(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142762
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】スタックの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20241003BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20241003BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20241003BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20241003BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M50/103
H01G11/06
H01G11/12
H01G11/84
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055073
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】小堀 大智
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA15
5E078AB06
5E078AB13
5E078HA05
5E078JA02
5E078LA07
5H011AA09
5H011CC06
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ03
5H029CJ16
5H029HJ04
5H029HJ15
(57)【要約】
【課題】蓄電セル厚みを好適に制御し、スタックの拘束荷重の低下を抑制することができるスタックの製造方法に関する。
【解決手段】ここに開示される技術は、蓄電セルを複数備えるスタックの製造方法であって、ここで準備される蓄電セルは、該蓄電セルの厚み方向に荷重を0.1mm/minの速度で0.1MPaまで印加し、前記準備工程において準備する前記蓄電セルに対し、該蓄電セルの厚み方向に荷重を0.1mm/minの速度で0.1MPaまで印加し、該印加後に上記荷重を0.1mm/minの速度で0.01MPaまで減少する処理を1サイクルとし、該処理を5サイクル行ったとき、1サイクル目の加圧側F-sカーブにおける面圧0.04MPaに対する蓄電セル厚みX1と、5サイクル目の加圧側F-sカーブにおける面圧0.04MPaに対する蓄電セル厚みX5との関係が、次式:(X1-X5)/X1×100≧0.3を満たす。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の角型の蓄電セルを備えたスタックの製造方法であって、
正極と負極とがセパレータを介して積層され巻回されてなる扁平形状の巻回電極体と、非水電解質と、前記巻回電極体と前記非水電解質とを収容するケースと、を備える前記蓄電セルを準備する準備工程と、
複数の前記蓄電セルを該蓄電セルの厚み方向に沿って積層する積層工程と、を有し、
前記準備工程において準備する前記蓄電セルに対し、該蓄電セルの厚み方向に荷重を0.1mm/minの速度で0.1MPaまで印加し、該印加後に前記荷重を0.1mm/minの速度で0.01MPaまで減少する処理を1サイクルとし、該処理を5サイクル行ったとき、
1サイクル目の加圧側F-sカーブにおける面圧0.04MPaに対する蓄電セル厚みX1と、5サイクル目の加圧側F-sカーブにおける面圧0.04MPaに対する蓄電セル厚みX5との関係が、
次式:(X1-X5)/X1×100≧0.3
を満たす、
スタックの製造方法。
【請求項2】
前記負極は、負極芯体と、前記負極芯体上に形成された負極活物質層とを備え、
前記巻回電極体の長手方向に直交する前記負極活物質層の幅方向の長さLnは、20cm以上である、
請求項1に記載のスタックの製造方法。
【請求項3】
前記巻回電極体の巻回軸方向に対し垂直で、且つ前記巻回電極体の厚み方向に対し垂直な方向の長さを、前記巻回電極体の高さTとしたとき、
前記巻回電極体の高さTに対する、前記負極活物質層の幅方向の長さLnの比(Ln/T)が2.8~3.2である、
請求項2に記載のスタックの製造方法。
【請求項4】
前記準備工程は、前記蓄電セルに対し、該蓄電セルの厚み方向に荷重を印加しながら充電を行う活性化工程を含み、
前記活性化工程において、前記蓄電セルに対し印加する荷重が0.5~0.7MPaである、
請求項1または2に記載のスタックの製造方法。
【請求項5】
前記正極の積層数が30層以上である、
請求項1または2に記載のスタックの製造方法。
【請求項6】
1サイクル目の加圧側F-sカーブにおける面圧0.04MPaに対する蓄電セル厚みX1と、5サイクル目の加圧側F-sカーブにおける面圧0.04MPaに対する蓄電セル厚みX5との関係が、
次式:(X1-X5)/X1×100≦2.0
を更に満たす、
請求項1または2に記載のスタックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スタックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の蓄電セルを備えたスタックは、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)等の車両に搭載される駆動用電源として好適に用いられている。これに関連する従来技術文献として、特許文献1が挙げられる。特許文献1では、筐体、非水電解液(非水電解質)、および正極、負極、セパレータを備える電極体を有し、該電極体が更に負極のばね定数(第1ばね定数)より低いばね定数(第2ばね定数)を有する低ばね定数膜を備えることによって、電極体の膨張収縮に伴う電極体内部の非水電解液の押し出しを抑制する非水電解液二次電池(蓄電セル)に関する技術が開示されている。従来、スタックは蓄電セルを積層し、荷重をかけて拘束することで使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スタックの使用時において、低温や低SOC(State of Charge)条件になると、蓄電セルの厚みが小さくなる。スタックがかかる状態となった際、蓄電セル内において電極体外部へ押し出された非水電解質が電極体に再び戻ることで、蓄電セルの厚みを再び大きくし、スタックの拘束荷重を維持する。しかし、蓄電セル内で非水電解質が電極体に戻りにくい場合、蓄電セル厚みが小さいままであるため、スタックの拘束荷重が低下し、蓄電セルを十分に拘束できなくなる。従って、スタックの製造においては、蓄電セルの非水電解質の押し出しのみならず、非水電解質の戻りやすさについても考慮する必要がある。これに関し、上記した特許文献1では、非水電解質の電極体内部への戻りやすさには検討がされておらず、上記技術には改善の余地がある。
【0005】
ここに開示される技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、スタックに積層された蓄電セル厚みを好適に制御し、スタックの拘束荷重の低下を抑制することができるスタックの製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される技術は、複数の角型の蓄電セルを備えたスタックの製造方法であって、正極と負極とがセパレータを介して積層され巻回されてなる扁平形状の巻回電極体と、非水電解質と、上記巻回電極体と上記非水電解質とを収容するケースと、を備える上記蓄電セルを準備する準備工程と、複数の上記蓄電セルを該蓄電セルの厚み方向に沿って積層する積層工程と、を有する。ここで、上記準備工程において準備する上記蓄電セルに対し、該蓄電セルの厚み方向に荷重を0.1mm/minの速度で0.1MPaまで印加し、該印加後に上記荷重を0.1mm/minの速度で0.01MPaまで減少する処理を1サイクルとし、該処理を5サイクル行ったとき、1サイクル目の加圧側F-sカーブにおける面圧0.04MPaに対する蓄電セル厚みX1と、5サイクル目の加圧側F-sカーブにおける面圧0.04MPaに対する蓄電セル厚みX5との関係が、次式:(X1-X5)/X1×100≧0.3を満たすことを特徴とする。
【0007】
上記準備工程で準備する蓄電セルは、上記した式を満たす蓄電セルである。かかる構成をもつ蓄電セルでは、積層工程にて巻回電極体外部に押し出された非水電解質が再び巻回電極体の内部に戻るための厚み差を持たせている。したがって、上記した蓄電セルが非水電解質を再度取り込むことで巻回電極体の厚みが大きくなり、蓄電セルの厚みが大きくなる。このため、蓄電セルに印加する荷重の減少を抑え、スタックにおいて、蓄電セルに対して十分な荷重を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るスタックを模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図4】
図4は、封口板に取り付けられた巻回電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、巻回電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、巻回電極体の構成を示す模式図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係るスタックの製造方法を示すフロー図である。
【
図8】
図8は、一実施形態における、準備工程で得られるF-s曲線の一例である。
【
図9】
図9は、一実施形態に係る巻回電極体の厚み変化について説明するための模式図である。(a)はスタック拘束前の巻回電極体を示し、(b)はスタック拘束時の巻回電極体を示し、(c)は非水電解質が巻回電極体に戻る時の巻回電極体を示す。
【
図10】
図10は、準備工程における、セル厚み変化量の測定を説明する模式図である。
【
図11】
図11は、一実施形態に係る蓄電セルの製造方法を示すフロー図である。
【
図12】
図12は、実施例1、2および比較例2について、1サイクル目と5サイクル目間の同一荷重間におけるセル厚み変化をΔセル厚み(mm)として横軸に、印加した荷重(kN)を縦軸としてプロットしたグラフである。
【
図13】
図13は、従来例に係る巻回電極体の厚み変化について説明するための模式図である。(a)はスタック拘束前の巻回電極体を示し、(b)はスタック拘束時の巻回電極体を示し、(c)は非水電解質が巻回電極体に戻る時の巻回電極体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、ここに開示されるスタックのいくつかの好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本開示の実施に必要な事柄(例えば、本開示を特徴付けない蓄電セルの一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示されるスタックは、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0010】
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
【0011】
図1は、一実施形態に係るスタック500を模式的に示す斜視図である。スタック500は、ここでは、複数の蓄電セル100と、拘束機構300と、を備えている。また、説明の便宜上ここでは図示しないが、スタック500の複数の蓄電セル100は、バスバーで電気的に接続されている。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、蓄電セル100の短辺方向(厚み方向)、短辺方向と直交する長辺方向(幅方向)、上下方向を、それぞれ表すものとする。短辺方向Xは、蓄電セル100の配列方向でもある。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、スタック500の設置形態を何ら限定するものではない。
【0012】
拘束機構300は、複数の蓄電セル100に対して、厚み方向Xから規定の拘束圧を印加するように構成されている。拘束機構300は、ここでは、一対のエンドプレート310と、一対のサイドプレート320と、複数のビス330とで、構成されている。一対のエンドプレート310は、所定の厚み方向Xに並んでいる。一対のエンドプレート310は、厚み方向Xにおいてスタック500の両端に配置されている。複数の蓄電セル100は、一対のエンドプレート310の間に、厚み方向Xに沿って配置されている。複数の蓄電セル100の間に、絶縁シートやセル間セパレータ等を配置してもよい。
【0013】
一対のサイドプレート320は、一対のエンドプレート310を架橋している。一対のサイドプレート320は、例えば、複数の蓄電セル100に荷重を印加しつつ複数のビス330によってエンドプレート310に固定されている。これにより、複数の蓄電セル100と複数の多孔質弾性部材200とに対して厚み方向Xから拘束荷重が印加され、スタック500が一体的に保持されている。ただし、拘束機構はこれに限定されるものではない。拘束機構300は、例えば、サイドプレート320にかえて、複数の拘束バンドやバインドバー等を備えていてもよい。
【0014】
<蓄電セル100>
本明細書において「蓄電セル」とは、繰り返し充電と放電を行なうことができるデバイスをいう。蓄電セルには、一般にリチウムイオン電池やリチウム二次電池などと称される電池の他、リチウムポリマー電池、リチウムイオンキャパシタなどが包含される。二次電池とは、正負極間の電荷担体の移動に伴って繰り返しの充放電が可能な電池一般をいう。ここでは、蓄電セルの一形態として、リチウムイオン二次電池を例示する。
【0015】
図2は、蓄電セル100の斜視図である。
図1、
図2に示すように、複数の蓄電セル100は、後述する第1側壁12bが相互に対向するように、厚み方向Xに並んでいる。
図3は、
図2のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
図3に示すように、蓄電セル100は、ケース10と、巻回電極体20と、非水電解質(図示せず)と、更に、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部50と、負極集電部60と、を備えている。蓄電セル100は、ここではリチウムイオン二次電池である。
【0016】
ケース10は、巻回電極体20および非水電解質を収容する筐体である。
図2に示すように、ケース10は、扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。ケース10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましい。
図2に示すように、ケース10は、開口12hを有する外装体12と、開口12hを封口する封口板(蓋体)14と、を備えている。ケース10は、本実施形態のように、開口12hを有する外装体12と、開口12hを封口する封口板14とを備えることが好ましい。
【0017】
外装体12は、
図2に示すように、底部12aと、底部12aから延び相互に対向する一対の第1側壁12bと、底部12aから延び相互に対向する一対の第2側壁12cと、を備えている。底部12aは、略矩形状である。底部12aは、開口12hと対向している。第1側壁12bは平坦である。第1側壁12bは底部12aのうち、長辺側から延びる。第2側壁12cは底部12aのうち、短辺側から延びる。平面視において、第1側壁12bの面積は、第2側壁12cの面積よりも大きい。外装体12の大きさは、特に限定されないが、例えば、幅(長辺方向Y)が300~330mm、高さ(上下方向Z)が100~130mm、厚み(短辺方向X)が30~50mmの大きさを有することが好ましい。
【0018】
封口板14は、外装体12の開口12hを塞ぐように外装体12に取り付けられている。封口板14は、外装体12の底部12aと対向している。封口板14は、平面視において略矩形状である。ケース10は、外装体12の開口12hの周縁に封口板14が接合(好ましくは溶接接合)されることによって、一体化されている。ケース10は、気密に封止(密閉)されている。
【0019】
図3に示すように、封口板14には、注液孔15と、排出弁17と、2つの端子引出孔18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12に封口板14を組み付けた後、非水電解質を注液するためのものである。注液孔15は、封止部材16により封止されている。排出弁17は、ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、ケース10内のガスを外部に排出するように構成されている。端子引出孔18、19は、封口板14を上下方向Zに貫通している。端子引出孔18、19は、それぞれ、封口板14に取り付けられる前の(かしめ加工前の)の正極端子30および負極端子40を挿通可能な大きさの内径を有する。
【0020】
非水電解質は従来と同様でよく、特に制限はない。非水電解質は、非水溶媒と支持塩(電解質塩)とを含有する。非水電解質は、必要に応じてさらに添加剤を含んでもよい。非水溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類を含む。非水溶媒は、カーボネート類を含むことが好ましい。特に、環状カーボネートおよび鎖状カーボネートを含むことが好ましい。支持塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等のフッ素含有リチウム塩である。非水電解質に含みうる添加剤としては、例えば、被膜形成剤、ガス発生剤、分散剤、増粘剤等が採用し得る。被膜形成剤としては、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、クロロエチレンカーボネート、メチルフェニルカーボネートなどのカーボネート化合物;リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiFOB)、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート(LPFO)などのオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩;等が挙げられる。
【0021】
正極端子30は、封口板14の長辺方向Yの一方側の端部(
図2、
図3の左端部)に配置されている。負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方側の端部(
図2、
図3の右端部)に配置されている。
図3に示すように、正極端子30および負極端子40は、端子引出孔18、19を挿通して封口板14の内部から外部へと延びている。正極端子30および負極端子40は、封口板14に固定されている。正極端子30および負極端子40は、ここでは、かしめ加工により、封口板14の端子引出孔18、19を囲む周縁部分に、かしめられている。正極端子30および負極端子40の外装体12の側の端部(
図3の下端部)には、かしめ部30c、40cが形成されている。
【0022】
図3に示すように、正極端子30は、外装体12の内部で、正極集電部50を介して巻回電極体20の正極22(
図6参照)と電気的に接続されている。負極端子40は、外装体12の内部で、負極集電部60を介して巻回電極体20の負極24(
図6参照)と電気的に接続されている。正極端子30は、内部絶縁部材80およびガスケット90によって封口板14と絶縁されている。負極端子40は、内部絶縁部材80およびガスケット90によって封口板14と絶縁されている。
【0023】
封口板14の外側の面には、板状の正極外部導電部材32および負極外部導電部材42が取り付けられている。正極外部導電部材32は、正極端子30と電気的に接続されている。負極外部導電部材42は、負極端子40と電気的に接続されている。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、複数の蓄電セル100を相互に電気的に接続するバスバー等が付設される部材である。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、外部絶縁部材92によって封口板14と絶縁されている。なお、
図1では図示が省略されているが、スタック500の使用時には、隣り合う蓄電セル100同士が電気的に接続される。例えば、隣り合う蓄電セル100のうち、一方の蓄電セル100の正極外部導電部材32と、他方の蓄電セル100の負極外部導電部材42とが、バスバー等で電気的に接続される。これにより、スタック500は電気的に接続される。スタック500の接続は、直列接続でもよく、並列接続でもよく、また、直列と並列を組み合わせたいわゆる多直多並接続でもよい。
【0024】
図4は、封口板14に取り付けられた巻回電極体20を模式的に示す斜視図である。巻回電極体20は、ここでは3つの巻回電極体20を有する。ただし、1つの外装体12の内部に配置される電極体の数は特に限定されず、1つであってもよいし、複数個(2つ以上)であってもよい。巻回電極体20は、ここでは並列に電気的に接続されている。巻回電極体20は、巻回軸WL(
図6参照)が長辺方向Yと略平行になる向きで、外装体12の内部に配置されている。巻回電極体20は、ここでは、蓄電セル100の厚み方向(換言すれば、ケース10の第1側壁12bに対して略垂直な方向。)と巻回電極体20の厚み方向が一致する方向(短辺方向X)に並んで配置されている。巻回電極体20は、外形が扁平形状であることが好ましい。巻回電極体20の巻回軸WLと直交する端面(言い換えれば、正極22と負極24とが積層された積層面)は、第2側壁12cと対向している。また、図示は省略するが、巻回電極体20と外装体12との間には、絶縁シートが配置されている。
【0025】
図5は、巻回電極体20を模式的に示す斜視図である。なお、ここでは、ケース10内に収容された巻回電極体20はいずれも同様の構成とすることができる。巻回電極体20は、一対の湾曲部(R部)20rと、一対の湾曲部20rを連結する平坦部20fと、を有している。一方(
図5の上側)の湾曲部20rは、封口板14と対向し、他方(
図5の下側)の湾曲部20rは、外装体12の底部12aと対向している。平坦部20fは、外装体12の第1側壁12bと対向している。ここでは、短辺方向Xに隣り合う複数の巻回電極体20は、それぞれ平坦部20f同士が対向している。
【0026】
図6は、巻回電極体20の構成を示す模式図である。巻回電極体20は、正極22と、負極24と、セパレータ26と、を有する。巻回電極体20は、ここでは、帯状の正極22と、帯状の負極24とが、帯状のセパレータ26を介して積層され、巻回軸WLを中心として長手方向に巻回されて構成されている。なお、巻回軸WL方向は、長辺方向Yと略平行の向きである。
【0027】
正極22は、
図6に示すように、ここでは、正極芯体22cと、正極芯体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を有する。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。正極芯体22cは、帯状である。正極芯体22cは、金属箔であることが好ましく、アルミニウム箔あるいはアルミニウム合金箔からなることがより好ましい。正極芯体22cは、ここではアルミニウム箔である。正極芯体22cの厚みは、特に限定されないが、5~30μmが好ましく、10~25μmがより好ましい。正極22の積層数は、30層以上であることが好ましい。
【0028】
正極芯体22cの長辺方向Yの一方の端部(
図6の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、長辺方向Yの一方側(
図6の左側)に向かって突出している。複数の正極タブ22tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。正極タブ22tは、ここでは正極芯体22cの一部であり、金属箔(アルミニウム箔)からなっている。
図3~
図6に示すように、複数の正極タブ22tは長辺方向Yの一方の端部(
図3~
図6の左端部)で積層され、正極タブ群23を構成している。正極タブ群23は、正極集電部50を介して正極端子30と電気的に接続されている。
【0029】
正極活物質層22aは、
図6に示すように、正極芯体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質を含んでいる。正極活物質としては、例えばリチウム遷移金属複合酸化物が好適に用いられ、特にニッケル(Ni)を含むことが好ましい。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、バインダー、導電材、等の各種添加成分を含んでいてもよく、添加成分として導電材及びバインダーを含むことが好ましい。正極活物質層22aに用いられるバインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等が挙げられる。正極活物質層22aに用いられる導電材としては、特に限定されないが、炭素材料が好適に用いられる。正極活物質層22aの密度は、3.0g/cc以上が好ましく、3.5g/cc以上がより好ましい。一方で、正極活物質層22aの密度は、好ましくは3.7g/cc以下が好ましい。
【0030】
正極保護層22pは、
図6に示すように、ここでは、長辺方向Yにおいて正極芯体22cと正極活物質層22aとの境界部分に設けられている。正極保護層22pは、正極活物質層22aに沿って、帯状に設けられている。正極保護層22pは、無機フィラー(例えば、アルミナ)を含んでいる。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、導電材、バインダー、各種添加成分等を含んでいてもよい。
【0031】
負極24は、
図6に示すように、ここでは、負極芯体24cと、負極芯体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。負極芯体24cは、帯状である。負極芯体24cは、金属箔であることが好ましく、銅箔あるいは銅合金箔からなることがより好ましい。負極芯体24cは、ここでは銅箔である。負極芯体24cの厚みは、特に限定されないが、5~30μmが好ましく、10~25μmがより好ましい。
【0032】
負極芯体24cの長辺方向Yの一方の端部(
図6の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、長辺方向Yの一方側(
図6の右側)に向かって突出している。複数の負極タブ24tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。負極タブ24tは、ここでは負極芯体24cの一部であり、金属箔(銅箔)からなっている。
図3~
図6に示すように、複数の負極タブ24tは長辺方向Yの一方の端部(
図3~
図6の右端部)で積層され、負極タブ群25を構成している。負極タブ群25は、長辺方向Yにおいて正極タブ群23と対称的な位置に設けられている。負極タブ群25は、負極集電部60を介して負極端子40と電気的に接続されている。
【0033】
負極活物質層24aは、
図6に示すように、負極芯体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質を含んでいる。負極活物質としては、例えば、黒鉛、シリコン系材料(シリコン含有物質)およびそれらの混合酸化物などが好適に用いられる。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダー、増粘剤、分散剤、等の各種添加成分を含んでいてもよい。負極活物質層24aに用いられるバインダーとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。負極活物質層24aに用いられる導電材としては、特に限定されないが、炭素材料が好適に用いられる。負極活物質層24aの密度は、1.3g/cc以上が好ましく、1.4g/cc以上がより好ましい。一方で、負極活物質層24aの密度は、好ましくは1.7g/cc以下が好ましい。
【0034】
負極活物質層24aの幅方向Yの長さLnは、正極活物質層22aの幅方向Yの長さLaと同じかそれよりも長い。ここで、負極活物質層24aの幅方向Yの長さLnは、20cm以上であることが好ましい。詳しくは後述するが、かかる構成によれば、巻回電極体20への非水電解質の戻りを好適にコントロールすることができる。また、巻回電極体20の巻回軸WL方向に対し垂直で、且つ巻回電極体20の厚み方向Xに対し垂直な方向(ここではZ方向)の長さを、巻回電極体20の高さTとしたとき、巻回電極体20の高さTに対する負極活物質層24aの幅方向の長さLnの比(Ln/T)(以下、「電極体アスペクト比」ともいう。)が2.8~3.2であることが好ましい。かかる構成によれば、巻回電極体20への非水電解質の戻りを好適にコントロールすることができる。なお、明細書中において、「巻回電極体20の高さT」とは、Z方向において、巻回電極体20の一方(
図5のU側)の湾曲部20rの最上端から他方(
図5のD側)の湾曲部20rの最下端までの距離を指す。
【0035】
セパレータ26は、正極22の正極活物質層22aと、負極24の負極活物質層24aと、を絶縁する部材である。セパレータ26は、巻回電極体20の外表面を構成している。セパレータ26の長辺方向Yの長さLsは、負極活物質層24aの長辺方向Yの長さLnと同じかそれよりも長い。セパレータ26は、基材部を有する。セパレータ26は、基材部の少なくとも一方の表面上に形成され、例えば無機粒子と耐熱層バインダーを含む耐熱層が形成されてもよい。また、セパレータ26は、基材部の少なくとも一方の表面上に接着層バインダーを含む接着層が形成されていてもよい。接着層は、接着層バインダーの他に無機粒子をさらに含んでもよい。接着層は、平面視で、ドット状、ストライプ状、波状、帯状(筋状)、破線状、またはこれらの組み合わせ等の形状を有して形成されてもよい。図示は省略するが、本実施例では、セパレータ26の基材部の表面上に耐熱層が設けられ、耐熱層の上に更に接着層が設けられている。セパレータ26は、耐熱層と、接着層とを有することが好ましい。もしくは、セパレータ26は、無機粒子を含む接着層を有することが好ましい。
【0036】
セパレータ26の基材部は、ここでは、微多孔膜のシート状部材である。セパレータ26は、ポリオレフィン樹脂からなることが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)またはこれらの混合物が用いられ得る。
【0037】
セパレータ26の厚みは、特に限定されない。非水電解質がセパレータ26に存在しない場合のセパレータ26の厚みは10~30μm程度が好ましい。なお、本明細書における「セパレータ26の厚み」は、セパレータ26が基材部の他に接着層や耐熱層を有する場合、接着層や耐熱層を含む厚みを示し、特に言及しない限りにおいて、プレス成形処理前の厚みを示すものとする。
【0038】
セパレータ26が接着層を有する場合、接着層に用いる接着層バインダーとしては、従来公知この種の用途で使用されているものを特に制限なく使用でき、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂(例えば、PVdF)、ゴム系樹脂(例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR))、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、接着層が無機粒子を含む場合、耐熱層の総質量に対する無機粒子の割合は、5~20質量%程度が好ましく、10~15質量%程度がより好ましい。
【0039】
セパレータ26が耐熱層を有する場合、耐熱層の総質量に対する無機粒子の割合は、85質量%以上が好ましく、90質量%以上、さらには95質量%以上がより好ましい。耐熱層に用いる耐熱層バインダーとしては、従来公知この種の用途で使用されているものを特に制限なく使用でき、例えば、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、耐熱層バインダーと接着層バインダーの種類は同じでもよいし異なっていてもよい。
【0040】
セパレータ26の耐熱層および接着層に用いられる無機粒子としては、従来公知この種の用途で使用されているものを特に制限なく使用できるが、例えば、絶縁性のセラミック粒子を含むことが好ましい。中でも、耐熱性の観点から、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア等の無機酸化物や、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、ベーマイト等の粘土鉱物が好ましく、アルミナ、ベーマイトがより好ましい。また、セパレータ26の熱収縮を抑制する観点からは、特にアルミニウムを含む化合物が好ましい。
【0041】
正極集電部50は、
図3に示すように、複数の正極タブ22tからなる正極タブ群23と正極端子30とを電気的に接続する導通経路を構成している。正極集電部50は、正極第1集電部51と正極第2集電部52とを備えている。正極第1集電部51は、封口板14の内側の面に取り付けられている。正極第2集電部52は、外装体12の第2側壁12cに沿って延びている。
図3~
図5に示すように、正極第2集電部52は、巻回電極体20に付設されている。
【0042】
負極集電部60は、
図3に示すように、複数の負極タブ24tからなる負極タブ群25と負極端子40とを電気的に接続する導通経路を構成している。負極集電部60は、負極第1集電部61と負極第2集電部62とを備えている。負極第1集電部61および負極第2集電部62の構成は、正極集電部50の正極第1集電部51および正極第2集電部52と同等であってよい。
【0043】
<スタック500の製造方法>
図7は、一実施形態に係るスタック500の製造方法を示すフロー図である。ここに開示されるスタック500は、準備工程S10と、積層工程S20と、を含む製造方法によって製造することができ、準備工程S10を行うことで特徴づけられる。また、ここに開示されるスタック500の製造方法では、上記の工程に加え、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよく、それ以外の製造プロセスは従来と同様であってよい。
【0044】
(準備工程S10)
準備工程S10では、上記したような巻回電極体20と、非水電解質と、ケース10と、を備える蓄電セル100を準備する。準備工程S10では、蓄電セル100を購入して準備してもよく、蓄電セル100を製造して準備してもよい。
【0045】
ここで、準備工程S10で準備する蓄電セル100は、蓄電セル100の厚み方向(
図1のX方向)に荷重を0.1mm/minの速度で0.1MPaまで印加し、該印加後に前記荷重を0.1mm/minの速度で0.01MPaまで減少する処理を1サイクルとし、該処理を5サイクル行ったとき、1サイクル目の加圧側F-sカーブにおける面圧0.04MPaに対する蓄電セル厚みX1と、5サイクル目の加圧側F-sカーブにおける面圧0.04MPaに対する蓄電セル厚みX5との関係が、次式:(X1-X5)/X1×100≧0.3を満たすことを特徴とする。以下、本明細書においては、(X1-X5)/X1×100について「セル厚み変化量」ともいう。なお、本明細書において「セル厚み変化量」は、オートグラフによる測定によって求める。
【0046】
図8は、一実施形態における、準備工程S10で得られるF-s曲線の一例である。ここで、1サイクル目のF-s曲線は、出荷時(即ち、スタックとして使用前。)の蓄電セルのF-s曲線に相当する。一方、5サイクル目のF-s曲線は、巻回電極体の内部に保持された非水電解質を取り除いた蓄電セルのF-s曲線に相当する。従って、X1とX5との差(X1-X5)は、出荷時に巻回電極体内部に保持されていた非水電解質の厚みに相当する。そして、本実施形態に係る「セル厚み変化量」とは、面圧0.04MPaにおけるセル厚みの低下率であって、巻回電極体内の非水電解質の保持量を示す指標となる。
【0047】
図9は、一実施形態に係る巻回電極体20の厚み変化について説明するための模式図である。
図13は、従来例に係る巻回電極体20の厚み変化について説明するための模式図である。
図9および
図13は、それぞれ(a)はスタック拘束前の巻回電極体20を示し、(b)はスタック拘束時の巻回電極体20を示し、(c)は非水電解質が巻回電極体20に戻る時の巻回電極体20を示す。
図14は、従来例に係るF-s曲線の一例である。
図14は
図8に対応する図である。
図9および
図13では、巻回電極体20の一部について部分的に拡大している。
【0048】
巻回電極体20内部に非水電解質が存在する場合、例えば、非水電解質は巻回電極体20のセパレータ26の空隙26s内部に存在する。
図13(a)に示す状態では、拘束前の蓄電セル100では、巻回電極体20の空隙26s内に非水電解質が保持された状態である。スタック製造時においては、蓄電セル100を拘束する際、蓄電セル100が厚み方向Xに荷重がかかる。これにより、
図13(b)に示すように、巻回電極体20の空隙26sが押しつぶされ、空隙26s内部に保持されていた非水電解質が巻回電極体20の外部に押し出される。一方、スタック500の使用時、例えば、初期充電時や低温環境下や低SOCの条件の場合、巻回電極体20の厚みが減少する。特に、低温環境下かつ、低SOC条件かつ、初期充電時の条件がそろう場合、巻回電極体20の厚みの減少は顕著となる。これにより、拘束機構300による蓄電セル100への拘束荷重が小さくなる。すると、
図13(c)に示すように、巻回電極体20の外にあった非水電解質は、拘束荷重が小さくなった分、再び巻回電極体20の内部に戻ろうとする。ここで、再度巻回電極体20の内部に戻る非水電解質の量は、巻回電極体20の空隙26s量によって影響される。言い換えれば、蓄電セル100の巻回電極体20の空隙26s量が少ない場合、再度巻回電極体20内部に戻る非水電解質量は少なくなる。
図14に示すように、従来の蓄電セル100においては、X1とX5との差が小さい。換言すれば、巻回電極体20外部に存在する非水電解質が再び巻回電極体20の内部に戻るための空隙26sが少ない状態である。このように、蓄電セル100の巻回電極体20の空隙26s量が少ない場合、巻回電極体20に戻る非水電解質の量が少ないため、巻回電極体20の厚みがうまく増えず、蓄電セル100の厚みが薄いままである。このため、蓄電セル100に印加する荷重が減少する為、十分な荷重で拘束できなくなる。
【0049】
ここで、本実施例にかかるスタック500では、準備工程S10においてセル厚み変化量(%)が0.3%以上(≧0.3)である蓄電セルを準備することを特徴とする。蓄電セル100については、X1とX5との差を十分に持たせている。換言すれば、
図9(a)に示すように、出荷時に巻回電極体内部に保持されていた非水電解質分の厚みを十分に巻回電極体20に持たせている。そして、
図9(c)に示すように、巻回電極体20外部に存在する非水電解質が再び巻回電極体20の内部に戻るために十分な空隙26sを有している。したがって、非水電解質を再度取り込むことで巻回電極体20の厚みが大きくなり、蓄電セル100の厚みが大きくなる。このため、蓄電セル100に印加する荷重の減少を抑え、スタック500において、蓄電セル100に対して十分な荷重が維持される。
【0050】
図10は、準備工程S10における、セル厚み変化量の測定を説明する模式図である。
図10では、オートグラフ600が蓄電セル100の厚み方向に荷重をかける向きについて、白抜き矢印で図示する。
図8に示すように、まず蓄電セル100を厚み方向(白抜き矢印方向)に荷重がかかるようにオートグラフ600にセットする。
図10に示すように、蓄電セル100の一対の第1側壁12bとオートグラフ600とが当接するようにセットする。蓄電セル100を水平方向に見た時、巻回電極体20の平坦部20fにオートグラフ600による荷重がかかるようにセットする。ここでは、
図3の仮想線で示す箇所に荷重がかかるようにオートグラフ600に蓄電セル100をセットする。蓄電セル100の厚み変位を測定する手段は特に限定されず、例えば、レーザ変位計(例えば、株式会社キーエンス製、製品名:LK-G157等)等を用いることができる。また、蓄電セル100の厚みの測定箇所は1か所でも複数箇所(2か所以上)でもよい。そして蓄電セル100を蓄電セル100の厚み方向(白抜き矢印で図示)に0.1mm/minの速度で荷重をかける。荷重が0.1MPaに達したとき、0.1mm/minの速度で該荷重を0.01MPaまで減少する。上記のサイクルを1サイクルとし、該処理を5サイクル行う。この時、1サイクル目と5サイクル目の加圧側のF-s曲線(荷重変位曲線)を取得する(
図8参照)。
得られたF-s曲線を基に、1サイクル目の0.04MPaにおける蓄電セル厚みをプロットし、X1とする。一方で、得られたF-s曲線を基に、5サイクル目の0.04MPaにおける蓄電セル厚みをプロットし、X5とする。そして、次式(i)によって、セル厚み変化量(%)を算出する。
(X1-X5)/X1×100・・・式(i)
【0051】
蓄電セル100のセル厚み変化量の数値範囲を制御する方法は、特に限定されず、種々の方法によって制御し得る。例えば、蓄電セル100のセル厚み変化量は、セパレータ26の空隙26sや、巻回電極体20の大きさなどを調整することにより制御し得る。
【0052】
蓄電セル100のセル厚み変化量の数値範囲を制御する方法は、これに限定されないが、例えば、巻回電極体20の負極活物質層24aの幅方向Yの長さLnを調整することにより制御し得る。この時、負極活物質層24aの幅方向Yの長さLnは、20cm以上であることが好ましい。かかる構成により、巻回電極体20内部への非水電解質の出入りを好適にコントロールすることができる。即ち、蓄電セル100のセル厚み変化量の数値範囲を制御することができる。同様に、巻回電極体20の高さTに対する負極活物質層24aの幅方向の長さLnの比(Ln/T)(電極体アスペクト比)を調整することによって蓄電セル100のセル厚み変化量の数値範囲を制御し得る。この場合、上記電極体アスペクト比が2.8~3.2であることが好ましい。かかる構成によっても、巻回電極体20内部への非水電解質の出入りを好適にコントロールすることができる。
【0053】
蓄電セル100のセル厚み変化量の数値範囲を制御する方法は、これに限定されないが、例えば、セパレータ26表面に接着層を有する場合、該接着層の形成面積の割合(接着層形成領域の面積/セパレータの面積×100)を調整することにより制御し得る。この場合、接着層の形成面積の割合は、3~30%程度とすることが好ましく、5~15%程度とすることがより好ましい。また、セパレータ26表面の接着層をドット状に塗布することが好ましい。これにより、セパレータ26の空隙26sを好適に増やし、非水電解質の保持量を増やすことができる。また、電極(正極あるいは負極)からセパレータの基材部間の体積に対する接着層の体積の割合(Vol%)(セパレータの接着層体積/電極~セパレータ基材間の体積×100)が、50~97vol%であることが好ましく、85~95vol%であることがより好ましい。かかる数値範囲をもつ巻回電極体を採用することによっても、蓄電セル100のセル厚み変化量の数値範囲を好適な数値範囲に制御することができる。
【0054】
蓄電セル100のセル厚み変化量の数値範囲を制御する方法は、上記に限定されず、例えば、接着層及び耐熱層に含まれる無機粒子の粒径(D50)を調整することでも制御し得る。この場合、接着層及び耐熱層に含まれる無機粒子の粒径(D50)は、0.1~0.6μm程度とすることが好ましい。なお、明細書中において、無機粒子の粒径(D50)とは、レーザ回折法において測定される粒度分布において、粒径が小さい順から起算した重量累計50wt%の平均粒子直径を示す。
【0055】
準備工程S10においては、セル厚み変化量の数値範囲が0.3%以上(≧0.3)の範囲である蓄電セル100を準備してよいし、準備工程S10にて上記した方法でセル厚み変化量を測定することにより、蓄電セル100のセル厚み変化量の数値範囲が0.3%以上(≧0.3)の範囲であることを確認してもよい。
【0056】
セル厚み変化量の上限は、特に限定されないが、セル厚み変化量が大きくなる分、拘束前の状態(スタック組付け前)における、蓄電セル100の厚みが大きくなる。そのため、積層工程S20において組付け装置の小型化、積層工程S20の省力化の観点から、セル厚み変化量は2.0%以下であることが好ましい。
【0057】
(積層工程S20)
積層工程S20では、複数の蓄電セル100を蓄電セル100の厚み方向Xに沿って積層する。積層工程S20は、従来公知のスタック製造方法と同様であってよい。ここでは、複数の蓄電セル100を一対のエンドプレート310で配列方向Xに挟み込み、サイドプレート320と複数のビス330によって拘束される。この時、拘束機構300によって、蓄電セル100の積層方向に拘束荷重が印加される。このようにして、本実施例に係るスタック500が製造される。積層工程S20における、セル積層時の拘束荷重は、例えば2~30kNであり得、3~20kNが好ましい。
【0058】
<蓄電セル100の製造方法>
特に限定するものではないが、準備工程S10の蓄電セル100は、例えば、以下に示す製造方法によって準備することができる。なお、以下に示す蓄電セル100の製造方法は、本明細書における準備工程S10の一例である。
図11は、一実施形態に係る蓄電セル100の製造方法を示すフロー図である。
図11に示すように、特に限定されるものではないが、蓄電セル100は、例えば、組立工程S101と、乾燥工程S102と、注液工程S103と、ガス抜き充電工程S104と、減圧工程S105と、注液孔封止工程S106と、活性化工程S107と、エージング工程S108とを、典型的にはこの順序で含む製造方法によって製造することができる。また、ここに開示される蓄電セル100の製造方法では、上記の工程に加え、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよく、それ以外の製造プロセスは従来と同様であってよい。
【0059】
(組立工程S101)
組立工程S101では、ケース10(外装体12)内に巻回電極体20を配置し、組立体を用意する。なお、本明細書において「組立体」とは、後述する注液孔封止工程を行う前の形態にまで組み立てられた蓄電セルのことを示す。
【0060】
組立工程S101では、巻回電極体20の正極タブ群23に正極第2集電部52を取り付け、さらに負極タブ群25に負極集電部60負極第2集電部62を取り付ける。次いで、封口板14に正極端子30と負極端子40とを取り付ける。次いで、正極端子30と正極第1集電部51とを、及び、負極端子40と負極第1集電部61とを、それぞれ従来公知の方法(例えば、超音波接合、抵抗溶接、レーザ溶接等)で接合する。次いで、絶縁シートに巻回電極体20を収容する。絶縁シートは、例えば、ポリエチレン(PE)等の樹脂材料からなる絶縁性の樹脂シートを、袋状または箱状に折り曲げることにより用意することができる。そして、絶縁シートで覆われた巻回電極体20を外装体12の内部空間に収容(挿入)することが好ましい。そして、ケース10の外装体12と封口板14とを接合することによって、組立体を作製する。かかる接合は、例えばレーザ溶接等の溶接によって行うことができる。組立工程S101では、注液孔15は封止されない。
【0061】
組立工程S101では、巻回電極体20は、蓄電セル100の厚み方向(換言すれば、ケース10の第1側壁12bに対して略垂直な方向。)と巻回電極体20の厚み方向が一致する方向(短辺方向X)に並んで配置することが好ましい。換言すれば、巻回電極体20は巻回軸WLが外装体12の底部12aに平行になるようにして外装体12の内部に配置されることが好ましい。
【0062】
(乾燥工程S102)
乾燥工程S102では、組立体を乾燥することで、組立体(例えば、巻回電極体20の内部等)に含まれる水分を除去する。かかる乾燥方法は、公知の方法で行うことができる。例えば、乾燥工程S102は、組立体(巻回電極体20が収容されたケース10)を乾燥炉(図示せず)に搬送し、加熱することで行うことができる。
【0063】
乾燥工程S102における乾燥温度および乾燥時間は、巻回電極体20に含まれる水分量等に合わせて適宜調整することができる。乾燥温度は、水分を除去できる範囲であれば特に限定されないが、巻回電極体20のセパレータ26が損傷しない温度で乾燥することが望ましい。また、乾燥工程S102は、好ましくは減圧雰囲気で実施されるとよい。これにより、乾燥工程S102における乾燥時間を短縮することができる。ただし、これに限定されず、乾燥工程S102は大気圧雰囲気で実施されてもよいし。なお、ここに開示される技術において、乾燥工程S102は必須工程ではない。いくつかの好適な実施形態において、乾燥工程S102を省略することもできる。
【0064】
(注液工程S103)
注液工程S103では、封口板14に設けられた注液孔15から、巻回電極体20が収容されたケース10内に非水電解質を注液する。注液工程S103は、大気圧雰囲気で実施されてもよいし、減圧雰囲気で実施されてもよいが、好ましくは、減圧雰囲気で実施されるとよい。これにより、巻回電極体20内への非水電解質の含侵性が向上し、注液工程S103をより短時間で行うことができる。注液工程S103では、非水電解質が巻回電極体20の全体にいきわたる分量となるよう非水電解質を注液する。注液工程S103は、従来公知の非水電解質注液装置を適宜利用することができる。なお、このとき、非水電解質を圧送するために用いられ得る圧送ガスとしては、従来と同様、窒素(N2)等の不活性ガス、乾燥空気等が挙げられる。注液工程S103の終了後、ケース10内の加圧、減圧を適宜行うことが好ましい。
【0065】
(ガス抜き充電工程S104)
ガス抜き充電工程S104では、組立体を充電する。これにより、負極活物質層24aの表面に被膜を形成させることができる。さらに、充放電にて発生するガスをケース10外へ排出することで、注液孔15を封止した後にケース10内部にて発生するガス量を低減し、注液孔15の封止後に巻回電極体20内にガスが滞留することを抑制できる。本工程における充電条件は特に限定されず、従来の製造方法と同様であってよい。とくに限定されないが、例えば、ガス抜き充電工程S104は、常温環境(例えば25℃)において、SOC(State of Charge)が20%~90%程度となるまで0.05C~10C程度の電流で充電することで実施できる。
【0066】
ガス抜き充電工程S104では、ケース10を拘束し、ケース10に荷重を印加した状態で行うことが好ましい。これにより、ケース10のガスが押し出されやすくなるため、電極体内のガス噛みを抑制できる。ガス抜き充電工程S104にてケース10を拘束する場合、ケース10の第1側壁12bに荷重を印加することが好ましい。また、かかる拘束においては、ケース10の第1側壁12bからの正面視において、巻回電極体20の中心CP(
図3参照)と拘束領域の中心が略一致するように拘束することが好ましい。また、拘束領域は、特に限定されないが、ケース10の第1側壁12bに対し、巻回電極体20の中心CPを中心に長辺方向Yの長さについて280~295mm、上下方向Zの長さについて85~95mmの領域を拘束することが好ましい。ケース10に印加する荷重は、特に限定されないが、0.25~0.80MPaであることが好ましい。なお、本明細書において、「巻回電極体20の中心CP」とは、
図3に示すように、巻回電極体20のうち、平坦部20fを有する面(ケース10の第1側壁12bと対向する面)において、長辺方向Yの中央MYと上下方向Zの中央MZとが直交する点をいう。
【0067】
(減圧工程S105)
減圧工程S105では、ケース10内部を減圧することで、ケース10内部に存在する気体(例えば、空気やガス抜き充電工程S104で発生したガス等)を更にケース10の外部へ排出する。減圧工程S105は、従来のこの種の製造方法における減圧工程に用いる手段と同様でよく、特にここに開示される技術を特徴付けるものではないため、これ以上の詳細な説明は省略する。なお、ここに開示される技術において、減圧工程S105は必須工程ではない。いくつかの好適な実施形態において、減圧工程S105を省略することもできる。
【0068】
(注液孔封止工程S106)
注液孔封止工程S106では、組立体の注液孔15を封止する。注液孔封止工程S106は、従来公知の蓄電セル100の製造方法と同様であってよく、特に限定されるものではない。ここでは、金属製の封止部材16によって注液孔15を封止し、封止部材16の金属部分と封口板14(注液孔15の周縁部)を溶接することによって封止している。但し、注液孔15の封止方法はこれに限定されない。図示は省略するが、例えばブラインドリベット等のリベットによって注液孔15を封止してもよい。
【0069】
(活性化工程S107)
活性化工程S107では、注液孔封止工程S106を経て注液孔15が封止された蓄電セル100に対し、蓄電セル100の厚み方向に荷重を印加しながら充電を行う。これにより、負極活物質層24aの表面に被膜を形成させる。なお、活性化工程S107は、本明細における「準備工程S10」の一例として包含される。
【0070】
活性化工程S107における充電条件は特に限定されず、従来の製造方法と同様であってよい。とくに限定されないが、例えば、活性化工程S107は、常温環境(例えば25℃)において、SOC(State of Charge)が20%~90%程度となるまで0.05C~10C程度の電流で充電することで実施できる。
【0071】
活性化工程S107において、蓄電セル100に対し印加する荷重は、0.5~0.7MPaであることが好ましい。かかる構成によれば、よりセル厚み変化量が好適な範囲内とすることができる。蓄電セル100に荷重を印加する方法は特に限定されず、従来の蓄電セルの製造方法に採用されうる一般的な手段を採用し得る。例えば、蓄電セル100の一対の第1側壁12bを拘束板で挟み込み、当該拘束板を架橋部材で接続することによって蓄電セル100に荷重を印加することができる。
【0072】
(エージング工程S108)
エージング工程S108では、活性化工程S107を経た蓄電セル100に対し、充電状態を維持したまま、所定の温度環境下で、所定の時間、蓄電セル100を保管する。これにより、より好適に負極活物質層24aの表面に被膜を形成させることができる。なお、ここに開示される技術において、エージング工程S108は必須工程ではない。いくつかの好適な実施形態において、エージング工程S108を省略することもできる。
【0073】
なお、エージング工程S108の条件は、要求される被膜形成の態様に応じて適宜調節することができ、特に限定されない。例えば、エージング工程S108におけるセル温度(エージング温度)は、30℃以上、好ましくは40℃以上、例えば50℃以上、さらには60℃以上とすることができる。エージング温度の上限は特に制限されないが、例えば、70℃以下程度を目安とすることができる。エージング工程S108における温度管理は、例えば、恒温槽などを用いることができる。エージング工程S108の実施時間(エージング時間)は、例えば、エージング温度に応じて適宜変更することができ、特に限定されない。例えば、エージング温度を45~65℃程度とする場合は、エージング時間を3~30時間程度にすることが好ましい。
【0074】
また、エージング工程S108では、蓄電セル100の厚み方向Xに荷重を印加しながらエージングを行うことが好ましい。エージング工程S108における蓄電セルに印加する荷重量は、特に限定されないが、0.5~0.7MPaであることがこのましい。また、活性化工程S107で印加する荷重を維持したままエージング工程S108に移行することもできる。
【0075】
スタック500は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。
【0076】
以下、ここに開示される技術に係る実施例を説明するが、かかる実施例はここに開示される技術を限定することを意図するものではない。
【0077】
<蓄電セルの準備>
まず、実施例に係るスタックを構築するための蓄電セルを3個準備した。なお、実施例に係る蓄電セルに収容された巻回電極体は、
図5に示すような1対の湾曲部を有し、帯状の正極と、帯状の負極とが、帯状のセパレータを介して積層され長手方向に巻回されたものを用いた。なお、実施例1のセパレータとして接着層と耐熱層を有し、接着層の形成面積の割合が30%であって、耐熱層に含まれる無機粒子の粒径が0.5μmであるセパレータを用いた。また、実施例に係る蓄電セルの負極活物質層形成領域の幅方向の長さは29cmとし、電極体アスペクト比(巻回電極体の高さTに対する負極活物質層の幅方向の長さLnの比(Ln/T))が3.0となるようにした。また、巻回電極体に係る正極の積層数は33層とした。
【0078】
次に、実施例2として、接着層の形成面積の割合が7%、接着層の無機粒子の粒径が0.3μmであるセパレータを用いた点以外は実施例1に係る蓄電セルと同じである、実施例2に係る蓄電セルを3個準備した。
【0079】
比較例1として、接着層の形成面積の割合が100%、接着層の無機粒子の粒径が1.0μmであるセパレータを用いた点以外は実施例1に係る蓄電セルと同じである、比較例1に係る蓄電セルを3個準備した。同様に、比較例2として、比較例1と同様のセパレータを用いた点、活性化工程において蓄電セルの厚み方向に0.4MPaの荷重を印加しながら充放電を行った点以外は実施例1に係る蓄電セルと同じである、比較例2に係る蓄電セルを3個準備した。また、比較例3として、略矩形状の正極と、略矩形状の負極とが、略矩形状のセパレータを介して、蓄電セルの厚み方向Xに積層されたいわゆる積層構造である電極体(即ち、巻回電極体ではない電極体)を用いた点、また、上記電極体のアスペクト比が1.6である点、上記した電極体の変更に併せて、ケースの形状の変更を行った点(ただし、板厚、材質の変更は行っていない。)、活性化工程において蓄電セルの厚み方向に0.18MPaの荷重を印加しながら充放電を行った点以外は実施例1に係る蓄電セルと同じである、比較例3に係る蓄電セルを3個準備した。
【0080】
<セル厚み変化量の評価>
実施例1~2、比較例1~3に係る蓄電セルに対し、上記した方法により、セル厚み変化量の評価を行った。なお、オートグラフは、株式会社島津製作所製の精密万能試験機(オートグラフAGX-V)を使用した。また、セル厚みは、レーザ変位計として株式会社キーエンス製のLK-G157を用いて測定した。まず、
図10に示すように、蓄電セルをオートグラフにセットした。そして、蓄電セルの厚み方向(白抜き矢印で図示)に0.1mm/minの速度で荷重をかけた。蓄電セルにかける荷重が0.1MPaまで達した後、荷重を0.1mm/minの速度で0.01MPaまで減少させた。これらの処理を1サイクルとし、該処理を5サイクル行った。このようにして1サイクル目と5サイクル目に係るF-s曲線(荷重変位曲線)をそれぞれ取得した。そして、得られたF-s曲線より、1サイクル目の面圧0.04MPaに対する蓄電セル厚みX1と、5サイクル目の面圧0.04MPaに対する蓄電セル厚みX5をそれぞれ取得し、X1およびX5を用いて、式(i)によりセル厚み変化量(%)を算出した。結果を表1に示す。
セル厚み変化量(%)=(X1-X5)/X1×100・・・式(i)
【0081】
【0082】
<0.3~3kNばね定数>
実施例1~2、比較例1~3に係る蓄電セルに対し、「0.3~3kNばね定数」を算出した。なお、本明細書において、「0.3~3kNばね定数」とは、セル厚み減少時のスタック拘束荷重の抜け度合いを示す指標である。具体的には、上記で得られたF-s曲線を基に、1サイクル目と5サイクル目間の同一荷重間におけるセル厚み変化をΔセル厚み(mm)として横軸に、印加した荷重(kN)を縦軸としてプロットしたグラフを作成した。そして、荷重範囲が0.3~3kNの時のばね定数を「0.3~3kNばね定数(kN/mm)」として算出した。なお、「0.3~3kNばね定数」は、以下の式(ii)によって算出した。結果を表1に示す。
0.3~3kNばね定数(kN/mm)=-((3-0.3)(kN)/(3kN時のΔセル厚み-0.3kN時のΔセル厚み))(mm)・・・式(ii)
また、実施例1、2および比較例2について、1サイクル目と5サイクル目間の同一荷重間におけるセル厚み変化をΔセル厚み(mm)として横軸に、印加した荷重(kN)を縦軸としてプロットしたグラフを
図12に示す。
図12のグラフのうち、荷重が0.3~3kN間である領域について太線で示す。
【0083】
<結果>
表1から分かるように、セル厚み変化量が0.3%以上(≧0.3)である実施例1および2は、比較例1~3と比較して、「0.3~3kNばね定数」が低かった。このことは、低温環境下や低SOC条件などによりセル厚みが減少した場合も、蓄電セルの厚みが好適に制御される(再び蓄電セル厚みが増加する)ことで、スタック拘束荷重の抜け度合いが小さいことを表す。従って、セル厚み変化量が0.3%以上(≧0.3)である蓄電セルを用いて製造したスタックでは、蓄電セルの厚みが減少した場合でも、蓄電セル厚みを好適に制御されるため、スタックの拘束荷重の低下を抑制する(拘束荷重の抜けが小さい)ことができる。
【0084】
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本開示は、他にも種々の形態にて実施することができる。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形例に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形例を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0085】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:複数の角型の蓄電セルを備えたスタックの製造方法であって、正極と負極とがセパレータを介して積層され巻回されてなる扁平形状の巻回電極体と、非水電解質と、上記巻回電極体と上記非水電解質とを収容するケースと、を備える上記蓄電セルを準備する準備工程と、複数の上記蓄電セルを該蓄電セルの厚み方向に沿って積層する積層工程と、を有し、上記準備工程において準備する上記蓄電セルに対し、該蓄電セルの厚み方向に荷重を0.1mm/minの速度で0.1MPaまで印加し、該印加後に上記荷重を0.1mm/minの速度で0.01MPaまで減少する処理を1サイクルとし、該処理を5サイクル行ったとき、1サイクル目の加圧側F-sカーブにおける面圧0.04MPaに対する蓄電セル厚みX1と、5サイクル目の加圧側F-sカーブにおける面圧0.04MPaに対する蓄電セル厚みX5との関係が、次式:(X1-X5)/X1×100≧0.3を満たす、スタックの製造方法。
項2:上記負極は、負極芯体と、上記負極芯体上に形成された負極活物質層とを備え、上記巻回電極体の長手方向に直交する上記負極活物質層の幅方向の長さLnは、20cm以上である、項1に記載のスタックの製造方法。
項3:上記巻回電極体の巻回軸方向に対し垂直で、且つ上記巻回電極体の厚み方向に対し垂直な方向の長さを、上記巻回電極体の高さTとしたとき、上記巻回電極体の高さTに対する、上記負極活物質層の幅方向の長さLnの比(Ln/T)が2.8~3.2である、項2に記載のスタックの製造方法。
項4:上記準備工程は、上記蓄電セルに対し、該蓄電セルの厚み方向に荷重を印加しながら充電を行う活性化工程を含み、上記活性化工程において、上記蓄電セルに対し印加する荷重が0.5~0.7MPaである、1~3のいずれか1項に記載のスタックの製造方法。
項5:上記正極の積層数が30層以上である、項1~4のいずれか1項に記載のスタックの製造方法。
項6:1サイクル目の加圧側F-sカーブにおける面圧0.04MPaに対する蓄電セル厚みX1と、5サイクル目の加圧側F-sカーブにおける面圧0.04MPaに対する蓄電セル厚みX5との関係が、次式:(X1-X5)/X1×100≦2.0を更に満たす、項1~5のいずれか1項に記載のスタックの製造方法。
【符号の説明】
【0086】
10 ケース
12 外装体
14 封口板
20 巻回電極体
22 正極
24 負極
26 セパレータ
26s 空隙
100 蓄電セル
300 拘束機構
500 スタック
600 オートグラフ
S10 準備工程
S20 積層工程
S101 組立工程
S102 乾燥工程
S103 注液工程
S104 ガス抜き充電工程
S105 減圧工程
S106 注液孔封止工程
S107 活性化工程
S108 エージング工程