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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142724
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】防護装置および方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 19/00 20060101AFI20241003BHJP
   E21D 9/00 20060101ALI20241003BHJP
   E21B 7/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E21D19/00
E21D9/00 C
E21B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055020
(22)【出願日】2023-03-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和5年1月17日、大滝トンネル掘削工事
(71)【出願人】
【識別番号】514172563
【氏名又は名称】株式会社新輝
(71)【出願人】
【識別番号】391066157
【氏名又は名称】ドリルマシン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】折居 和昌
(72)【発明者】
【氏名】永井 敏実
(72)【発明者】
【氏名】阪本 貴久
(72)【発明者】
【氏名】小川 健太郎
【テーマコード(参考)】
2D129
2D155
【Fターム(参考)】
2D129AB05
2D129AB13
2D129BA14
2D129CA31
2D129DC33
2D155BA05
2D155LA17
(57)【要約】
【課題】支保工の設置まえでも作業員を防護でき、防護範囲が広く、作業場所を移動するときでも作業員が持って移動する必要がない防護装置を提供する。
【解決手段】トンネル掘削機100が有するブーム1が支受するガイドシェル2の長手方向に沿って取り付けられる第1アーム10と、第2アーム20と、第3アーム30と、上記第1アーム10に対して上記第2アーム20および上記第3アーム30を、扇状に開閉可能にヒンジ連結するヒンジ連結部40と、上記第1アーム10に対して上記第2アーム20および上記第3アーム30が開いた状態で、上記第1アーム10、上記第2アーム20および上記第3アーム30に張り渡される防護ネット90とを備える。第1アーム10に対して第2アーム20と第3アーム30が上記ヒンジ連結部40を介して扇状に開き、そこに防護ネット90が張り渡されて防護エリアが形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削機のブームが支受するガイドシェルの長手方向に沿って取り付けられる第1アームと、
第2アームと、
第3アームと、
上記第1アームに対して上記第2アームおよび上記第3アームを扇状に開閉可能にヒンジ連結するヒンジ連結部と、
上記第1アームに対して上記第2アームおよび上記第3アームが開いた状態で、上記第1アーム、上記第2アームおよび上記第3アームに張り渡される防護ネットとを備えた
ことを特徴とする防護装置。
【請求項2】
上記ヒンジ連結部は、上記第1アームに対して上記第2アームおよび上記第3アームが閉じた状態と、上記第1アームに対して上記第2アームおよび上記第3アームが扇状に開いた状態とで、それぞれ上記第1アームに対する上記第2アームおよび上記第3アームの開閉を一時的にロックするロック機構を備えている
請求項1記載の防護装置。
【請求項3】
上記第1アームに対して上記第2アームおよび上記第3アームが扇状に開いた状態で、上記第2アームが上記第1アームと上記第3アームの間に配置されており、
上記第2アームの長さが、上記第1アームおよび第3アームよりも長く設定され、
上記防護ネットは、上記第1アームに対して上記第2アームおよび上記第3アームが扇状に開いた状態で、上記第1アーム、上記第2アーム、上記第3アームの各先端部と上記ヒンジ連結部の近傍において角部が固定される四角形に形成されている
請求項1または2記載の防護装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の防護装置を使用した防護方法。
【請求項5】
2以上のブームを有するトンネル掘削機を使用し、右側に位置するブームにおいて上記防護装置を左側に開くように取り付け、左側に位置するブームにおいて上記防護装置を右側に開くように取り付けて行う
請求項4記載の防護方法。
【請求項6】
3以上のブームを有するトンネル掘削機を使用し、右側に位置するブームにおいて上記防護装置を左側に開くように取り付け、左側に位置するブームにおいて上記防護装置を右側に開くように取り付けて行い、
上記左右のブームのあいだに位置するブームにおいて、左右の防護装置でそれぞれ開いた第2アームまたは第3アームを支受する
請求項4記載の防護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトンネルの掘削工事で切羽等に生じる肌落ちから作業員を防護する防護装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルの掘削工事では、削岩・ずり出し・支保工設置の各工程が行われる。削岩工程は、切羽といわれる坑道の先端部に孔をあけて爆薬を込め、発破をかけて切羽を破砕して坑道を掘り進める。ずり出し工程は、発破の破砕によって生じた「ずり」をトンネルの外へ運び出す。支保工設置は、新たに生じた切羽において、鋼製の支保工をアーチ状に設置し、岩盤面にコンクリートを吹付けて補強する。
【0003】
このような各工程において、ずり出し、爆薬の装薬、支保工設置、薬液注入作業等、作業員が切羽に接近して行わねばならない作業がとても多い。発破によって新たに生じた切羽では、地山の面から岩石や土砂が崩落する「肌落ち」という現象が生じやすい。肌落ちによって岩石や土砂が崩落すると、それが作業中の作業員に当たる事故につながってしまう。したがって、切羽等における肌落ちから作業員を効果的に防護するための対策が重要である。
【0004】
このような作業員の防護に関する先行技術文献として、本出願人は、下記の特許文献1および2を把握している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-204845号公報
【特許文献2】実用新案登録第3133043号公報
【0006】
特許文献1は、「切羽防護装置」に関するものであり、つぎの記載がある。
[0015]
本実施形態の切羽防護装置1は、掘削直後の切羽Kを覆うように設けられるものであって、図1(a)および(b)に示すように、防護ネット2と、複数の取付部材3,3,…と、張力部材4と、バルーン5とを備えている。
[0016]
本実施形態の防護ネット2は、切羽Kの面積(掘削断面積)よりも大きな面積を有している。防護ネット2の周縁の長さは切羽Kの外周の長さと同等であり、切羽の外周形状に応じた形状に形成されている。なお、防護ネット2の形状は、切羽Kを覆うことが可能であれば限定されない。
[0018]
複数の取付部材3,3,…は、防護ネット2の周縁に設けられている。
本実施形態の取付部材3は、図2(a)および(b)に示すように、鋼製部材からなり、フック状に形成された先端部31と、防護ネット2に固定された基端部32とを備えている。
先端部31は、鋼製支保工6に設けられた治具7に係止される。なお、先端部31を構成するフックには、外れ止め部材が設けられていてもよい。
【0007】
特許文献2は、「防護ネット」に関するものであり、つぎの記載がある。
[0022]
本考案防護ネット1は、長さ2.7m、径20mmの鋼製パイプをその途中の折曲部2,3において折曲した「へ」の字形をなす左右1対の支柱4,5の間に、径20mmの鋼製パイプ製の4本の横架杆6~9を間隔をおいて横架し溶接固定した枠本体10の、上記支柱4,5の先端の開口に伸縮杆11,12を挿嵌した、側面形状を「へ」の字形としたはしご形をなす支持枠13と、この支持枠13の外面に張架された10mm目の高密度ポリエチレン製ネット14とから構成されるものである。
この防護ネット1の全幅aは約0.8m、全高bは約2mで、上記横架杆6~9の間隔cは約0.6mである。上記枠本体10の支柱4,5は、上記折曲部2,3において約30°~45°程度折曲されており、折曲部2,3から下端側の部分(起立脚部)4’,5’(約2.1m)と、これに折曲部2,3を介して連続する先端側の部分(頭部)4”,5”(約60cm)とにより「へ」の字形をなしているものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術は、鋼製支保工6に設けられた治具7に取付部材3の先端部31を係止し、鋼製支保工6に防護ネット2を取付けるものである。したがって、鋼製支保工6が設置されるまでのあいだは、肌落ちから作業員を防護できないという問題がある。
【0009】
特許文献2の防護ネットは、はしご形の支持枠13にネット14を張架するものである。はしご形の支持枠13の間しか防護できず、防護エリアが狭いという問題がある。したがって、作業員は常にはしご形の支持枠13の間で作業しなければならず、作業場所を移動するときは作業員が防護ネットを持って移動しなければならない。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、つぎの目的でなされたものである。
支保工の設置まえでも作業員を防護でき、防護範囲が広く、作業場所を移動するときでも作業員が持って移動する必要がない防護装置および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の防護装置は、上記の目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
トンネル掘削機のブームが支受するガイドシェルの長手方向に沿って取り付けられる第1アームと、
第2アームと、
第3アームと、
上記第1アームに対して上記第2アームおよび上記第3アームを扇状に開閉可能にヒンジ連結するヒンジ連結部と、
上記第1アームに対して上記第2アームおよび上記第3アームが開いた状態で、上記第1アーム、上記第2アームおよび上記第3アームに張り渡される防護ネットとを備えた。
【0012】
請求項2の防護装置は、請求項1記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記ヒンジ連結部は、上記第1アームに対して上記第2アームおよび上記第3アームが閉じた状態と、上記第1アームに対して上記第2アームおよび上記第3アームが扇状に開いた状態とで、それぞれ上記第1アームに対する上記第2アームおよび上記第3アームの開閉を一時的にロックするロック機構を備えている。
【0013】
請求項3の防護装置は、請求項1または2記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記第1アームに対して上記第2アームおよび上記第3アームが扇状に開いた状態で、上記第2アームが上記第1アームと上記第3アームの間に配置されており、
上記第2アームの長さが、上記第1アームおよび第3アームよりも長く設定され、
上記防護ネットは、上記第1アームに対して上記第2アームおよび上記第3アームが扇状に開いた状態で、上記第1アーム、上記第2アーム、上記第3アームの各先端部と上記ヒンジ連結部の近傍において角部が固定される四角形に形成されている。
【0014】
請求項4の防護方法は、上記の目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
請求項1または2記載の防護装置を使用した。
【0015】
請求項5の防護方法は、請求項4記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
2以上のブームを有するトンネル掘削機を使用し、右側に位置するブームにおいて上記防護装置を左側に開くように取り付け、左側に位置するブームにおいて上記防護装置を右側に開くように取り付けて行う。
【0016】
請求項6の防護方法は、請求項4記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
3以上のブームを有するトンネル掘削機を使用し、右側に位置するブームにおいて上記防護装置を左側に開くように取り付け、左側に位置するブームにおいて上記防護装置を右側に開くように取り付けて行い、
上記左右のブームのあいだに位置するブームにおいて、左右の防護装置でそれぞれ開いた第2アームまたは第3アームを支受する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の防護装置は、第1アームと第2アームと第3アームを備えている。上記第1アームは、トンネル掘削機のブームが支受するガイドシェルの長手方向に沿って取り付けられる。上記防護装置はさらに、ヒンジ連結部と防護ネットを備えている。上記ヒンジ連結部は、上記第1アームに対して上記第2アームおよび上記第3アームを扇状に開閉可能にヒンジ連結する。上記防護ネットは、上記第1アームに対して上記第2アームおよび上記第3アームが開いた状態で、上記第1アーム、上記第2アームおよび上記第3アームに張り渡される。
このように、第1アームに対して第2アームと第3アームが上記ヒンジ連結部を介して扇状に開き、そこに防護ネットが張り渡され、防護エリアを形成する。上記第1アームをガイドシェルの長手方向に沿って取り付けることで、トンネル掘削機のブームとガイドシェルを利用して、上記の防護ネットによる防護エリアを切羽の近傍に設けることができる。防護ネットを使用しないときは、上記第1アーム、第2アーム、第3アームを閉じることで上記ブームとガイドシェルは穿孔や装薬に使用することができる。このため、支保工の設置まえでも作業員の防護エリアを切羽の近傍に設けることができる。また、作業場所を移動するときはブームとガイドシェルを移動させれば防護エリアを移動できるので、従来のように作業員が防護ネットを持って移動する必要がない。また、第1アームに対して第2アームと第3アームが扇状に開いたエリアの下を防護できるので、十分に広い防護エリアを設けることができ、安全性を確保できる。
【0018】
請求項2の防護装置は、上記ヒンジ連結部がロック機構を備えている。上記ロック機構は、上記第1アームに対して上記第2アームおよび上記第3アームが閉じた状態と、上記第1アームに対して上記第2アームおよび上記第3アームが扇状に開いた状態とで、それぞれ上記第1アームに対する上記第2アームおよび上記第3アームの開閉を一時的にロックする。
上記第1アームに対して第2アームと第3アームを開いて防護エリアを設けた状態で第2アームと第3アームの回動がロックされる。したがって、防護エリアが不用意に狭くなる等の不都合が生じない。また、上記第1アームに対して第2アームと第3アームが閉じた状態で第2アームと第3アームの回動がロックされる。このため、防護ネットを使用せずにブームとガイドシェルで穿孔や装薬の作業を行っているときに、第2アームや第3アームが不用意に回動して作業に支障をきたすことがない。
【0019】
請求項3の防護装置は、上記第1アームに対して上記第2アームおよび上記第3アームが扇状に開いた状態で、上記第2アームが上記第1アームと上記第3アームの間に配置されている。また、上記第2アームの長さが、上記第1アームおよび第3アームよりも長く設定されている。そして、上記防護ネットは、上記第1アームに対して上記第2アームおよび上記第3アームが扇状に開いた状態で、上記第1アーム、上記第2アーム、上記第3アームの各先端部と上記ヒンジ連結部の近傍において角部が固定される四角形に形成されている。このため、上記第1アーム、第2アームおよび第3アームによって四角形の十分に広い防護エリアを切羽の近傍に設けることができ、安全性を確保できる。
【0020】
請求項4の防護方法は、請求項1または2記載の防護装置を使用している。
したがって、第1アームに対して第2アームと第3アームが上記ヒンジ連結部を介して扇状に開き、そこに防護ネットが張り渡される。上記第1アームをガイドシェルの長手方向に沿って取り付けることで、トンネル掘削機のブームとガイドシェルを利用して、上記の防護ネットによる防護エリアを切羽の近傍に設けることができる。防護ネットを使用しないときは、上記第1アーム、第2アーム、第3アームを閉じることで上記ブームとガイドシェルは穿孔や装薬に使用することができる。このため、支保工の設置まえでも作業員の防護エリアを切羽の近傍に設けることができる。また、作業場所を移動するときはブームとガイドシェルを移動させれば防護エリアを移動できるので、従来のように作業員が防護ネットを持って移動する必要がない。また、第1アームに対して第2アームと第3アームが扇状に開いたエリアの下を防護できるので、十分に広い防護エリアを設けることができ、安全性を確保できる。
【0021】
請求項5の防護方法は、2以上のブームを有するトンネル掘削機を使用する。そして、右側に位置するブームにおいて上記防護装置を左側に開くように取り付け、左側に位置するブームにおいて上記防護装置を右側に開くように取り付けて行う。つまり、左右のブームにおいてそれぞれ防護エリアを形成する。このとき、上記左右のブームの間に左右の防護エリアを並べて形成することができ、十分に広い防護エリアを切羽の近傍に設けることができ、安全性を確保できる。
【0022】
請求項6の防護方法は、3以上のブームを有するトンネル掘削機を使用する。そして、右側に位置するブームにおいて上記防護装置を左側に開くように取り付け、左側に位置するブームにおいて上記防護装置を右側に開くように取り付けて行う。さらに、上記左右のブームのあいだに位置するブームにおいて、左右の防護装置でそれぞれ開いた第2アームまたは第3アームを支受する。左右のブームにおいてそれぞれ扇状に開いた第2アームまたは第3アームを、あいだのブームで支受することにより、形成された防護エリアが安定的に維持され、より高い安全性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の防護装置に使用する掘削機を説明する図である。
図2】本発明の防護装置の一実施形態を示す図であり、(A)は閉じた状態、(B)は開いた状態である。
図3】閉じた状態の第1アーム、第2アーム、第3アームの横断面図である。
図4】上記防護装置におけるヒンジ連結部を説明する図であり、(A1)は閉じた状態の正面図、(A2)は同側面図、(B1)は開いた状態の正面図、(B2)は同側面図である。
図5】上記ヒンジ連結部を構成するパーツを説明する図であり、(A1)は第1パーツの正面図、(A2)は同側面図、(B1)は第2パーツの正面図、(B2)は同側面図、(C1)は第3パーツの正面図、(C2)は同側面図である。
図6】本発明の防護方法の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
【0025】
◆トンネル掘削機
図1は、本発明の防護装置および方法に使用するトンネル掘削機100を説明する図である。
【0026】
このトンネル掘削機100は、車輪101を備えた機体102の前方に、切羽110に向かうブーム1を備えている。上記ブーム1はその先端部において、ガイドシェル2を支受している。上記ガイドシェル2は、前後移動するドリフタ3を備えている。上記ドリフタ3に取り付けられたロッド4により、切羽110に対して装薬や穿孔等の作業を行う。図ではブーム1とガイドシェル2を1つだけ示しているが、トンネル掘削機100は一般に、ブーム1とガイドシェル2を、2以上あるいは3以上備えたものが用いられる。
【0027】
◆防護装置
図2は、本発明の防護装置の一実施形態を示す図であり、(A)は閉じた状態、(B)は開いた状態である。
【0028】
この防護装置は、第1アーム10、第2アーム20、第3アーム30、ヒンジ連結部40、防護ネット90を備えている。
【0029】
〔第1アーム10、第2アーム20、第3アーム30〕
上記第1アーム10は、上述したガイドシェル2の長手方向に沿って取り付けられる。図において符号11は、上記第1アーム10に溶接等で固定された取付部11であり、上記第1アーム10を図示しないボルト等により上記ガイドシェル2に取り付けるためのものである。
【0030】
上記第1アーム10は、その根元部が上記ヒンジ連結部40に固定されている。上記第2アーム20および第3アーム30も同様に、それぞれの根元部が上記ヒンジ連結部40に固定されている。これにより、上記ヒンジ連結部40を介して、上記第1アーム10に対して第2アーム20および第3アーム30が扇状に開閉しうるようになっている。
【0031】
図2(B)の開いた状態では、ガイドシェル2に取り付けられた第1アーム10に対し、第2アーム20が45°の角度まで、第3アーム30が90°の角度まで、それぞれ上記ヒンジ連結部40を基点に回動して扇状に開いている。つまり、上記第1アーム10に対して上記第2アーム20および上記第3アーム30が扇状に開いた状態で、上記第2アーム20は上記第1アーム10と上記第3アーム30の間に配置されている。
【0032】
図2(A)の閉じた状態では、ガイドシェル2に取り付けられた第1アーム10に、第2アーム20と第3アーム30がそれぞれ沿う位置まで上記ヒンジ連結部40を基点に回動して閉じている。
【0033】
上記第1アーム10と第3アーム30は、上記ヒンジ連結部40を基点におなじ長さ寸法に設定されている。つまり閉じた状態で上記第1アーム10と第3アーム30の先端が揃っている。上記第2アーム20の長さは、上記第1アーム10および第3アーム30より長い寸法に設定されている。つまり、閉じた状態で上記第2アーム20の先端は、第1アーム10および第3アーム30の先端よりも突出している。
【0034】
図2(B)の開いた状態では、第1アーム10の先端部、第2アーム20の先端部、第3アーム30の先端部、ヒンジ連結部40を頂点とするエリアが四角形(この例では略正方形である)を呈する。上記防護ネット90は、このエリアに合致する四角形に形成し、第1アーム10、第2アーム20、第3アーム30に取り付けることで四角形の防護エリアを形成することができる。
【0035】
図3は、閉じた状態の第1アーム10、第2アーム20、第3アーム30の横断面図である。
【0036】
上記第1アーム10は、断面がコ字状に形成されている。上記コ字状の背側が取付部11によりガイドシェル2に取り付けられている。一方、この閉じた状態において、上記第1アーム10の開放側に第2アーム20および第3アーム30が配置される。
【0037】
上記第3アーム30も同様に、断面がコ字状に形成されている。この閉じた状態において、上記第3アーム30の開放側が、上記第1アーム10の開放側と対面するように配置される。上記第3アーム30は、それ自体のコ字状の背側に向かって回動して開くようになっている。
【0038】
上記第2アーム20は、断面が四角形の角パイプ状である。この閉じた状態において、上記第2アーム20は、上記第3アーム30の開放側と上記第1アーム10の開放側が対面したあいだに配置され、収容されるようになっている。閉じた状態でこのような配置構造とすることにより、開放部を向き合わせた第1アーム10と第3アーム30の間に第2アーム20が収容されるため、閉じた状態の第1アーム10、第2アーム20、第3アーム30が嵩張らず、防護装置を使用しない作業の際に邪魔にならない。
【0039】
上記第2アーム20の上面には、帯状プレート21が長手方向に沿うように立設されている。上記帯状プレート21が存在することにより、閉じたときに第1アーム10と第3アーム30の開放部同士が噛み合って開きにくくなるのを防止する。
【0040】
〔ヒンジ連結部40〕
上記ヒンジ連結部40は、上記第1アーム10に対して上記第2アーム20および上記第3アーム30を扇状に開閉可能にヒンジ連結する。
【0041】
図4は、ヒンジ連結部40を説明する図であり、(A1)は閉じた状態の正面図、(A2)は同側面図、(B1)は開いた状態の正面図、(B2)は同側面図である。
図5は、ヒンジ連結部40を構成するパーツを説明する図であり、(A1)は第1パーツの正面図、(A2)は同側面図、(B1)は第2パーツの正面図、(B2)は同側面図、(C1)は第3パーツの正面図、(C2)は同側面図である。
【0042】
上記ヒンジ連結部40は、第1パーツ51と、第2パーツ61と、第3パーツ71とを含んで構成されている。
【0043】
上記第1パーツ51、第2パーツ61、第3パーツ71はそれぞれ、(輪切りにしたバウムクーヘンのような)やや扁平な円柱状であり、それぞれの中心に軸穴52,62,72が形成されている。上記第1パーツ51、第2パーツ61、第3パーツ71を同軸状に重ねた状態で、上記軸穴52,62,72にはヒンジ軸41が貫通している。したがって、上記第1パーツ51に対して第2パーツ61と第3パーツ71がそれぞれ、上記ヒンジ軸41を軸として回動しうるようになっている。
【0044】
上記第1パーツ51には上記第1アーム10の根元部が固定されている。上記第2パーツ61には上記第2アーム20の根元部が固定されている。上記第3パーツ71には上記第3アーム30の根元部が固定されている。したがって、上記第1パーツ51に対する第2パーツ61と第3パーツ71の回動により、第1アーム10に対して第2アーム20と第3アーム30が回動して開閉しうるようになっている。
【0045】
上記ヒンジ連結部40は、ロック機構42を備えている。
【0046】
上記ロック機構42は、第1ロックブロック53と、第2ロックブロック63と、第3ロックブロック73と、ロックピン43とを含んで構成されている。
【0047】
上記第1ロックブロック53は、上記第1パーツ51の外周部における隆起部分として上記第1パーツ51に一体的に形成されている。上記第1ロックブロック53は、上記第1パーツ51において第1アーム10の反対側に配置されている。上記第1ロックブロック53には、上記ロックピン43が挿通される第1挿通穴54が形成されている。上記第1挿通穴54は、上記軸穴52と平行である。上記第1挿通穴54は、第1アーム10に対して第2アーム20と第3アーム30が閉じた状態と、第1アーム10に対して第2アーム20と第3アーム30が開いた状態と、双方においてロックピン43が挿通される。
【0048】
上記第2ロックブロック63は、上記第2パーツ61の外周部における隆起部分として上記第2パーツ61に一体的に形成されている。上記第2ロックブロック63は、上記第2パーツ61において第2アーム10の反対側に配置されている。上記第2ロックブロック63には、上記ロックピン43が挿通される第2閉じ穴64Aと第2開き穴64Bとが形成されている。上記第2閉じ穴64Aと第2開き穴64Bは、上記軸穴62と平行である。第2閉じ穴64Aは、第1アーム10に対して第2アーム20が閉じた状態においてロックピン43が挿通される。つまり第1アーム10に対して第2アーム20が閉じた状態において第2アーム20の開閉が一時的にロックされる。第2開き穴64Bは、第1アーム10に対して第2アーム20が開いた状態においてロックピン43が挿通される。上記第2閉じ穴64Aと第2開き穴64Bは、この例では上記軸穴62を軸にして45°の角度となるよう配置されている。したがって、第1アーム10に対して第2アーム20が45°開いた状態において第2アーム20の開閉が一時的にロックされる。
【0049】
上記第3ロックブロック73は、上記第3パーツ71の外周部における隆起部分として上記第3パーツ71に一体的に形成されている。上記第3ロックブロック73は、上記第3パーツ71において第3アーム30の反対側に配置されている。上記第3ロックブロック73には、上記ロックピン43が挿通される第3閉じ穴74Aと第3開き穴74Bとが形成されている。上記第3閉じ穴74Aと第3開き穴74Bは、上記軸穴72と平行である。第3閉じ穴74Aは、第1アーム10に対して第3アーム30が閉じた状態においてロックピン43が挿通される。つまり第1アーム10に対して第3アーム30が閉じた状態において第3アーム30の開閉が一時的にロックされる。第3開き穴74Bは、第1アーム10に対して第3アーム30が開いた状態においてロックピン43が挿通される。上記第3閉じ穴74Aと第3開き穴74Bは、この例では上記軸穴72を軸にして90°の角度となるよう配置されている。したがって、第1アーム10に対して第3アーム30が90°開いた状態において第3アーム30の開閉が一時的にロックされる。
【0050】
上記ロック機構42は、上記第1アーム10に対して上記第2アーム20および上記第3アーム30が閉じた状態と、上記第1アーム10に対して上記第2アーム20および上記第3アーム30が扇状に開いた状態とで、それぞれ上記第1アーム10に対する上記第2アーム20および上記第3アーム30の開閉を一時的にロックする。
【0051】
図4(A1)(A2)は閉じた状態のヒンジ連結部40を示す。
【0052】
上記第1アーム10に対して上記第2アーム20および上記第3アーム30が閉じた状態では、第1ロックブロック53の第1挿通穴54、第2ロックブロック63の第2閉じ穴64A、第3ロックブロック73の第3閉じ穴74Aが貫通状に一致する。そこにロックピン43を挿通することにより、上記閉じた状態が一時的にロックされる。上記ロックピン43を抜き取ればロックが解除される。
【0053】
図4(B1)(B2)は開いた状態のヒンジ連結部40を示す。
【0054】
上記第1アーム10に対して上記第2アーム20および上記第3アーム30が扇状に開いた状態では、第1ロックブロック53の第1挿通穴54、第2ロックブロック63の第2開き穴64B、第3ロックブロック73の第3開き穴74Bが貫通状に一致する。そこにロックピン43を挿通することにより、上記開いた状態が一時的にロックされる。この状態で、上記第1アーム10に対して上記第2アーム20が45°開き、上記第3アーム30が90°開いて、扇状に開いた状態となる。
上記ロックピン43を抜き取ればロックが解除される。
【0055】
〔防護ネット90〕
上記防護ネット90は、上記第1アーム10に対して上記第2アーム20および上記第3アーム30が開いた状態で、上記第1アーム10、上記第2アーム20および上記第3アーム30に張り渡される。
【0056】
上記防護ネット90は、たとえばポリエステル繊維等の合成繊維製のネットを適用することができる。合成繊維製のネットは軽量であり、上記第1アーム10、第2アーム20、第3アーム30が閉じた状態で畳んで縛り付けることにより、防護装置を使用しない作業の際に邪魔にならない。
【0057】
上述したように、上記第1アーム10に対して上記第2アーム20および上記第3アーム30が扇状に開いた状態で、上記第2アーム20は上記第1アーム10と上記第3アーム30の間に配置されている。また、上記第2アーム20の長さは、上記第1アーム10および第3アーム30よりも長く設定されている。
【0058】
上記防護ネット90は、上記第1アーム10に対して上記第2アーム20および上記第3アーム30が扇状に開いた状態で、上記第1アーム10、上記第2アーム20、上記第3アーム30の各先端部と上記ヒンジ連結部40の近傍において角部が固定される四角形に形成されている。
【0059】
図2(B)の開いた状態では、第1アーム10の先端部、第2アーム20の先端部、第3アーム30の先端部、ヒンジ連結部40を頂点とするエリアが四角形(この例では略正方形である)を呈する。上記防護ネット90は、このエリアに合致する四角形に形成し、第1アーム10、第2アーム20、第3アーム30に取り付けることで四角形の防護エリアが形成される。
【0060】
この例では、ガイドシェル2の先端側に上記ヒンジ連結部40が配置されている。そして、先端側のヒンジ連結部40を基点に第1アーム部10に対して第2アーム部20と第3アーム部が先端側に向かって扇状に開き、四角形の防護ネットが開いて四角形の防護エリアが形成される。この状態では、第3アーム部30が切羽110に沿って配置される。第3アーム部30を切羽110に当接させることで、切羽110と防護エリアのあいだに隙間ができず、安全性の高い運用を行うことができる。
【0061】
〔防護装置の作用効果〕
上記実施形態の防護装置では、つぎの作用効果を奏する。
【0062】
第1アーム10に対して第2アーム20と第3アーム30が上記ヒンジ連結部40を介して扇状に開き、そこに防護ネット90が張り渡され、防護エリアを形成する。上記第1アーム10をガイドシェル2の長手方向に沿って取り付けることで、トンネル掘削機100のブーム1とガイドシェル2を利用して、上記の防護ネット90による防護エリアを切羽110の近傍に設けることができる。防護ネット90を使用しないときは、上記第1アーム10、第2アーム20、第3アーム30を閉じることで上記ブーム1とガイドシェル2は穿孔や装薬に使用することができる。このため、支保工の設置まえでも作業員の防護エリアを切羽110の近傍に設けることができる。また、作業場所を移動するときはブーム1とガイドシェル2を移動させれば防護エリアを移動できるので、従来のように作業員が防護ネットを持って移動する必要がない。また、第1アーム10に対して第2アーム20と第3アーム30が扇状に開いたエリアの下を防護できるので、十分に広い防護エリアを設けることができ、安全性を確保できる。
【0063】
上記ヒンジ連結部40がロック機構42を備えている。上記ロック機構42は、上記第1アーム10に対して上記第2アーム20および上記第3アーム30が閉じた状態と、上記第1アーム10に対して上記第2アーム20および上記第3アーム30が扇状に開いた状態とで、それぞれ上記第1アーム10に対する上記第2アーム20および上記第3アーム30の開閉を一時的にロックする。
上記第1アーム10に対して第2アーム20と第3アーム30を開いて防護エリアを設けた状態で第2アーム20と第3アーム30の回動がロックされる。したがって、防護エリアが不用意に狭くなる等の不都合が生じない。また、上記第1アーム10に対して第2アーム20と第3アーム30が閉じた状態で第2アーム20と第3アーム30の回動がロックされる。このため、防護ネット90を使用せずにブーム1とガイドシェル2で穿孔や装薬の作業を行っているときに、第2アーム20や第3アーム30が不用意に回動して作業に支障をきたすことがない。
【0064】
上記第1アーム10に対して上記第2アーム20および上記第3アーム30が扇状に開いた状態で、上記第2アーム20が上記第1アーム20と上記第3アーム30の間に配置されている。また、上記第2アーム20の長さが、上記第1アーム10および第3アーム30よりも長く設定されている。そして、上記防護ネット90は、上記第1アーム10に対して上記第2アーム20および上記第3アーム30が扇状に開いた状態で、上記第1アーム10、上記第2アーム20、上記第3アーム30の各先端部と上記ヒンジ連結部40の近傍において角部が固定される四角形に形成されている。このため、上記第1アーム10、第2アーム20および第3アーム30によって四角形の十分に広い防護エリアを切羽110の近傍に設けることができ、安全性を確保できる。
【0065】
◆防護方法
〔第1実施形態〕
図2は、本発明の防護方法の第1実施形態を説明する図であり、上述した防護装置を使用した防護方法である。
【0066】
〔第1実施形態の作用効果〕
上記第1実施形態の防護方法では、つぎの作用効果を奏する。
第1アーム10に対して第2アーム20と第3アーム30が上記ヒンジ連結部40を介して扇状に開き、そこに防護ネット90が張り渡され、防護エリアを形成する。上記第1アーム10をガイドシェル2の長手方向に沿って取り付けることで、トンネル掘削機100のブーム1とガイドシェル2を利用して、上記の防護ネット90による防護エリアを切羽110の近傍に設けることができる。防護ネット90を使用しないときは、上記第1アーム10、第2アーム20、第3アーム30を閉じることで上記ブーム1とガイドシェル2は穿孔や装薬に使用することができる。このため、支保工の設置まえでも作業員の防護エリアを切羽110の近傍に設けることができる。また、作業場所を移動するときはブーム1とガイドシェル2を移動させれば防護エリアを移動できるので、従来のように作業員が防護ネットを持って移動する必要がない。また、第1アーム10に対して第2アーム20と第3アーム30が扇状に開いたエリアの下を防護できるので、十分に広い防護エリアを設けることができ、安全性を確保できる。
【0067】
〔第2実施形態〕
図6は、本発明の防護方法の第2実施形態を説明する図である。
【0068】
第1例では、2以上のブームを有するトンネル掘削機を使用する。そして、右側に位置するブームにおいて上記防護装置を左側に開くように取り付け、左側に位置するブームにおいて上記防護装置を右側に開くように取り付けて行う。このようにすることにより、左右のブームにおいてそれぞれ防護エリアを形成する。このとき、上記左右のブームの間に左右の防護エリアを並べて形成することができ、十分に広い防護エリアを切羽の近傍に設けることができ、安全性を確保できる。
【0069】
第2例では、3以上のブームを有するトンネル掘削機を使用する。上記左右のブームのあいだに位置するブームにおいて、左右の防護装置でそれぞれ開いた第2アームまたは第3アームを支受する。このようにすることにより、左右のブームにおいてそれぞれ扇状に開いた第2アームまたは第3アームを、あいだのブームで支受することにより、形成された防護エリアが安定的に維持され、より高い安全性を確保できる。
【0070】
◆変形例
以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は図示した実施形態に限定する趣旨ではない。本発明は、各種の態様に変形して実施することができ、各種の変形例を包含する趣旨である。
【0071】
たとえば、上記実施形態では、ガイドシェル2の先端側にヒンジ連結部40を配置して第1アーム10に対して第2アーム20と第3アーム30を先端側に開くように構成したが、ガイドシェル2の根元側にヒンジ連結部40を配置して第1アーム10に対して第2アーム20と第3アーム30を根元側に開くように構成することもできる。
【符号の説明】
【0072】
1:ブーム
2:ガイドシェル
3:ドリフタ
4:ロッド
10:第1アーム
11:取付部
20:第2アーム
21:帯状プレート
30:第3アーム
40:ヒンジ連結部
41:ヒンジ軸
42:ロック機構
43:ロックピン
51:第1パーツ
52:軸穴
53:第1ロックブロック
54:第1挿通穴
61:第2パーツ
62:軸穴
63:第2ロックブロック
64A:第2閉じ穴
64B:第2開き穴
71:第3パーツ
72:軸穴
73:第3ロックブロック
74A:第3閉じ穴
74B:第3開き穴
90:防護ネット
100:トンネル掘削機
101:車輪
102:機体
110:切羽
図1
図2
図3
図4
図5
図6