(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142763
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】水栓
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E03C1/042 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055074
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 洵輝
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA05
2D060BB01
2D060BE07
(57)【要約】
【課題】構造が簡潔で外観見栄えの良い水栓本体に対して吐水管が首振り可能に取付けられた水栓を提供する。
【解決手段】本体部2に対して吐水管3が首振り可能に取付けられた水栓1である。本体部2に設けられた小径部13と、吐水管3に設けられた本体連結部20と、を有し、小径部13が本体連結部20に挿入されて相対回転可能とされている。小径部13の外径部13aには中心軸Aに垂直な面で切った断面が略C字状で中心軸A方向に所定寸法延びる有底の規制孔16が形成されている。本体連結部20には、規制孔16の中に配置された状態で本体連結部20に棒先ねじ70で連結され、中心軸A方向の両端面が規制孔16の軸方向の両端縁壁面に摺動可能に当接し、周方向の両端部のいずれかが規制孔16の周方向の両端縁部のいずれかに当接することで小径部13に対する本体連結部20の回転角度を規制するように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体に対して吐水管が首振り可能に取付けられた水栓であって、
前記水栓本体と前記吐水管とのうちの一方に設けられた略円筒状の第1接続部と、前記水栓本体と前記吐水管とのうちの他方に設けられた略円筒状の第2接続部と、を有し、
前記第1接続部が前記第2接続部に挿入されて中心軸を中心に相対回転可能とされており、
前記第1接続部の外径部には前記中心軸に垂直な面で切った断面が略C字状で前記中心軸の方向に所定寸法延びる有底の規制孔が形成されており、
前記第2接続部には前記規制孔の中に配置された規制部材が外側からビスで固定されており、
該規制部材は、前記中心軸の方向の両端面が前記規制孔における前記中心軸の方向の両端縁壁面に周方向に摺動可能に当接し、周方向の両端部のいずれかが前記規制孔における周方向の両端縁部のいずれかに当接することで前記第1接続部に対する前記第2接続部の前記中心軸を中心とする回転の角度を規制するように構成されている水栓。
【請求項2】
請求項1において、
前記規制部材には前記第2接続部の内径面方向に開口する円柱状で有底の係止孔が形成されており、
前記第2接続部には前記係止孔と軸を一致させて径方向に延びる雌ねじが切られたねじ孔が形成されており、
前記ビスは先端に円柱状部分を有する棒先ねじであり、
前記円柱状部分を前記係止孔に挿入した状態で前記ビスを前記ねじ孔にねじ込むことによって前記規制部材を前記第2接続部に対して連結する構造となっている水栓。
【請求項3】
請求項2において、
前記ビスの頭部と、前記ねじ孔の開口部との間には、前記ビスの頭部が外部から視認できないようにする円柱状の蓋部材が配設されている水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓に関する。詳しくは、水栓本体に対して吐水管が首振り可能に取付けられた水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水栓本体に対して吐水管が首振り可能に取付けられた水栓において、吐水管の首振り角度を規制する構造が提案されている。特許文献1に開示された水栓においては、吐水管と、吐水管が嵌装される水栓本体部と、水栓本体部の吐出口の内周面に接するように配置される環状の回動規制部材と、吐水管を水栓本体部に回転自在に接続するための固定ナットと、を有する。さらに、吐水管の吐水口と反対側端部に吐水管の側面部の一部が軸方向に延びて設けられた吐水管側規制部が配置され、回動規制部材の内周面から突出して形成された本体側規制部を有する。吐水管の回転運動に伴って吐水管側規制部が本体側規制部に当接することにより吐水管の回転運動が規制されるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された水栓においては、回動規制部材に別部品の本体側規制部が取付けられており、構造が複雑であるという問題があった。また、固定ナットが水栓本体の外径より大きい外径を有する大型のもので全体が外部に露出している。これによって、水栓の外観品質の悪化を招くおそれがあるという問題があった。
【0005】
このような問題に鑑み本発明の課題は、構造が簡潔で外観見栄えの良い水栓本体に対して吐水管が首振り可能に取付けられた水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、水栓本体に対して吐水管が首振り可能に取付けられた水栓であって、前記水栓本体と前記吐水管とのうちの一方に設けられた略円筒状の第1接続部と、前記水栓本体と前記吐水管とのうちの他方に設けられた略円筒状の第2接続部と、を有し、前記第1接続部が前記第2接続部に挿入されて中心軸を中心に相対回転可能とされており、前記第1接続部の外径部には前記中心軸に垂直な面で切った断面が略C字状で前記中心軸の方向に所定寸法延びる有底の規制孔が形成されており、前記第2接続部には前記規制孔の中に配置された規制部材が外側からビスで固定されており、該規制部材は、前記中心軸の方向の両端面が前記規制孔における前記中心軸の方向の両端縁壁面に周方向に摺動可能に当接し、周方向の両端部のいずれかが前記規制孔における周方向の両端縁部のいずれかに当接することで前記第1接続部に対する前記第2接続部の前記中心軸を中心とする回転の角度を規制するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
第1発明によれば、第1接続部に規制孔を設け、規制孔の中に配置された規制部材を第2接続部に固定することで第1接続部に対する第2接続部の周方向の回転角度規制と軸方向への抜け防止とを達成させることができる。第1接続部と第2接続部以外に規制部材を必要とするだけなので構造が簡潔で組立作業も容易であるとともに、外観に現れるのがビスの頭部だけなので見栄えが良い。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記規制部材には前記第2接続部の内径面方向に開口する円柱状で有底の係止孔が形成されており、前記第2接続部には前記係止孔と軸を一致させて径方向に延びる雌ねじが切られたねじ孔が形成されており、前記ビスは先端に円柱状部分を有する棒先ねじであり、前記円柱状部分を前記係止孔に挿入した状態で前記ビスを前記ねじ孔にねじ込むことによって前記規制部材を前記第2接続部に対して連結する構造となっていることを特徴とする。
【0009】
第2発明によれば、ビスの締付量を変更することによって規制部材の中心軸方向の面が前記規制孔の底面部に押し付けられる力が変化し、それに伴って水栓本体に対する吐水管の回転摺動抵抗を調整することができる。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第2発明において、前記ビスの頭部と、前記ねじ孔の開口部との間には、前記ビスの頭部が外部から視認できないようにする円柱状の蓋部材が配設されていることを特徴とする。
【0011】
第3発明によれば、蓋部材によってビスの頭部が外部から視認できないように隠されるので外観見栄えが良い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態である水栓を斜め上方から見た斜視図である。
【
図2】上記実施形態における水栓の分解斜視図である。
【
図3】
図1におけるIII-III矢視線断面図である。
【
図4】
図3におけるIV-IV矢視線断面図である。
【
図5】本体部と吐水管の連結部分の構造を示す透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る水栓1について、
図1~
図5を用いて説明する。水栓1は、キッチンのカウンターの上面部に配設される湯水混合水栓で、
図1は本体部2と吐水管3とを示している。各図において、水栓1の使用者を基準とした前後左右上下の各方向を矢印で示し、方向に関する記述はこの矢印で示す方向に基づいて行う。
【0014】
図1~
図3に示すように、水栓1は、本体部2と吐水管3を有する。本体部2は、カウンターの上面部(図示せず)に固定される供給管部4と、供給管部4の上部に配設される吐水管連結部10を備えている。供給管部4は、湯水を混合して調温する湯水混合部(図示せず)からの湯水を吐水管連結部10に供給する円筒状の部材である。上側から順に、上円筒部4a、鍔部4b、下円筒部4cを有する。上円筒部4aと下円筒部4cの外径は同一でいずれも外径部に雄ねじが切られている。鍔部4bの外径は上円筒部4aと下円筒部4cの外径より大きく設定されている。カウンターの上面に設けられた上下に貫通する丸孔(図示せず)の中に下円筒部4cが挿入されて丸孔の外周縁部に鍔部4bの下面が当接した状態で下円筒部4cの雄ねじに対しナット(図示せず)が下から締め付けられることによってカウンターの上面部に対し固定されている。供給管部4の内径部4dには、下側から湯水混合部からの配管が水密状態で連結されている。
【0015】
吐水管連結部10は、下側の外径の大きい円筒部である大径部11と、大径部11の上部に配置され外径が大径部11より小さい中径部12と、中径部12の上部に配置され外径が中径部12より小さい小径部13と、を有する。大径部11と中径部12と小径部13は、中心軸Aを共通軸として同軸で配置されている。大径部11における外径部11aと下側の下内径部11bと上側の上内径部11cとは、それぞれ中心軸Aを共通軸として同軸で上下に延びている。下内径部11bの下側には、雌ねじが切られており供給管部4における上円筒部4aの雄ねじに対して螺合させることにより供給管部4に対して吐水管連結部10が連結される。下内径部11bと上内径部11cとの間には上方に向かうにつれて徐々に縮径する下縮径部11dが形成されている。小径部13における外径部13aと内径部13bとは、それぞれ中心軸Aを共通軸として同軸で上下に延びている。中径部12における外径部12aと下側の上内径部11cと上側の上縮径部12bとは、それぞれ中心軸Aを共通軸として同軸で上下に延びている。上縮径部12bは、上内径部11cと内径部13bとの間を連結する上方に向かうにつれて徐々に縮径する部分である。大径部11における外径部11aの直径は、後述する吐水管3における本体連結部20の下端部の直径と同一に設定されている。これによって、大径部11における外径部11aと吐水管3の外側面3aとは滑らかに連続している。小径部13における外径部13aの直径は、吐水管3における本体連結部20の第1内径部22aの直径よりわずかに小さく設定されている。中径部12における外径部12aの直径は、吐水管3における本体連結部20の第4内径部22bの直径より若干小さく設定されている。下内径部11b、下縮径部11d、上内径部11c、上縮径部12b、内径部13bは、水密状態を保って連結され供給管部4の内径部4dを通って供給された水を吐水管3に供給する。ここで、本体部2が、特許請求の範囲の「水栓本体」に相当する。また、小径部13が、特許請求の範囲の「第1接続部」に相当する。
【0016】
図2~
図5に示すように、小径部13の外径部13aには、上側から下方に向かって順に、第1環状溝14、第2環状溝15、規制孔16が形成されている。第1環状溝14と第2環状溝15は、周方向の断面がほぼ同一の矩形状をしている。第1環状溝14には、オーリング40が嵌め込まれる。第2環状溝15には、樹脂製の第1リング部材30が嵌め込まれる。小径部13の外径部13aにおける上下方向略中央部には規制孔16が形成されている。規制孔16は、概略、中心軸Aに対して垂直な面で切った断面が略C字状で上下方向に(中心軸Aの延びる方向に)所定寸法延びる有底の孔として形成されている。規制孔16の周方向の断面は矩形状で、長軸方向である上下方向の寸法が第1環状溝14及び第2環状溝15の上下方向の寸法の2倍程度に設定され、短軸方向である径方向の寸法が第1環状溝14及び第2環状溝15の径方向の寸法の2.5倍程度に設定されている。換言すれば、規制孔16の径方向の深さは、小径部13の径方向の厚みの2/3程度とされている。なお、小径部13の径方向の厚みとは、外径部13aと内径部13bとの間の径方向の寸法である。規制孔16の上側の端縁面が上端縁面16cであり、下側の端縁面が下端縁面16dである。規制孔16の周方向両端縁部には、径方向を軸とする半円形の凹R形状部16aが形成されている。規制孔16の底面部16bの直径は、内径部13bの直径より1.3倍ほど大きいものとされ、したがって規制孔16と内径部13bは連通していない。規制孔16の上下方向の寸法は、小径部13の上下方向寸法の1/4程度に設定されている。規制孔16を上方から見たとき、凹R形状部16aの先端部間の角度は、220度程度とされている。規制孔16には、規制部材50が周方向に摺動可能に嵌め込まれて配置される。ここで、上端縁面16cと下端縁面16dが、特許請求の範囲の「両端縁壁面」に相当する。また、各凹R形状部16aが、特許請求の範囲の「両端縁部」に相当する。
【0017】
図3及び
図5に示すように、中径部12の外径部12aの下側には、第3環状溝17が形成されている。第3環状溝17は、周方向の断面が矩形状をしており、長軸方向である上下方向の寸法が第1環状溝14及び第2環状溝15の上下方向の寸法の1.5倍程度に設定され、短軸方向である径方向の寸法が第1環状溝14及び第2環状溝15の径方向の寸法の2/3程度に設定されている。第3環状溝17には、樹脂製の第2リング部材60が嵌め込まれる。
【0018】
図2、
図3及び
図5に示すように、第1リング部材30は、周方向の断面が矩形状をした略円筒状の樹脂製部材で、外径面部31と、内径面部32と、を有する。外径面部31の直径は、吐水管3における本体連結部20の第1内径部22aの直径よりわずかに小さく設定されている。内径面部32の直径は、第2環状溝15の底面部の直径とほぼ同じである。第1リング部材30には、上下方向に貫き周方向に分割する分割スリット33が形成されている。外径面部31には、径方向外側に向かってわずかに突出して上下方向に延びる突条34が周方向に等間隔で複数設けられている。
【0019】
図2、
図3及び
図5に示すように、第2リング部材60は、周方向の断面が略L字形をした略円筒状の樹脂製部材で、外径面部61と、内径面部62と、を有する。外径面部61は上側の直径が小さい上外径面部61aと、上外径面部61aより直径の大きい下側の下外径面部61bと、を有する。上外径面部61aの直径は、吐水管3における本体連結部20の第4内径部22bの直径より若干小さく設定されている。下外径面部61bの直径は、吐水管3における本体連結部20の拡径部22eの直径より若干小さく設定されている。内径面部62の直径は、第3環状溝17の底面部の直径とほぼ同じである。第2リング部材60にも、上下方向に貫き周方向に分割する分割スリット63が形成されている。上外径面部61aには、径方向外側に向かってわずかに突出して上下方向に延びる突条64が周方向に等間隔で複数設けられている。
【0020】
図2~
図5に示すように、規制部材50は、規制孔16の中に納まって周方向に移動可能に配置されている。具体的には、規制部材50は、規制孔16の中に納まった状態で上方から見たとき、周方向の寸法が規制孔16の円弧の半分程度である中心角が110度程度であり、径方向の寸法が規制孔16の径方向の寸法よりわずかに小さい扇形をしている。規制部材50の周方向の断面は矩形状で、長軸方向である上下方向の寸法が規制孔16の周方向の断面における上下方向の寸法よりわずかに小さく、短軸方向である径方向の寸法が規制孔16の周方向の断面における径方向の寸法よりわずかに小さく設定されている。規制部材50は、径方向外側の外側面部51と、径方向内側の内側面部52と、上面55と、下面56と、を有している。そして、規制部材50の周方向両端部には、規制孔16の凹R形状部16aに隙なく当接できる凸R形状部53が形成されている。また、外側面部51における周方向の中央部かつ上下方向の中央部には、径方向において中心軸Aに向かって延びる円柱状で有底の係止孔54が形成されている。規制部材50は、規制孔16の中に配置されたとき、内側面部52が規制孔16の底面部16bに摺接し、外側面部51が小径部13における外径部13aよりわずかに中心軸Aの方向に控えた状態で周方向に移動可能とされる。ここで、上面55と下面56が、特許請求の範囲の「両端面」に相当する。また、各凸R形状部53が、特許請求の範囲の「両端部」に相当する。
【0021】
図2~
図4に示すように、吐水管3は、グースネック状に湾曲した管状体で一端に吐水口3bが設けられ、他端に上下方向に中心軸Aが延びる本体連結部20が設けられている。本体連結部20は、下端部が本体部2の大径部11における外径部11aと同径の円形で上方に向かうにつれて前面側が中心軸Aの方向に傾くように変化していく変則的な形状をした外表面部21と、中心軸Aを本体部2と共通にする内表面部22と、を有している。内表面部22の上方は、吐水口3bに連結される内側面3cで囲まれる空間につながっている。内表面部22は、上方から下方に向かって、それぞれ中心軸Aを共通軸として同軸で上下に延びている第1内径部22a、第2内径部22c、第3内径部22d、第4内径部22b、拡径部22eを有している。第1内径部22aは、上下方向の寸法が、吐水管連結部10における小径部13の上下方向寸法の1/3程度であり、小径部13に対して内表面部22を嵌め合わせたとき、第1環状溝14と第2環状溝15を覆う寸法とされている。第1内径部22aは、直径が小径部13の外径よりわずかに大きく設定されている。第2内径部22cは、第1内径部22aの下端部から下方に向かって延びる略円柱表面状で、上下方向の寸法が小径部13の上下方向寸法の1/2程度であり、直径が小径部13の外径の1.5倍程度である。小径部13に対して内表面部22を嵌め合わせたとき、小径部13の規制孔16に対応する部分は中心軸A方向に膨らむ膨出部22fとされ、その周方向中央かつ上下方向略中央には、外表面部21から内表面部22まで径方向に貫通するねじ孔22gが形成されている。ねじ孔22gは、径方向外側で大径である大内径部22g1と、径方向内側で大内径部22g1より小径の小内径部22g2と、を有する。小内径部22g2には雌ねじが切られている。大内径部22g1は、外表面部21に開口する開口部22g3を有し棒先ねじ70の頭部分71が侵入可能とされている。小内径部22g2は、棒先ねじ70のねじ部分72が螺合可能とされている。棒先ねじ70を小内径部22g2に螺合させたとき、棒先ねじ70の先端側の棒状部分73は、規制孔16の中に配置された規制部材50の係止孔54に侵入可能とされている。第3内径部22dは、第2内径部22cの下端部と第4内径部22bの上端部とを連結する部分で、下方に向かうにつれて拡径しながら小径部13の上下方向寸法の1/6程度延びる部分である。第4内径部22bは、直径が中径部12の外径より若干大きく設定されている。そして、中径部12に対して内表面部22を嵌め合わせたとき、第3環状溝17に取付けられた第2リング部材60の上外径面部61aに周方向に摺動可能に嵌合するように設定されている。拡径部22eは、第4内径部22bの下端部から拡径された部分で、中径部12に対して内表面部22を嵌め合わせたとき、第3環状溝17に取付けられた第2リング部材60の下外径面部61bに周方向に摺動可能に嵌合するように設定されている。ここで、本体連結部20が、特許請求の範囲の「第2接続部」に相当する。また、内表面部22が、特許請求の範囲の「内径面」に相当する。また、棒先ねじ70が、特許請求の範囲の「ビス」に相当する。さらに、頭部分71と棒状部分73が、それぞれ特許請求の範囲の「頭部」と「円柱状部分」に相当する。
【0022】
本体部2に対する吐水管3の組付け方について説明する。まず、
図2及び
図3に示すように、本体部2の小径部13にオーリング40と第1リング部材30と規制部材50を取付けるとともに、中径部12に第2リング部材60を取付ける。具体的には、小径部13の第1環状溝14にオーリング40を上方から拡げながら押し下げて嵌め込む。次に、小径部13の第2環状溝15に、第1リング部材30を分割スリット33から周方向に拡げながら嵌め込む。続いて小径部13の規制孔16の周方向略中央部に規制部材50を嵌め込んで配置する。さらに、中径部12の第3環状溝17に、第2リング部材60を分割スリット63から周方向に拡げながら嵌め込む。このとき、規制部材50が規制孔16に挿入されて周方向に摺動可能となるようにする。オーリング40と第1リング部材30と規制部材50と第2リング部材60が取付けられた状態の本体部2の小径部13と中径部12に対して、吐水管3の本体連結部20を被せるように嵌め込み、拡径部22eが第2リング部材60の下外径面部61bに当接するようにする。そして、本体部2に対して中心軸Aを中心に吐水管3を回転させて、規制部材50の係止孔54と吐水管3のねじ孔22gの軸を一致させて、棒先ねじ70をねじ込む。このとき、係止孔54の底面に棒先ねじ70の棒状部分73の頂部が当接してからねじ込み量を調整することによって内側面部52が小径部13の底面部16bに当接して押圧する力を変えられるようになっている。これによって、棒先ねじ70のねじ込み量を調整することによって本体部2に対する吐水管3の回転摺動抵抗を調整できる。
図1、
図3及び
図4に示すように、吐水管3の吐水口3bを前方向(使用者の方向)に向けたとき、規制部材50の位置は、後方向で規制孔16の周方向の中間位置にある。ここから吐水管3は、規制部材50の各凸R形状部53のいずれかが、規制孔16の各凹R形状部16aのいずれかに当接するまで左右に約55度ずつ回転が可能となる。このとき、第1リング部材30と第2リング部材60は、本体部2の中心軸に対する吐水管3の中心軸を一致させるとともに回転摺動を円滑にする働きをし、オーリング40は、本体部2と吐水管3の水密を保つ働きをする。この状態で、本体部2の内径部4d、下内径部11b、下縮径部11d、上内径部11c、上縮径部12b、内径部13b、内側面3cで囲まれる空間は、水密状態で連結される。最後に、ねじ孔22gの大内径部22g1に蓋部材80を外側から挿入して棒先ねじ70の頭部分71が外部から視認できないようにする。
【0023】
以上のように構成される本実施形態は、以下のような作用効果を奏する。吐水管3に対し固定された規制部材50が、本体部2の規制孔16内に挿入された状態で中心軸Aの方向に移動不能で周方向に移動可能に取付けられている。これによって、吐水管3は、規制部材50の各凸R形状部53のいずれかが、規制孔16の各凹R形状部16aのいずれかに当接するまで本体部2に対して左右に首振りが可能となる。このように、本体部2と吐水管3との間に規制部材50を介在させて配置するだけでよいので、構造が簡潔であり組立作業も容易であるとともに、外観に現れるのは、棒先ねじ70の頭部分71だけなので見栄えが良い。
【0024】
また、棒先ねじ70の棒状部分73を規制部材50の係止孔54に挿入した状態でねじ部分72を小内径部22g2に螺合させていくと、棒先ねじ70の締付量を変更することによって規制部材50の内側面部52が規制孔16の底面部16bに押し付けられる力が変化し、それに伴って本体部2に対する吐水管3の回転摺動抵抗を調整することができる。
【0025】
さらに、棒先ねじ70は、蓋部材80によって頭部分71が外部から視認できないように隠されるので外観見栄えが良い。
【0026】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
【0027】
1.上記実施形態においては、本体部2の小径部13と中径部12に対して、吐水管3の本体連結部20が径方向外側からかぶさるように嵌合されるように構成した。しかし、これに限らず、吐水管3の本体連結部20を小径として本体部2の吐水管連結部10が径方向外側からかぶさるように嵌合されるように構成してもよい。
【0028】
2.上記実施形態においては、規制部材50を吐水管3の本体連結部20に対して周方向及び中心軸方向に移動不能とするビスとして頭部分71を有する棒先ねじ70を使用した。しかし、これに限らず、ビスとして頭部分71を有しない棒先止めねじを用いることもできる。それによれば、蓋部材80の直径を小さくしてさらに外観の見栄えをよくすることができる。
【0029】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0030】
1 水栓、2 本体部(水栓本体)、3 吐水管、10 吐水管連結部、13 小径部(第1接続部)、13a 外径部、16 規制孔、16a 凹R形状部(両端縁部)、16b 底面部、16c 上端縁面(両端縁壁面)、16d 下端縁面(両端縁壁面)、20 本体連結部(第2接続部)、22 内表面部(内径面)、22g ねじ孔、22g3 開口部、50 規制部材、52 内側面部、53 凸R形状部(両端部)、54 係止孔、55 上面(両端面)、56 下面(両端面)、70 棒先ねじ(ビス)、71 頭部分(頭部)、72 ねじ部分、73 棒状部分(円柱状部分)、80 蓋部材、A 中心軸