネジ部材(ボルト)、4・・フック、5・・ワッシャ、6・・コーンワッシャ、7・・バネ部材、8・・ネジ孔、9・・膨出部、10・・フック挿通孔、11・・ヘッド部、12・・雄ネジ部、13・・軸部、14・・内フランジ部、15・・外フランジ部、16・・係着部、17・・螺着部、18・・雌ネジ部、19・・挿通部、20・・圧潰部、21・・凹部、22・・本体、23・・スリット、24・・ボルト挿通孔、25・・ボルト挿通孔、26・・ボルト挿通孔、27,27’・・螺着体、28・・フランジ,29・・膨出部,51・・フードストライカ、52・・受けプレート、53・・リベットナット、54・・ネジ部材、55・・L字状フック、56・・支持リング、57・・安全リング、F・・フード、V・・自動車、W・・開口部、R・・フードロック、S・・取付部材,H・・フック本体
【手続補正書】
【提出日】2024-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
さらに、
フック4は、金属(鉄)製の四角柱状の棒材を、略直角状に折り曲げ加工することによって、略L字状に形成されており、片端側(
図1,2における水平部分の左端側)に、ネジ部材3と螺合させるための水平な螺着部17が形成され、他端側(
図1,2における鉛直部分の下端側)に、ベース2のフック挿通孔10に挿通させる(挿入させる)ための鉛直な挿通部19が形成された状態になっている。そして、螺着部17の外側の端縁際には、幅広な略四角柱状の螺着体27が形成されており、その螺着体27には、ネジ部材3を挿通させるためのボルト挿通孔26が穿設されており、そのボルト挿通孔26の内面には、ネジ部材3を螺合させるための雌ネジ部18が形成されている。一方、フック4の挿通部19の外側の端縁際には、潰し加工によって幅広で(挿通部19のその他の部分より幅広で)肉厚な板状の圧潰部20が形成された状態になっている。なお、当該圧潰部20は、フック4(挿通部19)がベース2から外れてしまう事態を防止するための抜け止めとして機能する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
<フードストライカの製造>
上記したフードストライカ1を製造する際には、まず、ネジ部材(外フランジ部を形成していない状態のネジ部材)3に、バネ部材7を挿通させ、内フランジ部14の上側に配置させる。そして、そのネジ部材3の上端際の雄ネジ部12に、フック4の螺着体27を螺合させる。しかる後、そのようにフック4と一体になったネジ部材3の基端を、ベース2のボルト挿通孔24に挿通させる。また、そのようにネジ部材3の基端をベース2のボルト挿通孔24に挿通させる際に、フック4の挿通部19を、ベース2のフック挿通孔10に挿通させる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
<フードストライカの使用方法(作用)>
上記の如く構成されたフードストライカ1は、
図3の如く、自動車VのフードFの先端側の裏面(取付部材S等)に、取り付けられて使用される。そして、フードFを閉じたときにL字状の
フック4が、ボディの開口部Wの内部に設けられたフードロックRと係合することによって、フードFが不用意に開かないように確実にロックする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
上記の如く取り付けられるフードストライカ1においては、フードFの歪等に起因してL字状の
フック4がフードロックRと係合しない事態が起こり得る。そのような場合には、
図5の如く、レンチ等の工具を利用してヘッド部11を回転させてネジ部材3全体を回転させて、ネジ部材3と螺合したフック4の高さを調整することによって、フック4をフードロックRと係合する高さに容易に配置させることができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の如き従来のフードストライカ51は、L字状フック55の高さを調節できるものの、部品点数が多く、安価に製造することが困難である。その上、フードストライカ51は、L字状フック55の水平部の先端をネジ部材54の支持リング56と安全リング57とで単純に挟み込むことによって、ネジ部材54をL字状フック55の水平部に対して回転可能とした構造であるため、ネジ部材54の回転強度(トルク)にバラツキ(製品間のバラツキ)や変動が生じ易く、ネジ部材54を回転させるためのトルクが大きくなった場合には、L字状フック55の水平部の高さ調整作業が困難なものとなってしまう。