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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014275
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ボーディングアーケード
(51)【国際特許分類】
   B64F 1/30 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
B64F1/30
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116977
(22)【出願日】2022-07-22
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】517000900
【氏名又は名称】株式会社MHIエアロスペースプロダクション
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】竹本 康洋
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 繁信
(57)【要約】
【課題】各トンネル部材を通路状に伸ばした状態で横方向の力を受けた場合でも、その通路の状態を可及的に維持することが可能となるボーディングアーケードを提供する。
【解決手段】格納されたトンネル部材10a~10lを伸展させる場合、トンネル部材10a~10lのうち、バランサー18の設けられたトンネル部材10aとその前方に隣接するトンネル部材10b以外のトンネル部材10c~10lは、所定長のロープ16で規制される位置まで移動し、バランサー18の設けられたトンネル部材10aは、固定され、バランサー18の設けられたトンネル部材10aの前方に隣接するトンネル部材10bは、所定長のロープ16で規制される位置以内であって、かつバランサー18のワイヤロープ18aが延びた位置まで移動する。そして、バランサー18は、その前方に隣接するトンネル部材10bがその位置を移動しないように制御する。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各トンネル部材の両端に設けられた、アーチ状の2本のフレームであって、前端フレームに後端フレームを前後方向に重ねた場合、前記前端フレームが前記後端フレームを含むように大きく形成されたフレームと、
前記前端フレームと前記後端フレームとに亘って、少なくともその天井部分を覆うカバーと、
前記2本のフレームのそれぞれの両脚部に設けられた車輪と、
を有する複数のトンネル部材と、
前記複数のトンネル部材のうち、少なくとも1つのトンネル部材に設けられたバランサーと、
を備え、
前記複数のトンネル部材のうち、最も後方に位置するトンネル部材は、アンカー固定され、
前記複数のトンネル部材のそれぞれとその前方に隣接するトンネル部材とは、所定長のロープにより接続され、
前記バランサーの設けられたトンネル部材とその前方に隣接するトンネル部材とはさらに、前記バランサーのワイヤロープにより接続され、
前記複数のトンネル部材のそれぞれを格納する場合、その前方に隣接するトンネル部材を後方に移動させ、その前方に隣接するトンネル部材がその後方のトンネル部材の内部に入り込むことにより格納され、
格納された前記複数のトンネル部材のそれぞれを伸展させる場合、
前記複数のトンネル部材のうち、前記バランサーの設けられたトンネル部材とその前方に隣接するトンネル部材以外のトンネル部材のそれぞれは、前記所定長のロープで規制される位置まで移動し、 前記バランサーの設けられたトンネル部材とその前方に隣接するトンネル部材は、前記所定長のロープで規制される位置以内であって、かつ前記バランサーの前記ワイヤロープが延びた位置まで移動し、
前記バランサーは、前記ワイヤロープを介して前記バランサーの設けられたトンネル部材の前方に隣接するトンネル部材を所定の力で引くことにより、前記バランサーの設けられたトンネル部材とその前方に隣接するトンネル部材以外のトンネル部材のそれぞれとその前方に隣接するトンネル部材との間に接続された前記ロープのすべてに所定の張力以上の張力が掛かるように制御する、
ボーディングアーケード。
【請求項2】
前記バランサーは、前記複数のトンネル部材のうち、最も後方に位置するトンネル部材に設けられる、
請求項1に記載のボーディングアーケード。
【請求項3】
前記複数のトンネル部材のうち、最も前方に位置するトンネル部材は、出口部材を介して牽引車により牽引され、
前記牽引車により牽引されて引き出された前記複数のトンネル部材のうち、前記最も前方に位置するトンネル部材は、前記牽引車がアンカーとなってその位置が維持される、
請求項1に記載のボーディングアーケード。
【請求項4】
前記牽引車は、前記引き出された前記複数のトンネル部材に対してその全体の長さを縮める方向の力が加わったときには、その全体の長さを維持する方向の力を加え、
前記バランサーは、前記引き出された前記複数のトンネル部材に対してその全体の長さを伸ばす方向の力が加わったときには、その全体の長さを維持する方向の力を加える、
請求項3に記載のボーディングアーケード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、空港建物を出た乗客が飛行場エプロン等を徒歩で航空機の搭乗口に向かうときに、雨風を防いで案内するボーディングアーケードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、航空機への通路トンネル(ACCESS TUNNEL TO AN AIRCRAFT)が記載されている。この通路トンネルは、複数のトンネル部材からなり、各トンネル部材は、縦軸を有し、相互に押し込むことができるように、縦軸の方向に円錐状に細くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0376030号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の通路トンネルでは、各トンネル部材を通路状に伸ばした状態で横方向の力を受けた場合、その横方向の力により各トンネル部材が横方向に移動してしまう虞がある。
【0005】
本願は、各トンネル部材を通路状に伸ばした状態で横方向の力を受けた場合でも、その通路の状態を可及的に維持することが可能となるボーディングアーケードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願のボーディングアーケードは、各トンネル部材の両端に設けられた、アーチ状の2本のフレームであって、前端フレームに後端フレームを前後方向に重ねた場合、前端フレームが後端フレームを含むように大きく形成されたフレームと、前端フレームと後端フレームとに亘って、少なくともその天井部分を覆うカバーと、2本のフレームのそれぞれの両脚部に設けられた車輪と、を有する複数のトンネル部材と、複数のトンネル部材のうち、少なくとも1つのトンネル部材に設けられたバランサーと、を備え、複数のトンネル部材のうち、最も後方に位置するトンネル部材は、アンカー固定され、複数のトンネル部材のそれぞれとその前方に隣接するトンネル部材とは、所定長のロープにより接続され、バランサーの設けられたトンネル部材とその前方に隣接するトンネル部材とはさらに、バランサーのワイヤロープにより接続され、複数のトンネル部材のそれぞれを格納する場合、その前方に隣接するトンネル部材を後方に移動させ、その前方に隣接するトンネル部材がその後方のトンネル部材の内部に入り込むことにより格納され、格納された複数のトンネル部材のそれぞれを伸展させる場合、複数のトンネル部材のうち、バランサーの設けられたトンネル部材とその前方に隣接するトンネル部材以外のトンネル部材のそれぞれは、所定長のロープで規制される位置まで移動し、バランサーの設けられたトンネル部材とその前方に隣接するトンネル部材は、所定長のロープで規制される位置以内であって、かつバランサーのワイヤロープが延びた位置まで移動し、バランサーは、ワイヤロープを介してバランサーの設けられたトンネル部材の前方に隣接するトンネル部材を所定の力で引くことにより、前記バランサーの設けられたトンネル部材とその前方に隣接するトンネル部材以外のトンネル部材のそれぞれとその前方に隣接するトンネル部材との間に接続された前記ロープのすべてに所定の張力以上の張力が掛かるように制御する。
【発明の効果】
【0007】
本願によれば、格納された複数のトンネル部材のそれぞれを伸展させた場合、バランサーは、ワイヤロープを介してバランサーの設けられたトンネル部材の前方に隣接するトンネル部材を所定の力で引くことにより、バランサーの設けられたトンネル部材とその前方に隣接するトンネル部材以外のトンネル部材のそれぞれとその前方に隣接するトンネル部材との間に接続されたロープのすべてに所定の張力以上の張力が掛かるように制御するので、各トンネル部材を通路状に伸ばした状態で横方向の力を受けた場合でも、その通路の状態を可及的に維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本願の一実施の形態に係るボーディングアーケードを格納した様子と伸展させた様子を示す図である。
図2図1のボーディングアーケードの格納時のより詳細な平面図である。
図3図1のボーディングアーケードの伸展時のより詳細な平面図である。
図4図1のボーディングアーケードの伸展時の一例を示す斜視図である。
図5図1のボーディングアーケードに含まれるバランサー近傍を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本願の一実施の形態に係るボーディングアーケード1を格納した様子と伸展させた様子を示している。ボーディングアーケード1は、空港建物を出た乗客が飛行場エプロン等を徒歩で航空機の搭乗口に向かうときに、その乗客を、雨風を防いで搭乗口に案内するものである。本実施形態では図1に示すように、ボーディングアーケード1には、ボーディングアーケード1を挟んで、入口部材20と出口部材30とが連結され、出口部材30には牽引車40が連結されている。入口部材20は、図2を用いて後述するように、空港建物Bの所定位置にアンカー21により固定され、さらに、ボーディングアーケード1に含まれるトンネル部材10aも、図2を用いて後述するように、アンカー21により固定されている。したがって、格納状態のボーディングアーケード1に連結されている出口部材30を牽引車40により牽引して、航空機AのパッセンジャーステップA1まで移動させると、これに応じてボーディングアーケード1は伸展し、空港建物Bと航空機AのパッセンジャーステップA1とを雨風を防いで結ぶ通路となる。
【0011】
図4は、図1における伸展時のボーディングアーケード1をより詳細に示した斜視図である。図4に示すように、ボーディングアーケード1は、複数のトンネル部材10a~10lにより、主として構成されている。本実施形態では、ボーディングアーケード1は、12台のトンネル部材10a~10lにより構成されているが、この台数は、航空機AのパッセンジャーステップA1と入口部材20の設置位置との距離に応じて変動する。なお、ボーディングアーケード1は、使用しないとき、つまり乗客を案内しないときには、上述のように伸展時の長さを縮めて格納することができる。図2は、図1における格納時のボーディングアーケード1をより詳細に示したものである。具体的には、トンネル部材10a~10lのそれぞれは、前後に隣接するトンネル部材、例えば前後に隣接するトンネル部材10b及びトンネル部材10aでは、前方のトンネル部材10bを後方のトンネル部材10aの内部に入れ込むことにより、伸展時の長さを縮めて格納することができるようになっている。なお、図2図5において、方向に言及するときには、各図に示される矢印の方向を用いるものとする。
【0012】
次に、トンネル部材10a~10lの構成を説明する。トンネル部材10a~10lはいずれも、同一形状をなしているので、トンネル部材10a~10lの代表として、トン
ネル部材10aを例に挙げて、その構成を説明する。なお、各トンネル部材10a~10lを区別する必要がない場合には、英字を添付せずに「トンネル部材10」と言うこともある。
【0013】
トンネル部材10は、図4に示すように、アーチ状の2本のフレーム11,12を有する。2本のフレーム11,12は、トンネル部材10の前後の端部を構成するので、以下、フレーム11を「前端フレーム11」と言い、フレーム12を「後端フレーム12」と言う。前端フレーム11と後端フレーム12を前後方向に重ねた場合、前端フレーム11が後端フレーム12をその内部に含むように大きく形成されている。これは、上述のように前後に隣接するトンネル部材10を、前方のトンネル部材10を後方のトンネル部材10に入れ込むことにより縮めて格納できるようにするためである。
【0014】
前端フレーム11と後端フレーム12との間には、前端フレーム11と後端フレーム12とを離間させた状態で固定するための複数のフレーム13が懸架されている。また、フレーム13を補強するためのフレーム13aも、設けられている。なお、フレーム13,13aは、トンネル部材10を覆うカバー15を取り付ける取付部材としての役割も果たしている。カバー15としては、本実施形態では、ポリカーボネート板材を用いているが、これに限られる訳ではない。また、カバー15は、本実施形態では、トンネル部材10全体を覆っているが、これに限らず、トンネル部材10全体の一部、例えば天井部分のみを覆うようにしてもよい。なお、図4では、トンネル部材10の左側の側面しか図示されていないが、右側の側面にも、フレーム13,13aが設けられ、カバー15により覆われている。
【0015】
図5に示すように、前端フレーム11と後端フレーム12の脚部の底にはそれぞれ、車輪14が設けられている。したがって、各トンネル部材10は、4つの車輪14により設置面を自由に移動することができる。
【0016】
また、トンネル部材10a~10lの前端フレーム11の左右の所定位置(例えば、左右両側垂直柱の中央部近傍)には、ロープ16を取り付けるためのリング状の取付部11a,11bが設けられている。ロープ16は、前後に隣接するトンネル部材10のそれぞれ左右2箇所に設けられた取付部11a,11bに1本ずつ取り付ける。例えば、トンネル部材10bとその後方に隣接するトンネル部材10aとは、左右のロープ16の各前端をトンネル部材10bの前端フレーム11の各取付部11bに取り付け、左右のロープ16の各後端をトンネル部材10aの前端フレーム11の各取付部11aに取り付けることにより連結される。このように、前後に隣接するトンネル部材10の左右両側に取り付けられた2本のロープ16(図3参照)は、前後に隣接するトンネル部材10を、自由度を持たせた状態で連結する。ロープ16は、非伸縮性の素材によって構成されている(本実施形態では、ワイヤロープを採用するが、これに限らない)ので、前後に隣接するトンネル部材10は、ロープ16のロープ長で移動が規制され、それ以上離間して移動しない。前後に隣接するトンネル部材10は、最大限離間したときでも、前方のトンネル部材10の後端フレーム12と後方のトンネル部材10の前端フレーム11との間に隙間が生じないようにすることが好ましいので、ロープ16のロープ長は、1台のトンネル部材10の前端フレーム11と後端フレーム12との距離より所定長短い長さにすることが好ましい。
【0017】
また、トンネル部材10a~10lの各後端フレーム12の左右2箇所の所定位置(例えば、左右両側垂直柱の下端部近傍)には、左右2本の金属チェーン19の各一端を取り付けるための取付部12aが設けられ、左右2本の金属チェーン19の各一端は、各取付部12aに固定的に取り付けられている。そして、トンネル部材10a~10lの各前端フレーム11の左右2箇所の所定位置(例えば、左右両側垂直柱の下端部近傍)と各後端
フレーム12の左右2箇所の所定位置(例えば、左右両側垂直柱の下端部近傍)との間には、左右2本のレール13bが懸架され、左右2本の金属チェーン19の各他端は、各レール13bに繋留されている。左右2本の金属チェーン19の各他端は、各レール13b上を滑らかに移動するので、各トンネル部材10a~10lが前後方向に移動したとしても、その前後方向の移動を規制しない。したがって、左右2本の金属チェーン19は、トンネル部材10a~10lの前後に隣接するトンネル部材10が左右方向にチェーン長以上に離間しないように規制する役割を果たしている。
【0018】
トンネル部材10aの前端フレーム11の左右の所定位置(例えば、左右両側垂直柱の中央部から下寄りの位置)には、各取付板17を介して、各バランサー18が取り付けられている。各バランサー18のワイヤロープ18aは、前方に隣接するトンネル部材10bの左右の所定位置(例えば、左右両側垂直柱の中央部から下寄りの位置)に接続されている。各バランサー18のワイヤロープ18aは、最大限、各ロープ16のロープ長まで引き出される。バランサー18は、ワイヤロープ18aをロープ16のロープ長を超えて引き出し可能としても、前方に隣接するトンネル部材10bの移動がロープ16のロープ長で規制されるため、ワイヤロープ18aは、バランサー18からそれ以上は引き出されない。ただし、ワイヤロープ18aは、バランサー18からロープ16のロープ長より短い長さだけ引き出される場合がある。これは、図3を用いて後述するように、トンネル部材10a~10lが最大限に伸展されない場合があるからである。
【0019】
バランサー18は、ワイヤロープ18aが引き出され、トンネル部材10bとその後方に隣接するトンネル部材10aとを接続するロープ16が規制する範囲内のある位置でその引き出しが停止すると、その停止状態を維持する制御を行う。つまり、前方に隣接するトンネル部材10bの移動が停止した後、トンネル部材10bに対して、トンネル部材10bが前方に隣接するトンネル部材10cに近づこうとする方向の力が加わっても、その力と反対方向の力をトンネル部材10bに加えているため、トンネル部材10bの停止状態を維持させる。なお、バランサー18がトンネル部材10bに加えている力、つまり、トンネル部材10bを引き込む力は、本実施形態では、60kg程度であるが、この力によってトンネル部材10b~10lの全体が後方に移動することはない。牽引車40がアンカーの役割を果たすからである。
【0020】
以上のように構成されたボーディングアーケード1が、図2の格納された状態から図3の伸展された状態に移るときの動作について説明するが、その説明の前に、ボーディングアーケード1に付随した構成について説明する。上述したように、ボーディングアーケード1には、入口部材20と、出口部材30と、牽引車40とが付随して設けられている。
【0021】
入口部材20は、ボーディングアーケード1に乗客を案内する入口となるものであるが、乗客が直接ボーディングアーケード1に入場できないような場所にいるときに有用である。ボーディングアーケード1は、本実施形態では図3に示すように、直線状に引き出されて設置されるので、乗客が直線状に引き出されたボーディングアーケード1にそのまま入場できない場合には、入口部材20を介してボーディングアーケード1に入場できるようにしている。なお、図2に示すように、入口部材20には、その設置後の移動を規制するために複数のアンカー21が設けられている。また、ボーディングアーケード1のトンネル部材10aにも、アンカー21が設けられている。このため、ボーディングアーケード1のトンネル部材10aは、格納時でもその移動が規制されている。
【0022】
出口部材30は、ボーディングアーケード1から乗客を航空機AのパッセンジャーステップA1(図1参照)に案内する出口となるものである。直線状に引き出されたボーディングアーケード1のトンネル部材10lを直接、パッセンジャーステップA1に近づけることは困難であるので、出口部材30は、ボーディングアーケード1とパッセンジャース
テップA1との間隙を埋めるために、トンネル部材10lに連結させている。
【0023】
牽引車40は、例えば、電動モータ(図示せず)を動力源とし、出口部材30に連結されて、出口部材30を介して、トンネル部材10a~10lを直線状に引き出す。牽引車40の電動モータの電源がオフになったときに、牽引車40をその停止位置から移動させる方向の力が加わると、電動モータは発電しようとして、その力と反対方向の力を発生させる。これにより、牽引車40は、停止状態を維持しようとするので、牽引車40は、停車して電動モータの電源がオフした後は、ボーディングアーケード1のアンカーとしての役割を果たすことになる。
【0024】
図2は、ボーディングアーケード1とそれに付随した構成20,30,40の格納時の様子を示している。この状態で、オペレータが牽引車40の電動モータの電源をオンし、牽引車40を航空機AのパッセンジャーステップA1に近づけていく。そして、オペレータが目的位置まで牽引車40を移動させて、牽引車40の電動モータの電源をオフする。図3は、この状態を示している。このとき、トンネル部材10a~10lのうち、トンネル部材10aを除くトンネル部材10b~10lでは、前後に隣接するトンネル部材10を接続するロープ16は、ロープ長を最大限直線状に伸ばした状態となっている。一方、トンネル部材10aとその前方に隣接するトンネル部材10bを接続するロープ16は、ロープ長を最大限直線状に伸ばした状態であることも、それより短い状態、つまり弛んだ状態であることもある。これは、航空機の停止位置が常に一定とは限らず、さらに他の要因も加わって、ボーディングアーケード1を最大限伸展させた状態で使えないことがあるからである。
【0025】
従来のボーディングアーケードは、最大限伸展させた状態で使うことが望ましい。最大限伸展させた状態で使うと、各トンネル部材10a~10l間はロープ16に所定の張力以上の張力が掛かり、これにより各トンネル部材10a~10lの移動が規制されるため、横方向の力を受けた場合でも、その通路の状態を可及的に維持することができるからである。これに対して、従来のボーディングアーケードを最大限伸展させた状態で使えない場合には、各トンネル部材10a~10l間はロープ16に所定の張力以上の張力が掛からなくなるので、各トンネル部材10a~10lの移動の規制が甘くなり、横方向の力を受けた場合、その通路の状態を維持することが困難になる。
【0026】
これに対処するために本願では、従来のボーディングアーケードにバランサー18を設け、ボーディングアーケード1を最大限伸展させた状態で使えない場合でも、従来のボーディングアーケードを最大限伸展させた状態で使っている場合と同様に、各トンネル部材10b~10l間はロープ16に所定の張力以上の張力が掛かり、さらにトンネル部材10aとトンネル部材10bとの間はワイヤロープ18aに所定の張力以上の張力が掛かるようにしている。つまり、バランサー18は、ワイヤロープ18aを介してバランサー18の設けられたトンネル部材10aの前方に隣接するトンネル部材10bを所定の力(本実施形態では、上述のように60kg程度の力)で引くことにより、バランサー18の設けられたトンネル部材10aとその前方に隣接するトンネル部材10b以外のトンネル部材のそれぞれとその前方に隣接するトンネル部材との間に接続されたロープ16のすべてに所定の張力以上の張力が掛かるように制御する。これにより各トンネル部材10a~10lの移動が規制されるため、横方向の力を受けた場合でも、その通路の状態を可及的に維持することができる。
【0027】
なお、牽引車40は、上述のように、電動モータの電源がオフ後、電動モータによりその移動が規制されるが、電源がオン状態からオフ状態に移行する短時間の間、牽引車40の移動が規制されない状態が生ずる。この短時間にワイヤロープ18aに生じている張力により、バランサー18は、後方のトンネル部材10aの方向に前方のトンネル部材10
bを引き寄せる。これにより、トンネル部材10bは、ロープ16を介してその前方のトンネル部材10cを引き寄せ、トンネル部材10cは、ロープ16を介してその前方のトンネル部材10dを引き寄せ、‥、最終的に、トンネル部材10kは、ロープ16を介してその前方のトンネル部材10lを引き寄せるので、各トンネル部材10b~10lは後方に若干移動する。その結果、トンネル部材10aを除く各トンネル部材10b~10lに設けられた車輪14の向きがすべて揃うことになる。このため、伸展したボーディングアーケード1を格納するときには、各トンネル部材10b~10lに設けられた車輪14の向きは既に揃っているので、ボーディングアーケード1の格納効率を向上させることができる。
【0028】
次に、ボーディングアーケード1が、図3の伸展された状態から図2の格納された状態に移るときの動作について説明する。図3の状態で、オペレータが牽引車40の電動モータの電源をオンし、牽引車40の後方への移動を開始すると、先頭のトンネル部材10lが後方に動き出す。これに応じて、先頭のトンネル部材10lとその後方に隣接するトンネル部材10kとを接続するロープ16に掛かっていた張力が減少するので、バランサー18がワイヤロープ18aを介してトンネル部材10bを引き込む力が、トンネル部材10bとその前方に隣接するトンネル部材10cとを接続するロープ16に掛かっている張力を超えることになる。その結果、先頭のトンネル部材10lが後方に移動するに従い、まず、バランサー18の設けられたトンネル部材10aの中に、その前方に隣接するトンネル部材10bが引き込まれる。次に、牽引車40により、先頭のトンネル部材10lがその後方に隣接するトンネル部材10kに格納され、先頭のトンネル部材10lが格納されたトンネル部材10kが、その後方に隣接するトンネル部材10jに格納され、‥、最終的に、トンネル部材10l~10dが格納されたトンネル部材10cが、トンネル部材10bが格納されたトンネル部材10aに格納され、図2の状態になる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態のボーディングアーケード1は、各トンネル部材10a~10lの両端に設けられた、アーチ状の2本のフレーム11,12であって、前端フレーム11に後端フレーム12を前後方向に重ねた場合、前端フレーム11が後端フレーム12を含むように大きく形成されたフレームと、前端フレーム11と後端フレーム12とに亘って、少なくともその天井部分を覆うカバーと、2本のフレーム11,12のそれぞれの両脚部に設けられた車輪14と、を有する複数のトンネル部材10a~10lと、複数のトンネル部材10a~10lのうち、少なくとも1つのトンネル部材10aに設けられたバランサー18と、を備えている。
【0030】
そして、複数のトンネル部材10a~10lのそれぞれとその前方に隣接するトンネル部材とは、所定長のロープ16により接続され、バランサー18の設けられたトンネル部材10aとその前方に隣接するトンネル部材10bとはさらに、バランサー18のワイヤロープ18aにより接続される。
【0031】
さらに、複数のトンネル部材10a~10lのそれぞれを格納する場合、その前方に隣接するトンネル部材を後方に移動させ、その前方に隣接するトンネル部材がその後方のトンネル部材の内部に入り込むことにより格納され、格納された複数のトンネル部材10a~10lのそれぞれを伸展させる場合、複数のトンネル部材10a~10lのうち、バランサー18の設けられたトンネル部材10aとその前方に隣接するトンネル部材10b以外のトンネル部材10c~10lのそれぞれは、所定長のロープ16で規制される位置まで移動し、バランサー18の設けられたトンネル部材10aとその前方に隣接するトンネル部材10bは、所定長のロープ16で規制される位置以内であって、かつバランサー18のワイヤロープ18aが延びた位置まで移動する。
【0032】
そして、バランサー18は、ワイヤロープ18aを介してバランサー18の設けられた
トンネル部材10aの前方に隣接するトンネル部材10bを所定の力で引くことにより、バランサー18の設けられたトンネル部材10aとその前方に隣接するトンネル部材10b以外のトンネル部材のそれぞれとその前方に隣接するトンネル部材との間に接続されたロープ16のすべてに所定の張力以上の張力が掛かるように制御する。
【0033】
このように、本実施形態のボーディングアーケード1では、格納された複数のトンネル部材10a~10lのそれぞれを伸展させた場合、バランサー18は、ワイヤロープ18aを介してバランサー18の設けられたトンネル部材10aの前方に隣接するトンネル部材10bを所定の力で引くことにより、バランサー18の設けられたトンネル部材10aとその前方に隣接するトンネル部材10b以外のトンネル部材のそれぞれとその前方に隣接するトンネル部材との間に接続されたロープ16のすべてに所定の張力以上の張力が掛かるように制御するので、各トンネル部材10a~10lを通路状に伸ばした状態で横方向の力を受けた場合でも、その通路の状態を可及的に維持することが可能となる。
【0034】
また、バランサー18は、複数のトンネル部材10a~10lのうち、最も後方に位置するトンネル部材10aに設けられる。
【0035】
これにより、ボーディングアーケード1全体の長さを適正に調整することが可能となる。
【0036】
また、複数のトンネル部材10a~10lのうち、最も前方に位置するトンネル部材10lは、出口部材30を介して牽引車40により牽引され、牽引車40により牽引されて引き出された複数のトンネル部材10a~10lのうち、最も前方に位置するトンネル部材10lは、牽引車40がアンカーとなってその位置が維持される。
【0037】
これにより、牽引車40は牽引した位置で停止するだけでアンカーの役目を果たすので、ボーディングアーケード1を伸展させた後、アンカーに接続させる手間を省くことができる。
【0038】
また、牽引車40は、引き出された複数のトンネル部材10a~10lに対してその全体の長さを縮める方向の力が加わったときには、その全体の長さを維持する方向の力を加え、バランサー18は、引き出された複数のトンネル部材10a~10lに対してその全体の長さを延ばす方向の力が加わったときには、その全体の長さを維持する方向の力を加える。
【0039】
これにより、各トンネル部材10a~10lを通路状に伸ばした状態で横方向の力を受けた場合でも、その通路の状態を可及的に維持することが可能となる。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0041】
(1)上記実施形態では、バランサー18をボーディングアーケード1の1台のトンネル部材10aにのみ設けるようにしたが、これに限らず、2台以上のトンネル部材に設けるようにしてもよい。仮にトンネル部材10a~10lのすべてにバランサー18を設けた場合、各ロープ16のロープ長内の任意の位置で各トンネル部材10a~10lを停止させたとしても、各バランサー18のワイヤロープ18aは、各トンネル部材10a~10lを所定の張力以上の張力で引き込むので、この通路の状態で横方向の力を受けた場合でも、その通路の状態を可及的に維持することが可能となる。また、バランサー18を1台のトンネル部材にのみ設ける場合でも、上記実施形態のようにトンネル部材10aに限らず、他のトンネル部材10b~10kのいずれであってもよい。
【0042】
(2)上記実施形態では、ボーディングアーケード1を伸展させるとき、牽引車40を用いて行うようにしたが、これに限らず、手動で行うようにしてもよい。
【0043】
(3)上記実施形態では、各トンネル部材10a~10lを接続する部材として、ロープ16を用いたが、これに限らず、チェーン等の他の部材であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…ボーディングアーケード、10a~10l…トンネル部材、11~13,13a…フレーム、13b…レール、14…車輪、15…カバー、16…ロープ、17…取付板、18…バランサー、18a…ワイヤロープ、19…金属チェーン、20…入口部材、30…出口部材、40…牽引車。
図1
図2
図3
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図5