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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142726
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20241003BHJP
   F01P 5/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02F9/00 M
F01P5/06 510B
F01P5/06 511D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055022
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺嶋 浩司
(72)【発明者】
【氏名】椿本 彰史
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015CA02
(57)【要約】
【課題】冷却ファンの冷却風により冷却される熱交換器の隅部へのダストの蓄積を防止できる油圧ショベルを提供する。
【解決手段】自走可能な下部走行体2と、エンジン11又はモータによって駆動される冷却ファン31と、冷却ファン31の右側に対向して上部旋回体3に搭載され、冷却ファン31により生起される冷却風Fにより冷却を行う熱交換器32と、冷却ファン31を外周側から取り囲むように熱交換器32に設けられ、冷却ファン31の右側から左側へ冷却風Fを導くシュラウド33とを備えた油圧ショベル1において、シュラウド33に、冷却風Fの一部を、熱交換器32のうち冷却ファン31と対向する領域AEよりも冷却ファン31の軸心Jから径方向に離れる側に位置する、曲折させて径方向外周側かつ右側へと還流する吹き付け流F1~F4を生成し、熱交換器32の隅部を含む外周側領域へと導風する筒状部材101~104を設ける。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、原動機またはモータによって駆動される冷却ファンと、前記冷却ファンの軸方向の一方側に対向して前記車体に搭載され、前記冷却ファンにより生起される冷却風により冷却を行う熱交換器と、前記冷却ファンを外周側から取り囲むように前記熱交換器に設けられ、前記冷却ファンの前記軸方向一方側から前記軸方向の他方側へ前記冷却風を導くシュラウドとを備えた
建設機械において、
前記シュラウドに、
前記冷却風の一部を、前記熱交換器のうち前記冷却ファンと対向する領域よりも当該冷却ファンの軸心から径方向に離れる側に位置する、外周側領域へと導風する導風機構を設けた
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械において、
前記シュラウドは、
前記冷却ファンの羽根の外周側を取り囲む円筒部を有し、
前記導風機構は、
前記円筒部から前記円筒部の外側かつ前記軸方向一方側へ突出して設けられ、内部に前記冷却風の一部を前記外周側領域へと導風する導風通路を形成する突出部材を有することを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2記載の建設機械において、
前記シュラウドは、さらに、
前記円筒部の前記熱交換器と対向する側に位置し、前記熱交換器の前記外周側領域を覆う平板部を有し、
前記導風通路の導入口は、前記羽根の延在方向に配置され、
前記導風通路の導出口は、前記平板部に孔設されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の建設機械において、
前記突出部材は、
当該突出部材の軸線方向が、前記軸方向に直交する横断面の断面視において、前記円筒部の直径方向に対して前記羽根の回転方向に沿って傾斜するように設けられている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1記載の建設機械において、
前記シュラウドは、
箱型の筐体と、
前記筐体に設けられ、前記冷却ファンの羽根を露出させる開口部とを有し、
前記導風機構は、
前記筐体の内壁に設けられ、前記筐体の内部空間において前記冷却風の一部を前記外周側領域へと導風する導風部材を有することを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項5記載の建設機械において、
前記導風部材は、
前記冷却ファンの径方向に生起される前記冷却風を受け止める受け止め部と、
前記軸方向に直交する横断面の断面視において前記受け止め部に対し前記羽根の回転方向とは逆向きに湾曲して連設された曲折部とを有する
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器を冷却する冷却ファンを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、原動機によって駆動される冷却ファンと、冷却ファンと対向して車体に搭載され冷却ファンからの冷却風により加熱された液体を冷却する熱交換器と、冷却ファンと熱交換器との間に冷却風通路を形成するシュラウドとを備えた建設機械を開示している。特許文献1において、吸い込み型の冷却ファンは、機外から外気を吸いこんで冷却風を生成し、この冷却風により冷却ファン上流側に位置する熱交換器の冷却を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-196760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、建設機械は、粉塵等のダストが混入した大気雰囲気下で稼働することが多いため、大気雰囲気に混入したダストの一部は、熱交換器に蓄積されて熱交換性能の低下を招く。冷却ファンは、熱交換器の中央部に位置するように設けられるので、特に熱交換器の隅部は、冷却風の空気流が当たりにくく、ダストが堆積しやすかった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷却ファンの冷却風により冷却される熱交換器の隅部へのダストの蓄積を防止できる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、自走可能な車体と、原動機またはモータによって駆動される冷却ファンと、前記冷却ファンの軸方向の一方側に対向して前記車体に搭載され、前記冷却ファンにより生起される冷却風により冷却を行う熱交換器と、前記冷却ファンを外周側から取り囲むように前記熱交換器に設けられ、前記冷却ファンの前記軸方向一方側から前記軸方向の他方側へ前記冷却風を導くシュラウドとを備えた建設機械において、前記シュラウドに、前記冷却風の一部を、前記熱交換器のうち前記冷却ファンと対向する領域よりも当該冷却ファンの軸心から径方向に離れる側に位置する、外周側領域へと導風する導風機構を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷却ファンの冷却風により冷却される熱交換器の隅部へのダストの蓄積を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態による建設機械の一例としての油圧ショベルの全体外観構造を表す側面図である。
図2】油圧ショベルの旋回フレームを単体で示す平面図である。
図3】旋回フレームにエンジン及び熱交換器を搭載した状態を表す平面図である。
図4図3中のIV-IV断面による断面図である。
図5図4に示した構造から、熱交換器、及び、その左側に配置されたシュラウド、冷却ファン等を抽出して表す斜視図である。
図6図5に示した構造からシュラウド、筒状部材、冷却ファン等を取り外し熱交換器の左側を露出させた状態を表す斜視図である。
図7図5に示した構造を左方から見た図である。
図8図5中のVIII-VIII断面による断面図である。
図9図5に示した構造において冷却ファンの回転により冷却風及び吹き付け流が流れたときの挙動を表す説明図である。
図10図6の構造において、図9に示した吹き付け流による吹き付け挙動を表す説明図である。
図11】本発明を箱型のシュラウドに適用した変形例における、熱交換器、及び、その左側に配置されたシュラウド、冷却ファン等の詳細構造を抽出して表す斜視図である。
図12図11に示した構造からシュラウドの筐体を取り外し熱交換器の左側及び放熱フィンを露出させた状態を表す斜視図である。
図13図11に示した構造を左方から見た図である。
図14図11中のXIV-XIV断面による断面図である。
図15図12に示した構造において冷却ファンの回転により冷却風及び攪拌流が流れたときの挙動を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
<油圧ショベルの概略構成>
油圧ショベル1の全体外観構造を図1に示す。図1において、油圧ショベル1は、例えば掘削作業に用いられる建設機械である。なお、建設機械として、油圧ショベル1以外に、ホイールローダ、ダンプトラック、クローラクレーン等、他の機械を用いてもよい。以下、本願明細書においては、油圧ショベル1を例にとって説明する。
【0011】
油圧ショベル1は、この例では、例えば市街地等の比較的狭隘な作業現場で用いられる小型油圧ショベル(ミニショベル)である。油圧ショベル1の車体は、走行モータ2Aが駆動されることで自走可能な下部走行体2と、下部走行体2上に搭載され旋回モータ(図示せず)が駆動されることで旋回可能な上部旋回体3とにより構成されている。この例では、上部旋回体3の旋回半径が、下部走行体2の車幅内にほぼ収まるように構成されている。上部旋回体3の前部側には、スイングポスト4を介して左・右方向に揺動可能かつ上・下方向俯仰動可能に支持された作業装置5が設けられている。作業装置5は多関節型の構造であり、ブームシリンダ61Aにより駆動されるブーム61と、アームシリンダ62Aにより駆動されるアーム62とバケットシリンダ63Aにより駆動されるバケット63とを備えている。
【0012】
上部旋回体3には、この上部旋回体3のベースとなる旋回フレーム6と、キャブ9と、カウンタウェイト10とが備えられている。
【0013】
キャブ9は、旋回フレーム6の左側に搭載されており、油圧ショベル1を操縦するオペレータの運転室である。キャブ9内には、オペレータが着席する運転席9Aと、下部走行体2を走行操作するための操作レバー(図示せず)と、作業装置5を操作するための操作レバー9Bとが配設されている。なお、以下の説明において、上下方向、前後方向、左右方向は、図1等の各図中に適宜示す矢印方向に対応している。すなわち、図示の「上」「下」「前」「後」「左」「右」は、運転席9Aに着座したオペレータから見た上下左右前後方向に相当している。
【0014】
カウンタウェイト10は、旋回フレーム6の後端部に設けられている。カウンタウェイトは、作業装置5との重量バランスをとる重量物として構築されている。
【0015】
<旋回フレーム>
図2は旋回フレーム6を単体で示す平面図であり、図3は旋回フレームにエンジン及び熱交換器(後述)等を搭載した状態を表す平面図である。図2及び図3において、旋回フレーム6は、前・後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板6Aと、この底板6A上に前・後方向に延びて立設され、左・右方向の間隔が前方に向けて徐々に狭まるように配置された左前縦板6B及び右前縦板6Cと、底板6A上に左・右方向に延びて立設され左・右の前縦板6B,6Cの後端に固着された横板6Dと、横板6Dの後側で底板6A上に立設された略U字状の後板6Eと、底板6Aの左側方に配置され前・後方向に延びた略円弧状の左サイドフレーム6Fと、底板6Aの右側方に配置され前・後方向に延びた略円弧状の右サイドフレーム6Gとを備えている。
【0016】
後板6Eは、詳細には、図2に示すように、横板6Dを挟んで左前縦板6Bの後側に配置される左後縦板6E1と、横板6Dを挟んで右前縦板6Cの後側に配置される右後縦板6E2と、左・右の後縦板6E1,6E2間を連結して左・右方向に延び、横板6Dと前・後方向で対面する後横板6E3とを含む。
【0017】
横板6Dと後横板6E3との間には、底板6Aと横板6Dとに接合された略L字状のエンジン取付台座7Aと、底板6Aと後横板6E3とに接合されたL字状のエンジン取付台座7Bとが設けられている。また、後板6Eの左後縦板6E1には、前・後に離間して2個の略L字状のエンジン取付台座7C,7Dが設けられている。これら4個のエンジン取付台座7A,7B,7C,7Dには、後述のエンジン11が取り付けられる。
【0018】
右サイドフレーム6Gの後側と後板6Eの右後縦板6E2との間には熱交換器取付台座8が配設され、この熱交換器取付台座8上には後述の熱交換器32が取り付けられる。
【0019】
<エンジン>
図3中のIV-IV断面による断面図を図4に示す。図4及び前述の図3において、原動機の一例としてのエンジン11が、クランク軸11Aの軸線が左・右方向に延びる横置き状態で、旋回フレーム6上に搭載されている。
【0020】
エンジン11は、熱交換器32と左・右方向で対向する正面11Bと、正面11Bに対して左・右方向の反対側に位置する背面11Cと、旋回フレーム6の横板6Dと前・後方向で対面する前側面11Dと、前側面11Dに対して前・後方向の反対側に位置する後側面(図示せず)とを有している。
【0021】
エンジン11の背面11C側に設けられたフライホイールハウジング11Gには、左マウント部材12が固定されている。旋回フレーム6のエンジン取付台座7Aとエンジン11の前側面11Dとの間には、右前マウント部材14が設けられている。旋回フレーム6のエンジン取付台座7Bとエンジン11の後側面との間には、右後マウント部材(図示せず)が設けられている。エンジン11は、それら左マウント部材12、右前マウント部材14、右後マウント部材によって、旋回フレーム6に配設されたエンジン取付台座7C,7D、エンジン取付台座7A、エンジン取付台座7Bに対し、それぞれ弾性的に支持される。これらの結果、エンジン11は、旋回フレーム6に対して弾性的に支持されている。
【0022】
<エンジン周辺の各種構造>
一方、エンジン11の左・右方向の一側(この例では左側)には、油圧ポンプ(図示せず)が取り付けられる。この油圧ポンプは、エンジン11によって駆動されることにより、作業装置5の各種動作、上部旋回体3の旋回動作、下部走行体2の走行動作等のための各部の油圧アクチュエータ(前述のブームシリンダ61A、アームシリンダ62A、バケットシリンダ63A、走行モータ2A、旋回モータ等を含む)に対し、作動用の圧油を供給する。
【0023】
また、エンジン11の左・右方向の他側(この例では右側)には、後述の冷却ファン31が設けられる。エンジン11の前側面11D側には、エンジン11の回転によって発電を行うオルタネータ24が配置されている。このとき、エンジン11の正面11B側には、クランク軸11Aの端部が突出し、このクランク軸11Aの端部に駆動プーリ21が固定されている。またエンジン11の正面11B側には、冷却ファン31の回転軸31Bに取り付けられた従動プーリ22とオルタネータ24の従動プーリ24Aとが回転可能に設けられている。そして、駆動プーリ21、従動プーリ22、従動プーリ24Aには、ファンベルト26が巻回されている。ファンベルト26は、エンジン11の回転を冷却ファン31及びオルタネータ24等に伝達する機能を果たす。さらに、エンジン11の正面11B側には、熱交換器32とエンジン11のウォータジャケット(図示せず)との間でエンジン冷却水を循環させるウォータポンプ28と、熱交換器32とウォータポンプ28との間を接続するラジエータホース29,30とが配置されている。
【0024】
なお、この例では、油圧ショベル1は前述のように小型であるため、上述した駆動プーリ21、従動プーリ22,24、ファンベルト26等の部品は、エンジン11のうち冷却ファン31に対向する正面11Bの、ほぼ全面にわたって配置されている。
【0025】
<冷却ファン及び熱交換器>
冷却ファン31は、エンジン11の左・右方向の他側(この例では右側)に取り付けられ、この例では吸込式のファンである。すなわち、エンジン11のクランク軸11Aの回転が駆動プーリ21、ファンベルト26、従動プーリ22を介し回転軸31Bに伝達されることによって冷却ファン31は回転駆動される。これにより、冷却ファン31は外気を上部旋回体3内に吸込み、この外気を冷却風Fとして熱交換器32に供給する。
【0026】
熱交換器32は、冷却ファン31よりも、当該冷却ファン31の軸方向の一方側(この例では右側。以下同様)に対向して旋回フレーム6に搭載されており、冷却ファン31により生起される上記冷却風Fにより熱交換器32の冷却が行われる。熱交換器32は、この例では、上記熱交換器取付台座8上に取り付けられた略四角形状の支持枠体39に配置された、ラジエータ32A及びオイルクーラ32B(後述の図5等参照)により構成されている。
【0027】
ラジエータ32Aは、エンジン11の上記ウォータジャケットとの間で循環するエンジン冷却水の熱を冷却ファン31からの冷却風F中に放熱し、エンジン冷却水を冷却する。
【0028】
オイルクーラ32Bは、前述した各部の油圧アクチュエータから作動油タンク(図示せず)に還流する作動油(戻り油)の熱を冷却ファン31からの冷却風F中に放熱し、作動油を冷却する。
【0029】
<シュラウド>
熱交換器32よりも上記軸方向の他方側(この例では左側。以下同様)には、冷却ファン31をほぼ全周にわたって外周側から取り囲むように、シュラウド33が設けられている。なお、シュラウド33は、例えば適宜の支持部材を介しエンジン11側から支持されていてもよいし、それ以外の適宜の支持構造により支持されていてもよい。シュラウド33は、この例では、冷却ファン31と熱交換器32との間に右側から左側へと冷却風Fを導く冷却風通路36を形成し、冷却ファン31による冷却風の流れを整える。
【0030】
シュラウド33は、冷却ファン31の羽根31Aの外周側を取り囲む円筒部33Aと、円筒部33Aの右側、言い換えれば熱交換器32と対向する側に位置し熱交換器32の左側を覆う平板部33Bとを有する。平板部33Bは、特に、熱交換器32の外周側領域(詳細は後述)を覆うように構成されている。
【0031】
<筒状部材>
本実施形態の特徴である筒状部材について図5図10により説明する。図5は、図4に示した構造から前述の熱交換器32、シュラウド33、冷却ファン31等を抽出して表す斜視図であり、図6は、図5に示した構造からシュラウド、筒状部材、冷却ファン等を取り外し熱交換器32の左側を露出させた状態を表す斜視図である。また図7は、図5に示した構造を左方から見た図であり、図8は、図5中のVIII-VIII断面による断面図である。図9は、図5に示した構造において冷却ファン31の回転により上記冷却風F及び吹き付け流(後述)が流れたときの挙動を表す説明図である。図10は、図6の構造において、図9に示した吹き付け流による吹き付け挙動を表す説明図である。
【0032】
上述した構成において、冷却ファン31は、例えば図5に示すように主に熱交換器32の中央部に対向するように設けられる。その結果、熱交換器32のうち冷却ファン31に対向しない外周側領域には、冷却風Fが当たりにくくダストが堆積しやすい。この外周側領域は、例えば、図6及び図10に示すような冷却ファン31の右側に対向する領域AEよりも、径方向外側、言い換えれば冷却ファン31の軸心J(図7参照)を基準としてその軸心Jから径方向へ円筒部33Aよりも離れる側、の領域である。この外周側領域には、図10に示すように、ラジエータ32Aの前側上・下部の隅部L1,L2及びオイルクーラ32Bの後側上・下部の隅部L4,L3が含まれる。
【0033】
外周側領域における上記の傾向に対応して、本実施形態では、図5図10に示すように、シュラウド33の円筒部33Aから右側かつ上記径方向外側へ突出して、複数(この例では4つ)の筒状部材101,102,103,104が設けられている。これら筒状部材101,102,103,104には、図8に示すように、内部に導風通路Rがそれぞれ形成されている。この導風通路Rには、シュラウド33内の冷却風通路36を右側から左側へと向かう上記冷却風Fの一部F1,F2,F3,F4が導かれる。
【0034】
すなわち、筒状部材101,102,103,104は、図9に示すように、上記冷却風Fの一部F1,F2,F3,F4を、右側かつ冷却ファン31の上記径方向外側へと導かれる流れ(以下適宜、「吹き付け流F1」「吹き付け流F2」「吹き付け流F3」「吹き付け流F4」等と称する)を生成する。これら吹き付け流F1,F2,F3,F4は、図10に示すように、筒状部材101,102,103,104によって、熱交換器32の隅部を含む上記外周側領域へと導かれる。なお、筒状部材101,102,103,104が突出部材の一例であり、導風機構の一例でもある。
【0035】
このとき、図8に示されるように、各筒状部材101~104では、導風通路Rの導入口Ri(円筒部33Aに形成)が、冷却ファン31の羽根31Aの延在方向に配置されている。また導風通路Rの導出口Reは、熱交換器32の左側に臨むように平板部33Bに孔設されている。言い換えれば、各筒状部材101~104は、円筒部33Aと平板部33Bとを連結しており、各筒状部材101~104の内部の上記導風通路Rによって、円筒部33Aの内部と熱交換器32の内部とが連通されている。
【0036】
なお、図7に示すように、筒状部材101,102,103,104は、その軸線k1,k2,k3,k4の方向が、上記左右方向に直交する横断面の断面視において、円筒部33Aの直径方向に対して羽根31Aの回転方向P(この例では例えば図9における反時計回り)に沿ってそれぞれ角度θ1,θ2,θ3,θ4だけ傾斜するように、設けられている。なお、これらθ1,θ2,θ3,θ4は互いにほぼ等しくてもよいし、熱交換器32(この例ではラジエータ32A及びオイルクーラ32B)の寸法や形状に応じて、適宜に異なる値とされていてもよい。
【0037】
また、筒状部材101,102,103,104は、内部の上記導風通路Rの横断面積が、導入口Riから導出口Reへ向かって徐々に小さくなるような形状に構成され、これによって導風通路Rにおける流速の増大が図られている。
【0038】
<実施形態の効果>
以上のように構成した本実施形態においては、冷却ファン31の右側に対向して熱交換器32が配置されており、熱交換器32の左側に冷却ファン31を取り囲むようにシュラウド33が設けられている。冷却ファン31が駆動されると、右側から左側へ向かって、熱交換器32→シュラウド33内の冷却風通路36→冷却ファン31の順で流れる冷却風Fの流れが生じることで(図9参照)、熱交換器32における熱交換が促進される。
【0039】
このとき、本実施形態では、筒状部材101~104が、上記のように流れる冷却風Fの一部により吹き付け流F1~F4を生成する。生成された吹き付け流F1~F4は、筒状部材101~104によって径方向外側かつ右側へと導かれ、図10に示すように、熱交換器32の外周側領域(ラジエータ32Aの前側上・下部の隅部L1,L2及びオイルクーラ32Bの後側上・下部の隅部L4,L3を含む)へと導かれる。これにより、冷却ファン31が駆動されて上記のように冷却風Fが流れるとき、上記熱交換器32の外周側領域に対し左側から右側へ向く比較的強い勢いの吹き付け流F1~F4が吹き付けられる。吸込み型ファンである冷却ファン31の場合、前述の外周側領域のうち冷却ファン31側と反対側、すなわち熱交換器32の右側の面にダストが堆積する。上記のように左側からの吹き付け流F1~F4が吹き付けられることにより、ダストが当該隅部から右側へと吹き飛ばされて除去される。この結果、熱交換器32の隅部へのダストの蓄積を防止することができる。これにより、油圧ショベル1の稼働中における熱交換器32の冷却性能の維持期間を増大でき、熱交換器32の清掃頻度を低減できる効果もある。
【0040】
また、本実施形態では特に、シュラウド33の円筒部33Aが、冷却ファン31の羽根31Aの外周側を取り囲んでおり、この円筒部33Aに、内部に導風通路Rをそれぞれ有する複数の筒状部材101~104が設けられる。各筒状部材101~104は、導風通路Rを介し、吹き付け流F1~F4を円筒部33Aから熱交換器32の上記外周側領域(前述の隅部L1,L2,L3,L4を含む)へと導く。このようにして、本実施形態では、シュラウド33の円筒部33Aから熱交換器32の外周側領域へと吹き付け流F1~F4を導く構成を実現することができる。
【0041】
また、本実施形態では特に、各筒状部材101~104において、導風通路Rの導入口Riが羽根31Aの延在方向に配置されている(図5図8図9等参照)。これにより、冷却風Fの一部を効率よく導風通路R内に取り込んで吹き付け流F1~F4とすることができる。また、導風通路Rの導出口Reがシュラウド33の平板部33Bに孔設されていることにより、上記のように冷却風Fを取り込んで生成された吹き付け流F1~F4が熱交換器32の左側に対し確実に吹き付けられる。
【0042】
また、本実施形態では特に、内部に導風通路Rを形成する筒状部材101~104の軸線k1~k4が、それぞれ羽根31Aの回転方向に沿って円筒部33Aの直径方向に対して角度θ1~θ4だけ傾斜している(図7参照)。これにより、図9に示されるように冷却ファン31の回転により生成される冷却風Fの一部を、確実に効率よく導風通路R内に取り込んで吹き付け流F1~F4とすることができる。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。上記実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜、説明を省略又は簡略化する。
【0044】
(1)別タイプのシュラウドに適用する場合
本変形例を、上記実施形態における図5図9にそれぞれほぼ対応する図11図15により説明する。図11は、熱交換器32、冷却ファン31、本変形例のシュラウド233等の詳細構造を抽出して表す斜視図であり、図12は、図11に示した構造からシュラウド233の筐体(後述)を取り外し熱交換器32の左側に位置する放熱フィン(後述)を露出させた状態を表す斜視図である。また図13は、図11に示した構造を左方から見た図であり、図14は、図11中のXIV-XIV断面による断面図である。図15は、図12に示した構造において冷却ファンの回転により冷却風及び攪拌流が流れたときの挙動を表す説明図である。
【0045】
これら図11図15において、本変形例におけるシュラウド233は、略箱型の筐体233Aに、冷却ファン31の羽根31Aの左側を露出させる略円形の開口部233Bを備えたタイプである。
【0046】
そして、本変形例では、図12及び図13に示すように、筐体233Aの内壁のうち、羽根31Aの径方向外側の位置に、複数(この例では4つ)の放熱フィン201,202,203,204が設けられている。
【0047】
放熱フィン201,202,203,204は、図12に示すように、それぞれ、受け止め部201a,202a,203a,204aと、曲折部201b,202b,203b,204bとにより構成されている。これらにより、放熱フィン201,202,203,204は、図15に示すように、シュラウド233の筐体233Aの内部空間において冷却風通路36を右側から左側へと向かう冷却風Fの一部を、右側かつ冷却ファン31の径方向外側へと導く流れ(以下適宜、「攪拌流f1」「攪拌流f2」「攪拌流f3」「攪拌流f4」等と称する)を生成する。
【0048】
具体的には、放熱フィン201,202,203,204の上記受け止め部201a,202a,203a,204aが、羽根31Aの回転により冷却ファン31の径方向に生起される冷却風Fをそれぞれ受け止める。一方、上記曲折部201b,202b,203b,204bは、図12に示すように、上記左右方向に直交する横断面(すなわち前後方向に沿った横断面)の断面視において、受け止め部201a,202a,203a,204aに対し、羽根31Aの回転方向P(この例では例えば図15における反時計回り)とは逆向き(図15等における時計回り)に湾曲するように連設されている。
【0049】
曲折部201b,202b,203b,204bは、上記の湾曲形状により、受け止め部201a,202a,203a,204aで受け止めた冷却風Fを湾曲形状に沿って曲折させ、図15に示す上記攪拌流f1,f2,f3,f4をそれぞれ生成する。生成された攪拌流f1,f2,f3,f4は、熱交換器32の隅部を含む前述の外周側領域へそれぞれ導風される。本変形例における外周側領域は、上記実施形態と同様、図12及び図15に示す冷却ファン31の右側に対向する領域AEよりも、径方向外側すなわち冷却ファン31の軸心J(図13参照)を基準としてその軸心Jから径方向へ離れる側、の領域である。なお、放熱フィン201,202,203,204が導風部材の一例であり、導風機構の一例でもある。
【0050】
本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得る。すなわち、冷却ファン31が駆動されると、右側から左側へ向かって、熱交換器32→シュラウド233内の冷却風通路36→冷却ファン31の順で流れる冷却風Fの流れが生じることで、熱交換器32における熱交換が促進される。このとき、本変形例では、放熱フィン201~204が、上記のように流れる冷却風Fの一部により、攪拌流f1~f4を生成する(図15参照)。生成された攪拌流f1~f4は、放熱フィン201~104によって径方向外側かつ右側へと導かれ、熱交換器32の隅部を含む外周側領域(この例では、ラジエータ32Aの前側上・下部の隅部L1,L2及びオイルクーラ32Bの後側上・下部の隅部L4,L3)へと導かれる。
【0051】
これにより、冷却ファン31が駆動されて上記のように冷却風Fが流れるとき、上記外周側領域に対し比較的強い勢いの攪拌流f1~f4が吹き付けられる。したがって、前述の実施形態と同様、左側からの攪拌流f1~f4が吹き付けられることにより、ダストが当該隅部から右側へと吹き飛ばされて除去される。この結果、熱交換器32の隅部へのダストの蓄積を防止でき、前述と同様、冷却性能の維持期間の増大及び清掃頻度の低減効果が得られる。
【0052】
また、本変形例では特に、上記のように羽根31Aの径方向外側位置となるように設けた放熱フィン201~204によって、筐体233Aの内部空間において攪拌流f1~f4が生成される(言い換えれば筐体233Aの内部空間において冷却風Fが攪拌される)。これにより、シュラウド233の筐体233Aの内部空間において熱交換器32の上記外周側領域へと攪拌流f1~f4を導く構成を実現することができる。
【0053】
また、本変形例では特に、放熱フィン201~204の受け止め部201a~204aにおいて冷却ファン31の径方向に生起された冷却風Fがそれぞれ受け止められた後、羽根31Aの回転方向とは逆向きに湾曲している曲折部201b~204bによって上記受け止めた冷却風Fが曲折して攪拌流f1~f4となる。これにより、冷却ファン31の回転により生成される冷却風Fの一部を、確実に効率よく熱交換器32の上記外周側領域に対し円滑かつ確実に吹き付けることができる。
【0054】
(2)その他
なお、以上は、エンジン11のクランク軸11Aの回転が冷却ファン31へと伝達されて冷却ファン31が回転する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、冷却ファン31が、別途設けた電動モータの駆動力を用いて回転する構成の場合でも本発明を適用することができ、上記同様の効果を得る。
【0055】
<解決しようとする課題や発明の効果について>
発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上記した内容に限定されるものではない。すなわち、本発明によって、上述されていない課題を解決したり、上述されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0056】
<数値、構造について>
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0057】
なお、以上の説明における「等しい」とは、厳密な意味ではない。すなわち、「等しい」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に等しい」という意味である。
【0058】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0059】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0060】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
11 エンジン(原動機)
31 冷却ファン
31A 羽根
31B 回転軸
32 熱交換器
32A ラジエータ
32B オイルクーラ
33 シュラウド
33A 円筒部
33B 平板部
101 筒状部材(突出部材、導風機構)
102 筒状部材(突出部材、導風機構)
103 筒状部材(突出部材、導風機構)
104 筒状部材(突出部材、導風機構)
201 放熱フィン(導風部材、導風機構)
201a 受け止め部
201b 曲折部
202 放熱フィン(導風部材、導風機構)
202a 受け止め部
202b 曲折部
203 放熱フィン(導風部材、導風機構)
203a 受け止め部
203b 曲折部
204 放熱フィン(導風部材、導風機構)
204a 受け止め部
204b 曲折部
233 シュラウド
233A 筐体
233B 開口部
f1 攪拌流
f2 攪拌流
f3 攪拌流
f4 攪拌流
F 冷却風
F1 吹き付け流
F2 吹き付け流
F3 吹き付け流
F4 吹き付け流
k1 軸線
k2 軸線
k3 軸線
k4 軸線
L1 隅部
L2 隅部
L3 隅部
L4 隅部
P 回転方向
R 導風通路
Ri 導入口
Re 導出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15