(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014278
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】読取装置及び印刷装置の生産方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/21 20060101AFI20240125BHJP
G06T 1/60 20060101ALI20240125BHJP
H04N 1/10 20060101ALI20240125BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H04N1/21
G06T1/60 450
H04N1/10
B41J29/393 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116981
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】松平 正年
【テーマコード(参考)】
2C061
5B047
5C072
【Fターム(参考)】
2C061AP07
2C061AQ05
2C061AR01
2C061KK25
5B047AA01
5B047EB01
5B047EB06
5C072AA01
5C072LA02
5C072MA01
5C072UA11
5C072UA13
(57)【要約】
【課題】調整パターンを読み取るためのバッファーの容量が大きくなってしまうという問題があった。
【解決手段】メモリーを管理するメモリー管理部と、印刷媒体に印刷された第1調整パターン及び第2調整パターンを順次読み取って第1データ及び第2データを順次前記メモリーに記憶させる読取部と、前記第1データと前記第2データとを順次前記メモリーから読み出して、パラメーターの調整を順次実行する調整部と、を備え、前記メモリー管理部は、前記第1データに基づく処理完了後に、前記第1データを記憶していた第1領域を解放し、前記第1データに基づく処理完了前かつ前記第2調整パターンの読み取り開始前から前記第2データに基づく処理完了まで前記第2データの一部を記憶する第2領域を前記第1領域とは別に確保し、前記第2データに基づく処理完了まで前記第2データの残部を記憶する第3領域を前記第2領域とは別に確保する、読取装置を構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に印刷された第1調整パターン及び第2調整パターンを順次読み取ってパラメーターを調整する読取装置であって、
メモリーを管理するメモリー管理部と、
前記第1調整パターンを読み取った第1データと前記第2調整パターンを読み取った第2データとを順次前記メモリーに記憶させる読取部と、
前記第1データと前記第2データとを順次前記メモリーから読み出して、前記第1調整パターンに基づく前記パラメーターの調整と前記第2調整パターンに基づく前記パラメーターの調整とを順次実行する調整部と、
を備え、
前記メモリー管理部は、前記第1データに基づく処理完了後に、前記第1データを記憶していた第1領域を解放し、前記第1データに基づく処理完了前かつ前記第2調整パターンの読み取り開始前から前記第2データに基づく処理完了まで前記第2データの一部を記憶する第2領域を前記第1領域とは別に確保し、前記第2データに基づく処理完了まで前記第2データの残部を記憶する第3領域を前記第2領域とは別に確保する、
読取装置。
【請求項2】
前記読取部は、所定方向を向くラインに垂直な方向にセンサーを移動させて順次読み取りを行い、
同一の前記ラインにおいて前記第1調整パターンと前記第2調整パターンとの双方が読み取られる重複が発生している範囲である重複量を判定する判定部をさらに備え、
前記メモリー管理部は、前記重複量に応じたデータ容量の前記第2領域を確保する、
請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記印刷媒体上に印刷された複数の検出マーカーの読み取り結果に基づいて前記重複量を判定する、
請求項2に記載の読取装置。
【請求項4】
前記判定部は、複数の前記検出マーカーが読み取られた位置に基づいて算出された前記第1調整パターンの傾きに基づいて前記重複量を判定する、
請求項3に記載の読取装置。
【請求項5】
前記メモリー管理部は、前記重複量を前記センサーで読み取る場合に必要なデータ容量と、前記第1データに基づく処理開始から処理完了までの期間に前記センサーが移動する移動範囲を読み取る場合に必要なデータ容量と、を含む容量の前記第2領域を確保し、
前記第1領域には、前記第1調整パターンと前記第2調整パターンとが重複している部分を読み取ることで得られる前記第1データは記憶されない、
請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の読取装置。
【請求項6】
前記メモリー管理部は、前記第2調整パターンの先頭から、前記第1調整パターンを読み取った前記第1データに基づく処理完了までセンサーで読み取りを行う場合に必要なデータ容量のデータを記憶可能な前記第2領域を確保する、
請求項1に記載の読取装置。
【請求項7】
前記メモリー管理部は、前記第2調整パターンの読み取り開始後から前記第2データに基づく処理完了まで前記第3領域を確保する、
請求項1に記載の読取装置。
【請求項8】
印刷媒体に印刷された第1調整パターン及び第2調整パターンを順次読み取ってパラメーターを調整する印刷装置の生産方法であって、
メモリーを管理するメモリー管理工程と、
前記第1調整パターンを読み取った第1データと前記第2調整パターンを読み取った第2データとを順次前記メモリーに記憶させる読取部と、
前記第1データと前記第2データとを順次前記メモリーから読み出して、前記第1調整パターンに基づく前記パラメーターの調整と前記第2調整パターンに基づく前記パラメーターの調整とを順次実行する調整工程と、
を含み、
前記メモリー管理工程は、前記第1データに基づく処理完了後に、前記第1データを記憶していた第1領域を解放し、前記第1データに基づく処理完了前かつ前記第2調整パターンの読み取り開始前から前記第2データに基づく処理完了まで前記第2データの一部を記憶する第2領域を前記第1領域とは別に確保し、前記第2データに基づく処理完了まで前記第2データの残部を記憶する第3領域を前記第2領域とは別に確保する、
印刷装置の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取装置及び印刷装置の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置によって調整パターンを印刷し、調整パターンを読み取ることによって印刷装置における各種の調整項目に関するパラメーターを決定し、調整する技術が知られている。例えば、特許文献1においては、調整パターンを印刷させ、調整パターンを読み取った画像データの検出結果に基づいて、ラスターライン毎の濃度補正値を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷媒体に印刷した調整パターンを読み取って、パラメーターを決定するためには、比較的高解像度の読み取りが必要となることが多い。従って、調整パターンを読み取るためのバッファーの容量が大きくなってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、印刷媒体に印刷された第1調整パターン及び第2調整パターンを順次読み取ってパラメーターを調整する読取装置であって、メモリーを管理するメモリー管理部と、前記第1調整パターンを読み取った第1データと前記第2調整パターンを読み取った第2データとを順次前記メモリーに記憶させる読取部と、前記第1データと前記第2データとを順次前記メモリーから読み出して、前記第1調整パターンに基づく前記パラメーターの調整と前記第2調整パターンに基づく前記パラメーターの調整とを順次実行する調整部と、を備え、前記メモリー管理部は、前記第1データに基づく処理完了後に、前記第1データを記憶していた第1領域を解放し、前記第1データに基づく処理完了前かつ前記第2調整パターンの読み取り開始前から前記第2データに基づく処理完了まで前記第2データの一部を記憶する第2領域を前記第1領域とは別に確保し、前記第2データに基づく処理完了まで前記第2データの残部を記憶する第3領域を前記第2領域とは別に確保する、読取装置が構成される。
【0006】
また、上記課題を解決するため、印刷媒体に印刷された第1調整パターン及び第2調整パターンを順次読み取ってパラメーターを調整する印刷装置の生産方法であって、メモリーを管理するメモリー管理工程と、前記第1調整パターンを読み取った第1データと前記第2調整パターンを読み取った第2データとを順次前記メモリーに記憶させる読取部と、前記第1データと前記第2データとを順次前記メモリーから読み出して、前記第1調整パターンに基づく前記パラメーターの調整と前記第2調整パターンに基づく前記パラメーターの調整とを順次実行する調整工程と、を含み、前記メモリー管理工程は、前記第1データに基づく処理完了後に、前記第1データを記憶していた第1領域を解放し、前記第1データに基づく処理完了前かつ前記第2調整パターンの読み取り開始前から前記第2データに基づく処理完了まで前記第2データの一部を記憶する第2領域を前記第1領域とは別に確保し、前記第2データに基づく処理完了まで前記第2データの残部を記憶する第3領域を前記第2領域とは別に確保する、印刷装置の生産方法が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】スキャン部と印刷媒体の位置関係を示す図である。
【
図6】調整パターンが重複した状態における読み取り範囲とメモリーに確保される領域とを示す図である。
【
図7】調整パターンが重複していない状態における読み取り範囲とメモリーに確保される領域とを示す図である。
【
図8】印刷装置の調整処理のフローチャートである。
【
図9】印刷装置の調整処理のフローチャートである。
【
図10】調整パターンが重複した状態において確保される領域を説明する図である。
【
図11】調整パターンが重複していない状態において確保される領域を説明する図である。
【
図12】調整パターンが重複した状態において確保される領域を説明する図である。
【
図13】調整パターンが重複していない状態において確保される領域を説明する図である。
【
図14】調整パターンが重複した状態における読み取り範囲とメモリーに確保される領域とを示す図である。
【
図15】調整パターンが重複していない状態における読み取り範囲とメモリーに確保される領域とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)複合機の構成:
(2)調整処理:
(2-1)傾き取得処理:
(2-2)印刷装置の調整処理:
(3)他の実施形態:
【0009】
(1)複合機の構成:
図1は、本実施形態にかかる複合機10の構成図である。複合機10は、印刷装置、読取装置を有している。なお、複合機10は、FAXなど、これら以外の装置を備えてもよい。複合機10は、印刷部11と、スキャン部12と、プロセッサー13と、不揮発性メモリー14と、UI部15と、通信部16と、を備えている。プロセッサー13は、印刷部11やスキャン部12を制御可能である。従って、印刷装置はプロセッサー13と印刷部11とによって構成され、読取装置はプロセッサー13とスキャン部12とによって構成される。
【0010】
印刷部11は、印刷ヘッド111と、キャリッジ112と、搬送機構113と、を備えている。印刷ヘッド111は、複数のインクのそれぞれに対応するノズル列を備え、インクジェット方式で印刷を行う。インクの数や種類、色は限定されず、例えば、CMYK(C:シアン、M:マゼンタ、Y:イエロー、K:ブラック)の4種類のインク等が用いられる。ノズル列は、複数のノズルを備え、各ノズルからは、各色のインクが吐出される。各ノズルのインクは、各色のインクタンク(不図示)等から供給される。印刷ヘッド111の各ノズルからインクが吐出されることで、印刷媒体上にインクの液滴(ドット)が形成される。
【0011】
キャリッジ112には、印刷ヘッド111が搭載され、キャリッジ112は、プロセッサー13の制御により、特定の方向に沿って往復移動する。これに伴い、印刷ヘッド111も、当該特定の方向に往復移動する。印刷ヘッド111が往復移動する方向を印刷ヘッド111の主走査方向と称する。搬送機構113は、印刷対象の印刷媒体を搬送する装置である。搬送機構113は、印刷ヘッド111の主走査方向に垂直な方向に印刷媒体を搬送する。ここで、印刷ヘッド111の主走査方向に垂直な方向、すなわち印刷媒体の搬送される方向を、印刷ヘッド111の副走査方向と称する。
【0012】
印刷ヘッド111の各色のノズル列内においては、副走査方向に沿って複数のノズルが配置される。印刷ヘッド111の往復移動の過程でのノズルから各色のインクの吐出と、搬送機構113による印刷媒体の搬送と、が繰り返されることで、印刷媒体への印刷が行われる。
【0013】
スキャン部12は、光源121と、センサー122と、キャリッジ123とを備える。光源121は、スキャン対象に対して光を出力する。センサー122は、スキャン対象からの光を受光する受光素子を備える。本実施形態において、センサー122はCIS(Contact Image Sensor)方式のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)ラインセンサーが用いられる。また他の例としては、スキャン部12は、CCD(Charge Coupled Device)方式のセンサーであってもよい。以下、センサー122において受光素子の配列方向を、スキャン部12の主走査方向と称する。キャリッジ123には、光源121およびセンサー122が搭載される。キャリッジ123は、センサー122の受光素子の配列方向と垂直な方向に沿って往復移動する。以下、キャリッジ123の移動方向を、スキャン部12の副走査方向と称する。このように、本実施形態においては、主走査方向を向くラインに垂直な副走査方向にセンサー122を移動させて順次読み取りが行われる。
【0014】
図2は、複合機10の読取装置を示す図である。
図2においては、スキャン部12の主走査方向が方向A、副走査方向が方向Bである。複合機10は、
図2に示すように、読み取りの対象となる印刷媒体Pを載置するガラス面12-1が設けられた印刷媒体台12-2を備える。すなわち、複合機10は、ガラス面12-1と、印刷媒体台12-2と、を備えたフラッドベッド型の読取装置を備える。キャリッジ123は、プロセッサー13の制御により、ガラス面12-1の下方において、副走査方向に移動する。スキャン部12は、副走査方向に所定量ずつ移動しながら、読み取りを繰り返すことで、印刷媒体Pの全体の読み取りを行う。スキャン部12は、非読み取り動作時には、退避位置(ホームポジションH)に位置し、読み取り動作時に、ホームポジションHから副走査方向への移動を開始する。なお、本明細書においては、スキャン部12の副走査方向において、ホームポジションHに近い側の端部を上端、ホームポジションHから遠い側の端部を下端と呼ぶ。例えば、
図2に示す例において、印刷媒体Pの短辺のうち、ホームポジションHに近い方の短辺の位置が印刷媒体Pの上端であり、ホームポジションHから遠い方の短辺の位置が印刷媒体Pの下端である。
【0015】
プロセッサー13は、メモリー13-1、図示しないCPU等を備える。不揮発性メモリー14は、各種データやプログラムを格納する。プロセッサー13は、不揮発性メモリー14に格納されたプログラムを実行し、メモリー13-1に対してデータを一時的に記憶しながら、各種の処理を実行することができる。UI部15は、ユーザーの入力を受け付けるための入力部と、ユーザーに対して各種の情報を表示する表示部とを備える。通信部16は、有線通信や無線通信等で接続されたPCやタブレット端末等の外部装置と通信する。
【0016】
本実施形態にかかる複合機10においては、印刷部11による印刷と、スキャン部12による読み取りと、のそれぞれを実施可能である。印刷部11による印刷に際して、プロセッサー13は、各種のパラメーターを用いて、各種の調整を行う。調整は、各種の態様で実施されてよい。調整の種類としては、例えば、印刷媒体搬送ずれ(PFずれ、Paper Feedずれ)の調整や、キャリッジ112が主走査方向に往復移動する際のドット形成位置のずれ(Bi-Dずれ)の調整などが挙げられる。なお、調整は、パラメーターによって可変な機構の動作やパラメーターによって可変な画像処理について実施されればよく、実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本実施形態にかかる複合機10においては、印刷部11によって印刷媒体Pに印刷を行い、印刷媒体Pをスキャン部12でスキャンすることによってパラメーターを決定すること、すなわち、印刷装置の調整を行うこと、が可能である。本実施形態の複合機10において印刷装置は、印刷装置の各種調整を行うための調整パターンを印刷媒体に印刷可能である。ここで、調整パターンは、予め定められた模様が予め定められた位置に示される画像である。複合機10は、この調整パターンが印刷された印刷媒体をスキャンし、画像解析を行うことで、印刷装置の制御内容を調整することができる。
【0018】
図3は、本実施形態にかかる調整パターンの一例を示す図である。印刷制御部131は、予め不揮発性メモリー14に記録された調整パターンの画像データに基づいて印刷部11を制御し、調整パターンを印刷媒体Pに印刷する。なお、調整パターンの画像データは、外部装置に格納され、外部装置から複合機10に送信されるものとしてもよい。
【0019】
本実施形態において、印刷媒体Pには、複数の種類の調整パターンが印刷される。調整パターンには、印刷媒体Pの傾きを検出するための調整パターンである検出マーカーPmと、印刷装置のパラメーターを調整するための調整パターンPp1~Pp5が含まれる。なお、調整パターンPp1~Pp5を囲む破線は説明のために付したものであり、印刷されるパターンではない。
【0020】
本実施形態において、検出マーカーPmは、印刷媒体Pの最上部に印刷され、左右方向の2カ所に配置された二重円のパターンを含んでいる。調整パターンPp1~Pp5のそれぞれは、複数の調整項目のそれぞれのパラメーターを取得するためのパターンであり、矩形や直線等の図形によって構成される。いずれの調整パターンPp1~Pp5においても、パターンは複数の矩形や線を含み、四隅に二重円のパターンが含まれる。本実施形態において調整パターンPp1~Pp5に含まれる二重円のパターンと検出マーカーPmとは同一である。なお、検出マーカーPmや調整パターンPp1~Pp5の態様は一例であり、他の態様であっても良い。
【0021】
印刷媒体Pに
図3のような調整パターンが印刷されると、ユーザーは、当該印刷媒体Pをガラス面12-1に載置し、UI部15を介して指示を行い、調整を開始させる。調整が開始されると、プロセッサー13はスキャン部12を制御し、印刷媒体Pのスキャンを開始する。スキャンが開始されると、プロセッサー13は、センサー122によって読み取ったデータをメモリー13-1に順次記録していく。
【0022】
印刷装置の調整を行うための調整パターンは、例えば、上述のBi-Dずれのような、非常に小さいずれ等の検出を行うためのパターンである。このため、スキャン部12のセンサー122による読み取り解像度は、既定の解像度以上、例えば、実行可能な解像度の中の最高解像度、になるように設定される。このため、印刷媒体Pに印刷された全ての調整パターンを読み取ったデータを記憶可能なメモリーを用意しようとすると、大容量のメモリーが必要になり、コストが上昇してしまう。
【0023】
そこで、本実施形態においては、メモリー13-1のコストが過大にならないように容量が設定してある。印刷媒体Pに印刷された調整パターンには複数の種類のパターンが存在するが、調整パターン毎に調整項目が異なる。従って、1種類の調整パターンの読み取りが完了し、読み取った調整パターンを示すデータに基づく取得が完了すれば、当該調整パターンのデータは不要になる。そこで、本実施形態においては、2個の調整パターンの読み取り結果をメモリー13-1に同時に記録しなくてもよいように、メモリー13-1の容量が選定されている。
【0024】
但し、1種類の調整パターンの読み取りが完了する度にスキャン部12のキャリッジ123を停止させるのは好ましくない。キャリッジ123において、高精度の読み取りを行うためには、キャリッジ123の移動開始後に加速させ、その後、一定の速度で移動させている状態で読み取りを行う必要がある。このため、1種類の調整パターンの読み取りが完了する度に、キャリッジ123を停止させる場合、停止位置からキャリッジ123を戻した後に、再度移動を開始させ、一定の速度で移動させて読み取りを再開する必要がある。また、ある調整パターンの途中で読み取りが中断された場合、途中から読み取りを再開することは不可能である。読み取りを再開した場合、再開前の読み取り結果と再開後の読み取り結果との間で画像のずれが生じることがあるが、このずれが、再開の影響によって生じたのか、印刷装置の機構のずれ等によって生じたのか、区別することが困難だからである。
【0025】
そこで、本実施形態においては、キャリッジ123を一定の速度で移動させながら、停止させることなく複数の調整パターンの読み取りを行えるように、メモリー13-1の管理が行われる。このような、メモリー13-1の管理を伴う調整パターンの読み取りを行って印刷装置の調整を行うため、プロセッサー13は、調整プログラム130を実行する。調整プログラム130が実行されると、プロセッサー13は、印刷制御部131、メモリー管理部132、読取部133、調整部134、判定部135として機能する。
【0026】
印刷制御部131は、印刷部11の制御を行う。メモリー管理部132は、メモリー13-1を管理する。管理の詳細は後述する。読取部133は、スキャン部12を制御し、ガラス面12-1上に載置された読み取り対象物、例えば、印刷媒体Pの読み取りを行う。調整部134は、読取部133によって読み取られた調整パターンに基づいて、印刷部11の調整を行う。判定部135は、副走査方向の同一位置において複数の調整パターンが重複している場合に、その重複量を判定する。プロセッサー13は、これらの各機能によって以下の処理を行うことで、調整パターンに基づく調整を行う。
【0027】
(2)調整処理:
調整処理を行うため、ユーザーは、UI部15によって調整パターンの印刷開始を指示する。当該指示により、印刷制御部131は、不揮発性メモリー14に記憶された画像に基づいて印刷部11を制御し、調整パターンを印刷する。この結果、印刷媒体Pに
図3に示すような調整パターンが印刷される。ユーザーは、調整パターンが印刷媒体Pをガラス面12-1上に載置し、UI部15によって読み取りの開始を指示する。当該指示が行われると、
図4に示す傾き取得処理が開始される。
【0028】
(2-1)傾き取得処理:
傾き取得処理は、印刷媒体Pがガラス面12-1に載置された際の傾きを取得するための処理である。本実施形態においては、印刷媒体Pおよびガラス面12-1が長方形であり、印刷媒体Pの4辺とガラス面12-1の4辺とが平行である状態が理想状態として想定されている。印刷媒体Pの短辺がガラス面12-1の短辺に対して傾いていると、傾きが存在する状態と見なされる。傾きが既定範囲内(短辺同士の傾斜角の絶対値が閾値以下)であれば、調整パターンに基づく調整を実施可能であるが、既定範囲を超えると調整パターンに基づく調整を実施することができない。
【0029】
そこで、本実施形態においては、まず、検出マーカーPmに基づいて傾きの検出が行われる。但し、この場合であっても、例外的な場合を除き、検出マーカーPmの読み取り後にキャリッジ123を停止させることなく一定の速度で移動させ続ける。従って、検出マーカーPmの読み取りが行われ、センサー122が調整パターンPp1に達すると、調整パターンPp1の読み取りが行われていく。この際、メモリー13-1において、容量不足となる状況に陥らないようにするため、メモリー管理部132によってメモリー13-1が管理される。
【0030】
具体的には、読み取りが開始される前に、メモリー管理部132は、検出マーカーPmの読み取り範囲を取得する(ステップS100)。本実施形態において、調整パターンが印刷された印刷媒体Pを載置するガラス面12-1の位置は決められている。例えば、
図2に示す例では、矩形のガラス面12-1の左上の頂点に、印刷媒体Pの左上の頂点を合わせるように決められている。また、印刷媒体Pの各辺と、ガラス面12-1の各辺とが平行になるように載置するように決められている。従って、検出マーカーPmを読み取るための読み取り範囲は、予め特定しておくことが可能である。
【0031】
但し、印刷媒体Pの載置位置のずれや傾きが発生する場合もあるため、本実施形態においては、ある程度の載置位置のずれや傾きが発生したとしても読み取りを実施できるように読み取り範囲が決められ、不揮発性メモリー14に記録されている。本実施形態において、センサー122はラインセンサーであり、キャリッジ123はスキャン部12の主走査方向に移動せず、副走査方向に移動する。このため、読み取り範囲(副走査方向における座標値)は、副走査方向において決められている。
図3においては、検出マーカーPmの読み取り範囲Zmが副走査方向に延びる矢印によって示されている。
【0032】
当該読み取り範囲Zmは、印刷媒体Pが傾いていたとしても、過度の傾斜角でなければ検出マーカーPmを読み取ることができるように設定されている。
図5は、印刷媒体Pが傾いた場合の例を示す図である。破線は理想状態の印刷媒体Pの位置を示している。
図5に示すように印刷媒体Pが傾くと、左側の検出マーカーPmが理想状態より上方に位置し、右側の検出マーカーPmが理想状態より下方に位置する。検出マーカーPmの読み取り範囲Zmは、このような傾きによる位置のずれが生じていたとしても、傾きの角度がある程度の範囲であれば、検出マーカーPmを検出できるように設定されている。
図6は、副走査方向における読み取り範囲と読み取りに用いられるメモリー内の領域を示す図である。
図6においては、副走査方向を横軸とし、印刷媒体Pの上端である左端から下端側である右側に向けて位置を示す値(座標値)が大きくなるように横軸が設定してある。また、
図6はメモリーの座標を縦軸とし、上下の横軸の間が本処理に使用可能なメモリーの全範囲である。そして、
図6においては、センサー122が副走査方向の各位置に存在する状態でメモリー13-1において確保されている領域をグレーの矩形によって示している。当該矩形の縦方向の長さは領域の大きさ(データ容量)を示している。矩形の横方向は、センサー122の副走査方向の位置に対応しているため、これらの図においては、領域が確保されている期間を、センサー122の副走査方向の位置に対応付けて示している。例えば、非追い越し部Zim用の領域のデータ容量はデータCi1、追い越し部Zp1用の領域のデータ容量はCp1である。また、非追い越し部Zim用の領域は、センサー122が読み取り範囲Zmの上端に達する前(読み取り範囲Zmの読み取り開始前)に確保され、センサー122が追い越し部Zp1の下端に達すると解放される。
図6において、白色の領域は確保されていない領域を示しており、本調整処理以外の処理に用いることが可能なメモリー領域である。これらは、後述する
図7、
図10乃至
図15でも同様に表現している。
図6に示されるように、検出マーカーPmの読み取り範囲Zmは、副走査方向において、印刷媒体上端側に設定される。
【0033】
検出マーカーPmの読み取り範囲Zmが取得されると、メモリー管理部132は、次の調整パターンの読み取り範囲を取得する(ステップS102)。次の調整パターンは、これから読み取ろうとしてる検出マーカーPmの次に読み取られる調整パターンであり、
図3に示す例であれば調整パターンPp1である。本実施形態においては、検出マーカーPmの次に読み取られる調整パターンの読み取り範囲(副走査方向における座標値)も予め決められており、不揮発性メモリー14に記録されている。
【0034】
図3,
図5,
図6に示す例において、次の調整パターンPp1の読み取り範囲は、読み取り範囲Z1である。ここでも、読み取り範囲Z1は、印刷媒体Pがある程度傾いていたとしても、調整パターンPp1の上下に存在する二重円のパターンが検出可能な範囲となるように、予め決められている。このため、検出マーカーPmの読み取り範囲Zmと、次の調整パターンPp1の読み取り範囲Z1と、は副走査方向において重複している。
【0035】
但し、検出マーカーPmの読み取り範囲Zmと、次の調整パターンPp1の読み取り範囲Z1と、が副走査方向において重複していない状況も想定され得る。例えば、検出マーカーPmと、次の調整パターンPp1と、が
図3よりも副走査方向に離れているように印刷媒体Pのデザインを行う場合が想定される。この場合、傾きの発生を考慮しても、読み取り範囲Zmと読み取り範囲Z1とを重複される必要がない場合がある。
図7は、このような場合における副走査方向における読み取り範囲等を示す図である。当該
図7に示す例においては、副走査方向において読み取り範囲Zmと読み取り範囲Z1とが重複していない。
【0036】
次の調整パターンPp1の読み取り範囲Z1が取得されると、メモリー管理部132は、次の調整パターンを読み取る際の追い越し部の長さを取得する(ステップS104)。ここで、追い越しは、ある領域を読み取ったデータに基づく処理が完了する前に、次の領域の読み取りが行われる状態である。ここでは、これから読み取ろうとしてる検出マーカーPmを読み取ったデータに基づく処理が完了する前に、次の調整パターンPp1の読み取りが始まってしまう状態を指す。追い越し部は、当該追い越しが発生している状態で読み取られた部分である。
【0037】
図6に示す例において、次の調整パターンPp1の読み取り範囲Z1の上端は、検出マーカーPmの読み取り範囲Zmの下端よりも上端側に存在する。従って、次の調整パターンPp1の読み取り範囲Z1の上端の位置から追い越しが発生する。さらに、
図6に示す例においては、検出マーカーPmを読み取ったデータに基づく処理が行われている間にセンサー122が副走査方向に移動する移動範囲Amを示している。このように、検出マーカーPmの読み取り後、しばらくの間は、検出マーカーPmを読み取ったデータに基づく処理が行われ、取得処理が行われている間にセンサー122が副走査方向に移動する。従って、
図6に示す例であれば、次の調整パターンPp1の読み取り範囲Z1の上端の位置から移動範囲Amの下端までの範囲が追い越し部Zp1となる。
【0038】
図7に示す例においては、読み取り範囲Zmを読み取ったデータに基づく処理が行われている間にセンサー122が副走査方向に移動する移動範囲Amと、次の調整パターンPp1の読み取り範囲Z1とが重複している。従って、
図7に示す例であれば、移動範囲Amと読み取り範囲Z1とが重複する範囲が、追い越し部Zp1となる。
【0039】
メモリー管理部132は、以下の式に基づいて、追い越し部Zp1の長さを取得する。
追い越し部Zp1の長さ=
移動範囲Amの長さ-(読み取り範囲Z1の上端位置-読み取り範囲Zmの下端位置)
移動範囲Amの長さは種々の手法で取得されて良く、例えば、検出マーカーPmを読み取ったデータに基づく処理が行われる時間長と、センサー122の移動速度とを予め特定しておき、当該時間長と移動速度の積によって算出可能である。但し、ここで、移動範囲Amは、検出マーカーPmを読み取ったデータに基づく処理が行われている間にセンサー122が移動する範囲以上になっていることが必要である。そこで、時間長や移動速度に所定のマージンが設けられており、検出マーカーPmを読み取ったデータに基づく処理が完了する前に、次の読み取りが開始されてしまうような状況が発生しないように考慮されている。読み取り範囲Z1の上端位置は、ステップS102で取得した読み取り範囲Z1の座標値に基づいて特定される。読み取り範囲Zmの下端位置は、ステップS100で取得した読み取り範囲Zmの座標値に基づいて特定される。
【0040】
図6に示す例においては、下端側であるほど座標値が大きいため、
図6に示すように読み取り範囲Z1,Zmが重複している場合、(読み取り範囲Z1の上端位置-読み取り範囲Zmの下端位置)は負の値となる。このため、移動範囲Amの長さに重複部分の長さが加えられ、
図6に示すような追い越し部Zp1の長さが得られる。
図7に示す例のように、読み取り範囲Zm,Z1が重複していない場合、(読み取り範囲Z1の上端位置-読み取り範囲Zmの下端位置)は正の値となる。このため、移動範囲Amの長さから当該正の値が減じられ、
図7に示すような追い越し部Zp1の長さが得られる。なお、読み取り範囲Zm,Z1が重複していない場合、移動範囲Amの長さが短ければ追い越し部Zp1の長さが負の値として算出される場合がある。この場合、メモリー管理部132は、追い越し部Zp1の長さを0とする。
【0041】
次に、メモリー管理部132は、検出マーカーを読み取る際の非追い越し部の長さを取得する(ステップS106)。検出マーカーを読み取る際の非追い越し部は、検出マーカーPmの読み取り範囲Zmの一部分または全部であり、追い越し部ではない部分である。そこで、メモリー管理部132は、以下の条件に応じた式に基づいて非追い越し部Zimの長さを取得する。
条件1)読み取り範囲Zmの下端位置>読み取り範囲Z1の上端位置である場合
非追い越し部Zimの長さ=
読み取り範囲Z1の上端位置-読み取り範囲Zmの上端位置
条件2)読み取り範囲Zmの下端位置≦読み取り範囲Z1の上端位置である場合
非追い越し部Zimの長さ=
読み取り範囲Zmの下端位置-読み取り範囲Zmの上端位置
なお、条件1は、読み取り範囲Zmと読み取り範囲Z1が重複していることを示す条件であり、条件2は、読み取り範囲Zmと読み取り範囲Z1が重複していないことを示す条件である。
図6に示す例は条件1に該当するので、非追い越し部Zimの長さは読み取り範囲Zmの中で、読み取り範囲Z1と重複していない部分の長さに該当する。
図7に示す例は条件2に該当するので、非追い越し部Zimの長さは読み取り範囲Zmの長さである。
【0042】
次に、メモリー管理部132は、メモリー13-1において、非追い越し部用の領域と、追い越し部用の領域を確保する(ステップS108)。すなわち、メモリー管理部132は、非追い越し部Zimを読み取ったデータを書き込み可能であり、他のデータの書き込みが禁止される領域を確保し、非追い越し部用の領域とする。なお、非追い越し部用の領域のデータ容量は、非追い越し部Zimの長さに基づいて決定される。具体的には、1ライン分の読み取りを行う際に必要とされるデータ容量が予め特定されている。メモリー管理部132は、当該データ容量と、非追い越し部Zimの長さと、の積によって非追い越し部用の領域のデータ容量を特定する。
【0043】
また、メモリー管理部132は、追い越し部Zp1を読み取ったデータを書き込み可能であり、他のデータの書き込みが禁止される領域を確保し、追い越し部用の領域とする。なお、追い越し部用の領域のデータ容量は、1ライン分の読み取りを行う際に必要とされるデータ容量と、追い越し部Zp1の長さと、の積によって特定される。
【0044】
上述のように、追い越し部Zp1の長さは、移動範囲Amの長さ-(読み取り範囲Z1の上端位置-読み取り範囲Zmの下端位置)で取得される。(読み取り範囲Z2の上端位置-読み取り範囲Z1の下端位置)が負の値である場合、当該値の絶対値は検出マーカーPmの読み取り範囲Zmと調整パターンPp1の読み取り範囲Z1とが重複している重複量を示す。従って、メモリー管理部132は、重複量をセンサー122で読み取る場合に必要なデータ容量と、第1データに基づく処理開始から処理完了までの期間にセンサー122が移動する移動範囲Amを読み取る場合に必要なデータ容量と、を含む容量の追い越し部Zp1用の領域(後述する第2領域)を確保していることになる。
【0045】
次に、メモリー管理部132は、追い越し部用の領域が確保できたか否か判定する(ステップS110)。ステップS108においては、非追い越し部用の領域が優先的に確保され、残りの領域から追い越し部用の領域が確保される。本実施形態において、メモリー13-1の容量は過度に大きくないが、非追い越し部用の領域は確保可能であると想定されている。一方、調整パターンに基づく調整以外の処理など、各種の処理のために確保されている領域が多くなっていること等により、追い越し部用の領域が確保できない場合がある。そこで、本実施形態においては、ステップS108において、追い越し部用の領域が確保できたか否か判定される。
【0046】
ステップS110において、追い越し部用の領域が確保できたと判定されなかった場合、メモリー管理部132は、追い越し部の長さを0に設定する(ステップS112)。追い越し部の長さが実際に0である場合には、ステップS112において追い越し部の長さが0に設定されたとしても値が変化せず、以後の処理に影響を与えない。一方、追い越し部の長さが実際に0ではない場合に追い越し部の長さが0に設定されると、追い越し部の長さが0より大きいはずであるのに、0に設定された状態となる。この場合、後述のステップS118は実行されず、追い越し部の読み取りが行われない。この結果、検出マーカーPmを最後まで読み取れず、傾きが検出できない場合が発生し得る。この場合、後述するエラー(ステップS130)となる。また、検出マーカーPmを最後まで読み取ることができ、エラーにならなかった場合でも、後述するステップS128において前の追い越し部の長さが0になる。このため、次の調整パターンPp1の読み取りに際して、非追い越し部の読み取りが開始される前に、センサー122が非追い越し部の上端を超える。この結果、後述するステップS220の判定により、ステップS222以降が実行され、再度読み取りが行われる。ステップS110において、追い越し部用の領域が確保できたと判定された場合、ステップS112はスキップされる。
【0047】
ステップS112が実行された場合、または、スキップされた場合、読取部133は、非追い越し部の読み取りを行う(ステップS114)。すなわち、読取部133は、スキャン部12を制御し、読み取り範囲Zmの最初の部分である非追い越し部Zimの読み取りを開始する。なお、センサー122による読み取りは、ステップS108における領域の確保後に行われれば良く、
図4に示す処理開始の際にセンサー122の移動が開始され、ステップS108における領域の確保後にステップS114の読み取りが開始されてもよい。また、ステップS108における領域の確保後にセンサー122の移動が開始され、ステップS114の読み取りが開始されてもよい。非追い越し部Zimの読み取りが開始されると、読取部133は、センサー122によって読み取られたデータを順次メモリー13-1における非追い越し部Zim用の領域に記録していく。
【0048】
次に、読取部133は、追い越し部の長さが0であるか否かを判定する(ステップS116)。追い越し部の長さが0でない場合、読取部133は、非追い越し部の読み取りに続けて追い越し部の読み取りを行う(ステップS118)。すなわち、読取部133は、スキャン部12を制御し、読み取り範囲Zmの下端側の部分である追い越し部Zp1の読み取りを行う。追い越し部Zp1の読み取りが開始されると、読取部133は、センサー122によって読み取られたデータを順次メモリー13-1における追い越し部Zp1用の領域に記録していく。
【0049】
なお、
図6に示すように、読み取り範囲Zmと読み取り範囲Z1とが重複している場合、追い越し部Zp1は、副走査方向において非追い越し部Zimに連続して存在するため、センサー122による読み取りは連続して継続される。一方、
図7に示すように、読み取り範囲Zmと読み取り範囲Z1とが重複していない場合、追い越し部Zp1は、副走査方向において非追い越し部Zimから離れて存在する。従って、センサー122による読み取りは、非追い越し部Zimである読み取り範囲Zmの読み取りが完了した後、データの読み取りが行われない状態でセンサー122の移動が継続される。そして、センサー122が追い越し部Zp1である読み取り範囲Z1に達した場合に、センサー122による読み取りが再開される。いずれにしても、本実施形態において、センサー122はステップS114,S118の実行過程やそれ以後の読み取りに関し、エラー等の例外的な事象が発生しなければ一定の速度での移動を継続する。
【0050】
ステップS114,S118の処理により、読み取り範囲Zmの下端まで読み取りが行われると、調整部134は、読み取られたデータから検出マーカーPmの位置を特定する(ステップS120)。すなわち、調整部134は、メモリー13-1を参照し、検出マーカーPmの形状等に基づいて、検出マーカーPmのデータを特定する。読み取り範囲Zmは予め決められた範囲であり、その位置も固定である、そこで、調整部134は、検出マーカーPmのパターンを読み取った読取画像内の位置に基づいて、検出マーカーPmが存在する主走査方向及び副走査方向の位置を特定する。なお、検出マーカーPmの位置は種々の態様で定義されて良く、例えば、二重円の中心の位置等によって定義可能である。
【0051】
次に、調整部134は、非追い越し部用の領域を解放する(ステップS122)。
図6,
図7においては、非追い越し部Zim用の領域が解放される際のセンサー122の副走査方向における位置Pi1が図示されている。すなわち、移動範囲Amにおける移動の過程で検出マーカーPmの位置検出の処理が行われると、非追い越し部用の領域が解放される。
【0052】
次に、調整部134は、検出マーカーの位置に基づいて印刷媒体Pの傾きを取得する(ステップS124)。すなわち、傾きが0である場合、左右の検出マーカーPmは同一ライン上に存在する。一方、傾きが0でない場合、左右の検出マーカーPmの位置が副走査方向にずれる。そこで、調整部134は、左右の検出マーカーPmの主走査方向の距離および副走査方向の距離に基づいて、両者の傾きを取得することができる。傾きは種々の態様で定義されてよく、角度で定義されても良いし、主走査方向の距離と副走査方向の距離との比等によって定義されても良い。なお、追い越し部の長さが0に設定されている場合など、傾きの算出ができない場合には、傾きの値は、後述の既定範囲に含まれない値に設定される。
【0053】
以上のように、本実施形態においては、検出マーカーPmから取得されるパラメーターとしての傾きが得られる前に、非追い越し部Zim用の領域が解放される。本実施形態においては、検出マーカーPmを読み取ったデータに基づいて検出マーカーPmの位置を取得すると、それ以後、当該データを用いることはない。そこで、本実施形態においては、検出マーカーPmの位置が取得されると、パラメーターとしての印刷媒体Pの傾きが取得される前に、非追い越し部Zim用の領域が解放される構成となっている。この構成により、メモリー13-1が占有される期間を可能な限り短くすることができる。
【0054】
次に、メモリー管理部132は、傾きが既定範囲内か否か判定する(ステップS126)。本実施形態においては、傾きとして許容される範囲が既定範囲として予め定義されている。メモリー管理部132は、ステップS124で取得された傾きが当該既定範囲に含まれる場合に、調整パターンによる調整を実行可能と見なす。そこで、ステップS126において、傾きが既定範囲内であると判定されなかった場合、メモリー管理部132は、UI部15を制御し、エラーを出力させる(ステップS130)。UI部15においてエラーが表示された場合、ユーザーは、印刷媒体Pの位置を修正するなどして再度調整を行う。一方、ステップS126において、傾きが既定範囲内であると判定された場合、メモリー管理部132は、追い越し部の長さを前の追い越し部の長さに設定する(ステップS128)。すなわち、メモリー管理部132は、次の調整パターンPp1の読み取り等の処理で使用するため、追い越し部Zp1の長さを、前の追い越し部の長さに設定しなおす。
【0055】
(2-2)印刷装置の調整処理:
以上のように傾きが取得され、前の追い越し部の長さが設定されると、次の調整パターンPp1以後のパターンに基づいて印刷装置の調整が行われる。
図8,
図9は、印刷装置の調整処理を示すフローチャートである。印刷装置の調整処理が開始される状況においては、既に検出マーカーPmの読み取りが完了しており、調整パターンPp1の読み取りが行われている状況である。このため、この状況においては、これから読み取ろうとしてる調整パターンが調整パターンPp1であり、次の調整パターンが
図3に示す調整パターンPp2である。このように、本実施形態においては、センサー122の移動に応じて、これから読み取ろうとしている調整パターンと、次の調整パターンとが変化し得る。ここでは、これから読み取ろうとしてる調整パターンが調整パターンPp1であり、次の調整パターンが調整パターンPp2である状態を例示しながら説明を続ける。
【0056】
図8に示す印刷装置の調整処理が開始されると、メモリー管理部132は、次の調整パターンが存在するか否か判定する(ステップS200)。すなわち、メモリー管理部132は、これから読み取ろうとしている調整パターンより下端側に他の調整パターンが存在するか否かを判定する。調整パターンの配置は予め決められているため、既定の調整パターンの全てについて読み取りが行われていなければ、メモリー管理部132は、次の調整パターンが存在すると判定する。例えば、これから読み取ろうとしてる調整パターンが調整パターンPp1である場合、次の調整パターンPp2が存在すると判定する。
【0057】
ステップS200において、次の調整パターンが存在すると判定された場合、判定部135は、次の調整パターンの読み取り範囲を取得する(ステップS202)。上述の検出マーカーPmの読み取り範囲Zmと、調整パターンPp1の読み取り範囲Z1とは、予め決められた範囲であった。しかし、ステップS202においては、ステップS120,S124で取得した検出マーカーPmの位置、印刷媒体Pの傾きに基づいて、次の調整パターンPp2の読み取り範囲が取得される。具体的には、印刷媒体Pに印刷される調整パターンの位置、形状、大きさは予め特定されている。このため、検出マーカーPmと、次の調整パターンとの位置関係を特定することが可能である。本実施形態においては検出マーカーPmに基づいて判定される印刷媒体Pの傾きと調整パターンの傾きとは同一であるとみなされる。そして、検出マーカーPmが任意の位置であり、かつ、印刷媒体Pが任意の傾きである場合における、次の調整パターンの位置は予め特定されている。そこで、判定部135は、検出マーカーPmの位置、印刷媒体Pの傾きに基づいて、次の調整パターンの上端の位置から下端の位置までの範囲を読み取り範囲(副走査方向における座標値)を取得する。
図3,
図5においては、次の調整パターンPp2の読み取り範囲Z2を矢印によって示してある。これらの図に示されるように、次の調整パターンPp1よりも下端側に存在する調整パターンの読み取り範囲は、印刷媒体Pの傾きの大きさによって変化し得る。
【0058】
次の調整パターンPp2の読み取り範囲Z1が取得されると、判定部135は、次の調整パターンを読み取る際の追い越し部の長さを取得する(ステップS204)。追い越し部は、これから読み取ろうとしてる調整パターンPp1を読み取ったデータに基づく処理が完了する前に、次の調整パターンPp2の読み取りが開始する場合において、読み取られる調整パターンPp2の部分である。ここでも、傾きによる調整パターンの重複がある場合と、ない場合とについて説明する。なお、センサー122の受光素子が並ぶライン方向において同一ラインにおいて第1調整パターンと第2調整パターンとの双方が読み取られる場合、傾きによる調整パターンの重複が発生していると見なされる。
【0059】
図6においては、印刷媒体Pの傾きにより、調整パターンPp1の読み取り範囲Z1と調整パターンPp2の読み取り範囲Z2とが重複している場合の例を示している。
図6に示す例において、調整パターンPp1を読み取ったデータに基づく処理が行われている間にセンサー122が副走査方向に移動する範囲は、移動範囲A1である。このため、次の調整パターンPp2の読み取り範囲Z2の上端の位置から、移動範囲A1の下端までの範囲が追い越し部Zp2となる。
【0060】
図7においては、調整パターンPp1の読み取り範囲Z1と調整パターンPp2の読み取り範囲Z2とが重複していない場合の例を示している。
図7に示す例において、読み取り範囲Z1を読み取ったデータに基づく処理が行われている間にセンサー122が副走査方向に移動する移動範囲A1と、次の調整パターンPp2とが重複する範囲が、追い越し部Zp2となる。
【0061】
メモリー管理部132は、ステップS104と同様に、以下の式に基づいて、追い越し部Zp2の長さを取得する。
追い越し部Zp2の長さ=
移動範囲A1の長さ-(読み取り範囲Z2の上端位置-読み取り範囲Z1の下端位置)
移動範囲A1の長さは種々の手法で取得されて良く、例えば、調整パターンPp1を読み取ったデータに基づく処理が行われる時間長と、センサー122の移動速度とを予め特定しておき、当該時間長と移動速度の積によって算出可能である。但し、ここで、移動範囲A1は、調整パターンPp1を読み取ったデータに基づく処理が行われている間にセンサー122が移動する範囲以上になっていることが必要である。そこで、時間長や移動速度に所定のマージンが設けられており、調整パターンPp1を読み取ったデータに基づく処理が完了する前に、次の読み取りが開始されてしまうような状況が発生しないように考慮されている。読み取り範囲Z2の上端位置は、ステップS202で取得した読み取り範囲Z2の座標値に基づいて特定される。読み取り範囲Z1の下端位置は、これ以前の処理で取得済である。ここでも、追い越し部Zp2の長さが負の値として算出された場合には、メモリー管理部132は、追い越し部Zp2の長さを0とする。
【0062】
以上の処理において、(読み取り範囲Z2の上端位置-読み取り範囲Z1の下端位置)が負の値である場合、当該値の絶対値は調整パターンPp1の読み取り範囲Z1と調整パターンPp2の読み取り範囲Z2とが重複している重複量を示す。従って、判定部135は、当該重複量を判定し、メモリー管理部132は、当該重複量と移動範囲A1とに基づいて追い越し部Zp2の長さを取得していることになる。すなわち、メモリー管理部132は、重複量をセンサー122で読み取る場合に必要なデータ容量と、第1データに基づく処理開始から処理完了までの期間にセンサー122が移動する移動範囲A1を読み取る場合に必要なデータ容量と、を含む容量の追い越し部Zp2用の領域(後述する第2領域)を確保していることになる。
【0063】
移動範囲A1は、調整パターンPp1を読み取ったデータに基づく処理が行われる時間長と、センサー122の移動速度との積によって算出されるため、調整パターンPp1が決まれば予め特定可能な固定値となる。一方、重複量は、検出マーカーPmの読み取り結果に基づいて算出された第1調整パターンの傾き(印刷媒体Pの傾き)に基づいて判定される。傾きは、ユーザーが印刷媒体Pを載置する際の丁寧さ等に応じて変化し得るが、本実施形態においては、重複量に基づいて追い越し部Zp2の長さが取得されるため、追い越し部Zp2の長さを容易に取得することができる。
【0064】
一方、ステップS200において、次の調整パターンが存在すると判定されない場合、メモリー管理部132は、追い越しが発生しないとみなし、次の調整パターンPp2を読み取る際の追い越し部の長さを0に設定する(ステップS206)。
【0065】
ステップS204またはS206が実行されると、メモリー管理部132は、読み取り対象の調整パターンを読み取る際の非追い越し部の長さを取得する(ステップS208)。非追い越し部Zi1は、これから読み取ろうとしている調整パターンPp1の一部分または全部であり、追い越し部ではなく、かつ、まだ読み取りが行われていない部分である。そこで、メモリー管理部132は、以下の条件に応じた式に基づいて非追い越し部Zi1の長さを取得する。
条件1)読み取り範囲Z1の下端位置>読み取り範囲Z2の上端位置である場合
非追い越し部Zi1の長さ=
読み取り範囲Z2の上端位置-読み取り範囲Z1の上端位置-前の追い越し部Zp1の長さ
条件2)読み取り範囲Z1の下端位置≦読み取り範囲Z2の上端位置である場合
非追い越し部Zi1の長さ=
読み取り範囲Z1の下端位置-読み取り範囲Z1の上端位置-前の追い越し部Zp1の長さ
なお、条件1は、読み取り範囲Z1と読み取り範囲Z2が重複していることを示す条件であり、条件2は、読み取り範囲Z1と読み取り範囲Z2が重複していないことを示す条件である。
図6に示す例は条件1に該当するので、非追い越し部Zi1の長さは読み取り範囲Z1の中で、読み取り範囲Z1と重複していない部分の長さから、さらに、前の追い越し部Zp1の長さを減じた長さとなる。すなわち、前の追い越し部Zp1は既に読み取られているため、非追い越し部Zi1から除外される。
図7に示す例は条件2に該当するので、非追い越し部Zi1の長さは読み取り範囲Z1の長さから、さらに、前の追い越し部Zp1の長さを減じた長さとなる。前の追い越し部Zp1は既に読み取られているため、非追い越し部Zi1から除外される。
【0066】
次に、メモリー管理部132は、非追い越し部の長さが0より小さいか否かを判定する(ステップS210)。ステップS210において、非追い越し部の長さが0より小さいと判定された場合、メモリー管理部132は、追い越し部の長さを0に設定し、非追い越し部の長さを再計算する(ステップS212)。非追い越し部の長さが0より小さい状況は、例えば印刷媒体Pの傾きが大きすぎて3個の調整パターンが重複するような状況である。そこで、ステップS208では、後の処理でセンサー122の位置を戻す例外処理を実施できるように設定が行われる。すなわち、追い越し部の長さが0に設定される。これにより、後述するステップS242の処理が行われると、次のループにおいて前の追い越し部の長さが0に設定される。このため、次のループに際して、非追い越し部の読み取りが開始される前に、センサー122が非追い越し部の上端を超える。この結果、後述するステップS220の判定により、ステップS222以降が実行され、再度読み取りが行われる。非追い越し部の長さの再計算は、ステップS208の条件2)と同様の計算によって実施される。この計算によれば、調整パターンPp1の次の調整パターンPp2を連続して読み取ることは考慮されないが、少なくとも調整パターンPp1を読み取ることができるように非追い越し部Zi1が設定される。ステップS210において、非追い越し部の長さが0より小さいと判定されない場合、ステップS212はスキップされる。
【0067】
次に、メモリー管理部132は、メモリー13-1において、非追い越し部用の領域と、追い越し部用の領域を確保する(ステップS214)。すなわち、メモリー管理部132は、非追い越し部Zi1を読み取ったデータを書き込み可能であり、他のデータの書き込みが禁止される領域を確保し、非追い越し部Zi1用の領域とする。具体的には、メモリー管理部132は、1ライン分の読み取りを行う際に必要とされるデータ容量と、非追い越し部Zi1の長さと、の積によって非追い越し部Zi1用の領域のデータ容量を特定する。
【0068】
また、メモリー管理部132は、追い越し部Zp2を読み取ったデータを書き込み可能であり、他のデータの書き込みが禁止される領域を確保し、追い越し部Zp2用の領域とする。すなわち、メモリー管理部132は、1ライン分の読み取りを行う際に必要とされるデータ容量と、追い越し部Zp2の長さと、の積によって領域のデータ容量を特定し、当該データ容量の領域を確保する。なお、追い越し部Zp2の長さは、検出マーカーPmに基づいて算出された印刷媒体P、調整パターンの傾きに基づいて決定される。従って、追い越し部Zp2用の領域のデータ容量は、傾きに基づいて決定される。このため、印刷媒体Pの置き方によって変動し得る傾きに応じて動的に追い越し部Zp2用の領域のデータ容量を決定することができる。
【0069】
図6,
図7においては、非追い越し部Zi1用の領域および追い越し部Zp2用の領域が確保されている様子についても、センサー122の副走査方向の位置に対応付けて示されている。例えば、
図6に示す例において、非追い越し部Zi1用の領域は、センサー122が前の追い越し部Zp1の下端に達すると確保され、センサー122が追い越し部Zp2の下端に達すると解放される。
【0070】
次に、メモリー管理部132は、追い越し部用の領域が確保できたか否か判定する(ステップS216)。ステップS214においては、非追い越し部用の領域が優先的に確保され、残りの領域から追い越し部用の領域が確保される。本実施形態において、メモリー13-1の容量は過度に大きくないが、非追い越し部用の領域は確保可能であると想定されている。一方、調整パターンに基づく調整以外の処理など、各種の処理のために確保されている領域が多くなっていること等により、追い越し部用の領域が確保できない場合がある。そこで、本実施形態においては、ステップS216において、追い越し部用の領域が確保できたか否か判定される。
【0071】
ステップS216において、追い越し部用の領域が確保できたと判定されなかった場合、メモリー管理部132は、追い越し部の長さを0に設定する(ステップS218)。追い越し部の長さが実際に0である場合には、ステップS218において追い越し部の長さが0に設定されたとしても値が変化せず、以後の処理に影響を与えない。一方、追い越し部の長さが実際に0ではない場合に追い越し部の長さが0に設定されると、追い越し部の長さが0より大きいはずであるのに、0に設定された状態となる。この場合、後述するステップS242の処理が行われると、次のループにおいて前の追い越し部の長さが0に設定される。このため、次のループに際して、非追い越し部の読み取りが開始される前に、センサー122が非追い越し部の上端を超える。この結果、後述するステップS220の判定により、ステップS222以降が実行される。ステップS216において、追い越し部用の領域が確保できたと判定された場合、ステップS218はスキップされる。
【0072】
ステップS218が実行された場合、または、スキップされた場合、読取部133は、センサーが非追い越し部上端を超えたか否かを判定する(ステップS220)。すなわち、センサー122の位置が非追い越し部の読み取り開始位置である上端を超えている場合、センサー122の移動に処理が追いついていないと言える。このような状況は、例えば、調整パターンPp1を読み取ったデータに基づく処理に時間を要してしまったことにより、処理が完了する前に移動範囲A1を超えてセンサー122が移動した場合に発生し得る。また、当該状況は、上述のステップS112,S212,S218において、追い越し部の長さが0に設定されていた場合に発生し得る。追い越し部の長さが0に設定され、ステップS242において前の追い越し部の長さが0になると、次のループでステップS208が実行された場合に、非追い越し部の長さを算出する式の第3項が0になり、前の追い越し部の長さが減じられず、調整パターンの上端と非追い越し部の上端とが一致するからである。そこで、読取部133は、現在のセンサー122の位置と、非追い越し部上端の位置とを比較し、センサー122が非追い越し部上端を超えたか否かを判定する。
【0073】
ステップS220において、センサーが非追い越し部上端を超えたと判定された場合、メモリー管理部132は、確保済の領域を解放する(ステップS222)。すなわち、一旦センサー122を停止させ、一旦センサー122の位置を戻して再度読み込みを行うようにするために、確保済の領域を解放する。次に、読取部133は、前の追い越し部の長さを0に設定する(ステップS224)。すなわち、調整パターンPp1の読み取りから再開するため、調整パターンPp1より前の情報をクリアする。さらに、読取部133は、キャリッジ123をホームポジションHに移動させる(ステップS226)。すなわち、読取部133は、キャリッジ123を初期状態に戻す。なお、ここでは、読み取りが未完了の調整パターンの読み取りから再開できれば良いので、キャリッジ123を一旦戻し、加速して一定の速度担った後に読み取りが未完了の調整パターンに達するように、制御可能な位置まで戻す構成でもよい。
【0074】
一方、ステップS220において、センサーが非追い越し部上端を超えたと判定されない場合、読取部133は、非追い越し部の読み取りを行う(ステップS228)。すなわち、読取部133は、スキャン部12を制御し、センサー122が非追い越し部Zi1の上端に達したら、当該非追い越し部Zi1の読み取りを開始する。非追い越し部Zi1の読み取りが開始されると、読取部133は、センサー122によって読み取られたデータを順次メモリー13-1における非追い越し部Zi1用の領域に記録していく。
【0075】
次に、読取部133は、追い越し部の長さが0であるか否かを判定する(ステップS230)。すなわち、読取部133は、ステップS204で取得した追い越し部の長さが0であるか否か判定する。追い越し部の長さが0でない場合、読取部133は、非追い越し部の読み取りに続けて追い越し部の読み取りを行う(ステップS232)。すなわち、読取部133は、スキャン部12を制御し、センサー122が追い越し部Zp2の上端に達したら、当該追い越し部Zp2の読み取りを開始する。追い越し部Zp2の読み取りが開始されると、読取部133は、センサー122によって読み取られたデータを順次メモリー13-1における追い越し部Zp2用の領域に記録していく。
【0076】
なお、
図6に示すように、読み取り範囲Z1と読み取り範囲Z2とが重複している場合、追い越し部Zp2は、副走査方向において非追い越し部Zi1に連続して存在するため、センサー122による読み取りは連続して継続される。一方、
図7に示すように、読み取り範囲Z1と読み取り範囲Z2とが重複していない場合、追い越し部Zp2は、副走査方向において非追い越し部Zi1から離れて存在する。従って、センサー122による読み取りは、非追い越し部Zi1の読み取りが完了した後、データの読み取りが行われない状態でセンサー122の移動が継続される。そして、センサー122が追い越し部Zp2に達した場合に、センサー122による読み取りが再開される。いずれにしても、本実施形態において、センサー122はステップS228,S232の実行過程やそれ以後の読み取りに関し、エラー等の例外的な事象が発生しなければ一定の速度での移動を継続する。
【0077】
読み取り範囲Z1の下端まで読み取りが行われると、調整部134は、読み取られたデータから読み取り中の調整パターンPp1に関する情報を取得する(ステップS234)。すなわち、調整部134は、メモリー13-1を参照し、調整パターンPp1の四隅に含まれる二重円の形状等に基づいて、調整パターンPp1のデータを特定する。具体的には、調整部134は、調整パターンPp1を読み取った読取画像内の二重円の位置に基づいて、調整パターンPp1が存在する主走査方向及び副走査方向の位置を特定する。そして、調整部134は、当該二重円の位置に基づいて二重円に囲まれたパターンの画像を取得する。また、この際、調整部134は、パターンの画像に基づいて、調整パターンに関する情報、すなわち、印刷装置における調整パラメーターを取得するための値、例えば、Bi-Dずれの値等を取得する。
【0078】
次に、調整部134は、前の追い越し部用の領域および非追い越し部用の領域を解放する(ステップS236)。
図6,
図7においては、前の追い越し部Zp1用の領域および非追い越し部Zi1用の領域が解放される際のセンサー122の副走査方向における位置Pi2が図示されている。
【0079】
次に、調整部134は、印刷装置のパラメーターを取得し、調整する(ステップS238)。すなわち、調整部134は、ステップS234で取得した情報に基づいて、印刷装置の調整を行うためのパラメーターを算出する。例えば、Bi-Dずれの解消であれば、Bi-Dずれの各値に応じたインク吐出タイミングが予め特定されている。すなわち、ずれを解消するために必要なキャリッジ112の往路または復路の少なくとも一方におけるインク吐出タイミングが予め特定され、Bi-Dずれの値に対応付けられている。そこで、調整部134は、当該インク吐出タイミングでインクを吐出させるためのパラメーターを取得する。パラメーターが取得されると、調整部134は、以後、当該パラメーターで印刷装置が駆動されるように設定する。例えば、調整部134は、当該パラメーターを調整項目に対応付けて不揮発性メモリー14に記録する。この場合、印刷装置は、当該調整項目について、印刷の際に当該パラメーターを参照し、パラメーターに基づいて動作する。
【0080】
以上のように、本実施形態においては、調整パターンPp1から取得されるパラメーターが得られる前に、前の追い越し部Zp1用の領域および非追い越し部Zi1用の領域が解放される。本実施形態においては、調整パターンPp1を読み取ったデータに基づいて中間的な情報である調整パターンPp1に関する情報(ずれを示す値等)を取得すると、それ以後、当該データを用いることはない。そこで、本実施形態においては、調整パターンPp1に関する情報が取得されると、パラメーターが取得される前に、追い越し部Zp1用の領域および非追い越し部Zi1用の領域が解放される構成となっている。この構成により、メモリー13-1が占有される期間を可能な限り短くすることができる。むろん、これらの領域に記憶されたデータがパラメーターの取得まで必要であるならば、パラメーター取得後にこれらの領域が解放されて良い。
【0081】
次に、メモリー管理部132は、次の調整パターンが存在するか否か判定する(ステップS240)。すなわち、全ての調整パターンに基づくパラメーターの取得が完了していない場合、メモリー管理部132は、次の調整パターンが存在すると判定する。ステップS240において、次の調整パターンが存在すると判定された場合、メモリー管理部132は、追い越し部の長さを前の追い越し部の長さに設定する(ステップS242)。すなわち、メモリー管理部132は、次の調整パターンの読み取り等の処理で使用するため、追い越し部Zp1の長さを、前の追い越し部の長さに設定しなおす。この後、メモリー管理部132は、ステップS200以後の処理を繰り返す。例えば、
図3に示す例であれば、メモリー管理部132は、これから読み取ろうとしている調整パターンを調整パターンPp2とし、次の調整パターンを調整パターンPp3として、ステップS200以後の処理を繰り返す。ステップS240において、次の調整パターンが存在すると判定されない場合、印刷装置の調整処理が終了する。
【0082】
以上の構成によれば、連続する2個の調整パターンの全てを読み取るために必要なデータ容量の領域をメモリー13-1において確保する必要はない。例えば、
図6に示す例において、検出マーカーPmと調整パターンPp1との読み取りに関して同時に確保されているデータ容量は、最大でCmaxである。これに対して、連続する2個の調整パターンの全てを読み取るために必要なデータ容量はCmax+Ci1である。従って、本実施形態によれば、調整パターンを読み取るためのバッファーの容量が過大にならないようにすることができる。
【0083】
以上の実施形態は、副走査方向に連続した複数の調整パターンの読み取りにおいて、連続する任意の2個の調整パターンの読み取りに際して、2個分の調整パターンを確保する必要がない。そして、連続する2個の調整パターンを第1の調整パターン、第2の調整パターンと見なせば、連続する任意の2個の調整パターンについて、複合機10が請求項の読取装置として機能していると見なすことができる。
【0084】
例えば、検出マーカーPmとその次の調整パターンPp1とに関し、検出マーカーPmを第1調整パターン、次の調整パターンPp1を第2調整パターンとみなすことを想定する。この場合、複合機10が
図4,
図8,
図9に示す処理を行うことで、印刷媒体Pに印刷された第1調整パターン及び第2調整パターンを順次読み取ってパラメーターを調整する読取装置として機能すると言える。具体的には、読取部133は、検出マーカーPmと、次の調整パターンPp1と、を順次読み取り、読み取ったデータをメモリー13-1に記憶させる。従って、読取部133は、第1調整パターンを読み取った第1データと第2調整パターンを読み取った第2データとを順次メモリーに記憶させる処理を行うことになる。
【0085】
また、調整部134は、検出マーカーPmを読み取ったデータに基づいて、検出マーカーPmの位置を取得し、パラメーターである傾きを取得して、傾きに応じた読み取り範囲となるように調整する。さらに、センサー122は順次移動していき、次の調整パターンPp1を読み取ると、調整パターンPp1を読み取ったデータに基づいて、調整パターンPp1に関する情報を取得し、印刷装置のパラメーターを取得して、当該パラメーターで動作するように印刷装置を調整する。従って、調整部134は、第1データと第2データとを順次メモリーから読み出して、第1調整パターンに基づくパラメーターの調整と第2調整パターンに基づくパラメーターの調整とを順次実行する。
【0086】
図10,
図11は、
図6,
図7から第1調整パターンおよび第2調整パターンに関連する事項を抜き出した図であり、第2領域等が明示してある。メモリー管理部132は、ステップS108において、追い越し部Zp1用の領域を確保するが、当該追い越し部Zp1用の領域には、第2調整パターンとしての調整パターンPp1を読み取った情報が記録される。そして、当該追い越し部Zp1用の領域は、調整パターンPp1の読み取り範囲Z1にセンサー122が達する前に確保される。また、追い越し部Zp1用の領域は、調整パターンPp1を読み取った第2データに基づく処理が完了すると解放される。従って、メモリー管理部132は、第2調整パターンの読み取り開始前から第2データに基づく処理完了まで第2データの一部を記憶する第2領域を確保していると言える。
【0087】
さらに、メモリー管理部132は、ステップS108において、非追い越し部用の領域を確保するが、当該非追い越し部Zim用の領域には、第1調整パターンとしての検出マーカーPmを読み取った情報が記録される。そして、当該非追い越し部Zim用の領域は、検出マーカーPmを読み取ったデータに基づく処理が完了すると、ステップS122において解放される。従って、メモリー管理部132は、第1データに基づく処理完了後に、第1データを記憶していた第1領域を解放していると言える。
【0088】
但し、第1領域に記憶される第1データは、第1調整パターンとしての検出マーカーPmを読み取ったデータの全てではない場合がある。具体的には、第1調整パターンと第2調整パターンとが重複している場合、第1領域には、第1調整パターンと第2調整パターンとが重複している部分を読み取ることで得られる第1データは記憶されない。当該重複している部分を読み取ることで得られるデータには第1データの一部と第2データの一部とが含まれ、これらのデータは第2領域に記憶されるからである。
図10は重複が発生している場合の例であるため、第1領域である非追い越し部Zi1用の領域に、第1データの全ては記憶されない。このため、第1データに基づく処理完了後に、第1データを記憶していた第1領域が解放されても、第2領域に含まれる第1データは記憶された状態が維持される。
【0089】
さらに、メモリー管理部132は、ステップS214において、非追い越し部Zi1用の領域および追い越し部Zp2用の領域を確保する。検出マーカーPmと調整パターンPp1とが重複している場合には、非追い越し部Zi1用の領域および追い越し部Zp2用の領域に第2調整パターンとしての調整パターンPp1を読み取った第2データが記録される。従って、
図10に示されるように、非追い越し部Zi1用の領域および追い越し部Zp2用の領域が第3領域であると見なせば、第2データに基づく処理完了まで第2データの残部を記憶する第3領域を確保していると言える。但し、この場合、第2調整パターンを読み取った第2データに基づく処理の完了に伴って解放される第3領域は、第3領域の全てではなく、一部である非追い越し部Zi1用の領域のみである。すなわち、追い越し部Zp2用の領域には、第2調整パターンを読み取った第2データに加え、次の調整パターンPp2を読み取ったデータも含まれる。当該データは、次の調整パターンPp2を読み取ったデータに基づく処理に用いられるため、当該処理が完了するまで解放されない。
【0090】
一方、第1調整パターンと第2調整パターンとが重複していない場合、第1領域には、第1調整パターンを読み取ることで得られる第1データの全てが記憶される。
図11は、重複が発生していない場合の例であり、この例において、第1領域としての非追い越し部Zim用の領域には、第1調整パターンとしての検出マーカーPmを読み取った第1データの全てが記憶される。そして、この例においては、第1データに基づく処理完了後に、第1データを記憶していた第1領域が解放されると、第1データが記憶されていない状態になる。
【0091】
検出マーカーPmと調整パターンPp1とが重複していない場合には、非追い越し部Zi1用の領域に第2調整パターンとしての調整パターンPp1を読み取った第2データが記録される。追い越し部Zp2用の領域に第2データは記録されない。従って、非追い越し部用の領域が第3領域であると見なせば、第2データに基づく処理完了まで第2データの残部を記憶する第3領域を確保していると言える。この場合、第2調整パターンを読み取った第2データに基づく処理の完了に伴って第3領域の全てが解放される。
【0092】
さらに、調整パターンPp1とその次の調整パターンPp2とに関し、調整パターンPp1を第1調整パターン、次の調整パターンPp2を第2調整パターンとみなすことを想定することも可能である。この場合、複合機10が
図8,
図9に示す処理を行うことで、印刷媒体Pに印刷された第1調整パターン及び第2調整パターンを順次読み取ってパラメーターを調整する読取装置として機能すると言える。具体的には、読取部133は、調整パターンPp1と、次の調整パターンPp2と、を順次読み取り、読み取ったデータをメモリー13-1に記憶させる。従って、読取部133は、第1調整パターンを読み取った第1データと第2調整パターンを読み取った第2データとを順次メモリーに記憶させる処理を行うことになる。
【0093】
また、調整部134は、調整パターンPp1を読み取った第1データに基づいて、印刷装置のパラメーター取得し、当該パラメーターが適用されるように印刷装置を調整する。さらに、センサー122は順次移動していき、次の調整パターンPp2を読み取ると、調整パターンPp2を読み取った第2データに基づいて、印刷装置のパラメーター取得し、当該パラメーターが適用されるように印刷装置を調整する。従って、調整部134は、第1データと第2データとを順次メモリーから読み出して、第1調整パターンに基づくパラメーターの調整と第2調整パターンに基づくパラメーターの調整とを順次実行する。
【0094】
図12,
図13は、
図6,
図7から第1調整パターンおよび第2調整パターンに関連する事項を抜き出した図であり、第2領域等が明示してある。メモリー管理部132は、ステップS214において、追い越し部Zp2用の領域を確保するが、当該追い越し部Zp2用の領域には、第2調整パターンとしての調整パターンPp2を読み取った情報が記録される。そして、当該追い越し部Zp2用の領域は、調整パターンPp2の読み取り範囲Z2にセンサー122が達する前に確保される。また、追い越し部Zp2用の領域は、調整パターンPp2を読み取った第2データに基づく処理が完了すると解放される。従って、メモリー管理部132は、第2調整パターンの読み取り開始前から第2データに基づく処理完了まで第2データの一部を記憶する第2領域を確保していると言える。
【0095】
さらに、メモリー管理部132は、ステップS214において、非追い越し部Zi1用の領域を確保するが、当該非追い越し部Zi1用の領域と前の追い越し部Zp1用の領域とには、第1調整パターンとしての調整パターンPp1を読み取った情報が記録される。そして、当該非追い越し部Zi1用の領域と当該前の追い越し部Zp1用の領域は、調整パターンPp1を読み取ったデータに基づく処理が完了すると、ステップS236において解放される。従って、非追い越し部Zi1用の領域と前の追い越し部Zp1用の領域とが第1領域であると見なすと、メモリー管理部132は、第1データに基づく処理完了後に、第1データを記憶していた第1領域を解放していると言える。
【0096】
但し、ここでも、第1領域に記憶される第1データは、第1調整パターンとしての調整パターンPp1を読み取ったデータの全てではない場合がある。具体的には、第1調整パターンと第2調整パターンとが重複している場合、第1領域には、第1調整パターンと第2調整パターンとが重複している部分を読み取ることで得られる第1データは記憶されない。当該重複している部分を読み取ることで得られるデータには第1データの一部と第2データの一部とが含まれ、これらのデータは第2領域に記憶されるからである。
図12は重複が発生している場合の例であるため、第1領域である、非追い越し部Zi1用の領域と前の追い越し部Zp1用の領域とに、第1データの全ては記憶されない。このため、第1データに基づく処理完了後に、第1データを記憶していた第1領域が解放されても、第2領域に含まれる第1データは記憶された状態が維持される。
【0097】
さらに、メモリー管理部132は、一旦、
図9に示す処理を実行し、S242を経てステップS200以降を実行した際に、ステップS214において、非追い越し部Zi2用の領域および追い越し部Zp3用の領域を確保する。調整パターンPp2と調整パターンPp3とが重複している場合には、非追い越し部Zi2用の領域および追い越し部Zp3用の領域に第2調整パターンとしての調整パターンPp2を読み取った第2データが記録される。従って、
図12に示されるように、非追い越し部Zi2用の領域および追い越し部Zp3用の領域が第3領域であると見なせば、第2データに基づく処理完了まで第2データの残部を記憶する第3領域を確保していると言える。但し、この場合、第2調整パターンを読み取った第2データに基づく処理の完了に伴って解放される第3領域は、第3領域の全てではなく、一部である非追い越し部Zi2用の領域のみである。すなわち、追い越し部Zp3用の領域には、第2調整パターンを読み取った第2データに加え、次の調整パターンPp3を読み取ったデータも含まれる。当該データは、次の調整パターンPp3を読み取ったデータに基づく処理に用いられるため、当該処理が完了するまで解放されない。
【0098】
一方、第1調整パターンと第2調整パターンとが重複していない場合、第1領域には、第1調整パターンを読み取ることで得られる第1データの全てが記憶される。
図13は、重複が発生していない場合の例であり、この例において、第1領域としての非追い越し部Zi1用の領域と前の追い越し部Zp1用の領域とには、第1調整パターンとしての調整パターンPp1を読み取った第1データの全てが記憶される。そして、この例においては、第1データに基づく処理完了後に、第1データを記憶していた第1領域が解放されると、第1データが記憶されていない状態になる。
【0099】
調整パターンPp1と調整パターンPp2とが重複していない場合には、非追い越し部Zi2用の領域に第2調整パターンとしての調整パターンPp2を読み取った第2データが記録される。追い越し部Zp3用の領域に第2データは記録されない。従って、非追い越し部用の領域が第3領域であると見なせば、第2データに基づく処理完了まで第2データの残部を記憶する第3領域を確保していると言える。この場合、第2調整パターンを読み取った第2データに基づく処理の完了に伴って第3領域の全てが解放される。
【0100】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。読取装置は、印刷媒体に印刷された第1調整パターン及び第2調整パターンを順次読み取って印刷媒体に印刷を行った印刷装置のパラメーターを調整することができればよい。従って、読取装置は、印刷装置と一体でなくてもよい。例えば、印刷装置によって印刷媒体に調整パターンを印刷し、当該印刷装置と別体の読取装置によって当該印刷媒体を読み取っても良い。この場合、読取装置から、印刷装置に対して、パラメーターを送信するなどして、印刷装置が当該パラメーターを用いて印刷可能になれば良い。
【0101】
第1調整パターンと、第2調整パターンとは、パラメーターを特定するためのパターンであり、この順序で印刷媒体に並べて印刷される。すなわち、並べて印刷された調整パターンのうち、先に読み取られる調整パターンが第1調整パターン、次に読み取られる調整パターンが第2調整パターンである。各調整パターンの態様は任意であり、各種の色、形状、大きさ、解像度でパターンが構成されて良い。例えば、傾きを検出するための検出マーカーPmは第1調整パターンに含まれていても良い。
図3に示す例であれば、検出マーカーPmが省略され、第1調整パターンPp1等の四隅に存在する二重円のマーカーが、印刷媒体や調整パターンにおける傾きを検出するための検出マーカーとして使用されても良い。同一の印刷媒体に印刷される調整パターンの数は2個以上であれば良い。3個以上の調整パターンが印刷される場合、3番目以降の第N調整パターン(Nは3以上の整数)は、第2調整パターンと同様に、第N調整パターンの読み取り開始前から第N調整パターンのデータに基づく処理完了まで第N調整パターンの一部を記憶する領域を確保し、第N-1調整パターンの処理完了後から第N調整パターンに基づく処理完了まで第N調整パターンの残部を記憶する領域を確保する構成であれば良い。
【0102】
パラメーターは、印刷装置のパラメーターであっても良いし、他のパラメーター、例えば、各種の演算に用いられるパラメーターであっても良い。印刷装置のパラメーターは、印刷装置において印刷内容を変化させ得る要素であり、印刷装置の機構の調整を行うためのパラメーターであっても良いし、画像処理などの演算処理を行うためのパラメーターであっても良い。各種の演算に用いられるパラメーターは、例えば、上述の実施形態において傾きや重複量を示す値である。
【0103】
メモリー管理部は、メモリーを管理することができればよい。すなわち、メモリーにデータを記憶可能な領域の一部を、特定の処理で使用されるべき領域として確保し、また、特定の処理が完了した場合に他の処理で使用可能な領域として解放する処理を行うことができればよい。特定の処理用に特定の領域が確保されている場合、メモリー管理部は、特定の処理に用いるデータのみを当該特定の領域に書き込み可能にし、他の処理に用いるデータを当該特定の領域に書き込み禁止にする。また、特定の処理が完了した場合、メモリー管理部は、当該特定の領域に対して他の処理に用いるデータを書き込み可能にする。解放された領域は、他の特定の処理のために確保されても良いし、任意の処理に用いるデータを書き込み可能であっても良い。
【0104】
さらに、メモリー管理部は、連続する第1調整パターンおよび第2調整パターンの読み取りを行うために、各調整パターン用に複数の領域を確保し、また、解放する。具体的には、メモリー管理部は、第1調整パターンを記憶可能な第1領域を確保する。第1領域は、第1調整パターンを読み取った第1データに基づく処理が完了すると解放される。第1領域は分割され、複数回に亘って確保や解放が行われてもよい。なお、第1データに基づく処理は、少なくとも、第1データを利用した処理であればよく、パラメーターを取得するための処理の全てでなくても良い。例えば、第1データに基づく処理によってパターンの位置を取得し、当該位置に基づいてパラメーターが取得される場合において、パターンの位置が取得された後に第1領域を解放可能であれば、解放されて良い。この場合、第1データに基づく処理は、パターンの位置を取得する処理であり、位置に基づいてパラメーターが取得される処理は、第1データに基づく処理に含まれないと見なされても良い。また、第1データが不要になった場合に、即座に領域を解放する必要がないならば、パラメーターを取得する処理が完了した後に第1領域が解放されても良い。
【0105】
一方、第2調整パターンについて、メモリー管理部は、第2調整パターンの読み取りの初期に第2データの一部を記憶可能な第2領域を確保する。当該第2領域は、第2調整パターンの読み取り開始初期において第1調整パターンを読み取った第1データに基づく処理が完了していない期間にもセンサーによる読み取りを継続できるように確保される。すなわち、第1調整パターンを読み取って第1データが得られると、第1データに基づく処理が行われる。この処理が完了していなければ、第1領域を解放できない。
【0106】
一方、当該第1データに基づく処理が行われている期間においても、センサーによる読み取りを継続する場合、第1データに基づく処理の完了前に第2調整パターンの読み取りが開始され得る。第2調整パターンの読み取りが開始される前には、第2データを記憶するための第2領域が確保される。但し、第1データに基づく処理が、第2調整パターンの全てを読み取るまで継続することはないため、第2領域は、第2データの一部を記憶可能な領域で充分である。そして、第1データに基づく処理完了後に第2調整パターンの残部を記憶可能な第3領域を確保する構成とすれば、第2調整パターンの読み取り開始前に、第1調整パターンと第2調整パターンとの全てを記憶可能な領域を確保しなくても良い。
【0107】
メモリー管理部は、以上の効果が得られるように第2領域および第3領域のデータ容量と、確保および解放の制御を実行することができればよい。従って、第2領域の容量は、第1調整パターンの読み取り結果を示す第1データに基づく処理を実施する必要がある期間において、読み取られる第2調整パターンを記憶可能な容量であれば良い。当該容量は、第2調整パターンの全てを記憶するために必要な容量より少ない。むろん、既定のマージンを設けて第2領域の容量が決められていても良い。また、第1領域の解放と第3領域の確保とのタイミングは、同時であってもよいが異なってもよい。第1領域の解放から時間を空けて第3領域の確保を行ってもよい。
【0108】
第1領域には第1調整パターンの読み取り結果を示す第1データが記憶されるが、第1領域には第1データの全てが記憶されても良いし、一部が記憶されなくても良い。後者の場合、第1データの一部は第2領域に記憶される。すなわち、傾きによって第1調整パターンと第2調整パターンとが重複する場合、第2領域に第1データの一部が記憶される。第1調整パターンと第2調整パターンとが重複していない場合、第2領域に第1データは記憶されず、第1領域に第1データの全てが記憶される。
【0109】
第2領域と第3領域を合わせた領域には第2調整パターンの読み取り結果を示す第2データが記憶される。この場合においても、第2調整パターンの次にさらに調整パターンが存在するのであれば、第2調整パターンの読み取り結果を示す第2データの全てが第2領域および第3領域に記憶されても良いし、一部が記憶されなくても良い。
【0110】
読取部は、第1調整パターンを読み取った第1データと第2調整パターンを読み取った第2データとを順次メモリーに記憶させることができればよい。すなわち、読取部は、読取装置が備えるセンサーによって印刷媒体を順次スキャンし、第1調整パターンを読み取った後に第2調整パターンを読み取る。読取装置の異常などの例外的な事象が発生しなければ、読取装置においては、既定の手順でセンサーを移動させ、既定の手順と異なる待機を行うことなく、順次読み取りを行う。
【0111】
センサーの態様は限定されず、上述の実施形態のようなラインセンサーを一方向に移動させる方式以外にも、種々の方式を採用可能である。例えば、ライン方向とラインに垂直な方向とのいずれにおいてもスキャンを行うセンサーであっても良い。また、センサーと印刷媒体とは互いに相対的に移動すれば良く、センサーが移動せず、印刷媒体が移動する方式であっても良い。
【0112】
調整部は、第1データと第2データとを順次メモリーから読み出して、第1調整パターンに基づくパラメーターの調整と第2調整パターンに基づくパラメーターの調整とを順次実行することができればよい。すなわち、調整部は、読み取り結果に基づいてパラメーターの調整を行うことができればよい。また、調整部は、パラメーターの調整も順次実行する。すなわち、調整部は、センサーの読み取りと並行して調整パターンに基づくパラメーターの取得や、当該パラメーターによる印刷装置の調整を各調整パターンについて順番に実行していく。
【0113】
パラメーターは、調整パターンの読み取り結果から特定されれば良い。例えば、印刷装置の機構の調整を行うためのパラメーターであれば、調整パターンに基づいて、機構の状態が特定され、機構の状態を理想状態に近づけるためのパラメーターが特定される。画像処理などの演算処理を行うためのパラメーターであれば、調整パターンに基づいて、予定された記録材の位置や色の状態が特定され、これらの状態を理想状態に近づけるためのパラメーターが特定される。パラメーターが特定されると、印刷装置において当該パラメーターが記録され、当該パラメーターによって次回以降の印刷が行われる。印刷媒体の傾きや重複量を示すパラメーターであれば、調整パターンが読み取られた位置等に基づいて特定される。
【0114】
検出マーカーは種々の態様であって良い。従って、形状、大きさ、数等は上述の実施形態における態様に限定されない。また、検出マーカーの用途も限定されず、調整パターンの位置や傾きを検出する用途以外にも、種々の用途で用いられて良い。例えば、調整パターンの種類や大きさ等を特定するために用いられても良い。
【0115】
さらに、第1領域~第3領域は、それぞれ別の領域であり、各領域に記憶すべきデータの読み取りが行われる前に確保され、当該データに基づく処理が完了した後に解放されればよい。このため、各領域を確保し、または、解放するタイミングは、上述の実施形態に限定されない。例えば、第2領域に該当する追い越し部用の領域を確保するタイミングは、追い越し部の読み取りが行われる直前であっても良い。
図14および
図15は、追い越し部の読み取りが行われる直前に追い越し部用の領域が確保される例を示している。この構成であれば、第2領域である追い越し部用の領域が確保され続ける期間が上述の実施形態と比較して短くなるため、メモリー13-1の領域をより効率的に使用することができる。
【0116】
さらに、本発明は、コンピューターが実行するプログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置が備える部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録印刷媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録印刷媒体は、磁気記録印刷媒体であってもよいし半導体メモリーであってもよいし、今後開発されるいかなる記録印刷媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0117】
10…複合機、11…印刷部、12…スキャン部、12-1…ガラス面、12-2…印刷媒体台、13…プロセッサー、13-1…メモリー、14…不揮発性メモリー、15…UI部、16…通信部、111…印刷ヘッド、112…キャリッジ、113…搬送機構、121…光源、122…センサー、123…キャリッジ、130…調整プログラム、131…印刷制御部、132…メモリー管理部、133…読取部、134…調整部、135…判定部、P…印刷媒体、Pm…検出マーカー、Pp1~Pp5…調整パターン