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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142731
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】BAWフィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/54 20060101AFI20241003BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H03H9/54 Z
H03H9/17 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055028
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 優津希
(72)【発明者】
【氏名】中村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】圓岡 岳
(72)【発明者】
【氏名】坂田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小林 研都
(72)【発明者】
【氏名】中井 孝洋
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108AA02
5J108AA07
5J108BB07
5J108EE03
5J108EE13
5J108FF03
5J108FF05
5J108HH04
5J108KK02
(57)【要約】
【課題】音響散乱を小さく抑え、フィルタ特性を向上できるBAWフィルタを提供する。
【解決手段】本発明に係BAWフィルタは、支持基材上に、複数の直列共振子と、前記直列共振子に対して並列に接続された、複数の並列共振子とを備えるBAWフィルタであって、前記直列共振子は、第1の電極、第1の圧電体層及び第2の電極をこの順に積層して備え、前記並列共振子は、第3の電極、第2の圧電体層、第4の電極及び周波数調整層をこの順に積層して備え、前記第2の電極と前記第4の電極とが、連結用電極により電気的に接続され、前記周波数調整層の音響インピーダンスが、前記第4の電極の音響インピーダンス未満であり、かつ前記連結用電極の音響インピーダンスを超える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材上に、複数の直列共振子と、前記直列共振子に対して並列に接続された、複数の並列共振子とを備えるBAWフィルタであって、
前記直列共振子は、第1の電極、第1の圧電体層及び第2の電極をこの順に積層して備え、
前記並列共振子は、第3の電極、第2の圧電体層、第4の電極及び周波数調整層をこの順に積層して備え、
前記第2の電極と前記第4の電極とが、連結用電極により電気的に接続され、
前記周波数調整層の音響インピーダンスが、前記第4の電極の音響インピーダンス未満であり、かつ前記連結用電極の音響インピーダンスを超えるBAWフィルタ。
【請求項2】
前記第4の電極の音響インピーダンスと前記周波数調整層の音響インピーダンスとの差が、30×10N/m以下である請求項1に記載のBAWフィルタ。
【請求項3】
前記連結用電極が、前記周波数調整層と接続される請求項1に記載のBAWフィルタ。
【請求項4】
前記周波数調整層は、Au、Cu及びAgのうち何れか1つ以上の成分を含む請求項1に記載のBAWフィルタ。
【請求項5】
前記第2の電極及び前記第4の電極は、Ru、Pt、Au、Ag及びCuのうち何れか1つ以上の成分を含む請求項1に記載のBAWフィルタ。
【請求項6】
前記支持基材と前記第1の電極及び前記第3の電極との間に、音響ミラー層を有し、
前記音響ミラー層は、高音響インピーダンス層と低音響インピーダンス層が交互に一対以上積層された積層体、又は前記支持基材と前記第1の電極及び前記第3の電極との間に形成された空隙である請求項1に記載のBAWフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BAWフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の弾性波共振子を接続することによって構成されたバルク弾性波(BAW:Bulk Acoustic Wave)フィルタがある。BAWフィルタの弾性波共振子は、圧電体層と、圧電体層を積層方向に挟み込むように配置された2つの電極層とを備え、電極に電圧を印加することで、圧電体層を伝搬する弾性波を生じさせる。
【0003】
BAWフィルタとして、例えば、基板上に、Ru層及びCr層の2層構造の下部電極膜と、AlNからなる圧電膜と、Ruからなる上部電極膜とを備え、上部電極膜上の下部電極膜と対向する領域に、Tiからなる第1の調整層と、SiOからなる第2の調整層を有する共振子を複数組み合わせたフィルタが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-286945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の共振子では、第1の調整層を構成するTiは高い抵抗率を有するため、フィルタの音響を損失する、という問題があった。また、上部電極膜を構成するRu及び第2の調整層を構成するSiOのような、音響インピーダンスが高い層の間に、第1の調整層を構成するTiのような音響インピーダンスが低い層が存在すると、音響散乱が生じ、フィルタ特性の劣化を引き起こす、という問題があった。
【0006】
本発明の一態様は、音響散乱を小さく抑え、フィルタ特性を向上できるBAWフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るBAWフィルタの一態様は、
支持基材上に、複数の直列共振子と、前記直列共振子に対して並列に接続された、複数の並列共振子とを備えるBAWフィルタであって、
前記直列共振子は、第1の電極、第1の圧電体層及び第2の電極をこの順に積層して備え、
前記並列共振子は、第3の電極、第2の圧電体層、第4の電極及び周波数調整層をこの順に積層して備え、
前記第2の電極と前記第4の電極とが、連結用電極により電気的に接続され、
前記周波数調整層の音響インピーダンスが、前記第4の電極の音響インピーダンス未満であり、かつ前記連結用電極の音響インピーダンスを超えるBAWフィルタである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るBAWフィルタの一態様は、音響散乱を小さく抑え、フィルタ特性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るBAWフィルタの回路構成の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るBAWフィルタの構成の一例を模式的に示す断面図である。
図3】BAWフィルタにおける音響散乱を示す説明図である。
図4】周波数と透過率との関係の一例を示す図である。
図5】BAWフィルタにおける運動エネルギーのロスを示す説明図である。
図6】BAWフィルタの他の構成の一例を示す概略断面図である。
図7】BAWフィルタの他の構成の一例を示す概略断面図である。
図8】実施例1及び比較例1のフィルタ特性の算出結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0011】
<BAWフィルタ>
図1は、本実施形態に係るBAWフィルタの回路構成の一例を示す図である。図1に示すように、BAWフィルタ1Aは、フィルタ回路に、第1端子T1と第2端子T2とを結ぶ第1経路r1上に直列に配置された直列共振子S11~S1m(nは2以上の自然数)と、第1経路r1と基準電位とを結ぶ経路上に配置された並列共振子P11~P1n(mは1以上の自然数)とを備える。
【0012】
また、BAWフィルタ1Aは、第1端子T1と直列共振子S11との経路上に配置されたインダクタL1と、直列共振子S11nと第2端子T2との経路と基準電位とを結ぶ経路上に配置されたインダクタL2とを備える。
【0013】
なお、直列共振子S11~S1mの数や並列共振子P11~P1nの数は所望のフィルタ特性に応じて適宜増減させてよい。また、直列共振子S11~S1mと並列共振子P11~P1nとの間隔等も適宜自由に設定してよい。
【0014】
図2は、本実施形態に係るBAWフィルタの構成の一例を模式的に示す断面図である。図2に示すように、BAWフィルタ1Aは、支持基材10、複数の弾性波共振子20及び連結用電極30を、支持基材10側からこの順に積層して備える。弾性波共振子20は、複数の直列共振子S11nと、複数の並列共振子P11nとを有する。BAWフィルタ1Aは、シート状(フィルム状)等、任意の形状に形成されてよい。
【0015】
本実施形態では、弾性波共振子20は、複数の直列共振子S11~S1mが直列に接続され、複数の並列共振子P1n~P1nが並列に接続されていれば、これらの配置等は特に限定されない。複数の直列共振子S11~S1mが入力端子と出力端子とを結ぶ第1経路上に直列に配置され、複数の並列共振子P1n~P1nが第1経路と基準電位とを結ぶ第2経路上に配置されれば、直列共振子S11~S1m及び並列共振子P1n~P1nの数及び配置等は特に限定されない。
【0016】
また、本実施形態では、弾性波共振子20は、直列共振子S11~S1mと並列共振子P1n~P1nとを共通の材料を用いて一体に形成されているが、それぞれ、別体で形成されてもよい。
【0017】
なお、本明細書では、3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の3次元直交座標系を用い、BAWフィルタ1Aの幅方向をX軸方向とし、長さ方向をY軸方向とし、高さ(厚さ)方向(垂直方向)をZ軸方向とする。Z軸方向の第2の電極22B側を+Z軸方向とし、支持基材10側を-Z軸方向とする。以下の説明において、説明の便宜上、+Z軸方向を上又は上方といい、-Z軸方向を下又は下方と称すが、普遍的な上下関係を表すものではない。
【0018】
BAWフィルタ1Aは、並列共振子P1n~P1nを構成する第4の電極22Dと、連結用電極30との間に周波数調整層25を設け、周波数調整層25の音響インピーダンスを第4の電極22Dの音響インピーダンス未満とし、かつ連結用電極30の音響インピーダンスを超える大きさとする。これにより、BAWフィルタ1Aは、第4の電極22D、周波数調整層25及び連結用電極30の音響インピーダンスをこの順に小さくなるようにグラデーションを付ける。BAWフィルタ1Aは、並列共振子P1n~P1nの圧電体層23で生じた振動が第4の電極22Dから連結用電極30を通る際にこれらの界面で生じる音響散乱を抑えることができるため、圧電体層23から連結用電極30に伝えられるエネルギーの減衰を小さく抑え、フィルタ特性を向上させることができる。
【0019】
[支持基材]
支持基材10は、図1に示すように、音響ミラー層21、弾性波共振子20及び連結用電極30の積層体が設置される基板であり、BAWフィルタ1Aに屈曲性を与えられるように、可撓性を有してよい。
【0020】
支持基材10を形成する材料としては、積層体を安定して支持することができれば、特に種類を問わず、任意の材料を用いることができ、例えば、金属箔、金属板、シリコン(Si)基板、無機誘電体基材、ガラス基材等を用いてもよい。
【0021】
金属箔を形成する材料としては、Au、Pt、Ag、Ti、Al、Mo、Ru、Cu等の金属を用いてよい。
【0022】
金属板を形成する材料としては、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、タンタル等を用いてよい。
【0023】
無機誘電体基材を形成する材料としては、例えば、MgO、サファイア等を用いてよい。
【0024】
支持基材10の厚さは、特に限定されず、BAWフィルタ1Aの用途、支持基材10の材料等に応じて適宜決定してよく、例えば、20μm~725μmとしてもよい。支持基材10の厚さが20μm~725μmであれば、音響ミラー層21、第1の電極22A、圧電体層23及び第2の電極22Bの積層体を含む積層体を安定して支持できる。
【0025】
本明細書において、支持基材10の厚さとは、支持基材10の主面に垂直な方向の長さをいう。支持基材10の厚さの測定方法は、特に限定されず、任意の測定方法を用いることができる。支持基材10の厚さは、例えば、支持基材10の断面において、任意の場所を測定した時の厚さとしてもよいし、任意の場所で数カ所測定し、これらの測定値の平均値としてもよい。以下、厚さの定義は、他の部材でも同様に定義する。
【0026】
[弾性波共振子20]
弾性波共振子20は、図1に示すように、支持基材10の上方の主面(上面)101に設けられ、音響ミラー層21、電極22と、圧電体層23とを備える。電極22は、第1の電極22Aと、第2の電極22B、第3の電極22C及び第4の電極22Dを有する。
【0027】
弾性波共振子20は、第1の電極22Aの上方の主面(上面)221A及び側面222Aと、第3の電極22Cの上方の主面(上面)221C及び側面222Cを被覆するように圧電体層23を設け、圧電体層23の上方の主面(上面)231に第2の電極22B及び第4の電極22Dを設けている。なお、弾性波共振子20は、第1の電極22A及び第3の電極22Cの上面221A及び221Cに圧電体層23を積層し、第1の電極22Aと、圧電体層23と、第2の電極22Bとをこの順に積層して備えてもよい。
【0028】
第1の電極22Aと第2の電極22Bは、圧電体層23を介して、向き合う位置に配置され、第1の電極22Aと第2の電極22Bは、圧電体層23を介して、向き合う位置に配置されている。
【0029】
弾性波共振子20は、直列共振子S11~S1m(mは2以上の自然数)及び並列共振子P11~P1n(nは1以上の自然数)を有する。
【0030】
直列共振子S1mは、音響ミラー層21、第1の電極22A、圧電体層23及び第2の電極22Bをこの順に厚さ方向に積層して備える。
【0031】
並列共振子P1nは、音響ミラー層21、第3の電極22C、圧電体層23、第4の電極22D及び周波数調整層25をこの順に厚さ方向に積層して備える。
【0032】
弾性波共振子20の各構成について説明する。
【0033】
(音響ミラー層)
音響ミラー層21は、図1に示すように、支持基材10の上面101に設けられる。音響ミラー層21は、固有音響インピーダンスが異なる音響多層膜で構成されてよい。音響ミラー層21は、所定の固有音響インピーダンスを有する高音響インピーダンス層と、高音響インピーダンス層よりも固有音響インピーダンスの低い低音響インピーダンス層とが、交互に2組以上積層された多層膜である。
【0034】
音響ミラー層21に共振振動が伝えられると、共振の振動エネルギーは音響ミラー層21で反射される。振動の波(弾性波)が高音響インピーダンス層を伝搬する速度と、低音響インピーダンス層を伝搬する速度は異なる。音響ミラー層21を構成する各層の界面で、干渉により反射波は強め合うように、膜厚を設計することで、共振の振動エネルギーを、支持基材10の影響を受けずに弾性波の入射方向に戻しつつ、熱エネルギーを支持基材10の方向に逃がす。
【0035】
高音響インピーダンス層は、W、Mo、Ta、ZnO等、密度又は体積弾性率が高い材料で形成される。低音響インピーダンス層は、高音響インピーダンス層よりも密度又は体積弾性率が低い材料で形成される。
【0036】
低音響インピーダンス層は、SiO等の密度又は体積弾性率が低い材料で形成される。低音響インピーダンス層はアモルファス層、又はアモルファスが支配的な層であってもよい。低音響インピーダンス層をアモルファスが支配的な層とすることで、高音響インピーダンス層での応力を緩和することもできる。
【0037】
高音響インピーダンス層と低音響インピーダンス層は、支持基材10上にスパッタリング等で形成してよい。
【0038】
(電極)
電極22は、第1の電極22Aと、第2の電極22B、第3の電極22C及び第4の電極22Dを有する。
【0039】
((第1の電極))
第1の電極22Aは、図2に示すように、音響ミラー層21の上方の主面(上面)211に設けられる。第1の電極22Aは、音響ミラー層21の一部に薄膜状に形成される。
【0040】
第1の電極22Aは、導電性を有する任意の材料を用いることができる。前記材料としては、Pt、Au、Ag、Cu、Mg、Al、Si、Ti、Cr、Fe、Ni、Zn、Rb、Zr、Nb、Mo、Rh、Pd、Ru、Sn、Ir、Ta及びW等の金属、これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
第1の電極22Aと圧電体層23の間の界面の凹凸や結晶粒界を抑制する観点からは、第1の電極22Aは非晶質の膜としてもよい。非晶質の膜とすることで、第1の電極22Aの表面の凹凸や、リークパスの要因となる結晶粒界の生成を抑制できる。
【0042】
第1の電極22Aの厚さは、適宜設計可能であり、例えば、40nm~300nmとしてもよい。第1の電極22Aの厚さが40nm~300nmであれば、第1の電極22Aは電極としての機能を発現できると共に、BAWフィルタ1Aの薄膜化を図ることができる。
【0043】
((第2の電極))
第2の電極22Bは、図2に示すように、圧電体層23の上方の主面(上面)231に設けられ、第1の電極22Aと対向するように配置されている。即ち、第2の電極22Bは、圧電体層23の上面231に、圧電体層23を介して、第1の電極22Aと向き合う位置にそれぞれ配置されている。
【0044】
第2の電極22Bは、導電性を有する任意の材料で形成することができ、第1の電極22Aと同様の材料、Pt、Au、Ag、Cu、Mg、Al、Si、Ti、Cr、Fe、Ni、Zn、Rb、Zr、Nb、Mo、Rh、Pd、Ru、Sn、Ir、Ta及びW等の金属、これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、第2の電極22Bの音響インピーダンスを高め、圧電体層23の振動により生じる運動エネルギーの閉じ込め効果を効果的に発揮させる点から、Pt、Cu、Cr及びRuが好ましい。BAWフィルタを構成する電極、圧電体層等に一般に用いられる金属等の音響インピーダンスを表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1より、第2の電極22Bの音響インピーダンスが上記の好ましい範囲内であれば、第2の電極22Bは、Pt、Cu、Cr及びRuを用いて形成し、圧電体層23の振動により生じる運動エネルギーの閉じ込め効果を効果的に発揮させることができる。
【0047】
第2の電極22Bは、第1の電極22Aと同様、圧電体層23の一部又は全面に薄膜状に形成されてもよいし、適宜任意の形状に形成してもよい。
【0048】
第2の電極22Bの厚さは、適宜設計可能であり、例えば、20nm~300nmが好ましい。第2の電極22Bの厚さが上記の好ましい範囲内であれば、電極としての機能が発現できると共に、BAWフィルタ1Aの薄膜化を図ることができる。
【0049】
((第3の電極))
第3の電極22Cは、図2に示すように、第1の電極22Aと同様、音響ミラー層21の上方の主面(上面)211に設けられる。第3の電極22Cは、第1の電極22Aと同様であるため、詳細は省略する。
【0050】
((第4の電極))
第4の電極22Dは、図2に示すように、第2の電極22Bと同様、圧電体層23の上面231に設けられ、第3の電極22Cと対向するように配置されている。即ち、第4の電極22Dは、圧電体層23の上面231に、圧電体層23を介して、第3の電極22Cと向き合う位置に配置されている。
【0051】
第4の電極22Dは、導電性を有する任意の材料で形成することができ、第2の電極22Bと同様、Pt、Au、Ag、Cu、Mg、Al、Si、Ti、Cr、Fe、Ni、Zn、Rb、Zr、Nb、Mo、Rh、Pd、Ru、Sn、Ir、Ta及びW等の金属を用いることができる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
第4の電極22Dの配置、形状及び厚さ等は、第2の電極22Bと同様であるため、詳細は省略する。
【0053】
(圧電体層)
圧電体層23は、図1に示すように、第1の電極22Aの上方の主面(上面)221A及び側面222Aと、第3の電極22Cの上方の主面(上面)221C及び側面222Cとを覆うように設けられる。圧電体層23は、無機材料を主成分として含むことが好ましい。なお、主成分とは、無機材料の含有量が、95atm%以上であり、好ましくは98atm%以上であり、より好ましくは99atm%以上であることをいう。
【0054】
無機材料としては、ペロブスカイト型の結晶構造を有する圧電材料(ペロブスカイト型結晶材料)やウルツ鉱型の結晶構造を有する圧電材料(ウルツ鉱型結晶材料)等を用いることができる。
【0055】
ウルツ鉱型の結晶構造は、一般式AB(Aは、陽性元素であり、Bは陰性元素である。)で表される。ウルツ鉱型結晶材料は、六方晶の単位格子を持ち、c軸と平行な方向に分極ベクトルを有する。
【0056】
ウルツ鉱型結晶材料としては、一定値以上の圧電特性を示し、200℃以下の低温プロセスで結晶化させることができる材料を用いることが好ましい。ウルツ鉱型結晶材料は、一般式ABで表わされる陽性元素Aとして、Zn、Al、Ga、Cd及びSi等を含む。ウルツ鉱型結晶材料としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、炭化ケイ素(SiC)等を用いることができる。これらの中でも、ウルツ鉱型結晶材料としては、低温プロセスでも比較的良好にc軸配向し易い点から、ZnOが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。ウルツ鉱型結晶材料を2種以上併用する場合、これらのうちの1種以上の成分を主成分として含み、その他の成分を任意成分として含んでもよい。また、それぞれの材料を積層してもよいし、複数のターゲットを用いて一つの層として形成してもよい。
【0057】
ウルツ鉱型結晶材料は、ZnOを含むことが好ましく、ZnOから実質的になることがより好ましく、ZnOのみからなることがさらに好ましい。「実質的に」とは、ZnO以外に、製造過程で不可避的に含まれ得る不可避不純物を含んでもよいことを意味する。
【0058】
ウルツ鉱型結晶材料等の無機材料は、上記の、ZnO、ZnS、ZnSe及びZnTeの他に、Mg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、又はV、Ti、Zr、Si、Sr、Li等の金属を所定の範囲の割合で含んでもよい。これらの成分は、元素の状態で含まれてもよいし、酸化物の状態で含まれてもよい。中でも、圧電体層23の圧電特性の指標となるK値と圧電特性の急峻性の指標となるQ値とを両立し、優れた圧電特性を発揮する点から、無機材料としては、ZnOにMgがドープされたMgZnOが好ましい。
【0059】
なお、K値とは、電気機械結合定数kの値である。圧電体層23に含まれる圧電材料の電気機械結合定数kの二乗値(k2値)は、圧電材料に対して定められる、電気的エネルギーのエネルギー変換効率を示す。電気的エネルギーのエネルギー変換効率が高いほど、圧電体層23を備えるBAWフィルタ1Aの動作効率が良く、BAWフィルタ1Aは、優れた圧電特性を有する。同一材料、および組成において、圧電体層23に含まれる圧電材料の結晶配向の乱れが小さくなるほど、圧電材料のK2値は大きくなりながら次第に一定となる。即ち、圧電材料の結晶配向の乱れが小さくなるほど、圧電材料のエネルギー変換効率が高まりながら次第に一定となり、圧電性は一定となる。よって、電気機械結合定数kが大きいほど、K2値が大きくなり、圧電材料のエネルギー変換効率は高くなるため、圧電特性が高くなることを意味する。また、電気機械結合定数kが大きいほど、結晶配向の乱れが小さくなるため、結晶配向性が高くなることを意味する。
【0060】
Q値とは、周波数特性の鋭さ(尖鋭度)を表す値である。Q値が大きいほど、周波数特性が鋭く表れることを意味する。
【0061】
圧電体層23中の添加元素の含有量は、特に限定されるものではなく、圧電体層23がウルツ鉱型の結晶構造を有することができる範囲内であればよい。なお、圧電体層23に含まれる添加元素の含有量の測定方法は、測定可能な方法であれば特に限定されない。圧電体層23に含まれる添加元素の含有量は、例えば、ラザフォード後方散乱分析法(RBS)により、測定装置としてPelletron 3SDH(NEC社製)を使用して測定してもよいし、二次イオン質量分析法により、ダイナミックSIMS(D-SIMS)等を使用して測定してもよい。
【0062】
圧電体層23の厚さは、特に限定されず、十分な圧電特性、即ち圧力に比例した分極特性を有すると共に、圧電体層23にクラック等が発生することを低減して、安定して圧電特性を発揮できる厚さであればよい。圧電体層23の厚さとしては、例えば、50nm~5μmであればよい。圧電体層23の厚さが50nm~5μmであれば、クラックの発生が抑えられると共に、十分な圧電特性を発揮できる。
【0063】
圧電体層23の結晶配向性は、5°以下であることが好ましい。結晶配向性が5°以下であれば、圧電体層23に含まれる圧電材料のc軸方向への結晶配向性(c軸配向性)が良く、エネルギー変換効率を高められるため、圧電体層23の厚さ方向への圧電特性が高められる。圧電体層23が圧電材料としてZnOを含む場合、ZnOは、ウルツ鉱型の結晶構造を有し、他の結晶構造を有する圧電材料よりも結晶配向性と圧電特性との相関が高い。ZnOの結晶配向性が5°以下であれば、エネルギー変換効率がより高め易いため、BAWフィルタ1Aの圧電特性を向上させることができる。
【0064】
圧電体層23の結晶配向性は、圧電体層23の表面をX線ロッキングカーブ(XRC:X-ray Rocking Curve)法で測定した時に得られる半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)で評価され得る。即ち、圧電体層23の結晶配向性は、XRC法により、圧電体層23に主成分として含まれる圧電材料の結晶の(0002)面からの回折を測定したときに得られるロッキングカーブの、ピーク波形のFWHMで表わされる。圧電体層23に含まれる圧電材料がZnO等のウルツ鉱型結晶構造を有する場合、FWHMは、圧電材料を構成する結晶同士のc軸方向の配列の平行の度合いを示す。そのため、XRC法により得られるロッキングカーブのピーク波形のFWHMは、圧電体層23のc軸配向性の指標にできる。よって、ロッキングカーブのFWHMが小さいほど、圧電体層23のc軸方向の結晶配向性が良いと評価できる。
【0065】
また、圧電体層23の結晶配向性は、XRC法により、圧電体層23に圧電材料の特定の結晶面(例えば、ZnOの結晶の(0002)面)からの回折を測定して得られるロッキングカーブのFWHMの他に、ピーク強度も含めて評価してよい。即ち、圧電体層23の結晶配向性は、ピーク強度の積分値をFWHMで割った値を評価値として用いて評価してもよい。例えば、ピーク強度の積分値をFWHMで割った評価値が大きいほど、圧電体層23の結晶配向性が良いと評価できる。
【0066】
圧電体層23は、無機材料を2種以上併用する場合、それぞれの無機材料からなる圧電体層を積層して構成されてもよい。
【0067】
(周波数調整層25)
周波数調整層25は、図2に示すように、第4の電極22Dの上方の主面(上面)221Dに設けられている。周波数調整層25は、その上面及び側面の少なくとも一部が連結用電極30と接続されていてよい。
【0068】
周波数調整層25を形成する材料は、第4の電極22Dと連結用電極30との間の音響インピーダンスを有する材料であればよく、周波数調整層25を形成する材料としては、例えば、Au、Ag、Cuを用いることができる。これらは、1種単独で用いてもよいし、これらの2種以上の組み合わせを用いてもよい。
【0069】
周波数調整層25の音響インピーダンスは、第4の電極22Dの音響インピーダンス未満であり、かつ連結用電極30の音響インピーダンスを超える範囲内である。
【0070】
周波数調整層25の音響インピーダンスと第4の電極22Dの音響インピーダンスとの差(音響インピーダンス差)は、30×10N/m以下であることが好ましく、28N/m以下であることがより好ましく、23N/m以下であることがさらに好ましい。音響インピーダンス差が30N/m以下であれば、周波数調整層25の音響インピーダンスは、連結用電極30よりも第4の電極22Dよりとなる。圧電体層23で生じる音波は、圧電体層23の共振により生じる高周波であるため、第4の電極22Dから周波数調整層25を通る際に、周波数調整層25の音響インピーダンスが第4の電極22Dに近ければ、第4の電極22Dと周波数調整層25との界面で生じる音響散乱の大きさを抑えることができる。
【0071】
周波数調整層25は、蒸着、塗布法等、一般に用いられる方法を用いて形成されてよい。
【0072】
周波数調整層25の厚さは、第4の電極22Dの厚さの50%以下であることが好ましく、30 %以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。周波数調整層25の厚さが第4の電極22Dの厚さの10%以下であれば、周波数調整層25は、電極抵抗への影響が小さくなり、電気伝導において第4の電極が支配的になる。
【0073】
[連結用電極]
連結用電極30は、図2に示すように、第2の電極22Bの上面221B及び側面222Bと、第4の電極22Dの上面221D及び222Dと、圧電体層23の上面231と、周波数調整層25の上面251及び側面252とに設けられ、第2の電極22Bと第4の電極22Dとを導通させる配電層として機能する。
【0074】
連結用電極30を形成する材料は、第2の電極22B及び第4の電極22Dと同様の材料を用いてよい。
【0075】
BAWフィルタ1Aの製造方法は、特に限定されず適宜任意の製造方法を用いることができる。BAWフィルタ1Aの製造方法の一例について説明する。
【0076】
まず、所定の大きさに形成された支持基材10の上面101に、高音響インピーダンス層と低音響インピーダンス層とを一組として、高音響インピーダンス層と低音響インピーダンス層を交互に積層して、音響ミラー層21を形成する。
【0077】
高音響インピーダンス層及び低音響インピーダンス層の形成方法は、特に限定されず、ドライプロセス及びウエットプロセスのいずれでもよい。高音響インピーダンス層及び低音響インピーダンス層の形成方法としてドライプロセスを用いれば、薄い高音響インピーダンス層及び低音響インピーダンス層を容易に形成できる。
【0078】
ドライプロセスとしては、例えば、スパッタリング、蒸着等が挙げられ、ウエットプロセスとしては、例えば、めっき等が挙げられる。
【0079】
スパッタリングとしては、例えば、DC(直流)又はRF(高周波)のマグネトロンスパッタリング法等を用いることができる。
【0080】
高音響インピーダンス層及び低音響インピーダンス層の形成方法としてスパッタリングを用いることで、密度が高く、薄い高音響インピーダンス層及び低音響インピーダンス層を容易に形成できる。そのため、高音響インピーダンス層及び低音響インピーダンス層の形成方法としては、スパッタリングが好ましい。
【0081】
高音響インピーダンス層としては、例えば、DC又はRFのマグネトロンスパッタリング法により成膜された、W、Mo、Ta及びZnO等、密度又は体積弾性率が高い材料で形成される薄膜等を用いることができる。
【0082】
低音響インピーダンス層としては、例えば、DC又はRFのマグネトロンスパッタリング法により成膜された、SiO膜等の酸化物を用いることができる。
【0083】
次に、音響ミラー層21の上面211に、第1の電極22Aを成膜(形成)する。第1の電極22Aの形成方法は、特に限定されず、高音響インピーダンス層及び低音響インピーダンス層の形成方法と同様、ドライプロセス及びウエットプロセスのいずれを用いてもよい。ドライプロセス及びウエットプロセスの詳細は、高音響インピーダンス層及び低音響インピーダンス層の形成方法と同様であるため、詳細は省略する。
【0084】
第1の電極22Aは、音響ミラー層21の上面211の全面に形成されていてもよい。また、第1の電極22Aは、エッチング等により所定の形状を有するパターンに加工して、適宜任意の形状に形成してもよい。
【0085】
次に、音響ミラー層21の上面211に、第3の電極22Cを成膜(形成)する。第3の電極22Cは、第1の電極22Aを同様に形成できるため、詳細は省略する。
【0086】
また、第3の電極22Cは、第1の電極22Aを同時に形成してもよいし、第1の電極22Aよりも先に形成してもよい。
【0087】
次に、第1の電極22Aの上面221A及び第3の電極22Cの上面221Cに圧電体層23を形成する。例えば、圧電材料を構成する元素を含むターゲットを用いて、Ar等の不活性ガスと微量の酸素を含む混合ガス雰囲気中で、DC又はRFマグネトロンスパッタリング法により成膜してよい。第1の電極22Aの上面221A及び第3の電極22Cの上面221Cに圧電材料をスパッタリングすることで、圧電体層23が成膜される。
【0088】
支持基材10、音響ミラー層21及び第1の電極22Aからなる積層体は、スパッタリング装置の成膜室の、アノードとなる成膜板に配置してよい。成膜板は、例えば、回転可能でもよい。支持基材10、音響ミラー層21、第1の電極22A及び第2の電極22Bからなる積層体を成膜板に配置すれば、第1の電極22Aの上面221A及び第3の電極22Cの上面221Cに圧電体層23をバッチ式で成膜できる。
【0089】
圧電材料を構成する元素を含むターゲットは、カソードとして用いる。
【0090】
圧電材料が、例えば、ウルツ鉱型結晶材料を含む場合、ターゲットにはウルツ鉱型結晶材料を含むターゲットを用いてよい。ウルツ鉱型結晶材料を含むターゲットとしては、圧電体層23に主成分として含まれるウルツ鉱型結晶材料を含有する複数又は単数のターゲットを用いてよい。複数又は単数のターゲットは、成膜板と間隔を隔てて対向するように配置してよい。複数のターゲットをカソードとして用いる場合には多元スパッタリング法を用い、単数のターゲットをカソードとして用いる場合には一次元スパッタリング法を用いることで、ウルツ鉱型結晶材料を含む圧電体層23を形成できる。
【0091】
複数のターゲットをカソードとして用いる場合、それぞれのターゲットごとに、圧電体層23に主成分として含まれるウルツ鉱型結晶材料を構成する、異なる種類の材料を含む。複数のターゲットを用いる場合、例えば、Znを含むターゲットと、Si又はSnを含むターゲットと、Al又はMgを含むターゲットとを用いてよい。なお、それぞれのターゲットは、酸素を含む金属酸化物ターゲットを用いてよい。複数のターゲットは、互いに間隔を置いて成膜室に配置してよい。スパッタリングの際には、圧電体層23に含まれるウルツ鉱型結晶材料の種類等に応じて、それぞれのターゲット毎に印加する電力を調整して、圧電体層23を構成するそれぞれの材料同士の原子割合を調整する。
【0092】
単数のターゲットをカソードとして用いる場合、単数のターゲットが、圧電体層23に含まれるウルツ鉱型結晶材料を含有する。単数のターゲットを用いる場合として、圧電体層23に含まれるウルツ鉱型結晶材料同士の原子割合を調整した合金ターゲットを用いてよい。例えば、Znと、Si又はSnと、Al又はMgとを含有する合金ターゲットを用いることができる。合金ターゲットは、ウルツ鉱型結晶材料と酸素を含む金属酸化物ターゲットを用いてよい。
【0093】
圧電材料が、例えば、ZnOからなるウルツ鉱型結晶材料である場合、ターゲットにはZnO焼結体のターゲットを用いてよい。スパッタリング装置内にZnO焼結体のターゲットを設置して、Ar等の不活性ガスと酸素を含む混合ガスをスパッタリング装置内に供給する。不活性ガスと酸素を含む混合ガス雰囲気下において、ZnO焼結体のターゲットを用いてスパッタリングすることで、第1の電極22Aの上面221A及び第3の電極22Cの上面221Cに、ZnOの成膜時に入り込む不活性ガスの量を抑えながら、圧電体層23を得ることができる。
【0094】
圧電材料が、例えば、ZnOとMgOとを所定の質量比で含むMg添加ZnOからなるウルツ鉱型結晶材料である場合、ZnO焼結体からなるターゲットとMgO焼結体からなるターゲットを用いた多元スパッタリング法を用いてよい。また、他の方法として、予め所定の割合でMgOを添加したZnO焼結体のターゲット等のZnO及びMgOを含む合金ターゲットを用いた一次元スパッタリング法を用いてよい。
【0095】
多元スパッタリング法を用いる場合、スパッタリング装置として多元スパッタ装置を用いて、Ar等の不活性ガスと酸素を含む混合ガスを多元スパッタ装置内に供給する。不活性ガスと酸素を含む混合ガス雰囲気下において、ZnO焼結体のターゲットとMgO焼結体のターゲットを用いて同時かつ独立に第1の電極22Aの上面221A及び第3の電極22Cの上面221Cにスパッタリングすることで、第1の電極22Aの上面221A及び第3の電極22Cの上面221CにMg添加ZnOで構成された圧電体層23を成膜できる。
【0096】
一次元スパッタリング法を用いる場合、スパッタリング装置を用いて、Ar等の不活性ガスと酸素を含む混合ガス雰囲気下において、例えば、予め所定の割合でMgOを添加したZnO焼結体のターゲットを用いてスパッタリングすることで、第1の電極22Aの上面221A及び第3の電極22Cの上面221Cに、Mg添加ZnO薄膜で構成された圧電体層23を成膜できる。
【0097】
スパッタリングする際のガス雰囲気は、不活性ガス雰囲気としてよいし、不活性ガスと酸素を含む混合ガス雰囲気としてよい。
【0098】
スパッタリングする際のガス雰囲気内の圧力は、圧電材料の種類、スパッタリング法等に応じて適宜決定してよく、例えば、0.1Pa~2.0Paとしてよい。
【0099】
圧電体層23の成膜温度は、特に限定されず、BAWフィルタ1Aの層構成等に応じて適宜選択してよく、例えば、200℃以下で圧電体層23を成膜してもよい。
【0100】
第1の電極22A及び圧電体層23の成膜にスパッタリング法を用いることで、化合物のターゲットの組成比をほぼ保った状態で付着力の強い均一な膜を形成できる。また、時間の制御だけで、所望の厚さの第1の電極22A及び圧電体層23を精度良く形成することができる。
【0101】
圧電体層23は、複数積層して構成してもよい。
【0102】
次に、圧電体層23の上面231に、所定の形状を有する第2の電極22Bを形成する。第2の電極22Bは、第1の電極22Aと同様の形成方法を用いて形成できる。
【0103】
第2の電極22Bの厚さは、適宜設計可能であり、例えば、20nm~300nmとしてよい。
【0104】
第2の電極22Bは、圧電体層23の上面231の全面に形成されていてもいいし、適宜任意の形状に形成してもよい。
【0105】
次に、圧電体層23の上面231に、第4の電極22Dを成膜(形成)する。第4の電極22Dは、第2の電極22Bを同様に形成できるため、詳細は省略する。
【0106】
また、第4の電極22Dは、第2の電極22Bを同時に形成してもよいし、第2の電極22Bよりも先に形成してもよい。
【0107】
次に、第4の電極22Dの上面221Dに周波数調整層25を形成する。周波数調整層25の形成方法は、特に限定されず、高音響インピーダンス層及び低音響インピーダンス層の形成方法と同様、ドライプロセス及びウエットプロセスのいずれを用いてもよい。ドライプロセス及びウエットプロセスの詳細は、高音響インピーダンス層及び低音響インピーダンス層の形成方法と同様であるため、詳細は省略する。
【0108】
第4の電極22Dの上面221Dに周波数調整層25を形成することで、BAWフィルタ1Aが形成される。
【0109】
なお、第2の電極22Bの形成後に、BAWフィルタ1Aの全体を加熱処理してもよい。この加熱処理により、電極22を結晶化させ、低抵抗化させることができる。加熱処理は、必須ではなく、支持基材10が耐熱性のない材料で形成されている場合等では、BAWフィルタ1Aの形成後に行わなくてもよい。
【0110】
このように、本実施形態に係るBAWフィルタ1Aは、支持基材10上に、複数の直列共振子S11~S1m及び並列共振子P11~P1nを備える。直列共振子S11~S1mは、第1の電極22A、第1の圧電体層23A及び第2の電極22Bをこの順に積層して備え、並列共振子P11~P1nは、第3の電極22C、第2の圧電体層23B、第4の電極22D及び周波数調整層25をこの順に積層して備える。BAWフィルタ1Aは、直列共振子S11~S1mの第2の電極22Bと、並列共振子P11~P1nの第4の電極22Dとを連結用電極30により電気的に接続し、周波数調整層25の音響インピーダンスを、第4の電極22Dの音響インピーダンス未満とし、かつ連結用電極30の音響インピーダンスを超える大きさとする。BAWフィルタ1Aは、第4の電極22D、周波数調整層25及び連結用電極30のそれぞれの音響インピーダンスをこの順に小さくして、音響インピーダンスの大きさにグラデーションを付けている。
【0111】
仮に、周波数調整層25の音響インピーダンスが、連結用電極30の音響インピーダンスと同等かそれ以下であると、図3に示すように、第4の電極22Dの音響インピーダンスと周波数調整層25の音響インピーダンスとの差が大きくなるため、第4の電極22Dと周波数調整層25との界面で圧電体層23の振動で生じる音波が散乱することで、音響散乱の大きさは大きくなる(図3(a)参照)。第4の電極22Dと周波数調整層25との界面で生じる音響散乱が大きいと、圧電体層23の圧電効果によって取り出した電気エネルギーが第4の電極22D及び連結用電極30に伝わり、出力する際のエネルギーのロスが大きくなる
【0112】
本実施形態では、BAWフィルタ1Aは、第4の電極22D、周波数調整層25及び連結用電極30のそれぞれの音響インピーダンスをこの順に小さくなるように、音響インピーダンスの大きさにグラデーションを付けているため、第4の電極22Dと周波数調整層25との界面で圧電体層23の振動で生じる音波の散乱を小さく抑え、音響散乱の大きさを小さくできる(図3(b)参照)。第4の電極22Dと周波数調整層25との界面で生じる音響散乱が小さくなることで、圧電体層23の圧電効果によって取り出した電気エネルギーが第4の電極22D及び連結用電極30に伝わり、出力する際のエネルギーのロスは小さく抑えることができる(図3(b)参照)。
【0113】
BAWフィルタ1Aは、並列共振子P1n~P1nの圧電体層23で生じた振動が第4の電極22D、周波数調整層25及び連結用電極30をそれぞれ通過する際に、それぞれの部材の音響インピーダンスの差に起因して、それぞれの部材同士の界面で生じる音響散乱を抑えることができるため、圧電体層23の圧電効果によって取り出した電気エネルギーの減衰を小さく抑えることができる。
【0114】
BAWフィルタ1Aの電気エネルギーの減衰は、例えば、図4に示すように、メイソン(Mason)の等価回路モデルに基づいて散乱パラメータ(Sパラメータ)を求めた際に得られる曲線の減衰量からインピーダンス比を減じた値である挿入損失の大きさより求められる。即ち、挿入損失が0dBに近いほど、BAWフィルタ1Aの電気エネルギーの減衰は小さく抑えられ、フィルタ特性が優れていることを意味する。
【0115】
よって、BAWフィルタ1Aは、圧電体層23の振動で生じた電気エネルギーの減衰を小さく抑えることができるため、音響散乱を小さく抑え、フィルタ特性を向上できる。
【0116】
BAWフィルタ1Aは、第4の電極22Dの音響インピーダンスと周波数調整層25の音響インピーダンスとの差を30N/m以下とすることができる。BAWフィルタ1Aは、図5に示すように、入力端子に入力された入力信号(電気エネルギー)を、圧電体層23で圧電効果による振動に変換(運動エネルギー)し、出力信号(電気エネルギー)として出力端子から出力する。運動エネルギーから電気エネルギーに変換する際に、圧電体層23で生じる振動が電極22よりも外側に漏れてしまうと、出力として取り出せる電気エネルギーが低下する。このため、BAWフィルタ1Aは、圧電体層23で生じる振動が電極22よりも外側に漏れることを抑えるため、第4の電極22Dは重い金属で形成し、圧電体層23に振動による運動エネルギーを閉じ込める。このとき、周波数調整層25の音響インピーダンスが連結用電極30の音響インピーダンスに近いと、圧電体層23で生じた運動エネルギーの閉じ込めを担う層が第4の電極22Dのみになり、変換効率が低下する。BAWフィルタ1Aは、第4の電極22Dの音響インピーダンスと周波数調整層25の音響インピーダンスとの差を30N/m以下とし、周波数調整層25の音響インピーダンスを第4の電極22Dの音響インピーダンスに近づけることで、圧電体層23で振動により生じたエネルギーを圧電体層23と周波数調整層25により閉じ込めることができ、出力として取り出せる電気エネルギーのロスを小さく抑えることができる。よって、BAWフィルタ1Aは、圧電体層23で生じる振動によるエネルギーの変換効率を向上できる。
【0117】
BAWフィルタ1Aは、連結用電極30を周波数調整層25と接続できる。これにより、BAWフィルタ1Aは、周波数調整層25を電極して用いることができるため、取り出される電気エネルギーを確実に出力できる。
【0118】
BAWフィルタ1Aは、周波数調整層25を、Au、Cu及びAgのうち何れか1つ以上の成分を含むことができる。これにより、BAWフィルタ1Aは、周波数調整層25の音響インピーダンスを第4の電極22Dの音響インピーダンスに簡易に近づけることができる。よって、BAWフィルタ1Aは、出力として取り出せる電気エネルギーのロスを簡易に小さく抑えることができるため、圧電体層23で生じる振動によるエネルギーの変換効率を簡易に向上できる。
【0119】
BAWフィルタ1Aは、第2の電極22B及び第4の電極22Dに、Ru、Pt、Au、Ag及びCuのうち何れか1つ以上の成分を含むことができる。これにより、BAWフィルタ1Aは、第2の電極22B及び第4の電極22Dの音響インピーダンスを高くしつつ電極として有効に用いることができる。
【0120】
BAWフィルタ1Aは、圧電体層23をMgがドープされたZnO(MgZnO)を圧電材料として含むことができる。一般に、圧電材料に他の元素をドープして形成した圧電体層のK値とQ値とはトレードオフの関係にあり、圧電素子を、例えば、5G帯等の高周波域の周波数の信号のみを取り出し、それ以外の周波数帯の信号を取り除く高周波フィルタ等に使用すると、高周波域において必要なK値を得るとQ値が低下する傾向にある。圧電体層23が、MgZnOを圧電材料として含む場合には、MgZnOはMg濃度に対してK値とQ値とのトレードオフが無く、高周波域においても、K値及びQ値を両立できる。BAWフィルタ1Aは、圧電体層23にMgZnOを圧電材料として含むことで、高周波フィルタ等の高周波域において圧電特性を安定して発揮できる。
【0121】
また、BAWフィルタ1Aは、音響散乱を小さく抑え、フィルタ特性を向上させ、優れた圧電特性を有することができることから、BAWフィルタ以外に、電子機器において正圧電効果又は逆圧電効果を利用した電子部品として種々の用途の電子機器に用いることもできる。
【0122】
(変形例)
なお、本実施形態においては、BAWフィルタ1Aは、上記構成に限定されず、第4の電極22Dの上面221Dに周波数調整層25を備え、周波数調整層25の音響インピーダンスを、第4の電極22Dの音響インピーダンス未満とし、かつ連結用電極30の音響インピーダンスを超える大きさとして、音響散乱を小さく抑え、フィルタ特性を向上できれば、他の構成でもよい。BAWフィルタ1Aの他の構成の一例を以下に示す。
【0123】
本実施形態では、BAWフィルタ1Aは、音響ミラー層21を音響多層膜で構成しているが、音響ミラー層21は、空間で構成してもよい。例えば、図6に示すように、BAWフィルタ1Bは、支持基材10の上面101に2つの窪み部11を設けて、支持基材10の窪み部11と第1の電極22A及び第3の電極22Cとの間に形成された空間Sを音響ミラー層21としての機能を発揮させてもよい。
【0124】
BAWフィルタ1Bは、空間Sを音響ミラー層21として機能させることができるため、支持基材10の上面101に第1の電極22A及び第3の電極22Cを直接設けることができる。これにより、BAWフィルタ1Bは、全体の厚さを薄くできるため、小型化を図ることができる。
【0125】
本実施形態では、BAWフィルタ1Aは、音響ミラー層21を備えなくてもよい。図7に示すように、BAWフィルタ1Cでは、弾性波共振子20が電極22と圧電体層23を備え、直列共振子S1mは、第1の電極22A、圧電体層23及び第2の電極22Bを、支持基材10側からこの順に厚さ方向に積層して備え、並列共振子P1nは、第3の電極22C、圧電体層23、第4の電極22D及び周波数調整層25を支持基材10側からこの順に厚さ方向に積層して備えてよい。
【0126】
この場合、支持基材10は、導電性を有する基板でもよい。支持基材10が導電性を有する基板である場合、支持基材10が第1の電極22A及び第3の電極22Cとしても機能できるため、BAWフィルタ1Cは、第1の電極22A及び第3の電極22Cを備えなくてもよい。この場合、弾性波共振子20は、支持基材10、電極22及び圧電体層23で構成し、直列共振子S1mは、支持基材10、圧電体層23及び第2の電極22Bを、支持基材10側からこの順に厚さ方向に積層して備え、並列共振子P1nは、支持基材10、圧電体層23、第4の電極22D及び周波数調整層25を支持基材10側からこの順に厚さ方向に積層して備えてよい。
【0127】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【実施例0128】
以下、実施例及び比較例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
【0129】
<サンプルの作製>
[実施例1]
(音響ミラー層の作製)
高音響インピーダンス層及び低音響インピーダンス層からなる音響ミラー層を形成した。
1.高音響インピーダンス層の作製
4インチSiウェハ基材の上に、Ar雰囲気中でDCマグネトロンスパッタ法により、タングステンスパッタリングターゲットを用いて、タングステン(W)膜を高音響インピーダンス層として成膜した。高音響インピーダンス層の音響インピーダンスは、1.0×10N/mであり、高音響インピーダンス層の厚さは、218nmとした。
2.低音響インピーダンス層の作製
高音響インピーダンス層の上に、ArとO2の混合ガス(Arガス:O2ガス=90:10)雰囲気中でRFマグネトロンスパッタ法により、シリコンスパッタリングターゲットを用いて、SiO膜を低音響インピーダンス層として成膜した。低音響インピーダンス層の音響インピーダンスは、1.3×10N/mであり、低音響インピーダンス層の厚さは、242nmとした。
(第3の電極の作製)
音響ミラー層の上に、Ar雰囲気中でDCマグネトロンスパッタ法により、アルミニウム及びPtスパッタリングターゲットを用いて、Pt/Al膜を第1の電極として成膜した。第3の電極の音響インピーダンスは、1.7×10N/mであり、第3の電極の厚さは、Pt膜を45nm、Al膜を60nmとした。
(圧電体層の作製)
音響ミラー層の上に、ArとO2の混合ガス(Arガス:O2ガス=91:9)雰囲気中で、RFマグネトロンスパッタリング法により、ZnOとMgOとが質量比で82wt%:18wt%に調整されたスパッタリングターゲットを用いて、ZnOとMgOとが質量比で82wt%:18wt%に調整された、六方晶系のウルツ鉱型構造を有するMg添加ZnO薄膜を圧電体層として形成した。Mg添加ZnO薄膜の厚さは、250nmとした。
(第4の電極の作製)
圧電体層の上に、Ar雰囲気中でDCマグネトロンスパッタ法により、Ptスパッタリングターゲットを用いて、Pt層を第4の電極として成膜した。第4の電極の音響インピーダンスは、57.1×10N/mであり、第4の電極の厚さは、55nmとした。
(周波数調整層の作製)
第4の電極の上に、Ar雰囲気中で、DCマグネトロンスパッタリング法により、Auスパッタリングターゲットを用いて、Au層を周波数調整層として成膜した。周波数調整層の音響インピーダンスは、39.3×10N/mであり、周波数調整層の厚さは、13nmとした。
(連絡用電極の作製)
周波数調整層の上に、Ar雰囲気中で、DCマグネトロンスパッタリング法により、Alスパッタリングターゲットを用いて、Al層を連絡用電極として成膜した。連絡用電極の音響インピーダンスは、13.8×10N/mであり、周波数調整層の厚さは、70nmとした。
【0130】
これにより、基材の上に、音響ミラー層、第3の電極、圧電体層、第4の電極、周波数調整層及び連絡用電極をこの順に積層した積層体をBAWフィルタの特性評価用のサンプルとして作製した。
【0131】
[実施例2~6、比較例1~3]
実施例1において、第4の電極及び周波数調整層の種類及び厚さと、連絡用電極の種類との何れかを表1に示す種類及び厚さに変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、サンプルを作製した。
【0132】
各実施例及び比較例のサンプルを構成する、第4の電極、周波数調整層及び連絡用電極の、種類、音響インピーダンス及び厚さと、周波数調整層の第4の電極との音響インピーダンスの差を表1に示す。
【0133】
<フィルタ特性の測定>
各実施例及び比較例のサンプルにおいて表2に示す周波数が発生したと仮定した時の、各実施例及び比較例のサンプルのフィルタ特性として、通過帯域内の挿入損失(抑圧度(単位:dB)を、メイソン(Mason)の等価回路モデルに基づいて散乱パラメータ(Sパラメータ)をシミュレーションして算出した。算出結果を表2に示す。なお、実施例1及び比較例1のフィルタ特性の算出結果を図7に示す。図8では、実施例1では、中心周波数は、約5.7GHzであり、比較例1では、中心周波数は、約5.9GHzであった。
【0134】
【表2】
【0135】
表2より、各実施例では、BAWフィルタのフィルタ特性は-1.98dB以上であった。各比較例では、BAWフィルタのフィルタ特性は-2.01dB以下であった。また、図4より、各実施例では、BAWフィルタの中心周波数を調整可能であった。
【0136】
よって、各実施例のBAWフィルタは、周波数調整層の音響インピーダンスを、第4の電極の音響インピーダンスと連結用電極の音響インピーダンスとの間とすることで、音響の損失を抑え、フィルタ特性の劣化を抑制できることが確認された。よって、各実施例のBAWフィルタは、高周波フィルタとして有効に用いることができるといえる。
【0137】
なお、本発明の実施形態の態様は、例えば、以下の通りである。
<1> 支持基材上に、複数の直列共振子と、前記直列共振子に対して並列に接続された、複数の並列共振子とを備えるBAWフィルタであって、
前記直列共振子は、第1の電極、第1の圧電体層及び第2の電極をこの順に積層して備え、
前記並列共振子は、第3の電極、第2の圧電体層、第4の電極及び周波数調整層をこの順に積層して備え、
前記第2の電極と前記第4の電極とが、連結用電極により電気的に接続され、
前記周波数調整層の音響インピーダンスが、前記第4の電極の音響インピーダンス未満であり、かつ前記連結用電極の音響インピーダンスを超えるBAWフィルタ。
<2> 前記第4の電極の音響インピーダンスと前記周波数調整層の音響インピーダンスとの差が、30N/m以下である<1>に記載のBAWフィルタ。
<3> 前記連結用電極が、前記周波数調整層と接続される<1>又は<2>に記載のBAWフィルタ。
<4> 前記周波数調整層は、Au、Cu及びAgのうち何れか1つ以上の成分を含む<1>~<3>の何れか一つに記載のBAWフィルタ。
<5> 前記第2の電極及び前記第4の電極は、Ru、Cu及びTiのうち何れか1つ以上の成分を含む<1>~<4>の何れか一つに記載のBAWフィルタ。
<6> 前記支持基材と前記第1の電極及び前記第3の電極との間に、音響ミラー層を有し、
前記音響ミラー層は、高音響インピーダンス層と低音響インピーダンス層が交互に一対以上積層された積層体、又は前記支持基材と前記第1の電極及び前記第3の電極との間に形成された空隙である<1>~<5>の何れか一つに記載のBAWフィルタ。
【符号の説明】
【0138】
1A、1B、1C BAWフィルタ
10 支持基材
20 弾性波共振子
21 音響ミラー層
22 電極
22A 第1の電極
22B 第2の電極
22C 第3の電極
22D 第4の電極
23 圧電体層
25 周波数調整層
30 連結用電極
101、211、221A、221B、221C、221D、231、251 主面(上面)
S11~S1m 直列共振子
P11~P1n 並列共振子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8