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特開2024-142703水栓用電子ユニット及びその組み立て方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142703
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】水栓用電子ユニット及びその組み立て方法
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/05 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E03C1/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054972
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 健介
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA03
2D060BA05
2D060BB02
2D060BC02
2D060BC11
2D060BF03
2D060CA04
(57)【要約】
【課題】組付け性と防水性との双方を確保することが可能な水栓用電子ユニットを提供すること。
【解決手段】センサユニット5(水栓用電子ユニット)は、互いに対向配置される2枚の電子基板21,22を備える基板体20と、基板体20を挿入可能な開口11Aを備えるユニットケース10と、を有する。基板体20は、2枚の電子基板21,22の外周部間に全周に亘って挟み込み状に設けられる環状のスペーサ23を有する。ユニットケース10は、そのケース内周面から縮径状に張り出して、基板体20の開口11Aに臨む側とは反対側に配置される一方の電子基板21を面直方向に全周に亘って突き当てる縮径部12を有する。センサユニット5は、上記縮径部12に基板体20が突き当てられるように収納されたユニットケース10の開口11Aを封止するポッティング材Pを更に有する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓用電子ユニットであって、
互いに対向配置される2枚の電子基板と、2枚の前記電子基板の外周部間に全周に亘って挟み込み状に設けられる環状のスペーサと、を有する基板体と、
該基板体を2枚の前記電子基板の面直方向に挿入可能な開口を備え、前記基板体が収納されるユニットケースと、
該ユニットケースのケース内周面から縮径状に張り出して、前記基板体のうち前記開口に臨む側とは反対側に配置される一方の前記電子基板を前記面直方向に全周に亘って突き当てる縮径部と、
前記基板体が収納された前記ユニットケースの前記開口を封止するポッティング材と、を有する水栓用電子ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の水栓用電子ユニットであって、
前記基板体が、いずれかの前記電子基板と前記スペーサとを互いに前記面直方向の嵌合により位置決めする凹凸の嵌合部と、2枚の前記電子基板同士を前記面直方向のスナップフィットを伴って互いに電気的に接続させるように位置決めする電気的接続部と、を有する水栓用電子ユニット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の水栓用電子ユニットであって、
前記スペーサと2枚の前記電子基板とに貫通するように前記縮径部に締結され、該締結により前記基板体を前記ユニットケースに固定する固定ねじを更に有する水栓用電子ユニット。
【請求項4】
水栓用電子ユニットの組み立て方法であって、
2枚の電子基板の外周部間に環状のスペーサをいずれかの前記電子基板と嵌合させるように全周に亘って面直方向に挟み込み状にセットすると共に、2枚の前記電子基板同士をスナップフィットを伴って互いに電気的に接続させる基板体組み立て工程と、
該基板体組み立て工程によって組み立てられた2枚の前記電子基板と前記スペーサとから成る基板体をユニットケースの開口から前記面直方向に挿入することで、前記基板体を前記ユニットケースのケース内周面から縮径状に張り出す縮径部に前記面直方向に全周に亘って突き当てるように前記ユニットケースに収納する基板体収納工程と、
前記基板体が収納された前記ユニットケースの前記開口をポッティング材で封止するポッティング工程と、を有する水栓用電子ユニットの組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓用電子ユニット及びその組み立て方法に関する。詳しくは、電子基板が収納されるユニットケースの開口がポッティング材により封止される水栓用電子ユニット及びその組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水栓装置に搭載されるセンサケース内の電子基板が、ポッティング材により外部に対して封止された構成が開示されている。具体的には、センサケース内に電子基板と電子基板を覆うバックプレートとが開口から挿入されている。そして、バックプレートより外側のセンサケースの開口に、ポッティング材が充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-169460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、バックプレートとケース内面との間の隙間が狭いと、バックプレートが挿入しづらくなり、逆に広いと、ポッティング液がバックプレートを越えて内部まで浸み込んでしまうという問題がある。そこで、本発明は、組付け性と防水性との双方を確保することが可能な水栓用電子ユニット及びその組み立て方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の水栓用電子ユニット及びその組み立て方法は、次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明は、水栓用電子ユニットであって、互いに対向配置される2枚の電子基板と、2枚の前記電子基板の外周部間に全周に亘って挟み込み状に設けられる環状のスペーサと、を有する基板体と、該基板体を2枚の前記電子基板の面直方向に挿入可能な開口を備え、前記基板体が収納されるユニットケースと、該ユニットケースのケース内周面から縮径状に張り出して、前記基板体のうち前記開口に臨む側とは反対側に配置される一方の前記電子基板を前記面直方向に全周に亘って突き当てる縮径部と、前記基板体が収納された前記ユニットケースの前記開口を封止するポッティング材と、を有する水栓用電子ユニットである。
【0007】
第1の発明によれば、基板体の一方の電子基板がユニットケースの縮径部に全周に亘って面直方向に突き当てられることで、これらの間からポッティング液が中まで浸み込むことが抑制される。したがって、ポッティング液の浸み込みを基板体とユニットケースのケース内周面との間で防ぐ構成と比べて、これらの間の隙間を広く確保して、基板体の組み付け性を向上させることができる。それにより、基板体の組付け性と防水性との双方を確保することができる。
【0008】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記基板体が、いずれかの前記電子基板と前記スペーサとを互いに前記面直方向の嵌合により位置決めする凹凸の嵌合部と、2枚の前記電子基板同士を前記面直方向のスナップフィットを伴って互いに電気的に接続させるように位置決めする電気的接続部と、を有する水栓用電子ユニットである。
【0009】
第2の発明によれば、基板体を1部品にユニット化してからユニットケースの内部に組み付けることができる。それにより、基板体のユニットケースへの組付け性を更に向上させることができる。
【0010】
本発明の第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記スペーサと2枚の前記電子基板とに貫通するように前記縮径部に締結され、該締結により前記基板体を前記ユニットケースに固定する固定ねじを更に有する水栓用電子ユニットである。
【0011】
第3の発明によれば、固定ねじにより、基板体を2枚の電子基板の間にスペーサを適切に押し付けた状態にしてユニットケースの内部に固定することができる。また、一方の電子基板を縮径部に適切に押し付けた状態にして、ポッティング液の浸み込みをより適切に防ぐことができる。それにより、基板体の防水性を更に向上させることができる。
【0012】
本発明の第4の発明は、水栓用電子ユニットの組み立て方法であって、2枚の電子基板の外周部間に環状のスペーサをいずれかの前記電子基板と嵌合させるように全周に亘って面直方向に挟み込み状にセットすると共に、2枚の前記電子基板同士をスナップフィットを伴って互いに電気的に接続させる基板体組み立て工程と、該基板体組み立て工程によって組み立てられた2枚の前記電子基板と前記スペーサとから成る基板体をユニットケースの開口から前記面直方向に挿入することで、前記基板体を前記ユニットケースのケース内周面から縮径状に張り出す縮径部に前記面直方向に全周に亘って突き当てるように前記ユニットケースに収納する基板体収納工程と、前記基板体が収納された前記ユニットケースの前記開口をポッティング材で封止するポッティング工程と、を有する水栓用電子ユニットの組み立て方法である。
【0013】
第4の発明によれば、基板体の一方の電子基板をユニットケースの縮径部に全周に亘って面直方向に突き当ててからユニットケースの開口をポッティング材で封止することで、これらの間からポッティング液が中まで浸み込むことが抑制される。したがって、基板体とユニットケースのケース内周面との間でポッティング液の浸み込みを防ぐ構成と比べて、これらの間の隙間を広く確保して、基板体の組み付け性を向上させることができる。それにより、基板体の組付け性と防水性との双方を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係る水栓用電子ユニットの概略構成を表す斜視図である。
図2】水栓用電子ユニットを水栓本体から外した分解斜視図である。
図3図2のIII矢視図である。
図4】水栓用電子ユニットをその中心を通る垂直線で切断して表す部分断面斜視図である。
図5】基板体をユニットケースから外した分解斜視図である。
図6】ユニットケースの背面図である。
図7】基板体の分解斜視図である。
図8】基板体の組み付け状態をその中心を通る垂直線で切断して表す部分断面斜視図である。
図9】基板体をユニットケースの縮径部に突き当てるようにセットした状態を表す部分断面斜視図である。
図10図3のX-X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0016】
《第1の実施形態》
(水栓用電子ユニット(センサユニット5)の概略構成)
始めに、本発明の第1の実施形態に係る水栓用電子ユニットであるセンサユニット5の構成について、図1図10を用いて説明する。なお、以下の説明において、手前、奥、上、下、左、右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。
【0017】
各図中に示す方向は、それぞれ、センサユニット5が適用された水栓装置1の正面に立つ使用者から見た方向となっている。以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、図1図10のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係るセンサユニット5は、図示しない洗面化粧台の奥側の天板上に設置される、いわゆる台付きタイプの水栓装置1に組み込まれている。水栓装置1は、洗面化粧台の下部から供給される湯と水とを内部で混合して吐水することが可能な混合水栓として構成されている。
【0019】
具体的には、水栓装置1は、洗面化粧台の上部に組み付く水栓本体2と、水栓本体2の上部からグースネック状に延び出る吐水管3と、を有する。また、水栓装置1は、水栓本体2の右側部に組み付けられたハンドル4と、水栓本体2の左側部に組み込まれたセンサユニット5と、を有する。
【0020】
水栓装置1は、上記ハンドル4が使用者により前後に動かされることで、水栓本体2の内部に取り込まれる湯水の混合割合が、操作位置に応じた設定温度となるように調節される。また、水栓装置1は、ハンドル4が使用者により図示の起立位置から右方へと倒されることで、吐水管3から吐水される湯水の吐水量が、右方への傾倒に伴い徐々に増大するように調節される。
【0021】
また、水栓装置1は、水栓本体2の左側部に組み込まれたセンサユニット5に対する手の差し出しにより、吐水管3からの湯水の吐水/止水が切り替えられる構成とされる。センサユニット5は、使用者の手がその正面に差し出されることで、手の差し出しを非接触で検出することが可能な反射型の光電センサ(赤外線センサ)を備える。
【0022】
水栓装置1は、センサユニット5に手が差し出される前の初期状態では、ハンドル4の操作位置に依らず止水された状態とされる。水栓装置1は、センサユニット5に手が差し出されることにより、ハンドル4の操作位置に応じた設定温度及び設定吐水量の湯水が吐水管3から吐水される。また、水栓装置1は、センサユニット5に再び手が差し出されることにより、吐水管3からの吐水が止められる(止水される)。
【0023】
以上が、水栓装置1の基本構成となっている。センサユニット5は、このような水まわり環境で使用される構成とされるが、内部部品が適切に封止されていることで、外部の水まわり環境から適切に守られる構成とされている。以下、センサユニット5の各部の具体的な構成について、詳しく説明する。
【0024】
(各部構成)
図1図2に示すように、センサユニット5は、水栓本体2の左側部から膨出する円筒状の取付部2Aの内部に組み込まれている。図1に示すように、水栓本体2の取付部2Aには、その内部のセンサユニット5に蓋をするように筒端の開口を塞ぐセンサカバー5Aが取り付けられている。センサカバー5Aは、半透明な樹脂プレートから成る。
【0025】
図2図4に示すように、センサユニット5は、有底円筒状のユニットケース10と、ユニットケース10の円筒内に組み込まれる基板体20と、を有する。また、センサユニット5は、基板体20が組み込まれたユニットケース10の図示右側の開口11Aを封止するポッティング材Pを更に有する。
【0026】
図4図6に示すように、ユニットケース10は、基板体20を内部に収納可能な円筒状の円筒部11と、円筒部11の図示左端部から全周に亘って段差状に縮径されるように有底円筒状に張り出す縮径部12と、を有する。また、ユニットケース10は、縮径部12の底板部分を部分的に左側へ凹ませるように張り出すセンサ収納部13を有する。
【0027】
図4図5に示すように、ユニットケース10は、その円筒部11の図示右側の開口11Aから基板体20が円筒内に組み込まれる構成とされる。ユニットケース10は、その円筒部11の筒内に基板体20が差し込まれることで、円筒部11の図示左端部に形成された縮径部12に基板体20が図示右方(筒軸方向)から突き当てられる。詳しくは、基板体20が、縮径部12の図示右側面に対して、周方向の全域に亘って筒軸方向に面当接するように突き当てられる。
【0028】
それにより、ユニットケース10は、基板体20の図示左方への移動を規制した状態として、基板体20をその内部に収納するようになっている。基板体20は、上記の規制位置まで差し込まれることで、ユニットケース10に対して円筒部11の開口11Aに臨む図示右端よりも左方に入り込んだ状態にセットされる。
【0029】
図5図6に示すように、円筒部11の内周面には、その筒周方向の離間する2箇所の位置に、筒軸方向に延びる円筒形状を成す形に膨出する本体固定部11Bが形成されている。これら本体固定部11Bは、ユニットケース10を不図示のねじを用いて図2に示す水栓本体2の取付部2Aに固定するためのねじ通し部となるものである。これら本体固定部11Bには、それらの通し孔B1に図示左側の孔開口から不図示のねじがそれぞれ通される。
【0030】
図4図5に示すように、縮径部12は、円筒部11の図示左端部から全周に亘って段差状に縮径される形に形成されている。詳しくは、図6に示すように、縮径部12は、円筒部11の2つの本体固定部11Bが形成された内周面の形に沿って、ひとまわり小さな円筒形状を成す形に形成されている。縮径部12の図示右側面(図4図5参照)は、その全域が、図示右方(筒軸方向)に真っ直ぐ面を向ける平坦面となっている。
【0031】
図5図6に示すように、縮径部12の筒周方向の離間する2箇所の位置には、図示右方(筒軸方向)に丸ピン状に突出するダボ12Aが形成されている。また、縮径部12の筒周方向の離間する別の2箇所の位置には、丸孔状に凹むねじ孔12Bが形成されている。上述した2つの本体固定部11Bと、2つのダボ12Aと、2つのねじ孔12Bとは、それぞれが筒周方向(図示時計回り)に1つずつこの順に並ぶように形成されている。
【0032】
図7に示すように、基板体20は、互いに対向配置される2枚の円板状の電子基板21,22と、これらの外周部間に挟み込まれる環状のスペーサ23と、図示左側の電子基板21の左側部に装着されるセンサ素子部24と、を有する。センサ素子部24は、高さ方向に並ぶ3つの発光素子であるLED光源と1つの受光素子とを備える構成とされる。基板体20は、2枚の電子基板21,22を備えることで、これらによって複数の電子部品を実装可能な実装面積が広く確保された構成とされる。
【0033】
2枚の電子基板21,22は、それぞれ、図5で上述したユニットケース10の円筒部11の筒内形状、すなわち円筒部11の2つの本体固定部11Bを有する筒内形状に略合致する、ひとまわり小さな円板形状に形成されている。スペーサ23は、2枚の電子基板21,22の外周部に沿ったリング形状とされる。スペーサ23は、その外径が各電子基板21,22の外径と略同一となる形状とされる。
【0034】
図5及び図8に示すように、基板体20は、2枚の電子基板21,22が互いの間にスペーサ23を挟み込むようにサブアッシされた状態から、ユニットケース10の円筒内に組み込まれる。基板体20は、2枚の電子基板21,22とスペーサ23とに互いを一体にサブアッシすることが可能な嵌合構造を備える。
【0035】
図7に示すように、具体的には、図示左側の電子基板21には、その周方向の離間する4箇所の位置に、丸孔状に貫通する2つのダボ孔21Aと2つの通し孔21Bとが交互に並んで形成されている。また、この電子基板21の図示右側面には、もう一方の電子基板22との電気的な接続を行うための接続部となるブロック状に張り出す電気的接続部21Cが実装されている。
【0036】
一方、図示右側の電子基板22にも、その周方向の離間する4箇所の位置に、丸孔状に貫通する2つのダボ孔22Aと2つの通し孔22Bとが交互に並んで形成されている。また、この電子基板22の図示左側面にも、上述したもう一方の電子基板21の電気的接続部21Cと電気的に接続される角筒状に張り出す電気的接続部22Cが実装されている。
【0037】
図示左側の電子基板21に形成された2つのダボ孔21A、2つの通し孔21B、及び電気的接続部21Cと、図示右側の電子基板22に形成された2つのダボ孔22A、2つの通し孔22B、及び電気的接続部22Cとは、これらを各電子基板21,22の対向方向(面直方向)から見たそれぞれの位置が互いに一致する関係となっている。図示右側の電子基板22の電気的接続部22Cと図示左側の電子基板21の電気的接続部21Cとは、互いを嵌合させるように差し込むことで、互いに電気的な接続を伴って一体化された状態にスナップフィットされるようになっている。
【0038】
スペーサ23には、そのリング周方向の離間する2箇所の位置に、図示右方(筒軸方向)に丸ピン状に突出する2つのダボ23Aが形成されている。また、スペーサ23のリング周方向の離間する別の2箇所の位置には、丸孔状に貫通する2つの通し孔23Cが形成されている。
【0039】
スペーサ23の各ダボ23Aが形成された箇所の裏面、すなわち図示左側面には、それぞれ、各ダボ23Aの裏側を丸穴状に凹ませるダボ孔23Bが形成されている。上記スペーサ23に形成された2つのダボ23A(ダボ孔23B)及び2つの通し孔23Cと、各電子基板21,22に形成された2つのダボ孔21A,22A及び2つの通し孔21B,22Bとは、これらを各電子基板21,22の対向方向(面直方向)から見たそれぞれの位置が互いに一致する関係となっている。
【0040】
(組み立て方法)
上述したセンサユニット5は、次の手順により組み立てられている。先ず、図5に示すように、基板体20をユニットケース10に組み込む前に、その構成部品を一体化させた状態にサブアッシする(基板体組み立て工程)。
【0041】
具体的には、図7に示すように、先ず、スペーサ23に形成された各ダボ23Aを、図示右側の電子基板22に形成された対応する各ダボ孔22Aに嵌合させる。それにより、スペーサ23が、図示右側の電子基板22に対して、各々の対応する各通し孔23C,22B同士が互いに一直線上の位置に並ぶように位置決めされた状態に固定される(図8参照)。ここで、上記嵌合構造を構成する各ダボ23Aと各ダボ孔22Aとが、本発明の「凹凸の嵌合部」に相当する。
【0042】
次いで、図示左側の電子基板21の電気的接続部21Cを、スペーサ23のリング内に露出する図示右側の電子基板22の電気的接続部22Cに図示左側から差し込んでスナップフィットさせる。これにより、2枚の電子基板21,22同士が、互いの間にスペーサ23を挟み込むようにサブアッシされた状態となる。
【0043】
上記サブアッシにより、図8に示すように、2枚の電子基板21,22と、これらの間に挟持されるスペーサ23とが、各々の対応する各通し孔21B,22B,23C同士が互いに一直線上の位置に並ぶように位置決めされた状態に固定される。次いで、図9に示すように、上記サブアッシされた基板体20をユニットケース10の開口11Aからユニットケース10内へと差し込む(基板体収納工程)。
【0044】
この差し込みにより、センサ素子部24がセンサ収納部13に収められる。また、図10に示すように、ユニットケース10の縮径部12に形成された2つのダボ12Aが、図示左側の電子基板21に形成された対応する2つの各ダボ孔21Aとスペーサ23に形成された2つの各ダボ孔23Bとに入り込むように嵌合される。そして、この嵌合と共に、図示左側の電子基板21の外周部が、ユニットケース10の縮径部12の図示右側面に、筒周方向の全域に亘って面当接した状態に突き当てられる。
【0045】
この組み付けにより、基板体20が、ユニットケース10に対して、対応する各通し孔21B,22B,23Cが縮径部12に形成された2つのねじ孔12Bと互いに一直線上に並ぶ状態にセットされる。そして、基板体20は、ユニットケース10の各ダボ12Aとの嵌合により、上記組み付けられた位置に仮固定される。ここで、縮径部12に突き当てられる図示左側の電子基板21が、本発明の「一方の電子基板」に相当する。
【0046】
次に、基板体20の対応する各通し孔21B,22B,23Cにそれぞれ固定ねじBを差し込んで、ユニットケース10の対応する各ねじ孔12Bに締結する。それにより、基板体20が、ユニットケース10に対して本固定される。詳しくは、基板体20が固定ねじBによりユニットケース10の縮径部12に形成されたねじ孔12Bに締結されることで、2枚の電子基板21,22の間にスペーサ23が適切に押し挟まれた状態に固定される。また、電子基板21が縮径部12に適切に押し付けられて、これらの間を全周に亘って強く密着させた状態にすることができる。
【0047】
上記組み付けにより、基板体20は、ユニットケース10に対して、円筒部11の内周面との間に筒周方向の全域に亘って略一定幅となる径方向の隙間が形成された状態にセットされる。その際、基板体20は、ユニットケース10の円筒部11との間に上記隙間を有することで、隙間が略無視されるほど僅かしかない構成と比べて、円筒部11への組み付けを簡便に行えるようになっている。
【0048】
次に、図3図4及び図10に示すように、基板体20が収納されたユニットケース10の開口11Aをポッティング材Pで封止する(ポッティング工程)。ポッティング材Pには、樹脂封止剤として公知のウレタン樹脂剤やエポキシ樹脂剤やシリコン樹脂剤が用いられる。このポッティング材Pによる封止により、基板体20がユニットケース10の開口11Aから外気に触れないように保護される。
【0049】
ポッティング材Pは、上記基板体20が収納されたユニットケース10の開口11Aに対し、上記の樹脂封止剤から成るポッティング液を注入して硬化させることで形成されている。その際、開口11Aにポッティング液が注入されると、ポッティング液は、基板体20と円筒部11の内周面との間に隙間が形成されていることで、この隙間を通って縮径部12に至る位置まで筒軸方向と筒周方向とに広く行き渡るように入り込んでいく。
【0050】
上記ポッティング液は、縮径部12に基板体20が全周に亘って突き当てられていることで、これらの当接位置を抜けて内部(センサ収納部13)へと浸み込まないように堰き止められる。図3に示すように、上記ポッティング液は、ユニットケース10の開口11Aに臨む基板体20の電子基板22を外部に対して完全に覆うように開口11A内に注入される。その結果、上記ポッティング液が硬化されて形成されるポッティング材Pにより、基板体20がユニットケース10の開口11Aから外気に触れないように完全に封止される。
【0051】
以上をまとめると、第1の実施形態に係るセンサユニット(水栓用電子ユニット)5及びその組み立て方法は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0052】
すなわち、水栓用電子ユニット(5)は、互いに対向配置される2枚の電子基板(21,22)と、2枚の電子基板(21,22)の外周部間に全周に亘って挟み込み状に設けられる環状のスペーサ(23)と、を有する基板体(20)と、基板体(20)が収納されるユニットケース(10)と、を有する。ユニットケース(10)は、基板体(20)を2枚の電子基板(21,22)の面直方向に挿入可能な開口(11A)を備える。
【0053】
また、ユニットケース(10)は、そのケース内周面から縮径状に張り出して、基板体(20)のうち開口(11A)に臨む側とは反対側に配置される一方の電子基板(21)を面直方向に全周に亘って突き当てる縮径部(12)を有する。また、水栓用電子ユニット(5)は、基板体(20)が収納されたユニットケース(10)の開口(11A)を封止するポッティング材(P)を更に有する。
【0054】
上記構成によれば、基板体(20)の一方の電子基板(21)がユニットケース(10)の縮径部(12)に全周に亘って面直方向に突き当てられることで、これらの間からポッティング液が中まで浸み込むことが抑制される。したがって、ポッティング液の浸み込みを基板体(20)とユニットケース(10)のケース内周面との間で防ぐ構成と比べて、これらの間の隙間を広く確保して、基板体(20)の組み付け性を向上させることができる。それにより、基板体(20)の組付け性と防水性との双方を確保することができる。
【0055】
また、基板体(20)が、いずれかの電子基板(22)とスペーサ(23)とを互いに面直方向の嵌合により位置決めする凹凸の嵌合部(22A,23A)と、2枚の電子基板(21,22)同士を面直方向のスナップフィットを伴って互いに電気的に接続させるように位置決めする電気的接続部(21C,22C)と、を有する。上記構成によれば、基板体(20)を1部品にユニット化してからユニットケース(10)の内部に組み付けることができる。それにより、基板体(20)のユニットケース(10)への組付け性を更に向上させることができる。
【0056】
また、スペーサ(23)と2枚の電子基板(21,22)とに貫通するように縮径部(12)に締結され、この締結により基板体(20)をユニットケース(10)に固定する固定ねじ(B)を更に有する。上記構成によれば、固定ねじ(B)により、基板体(20)を2枚の電子基板(21,22)の間にスペーサ(23)を適切に押し付けた状態にしてユニットケース(10)の内部に固定することができる。また、一方の電子基板(21)を縮径部(12)に適切に押し付けた状態にして、ポッティング液の浸み込みをより適切に防ぐことができる。それにより、基板体(20)の防水性を更に向上させることができる。
【0057】
また、水栓用電子ユニット(5)の組み立て方法は、2枚の電子基板(21,22)の外周部間に環状のスペーサ(23)を全周に亘って挟み込むようにセットすることで、これらを互いに2枚の電子基板(21,22)の面直方向に嵌合させて位置決めすると共に、2枚の電子基板(21,22)同士を面直方向のスナップフィットを伴って互いに電気的に接続させる基板体組み立て工程を有する。
【0058】
また、水栓用電子ユニット(5)の組み立て方法は、基板体組み立て工程と、基板体収納工程と、ポッティング工程と、を有する。基板体組み立て工程は、2枚の電子基板(21,22)の外周部間に環状のスペーサ(23)をいずれかの電子基板(22)と嵌合させるように全周に亘って面直方向に挟み込み状にセットすると共に、2枚の電子基板(21,22)同士をスナップフィットを伴って互いに電気的に接続させる工程である。
【0059】
基板体収納工程は、基板体組み立て工程によって組み立てられた2枚の電子基板(21,22)とスペーサ(23)とから成る基板体(20)をユニットケース(10)の開口(11A)から面直方向に挿入することで、基板体(20)をユニットケース(10)のケース内周面から縮径状に張り出す縮径部(12)に面直方向に全周に亘って突き当てるようにユニットケース(10)に収納する工程である。ポッティング工程は、基板体(20)が収納されたユニットケース(10)の開口(11A)をポッティング材(P)で封止する工程である。
【0060】
上記構成によれば、基板体(20)の一方の電子基板(21)をユニットケース(10)の縮径部(12)に全周に亘って面直方向に突き当ててからユニットケース(10)の開口(11A)をポッティング材(P)で封止することで、これらの間からポッティング液が中まで浸み込むことが抑制される。したがって、基板体(20)とユニットケース(10)のケース内周面との間でポッティング液の浸み込みを防ぐ構成と比べて、これらの間の隙間を広く確保して、基板体(20)の組み付け性を向上させることができる。それにより、基板体(20)の組付け性と防水性との双方を確保することができる。
【0061】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0062】
1.本発明の水栓用電子ユニットは、センサユニットの他、マイクユニットやスイッチユニット等の電子基板を備える水栓用の電子ユニットとして構成されるものであっても良い。基板体を構成する2枚の電子基板は、円板状の他、矩形板等の多角形の板形状から成るものであっても良い。スペーサは、2枚の電子基板の形に合わせた環形状とされるものであれば良く、円環状の他、多角環状とされるものであっても良い。
【0063】
2.基板体のスペーサとどちらかの電子基板とを互いに嵌合させる凹凸の嵌合部は、スペーサをどちらの電子基板に嵌合させるものであっても良い。
【0064】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1…水栓装置、2…水栓本体、2A…取付部、3…吐水管、4…ハンドル、5…センサユニット(水栓用電子ユニット)、5A…センサカバー、10…ユニットケース、11…円筒部、11A…開口、11B…本体固定部、B1…通し孔、12…縮径部、12A…ダボ、12B…ねじ孔、13…センサ収納部、20…基板体、21…電子基板(一方の電子基板)、21A…ダボ孔、21B…通し孔、21C…電気的接続部、22…電子基板、22A…ダボ孔(嵌合部)、22B…通し孔、22C…電気的接続部、23…スペーサ、23A…ダボ(嵌合部)、23B…ダボ孔、23C…通し孔、24…センサ素子部、P…ポッティング材、B…固定ねじ
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