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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142784
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   A01B 63/08 20060101AFI20241003BHJP
   A01B 59/043 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A01B63/08
A01B59/043 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055103
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】石田 陽大
(72)【発明者】
【氏名】後野 剛志
(72)【発明者】
【氏名】中野 翔太
(72)【発明者】
【氏名】坂井 達也
【テーマコード(参考)】
2B041
2B304
【Fターム(参考)】
2B041AA08
2B041AB05
2B041AC03
2B041CA03
2B041CA16
2B041CC24
2B041HA02
2B041HA16
2B041HA25
2B304KA08
2B304LA02
2B304LA06
2B304LB05
2B304LB15
2B304LC03
2B304MA01
2B304MA02
2B304MA18
2B304MB03
2B304MC13
2B304PA01
2B304QA04
2B304QA12
2B304QA15
2B304QB30
2B304QC02
2B304QC14
2B304RA01
2B304RA27
(57)【要約】
【課題】操縦者の操作を容易なものにすることができるとともに、運転座席周りのスイッチ等の数の増加を抑えることができる作業車を提供する。
【解決手段】走行機体と、走行機体に昇降可能に支持され、圃場に対する作業を行う圃場作業装置と、圃場作業装置を、作業状態と非作業状態とに亘って状態変更可能な状態変更部と、走行機体の走行状態を検出する走行検出部と、走行検出部が往復走行から旋回走行への移行を検出したとき、状態変更部に対して圃場作業装置を非作業状態に変更する変更制御を行う非作業状態切替制御部と、走行検出部が旋回走行から往復走行への移行を検出したとき、状態変更部に対して圃場作業装置を作業状態に変更する変更制御を行う作業状態切替制御部と、非作業状態切替制御部と作業状態切替制御部とを、単一の操作装置18で有効状態と無効状態とに操作可能に構成されている操作部Sと、が備えられている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回走行を挟んで往復走行を繰り返すことにより圃場内を作業走行する作業車であって、
走行機体と、
前記走行機体に昇降可能に支持され、圃場に対する作業を行う圃場作業装置と、
前記圃場作業装置を、作業状態と非作業状態とに亘って状態変更可能な状態変更部と、
前記走行機体の走行状態を検出する走行検出部と、
前記走行検出部が前記往復走行から前記旋回走行への移行を検出したとき、前記状態変更部に対して前記圃場作業装置を前記非作業状態に変更する変更制御を行う非作業状態切替制御部と、
前記走行検出部が前記旋回走行から前記往復走行への移行を検出したとき、前記状態変更部に対して前記圃場作業装置を前記作業状態に変更する変更制御を行う作業状態切替制御部と、
前記非作業状態切替制御部と前記作業状態切替制御部とを、単一の操作装置で有効状態と無効状態とに操作可能に構成されている操作部と、が備えられている作業車。
【請求項2】
前記走行機体に設けられた操向車輪と、
前記走行機体の走行速度を検出する車速取得部と、
前記操向車輪の操向切れ角を検出する操向取得部と、
前記走行機体のホイールベースと前記車速取得部が検出した走行速度と前記操向取得部が検出した前記操向車輪の操向切れ角とに基づいて、前記旋回走行において前記走行機体が旋回した角度を旋回角度として算出する旋回角度算出部と、が備えられ、
前記走行検出部は、算出された前記旋回角度が所定の範囲内、かつ、前記操向取得部が検出した操向切れ角が所定の閾値未満であるとき、前記旋回走行から前記往復走行への移行を検出する請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記走行機体に設けられた操向車輪と、
前記走行機体の走行速度を検出する車速取得部と、
前記操向車輪の操向切れ角を検出する操向取得部と、
前記旋回走行の直前の進行方向を基準方向とし、前記走行機体のホイールベースと前記車速取得部が検出した走行速度と前記操向取得部が検出した前記操向車輪の操向切れ角とに基づいて、前記旋回走行において前記走行機体が前記基準方向に沿って変位した量である変位量を算出する変位量算出部と、が備えられ、
前記走行検出部は、算出された前記変位量が0未満となったとき、前記旋回走行から前記往復走行への移行を検出する請求項1に記載の作業車。
【請求項4】
前記状態変更部は、人為操作により前記圃場作業装置を前記作業状態と前記非作業状態とに亘って状態変更操作する状態変更操作具を有し、
前記状態変更操作具による前記圃場作業装置を前記非作業状態へ状態変更させるための前記状態変更操作が行われたとき、前記作業状態切替制御部は前記変更制御を一時的に停止する請求項1に記載の作業車。
【請求項5】
所定時間継続して前記非作業状態へ変更させるための前記状態変更操作が行われたとき、前記作業状態切替制御部は前記変更制御を中止する請求項4に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の後端に作業装置を昇降可能に備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタを例に挙げると、特許文献1には、ステアリングハンドルが大きく切られたとき作業装置が自動的に上昇するトラクタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-134332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなトラクタは、作業装置が自動的に上昇する機能だけでなく、例えば、作業装置が自動的に下降する機能が備えられていることがある。機能ごとにスイッチ等が配置されると、スイッチの数が多くなり、操縦者の操作作業が複雑なものとなるという不都合が生じていた。また、このような機能が増えるごとに、スイッチ等を増やす必要があり、運転座席周りのスイッチ等の配置が複雑なものになっていた。
【0005】
本発明の目的は、操縦者の操作を容易なものにすることができるとともに、スイッチ等の数の増加を抑えることができる作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業車は、旋回走行を挟んで往復走行を繰り返すことにより圃場内を作業走行する作業車であって、走行機体と、前記走行機体に昇降可能に支持され、圃場に対する作業を行う圃場作業装置と、前記圃場作業装置を、作業状態と非作業状態とに亘って状態変更可能な状態変更部と、前記走行機体の走行状態を検出する走行検出部と、前記走行検出部が前記往復走行から前記旋回走行への移行を検出したとき、前記状態変更部に対して前記圃場作業装置を前記非作業状態に変更する変更制御を行う非作業状態切替制御部と、前記走行検出部が前記旋回走行から前記往復走行への移行を検出したとき、前記状態変更部に対して前記圃場作業装置を前記作業状態に変更する変更制御を行う作業状態切替制御部と、前記非作業状態切替制御部と前記作業状態切替制御部とを、単一の操作装置で有効状態と無効状態とに操作可能に構成されている操作部と、が備えられている。
【0007】
この発明によれば、非作業状態切替制御部及び作業状態切替制御部をそれぞれ有効状態と無効状態とに操作するための操作装置が、単一の操作装置で構成されていることから、操縦者は、この操作装置のみを操作すればよく、操縦者の操作作業を容易なものにすることができる。
【0008】
本発明においては、前記走行機体に設けられた操向車輪と、前記走行機体の走行速度を検出する車速取得部と、前記操向車輪の操向切れ角を検出する操向取得部と、前記走行機体のホイールベースと前記車速取得部が検出した走行速度と前記操向取得部が検出した前記操向車輪の操向切れ角とに基づいて、前記旋回走行において前記走行機体が旋回した角度を旋回角度として算出する旋回角度算出部と、が備えられ、前記走行検出部は、算出された前記旋回角度が所定の範囲内、かつ、前記操向取得部が検出した操向切れ角が所定の閾値未満であるとき、前記旋回走行から前記往復走行への移行を検出すると好適である。
【0009】
この構成によれば、旋回走行から往復走行への移行を検出する際には、走行速度の表示等において使用されている走行速度や操向車輪の操向切れ角の検出結果を用いて算出することが可能となる。その結果、多数のセンサ等の装置を使用することなく旋回走行から往復走行への移行を検出することができるため、コストの軽減を図ることが可能となる。
【0010】
本発明においては、前記走行機体に設けられた操向車輪と、前記走行機体の走行速度を検出する車速取得部と、前記操向車輪の操向切れ角を検出する操向取得部と、前記旋回走行の直前の進行方向を基準方向とし、前記走行機体のホイールベースと前記車速取得部が検出した走行速度と前記操向取得部が検出した前記操向車輪の操向切れ角とに基づいて、前記旋回走行において前記走行機体が前記基準方向に沿って変位した量である変位量を算出する変位量算出部と、が備えられ、前記走行検出部は、算出された前記変位量が0未満となったとき、前記旋回走行から前記往復走行への移行を検出すると好適である。
【0011】
この構成によれば、旋回走行から往復走行への移行を検出する際には、走行速度の表示等において使用されている走行速度や操向車輪の操向切れ角の検出結果を用いて算出することが可能となる。その結果、多数のセンサ等の装置を使用することなく旋回走行から往復走行への移行を検出することができるため、コストの軽減を図ることが可能となる。
【0012】
本発明においては、前記状態変更部は、人為操作により前記圃場作業装置を前記作業状態と前記非作業状態とに亘って状態変更操作する状態変更操作具を有し、前記状態変更操作具による前記圃場作業装置を前記非作業状態へ状態変更させるための前記状態変更操作が行われたとき、前記作業状態切替制御部は前記変更制御を一時的に停止すると好適である。
【0013】
この構成によれば、作業状態へ移行する変更制御を一時的に停止するとき、操縦者は、状態変更操作具を用いて状態変更操作を行う。その結果、操作具を増やすことなく、変更制御を一時的に停止することが可能となるため、部材数を減らすことが可能となる。
【0014】
本発明においては、所定時間継続して前記非作業状態へ変更させるための前記状態変更操作が行われたとき、前記作業状態切替制御部は前記変更制御を中止すると好適である。
【0015】
この構成によれば、作業状態へ移行する変更制御を中止するとき、操縦者は、状態変更操作具を用いた状態変更操作を所定時間継続して行う。その結果、操作具を増やすことなく、変更制御を中止することが可能となるため、部材数を減らすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】トラクタの側面図である。
図2】トラクタの平面図である。
図3】切換レバーと強制昇降レバーとステアリングホイールとの平面図である。
図4】制御構成のブロック線図である。
図5】変更制御のフローチャートである。
図6】操作部の構成を示す図である。
図7】モードスイッチ押下時の第1照明装置及び第2照明装置の点灯状態の変化の遷移を示す図である。
図8】トラクタの往復走行と旋回走行とを模式的に示す説明図である。
図9】別実施形態におけるトラクタの往復走行と旋回走行とを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1及び図2に示すように、トラクタA(作業車の一例)は、走行機体1と、走行機体1の前部左右に操向車輪としての前車輪2と、走行機体1の後部左右に後車輪3と、走行機体1の後部で左右の後輪フェンダー4と、左右の後輪フェンダー4の中間に配置された運転座席5を備える。
【0018】
走行機体1には、前車輪2の操向切れ角を検出する操向センサ2Sが備えられている。
【0019】
このトラクタAは、走行機体1の前方向をAFとし、後方向をABとし、上方向をAUとし、下方向をADとして図中に示している。また、走行機体1の左方向をALとし、右方向をARとして図中に示している。
【0020】
このトラクタAは、図8に示すように、旋回走行Ttを挟んで往復走行Rtを繰り返すことにより圃場内を作業走行する。
【0021】
図1及び図2に示すように、トラクタAは、走行機体1の前部のボンネット6の内部にエンジンEを収容している。このエンジンEの後端に連結するミッションケース7は、静油圧式の無段変速装置Tを備えている。
【0022】
トラクタAは、ミッションケース7の後端の上部位置に左右一対に設けられ、リフトアーム8を備えている。左右のリフトアーム8は、基端が横向き(AR-ALの方向)の軸体を介してミッションケース7に揺動可能に支持されている。
【0023】
リフトアーム8には、三点リンク機構を介して、圃場に対する作業を行う圃場作業装置であるロータリ耕耘装置Bが連結されている。トラクタAは、ミッションケース7の後部に左右のリフトアーム8を駆動昇降し、ロータリ耕耘装置Bを、作業状態と非作業状態とに亘って状態変更可能なリフトシリンダ9(状態変更部の一例)を備えている。つまり、ロータリ耕耘装置Bは、リフトアーム8とリフトシリンダ9を介して、走行機体1に昇降可能に支持されている。
【0024】
図1及び図3に示すように、運転座席5の前側にステアリングホイール11とメータパネル12とが配置されている。
【0025】
図2に示すように、トラクタAは、運転座席5の右側(ARの方向)に走行速度Vを設定する主変速レバー13と、ロータリ耕耘装置Bを昇降制御する昇降レバー14とを備えている。トラクタAには、走行機体1の操向速度を検出する車速センサVS(図4参照)が備えられている。
【0026】
昇降レバー14は、前後方向(AF-ABの方向)に沿って揺動操作可能に支持されている。この昇降レバー14の設定位置は、基端のポテンショメータ型の昇降レバーセンサ14S(図4参照)によって検知される。
【0027】
トラクタAは、図3に示すように、ステアリングホイール11の左側(ALの方向)に走行機体1の前後への走行方向を切り換える切換レバー15を備えている。また、ステアリングホイール11の右側(ARの方向)にリフトアーム8を昇降させる強制昇降レバー16(状態変更操作具)を備えている。
【0028】
切換レバー15は、平面視でステアリングホイール11と重複して配置されている。この切換レバー15は、左横外方に延出しており、走行機体1の前後方向に沿う直線的な操作経路Mに沿って操作可能に支持されている。切換レバー15は、この操作経路Mの中間の中立位置Nと、中立位置Nより前側の前進位置Fと、中立位置Nより後側の後進位置Rとに設定可能に構成されている。
【0029】
切換レバー15は、操作端部がハンドルコラムの内部に支持され、基端に備えたポテンショメータ型の切換レバーセンサ15Sによって設定位置が検知される。
【0030】
〔強制昇降レバー〕
強制昇降レバー16は、平面視においてステアリングホイール11と重複して配置されている。この強制昇降レバー16は、ハンドルポスト17から右側に延出しており、上下方向に操作可能に支持されている。
【0031】
この強制昇降レバー16は、図3に示すように、非操作状態で昇降中立位置Lnに保持される。更に、強制昇降レバー16は、昇降中立位置Lnより上側となる上昇位置Luと、昇降中立位置Lnより下側となる下降位置Ldとに操作可能に支持されている。
【0032】
強制昇降レバー16の基端には、強制昇降レバーセンサ16Sが備えられている。強制昇降レバーセンサ16Sは、強制昇降レバー16が、昇降中立位置Lnと、上昇位置Luと、下降位置Ldとの何れに操作されたかを検出する。
【0033】
トラクタAは、図1に示すように、ロータリ耕耘装置Bが自動耕深制御によって下降している状況において強制昇降レバー16を上昇位置Luに操作することで、ロータリ耕耘装置Bを設定高さまで上昇させる。
【0034】
また、トラクタAは、ロータリ耕耘装置Bが設定高さまで上昇している状況において、強制昇降レバー16を、下降位置Ldに操作することによりロータリ耕耘装置Bを自動耕深制御させる作業高さまで下降させる。つまり、操縦者が強制昇降レバー16を人為操作することにより、ロータリ耕耘装置Bを作業高さまで下降させた作業状態と設定高さまで上昇させた非作業状態とに亘って状態変更操作を行うことができる。
【0035】
また、昇降レバー14、強制昇降レバー16、切換レバー15の何れの操作であっても、操縦者がロータリ耕耘装置Bを設定高さまで上昇させる際には、上昇に連動して伝動系のクラッチが切り操作され、走行機体1からロータリ耕耘装置Bに伝えられる駆動力が遮断される。
【0036】
このようなロータリ耕耘装置Bの昇降制御は、図4に示す制御装置Cがリフトシリンダ9を制御することによって実現する。
【0037】
〔ロータリ耕耘装置〕
図1図2に示すように、トラクタAは、三点リンク機構を介して走行機体1の後端にロータリ耕耘装置Bが連結される。三点リンク機構は、後端位置に左右のロアーリンク41と、この上側位置の単一のトップリンク42とを有している。
【0038】
左右のロアーリンク41は、左右のリフトアーム8に対しリフトロッド43によって吊り上げる形態で支持される。これにより、リフトシリンダ9を伸長または収縮作動により左右のリフトアーム8を昇降させ、三点リンク機構を介してロータリ耕耘装置Bの昇降を実現している。
【0039】
ロータリ耕耘装置Bは、ミッションケース7から伝えられる駆動力により横向きの駆動軸とともに回転する複数の耕起爪44を有し、この耕起爪44を覆う上部カバー45と、後部カバー46を備えている。
【0040】
〔制御装置〕
図4に示すように、制御装置Cは、マイクロプロセッサやDSP(digital signal processor)等の制御処理部50を備えている。
【0041】
制御処理部50は、ソフトウエアで構成される昇降制御部51と、自動作業状態切換部52とを備えている。なお、昇降制御部51と、自動作業状態切換部52とは、ソフトウエアで構成されるものに限らず、一部にロジック回路等のハードウエアを備えて構成されるものであっても良い。
【0042】
制御処理部50は、車速センサVS(車速取得部)、操向センサ2S(操向取得部)、昇降レバーセンサ14S、切換レバーセンサ15S、強制昇降レバーセンサ16S、リフトアームセンサ8S、後述するモードスイッチ18のそれぞれからの信号が入力する。
【0043】
制御処理部50は、リフトシリンダ9に対する作動油を給排する昇降制御弁55に制御信号を出力する。
【0044】
〔昇降制御部〕
昇降制御部51は、昇降レバーセンサ14Sの検知信号から取得した昇降レバー14の設定位置、強制昇降レバーセンサ16Sの検知信号から取得した強制昇降レバー16の設定位置に基づきリフトアーム8の昇降作動を行う。
【0045】
昇降制御部51は、昇降レバー14が所定のポジション制御領域に設定された場合に、設定位置に対応した高さまでロータリ耕耘装置Bを昇降させるポジション制御を行う。このポジション制御では昇降レバー14の設定位置に対応して目標高さが設定され、リフトアームセンサ8Sの検出信号をフィードバックさせる形態でリフトシリンダ9が制御される。
【0046】
〔自動作業状態切換部〕
自動作業状態切換部52は、走行機体1の走行状態を検出する走行検出部52aを備える。走行検出部52aが、図8に示す往復走行Rtから旋回走行Ttへの移行を検出したとき、ロータリ耕耘装置Bを設定高さまで上昇させた非作業状態に変更する変更制御を行い、旋回走行Ttから往復走行Rtへの移行を検出したとき、ロータリ耕耘装置Bを作業高さまで下降させた作業状態に変更する変更制御を行う。
【0047】
自動作業状態切換部52には、図4に示すように、旋回角度Tθ(図8参照)を算出する旋回角度算出部52bが備えられている。ここで、旋回角度Tθは、走行機体1が旋回走行Tt開始時から旋回した角度である。走行検出部52aは、旋回角度算出部52bの算出結果を基にして、旋回走行Ttから往復走行Rtへの移行を検出する。
【0048】
走行検出部52aは、旋回角度算出部52bが算出した旋回角度Tθが、所定の範囲内(例えば、130度から180度)、かつ、操向センサ2S検出した操向切れ角θが所定の閾値未満(例えば、5度未満)であるとき、旋回走行Ttから往復走行Rtへの移行を検出する。なお、ここでは詳細は説明しないが、走行検出部52aは、同様の方法で、往復走行Rtから旋回走行Ttへの移行を検出する。
【0049】
旋回角度算出部52bは、所定の計算式で旋回角度Tθを算出する。例えば、旋回角度算出部52bは、図1に示す走行機体1のホイールベースHbと、車速センサVSが検出した走行速度Vと、操向センサ2Sが検出した前車輪2の操向切れ角θとに基づいて、旋回角度Tθを算出する。具体的には、次の通りである。
【0050】
1周期t(例えば、10ms)ごとの旋回角度を1周期旋回角度θdとし、制御周期dtを1/tとする。そのうえで、旋回角度算出部52bは、計算式「θd=(V/Hb)tanθ・dt」で1周期旋回角度θdを算出する。そして、旋回角度算出部52bは、1周期旋回角度θdを足し合わせた累積値を旋回角度Tθとして算出する。
【0051】
また、自動作業状態切換部52は、ロータリ耕耘装置Bを非作業状態に変更する変更制御を行う非作業状態切替制御部52cと、ロータリ耕耘装置Bを作業状態に変更する変更制御を行う作業状態切替制御部52dとを備える。
【0052】
図5に示すフローチャートは、自動作業状態切換部52の制御の流れを示している。
【0053】
この制御において、走行検出部52aは、走行状態を検出する処理を実行する(#001ステップ)。
【0054】
走行検出部52aが、往復走行Rtからへ旋回走行Ttの移行を検出したとき(#002ステップのYes)、非作業状態切替制御部52cは、リフトシリンダ9に対してロータリ耕耘装置Bを非作業状態に変更する変更制御を行う(#004ステップ)。なお、後述するモードスイッチ18の操作により、非作業状態切替制御部52cがOFF(無効状態)であるとき、#004ステップは実行されずに、#001ステップへ移行する。
【0055】
走行検出部52aが、旋回走行Ttから往復走行Rtへの移行を検出したとき(#003ステップのYes)、作業状態切替制御部52dは、リフトシリンダ9に対してロータリ耕耘装置Bを作業状態に変更する変更制御を行う(#005ステップ)。なお、後述するモードスイッチ18の操作により、作業状態切替制御部52dがOFF(無効状態)であるとき、#005ステップは実行されずに、#001ステップへ移行する。
【0056】
自動作業状態切換部52は、#001から#005の処理を繰り返す。
【0057】
〔操作部〕
図2に示すように、トラクタAには、複数のスイッチが配置されている操作部Sが備えられている。図6に示すように、操作部Sには、本実施形態では、モメンタリ型のモードスイッチ18(操作装置の一例)が設けられている。また、操作部Sのうちモードスイッチ18の左隣には、「自動上昇機能」及び「自動下降機能」が記されており、それぞれに対応する第1照明装置L1及び第2照明装置L2が備えられている。
【0058】
非作業状態切替制御部52cがON(有効状態)になったときは、第1照明装置L1が点灯し、作業状態切替制御部52dがON(有効状態)になったときは、第2照明装置L2が点灯する。
【0059】
モードスイッチ18は、図7に示すように、押下するたびに、「非作業状態切替制御部52c及び作業状態切替制御部52dの両方がOFF(無効状態)」、「作業状態切替制御部52dのみON(有効状態)」、「作業状態切替制御部52dのみON(有効状態)」、「非作業状態切替制御部52c及び作業状態切替制御部52dの両方がON(無効状態)」の順に繰り返し切り替わる。この構成により、単一の操作装置であるモードスイッチ18で、非作業状態切替制御部52cと作業状態切替制御部52dとを、ON(有効状態)とOFF(無効状態)とに操作可能に構成されている。
【0060】
また、操作部Sには、作業状態切替制御部52dによるロータリ耕耘装置Bを作業状態へ変更するタイミングを調整する調整スイッチ19が備えられている。ここでは詳細は説明しないが、例えば、走行検出部52aが、旋回走行Ttから往復走行Rtへの移行を検出する条件を変更することで実現される。
【0061】
作業状態切替制御部52dによりロータリ耕耘装置Bを非作業状態から作業状態へ移行中のとき、強制昇降レバー16によるロータリ耕耘装置Bを非作業状態へ状態変更させるための状態変更操作、つまり、図3に示す強制昇降レバー16を上昇位置Luにする操作が行われると、作業状態切替制御部52dは変更制御を一時的に停止する。その後、強制昇降レバー16を基の昇降中立位置Lnに戻すと、ロータリ耕耘装置Bは作業状態への移行を再開する。
【0062】
強制昇降レバー16によるロータリ耕耘装置Bを非作業状態へ状態変更させるための状態変更操作、つまり、強制昇降レバー16を上昇位置Luにする操作を所定時間(例えば、10秒間)継続して行われると、作業状態切替制御部52dは変更制御を中止する。非作業状態切替制御部52c及び作業状態切替制御部52dの両方がOFF(無効状態)となり、ロータリ耕耘装置Bは強制昇降レバー16によって手動操作が行われる状態となる。
【0063】
〔別実施形態〕
以下、上記実施形態に変更を加えた別実施形態を例示する。
【0064】
(1)上記実施形態では、旋回角度算出部52bが算出した旋回角度Tθに基づいて、旋回走行Ttから往復走行Rtへの移行を検出する構成を例に説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、図9に示すように、旋回走行Ttの直前の進行方向を基準方向SDとし、走行機体1のホイールベースHbと、車速センサVSが検出した走行速度Vと、操向センサ2Sが検出した前車輪2の操向切れ角θとに基づいて、旋回走行Ttにおいて走行機体1が基準方向SDに沿って変位した量である変位量DLを算出する変位量算出部52e(図4参照)を備える構成としてもよい。
【0065】
このとき、例えば、変位量算出部52eが算出した変位量DLが、0未満となったとき、旋回走行Ttから往復走行Rtへの移行を検出する。
【0066】
(2)上記実施形態では、旋回角度算出部52bが算出した旋回角度Tθに基づいて、旋回走行Ttから往復走行Rtへの移行を検出する構成を例に説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、例えば、衛星測位システムを利用した測位装置を用いて、旋回走行Ttから往復走行Rtへの移行を検出する構成としてもよい。
【0067】
(3)上記実施形態では、ロータリ耕耘装置Bを圃場作業装置とし、ロータリ耕耘装置Bを作業高さまで下降させた状態を作業状態とし、ロータリ耕耘装置Bを設定高さまで上昇させた状態を非作業状態とする構成を例に説明したが、これに限られるものではなく、例えば、圃場面に肥料を供給する施肥装置を圃場作業装置とし、肥料の供給を行っている状態を作業状態とし、肥料の供給を停止している状態を非作業状態としてもよい。
【0068】
(4)上記実施形態では、強制昇降レバー16を人為操作することにより、作業状態切替制御部52dの変更制御を一時的に停止または中止する構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態の限られるものではなく、例えば、別途、専用操作具を備える構成としてもよい。
【0069】
(5)上記実施形態では、走行機体1に前車輪2及び後車輪3が備えられている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態の限られるものではなく、後車輪3に代えてクローラが備えられたセミクローラ仕様に構成されていてもよく、また、前車輪2及び後車輪3に代えてクローラが備えられたフルクローラ仕様とされていてもよい。
【0070】
(6)上記実施形態では、操作部Sには、本実施形態では、モードスイッチ18は、モメンタリ型のスイッチで構成されている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態の限られるものではなく、例えば、モードスイッチ18は、ダイヤル式等の形式のスイッチで構成されていてもよい。
【0071】
なお、上記の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、トラクタだけではなく、コンバイン、田植機等の種々の作業車に利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 :走行機体
16 :強制昇降レバー(状態変更操作具)
18 :モードスイッチ(操作装置)
52a :走行検出部
52b :旋回角度算出部
52c :非作業状態切替制御部
52d :作業状態切替制御部
Rt :往復走行
Tt :旋回走行
S :操作部
Hb :ホイールベース
Tθ :旋回角度
V :走行速度
θ :操向切れ角
DL :変位量
SD :基準方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9