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特開2024-142717支持シート、及びワーク加工物の製造方法
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  • 特開-支持シート、及びワーク加工物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142717
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】支持シート、及びワーク加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241003BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20241003BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241003BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241003BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/38
C09J201/00
B32B27/00 M
B32B27/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055008
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 壮起
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑耶
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
5F063
【Fターム(参考)】
4F100AK07A
4F100AK25B
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA02B
4F100CB05B
4F100DD07A
4F100EJ54
4F100GB41
4F100JA05
4F100JA06
4F100JA07
4F100JB14B
4F100JK06B
4F100JL13B
4F100JN01
4F100YY00B
4J004AA01
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004AB07
4J004BA02
4J004CA04
4J004CC04
4J004DB02
4J004EA06
4J004FA05
4J040DF031
4J040DF061
4J040EF282
4J040EF341
4J040FA132
4J040FA291
4J040GA01
4J040JB08
4J040JB09
4J040LA01
4J040LA02
4J040NA20
4J040PA20
4J040PA42
5F063AA01
5F063AA16
5F063AA18
5F063AA33
5F063BA20
5F063BA41
5F063BA42
5F063BA43
5F063BA44
5F063BA45
5F063BA47
5F063BA48
5F063CB07
5F063CB29
5F063DD01
5F063DD25
5F063DD55
5F063DD68
5F063DD85
5F063DE11
5F063DE19
5F063DG27
5F063EE04
5F063EE07
5F063EE08
5F063EE23
5F063EE25
5F063EE27
5F063EE29
5F063EE34
5F063EE42
5F063EE43
5F063EE44
5F063EE45
5F063FF33
(57)【要約】
【課題】基材と粘着剤層とを備えた支持シートであって、前記粘着剤層はエネルギー線硬化性であり、支持シートを140℃以上の高温で加熱した場合に、加熱後の支持シートの外観が変化し、加熱後の支持シートからのワーク加工物の正常なピックアップを可能とする支持シートの提供。
【解決手段】基材11と、その一方の面11a上に設けられた粘着剤層12を備えた支持シート1であって、支持シート1の、その加熱後の光透過率の平均値と、その加熱前の光透過率の平均値と、の差が、30%以上であり、支持シート1を粘着剤層12によってシリコンミラーウエハのミラー面に貼付し、貼付後の粘着剤層12を140℃で加熱し、加熱後の粘着剤層12をエネルギー線硬化させ、粘着剤層12のエネルギー線硬化物と、前記シリコンミラーウエハと、の間の粘着力(X1)を測定したとき、前記粘着力(X1)が500mN/25mm以下である、支持シート1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持シートであって、
前記支持シートは、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備え、
前記粘着剤層がエネルギー線硬化性であり、
前記支持シートの、400~800nmの波長域での光透過率の平均値(L1)と、前記支持シートを140℃で2時間加熱したときの、加熱後の前記支持シートの、400~800nmの波長域での光透過率の平均値(L2)と、の差が、30%以上であり、
前記支持シートを、前記粘着剤層によってシリコンミラーウエハのミラー面に貼付し、貼付後の前記粘着剤層を140℃で加熱し、加熱後の前記粘着剤層をエネルギー線硬化させ、前記粘着剤層のエネルギー線硬化物と、前記シリコンミラーウエハと、の間の粘着力(X1)を測定したとき、前記粘着力(X1)が500mN/25mm以下である、支持シート。
【請求項2】
前記粘着剤層が、ブロック型の架橋剤(β1)を含有する、請求項1に記載の支持シート。
【請求項3】
前記支持シートの、400~800nmの波長域での光透過率の平均値(L1)が、80%以上である、請求項1又は2に記載の支持シート。
【請求項4】
前記支持シートを、前記粘着剤層によってステンレス鋼板の表面に貼付し、貼付後の前記粘着剤層を140℃で加熱し、加熱後の前記粘着剤層と、前記ステンレス鋼板と、の間の粘着力(Y2)を測定したとき、前記粘着力(Y2)が6000mN/25mm以下である、請求項1又は2に記載の支持シート。
【請求項5】
前記支持シートを、前記粘着剤層によってシリコンミラーウエハのミラー面に貼付し、貼付後の前記粘着剤層を130℃で加熱し、加熱後の前記粘着剤層をエネルギー線硬化させ、前記粘着剤層のエネルギー線硬化物と、前記シリコンミラーウエハと、の間の粘着力(X11)を測定したとき、下記式(i):
粘着力変化率=粘着力(X1)/粘着力(X11)×100 (i)
で算出される粘着力変化率が90~150%である、請求項1又は2に記載の支持シート。
【請求項6】
前記支持シートを140℃で2時間加熱したときの、加熱後の前記支持シートのヘーズ(h2)と、前記支持シートのヘーズ(h1)と、の差が、15%以上である、請求項1又は2に記載の支持シート。
【請求項7】
前記支持シートを、前記粘着剤層によってステンレス鋼板の表面に貼付し、前記支持シートを備えた前記ステンレス鋼板を、23℃の温度条件下で30分間静置保管し、前記粘着剤層と、前記ステンレス鋼板と、の間の粘着力(Y0)を測定したとき、前記粘着力(Y0)が2000mN/25mm以上である、請求項1又は2に記載の支持シート。
【請求項8】
ワーク加工物の製造方法であって、
前記製造方法は、請求項1又は2に記載の支持シート中の前記粘着剤層を、ワークと固定用治具に貼付することにより、前記ワークと、前記ワークに設けられた前記支持シートと、を備えた支持シート付きワークを、前記固定用治具に固定する貼付工程と、
前記貼付工程の後に、前記固定用治具に固定した前記支持シート中の前記粘着剤層を加熱する加熱工程と、
前記貼付工程の後に、前記固定用治具に固定した前記支持シート付きワーク中の前記ワークを加工することにより、前記ワーク加工物を作製する加工工程と、
前記加熱工程及び加工工程の後に、前記固定用治具に貼付した前記粘着剤層をエネルギー線硬化させる硬化工程と、
前記硬化工程の後に、前記粘着剤層の硬化物から前記ワーク加工物を引き離してピックアップするピックアップ工程と、を有する、ワーク加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持シート、及びワーク加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハ等のワークを加工し、チップ等のワーク加工物を製造する際には、支持シートが用いられる。典型的な支持シートとしては、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えて構成された支持シートが挙げられる。支持シート中の粘着剤層は、例えば、加工対象であるワークに貼付されて、支持シートは加工中のワークを固定する。加工がダイシングである場合には、支持シートはダイシングシートとして機能する。得られたワーク加工物は、最終的に、支持シートから引き離されてピックアップされ、目的とする用途で用いられる。このとき、粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合には、粘着剤層をエネルギー線硬化させることで、その硬化物とワーク加工物との間の粘着力が低下するため、ワーク加工物のピックアップが容易となる。
【0003】
粘着剤層の基材側とは反対側の面上には、さらに、ワークに保護膜を形成するための保護膜形成フィルムが設けられて、保護膜形成用複合シートが構成されることもある。保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムは、例えば、加工対象であるワークに貼付されて、保護膜形成用複合シートは加工中のワークを固定するとともに、ワーク又はワーク加工物に保護膜を形成する。得られたワーク加工物は、最終的に、保護膜を備えた状態で支持シートから引き離されてピックアップされ、目的とする用途で用いられる。そして、上記と同様に、粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合には、粘着剤層をエネルギー線硬化させることで、保護膜を備えたワーク加工物のピックアップが容易となる。
【0004】
一方、支持シートは、ワーク又はワーク加工物が貼付された状態で、加熱されることがある。この加熱は、例えば、ワークの表面に付着している低分子量の樹脂成分等の異物を除去するために行われることがある。また、ワークのダイシング等の加工時に発生し、ワーク加工物の表面に付着している微細な異物を水によって洗浄し、除去した後に、ワーク加工物等を乾燥させるために行われることもある。そして、これらの加熱は、通常、加熱温度の上限値を145℃程度として行われる。ところが、支持シートの耐熱性が不十分であると、ワーク又はワーク加工物が貼付された支持シートを、このような温度で加熱すると、最終的にワーク加工物を支持シートからピックアップできなくなることがあった。
【0005】
耐熱性を有し、加熱を行うのに適した支持シートとしては、基材と粘着剤層を備え、120℃で4時間加熱した後における基材の23℃におけるヤング率と、120℃における基材の貯蔵弾性率E’が、いずれも特定の範囲に規定された支持シート(ワーク加工用シート)が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-119592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ワーク加工物の製造時には、上記のように、ワークと、前記ワークに設けられた支持シートと、を備えた支持シート付きワークを作製するとともに、前記支持シート付きワークを、その中の粘着剤層によって、リングフレーム等の固定用治具に貼付して固定する。さらに、ワークをワーク加工物とし、支持シート付きワークを支持シート付きワーク加工物とする。支持シート付きワーク又は支持シート付きワーク加工物は、上記のとおり、140℃以上の高温で加熱されることがある。
【0008】
支持シートを140℃以上の高温で加熱した場合には、加熱後の支持シート、特に支持シート中の粘着剤層の外観が変化すると、支持シートの識別性が高くなり(支持シートをより容易に識別でき)、支持シートをこのような高温で加熱したという履歴を容易に確認できるため、有用である。
一方で、支持シートを140℃以上の高温で加熱した場合には、加熱後の支持シートからワーク加工物を正常にピックアップできないことがある。
そこで、支持シートとして、その高温での加熱後に、その外観が変化し、ワーク加工物の正常なピックアップを可能とするものが望まれている。
【0009】
これに対して、特許文献1で開示されている支持シートは、これらの特性の実現を目的としていない。
【0010】
本発明は、基材と粘着剤層とを備えた支持シートであって、前記粘着剤層はエネルギー線硬化性であり、支持シートを140℃以上の高温で加熱した場合に、加熱後の支持シートの外観が変化し、加熱後の支持シートからのワーク加工物の正常なピックアップを可能とする支持シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1] 支持シートであって、前記支持シートは、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備え、前記粘着剤層がエネルギー線硬化性であり、前記支持シートの、400~800nmの波長域での光透過率の平均値(L1)と、前記支持シートを140℃で2時間加熱したときの、加熱後の前記支持シートの、400~800nmの波長域での光透過率の平均値(L2)と、の差が、30%以上であり、前記支持シートを、前記粘着剤層によってシリコンミラーウエハのミラー面に貼付し、貼付後の前記粘着剤層を140℃で加熱し、加熱後の前記粘着剤層をエネルギー線硬化させ、前記粘着剤層のエネルギー線硬化物と、前記シリコンミラーウエハと、の間の粘着力(X1)を測定したとき、前記粘着力(X1)が500mN/25mm以下である、支持シート。
[2] 前記粘着剤層が、ブロック型の架橋剤(β1)を含有する、[1]に記載の支持シート。
[3] 前記支持シートの、400~800nmの波長域での光透過率の平均値(L1)が、80%以上である、[1]又は[2]に記載の支持シート。
【0012】
[4] 前記支持シートを、前記粘着剤層によってステンレス鋼板の表面に貼付し、貼付後の前記粘着剤層を140℃で加熱し、加熱後の前記粘着剤層と、前記ステンレス鋼板と、の間の粘着力(Y2)を測定したとき、前記粘着力(Y2)が6000mN/25mm以下である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の支持シート。
[5] 前記支持シートを、前記粘着剤層によってシリコンミラーウエハのミラー面に貼付し、貼付後の前記粘着剤層を130℃で加熱し、加熱後の前記粘着剤層をエネルギー線硬化させ、前記粘着剤層のエネルギー線硬化物と、前記シリコンミラーウエハと、の間の粘着力(X11)を測定したとき、下記式(i):
粘着力変化率=粘着力(X1)/粘着力(X11)×100 (i)
で算出される粘着力変化率が90~150%である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の支持シート。
[6] 前記支持シートを140℃で2時間加熱したときの、加熱後の前記支持シートのヘーズ(h2)と、前記支持シートのヘーズ(h1)と、の差が、15%以上である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の支持シート。
【0013】
[7] 前記支持シートを、前記粘着剤層によってステンレス鋼板の表面に貼付し、前記支持シートを備えた前記ステンレス鋼板を、23℃の温度条件下で30分間静置保管し、前記粘着剤層と、前記ステンレス鋼板と、の間の粘着力(Y0)を測定したとき、前記粘着力(Y0)が2000mN/25mm以上である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の支持シート。
[8] ワーク加工物の製造方法であって、前記製造方法は、[1]~[7]のいずれか一項に記載の支持シート中の前記粘着剤層を、ワークと固定用治具に貼付することにより、前記ワークと、前記ワークに設けられた前記支持シートと、を備えた支持シート付きワークを、前記固定用治具に固定する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記固定用治具に固定した前記支持シート中の前記粘着剤層を加熱する加熱工程と、前記貼付工程の後に、前記固定用治具に固定した前記支持シート付きワーク中の前記ワークを加工することにより、前記ワーク加工物を作製する加工工程と、前記加熱工程及び加工工程の後に、前記固定用治具に貼付した前記粘着剤層をエネルギー線硬化させる硬化工程と、前記硬化工程の後に、前記粘着剤層の硬化物から前記ワーク加工物を引き離してピックアップするピックアップ工程と、を有する、ワーク加工物の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基材と粘着剤層とを備えた支持シートであって、前記粘着剤層はエネルギー線硬化性であり、支持シートを140℃以上の高温で加熱した場合に、加熱後の支持シートの外観が変化し、加熱後の支持シートからのワーク加工物の正常なピックアップを可能とする支持シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る支持シートの一例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るワーク加工物の製造方法の一例を、模式的に説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
◇支持シート
本発明の一実施形態に係る支持シートは、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備え、前記粘着剤層がエネルギー線硬化性であり、前記支持シートの、400~800nmの波長域での光透過率の平均値(L1)(本明細書においては、単に「支持シートの光透過率の平均値(L1)」又は「平均値(L1)」と称することがある)と、前記支持シートを140℃で2時間加熱したときの、加熱後の前記支持シートの、400~800nmの波長域での光透過率の平均値(L2)(本明細書においては、単に「加熱後の支持シートの光透過率の平均値(L2)」又は「平均値(L2)」と称することがある)と、の差(本明細書においては、「光透過率差」と称することがある)が、30%以上であり、前記支持シートを、前記粘着剤層によってシリコンミラーウエハのミラー面に貼付し、貼付後の前記粘着剤層を140℃で加熱し、加熱後の前記粘着剤層をエネルギー線硬化させ、前記粘着剤層のエネルギー線硬化物と、前記シリコンミラーウエハと、の間の粘着力(X1)(本明細書においては、単に「粘着力(X1)」と称することがある)を測定したとき、前記粘着力(X1)が500mN/25mm以下である。
【0017】
本実施形態の支持シートは、例えば、後述するように、ワーク加工物の製造に用いることができる。
本実施形態の支持シートは、例えば、後述するように、保護膜形成フィルムと積層することで、保護膜形成用複合シートを構成できる。
【0018】
本実施形態の支持シートにおいて、前記光透過率差([支持シートの光透過率の平均値(L1)]-[加熱後の支持シートの光透過率の平均値(L2)])が前記下限値以上であることで、支持シートは、140℃以上の高温で加熱した場合に、明らかに変色(より具体的には白化)する。そのため、支持シートをこのような高温で加熱した場合の、支持シートの識別性が高くなり(支持シートをより容易に識別でき)、支持シートをこのような高温で加熱したという履歴を容易に確認できる。
このときの加熱としては、例えば、ワークの表面に付着している低分子量の樹脂成分等の異物を除去するための加熱が挙げられる。また、このときの加熱としては、ワークのダイシング等の加工時に発生し、ワーク加工物の表面に付着している微細な異物を、水によって洗浄し、除去した後に、ワーク加工物等を乾燥させるときの加熱も挙げられる。
これらの加熱温度の下限値は、例えば、130℃であってもよく、140℃であることが好ましい。
【0019】
本明細書においては、粘着剤層が硬化した後の支持シートを、特に、粘着剤層が硬化していない状態での支持シートと区別するために、「硬化済み支持シート」と称することがある。
【0020】
本実施形態の支持シートにおいて、前記粘着力(X1)が500mN/25mm以下であることで、支持シート付きワーク又は支持シート付きワーク加工物を140℃以上の高温で加熱した後であっても、支持シート中の粘着剤層を硬化させて硬化済み支持シートとした後に、ワーク加工物を硬化済み支持シートから正常にピックアップでき、ピックアップ性が高い。このときの加熱としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0021】
本実施形態において、ワークとしては、例えば、ウエハ、半導体装置パネル等が挙げられる。
【0022】
前記ウエハとしては、シリコン、ゲルマニウム、セレン等の元素半導体や、GaAs、GaP、InP、CdTe、ZnSe、SiC等の化合物半導体、で構成される半導体ウエハ;サファイア、ガラス等の絶縁体で構成される絶縁体ウエハが挙げられる。
これらウエハを代表とするワークの一方の面上には、回路が形成されており、本明細書においては、このように回路が形成されている側のワークの面を「回路面」と称する。そして、ワークの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ウエハは、ダイシング等の手段により分割され、チップとなる。本明細書においては、ウエハの場合と同様に、回路が形成されている側のチップの面を「回路面」と称し、チップの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ワークの回路面には、いずれもバンプ、ピラー等の突状電極が設けられていることが好ましい。突状電極は、はんだで構成されていることが好ましい。
【0023】
前記半導体装置パネルは、半導体装置の製造過程で取り扱うものであり、その具体例としては、1個又は2個以上の電子部品が封止樹脂によって封止された状態の半導体装置を用い、複数個のこれら半導体装置が、円形、矩形等の形状の領域内に、平面的に配置されて構成されたものが挙げられる。
【0024】
本実施形態において、ワーク加工物は、ワークを加工して得られたものであり、例えば、ワークがウエハである場合、ワーク加工物としてはチップが挙げられ、ワークが半導体ウエハである場合、ワーク加工物としては半導体チップが挙げられる。
【0025】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味する。エネルギー線の例としては、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
本明細書において、「非硬化性」とは、加熱やエネルギー線の照射等、如何なる手段によっても、硬化しない性質を意味する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る支持シートの一例を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0027】
ここに示す支持シート1は、基材11と、基材11の一方の面11a上に設けられた粘着剤層12と、を備えて構成されている。支持シート1は、さらに、粘着剤層12の基材11側とは反対側の面12a上に設けられた剥離フィルム13を備えている。
【0028】
粘着剤層12は、エネルギー線硬化性である。
支持シート1を用いて測定した前記光透過率差は、30%以上である。
支持シート1を用いて測定した前記粘着力(X1)は、500mN/25mm以下である。
【0029】
基材11の一方の面(粘着剤層12側の面)11aは、マット面でなくてもよいが、マット面であることが好ましい。
基材11の一方の面11aがマット面である場合には、粘着剤層12は後述するブロック型の架橋剤(β1)(本明細書においては、単に「架橋剤(β1)」と称することがある)を含有していることが好ましい。そして、その場合には、粘着剤層12において、粘着剤層12の総質量に対する、架橋剤(β1)の含有量の割合は、3質量%以上であることが好ましい。
架橋剤(β1)を含有する粘着剤層については、後ほど詳細に説明する。
【0030】
本明細書において、「マット面」とは、凹凸度が比較的大きく、粗くなっている面である。このような面は、光沢度が比較的低く、マット(matte)処理されたように見えることから、「マット面」と称される。基材のマット面のうち、凹凸部の谷に相当する部位には、通常、粘着剤層による埋め込みが困難で、空隙が生じることがある。これに対して、上記のように架橋剤(β1)を含有する粘着剤層によれば、このような凹凸部の谷に相当する部位を、十分に埋め込むことができる。
【0031】
本実施形態の支持シートは、図1に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図1に示すものにおいて、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、図1に示す支持シート1は、剥離フィルム13を備えているが、本実施形態の支持シートにおいて、剥離フィルムは任意の構成であり、本実施形態の支持シートは剥離フィルムを備えていなくてもよい。
例えば、図1に示す支持シート1は、基材11と、粘着剤層12と、剥離フィルム13と、を備えているが、本実施形態の支持シートは、基材と、粘着剤層と、剥離フィルムと、のいずれにも該当しない他の層を備えていてもよい。前記他の層は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。ただし、本実施形態の支持シートにおいては、基材及び粘着剤層が互いに直接接触して設けられ、粘着剤層及び剥離フィルムが互いに直接接触して設けられていることが好ましい。
【0032】
次に、本実施形態の支持シートを構成する各層の詳細について、説明する。
【0033】
<<粘着剤層、粘着剤組成物(I)>>
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、エネルギー線硬化性である。粘着剤層は、その硬化前及び硬化後での物性を調節できる。
粘着剤層は、前記架橋剤(β1)を含有することが好ましい。
【0034】
粘着剤層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0035】
本明細書においては、粘着剤層の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0036】
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、1~100μmであることが好ましく、3~60μmであることがより好ましく、5~30μmであることがさらに好ましく、8~25μmであることが特に好ましい。粘着剤層の厚さがこのような範囲であることで、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性がより良好となり、ワーク加工物の硬化済み支持シートからの上述のピックアップ性がより高くなる。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0037】
本明細書においては、粘着剤層の場合に限らず「厚さ」とは、特に断りのない限り、対象物において無作為に選出された5箇所で測定した厚さの平均で表される値であり、JIS K7130に準じて、定圧厚さ測定器を用いて取得できる。
【0038】
粘着剤層は、これを構成するための成分を含有する粘着剤組成物(I)を用いて形成できる。
好ましい粘着剤組成物(I)としては、例えば、架橋剤(β1)を含有する粘着剤組成物が挙げられる。
例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物(I)を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤組成物(I)における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0039】
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、18~28℃の温度等が挙げられる。
【0040】
粘着剤層において、粘着剤層の総質量に対する、粘着剤層の1種又は2種以上の後述する含有成分の合計含有量の割合は、100質量%を超えない。
同様に、粘着剤組成物(I)において、粘着剤組成物(I)の総質量に対する、粘着剤組成物(I)の1種又は2種以上の後述する含有成分の合計含有量の割合は、100質量%を超えない。
【0041】
粘着剤組成物(I)の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0042】
粘着剤組成物(I)の乾燥条件は、特に限定されない。ただし、粘着剤組成物(I)は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。そして、溶媒を含有する粘着剤組成物(I)は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で、加熱乾燥させることが好ましい。
【0043】
基材上に粘着剤層を設ける場合には、例えば、基材上に粘着剤組成物(I)を塗工し、必要に応じて乾燥させればよい。また、例えば、剥離フィルム上に粘着剤組成物(I)を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の表面(例えばマット面)と貼り合わせることで、基材上に粘着剤層を積層してもよい。この場合の剥離フィルムは、支持シートの製造過程又は使用過程のいずれかのタイミングで、取り除けばよい。
【0044】
<架橋剤(β1)>
前記架橋剤(β1)は、ブロック型の架橋剤であり、公知のものであってよい。
架橋剤(β1)としては、例えば、イソシアネート基等の架橋反応可能な基が、ブロック剤と反応し、このブロック剤によって、架橋反応不能にマスクされた基、を有する化合物が挙げられる。このような架橋剤(β1)(ブロック型の架橋剤)は、常温下では比較的安定であり、長期間保管可能であるが、例えば、130℃以上等の高温下では、ブロック剤が乖離して、マスク構造が解消され、イソシアネート基等の架橋反応可能な基が再生し、架橋剤として作用可能となる。
【0045】
架橋剤(β1)として、より具体的には、例えば、ジイソシアネートの3量体化によって形成されたと見做せるヌレート骨格(イソシアヌレート骨格)と、それ以外のジイソシアネートに由来する骨格と、をともに有する架橋剤が挙げられる。このような架橋剤(β1)は、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体化によって形成されたと見做せるヌレート骨格(イソシアヌレート骨格)と、それ以外のヘキサメチレンジイソシアネートに由来する骨格と、をともに有する架橋剤であることが好ましい。
【0046】
架橋剤(β1)の数平均分子量(Mn)は、15000以下であることが好ましく、13000以下であることがより好ましく、例えば、9000以下、5000以下及び2500以下のいずれかであってもよい。このような架橋剤(β1)を用いることで、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性が高くなる。さらに、ワーク又はワーク加工物が貼付された状態の支持シートを140℃以上の高温で加熱した場合であっても、硬化済み支持シートからワーク加工物を正常にピックアップできる効果が、より顕著となる。
一方、架橋剤(β1)の数平均分子量(Mn)の下限値は、特に限定されない。例えば、数平均分子量が1000以上である架橋剤(β1)は、その入手又は調製がより容易である。
架橋剤(β1)は、その数平均分子量が上記のいずれかの範囲であり、かつ、上記のジイソシアネートの3量体化によって形成されたと見做せるヌレート骨格(イソシアヌレート骨格)と、それ以外のジイソシアネートに由来する骨格と、をともに有する架橋剤であることが好ましい。
【0047】
本明細書において、「数平均分子量」及び「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0048】
架橋剤(β1)で好ましい市販品としては、例えば、旭化成社製「デュラネート(登録商標)MF-K60B」(数平均分子量12000、25℃での粘度220mPa・s(固形分濃度60質量%品))、旭化成社製「デュラネート(登録商標)TPA-B80E」(数平均分子量2200、25℃での粘度1800mPa・s(固形分濃度80質量%品))、旭化成社製「デュラネート(登録商標)SBN-70D」(数平均分子量3100、25℃での粘度3300mPa・s(固形分濃度70質量%品))等が挙げられる。
【0049】
本明細書において、架橋剤(β1)、その溶液又はその分散液の粘度は、特に断りのない限り、E型粘度計を用いて測定した値である。
【0050】
粘着剤層及び粘着剤組成物(I)が含有する架橋剤(β1)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0051】
粘着剤層において、粘着剤層の総質量に対する、架橋剤(β1)の含有量の割合は、3質量%以上であることが好ましく、例えば、7質量%以上、及び11質量%以上のいずれかであってもよい。一方、前記割合は、25質量%以下であることが好ましく、例えば、20質量%以下であってもよい。
この内容は、粘着剤組成物(I)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、架橋剤(β1)の含有量の割合が、3質量%以上であることが好ましく、例えば、7質量%以上、及び11質量%以上のいずれかであってもよく、一方で、前記割合は、25質量%以下であることが好ましく、例えば、20質量%以下であってもよい、ことと同義である。
これは、溶媒を含有する樹脂組成物から溶媒を除去して、樹脂膜を形成する過程では、溶媒以外の成分の量は、通常、変化しないことに基づいており、樹脂組成物と樹脂膜とでは、溶媒以外の成分同士の含有量の比率は同じである。そこで、本明細書においては、以降、粘着剤層の場合に限らず、溶媒以外の成分の含有量については、樹脂組成物から溶媒を除去した樹脂膜での含有量のみ記載する。
【0052】
粘着剤層において、粘着剤層の総質量に対する、架橋剤(β1)の含有量の割合が、3質量%以上であることで、基材のマット面と粘着剤層との間に空隙が生じることを抑制でき、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性が高くなる。
このように、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性が高いことによって、支持シートの可視光領域での光透過率の平均値が高くなる。そのため、支持シートを用いてワークを加工して得られたワーク加工物が支持シート上で保持されている状態で、支持シート越しに、ワーク加工物での割れや欠け等の破損、いわゆるチッピングの有無を検査するときに、検査精度が高くなる。可視光領域での光透過率としては、例えば、400~800nmの波長域での光透過率(本明細書においては、「光透過率(400~800nm)」と称することがある)が挙げられる。さらに、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性が高いことによって、粘着剤層に対して、基材越しにエネルギー線を照射することで、粘着剤層を硬化させるときに、正常に照射できるため、粘着剤層を正常に硬化させることができる。
【0053】
例えば、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性が高く、本発明と同様に、ワーク又はワーク加工物が貼付された状態の支持シートを130℃程度で加熱した場合であっても、硬化済み支持シートからワーク加工物を正常にピックアップできる支持シートには、加熱温度が140℃程度の様なさらに高い温度である場合には、ワーク加工物を正常にピックアップできなくなるものが存在する。すなわち、加熱温度が130℃程度である場合と、140℃程度である場合とでは、支持シートからワーク加工物をピックアップするときの難易度が、格段に上がることがある。
本実施形態の支持シートは、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性が高いのに加え、その加熱温度が140℃以上で、さらに高温であっても、硬化済み支持シートからのワーク加工物の正常なピックアップを可能とする。すなわち、本実施形態の支持シートは、130℃以上の加熱条件下で用いてもよく、140℃以上の加熱条件下で用いることが好ましい。
一方、本実施形態の支持シートは、145℃以下の加熱条件下で用いることが好ましい。
すなわち、本実施形態の支持シートは、130~145℃の加熱条件下で用いることができ、130℃以上140℃未満の加熱条件下で用いてもよいが、140~145℃の加熱条件下で用いることが好ましい。
【0054】
このように、粘着剤層において、粘着剤層の総質量に対する、架橋剤(β1)の含有量の割合が、3質量%以上であることで、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性が高くなる。そして、前記割合が大きいほど、このような本発明の効果が、高くなる傾向にある。さらに、ワーク又はワーク加工物が貼付された状態の支持シートを140℃以上の高温で加熱した場合であっても、粘着力(X1)を後述の範囲とすることがより容易となる。
一方、前記割合が前記上限値以下であることで、粘着剤層のこれら以外の特性が、より良好となる。
一実施形態において、前記割合は、例えば、3~25質量%、7~25質量%、及び11~25質量%のいずれかであってもよいし、3~20質量%、7~20質量%、及び11~20質量%のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記割合の一例である。
【0055】
<架橋剤(β2)>
前記粘着剤層及び粘着剤組成物(I)は、さらに、非ブロック型の架橋剤(β2)(本明細書においては、単に「架橋剤(β2)」と称することがある)を含有することが好ましい。前記架橋剤(β2)は、架橋剤(β1)に該当しない、非ブロック型の架橋剤であり、公知のものであってよい。
粘着剤層が架橋剤(β1)だけでなく架橋剤(β2)も含有していることで、粘着力(X1)を後述の範囲とすることがより容易となる。
【0056】
架橋剤(β2)としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1-(2-メチル)-アジリジニル]トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
これらの中でも、架橋剤(β2)は、粘着力(X1)を後述の範囲とすることがより容易となる点では、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体、又はヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体であることが好ましい。
【0057】
粘着剤層及び粘着剤組成物(I)が含有する架橋剤(β2)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0058】
粘着剤層において、粘着剤層の総質量に対する、架橋剤(β2)の含有量の割合は、0.3質量%以上であることが好ましく、例えば、0.6質量%以上、0.9質量%以上、及び1.2質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、架橋剤(β2)を用いたことにより得られる効果が、より高くなる。
一方、前記割合は、15質量%以下であることが好ましく、例えば、10質量%以下、5質量%以下、及び3質量%以下のいずれかであってもよい。前記割合が前記上限値以下であることで、架橋剤(β2)の過剰使用が抑制される。さらに、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性がより高くなる。
一実施形態において、前記割合は、例えば、0.3~15質量%、0.6~15質量%、0.9~15質量%、及び1.2~15質量%のいずれかであってもよいし、0.3~10質量%、0.3~5質量%、及び0.3~3質量%のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記割合の一例である。
【0059】
粘着剤層において、粘着剤層の総質量に対する、架橋剤(β1)及び架橋剤(β2)の合計含有量の割合は、3質量%以上であることが好ましく、例えば、7質量%以上、11質量%以上、及び13質量%以上のいずれかであってもよい。前記合計含有量の割合が前記下限値以上であることで、架橋剤(β1)及び架橋剤(β2)を用いたことにより得られる効果が、より高くなる。さらに、ワーク又はワーク加工物が貼付された状態の支持シートを140℃以上の高温で加熱した場合であっても、粘着力(X1)を後述の範囲とすることがより容易となる。
一方、前記合計含有量の割合は、40質量%以下であることが好ましく、例えば、30質量%以下であってもよい。前記合計含有量の割合が前記上限値以下であることで、架橋剤(β1)及び架橋剤(β2)の過剰使用が抑制される。
一実施形態において、前記合計含有量の割合は、例えば、3~40質量%、7~40質量%、11~40質量%、及び13~40質量%のいずれかであってもよいし、3~30質量%、7~30質量%、11~30質量%、及び13~30質量%のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記合計含有量の割合の一例である。
【0060】
本発明の効果がより顕著に得られる点で、より好ましい粘着剤層としては、例えば、架橋剤(β1)及び架橋剤(β2)を含有し、架橋剤(β1)の数平均分子量が15000以下である粘着剤層が挙げられる。
【0061】
<エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)>
前記粘着剤層及び粘着剤組成物(I)は、さらに、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(本明細書においては、「エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)」とも称する)を含有することが好ましい。エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)及び架橋剤(β1)、並びに必要に応じて架橋剤(β2))を含有する粘着剤層を用いることで、前記光透過率差及び粘着力(X1)を目的とする値に調節し易くなる。
【0062】
前記エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)としては、例えば、非エネルギー線硬化性アクリル樹脂の側鎖に、不飽和基が導入された構造を有する樹脂が挙げられる。
【0063】
[非エネルギー線硬化性アクリル樹脂]
前記非エネルギー線硬化性アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位と、官能基含有モノマー由来の構成単位と、を有するアクリル重合体が挙げられる。
【0064】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念である。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念である。
【0065】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、そのアルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が、1~20であるのものが挙げられる。前記アルキルエステルを構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
【0066】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのうち、前記アルキル基が直鎖状又は分岐鎖状であるものとして、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸イコシル等が挙げられる。
【0067】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのうち、前記アルキル基が環状であるものとして、例えば、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。
【0068】
前記光透過率差及び粘着力(X1)を目的とする値に調節し易い点では、上記の中でも、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル(アクリル酸ラウリル)、又はメタクリル酸ドデシル(メタクリル酸ラウリル)であることが好ましい。
【0069】
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、前記官能基が架橋剤(β1)又は架橋剤(β2)と反応することで架橋の起点となったり、前記官能基が後述する不飽和基含有化合物中の、非エネルギー線硬化性アクリル樹脂と結合(反応)可能な基と、反応することで、アクリル重合体の側鎖に不飽和基の導入を可能とするものが挙げられる。
【0070】
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0071】
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
前記光透過率差及び粘着力(X1)を目的とする値に調節し易い点では、これらの中でも、前記水酸基含有モノマーは、メタクリル酸ヒドロキシアルキルであることが好ましく、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル又はメタクリル酸2-ヒドロキシブチルであることがより好ましい。
【0072】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0073】
前記エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0074】
前記官能基含有モノマーは、水酸基含有モノマーであることが好ましい。
【0075】
非エネルギー線硬化性アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位と、前記官能基含有モノマー由来の構成単位と、のいずれにも該当しない他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
【0076】
前記他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
【0077】
非エネルギー線硬化性アクリル樹脂が有する、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位と、前記官能基含有モノマー由来の構成単位と、前記他のモノマー由来の構成単位は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0078】
非エネルギー線硬化性アクリル樹脂において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位の含有量は、構成単位の全量に対して、65~99質量%であることが好ましい。
【0079】
非エネルギー線硬化性アクリル樹脂において、官能基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、構成単位の全量に対して、1~35質量%であることが好ましい。
【0080】
非エネルギー線硬化性アクリル樹脂において、前記他のモノマー由来の構成単位の含有量は、構成単位の全量に対して、0~10質量%であることが好ましい。
【0081】
エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)は、例えば、非エネルギー線硬化性アクリル樹脂中の前記官能基に、エネルギー線重合性不飽和基を有する不飽和基含有化合物を反応させることで得られる。
【0082】
[不飽和基含有化合物]
前記不飽和基含有化合物は、前記エネルギー線重合性不飽和基以外に、さらに非エネルギー線硬化性アクリル樹脂中の官能基と反応することで、非エネルギー線硬化性アクリル樹脂と結合可能な基を有する化合物である。
前記エネルギー線重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2-プロペニル基)等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
非エネルギー線硬化性アクリル樹脂中の前記官能基と結合可能な基としては、例えば、水酸基又はアミノ基と結合可能なイソシアネート基及びグリシジル基、並びにカルボキシ基又はエポキシ基と結合可能な水酸基及びアミノ基等が挙げられる。
【0083】
前記不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0084】
非エネルギー線硬化性アクリル樹脂中の前記官能基に、エネルギー線重合性不飽和基を有する不飽和基含有化合物を反応させることで、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)を得るときに、非エネルギー線硬化性アクリル樹脂中の前記官能基の総モル数に対する、前記不飽和基含有化合物中の前記官能基と結合可能な基の総モル数は、0.35~0.75倍であることが好ましく、例えば、0.5~0.75倍、0.35~0.6倍、及び0.5~0.6倍のいずれかであってもよい。前記官能基と結合可能な基の総モル数がこのような範囲であることで、粘着力(X1)をより小さくでき、ワーク加工物の硬化済み支持シートからのピックアップ性を、より高くできる傾向にある。
一方、非エネルギー線硬化性アクリル樹脂中の前記官能基の総モル数に対する、前記不飽和基含有化合物中の前記官能基と結合可能な基の総モル数は、1倍以下であることが好ましい。
【0085】
粘着剤層及び粘着剤組成物(I)が含有するエネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0086】
粘着剤層及び粘着剤組成物(I)がエネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)を含有する場合、粘着剤層において、粘着剤層の総質量に対する、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)の含有量の割合は、50~95質量%であることが好ましく、例えば、65~95質量%、及び75~95質量%のいずれかであってもよいし、50~90質量%、50~85質量%、及び60~85質量%のいずれかであってもよいし、65~85質量%であってもよい。前記割合が、前記下限値以上であることで、上述のワーク加工物を支持シートから異常無くピックアップできるピックアップ性が、より高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性がより高くなる。
【0087】
<他の成分>
粘着剤層及び粘着剤組成物(I)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)と、架橋剤(β1)と、架橋剤(β2)と、のいずれにも該当しない、他の成分を含有していてもよい。
前記他の成分としては、例えば、エネルギー線硬化性化合物(α)、光重合開始剤(γ)、添加剤等が挙げられる。
【0088】
粘着剤層及び粘着剤組成物(I)が含有する前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0089】
[エネルギー線硬化性化合物(α)]
前記エネルギー線硬化性化合物(α)は、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)に該当しないエネルギー線硬化性成分であれば、特に限定されない。
【0090】
エネルギー線硬化性化合物(α)としては、例えば、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
1分子のエネルギー線硬化性化合物(α)は、前記エネルギー線重合性不飽和基を1個又は2個以上有し、3個以上有していてもよいが、1個又は2個有することが好ましい。
エネルギー線重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
【0091】
エネルギー線硬化性化合物(α)の分子量は、特に限定されないが、500以下であることが好ましい。このようなエネルギー線硬化性化合物(α)を用いることにより、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性が、より高くなる。
エネルギー線硬化性化合物(α)の分子量は、100~500であることが好ましい。前記分子量が前記下限値以上であることで、粘着剤層の構造がより安定化する。ただし、これらは、エネルギー線硬化性化合物(α)の分子量の一例である。
【0092】
粘着剤層及び粘着剤組成物(I)が含有するエネルギー線硬化性化合物(α)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0093】
粘着剤層において、粘着剤層の総質量に対する、エネルギー線硬化性化合物(α)の含有量の割合は、0~5質量%であることが好ましい。前記割合が高いほど、エネルギー線硬化性化合物(α)を用いたことにより得られる効果が、より高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性がより高くなり、さらに、ワーク又はワーク加工物が貼付された状態の支持シートを140℃以上の高温で加熱した場合であっても、支持シートからワーク加工物を正常にピックアップできる効果がより高くなる。
【0094】
[光重合開始剤(γ)]
粘着剤層及び粘着剤組成物(I)が、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)及びエネルギー線硬化性化合物(α)のいずれか一方又は両方を含有する場合、粘着剤層及び粘着剤組成物(I)は、光重合開始剤(γ)を含有することが好ましい。光重合開始剤(γ)を含有する粘着剤層及び粘着剤組成物(I)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0095】
前記光重合開始剤(γ)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチルフェノン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン、等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン等のキノン化合物が挙げられる。
光重合開始剤(γ)としては、例えば、アミン等の光増感剤等を用いることもできる。
【0096】
粘着剤層及び粘着剤組成物(I)が含有する光重合開始剤(γ)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0097】
前記光重合開始剤(γ)は、140℃以上の加熱条件下でも高い耐熱性を有し、より強い作用を示す点では、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、及びエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)からなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0098】
これら光重合開始剤(γ)は、市販品として下記のものが入手可能である。
2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン:IGM Resins社製「オムニラッド(登録商標) 127」
2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン:IGM Resins社製「オムニラッド(登録商標) 907」
2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン:IGM Resins社製「オムニラッド(登録商標) 369」
2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン:IGM Resins社製「オムニラッド(登録商標) 379EG」
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド:IGM Resins社製「オムニラッド(登録商標) TPO H」
エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)IGM Resins社製「オムニラッド(登録商標) OXE02」
【0099】
粘着剤層及び粘着剤組成物(I)が光重合開始剤(γ)を含有する場合、粘着剤層において、光重合開始剤(γ)の含有量は、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)と、エネルギー線硬化性化合物(α)と、の合計含有量100質量部に対して、1~5質量部であることが好ましく、例えば、1.5~4.5質量部、及び2~4質量部のいずれかであってもよい。光重合開始剤(γ)の前記含有量が前記下限値以上であることで、光重合開始剤(γ)を用いたことにより得られる効果が、より高くなる。光重合開始剤(γ)の前記含有量が前記上限値以下であることで、光重合開始剤(γ)の過剰使用が抑制される。ここでは、粘着剤層がエネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)を含有しない場合には、粘着剤層における、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)の含有量は、0質量部とし、粘着剤層がエネルギー線硬化性化合物(α)を含有しない場合には、粘着剤層における、エネルギー線硬化性化合物(α)の含有量は、0質量部とする。
【0100】
[添加剤]
前記添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材(フィラー)、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)等の公知の添加剤が挙げられる。
前記反応遅延剤とは、例えば、粘着剤組成物(I)中に混入している触媒の作用によって、保管中の粘着剤組成物(I)において、目的としない架橋反応が進行するのを抑制する成分である。反応遅延剤としては、例えば、触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられ、より具体的には、1分子中にカルボニル基(-C(=O)-)を2個以上有する成分が挙げられる。
【0101】
粘着剤層及び粘着剤組成物(I)が含有する添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0102】
粘着剤組成物(I)の添加剤の含有量は、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0103】
[溶媒]
粘着剤組成物(I)は、溶媒を含有していてもよい。粘着剤組成物(I)は、溶媒を含有していることで、塗工対象面への塗工適性が向上する。
【0104】
前記溶媒は有機溶媒であることが好ましく、前記有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル(カルボン酸エステル);テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール等が挙げられる。
【0105】
粘着剤組成物(I)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0106】
粘着剤組成物(I)の溶媒の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0107】
[気体発生剤]
粘着剤層及び粘着剤組成物(I)は、前記他の成分として、気体発生剤を含有していないことが好ましい。
前記気体発生剤は、加熱又は光の照射等の、外部からの刺激によって、気体を発生させる成分である。気体発生剤を含有する粘着剤層を用いることで、粘着剤層とその被着体との界面に気体を発生させ、この気体の圧力によって、粘着剤層又はそのエネルギー線硬化物と、被着体と、の間の剥離力(粘着力)を低減できる。したがって、気体発生剤を含有する粘着剤層を用いることで、後述するワーク加工物の製造方法でのピックアップ工程においては、粘着剤層の硬化物からのワーク加工物のピックアップが容易となる可能性がある。
しかし、気体発生剤を含有する粘着剤層を用いた場合、粘着剤層又はそのエネルギー線硬化物と、被着体と、の間の剥離力(粘着力)を調節することが困難な場合があり、剥離力の過大な変動を抑制できない可能性がある。その場合には、ピックアップ工程における、粘着剤層の硬化物からのワーク加工物のピックアップが不安定になる可能性がある。さらに、ワーク加工物のうち、粘着剤層の硬化物が接触していた箇所には、気体発生剤が残留する可能性がある。その場合には、気体発生剤が最終的な目的物である半導体装置の内部に取り込まれてしまい、半導体装置の信頼性が低下する可能性がある。
したがって、粘着剤層及び粘着剤組成物(I)は、気体発生剤を含有していないことが好ましい。
【0108】
前記気体発生剤のうち、光の照射によって気体を発生させる成分としては、例えば、カルボン酸化合物(カルボキシ基を有する化合物)、前記カルボン酸化合物の塩、テトラゾール、テトラゾールの塩、テトラゾール誘導体(テトラゾール中の1個又は2個の水素原子が、水素原子以外の基で置換された構造を有する化合物)、前記テトラゾール誘導体の塩等が挙げられる。
前記カルボン酸化合物及びその塩は、外部からの刺激によって、二酸化炭素ガスを発生させ、前記テトラゾール及びその塩、並びに前記テトラゾール誘導体及びその塩は、外部からの刺激によって、窒素ガスを発生させる。
【0109】
本明細書において、「基」とは、特に断りのない限り、複数個の原子が結合してなる原子団だけでなく、1個の原子も包含するものとする。
【0110】
前記気体発生剤は、例えば、耐熱性を有し、200℃以下程度の温度条件下では分解しないものの、紫外線等の光の照射によって気体を発生させる成分であってもよい。
【0111】
<粘着剤層の一実施形態>
好ましい粘着剤層及び粘着剤組成物(I)の一例としては、架橋剤(β1)、架橋剤(β2)、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)及び光重合開始剤(γ)を含有するものが挙げられる。
【0112】
粘着剤層において、粘着剤層の総質量に対する、架橋剤(β1)と、架橋剤(β2)と、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)と、光重合開始剤(γ)と、の合計含有量の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、前記光透過率差及び粘着力(X1)を目的とする値に調節し易くなり、さらに、これらのいずれとも異なる、粘着剤層の他の特性が、より良好になる。一方、前記割合は100質量%以下である。
【0113】
<粘着剤組成物(I)の製造方法>
粘着剤組成物(I)は、例えば、架橋剤(β1)と、必要に応じて架橋剤(β2)と、必要に応じてエネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)と、必要に応じて前記他の成分(例えば、エネルギー線硬化性化合物(α)と、光重合開始剤(γ)と、添加剤と、溶媒と、からなる群より選択される1種又は2種以上)等の、粘着剤組成物(I)を構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0114】
<<基材>>
前記基材は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、前記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。前記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
前記樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
【0115】
上記の中でも、基材の構成材料である前記樹脂は、基材の高温(例えば、140℃以上)での耐熱性と、可撓性と、がより高くなる点では、ポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0116】
基材を構成する樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0117】
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0118】
前記支持シートにおいては、粘着剤層がエネルギー線硬化性であるため、基材はエネルギー線を透過させるものが好ましく、透明であることが好ましい。
【0119】
基材においては、その少なくとも一方の面がマット面であることが好ましく、両面がマット面であってもよく、一方の面がマット面であり、他方の面が、凹凸度が小さいツヤ面であってもよい。
基材の少なくとも一方の面がマット面である場合には、前記支持シートにおいては、基材のマット面上に粘着剤層が設けられていることが好ましい。そして、基材の両面がマット面である場合には、表面粗さ(Ra)が大きい方のマット面上に、粘着剤層が設けられていることが好ましい。
【0120】
基材のマット面は、基材の一定値以上の粗さを有する面であり、光沢度が低いことから、その外観によって明瞭に識別できる。少なくとも一方の面がマット面である基材は、市販品として入手可能であり、公知の方法で作製も可能である。
【0121】
基材のマット面の表面粗さ(Ra)は、0.05μm以上であることが好ましく、例えば、0.1μm以上、0.4μm以上、及び0.7μm以上のいずれかであってもよい。前記表面粗さが前記下限値以上であることで、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性が高い、という本発明の効果が、より顕著に得られる。また、基材を重ね合わせて保管したときの基材のブロッキングが、より抑制される。
基材のマット面の表面粗さ(Ra)の上限値は、特に限定されない。例えば、表面の凹凸度が過剰に大きくならない点では、前記表面粗さは2μm以下であることが好ましい。
一実施形態において、基材のマット面の表面粗さ(Ra)は、例えば、0.05~2μm、0.1~2μm、0.4~2μm、及び0.7~2μmのいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記表面粗さの一例である。
【0122】
本明細書において、「表面粗さ(Ra)」とは、基材のマット面に限定されず、JIS B0601:2001に準拠して求められる、いわゆる算術平均粗さを意味する。
【0123】
基材のツヤ面の表面粗さ(Ra)は、0.05μm未満であることが好ましく、例えば、0.04μm以下であってもよい。前記表面粗さがこのような範囲であることで、後述の支持シートの、400~800nmの波長域での光透過率の平均値が、より高くなる。
基材のツヤ面の表面粗さ(Ra)の下限値は、特に限定されない。例えば、基材を重ね合わせて保管したときの基材のブロッキングが抑制される点では、前記表面粗さは0.01μm以上であることが好ましい。
一実施形態において、基材のツヤ面の表面粗さ(Ra)は、例えば、0.01μm以上0.05μm未満、及び0.01~0.04μmのいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記表面粗さの一例である。
【0124】
基材の両面の表面粗さ(Ra)は、例えば、基材の成形条件や、表面処理条件等により、調節できる。ここで表面処理としては、例えば、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理と、研磨処理等による平滑化処理と、が挙げられる。
【0125】
基材は、その上に設けられる粘着剤層との接着性を調節するために、コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理;親油処理;親水処理等が表面に施されていてもよい。基材の表面はプライマー処理されていてもよい。
【0126】
基材は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0127】
基材の厚さは、50~300μmであることが好ましく、60~100μmであることがより好ましい。基材の厚さがこのような範囲であることで、前記支持シートの耐熱性(例えば140℃以上)と、可撓性と、ワークへの貼付適性がより向上する。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0128】
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0129】
<<剥離フィルム>>
前記剥離フィルムは、公知のものであってよい。
剥離フィルムとして、より具体的には、例えば、剥離フィルム用基材の一方の面又は両面が、剥離処理面であるものが挙げられる。前記剥離フィルム用基材は、ポリエチレンテレフタレート製フィルムであることが好ましい。
前記剥離処理面は、剥離フィルム用基材の表面を、公知の剥離処理剤によって剥離処理することで形成できる。
剥離フィルムの厚さは、例えば、2~300μmであってもよく、20~100μmであることが好ましい。
【0130】
次に、前記支持シート(粘着剤層)の物性について説明する。
【0131】
<粘着力(X1)>
前記粘着力(X1)は、500mN/25mm以下であり、例えば、400mN/25mm以下、350mN/25mm以下、及び310mN/25mm以下のいずれかであってもよい。粘着力(X1)が小さいほど、ワーク又はワーク加工物が貼付された状態の支持シートを140℃以上の高温で加熱した場合であっても、硬化済み支持シートからワーク加工物を正常にピックアップできるピックアップ性が高くなる。
粘着力(X1)の下限値は、特に限定されない。例えば、粘着力(X1)が30mN/25mm以上である粘着剤層は、より容易に形成できる。
一実施形態において、粘着力(X1)は、例えば、30~500mN/25mm、30~400mN/25mm、30~350mN/25mm、及び30~310mN/25mmのいずれかであってもよい。ただし、これらは粘着力(X1)の一例である。
【0132】
粘着力(X1)は、例えば、以下に示す方法で測定できる。
すなわち、はじめに、支持シートから、幅が25mmの試験片を切り出す。
次いで、この試験片(支持シート)を、その中の粘着剤層によってシリコンミラーウエハのミラー面に貼付することで、試験片付きシリコンミラーウエハを作製する。このときの貼付は、常温下で行うことが好ましく、貼付速度を290~310mm/minとし、貼付圧力を0.3MPaとして、ラミネートローラーを用いて、行うことが好ましい。
次いで、得られた試験片付きシリコンミラーウエハを、140℃で2時間加熱する。
次いで、試験片付きシリコンミラーウエハを、放冷によりその温度が23℃になるまで冷却した後、照度230mW/cm、光量200mJ/cmの条件で、この冷却後の試験片付きシリコンミラーウエハ中の粘着剤層に対して、基材越しにエネルギー線を照射することで、試験片中の粘着剤層を硬化させる。
次いで、常温下で、剥離速度を300mm/minとして、シリコンミラーウエハから試験片を剥離する。このとき、シリコンミラーウエハの試験片が貼付されていた面と、試験片のシリコンミラーウエハが貼付されていた面と、が180°の角度を為すように、試験片をその長さ方向へ剥離する、いわゆる180°剥離を行う。そして、この180°剥離のときの荷重(剥離力)を測定し、測定の長さを50mmとして、最初の長さ5mm分での測定値と、最後の長さ5mm分での測定値を、有効値から除外する。そして、その測定値の平均値を粘着力(X1)(mN/25mm)として採用する。
本実施形態においては、このような剥離力の測定を、2枚以上の複数枚の試験片(支持シート)に対して行い、得られた複数の測定値の平均値を、粘着力(X1)として採用してもよい。
【0133】
<粘着力変化率>
前記支持シートを、前記粘着剤層によってシリコンミラーウエハのミラー面に貼付し、貼付後の前記粘着剤層を130℃で加熱し、加熱後の前記粘着剤層をエネルギー線硬化させ、前記粘着剤層のエネルギー線硬化物と、前記シリコンミラーウエハと、の間の粘着力(X11)(本明細書においては、単に「粘着力(X11)」と称することがある)を測定したとき、下記式(i):
粘着力変化率=粘着力(X1)/粘着力(X11)×100 (i)
で算出される粘着力変化率(本明細書においては、単に「粘着力変化率」と称することがある)が90~150%であることが好ましい。後述するワーク加工物の製造方法においては、支持シート(粘着剤層)を140℃以上の温度で加熱し、加熱後の支持シート中の粘着剤層をエネルギー線硬化させることを想定しているが、このような支持シートを用いることで、支持シート(粘着剤層)を130℃で加熱しても、それ以外は140℃以上の温度で加熱した場合と同様の条件で、ワーク加工物を硬化済み支持シートから異常無くピックアップできるピックアップ性を有する。したがって、前記支持シートは、ワーク加工物の作製時に、装置の条件設定の変更を不要とするものであり、加熱温度の設定の点で汎用性が高くなる。
【0134】
前記粘着力変化率は、例えば、100~150%、110~150%、及び120~150%のいずれかであってもよいし、90~140%、90~130%、及び90~120%のいずれかであってもよいし、100~140%であってもよい。
【0135】
前記粘着力変化率は、例えば、以下に示す方法で算出できる。
すなわち、試験片付きシリコンミラーウエハの加熱温度を140℃に代えて130℃とした点以外は、前記粘着力(X1)の測定時と同じ方法で、加熱後の粘着剤層のエネルギー線硬化物とシリコンミラーウエハとの間の前記粘着力(X11)を測定する。このとき、粘着力(X1)の場合と同様に、シリコンミラーウエハと試験片との間の剥離力の測定を、2枚以上の複数枚の試験片(支持シート)に対して行い、得られた複数の測定値の平均値を、粘着力(X11)として採用してもよい。
そして、先に説明した方法で測定した粘着力(X1)の値と、この粘着力(X11)の値と、を用い、前記式(i)により、前記粘着力変化率を算出する。
【0136】
<粘着力(X11)>
前記粘着力(X11)は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されないが、前記粘着力変化率が上述の範囲となる値であることが好ましい。粘着力(X11)は、30~560mN/25mmであることが好ましく、例えば、30~500mN/25mm、70~450mN/25mm、及び100~400mN/25mmのいずれかであってもよい。
【0137】
<粘着力(Y2)>
前記支持シートを、前記粘着剤層によってステンレス鋼(SUS)板の表面に貼付し、貼付後の前記粘着剤層を140℃で加熱し、加熱後の前記粘着剤層と、前記ステンレス鋼板と、の間の粘着力(Y2)(本明細書においては、単に「粘着力(Y2)」と称することがある)を測定したとき、前記粘着力(Y2)が6000mN/25mm以下であることが好ましい。後述するワーク加工物の製造方法においては、その途中の工程で、ワークと、前記ワークに設けられた支持シートと、を備えた支持シート付きワークを作製するとともに、前記支持シート付きワークを、その中の粘着剤層によって、固定用治具に固定する。そして、上記のような支持シートを用いることで、固定用治具に固定した支持シート付きワークを140℃以上の高温で加熱したときに、さらに粘着剤層をエネルギー線硬化させなくても、支持シート付きワークを固定用治具から剥離でき、さらに、固定用治具での粘着剤層の残存を抑制できる。したがって、前記支持シートは、ワーク加工物の製造方法として、汎用性が高い方法の採用を可能とし、使用用途の点で汎用性が高くなる。
【0138】
前記粘着力(Y2)は、例えば、5000mN/25mm以下、3800mN/25mm以下、及び2600mN/25mm以下のいずれかであってもよい。粘着力(Y2)が小さいほど、上記のように、支持シート付きワークを固定用治具から容易に剥離できる。
一方、粘着力(Y2)は2000mN/25mm以上であることが好ましい。このような支持シートを用いることで、後述するワーク加工物の製造方法の加熱工程において、支持シート付きワークが固定用治具に固定された状態で加熱されたときに、支持シート付きワークの固定用治具からの目的外の剥離が抑制される。
一実施形態において、粘着力(Y2)は、例えば、2000~6000mN/25mm、2000~5000mN/25mm、2000~3800mN/25mm、及び2000~2600mN/25mmのいずれかであってもよい。ただし、これらは粘着力(Y2)の一例である。
【0139】
粘着力(Y2)は、例えば、以下に示す方法で測定できる。
すなわち、はじめに、支持シートから、幅が25mmの試験片を切り出す。
次いで、この試験片(支持シート)を、その中の粘着剤層によって、厚さ1000μmのSUS板の一方の面に貼付することで、試験片付きSUS板を作製する。このときの貼付は、常温下で行うことが好ましく、貼付速度を290~310mm/minとし、貼付圧力を0.3MPaとして、ラミネートローラーを用いて、行うことが好ましい。
次いで、得られた試験片付きSUS板を、140℃で2時間加熱する。
次いで、試験片付きSUS板を、放冷によりその温度が23℃になるまで冷却した後、常温下で、剥離速度を300mm/minとして、SUS板から試験片を剥離する。このとき、SUS板の試験片が貼付されていた面と、試験片のSUS板が貼付されていた面と、が180°の角度を為すように、試験片をその長さ方向へ剥離する、いわゆる180°剥離を行う。そして、この180°剥離のときの荷重(剥離力)を測定し、測定の長さを50mmとして、最初の長さ5mm分での測定値と、最後の長さ5mm分での測定値を、有効値から除外する。そして、その測定値の平均値を粘着力(Y2)(mN/25mm)として採用する。
本実施形態においては、このような剥離力の測定を、2枚以上の複数枚の試験片(支持シート)に対して行い、得られた複数の測定値の平均値を、粘着力(Y2)として採用してもよい。
【0140】
本明細書において、固定用治具は公知のものであり、その一例としてはリングフレームが挙げられる。固定用治具は、SUS等の金属製であることが好ましい。
【0141】
<粘着力(Y0)>
前記支持シートを、前記粘着剤層によってステンレス鋼(SUS)板の表面に貼付し、前記支持シートを備えた前記ステンレス鋼板を、23℃の温度条件下で30分間静置保管し、前記粘着剤層と、前記ステンレス鋼板と、の間の粘着力(Y0)(本明細書においては、単に「粘着力(Y0)」と称することがある)を測定したとき、前記粘着力(Y0)が2000mN/25mm以上であることが好ましい。後述するワーク加工物の製造方法のいずれかの工程においては、固定用治具に固定された1枚の支持シート上で、複数個のワーク加工物が整列して保持されている、支持シート付きワーク加工物群を作製し、また、それに先立って、前記支持シート付きワークを、その中の粘着剤層によって、固定用治具に固定する。このとき、上記のような支持シートを用いていることで、固定用治具に固定した前記支持シート付きワーク又は支持シート付きワーク加工物群の、固定用治具からの剥離を抑制できる。例えば、ワーク加工物の製造時におけるいずれかの工程での装置の揺れや、固定用治具に固定した支持シート付きワーク又は支持シート付きワーク加工物群の、その搬送時における揺れ等が発生しても、固定用治具に固定した支持シート付きワーク又は支持シート付きワーク加工物群の、固定用治具からの剥離(換言すると、支持シートの固定用治具からの剥離)を抑制できる。
【0142】
前記粘着力(Y0)は、例えば、3000mN/25mm以上、4000mN/25mm以上、及び5000mN/25mm以上のいずれかであってもよい。粘着力(Y0)が大きいほど、上述の支持シート付きワーク又は支持シート付きワーク加工物群の、固定用治具からの剥離が抑制される効果が、より高くなる。
粘着力(Y0)の上限値は、特に限定されない。例えば、粘着力(Y0)と、粘着剤層の他の物性値と、の両立の点では、粘着力(Y0)は10000mN/25mm以下であることが好ましい。
一実施形態において、粘着力(Y0)は、例えば、2000~10000mN/25mm、3000~10000mN/25mm、4000~10000mN/25mm、及び5000~10000mN/25mmのいずれかであってもよい。ただし、これらは粘着力(Y0)の一例である。
【0143】
粘着力(Y0)は、例えば、以下に示す方法で測定できる。
すなわち、粘着力(Y2)の測定時と同じ方法で、試験片付きSUS板を作製し、この試験片付きSUS板を、23℃の温度条件下で30分間静置保管する。
次いで、常温下で、剥離速度を300mm/minとして、この静置保管後のSUS板から試験片を剥離する。このとき、SUS板の試験片が貼付されていた面と、試験片のSUS板が貼付されていた面と、が180°の角度を為すように、試験片をその長さ方向へ剥離する、いわゆる180°剥離を行う。そして、この180°剥離のときの荷重(剥離力)を測定し、測定の長さを50mmとして、最初の長さ5mm分での測定値と、最後の長さ5mm分での測定値を、有効値から除外する。そして、その測定値の平均値を粘着力(Y0)(mN/25mm)として採用する。
本実施形態においては、このような剥離力の測定を、2枚以上の複数枚の試験片(支持シート)に対して行い、得られた複数の測定値の平均値を、粘着力(Y0)として採用してもよい。
【0144】
粘着力(Y2)又は粘着力(Y0)が、先に説明した数値範囲である本実施形態の支持シートは、SUS以外の金属製である固定用治具を用いた場合にも、SUS製である固定用治具を用いた場合と同様に優れた効果を奏する。
【0145】
<粘着剤層の粘着力の調節方法>
上述の粘着剤層の各種粘着力、すなわち、140℃で加熱後の粘着剤層のエネルギー線硬化物と、シリコンミラーウエハと、の間の粘着力(X1);130℃で加熱後の粘着剤層のエネルギー線硬化物と、シリコンミラーウエハと、の間の粘着力(X11);140℃で加熱後の粘着剤層と、SUS板と、の間の粘着力(Y2);粘着剤層とSUS板との間の粘着力(Y0)は、粘着剤層の含有成分の種類と含有量を調節することで、調節できる。
【0146】
例えば、メタクリロイル基を有する官能基含有モノマー由来の構成単位を有するエネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)を、粘着剤層に含有させることで、粘着力(X1)を小さくできる。
例えば、ガラス転移温度が比較的高いエネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)を、粘着剤層に含有させることで、粘着力(X1)を小さくできる。
例えば、前記アクリル重合体中の官能基(例えば、水酸基)に、前記不飽和基含有化合物中の前記官能基と結合可能な基(例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート中のイソシアネート基)を反応させるときに、前記アクリル重合体中の前記官能基の総モル数に対する、前記不飽和基含有化合物中の前記官能基と結合可能な基の総モル数を増やすことによって、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)を調製し、このようなエネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)を粘着剤層に含有させることで、粘着力(X1)を小さくできる。
例えば、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)及び架橋剤(β2)を含有する粘着剤層においては、架橋剤(β2)として、環構造を有するものを用いることで、環構造を有しない鎖状構造のものを用いた場合よりも、粘着力(X1)を小さくできる傾向にある。
例えば、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)及び架橋剤(β2)を含有する粘着剤層においては、架橋剤(β2)として、ウレタン結合を有しないものを用いることで、ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体等のウレタン結合を有するものを用いた場合よりも、粘着力(X1)を小さくできる傾向にある。
【0147】
例えば、粘着剤層がエネルギー線硬化性化合物(α)を含有しないことによって、エネルギー線硬化性化合物(α)を含有する場合よりも、粘着力(Y2)を小さくできる。
例えば、前記アクリル重合体中の官能基(例えば、水酸基)に、前記不飽和基含有化合物中の前記官能基と結合可能な基(例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート中のイソシアネート基)を反応させて得られたエネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)を用いるときに、前記アクリル重合体由来の未反応の前記官能基が多い(換言すると、架橋剤(β1)又は架橋剤(β2)と反応可能な前記官能基が多い)エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)を粘着剤層に含有させることで、粘着力(Y2)を小さくできる。
例えば、粘着剤層の架橋剤(β1)及び架橋剤(β2)の合計含有量を多くすることで、粘着力(Y2)を小さくできる。
例えば、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)及び架橋剤(β2)を含有する粘着剤層においては、架橋剤(β2)として、環構造を有するものを用いることで、環構造を有しない鎖状構造のものを用いた場合よりも、粘着力(Y2)を小さくできる傾向にある。
例えば、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)及び架橋剤(β2)を含有する粘着剤層においては、架橋剤(β2)として、ウレタン結合を有しないものを用いることで、ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体等のウレタン結合を有するものを用いた場合よりも、粘着力(Y2)を小さくできる傾向にある。
【0148】
例えば、メタクリロイル基を有する官能基含有モノマー由来の構成単位を有するエネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)を、粘着剤層に含有させることで、粘着力(X11)を小さくできる。
例えば、ガラス転移温度が比較的高いエネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)を、粘着剤層に含有させることで、粘着力(X11)を小さくできる。
例えば、前記アクリル重合体中の官能基(例えば、水酸基)に、前記不飽和基含有化合物中の前記官能基と結合可能な基(例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート中のイソシアネート基)を反応させるときに、前記アクリル重合体中の前記官能基の総モル数に対する、前記不飽和基含有化合物中の前記官能基と結合可能な基の総モル数の割合を増やすことによって、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)を調製し、このようなエネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)を粘着剤層に含有させることで、粘着力(X11)を小さくできる。
【0149】
例えば、前記アクリル重合体中の官能基(例えば、水酸基)に、前記不飽和基含有化合物中の前記官能基と結合可能な基(例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート中のイソシアネート基)を反応させて得られたエネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)を用いるときに、前記アクリル重合体由来の未反応の前記官能基が少ない(換言すると、架橋剤(β2)と反応可能な前記官能基が少ない)エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)を粘着剤層に含有させることで、粘着力(Y0)を大きくできる。
例えば、粘着剤層の架橋剤(β2)の含有量を少なくすることで、粘着力(Y0)を大きくできる。
【0150】
<支持シートの光透過率(400~800nm)の平均値(L1)>
前記支持シートの光透過率(400~800nm)の平均値(L1)(本明細書においては、単に「支持シートの光透過率の平均値(L1)」又は「平均値(L1)」と称することがある)は、80%以上であることが好ましく、例えば、82%以上、及び83.5%以上のいずれかであってもよい。前記光透過率(400~800nm)の平均値(L1)が前記下限値以上であることで、ワーク加工物が支持シート上で保持されている状態で、支持シート越しに、ワーク加工物での割れや欠け等の破損(例えばチッピング)の有無を検査するときに、検査精度が高くなる。
前記支持シートの光透過率の平均値(L1)の上限値は、特に限定されない。例えば、前記平均値(L1)が95%以下である支持シートは、より容易に製造できる。
一実施形態において、前記支持シートの光透過率の平均値(L1)は、例えば、80~95%、82~95%、及び83.5~95%のいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記平均値(L1)の一例である。
ただし、本明細書においては、特に断りのない限り、支持シートの光透過率とは、400~800nmの波長域での光透過率に限らず、剥離フィルムを備えていない状態での支持シートの光透過率を意味する。
【0151】
前記支持シートの光透過率の平均値(L1)は、例えば、以下に示す方法で算出できる。
すなわち、支持シートに対して、その基材側の外部から光を照射し、積分球を使用せずに、直接受光により、光線透過率を測定し、400~800nmの波長範囲で、1nmごとに、波長がn(nm)である場合の光透過率の値T(1)(式中、nは400~800の整数である)を測定する。そして、nが400~800である場合のT(1)をすべて合算し、その合計値T(1)400-800を算出する。得られたT(1)400-800を、T(1)の測定数(すなわち、800-400+1=401)で除する(T(1)400-800/401)ことにより、支持シートの光透過率の平均値(L1)を算出できる。
【0152】
前記支持シートの光透過率の平均値(L1)は、例えば、基材の含有成分の種類と含有量、基材の両面の粗さ(例えば、表面粗さ(Ra))等を調節することで、調節できる。
前記支持シートの光透過率の平均値(L1)は、粘着剤層の含有成分の種類と含有量を調節することでも、調節できる。
【0153】
<光透過率差>
前記光透過率差([支持シートの光透過率の平均値(L1)]-[加熱後の支持シートの光透過率の平均値(L2)])は、30%以上であることが好ましく、例えば、34%以上、38%以上、及び42%以上のいずれかであってもよい。前記光透過率差が前記下限値以上であることで、支持シートは、140℃以上の高温で加熱した場合に、明らかに変色(より具体的には白化)して外観が変化する。そのため、支持シートをこのような高温で加熱した場合の、支持シートの識別性が高くなる(支持シートをより容易に識別できる)。
前記支持シートの前記光透過率差の上限値は、特に限定されない。例えば、前記光透過率差が60%以下である支持シートは、より容易に製造できる。
一実施形態において、前記光透過率差は、例えば、30~60%、34~60%、38~60%、及び42%~60%のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記光透過率差の一例である。
【0154】
より高温で加熱した支持シートが白化する理由は、定かではないが、加熱後の粘着剤層中で、比較的低分子量の成分と、高分子量の成分と、が共存することによって、これらの成分が相分離しているからではないかと推測される。比較的低分子量の成分としては、例えば、架橋剤(β1)同士の反応物であるオリゴマー、架橋剤(β1)から乖離したブロック剤等が想定され、高分子量の成分としては、例えば、架橋されたエネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)等が想定される。
【0155】
加熱後の前記支持シートの光透過率の平均値(L2)は、例えば、以下に示す方法で算出できる。
すなわち、支持シートを140℃で2時間加熱する。
次いで、支持シートを、放冷によりその温度が23℃になるまで冷却した後、この冷却後の支持シートに対して、その基材側の外部から光を照射し、積分球を使用せずに、直接受光により、光線透過率を測定する。そして、前記支持シートの光透過率の平均値(L1)の場合と同じ方法で、すなわち、400~800nmの波長範囲で、1nmごとに、波長がn(nm)である場合の光透過率の値T(2)(式中、nは400~800の整数である)を測定する。そして、nが400~800である場合のT(2)をすべて合算し、その合計値T(2)400-800を算出する。得られたT(2)400-800を、T(2)の測定数(すなわち、800-400+1=401)で除する(T(2)400-800/401)ことにより、加熱後の支持シートの光透過率の平均値(L2)を算出できる。
次いで、支持シートの光透過率の平均値(L1)と、加熱後の支持シートの光透過率の平均値(L2)と、の差を算出することで、前記光透過率差を算出できる。
【0156】
加熱後の支持シートの光透過率の平均値(L2)は、例えば、基材の含有成分の種類と含有量、基材の両面の粗さ(例えば、表面粗さ(Ra))等を調節することで、調節できる。
加熱後の支持シートの光透過率の平均値(L2)は、粘着剤層の含有成分の種類と含有量を調節することでも、調節できる。
【0157】
<ヘーズ差>
前記支持シートを140℃で2時間加熱したときの、加熱後の前記支持シートのヘーズ(h2)(本明細書においては、単に「ヘーズ(h2)」と称することがある)と、前記支持シートのヘーズ(h1)(本明細書においては、単に「ヘーズ(h1)」と称することがある)と、の差が(本明細書においては、単に「ヘーズ差」と称することがある)、15%以上であることが好ましく、例えば、20%以上、25%以上、及び30%以上のいずれかであってもよい。前記ヘーズ差([加熱後の支持シートのヘーズ(h2)]-[支持シートのヘーズ(h1)])が前記下限値以上であることで、支持シートは、140℃以上の高温で加熱した後に、種々の波長の光線下で、その外観が変化する。そのため、支持シートをこのような高温で加熱した場合の、支持シートの識別性がより高くなり(支持シートをより容易に識別でき)、支持シートをこのような高温で加熱したという履歴をより容易に確認できる。
前記支持シートの前記ヘーズ差の上限値は、特に限定されない。例えば、前記ヘーズ差が45%以下である支持シートは、より容易に製造できる。
一実施形態において、前記ヘーズ差は、例えば、15~45%、20~45%、25~45%、及び30~45%のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記ヘーズ差の一例である。
【0158】
前記ヘーズ(h2)及びヘーズ(h1)に限らず、支持シートのヘーズは、JIS K 7136:2000に準拠して、光源として白色LED(5V、3W)を用いて測定できる。
ヘーズ(h1)の測定時には、未加熱の支持シートのヘーズを測定すればよい。
ヘーズ(h2)の測定時には、支持シートを140℃で2時間加熱し、この加熱後の支持シートを、放冷によりその温度が23℃になるまで冷却した後、この冷却後の支持シートのヘーズを測定すればよい。ヘーズ(h2)の測定時には、ヘーズ(h1)を測定した支持シートを、引き続き上記のように加熱し、冷却して、この冷却後の支持シートのヘーズを測定することが好ましい。すなわち、ヘーズ(h1)を測定した支持シートを用いて、ヘーズ(h2)を測定することが好ましい。
【0159】
前記ヘーズ(h1)は、支持シートの、その基材側の外部から測定したヘーズであることが好ましい。
前記ヘーズ(h2)も同様に、加熱後の支持シートの、その基材側の外部から測定したヘーズであることが好ましい。
【0160】
本実施形態においては、このようなヘーズの測定を、1枚の未加熱の支持シート中の2箇所以上の複数個所で行い、得られた複数の測定値の平均値を、ヘーズ(h1)として採用してもよい。
本実施形態においては、このようなヘーズの測定を、1枚の加熱後の支持シート中の2箇所以上の複数個所で行い、得られた複数の測定値の平均値を、ヘーズ(h2)として採用してもよい。
【0161】
支持シートのヘーズ(h1)と、加熱後の支持シートのヘーズ(h2)は、例えば、基材の含有成分の種類と含有量、基材の両面の粗さ(例えば、表面粗さ(Ra))等を調節することで、調節できる。
支持シートのヘーズ(h1)と、加熱後の支持シートのヘーズ(h2)は、粘着剤層の含有成分の種類と含有量を調節することでも、調節できる。
【0162】
<支持シートの一例>
前記支持シートは、前記光透過率差と粘着力(X1)以外に、さらに、粘着力(Y2)、粘着力(Y0)、粘着力変化率(=粘着力(X1)/粘着力(X11)×100)、支持シートの光透過率の平均値(L1)、及び支持シートのヘーズ差(=[加熱後の支持シートのヘーズ(h2)]-[支持シートのヘーズ(h1)])からなる群より選択される1種又は2種以上が、上述のいずれかの数値範囲であることが好ましい。
すなわち、好ましい支持シートの一例としては、例えば、下記条件(1-1)及び(1-2):
(1-1) 140℃で加熱後の粘着剤層のエネルギー線硬化物と、シリコンミラーウエハと、の間の粘着力(X1)が、500mN/25mm以下である。
(1-2) 光透過率差(=[支持シートの光透過率の平均値(L1)]-[加熱後の支持シートの光透過率の平均値(L2)])が30%以上である。
を満たし、かつ、下記条件(1-3)~(1-7):
(1-3) 140℃で加熱後の粘着剤層と、SUS板と、の間の粘着力(Y2)が、6000mN/25mm以下である。
(1-4) 粘着剤層とSUS板との間の粘着力(Y0)が、2000mN/25mm以上である。
(1-5) 粘着力変化率が90~150%である。
(1-6) 支持シートの光透過率の平均値(L1)が、80%以上である。
(1-7) ヘーズ差が15%以上である。
からなる群より選択される1種又は2種以上を満たす支持シート、が挙げられる。
より好ましい支持シートの一例としては、例えば、前記条件(1-1)~(1-7)をすべて満たす支持シートが挙げられる。
ここに例示する支持シートにおいては、粘着力(X1)、光透過率差、粘着力(Y2)、粘着力(Y0)、粘着力変化率、支持シートの光透過率の平均値(L1)、及びヘーズ差からなる群より選択される1種又は2種以上が、先に説明したいずれかの数値範囲にさらに限定されていることが、特に好ましい。
【0163】
◇支持シートの製造方法
前記支持シートは、これを構成する上述の各層を対応する位置関係となるように積層し、必要に応じて、一部又はすべての層の形状を調節することで、製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
例えば、基材の少なくとも一方の面がマット面であり、前記マット面上に粘着剤層を設ける場合には、前記マット面上に上述の粘着剤組成物(I)を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、支持シートを製造できる。
【0164】
剥離フィルムの一方の面上に粘着剤組成物(I)を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の面と貼り合わせることでも、支持シートを製造できる。このとき、粘着剤組成物(I)は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。
【0165】
このように粘着剤層を基材と貼り合わせるときに加える圧力(貼付圧力)は、0.2~0.6MPaであることが好ましい。前記圧力が前記下限値以上であることで、粘着剤層と基材との間の密着力を十分に大きくでき、かつ、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性をより高くできる。前記圧力が前記上限値以下であることで、過剰な加圧が避けられる。
このような粘着剤層と基材との貼り合わせは、例えば、15℃以上の温度条件下で行うことが好ましく、常温下で行ってもよい。
【0166】
前記他の層を備えた支持シートは、例えば、基材上又は粘着剤層上の適切な箇所に、前記他の層を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、他の層を形成し、必要に応じて、さらに必要な層を積層することで、製造できる。また、基材上又は粘着剤層上の適切な箇所に、フィルム状の他の層を積層することで、他の層を設け、必要に応じて、さらに必要な層を積層することでも、製造できる。
【0167】
◇保護膜形成用複合シート
前記支持シートは、保護膜形成フィルムと積層することで、保護膜形成用複合シートを構成できる。すなわち、前記保護膜形成用複合シートは、前記支持シートと、前記支持シート中の前記粘着剤層の前記基材側とは反対側の面上に設けられた保護膜形成フィルムと、を備えている。より具体的には、前記保護膜形成用複合シートは、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、前記粘着剤層の前記基材側とは反対側の面上に設けられた保護膜形成フィルムと、を備える。前記保護膜形成用複合シートは、さらに、保護膜形成フィルムの前記粘着剤層側とは反対側の面上に設けられた剥離フィルムを備えていてもよい。
【0168】
<<保護膜形成フィルム>>
前記保護膜形成フィルムは、前記ワーク加工物のいずれかの箇所に保護膜を形成するためのフィルムである。前記保護膜形成用複合シートを用いることにより、ワーク加工物と、前記ワーク加工物のいずれかの箇所に設けられた保護膜と、を備えた保護膜付きワーク加工物を製造できる。例えば、ワークがウエハである場合、前記保護膜形成用複合シートを用いることにより、チップと、前記チップの裏面に設けられた保護膜と、を備えた保護膜付きチップを製造できる。
【0169】
前記保護膜形成フィルムは、硬化性であってもよいし、非硬化性であってもよい。すなわち、前記保護膜形成フィルムは、その硬化によって保護膜として機能するものであってもよいし、硬化していない状態で保護膜として機能するものであってもよい。
硬化性の保護膜形成フィルムは、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであってもよく、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有していてもよい。
【0170】
保護膜形成フィルムは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。保護膜形成フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0171】
熱硬化性保護膜形成フィルムとしては、例えば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するものが挙げられる。
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
本明細書において、熱硬化性ポリイミド樹脂とは、熱硬化することによってポリイミド樹脂を形成する、ポリイミド前駆体と、熱硬化性ポリイミドと、の総称である。
前記エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
【0172】
熱硬化性保護膜形成フィルムは、これらの成分以外に、さらに、硬化促進剤(C)、充填材(D)、カップリング剤(E)、架橋剤(F)、エネルギー線硬化性樹脂(G)、光重合開始剤(H)、着色剤(I)及び汎用添加剤(J)からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0173】
エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムとしては、例えば、エネルギー線硬化性成分(a)を含有するものが挙げられる。
エネルギー線硬化性成分(a)としては、例えば、エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)、エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)等が挙げられる。
【0174】
エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性成分(a)以外に、さらに、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)を含有することが好ましい。
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0175】
エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)以外に、さらに、着色剤、熱硬化性成分、熱硬化剤、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤及び汎用添加剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0176】
非硬化性保護膜形成フィルムとしては、例えば、重合体成分を含有するものが挙げられる。
前記重合体成分としては、例えば、上述の熱硬化性保護膜形成フィルムの含有成分として挙げた重合体成分(A)等の、硬化性ではない樹脂と同様のものが挙げられる。
【0177】
非硬化性保護膜形成フィルムは、前記重合体成分以外に、さらに、着色剤、充填材、カップリング剤、架橋剤及び汎用添加剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0178】
保護膜形成フィルムの厚さは、1~100μmであることが好ましい。保護膜形成フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、保護能がより高い保護膜を形成できる。保護膜形成フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、保護膜の厚さが過剰となることが避けられる。
ここで、「保護膜形成フィルムの厚さ」とは、保護膜形成フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる保護膜形成フィルムの厚さとは、保護膜形成フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0179】
保護膜形成フィルムは、その構成材料を含有する保護膜形成用組成物(熱硬化性保護膜形成フィルムを形成するための熱硬化性保護膜形成用組成物、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムを形成するためのエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物、非硬化性保護膜形成フィルムを形成するための非硬化性保護膜形成用組成物)を用いて形成できる。例えば、保護膜形成フィルムは、その形成対象面に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、形成できる。保護膜形成用組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、保護膜形成フィルムにおける前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0180】
◇保護膜形成用複合シートの製造方法
前記保護膜形成用複合シートは、これを構成する上述の各層を対応する位置関係となるように積層し、必要に応じて、一部又はすべての層の形状を調節することで、製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
例えば、剥離フィルムの一方の面上に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に保護膜形成フィルムを形成しておき、この保護膜形成フィルムの露出面(剥離フィルム側とは反対側の面)を、支持シート中の粘着剤層の露出面(基材側とは反対側の面)と貼り合わせることで、保護膜形成用複合シートを製造できる。保護膜形成用組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。
【0181】
◇ワーク加工物の製造方法(支持シートの使用方法)
前記支持シートは、ワーク加工物の製造に用いることができる。
すなわち、本発明の一実施形態に係るワーク加工物の製造方法は、前記支持シート中の前記粘着剤層を、ワークと固定用治具に貼付することにより、前記ワークと、前記ワークに設けられた前記支持シートと、を備えた支持シート付きワークを、前記固定用治具に固定する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記固定用治具に固定した前記支持シート中の前記粘着剤層を加熱する加熱工程と、前記貼付工程の後に、前記固定用治具に固定した前記支持シート付きワーク中の前記ワークを加工することにより、前記ワーク加工物を作製する加工工程と、前記加熱工程及び加工工程の後に、前記固定用治具に貼付した前記粘着剤層をエネルギー線硬化させる硬化工程と、前記硬化工程の後に、前記粘着剤層の硬化物から前記ワーク加工物を引き離してピックアップするピックアップ工程と、を有する。
【0182】
ワークが半導体ウエハである場合のワーク加工物の製造方法、すなわち半導体チップの製造方法としては、前記支持シート中の前記粘着剤層を、半導体ウエハと固定用治具に貼付することにより、前記半導体ウエハと、前記半導体ウエハに設けられた前記支持シートと、を備えた支持シート付き半導体ウエハを、前記固定用治具に固定する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記固定用治具に固定した前記支持シート中の前記粘着剤層を加熱する加熱工程と、前記貼付工程の後に、前記固定用治具に固定した前記支持シート付き半導体ウエハ中の前記半導体ウエハを分割することにより、前記半導体チップを作製する加工工程と、前記加熱工程及び加工工程の後に、前記固定用治具に貼付した前記粘着剤層をエネルギー線硬化させる硬化工程と、前記硬化工程の後に、前記粘着剤層の硬化物から前記半導体チップを引き離してピックアップするピックアップ工程と、を有する製造方法が挙げられる。
【0183】
前記貼付工程の後、前記加熱工程及び加工工程を行う順番は、目的に応じて任意に選択でき、例えば、加熱工程を行ってから加工工程を行ってもよいし、加工工程を行ってから加熱工程を行ってもよい。例えば、前記製造方法においては、ワークの表面に付着している低分子量の樹脂成分等の異物を、揮発によって除去するために、加熱工程を行うことができる。この場合の加熱工程は、加工工程の前後のいずれであっても、行うことができる。また、前記製造方法においては、ワークのダイシング等の加工時に発生し、ワーク加工物の表面に付着している微細な異物を水によって洗浄し、除去した後に、ワーク加工物等を乾燥させるために、加熱工程を行うことができる。この場合の加熱工程は、加工工程の後に行う。そして、前記製造方法においては、これら異物の除去のための加熱工程と、乾燥のための加熱工程と、をともに行ってもよく、これら加熱工程を一括で行ってもよい。
【0184】
<<ワーク加工物の製造方法の一例>>
◎製造方法(1-1)
図2は、ワークが半導体ウエハである場合の前記製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。ここでは、図1に示す支持シート1を用い、加熱工程を行ってから加工工程を行う場合の製造方法(本明細書においては、「製造方法(1-1)」と称することがある)について説明する。
【0185】
<貼付工程>
製造方法(1-1)の前記貼付工程においては、支持シート1中の粘着剤層12を、ワークである半導体ウエハ9(より具体的には、半導体ウエハ9の裏面9b)と、固定用治具であるリングフレーム8と、に貼付することにより、図2(a)に示すように、半導体ウエハ9と、半導体ウエハ9の裏面9bに設けられた支持シート1と、を備えた支持シート付き半導体ウエハ109を、リングフレーム8に固定する。支持シート付き半導体ウエハ109は、前記支持シート付きワークである。
支持シート1は、剥離フィルム13を取り除いてから用いる。粘着剤層12の基材11側とは反対側の面12aは、支持シート1の一方の面(粘着剤層12側の面)1aと同じである。
図2においては、半導体ウエハ9において、回路面9a上のバンプ等の図示を省略している。
【0186】
製造方法(1-1)の貼付工程においては、粘着剤層12のうち、その幅方向における中央寄りの領域を半導体ウエハ9に貼付し、この半導体ウエハ9への貼付領域を取り囲む領域を、リングフレーム8に貼付する。
【0187】
支持シート1(粘着剤層12)の半導体ウエハ9とリングフレーム8への貼付は、常温下で行うことができる。
支持シート1(粘着剤層12)を半導体ウエハ9とリングフレーム8へ貼付するときの貼付速度は、特に限定されないが、200~400mm/minであることが好ましい。
【0188】
前記粘着力(Y0)が2000mN/25mm以上である場合には、製造方法(1-1)の貼付工程後、後述する加熱工程を行うまでの間においては、支持シート付き半導体ウエハ109(前記支持シート付きワークに相当)の、リングフレーム8からの剥離が抑制される。例えば、支持シート付き半導体ウエハ109を、リングフレーム8に固定されている状態で含む、貼付装置等のいずれかの装置に、揺れが発生したり、リングフレーム8に固定されている支持シート付き半導体ウエハ109を搬送するときに、この状態の支持シート付き半導体ウエハ109に揺れが発生したりしても、支持シート付き半導体ウエハ109の、リングフレーム8からの剥離が抑制される。
【0189】
<加熱工程>
製造方法(1-1)の前記貼付工程の後、前記加熱工程においては、図2(b)に示すように、リングフレーム8に固定した支持シート1中の粘着剤層12を加熱する。この場合の粘着剤層12の加熱は、支持シート付き半導体ウエハ109全体の加熱に伴うものであり、この加熱によって、例えば、半導体ウエハ9の表面(例えば、回路面9a)に付着している低分子量の樹脂成分等の異物を、揮発によって除去できる。
【0190】
粘着剤層12(支持シート付き半導体ウエハ109)の加熱時の温度(加熱温度)は、130~145℃であることが好ましく、130℃以上140℃未満であってもよいが、140~145℃であることがより好ましい。加熱温度が前記下限値以上であることで、加熱による効果が十分得られる。加熱温度が前記上限値以下であることで、過剰な加熱が避けられ、例えば、支持シート付き半導体ウエハ109の劣化が抑制される。なかでも、加熱温度が140~145℃である場合に、支持シート1を用いたことにより得られる効果が、特に高くなる。
【0191】
支持シート1の前記光透過率差が30%以上であることにより、支持シート1は、前記加熱工程において140℃以上の高温で加熱した場合に、明らかに白化して外観が変化する。そのため、支持シート1をこのような高温で加熱した場合の、支持シート1の識別性が高くなる。
【0192】
支持シート1の前記ヘーズ差が15%以上である場合には、支持シート1は、前記加熱工程において140℃以上の高温で加熱した後に、種々の波長の光線下で、その外観が変化する。そのため、支持シート1をこのような高温で加熱した場合の、支持シート1の識別性がより高くなる。
【0193】
支持シート1において、前記粘着力(Y2)が6000mN/25mm以下である場合には、前記加熱工程において、支持シート付き半導体ウエハ109がリングフレーム8に固定された状態で加熱されることで、加熱後の支持シート付き半導体ウエハ109中の粘着剤層12をさらにエネルギー線硬化させなくても、支持シート付き半導体ウエハ109をリングフレーム8から剥離可能となる。さらに、支持シート付き半導体ウエハ109をリングフレーム8から剥離したときには、リングフレーム8での粘着剤層12の残存を抑制できる。したがって、例えば、加熱後の支持シート付き半導体ウエハ109をリングフレーム8から剥離した後、再度リングフレーム8に貼付し、固定することが可能となる。このように、ワーク加工物の製造方法として、汎用性が高い方法の採用が可能となる。
【0194】
<加工工程>
製造方法(1-1)の前記貼付工程及び加熱工程の後、前記加工工程においては、図2(c)に示すように、リングフレーム8に固定した、加熱後の支持シート付き半導体ウエハ109中の半導体ウエハ9を分割することにより、ワーク加工物である半導体チップ90を作製する。加工工程により、1枚の支持シート1上で複数個の半導体チップ90が整列して保持されて構成されている、支持シート付き半導体チップ群901が得られる。
【0195】
半導体チップ90の回路面90aは、半導体ウエハ9の回路面9aに対応している。
半導体チップ90の裏面90bは、半導体ウエハ9の裏面9bに対応している。
【0196】
半導体ウエハ9の分割は、公知の方法で行うことができる。例えば、ブレードを用いるブレードダイシング、レーザー照射によるレーザーダイシング、又は研磨剤を含む水の吹き付けによるウォーターダイシング等の各ダイシングによって、半導体ウエハ9を分割できる。
半導体ウエハ9として、ステルスダイシング(登録商標)によって改質層を形成し、かつ分割を行っていないものを用い、半導体ウエハ9を、その回路面9a又は裏面9bに対して平行な方向においてエキスパンドすることでも、半導体ウエハ9を分割できる。
【0197】
ステルスダイシング(登録商標)とは、以下のような方法である。すなわち、まず、半導体ウエハの内部において、分割予定箇所を設定し、この箇所を焦点として、この焦点に集束するように、レーザー光を照射することにより、半導体ウエハの内部に改質層を形成する。半導体ウエハの改質層は、半導体ウエハの他の箇所とは異なり、レーザー光の照射によって変質しており、強度が弱くなっている。そのため、半導体ウエハに力が加えられることにより、半導体ウエハの内部の改質層において、半導体ウエハの両面方向に延びる亀裂が発生し、半導体ウエハの分割(切断)の起点となる。次いで、半導体ウエハに力を加えて、前記改質層の部位において半導体ウエハを分割し、半導体チップを作製する。
【0198】
<硬化工程>
製造方法(1-1)の前記加熱工程及び加工工程の後、前記硬化工程においては、図2(d)に示すように、リングフレーム8に貼付した粘着剤層12をエネルギー線硬化させる。硬化工程により、1枚の硬化済み支持シート1’上で、複数個の半導体チップ90が整列して保持されて、構成されている、硬化済み支持シート付き半導体チップ群901’が得られる。
支持シート1は、粘着剤層12がエネルギー線硬化されて、エネルギー線硬化物12’となることによって、硬化済み支持シート1’となる。
硬化済み支持シート付き半導体チップ群901’は、ワーク加工物群と、硬化済み支持シートと、の積層物(換言すると、硬化済み支持シート付きワーク加工物群)であり、粘着剤層12がそのエネルギー線硬化物12’となっている点を除けば、支持シート付き半導体チップ群901と同じである。
【0199】
粘着剤層12のエネルギー線硬化時における(粘着剤層12にエネルギー線を照射するときの)、エネルギー線の照度は、60~320mW/cmであることが好ましく、エネルギー線の光量は、100~1000mJ/cmであることが好ましい。
エネルギー線は、基材11越しに(基材11を介して)、支持シート1の外部から、粘着剤層12に照射することが好ましい。
【0200】
<ピックアップ工程>
製造方法(1-1)の前記硬化工程の後、前記ピックアップ工程においては、図2(e)に示すように、硬化済み支持シート1’中の粘着剤層のエネルギー線硬化物12’から、半導体チップ90を引き離してピックアップすることにより、硬化済み支持シート付き半導体チップ群901’から、目的とする半導体チップ90を取り出すことができる。ここでは、ピックアップの方向を矢印Pで示している。
【0201】
半導体チップ90のピックアップ時には、半導体チップ90の裏面90bと、粘着剤層のエネルギー線硬化物12’の基材11側とは反対側の面12a’と、の間で、剥離が生じる。このとき、粘着剤層のエネルギー線硬化物12’と半導体チップ90との間の粘着力は、粘着剤層12と半導体チップ90との間の粘着力よりも小さいため、半導体チップ90は粘着剤層のエネルギー線硬化物12’から容易に剥離し、容易にピックアップできる。
粘着剤層のエネルギー線硬化物12’の基材11側とは反対側の面12a’は、粘着剤層12の基材11側とは反対側の面12aに対応しており、硬化済み支持シート1’の一方の面(粘着剤層のエネルギー線硬化物12’側の面)1a’と同じである。
【0202】
半導体チップ90のピックアップは、公知の方法で行うことができる。例えば、半導体チップ90を硬化済み支持シート1’(粘着剤層のエネルギー線硬化物12’)から引き離すための引き離し手段7としては、真空コレット等が挙げられる。
【0203】
支持シート1において、前記粘着力(X1)が500mN/25mm以下であることで、前記加熱工程において、半導体ウエハ9が貼付された状態の支持シート1(換言すると、支持シート付き半導体ウエハ109)を、140℃以上で145℃程度を上限値とする高温で加熱した後であっても、支持シート1上で半導体ウエハ9から半導体チップ90を作製した後に、半導体チップ90を硬化済み支持シート1’から正常にピックアップでき、ピックアップ性が高い。
【0204】
支持シート1において、前記粘着力変化率が90~150%である場合には、前記加熱工程において、前記加熱温度を130℃以上140℃未満、特に130℃とした場合であっても、前記加熱温度を140~145℃とした場合と同様の条件で、半導体チップ90(ワーク加工物に相当)を硬化済み支持シート1’から正常にピックアップでき、ピックアップ性が高い。したがって、このように加熱温度を低めに設定しても、半導体チップ90の作製時に、装置の条件設定の変更が不要となり、加熱温度の設定の点で汎用性が高くなる。
【0205】
<他の工程>
製造方法(1-1)は、貼付工程と、加熱工程と、加工工程と、硬化工程と、ピックアップ工程と、のいずれにも該当しない他の工程を有していてもよい。
前記他の工程の種類と、前記他の工程の数と、前記他の工程を行うタイミングは、いずれも目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0206】
<<ワーク加工物の製造方法の他の例>>
◎製造方法(1-2)
ここまでは、ワーク加工物の製造方法として、貼付工程、加熱工程、加工工程、硬化工程及びピックアップ工程を、この順に行う場合の製造方法(製造方法(1-1))について説明したが、本実施形態のワーク加工物の製造方法は、これに限定されない。例えば、前記製造方法においては、上述のとおり、加熱工程及び加工工程を行う順序が逆であってもよい(本明細書においては、このような製造方法を「製造方法(1-2)」と称することがある)。以下、ワークが半導体ウエハである場合の前記製造方法(1-2)について説明する。
【0207】
<貼付工程>
このようなワーク加工物の製造方法(製造方法(1-2))においては、まず、貼付工程を行う。製造方法(1-2)の前記貼付工程は、製造方法(1-1)の貼付工程と同じである。
【0208】
<加工工程>
製造方法(1-2)の前記貼付工程の後、前記加工工程においては、リングフレームに固定した未加熱の支持シート付き半導体ウエハ中の半導体ウエハを分割することにより、ワーク加工物である半導体チップを作製する。半導体ウエハの分割は、製造方法(1-1)の場合と同じ方法で行うことができる。加工工程により、加熱されていない点を除けば、製造方法(1-1)の場合と同じ支持シート付き半導体チップ群が得られる。
【0209】
前記粘着力(Y0)が2000mN/25mm以上である場合には、製造方法(1-2)の加工工程後、後述する加熱工程を行うまでの間においては、支持シート付き半導体チップ群(前記支持シート付きワーク加工物群に相当)の、リングフレームからの剥離が抑制される。例えば、支持シート付き半導体チップ群を、リングフレームに固定されている状態で含む、分割装置等のいずれかの装置に、揺れが発生したり、リングフレームに固定されている支持シート付き半導体チップ群を搬送するときに、この状態の支持シート付き半導体チップ群に揺れが発生したりしても、支持シート付き半導体チップ群の、リングフレームからの剥離が抑制される。
【0210】
支持シートの光透過率の平均値(L1)が80%以上である場合には、前記加工工程で得られた支持シート付き半導体チップ群において、支持シート越しに、半導体チップでの割れや欠け等の破損(例えばチッピング)の有無を検査するときに、検査精度が高くなる。
【0211】
<加熱工程>
製造方法(1-2)の前記貼付工程及び加工工程の後、前記加熱工程においては、リングフレームに固定した支持シート中の粘着剤層を加熱する。この場合の粘着剤層の加熱は、支持シート付き半導体チップ群全体の加熱に伴うものである。この加熱によって、例えば、半導体チップの表面(例えば、回路面)に付着している低分子量の樹脂成分等の異物を、揮発によって除去できる。また、半導体ウエハのダイシング時に発生し、半導体チップの表面に付着している微細な異物を水によって洗浄し、除去した後に、この加熱によって、半導体チップ等を乾燥させることができる。
【0212】
粘着剤層(支持シート付き半導体チップ群)の加熱時の温度(加熱温度)は、製造方法(1-1)の前記加熱工程における粘着剤層(支持シート付き半導体ウエハ)の加熱時の温度(加熱温度)と同じである。
【0213】
支持シートにおいて、前記粘着力(Y2)が6000mN/25mm以下である場合には、前記加熱工程において、支持シート付き半導体チップ群がリングフレームに固定された状態で加熱されることで、加熱後の支持シート付き半導体チップ群中の粘着剤層をさらにエネルギー線硬化させなくても、支持シート付き半導体チップ群をリングフレームから剥離可能となる。さらに、支持シート付き半導体チップ群をリングフレームから剥離したときには、リングフレームでの粘着剤層の残存を抑制できる。したがって、例えば、加熱後の支持シート付き半導体チップ群をリングフレームから剥離した後、再度リングフレームに貼付し、固定することが可能となる。このように、ワーク加工物の製造方法として、汎用性が高い方法の採用が可能となる。
【0214】
支持シートの前記光透過率差が30%以上であることにより、支持シートは、前記加熱工程において140℃以上の高温で加熱した場合に、明らかに白化して外観が変化する。そのため、支持シートをこのような高温で加熱した場合の、支持シートの識別性が高くなる。
【0215】
支持シートの前記ヘーズ差が15%以上である場合には、支持シートは、前記加熱工程において140℃以上の高温で加熱した後に、種々の波長の光線下で、その外観が変化する。そのため、支持シートをこのような高温で加熱した場合の、支持シートの識別性がより高くなる。
【0216】
<硬化工程>
製造方法(1-2)の前記加工工程及び加熱工程の後、前記硬化工程は、製造方法(1-1)の場合と同様に行うことができ、前記硬化工程により、製造方法(1-1)の場合と同様の硬化済み支持シート付き半導体チップ群が得られる。
【0217】
<ピックアップ工程>
製造方法(1-2)の前記硬化工程の後、前記ピックアップ工程は、製造方法(1-1)の場合と同様に行うことができ、前記ピックアップ工程により、製造方法(1-1)の場合と同様の、目的とする半導体チップを取り出すことができる。
【0218】
支持シートにおいて、前記粘着力(X1)が500mN/25mm以下であることで、前記加熱工程において、支持シート付き半導体チップ群を、140℃以上で145℃程度を上限値とする高温で加熱した後であっても、製造方法(1-1)の場合と同様に、半導体チップを硬化済み支持シートから正常にピックアップでき、ピックアップ性が高い。
【0219】
支持シートにおいて、前記粘着力変化率が90~150%である場合には、前記加熱工程において、前記加熱温度を130℃以上140℃未満、特に130℃とした場合であっても、前記加熱温度を140~145℃とした場合と同様の条件で、半導体チップ(ワーク加工物に相当)を硬化済み支持シートから正常にピックアップでき、ピックアップ性が高い。したがって、製造方法(1-1)の場合と同様に、加熱温度を低めに設定しても、半導体チップの作製時に、装置の条件設定の変更が不要となり、加熱温度の設定の点で汎用性が高くなる。
【0220】
<他の工程>
製造方法(1-2)は、製造方法(1-1)の場合と同様の他の工程を有していてもよい。
製造方法(1-2)においても、前記他の工程の種類と、前記他の工程の数と、前記他の工程を行うタイミングは、いずれも目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【実施例0221】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0222】
以下の実施例、比較例及び参考例で用いたリングフレームは、SUS製である。前記リングフレームの形状は、円環の外周部の一部の領域であって、円環の中心に対して対象な2箇所の前記領域中の円弧が、いずれも直線状に削られた、略円環状である。そして、8インチウエハ用のリングフレームとしては、円環の外径が296mm、前記直線状部位の幅が276mm、円環の内径が250mm、厚さが1.2mmのものを用いた。12インチウエハ用のリングフレームとしては、円環の外径が400mm、前記直線状部位の幅が380mm、円環の内径が350mm、厚さが1.5mmのものを用いた。
【0223】
<樹脂の製造原料>
本実施例及び比較例において略記している、樹脂の製造原料の正式名称を、以下に示す。
2EHA:アクリル酸2-エチルへキシル
2EHMA:メタクリル酸2-エチルへキシル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
MOI:2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート
【0224】
<粘着剤組成物の製造原料>
本実施例及び比較例において、粘着剤組成物の製造時に用いた製造原料を、以下に示す。
[エネルギー線硬化性化合物(α)]
(α)-1:2-(2-フェノキシエトキシ)エチルアクリレート(新中村化学工業社製「AMP-20GY」、23℃での粘度18mPa・s、分子量236.1)
[架橋剤(β1)]
(β1)-1:ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体化によって形成されたと見做せるヌレート骨格と、それ以外のヘキサメチレンジイソシアネートに由来する骨格と、をともに有するブロック型の架橋剤(旭化成社製「デュラネート(登録商標)MF-K60B」、数平均分子量12000、25℃での粘度220mPa・s)
[架橋剤(β2)]
(β2)-1:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(東ソー社製「コロネートHX」)
(β2)-2:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(東ソー社製「コロネートHL」)
[光重合開始剤(γ)]
(γ)-1:2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン(IGM Resins社製「オムニラッド(登録商標) 127」)
【0225】
なお、上記のエネルギー線硬化性化合物(α)-1の粘度は、単一円筒型のB形(ブルックフィード形)回転粘度計を用いて測定した値である。
上記の架橋剤(β1)の粘度は、E型粘度計を用いて測定した値である。
【0226】
[実施例1]
<<支持シートの製造>>
<エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)の製造>
アクリル重合体(1)にMOIを加え、空気気流中において50℃で48時間付加反応を行うことで、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)-1を得た。前記アクリル重合体(1)は、2EHA(35質量部)と、2EHMA(45質量部)と、HEMA(20質量部)と、の共重合体である。MOIの使用量は、前記アクリル重合体(1)中のHEMA由来の水酸基の総モル数に対して、MOI中のイソシアネート基の総モル数が、0.55倍となる量とした。得られたエネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)-1の重量平均分子量は400000であり、ガラス転移温度は-26℃である。
【0227】
<粘着剤組成物(I)の製造>
エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)-1(100質量部)、架橋剤(β1)-1(13.5質量部)、架橋剤(β2)-1(2質量部)、及び光重合開始剤(γ)-1(3質量部)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有しており、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が25質量%である、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I)-1を、常温下で調製した。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の含有量はすべて、溶媒を含まない目的物の含有量である。
【0228】
<粘着剤層の形成>
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた粘着剤組成物(I)-1を塗工し、100℃で2分加熱乾燥させることにより、厚さ15μmのエネルギー線硬化性の粘着剤層を形成した。
【0229】
<支持シートの製造>
次いで、常温下で、この粘着剤層の露出面に、基材としてポリプロピレン製フィルム(ダイヤプラスフィルム社製、厚さ80μm)を、貼付速度を5m/minとし、0.4MPaの圧力を加えて貼り合わせた。このポリプロピレン製フィルムの一方の面は、その表面粗さ(Ra)が0.90μmのマット面であり、他方の面は、その表面粗さ(Ra)が0.12μmの微マット面であって、このポリプロピレン製フィルムの前記マット面に、前記粘着剤層を貼り合わせた。
以上により、目的とする支持シートを得た。
【0230】
<<支持シートの評価>>
以降の支持シートの評価時には、粘着剤層上の前記剥離フィルムを適宜剥がしてから、評価を行った。例えば、粘着力を測定するために各被着体に支持シートを貼付するとき、光透過率及びヘーズを測定するとき、並びに各効果を確認するための評価を行うときには、剥離フィルムを粘着剤層から剥がしてから、これらを行った。
【0231】
<140℃で加熱後の粘着剤層のエネルギー線硬化物と、シリコンミラーウエハと、の間の粘着力(X1)の測定>
上記で得られた支持シートから、幅が25mmの試験片を切り出した。
23℃の貼付温度条件(ラミネートローラーの温度23℃、シリコンミラーウエハの温度23℃)で、貼付速度を300mm/minとし、貼付圧力を0.3MPaとして、この試験片をその中の粘着剤層によって、シリコンミラーウエハ(厚さ650μm)のミラー面に貼付し、試験片付きシリコンミラーウエハを得た。この試験片付きシリコンミラーウエハを、140℃に温度調節したオーブンの内部に入れて、この温度(140℃)で2時間加熱した。
次いで、オーブンから試験片付きシリコンミラーウエハを取り出し、放冷によりその温度が23℃になるまで冷却した。そして、紫外線照射装置(リンテック社製「RAD-2000UV」)を用いて、照度230mW/cm、光量200mJ/cmの条件で、この取り出した試験片付きシリコンミラーウエハ中の粘着剤層に対して、基材越しに紫外線を照射することで、試験片中の粘着剤層を紫外線硬化させた。
【0232】
次いで、23℃の環境下で、剥離速度を300mm/minとして、シリコンミラーウエハから前記試験片を剥離した。このとき、シリコンミラーウエハの前記試験片が貼付されていた面と、前記試験片のシリコンミラーウエハが貼付されていた面と、が180°の角度を為すように、前記試験片をその長さ方向へ剥離した(180°剥離を行った)。そして、この180°剥離のときの荷重(剥離力)を測定し、測定の長さを50mmとして、最初の長さ5mm分での測定値と、最後の長さ5mm分での測定値を、有効値から除外した。そして、その測定値の平均値を粘着力(mN/25mm)として採用した。
このような、粘着力の測定を2回行い、その時の平均値を、140℃で加熱後の粘着剤層のエネルギー線硬化物とシリコンミラーウエハとの間の粘着力(X1)(mN/25mm)として採用した。結果を表1に示す。
【0233】
なお、表1中の「粘着剤層の架橋剤(β1)の含有量(質量%)」とは、「粘着剤層における、粘着剤層の総質量に対する、架橋剤(β1)の含有量の割合(質量%)」のことである。これは、以降の表においても同様である。
【0234】
<粘着力変化率の算出>
上記の粘着力(X1)の測定時と同じ方法で、試験片付きシリコンミラーウエハを作製した。そして、この試験片付きシリコンミラーウエハの加熱温度を140℃に代えて130℃とした点以外は、上記の粘着力(X1)の測定時と同じ方法で、130℃で加熱後の粘着剤層のエネルギー線硬化物とシリコンミラーウエハとの間の粘着力(X11)を測定した。
上記の粘着力(X1)の測定値と、この粘着力(X11)の測定値を用いて、前記式(i)(粘着力変化率=粘着力(X1)/粘着力(X11)×100)により、粘着力変化率を算出した。結果を、粘着力(X11)の測定値とともに、表1に示す。
【0235】
<140℃で加熱後の粘着剤層と、SUS板と、の間の粘着力(Y2)の測定>
試験片の貼付を、前記シリコンミラーウエハのミラー面に代えて、SUS板(パルテック社製「SUS304 ♯1200HL、厚さ1000μm、サイズ70mm×150mm」)の♯1200研磨された面に対して行った点以外は、上記の粘着力(X1)の測定時と同じ方法で、試験片付きSUS板を得た。
次いで、この試験片付きSUS板について、上記の粘着力(X1)の測定時の試験片付きシリコンミラーウエハの場合と同じ方法で、140℃で2時間加熱し、放冷によりその温度が23℃になるまで冷却した。
【0236】
次いで、23℃の環境下で、剥離速度を300mm/minとして、この冷却後のSUS板から前記試験片を剥離した。このとき、SUS板の前記試験片が貼付されていた面と、前記試験片のSUS板が貼付されていた面と、が180°の角度を為すように、前記試験片をその長さ方向へ剥離した(180°剥離を行った)。そして、この180°剥離のときの荷重(剥離力)を測定し、測定の長さを50mmとして、最初の長さ5mm分での測定値と、最後の長さ5mm分での測定値を、有効値から除外した。そして、その測定値の平均値を粘着力(mN/25mm)として採用した。
このような、粘着力の測定を2回行い、その時の平均値を、140℃で加熱後の粘着剤層とSUS板との間の粘着力(Y2)(mN/25mm)として採用した。結果を表1に示す。
【0237】
<粘着剤層とSUS板との間の粘着力(Y0)の測定>
上記の粘着力(Y2)の測定時と同じ方法で、試験片付きSUS板を作製した。
次いで、この試験片付きSUS板を、23℃の温度条件下で30分間静置保管した。
次いで、23℃の環境下で、剥離速度を300mm/minとして、この静置保管後のSUS板から前記試験片を剥離した。このとき、SUS板の前記試験片が貼付されていた面と、前記試験片のSUS板が貼付されていた面と、が180°の角度を為すように、前記試験片をその長さ方向へ剥離した(180°剥離を行った)。そして、この180°剥離のときの荷重(剥離力)を測定し、測定の長さを50mmとして、最初の長さ5mm分での測定値と、最後の長さ5mm分での測定値を、有効値から除外した。そして、その測定値の平均値を粘着力(mN/25mm)として採用した。
このような、粘着力の測定を2回行い、その時の平均値を、粘着剤層とSUS板との間の粘着力(Y0)(mN/25mm)として採用した。結果を表1に示す。
【0238】
<支持シートの光透過率の平均値(L1)の算出、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性の評価>
UV-vis測定装置(島津製作所社製「UV-vis-NIR3600」)を用いて、上記で得られた支持シートに対して、その基材側の外部から光を照射し、積分球を使用せずに、直接受光により、光線透過率を測定した。このときの測定の波長範囲は、190~2000nmとした。そして、可視光領域の400~800nmの波長範囲で、1nmごとに光透過率の値を合算し、その合計値を、合算した光透過率の値の数(すなわち、800-400+1=401)で除することにより、支持シートの光透過率(400~800nm)の平均値(L1)(%)を算出した。そして、この平均値(L1)から、下記基準に従って、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性を評価した。これらの結果を表1に示す。
(評価基準)
A:支持シートの光透過率の平均値(L1)が80%以上であり、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性が高い。
B:支持シートの光透過率の平均値(L1)が80%未満であり、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性が不十分である。
【0239】
<光透過率差の算出>
上記で得られた支持シート中の粘着剤層のうち、その幅方向における中央寄りの領域を、シリコンミラーウエハ(厚さ650μm)のミラー面に貼付し、このシリコンミラーウエハへの貼付領域を取り囲む領域を、リングフレームに貼付した。このときの、粘着剤層のシリコンウエハ及びリングフレームへの貼付は、23℃の貼付温度条件(ラミネートローラーの温度23℃、シリコンミラーウエハの温度23℃)で、貼付速度を300mm/minとし、貼付圧力を0.3MPaとして行った。これにより、シリコンミラーウエハと、前記シリコンミラーウエハの一方の面に設けられた支持シートと、を備えた支持シート付きシリコンミラーウエハを、リングフレームに固定した。
次いで、支持シート付きシリコンミラーウエハを、140℃に温度調節したオーブンの内部に入れて、この温度(140℃)で2時間加熱した。
次いで、オーブンから支持シート付きシリコンミラーウエハを取り出し、放冷によりその温度が23℃になるまで冷却した。この冷却後の支持シート付きシリコンミラーウエハ中の支持シートのうち、粘着剤層がリングフレームに貼付されている領域と、粘着剤層がシリコンミラーウエハに貼付されている領域と、の間の、粘着剤層が露出している領域から、試験片を切り出した。
【0240】
UV-vis測定装置(島津製作所社製「UV-vis-NIR3600」)を用いて、支持シートに代えて、上記で得られた試験片を用いた点以外は、上記の支持シートの光透過率の平均値(L1)の算出時と同じ方法で、試験片(すなわち、加熱後の支持シート)の光線透過率を測定し、光透過率の平均値(L2)を算出した。
得られた値から、前記光透過率差([支持シートの光透過率の平均値(L1)]-[加熱後の支持シートの光透過率の平均値(L2)])を算出した。結果を表1に示す。
【0241】
<140℃で加熱した支持シートの識別性の評価>
上記の、140℃に温度調節したオーブンの内部に入れる前の支持シート付きシリコンミラーウエハのうち、支持シートの色味を、10人の判定員が蛍光灯下で3秒間、目視で観察した。
さらに上記の、140℃で加熱及び冷却後の支持シート付きシリコンミラーウエハのうち、支持シートの色味を、10人の判定員が蛍光灯下で3秒間、目視で観察した。
そして、加熱前後での支持シートの外観の変化の有無を、色味の変化の点から、10人の判定員によって判定し、下記基準に従って、140℃で加熱した支持シートの識別性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:10人の判定員全員が、支持シートの外観が加熱によって変化している、と判定した。
B:8~9人の判定員が、支持シートの外観が加熱によって変化している、と判定し、1~2人の判定員が、支持シートの外観が加熱によって変化していない、と判定した。
C:3人以上の判定員が、支持シートの外観が加熱によって変化していない、と判定した。
【0242】
<支持シートのヘーズ(h1)の算出、140℃で加熱後の支持シートのヘーズ(h2)の算出、ヘーズ差の算出>
上記で得られた支持シートの任意の3箇所について、ヘーズメーター(日本電色工業社製「NDH5000」)を用い、光源として白色LED(5V、3W)を用いて、JIS K 7136:2000に準拠して、支持シートの基材側の外部からヘーズ(%)を測定した。そして、この3つの測定値の平均値をヘーズ(h1)(%)として採用した。
次いで、このヘーズ(h1)(%)を測定後の支持シートを、140℃に温度調節したオーブンの内部に入れて、この温度(140℃)で2時間加熱した。
次いで、オーブンから支持シートを取り出し、放冷によりその温度が23℃になるまで冷却した。そして、この加熱後の支持シートの任意の3箇所について、上記と同じ方法で、加熱後の支持シートの基材側の外部からヘーズ(%)を測定した。そして、この3つの測定値の平均値をヘーズ(h2)(%)として採用した。
これらヘーズ(h2)及びヘーズ(h1)の値から、ヘーズ差([ヘーズ(h2)]-[ヘーズ(h1)])(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0243】
<支持シートのチッピング検査精度の評価>
(支持シート付きシリコンチップ群の製造)
一方の面が#2000研磨された8インチシリコンウエハ(厚さ350μm)を用意した。上記で得られた支持シート中の粘着剤層のうち、その幅方向における中央寄りの領域を、このシリコンウエハに貼付し、このシリコンウエハへの貼付領域を取り囲む領域を、リングフレームに貼付した。このときの、粘着剤層のシリコンウエハ及びリングフレームへの貼付は、23℃の貼付温度条件(ラミネートローラーの温度23℃、シリコンウエハの温度23℃)で、貼付速度を300mm/minとし、貼付圧力を0.3MPaとして行った。これにより、シリコンウエハと、前記シリコンウエハの一方の面に設けられた支持シートと、を備えた支持シート付きシリコンウエハを、リングフレームに固定した(貼付工程)。
次いで、ダイシング装置(ディスコ社製「DFD6362」)を用いて、リングフレームに固定した支持シート付きシリコンウエハ中のシリコンウエハをダイシングすることにより、大きさが1mm×1mmのシリコンチップを複数個作製した(加工工程)。このとき、ダイシングブレードとしてはディスコ社製「ZH05-SD2000-N1-90 CC」を用い、ブレード回転数を35000rpm、ブレード送り速度を30mm/s、ブレード高さを0.06mmとして、支持シート付きシリコンウエハに対して、そのシリコンウエハ側の表面からブレードを入れて、基材の、その粘着剤層側の面から20μmの深さの領域まで、切り込んだ。
以上により、1枚の支持シート上で複数個のシリコンチップが整列して保持されている、支持シート付きシリコンチップ群を作製した。
【0244】
(支持シートのチッピング検査精度の評価)
ウエハ自動外観検査装置(キヤノン社製「Eagle-i」)を用いて、この支持シート付きシリコンチップ群中のシリコンチップを、支持シート越しに観察し、シリコンチップの支持シートへの貼付面において、大きさが100μm以上の割れ又は欠け(チッピング)が認められるシリコンチップの数C1を確認した。
次いで、23℃の温度条件下で、支持シート付きシリコンチップ群中の全てのシリコンチップの露出面(支持シート側とは反対側の面)に、粘着テープ(リンテック社製「PET50 PLシン」)を貼付した。この粘着テープは、厚さ50μmの基材と、前記基材の一方の面上に設けられたアクリル系粘着剤層と、を備えて構成されている。
次いで、紫外線照射装置(リンテック社製「RAD-2000UV」)を用いて、この粘着テープを貼付後の支持シート付きシリコンチップ群中の粘着剤層に対して、その基材側の外部から基材越しに、照度230mW/cm、光量200mJ/cmの条件で紫外線を照射することで、粘着剤層を紫外線硬化させた。
次いで、得られた硬化済み支持シート付きシリコンチップ群から、硬化済み支持シートを取り除いた。そして、これにより露出したシリコンチップ群中のシリコンチップを、前記ウエハ自動外観検査装置を用いて直接観察し、シリコンチップの露出面(硬化済み支持シートへ貼付されていた面)において、大きさが100μm以上の割れ又は欠け(チッピング)が認められるシリコンチップの数C2を確認した。
【0245】
下記式(ii)に従って、チッピングの検査精度値を算出し、下記基準に従って、支持シートのチッピング検査精度を評価した。結果を表1に示す。
[チッピングの検査精度値]=C2/C1 (ii)
(評価基準)
A:検査精度値が1.2未満であり、支持シートのチッピング検査精度が高く、検査精度が合格である。
B:検査精度値が1.2以上であり、支持シートのチッピング検査精度が劣り、検査精度が不合格である。
【0246】
<支持シートのシリコンチップのピックアップ性の評価>
(支持シート付きシリコンチップ群の製造)
上記の「支持シートのチッピング検査精度の評価」時と同じ方法で、支持シート付きシリコンウエハを、リングフレームに固定した(貼付工程)。このリングフレームに固定した支持シート付きシリコンウエハを、オーブンの内部に入れて、140℃で2時間加熱した(加熱工程)。
次いで、オーブンから、リングフレームに固定した支持シート付きシリコンウエハを取り出し、放冷によりその温度が23℃になるまで冷却した。そして、シリコンチップの大きさを、1mm×1mmに代えて2.5mm×2.5mmとした点以外は、上記の「支持シートのチッピング検査精度の評価」時と同じ方法で、支持シート付きシリコンチップ群を作製した(加工工程)。
【0247】
(支持シートのシリコンチップのピックアップ性の評価)
次いで、紫外線照射装置(リンテック社製「RAD-2000UV」)を用いて、この支持シート付きシリコンチップ群中の粘着剤層に対して、その基材側の外部から基材越しに、照度230mW/cm、光量200mJ/cmの条件で紫外線を照射することで、リングフレームに貼付した粘着剤層を紫外線硬化させた(硬化工程)。
次いで、ピックアップ・ダイボンディング装置(キヤノンマシナリー社製「BESTEM D-510」)を用いて、硬化済み支持シート付きシリコンチップ群のシリコンチップを、下記のピックアップ条件で、粘着剤層の硬化物から引き離してピックアップした(ピックアップ工程)。このピックアップは、硬化済み支持シート付きシリコンチップ群のシリコンチップのうち、ダイシング前のシリコンウエハにおける中心とその近傍の領域から分割された、直交する2方向における10列分の領域の、合計で100個のシリコンチップに対して行い、1個のシリコンチップを、支持シート側から1本のピンによって突き上げる方式で行った。そして、下記基準に従って、支持シートのピックアップ性を評価した。結果を表1に示す。
(ピックアップ条件)
突き上げ速度:5mm/s
エキスパンド量:4mm
ピン先端部の曲率半径:0.75mm
(評価基準)
A:すべて(100個)のシリコンチップを正常にピックアップできた。
B:1~4個のシリコンチップを正常にピックアップできなかったが、他のすべて(96~99個)のシリコンチップを正常にピックアップできた。
C:5個以上のシリコンチップを正常にピックアップできなかった。
【0248】
<支持シートのリングフレームからの剥離の抑制効果の評価>
12インチシリコンウエハ(厚さ600μm)を用意した。上記で得られた支持シート中の粘着剤層のうち、その幅方向における中央寄りの領域を、このシリコンウエハに貼付し、このシリコンウエハへの貼付領域を取り囲む領域を、リングフレームに貼付した。このときの、粘着剤層のシリコンウエハ及びリングフレームへの貼付は、23℃の貼付温度条件(ラミネートローラーの温度23℃、シリコンウエハの温度23℃)で、貼付速度を300mm/minとし、貼付圧力を0.3MPaとして行った。これにより、シリコンウエハと、前記シリコンウエハの一方の面に設けられた支持シートと、を備えた支持シート付きシリコンウエハを、リングフレームに固定した。
【0249】
次いで、リングフレームに固定した支持シート付きシリコンウエハを、シリコンウエハの露出面(支持シートを備えている側とは反対側の面)が水平となるように配置した。そして、シリコンチップの製造時における製造装置の揺れや、リングフレームに固定した支持シート付きシリコンウエハの、その搬送時における揺れ等を想定して、リングフレームに対して、周波数100Hz、振幅0.05mの条件で振動を加え、リングフレームに固定した支持シート付きシリコンウエハを、このような加振環境下に23℃で2時間置いた。さらに、加振を解除し、リングフレームに固定した支持シート付きシリコンウエハを23℃で2時間静置した。再度、リングフレームに固定した支持シート付きシリコンウエハを、上記のような加振環境下に23℃で2時間置いてから、さらに加振を解除して23℃で2時間静置する保管サイクルを4回繰り返すことにより、前記保管サイクルを合計で5回行った。
【0250】
次いで、リングフレームに固定した支持シート付きシリコンウエハにおいて、支持シートの基材側の外部から、支持シートのリングフレームからの剥離の有無と、剥離がある場合には、剥離の程度を目視で確認した。リングフレームに固定した支持シート付きシリコンウエハが、上記の配置である場合、支持シートがリングフレームから剥離するときには、リングフレームの内周側から剥離する。そこで、支持シートのリングフレームからの剥離がある場合には、リングフレームの内周から、支持シートの剥離部位の端までの距離が最大である剥離部位、すなわち最大剥離距離を有する剥離部位を特定し、剥離の有無に加え、この最大剥離距離に基づいて、下記基準に従って、支持シートのリングフレームからの剥離の抑制効果を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:支持シートのリングフレームからの剥離が無いか、又は剥離があっても、最大剥離距離が2mm以下であり、剥離の抑制効果が高い。
B:支持シートのリングフレームからの剥離があり、最大剥離距離が2mm超5mm以下であり、次の工程で使用可能な程度ではあるが、剥離の抑制効果が比較的低い。例えば、次の工程で、ダイシングブレードを用いたダイシングを行う場合、2mm超の剥離箇所への洗浄水浸入による、剥離不具合の進行(剥離距離の増大)の恐れがある。
C:支持シートのリングフレームからの剥離があり、最大剥離距離が5mm超であり、剥離の抑制効果が特に低い。
【0251】
[実施例2]
<<支持シートの製造及び評価>>
架橋剤(β2)-1(2質量部)に代えて、架橋剤(β2)-2(2質量部)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ組成である、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I)-2を調製した。そして、粘着剤組成物(I)-1に代えて、この粘着剤組成物(I)-2を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、支持シートを製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0252】
[参考例1]
<<支持シートの製造>>
<エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)の製造>
実施例1で用いたものと同じアクリル重合体(1)にMOIを加え、空気気流中において50℃で48時間付加反応を行うことで、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)-2を得た。MOIの使用量は、前記アクリル重合体(1)中のHEMA由来の水酸基の総モル数に対して、MOI中のイソシアネート基の総モル数が、0.785倍となる量とした。得られたエネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)-2の重量平均分子量は500000であり、ガラス転移温度は-26℃である。
【0253】
<粘着剤組成物(R)の製造>
エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)-2(100質量部)、エネルギー線硬化性化合物(α)-1(25質量部)、架橋剤(β2)-1(4.12質量部)、及び光重合開始剤(γ)-1(3質量部)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有しており、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が25質量%である、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(R)-1を調製した。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の含有量はすべて、溶媒を含まない目的物の含有量である。
【0254】
<粘着剤層の形成、支持シートの製造>
粘着剤組成物(I)-1に代えて、上記で得られた粘着剤組成物(R)-1を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、粘着剤層(厚さ15μm)を形成し、支持シートを製造した。
【0255】
<<支持シートの評価>>
上記で得られた支持シートについて、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表1に示す。
【0256】
[参考例2]
<<支持シートの製造及び評価>>
架橋剤(β1)-1の含有量が13.5質量部に代わり15.5質量部である点と、架橋剤(β2)-1を含有していない点、以外は、実施例1の場合と同じ組成である、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(R)-2を調製した。そして、粘着剤組成物(I)-1に代えて、この粘着剤組成物(R)-2を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、支持シートを製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0257】
[参考例3]
<<支持シートの製造>>
<エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)の製造>
実施例1で用いたものと同じアクリル重合体(1)にMOIを加え、空気気流中において50℃で48時間付加反応を行うことで、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)-3を得た。MOIの使用量は、前記アクリル重合体(1)中のHEMA由来の水酸基の総モル数に対して、MOI中のイソシアネート基の総モル数が、0.95倍となる量とした。得られたエネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)-3の重量平均分子量は440000であり、ガラス転移温度は-26℃である。
【0258】
<粘着剤組成物(R)の製造>
エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)-3(100質量部)、エネルギー線硬化性化合物(α)-1(5.7質量部)、架橋剤(β2)-2(0.59質量部)、及び光重合開始剤(γ)-1(3質量部)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有しており、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が25質量%である、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(R)-3を調製した。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の含有量はすべて、溶媒を含まない目的物の含有量である。
【0259】
<粘着剤層の形成、支持シートの製造>
粘着剤組成物(I)-1に代えて、上記で得られた粘着剤組成物(R)-3を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、粘着剤層(厚さ15μm)を形成し、支持シートを製造した。
【0260】
<<支持シートの評価>>
上記で得られた支持シートについて、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。
【0261】
[比較例1]
<<支持シートの製造及び評価>>
架橋剤(β2)-2の含有量が0.59質量部に代わり0.53質量部である点と、エネルギー線硬化性化合物(α)-1を含有していない点、以外は、参考例3の場合と同じ組成である、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(R)-4を調製した。そして、粘着剤組成物(I)-1に代えて、この粘着剤組成物(R)-4を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、支持シートを製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0262】
[比較例2]
<<支持シートの製造>>
<エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)の製造>
アクリル重合体(2)にMOIを加え、空気気流中において50℃で48時間付加反応を行うことで、エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)-4を得た。前記アクリル重合体(2)は、2EHA(35質量部)と、2EHMA(45質量部)と、HEA(20質量部)と、の共重合体である。MOIの使用量は、前記アクリル重合体(2)中のHEA由来の水酸基の総モル数に対して、MOI中のイソシアネート基の総モル数が、0.7倍となる量とした。得られたエネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)-4の重量平均分子量は880000であり、ガラス転移温度は-35℃である。
【0263】
<粘着剤組成物(R)の製造>
エネルギー線硬化性アクリル樹脂(Ia)-4(100質量部)、架橋剤(β2)-2(9.26質量部)、及び光重合開始剤(γ)-1(3質量部)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有しており、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が25質量%である、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(R)-5を調製した。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の含有量はすべて、溶媒を含まない目的物の含有量である。
【0264】
<粘着剤層の形成、支持シートの製造>
粘着剤組成物(I)-1に代えて、上記で得られた粘着剤組成物(R)-5を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、粘着剤層(厚さ15μm)を形成し、支持シートを製造した。
【0265】
<<支持シートの評価>>
上記で得られた支持シートについて、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。
【0266】
【表1】
【0267】
【表2】
【0268】
上記結果から明らかなように、実施例1~2では、非加熱の支持シートの光透過率の平均値(L1)と、140℃で加熱後の支持シートの光透過率の平均値(L2)と、の差が、45.4%以上であり、十分に大きかった。
さらに、実施例1~2では、支持シートのヘーズ差が33.6%以上であり、十分に大きかった。
これらの結果と整合して、実施例1~2の支持シートは、140℃で加熱した場合に、明らかに白化して外観が変化しており、これら支持シートは、140℃で加熱した場合の、その識別性が高かった。
【0269】
また、実施例1~2では、粘着力(X1)が480mN/25mm以下であり、シリコンミラーウエハが貼付された状態の支持シートを140℃で2時間加熱した後であっても、シリコンチップを概ねすべて正常にピックアップでき、ピックアップ性が良好であった。
【0270】
このように、実施例1~2の支持シートは、目的とする特性を有していた。
実施例1~2では、粘着剤層が架橋剤(β1)を含有しており、粘着剤層において、粘着剤層の総質量に対する、架橋剤(β1)の含有量の割合が、11.4質量%であり、上記のような特性の達成を容易にしたと推測された。
【0271】
さらに、実施例1~2では、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性が高かった。その結果、実施例1~2では、支持シートの光透過率(400~800nm)の平均値(L1)が82.6%以上であり、十分に高く、支持シートのチッピング検査精度が高かった。
【0272】
さらに、実施例1~2では、粘着力(Y2)が4600mN/25mm以下であり、適度に小さかった。そのため、実施例1~2の支持シートを用いることで、リングフレームに固定した支持シート付きシリコンウエハを140℃で加熱したときに、さらに粘着剤層をエネルギー線硬化させなくても、支持シート付きシリコンウエハをリングフレームから剥離可能であり、さらに、リングフレームでの粘着剤層の残存を抑制可能であると推測された。
【0273】
さらに、実施例1~2では、粘着剤層の粘着力変化率が103~137%であり、好ましい範囲であった。そのため、実施例1~2の支持シートを用いることで、支持シート(粘着剤層)の加熱温度が130℃であっても、140℃の場合と同様の条件で、シリコンチップを正常にピックアップ可能であると推測された。すなわち、実施例1~2の支持シートは、シリコンチップのピックアップ時に、加熱温度が140℃及び130℃のいずれであっても、装置の条件設定の変更を不要とし、加熱温度の設定の点で汎用性が高いものであった。
【0274】
さらに、実施例1~2では、粘着力(Y0)が4000mN/25mm以上であり、十分に大きかった。すなわち、実施例1~2の支持シートは、シリコンチップの製造時において、そのリングフレームからの剥離が抑制可能なものであった。実際に、実施例1~2では、リングフレームに固定した支持シート付きシリコンウエハにおいて振動が生じても、支持シートのリングフレームからの剥離が抑制されていた。
【0275】
このように、実施例1~2の支持シートは、目的外の特性にも優れていた。
【0276】
これに対して、比較例1~2、参考例1、3では、非加熱の支持シートの光透過率の平均値(L1)と、加熱後の支持シートの光透過率の平均値(L2)と、の差が、12.2%以下であり、小さかった。
この結果と整合して、比較例1~2、参考例1、3の支持シートは、140℃で加熱した場合に、白化による外観の変化の程度が低く、これら支持シートは、140℃で加熱した場合の、その識別性が低かった。
【0277】
また、比較例1~2、参考例1~3では、粘着力(X1)が600mN/25mm以上であり、シリコンミラーウエハが貼付された状態の支持シートを140℃で2時間加熱した後は、多くのシリコンチップを正常にピックアップできず、ピックアップ性が大きく劣っていた。
【0278】
このように、比較例1~2、参考例1~3の支持シートは、目的とする特性を有していなかった。
【0279】
さらに、比較例1~2、参考例1、3では、支持シートのヘーズ差が-3.5~-0.5%であり、小さかった。
この結果は、これら支持シートを、140℃で加熱した場合の、その識別性が低かったことと整合していた。
【0280】
さらに、比較例1~2では、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性が不十分であった。その結果、比較例1~2では、支持シートの光透過率(400~800nm)の平均値(L1)が79.1%以下であり、低くなっており、支持シートのチッピング検査精度が劣っていた。
参考例1~3では、比較例1~2とは異なり、基材のマット面の粘着剤層による埋め込み性が高かった。その理由は、参考例1、3では、粘着剤層がエネルギー線硬化性化合物(α)を含有していたからであり、参考例2では、粘着剤層が架橋剤(β1)を含有していたからである、と推測された。
【0281】
さらに、比較例1~2、参考例1、3では、粘着力(Y2)が7900mN/25mm以上であり、大き過ぎた。そのため、比較例1~2、参考例1、3の支持シートを用いることで、リングフレームに固定した支持シート付きシリコンウエハを140℃で加熱したときに、さらに粘着剤層をエネルギー線硬化させなかった場合には、支持シート付きシリコンウエハをリングフレームから剥離不能であると推測された。
【0282】
さらに、比較例1、参考例1~3では、粘着剤層の粘着力変化率が171%以上であり、大き過ぎた。そのため、比較例1、参考例1~3の支持シートを用いることで、支持シート(粘着剤層)の加熱温度が130℃である場合には、140℃の場合と同様の条件では、シリコンチップを正常にピックアップできないと推測された。すなわち、比較例1、参考例1~3の支持シートは、加熱温度の設定の点で汎用性が高いとは言えないものであった。
【0283】
さらに、比較例2、参考例1では、粘着力(Y0)が1100mN/25mm以下であり、小さ過ぎた。すなわち、比較例2、参考例1の支持シートは、シリコンチップの製造時において、そのリングフレームからの剥離が抑制できないものであった。実際に、比較例2、参考例1では、リングフレームに固定した支持シート付きシリコンウエハにおいて振動が生じると、支持シートのリングフレームからの剥離の抑制効果が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0284】
本発明は、半導体チップ等のワーク加工物の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0285】
1・・・支持シート、11・・・基材、11a・・・基材の一方の面(粘着剤層側の面)、12・・・粘着剤層、12’・・・粘着剤層のエネルギー線硬化物、8・・・リングフレーム、9・・・半導体ウエハ、90・・・半導体チップ、109・・・支持シート付き半導体ウエハ
図1
図2