IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

<>
  • 特開-免震構造物の施工方法 図1
  • 特開-免震構造物の施工方法 図2
  • 特開-免震構造物の施工方法 図3
  • 特開-免震構造物の施工方法 図4
  • 特開-免震構造物の施工方法 図5
  • 特開-免震構造物の施工方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142785
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】免震構造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20241003BHJP
   E02D 27/12 20060101ALI20241003BHJP
   E02D 27/34 20060101ALI20241003BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E04H9/02 331Z
E02D27/12 Z
E02D27/34 B
F16F15/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055105
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 洋介
(72)【発明者】
【氏名】望月 英二
(72)【発明者】
【氏名】守屋 暁
【テーマコード(参考)】
2D046
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2D046CA03
2D046DA13
2E139AA01
2E139AC26
2E139AC27
2E139AC33
2E139AD03
2E139CA02
2E139CA11
2E139CA21
2E139CC02
2E139CC03
2E139CC05
2E139CC07
3J048AA01
3J048AA07
3J048BA08
3J048BG01
3J048BG02
3J048BG04
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】免震構造物において、コンクリート杭の杭頭部の補強を軽減しつつ、工期を短縮することを目的とする。
【解決手段】免震構造物の施工方法は、地盤Gに設けられたコンクリート杭20の杭頭部から上方へ突出するとともに、少なくとも下部にコンクリート32が充填される鋼管柱30を施工する鋼管柱施工工程と、鋼管柱30の柱頭部に設置された免震装置60上に、上部構造体70を施工する上部構造体施工工程と、上部構造体施工工程と並行して、コンクリート杭20の杭頭部から上方に離れるとともに、鋼管柱30に接合されるマットスラブ50を施工する基礎施工工程と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に設けられたコンクリート杭の杭頭部から上方へ突出するとともに、少なくとも下部にコンクリートが充填される鋼管柱を施工する鋼管柱施工工程と、
前記鋼管柱の柱頭部に設置された免震装置上に、上部構造体を施工する上部構造体施工工程と、
前記上部構造体施工工程と並行して、前記コンクリート杭の杭頭部から上方に離れるとともに、前記鋼管柱に接合されるコンクリート基礎を施工する基礎施工工程と、
を備える免震構造物の施工方法。
【請求項2】
前記基礎施工工程において、前記コンクリート基礎の上面から突出する前記鋼管柱の柱頭部を被覆する被覆コンクリートを施工する、
請求項1に記載の免震構造物の施工方法。
【請求項3】
前記鋼管柱施工工程の後に、
前記コンクリート杭の杭頭部上の杭孔内に足場を形成し、又は前記コンクリート杭の杭頭部から突出する前記鋼管柱の周囲の地盤を掘削して足場を形成して、前記鋼管柱の柱頭部に前記免震装置を設置する免震装置設置工程を備える、
請求項1又は請求項2に記載の免震構造物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免震構造物の逆打ち工法が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
また、コンクリート杭の杭頭部と、当該杭頭部から離間する基礎梁とをコンクリート充填鋼管で連結する杭頭構造が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-118756号公報
【特許文献2】特開2000-291031号公報
【特許文献3】特開2019-019503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3に開示された杭頭構造では、地震時に、杭頭部に作用する曲げモーメントが低減されるため、例えば、杭頭部の補強等を軽減することができる。そのため、この杭頭構造を、工期を短縮しつつ、免震構造物に適用したいとの要望がある。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、免震構造物において、コンクリート杭の杭頭部の補強を軽減しつつ、工期を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の免震構造物の施工方法は、地盤に設けられたコンクリート杭の杭頭部から上方へ突出するとともに、少なくとも下部にコンクリートが充填される鋼管柱を施工する鋼管柱施工工程と、前記鋼管柱の柱頭部に設置された免震装置上に、上部構造体を施工する上部構造体施工工程と、前記上部構造体施工工程と並行して、前記コンクリート杭の杭頭部から上方に離れるとともに、前記鋼管柱に接合されるコンクリート基礎を施工する基礎施工工程と、を備える。
【0008】
請求項1に係る免震構造物の施工方法によれば、鋼管柱施工工程において、地盤に設けられたコンクリート杭の杭頭部から上方へ突出するとともに、少なくとも下部にコンクリートが充填された鋼管柱を施工する。
【0009】
次に、上部構造体施工工程において、鋼管柱の柱頭部に設置された免震装置上に、上部構造体を施工する。また、基礎施工工程において、上部構造体施工工程と並行して、コンクリート杭の杭頭部から上方に離れるとともに、鋼管柱に接合されるコンクリート基礎を施工する。
【0010】
ここで、コンクリート基礎は、コンクリート杭の杭頭部から上方に離れている。つまり、コンクリート杭の杭頭部は、コンクリート基礎と直接的に接合されていない。これにより、地震時に、コンクリート杭の杭頭部に作用する曲げモーメントが低減されるため、当該杭頭部の補強等を軽減することができる。
【0011】
また、基礎施工工程及び上部構造体施工工程を並行して行うことにより、コンクリート基礎を施工してから上部構造体を施工する場合と比較して、工期を大幅に短縮することができる。
【0012】
このように本発明では、免震構造物において、コンクリート杭の杭頭部の補強を軽減しつつ、工期を短縮することができる。
【0013】
請求項2に記載の免震構造物の施工方法は、請求項1に記載の免震構造物の施工方法において、前記基礎施工工程において、前記コンクリート基礎の上面から突出する前記鋼管柱の柱頭部を被覆する被覆コンクリートを施工する。
【0014】
請求項2に係る免震構造物の施工方法によれば、基礎施工工程において、コンクリート基礎の上面から突出する鋼管柱の柱頭部を被覆する被覆コンクリートを施工する。これにより、被覆コンクリートによって、コンクリート基礎の上面から突出する鋼管柱の柱頭部の耐火性能が向上するとともに、当該杭頭部の腐食等を抑制することができる。
【0015】
さらに、例えば、被覆コンクリートに、コンクリート基礎よりも流動性が高いコンクリートを使用することにより、被覆コンクリートの施工性が向上する。
【0016】
請求項3に記載の免震構造物の施工方法は、請求項1又は請求項2に記載の免震構造物の施工方法において、前記鋼管柱施工工程の後に、前記コンクリート杭の杭頭部上の杭孔内に足場を形成し、又は前記コンクリート杭の杭頭部から突出する前記鋼管柱の周囲の地盤を掘削して足場を形成して、前記鋼管柱の柱頭部に前記免震装置を設置する免震装置設置工程を備える。
【0017】
請求項3に係る免震構造物の施工方法によれば、鋼管柱施工工程の後に、免震装置設置工程を備える。この免震装置設置工程では、コンクリート杭の杭頭部上の杭孔内に足場を形成し、又はコンクリート杭の杭頭部から突出する鋼管柱の周囲の地盤を掘削して足場を形成して、鋼管柱の柱頭部に免震装置を設置する。
【0018】
このように足場を確保することにより、免震装置の施工性が向上する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、免震構造物において、コンクリート杭の杭頭部の補強を軽減しつつ、工期を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係る免震構造物の施工方法によって施工された免震構造物を示す立面図である。
図2】一実施形態に係る免震構造物の施工過程を示す図1に対応する立面図である。
図3】一実施形態に係る免震構造物の施工過程を示す図1に対応する立面図である。
図4】一実施形態に係る免震構造物の施工過程を示す図1に対応する立面図である。
図5】一実施形態に係るコンクリート杭の変形例を示す図1に対応する立面図である。
図6】一実施形態に係るコンクリート杭の変形例を示す図1に対応する立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、一実施形態について説明する。
【0022】
(免震構造物)
本実施形態に係る免震構造物の構成について説明する。
【0023】
図1には、本実施形態に係る免震構造物の施工方法によって施工された免震構造物10が示されている。免震構造物10は、一例として、中高層構造物で、かつ、基礎免震構造とされている。この免震構造物10は、コンクリート杭20と、鋼管柱30と、マットスラブ50と、免震装置60と、上部構造体70とを備え、逆打ち工法によって施工されている。
【0024】
なお、マットスラブ50は、コンクリート基礎の一例である。
【0025】
(コンクリート杭)
コンクリート杭20は、場所打ちコンクリート杭とされており、地盤Gに間隔を空けて複数設けられている。各コンクリート杭20には、鉄筋かご22が埋設されている。
【0026】
鉄筋かご22は、複数の主筋22Aと、複数の帯筋22Bとを有している。複数の主筋22Aは、コンクリート杭20の軸方向に延びるとともに、コンクリート杭20の周方向に間隔を空けて配列されている。これらの主筋22Aの周囲には、複数の帯筋22Bが配置されている。
【0027】
複数の帯筋22Bは、環状に形成されており、複数の主筋22Aを取り囲んでいる。また、複数の帯筋22Bは、コンクリート杭20の軸方向に間隔を空けて配置されている。このコンクリート杭20には、鋼管柱30の下部が埋設されている。
【0028】
なお、鉄筋かご22等の補強筋の構成は、適宜変更可能である。また、鉄筋かご等の補強筋は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0029】
(鋼管柱)
鋼管柱30は、逆打ち工法における構真柱として機能する。この鋼管柱30は、例えば、丸形鋼管又は角形鋼管によって形成されている。また、鋼管柱30の内部には、コンクリート32が充填されている。コンクリート32は、一例として、鋼管柱30の柱脚部から柱頭部に亘って充填されている。つまり、本実施形態の構真柱は、全長に亘ってコンクリート充填鋼管柱(CFT柱)とされている。
【0030】
鋼管柱30の下部は、コンクリート杭20の上部における鉄筋かご22の内側に埋設されている。この鋼管柱30の下部には、複数のスタッド(頭付きスタッド)34が設けられている。なお、スタッド34は、せん断力伝達部材の一例である。
【0031】
複数のスタッド34は、鋼管柱30の軸方向及び周方向に間隔を空けて配列されている。また、複数のスタッド34は、鋼管柱30の外周面から突出し、コンクリート杭20の上部に埋設されている。これらのスタッド34によって、コンクリート杭20に対する鋼管柱30の付着力が高められている。
【0032】
鋼管柱30の下端部には、支圧プレート36が設けられている。支圧プレート36は、鋼板等によって形成されており、鋼管柱30の下端開口を塞いでいる。この支圧プレート36の支圧力、及び前述した複数のスタッド34の付着力によって、鋼管柱30に作用する上部構造体70の重量が鉛直荷重としてコンクリート杭20に伝達される。
【0033】
鋼管柱30の上部は、コンクリート杭20の杭頭部から上方へ突出し、マットスラブ50を上下方向に貫通している。この鋼管柱30の上部に、マットスラブ50が接合されている。
【0034】
(マットスラブ)
マットスラブ50は、鉄筋コンクリート造とされており、内部に図示しないスラブ筋等が埋設されている。このマットスラブ50は、コンクリート杭20の杭頭部から上方に離れるとともに、鋼管柱30の上部に接合されている。
【0035】
具体的には、マットスラブ50における鋼管柱30との接合部は、キャピタル50Aが設けられている。キャピタル50Aは、コンクリートによってマットスラブ50と一体に形成されている。また、キャピタル50Aは、マットスラブ50の下面から下方へ突出している。このキャピタル50Aによって、マットスラブ50における鋼管柱30との接合部が補強されている。
【0036】
鋼管柱30の上部には、複数のスタッド(頭付きスタッド)38が設けられている。複数のスタッド38は、鋼管柱30の軸方向及び周方向に間隔を空けて配列されている。なお、スタッド38は、せん断力伝達部材の一例である。
【0037】
複数のスタッド38は、鋼管柱30の外周面から突出し、マットスラブ50に埋設されている。これらのスタッド38によって、マットスラブ50に対する鋼管柱30の付着力が高められている。また、複数のスタッド38を介して、鋼管柱30からマットスラブ50に鉛直荷重が伝達される。
【0038】
ここで、マットスラブ50(キャピタル50A)の下面50Lは、コンクリート杭20の上面20Uから上方へ離れた位置に配置されている。このマットスラブ50の下面50Lとコンクリート杭20の上面20Uとの間隔Dを調整することにより、地震時に、コンクリート杭20の杭頭部に作用する曲げモーメントやせん断力が調整されている。
【0039】
なお、鋼管柱30には、少なくともコンクリート杭20の上面20Uとマットスラブ50の下面50Lとの間の部位30Pにコンクリート32が充填されていれば良く、例えば、鋼管柱30の上部には、コンクリート32が充填されなくても良い。つまり、本実施形態の構真柱は、少なくとも鋼管柱30の部位30Pがコンクリート充填鋼管柱(CFT柱)であれば良い。
【0040】
また、マットスラブ50の下面50Lとコンクリート杭20の上面20Uとの間隔Dは、コンクリート杭20に作用する曲げモーメントやせん断力を調整するために、適宜変更可能であるが、例えば、鋼管柱30の外径の1.0倍前後が好ましい。
【0041】
(免震装置)
鋼管柱30の柱頭部は、マットスラブ50の上面50Uから上方へ突出している。この鋼管柱30の柱頭部には、免震装置60が設置されている。具体的には、鋼管柱30の柱頭部には、ベースプレート40が設けられている。
【0042】
ベースプレート40は、鋼板等によって形成されており、鋼管柱30の上端開口を塞いでいる。このベースプレート40の中央部には、鋼管柱30内にコンクリートを充填する充填孔42が形成されている。なお、充填孔42が必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0043】
ベースプレート40の外周部は、鋼管柱30の柱頭部から外側へ鍔状に張り出している。このベースプレート40は、複数の補強リブ44によって補強されている。複数の補強リブ44は、鋼管柱30の柱頭部の外周面とベースプレート40の下面とに亘って設けられており、ベースプレート40を下から支持している。
【0044】
なお、免震装置60を支持する鋼管柱30の柱頭部の構成は、適宜変更可能である。
【0045】
鋼管柱30の柱頭部の外周面は、被覆コンクリート52によって被覆されている。被覆コンクリート52は、マットスラブ50の上面50Uとベースプレート40の下面との間にコンクリートを打設することにより形成されている。この被覆コンクリート52によって、鋼管柱30の柱頭部が防錆されている。
【0046】
被覆コンクリート52は、一例として、マットスラブ50を構成するコンクリートよりも流動性が高いコンクリートによって形成されている。これにより、被覆コンクリート52の施工時に、マットスラブ50の上面50Uとベースプレート40の下面との間に、コンクリートが隙間なく充填される。
【0047】
なお、被覆コンクリート52は、マットスラブ50を構成するコンクリートと同じコンクリートでも良い。被覆コンクリート52は、マットスラブ50と一緒に施工しても良いし、マットスラブ50を施工した後に施工しても良い。また、被覆コンクリート52は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0048】
免震装置60は、一例として、積層ゴム支承とされている。この免震装置60は、鋼管柱30に対して上部構造体70を水平方向に変位可能に支持している。なお、免震装置60は、積層ゴム支承に限らず、例えば、すべり支承や、転がり支承等でも良い。
【0049】
(上部構造体)
上部構造体70は、鉄骨造や、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造等とされ、免震装置60が設置された免震層の直上階、及び上層階を構成している。この上部構造体70は、免震装置60上に立てられた柱72、及び柱72に接合された梁74等を有して構成されている。
【0050】
(免震構造物の施工方法)
次に、本実施形態に係る免震構造物の施工方法の一例について説明する。
【0051】
本実施形態に係る免震構造物の施工方法は、逆打ち工法によって免震構造物10を施工する。この施工方法は、杭施工工程と、鋼管柱施工工程と、免震装置設置工程と、上部構造体施工工程と、基礎施工工程とを有している。
【0052】
(杭施工工程)
図2に示されるように、地盤Gに地下空間を掘削する前に、先ず、杭施工工程において、場所打ち工法によって地盤Gにコンクリート杭20を施工する。具体的には、例えば、地盤Gに杭孔12を削孔し、鉄筋かご22を設置する。この状態で、杭孔12にコンクリート杭20用のコンクリートを打設する。
【0053】
なお、コンクリート杭20は、アースドリル工法や、オールケーシング工法、リバース工法等の種々の工法によって施工可能である。
【0054】
(鋼管柱施工工程)
次に、鋼管柱施工工程において、先ず、地盤Gに設けられたコンクリート杭20の杭頭部から上方へ突出する鋼管柱30を施工する。
【0055】
具体的には、図示しない揚重機等によって鋼管柱30を吊り上げ、当該鋼管柱30の下部を硬化前のコンクリート杭20の上部に落とし込む。この状態で、鋼管柱30のレベル調整等を行い、コンクリート杭20を硬化させる。これにより、鋼管柱30の下部がコンクリート杭20の上部に埋設されるとともに、鋼管柱30の上部がコンクリート杭20の杭頭部から上方へ突出される。
【0056】
なお、鋼管柱30には、例えば、複数のスタッド34,38、支圧プレート36、及びベースプレート40を予め取り付けておく。
【0057】
次に、鋼管柱30の内部にコンクリート32を充填する。具体的には、鋼管柱30の柱頭部に設けられたベースプレート40の充填孔42(図2参照)から、鋼管柱30の内部にコンクリート32を充填(打設)して硬化させる。この際、鋼管柱30には、少なくとも施工予定のマットスラブ50の下面50Lに、コンクリート32が達するようにコンクリート32を充填する。
【0058】
(免震装置設置工程)
次に、図3に示されるように、免震装置設置工程において、コンクリート杭20の杭頭部上の杭孔12内に足場を形成し、構真柱としての鋼管柱30の柱頭部に免震装置60を設置する。
【0059】
具体的には、図示しない重機によって、コンクリート杭20の杭頭部上の杭孔12の内周面に法面を形成し、作業スペースを確保する。また、杭孔12に露出したコンクリート杭20の上面20U上に、図示しない作業台等の足場を仮設する。なお、杭孔12の法面は、必要に応じて形成すれば良く、適宜省略可能である。
【0060】
次に、図示しない揚重機等によって免震装置60を吊り上げ、鋼管柱30のベースプレート40上に載置する。この際、コンクリート杭20の上面20U上に仮設した足場から、例えば、鋼管柱30のベースプレート40に免震装置60を位置決めしたり、当該ベースプレート40に免震装置60の下側フランジをボルト等によって固定したりする。
【0061】
なお、本実施形態では、コンクリート杭20の施工後に、杭孔12を埋め戻していない。しかし、コンクリート杭20の施工後に、杭孔12を埋め戻した場合には、例えば、免震装置設置工程において、コンクリート杭20の杭頭部から突出する鋼管柱30の周囲の地盤Gを掘削し、掘削底に足場を仮設する。また、免震装置60を施工するための足場の構成や配置は、適宜変更可能である。
【0062】
(上部構造体施工工程)
次に、図4に示されるように、上部構造体施工工程において、免震装置60上に上部構造体70を施工する。具体的には、免震装置60上に柱72を立てるとともに、当該柱72に梁74を架設する。その後、免震構造物10の図示しない上層階を順次施工する。
【0063】
(基礎施工工程)
また、上記上部構造体施工工程と並行して基礎施工工程を行う。ここでいう「並行」とは、上部構造体施工工程及び基礎施工工程の開始時期の先後を問わず、上部構造体施工工程及び基礎施工工程の工期の少なくとも一部が重なることを意味する。したがって、例えば、上部構造体の柱72及び梁74等の鉄骨建て方を完了させた後、上部構造体70のスラブ、及びマットスラブ50を並行して施工しても良い。
【0064】
この基礎施工工程では、コンクリート杭20の杭頭部から上方に離れるとともに、鋼管柱30の上部に接合されるマットスラブ50を施工する。具体的には、先ず、鋼管柱30の周囲の地盤Gを掘削して地下空間を形成する。
【0065】
次に、掘削底を地業し、その上にスラブ筋等を配筋した状態で、鋼管柱30の所定高さまでマットスラブ50用のコンクリートを打設して硬化させる。これにより、鋼管柱30の上部に設けられた複数のスタッド38がマットスラブ50に埋設され、これらのスタッド38を介して鋼管柱30とマットスラブ50とが接合される。
【0066】
また、マットスラブ50は、コンクリート杭20の上面20Uとマットスラブ50の下面50Lとの間に、予め定められた所定の間隔Dが空くように施工する。これにより、地震時に、コンクリート杭20の杭頭部に作用する曲げモーメントが低減される。
【0067】
次に、マットスラブ50の上面50Uから上方へ突出する鋼管柱30の柱頭部を被覆コンクリート52によって被覆する。具体的には、鋼管柱30の柱頭部の周囲に図示しない型枠を仮設し、その内側に被覆コンクリート52用のコンクリートを打設して硬化させる。これにより、被覆コンクリート52が施工される。
【0068】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0069】
前述したように、本実施形態に係る免震構造物の施工方法によれば、鋼管柱施工工程において、地盤Gに設けられたコンクリート杭20の杭頭部から上方へ突出するとともに、少なくとも下部にコンクリート32が充填された鋼管柱30を施工する。
【0070】
次に、上部構造体施工工程において、鋼管柱30の柱頭部に設置された免震装置60上に、上部構造体70を施工する。また、基礎施工工程において、上部構造体施工工程と並行して、コンクリート杭20の杭頭部から上方に離れるとともに、鋼管柱30に接合されるマットスラブ50を施工する。
【0071】
ここで、マットスラブ50は、コンクリート杭20の杭頭部から上方に離れている。つまり、コンクリート杭20の杭頭部は、マットスラブ50と直接的に接合されていない。これにより、地震時に、コンクリート杭20の杭頭部に作用する曲げモーメントが低減されるため、当該杭頭部の補強等を軽減することができる。
【0072】
また、地震時には、コンクリート杭20の上面20Uとマットスラブ50の下面50Lとの間の鋼管柱30の部位30Pが変形することにより、コンクリート杭20の杭頭部の固定度が低減される。したがって、コンクリート杭20の杭頭部に作用する曲げモーメントがさらに低減される。
【0073】
さらに、マットスラブ50の下面50Lとコンクリート杭20の上面20Uとの間隔D(図1参照)を調整することにより、地震時に、コンクリート杭20の杭頭部に作用する曲げモーメントやせん断力を調整することができる。
【0074】
また、基礎施工工程及び上部構造体施工工程を並行して行うことにより、マットスラブ50を施工してから上部構造体70を施工する場合と比較して、工期を大幅に短縮することができる。
【0075】
さらに、基礎施工工程において、マットスラブ50の上面50Uから突出する鋼管柱30の柱頭部を被覆する被覆コンクリート52を施工する。これにより、被覆コンクリート52によって、マットスラブ50の上面50Uから突出する鋼管柱30の柱頭部の腐食等を抑制することができる。
【0076】
さらに、例えば、被覆コンクリート52に、マットスラブ50よりも流動性が高いコンクリートを使用することにより、被覆コンクリート52の施工性が向上する。
【0077】
また、免震装置設置工程では、コンクリート杭20の杭頭部上の杭孔12内に足場を形成して、鋼管柱30の柱頭部に免震装置60を設置する。このように足場を確保することにより、免震装置60の施工性が向上する。
【0078】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0079】
図5に示される変形例のように、コンクリート杭80は、場所打ち鋼管コンクリート杭でも良い。具体的には、コンクリート杭80の杭頭部の周囲には、鋼管82が設けられている。
【0080】
鋼管82は、例えば、鉄筋かご22の上端部と溶接等によって接合されている。また、鋼管82の内部には、コンクリート32が充填されている。この鋼管82によってコンクリート杭80の杭頭部を補強することにより、例えば、杭頭補強筋等を低減することができる。
【0081】
次に、図6に示される変形例のように、コンクリート杭20は、補強プレート(補強リング)90によって補強しても良い。具体的には、補強プレート90は、帯状の鋼板等によって環状に形成されている。この補強プレート90は、鉄筋かご22の内周に沿って配置されており、当該鉄筋かご22に溶接等によって接合されている。
【0082】
補強プレート90は、コンクリート杭20の軸方向の間隔を空けて複数設けられており、鋼管柱30を取り囲んでいる。これにより、地震時に、鋼管柱30によってコンクリート杭20が径方向に支圧された場合に、当該コンクリート杭20がパンチング破壊することが抑制される。また、補強プレート90は、鉄筋かご22の製作時に、ガイド部材として機能する。したがって、鉄筋かご22の製作性が向上する。
【0083】
また、上記実施形態では、鋼管柱30にせん断力伝達部材としての複数のスタッド34,38が設けられている。しかし、せん断力伝達部材は、スタッド34,38に限らず、例えば、スタッドボルト、シアコネクタ等でも良い。また、せん断力伝達部材は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0084】
また、上記実施形態では、コンクリート杭20に鋼管柱30の下部を埋設した後に、鋼管柱30にコンクリート32を充填した。しかし、例えば、コンクリート32が予め充填された鋼管柱30の下部をコンクリート杭20に埋設しても良い。
【0085】
また、上記実施形態では、杭孔12にコンクリート杭20用のコンクリートを打設した後に、当該コンクリート杭20に鋼管柱30の下部を落とし込んだ。しかし、例えば、杭孔12に鉄筋かご22及び鋼管柱30の下部を挿入した状態で鋼管柱30の位置を保持しながら、杭孔12にコンクリート杭20用のコンクリートを打設しても良い。
【0086】
また、上記実施形態では、コンクリート杭20に鋼管柱30を埋設した後に、鋼管柱30の柱頭部上に免震装置60を設置した。しかし、例えば、柱頭部に免震装置60が予め設置された鋼管柱30の下部を、コンクリート杭20に埋設しても良い。
【0087】
また、上記実施形態では、コンクリート基礎がマットスラブ50とされている。しかし、コンクリート基礎は、マットスラブ50に限らず、例えば、鉄筋コンクリート造等のコンクリート基礎梁や、コンクリートフーチング等でも良い。
【0088】
また、上記実施形態に係る免震構造物10は、免震層とは別に地下階を備えていない。しかし、免震構造物10は、例えば、免震装置60とマットスラブ50との間に地下階を備えても良い。つまり、免震構造物10は、中間階免震構造でも良い。また、免震構造物10は、柱頭免震構造でも良い。
【0089】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0090】
10 免震構造物
12 杭孔
20 コンクリート杭
30 鋼管柱
32 コンクリート
50 マットスラブ(コンクリート基礎)
52 被覆コンクリート
70 上部構造体
80 コンクリート杭
G 地盤

図1
図2
図3
図4
図5
図6