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▶ アース製薬株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142738
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】加熱蒸散装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/20 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A01M1/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055042
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】住田 一真
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA12
2B121CA04
2B121CA15
2B121CA18
2B121CA19
2B121CA20
2B121CA22
2B121CA32
2B121CA36
2B121CA44
2B121CA54
2B121CA59
2B121CA76
(57)【要約】
【課題】 加熱蒸散装置を提供する。
【解決手段】 本発明による加熱蒸散装置は、薬剤担体を保持するカートリッジと、カートリッジと結合される本体部と、本体部の内部に設けられ、薬剤担体を加熱する加熱部と、本体部に設けられた蓋部とを備えることを特徴とする。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤担体を保持するカートリッジと、
前記カートリッジと結合される本体部と、
前記本体部の内部に設けられ、前記薬剤担体を加熱する加熱部と、
前記本体部に設けられた蓋部と
を備えることを特徴とする加熱蒸散装置。
【請求項2】
前記本体部の側面及び底面に複数の吸気孔が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の加熱蒸散装置。
【請求項3】
前記蓋部が排気孔を有することを特徴とする、請求項1に記載の加熱蒸散装置。
【請求項4】
前記カートリッジはリブ部を有し、
前記本体部は、前記リブ部を受け入れるリブ受け部を有することを特徴とする、請求項1に記載の加熱蒸散装置。
【請求項5】
前記カートリッジ及び前記本体部は、それぞれ少なくとも1つ以上の磁石を有し、
前記カートリッジと前記本体部とが前記磁石の磁力により結合されることを特徴とする請求項1に記載の加熱蒸散装置。
【請求項6】
前記カートリッジは、該カートリッジの少なくとも1つの磁石の周囲に沿って設けられた凸部を有し、
前記本体部は、前記カートリッジに設けられた前記凸部を受け入れる凹部を有することを特徴とする、請求項1に記載の加熱蒸散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱蒸散装置に関し、特に、薬剤担体を排出するカートリッジを含む加熱蒸散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
害虫の忌避や殺虫に用いられる従来の加熱蒸散システムとして、液体式のものや燻煙剤式のもの等が存在する。しかしながら、液体式のものは液体の薬剤がボトル等の容器に充填されており、持ち運びに不便であるという問題があった。また、燻煙剤式のものは事前の準備に手間を要する等の問題があった。
【0003】
そのため、加熱蒸散システムにおいて、携帯性に優れ、かつ、高い拡散性を有し、瞬間的に高い効果を発揮できる即効性のある製剤が求められている。
【0004】
即効性を有する製剤として、薬剤を噴射する噴射式のものが提案されている。例えば、特許文献1は、飛翔害虫防除用エアゾール製品を用いてエアゾール組成物を固相表面に噴射することにより、固相表面近傍の空間において飛翔害虫を防除する飛翔害虫防除用エアゾール製品を開示している。
【0005】
また、特許文献2は、定量噴霧機能を備えたエアゾールを用い、一定量を室内空間に噴霧処理することにより、蚊類に対して20時間以上にわたり防除効果を持続させる蚊類防除用エアゾールを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-117242号公報
【特許文献2】特開2018-076382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1は、薬剤を噴射した表面近傍の空間において効果を発揮するものであるため、高い拡散性を有するものではなかった。
【0008】
また、特許文献2では、長時間にわたって防除効果を持続させるためのものであり、即効性については課題があった。
【0009】
そのため、携帯性に優れ、かつ、高い拡散性を有し、瞬間的に高い効果を発揮できる即効性のある製剤として、速やかに加熱蒸散が可能な加熱蒸散装置が求められる。また、そのような加熱蒸散装置において、加熱された薬剤担体の薬剤成分を効果的に蒸散させ、薬剤成分を加熱蒸散装置の外部へ効果的に排出することが求められる。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、加熱された薬剤担体の薬剤成分を効果的に蒸散させ、薬剤成分を加熱蒸散装置の外部へ効果的に排出することができる加熱蒸散装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明では、薬剤担体を保持するカートリッジと、カートリッジと結合される本体部と、本体部の内部に設けられ、薬剤担体を加熱する加熱部と、本体部に設けられた蓋部とを備える加熱蒸散装置を提供する。
【0012】
本発明のある態様における加熱蒸散装置は、本体部の側面及び底面に複数の吸気孔が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明のある態様における加熱蒸散装置は、蓋部が排気孔を有することを特徴とする。
【0014】
本発明のある態様における加熱蒸散装置は、カートリッジがリブ部を有し、本体部は、リブ部を受け入れるリブ受け部を有することを特徴とする。
【0015】
本発明のある態様における加熱蒸散装置は、カートリッジ及び本体部が、それぞれ少なくとも1つ以上の磁石を有し、カートリッジと本体部とが磁石の磁力により結合されることを特徴とする。
【0016】
本発明のある態様における加熱蒸散装置は、カートリッジが、該カートリッジの少なくとも1つの磁石の周囲に沿って設けられた凸部を有し、本体部は、カートリッジに設けられた凸部を受け入れる凹部を有することを特徴とする。
【0017】
本明細書において「正面方向」又は「正面」等と表現する際の「正面」とは、特に指定のない限り、薬剤担体排出カートリッジを正面から見た場合であり、図1Cのように見た場合をいう。
本明細書において「背面方向」又は「背面」等と表現する際の「背面」とは、特に指定のない限り、薬剤担体排出カートリッジを背面から見た場合であり、図1Dのように見た場合をいう。
本明細書において「上面方向」又は「上面」等と表現する際の「上面」とは、特に指定のない限り、薬剤担体排出カートリッジを上面から見た場合であり、図4Aのように見た場合をいう。
本明細書において「底面方向」又は「底面」等と表現する際の「底面」とは、特に指定のない限り、薬剤担体排出カートリッジを底面から見た場合であり、図4Bのように見た場合をいう。
本明細書において「右側面方向」又は「右側面」等と表現する際の「右」とは、特に指定のない限り、加熱蒸散装置を正面から見た場合の「右」を指す。ここで、「正面から見た場合」とは図1Cのように見た場合をいう。
本明細書において「左側面方向」又は「左側面」等と表現する際の「左」とは、特に指定のない限り、加熱蒸散装置を正面から見た場合の「左」を指す。
【発明の効果】
【0018】
本発明の加熱蒸散装置の構造によれば、加熱された薬剤担体の薬剤成分を効果的に蒸散させ、薬剤成分を加熱蒸散装置の外部へ効果的に排出することができる。
本発明の他の目的、特徴及び利点は添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A図1Aは、本発明による加熱蒸散装置を正面側から見た斜視図である。
図1B図1Bは、本発明による加熱蒸散装置を背面側から見た斜視図である。
図1C図1Cは、本発明による加熱蒸散装置の正面図である。
図1D図1Dは、本発明による加熱蒸散装置の背面図である。
図2A図2Aは、本発明による加熱蒸散装置のカートリッジと本体部とが分離し、蓋部が開いた状態を正面側から見た斜視図である。
図2B図2Bは、本発明による加熱蒸散装置のカートリッジと本体部とが分離し、蓋部が開いた状態を背面側から見た斜視図である。
図3図3は、薬剤担体を本体部にセットする際のカートリッジの使用状態を示す図である。
図4A図4Aは、本発明による加熱蒸散装置の上面図である。
図4B図4Bは、本発明による加熱蒸散装置の底面図である。
図4C図4Cは、本発明による加熱蒸散装置の右側面図である。
図4D図4Dは、本発明による加熱蒸散装置の左側面図である。
図5A図5Aは、図1CのA-A断面図である。
図5B図5Bは、図1CのB-B断面図である。
図5C図5Cは、図1CのB-B断面図を含む斜視図である。
図6図6は、加熱部の周囲の気流の流れを示す模式図である。
図7図7は、薬剤担体の薬剤成分を効果的に蒸散させるための構造に関する比較実験を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0020】
図1は、本発明による加熱蒸散装置の斜視図である。
図1Aは、本発明による加熱蒸散装置を正面側から見た斜視図であり、図1Bは、本発明による加熱蒸散装置を背面側から見た斜視図である。
本発明による加熱蒸散装置1は、薬剤担体Cを保持するカートリッジ10と、カートリッジ10と結合される本体部20と、本体部20の内部に設けられ、薬剤担体Cを加熱する加熱部30と、本体部20に設けられた蓋部40とを備える。加熱蒸散装置1は、薬剤担体Cを加熱することにより、薬剤担体Cに含有される薬剤を蒸散させる装置である。カートリッジ10に保持される薬剤担体Cは、カートリッジ10から排出され、加熱部30にセットされる。
【0021】
図2Aは、本発明による加熱蒸散装置1のカートリッジ10と本体部20とが分離し、蓋部40が開いた状態を正面側から見た斜視図である。また、図2Bは、本発明による加熱蒸散装置のカートリッジと本体部とが分離し、蓋部が開いた状態を背面側から見た斜視図である。
本体部20とカートリッジ10とは分離可能であり、分離前においては図1Aに示すように、本体部20とカートリッジ10とが一体となるように本体部20とカートリッジ10とが結合している。本体部20とカートリッジ10とは任意の方法により結合可能であるが、カートリッジ10及び本体部20が、それぞれ少なくとも1つ以上の磁石を有し、カートリッジ10と本体部20とが磁石の磁力により結合されるようにしてもよい。カートリッジ10は、該カートリッジ10の少なくとも1つの磁石70の周囲に沿って設けられた凸部12を有し、本体部20は、カートリッジ10に設けられた凸部12を受け入れる凹部22を有するようにしてもよい。図2Aに示すように、カートリッジ10はリブ部11を有し、本体部20はリブ部11を受け入れるリブ受け部21を有する。カートリッジ10のリブ部11と、本体部20のリブ受け部21との位置を合わせることにより、カートリッジ10の薬剤担体Cが排出される排出孔13と加熱部30の位置を合わせることができる。
【0022】
図3は、薬剤担体Cを本体部にセットする際のカートリッジの使用状態を示す図である。
薬剤担体Cを本体部20にセットする際には、カートリッジ10は本体部20から分離され、蓋部40は開状態にされる。蓋部40を開状態にすると、図2Aに示すように、本体部20の開口部25を介して、本体部20の内部にある加熱部30が露出する。露出した加熱部30の位置とカートリッジ10の薬剤担体Cが排出される排出孔13の位置とを合わせるようにカートリッジ10が本体部20上に配置される。この際、リブ部11とリブ受け部21を合わせることにより、露出した加熱部30の位置とカートリッジ10の薬剤担体Cが排出される排出孔13の位置を合わせることができる。カートリッジ10をスライドさせる操作により、薬剤担体Cが排出され、薬剤担体Cが加熱部30にセットされる。薬剤担体Cを加熱部30にセットした後に、蓋部40を閉状態にし、電源スイッチ80をオンにすることにより薬剤担体Cの加熱が開始される。
【0023】
カートリッジ10は、複数の薬剤担体Cを保持することができる。好ましくは、図3に示すように、カートリッジ10は、複数の薬剤担体Cが一列に並ぶように保持する。カートリッジの使用時には、カートリッジ10は、本体部20から分離され、カートリッジ10への操作により、薬剤担体Cがカートリッジ10から排出される。好ましくは、カートリッジ10の機構により薬剤担体Cが1つずつ排出され、加熱部30にセットされる。
【0024】
本体部20は、薬剤担体Cを加熱するための加熱部30と、開閉可能な蓋部40を有する。電源及び電熱線により熱を発生し、加熱部30に熱を伝える機構は任意の機構を用いてよい。典型的には、加熱部30は、ヒーター部と基板を有し、ヒーター部に薬剤担体Cが配置される。ヒーター部は、土台にニクロム線が配置され、その上に絶縁板を設け、絶縁板の上に放熱板が設けられる。これらの加熱のための機構はいずれも本体部20に格納される。
【0025】
図4A図4Dは、本発明による加熱蒸散装置1を他の角度から見た図である。
図4Aは、本発明による加熱蒸散装置1の上面図である。図4Bは、本発明による加熱蒸散装置1の底面図である。図4Cは、本発明による加熱蒸散装置1の右側面図である。図4Dは、本発明による加熱蒸散装置1の左側面図である。
図4A図4C及び図4Dに示されるように、本体部20の側面及び底面には複数の吸気孔50が設けられている。本体部20の側面及び底面には複数の吸気孔50を設けることにより、加熱された薬剤担体Cの薬剤成分を効果的に蒸散させ、薬剤成分を加熱蒸散装置1の外部へ効果的に排出することができる。
【0026】
また、蓋部40には排気孔60が設けられている。加熱された薬剤担体Cの薬剤成分は、蓋部40の排気孔60を通じて加熱蒸散装置1の外部へ蒸散される。排気孔60の形状は任意のものであってよい。例えば図1A及び図1Cの例のように、排気孔60はスリット状であってもよい。他の例では、排気孔60は網目状であってもよい。
【0027】
図5A図5Cは、加熱蒸散装置1の断面図である。
図5Aは、図1CのA-A断面図であり、図5Bは、図1CのB-B断面図であり、図5Cは、図1CのB-B断面図を含む斜視図である。
図5A図5Cを参照すると、加熱部30の周囲には、本体部20の吸気孔50及び開口部25、並びに蓋部40の排気孔60に通ずる空間が生じていることが分かる。この空間の設け方についても本発明の特徴の一つである。図5B等に示されるように、加熱蒸散装置1は、加熱部30と排気孔60との間に、本体部20の一部を形成する壁部23を有する。薬剤担体Cから蒸散された薬剤成分を含む気流が、加熱部30から排気孔60へ向かう際に、壁部23によって遮られる。本体部20の開口部25の直径は、蓋部40の排気孔60の直径よりも小さい。このため、薬剤担体Cから蒸散された薬剤成分を含む気流が、出口である排気孔60へ向かう空間が壁部23によって、一旦、狭められることになる。このような構成により、薬剤担体Cから蒸散された薬剤成分を含む気流が、効率的に排気孔60へと向かう上昇気流を形成することを可能にする。
【0028】
図6は、加熱部30の周囲の気流の流れを示す模式図である。
図6のFは、加熱部30にて加熱を開始した際に生じる気流の例を示している。図6のPは、薬剤担体Cから蒸散された薬剤成分を含む気流が形成する上昇気流を示している。図6に示されるように、気流Fは、本体部20の開口部25の周囲に形成される壁部23を回避するように上昇するため、効率的に排気孔60へと向かう上昇気流Pを形成することが可能となる。
【0029】
薬剤担体の薬剤成分を効果的に蒸散させるための構造に関する比較実験を行った。
図7は、薬剤担体の薬剤成分を効果的に蒸散させるための構造に関する比較実験を説明するための模式図である。
図7の(a)~(c)は構造に関する条件を示し、(d)~(f)は薬剤担体Cのサンプルをそれぞれ(a)~(c)の構造を用いて加熱し薬剤成分を蒸散させた場合の気流Fの流れを示している。図7において、701は薬剤担体Cのサンプルを示し、702は筐体を示している。また、図7において、703はヒーターを示し、704は基板を示しており、703及び704は加熱蒸散装置1の加熱部30に相当する部分である。また、図7において、705は排気口を示し、706は筐体の側面吸気口を示し、707は筐体の底面吸気口を示し、708は空気導入壁を示している。
【0030】
図7の(a)の構造は、筐体に側面吸気口や底面吸気口を有していない。図7の(b)の構造は、側面吸気口706と底面吸気口707を有している。図7の(c)の構造は、図7の(b)の構造に更に空気導入壁708を設けたものである。この比較実験では、図7の(a)~(c)の構造において、同一の加熱部、即ち、ヒーター703及び基板704を用いて、同一の薬剤担体Cのサンプルを加熱し薬剤成分を蒸散させた。この比較実験は、図7の(a)~(c)のそれぞれの場合における薬剤成分の揮散率と気流Fの流れを比較し、いずれの構造がより効果的に薬剤成分を蒸散させることができるかを確認するためのものである。
【0031】
この比較実験に用いた薬剤担体Cのサンプルの担体処方を表1に示す。
【表1】
【0032】
次に、試験で使用する薬剤担体Cのサンプルの作製方法について説明する。まず、表1に示す秤量値どおりにそれぞれ秤量した粉体を混合する。そして、この混合した粉体を鉄製の鉢に移し、70℃~80℃の熱湯を加える。そして、熱湯を加えた粉体を練合し一塊になるまで練合を続ける。その後、直径が8mmの棒状に成形し、65℃で一晩乾燥させた後に、厚さが1mmとなるように切断し担体とする。作製した担体に、殺虫成分としてメトフルトリン約6mgを含浸させて試験で使用する薬剤担体Cのサンプルを得た。
【0033】
次に、比較試験の手順について説明する。
i)試験室の温度を27℃±2℃に設定し、揮散した薬剤を回収するためにロートをつないだ捕集管(シリカゲルを詰めたもの)を真空ポンプにつないだ。
ii)図7の(a)~(c)のそれぞれの構造に薬剤担体Cのサンプルを設置し、ヒーター703のスイッチを入れた。
iii)ヒーター703の真上に捕集管をセットし、蒸散した薬剤を全て捕集できるようにしてヒーター703により3.7V電圧で30秒間、薬剤担体Cのサンプルを加熱した。
iv)加熱により蒸散した薬剤の捕集を行い、加熱終了後も1分間捕集を継続した。
v)捕集終了後、捕集管を取り外した。
vi)ふた付きのガラス瓶に捕集管から取り出したシリカゲルを入れ、ロートはアセトンで、捕集管はヘキサンで洗い、それらの溶液もふた付きガラス瓶に加えて一晩放置した。
vii)捕集した薬剤を濃縮し分析を行った。
【0034】
図7の(a)~(c)のそれぞれの構造を用いた場合の薬剤成分の揮散率を次の式(1)を用いて求めた。
【数1】
【0035】
比較試験の結果を表2に示す。
【表2】
【0036】
表2に示す通り、図7の(a)の構造では、揮散率は14%となり、図7の(d)に示すように、空気の流れがほとんどなく、薬剤成分がうまく蒸散していない。図7の(b)の構造では、揮散率は47%となり、側面吸気口706及び底面吸気口707を設けることで、図7の(e)に示すように、気流Fのような空気の流れが生まれ、揮散率が上昇する傾向がみられた。図7の(c)の構造では、揮散率は70%となり、更に揮散率が上昇した。図7の(c)の構造では、側面吸気口706及び底面吸気口707に加えて、更に空気導入壁708を設けたことで、図7の(f)に示すように、気流Fがヒーター703の中央部に流れる現象がみられた。図7の(f)に示すように、気流Fは、ヒーター703の上部まで流れてヒーター703からの上昇気流Pによって揮散率が向上したと考えられる。
【0037】
以上の比較試験の結果から、図7の(c)の構造のように、筐体702に側面吸気口706及び底面吸気口707に加えて、更に空気導入壁708を設けることで揮散率が上昇することが見出された。この比較試験の結果を受けて、本発明では、図5B図5C等に示すように吸気孔50及び壁部23を設け、図7の(c)の実験結果と同様に、図6に示すような気流Fの流れと上昇気流Pを得ることができ、揮散率を向上させることができた。
【0038】
以上の通り、本発明によれば、上記実施例で説明した通り構成することにより、加熱された薬剤担体の薬剤成分を効果的に蒸散させ、薬剤成分を加熱蒸散装置の外部へ効果的に排出することができる加熱蒸散装置を提供することができる。
上記記載は実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の原理と添付の請求の範囲の範囲内で種々の変更および修正をすることができることは当業者に明らかである。
【0039】
1 加熱蒸散装置
10 カートリッジ
11 リブ部
12 凸部
13 排出孔
20 本体部
21 リブ受け部
22 凹部
23 壁部
25 開口部
30 加熱部
40 蓋部
50 吸気孔
60 排気孔
70 磁石
80 電源スイッチ
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6
図7