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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142748
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】発信装置、及び発信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 74/08 20240101AFI20241003BHJP
   H04W 72/02 20090101ALI20241003BHJP
   H04W 4/38 20180101ALI20241003BHJP
   G08B 19/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H04W74/08
H04W72/02
H04W4/38
G08B19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055056
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 英聖
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴臣
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 智絵
(72)【発明者】
【氏名】長澤 一樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健
(72)【発明者】
【氏名】芝宮 靖明
(72)【発明者】
【氏名】清水 涼香
【テーマコード(参考)】
5C086
5K067
【Fターム(参考)】
5C086AA01
5C086AA02
5C086AA27
5C086BA01
5K067AA25
5K067CC04
5K067EE02
5K067EE16
5K067GG03
(57)【要約】
【課題】他の発信装置から送信された信号との衝突の発生を低減させる。
【解決手段】発信装置10は、送信部130aと、決定部130bと、を備える。送信部130aは、操作子110aの押下等の異常の発生を契機として、Nth(Nthは2以上の整数)回だけ第1の信号を送信する。送信部130aは、異常の発生時に1回目の送信を行い、2回目以降の送信を決定部130bにより決定された送信タイミングにおいて行う。決定部130bは、送信部130aにより1回目の送信から所定の送信周期Pの各基準タイミングを基準として設定される複数のタイムスロットのうちの一のタイムスロットを固有情報と動作履歴情報とを用いて、信号を送信する毎に決定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常の発生を検知すると無線信号を送信する送信部と、
異常検知後、所定周期で到来する送信タイミングを基準として設定される複数のタイムスロットから、自装置の動作履歴を示す動作履歴情報又は自装置の環境情報を用いて、前記送信部により無線信号を送信する送信タイムスロットを決定する決定部と、を備える
発信装置。
【請求項2】
前記動作履歴情報は、無線信号の送信毎に変化する動作の履歴を示す
請求項1に記載の発信装置。
【請求項3】
前記動作履歴情報は、自装置の稼働時間を表す
請求項2に記載の発信装置。
【請求項4】
前記決定部は、
発信装置毎に固有の固有情報を用いて生成され且つ無線信号の送信毎に異なる値と、前記動作履歴情報又は前記環境情報と、を用いて前記送信タイムスロットを決定する、
請求項1に記載の発信装置。
【請求項5】
前記動作履歴情報は自装置の稼働時間を表し、
前記値は、前記固有情報から生成される疑似乱数である、
請求項4に記載の発信装置。
【請求項6】
複数の発信装置を備え、
前記複数の発信装置の各々は、
異常の発生を検知すると無線信号を送信する送信部と、
異常検知後、所定周期で到来する送信タイミングを基準として設定される複数のタイムスロットから、自装置の動作履歴を示す動作履歴情報又は自装置の環境情報を用いて、前記送信部により無線信号を送信する送信タイムスロットを決定する決定部と、を備える
発信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発信装置、及び発信システム、に関する。
【背景技術】
【0002】
信号の送信に用いるタイムスロットを、疑似乱数を利用して選択する技術が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-282975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術のように疑似乱数を利用してタイムスロットを選択する構成では、タイムスロットの数が少ない場合には、複数の発信装置に同じタイムスロットが割り当てられることがある。複数の発信装置に同じタイムスロットが割り当てられると、これらの発信装置から送信される信号が衝突する虞がある。
【0005】
本発明は、以上に説明した課題に鑑みて為されたものであり、他の発信装置から送信された信号との衝突の発生を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本開示の第1の態様に係る発信装置は、異常の発生を検知すると無線信号を送信する送信部と、異常検知後、所定周期で到来する送信タイミングを基準として設定される複数のタイムスロットから、自装置の動作履歴を示す動作履歴情報又は自装置の環境情報を用いて、前記送信部により無線信号を送信する送信タイムスロットを決定する決定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、他の発信装置から送信された信号との衝突の発生を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態による発信システム1の構成例を示す図である。
図2】発信装置10の構成例を示す図である。
図3】発信装置10の決定部130bによる送信タイミングの決定方法を説明するための説明図である。
図4】発信装置10の制御部130が制御プログラムに従って実行する通知方法における処理の流れを示すフローチャートである。
図5】発信装置10の動作の概略を示す図である。
図6】発信装置10(1)の2回目の信号送信の動作を詳細に説明するための図である。
図7】発信装置10(2)の2回目の信号送信の動作を詳細に説明するための図である。
図8】発信装置10(1)の3回目の信号送信の動作を詳細に説明するための図である。
図9】発信装置10(2)の3回目の信号送信の動作を詳細に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<A.実施形態>
以下に述べる実施形態には技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本開示の実施形態は、以下に述べる形態に限られるものではない。
<A-1.構成>
図1は、本開示の一実施形態による発信システム1の構成例を示す図である。発信システム1は、例えば家屋又は店舗等の監視領域における異常の発生を、監視センタ等に設置される外部サーバへ通知するための通信システムである。図1では、外部サーバの図示は省略されている。図1に示されるように、発信システム1は、発信装置10(1)、発信装置10(2)、…発信装置10(M)、及び制御装置20、を含む。Mは2以上の整数である。以下では、発信装置10(1)、発信装置10(2)、…及び発信装置10(M)の各々を区別する必要がない場合には、発信装置10(1)、発信装置10(2)、…及び発信装置10(M)は発信装置10と表記される。
【0010】
発信システム1に含まれるM個の発信装置10の各々と制御装置20とは無線により接続される。発信装置10は、異常の発生を通知するためのユーザの操作を受け付ける操作子110aを有する。発信装置10はユーザに携帯される携帯型装置であってもよいし、監視エリアにおける設置位置が固定される据置き型装置であってもよい。本実施形態における操作子110aは緊急通報ボタンであり、操作子110aに対するユーザの操作とは当該操作子110aの押下である。発信システム1が設置される監視領域において異常が発生すると、ユーザは、発信装置10の操作子110aを押下する。操作子110aが押下された発信装置10は、制御装置20へ異常の発生を通知する信号(以下、第1の信号)をNth(Nthは2以上の整数、本実施形態では、Nth=10)回だけ繰り返し無線で制御装置20へ送信する。本実施形態におけるNthは10であるが、Nthは2以上の整数であればよく、Nth=5又はNth=15でもよい。また、送信回数Nthは有限の値でなくてもよく、復旧操作が行われるまで繰り返し信号が送信されてもよい。なお、発信装置10は、信号を送信する送信機能を有するが、他の機器から送信された信号を受信する受信機能の有無は問わない。また、発信装置10が操作子110aを有さない構成とし、操作子を有する他の装置がユーザにより操作されたことを発信装置10が検知したら異常の発生を通知する信号を繰り返し送信してもよい。なお、信号はユーザによる操作(異常が解消した旨の復旧操作等)がされるまで送信し続けてもよい。制御装置20は、発信装置10から第1の信号を受信すると、異常の発生を通知する第2の信号を外部サーバ(図1では図示略)へ送信する。
【0011】
発信システム1が設置される空間、即ち監視領域には、発信装置10とは種類が異なる他の端末が設けられてもよい。図1では、他の端末の図示は省略されている。監視領域に設けられる他の端末の具体例としては、火災検知器、ガス検知器、人感センサ等が挙げられる。これらの端末は、火災等の所定の監視イベントの発生を検知すると、監視イベントの発生を通知する第3の信号を無線で制御装置20へ送信する。監視領域において第1の信号の送信と第3の信号の送信とが同時に発生する場合があり、この場合において第1の信号と第3の信号との衝突が発生すると、制御装置20は第1の信号及び第3の信号の何れの信号も受信できない場合がある。そこで、本実施形態では、第1の信号と第3の信号との衝突を回避するために、他の端末と発信装置10とについて、夫々異なる送信周期が予め定められている。例えば第1種類の端末における送信周期は15秒である。第2種類の端末における送信周期は20秒である。発信装置10における送信周期は10秒等である。
【0012】
図2は、発信装置10の構成例を示す図である。図2に示されるように、発信装置10は、操作子110aを含む入力装置110、通信部120、制御部130、及び記憶部140を有する。入力装置110、通信部120、及び記憶部140の各々と制御部130とは、データ授受を仲介するバスにより相互に接続されている。入力装置110は、例えば押釦スイッチであり、異常の発生時にユーザにより押下される操作子110aを有する。入力装置110は、操作子110aが押下されると、異常検知信号を制御部130へ出力する。この異常検知信号を入力装置110から受け取ることにより、制御部130は異常の発生を検知する。通信部120は、無線通信回路であり、制御部130による制御の下、制御装置20と無線で通信する。
【0013】
制御部130は、例えばCPU等のコンピュータである。記憶部140は、例えばRAM等の揮発性メモリと、フラッシュROM等の不揮発性メモリとを含む。不揮発性メモリには、制御部130を発信装置10の制御中枢として機能させる制御プログラム(図2では図示略)が予め記憶されている。記憶部140の揮発性メモリは、制御プログラムを実行する際のワークエリアとして制御部130によって利用される。また、記憶部140の不揮発性メモリには、当該記憶部140を含む発信装置10(以下、自装置)を一意に示す固有情報、第1の信号の送信回数Nth、周期情報、及び自装置の動作履歴を示す動作履歴情報が記憶される。
【0014】
固有情報の具体例としては、発信装置10の製造順に応じた一連番号(即ち、製造番号)が挙げられる。周期情報は、異常の発生を検知したときに制御装置20へ繰り返し第1の信号を送信する際の送信周期P(本実施形態では、P=10秒)を示す。本実施形態ではP=10秒であるが、P=11秒、又はP=12秒など、送信周期Pは、他の端末の送信周期と同じ値でなければどのような値であってもよい。周期情報が示す送信周期Pは本開示における所定周期の一例である。動作履歴情報の具体例としては、自装置の稼働時間、即ち自装置の電源投入からの経過時間を表す情報が挙げられる。
【0015】
制御部130は、発信装置10の電源(図2では図示略)の投入を契機として制御プログラムを不揮発性メモリから揮発性メモリへ読み出し、当該制御プログラムの実行を開始する。制御プログラムに従って作動している制御部130は、送信部130a、及び決定部130bとして機能する。つまり、図2に示される送信部130a及び決定部130bは、CPU等のコンピュータをプログラム等のソフトウェアに従って作動させることにより実現されるソフトウェアモジュールである。送信部130a及び決定部130bの各々の機能は次の通りである。
【0016】
送信部130aは、異常検知信号の受け取りを契機として第1の信号(無線信号)をNth回だけ繰り返し送信する。送信部130aは、第1の信号を送信する毎にその送信回数に応じた送信番号に1を加算する。例えば、1回目の無線送信における送信番号は0であり、2回目の無線送信における送信番号は1であり、3回目の無線送信における送信番号は2であり、通算で101回目の無線送信における送信番号は100である。なお、送信番号は、Nth回目に第1の信号の送信を完了した時点で0にリセットされてもよい。
【0017】
また、異常の検知を契機としてNth回送信される第1の信号の各々の送信タイミングは次の通りである。送信部130aは、まず、異常検知信号の受け取りを契機として1回目の信号送信を実行する。m(mは2以上且つNth以下の整数)回目に送信する第1の信号については、送信部130aは、その送信毎に、決定部130bにより決定されるタイムスロットにおいて送信する。本実施形態では、送信周期P(例えば、P=10秒)に応じて定まる基準タイミング(送信タイミング)から所定時間内の期間(本実施形態では基準タイミング-ΔTから基準タイミング+ΔTの期間)であって、且つ基準タイミングを含まない期間には、J(Jは2以上の整数)個のタイムスロットが設定され、これら複数のタイムスロットのうちの何れか一のタイムスロットがm回目の送信タイミングとして決定部130bによって決定される。
【0018】
決定部130bは、m回目の第1の信号の送信タイミングとして、前述のJ個のタイムスロットのうちの一のタイムスロット(送信タイムスロット)を、固有情報と動作履歴情報とを用いて、m-1回目の第1の信号の無線送信が完了した後の所定のタイミングで決定する。動作履歴情報を用いる理由は、複数の発信装置10の間で動作履歴情報が完全に一致する可能性は低く、複数の発信装置10において同じタイムスロットが決定され難くなるからである。加えて、固有情報と動作履歴情報とを組み合わせて用いることにより、他の発信装置10と同じタイムスロットが更に決定され難くなる。以下、J=32の場合における決定部130bによる送信タイミングの決定方法を、図3を参照しつつ説明する。
【0019】
図3は、J=32の場合における決定部130bによる送信タイミングの決定方法を説明するための説明図である。前述したように、決定部130bは、送信部130aによる1回目の第1の信号の送信完了後の所定のタイミングで、2回目に送信する第1の信号の送信タイミングを決定する。決定部130bは、まず、次に送信する第1の信号の送信番号に対する基本乱数を固有情報から算出し、算出した基本乱数をJで割った余りを基本スロットに設定する。基本乱数は、送信番号及び固有情報をパラメータとして用い、混合合同法等の周知のアルゴリズムに従って生成される疑似乱数である。前述したように、2回目の第1の信号の送信番号は1である。ここで、発信装置10(1)の固有情報が20442であり、送信番号=1に対する基本乱数として19389が決定されたとする。19389をJ(本実施形態では、32)で除算した余りは29であるから、決定部130bは基本スロットに29を設定する。
【0020】
次いで、決定部130bは、動作履歴情報(稼働時間)を抽出し、抽出した動作履歴情報を4で除算した商を算出することにより、4秒単位の稼働カウント数に換算する。なお、この実施形態では、動作履歴情報を4で除算する例を挙げて説明したが、動作履歴情報は扱いやすい桁数や単位に換算されてもよい。決定部130bは、稼働カウント数をJで割った余りを補助スロットに設定する。例えば、動作履歴情報として82729016が抽出された場合、決定部130bは稼働カウント数として20682254を算出する。そして、決定部130bは、稼働カウント数=20682254をJ(本実施形態では、32)で除算した余り14を補助スロットに設定する。なお、図3では、送信番号が1の場合の補助スロットだけが図示されており、送信番号が2以降の場合の補助スロットの図示は省略されている。しかし、実際には、後述するように、送信番号が2以降の場合には、送信番号が1の場合と同様の方法により送信番号が1の場合とは異なる補助スロットが設定される。
【0021】
次いで、決定部130bは、基本スロットと補助スロットを加算して得られる値を、スロット数で割った余りを送信スロットを示す値とする。前述したように、基本スロット=29、且つ補助スロット=14である場合、決定部130bは、29+14=43をJ(本実施形態では、32)で除算した余りである11、即ち、1回目の第1の信号の送信から送信周期Pが経過した時点を基準タイミングとして設定される32個のタイムスロットのうちの先頭から11番目のタイムスロットを、2回目の第1の信号の送信タイミングに決定する。以降、3回目の第1の信号の送信の場合は、送信番号が1から2に変わるため、固有情報は同じでも基本乱数が19389から例えば15853に変化し、基本スロットが13に設定される。また、発信装置10の稼働時間も82729016から+10秒程度変化するこのため、補助スロットが2又は3程度変化し、基本スロット及び補助スロットの変化に応じて、送信スロットを示す値は11とは異なる値(例えば、29)となる。
【0022】
また、制御プログラムに従って作動している制御部130は、入力装置110から出力された異常検知信号を受け取ると、本開示の特徴を顕著に示す通知方法を実行する。図4は、この通知方法における処理の流れを示すフローチャートである。図4に示されるように、この通知方法は、初期化処理SA110、第1送信処理SA120、第1判定処理SA130、決定処理SA140、第2判定処理SA150、第2送信処理SA160、カウントアップ処理SA170、を含む。初期化処理SA110、第1送信処理SA120、第1判定処理SA130、決定処理SA140、第2判定処理SA150、第2送信処理SA160、カウントアップ処理SA170の各々の処理内容は次の通りである。
【0023】
初期化処理SA110では、制御部130は、Nth個の第1の信号の送信制御に用いる変数K、T、及びtの各々を初期化する。変数Kは、何回目の信号送信であるか管理するための変数である。初期化処理SA110では、制御部130は、変数Kに1を設定する。変数Tは、2回目以降の第1の信号の送信タイミングを管理するための変数である。初期化処理SA110では、変数Tには0が設定される。変数tは直近の第1の信号の送信からの経過時間を管理するための変数である。初期化処理SA110では、変数tには0が設定される。
【0024】
第1送信処理SA120では、制御部130は、送信部130aとして機能する。第1送信処理SA120では、制御部130は、1回目の第1の信号の送信を行い、変数Kに1を加算する。
【0025】
第1判定処理SA130では、変数KがNth以下であるか否かを判定する。変数KがNth以下である場合、第1判定処理SA130の判定結果は“Yes”となる。第1判定処理SA130の判定結果が“Yes”である場合、制御部130は、決定処理SA140以降の処理を実行する。変数KがNthより大きい場合、第1判定処理SA130の判定結果は“No”となる。第1判定処理SA130の判定結果が“No”である場合、制御部130は、本通知方法を終了する。
【0026】
決定処理SA140では、制御部130は、決定部130bとして機能する。決定処理SA140では、制御部130は、次の第1の信号の送信タイミングとして前述のJ個のタイムスロットのうちの一のタイムスロットを固有情報と動作履歴情報とを用いて決定し、直近の第1の信号を送信した時点から当該決定したタイムスロットまでの時間を変数Tに設定する。
【0027】
第2判定処理SA150では、制御部130は、次の第1の信号の送信タイミングが到来したか否かを、変数t及び変数Tに基づいて判定する。変数tが変数T未満である場合、第2判定処理SA150の判定結果は“No”となる。第2判定処理SA150の判定結果が“No”である場合、制御部130は、カウントアップ処理SA170を実行し、第2判定処理SA150を再度実行する。変数tが変数Tに達した場合、第2判定処理SA150の判定結果は“Yes”となる。第2判定処理SA150の判定結果が“Yes”である場合、制御部130は、第2送信処理SA160を実行し、第1判定処理SA130を再度実行する。
【0028】
第2送信処理SA160では、制御部130は、送信部130aとして機能し、第1の信号を送信する。また、第2送信処理SA160では、制御部130は、変数Kに1を加算するとともに変数tを0にリセットする。カウントアップ処理SA170では、制御部130は、前回の第1の信号の送信からの経過時間に応じて変数tをカウントアップする。
以上が発信装置10の構成である。
【0029】
<A-2:動作>
次いで、発信装置10(1)の操作子110aと発信装置10(2)の操作子110aとが、図5における時刻t1において同時に押下された場合を例にとって発信装置10(1)及び発信装置10(2)の動作を説明する。なお、図5おける時刻t2は時刻t1から送信周期Pに応じた時間が経過した時刻であり、時刻t3は時刻t2から送信周期Pに応じた時間が経過した時刻であり、時刻t4は、時刻t3から送信周期Pに応じた時間が経過した時刻である。つまり、本動作例では、図5における時刻t2、時刻t3、及び時刻t4の各々が基準タイミングとなる。
【0030】
<A-2-1:1回目の送信>
時刻t1において発信装置10(1)及び発信装置10(2)の各々において操作子110aが押されると、発信装置10(1)及び発信装置10(2)の各々は、1回目の第1の信号を無線で送信する。発信装置10(1)から1回目に送信される第1の信号と、発信装置10(2)から1回目に送信される第1の信号とは略同時に送信されるので、両信号の衝突が発生し得る。
【0031】
<A-2-2:2回目の送信>
発信装置10において1回目の第1の信号の送信が完了すると、決定部130bは2回目の第1の信号の送信タイミングを固有情報と動作履歴情報とに基づいて決定する。ここで、発信装置10(1)の固有情報と発信装置10(2)の固有情報とは互いに異なり、発信装置10(1)の動作履歴情報と発信装置10(2)の動作履歴情報とは異なる。このため、発信装置10(1)と発信装置10(2)とでは、2回目の第1の信号の送信タイミングとして互いに異なるタイムスロットが決定される。例えば、発信装置10(1)では、図6に示されるように、2回目の第1の信号の送信タイミングとして時刻t2を中心とした32個のタイムスロットのうちの11番目のタイムスロットが決定される。一方、発信装置10(2)では、図7に示されるように、2回目の第1の信号の送信タイミングとして時刻t2を中心とした32個のタイムスロットのうちの32番目のタイムスロットが決定される。発信装置10(1)は、上記11番目のタイムスロットにおいて2回目の第1の信号の無線送信を行い、発信装置10(2)は、上記32番目のタイムスロットにおいて2回目の第1の信号の無線送信を行う。従って、発信装置10(1)から2回目に送信される第1の信号と、発信装置10(2)から2回目に送信される第1の信号とが衝突することはない。
【0032】
<A-2-3:3回目の送信>
発信装置10において2回目の第1の信号の送信が完了すると、決定部130bは3回目の第1の信号の送信タイミングを固有情報と動作履歴情報とに基づいて決定する。例えば、発信装置10(1)では、図8に示されるように、3回目の第1の信号の送信タイミングとして時刻t3を中心とした32個のタイムスロットのうちの29番目のタイムスロットが決定される。一方、発信装置10(2)では、図9に示されるように、3回目の第1の信号の送信タイミングとして時刻t3を中心とした32個のタイムスロットのうちの1番目のタイムスロットが決定される。発信装置10(1)は、上記29番目のタイムスロットにおいて3回目の第1の信号の無線送信を行い、発信装置10(2)は、上記1番目のタイムスロットにおいて3回目の第1の信号の無線送信を行う。従って、発信装置10(1)から3回目に送信される第1の信号と、発信装置10(2)から3回目に送信される第1の信号とが衝突することはない。以降、発信装置10は、第1の信号をNth回送信するまで、2回目の送信及び3回目の送信のように、固有情報と動作履歴情報とに基づいて決定された送信タイミングで第1の信号を送信するという動作を繰り返す。
以上が発信装置10の動作である。
【0033】
以上説明した実施形態によれば、複数の発信装置10の操作子110aが同時に押された場合にも、それらの発信装置10に同じタイムスロットが決定される可能性が低くなり、それらの発信装置10から無線送信された信号の衝突の発生を低減させることができる。また、仮に発信装置10がランダムなタイミングで信号を送信したとすると、発信装置10によってトータルの送信回数に差が生じてしまい、特に電池駆動の場合には電池寿命に差が生じてしまう。上記実施形態のように、所定周期の基準タイミングを基準として信号を送信することにより、このような問題を回避することができる。
【0034】
<B.変形例>
上記実施形態は、以下のように変形されてもよい。
(1)上記実施形態では、動作履歴情報の示す稼働時間を4で除算して得られる稼働カウントをタイムスロット数で除算することにより補助スロットが算出された。しかし、動作履歴情報の示す稼働時間をタイムスロット数で除算することにより補助スロットが算出されてもよい。
【0035】
(2)動作履歴情報は稼働時間に限定されず、固有情報以外の情報で、機器ごとまたは信号の送信毎に変化する情報であればよく、例えば、操作子110aの前回の押下からの経過時間、電源投入日時でもよい。また、発信装置10がレンタル機器のように期間限定で利用される機器で、出荷と戻入を繰り返し行われる場合は、工場出荷日時のような情報も動作履歴情報として適用することが出来る。また、これらのパラメータ同士を演算処理したものを動作履歴情報としてもよい。
【0036】
(3)上記実施形態では、2回目以降に送信する第1の信号の送信タイミング(送信スロット)が固有情報と動作履歴情報とに基づいて決定されたが、動作履歴情報のみに基づいて決定されてもよい。具体的には、上記実施形態における補助スロットがそのまま送信スロットとされてもよい。複数の発信装置10の間で動作履歴情報が完全に一致する可能性は低いため、動作履歴情報に基づいて送信スロットが決定されれば、固有情報と動作履歴情報とを組み合わせる態様に比較すれば劣るものの、複数の発信装置10において同じタイムスロットが決定され難くなるからである。
【0037】
(4)上記実施形態では基本スロットと補助スロットの和を取って送信スロットを決定していたが、行方向を基本スロット、列方向を補助スロットとした送信スロット表を用い、両者の交差するセルから送信スロットを選択できるようにしてもよい。
【0038】
(5)操作子110aは、押釦スイッチに限定されない。操作子110aは、スライドスイッチでもよいし、ディスプレイに表示されたソフトウェア釦でもよい。また、上記実施形態における送信部130a及び決定部130bは何れもソフトウェアモジュールであったが、送信部130a及び決定部130bのうちの何れか一方、又は両方は電子回路等のハードウェアモジュールであってもよい。送信部130a及び決定部130bのうちの何れか一方、又は両方がハードウェアモジュールであっても、上記実施形態と同一の効果が奏される。
【0039】
(6)発信装置10は緊急通報ボタンに限定されない。発信装置10は火災、ガス漏れ、不審者の侵入等の異常を検知するセンサ(火災検知センサ、ガス検知センサ、人感センサ)であってもよく、これらのセンサが異常を検知した時に異常検知信号を制御部130へ出力してもよい。この異常検知信号を受け取ることにより、制御部130は異常の発生を検知し、第1の信号をNth回だけ繰り返し送信する。なお、発信装置10が異常を検知するセンサである場合には、発信装置10は必ずしも操作子110aを備えなくてもよい。
【0040】
(7)上記実施形態では、複数の発信装置10を含む発信システム1について説明したが、発信装置10が単体で製造又は販売されてもよい。また、上記実施形態では、本開示の特徴を顕著に示す通知方法を制御部130に実行させる制御プログラムが記憶部140に予め記憶されていたが、この制御プログラムが単体で製造又は提供されてもよい。この制御プログラムの具体的な提供態様としては、インターネット等の電気通信回線経由のダウンロードにより配布する態様、又はフラッシュROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に当該制御プログラムを書き込で配布する態様が挙げられる。
【0041】
(8)上記実施形態では、動作履歴情報を用いてタイムスロットが決定されていたが、動作履歴情報に代えて又は加えて発信装置10の環境情報が用いられてもよい。環境情報は、発信装置10の設置環境を示す情報である。例えば、発信装置10が妨害波を検出する機能を有する場合には、妨害波の検出頻度や妨害波の強度がある。なお、妨害波の具体例としては、前述の第3の信号の搬送波、及び監視領域に設置される他の電子機器から放射される電磁ノイズが挙げられる。さらに、電圧検出機能や温度検出機能のような物理量を検出する機能を有するものであれば、その検出値を環境情報として利用してもよい。環境情報についても複数の発信装置10の間で完全に一致する可能性は低いため、環境情報を用いた場合でも複数の発信装置10において同じタイムスロットが決定され難くなる。
【0042】
(9)決定部130bは、必ずしも信号の送信毎にタイムスロットを決定しなくてもよく、複数回分のタイムスロットをまとめて決定してもよい。例えば決定部130bがm回目の第1の信号の送信タイミングとして決定したタイムスロットがm+1回目以降の複数回の第1の信号の送信タイミングとしても用いられてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…発信システム、10,10(1)~10(M)…発信装置、110…入力装置、110a…操作子、120…通信部、130…制御部、130a…送信部、130b…決定部、140…記憶部、20…制御装置。
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