(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014272
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物および免震ゴム支承体
(51)【国際特許分類】
C08L 11/00 20060101AFI20240125BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20240125BHJP
F16F 1/40 20060101ALI20240125BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20240125BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C08L11/00
F16F15/04 P
F16F1/40
C08L15/00
C08L7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116974
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪井 哲也
(72)【発明者】
【氏名】箕内 則夫
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
4J002
【Fターム(参考)】
3J048BA08
3J048BD04
3J048EA38
3J048EA39
3J059AB15
3J059AD06
3J059BA43
3J059BC02
3J059BC06
3J059DA45
3J059EA17
3J059GA42
4J002AC01Y
4J002AC06Y
4J002AC09W
4J002AC11X
4J002DA030
4J002DA040
4J002DE070
4J002DE100
4J002DJ010
4J002DJ030
4J002EF050
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD070
4J002FD140
4J002FD150
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】耐オゾン性に優れ、かつ免震ゴムとの接着性に優れた被覆ゴムの原料となる免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物および該被覆ゴムを備える免震ゴム支承体を提供すること。
【解決手段】ゴム成分として、イソプレン系ゴム、非硫黄変性クロロプレンゴムおよび硫黄変性クロロプレンゴムからなる群より選択される少なくとも2種以上のゴムを配合してなる免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物。ゴム成分として、少なくとも非硫黄変性クロロプレンゴムおよび硫黄変性クロロプレンゴムを配合してなり、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、硫黄変性クロロプレンゴムを20~80質量部含有することが好ましい。また、ゴム成分として、少なくともイソプレン系ゴムを配合してなり、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、イソプレン系ゴムを15~55質量部含有することが好ましい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分として、イソプレン系ゴム、非硫黄変性クロロプレンゴムおよび硫黄変性クロロプレンゴムからなる群より選択される少なくとも2種以上のゴムを配合してなる免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分として、少なくとも前記非硫黄変性クロロプレンゴムおよび前記硫黄変性クロロプレンゴムを配合してなり、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、前記硫黄変性クロロプレンゴムを20~80質量部含有する請求項1に記載の免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分として、少なくとも前記イソプレン系ゴムを配合してなり、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、前記イソプレン系ゴムを15~55質量部含有する請求項1に記載の免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物。
【請求項4】
加硫ゴムからなるゴム層と鋼板からなる硬質層とを交互に積層した積層体と、前記積層体の外周端面を覆うように形成された被覆ゴムとを備える免震ゴム支承体であって、
前記被覆ゴムが、請求項1~3のいずれかに記載の免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物を加硫してなるものであり、
前記積層体の前記ゴム層が、ゴム成分の全量を100質量部としたときイソプレン系ゴムを50質量部以上含有するゴム組成物を加硫してなるものである免震ゴム支承体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物および免震ゴム支承体に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の基礎免震、橋梁や高架道路などの構造物の支承には、加硫ゴムからなるゴム層(免震ゴム)と鋼板からなる硬質層とを交互に積層した免震ゴム支承体が用いられている。この免震ゴム支承体は、上下方向には高い剛性、せん断方向には低い剛性を有する弾性構造体であり、地震の振動数に対して建築物の固有振動数を低減することにより、振動の入力加速度を減少し、建築物あるいはその中の人、設備などに対する被害を最小限にするものである。
【0003】
免震ゴム支承体を構成する免震ゴムは、殆どの場合、ジエン系ゴムの加硫ゴムで形成されるため、長期に渡り耐オゾン性を維持することが難しい。したがって、免震ゴム支承体の免震ゴムが直接、大気と接しないように、免震ゴム支承体の外周端面を耐オゾン性に優れた被覆ゴムで被覆する場合がある。
【0004】
下記特許文献1には、ゴム分としてジエン系ゴムおよびエチレン-α-オレフィン系ゴムを含み、さらに3価以上のポリエステルポリオールを配合してなるゴム支承用の被覆ゴム組成物が記載されている。
【0005】
下記特許文献2には、剛性を有する硬質板とゴム層とが交互に積層せしめられた積層体から構成されてなる免震ゴム支承体にして、ゴム層を、ブタジエンゴム又はブタジエンゴムを主成分とするゴム材料の100重量部に対して、カーボンブラックを50~150重量部の割合で配合し、更にアスファルト類、タール類及びピッチ類のうちの少なくとも1種を10~100重量部の割合で配合してなるゴム組成物を用いて、形成すると共に、硬質板の少なくとも外周端面を、積層体の側面に露出せしめる一方、該積層体の側面に、該硬質板の少なくとも外周端面に接するようにして、10MPa以上の引張強度を与える被覆ゴムを、天然ゴム又はイソプレンゴムを主成分とするゴム材料の100重量部に対して、SAF、ISAF、HAF、FEF、MAF、GPF、SRF及びFTからなる群より選ばれたカーボンブラックの10~100重量部を配合せしめてなるゴム組成物により一体的に設けた免震ゴム支承体が記載されている。
【0006】
下記特許文献3には、複数個の剛性を有する硬質板と粘弾性的性質を有する軟質板とを交互に貼り合わせ、硬質板及び軟質板の外周縁部を耐候性に優れたゴム材料で被覆した免震構造体であって、該ゴム材料が、ブチルゴム、ポリウレタン、EPM,EPDM及びエチレン酢酸ビニルゴムよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする免震構造体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6688456号
【特許文献2】特許第4172385号
【特許文献3】特公平7-29394号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
免震ゴム支承体を構成するゴム層(免震ゴム)を被覆する被覆ゴムは、被覆対象の免震ゴムとの接着性が十分でないと、長期に渡り使用される場合に免震ゴムから剥がれることにより、結局、免震ゴムのオゾン劣化が発生してしまう虞がある。このため、被覆ゴムには、耐オゾン性に加えて免震ゴムとの接着性に優れることが要求される。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みて開発されたものであり、耐オゾン性に優れ、かつ免震ゴムとの接着性に優れた被覆ゴムの原料となる免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物および該被覆ゴムを備える免震ゴム支承体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ゴム成分として、イソプレン系ゴム、非硫黄変性クロロプレンゴムおよび硫黄変性クロロプレンゴムからなる群より選択される少なくとも2種以上のゴムを配合してなる免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物(1)に関する。
【0011】
上記免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物(1)において、前記ゴム成分として少なくとも前記非硫黄変性クロロプレンゴムおよび前記硫黄変性クロロプレンゴムを配合してなり、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、前記硫黄変性クロロプレンゴムを20~80質量部含有する免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物(2)が好ましい。
【0012】
上記免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物(1)または(2)において、前記ゴム成分として少なくとも前記イソプレン系ゴムを配合してなり、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、前記イソプレン系ゴムを15~55質量部含有する免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物(3)が好ましい。
【0013】
また、本発明は加硫ゴムからなるゴム層と鋼板からなる硬質層とを交互に積層した積層体と、前記積層体の外周端面を覆うように形成された被覆ゴムとを備える免震ゴム支承体であって、前記被覆ゴムが、免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物(1)~(3)のいずれかの免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物を加硫してなるものであり、前記積層体の前記ゴム層が、ゴム成分の全量を100質量部としたときイソプレン系ゴムを50質量部以上含有するゴム組成物を加硫してなるものである免震ゴム支承体に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物は、ゴム成分として、イソプレン系ゴム、非硫黄変性クロロプレンゴムおよび硫黄変性クロロプレンゴムからなる群より選択される少なくとも2種以上のゴムを配合してなるものであるため、その加硫ゴム(被覆ゴム)は、免震ゴム支承体を構成する免震ゴム(以下、「本体ゴム」とも言う)との接着性に優れつつ、それ自体の耐オゾン性に優れるため、本体ゴムのオゾン劣化を抑制し、免震ゴム支承体の耐候性、特には耐オゾン性を向上することができる。
【0015】
本発明に係る免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物が、ゴム成分として少なくとも非硫黄変性クロロプレンゴムおよび硫黄変性クロロプレンゴムを配合してなり、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、硫黄変性クロロプレンゴムを20~80質量部含有する場合、その加硫ゴム(被覆ゴム)は、本体ゴムとの接着性に優れ、かつ本体ゴムのオゾン劣化をさらに抑制することができる
【0016】
また、本発明に係る免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物が、ゴム成分として少なくともイソプレン系ゴムを配合してなり、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、イソプレン系ゴムを15~55質量部含有する場合、その加硫ゴム(被覆ゴム)は、本体ゴムとの接着性に優れ、本体ゴムのオゾン劣化を抑制することができるだけでなく、免震ゴム支承体が低温下で使用される場合であっても、低温性に優れるため好ましい。
【0017】
また、本発明に係る免震ゴム支承体は、加硫ゴムからなるゴム層と鋼板からなる硬質層とを交互に積層した積層体と、積層体の外周端面を覆うように形成された被覆ゴムとを備えるものであるが、被覆ゴムが、前記免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物を加硫してなるものであり、積層体のゴム層が、ゴム成分の全量を100質量部としたときイソプレン系ゴムを50質量部以上含有するゴム組成物を加硫してなるものであるため、被覆ゴムとゴム層(本体ゴム)との接着性に優れ、かつ本体ゴムのオゾン劣化が抑制されていることに起因し、免震ゴム支承体の耐候性、特には耐オゾン性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物は、ゴム成分として、イソプレン系ゴム、非硫黄変性クロロプレンゴムおよび硫黄変性クロロプレンゴムからなる群より選択される少なくとも2種以上のゴムを配合してなる。
【0019】
本発明において「イソプレン系ゴム」とは、天然ゴムおよびイソプレンゴムのいずれか一方、または両者の混合物を意味するものとする。
【0020】
本発明に係る免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物が、ゴム成分としてイソプレン系ゴムを含有する場合、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、イソプレン系ゴムの含有量は15~55質量部であることが好ましく、15~45質量部であることがより好ましい。イソプレンゴムの含有量を上記範囲内とすることにより、特に被覆ゴムの低温性が向上するため好ましい。なお、本発明に係る免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物が、ゴム成分としてイソプレン系ゴムを含有する場合、イソプレン系ゴムに加えて、非硫黄変性クロロプレンゴムおよび/または硫黄変性クロロプレンゴムを含有する。非硫黄変性クロロプレンゴムおよび/または硫黄変性クロロプレンゴムの含有量は、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、45~85質量部であることが好ましく、55~85質量部であることがより好ましい。
【0021】
硫黄変性クロロプレンゴムは、分子量調整剤として硫黄を使用して合成され、分子鎖中に硫黄結合を含んだ長鎖のポリマーである。非硫黄変性クロロプレンゴムは、合成の際に硫黄を使用しないクロロプレンゴムである。本発明に係る免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物が、ゴム成分として少なくとも非硫黄変性クロロプレンゴムおよび硫黄変性クロロプレンゴムを含有する場合、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、硫黄変性クロロプレンゴムを20~80質量部含有することが好ましく、30~50質量部含有することが好ましい。硫黄変性クロロプレンゴムの含有量を上記範囲内とすることにより、被覆ゴムと本体ゴムとの接着性が向上する。
【0022】
本発明に係る免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物は、ゴム成分として、イソプレン系ゴム、非硫黄変性クロロプレンゴムおよび硫黄変性クロロプレンゴム以外のジエン系ゴムを含有してもよい。ジエン系ゴムとしては、例えばブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、およびアクリロニトリルブタジエンゴムなどが挙げられる。ただし、最終的に得られる被覆ゴムの耐オゾン性と本体ゴムとの接着性とをバランスよく向上する見地からは、イソプレン系ゴム、非硫黄変性クロロプレンゴムおよび硫黄変性クロロプレンゴム以外のジエン系ゴムの含有量は、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、イソプレン系ゴム、非硫黄変性クロロプレンゴムおよび硫黄変性クロロプレンゴム以外のジエン系ゴムを含有しないことが特に好ましい。
【0023】
本発明に係る免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物は、イソプレン系ゴム、非硫黄変性クロロプレンゴムおよび硫黄変性クロロプレンゴムからなる群より選択される少なくとも2種以上のゴム以外に、シリカ、有機シラン、硫黄、加硫促進剤、カーボンブラック、金属酸化物、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤を、本発明の効果を損なわない範囲において適宜配合し用いることができる。
【0024】
シリカは、通常のゴム補強に用いられる湿式シリカ、乾式シリカ、ゾル-ゲルシリカ、表面処理シリカなどが用いられる。なかでも、湿式シリカが好ましい。また、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
有機シランとしては、ビス-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系などの有機シランが通常用いられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0026】
カーボンブラックとしては、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなどが用いられる。カーボンブラックは、加硫後のゴムの硬度、補強性、低発熱性などのゴム特性を調整し得る範囲で使用することができる。
【0027】
硫黄は通常のゴム用硫黄であればよく、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。
【0028】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0029】
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン-ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0030】
本発明に係る免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物は、イソプレン系ゴム、非硫黄変性クロロプレンゴムおよび硫黄変性クロロプレンゴムからなる群より選択される少なくとも2種以上のゴムと共に、シリカ、有機シラン、硫黄、加硫促進剤、カーボンブラック、金属酸化物、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤などを、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りすることにより得られる。
【0031】
また、上記各成分の配合方法は特に限定されず、硫黄および加硫促進剤などの加硫系成分以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれでもよい。
【0032】
本発明に係る免震ゴム支承体は、加硫ゴムからなるゴム層(本体ゴム)と鋼板からなる硬質層とを交互に積層した積層体と、積層体の外周端面を覆うように形成された被覆ゴムとを備え、被覆ゴムが、前記免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物を加硫してなるものである。
【0033】
前記ゴム層(本体ゴム)は、ゴム成分の全量を100質量部としたときイソプレン系ゴムを50質量部以上、より好ましくは70質量部以上、さらにより好ましくは80質量部以上含有するゴム組成物(以下、「本体ゴム用ゴム組成物」とも言う)を加硫してなるものである。本体ゴム用ゴム組成物は、イソプレン系ゴム以外のジエン系ゴムを含有してもよく、さらにシリカ、有機シラン、硫黄、加硫促進剤、カーボンブラック、酸化亜鉛、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤を含有してもよい。イソプレン系ゴム以外のジエン系ゴムや配合剤は、免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物で例示のものを使用可能である。
【0034】
本発明に係る免震ゴム支承体は、例えばロールやローラヘッド付押出機などを用いて、混練りすることにより得られた未加硫の本体ゴム用ゴム組成物をシート状に成形し、ついで円板状に打ち抜いた後、鋼板(硬質層)と未加硫のシート状のゴム層(本体ゴム用ゴム組成物)とを交互に積層することにより積層体を製造し、さらに該積層体の外周端面を覆うように、未加硫の免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物を配置し、必要に応じて加圧しつつ、所定の温度で加硫成形することにより製造することができる。
【0035】
なお、硬質層とゴム層とを積層する前に、加硫接着剤を塗工することが好ましい。加硫接着剤は、鋼板とゴムとの接着性に優れたものを適宜選択すれば良い。
【0036】
本発明に係る免震ゴム支承体は、サイズの大小、形状の特殊性などを問わず、被覆ゴムと本体ゴムとの接着性に優れ、かつ被覆ゴムが優れた耐オゾン性を示すことから、本体ゴムのオゾン劣化が抑制されている。このため、本発明に係る免震ゴム支承体は耐候性、特には耐オゾン性に優れる。
【実施例0037】
以下に、この発明の実施例を記載してより具体的に説明する。
【0038】
(免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物の調製)
ゴム成分100質量部に対して、表1の配合処方に従い、実施例1~6、比較例1~2のゴム組成物を配合し、通常のバンバリーミキサーを用いて混練し、免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物を調整した。表1に記載の各配合剤を以下に示す。
【0039】
(a)非硫黄変性CR(クロロプレンゴム)(商品名「スカイプレンB-5」、東ソー社製)
(b)硫黄変性CR(クロロプレンゴム)(商品名「スカイプレンR-10」、東ソー社製)
(c)天然ゴム
(d)シリカ(商品名「Nipsil AQ」、東ソー・シリカ社製)
(e)ハードクレー(商品名「ハードトップクレー」、アグロケミテック社製)
(f)カーボンブラック(CB)(商品名「シーストS」、東海カーボン社製)
(g)酸化マグネシウム(商品名「キョーワマグ150」、協和化学工業社製)
(h)酸化亜鉛(商品名「亜鉛華3号」、三井金属鉱業社製)
(i)ステアリン酸(商品名「工業用ステアリン酸」、花王社製)
(j)ワックス(商品名「サンノック」、大内新興化学工業社製)
(k)老化防止剤1(商品名「ノクラックPA」、大内振興化学社製)
(l)老化防止剤2(商品名「ノクラック6C」、大内振興化学社製)
(m)ナフテンオイル(商品名「SUNTHENE410」、日本サン石油社製)
(n)硫黄(商品名「5%オイル処理硫黄」、細井化学工業社製)
(o)加硫促進剤1(商品名「ノクセラーDT」、大内新興化学工業社製)
(p)加硫促進剤2(商品名「ノクセラーCZ-G」、大内新興化学工業社製)
(q)加硫促進剤3(商品名「ノクセラーNS-P」、大内新興化学工業社製)
【0040】
被覆ゴムの耐オゾン性、被覆ゴムと本体ゴムとの接着性、および被覆ゴムの低温性は以下の方法により評価した。
【0041】
<耐オゾン性>
各免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物について、所定の金型を使用し、それぞれ150℃で30分間加硫することにより、加硫ゴムを作製し、JIS K 6259-1:2015に準拠して、所定の試験条件(オゾン濃度200pphm、試験温度40℃、試験片伸長率80%、試験時間408h)にて耐オゾン性を評価した。評価試験後にゴム試験片に亀裂が発生していない場合は〇(耐オゾン性良好)とし、評価試験後にゴム試験片に亀裂が発生した場合は×(耐オゾン性不良)と判断した。結果を表1に示す。
【0042】
<被覆ゴムと本体ゴムとの接着性>
まず、以下の配合に基づき、本体ゴム用ゴム組成物を調製した。
・イソプレンゴム 80質量部(商品名「IR2200L」、日本ゼオン株社製
・ブタジエンゴム 20質量部(商品名「CB22」、アランセオ社製
・シリカ 80質量部(商品名「Nipsil AQ」、東ソー・シリカ社製
・有機シラン 4.8質量部(商品名「シランカップリング剤Si69」、エボニックデグサ社製
・カーボンブラック 25質量部(商品名「シースト6」、東海カーボン社製
・フェノール樹脂 25質量部(商品名「スミライトレジンPR-13349」、住友ベークライト社製
・オイル 10質量部(商品名「プロセスX-140」、JX日鉱日石エネルギー社製
・酸化亜鉛 5質量部(商品名「亜鉛華3号」、三井金属工業社製
・脂肪酸 2質量部(商品名「工業用ステアリン酸」、花王社製
・老化防止剤 3質量部(商品名「ノクラック6C」、大内新興化学工業社製
・硫黄 1質量部(商品名「5%オイル処理硫黄」、細井化学工業社製
・加硫促進剤1 2質量部(商品名「ノクセラーNS-P」、大内新興化学工業社製
・加硫促進剤2 0.5質量部(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製
・リターダー 0.2質量部(商品名「リターダーCTP」、大内新興化学工業社製
実施例1~6、比較例1~2の未加硫状態の免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物を用いて、厚み3mmのシート状サンプルを製造した。また、未加硫状態の上記本体ゴム用ゴム組成物を用いて、厚み3mmのシート状サンプルを製造した。次に、未加硫状態の本体ゴム用ゴム組成物からなるシート状サンプルと、実施例1~6、比較例1~2の未加硫状態の免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物からなるシート状サンプルとを貼り合わせ、さらに両外面に補強材を貼り合わせて、両シート状サンプル同士を加硫接着させた(加硫条件150℃-30分)。オートグラフを使用し、加硫接着後の試験体の一方を180度方向に引っ張りつつ(速度50mm/min)、両ゴムシートの剥離状態および剥離力を確認した。剥離状態に関しては、両ゴムシートの界面で剥離している場合は、両ゴムシートが十分に加硫接着しておらず、接着力が弱いことを意味する(表1中では、この剥離状態を「界面」と記載する)。一方、試験後に被覆ゴムシートまたは本体ゴムシートのいずれかのゴムが剥離により破壊されている場合は、両ゴムシートが十分に加硫接着しており、接着力が強いことを意味する(表1中では、この剥離状態を「ゴム破壊」と記載する)。結果を表1に示す。
【0043】
<低温性>
各免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物について、所定の金型を使用し、それぞれ150℃で30分間加硫することにより、加硫ゴムを作製し、JIS K 6261-2:2017準拠して、加硫ゴムの衝撃脆化限界温度を測定した。衝撃脆化限界温度が-30℃以下であれば、低温性に優れることを意味し、さらに-40℃以下であれば、寒冷地でも耐用であり、低温性に極めて優れることを意味する。結果を表1に示す。
【0044】
【0045】
表1の結果から、実施例1~6に係る免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物を用いて製造された被覆ゴムは、耐オゾン性に優れ、かつ免震ゴム(本体ゴム)との接着性にも優れることがわかる。なお、実施例1~6に係る免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物を用いて製造された被覆ゴムは、いずれも低温性に優れるものであるが、免震ゴム支承体用被覆ゴム組成物中にイソプレン系ゴム(天然ゴム)を所定量含有する実施例3~6に係るゴム組成物を用いて製造した被覆ゴムは、寒冷地でも耐用であり、低温性に極めて優れることがわかる。