(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142720
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】シート状成形品の製造方法及びシート状成形品のリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/06 20060101AFI20241003BHJP
B29B 17/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08J11/06
B29B17/04 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055012
(22)【出願日】2023-03-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 展示会への出展 令和4年10月12日~令和4年10月14日 TOKYO PACK2022-2022東京国際包装展-Tokyo International Packaging Exhibition 2022
(71)【出願人】
【識別番号】591257432
【氏名又は名称】株式会社ヨシザワ
(74)【代理人】
【識別番号】100177921
【弁理士】
【氏名又は名称】坂岡 範穗
(74)【代理人】
【識別番号】100228038
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 健
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 勝信
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA10
4F401AC20
4F401AD04
4F401BA07
4F401CA14
4F401DC02
4F401DC06
4F401EA81
4F401FA01Z
4F401FA05Z
(57)【要約】
【課題】産業廃棄物の一つである衛生関連用品を利用しつつ、押出成形が可能であり、中空構造を備えるシート状成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】衛生関連用品を、衛生関連用品に含まれる合成樹脂とセルロース系の材質とが固着しない方式で粉砕して粉砕物を作製する粉砕工程と、液媒及び親水性物質を混合し、懸濁液を作製する懸濁液作製工程と、粉砕物、懸濁液、及びマトリクス樹脂を混合し、混合物を作製する第1混合物作製工程と、第1混合物をベント部を備える混練機に投入し、マトリクス樹脂と衛生関連用品に含まれる合成樹脂からなる複合樹脂が溶融する温度で加熱混錬しつつベント部を開いて、複合樹脂の熱流動温度における液媒の残留率が1%以下になるよう液媒の揮発分を外部に排出して樹脂複合材料を作製する樹脂複合材料作製工程と、樹脂複合材料を異型押出法により成形して中空構造を備えるシート状成形品にする成形工程と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌に接する表面材、水分を吸収する吸収体、及び前記吸収体に吸収された水分が外部に漏出しないようにする防水体を備える衛生関連用品を、前記衛生関連用品に含まれる合成樹脂とセルロース系の材質とが固着しない方式で粉砕して粉砕物を作製する粉砕工程と、
液媒及び親水性物質を混合し、懸濁液を作製する懸濁液作製工程と、
前記粉砕物、前記懸濁液、及びマトリクス樹脂を混合し、混合物を作製する第1混合物作製工程と、
前記第1混合物をベント部を備える混練機に投入し、前記マトリクス樹脂と前記衛生関連用品に含まれる合成樹脂からなる複合樹脂が溶融する温度で加熱混錬しつつ前記ベント部を開いて、前記複合樹脂の熱流動温度における前記液媒の残留率が1%以下になるよう前記液媒の揮発分を外部に排出して樹脂複合材料を作製する樹脂複合材料作製工程と、
前記樹脂複合材料を異型押出法により成形して中空構造を備えるシート状成形品にする成形工程と、
を備えることを特徴とするシート状成形品の製造方法。
【請求項2】
肌に接する表面材、水分を吸収する親水性物質を含む吸収体、及び前記吸収体に吸収された水分が外部に漏出しないようにする防水体を備える衛生関連用品を、前記衛生関連用品に含まれる合成樹脂とセルロース系の材質とが固着しない方式で粉砕して粉砕物を作製する粉砕工程と、
前記粉砕物、液媒、及びマトリクス樹脂を混合し、混合物を作製する第2混合物作製工程と、
前記第2混合物をベント部を備える混練機に投入し、前記マトリクス樹脂と前記衛生関連用品に含まれる合成樹脂からなる複合樹脂が溶融する温度で加熱混錬しつつ前記ベント部を開いて、前記複合樹脂の熱流動温度における前記液媒の残留率が1%以下になるよう前記液媒の揮発分を外部に排出して樹脂複合材料を作製する樹脂複合材料作製工程と、
前記樹脂複合材料を異型押出法により成形して中空構造を備えるシート状成形品にする成形工程と、
を備えることを特徴とするシート状成形品の製造方法。
【請求項3】
前記成形工程における成形温度が190℃以上230℃以下である請求項1又は2に記載のシート状成形品の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂複合材料のMFRの値が、190℃、荷重2.16kgにおいて、1.0g/10min以上3.0g/10min以下である請求項1又は2に記載のシート状成形品の製造方法。
【請求項5】
前記粉砕物50重量部に対する前記マトリクス樹脂が150重量部以上950重量部以下であり、
熱溶着又は超音波溶着で接合可能である請求項1又は2に記載のシート状成形品の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の前記シート状成形品の廃棄物、前記シート状成形品を利用した完成品の廃棄物、またはそれらの製造時に排出された端材のリサイクル方法であって、
前記シート状成形品の廃棄物、前記シート状成形品を利用した完成品の廃棄物、またはそれらの製造時に排出された端材を粉砕して第2粉砕物を作製する第2粉砕工程と、
前記第2粉砕物をペレット化して再生ペレットを作製する再生ペレット作製工程と、
前記再生ペレットを異型押出法により成形して中空構造を備えるシート状成形品にする第2成形工程と、
を備えることを特徴とするシート状成形品のリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業廃棄物を利用して製造されるシート状成形品の製造方法及びシート状成形品のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な開発目標(SDGs)の実現にあたり、プラスチックごみの環境負荷低減を目的として、産業廃棄物を利用した複合材料が開発されている。例えば、実開平7-17521号公報に、産業廃棄物の一種であるラミネート容器用クズと生理製品クズの粉末と製紙スラッジとを主成分とし、粘着剤を混合した産業廃棄物利用ボードが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術では、型枠内に原料を流し込み、厚さ20mmのボードを形成し、その後、高温高圧下でプレスして厚さ10mmの産業廃棄物利用ボードを作製している。しかし、紙等に代表されるセルロース系の材質と合成樹脂との複合材料からなる産業廃棄物に、新たに合成樹脂(マトリクス樹脂、特許文献1にいう粘着剤)を加えてリサイクルすることは、産業廃棄物に既に含まれている合成樹脂とマトリクス樹脂の熱流動性の違いから均一な合成樹脂の連続相(複合樹脂の連続相)を形成するのが難しい。また、産業廃棄物に既に含まれている合成樹脂とセルロース系の材質とが固着し凝集しやすく、セルロース系の材質を均一に分散させた成形品を得ることは非常に難しい。したがって、特許文献1に係る技術では、複合樹脂の連続相を形成できず、凝集が生じる可能性が高い。このように凝集が生じた場合でも、上述のとおりプレス加工であれば成形することは可能であるが、例えば、押出成形などの製造方法においては、凝集が生じた状態では成形が難しいという課題があった。特に、中空構造を有するものを成形品として得ることは困難である。
【0005】
また、得られた成形品は、やはりセルロース系の材質と合成樹脂との複合材料からなる産業廃棄物となるため、再リサイクルするためには、一度目のリサイクルと同様の問題やセルロース系の材質と合成樹脂とを分離する技術が必要となり、リサイクルコストが上昇するという課題がある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、産業廃棄物の一つである衛生関連用品を利用しつつ、押出成形が可能であり、中空構造を備えるシート状成形品の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、本発明の製造方法で製造されるシート状成形品の廃棄物、当該シート状成形品を利用した完成品の廃棄物、またはそれらの製造時に排出された端材のリサイクルが可能なシート状成形品のリサイクル方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシート状成形品の製造方法は、
肌に接する表面材、水分を吸収する吸収体、及び前記吸収体に吸収された水分が外部に漏出しないようにする防水体を備える衛生関連用品を、前記衛生関連用品に含まれる合成樹脂とセルロース系の材質とが固着しない方式で粉砕して粉砕物を作製する粉砕工程と、
液媒及び親水性物質を混合し、懸濁液を作製する懸濁液作製工程と、
前記粉砕物、前記懸濁液、及びマトリクス樹脂を混合し、混合物を作製する第1混合物作製工程と、
前記第1混合物をベント部を備える混練機に投入し、前記マトリクス樹脂と前記衛生関連用品に含まれる合成樹脂からなる複合樹脂が溶融する温度で加熱混錬しつつ前記ベント部を開いて、前記複合樹脂の熱流動温度における前記液媒の残留率が1%以下になるよう前記液媒の揮発分を外部に排出して樹脂複合材料を作製する樹脂複合材料作製工程と、
前記樹脂複合材料を異型押出法により成形して中空構造を備えるシート状成形品にする成形工程と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のシート状成形品の製造方法によれば、衛生管理用品に含まれる合成樹脂とセルロース系の材質とが固着することがない。また、衛生管理用品に含まれている合成樹脂とマトリクス樹脂からなる複合樹脂が連続相を形成しやすくなり、セルロース系の材質は複合樹脂の連続相に分散しやすくなる。その結果、凝集が発生しないので、押出成形が可能であり、複雑な中空構造を備えるシート状成形品を製造することが可能となる。
【0009】
本発明のシート状成形品の製造方法は、
肌に接する表面材、水分を吸収する親水性物質を含む吸収体、及び前記吸収体に吸収された水分が外部に漏出しないようにする防水体を備える衛生関連用品を、前記衛生関連用品に含まれる合成樹脂とセルロース系の材質とが固着しない方式で粉砕して粉砕物を作製する粉砕工程と、
前記粉砕物、液媒、及びマトリクス樹脂を混合し、混合物を作製する第2混合物作製工程と、
前記第2混合物をベント部を備える混練機に投入し、前記マトリクス樹脂と前記衛生関連用品に含まれる合成樹脂からなる複合樹脂が溶融する温度で加熱混錬しつつ前記ベント部を開いて、前記複合樹脂の熱流動温度における前記液媒の残留率が1%以下になるよう前記液媒の揮発分を外部に排出して樹脂複合材料を作製する樹脂複合材料作製工程と、
前記樹脂複合材料を異型押出法により成形して中空構造を備えるシート状成形品にする成形工程と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のシート状成形品の製造方法によれば、親水性物質を含む吸収体を備える衛生関連用品に液媒を加えるのみで、上記の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0011】
本発明のシート状成形品の製造方法の好ましい例は、
前記成形工程における成形温度が190℃以上230℃以下である。
【0012】
本発明のシート状成形品の製造方法の好ましい例によれば、成形性が良好であり、発泡や熱劣化による変色を生じないシート状成形品の製造方法を提供することができる。
【0013】
本発明のシート状成形品の製造方法の好ましい例は、
前記樹脂複合材料のMFRの値が、190℃、荷重2.16kgにおいて、1.0g/10min以上3.0g/10min以下である。
【0014】
本発明のシート状成形品の製造方法の好ましい例によれば、成形性が良好なシート状成形品の製造方法を提供することができる。
【0015】
本発明のシート状成形品の製造方法の好ましい例は、
前記粉砕物50重量部に対する前記マトリクス樹脂が150重量部以上950重量部以下であり、
熱溶着又は超音波溶着で接合可能である。
【0016】
本発明のシート状成形品の製造方法の好ましい例によれば、熱溶着又は超音波溶着で接合可能であり、合成樹脂を用いた一般的なプラスチック段ボールと同等の加工性を有するシート状成形品の製造方法を提供することができる。
【0017】
本発明のシート状成形品のリサイクル方法は、
前記シート状成形品の廃棄物、前記シート状成形品を利用した完成品の廃棄物、またはそれらの製造時に排出された端材を粉砕して第2粉砕物を作製する第2粉砕工程と、
前記第2粉砕物をペレット化して再生ペレットを作製する再生ペレット作製工程と、
前記再生ペレットを異型押出法により成形して中空構造を備えるシート状成形品にする第2成形工程と、
を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明のシート状成形品のリサイクル方法によれば、凝集を生じることなく、これらの廃棄物を再度溶融してリサイクルすることが可能である。また、セルロース系の材質と合成樹脂とを分離する技術が必要とないため、リサイクルコストを低減することが可能である。
【発明の効果】
【0019】
上述したように、本発明に係るシート状成形品の製造方法によれば、産業廃棄物の一つである衛生関連用品を利用しつつ、押出成形が可能であり、さらに中空構造を備えるシート状成形品の製造方法を提供することができる。また、製造されたシート状成形品の廃棄物、シート状成形品を利用した完成品の廃棄物、またはそれらの製造時に排出された端材を再リサイクルすることが可能なシート状成形品のリサイクル方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係るシート状成形品を製造する製造装置を説明する図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るシート状成形品の製造方法の工程図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るシート状成形品の製造方法の工程図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るシート状成形品のリサイクル方法の工程図である。
【
図7】懸濁液作製のための液媒及び親水性物質の重量比を示す表である。
【
図8】本発明に係るシート状成形品の配合、成形条件及び物性評価結果を示す表である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るシート状成形品の圧縮強度の評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のシート状成形品の製造方法及びシート状成形品のリサイクル方法について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
ここで、先に用語の説明をする。本実施形態に係る衛生関連用品とは、肌に接する表面材と、水分を吸収する吸収体と、当該水分が外部に漏出しないようにする防水体を備える衛生製品であり、セルロース系の材質と合成樹脂を含む一般的な材料で構成される紙おむつや吸水シート、生理用品などをいう。また、衛生関連用品には、衛生関連用品の製造工程時の端材や未使用廃棄物のほか、洗浄された使用済み廃棄物等も含めるものとする。また、本実施形態に係るマトリクス樹脂とは、シート状成形品2(
図4参照)の母組織を形成する合成樹脂であって、産業廃棄物に対して新たに加える合成樹脂のことを指す。さらに、本実施形態では、シート状成形品2の一つとして、プラスチック段ボールを挙げているが、他の梱包材料や断熱材等の製品にも用いることができる。
【0023】
次に、
図1及び
図2を参照して、本実施形態のシート状成形品2を製造する製造装置1を説明する。この製造装置1は粉砕機(図示せず)と、混合機10と、混練機20と、押出機40とを備える。
【0024】
粉砕機は、衛生関連用品を粉砕するものである。本実施形態で用いられる粉砕機としては、衛生関連用品に含まれる合成樹脂とセルロース系の材質とが、粉砕時の熱等によって変性して固着しないものであればよい。この粉砕機として例えば、ピンミル式のものが用いられる。また、上述の固着が発生しないのであれば、他の粉砕機も用いることができる。
【0025】
混合機10は、複数のホッパ、及びホッパの中に適宜設けられる撹拌機(図示せず)を備える。本実施形態では、粉砕物用ホッパ11、懸濁液用ホッパ12、マトリクス樹脂用ホッパ13、及び混合物用ホッパ14を備える。粉砕物用ホッパ11は、衛生関連用品を粉砕して得られる粉砕物を入れるものである。懸濁液用ホッパ12は、後述する液媒と親水性物質とを混合して得られる懸濁液を入れるものである。この懸濁液用ホッパ12は、液媒のみを入れる場合もある。マトリクス樹脂用ホッパ13は、例えばペレット状にされたマトリクス樹脂を入れるものである。混合物用ホッパ14は、上述の各々のホッパから供給される粉砕物、懸濁液又は液媒、及びマトリクス樹脂を混合し、混合物を作製するものである。
【0026】
混練機20は、本実施形態では、例えば二軸押出機の仕様を一部変更したものを採用しており、投入部21、駆動部22、シリンダ23、スクリュー24、ベント部30a,30b、及び造粒部25を備える。投入部21は、外部から材料となるものを投入するものである。駆動部22はシリンダ23の中に配置されるスクリュー24を駆動させるものである。このシリンダ23とスクリュー24の回転で混合物が加熱混練される。また、シリンダ23には投入された混合物を適切な温度に保つための温度調節部(図示せず)が備えられる。
【0027】
ベント部30a,30bは、加熱混練される混合物(溶融混合物)から余分な液媒の揮発分等を排出するものであり、本実施形態では上流側のベント部30aと下流側のベント部30bの2つを備えている。
【0028】
上流側のベント部30aは、シリンダ孔31、フィルタ32、押え板33、圧力調整弁36、圧力計37を備える。シリンダ孔31は、シリンダ23の上部壁面を貫通する孔である。フィルタ32は、シリンダ23の中の溶融混合物がベントアップすることを防止するために、溶融混合物の液体成分と固体成分を通過させず、気体成分のみ通過させる特性を備えるものである。押え板33は、フィルタ32の上部に設けられるもので、圧力調整弁36に連通するベント孔34と、圧力計37に連通する測定孔35を備える。圧力調整弁36は、溶融混合物から気化される液体成分の量を調整するものである。圧力計37は、ベント部30a,30bの中の圧力を測定するものである。
【0029】
下流側のベント部30bは、上流側のベント部30aの構成に加えて、液体トラップ38と真空ポンプ39を備えており、下流側のベント部30bの内部を陰圧にすることができる。このように、主に上流側のベント部30aは大気圧より高い圧力において溶融混合物に含まれる液体成分を除去し、下流側のベント部30bは大気圧より低い圧力において溶融混合物に含まれる液体成分を除去する。もっとも、ベント部30a,30bの目的は余分な液媒の揮発分等の排出であり、その目的が達成されるならベント部30a,30bの数や構成は限定されない。例えば、ベント部の数は1つでもよいし、逆に上流側から下流側にかけて、さらに複数のベント部を設け、圧力傾斜を上流から下流へ細かく設定することも可能である。また、ベント部30a,30bが設けられる箇所のスクリュー径を適宜変更して、当該部分における溶融混合物の圧力を調整することもできる。
【0030】
造粒部25は、シリンダ23の先端から排出される溶融混合物を冷却して切断し、例えばペレット状の樹脂複合材料とするものである。
【0031】
押出機40は、本実施形態では公知の押出成形機が採用され、投入部41、駆動部42、シリンダ43、スクリュー(図示せず)、ダイ44、冷却部(図示せず)、コンベア45等を備える。投入部41は、混練機20で作られた樹脂複合材料を投入するものである。駆動部42は、シリンダ43の中に配置されるスクリューを駆動させるものである。また、シリンダ43には混練される樹脂複合材料の温度を適切な値に保つ温度調節部(図示せず)が設けられる。ダイ44は、シリンダ43とスクリューとで加熱混練された樹脂複合材料を、所望の中空構造を備えるシート状成形品2に成形するものである。冷却部は、ダイ44から吐出されるシート状成形品2を冷却するものである。コンベア45は、ダイ44から吐出されるシート状成形品2を搬送するものである。コンベア45で搬送されたシート状成形品2は、製品として所望の大きさに切断される。
【0032】
[シート状成形品の製造方法]
[第1実施形態]
上述した製造装置1の構成に加え、
図3を参照して本発明の第1実施形態に係るシート状成形品の製造方法を説明する。本実施形態のシート状成形品の製造方法は、
図3に示すように、粉砕工程S101と、懸濁液作製工程S102と、第1混合物作製工程S103と、樹脂複合材料作製工程S104と、成形工程S105と、を備える。なお、材料の1つであるマトリクス樹脂は、予めマトリクス樹脂用ホッパ13に入れてあるものとする(
図1矢印c)。
【0033】
粉砕工程S101は、衛生関連用品を粉砕して粉砕物を作製する工程である。粉砕方式は、上述のとおり、衛生関連用品に含まれる合成樹脂とセルロース系の材質とが、粉砕時の熱等で固着しない方式であれば、特に限定されない。本実施形態では、粉砕中の熱を抑えることが可能なピンミル式の粉砕機を用いている。一方で、磨砕式など熱が比較的発生しやすい粉砕方法では、衛生関連用品に含まれている合成樹脂とセルロース系の材質とが固着し、凝集が発生しやすい。作製された粉砕物は粉砕物用ホッパ11に投入される(
図1矢印a)
【0034】
次に、懸濁液作製工程S102において、液媒と親水性物質とを混合し、懸濁液を作製する。懸濁液は、その種類によって、ゾルやゲルの性状を示す場合もある。これらの液媒と親水性物質とは、懸濁液用ホッパ12で混合され懸濁液となる(
図1矢印b)。
【0035】
液媒は、水のほか、後述する親水性物質と相溶性のあるものが選ばれる。エチレングリコール、ポリオール類や分子量が400以下のポリエチレングリコールなどが好適に用いられる。上記液媒は、単体で使用しても良いし、二種以上混合して使用することも可能である。
【0036】
親水性物質は、液媒を取り込み、種々の相互作用(水素結合、ファンデルワールス力、静電的相互作用など)で網目構造を形成し膨潤する性質を持ち、さらに衛生関連用品に含まれるセルロース系の材質及び複合樹脂の両者と親和性の良いものから好適に選ばれる。
【0037】
この親水性物質の例として、粘土鉱物系物質、ペクチン、カラギナン、キサンタンガム、ガラクトマンナン類、アラビアガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ゼラチン、吸水性樹脂や吸水剤(ゲル化剤)、増粘剤などを用いることができる。
【0038】
また、無機系化合物も好適に用いられる。水酸化ドロマイトやその他の水酸化物、金属酸化物の水和物、塩化カルシウム・塩化マグネシウムなどの塩化物又は、チオ硫酸ナトリウムなどの硫化物などの無機化合物などが挙げられる。
【0039】
親水性物質は、他の機能も併せもつ場合もある。例えば、水酸化ドロマイトは、シート状成形品2に消臭性、抗菌性及び難燃性などの機能を付与することができる。よって、親水性物質は、親水性物質としての機能だけでなくシート状成形品2に付与したい機能を考慮した上で、単体で使用しても良いし、二種以上混合して使用することも可能である。
【0040】
この中でも、カルボキシメチルセルロース(CMC)は、セルロース骨格を含有することによる剛性を保ちつつ、靭性のあるシート状成形品2が得られる。また、液媒をエチレングリコール、親水性物質をカオリナイトとすると、複合樹脂の連続相が効率的に形成される。理由は、上述のとおり、エチレングリコールとカオリナイトは相溶性がよいためである。
【0041】
このように調整された懸濁液は、上述のとおり膨潤することで、マトリクス樹脂の量を低減することに寄与する。また、懸濁液は、親水性物質の上記性質上、衛生関連用品に含まれるセルロース系の材質と複合樹脂の両者と親和性がよく、橋架け的に相互作用し、衛生関連用品に含まれる合成樹脂とセルロース系の材質が固着することを防ぐ。その結果、複合樹脂は、均一な連続相を形成し、セルロース系の材質は複合樹脂の連続相へ分散しやすくなる。
【0042】
また、上記懸濁液に、さらに添加剤として機能性微粒子など加えてもよい。例えば、カーボンブラックを添加することにより、導電性をもったシート状成形品2を得ることができる。
【0043】
続いて、第1混合物作製工程S103において、上述の粉砕物、懸濁液、及びマトリクス樹脂とを撹拌混合し、第1混合物を作製する(
図1矢印d,e,f)。このとき、第1混合物の中の、少なくとも粉砕物の表面が濡れる量の懸濁液を添加することが好ましい。これは、粉砕物が懸濁液によって湿潤されていないと、樹脂複合材料をシート状成形品2に成形したときに固着物による凝集が生じるからである。なお、懸濁液の量が多すぎても、後述する樹脂複合材料作製工程S104において、樹脂複合材料に含まれる液媒の残留率を1%以下にするために混練機20のベント部30a,30bの数を増やしたり、混練機20から出てきた樹脂複合材料を再度混練機20に投入することで対応できる。
【0044】
マトリクス樹脂は、再リサイクル用途を考えないのであれば、熱硬化性樹脂の使用や併用も可能であるが、再リサイクルを行うためには熱可塑性樹脂が適している。ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、アクリル・ブチレン・スチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA)等の合成樹脂、生分解性プラスチックなどの熱可塑性樹脂が挙げられ、一般に押出成形が可能なものであれば、特に制限なく用いることができる。上記熱可塑性樹脂は、単体で使用してもよいし、二種以上混合して使用してもよい。また、これら熱可塑性樹脂の再生品を使用することも可能である。
【0045】
続いて、樹脂複合材料作製工程S104において、上述の第1混合物をベント部30a,30bを備える混練機20に投入し(
図1矢印g)、樹脂複合材料を得る。本実施形態では、樹脂複合材料をペレット化したものを用いている。ここでは、マトリクス樹脂と前記衛生関連用品に含まれる合成樹脂からなる複合樹脂が溶融する温度で加熱混錬しつつ前記ベント部30a,30bを開いて、複合樹脂の熱流動温度における液媒の残留率が1%以下、好ましくは0.3%以下になるよう液媒の揮発分を外部に排出して樹脂複合材料を作製する。これは、液媒の残留率が1%を超えると、成形工程S105において成形品に発泡を生じやすくなるからである。
【0046】
加熱混錬は、一般的な混練機20や押出機を用いることにより実施することができるが、上述したベント部30a,30bを備える二軸押出機により実施することが好ましい。材料を十分に混練することが可能であるとともに、ベント部30a,30bを備えることで効率的に樹脂複合材料を作製することができるからである。シリンダ23の設定温度は、材料同士を十分に混練するために、複合樹脂が溶融する温度であることが好ましい。本実施形態では、複合樹脂の溶融温度である190℃以上230℃以下で加熱混練している。これは、190℃未満であると複合樹脂の流動性が悪くなるとともに、マトリクス樹脂と衛生関連用品に含まれる合成樹脂とが連続相を形成しにくくなるからである。また、230℃を超えると、衛生関連用品に含まれるセルロースが変色するおそれがあるためである。
【0047】
こうして作製された樹脂複合材料のメルトフローレート(MFR)の値は、190℃、荷重2.16kgにおいて、1.0g/10min以上3.0g/10min以下のものが好ましく、より好ましくは、1.0g/10min以上2.5g/10min以下のものが好ましい。樹脂複合材料のMFRの値が1.0g/10min未満であれば、後述する成形工程において、流動性が低すぎて、成形時の圧力負荷やばらつきが大きくなり、成形が困難である。樹脂複合材料のMFRの値が3.0g/10minより大きければ流動性が高すぎて成形性が悪く、シート状成形品2において中空構造を維持できない。
【0048】
成形工程S105において、樹脂複合材料作製工程S104で得られた樹脂複合材料を押出機40の投入部41より投入する(
図1矢印h)。そして、異型押出法により成形して中空構造を備えるシート状成形品2を作製する(
図1矢印i)。本実施形態では、樹脂複合材料は中空成形用の異形ダイ44を通って押出成形され、中空構造を有するシート状の成形品を得ることができる。成形温度であるシリンダ43の設定温度は、190℃以上230℃以下の範囲であることが好ましい。上記樹脂複合材料作製工程S104における加熱混練時のシリンダ23の設定温度と同様の理由である。合成樹脂を用いた一般的なプラスチック段ボールなどに使用するシート状成形品2のシリンダ43の設定温度は、約220℃から250℃程度であり、本発明のシート状成形品2は比較的低温での成形が可能である。
【0049】
ここで、
図4に本実施形態に係る中空構造を備えるシート状成形品2の例として、プラスチック段ボールの斜視図及び拡大斜視図を示している。本実施形態におけるシート状成形品2は、ライナー3,4と呼ばれる一対の板状シートを上下に有し、当該上下ライナー3,4間に等間隔で配置されるリブ5によって中空構造を形成するものである。本実施形態におけるシート状成形品2の厚さ(t)は、一方のライナー3上面からもう一方のライナー4の底面までの距離のことを指す。本実施形態におけるシート状成形品の厚さ(t)は、1mmから20mmの範囲が好ましく、より好ましくは、2mmから9mmの範囲である。シート状成形品の厚さ(t)が、1mmより小さければ、本発明に係るシート状成形品を梱包材などの完成品に使用した場合に、耐荷重性がなく、シート状成形品の厚さ(t)が、20mmよりも大きければ、重くなりすぎて運搬性が悪く、完成品である梱包材としての機能を欠いたものとなるからである。以上、S101~S105の工程により、産業廃棄物を利用したシート状成形品2を得ることができる。
【0050】
[第2実施形態]
【0051】
図5を参照して本発明の第2実施形態に係るシート状成形品の製造方法を説明する。本実施形態のシート状成形品の製造方法は、
図5に示すように、粉砕工程S101と、第2混合物作製工程S203と、樹脂複合材料作製工程S104と、成形工程S105と、を備える。本実施形態において、第1実施形態と同じ装置及び工程には、同じ符号を付して説明を省略する。
【0052】
粉砕工程S101は、第1実施形態と同じである。次に、第1実施形態の工程で説明した懸濁液作製工程S102を省略し、粉砕工程S101から第2混合物作製工程S203へ進む。これは、本実施形態では第1実施形態の懸濁液に替えて液媒を用いているためである。理由として、衛生関連用品の吸収体には、上述した親水性物質の一つである吸水性樹脂が含まれているものがある。当該吸水性樹脂は、第1実施形態で説明した親水性物質としての働きをすることが可能である。このため、新たに親水性物質を加えることなく液媒を加えるのみで、上述したマトリクス樹脂の低減、衛生関連用品に含まれる合成樹脂とセルロース系の材質との固着防止、複合樹脂の均一な連続相の形成やセルロース系の材質の分散性向上など、懸濁液の機能を発揮することができるからである。よって、懸濁液作製工程S102を省略することが可能となる。このとき、懸濁液用ホッパ12には液媒のみが入れられる。
【0053】
第2混合物作製工程S203は、上述のとおり第1実施形態の第1混合物作製工程S103の懸濁液を液媒に代えて、粉砕物、液媒及びマトリクス樹脂とを混合物用ホッパ14で撹拌混合し、第2混合物を作製するものである。ここでも、第2混合物の中の少なくとも粉砕物の表面が濡れる量の懸濁液を添加することが好ましい。成形工程S105は、第1実施形態と同じである。
【0054】
なお、このように吸収体に既に親水性物質が含まれている場合においても、第1実施形態のように新たに親水性物質をさらに加えることで、上述した懸濁液の機能をさらに強化することができる。この場合は、第1実施形態のシート状成形品2の製造装置1及びシート状成形品の製造方法に従ってシート状成形品2を作製する。
【0055】
上述した第1実施形態及び第2実施形態において、粉砕物とマトリクス樹脂との比率は重量比で1:1程度であれば、シート状成形品2の製造は十分可能である。但し、シート状成形品2を、熱溶着又は超音波溶着で接合可能なシート状成形品2とすること、及び後述するシート状成形品のリサイクル方法によってリサイクル可能とするには、粉砕物とマトリクス樹脂との比率を適切な値にする必要がある。このため、仮に樹脂複合材料作製工程S104で作製された樹脂複合材料において、マトリクス樹脂の含有率が不足する場合、成型工程S105の前に追加のマトリクス樹脂を添加するマトリクス樹脂追加工程(図示せず)を行うことになる。これは、樹脂複合材料とともに追加のマトリクス樹脂を押出機40の投入部41に入れて混合することでなされる(
図1矢印j)。
【0056】
このマトリクス樹脂追加工程における粉砕物とマトリクス樹脂との比率は、本実施形態の樹脂複合材料10重量部以上50重量部以下に対して、追加のマトリクス樹脂は、50重量部以上90重量部以下であることが好ましい。これは、追加のマトリクス樹脂が50重量部より少ないと、シート状成形品2を熱溶着又は超音波溶着で接合することができず、後述するリサイクル方法も困難になるからである。一方で、追加のマトリクス樹脂が90重量部より多いと、衛生関連用品の利用率が下がるからである。さらに、これを言い換えると、全体として、粉砕物50重量部に対してマトリクス樹脂が150重量部以上950重量部以下であることが好ましいということであり、マトリクス樹脂追加工程を追加せずとも、第1混合物作製工程S103又は第2混合物作成工程S203で、マトリクス樹脂を上記の量となるよう多めに入れても良い。
【0057】
このようにして得られたシート状成形品2の加工は、合成樹脂を用いた一般的なプラスチック段ボールに使用するシート状成形品2と同等に取り扱うことが可能である。型抜き等の切削加工、熱曲げ等の曲げ加工、リベット等を用いた接合のほか、熱溶着や超音波溶着等によるつなぎ加工など、どれも公知の方法を用いることができる。
【0058】
例えば一例として、超音波溶着について、周波数19kHz、振幅18μm(80%~100%出力)、発振時間1.0~1.5秒、押さえ圧力0.3~0.4MPa、冷却時間1.5~2.0秒の条件で溶着することが可能であり、これはポリプロピレンなどの合成樹脂を用いた一般的なプラスチック段ボールに使用する超音波溶着の条件と変わらず、本実施形態で製造されるシート状成形品2は加工性も良好であるといえる。
【0059】
[シート状成形品のリサイクル方法]
次に、
図6を参照して、第1及び第2実施形態で製造されたシート状成形品2の廃棄物、当該シート状成形品2を利用した完成品の廃棄物、またはそれらの製造時に排出された端材(以下、「端材等」と称することがある。)を用いるシート状成形品のリサイクル方法を説明する。本実施形態のシート状成形品のリサイクル方法は、
図6に示すように、第2粉砕工程S301と、再生ペレット作製工程S304と、第2成形工程S305と、を備える。
【0060】
第2粉砕工程S301は、粉砕機(図示せず)で端材等を粉砕して第2粉砕物(スクラップ)を作製する工程である。
【0061】
再生ペレット作製工程S304は、第2粉砕工程S301で得られた第2粉砕物を、ペレット化して再生ペレットを作製するものである。ここでは、公知の混練機やペレタイザー等が用いられる。
【0062】
第2成形工程S305は、再生ペレット作製工程S304で得られた再生ペレットを、異型押出法により成形して中空構造を備えるシート状成形品2を作製するものである。ここでは、上記シート状成形品の製造装置1の押出機40と同様に、公知の押出成形機を使用することができる。
【実施例0063】
先ず、
図7に示すように、懸濁液として懸濁液No.1、懸濁液No.2、懸濁液No.3の3種類を調製した。なお、懸濁液とは別に液媒のみの例として、水3:エチレングリコール2(重量比)を混合したものを調製した(
図8参照)。
【0064】
次に、
図8に示すように、上述した第1実施形態と第2実施形態で得られた樹脂複合材料について、実施例1~6と比較例1~3の試験を行った。これらの実施例と比較例を以下の項目において評価し、その結果及び考察を示す。なお、ここではマトリクス樹脂としてポリプロピレンを用いている。
(1)樹脂複合材料のメルトフローレート(MFR)
JISK-7210-1に準拠して、190℃、荷重2.16kgでメルトフローレート(MFR)の値を測定した。
ここでは、実施例1~5について測定した。結果として実施例3の値が1.4で最も低く、実施例2の値が2.3で最も高かった。
(2)樹脂複合材料の物性評価
(a)曲げ弾性率(23℃)
樹脂複合材料にて幅15mm、長さ100mm、厚さ2mmの短冊を作製し、JIS K7074に準拠した条件にて、曲げ弾性率を測定した。
ここでは、実施例1~5について測定した。一般的なポリプロピレンの曲げ弾性率の平均値である1291MPaと比較して、全てのサンプルで2000MPaを超えており、良好な結果を得られた。
(b)シャルピー衝撃強度(23℃)
樹脂複合材料にて幅10mm、長さ80mm、厚さ2mmの試験片を作製し、JIS K-7111に準拠して、シャルピー衝撃強度を測定した。
ここでは、実施例1~5について測定した。一般的なポリプロピレンのシャルピー衝撃強度の平均値である7.8kj/m2に比較して、7.6~9.3kj/m2の範囲にあり良好な結果を得られた。
(3)成形性評価
樹脂複合材料を、厚さ2mmのプラスチック段ボールに成形して、目視で評価した。
ここでは、実施例と比較例の全てにおいて評価を行った。結果として、実施例1~5は凝集や発泡等がなく良品として判断した。実施例6は若干の発泡があるものの、成形は可能である。比較例はその全てにおいて不良品となり、プラスチック段ボールとして使用できるものではなかった。
(4)考察
比較例1の結果から、粉砕工程において、熱が発生しやすい磨砕式の粉砕方式を選択すると、衛生関連用品に含まれている合成樹脂とセルロース系の材質が固着し、その後に親水性物質と液媒からなる懸濁液を添加しても、固着による凝集を防ぐことができないことがわかる。また、比較例2の結果からは、成形工程において、成形温度が高すぎることにより、発泡によって、中空構造の成形性が悪化するとともに変色が生じることがわかる。また、比較例3の結果から、粉砕物とマトリクス樹脂のみで親水性物質と液媒が含まれていなければ、セルロース系材質の凝集を生じ、中空構造への成形性が確保できないことがわかる。実施例6は液媒のみを添加した結果であり、発泡が生じているものの、中空構造への成形は可能であり、不良ではないと判断した。
【0065】
次に、熱溶着又は超音波溶着で接合可能なシート状成形品2、及び上述したシート状成形品のリサイクル方法が可能なシート状成形品2について、
図9を参照して説明する。実施例7は、実施例3(
図8参照)で得られた樹脂複合材料に、マトリクス樹脂追加工程にてポリプロピレンのペレットを加え、成形工程S105で厚さ5mmのプラスチック段ボールに成形したものである。このとき、樹脂複合材料30重量部に対して、追加のポリプロピレンのペレットは、70重量部加えた。言い換えると、ポリプロピレンのペレットを233重量部追加しており、元々の樹脂複合材料に含まれるポリプロピレン50重量部(実施例3)と合わせて283重量部となる。対する粉砕物は50重量部である。また、比較例としてポリプロピレン100%で成形した厚さ5mmのプラスチック段ボールを用意した。
【0066】
これらのプラスチック段ボールについてJIS Z 0403-1及びJIS Z 0403-2に準拠して圧縮強度を測定したところ、平面方向、垂直方向ともに粉砕物を混ぜた実施例7の方が高い強度を示した。これは、プラスチック段ボールに含まれる樹脂複合材料の割合が増えることにより、セルロース骨格を含有する比率も増えるため、剛性を保ちつつ、靭性のあるシート状成形品2を得ることができ、強度の向上が図られたと考える。よって、樹脂複合材料の割合を多くすると、圧縮強度も向上する。また、実施例7に係るプラスチック段ボールを用いて梱包箱等を製造するとき、一般的な熱溶着又は超音波溶着で接合可能であり、留め金具等を使用せずに製造することができた。さらに、プラスチック段ボールの廃棄物、当該プラスチック段ボールを利用した完成品の廃棄物、またはそれらの製造時に排出された端材を粉砕した後にペレット化して、押出機で再度プラスチック段ボールを製造することができた。
【0067】
以上、説明したように、本実施形態のシート状成形品の製造方法によれば、衛生管理用品に含まれる合成樹脂とセルロース系の材質とが固着することがなく、凝集が発生しない。よって、押出成形が可能であり、複雑な中空構造を備えるシート状成形品を製造することが可能となる。また、成形性がよく、一般的なプラスチック段ボールと同等かそれ以上の加工性や強度等の特性を備えた成形品を得ることができる。また、成形されたプラスチック段ボールは、セルロースを含むことから見た目が紙又は木のような自然な色合いになり、肌触りも紙や木を触っているような暖かみのある感触となる。さらに、本実施形態のシート状成形品のリサイクル方法によれば、セルロース系の材質と合成樹脂からなる産業廃棄物のリサイクル時に起こる凝集の問題を解決しつつ、廃棄物を再度溶融して再リサイクルすることが可能である。また、セルロース系の材質と合成樹脂とを分離する技術が必要とないため、リサイクルコストを低減することが可能である。
【0068】
なお、上述したシート状成形品の製造方法及びシート状成形品のリサイクル方法は、本発明の例示にすぎず、発明の趣旨を逸脱しない範囲においてその構成を適宜変更することができる。