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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142773
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】舗装端部清掃機
(51)【国際特許分類】
   E01H 1/08 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E01H1/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055088
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000194516
【氏名又は名称】世紀東急工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 実
(72)【発明者】
【氏名】荻野 暁
(57)【要約】
【課題】舗装打ち換え時における打ち換え対象領域と非打ち換え対象領域との間に現れる舗装端部を確実に清掃することで、打ち継ぎ目における新旧の舗装の接着性を向上させ、当該打ち継ぎ目から内部への雨水等の浸入を防ぎ、舗装の耐久性の向上を図ることができる舗装端部清掃機を提供する。
【解決手段】進行方向前方に配置され、進行方向後方に向けて空気を噴出する送風口11と、進行方向後方に配置され、土砂を吸引する吸引口12と、送風口11と吸引口12との間であって、舗装の打ち換え工事に当たって、打ち換え対象領域G1と非打ち換え対象領域G2との境界に現れる舗装端部Eに対して、回転軸が平行となるように配置され、回転しない状態で毛先が舗装端部に対向する位置に配置される、土砂を掻き出す回転ブラシ13と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行方向前方に配置され、進行方向後方に向けて空気を噴出する送風口と、
前記進行方向後方に配置され、土砂を吸引する吸引口と、
前記送風口と前記吸引口との間であって、舗装の打ち換え工事に当たって、打ち換え対象領域と非打ち換え対象領域との境界に現れる舗装端部に対して、回転軸が平行となるように配置され、回転しない状態で毛先が前記舗装端部に対向する位置に配置される、前記土砂を掻き出す回転ブラシと、
を備えることを特徴とする舗装端部清掃機。
【請求項2】
前記送風口と、前記吸引口と、前記回転ブラシとを収容する筐体を有し、
前記筐体と前記打ち換え対象領域の地面との距離を調整する筐体移動部を備えることを特徴とする請求項1に記載の舗装端部清掃機。
【請求項3】
前記送風口は、前記進行方向後方に向けて、前記回転ブラシの回転方向と順方向となる方向に前記空気を噴出することが可能な位置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の舗装端部清掃機。
【請求項4】
前記吸引口は、前記打ち換え対象領域と対向する前記筐体の下面からの距離が、前記送風口の前記下面からの距離よりも長いことを特徴とする請求項2に記載の舗装端部清掃機。
【請求項5】
前記進行方向前方であって、前記送風口よりも前方に前記舗装端部を乾燥させる乾燥機が配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の舗装端部清掃機。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、舗装端部清掃機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、アスファルト混合物を敷設した路面の場合、使用により凹んだり欠けたり等、様々な疵が付く場合がある。そのような場合には、路面を補修するために、傷んだ部分のアスファルト混合物をはがして、改めて敷設し直す工事(打ち換えの工事)が行われる。
【0003】
アスファルト混合物を打ち換える場合に、打ち換えて新たに敷設されることになるアスファルト混合物とこれまでのアスファルト混合物との間を清掃することが行われる。これは清掃を行わず、或いは、清掃が十分ではない場合、打ち換えた新たに敷設されたアスファルト混合物とこれまでのアスファルト混合物とが十分に接着されず、両者の間(継ぎ目部)が開く、ひび割れが生ずる、或いは、雨水等が浸み込む等、舗装の早期劣化を招くことになりかねないからである。
【0004】
清掃は例えば、人が箒で泥やゴミを落とす、といった方法の他、例えば、路面清掃車が用いられることがある。路面清掃車はその名の通り、路面を清掃するための車であるが、多くの場合、路面の端部を清掃するためのブラシが設けられている。例えば、以下に示す特許文献1の路面清掃車にも車体の側方にブラシが設けられている。
【0005】
特許文献1に開示されている路面清掃車におけるブラシは、清掃の対象である路面に対して回転軸が概ね垂直であって、ブラシが回転していない時はブラシも路面に向けて垂れ下がるように配置されている。このブラシは、車体に近いブラシの端部が固定されている一方、路面に接するブラシの端部は何にも固定されていない状態であることから、ブラシが回転すると、路面に接するブラシの端部が遠心力により広がり、広い範囲を清掃することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-089260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した路面の補修のためにアスファルト混合物をはがした後清掃を行う場合、アスファルト混合物をはがすと、打ち換えのために新たにアスファルト混合物を敷設する路面とこれまでのアスファルト混合物の路面との間には、両方の路面をつなぐ、概ね垂直な面が現れる。この面が清掃の対象面となる。そして打ち替えによる新たなアスファルト混合物を敷設するために清掃を行うに当たって路面清掃車を用いる場合、上述した車体側面のブラシを回転させて上述した対象面の清掃を行うことになる。
【0008】
しかしながら、ブラシが回転することで路面に接するブラシの端部が広がって対象面に接触するが、ブラシの回転数によって当該端部の広がり具合も変化するため、端部が対象面に接触する位置も変化する。従ってこのような路面清掃車を用いた清掃の場合、清掃されない部分が生じたり、或いは、清掃が行き届かなかったりすることが考えられ、上述したようなその後の舗装の劣化を招来しかねない。
【0009】
そこで本発明においては、舗装打ち換え時における打ち換え対象領域と非打ち換え対象領域との間に現れる舗装端部を確実に清掃することで、打ち継ぎ目における新旧の舗装の接着性を向上させ、当該打ち継ぎ目から内部への雨水等の浸入を防ぎ、舗装の耐久性の向上を図ることができる舗装端部清掃機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の形態における舗装端部清掃機は、進行方向前方に配置され、進行方向後方に向けて空気を噴出する送風口と、進行方向後方に配置され、土砂を吸引する吸引口と、送風口と吸引口との間であって、舗装の打ち換え工事に当たって、打ち換え対象領域と非打ち換え対象領域との境界に現れる舗装端部に対して、回転軸が平行となるように配置され、回転しない状態で毛先が前記舗装端部に対向する位置に配置される、土砂を掻き出す回転ブラシとを備える。
【0011】
また、本発明の実施の形態における舗装端部清掃機は、送風口と、吸引口と、回転ブラシとを収容する筐体を有し、筐体と打ち換え対象領域の地面との距離を調整する筐体移動部を備える。
【0012】
さらに、本発明の実施の形態における舗装端部清掃機において、送風口は、進行方向後方に向けて、回転ブラシの回転方向と順方向となる方向に空気を噴出することが可能な位置に設けられている。
【0013】
また、本発明の実施の形態における舗装端部清掃機において、吸引口は、打ち換え対象領域と対向する筐体の下面からの距離が、送風口の前記下面からの距離よりも長い。そしてさらに、本発明の実施の形態における舗装端部清掃機は、進行方向前方であって、送風口よりも前方に舗装端部を乾燥させる乾燥機が配置されている。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明の実施の形態における舗装端部清掃機であれば、舗装打ち換え時における打ち換え対象領域と非打ち換え対象領域との間に現れる舗装端部を確実に清掃することで、打ち継ぎ目における新旧の舗装の接着性を向上させ、当該打ち継ぎ目から内部への雨水等の浸入を防ぎ、舗装の耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る舗装端部清掃機の全体構成を示す側面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る舗装端部清掃機の全体構成を示す平面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る舗装端部清掃機の全体構成を示す正面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る舗装端部清掃機における筐体部分を拡大して示す側面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る舗装端部清掃機における筐体部分を拡大して示す背面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る舗装端部清掃機における筐体部分を拡大して示す平面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る舗装端部清掃機を使用した場合の効果を、舗装端部清掃機を使用しない場合と比較して示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る舗装端部清掃機について、図1ないし図3を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る舗装端部清掃機1の全体構成を示す側面図である。また、図2は、本発明の実施の形態に係る舗装端部清掃機1の全体構成を示す平面図である。さらに、図3は、本発明の実施の形態に係る舗装端部清掃機1の全体構成を示す正面図である。
【0017】
舗装端部清掃機1は、古くなった舗装を打ち換えて新しい舗装とする工事において、古い舗装を打ち換えた際に現れる舗装断面(以下、この部分を「舗装端部E」と表す)を清掃する機械である。
【0018】
より具体的には、図3に示す舗装端部清掃機1は、打ち換えの対象となる古い舗装がされていた領域(以下、当該領域を「打ち換え対象領域G1」と表す)に置かれている。そして図面右側に、概ね垂直の面を介して当該打ち換え対象領域G1に連続する非打ち換え対象領域G2が見えている。
【0019】
舗装を打ち換える場合には、打ち換え対象領域G1と非打ち換え対象領域G2との境界に、例えば、カッターの刃を当てて切断して打ち換え、或いは、路面切削機で舗装を切削する。従って当該境界に現れる切断面(切削面)が上述した舗装端部Eである。
【0020】
なお、打ち換えの工事を行うことによって打ち換え対象領域G1は、新たな舗装が施工される。一方、非打ち換え対象領域G2は今回の工事では打ち換えを行わないので、これまでの(旧い)舗装のままである。
【0021】
舗装を切削した場合における切削後の継ぎ目の部分や打ち換えた場合における切断面には、塵や泥(以下、これらをまとめて「土砂」と表す)が付着する。そして土砂が継ぎ目の部分や切断面(舗装端部E)に付着したままだと、新旧の舗装の間において接着剤(例えば、アスファルト乳剤)の付着性が悪化する。
【0022】
そのため、新しい舗装を施工する前に、舗装端部Eの清掃を行うことで、接着剤の付着性の確保を図る必要がある。この接着剤の付着性が良いと、新しい舗装を施工した場合であっても旧い舗装との間(継ぎ目部)が開いたり、或いは、ひび割れが生ずることを防止することができる。
【0023】
施工後継ぎ目部にひび割れ等が生ずると、その部分から雨水等が内部に浸み込み、舗装の耐久性を低下させることにもなりかねない。従って、如何に新旧の舗装を確実に継ぐかが重要であり、そのためには舗装端部Eの確実な清掃が必要となる。
【0024】
本発明の実施の形態における舗装端部清掃機1は、舗装端部Eの土砂を確実に清掃するための機械であり、舗装端部Eに沿って移動可能とされている。具体的には、舗装端部Eに対向する位置に送風口11と、吸引口12と、回転ブラシ13と、が備えられている。また、当該送風口11と、吸引口12と、回転ブラシ13とは、筐体Hの内部に収容されている。
【0025】
送風口11は、筐体Hにおいて舗装端部清掃機1の進行方向前方に配置される。また当該送風口11は、ホースAHの一端部であり、当該ホースAHの他端部は、収容部14に収容される送風機Aに接続される。
【0026】
なお、ここで「進行方向」とは、舗装端部清掃機1が舗装端部Eの清掃を行う際の進行方向を指しており、本発明の実施の形態における舗装端部清掃機1の場合は、図1の矢印に示す方向である。そして、図1では舗装端部清掃機1の全体を見せるために舗装端部Eや非打ち換え対象領域G2の描画は省略しているが、描画するとすれば、手前側が非打ち換え対象領域G2に当たり、送風口11等が収容される筐体Hの多くは舗装端部Eに隠れて見えない。
【0027】
送風機Aが稼働すると、送風機AからホースAHを通過して送風口11から空気が送られ、筐体Hの内部に噴出する。このように送風口11から筐体H内に空気が噴出することによって、後述する回転ブラシ13が掻き出した土砂を吸引口12の方向へと吹き飛ばすことができる。
【0028】
吸引口12は、筐体Hにおいて舗装端部清掃機1の進行方向後方に配置されている。また当該吸引口12は、ホースSHの一端部であり、当該ホースSHの他端部は、収容部14に収容される吸引機Sに接続される。
【0029】
上述したように、送風口11から筐体H内に空気が噴出することによって、後述する回転ブラシ13が掻き出した土砂が吸引口12の付近に吹き飛ばされてくる。従って、吸引機Sが稼働すると、吸引口12からホースSHを通過して吸引機Sに舗装端部Eに付着していた土砂が吸引される。
【0030】
回転ブラシ13は、送風口11と吸引口12との間に配置されている。舗装端部清掃機1が舗装端部Eに沿って移動する際に当該回転ブラシ13が回転することで、回転ブラシ13の先端が舗装端部Eに接触し、その土砂を掻き出す。回転ブラシ13はこのような機能を有することから、舗装端部Eを直接的に清掃する、と言いうる。
【0031】
回転ブラシ13は、舗装端部Eの全面にわたって土砂を掻き出す必要がある。そのため、例えば、図3に示されているように、打ち換え対象領域G1と非打ち換え対象領域G2との段差方向(以下、この方向を適宜「上下方向」と表す)の全域に回転ブラシ13が接触することができるように、上下方向が長手方向となるように形成されている。
【0032】
もちろん、打ち換え対象領域G1と非打ち換え対象領域G2との段差の上下方向の距離が、回転ブラシ13の長手方向の距離よりも大きい場合も考えられる。この場合には、後述する筐体移動部を用いて回転ブラシ13を上下方向に移動させて清掃を行う。
【0033】
また、回転ブラシ13の長手方向全域が舗装端部Eに接触するためには、その回転ブラシ13の長手方向と、舗装端部Eである打ち換え対象領域G1と非打ち換え対象領域G2との段差における方向とが、平行となることが好ましい。そのため、回転ブラシ13の回転軸は、舗装端部Eに対して平行となるように配置される。
【0034】
また、多くの場合、舗装端部Eは打ち換え対象領域G1と非打ち換え対象領域G2との間で地面に対して概ね垂直に現れることから、回転ブラシ13の回転軸は、打ち換え対象領域G1の地面に対して概ね垂直に配置される、とも言いうる。
【0035】
これに対して、回転ブラシ13の回転軸を打ち換え対象領域G1の地面と平行になるように配置することも考えられる。この場合、回転ブラシ13は舗装端部Eに対して上から下に、或いは、下から上に土砂を掻き出すように回転する。
【0036】
しかしながらこのような配置とすると、その回転方向の如何を問わず、舗装端部Eと打ち換え対象領域G1とのが接する角部に土砂が溜まり、清掃されずに残ってしまうことが多い。これでは別途この角部を清掃する必要がある。
【0037】
また、回転ブラシ13が舗装端部Eの下から上に向けて回転する場合、掻き出した土砂が上方へと飛び散ることになるため、土砂を確実に吸引することも難しくなる。このようなことから、本発明の実施の形態における回転ブラシ13の回転軸は、舗装端部Eに対して平行、すなわち、打ち換え対象領域G1の地面に対して概ね垂直に配置される。
【0038】
回転ブラシ13のブラシは、例えば、金属で構成されている。掻き出す対象が土砂であることから、柔らかなブラシを使用すると土砂をなでるだけになってしまい、確実な清掃を行うことができないからである。従って、土砂を掻き出すことができるのであれば、金属製に限らず、例えば、樹脂製等、その他の素材を採用しても良い。
【0039】
また、本発明の実施の形態における回転ブラシ13のブラシは、回転しない状態で毛先が舗装端部Eに対向する位置に配置される。従って、回転ブラシ13が回転しても遠心力により毛先が広がるといったことはなく、ブラシが確実に舗装端部Eに接触することになるので、接触した領域分舗装端部Eの清掃を行うことができる。
【0040】
また、送風口11と、吸引口12と、回転ブラシ13との配置位置から、回転ブラシ13の回転方向は、図2の平面図に示すように、進行方向前方から後方に向けて、反時計回りに回転する。
【0041】
なお、上述した送風機Aと吸引機Sは、いずれも収容部14に収容されている。図1ないし図3に示すホースAH、及び、ホースSHの配置位置にも明らかなように、図3に示す舗装端部清掃機1の正面図において、図面右側に送風機Aが、図面左側に吸引機Sが収容されている。
【0042】
但し、送風機A、及び、吸引機Sの配置位置については、上述したような位置に拘わらず、任意に配置することができる。そしてこれらの配置位置に基づいて、収容部14からホースAH、ホースSHが引き出され、ホースAH、ホースSHの一端部が筐体Hの内部に配置される。
【0043】
図1、或いは、図2に示されているように、収容部14の進行方向後ろ側には動力源15が配置されている。動力源15は、送風機A、及び、吸引機Sを駆動するための動力を供給する。動力源15としては、例えば、発電機やエンジン、電池等、どのような形式のものであっても良い。
【0044】
また、動力源15には、回転ブラシ13を回転させるための駆動部16も接続されている。図2の平面図に示すように、駆動部16は、筐体Hを挟んで舗装端部Eと対向する位置に配置されている。
【0045】
駆動部16は、回転ブラシ13と駆動伝達部16aを介して連結されている。従って、駆動部16の回転が駆動伝達部16aを介して回転ブラシ13に伝わり、回転ブラシ13が回転する。なお、これらの詳しい構造については、後述する。
【0046】
また、本発明の実施の形態における舗装端部清掃機1においては、動力源15を収容部14の後方に配置しているが、その配置位置はどこであっても良い。また、舗装端部清掃機1に搭載されていなくても良く、例えば、別の場所に動力源15を配置し、コードを延ばして舗装端部清掃機1に接続することで送風機A等を駆動するような形態であっても良い。
【0047】
そして、収容部14、及び、動力源15は、移動台車Dの上に載置されている。また、送風口11、吸引口12、及び、回転ブラシ13を収容する筐体Hは、移動台車Dの側部であって、清掃対象である舗装端部Eに対向する位置に配置されている。
【0048】
但し、上述したように、例えば回転ブラシ13の長手方向の距離よりも舗装端部Eの上下方向の距離の方が長いような場合、一度で舗装端部Eの上下方向の全領域を清掃することはできない。そこで、筐体Hが上下方向に移動できるように、筐体移動部17が設けられている。
【0049】
本発明の実施の形態における舗装端部清掃機1では、筐体移動部17は、上下方向に伸びる1対の棒状部材で構成されており、当該筐体移動部17に筐体H、及び、駆動部16が連結されている。従って、これら筐体Hと駆動部16とは一体に上下方向に移動する。これにより、打ち換え対象領域の地面G1との距離を調整して、回転ブラシ13を舗装端部Eに対向させる位置に適切に配置することができる。
【0050】
なお、筐体移動部17を用いて筐体H、及び、駆動部16が移動する場合には、例えば、動力源15から駆動力の提供を受けて自動で上下させることとしても良い。或いは、手動で移動させるようにしても良い。
【0051】
また筐体移動部17の構成として上述したような、上下方向に伸びる1対の棒状部材を備えて連結される筐体Hを移動させる方法の他、例えば、エレベータのように吊り上げ、吊り下げるような構成を採用しても良い。
【0052】
次に、本発明の実施の形態における舗装端部清掃機1の動きについて、特に送風口11、吸引口12、回転ブラシ13の動きを中心に図4ないし図6を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る舗装端部清掃機1における筐体Hの部分を拡大して示す側面図である。図5は、本発明の実施の形態に係る舗装端部清掃機1における筐体Hの部分を拡大して示す背面図である。図6は、本発明の実施の形態に係る舗装端部清掃機1における筐体Hの部分を拡大して示す平面図である。
【0053】
図4では、筐体Hの内部における送風口11と、吸引口12と、回転ブラシ13とが、左から送風口11、回転ブラシ13、吸引口12の順に並んでいる。従って、舗装端部Eを清掃する場合には、図1と同様、舗装端部清掃機1が図面右側から左側に向けて進む。
【0054】
また、図4では筐体Hの内部が見えている状態で示されているが、実際には回転ブラシ13によって掻き出された土砂が筐体Hから外に飛び出して、舗装端部Eの近傍を汚すことがないように、舗装端部Eと対向する面は、回転ブラシ13の部分を除いて、図1に示すようにカバー部材HCで覆われている。
【0055】
このような舗装端部Eと対向する面を覆うカバー部材HCとしては、例えば、板状部材や、例えば、ゴム等の材料を使用した、カーテン状の部材等を採用することができる。
【0056】
送風口11は、回転ブラシ13が掻き出した舗装端部Eの土砂を噴出された空気で進行方向後方に向けて吹き飛ばすため、回転ブラシ13の近傍に配置されている。また図4に示すように、例えば、上下方向に開口するスリット形状に形成されている。
【0057】
但し、送風口11が形成されている向きは、舗装端部Eに対して直交する向きではない。上述したように、あくまでも進行方向後方に配置される吸引口12に向けて土砂を吹き飛ばす必要があることから進行方向後方を向くように、舗装端部Eに対して直交する向きから見て吸引口12の側に角度を付けて形成されている。
【0058】
一方で、送風口11の向きが進行方向と平行となる位置となると、図6に示すように舗装端部Eの土砂を掻き出した後の回転ブラシ13の近傍に風を送ることになり、掻き出した土砂を吸引口12の近傍に吹き飛ばしにくい。
【0059】
また、回転ブラシ13が掻き出した土砂は進行方向後方、すなわち、筐体Hの内部において回転ブラシ13と吸引口12との間に飛ばされることになるので、回転ブラシ13に直接送風口11から噴出した空気を当てても土砂を吹き飛ばすことが難しい。
【0060】
そこで本発明の実施の形態における送風口11は、舗装端部清掃機1の進行方向後方に向けて、回転ブラシ13の回転方向と順方向となる方向に空気を噴出することが可能な向きとなるように形成されている。
【0061】
すなわち、図6の平面図を用いて説明すると、図6に描画されているホースAH(送風口11)から噴出される空気は、図面において右斜め下方向に噴出される。回転ブラシ13は図1図2に示すように反時計回りに回転するので、空気は回転ブラシ13の回転方向に噴出される。この際、噴出される空気は回転ブラシ13に当たっても当たらなくても良い。送風口11が、図4に示すように舗装端部E側から見て進行方向後方側に角度を付けて開口していることによって筐体Hの内部に広く空気を送ることができる。
【0062】
なお、送風口11の形状については、図4に示すような上下方向が長手方向となるスリット状(矩形状)に形成されているが、このような形状に限定されるものではない。また、形成される送風口11の数についても任意に設定することができる。
【0063】
また、送風口11の配置位置については、図4に示されているように、打ち換え対象領域G1と対向する筐体Hの下面HBに接触するような位置に配置されている。これは、筐体Hの内部において、できるだけ下から空気を噴出させて、回転ブラシ13が掻き出した土砂を巻き上げることによって、吸引口12から吸引しやすくして、当該土砂が筐体Hの内部に溜まってしまうことを防止するためである。
【0064】
これに対して、吸引口12は、下面HBからの距離が、送風口11の下面HBからの距離よりも長い。すなわち、下面HBから上部に離れた位置に配置されている。これは、あまり下面HBに近い位置に吸引口12が配置されると、回転ブラシ13が掻き出した土砂の大きさによっては吸引することができない可能性があるからである。また、若干下面HBから離れる位置に配置されることで、送風口11によって吹き上げられた筐体Hの内部にある土砂を効率よく吸い込むことができる。
【0065】
また、吸引口12の形状は送風口11のようなスリット形状ではなく、下面HBに対してその全面が開口する形状とされている。すなわち、吸引口12の形状は、長手方向に直交する短手方向の断面が現れるように形成されている。但し吸引口12の形状についてはこのような形状に限定されず、例えば、長手方向に対して斜めに切断したような形状を態様することもできる。
【0066】
回転ブラシ13は、上述したように、舗装端部Eに直接接触して土砂を掻き出し、清掃する役割を担っている。そのため、回転ブラシ13が回転して土砂を掻き出している最中は、掻き出した土砂が飛び散っている状態にある。但し、この状態のままでは、舗装端部Eの近傍が汚れてしまう。そこで、図5に示されているように、筐体Hの右側面HRは、回転ブラシ13の回転軸よりも舗装端部E側に伸びるように形成されている。
【0067】
このように筐体Hの側面(右側面HR、左側面HL)が舗装端部Eに近接する位置まで設けられ、舗装端部Eとの間であまり隙間ができないようにすることによって、回転ブラシ13によって土砂が掻き出されたとしても土砂の飛散を低減させることができる。
【0068】
一方、筐体Hの上面HTは、舗装端部Eを越えて非打ち換え対象領域G2にまでせり出すように形成されている。すなわち、上面HTは庇のように形成されているが、これは、筐体Hにおける舗装端部Eと対向する面を覆うカバー部材HCを固定するためである。なお、図5では当該カバー部材HCの図示を省略している。
【0069】
筐体Hに収容される回転ブラシ13は、上述したように、駆動部16から駆動力を供給されることによって回転する。本発明の実施の形態における回転ブラシ13の場合、図5図6に明らかなように、筐体Hの上面HTを貫通して回転ブラシ13の回転軸13aが突出している。そしてこの回転軸13aと駆動部16の駆動軸16bとが駆動伝達部16aを介して連結されている。そのため、駆動部16が稼働することによって駆動軸16bが回転し、この回転力が駆動伝達部16aを介して回転軸13aに伝わり、回転ブラシ13が回転する。
【0070】
なお、駆動伝達部16aは、例えば、ゴム等で形成されるベルト状のものであっても良く、或いは、金属製のチェーンであっても良く、任意に設定することができる。
【0071】
図7は、本発明の実施の形態に係る舗装端部清掃機1を使用した場合の効果を、舗装端部清掃機1を使用しない場合と比較して示す表である。ここで舗装端部清掃機を使用しない場合とは、回転ブラシを用いず、例えば、人が舗装端部Eに圧縮空気を吹き付けて舗装端部Eに付着している土砂の清掃を行った場合である。そして両者について、3つの観点から比較した。
【0072】
「汚泥除去率」は、舗装端部Eに土砂を人為的に設け、その時の土砂の量を100%とした場合における、清掃後の土砂の量を測定したものである。舗装端部清掃機1を用いない場合には、清掃後に33%の土砂を除去することができた。一方、舗装端部清掃機1を用いた場合には、81%の土砂を除去することができた。
【0073】
次に「曲げ強度試験」を行った。「曲げ強度試験」は本来、たわみ性が要求される加熱アスファルト混合物の低温時におけるたわみ性または脆化点を評価することを目的に実施される試験であるが、ここでは、打ち換え対象領域G1と非打ち換え対象領域G2の境界に荷重をかけて破断時の強度を測定した。
【0074】
具体的には、舗装端部清掃機1を用いて、或いは、用いないで舗装端部Eの清掃を行った後、当該舗装端部Eに接着剤を塗布する。その後打ち換え対象領域G1に新たなアスファルト混合物を敷設して打ち換えを行う。打ち換え後、打ち換え対象領域G1と非打ち換え対象領域G2の境界と両者の境界を含む供試体を作製し、当該境界に破断するまで荷重をかけて破断時の強度を測定した。
【0075】
その結果、図7に示すように、舗装端部清掃機1を用いない場合には、2.57MPaであったが、舗装端部清掃機1を用いた場合には、3.83MPaとの結果を得た。すなわち、これまで説明してきた本発明の実施の形態における舗装端部清掃機1を用いて清掃することで、舗装端部Eにおける土砂等が十分に除去され、接着剤による打ち換え対象領域G1と非打ち換え対象領域G2の境界における付着力が向上したと言える。
【0076】
「加圧透水試験」は、アスファルト混合物の防水性・遮水性などを評価するために、加圧した水によりアスファルト混合物の透水量を測定し透水係数を求める試験である。当該試験を行うために作製する供試体は打ち換え対象領域G1と非打ち換え対象領域G2の境界と両者の境界を含む供試体である。そして当該供試体に対して加圧透水試験を実施した。
【0077】
図7に示すように、舗装端部清掃機1を用いない場合には、2.394×10-5cm/sとの係数を得た。指数はマイナス10の5乗であるので、概略透水性が非常に低いと判定できる。これに対して、舗装端部清掃機1を用いた場合には、係数は2.434×10-6cm/sであった。舗装端部清掃機1を用いない場合と同様に概略透水性が非常に低いと判定できるが、係数としてはより優れた数値を得ることができた。
【0078】
すなわち、これまで説明してきた本発明の実施の形態における舗装端部清掃機1を用いて清掃することで、舗装端部Eにおける土砂等が十分に除去され、接着剤による打ち換え対象領域G1と非打ち換え対象領域G2の境界における付着力が向上したことから、不透水性が向上したものと考えることができる。
【0079】
また3種類の試験を行い、舗装端部Eの清掃に当たって舗装端部清掃機1を用いない場合と用いる場合とで比較した結果、いずれも舗装端部清掃機1を用いた場合の方がより良い結果を得ることができた。すなわち、打ち換え後に打ち継ぎ目における新旧の舗装の接着性を向上させ、当該打ち継ぎ目から内部への雨水等の浸入を防ぎ、舗装の耐久性の向上を図るためには、打ち換えを実施する際に、舗装端部Eをよりきれいに清掃することが重要である。そしてそのためには、本発明の実施の形態における舗装端部清掃機を用いることが有効である。
【0080】
以上説明した通り、回転ブラシによって舗装端部の土砂を掻き出し、当該土砂を送風口から噴出される空気によって吸引口付近まで移動させ、吸引口で吸い取る構成を採用することによって、舗装打ち換え時における打ち換え対象領域と非打ち換え対象領域との間に現れる舗装端部を確実に清掃することができる。そのため、打ち継ぎ目における新旧の舗装の接着性を向上させ、当該打ち継ぎ目から内部への雨水等の浸入を防ぎ、舗装の耐久性の向上を図ることができる
【0081】
また、本発明の実施の形態における舗装端部清掃機は、移動台車に送風口、回転ブラシ、及び、吸引口をまとめた筐体、送風機、吸引機をひとまとめにして、例えば、人力で移動可能としている。このように舗装端部清掃機全体がコンパクトにまとめられているので、これまでの路面清掃車とは異なり、工事現場で大型の車両が多く稼働する中でもこれらの車両とすれ違うことができる。
【0082】
また、舗装の打ち換えを行う際に、打ち換えの作業と打ち換えによって現れた舗装端部の清掃作業とを同時に行う場合に、車両の大きさによって舗装端部清掃機が作業ができない、といった不都合を回避することができる。
【0083】
さらにこのように舗装端部清掃機がコンパクトに構成されていることによって、持ち運びも容易になり、清掃場所を選ばず対応することができる。
【0084】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、本発明の一例を示したものである。実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化でき、また、上記実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。
【0085】
例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよく、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0086】
なお、本発明の実施の形態において説明した技術については、以下のような構成を採用することもできる。
(1)進行方向前方に配置され、進行方向後方に向けて空気を噴出する送風口と、
前記進行方向後方に配置され、土砂を吸引する吸引口と、
前記送風口と前記吸引口との間であって、舗装の打ち換え工事に当たって、打ち換え対象領域と非打ち換え対象領域との境界に現れる舗装端部に対して、回転軸が平行となるように配置され、回転しない状態で毛先が前記舗装端部に対向する位置に配置される、前記土砂を掻き出す回転ブラシと、
を備えることを特徴とする舗装端部清掃機。
(2)前記送風口と、前記吸引口と、前記回転ブラシとを収容する筐体を有し、
前記筐体と前記打ち換え対象領域の地面との距離を調整する筐体移動部を備えることを特徴とする上記(1)に記載の舗装端部清掃機。
(3)前記送風口は、前記進行方向後方であって、前記回転ブラシに直接前記空気が当たることを回避する方向に前記空気を噴出することが可能な位置に設けられていることを特徴とする上記(2)に記載の舗装端部清掃機。
(4)前記吸引口は、前記打ち換え対象領域と対向する前記筐体の下面からの距離が、前記送風口の前記下面からの距離よりも長いことを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の舗装端部清掃機。
(5)前記進行方向前方であって、前記送風口よりも前方に前記舗装端部を乾燥させる乾燥機が配置されていることを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の舗装端部清掃機。
【符号の説明】
【0087】
1・・・舗装端部清掃機、11・・・送風口、12・・・吸引口、13・・・回転ブラシ、13a・・・回転軸、14・・・収容部、15・・・動力源、16・・・駆動部、16a・・・駆動伝達部、16b・・・駆動軸、17・・・筐体移動部、A・・・送風機、D・・・移動台車、E・・・舗装端部、G1・・・打ち換え対象領域、G2・・・非打ち換え対象領域、H・・・筐体、S・・・吸引機



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7