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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142755
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/14 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B66B1/14 Z
B66B1/14 E
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055065
(22)【出願日】2023-03-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100228407
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 佑輔
(74)【代理人】
【識別番号】100207826
【弁理士】
【氏名又は名称】尾畑 誠治
(72)【発明者】
【氏名】近久 順平
(72)【発明者】
【氏名】大野 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】端 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功一
(72)【発明者】
【氏名】井上 元太
(72)【発明者】
【氏名】音羽 駿
【テーマコード(参考)】
3F502
【Fターム(参考)】
3F502HB06
3F502HC07
3F502JA25
3F502JA33
(57)【要約】
【課題】 エレベータの運転に要する巻上機の負荷を抑制するエレベータシステムを提供する。
【解決手段】 エレベータシステムは、乗りかごと釣合おもりを吊り下げるロープを巻上機が巻き上げることで運転するエレベータと、エレベータと通信可能に接続された移動体と、乗りかごに移動体が乗車したときの乗りかごの重量と、釣合おもりの重量との差が小さくなるように、乗りかごに乗車する移動体を選定する選定処理部を備える。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごと釣合おもりを吊り下げるロープを巻上機が巻き上げることで運転するエレベータと、
前記エレベータと通信可能に接続された移動体と、
前記乗りかごに前記移動体が乗車したときの前記乗りかごの重量と、前記釣合おもりの重量との差が小さくなるように、前記乗りかごに乗車する前記移動体を選定する選定処理部を備える、
エレベータシステム。
【請求項2】
前記エレベータが、前記乗りかごへの乗車の要求を示す移動体乗車要求情報を前記移動体から受信した場合に、前記移動体に関する情報を記憶するリストをさらに備え、
前記選定処理部は、前記リストに記憶されている前記移動体の中から、前記乗りかごに乗車する前記移動体を選定する、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記移動体は、前記移動体の乗車区間を示す移動体乗車区間情報を送信し、
前記選定処理部は、前記乗車区間と前記乗りかごの運転区間との重複区間が大きくなるように、前記乗りかごに乗車する前記移動体を選定する、
請求項2に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体が乗りかごに乗車可能なエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、エレベータは、現在の秤情報とロボットの重量とその搭載物の重量との和が最大搭載従量以内であるか否かを判定することで、当該ロボットの搭乗可否を判定する(例えば、特許文献1)。ところで、ロボットを含む移動体や利用者がエレベータに乗車する上で、乗りかごと釣合おもりとの重量差が大きい状態でエレベータが運転されると、巻上機にかかる負荷が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/234938号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、課題は、エレベータの運転に要する巻上機の負荷を抑制するエレベータシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
エレベータシステムは、乗りかごと釣合おもりを吊り下げるロープを巻上機が巻き上げることで運転するエレベータと、前記エレベータと通信可能に接続された移動体と、前記乗りかごに前記移動体が乗車したときの前記乗りかごの重量と、前記釣合おもりの重量との差が小さくなるように、前記乗りかごに乗車する前記移動体を選定する選定処理部を備える。
【0006】
また、エレベータシステムは、前記エレベータが、前記乗りかごへの乗車の要求を示す移動体乗車要求情報を前記移動体から受信した場合に、前記移動体に関する情報を記憶するリストをさらに備え、前記選定処理部は、前記リストに記憶されている前記移動体の中から、前記乗りかごに乗車する前記移動体を選定する、という構成でもよい。
【0007】
また、エレベータシステムは、前記移動体は、前記移動体の乗車区間を示す移動体乗車区間情報を送信し、前記選定処理部は、前記乗車区間と前記乗りかごの運転区間との重複区間が大きくなるように、前記乗りかごに乗車する前記移動体を選定する、という構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態であるエレベータシステムのブロック図である。
図2図2は、本発明の一実施形態であるエレベータシステムを示す図である。
図3図3は、リストに記憶されている移動体に関する情報の例を示す図である。
図4図4は、本発明の一実施形態であるエレベータシステムの制御を示すフロー図である。
図5図5は、図4における選定処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態であるエレベータシステムについて、図面を参照しながら説明する。
【0010】
1.構成
図1は、本発明の一実施形態であるエレベータシステムのブロック図である。
【0011】
図1に示すように、エレベータシステム100は、エレベータ1と、移動体2と、端末3と、を備える。移動体2は、自律して移動するロボットであり、例えば、掃除ロボット、警備ロボット、搬送ロボットである。
【0012】
端末3は、エレベータ1の利用者が所有する携帯端末である。また、利用者の操作により、端末3は、乗りかご15への乗車の要求を示す端末乗車要求情報をエレベータ1に送信する。端末乗車要求情報については後述する。
【0013】
エレベータ1は、乗りかご15と釣合おもり16を吊り下げるロープ17を巻上機14が巻き上げることで運転する。図2を用いて、具体的に説明する。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態であるエレベータシステムを示す図である。図2に示すように、エレベータ1は、巻上機14と、乗りかご15と、釣合おもり16と、ロープ17と、乗場18と、を備える。
【0015】
ロープ17の一端には乗りかご15が吊り下げられ、他端には釣合おもり16が吊り下げられる。また、利用者又は移動体2は、乗場18から乗りかご15に乗車する。
【0016】
エレベータ1は、巻上機14がロープ17を巻き上げることにより、乗りかご15が上下方向に昇降する。なお、このような構成によれば、釣合おもり16は、乗りかご15とは上下逆向きに昇降する。
【0017】
巻上機14がロープ17を巻き上げるときに、巻上機14には、ロープ17の一端と他端にかかる重量の差に応じた負荷が生じる。具体的には、乗りかご15に利用者又は移動体2が乗車したときの乗りかご15の重量と、釣合おもり16の重量との差に応じた負荷が、巻上機14に生じる。
【0018】
また、エレベータ1は、通信部11と、CPUなどの制御部12と、メモリ、HDDなどの記憶部13と、を備える。
【0019】
記憶部13は、エレベータ1において用いられる各種情報を記憶する。記憶部13には、例えば、エレベータ1の運転を行うための各種制御プログラムが格納されている。
【0020】
また、本実施形態においては、記憶部13は、エレベータ1が、乗りかご15への乗車の要求を示す移動体乗車要求情報を移動体2から受信した場合に、移動体2に関する情報を記憶するリスト131を備える。移動体乗車要求情報については後述する。
【0021】
リスト131について、図3を用いて、具体的に説明する。図3は、リストに記憶されている移動体に関する情報の例を示す図である。リスト131には、移動体2に関する情報として、各移動体2について、乗車階、行先階、移動体2の重量、移動体2から移動体乗車要求情報を受信した受信時刻に関するデータが対応付けて記憶されている。また、図3に示すように各移動体2には、固有の識別情報である移動体IDが付与される。
【0022】
通信部11は、エレベータ1が移動体2および端末3と無線通信を行うための通信モジュールである。具体的には、通信部11は、後述する通信部21および通信部31と無線通信を行う。
【0023】
エレベータ1は、後述する選定処理部124によって、乗りかご15に乗車する移動体2が選定されると、乗りかご15への乗車の許可を示す乗車許可情報を、通信部11を介して当該移動体2に送信する。
【0024】
また、エレベータ1は、後述する選定処理部124によって、乗りかご15に乗車する移動体2が選定され、移動体2と利用者が同乗する場合には、乗りかご15に移動体2が同乗することを示す移動体同乗情報を、通信部11を介して端末3に送信する。
【0025】
制御部12は、エレベータ1の各処理を実行する。制御部12は、運転制御部121と、リスト管理部122と、重量算出部123と、選定処理部124と、を備える。
【0026】
運転制御部121は、記憶部13に格納されている、エレベータ1の運転を行うための各種制御プログラムを読み出して実行し、巻上機14を駆動させることにより、エレベータ1の円滑な運転を実現する。
【0027】
本実施形態においては、リスト管理部122は、エレベータ1が、乗りかご15への乗車の要求を示す移動体乗車要求情報を移動体2から受信した場合に、移動体2に関する情報をリスト131に記憶させる。
【0028】
具体的には、リスト管理部122は、エレベータ1が通信部11を介して移動体2から移動体乗車要求情報を受信すると、移動体乗車要求情報に含まれる、移動体2に関する情報をリスト131に記憶させる。
【0029】
また、リスト管理部122は、選定処理部124が選定した移動体2に関する情報をリスト131から削除する。
【0030】
重量算出部123は、乗りかご15に乗車する利用者の重量の合計を算出する。具体的には、エレベータ1が通信部11を介して端末3から受信した端末乗車要求情報に含まれる利用者の重量情報に基づいて、乗りかご15に乗車する利用者の重量の合計を算出する。
【0031】
なお、重量算出部123は、このような構成に限られず、利用者一人当たりの重量を所定重量(例えば60kg)として、端末3から受信した端末乗車要求情報から算出される利用者の人数に基づいて、乗りかご15に乗車する利用者の重量の合計を算出してもよい。
【0032】
選定処理部124は、乗りかご15に移動体2が乗車したときの乗りかご15の重量と、釣合おもり16の重量との差が小さくなるように、乗りかご15に乗車する移動体2を選定する。
【0033】
具体的には、選定処理部124は、移動体2が乗車しない場合と比較して、乗りかご15の重量と釣合おもり16の重量との差が小さくなるように、乗りかご15に乗車する移動体2を選定する。
【0034】
より具体的に例を用いて説明する。エレベータ1の定格積載の半分の重量が乗りかご15に乗車したときに、乗りかご15の重量と釣合おもり16の重量は略等しくなるものとする。具体的には、エレベータ1の定格積載をWa[kg]とすると、定格積載の半分であるWb(=Wa/2)[kg]の重量が乗りかご15に乗車したときに、乗りかご15の重量と釣合おもり16の重量は略等しくなるものとする。
【0035】
重量算出部123によって算出される、乗りかご15に乗車する利用者の重量の合計をWc[kg]とすると、移動体2が乗車しない場合の乗りかご15の重量と釣合おもり16の重量との差は|Wb-Wc|[kg](式1)となる。
【0036】
ここで、移動体2の重量をWr[kg]とすると、移動体2が乗りかご15に乗車した場合の乗りかご15に乗車する利用者の重量と移動体2の重量の合計はWc+Wr[kg]である。よって、移動体2がさらに乗りかご15に乗車した場合の乗りかご15の重量と釣合おもり16の重量との差は|Wb-(Wc+Wr)|[kg](式2)となる。
【0037】
上記の式1と式2を用いて、選定処理部124は、|Wb-Wc|>|Wb-(Wc+Wr)|(式3)となる移動体2を選定することにより、移動体2が乗車しない場合と比較して、乗りかご15の重量と釣合おもり16の重量との差が小さくなるように、乗りかご15に乗車する移動体2を選定する。
【0038】
これにより、乗りかご15と釣合おもり16との重量差が小さくなるように移動体2を乗車させることから、エレベータ1の運転に要する巻上機14の負荷を抑制することができる。
【0039】
なお、式3を満たす移動体2が無い場合は、選定処理部124は、乗りかご15に乗車する移動体2を選定しない。つまり、移動体2が乗りかご15に乗車することなく、運転制御部121によるエレベータ1の運転を開始する。
【0040】
また、本実施形態においては、選定処理部124は、リスト131に記憶されている移動体2の中から、乗りかご15に乗車する移動体2を選定する。
【0041】
これにより、乗りかご15への乗車を要求した移動体2の中から乗りかご15に乗車する移動体2を選定することとなる。よって、例えば、乗車可能な状態ではない移動体2を選定することを抑制し、乗りかご15に乗車する移動体2を迅速に選定することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、選定処理部124は、移動体2の乗車区間と乗りかご15の運転区間との重複区間が大きくなるように、乗りかご15に乗車する移動体2を選定する。なお、乗りかご15の運転区間は、後述する端末乗車要求情報に基づいて決定される。
【0043】
具体的に、図2および図3を用いて説明する。なお、例として、エレベータ1の定格積載Wa=1000[kg]、乗りかご15に乗車する利用者の重量の合計Wc=420[kg]とする。また、図2に示すように、エレベータ1は、乗場18として1階乗場18A、2階乗場18B、3階乗場18C、4階乗場18Dを備えるものとする。
【0044】
この場合、式1より、移動体2が乗車しない場合の乗りかご15の重量と釣合おもり16の重量との差は|Wb-Wc|=|1000/2-420|=80[kg]となる。
【0045】
次に、図3に示す通り、リスト131に記憶されている移動体2は4台であり、各移動体2に対して、それぞれ「K」「L」「M」「N」の移動体IDが付与されている。
【0046】
また、図3に示す通り、移動体IDが「K」である移動体2の重量は100kg、移動体IDが「L」である移動体2の重量は100kg、移動体IDが「M」である移動体2の重量は100kg、移動体IDが「N」である移動体2の重量は200kgである。
【0047】
この場合、移動体IDが「K」、「L」又は「M」である移動体2の重量を用いると、式2より、移動体2が乗りかご15に乗車した場合の乗りかご15の重量と釣合おもり16の重量との差は|Wb-(Wc+Wr)|=|1000/2-(420+100)|=20[kg]となる。
【0048】
他方、移動体IDが「N」である移動体2の重量を用いると、式2より、移動体2が乗りかご15に乗車した場合の乗りかご15の重量と釣合おもり16の重量との差は|Wb-(Wc+Wr)|=|1000/2-(420+200)|=120[kg]となる。
【0049】
よって、移動体IDが「K」、「L」又は「M」である移動体2を選定すると、式3を満たす。換言すると、乗りかご15に移動体2が乗車したときの乗りかご15の重量と、釣合おもり16の重量との差が小さくなるように、移動体IDが「K」、「L」又は「M」である移動体2が選定される。
【0050】
さらに、乗りかご15の運転区間が「1階乗場18Aから上昇方向に4階乗場18Dまで」であるとする。
【0051】
図3の乗車階、行先階に示す通り、移動体IDが「K」である移動体2の乗車区間は「1階乗場18Aから上昇方向に4階乗場18Dまで」であり、当該移動体2の乗車区間と乗りかご15の運転区間とは、4階床分の重複区間がある。
【0052】
また、移動体IDが「L」である移動体2の乗車区間は「1階乗場18Aから上昇方向に3階乗場18Cまで」であり、当該移動体2の乗車区間と乗りかご15の運転区間とは、3階床分の重複区間がある。
【0053】
さらに、移動体IDが「M」である移動体2の乗車区間は「4階乗場18Dから下降方向に1階乗場18Aまで」であり、当該移動体2の乗車区間と乗りかご15の運転区間は、運転方向が異なるため、重複区間は無い。
【0054】
よって、移動体IDが「K」である移動体2を選定すると、移動体2の乗車区間と乗りかご15の運転区間との重複区間が大きくなる。換言すると、移動体2の乗車区間と乗りかご15の運転区間との重複区間が大きくなるように、移動体IDが「K」である移動体2が選定される。
【0055】
これにより、選定された移動体2は、例えば利用者の乗車要求に応じて設定された運転区間との重複が大きくなる。よって、巻上機14の負荷を抑制する区間を大きくすることができる。
【0056】
なお、乗りかご15に乗車する利用者の重量の合計をWc>0としたが、このような構成に限られず、乗りかご15に乗車する利用者の重量の合計がWc=0[kg]であってもよい。換言すると、乗りかご15に利用者が乗車していなくてもよい。
【0057】
例えば、利用者が乗車していない乗りかご15が1階乗場18Aで停止しているときに、4階乗場18Dを乗車階とする端末乗車要求情報を受信した場合、Wc=0[kg]であって、乗りかご15の運転区間が「1階乗場18Aから上昇方向に4階乗場18Dまで」である運転が決定される。
【0058】
よって、Wc=0[kg]として、上記の具体的な例のように、選定処理部124は、乗りかご15に乗車する移動体2を選定することができる。
【0059】
また、選定処理部124は、乗りかご15に乗車する1台の移動体2を選定したが、このような構成に限られず、複数の移動体2を選定してもよい。
【0060】
この場合、移動体2の重量Wr[kg]は、複数の移動体2の重量の合計とすればよく、リスト131に記憶された移動体2の全ての乗車パターンについて判定を行うことで、上記の具体的な例のように、選定処理部124は、乗りかご15に乗車する一又は複数の移動体2を選定することができる。
【0061】
なお、リスト131に記憶された移動体2の全ての乗車パターンについて、具体的に図3を例に説明する。リスト131に記憶されている移動体2は、それぞれに「乗車する」「乗車しない」の2通りの場合がある。図3に示すように、リスト131に記憶されている移動体2が4台であれば、移動体2の全ての乗車パターンの総数は2×2×2×2=16通りある。
【0062】
移動体2は、通信部21と、制御部22と、記憶部23と、を備える。
【0063】
記憶部23は、メモリ、HDDなどであり、移動体2において用いられる各種情報を記憶する。記憶部23には、例えば、移動体2の移動の制御を行うための各種制御プログラムが格納されている。
【0064】
通信部21は、移動体2がエレベータ1と無線通信を行うための通信モジュールである。具体的には、通信部21は、通信部11と無線通信を行う。
【0065】
移動体2は、エレベータ1の乗場18に到着したときに、エレベータ1の乗りかご15への乗車の要求を示す移動体乗車要求情報を、通信部21を介してエレベータ1に送信する。
【0066】
移動体乗車要求情報は、移動体2に関する情報を含み、移動体2の重量が含まれる。なお、移動体2の重量は、記憶部23に記憶されている。また、移動体乗車要求情報は、移動体2に関する情報として、移動体2の乗車区間を示す移動体乗車区間情報を含む。移動体2の乗車区間は、具体的には、移動体2の乗車階と行先階である。
【0067】
制御部22はCPUであり、移動体2の各処理を実行する。具体的には、制御部22は、記憶部23に格納されている、移動体2の移動を行うための各種制御プログラムを読み出して実行し、移動体2の円滑な移動を制御する。また、通信部21を介して乗車許可情報を受信すると、制御部22は、移動体2が乗りかご15に乗車するように制御する。
【0068】
端末3は、通信部31と、制御部32と、記憶部33と、操作部34と、報知部35と、を備える。
【0069】
記憶部33は、メモリ、HDDなどであり、端末3において用いられる各種情報を記憶する。
【0070】
操作部34はタッチパネルであり、利用者は、端末3において用いられる各種情報を、操作部34を介して、端末3に入力する。
【0071】
通信部31は、端末3がエレベータ1と無線通信を行うための通信モジュールである。具体的には、通信部31は、通信部11と無線通信を行う。
【0072】
端末3は、利用者の操作部34への操作に基づき、乗りかご15への乗車の要求を示す端末乗車要求情報を、通信部31を介してエレベータ1に送信する。
【0073】
端末乗車要求情報は、端末3を操作する利用者に関する情報を含み、利用者の重量(体重)が含まれる。なお、利用者の重量は、記憶部33に記憶されていてもよいし、操作部34を介して利用者が入力してもよい。
【0074】
また、端末乗車要求情報は、端末3を操作する利用者に関する情報として、利用者の乗車区間を示す端末乗車区間情報を含む。利用者の乗車区間は、具体的には、利用者の乗車階と行先階である。なお、乗車階と行先階は、記憶部33に記憶されていてもよいし、操作部34を介して利用者が入力してもよい。
【0075】
制御部32はCPUであり、端末3の各処理を実行する。具体的には、制御部32は、記憶部33に格納されている、端末3の各処理を行うための各種制御プログラムを読み出して実行する。
【0076】
報知部35はディスプレイであり、端末3は、報知部35を介して各種情報を報知する。なお、報知部35は、このような構成に限られず、例えば、スピーカで構成されてもよい。
【0077】
報知部35は、端末3が通信部31を介してエレベータ1から移動体同乗情報を受信すると、利用者に対して、移動体2が乗りかご15に同乗する旨を報知する。例えば報知部35に「移動体が同乗します」といった文字を表示する。
【0078】
これにより、利用者は、移動体2が乗りかご15に同乗することをあらかじめ認識することができるため、利用者は安心して移動体2と乗りかご15に同乗することができる。
【0079】
2.動作
図4は、本発明の一実施形態であるエレベータシステムの制御を示すフロー図である。また、図5は、図4における選定処理を示すフロー図である。以下、エレベータシステム100における制御について、図4および図5を参照しながら説明する。
【0080】
図4に示すように、エレベータ1の制御部12は、移動体2から移動体乗車要求情報を受信したか否かを判定する(ステップS11)。
【0081】
制御部12が移動体乗車要求情報を受信したと判定した場合(ステップS11でYES)、リスト管理部122は、移動体2に関する情報をリスト131に記憶させ(ステップS12)、ステップS13へ進む。
【0082】
他方、制御部12が移動体乗車要求情報を受信していないと判定した場合(ステップS11でNO)、ステップS13へ進む。
【0083】
次に、制御部12は、端末3から端末乗車要求情報を受信したか否かを判定する(ステップS13)。制御部12が端末乗車要求情報を受信していないと判定した場合(ステップS13でNO)、ステップS11へ戻る。
【0084】
他方、制御部12が端末乗車要求情報を受信したと判定した場合(ステップS13でYES)、運転制御部121は、端末乗車要求情報に基づいて、乗りかご15の運転区間を決定し、ステップS14へ進む。
【0085】
次に、重量算出部123は、乗りかご15に乗車する利用者の重量の合計を算出し(ステップS14)、選定処理へ進む(ステップS15)。
【0086】
図5に示すように、選定処理では、選定処理部124は、移動体2がリスト131に登録されているか否かを判定する(ステップS21)。
【0087】
選定処理部124が、移動体2がリスト131に登録されていない、と判定した場合(ステップS21でNO)、図4のステップS16へ進む。
【0088】
他方、選定処理部124が、移動体2がリスト131に登録されている、と判定した場合(ステップS21でYES)、選定処理部124は、乗りかご15に移動体2が乗車したときの乗りかご15の重量と、釣合おもり16の重量との差が小さくなるような移動体2がリスト131に登録されているか否かを判定する(ステップS22)。具体的には、式3を満たす移動体2がリスト131に登録されているか否かを判定する。
【0089】
選定処理部124が、乗りかご15に移動体2が乗車したときの乗りかご15の重量と、釣合おもり16の重量との差が小さくなるような移動体2がリスト131に登録されていない、と判定した場合(ステップS22でNO)、図4のステップS16へ進む。
【0090】
他方、選定処理部124が、乗りかご15に移動体2が乗車したときの乗りかご15の重量と、釣合おもり16の重量との差が小さくなるような移動体2がリスト131に登録されている、と判定した場合(ステップS22でYES)、選定処理部124は、乗りかご15の重量と釣合おもり16の重量との差が小さくなるような移動体2であって、乗りかご15の運転区間と重複する乗車区間を有する移動体2がリスト131に登録されているか否かを判定する(ステップS23)。
【0091】
選定処理部124が、乗りかご15の重量と釣合おもり16の重量との差が小さくなるような移動体2であって、乗りかご15の運転区間と重複する乗車区間を有する移動体2がリスト131に登録されていない、と判定した場合(ステップS23でNO)、図4のステップS16へ進む。
【0092】
他方、選定処理部124が、乗りかご15の重量と釣合おもり16の重量との差が小さくなるような移動体2であって、乗りかご15の運転区間と重複する乗車区間を有する移動体2がリスト131に登録されている、と判定した場合(ステップS23でYES)、選定処理部124は、乗りかご15の重量と釣合おもり16の重量との差が小さくなるような移動体2であって、移動体2の乗車区間と乗りかご15の運転区間との重複区間が大きくなる移動体2を選定し、エレベータ1は、乗車許可情報を当該移動体2に送信し(ステップS24)、図4のステップS16へ進む。
【0093】
図4に戻り、運転制御部121は、乗りかご15の運転を制御し(ステップS16)、ステップS17へ進む。ここで、移動体2と利用者が同乗する場合には、エレベータ1は、移動体同乗情報を端末3に送信する。なお、選定された移動体2が乗りかご15に乗車する前に、端末3から新たな端末乗車要求情報を受信した場合には、ステップS14とステップS15を繰り返すことで、移動体2を選定しなおしてもよい。
【0094】
次に、リスト管理部122は、選定処理部124が選定した移動体2に関する情報をリスト131から削除し(ステップS17)、フローを終了する。
【0095】
3.本実施形態のまとめ
以上により、本実施形態に係るエレベータシステム100は、乗りかご15と釣合おもり16を吊り下げるロープ17を巻上機14が巻き上げることで運転するエレベータ1と、エレベータ1と通信可能に接続された移動体2と、乗りかご15に移動体2が乗車したときの乗りかご15の重量と、釣合おもり16の重量との差が小さくなるように、乗りかご15に乗車する移動体2を選定する選定処理部124を備える。
【0096】
本実施形態の構成によれば、乗りかご15と釣合おもり16との重量差が小さくなるように移動体2を乗車させることから、エレベータ1の運転に要する巻上機14の負荷を抑制することができる。
【0097】
また、本実施形態に係るエレベータシステム100は、エレベータ1が、乗りかご15への乗車の要求を示す移動体乗車要求情報を移動体2から受信した場合に、移動体2に関する情報を記憶するリスト131をさらに備え、選定処理部124は、リスト131に記憶されている移動体2の中から、乗りかご15に乗車する移動体2を選定する、という構成である。
【0098】
本実施形態の構成によれば、乗りかご15への乗車を要求した移動体2の中から選定されることから、乗りかご15に乗車する移動体2を、迅速に選定することができる。
【0099】
また、本実施形態に係るエレベータシステム100は、移動体2は、移動体2の乗車区間を示す移動体乗車区間情報を送信し、選定処理部124は、乗車区間と乗りかご15の運転区間との重複区間が大きくなるように、乗りかご15に乗車する移動体2を選定する、という構成である。
【0100】
本実施形態の構成によれば、選定された移動体2は、例えば利用者の乗車要求に応じて設定された運転区間との重複が大きくなるため、さらに巻上機14の負荷を抑制することができる。
【0101】
なお、エレベータシステム100は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、修正、又は変形が可能である。例えば、下記の変形例の構成を選択し、上記の実施形態の構成に採用することも可能である。
【0102】
4.変形例
(1)上記の実施例に係るエレベータシステム100においては、エレベータ1が、乗りかご15への乗車の要求を示す移動体乗車要求情報を移動体2から受信した場合に、移動体2に関する情報を記憶するリスト131を備え、選定処理部124は、リスト131に記憶されている移動体2の中から、乗りかご15に乗車する移動体2を選定する、という構成である。しかしながら、エレベータシステム100は、このような構成に限られない。
【0103】
例えば、第1変形例に係るエレベータシステム100は、エレベータ1は、乗りかご15への乗車が可能であることを示す乗車可能情報を、エレベータ1と通信可能な移動体2に送信する。そして、乗車可能情報を受信した移動体2は、移動体2の重量を示す情報をエレベータ1に送信する。さらに、選定処理部124は、重量を示す情報を受信した順に、乗りかご15の重量と釣合おもり16の重量との差が小さくなる移動体2であるか否かを判定し、最初に当該差が小さくなると判定した移動体2を、乗りかご15に乗車する移動体2として選定する、という構成でもよい。
【0104】
なお、乗車可能情報を受信した移動体2は、乗りかご15に乗車可能な状態であるか否かを判定し、移動体2が乗りかご15に乗車可能な状態である場合に、移動体2の重量を示す情報をエレベータ1に送信してもよい。
【0105】
第1変形例の構成によれば、エレベータ1は、移動体2の重量を示す情報を含む移動体2に関する情報を、複数の移動体2に対して記憶する必要がない。よって、記憶部の容量を小さくすることができる。
【0106】
(2)上記の実施例に係るエレベータシステム100においては、選定処理部124は、乗車区間と乗りかご15の運転区間との重複区間が大きくなるように、乗りかご15に乗車する移動体2を選定する、という構成である。しかしながら、エレベータシステム100は、このような構成に限られない。
【0107】
例えば、第2変形例に係るエレベータシステム100は、乗りかご15に移動体2が乗車したときの乗りかご15の重量と、釣合おもり16の重量との差が小さくなるような移動体2の中から、他の条件によって、乗りかご15に乗車する移動体2を選定する、という構成でもよい。
【0108】
(2A)例えば、エレベータシステム100は、乗りかご15に移動体2が乗車したときの乗りかご15の重量と、釣合おもり16の重量との差が小さくなるような移動体2の中から、乗りかご15に移動体2が乗車したときの乗りかご15の重量と、釣合おもり16の重量との差が最も小さくなるように、乗りかご15に乗車する移動体2を選定する、という構成でもよい。
【0109】
このような構成によれば、選定された移動体2は、乗りかご15の重量と釣合おもり16の重量との差が最も小さくなるため、さらに巻上機14の負荷を抑制することができる。
【0110】
(2B)例えば、エレベータシステム100は、乗りかご15に移動体2が乗車したときの乗りかご15の重量と、釣合おもり16の重量との差が小さくなるような移動体2の中から、移動体2から移動体乗車要求情報を受信した受信時刻が最も早い移動体2を、乗りかご15に乗車する移動体2として選定する、という構成でもよい。
【0111】
このような構成によれば、移動体2が移動体乗車要求情報をエレベータ1に送信してから、当該移動体2が乗りかご15に乗車するまでの時間を短くすることができ、移動体2のエレベータ1による円滑な移動が妨げられるのを抑制することができる。
【0112】
(3)上記の実施例に係るエレベータシステム100においては、端末3は、エレベータ1の利用者が所有する携帯端末である、という構成である。しかしながら、エレベータシステム100は、このような構成に限られない。
【0113】
例えば、第3変形例に係るエレベータシステム100は、端末3は、乗場18又は乗りかご15の壁に据え付けられた、タッチパネルを備えるタブレット端末である、という構成でもよい。また、端末3は、乗場18の壁に据え付けられた、乗場呼びボタンを備える乗場操作盤である、という構成でもよい。さらに、端末3は、乗りかご15の壁に据え付けられた、かご呼びボタンを備えるかご内操作盤である、という構成でもよい。
【0114】
なお、端末3の通信部31は、エレベータ1と有線による通信を行ってもよい。また、報知部35は、端末3とは別体で設けられてもよいし、報知部35を備えなくてもよい。さらに、利用者の重量(体重)は、乗りかご15に備えられたロードセルによって計測されてもよい。
【0115】
第3変形例の構成によれば、利用者が携帯端末を所有していない場合でも、エレベータ1の運転に要する巻上機14の負荷を抑制することができる。
【0116】
(4)上記の実施例に係るエレベータシステム100においては、制御部12が端末乗車要求情報を受信していないと判定した場合(図4のステップS13でNO)、制御部12は、移動体2から移動体乗車要求情報を受信したか否かを判定する(図4のステップS11へ戻る)、という構成である。しかしながら、エレベータシステム100は、このような構成に限られない。
【0117】
例えば、第4変形例に係るエレベータシステム100は、移動体乗車要求情報を受信してから所定時間以上(例えば5分以上)経過しても端末乗車要求情報を受信しない場合は、選定処理へ進む(図4のステップS15)、という構成でもよい。
【0118】
なお、第4変形例においても、選定処理部124は、乗りかご15に移動体2が乗車したときの乗りかご15の重量と、釣合おもり16の重量との差が小さくなるように、乗りかご15に乗車する移動体2を選定する。具体的には、選定処理において、選定処理部124は、乗りかご15に移動体2が乗車したときの乗りかご15の重量と、釣合おもり16の重量との差が小さくなるような移動体2がリスト131に登録されている場合には、当該移動体2を、乗りかご15に乗車する移動体2として選定する。
【0119】
また、第4変形例においても、選定処理部124は、乗りかご15に移動体2が乗車したときの乗りかご15の重量と、釣合おもり16の重量との差が小さくなるように、乗りかご15に乗車する複数の移動体2を選定してもよい。
【0120】
第4変形例の構成によれば、端末乗車要求情報を受信しない場合であっても、エレベータ1の運転に要する巻上機14の負荷を抑制することができる。
【0121】
(5)上記の実施例に係るエレベータシステム100においては、エレベータ1は、CPUなどの制御部12と、メモリ、HDDなどの記憶部13と、を備える、という構成である。また、移動体2は、CPUなどの制御部22と、メモリ、HDDなどの記憶部23と、を備える、という構成である。さらに、端末3は、CPUなどの制御部32と、メモリ、HDDなどの記憶部33と、を備える、という構成である。しかしながら、エレベータシステム100は、このような構成に限られない。
【0122】
例えば、制御部12、記憶部13、制御部22、記憶部23、制御部32、記憶部33の各部の一部又は全部は、外部サーバやクラウドサーバに備えられる、という構成でもよい。
【符号の説明】
【0123】
1 エレベータ
11 通信部
12 制御部
121 運転制御部
122 リスト管理部
123 重量算出部
124 選定処理部
13 記憶部
131 リスト
14 巻上機
15 乗りかご
16 釣合おもり
17 ロープ
18 乗場
18A 1階乗場
18B 2階乗場
18C 3階乗場
18D 4階乗場
2 移動体
21 通信部
22 制御部
23 記憶部
3 端末
31 通信部
32 制御部
33 記憶部
34 操作部
35 報知部
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごと釣合おもりを吊り下げるロープを巻上機が巻き上げることで運転するエレベータと、
前記エレベータと通信可能に接続された移動体と、
前記乗りかごに前記移動体が乗車したときの前記乗りかごの重量と、前記釣合おもりの重量との差が小さくなるように、前記乗りかごに乗車する前記移動体を選定する選定処理部と、
前記エレベータが、前記乗りかごへの乗車の要求を示す移動体乗車要求情報を前記移動体から受信した場合に、前記移動体に関する情報を記憶するリストと、を備え、
前記選定処理部は、前記リストに記憶されている前記移動体の中から、前記乗りかごに乗車する前記移動体を選定する、
エレベータシステム。
【請求項2】
前記移動体は、前記移動体の乗車区間を示す移動体乗車区間情報を送信し、
前記選定処理部は、前記乗車区間と前記乗りかごの運転区間との重複区間が大きくなるように、前記乗りかごに乗車する前記移動体を選定する、
請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記選定処理部は、前記乗りかごに前記移動体が乗車したときの前記乗りかごの重量と、前記釣合おもりの重量との差が小さくなるような前記移動体の中から、前記移動体の前記移動体乗車要求情報を受信した受信時刻が最も早い前記移動体を、前記乗りかごに乗車する前記移動体として選定する、
請求項1に記載のエレベータシステム。