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  • 特開-車両の制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142766
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20241003BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01M17/007 K
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055077
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100182028
【弁理士】
【氏名又は名称】多原 伸宜
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】川浪 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】池上 裕介
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033BA06
5K033DA01
5K033EA06
(57)【要約】
【課題】CANのチャネル数の増加による影響を最小限にすることにより、試験機側のコストの増加を抑制することができる車両の制御装置を提供する。
【解決手段】車両の制御装置1は、トランシーバ2が第1の信号を受信した際に、トランシーバ3、トランシーバ4及びトランシーバ5に試験信号を送信すると共に試験信号に対する応答の状態に基づいてトランシーバ3、トランシーバ4及びトランシーバ5の試験を実行して、トランシーバ3、トランシーバ4及びトランシーバ5の試験の結果を示す第2の信号をトランシーバ2より試験機100に送信させる制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の試験機から試験の実行を指示する第1の信号を受信する第1のトランシーバと、
第2のトランシーバと、
前記第1のトランシーバが前記第1の信号を受信した際に、前記第2のトランシーバに試験信号を送信すると共に前記試験信号に対する応答の状態に基づいて前記第2のトランシーバの前記試験を実行して、前記第2のトランシーバの前記試験の結果を示す第2の信号を前記第1のトランシーバより前記試験機に送信させる制御を行う制御部と、
を有することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1のトランシーバより前記第2の信号を前記試験機に送信させることにより前記第1のトランシーバの前記試験を実行する、
ことを特徴とする請求項1記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記試験機は、
前記車両の制御装置を製造する工場内に設けられる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記試験機は、
前記第1のトランシーバと接続される通信部を有する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるECU(Electric Control Unit)等の車両の制御装置を生産する工場では、ECUを出荷するための試験として試験機からの指令によりECUの入出力を試験している。また、従来、ECUは、車体と繋がるメーター等の車載機器との間でCAN(Controller Area Network)通信によって情報の受け渡しを行うため、CAN通信を行うためのインタフェースを備えている。
【0003】
従来、このようなECUの入出力の試験では、試験機とECUとで通信を行うことにより、CAN通信における送受信の妥当性を確認している。従来のCAN通信における送受信の妥当性を確認する試験では、試験機からECUへ各種入力に応じた信号を出力し、ECUは試験機からの信号を受け取ってCAN経由でECUの情報を試験機へ出力する。この際に、ECUは、試験機からの指令に応じた出力を行うと共に、CANのチャネル毎に試験機との間でCAN通信を行う。
【0004】
例えば、特許文献1は、各種ECUと外部通信を行うためのインタフェースであるCANコントローラが、信号レベルの変換や伝送制御を行うCAN通信回路を介して多重通信バスとしてのCANバスへ通信データを出力し、又はCANバスからの通信データを入力する車両制御装置を開示している。特許文献1の車両制御装置では、外部故障診断装置が所定のコネクタを介してCANバスに接続され、かつイグニッションスイッチがオンされたときダイアグ判定出力プログラムを実行する。また、特許文献1の車両制御装置は、ダイアグ判定出力プログラムを実行することにより、ダイアグ出力の要求ありと判定した際にダイアグ判定を実施し、その判定データを外部故障診断装置へ出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-78702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者の検討によれば、従来の車両の制御装置においては、ECUの入出力の試験においてCANのチャネル毎に試験機との間でCAN通信を行うため、CANのチャネル数が増加するたびに試験機側の機能の追加及び改修が必要となりコストが増加してしまうという課題を有する。特に、近年、メーター、IMU(inertial measurement unit)、ABS(Antilock Brake System)及びSUS等の車体と繋がる車載機器が増加していることにより、今後CANのチャネル数の増加が見込まれるため、上記の課題が顕著となる。
【0007】
本発明は、以上の検討を経てなされたものであり、CANのチャネル数の増加による影響を最小限にすることにより、試験機側のコストの増加を抑制することができる車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するべく、本発明は、外部の試験機から試験の実行を指示する第1の信号を受信する第1のトランシーバと、第2のトランシーバと、前記第1のトランシーバが前記第1の信号を受信した際に、前記第2のトランシーバに試験信号を送信すると共に前記試験信号に対する応答の状態に基づいて前記第2のトランシーバの前記試験を実行して、前記第2のトランシーバの前記試験の結果を示す第2の信号を前記第1のトランシーバより前記試験機に送信させる制御を行う制御部と、を有することを第1の局面とする。
【0009】
また、本発明は、第1の局面に加えて、前記制御部は、前記第1のトランシーバより前記第2の信号を前記試験機に送信させることにより前記第1のトランシーバの前記試験を実行することを第2の局面とする。
【0010】
また、本発明は、第1又は第2の局面に加えて、前記試験機は、前記車両の制御装置を製造する工場内に設けられることを第3の局面とする。
【0011】
また、本発明は、第1又は第2の局面に加えて、前記試験機は、前記第1のトランシーバと接続される通信部を有することを第4の局面とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の本発明の第1の局面にかかる車両の制御装置によれば、外部の試験機から試験の実行を指示する第1の信号を受信する第1のトランシーバと、第2のトランシーバと、第1のトランシーバが第1の信号を受信した際に、第2のトランシーバに試験信号を送信すると共に試験信号に対する応答の状態に基づいて第2のトランシーバの試験を実行して、第2のトランシーバの試験の結果を示す第2の信号を第1のトランシーバより試験機に送信させる制御を行う制御部と、を有するものであるため、CANのチャネル数の増加による影響を最小限にすることにより、試験機側のコストの増加を抑制することができる。
【0013】
また、本発明の第2の局面にかかる車両の制御装置によれば、制御部は、第1のトランシーバより第2の信号を試験機に送信させることにより第1のトランシーバの試験を実行するものであるため、試験に伴う処理負荷を低減することができると共に試験に要する時間を短縮することができる。
【0014】
また、本発明の第3の局面にかかる車両の制御装置によれば、試験機は、車両の制御装置を製造する工場内に設けられるものであるため、出荷前の工場内の段階で、適切に試験を行うことができる。
【0015】
また、本発明の第4の局面にかかる車両の制御装置によれば、試験機は、第1のトランシーバと接続される通信部を有するものであるため、トランシーバの数が増えた場合であっても、試験機の通信部の数を1つのみとし、試験機の通信部の数を増やす作業及びコストを不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態における車両の制御装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態における車両の制御装置と試験機との動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態における車両の制御装置について、詳細に説明する。
【0018】
<車両の制御装置の構成>
本発明の実施形態に係る車両の制御装置1の構成について、図1を参照しながら、詳細に説明する。
【0019】
車両の制御装置1は、図示しない車両に搭載され、マイクロコンピュータ等の演算処理装置であり、ここではECU(Electronic Control Unit)を例示する。車両の制御装置1は、CAN通信を行うために外部の試験機100に接続している。試験機100は、車両の制御装置1を製造する工場内に設けられていると共に、車両の制御装置1との通信を行う1つの通信部101を備えている。
【0020】
具体的には、車両の制御装置1は、トランシーバ2と、トランシーバ3と、トランシーバ4と、トランシーバ5と、CPU(Central Processing Unit)6と、を有している。
【0021】
第1のトランシーバとしてのトランシーバ2は、試験機100の通信部101に接続されている。トランシーバ2は、CPU6の後述の通信制御部62の制御により、試験機100の通信部101より試験の実行を指示する第1の信号を受信すると共に、通信部101に対して試験の結果を示す第2の信号を送信する。
【0022】
第2のトランシーバとしてのトランシーバ3、トランシーバ4及びトランシーバ5の各々は、CPU6より入力される試験信号に対して応答する。
【0023】
CPU6は、図示しないメモリ内に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、セルフテスト制御部61及び通信制御部62として機能する。
【0024】
セルフテスト制御部61は、マイクロコンピュータに内蔵されているCANのセルフテストモードを利用して車両の制御装置1内においてトランシーバ3、トランシーバ4及びトランシーバ5の試験を実行する。具体的には、セルフテスト制御部61は、トランシーバ2が試験機100の通信部101より試験の実行を指示する第1の信号を受信した際に、トランシーバ3、トランシーバ4及びトランシーバ5の各々に対して試験信号を出力すると共に、トランシーバ3、トランシーバ4及びトランシーバ5の応答の状態に基づいてトランシーバ3、トランシーバ4及びトランシーバ5の試験を実行する。
【0025】
通信制御部62は、トランシーバ2の試験機100との通信における動作を制御する。通信制御部62は、トランシーバ2に対してセルフテスト制御部61により実行された試験の結果を示す第2の信号を送信するように制御する。通信制御部62は、トランシーバ2に第2の信号を送信させることによりトランシーバ2の試験を実行する。
【0026】
<車両の制御装置及び試験機の動作>
本発明の実施形態に係る車両の制御装置1及び試験機100の動作について、図2を参照しながら、詳細に説明する。
【0027】
まず、試験機100の通信部101は、所定の入力に応じて車両の制御装置1に対して試験の実行を指示する第1の信号を送信する送信処理を実行する(S1)。
【0028】
次に、通信部101は、車両の制御装置1のトランシーバ2に第1の信号を送信すると共に、トランシーバ2は、CPU6の通信制御部62の制御により第1の信号を受信する(S2)。
【0029】
次に、CPU6のセルフテスト制御部61は、トランシーバ2が第1の信号を受信することによりトランシーバ3の試験を実行する(S3)。セルフテスト制御部61は、試験の実行において、トランシーバ3に試験信号を出力すると共に応答の状態に基づいてトランシーバ3の試験を実行する。
【0030】
具体的には、セルフテスト制御部61は、トランシーバ3の試験の実行を開始することにより、まず通信が開始された状態を示すフラグであるACKビットをトランシーバ3に出力し、続いて試験信号としてテスト用信号をトランシーバ3に出力する。トランシーバ3は、セルフテスト制御部61よりACKビットが入力した際に、セルフテスト制御部61にACKビットを出力し、続いてセルフテスト制御部61よりテスト用信号が入力した際に、セルフテスト制御部61にテスト用信号を出力する。そして、セルフテスト制御部61は、トランシーバ3よりACKビットが入力した際にトランシーバ3よりテスト用信号を受信することを許可し、トランシーバ3よりテスト用信号が入力した際にトランシーバ3の応答の状態として応答ありであるため正常に送受信できるとの試験の結果を得て、トランシーバ3の試験の実行を終了する。
【0031】
セルフテスト制御部61は、得られたトランシーバ3の試験の結果を図示しないメモリに記憶させる。
【0032】
次に、セルフテスト制御部61は、トランシーバ4の試験を実行する(S4)。セルフテスト制御部61は、試験の実行において、トランシーバ4に試験信号を出力すると共に応答の状態に基づいてトランシーバ4の試験を実行する。
【0033】
具体的には、セルフテスト制御部61は、トランシーバ4の試験の実行を開始することにより、まずACKビットをトランシーバ4に出力し、続いて試験信号としてテスト用信号をトランシーバ4に出力する。トランシーバ4は、セルフテスト制御部61よりACKビットが入力した際に、セルフテスト制御部61にACKビットを出力し、続いてセルフテスト制御部61よりテスト用信号が入力した際に、セルフテスト制御部61にテスト用信号を出力する。そして、セルフテスト制御部61は、トランシーバ4よりACKビットが入力した際にトランシーバ4よりテスト用信号を受信することを許可し、トランシーバ4よりテスト用信号が入力した際にトランシーバ4の応答の状態として応答ありであるため正常に送受信できるとの試験の結果を得て、トランシーバ4の試験の実行を終了する。
【0034】
セルフテスト制御部61は、トランシーバ4の試験の結果を図示しないメモリに記憶させる。
【0035】
次に、セルフテスト制御部61は、トランシーバ5の試験を実行する(S5)。セルフテスト制御部61は、試験の実行において、トランシーバ5に試験信号を出力すると共に応答の状態に基づいてトランシーバ5の試験を実行する。
【0036】
具体的には、セルフテスト制御部61は、トランシーバ5の試験の実行を開始することにより、まずACKビットをトランシーバ5に出力し、続いて試験信号としてテスト用信号をトランシーバ5に出力する。トランシーバ5は、セルフテスト制御部61よりACKビットが入力した際に、セルフテスト制御部61にACKビットを出力し、続いてセルフテスト制御部61よりテスト用信号が入力した際に、セルフテスト制御部61にテスト用信号を出力する。そして、セルフテスト制御部61は、トランシーバ5よりACKビットが入力した際にトランシーバ5よりテスト用信号を受信することを許可し、トランシーバ5よりテスト用信号が入力した際にトランシーバ5の応答の状態として応答ありであるため正常に送受信できるとの試験の結果を得て、トランシーバ5の試験の実行を終了する。
【0037】
セルフテスト制御部61は、トランシーバ5の試験の結果を図示しないメモリに記憶させる。
【0038】
次に、通信制御部62は、セルフテスト制御部61がメモリに記憶させたトランシーバ3、トランシーバ4及びトランシーバ5の試験の結果を示す第2の信号を、トランシーバ2より試験機100の通信部101に送信させる制御を行う(S6)。
【0039】
次に、トランシーバ2は、第2の信号を試験機100の通信部101に送信し、通信部101は、第2の信号をトランシーバ2より受信する(S7)。また、通信制御部62は、トランシーバ2に第2の信号を送信させることによりトランシーバ2の試験を実行する。そして、試験機100は、トランシーバ2より送信された第2の信号が通信部101により受信された場合に、トランシーバ2は正常に送受信できるという試験の結果を取得する。
【0040】
次に、試験機100は、通信部101が受信した第2の信号に基づいて、作業者に試験の結果を報知する(S8)。
【0041】
以上の説明から明らかなように、本実施形態における車両の制御装置1では、外部の試験機100から試験の実行を指示する第1の信号を受信するトランシーバ2と、トランシーバ3、トランシーバ4及びトランシーバ5と、トランシーバ2が第1の信号を受信した際に、トランシーバ3、トランシーバ4及びトランシーバ5に試験信号を送信すると共に試験信号に対する応答の状態に基づいてトランシーバ3、トランシーバ4及びトランシーバ5の試験を実行して、トランシーバ3、トランシーバ4及びトランシーバ5の試験の結果を示す第2の信号をトランシーバ2より試験機100に送信させる制御を行うCPU6と、を有するものであるため、CANのチャネル数の増加による影響を最小限にすることにより、試験機100側のコストの増加を抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態における車両の制御装置1では、CPU6は、トランシーバ2より第2の信号を試験機100に送信させることによりトランシーバ2の試験を実行するものであるため、試験に伴う処理負荷を低減することができると共に試験に要する時間を短縮することができる。
【0043】
また、本実施形態における車両の制御装置1では、試験機100は、車両の制御装置1を製造する工場内に設けられるものであるため、出荷前の工場内の段階で、適切に試験を行うことができる。
【0044】
また、本実施形態における車両の制御装置1では、試験機100は、トランシーバ2と接続される通信部101を有するものであるため、トランシーバの数が増えた場合であっても、試験機100の通信部101の数を1つのみとし、試験機100の通信部101の数を増やす作業及びコストを不要にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明は、CANのチャネル数の増加による影響を最小限にすることにより、試験機側のコストの増加を抑制することができる車両の制御装置を提供することができるものであり、その汎用普遍的な性格から自動車や二輪自動車等の車両の制御装置に広範に適用され得るものと期待される。
【符号の説明】
【0046】
1…車両の制御装置
2…トランシーバ
3…トランシーバ
4…トランシーバ
5…トランシーバ
6…CPU
61…セルフテスト制御部
62…通信制御部
100…試験機
101…通信部
図1
図2