(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014270
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】吹出口装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/06 20060101AFI20240125BHJP
F24F 13/10 20060101ALI20240125BHJP
F24F 13/14 20060101ALI20240125BHJP
F24F 11/79 20180101ALI20240125BHJP
F24F 11/56 20180101ALI20240125BHJP
【FI】
F24F13/06 A
F24F13/10 E
F24F13/14 Z
F24F11/79
F24F11/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116972
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】301042686
【氏名又は名称】株式会社三菱地所設計
(71)【出願人】
【識別番号】000164553
【氏名又は名称】空研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591219429
【氏名又は名称】空調技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼西 茂彰
(72)【発明者】
【氏名】中村 駿介
(72)【発明者】
【氏名】土井良 将孝
(72)【発明者】
【氏名】谷口 純彦
【テーマコード(参考)】
3L080
3L081
3L260
【Fターム(参考)】
3L080BA06
3L080BA07
3L080BA10
3L081AA02
3L081AA03
3L081AB02
3L260BA08
3L260FC14
3L260GA02
(57)【要約】
【課題】 調和空気の吹出方向設定の自由度を大きくして、室内空間居住域各部への調和空気の到達可能性を高くし、空気調和による快適性を向上させられる吹出口装置を提供する。
【解決手段】 吹出口本体10の開口領域11に配設されて調和空気を案内するパン13に対し、パン調整部14、15でパン13における二箇所を上下動させて、パン13を動かし、調和空気を天井に沿って吹出す水平吹出と、調和空気を下向きに吹出す垂直吹出と、調和空気を斜め下向きに吹出す斜め吹出とを切り替えて実行できることで、吹出方向の選択の幅を大きくし、吹出方向調整をより柔軟に行うことができ、居住域の人の所望する吹出状態により適合した吹出方向に設定して、調和空気吹出に基づいた室内空間居住域での快適性を向上させられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間へ調和空気を送り出す開口領域を囲んで、拡開状となる外コーン部が形成される吹出口本体と、前記開口領域に配設され、室内空間側に向かう調和空気を案内する略皿状のパンとを備える吹出口装置において、
前記パンにおける一又は複数箇所に連結され、パンを少なくとも上下方向に移動可能とするパン調整部を備え、
前記吹出口本体が、前記外コーン部端部から下向きに延びる縁部を形成され、
前記パンが、前記吹出口本体に移動可能に支持されると共に、前記パン調整部により、パンにおける所定の二箇所を第一の高さ位置に位置させて、パンの上面を前記縁部の下端に略一致させる状態、前記二箇所を前記第一の高さ位置より上方となる第二の高さ位置に位置させて、パンの上面を縁部の上端又は縁部の上端より上側の所定高さ位置に略一致させる状態、及び、前記二箇所のうち一方を他方とは異なる高さ位置に位置させて、パンを傾ける状態、のいずれかに切替可能とされることを
特徴とする吹出口装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の吹出口装置において、
前記パン調整部が、吹出口本体に支持される固定部と、当該固定部に対し直線移動可能な可動部とをそれぞれ有する二つのアクチュエータからなり、アクチュエータの可動部をパンにおける所定の二箇所にそれぞれ連結されて、パンの位置及び傾きを調整可能とすると共に、各アクチュエータを介してパンを支持することを
特徴とする吹出口装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の吹出口装置において、
前記パンが、パンを傾けた状態における、パンの傾いた向きに位置するパンの第一の端部及び当該第一の端部の反対側に位置する第二の端部、並びに、パンの傾く向きと直角をなす方向にあたる第三の端部及び第四の端部を、それぞれ有し、
前記吹出口本体及びパンの少なくとも一方が、前記開口領域のうち、パンを傾けていない状態における、パンの前記第一の端部及び第二の端部と吹出口本体との間の各領域を、パンの前記第三の端部及び第四の端部と吹出口本体との間の各領域より大きくする所定形状として形成され、
パンを傾けた状態で、前記開口領域のうち、パンの前記第一の端部と吹出口本体との間の領域が、他の領域に対し調和空気の通過抵抗の最も小さい領域となることを
特徴とする吹出口装置。
【請求項4】
前記請求項1又は2に記載の吹出口装置において、
前記吹出口本体が、前記開口領域の横断面を矩形状とするように形成され、
前記パンが、矩形の略皿状とされ、パンの各端辺部を開口領域の矩形状横断面の各辺と平行として配設され、パンの長辺方向について中央部となる位置であって、且つパンの短辺方向に互いに離れた位置関係となる二箇所を、それぞれ前記パン調整部と連結されることを
特徴とする吹出口装置。
【請求項5】
前記請求項1に記載の吹出口装置において、
前記パン調整部を制御する制御部を備え、
当該制御部が、室内空間に位置する通信端末から無線通信でパンの状態切替に係る指令を受け取ることを
特徴とする吹出口装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和の対象となる室内空間における天井に配置され、室内空間に対し調和空気を吹出す吹出口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和設備において、ダクトを通じて送られる調和空気を空気調和対象の室内空間に吹出す吹出口装置は、室内空間への調和空気の到達しやすさ等を考慮して天井に配設されることが多い。こうした吹出口装置を配設される天井が、ビル内のオフィス空間等で採用されることの多い、天井パネルや照明器具等を一つのシステムとして、所定間隔で複数配置された線状の支持枠や、格子(グリッド)状に組合わされた支持枠で支持して構成される、いわゆるシステム天井である場合には、吹出口装置も、支持枠に取付けられ、天井の一部をなすようにされる。
【0003】
このような従来のシステム天井のうち、グリッドタイプのシステム天井用の吹出口装置の例として、特開2002-310493号公報や特開2013-92305号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-310493号公報
【特許文献2】特開2013-92305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のグリッドタイプのシステム天井は、複数のグリッドからなる正方形の基本モジュールを部屋の広さに応じて複数並べて組合わされて、一部屋の天井として形成されている。また、室内空間では、天井の一又は複数のモジュールを一区画として間仕切りが設けられる場合もあり、照明器具等他の天井配設機器との組合せで用いられるグリッドタイプのシステム天井用の吹出口装置は、天井のモジュールごとに配設されるのが一般的である。
【0006】
こうしたグリッドタイプのシステム天井のモジュールごとに、照明器具等の機器との組合せで配置される吹出口装置としては、前記特許文献1に示されるような、角型で四方向吹出しの多層コーン型吹出口装置を採用することが多かった。
【0007】
しかし、この従来の吹出口装置は、角型のコーン各辺の位置する四方向への水平方向吹出と垂直方向吹出との切替えは行えるものの、それ以上の吹出方向調整を行うことはできなかった。すなわち、室内空間の居住域に居る人が、自らの居所に対応する、水平四方向と垂直方向以外の他の方向への調和空気吹出を所望したとしても、吹出方向をそうした方向に設定して調和空気の吹出を行わせることはできない、という課題を有していた。
【0008】
また、こうした従来の吹出口装置における、水平吹出と垂直吹出の切替えは、天井に設けられた吹出口装置の一部を作業者の手により動かすなどして行うのが通常であった。このような水平吹出と垂直吹出の切替えについては、ワックスタイプのサーモエレメント等を用いることで、調和空気の温度に応じた最適吹出状態への自動切替え、例えば、冷房時は水平吹出とし、暖房時は垂直吹出とすることが既に実現されている。しかしながら、こうした吹出方向の切替えについても、居住域からの操作に基づいて、所望のタイミングで実行させるようなことはできないという課題を有していた。
【0009】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、調和空気の吹出方向設定の自由度を大きくして、室内空間居住域各部への調和空気の到達可能性を高くし、空気調和による快適性を向上させられる吹出口装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の開示に係る吹出口装置は、室内空間へ調和空気を送り出す開口領域を囲んで、拡開状となる外コーン部が形成される吹出口本体と、前記開口領域に配設され、室内空間側に向かう調和空気を案内する略皿状のパンとを備える吹出口装置において、前記パンにおける一又は複数箇所に連結され、パンを少なくとも上下方向に移動可能とするパン調整部を備え、前記吹出口本体が、前記外コーン部端部から下向きに延びる縁部を形成され、前記パンが、前記吹出口本体に移動可能に支持されると共に、前記パン調整部により、パンにおける所定の二箇所を第一の高さ位置に位置させて、パンの上面を前記縁部の下端に略一致させる状態、前記二箇所を前記第一の高さ位置より上方となる第二の高さ位置に位置させて、パンの上面を縁部の上端又は縁部の上端より上側の所定高さ位置に略一致させる状態、及び、前記二箇所のうち一方を他方とは異なる高さ位置に位置させて、パンを傾ける状態、のいずれかに切替可能とされるものである。
【0011】
このように本発明の開示によれば、吹出口本体の開口領域に配設されて調和空気を案内するパンに対し、パン調整部でパンにおける二箇所を上下動させて、パンを動かし、パンの前記二箇所を第一の高さ位置に共に位置させる第一の状態と、前記二箇所を第二の高さ位置に共に位置させる第二の状態と、前記二箇所のうち一方を第一の高さ位置、他方を第二の高さ位置にそれぞれ位置させる第三、第四の状態とを切替えて、前記第一の状態では縁部の下端に略一致させたパンの上面での案内に基づいて調和空気を天井に沿って吹出す水平吹出を行わせ、前記第二の状態では調和空気が縁部の上端以上の高さとなったパンの上面と吹出口本体の縁部での案内で調和空気を下向きに吹出す垂直吹出を行わせ、また、前記第三、第四の状態では前記二箇所の高さを異ならせることでパンを傾け、この傾いたパンの上面での案内に基づいて調和空気を斜め下向きに吹出す斜め吹出を行わせることにより、水平吹出と垂直吹出以外に斜め吹出への切替えを可能として吹出方向の選択の幅を大きくし、吹出方向調整をより柔軟に行うことができ、居住域の人の所望する吹出状態により適合した吹出方向に設定して、調和空気吹出に基づいた室内空間居住域での快適性を向上させられる。
【0012】
また、本発明の開示に係る吹出口装置は必要に応じて、前記パン調整部が、吹出口本体に支持される固定部と、当該固定部に対し直線移動可能な可動部とをそれぞれ有する二つのアクチュエータからなり、アクチュエータの可動部をパンにおける所定の二箇所にそれぞれ連結されて、パンの位置及び傾きを調整可能とすると共に、各アクチュエータを介してパンを支持するものである。
【0013】
このように本発明の開示によれば、吹出口本体に支持される固定部と、この固定部に対し直線移動可能な可動部とを有するパン調整部としての二つのアクチュエータが、その可動部をパンの前記二箇所にそれぞれ連結され、アクチュエータの作動で可動部を移動させ、これに連結されたパンを動かして、調和空気の水平吹出と、垂直吹出と、斜め吹出を切替えられることにより、パン調整部を二つのアクチュエータからなる簡略な機構とすることができ、機構の信頼性を高められると共に製造コストを抑えられる。
【0014】
また、本発明の開示に係る吹出口装置は必要に応じて、前記パンが、パンを傾けた状態における、パンの傾いた向きに位置するパンの第一の端部及び当該第一の端部の反対側に位置する第二の端部、並びに、パンの傾く向きと直角をなす方向にあたる第三の端部及び第四の端部を、それぞれ有し、前記吹出口本体及びパンの少なくとも一方が、前記開口領域のうち、パンを傾けていない状態における、パンの前記第一の端部及び第二の端部と吹出口本体との間の各領域を、パンの前記第三の端部及び第四の端部と吹出口本体との間の各領域より大きくする所定形状として形成され、パンを傾けた状態で、前記開口領域のうち、パンの前記第一の端部と吹出口本体との間の領域が、他の領域に対し調和空気の通過抵抗の最も小さい領域となるものである。
【0015】
このように本発明の開示によれば、パンを傾けた状態でパンの傾いた向きに位置するパンの第一の端部とその反対側に位置する第二の端部について、これら端部と吹出口本体との間に位置する開口領域の一部領域が、同じ開口領域のうち、パンの傾く向きと直角をなす方向にあたるパンの第三の端部及び第四の端部と吹出口本体との間の各領域に対して、パンを傾けていない状態ではより大きくなるようにされ、且つ、パンを傾けた状態で、開口領域のうちパンの第一の端部と吹出口本体との間の領域が、他の領域に対し調和空気の通過抵抗の最も小さい領域とされて、パンを傾けた状態ではパンを傾けた方向の第一の端部と吹出口本体との間の領域には調和空気が進行しやすい一方、第一の端部以外の第二、第三及び第四の各端部と吹出口本体との間の領域には調和空気が進行しにくいことにより、パン調整部でパンを傾けた場合は、この傾いたパンによる案内に基づいて、調和空気が開口領域におけるパンの第一の端部と吹出口本体との間の領域から斜め下向きに吹出す一方、開口領域の他の領域には調和空気はほとんど進行せず、第一の端部と吹出口本体との間の領域に調和空気を集中させて、確実に室内空間に対し調和空気の斜め吹出を実行できる。
【0016】
また、本発明の開示に係る吹出口装置は必要に応じて、前記吹出口本体が、前記開口領域の横断面を矩形状とするように形成され、前記パンが、矩形の略皿状とされ、パンの各端辺部を開口領域の矩形状横断面の各辺と平行として配設され、パンの長辺方向について中央部となる位置であって、且つパンの短辺方向に互いに離れた位置関係となる二箇所を、それぞれ前記パン調整部と連結されるものである。
【0017】
このように本発明の開示によれば、吹出口本体の開口領域をその横断面が矩形状となるようにすると共に、パンを矩形皿状とし、このパンの長辺方向中央部に位置して且つ短辺方向に離隔した二箇所をパン調整部と連結して、パンを動かすようにすることにより、パン調整部で矩形状のパンをその長辺側に傾けることができ、開口領域のうち、パンの長辺側の端部と吹出口本体との間の領域に対し、相対的に狭い短辺側の端部と吹出口本体との間の領域からの調和空気の吹出を、パンの傾きに関わりなく抑えることができ、パンを傾けた場合はこのパンでの案内に基づいて、調和空気を確実にその傾けた方の長辺側に進行させて、室内空間への斜め吹出を実行できる。
【0018】
また、本発明の開示に係る吹出口装置は必要に応じて、前記パン調整部を制御する制御部を備え、当該制御部が、室内空間に位置する通信端末から無線通信でパンの状態切替に係る指令を受け取るものである。
【0019】
このように本発明の開示によれば、パン調整部を制御する制御部に対し、室内空間の通信端末から制御指令を送信し、制御部からパン調整部への作動指示による、パン上の二箇所についてのパン調整部での位置調整に基づき、パンが動いて、このパンで案内される調和空気の吹出状態の切替が行えることにより、通信端末を通じて室内空間から容易に吹出状態を変化させることができ、所望の吹出状態に設定して空気調和効果を局所的に高めることもでき、使い勝手に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吹出口装置の室内配置状態説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る吹出口装置の正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る吹出口装置の底面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る吹出口装置の縦断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る吹出口装置における水平吹出状態説明図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る吹出口装置における垂直吹出状態説明図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る吹出口装置における一の斜め吹出状態説明図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る吹出口装置における他の斜め吹出状態説明図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る吹出口装置における水平吹出状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る吹出口装置を前記
図1ないし
図8に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係る吹出口装置1は、矩形開口断面の開口領域11を取囲んだ略箱状体として形成され、空気調和対象の室内空間70における天井50に配設される吹出口本体10と、この吹出口本体10の開口領域11に位置調整可能として配設され、調和空気を案内する略皿状のパン13と、吹出口本体10の開口領域11に配設され、パン13の位置を調整するパン調整部14、15と、使用者の通信端末を通じた遠隔操作に基づいてパン調整部14、15の作動を制御する制御部16とを備える構成である。
【0022】
前記吹出口本体10は、調和空気が通過可能な矩形状の横断面形状の開口領域11を取囲む、金属等の強度の高い材質製の略箱状体として形成され、室内空間70における天井50に配設される構成である。
【0023】
この吹出口本体10は、上部に一体に配設される円筒状のネック部10aで、天井50内に配設された調和空気供給用の公知のダクト51と接続される。そして、ネック部10aを通じてダクト51から調和空気の供給を受け、開口領域11に導入された調和空気を、パン13による案内を経て室内空間70に吹出す仕組みである。
【0024】
吹出口本体10の室内空間側寄り部分には、開口領域11の矩形状の横断面形状を保ちつつ室内空間側に向けて拡開形状となる外コーン部10bが形成されると共に、この外コーン部10b端部から下向きに延びる縁部10cが形成され、さらに、この縁部10cの下端部から開口領域11に対する外側方向に突出する額縁部10dが形成される構成である。
【0025】
縁部10cは、外コーン部10bと一体に形成され、外コーン部10bと共に必要に応じて調和空気を案内するものである。縁部10cは、外コーン部10b端部から下向きに延びた配置状態とされるが、厳密に垂直下向き、すなわち、天井面と直交する向きに一致させる必要はなく、若干傾いた状態としてもかまわない。
【0026】
額縁部10dは、縁部10c下端部から開口領域11とは反対側となる外方へ所定幅突出する部分を周方向へ連続させて略鍔状とし、さらにその最外周部分を上方へ起立状態とした形状とされる構成である。この額縁部10dが、天井50に組立配設されたシステム天井(グリッド天井)の公知の支持枠に、同じく公知の取付用プレート等を介して、あるいは直接取付けられることで、吹出口本体10は照明器具など他の天井配設機器と共に、天井50の所定位置に固定される構成である。
【0027】
前記パン13は、吹出口本体10の開口領域11の形状に対応した矩形状の略皿状体として形成され、吹出口本体10の開口領域11中心部分における室内空間寄り部位に位置及び向きを調整可能として支持される構成である。
【0028】
このパン13は、その上部における所定の二箇所をパン調整部14、15と連結され、パン調整部14、15を介して吹出口本体10に支持される構成である。
詳細には、パン13は、矩形状をなすパンの長辺方向について中央部となる位置であって、且つ、パンの短辺方向に互いに離れた位置関係となる上部の二箇所を、それぞれパン調整部14、15と連結され、この二箇所をパン調整部14、15によりそれぞれ上下方向に個別に移動可能とされることとなる。
【0029】
このように、矩形皿状のパン13の長辺方向中央部に位置して且つ短辺方向に離隔した二箇所をパン調整部14、15と連結し、この二箇所の上下動によりパン13を動かすようにすることで、パン13を天井面と平行な通常の向きで上下に移動させられる他、パン13をその長辺側にそれぞれ傾けることができる。
【0030】
また、開口領域11の横断面形状とパン13の形状がいずれも矩形状とされることで、パンを傾けていない状態で、パン13の長辺側の端部と吹出口本体10との間に位置する開口領域の一部領域は、同じ開口領域のうち、パン13の短辺側の端部と吹出口本体10との間の各領域に対して、長辺が短辺より長い分、より大きくなっている。
【0031】
よって、このパン13を傾けていない状態で、パン13と吹出口本体10との間に位置する各領域の中で、より大きく通過抵抗の小さい領域となっている、パン13の長辺側の端部と吹出口本体10との間の領域から吹出す調和空気の吹出量が、領域が小さい分通過抵抗の大きくなる、パン13の短辺側の端部と吹出口本体10との間の領域から吹出す調和空気の吹出量より多くなる。
【0032】
そして、パン13を傾けた状態では、開口領域11のうちパン13の傾いた向きに位置する一方の長辺側の端部と吹出口本体10との間の領域が、パン13を傾けていない状態より大きくなる。これに対し、その反対側にある他方の長辺側の端部と吹出口本体10との間の領域は、パン13を傾けていない状態より小さくなることに加え、パン13の短辺側の端部と吹出口本体10との間の領域は、パン13を傾けていない状態と同様に相対的に小さいままである。
【0033】
こうしたことから、パン13を傾けた状態では、パン13の傾いた向きに位置する一方の長辺側の端部と吹出口本体10との間の領域が、調和空気の通過抵抗の最も小さい領域となり、これ以外の各端部と吹出口本体との間の領域に比べ調和空気が進行しやすくなっており、傾いたパン13で案内される調和空気のほとんどは支障なくこのパン13の傾いた向き(一方の長辺側)に進行する。
【0034】
こうして、パン調整部14、15でパン13を傾けた場合は、この傾けたパン13による案内に基づいて、調和空気がパン13の傾いた向きに位置する一方の長辺側の端部と吹出口本体10との間の領域から斜め下向きに室内空間に吹出す、斜め吹出を実現できることとなる。
【0035】
前記パン調整部14、15は、吹出口本体10内部に配設される支持枠10eに取り付けられて、開口領域11におけるパン13よりネック部10a寄りとなる所定位置に配置され、パン13の上部二箇所に連結されて、この二箇所をそれぞれ上下方向に個別に移動可能としつつ、パン13を少なくとも上下方向に移動可能とする構成である。
【0036】
パン調整部14、15は、支持枠10eを介して吹出口本体10に対し動かない状態で支持される固定部14a、15aと、この固定部14a、15aに対し直線移動可能な可動部14b、15bとをそれぞれ有する二つの公知のリニアアクチュエータである。パン調整部14、15は、その可動部14b、15bをパン13の前記二箇所にそれぞれ連結されて、これら二箇所をそれぞれ上下動させ、パン13の位置及び向きを調整可能とすると共に、これらパン調整部14、15を介してパン13を開口領域11に支持する仕組みである。
【0037】
このパン調整部14、15は、制御部16と電気的に接続され、使用者の通信端末60を用いた遠隔操作に基づいて、制御部16により固定部14a、15aに対する可動部14b、15bの進退状態を切替え、パン13を動かしてその位置や向きを変化させることとなる。
【0038】
詳細には、パン調整部14、15は、その固定部14a、15aに対し可動部14b、15bを進退させるように作動することで、各可動部14b、15bに連結されるパン13の二箇所を所定の第一の高さ位置に同様に位置させて、パン13の上面を縁部10cの下端に略一致させた第一の状態と、前記二箇所を第一の高さ位置より上方となる所定の第二の高さ位置に同様に位置させて、パンの上面を縁部10cの上端又は縁部10cの上端より上側の所定位置に略一致させた第二の状態と、前記二箇所のうち一方を他方とは異なる高さ位置に位置させる第三及び第四の各状態、具体的には、前記二箇所のうち可動部14bに連結される方を第一の高さ位置、可動部15bに連結される方を第二の高さ位置にそれぞれ位置させ、高低差を生じさせることでパン13を傾けた第三の状態と、前記二箇所のうち可動部15bに連結される方を第一の高さ位置、可動部14bに連結される方を第二の高さ位置にそれぞれ位置させ、高低差を生じさせることでパン13を傾けた第四の状態とを、切替可能としている。
【0039】
このように、固定部14a、15aと可動部14b、15bとからなる簡略なアクチュエータである二つのパン調整部14、15が、その作動で可動部14b、15bを移動させ、これら可動部14b、15bに連結されたパン13を動かして、調和空気の水平吹出と、垂直吹出と、斜め吹出を切替えられることから、こうした吹出状態の切替えに係る機構の信頼性を高められると共に製造コストを抑えられる。
【0040】
前記制御部16は、吹出口本体10に隣接させて、又は、吹出口本体10の近傍となる天井50内の所定箇所に配設され、吹出口本体1内のパン調整部14、15と電気的に接続されて、室内空間に在室する使用者により操作される通信端末60から、操作情報の信号を受信し、信号に基づいてパン調整部14、15に対し、これらの作動を制御するものである。
【0041】
制御部16は、使用者が、通信端末60、例えば、スマートフォン等の携帯型通信装置やリモコン等の操作用端末装置、に対して、所定の向きへの吹出しの指示操作を行った場合に、こうした通信端末60から発信された信号を受け、パン調整部14、15を作動させてパン13の向きや位置を調整し、この調整されたパン13によりダクト51からの調和空気が案内されるようにして、調和空気がパン13に案内された向きにスムーズに吹出されて、室内空間における居住域の所望の領域に調和空気の気流を局所的に又は広がりを持って到達させる状態を生じさせることとなる。
【0042】
制御部16と通信端末60との通信は、例えばIEEE 802.11シリーズやIEEE 802.15シリーズの規格方式に代表される無線通信の他、家電用リモコン等で一般的な赤外線や電波による通信を用いることもできる。
【0043】
また、制御部16は、パン13の向きや位置の調整に係るパン調整部14、15の作動制御に特化したものに限られず、グリッド式システム天井の場合に吹出口装置1近傍に配置される照明等の制御部、例えば、使用者からの操作用端末を介した指示で照明をON・OFFしたり明るさを変化させる制御部、を兼ねる構成とすることもできる。
【0044】
次に、前記構成に基づく吹出口装置の作動状態及び調和空気吹出状態について説明する。前提として、ダクト51を通じて吹出口装置1に対し調和空気が継続的に供給される状況にあるものとする。
【0045】
また、パン13は、前回の通信端末60への操作で選択された吹出状態に対応してパン調整部14、15の作動で調整された位置や向きをそのまま維持する仕組みであり、所定の初期状態に復帰する設定とはなっていないものとする。
【0046】
最初に、吹出口装置1の作動状態について説明する。通信端末60に対し、室内空間の使用者による操作で、調和空気の吹出状態の選択がなされると、その情報が通信端末60から吹出口装置1の制御部16に向けて送信される。制御部16が、この送信された情報、すなわち、調和空気の吹出状態として、水平吹出、垂直吹出、一の斜め吹出、及び他の斜め吹出のどれが選択されたかを示す情報、を受け取ると、選択された吹出状態にパン調整部14、15を対応させる作動制御を開始する。
【0047】
使用者が、通信端末60の操作で、調和空気の吹出状態として水平吹出を選択した場合、これに基づいて、制御部16はパン調整部14、15を作動させ、各パン調整部14、15の可動部14b、15bを固定部14a、15aに対し室内空間側に進出させた状態とする。ただし、以前の吹出状態の選択に基づいて、パン調整部14、15が当初から同じ水平吹出に対応した状態にある場合には、制御部16はパン調整部14、15を作動させない。
【0048】
こうしてパン13は、各可動部14b、15bに連結された上部の二箇所を、所定の第一の高さ位置に同様に位置させ、パン13の上面を縁部10cの下端に略一致させる状態(第一の状態)となる(
図5参照)。これにより、パン13の上面に案内される調和空気は、天井面と平行となっている上面に沿って外方へ進み、パン13から離れると、パン13の端部と吹出口本体10の縁部10cとの間から吹出されようとする調和空気の気流に横向きの速度成分を与えることで、吹出される調和空気がそのまま天井に沿う気流となり、室内空間への水平吹出が実現することとなる。なお、この第一の状態で、パン13の上面を縁部10cの下端に略一致させる、とは、パン13の上面が、縁部10c下端の数mm上の上限位置から、縁部10c下端に対しパン13の厚み程度下がった下限位置まで、の範囲内に位置することを示している。
【0049】
一方、使用者が調和空気の吹出状態として垂直吹出を選択した場合、これに基づいて、制御部16はパン調整部14、15を作動させ、各パン調整部14、15の可動部14b、15bを固定部14a、15a側に引き込んで退避させた状態とする。ただし、以前の吹出状態の選択に基づいて、パン調整部14、15が当初から同じ垂直吹出に対応した状態にある場合には、制御部16はパン調整部14、15を作動させない。
【0050】
こうしてパン13は、各可動部14b、15bに連結された上部の二箇所を、第一の高さ位置より上方の第二の高さ位置に同様に位置させ、パン13の上面を縁部10cの上端より上側の所定位置に略一致する状態(第二の状態)となる(
図6参照)。これにより、パン13の上面に案内される調和空気は、天井面と平行となっている上面に沿って外方へ進み、パン13から離れた後は外コーン部10b及び縁部10cの案内で進行方向を変えて下向きに進んで、パン13の端部と吹出口本体10との間から吹出されようとする調和空気の気流に下向きの速度成分を与えることで、室内空間への垂直吹出が実現することとなる。
【0051】
また、使用者が調和空気の吹出状態として一の斜め吹出を選択した場合、これに基づいて、制御部16がパン調整部14、15を作動させ、パン調整部14の可動部14bを固定部14aに対し室内空間側に進出させると共に、パン調整部15の可動部15bを固定部15a側に引き込んで退避させた状態とする。ただし、以前の吹出状態の選択に基づいて、パン調整部14、15が当初から同じ一の斜め吹出に対応した状態にある場合には、制御部16はパン調整部14、15を作動させない。
【0052】
こうしてパン13は、各可動部14b、15bに連結された上部の二箇所のうち、可動部14bに連結される方を第一の高さ位置に、可動部15bに連結される方を第二の高さ位置にそれぞれ位置させ、高低差を生じさせることでパン13を傾けた状態(第三の状態)となる(
図7参照)。これにより、パン13の上面に案内される調和空気は、傾いた上面に沿って斜め下方向に進み、パン13の端部と吹出口本体10の縁部10cとの間から吹出されようとする調和空気の気流に斜め下向きの速度成分を与えることで、室内空間への斜め吹出が実現することとなる。
【0053】
さらに、使用者が調和空気の吹出状態として他の斜め吹出を選択した場合、これに基づいて、制御部16がパン調整部14、15を作動させ、パン調整部14の可動部14bを固定部14a側に引き込んで退避させると共に、パン調整部15の可動部15bを固定部15aに対し室内空間側に進出させた状態とする。ただし、以前の吹出状態の選択に基づいて、パン調整部14、15が当初から同じ他の斜め吹出に対応した状態にある場合には、制御部16はパン調整部14、15を作動させない。
【0054】
こうしてパン13は、各可動部14b、15bに連結された上部の二箇所のうち、可動部14bに連結される方を第二の高さ位置に、可動部15bに連結される方を第一の高さ位置にそれぞれ位置させ、高低差を生じさせることでパン13を傾けた状態(第四の状態)となる(
図8参照)。これにより、パン13の上面に案内される調和空気は、傾いた上面に沿って斜め下方向に進み、パン13の端部と吹出口本体10の縁部10cとの間から吹出されようとする調和空気の気流に斜め下向きの速度成分を与えることで、室内空間への斜め吹出が実現することとなる。
【0055】
続いて、吹出口装置1の調和空気吹出状態について説明する。
ダクト51から供給された調和空気は、吹出口本体10のネック部10aを通じて開口領域11に進入し、開口領域11を進行して室内空間側へ向かう中、その大部分は開口領域11の室内空間寄りに位置するパン13の上面に達する。
このパン13の上面で、調和空気は進行方向を変化させ、上面に沿って進むよう案内される。
【0056】
パン13が、使用者による水平吹出の選択に対応して、パン13の上面を縁部10cの下端に略一致させる状態(第一の状態)にある場合(
図5参照)、調和空気の大部分は、天井面と平行となっているパン13の上面に案内されて、このパン13の上面に沿って進み、パン13の端部と吹出口本体10の縁部10cとの間から吹出されようとする調和空気の気流に強い横向きの速度成分を与えることで、調和空気は全体として吹出口本体10の縁部10cの影響をほとんど受けずに、その外側の天井50の方に向かうように室内空間70に吹き出され、天井50に沿う気流となって室内空間に拡散することとなる。
【0057】
特に冷房の場合、調和空気の気流を確実に天井50に沿って水平に吹出せることとなり、室内空気との温度差で下降しやすい低い温度の調和空気の場合でも、気流の室内空間への到達距離を十分に確保できる。
【0058】
また、パン13が、使用者による垂直吹出の選択に対応して、パン13の上面を縁部10cの上端より上側の所定位置に略一致させる状態(第二の状態)にある場合(
図6参照)、調和空気の大部分は、天井面と平行となっているパン13の上面に案内されて、このパン13の上面に沿って進み、パン13を離れた後、吹出口本体10の外コーン部10b及び縁部10cに達する。調和空気は、これら外コーン部10b及び縁部10cに案内されて進行方向を下向きに変え、パン13の端部と吹出口本体10との間から吹出されようとする調和空気の他の気流にも下向きの速度成分を与えることで、調和空気は全体として室内空間70に下向きに吹出され、室内空間70を下向きに進んで居住域に達する。
特に暖房の場合、室内空気との温度差で上昇しやすい温かい調和空気を下向きに吹出すことで、無理なく室内空間を進ませて居住域に到達させることができる。
【0059】
また、冷房の場合に垂直吹出が選択されて、調和空気が下向きに吹出されると、室内空間下方の居住域に対し通常時のドラフトに相当する気流として到達するが、例えば外部から室内空間に入ってきた使用者が垂直吹出の選択操作を行い、こうした調和空気の気流を自ら受けるようにすることで、使用者が外部環境の温度を体感してきた分、室内空間の通常の空気調和状態では冷涼感が不足し物足りなく感じるような状況でも、使用者の体に当たる調和空気の気流から涼しさを使用者に直接体感させて使用者を快適な状態に早期に移行させられるなど、使用者に対する強力な体感温度調整効果を得ることができる。加えて、この場合調和空気は、室内空間のうち狭い領域に向けて吹出されるため、室内空間全体への影響は抑えられる。
【0060】
一方、パン13が、使用者による一の斜め吹出の選択に対応して、パン13の可動部14bに連結される箇所を第一の高さ位置に、可動部15bに連結される箇所を第二の高さ位置にそれぞれ位置させて、パン13を傾けた状態(第三の状態)にある場合(
図7参照)、調和空気は、傾けられたパン13の上面に案内されて、このパン13の上面に沿って斜め下向きに進み、パン13の端部と吹出口本体10の縁部10cとの間から吹出されようとする調和空気の気流に斜め下向きの速度成分を与えることで、調和空気は全体として室内空間70に斜め下向きに吹出され、室内空間70を斜め下向きに進んで居住域に達する。
【0061】
さらに、パン13が、使用者による他の斜め吹出の選択に対応して、パン13の可動部14bに連結される箇所を第二の高さ位置に、可動部15bに連結される箇所を第一の高さ位置にそれぞれ位置させて、パン13を傾けた状態(第四の状態)にある場合(
図8参照)、調和空気は、傾けられたパン13の上面に案内されて、このパン13の上面に沿って斜め下向きに進み、パン13の端部と吹出口本体10の縁部10cとの間から吹出されようとする調和空気の気流に斜め下向きの速度成分を与えることで、調和空気は全体として室内空間70に斜め下向きに吹出され、室内空間70を斜め下向きに進んで居住域に達する。
【0062】
こうした斜め吹出とすると、暖房の場合には室内空気との温度差で上昇しやすい調和空気の気流が過度に天井に沿ったものとならず、無理なく室内空間を進む気流とすることができる。また、冷房の場合には、斜め下向きに吹出される調和空気が、垂直吹出の際と同様に、室内空間下方の居住域に対し通常時のドラフトに相当する気流として到達するが、例えば外部から室内空間に入ってきた使用者が斜め吹出の選択操作を行い、こうした調和空気の気流を自ら受けるようにすることで、使用者を涼しく快適な状態に早期に移行させられるなど、使用者に対する強力な体感温度調整効果を得ることができる。この場合も、調和空気は室内空間のうち狭い領域に向けて吹出されるため、室内空間全体への影響は抑えられる。
【0063】
このように、本実施形態に係る吹出口装置においては、吹出口本体10の開口領域11に配設されて調和空気を案内するパン13に対し、パン調整部14、15でパン13における二箇所を上下動させてパン13を動かし、パン13の前記二箇所を第一の高さ位置に共に位置させる第一の状態と、前記二箇所を第二の高さ位置に共に位置させる第二の状態と、前記二箇所のうち一方を第一の高さ位置、他方を第二の高さ位置にそれぞれ位置させる第三、第四の状態とを切替えて、第一の状態では吹出口本体10の縁部10cの下端に略一致させたパン13の上面での案内に基づいて調和空気を天井50に沿って吹出す水平吹出を行わせ、第二の状態では縁部10cの上端以上の高さとなったパン13の上面と縁部10cでの案内で調和空気を下向きに吹出す垂直吹出を行わせ、また、第三、第四の状態では前記二箇所の高さを異ならせることでパン13を傾け、この傾いたパン13の上面での案内に基づいて調和空気を斜め下向きに吹出す斜め吹出を行わせることから、水平吹出と垂直吹出以外に斜め吹出への切替えを可能として吹出方向の選択の幅を大きくし、吹出方向調整をより柔軟に行うことができ、居住域の人の所望する吹出状態により適合した吹出方向に設定して、調和空気吹出に基づいた室内空間居住域での快適性を向上させられる。
【0064】
なお、前記実施形態に係る吹出口装置において、吹出口本体10はその開口領域11の横断面形状を矩形とする略箱状体として形成され、パン13も開口領域11に対応した矩形の略皿状とされる構成としているが、これに限られるものではなく、パンを傾けた状態でこのパンの傾いた向きに調和空気を案内して吹出可能であれば、開口領域の横断面形状やパンの形状を矩形以外とする構成でもかまわない。
【0065】
ただし、パンにおいて、このパンを傾けた状態における、パンの傾いた向きに第一の端部が位置すると共に、この第一の端部の反対側に第二の端部が位置し、さらにパンの傾く向きと直角をなす方向に第三の端部及び第四の端部がそれぞれ位置すると仮定すると、パンの第一の端部及び第二の端部と吹出口本体との間にそれぞれ位置する開口領域の一部領域は、同じ開口領域のうち、パンの第三の端部及び第四の端部と吹出口本体との間の各領域に対して、パンを傾けていない状態ではより大きくなるようにされ、且つ、パンを傾けた状態で、開口領域のうちパンの第一の端部と吹出口本体との間の領域が、他の領域に対し調和空気の通過抵抗の最も小さい領域とされることが要件となる。
【0066】
この場合、パンを傾けた状態ではパンを傾けた方向の第一の端部と吹出口本体との間の領域には調和空気が進行しやすい一方、第一の端部以外の第二、第三及び第四の各端部と吹出口本体との間の領域には調和空気が進行しにくいことから、パン調整部でパンを傾けた場合は、この傾いたパンによる案内に基づいて、調和空気が開口領域におけるパンの第一の端部と吹出口本体との間の領域から斜め下向きに吹出す一方、開口領域の他の領域には調和空気はほとんど進行せず、第一の端部と吹出口本体との間の領域に調和空気を集中させて、確実に室内空間に対し調和空気の斜め吹出を実行できる。
【0067】
また、前記実施形態に係る吹出口装置において、パン調整部14、15は、それぞれ吹出口本体10に支持される固定部14a、15aと、この固定部14a、15aに対し直線移動可能な可動部14b、15bとを有する公知のリニアアクチュエータとされ、二つ設けられる構成としているが、これに限られるものではなく、パン調整部に他の機構を採用する構成としてもかまわない。
【0068】
例えば、
図9に示すように、パン調整部17を、吹出口本体10に上下移動可能に支持され、パン13の前記二箇所にそれぞれ連結される第一及び第二の各ロッド17a、17bと、こうした各ロッド17a、17bとそれぞれ接し、回転又は移動(往復動)に伴う接触状態変化でロッド17a、17bを上下動させる二つのカム17c、17dと、これら二つのカム17c、17dを同時に回転又は移動させる一つのアクチュエータ17eとからなる構成とすることもできる。
【0069】
この場合、カム17c、17dのプロファイルを適切に設定すれば、アクチュエータ17eによる各カム17c、17dの同時の回転又は移動により、パン13の前記二箇所を前記第一の高さ位置に同様に位置させた状態と、前記二箇所のうち第一のロッド17aに連結した箇所を第一の高さ位置に、第二のロッド17bに連結した箇所を前記第二の高さ位置にそれぞれ位置させた状態と、前記二箇所を第二の高さ位置に同様に位置させた状態と、前記二箇所のうち第一のロッド17aに連結した箇所を第二の高さ位置に、第二のロッド17bに連結した箇所を第一の高さ位置にそれぞれ位置させた状態とを、順次切替可能となり、調和空気の水平吹出、垂直吹出、及び斜め吹出をスムーズに切替えることができる。
【0070】
特に、
図9に示すように、カムを円筒カムとし、一つの円筒体に二つのカム17c、17dを組み込んだ機構とすれば、アクチュエータ17eとしてのモータ又はギアドモータを二つのカム17c、17dをなす円筒体と直結してこれを回転駆動させる簡略な構造とすることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 吹出口装置
10 吹出口本体
10a ネック部
10b 外コーン部
10c 縁部
10d 額縁部
11 開口領域
13 パン
14、15 パン調整部
14a、15a 固定部
14b、15b 可動部
16 制御部
17 パン調整部
17a、17b ロッド
17c、17d カム
17e アクチュエータ
50 天井
51 ダクト
60 通信端末
70 室内空間