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特開2024-142721液体補給容器および液体補給容器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142721
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】液体補給容器および液体補給容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/24 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B65D47/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055014
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 淳
(72)【発明者】
【氏名】大屋 瞬
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA22
3E084AA24
3E084AA32
3E084AB01
3E084BA02
3E084CA01
3E084CB02
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB13
3E084DC03
3E084EA02
3E084EC03
3E084FA09
3E084FC01
3E084GA08
3E084HD01
3E084KB01
3E084LB02
3E084LC01
3E084LD08
3E084LD16
(57)【要約】
【課題】液体補給容器内部の流体の挙動に生じる不具合を解消する。
【解決手段】液体補給容器は、液体を収容可能な収容部の開口端に取り付けられた筒形状部を備えた液体出入部形成部材を備える。この筒形状部に収容部に対する液体の出入部を形成し、出入部には開閉弁を配置する。この開閉弁の弁体はホルダー部材に移動可能に収容される。液体出入部形成部材の筒形状部は、ホルダー部材との間に、ホルダー部材を周方向に取り囲む空隙部を形成している。この空隙部を、周方向または弁体の移動方向において少なくとも2つの部分に区画するリブまたは鍔部を備える。
【選択図】図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容可能な収容部と、
前記収容部の開口端に取り付けられ、前記収容部に対する前記液体の出入部を形成する筒形状部を備えた液体出入部形成部材と、
前記出入部に配置され、前記収容部と外部との連通を開閉する開閉弁と、
前記筒形状部の内側に取り付けられ、前記開閉弁の少なくとも弁体を、移動可能に収容するホルダー部材と、
前記液体出入部形成部材に備えられ、前記弁体と共に前記開閉弁を構成するシール部材であって、前記弁体が離座することで、前記外部と連通する開口部を開口状態とし、前記弁体が着座することで前記開口部を閉止状態するシール部材と、 を備え、
前記液体出入部形成部材の前記筒形状部は、前記ホルダー部材との間に、前記ホルダー部材を周方向に取り囲む空隙部を形成しており、
前記空隙部には、前記空隙部を前記周方向において少なくとも2つの部分に区画するリブが設けられた、液体補給容器。
【請求項2】
前記リブは、前記ホルダー部材および前記筒形状部の少なくとも一方から延出されて、前記空隙部を前記少なくとも2つの部分に区画する位置に形成された、請求項1に記載の液体補給容器。
【請求項3】
液体を収容可能な収容部と、
前記収容部の開口端に取り付けられ、前記液体の出入部を形成する筒形状部を備えた液体出入部形成部材と、
前記出入部に配置され、前記収容部と外部との連通を開閉する開閉弁と、
前記筒形状部の内側に取り付けられ、前記開閉弁の少なくとも弁体を、移動可能に収容するホルダー部材と、
前記液体出入部形成部材に備えられ、前記弁体と共に前記開閉弁を構成するシール部材であって、前記弁体が離座することで、前記外部と連通する開口部を開口状態とし、前記弁体が着座することで前記開口部を閉止状態するシール部材と、
を備え、
前記液体出入部形成部材の前記筒形状部は、前記ホルダー部材との間に、前記ホルダー部材を周方向に取り囲む空隙部を形成しており、
前記空隙部には、前記空隙部を前記弁体の移動方向において少なくとも2つの部分に区画する鍔部を設けた、液体補給容器。
【請求項4】
前記鍔部は、前記ホルダー部材および前記筒形状部の少なくとも一方から延出されて、前記空隙部を前記少なくとも2つの部分に区画する位置に形成された、請求項3に記載の液体補給容器。
【請求項5】
前記リブまたは前記鍔部は、前記開閉弁の開弁状態において、前記移動方向における前記シール部材と前記離座した状態の弁体との間に位置する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の液体補給容器。
【請求項6】
液体を収容可能な収容部と、
前記収容部の開口端に取り付けられ、前記液体の出入部を形成する筒形状部を備えた液体出入部形成部材と、
前記出入部に配置され、前記収容部と外部との連通を開閉する開閉弁と、
前記筒形状部の内側に取り付けられ、前記開閉弁の少なくとも弁体を、移動可能に収容するホルダー部材と、
前記液体出入部形成部材に備えられ、前記弁体と共に前記開閉弁を構成するシール部材であって、前記弁体が離座することで、前記外部と連通する開口部を開口状態とし、前記弁体が着座することで前記開口部を閉止状態とするシール部材と、
を備え、
前記液体出入部形成部材は、前記収容部との接合部と反対側に、前記シール部材を収容する凹部を形成する段部を備え、
前記ホルダー部材は、前記凹部の内周壁に固定されて、前記凹部に収容された前記シール部材を押さえ込むシール部材押さえ部を備え、
前記弁体の移動方向における前記開口部側を先端側、前記収容部側を後端側としたとき、前記シール部材押さえ部の後端は、前記シール部材の後端より前記後端側に位置し、前記段部の後端は、前記シール部材押さえ部の後端より前記後端側に位置する、
液体補給容器。
【請求項7】
液体補給容器を製造する方法であって、
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の液体補給容器を用意する工程と、
前記液体補給容器の前記出入部に液体注入流路部材を挿入する工程と、
前記液体注入流路部材の挿入により前記開閉弁の前記弁体が前記シール部材から離座された状態で、前記液体を注入する工程と、
を含み、
前記液体注入流路部材は、前記液体が流入する液体流路と前記収容部内の気体を排出する気体流路とを有し、前記出入部を上方に向けた状態で、前記液体注入流路部材を前記液体補給容器の内部に挿入して前記弁体を前記シール部材から離座させた液体注入姿勢において、前記液体注入流路部材の前記気体流路の下端は前記液体流路の下端より上方に位置し、
前記液体注入姿勢において、前記液体注入流路部材の前記気体流路の下端は前記区画された第1の部分に位置し、前記液体流路の下端は前記区画され、かつ前記第1の部分とは異なる第2の部分に位置し、
前記液体を注入する工程において、前記液体注入流路部材の前記液体流路を介した前記液体の注入に伴い、前記液体注入流路部材の前記気体流路を介して前記収容部から前記気体を排出する、
液体補給容器の製造方法。
【請求項8】
前記液体注入流路部材は、1本の管路部材の内側を管路に沿って区分した一方を前記液体流路とし、他方を前記気体流路とした、請求項7に記載の液体補給容器の製造方法。
【請求項9】
使用済みの液体補給容器を用いて液体補給容器を再製造する方法であって、
請求項6に記載の液体補給容器を用意する工程と、
前記液体補給容器の前記出入部に液体排出部材を挿入する工程と、
前記液体排出部材が挿入された前記液体補給容器を、前記収容部が前記シール部材より高い位置となる液体排出姿勢として、前記液体補給容器内に残留する残留液を排出する工程と、
前記液体排出部材を取り外した後、前記液体補給容器を、前記収容部が前記シール部材より低い位置となる液体注入姿勢として、前記液体補給容器の前記出入部に液体注入流路部材を挿入する工程と、
前記液体注入流路部材の挿入により前記開閉弁の前記弁体が前記シール部材から離座された状態で、前記液体を注入する工程と、
を含み、
前記残留液を排出する工程において、前記液体補給容器の前記段部上に残留した残留液を、前記段部の後端より先端側に位置するシール部材押さえ部の後端側に導き、前記シール部材押さえ部上に残留した残留液を、前記シール部材押さえ部の後端より前記先端側に位置する前記シール部材の後端側に導き、前記開口部から外部に排出させる、
液体補給容器の再製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体補給容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を利用する装置に液体を補給する液体補給容器が、インクジェットプリンターなど種々の分野で用いられている。こうした液体補給容器は、空の容器に液体を予め注入して充填する必要があり、しかも液体が充填された状態でこれを保持し、装置に取り付けられた状態で液体を装置に流出する。このため、液体補給容器には、液体の出入りと保持を行なうための注入口や流出口が必要になる。下記特許文献1に開示された液体補給容器は、こうした液体が出入する部材の内部にバネを用いた弁を設けて容器を密閉できるようにし、液体の不慮の噴出などが起きないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-18712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした液体補給容器では、容器内に液体を注入するとき、内部の気体を外部に排出する必要がある。内部の気体を効率よく排出できないと、液体の注入に手間取ることが考えられるが、特許文献1を含め、こうした内部の気体の排出を妨げる要因に対する効果的な対策については十分な検討がなされていなかった。また、新たな液体を注入する際には、容器内に未使用の液体や洗浄液などが残留しないよう予め排出作業が行なわれるが、容器内に液体が残りにくい構造とすることも十分に検討されているとは言えなかった。このように、液体補給容器内での気体や液体等の流体の挙動について、十分な検討がなされていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
本開示の実施形態の1つは、液体補給容器としての形態である。この液体補給容器は、液体を収容可能な収容部と、前記収容部の開口端に取り付けられ、前記収容部に対する前記液体の出入部を形成する筒形状部を備えた液体出入部形成部材と、前記出入部に配置され、前記収容部と外部との連通を開閉する開閉弁と、前記筒形状部の内側に取り付けられ、前記開閉弁の少なくとも弁体を、移動可能に収容するホルダー部材と、前記液体出入部形成部材に備えられ、前記弁体と共に前記開閉弁を構成するシール部材であって、前記弁体が離座することで、前記外部と連通する開口部を開口状態とし、前記弁体が着座することで前記開口部を閉止状態するシール部材と、を備える。ここで、前記液体出入部形成部材の前記筒形状部は、前記ホルダー部材との間に、前記ホルダー部材を周方向に取り囲む空隙部を形成しており、前記空隙部には、前記空隙部を前記周方向において少なくとも2つの部分に区画するリブを備える。
【0007】
本開示の実施形態の他の1つは、液体補給容器としての形態である。この液体補給容器は、液体を収容可能な収容部と、前記収容部の開口端に取り付けられ、前記液体の出入部を形成する筒形状部を備えた液体出入部形成部材と、前記出入部に配置され、前記収容部と外部との連通を開閉する開閉弁と、前記筒形状部の内側に取り付けられ、前記開閉弁の少なくとも弁体を、移動可能に収容するホルダー部材と、前記液体出入部形成部材に備えられ、前記弁体と共に前記開閉弁を構成するシール部材であって、前記弁体が離座することで、前記外部と連通する開口部を開口状態とし、前記弁体が着座することで前記開口部を閉止状態するシール部材と、を備える。ここで、前記液体出入部形成部材の前記筒形状部は、前記ホルダー部材との間に、前記ホルダー部材を周方向に取り囲む空隙部を形成しており、前記空隙部には、前記空隙部を前記弁体の移動方向において少なくとも2つの部分に区画する鍔部を設ける。
【0008】
本開示の実施形態の更に他の1つは、液体補給容器としての形態である。この液体補給容器は、液体を収容可能な収容部と、前記収容部の開口端に取り付けられ、前記液体の出入部を形成する筒形状部を備えた液体出入部形成部材と、前記出入部に配置され、前記収容部と外部との連通を開閉する開閉弁と、前記筒形状部の内側に取り付けられ、前記開閉弁の少なくとも弁体を、移動可能に収容するホルダー部材と、前記液体出入部形成部材に備えられ、前記弁体と共に前記開閉弁を構成するシール部材であって、前記弁体が離座することで、前記外部と連通する開口部を開口状態とし、前記弁体が着座することで前記開口部を閉止状態とするシール部材と、を備える。ここで、前記液体出入部形成部材は、前記収容部との接合部と反対側に、前記シール部材を収容する凹部を形成する段部を備え、前記ホルダー部材は、前記凹部の内周壁に固定されて、前記凹部に収容された前記シール部材を押さえ込むシール部材押さえ部を備え、前記弁体の移動方向における前記開口部側を先端側、前記収容部側を後端側としたとき、前記シール部材押さえ部の後端は、前記シール部材の後端より前記後端側に位置し、前記段部の後端は、前記シール部材押さえ部の後端より前記後端側に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】液体補給容器の使用方法を示す説明図。
図2】第1実施形態の液体補給容器の上面図。
図3図2のIII-III矢視断面図。
図4】開閉弁の形態を示す説明図。
図5】開閉弁の動作状態を示す説明図。
図6A】開閉弁を取り付けた液体出入部形成部材に液体注入流路部材を挿入した状態を示す断面図。
図6B】液体の注入の様子を模式的に示す説明図。
図7】第2実施形態における開閉弁を取り付けた液体出入部形成部材の形態を示す断面図。
図8】第2実施形態で用いられる開閉弁の形態を示す斜視図。
図9】液体補給容器内の液体を取り出す様子を示す説明図。
図10】シール部材押さえ部周辺の寸法関係を示す説明図。
図11】液体補給容器の製造方法を示す工程図。
図12】使用済みの液体補給容器を用いた液体補給容器の再製造方法を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.第1実施形態:
(A1)液体補給容器の使用方法:
図1に本実施形態の液体補給容器20の使用方法を示す。この液体補給容器20はキャップ15を取り付けた状態では、補給用コンテナ60と呼ぶ。補給用コンテナ60は、内部に液体、ここではプリンター10に用いられるインクを収容しており、キャップ15が取り付けられた状態で、キャップ15が上方となる姿勢(以下、正立姿勢という)で、液体補給容器20内にインクを保存している。使用する際には、キャップ15を取り外し、液体補給容器20の上下を逆にした倒立姿勢で、プリンター10に用意された装着部11に装着される。この倒立姿勢において、液体補給容器20内のインクがプリンター10に供給される。使用後は、液体補給容器20はプリンター10から取り外される。なお、補給用コンテナ60としては、キャップ15はなくてもよい。また、液体補給容器20内に収容する液体はインクに限る必要はなく、薬剤や水、飲料などであってもよい。液体補給容器20が使用される機器としては、プリンターに限定されず、薬剤の定量吐出装置や、飲料のディスペンサーなど、種々の装置に用いることができる。
【0011】
(A2)液体補給容器の構造:
図2は、液体補給容器20の上面図であり、図3図2におけるIII-III矢視断面図である。以下の説明では、正立姿勢におけるキャップ15の取り付け側を上、または上方向と呼び、正立姿勢におけるキャップ15側とは反対側を下、または下方向と呼ぶ。特に上下の向きを問題にしない場合には上下方向と呼ぶことがある。この方向は、後述する開閉弁40の弁体45が開閉のために移動する移動方向に一致している。また、液体補給容器20はほぼ円筒形状をしており、その円筒の中心軸AXに沿った方向での上下関係を問題にする場合には、これを高さ方向と呼ぶことがある。更に、中心軸AXを通り、中心軸AXに直交する方向を中心軸との向きを問わず径方向と呼ぶ。なお、ここでは、液体補給容器20の形状を円筒形状としたが、形状は円筒に限らない。
【0012】
図示するように、液体補給容器20は、インクを収容する収容部22と、その開口端に取り付けられた液体出入部形成部材30と、液体出入部形成部材30の内部に設けられた開閉弁40とを備える。液体出入部形成部材30は、内部に開閉弁40を取り付けた状態で、収容部22の開口端に取付部38が固着されて、収容部22と一体化される。収容部22は、本実施形態では金属製としたが、全部または一部を合成樹脂製またはガラス製としてもよい。合成樹脂またはガラスを用いた場合には、その全部または一部を透明または半透明として、収容している液体の充填量や色彩、液体の状態などを確認できるようにしてもよい。こうすれば、収容しているインク色を認識でき、多色の印刷を行なうプリンター10に各色のインクを収容した液体補給容器20を装着するとき、液体補給容器20の誤装着を生じにくくできる。
【0013】
液体出入部形成部材30は、筒形状、ここでは円筒形状の部材であり、収容部22の開口端に取り付けられる部位に段付部37を備える。液体出入部形成部材30は、収容部22の開口端に取り付けられる取付部38の径が最も大きく、段付部37により、内径が小さな出入部35が形成されている。液体出入部形成部材30の取付部38と反対側には、内径が出入部35よりも小さな開口部31が形成されている。出入部35と開口部31とは、段部34を介して接続されている。出入部35は、図示するように、段部34から段付部37までの範囲であって、開閉弁40が配置されて、液体の注入と必要な場合の排出とを行なうための空間を提供する。出入部35のこの空間は、液体出入部形成部材30の筒形状の部位である筒形状部33により形成される。液体出入部形成部材30の筒形状部33と出入部35に配置された開閉弁40との間に空隙部36が形成される。空隙部36の形態については、後で詳しく説明する。液体出入部形成部材30の上部外周には、キャップ15を嵌め込む嵌合部39が形成されている。
【0014】
開口部31は、収容部22に収容されたインクを図1に示した倒立姿勢において流出させたり、正立姿勢においてインクを液体補給容器20に注入するために用いられる。開口部31は、高さ方向の途中に段差が設けられており、径方向の寸法が異なる2つの部分に分かれており、上半分の部位の径より下半分の部位の径が大きい。この開口部31の上半分を上部室と呼び、下半分を下部室と呼ぶ。上部室は、後述する流路部材の挿入用の空間として用意されている。下部室には、シール部材49が収容されている。シール部材49は、後述する開閉弁40の一部であり、開閉弁40において弁座として機能する。シール部材49は、柔軟性のある材料により、中心部に開口を備えた形状に成形されており、弁体45が当接すると密着して、開閉弁40を閉止状態とし、弁体45が離れると、内部の開口を介して外部と連通する開口状態となる。
【0015】
このシール部材49は、ホルダー部材41に設けられたシール部材押さえ部48により押さえられているが、その押さえつけの構造などは、以下に説明する開閉弁40の構造と機能と共に説明する。
【0016】
(A3)開閉弁の構成と機能:
液体出入部形成部材30の内部に備えられている開閉弁40は、ホルダー部材41に移動可能に取り付けられた弁体45を中心に、ホルダー部材41の下方向端部に設けられたバネ座42と、このバネ座42と弁体45との間に介装されたバネ43と、上述したシール部材49とからなる。バネ43は、自然長から圧縮された状態では弁体45に対して上方向の力を付与する。バネなどの弾性体により、これに接する物体に力を働かせることを、本明細書では「付勢」または「付勢する」と言う。弁体45は、バネ43によりシール部材49方向に付勢され、弁体45の移動を妨げるものがなければ、上昇してシール部材49に当接した状態となる。弁体45には略三角形状の頭頂部45aが設けられている。この頭頂部45aは、シール部材49の内径より小さな外形形状とされている。弁体45の頭頂部45aの外側の平らな部分が、シール部材49の下端に当接すると、頭頂部45aはシール部材49の内側に入り込む。弁体45の平らな部分がシール部材49の下端に当接した状態となることを、開閉弁40の動作に即して着座と呼ぶ。このとき、シール部材49と弁体45とにより、シール部材49の開口は閉塞された状態となり、外部との連通は断たれる。弁体45が下方に移動して、シール部材49に当接する着座の状態から離れることを、開閉弁40の動作に即して離座と呼ぶ。
【0017】
弁体45を内部に収容したホルダー部材41は、バネ座42の他、ホルダーリブ46,固定用フレーム47、シール部材押さえ部48、シール部材49などを備える。これらの構成を、図4を参照しつつ説明する。図4の上欄は、開閉弁40の斜視図である。この斜視図は、図3における矢視IVA方向から開閉弁40単体を見た様子を示す。また図4中欄は、液体出入部形成部材30を収容部22側から、つまり図3における矢視IVB方向から開閉弁40を組み込んだ液体出入部形成部材30を見た様子を示す。更に、図4下欄は、開閉弁40を真上から見た上面図である。
【0018】
各図に示したように、開閉弁40の最上部には、シール部材49が配置され、その下部にはシール部材押さえ部48が配置されている。このシール部材押さえ部48は、4本の支柱44により支えられ、支柱44の下端はバネ座42に結合されている。また支柱44からは径方向外側に向けで、ホルダーリブ46が張り出している。隣り合う2つのホルダーリブ46の下端同士は、固定用フレーム47により結合されている。この結果、2つの固定用フレーム47が、図4下欄に示したように、中心軸AXの周りに180度、つまり中心軸を挟んで対向する位置に配設されることになる。
【0019】
液体補給容器20を組み立てる際には、収容部22への取付の前に、液体出入部形成部材30の内側に、下方の開口から開閉弁40を挿入し、シール部材49を開口部31の下部室に配置する。この状態で、開閉弁40を上方に押し付け、固定用フレーム47を取付部38の段付部37の内側に溶着する。固定用フレーム47を段付部37の内側に溶着するとき、中心軸周りの位置は、4つのホルダーリブ46が、液体出入部形成部材30の内側に設けられた4つの上部リブ32と対向する位置である。開閉弁40側のホルダーリブ46と液体出入部形成部材30内側の上部リブ32は、僅かなクリアランスを介して向き合い、液体出入部形成部材30の内部の空隙部36を4つの部分に区画している。
【0020】
開閉弁40の固定用フレーム47を取付部38の段付部37の内側に溶着すると、開閉弁40上部のシール部材押さえ部48が、シール部材49を押し付け、これを開口部31の下部室に固定する。このとき、開閉弁40の弁体45は、バネ43に付勢されて、シール部材49に着座し、通路を閉鎖して外部との連通を断つ。他方、開口部31を介して後述する液体注入流路部材70が挿入されると、液体注入流路部材70により弁体45は下方に押し下げられ、シール部材49から離座するので、収容部22は外部と連通する。この状態を、図5に示した。図の左欄は、弁体45がバネ43の付勢力で上方に移動し、着座した状態を示す。図の右欄は、弁体45がバネ43の付勢力に抗して下方に移動し、離座した状態を示す。図5の開閉弁40は、図4下欄において、矢視V方向から見たものとして描かれている。
【0021】
(A4)液体の注入:
液体補給容器20の収容部22にインクを注入する手法について説明する。液体補給容器20を正立状態とした場合、開閉弁40の弁体45はシール部材49に着座し、開閉弁40は閉止状態なので、そのままではインクなどの液体を液体補給容器20内部に注入できない。インクの注入は、正立状態の液体補給容器20に対して、上方から液体注入流路部材70を開口部31に挿入することにより開始される。インク注入の様子を、図6Aに示した。図示するように、液体注入流路部材70を開口部31から下方に向けて挿入していくと、液体注入流路部材70の先端は、やがて開閉弁40の弁体45の頭頂部45aに当たる。この結果、液体注入流路部材70の下降に伴い、弁体45は押し下げられ、弁体45はシール部材49から離座し、開閉弁40は、開口状態となる。
【0022】
液体注入流路部材70は、図示するように、液体流路71と気体流路72とを備える。本実施形態では、液体流路71は、図示しないインク圧送装置に接続されており、所定の圧力でインクの圧送をうける。また気体流路72の開口部31に差し込まれた端部と反対側は、所定の負圧源に接続されている。なお負圧源への接続に代えて、単に大気開放としてもよい。液体注入流路部材70は、1本の管路部材の内側を管路に沿って区分した一方を液体流路71とし、他方を気体流路72としている。もとより、2本の細管を固着して一本の液体注入流路部材70としてもよい。あるいは液体流路71と気体流路72とをそれぞれ独立に構成してもよい。この場合、液体流路71の挿入により、弁体45が押し下げられるようにすればよい。液体注入流路部材70の2つの流路である液体流路71と気体流路72とは、それらの流路の終端である下端75,76の上下方向の高さが異なる。気体流路72の下端76の位置は、液体流路71の下端75の位置より高い。また、液体流路71と気体流路72とは、流路方向に沿って並置された形状なので、下端75,76からの液体や気体の出入方向は、ほぼ180度反対側となっている。
【0023】
これらの関係を、図6Bに模式的に示した。図の上段に示したように、平面視すると、液体注入流路部材70は、開閉弁40の中心に存在するから、ホルダー部材41に囲まれている。したがって、ホルダー部材41を取り囲む空隙部36は、上部リブ32およびホルダーリブ46により、中心軸の周りに4つの部分に区画されている。また、図の下段は、側面視により液体注入流路部材70と上部リブ32およびホルダーリブ46との位置関係を示しており、更に右側に、弁体45との位置関係が分かるように、着座位置および離座位置の弁体45の高さ方向の位置を示した。液体注入流路部材70の挿入によって、弁体45はシール部材49に接している着座位置から離座位置まで下降する。このシール部材49の下端から離座位置における弁体45までの範囲LLに、上部リブ32とホルダーリブ46の少なくとも一部が存在する。このため、液体流路71の下端75は、上部リブ32とホルダーリブ46とによって仕切られた空隙部36の一つに位置することになる。注入のために液体流路71を通って流下し、下端75から空隙部36に吐出されるインクは、空隙部36の区画された1つである第1部分36aから収容部22に向かう。他方、注入されるインクと入れ替わって、液体補給容器20の外部に出ていくべき気体である空気は、区画された空隙部36の第1部分36aとは異なる第2部分36bを主に通って、気体流路72の下端76から気体流路72を通って吸引される。
【0024】
このように、液体注入流路部材70を用いたインクの注入の際、液体流路71の下端75のように狭い口から広い空間に、加圧されたインクが注入されると、インクが微小な液滴となることが生じ得る。本実施形態では、こうした微小な液滴が、気体流路72の下端76から気体流路72内に吸い込まれ、瞬間的に気体流路72を閉塞し、液体流路71からのインクの注入に対して抵抗を生じさせるといった事態の発生を、以下の理由から抑制または解消している。
[1]液体流路71の下端75より気体流路72の下端76が高い位置にあることにより、下端75から吐出されたインクが微小な液滴となっても、液体流路71の下端75より高い位置にある気体流路72の下端76までは到達し難い。
[2]下端75と下端76とは、ほぼ正反対の方向を向いており、下端75から吐出されたインク滴が下端76に到達し難い。
[3]ホルダー部材41の周りの空隙部36は、中心軸に対する周方向に、上部リブ32とホルダーリブ46とにより4つの部分に区画されているから、液滴が空隙部を通って、気体流路72の下端76まで回り込むことは生じ難い。
[4]しかも、中心軸AXの周りの空隙部36は4つの部分に区画されているから、液体流路71の下端75から空隙部36を周回して気体流路72の下端76までには、2組の上部リブ32およびホルダーリブ46が存在することになり、これらがインクの回り込みに対して大きな障害となる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態の液体補給容器20は、液体注入流路部材70を用いてインクを注入する際、液体補給容器20内の気体を排出する気体流路72がインクの液滴で瞬間的に詰まって液体流路71からのインクの注入に対して障害となるといった事態を生じ難くする。このため、液体補給容器20へのインクの注入を短時間に完了することが可能となる。しかも、液体流路71からの液体の吐出方向と気体流路72への気体の流入方向とを、ほぼ180度異ならせているので、液体注入流路部材70を液体補給容器20の中心軸周りの任意の角度で挿入できる。いずれの角度で挿入しても、液体流路71と気体流路72の下端75,76の間には、空隙部36を区画する上部リブ32とホルダーリブ46とが必ず存在することになり、インク注入時の扱いが簡略なものとなる。
【0026】
こうしてインクの注入が終わったら、液体注入流路部材70を液体補給容器20から抜き取る。これにより、弁体45がバネ43の付勢力により上昇し、シール部材49に着座して開閉弁40を閉止状態とする。このため、液体補給容器20が倒れても、内部のインクが漏出することはない。キャップ15を外した状態で、液体補給容器20を、図1に示したように、プリンター10の装着部11に倒立姿勢で装着すると、装着部11の内部には図示しないピンが立設されており、これが弁体45をバネ座42側に移動させて開閉弁40を開口状態とする。この結果、収容部22に収容されていたインクが、出入部35の開閉弁40を通って、開口部31から流出し、プリンター10内のインクタンク等に貯留される。
【0027】
B.第2実施形態:
第2実施形態の液体補給容器20Bは、第1実施形態とほぼ同様の構成を備えるが、開閉弁周りの空隙部36を区画する構成が異なる。第2実施例の液体補給容器20Bの要部を、図7および図8に示した。図7は、出入部35を中心にして、液体注入流路部材70が挿入された状態を示す説明図であり、図8は、開閉弁40Bを拡大して示す斜視図である。図示するように、第2実施例では、開閉弁40Bのホルダー部材41に、空隙部36を上下方向に区画する鍔部86を備える。本実施形態では、第1実施形態で用いた上部リブ32は設けられていないが、ホルダーリブ46に対応する位置に上部リブ32を設けてもよい。また、鍔部86をこの上部リブ32から、あるいは筒形状部33の内壁から直接、開閉弁40方向に向けて形成してもよい。
【0028】
この実施形態では、開閉弁40B周りの空隙部36は、鍔部86により上下2つの部分に区画されている。また、弁体45の移動方向における鍔部86の位置は、離座した状態の弁体45とシール部材49との間となっている。更に、液体注入流路部材70を挿入して、弁体45を最もバネ座42側まで下降させた場合、液体流路71の下端75は、鍔部86により区画された鍔部86より下の部分に、他方、気体流路72の下端76は、鍔部86により区画された鍔部86より上の部分に、それぞれ位置する。従って、液体流路71の下端75から吐出されたインクが微小な液滴となった場合でも、液滴が、鍔部86により区画された一方の部分にから、他方の部分に侵入することは困難であり、液滴が気体流路72を瞬間的に詰まらせたりすることが抑制される。従って、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0029】
C.第3実施形態:
次に第3実施形態としての液体補給容器20Cの構造について説明する。この液体補給容器20Cは、図9に出入部35を中心とする要部を示すように、液体補給容器20C内の液体、例えばインクが、完全には排出できず、残留する場合がある。こうした残留する液体には、以下のようなものが考えられる。
【0030】
(A)収容部22に収容しているインクなどの液体は、容器本体をプリンター10の装着部11に装着するなど、正しい使用状態で用いたにもかかわらず、倒立姿勢において、窪みとなる形状が内部にあり、そこに溜まった液体が排出されないケース。これは本来使用されるべき液体が残留してしまう場合である。
(B)容器本体内に未使用のインクが残留したまま、例えば使用期限が経過し、こうした容器本体を回収したケース。この場合、再利用するためには未使用のインクなどを排出する必要がある。
(C)回収した液体補給容器20の再利用に備えて容器本体の内部に洗浄液を注入して内部を洗浄するケース。この場合は、線上後、洗浄液を排出する必要がある。
【0031】
こうした場合に、図示するように、液体補給容器20Cを倒立姿勢にし、下から、倒立姿勢とされたために下方に位置する開口部31から開弁用排出針90を挿入する。開弁用排出針90には、その下部にリフト装置91が設けられており、指示に応じて、開弁用排出針90を予め定めた高さだけリフトアップする。開口部31およびシール部材49の中空部を通過してリフトアップされた開弁用排出針90は、弁体45の頭頂部45aに当接し、これを押し上げ、開閉弁40を開口状態とする。この結果、液体補給容器20C内部に残っていたインクや洗浄液などの液体は、開口部31と開弁用排出針90の間から排出される。
【0032】
第3実施形態の液体補給容器20Cは、この出入部35における部材の高さが次のように設計され製造されている。各部の高さを、図10に示した。図10は、シール部材49とシール部材押さえ部48と段部34との、中心軸AXに沿った方向の高さの関係を示す要部拡大図である。図示するように、弁体45の移動方向における開口部31側を先端側、収容部22側を後端側としたとき、シール部材押さえ部48の後端は、シール部材49の後端より後端側に位置し、段部34の後端は、シール部材押さえ部48の後端より後端側に位置している。このため、シール部材49の後端の高さ位置をAとしたとき、シール部材押さえ部48の後端の位置Bは、位置Aより後端側にある。また、液体出入部形成部材30の内側の段部34の後端の位置Cは、位置Bより更に後端側にある。この結果、シール部材49の後端の位置Aから段部34の後端の位置Cまでの距離ΔACは、シール部材49の後端の位置Aから押さえ部48後端の位置Bまでの距離ΔABより大きい。
【0033】
このように設計および製造された液体補給容器20Cでは、シール部材49から径方向外側に位置する部材ほど、倒立姿勢において高い位置に存在することになる。したがって、したがって、液体補給容器20内に液体が残っていた場合、高い位置の液体は低い位置に流れ込み、残留しないか、残留量が極めて少ない状態となることが期待される。なお、残留する液体の量を更に低減するために、シール部材49の後端表面、シール部材押さえ部48の後端表面、段部34の後端表面を、それぞれ中心軸AX方向に向けて傾斜させてもよい。あるいは、それらの表面に液体が残留しにくいように、表面に撥水性を持たせたり、超親水性を持たせたりすることも好ましい。
【0034】
第3実施形態の液体補給容器20Cは、倒立姿勢で、内部の液体を排出しやすく、内部にインクや洗浄液などの液体が残留しにくいという効果が得られる。
【0035】
D.第4実施形態-容器の製造方法:
内部に液体を充填した液体補給容器の製造方法について、図11を用いて説明する。内部に液体を収容した液体補給容器を製造するには、まず、第1実施形態または第2実施形態の液体補給容器20または20Bを用意する(工程T1)。ここでは、第1実施形態の液体補給容器20を用いるものとして以下説明する。液体補給容器20は空のもの、つまり新しいものを用意する。液体補給容器20の容易は、マニュアルで行なってよいし、予め収納装置に詰められた液体補給容器20を部品搬送装置などにより順次取り出して、所定の位置に配置するようにしてもよい。
【0036】
次に、液体補給容器20のシール部材49から、出入部35に液体注入流路部材70を挿入する(工程T12)。こうした液体注入流路部材70の挿入なども含めて、ロボットなどにより各工程を実現できる。この場合、ロボットの動作プログラムを作成し、これをメモリー等に記憶しておき、CPUにより順次プログラムを実行して、ロボットの作動腕などを駆動し、各種工程を実現すればよい。以下の各工程も同様である。
【0037】
液体注入流路部材70を出入部35に挿入することにより、図6を用いて既に説明したように、弁体45が押し下げられてシール部材49から離れ、開閉弁40が開口状態となる。そこで、この状態で、予め定めた量の液体を注入する(工程T13)。もとより、液体補給容器20の重量をモニタして、予め定めた重量となるまで液体の注入を継続するようにしてもよい。液体の注入が完了したら、液体注入流路部材70を引き抜いて取り外す(工程T14)。以上で、液体補給容器20の製造を完了する。
【0038】
以上説明した液体補給容器20の製造方法によれば、液体注入流路部材70は、液体が流入する液体流路71と収容部22内の気体を排出する気体流路72とを有し、出入部35を上方に向けた状態で、液体注入流路部材70を液体補給容器20の内部に挿入して弁体45をシール部材49から離座させた液体注入姿勢において、液体注入流路部材70の気体流路72の下端76は液体流路71の下端75より上方に位置する。また、液体注入姿勢において、液体注入流路部材70の気体流路72の下端76は、上部リブ32とホルダーリブ46とにより区画された空隙部36の一方の部分に位置する。他方、液体流路71の下端75は区画された他方の部分に位置する。従って、上述した液体を注入する工程T13において、液体注入流路部材70の液体流路71を介した液体の注入に伴い、下端75から吐出されるインクの液滴が、液体注入流路部材70の気体流路72を瞬間的にせよ閉塞するといった虞が抑制され、気体流路72を介した気体の排出が阻害され難い。この結果、液体流路71を介したインクの注入工程T13を短時間に完了でき、液体補給容器20の製造を短時間に完了でき、また気体流路72の閉塞に対応する必要がないので、製造を簡略化できる。なお、上記の作用効果は、第2実施形態の液体補給容器20Bを用いた場合も同様である。
【0039】
E.第5実施形態-使用済み液体補給容器を用いた製造方法:
次に、使用済みの液体補給容器を用いた液体補給容器の再製造方法について、図12を用いて説明する。使用済みの液体補給容器を再製造するには、まず、第3実施形態の液体補給容器20Cを用意する(工程T1A)。液体補給容器20Cは使用済みのもの、つまり内部にインクが残留している可能性のあるものを用意する。次に、液体補給容器20Cを倒立姿勢に保持する(工程T1B)。
【0040】
倒立姿勢とした液体補給容器20Cに、シール部材49から出入部35に、液体排出部材としての開弁用排出針90を挿入する(工程T2)。これにより、図9を用いて既に説明したように、弁体45が押し上げられてシール部材49から離れ、開閉弁40が開口状態となる。そこで、この状態で、液体補給容器20C内部の液体、未使用のインクや洗浄した場合の洗浄液を排出する(工程T3)。所定時間が経過して液体の排出が完了したと判断したら、開弁用排出針90を引き抜いて取り外す(工程T4)。以上で、液体補給容器20C内に残留している液体の排出が完了する。その後、液体補給容器20を正立姿勢に戻す(工程T5)。
【0041】
その後の工程は、第4実施形態と同様であり、液体補給容器20Cのシール部材49から、出入部35に液体注入流路部材70を挿入し(工程T12)、開閉弁40を開口状態とした上で、予め定めた量の液体を注入する(工程T13)。その後、液体の注入が完了したら、液体注入流路部材70を引き抜いて取り外す(工程T14)。以上で、使用済み液体補給容器20Cの再製造を完了する。
【0042】
以上説明した使用済み液体補給容器20Cの再製造方法によれば、倒立姿勢において、残留している液体を排出する工程(工程T4)では、弁体45の移動方向における開口部31側を先端側、収容部22側を後端側としたとき、シール部材押さえ部の後48端は、シール部材49の後端より後端側に位置している。しかも、段部34の後端は、シール部材押さえ部48の後端より後端側に位置している。このため、出入部35において、径方向外方に存在する部品の面の方が、径方向内側に存在する部品の面より高くなっており、残留している液体は開口部31に向かって流れやすく、自然に排出される。このため、使用済みの液体補給容器20Cに残留している液体の排出に手間を要することがなく、再製造を短時間に完了できる。
【0043】
F.その他の実施形態:
(1)本開示の他の実施形態の1つは、液体補給容器としての形態である。この液体補給容器は、液体を収容可能な収容部と、前記収容部の開口端に取り付けられ、前記収容部に対する前記液体の出入部を形成する筒形状部を備えた液体出入部形成部材と、前記出入部に配置され、前記収容部と外部との連通を開閉する開閉弁と、前記筒形状部の内側に取り付けられ、前記開閉弁の少なくとも弁体を、移動可能に収容するホルダー部材と、前記液体出入部形成部材に備えられ、前記弁体と共に前記開閉弁を構成するシール部材であって、前記弁体が離座することで、前記外部と連通する開口部を開口状態とし、前記弁体が着座することで前記開口部を閉止状態するシール部材と、を備える。ここで、前記液体出入部形成部材の前記筒形状部は、前記ホルダー部材との間に、前記ホルダー部材を周方向に取り囲む空隙部を形成しており、前記空隙部には、前記空隙部を前記周方向において少なくとも2つの部分に区画するリブが設けられる。こうすれば、空隙部を少なくとも2つの部分に区画できるので、開閉弁を開口状態として液体を注入する際、空隙部における液体が不慮の影響を与える範囲を、リブにより区画された部分に限定することができる。例えは、液体の注入と同時に収容部内の気体を排出して、液体補給容器内の圧力のバランスを取っているような場合、注入された液体から生じ得る液滴が気体の排出に影響、例えば気体を排出する気体流路を詰まらせて、圧力のバランスを崩して液体の注入を遅らせるといった弊害を抑制できる。
【0044】
(2)上記構成において、前記リブは、前記ホルダー部材および前記筒形状部の少なくとも一方から延出されて、前記空隙部を前記少なくとも2つの部分に区画する位置に形成されるものとしてよい。こうすれば、空隙部の区画を容易に実現できる。リブは同一の箇所に、ホルダー部材側からと筒形状部側からとそれぞれ延長してもよいが、例えば一つおきに、ホルダー部材側からと筒形状部側から延出して、空隙部を区画するようにしてもよい。もとより、リブを専用の部材として、ホルダー部材や筒形状部とは独立に設けてもよい。リブの形状は、全て同じでもよいが、異なっていてもよい。また、材質なども特に問わない。リブは、空隙部を少なくとも2つの部分に区画できればよく、リブ自体の形状や形成の方向なども任意である。例えば、リブは平面で構成されてもよく、曲面で構成されてもよい。また弁体の方向に平行に形成されてもよく、所定の角度を持って形成されてもよい。
【0045】
(3)本開示の他の実施形態の他の1つは、液体補給容器としての形態である。この液体補給容器は、液体を収容可能な収容部と、前記収容部の開口端に取り付けられ、前記液体の出入部を形成する筒形状部を備えた液体出入部形成部材と、前記出入部に配置され、前記収容部と外部との連通を開閉する開閉弁と、前記筒形状部の内側に取り付けられ、前記開閉弁の少なくとも弁体を、移動可能に収容するホルダー部材と、前記液体出入部形成部材に備えられ、前記弁体と共に前記開閉弁を構成するシール部材であって、前記弁体が離座することで、前記外部と連通する開口部を開口状態とし、前記弁体が着座することで前記開口部を閉止状態するシール部材と、を備える。ここで、前記液体出入部形成部材の前記筒形状部は、前記ホルダー部材との間に、前記ホルダー部材を周方向に取り囲む空隙部を形成しており、前記空隙部には、前記空隙部を前記弁体の移動方向において少なくとも2つの部分に区画する鍔部を設ける。こうすれば、上記構成(1)と同様の作用効果を奏する。
【0046】
上記(1)から(3)の構成において、液体出入部形成部材の筒形状部は、空隙部を形成できる筒状であればよく、円筒形状であってもよく、角筒形状など、他の形状であってもよい。ホルダー部材は、少なくとも弁体を移動可能に収容できればよく、弁体をシール部材方向に付勢するバネなどの弾性体や、バネ受け等を併せて収容してもよい。弁体は、デフォルト状態でシール部材方向に付勢力を受ければよく、弾性体に代えて磁力で付勢させるようにしてもよい。リブまたは鍔部は、空隙部を少なくとも2つの部分に区画できればよく、2つ以上であれば何個設けてもよい。リブまたは鍔部による空隙部の区画は、空間を完全に仕切るものであってもよいが、区画された部分を形成すれば、空隙部に存在する液体が不慮の影響を与える範囲は狭くできるので、ある程度の隙間や流通路が介在する状態での区画であってもよい。リブと鍔部は、いずれか一方のみでもよいし、両方を備えるものとしてもよい。
【0047】
(4)上記の(3)の構成において、前記鍔部は、前記ホルダー部材および前記筒形状部の少なくとも一方から延出されて、前記空隙部を前記少なくとも2つの部分に区画する位置に形成されるものとしてよい。こうすれば、空隙部の区画を容易に実現できる。鍔部は同一の箇所に、ホルダー部材を囲むように設けてもよいが、例えば半周ずつ、異なる高さに設けて、空隙部を区画するようにしてもよい。もとより、鍔部を専用の部材として、ホルダー部材や筒形状部とは独立に設けてもよい。複数の鍔部を設ける場合、鍔部の形状は、全て同じでもよいが、異なっていてもよい。また、材質なども特に問わない。鍔部は、空隙部を少なくとも2つの部分に区画できればよく、鍔部自体の形状や形成の方向なども任意である。例えば、鍔部は平面で構成されてもよく、曲面で構成されてもよい。また弁体の方向に垂直に形成されてもよく、所定の勾配を持って形成されてもよい。
【0048】
(5)上記の(1)から(4)の構成において、前記リブまたは前記鍔部は、前記開閉弁の開弁状態において、前記移動方向における前記シール部材と前記離座した状態の弁体との間に位置するものとしてよい。開閉弁が開口状態となった状態で行なわれる液体の注入は、弁体の移動方向におけるシール部材と離座した状態の弁体との間で行なわれることが想定されるので、この位置にリブまたは鍔部を設けておけば、空隙部に存在する液体が不慮の影響を与える範囲を効率よく限定できる。もとより、この範囲を超えてリブ等を設けてもよいし、空隙部を複数の部分に区画できるのであれば、この範囲とは異なる位置に設けてもよい。
【0049】
(6)本開示の他の実施形態の更に他の1つは、液体補給容器としての形態である。この液体補給容器は、液体を収容可能な収容部と、前記収容部の開口端に取り付けられ、前記液体の出入部を形成する筒形状部を備えた液体出入部形成部材と、前記出入部に配置され、前記収容部と外部との連通を開閉する開閉弁と、前記筒形状部の内側に取り付けられ、前記開閉弁の少なくとも弁体を、移動可能に収容するホルダー部材と、前記液体出入部形成部材に備えられ、前記弁体と共に前記開閉弁を構成するシール部材であって、前記弁体が離座することで、前記外部と連通する開口部を開口状態とし、前記弁体が着座することで前記開口部を閉止状態とするシール部材と、を備える。ここで、前記液体出入部形成部材は、前記収容部との接合部と反対側に、前記シール部材を収容する凹部を形成する段部を備え、前記ホルダー部材は、前記凹部の内周壁に固定されて、前記凹部に収容された前記シール部材を押さえ込むシール部材押さえ部を備え、前記弁体の移動方向における前記開口部側を先端側、前記収容部側を後端側としたとき、前記シール部材押さえ部の後端は、前記シール部材の後端より前記後端側に位置し、前記段部の後端は、前記シール部材押さえ部の後端より前記後端側に位置する。こうすれば、収容部内の液体は外部に排出されやすくなり、液体が液体補給容器内に残留しにくくできる。ここで各部の少なくとも一つの後端側は、中心に向けて低くなるように傾斜を付けてもよい。また、各部の少なくとも一つの後端側は、その表面を処理して液体が滑りやすくすることも、残留しにくくする上で好適である。
【0050】
(7)本開示の方法にかかる実施形態の1つは、液体補給容器の製造方法としての形態である。この液体補給容器を製造する方法は、上記(1)から(6)の構成を備えた液体補給容器を用意する工程と、前記液体補給容器の前記出入部に液体注入流路部材を挿入する工程と、前記液体注入流路部材の挿入により前記開閉弁の前記弁体が前記シール部材から離座された状態で、前記液体を注入する工程と、を含む。ここで、前記液体注入流路部材は、前記液体が流入する液体流路と前記収容部内の気体を排出する気体流路とを有し、前記出入部を上方に向けた状態で、前記液体注入流路部材を前記液体補給容器の内部に挿入して前記弁体を前記シール部材から離座させた液体注入姿勢において、前記液体注入流路部材の前記気体流路の下端は前記液体流路の下端より上方に位置し、前記液体注入姿勢において、前記液体注入流路部材の前記気体流路の下端は前記区画された第1の部分に位置し、前記液体流路の下端は前記区画され、かつ前記第1の部分とは異なる第2の部分に位置し、前記液体を注入する工程において、前記液体注入流路部材の前記液体流路を介した前記液体の注入に伴い、前記液体注入流路部材の前記気体流路を介して前記収容部から前記気体を排出する。こうすれば、液体補給容器の製造時において注入される液体の不慮の影響が生じにくくできるので、製造に要する手間や時間を低減しやすい。
【0051】
(8)上記の(7)の製造方法において、前記液体注入流路部材は、1本の管路部材の内側を管路に沿って区分した一方を前記液体流路とし、他方を前記気体流路としたものとしてよい。こうすれば、液体注入流路部材の外観形状をシンプルなものにでき、液体注入流路部材を、液体補給容器に挿入しやすくできる。もとより、液体注入流路部材は、二つの管路を接合して形成してもよい。液体流路と気体流路の断面積は同一である必要はなく、注入する液体量とこれに見合った気体の排出量とが満たされる流路断面積とすればよい。液体流路の下端、気体流路の下端は、そのまま流路方向に開口していてもよいが、液体の吐出方向や気体の吸引方向を径方向に近づけるような形状で開口してもよい。開口部を通過できれば、先端を屈曲させていてもよい。また、下端よりも上方に、追加の開口を設けてもよい。
【0052】
(9)本開示の方法にかかる実施形態の他の1つは、使用済みの液体補給容器を用いて液体補給容器を再製造する方法である。この再製造方法は、(1)から(6)に記載の液体補給容器を用意する工程と、前記液体補給容器の前記出入部に液体排出部材を挿入する工程と、前記液体排出部材が挿入された前記液体補給容器を、前記収容部が前記シール部材より高い位置となる液体排出姿勢として、前記液体補給容器内に残留する残留液を排出する工程と、前記液体排出部材を取り外した後、前記液体補給容器を、前記収容部が前記シール部材より低い位置となる液体注入姿勢として、前記液体補給容器の前記出入部に液体注入流路部材を挿入する工程と、前記液体注入流路部材の挿入により前記開閉弁の前記弁体が前記シール部材から離座された状態で、前記液体を注入する工程と、を含む。ここで、前記残留液を排出する工程において、前記液体補給容器の前記段部上に残留した残留液を、前記段部の後端より先端側に位置するシール部材押さえ部の後端側に導き、前記シール部材押さえ部上に残留した残留液を、前記シール部材押さえ部の後端より前記先端側に位置する前記シール部材の後端側に導き、前記開口部から外部に排出させる。こうすれば、使用済みの液体補給容器を再製造する際、液体補給容器内に残留している液体を容易に排出できるので、再製造に要する手間や時間を低減できる。
【0053】
(10)上記各実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよい。ソフトウェアによって実現されていた構成の少なくとも一部は、ディスクリートな回路構成により実現することも可能である。また、本開示の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータープログラム)は、コンピューター読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD-ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピューター内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピューターに固定されている外部記憶装置も含んでいる。すなわち、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、データパケットを一時的ではなく固定可能な任意の記録媒体を含む広い意味を有している。
【0054】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10…プリンター、11…装着部、15…キャップ、20,20B,20C…液体補給容器、22…収容部、30…液体出入部形成部材、31…開口部、32…上部リブ、33…筒形状部、34…段部、35…出入部、36…空隙部、37…段付部、38…取付部、39…嵌合部、40,40B…開閉弁、41…ホルダー部材、42…バネ座、43…バネ、44…支柱、45…弁体、45a…頭頂部、46…ホルダーリブ、47…固定用フレーム、48…シール部材押さえ部、49…シール部材、60…補給用コンテナ、70…液体注入流路部材、71…液体流路、72…気体流路、75,76…下端、86…鍔部、90…開弁用排出針、91…リフト装置
図1
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図6A
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