(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142690
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20241003BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20241003BHJP
B60K 15/035 20060101ALI20241003BHJP
B60K 15/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02F9/00 Z
F02M37/00 301M
F02M37/00 301P
E02F9/00 Q
B60K15/035 A
B60K15/035 B
B60K15/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054941
(22)【出願日】2023-03-30
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海崎 裕輝
【テーマコード(参考)】
2D015
3D038
【Fターム(参考)】
2D015CA00
3D038CA22
3D038CA27
3D038CB09
3D038CC03
3D038CC13
3D038CD18
(57)【要約】
【課題】 燃料タンクに給油するときに発生した泡が燃料タンクから溢れ出ることを防止できるようにする。
【解決手段】 燃料タンク8の上面部8Bには、給油装置10を用いて給油をするときに燃料タンク8内の圧力を抜くための給油口8D(圧抜き口)が設けられている。給油装置10は、外部タンクから吸い込み、燃料タンク8に向けて吐出する給油ポンプ12と、上流側が給油ポンプ12に接続され、下流側の吐出口14Dが燃料タンク8内に接続された吐出パイプ14と、を備えている。この上で、吐出パイプ14の吐出口14Dは、燃料タンク8が満タン時の燃料の液面位置H1よりも下側の位置で燃料タンク8内に配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム上に搭載されたエンジンと、
前記フレーム上に設けられ、前記エンジンに供給するための燃料を貯える燃料タンクと、
補給用の燃料が貯えられている外部タンクから前記燃料タンクに燃料を注入する給油装置と、
を備えてなる建設機械において、
前記燃料タンクの上部には、前記給油装置を用いて給油をするときに前記燃料タンク内の圧力を抜くための圧抜き口が設けられ、
前記給油装置は、前記外部タンクから燃料を吸い込み、前記燃料タンクに向けて吐出する給油ポンプと、上流側が前記給油ポンプに接続され、下流側の吐出口が前記燃料タンクに接続された吐出パイプと、を備え、
前記吐出パイプの前記吐出口は、前記燃料タンクが満タン時の燃料の液面位置よりも下側の位置で前記燃料タンク内に配置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記吐出パイプは、前記燃料タンクの上面に取り付けられ、前記上面から下側に延びて形成され、
前記吐出口は、前記吐出パイプの下端部であることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
前記圧抜き口は、前記燃料タンクの前記上面に取り付けられ、前記上面から上側に延びて形成され、上端部が解放可能に構成されていることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項3に記載の建設機械において、
前記圧抜き口は、燃料を貯えた携行タンクから直接的に燃料を注入するときに用いられる給油口であることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、外部の貯油タンクから燃料タンクに燃料を供給するための給油装置を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械は、フレーム上に搭載されたエンジンと、フレーム上に設けられ、エンジンに供給するための燃料を貯える燃料タンクと、を備えている。また、建設機械は、燃料タンクに燃料を補充するときの給油作業を容易に行えるように、燃料供給ポンプの駆動により補給用の燃料が貯えられている外部の貯油タンクから燃料を吸い込んで汲み上げ、燃料タンクに燃料を注入する自動給油装置を備えている。また、燃料タンクの上面部には、燃料を貯えた携行タンクから直接的に燃料を注入することができる給油口が設けられている(特許文献1)。
【0003】
また、自動給油装置を用いて燃料タンクに給油をする場合、注入される燃料の分だけ空気(圧力)を外部に逃がす必要がある。給油口は、自動給油装置を用いて燃料タンクに給油をする際の燃料タンク内の圧力を抜くための圧抜き口も兼ねている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、建設機械のエンジンには、一般にディーゼルエンジンが用いられ、燃料タンクには、軽油が充填されている。軽油は、ガソリンと比較して粘性が高いから、給油時に注入された軽油と燃料タンク内の油面とが衝突して泡が発生すると、この泡が消えるまでに時間を要してしまう。従って、給油装置を用いて燃料タンクに軽油を勢い良く注入すると、油面上に泡が残った状態で油面が上昇することになり、油面上の泡が給油口から外部に溢れてしまう虞がある。この場合、燃料が無駄になるばかりか、燃料タンクや付随する部品の清掃作業に手間を要してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、燃料タンクに給油するときに発生した泡が燃料タンクから溢れ出ることを防止できるようにした建設機械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フレーム上に搭載されたエンジンと、前記フレーム上に設けられ、前記エンジンに供給するための燃料を貯える燃料タンクと、補給用の燃料が貯えられている外部タンクから前記燃料タンクに燃料を注入する給油装置と、を備えてなる建設機械において、前記燃料タンクの上部には、前記給油装置を用いて給油をするときに前記燃料タンク内の圧力を抜くための圧抜き口が設けられ、前記給油装置は、前記外部タンクから燃料を吸い込み、前記燃料タンクに向けて吐出する給油ポンプと、上流側が前記給油ポンプに接続され、下流側の吐出口が前記燃料タンクに接続された吐出パイプと、を備え、前記吐出パイプの前記吐出口は、前記燃料タンクが満タン時の燃料の液面位置よりも下側の位置で前記燃料タンク内に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、燃料タンクに給油するときに発生した泡が燃料タンクから溢れ出ることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に適用される油圧ショベルを示す右側面図である。
【
図2】燃料タンク、給油装置等を示す斜視図である。
【
図3】燃料タンクの上部、給油装置等を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る建設機械として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、
図1ないし
図3を参照して説明する。
【0011】
図1において、建設機械としての油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に回動可能に設けられた作業装置4と、を含んで構成されている。上部旋回体3は、旋回フレーム5、エンジン6、燃料タンク8、給油装置10を含んで構成されている。
【0012】
フレームとしての旋回フレーム5は、下部走行体2上に旋回可能に設けられた支持構造体を構成している。旋回フレーム5の前側には、前述した作業装置4が回動可能に取付けられている。
【0013】
エンジン6は、旋回フレーム5の後側に位置して旋回フレーム5上に搭載されている。エンジン6は、例えば、ディーゼルエンジンとして構成され、燃料として軽油が用いられる。エンジン6は、後述の燃料タンク8に接続されている。
【0014】
キャブ7は、旋回フレーム5の左前側に設けられている。キャブ7には、油圧ショベル1を操作するためにオペレータが搭乗する。キャブ7の内部には、オペレータが座る運転席、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー等(いずれも図示せず)が配設されている。
【0015】
燃料タンク8は、旋回フレーム5上に設けられている。燃料タンク8は、エンジン6に供給するための燃料(軽油)を貯えている。燃料タンク8は、例えば、平面視で円弧状に形成された上部旋回体3の右前側に配置されているから、平面視で扇形状ないし三角形状をした中空容器として形成されている。燃料タンク8は、下面部8A、上面部8Bおよび下面部8Aと上面部8Bとの間で筒状をなす胴部8Cを備えている。
【0016】
上面部8Bには、給油口8Dが上向きに突出して設けられている。この給油口8Dは、例えば、燃料を貯えた図示しない携行タンク(所謂、ポリタンクと呼ばれるもの)から直接的に燃料を注入するときに用いられる。給油口8Dは、給油時以外はキャップ8Eによって閉塞されている。また、
図3に示すように、給油口8Dには、携行タンクから注入される燃料を清浄にする(異物を除去する)有底筒状のフィルタ8Fが挿着されている。
【0017】
ここで、後述の給油装置10を用いて燃料タンク8に給油をする場合、注入される燃料の分だけ空気(圧力)を外部に逃がす必要がある。給油口8Dは、キャップ8Eが取り外されることで、燃料タンク8内の圧力を抜くための圧抜き口も兼ねることができる。
【0018】
また、燃料タンク8の上面部8Bには、上下方向に貫通してパイプ挿通孔8Gが設けられている。このパイプ挿通孔8Gには、後述する給油装置10の吐出パイプ14の下流パイプ部14Cが挿通されている。
【0019】
燃料タンク8に対する燃料の充填量(容量)について、
図3を用いて説明する。燃料タンク8に対し、規定された最大量の燃料を注入(充填)した状態(満タン状態)、即ち、充填量100%では、燃料の液面が高さ位置H1(以下、液面位置H1という)となる。この満タン時の液面位置H1は、例えば、上面部8Bの下面8B1から下方に20~50mm位離れた位置となっている。満タン時の液面位置H1は、後述の液面センサ9等によって一定に保持されている。
【0020】
液面センサ9は、燃料タンク8の上面部8Bに設けられている。液面センサ9は、上面部8Bから下向きに延びたステム9Aと、ステム9Aに上下方向に移動可能に設けられたフロート9Bと、を含んで構成されている。液面センサ9は、燃料の液面がフロート9Bに達し、このフロート9Bが押し上げられることによりコントローラ(図示せず)に電気信号を出力する。本実施形態では、液面センサ9は、フロート9Bが規定寸法押し上げられることで、満タン時の液面位置H1を検出して出力する。これにより、コントローラは、後述の給油装置10による給油を停止させる。
【0021】
次に、本実施形態の特徴部分となる給油装置10の構成および機能について詳細に説明する。
【0022】
給油装置10は、例えば、給油車が立ち入ることができないような作業現場で、補給用の燃料が貯えられている図示しない外部の貯油タンク(以下、外部タンクという)から燃料タンクに燃料を注入するときに使用される。外部タンクとしては、ドラム缶等の容器が用いられる。そして、給油作業時には、給油装置10を用いることにより、給油作業を短時間で容易に行うことができる。
【0023】
給油装置10は、燃料タンク8の近傍、例えば、上面部8Bの後側に配置されている。給油装置10は、後述の吸込ホース11、給油ポンプ12、吐出ホース13、吐出パイプ14を含んで構成されている。
【0024】
吸込ホース11は、可撓性をもった長尺なホースからなり、外部タンクから給油ポンプ12に向けて燃料を吸い込むものである。給油装置10を用いた給油作業時には、吸込ホース11は、燃料の流れ方向の上流側が外部タンクに差し込まれる。また、吸込ホース11の流れ方向の下流側は、給油ポンプ12の吸込側に接続されている。さらに、吸込ホース11の上流側の端部には、フィルタが取り付けられている。
【0025】
給油ポンプ12は、外部タンクから吸い込んだ燃料を燃料タンク8に向けて吐出する。給油ポンプ12は、例えば、ポンプ本体、電動モータ等からなる。ポンプ本体の吸込側は、吸込ホース11の下流側に接続されている。一方、ポンプ本体の吐出側は、吐出ホース13の上流側に接続されている。給油ポンプ12の電動モータは、前述したコントローラに電気的に接続されている。これにより、コントローラは、満タン時に液面センサ9からの信号を受けて給油ポンプ12(電動モータ)に停止信号を出力する。
【0026】
吐出ホース13は、給油ポンプ12から燃料タンク8の上側まで延びている。吐出ホース13は、吐出パイプ14の一部を構成している。吐出ホース13は、給油ポンプ12のポンプ本体と燃料タンク8の上部に設けられた吐出パイプ14とを接続している。従って、給油ポンプ12を燃料タンク8の上部に設置できる場合には、吐出ホース13を省略し、ポンプ本体と吐出パイプ14とを直接的に接続することもできる。
【0027】
吐出パイプ14は、燃料タンク8の上面となる上面部8Bに設けられている。吐出パイプ14は、上面部8B上に取り付けられるフランジ部14Aと、フランジ部14Aから上側に湾曲して延びた上流パイプ部14Bと、上流パイプ部14Bと連通してフランジ部14Aから下向きに延びた下流パイプ部14Cと、を備えている。上流パイプ部14Bと下流パイプ部14Cとは、1本のパイプ部材によって形成することができる。
【0028】
吐出パイプ14は、下流パイプ部14Cをパイプ挿通孔8Gに上側から挿入し、フランジ部14Aを上面部8Bにボルト止めすることにより、上面部8Bに取り付けられている。この状態で、上流パイプ部14Bには、吐出ホース13の下流側が接続されている。従って、吐出パイプ14は、燃料タンク8の上面部8Bから下側に延びた下端部が吐出口14Dとなっている。吐出口14Dは、燃料タンク8内に接続されている。これにより、吐出パイプ14は、下流側の吐出口14Dから燃料タンク8内に燃料を吐出することができる。
【0029】
ここで、
図3に示すように、吐出パイプ14は、吐出口14Dの高さ位置が燃料タンク8の満タン(充填量100%)時の燃料の液面位置H1よりも下側に配置されている。吐出口14Dの高さ位置は、燃料タンク8に燃料が満タンまで満たされた状態を100%とすると、燃料タンク8に燃料が80%満たされたときの液面位置H2よりも高く、95%まで満たされたときの液面位置H3よりも低い位置に設定されている。具体例としては、吐出口14Dの高さ位置は、燃料タンク8に燃料が90%満たされたときの液面位置H4の位置に設定されている。
【0030】
吐出パイプ14の吐出口14Dの高さ位置について、見方を変えて説明する。吐出パイプ14の下流パイプ部14Cは、燃料タンク8の上面部8Bの下面8B1から下側に延びた下端部に吐出口14Dを有している。従って、吐出口14Dの高さ位置は、上面部8Bの下面8B1から吐出口14Dまでの長さ寸法(距離寸法)Lとして表すことができる。その具体的な数値例は、長さ寸法Lが50~200mm、好ましくは、100mm程度となっている。
【0031】
吐出パイプ14の吐出口14Dの高さ位置は、燃料タンク8の燃料の液面位置H2よりも高く、液面位置H3よりも低い位置に設定されている。また、吐出パイプ14の上面部8Bの下面8B1から吐出口14Dまでの長さ寸法Lは、50~200mmに設定されている。このように、吐出口14Dの高さ位置を示す値には、幅が設けられている。これは、燃料タンク8が直方体状の容器であれば、給油時の燃料の液面の上昇速度がほぼ一定になる。しかし、小型の油圧ショベル1のように、上部旋回体3の大きさに制限がある場合には、燃料タンク8の形状が複雑となり、例えば、上側に向けて絞られている形状をなしている場合がある。この場合には、給油時の燃料の液面の上昇速度が変化してしまう。このような場合を考慮して吐出口14Dの高さ位置を示す値に幅を設けている。
【0032】
上述した吐出パイプ14の吐出口14Dの高さ位置の設定理由について述べる。まず、給油装置10を用いて燃料タンク8に燃料(軽油)を注入すると、燃料が液面に衝突して泡を発生させる。燃料が粘性の高い軽油の場合、発生した泡が消失するまでに時間を要してしまう。一方で、燃料の液面が上昇して吐出パイプ14の吐出口14Dに達すると、燃料が液面に衝突しなくなるから、泡が発生しなくなる。そこで、本実施形態では、吐出パイプ14は、吐出口14Dの高さ位置を満タン時の燃料の液面位置H1よりも下側に配置している。これにより、燃料の液面が吐出パイプ14の吐出口14Dに達してから満タンになるまでに所定の時間がかかるから、この時間を利用して発生した泡を消失させることができる。
【0033】
本実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、油圧ショベル1の動作について説明する。
【0034】
キャブ7に搭乗したオペレータは、エンジン6を始動して油圧ポンプ(図示せず)を駆動する。この状態で、走行用の操作レバーを操作することにより、下部走行体2を前進または後進させることができる。一方、作業用の操作レバーを操作することにより、作業装置4を回動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0035】
次に、燃料タンク8に燃料を補給する場合の動作について説明する。整地された開けた場所では、図示しない給油車により燃料タンク8の給油口8Dから燃料を注入することができる。一方、給油車が立ち入ることができない作業現場等では、油圧ショベル1に搭載された給油装置10を用いて外部タンク(ドラム缶等)から燃料タンク8に燃料を補給する。
【0036】
そこで、給油装置10を用いて燃料タンク8に燃料を注入(補給)するときの動作(作業手順)について説明する。
【0037】
まず、作業者は、丸めて格納された吸込ホース11を延ばし、その上流側の端部を外部タンクに挿入する。また、作業者は、燃料タンク8のキャップ8Eを取り外して給油時に圧が抜けるようにする。この状態で、図示しないスイッチを操作して給油ポンプ12を駆動する。これにより、外部タンク内の燃料は、吸込ホース11、吐出ホース13、吐出パイプ14を通じて燃料タンク8に注入される。
【0038】
この給油時には、吐出パイプ14の吐出口14Dから吐出された燃料が液面に衝突して泡を発生させる。しかし、給油が進んで燃料の液面が上昇し、吐出パイプ14の吐出口14Dに達すると、燃料が液面に衝突しなくなるから、泡が発生しなくなる。そして、本実施形態では、吐出パイプ14の吐出口14Dの高さ位置は、満タン時の燃料の液面位置H1よりも下側に配置している。これにより、燃料の液面が吐出パイプ14の吐出口14Dに達してから満タンになるまでに、発生した泡を消失させることができる。
【0039】
かくして、本実施形態によれば、燃料タンク8の上面部8Bには、給油装置10を用いて給油をするときに燃料タンク8内の圧力を抜くための給油口8D(圧抜き口)が設けられている。給油装置10は、外部タンクから吸い込み、燃料タンク8に向けて吐出する給油ポンプ12と、上流側が給油ポンプ12に接続され、下流側の吐出口14Dが燃料タンク8内に接続された吐出パイプ14と、を備えている。この上で、吐出パイプ14の吐出口14Dは、燃料タンク8が満タン時の燃料の液面位置H1よりも下側の位置で燃料タンク8内に配置されている。
【0040】
ここで、給油装置10を用いて燃料タンク8に燃料を注入する場合に、吐出パイプ14の吐出口14Dから吐出された燃料が燃料タンク8内の燃料の液面に衝突して泡が発生し、液面と一緒に泡が燃料タンク8内を上昇すると、燃料タンク8内の圧力を抜くために開放された給油口8Dから泡が外部に溢れる虞がある。
【0041】
しかし、本実施形態では、燃料タンク8内を上昇する液面は、燃料が満タンになる前に吐出パイプ14の吐出口14Dに達するから、泡が発生しないようにした後に、泡が消失するまでの時間を稼ぐことができる。この結果、燃料タンク8に給油するときに発生した泡が燃料タンク8から溢れ出ることを防止できるから、燃料を無駄にすることなく、燃料タンク8や付随する部品の清掃作業を省略することができる。
【0042】
また、本実施形態では、燃料タンク8の実容積に対して、満タンとする燃料の量を過剰に少なく設定することなく、給油口8Dから泡が外部に溢れ出ることを防止できる。換言すると、給油口8Dから泡が外部に溢れ出ることを防止するために、燃料タンク8が大型化することを抑制できる。さらに、給油装置10の吐出量を抑制することなく、給油口8Dから泡が外部に溢れ出ることを防止できる。その結果、給油口8Dから泡が外部に溢れ出ることを防止するために、給油作業時間が長くなることを抑制できる。
【0043】
給油装置10の吐出パイプ14は、燃料タンク8の上面部8Bに取り付けられ、上面部8Bから下側に延びて形成され、吐出口14Dは、吐出パイプ14の下端部である。従って、吐出パイプ14の下流パイプ部14Cが挿通されるパイプ挿通孔8Gを、燃料タンク8の上面部8Bに形成できるから、燃料漏れに対する信頼性を向上することができる。
【0044】
圧抜き口としての給油口8Dは、燃料タンク8の上面部8Bに取り付けられ、上面部8Bから上側に延びて形成され、上端部が解放可能に構成されている。従って、燃料タンク8の液面に発生した泡が、給油口8Dの上端に到達するまでの距離、時間を稼ぐことができる。
【0045】
吐出パイプ14の吐出口14Dの高さ位置は、燃料タンク8に燃料が満タンまで満たされた状態を100%とすると、燃料タンク8に燃料が80%満たされたときの液面位置H2よりも高く、95%まで満たされたときの液面位置H3よりも低い位置に設定されている。これにより、95%から100%までに燃料が満たされる時間を泡の消失に費やすことができる。
【0046】
ここで、吐出パイプ14は、フランジ部14Aを用いて燃料タンク8に取り付けられている。この構造では、吐出パイプ14の下流パイプ部14Cを長くすると、燃料によって下流パイプ部14Cが押されてフランジ部14Aと下流パイプ部14Cとの接合部分に大きな負荷が作用する。これに対し、吐出パイプ14(下流パイプ部14C)は、その最大長さ寸法を、燃料が80%満たされたときの液面位置H2までに設定している。これにより、吐出パイプ14(下流パイプ部14C)を短く抑えることができるから、耐久性を向上することができる。
【0047】
また、吐出パイプ14は、燃料タンク8の上面部8Bから下側に延びて設けられ、吐出パイプ14のうち、燃料タンク8の上面部8Bから吐出口14Dまでの長さ寸法Lは、50~200mmに設定されている。これにより、満タンまでの時間を泡の消失に費やすことができる上に、吐出パイプ14を短く抑えることができ、耐久性を向上することができる。
【0048】
さらに、圧抜き口は、燃料を貯えた携行タンクから直接的に燃料を注入するときに用いられる給油口8Dである。従って、給油装置による給油だけでなく、携行タンクから給油口8Dを介して追加で燃料を補充することもできる。
【0049】
なお、実施形態では、燃料タンク8の上面部8Bに吐出パイプ14を設け、上面部8Bから下側に延びた下流パイプ部14Cの下端部を吐出口14Dとした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、燃料タンクの胴部の上側に吐出パイプを設ける構成としてもよい。
【0050】
また、実施形態では、燃料タンク8の給油口8Dを圧抜き口として利用した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、燃料タンク内の圧を抜くためだけの専用の圧抜き口を設ける構成としてもよい。
【0051】
さらに、実施形態では、建設機械として、クローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の油圧ショベルに適用してもよい。それ以外にも、ホイルローダ等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 油圧ショベル(建設機械)
5 旋回フレーム(フレーム)
6 エンジン
8 燃料タンク
8B 上面部(上面)
8D 給油口(圧抜き口)
10 給油装置
11 吸込ホース
12 給油ポンプ
13 吐出ホース(吐出パイプ)
14 吐出パイプ
14D 吐出口
H1 燃料タンクの満タン(充填量100%)時の燃料の液面位置
H2 燃料タンクに燃料が80%満たされたときの液面位置
H3 燃料タンクに燃料が95%満たされたときの液面位置
L 吐出パイプのうち、燃料タンクの上面部から吐出口までの長さ寸法