(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142789
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】テープ巻き方法及びワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
H01B 13/26 20060101AFI20241003BHJP
H01B 13/012 20060101ALI20241003BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20241003BHJP
B65H 81/06 20060101ALI20241003BHJP
B65H 81/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01B13/26 Z
H01B13/012 B
H01B7/00 301
B65H81/06 Z
B65H81/08
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055113
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 寛康
(72)【発明者】
【氏名】藤川 貴民
(72)【発明者】
【氏名】八木 淳
(72)【発明者】
【氏名】勝又 賢司
【テーマコード(参考)】
5G309
【Fターム(参考)】
5G309AA11
(57)【要約】
【課題】巻付けテープ間隔を所望の間隔としつつテープ巻き作業の作業効率を向上させる。
【解決手段】テープ巻き方法が、各テープ21が所定角度θ1で斜め巻きされるようにテープセット2を傾けて配置するとともに、巻付けテープ間隔P11がテープ幅T11以下となるようにテープ間隔W11が調節された状態で、斜め巻きを、テープ1つ分の巻付けテープ幅T12及び巻付けテープ間隔P11の合計のテープ数倍を斜め巻きの一回当たりの移動量としてテープセットを移動方向D14に移動させながら行う斜め巻き工程を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の電線又は複数本の電線の束をテープ巻き対象とし、当該テープ巻き対象における巻き始め箇所に対し、所定の巻き方によってテープ巻きを行う巻始め工程と、
前記巻始め工程に続き、テープ幅が互いに同じ又は異なる複数のテープが巻軸方向に並べられたテープセットを用い、当該テープセットの各テープが前記テープ巻き対象の長さ方向に対して所定角度をなして斜め巻きされるように前記テープセットを傾けて配置するとともに、前記複数のテープが斜め巻きされたときの前記長さ方向に沿った巻付けテープ間隔が、前記テープ幅が同じ場合は当該テープ幅の3倍以下でゼロ以上、異なる場合は最大テープ幅の3倍以下でゼロ以上となるように前記テープセットにおける前記複数のテープの相互間隔が調節された状態で、前記複数のテープによる斜め巻きを、テープ1つ分の前記長さ方向との交差幅及び前記巻付けテープ間隔の合計のテープ数倍を前記斜め巻きの一回当たりの移動量として前記テープセットを前記長さ方向に沿った移動方向に移動させながら行う斜め巻き工程と、
前記斜め巻き工程に続き、前記テープ巻き対象における巻き終わり箇所に対し、前記巻始め工程と同じ巻き方を用いてテープ巻きを行う巻終り工程と、
を備えたことを特徴とするテープ巻き方法。
【請求項2】
前記巻始め工程及び前記巻終り工程が、何れも、前記巻軸方向が前記長さ方向に沿うように前記テープ巻き対象に対して前記テープセットを配置するとともに、前記移動方向について前記テープセットを移動させずにテープ巻きを行う不動テープ巻きを2回以上行う工程であり、
前記斜め巻き工程は、前記巻始め工程の終了後に前記テープセットを傾けて前記斜め巻きを行うとともに、当該斜め巻きが前記巻き終わり箇所まで進むと、前記テープセットの傾きを解消して前記巻軸方向が前記長さ方向に沿うように前記テープセットを配置する工程であることを特徴とする請求項1に記載のテープ巻き方法。
【請求項3】
前記斜め巻き工程は、前記テープセットの傾け、及び前記テープセットの傾き解消を、前記複数のテープを前記テープ巻き対象に巻き付けながら前記テープセットを、傾け方向又は解消方向に徐々に動かして行う工程であることを特徴とする請求項2に記載のテープ巻き方法。
【請求項4】
前記斜め巻き工程は、前記巻付けテープ間隔を一定にして前記斜め巻きを行う工程である、又は、前記巻付けテープ間隔を変えながら前記斜め巻きを行う工程であることを特徴とする請求項1に記載のテープ巻き方法。
【請求項5】
1本の電線又は複数本の電線の束を有するテープ巻き対象と、
前記テープ巻き対象における巻き始め箇所に対し、所定の巻き方によってテープ巻きが行われた巻始め部分と、
前記巻始め部分に続き、前記テープ巻き対象の長さ方向について、テープ幅が互いに同じ又は異なる複数のテープが、前記テープ巻き対象の長さ方向に対して所定角度をなし、巻付けテープ間隔が、前記テープ幅が同じ場合は当該テープ幅の3倍以下でゼロ以上、異なる場合は最大テープ幅の3倍以下でゼロ以上となる斜め巻きが、テープ1つ分の前記長さ方向との交差幅及び前記巻付けテープ間隔の合計のテープ数倍を、各テープにおける前記斜め巻きの一巻き当たりの前記長さ方向に沿った巻付け長として行われた斜め巻き部分と、
前記斜め巻き部分に続き、前記テープ巻き対象における巻き終わり箇所に対し、前記巻始め部分と同じ巻き方を用いてテープ巻きが行われた巻終り部分と、
を備え、請求項1~4のうち何れか一項に記載のテープ巻き方法によってテープ巻きが行われることを特徴とするワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1本の電線又は複数本の電線の束をテープ巻き対象としてテープを巻き付けるテープ巻き方法、及び、そのようなテープ巻き方法によってテープ巻きが行われたワイヤーハーネスに関するものとなっている。
【背景技術】
【0002】
従来、1本の電線又は複数本の電線の束をテープ巻き対象とし、電線の束ねや保護等のためにテープを巻き付けるテープ巻き方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載のテープ巻き方法では、テープが1/2幅で重なるラップ巻きによってテープが巻き付けられている。
【0003】
ところで、テープ巻き方法には、上記のようなラップ巻きの他に、巻き付けられたテープ間に隙間が空いた状態でテープが螺旋状に巻き付けられる荒巻きを用いたテープ巻き方法も知られている。このような荒巻きによるテープ巻き方法では、長さ方向の必要箇所において、巻き付け時のテープ間の隙間である巻付けテープ間隔について製品規格等で規定されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述したような荒巻きによるテープ巻き方法では、巻付けテープ間隔を製品規格等で定められた所望の間隔にする必要上、巻き付け1回当たりのテープの移動量が制限されることとなり、テープ巻き作業の効率化が難しいという問題がある。
【0006】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、巻付けテープ間隔を所望の間隔としつつテープ巻き作業の作業効率を向上させることができるテープ巻き方法を提供することを目的とする。また、本発明は、そのようなテープ巻き方法によってテープ巻きが行われたワイヤーハーネスを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、テープ巻き方法は、1本の電線又は複数本の電線の束をテープ巻き対象とし、当該テープ巻き対象における巻き始め箇所に対し、所定の巻き方によってテープ巻きを行う巻始め工程と、前記巻始め工程に続き、テープ幅が互いに同じ又は異なる複数のテープが巻軸方向に並べられたテープセットを用い、当該テープセットの各テープが前記テープ巻き対象の長さ方向に対して所定角度をなして斜め巻きされるように前記テープセットを傾けて配置するとともに、前記複数のテープが斜め巻きされたときの前記長さ方向に沿った巻付けテープ間隔が、前記テープ幅が同じ場合は当該テープ幅の3倍以下でゼロ以上、異なる場合は最大テープ幅の3倍以下でゼロ以上となるように前記テープセットにおける前記複数のテープの相互間隔が調節された状態で、前記複数のテープによる斜め巻きを、テープ1つ分の前記長さ方向との交差幅及び前記巻付けテープ間隔の合計のテープ数倍を前記斜め巻きの一回当たりの移動量として前記テープセットを前記長さ方向に沿った移動方向に移動させながら行う斜め巻き工程と、前記斜め巻き工程に続き、前記テープ巻き対象における巻き終わり箇所に対し、前記巻始め工程と同じ巻き方を用いてテープ巻きを行う巻終り工程と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために、ワイヤーハーネスは、1本の電線又は複数本の電線の束を有するテープ巻き対象と、前記テープ巻き対象における巻き始め箇所に対し、所定の巻き方によってテープ巻きが行われた巻始め部分と、前記巻始め部分に続き、前記テープ巻き対象の長さ方向について、テープ幅が互いに同じ又は異なる複数のテープが、前記テープ巻き対象の長さ方向に対して所定角度をなし、巻付けテープ間隔が、前記テープ幅が同じ場合は当該テープ幅の3倍以下でゼロ以上、異なる場合は最大テープ幅の3倍以下でゼロ以上となる斜め巻きが、テープ1つ分の前記長さ方向との交差幅及び前記巻付けテープ間隔の合計のテープ数倍を、各テープにおける前記斜め巻きの一巻き当たりの前記長さ方向に沿った巻付け長として行われた斜め巻き部分と、前記斜め巻き部分に続き、前記テープ巻き対象における巻き終わり箇所に対し、前記巻始め部分と同じ巻き方を用いてテープ巻きが行われた巻終り部分と、を備え、上述のテープ巻き方法によってテープ巻きが行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記のテープ巻き方法及びワイヤーハーネスによれば、巻付けテープ間隔を所望の間隔としつつテープ巻き作業の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るワイヤーハーネスを、そのテープ巻き作業に用いるテープセットとともに示す模式図である。
【
図2】
図1に示されているワイヤーハーネスを形成するためのテープ巻き方法における処理を示す模式図である。
【
図3】
図2示されている斜め巻き工程における巻付けテープ間隔、テープセットにおけるテープ間隔、及び、テープ巻き対象に巻き付けられた各テープの巻付けテープ幅と、テープ幅との関係を説明するための図である。
【
図4】
図2示されている斜め巻き工程における斜め巻きの一回当たりのテープセットの移動量を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、テープ巻き方法及びワイヤーハーネスの一実施形態について説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係るワイヤーハーネスを、そのテープ巻き作業に用いるテープセットとともに示す模式図である。
【0013】
本実施形態におけるワイヤーハーネス1は、一例として、車両等に搭載されて配策される。そして、ワイヤーハーネス1は、電線の束ねや保護等を目的としてテープがその外周に、巻き付けられたテープ間に隙間が空いた状態でテープが螺旋状に巻き付けられる荒巻き巻きによって巻き付けられて構成されている。このワイヤーハーネス1は、テープ巻き対象1aと、巻始め部分11と、斜め巻き部分12と、巻終り部分13と、を備えている。
【0014】
テープ巻き対象1aは、1本の電線又は複数本の電線の束を有する電線部位である。巻始め部分11は、テープ巻き対象1aにおける巻き始め箇所に対し、後述の巻き方によってテープ巻きが行われた部分である。斜め巻き部分12は、巻始め部分11に続くテープ巻き部分である。この斜め巻き部分12は、テープ巻き対象1aの長さ方向D11について次のような斜め巻きが連続して行われた部分である。この斜め巻き部分12は、互いに同じテープ幅T11の複数(本実施形態では2つ)のテープ21が、テープ巻き対象1aの長さ方向D11について、巻き付けられたテープ間に隙間が空いた状態で螺旋状に巻き付けられた部分となっている。このとき、巻き付け時のテープ間の隙間である巻付けテープ間隔P11は、テープ幅T11以下(本実施形態ではテープ幅T11と等距離)に設定されている。また、巻終り部分13は、斜め巻き部分12に続き、テープ巻き対象1aにおける巻き終わり箇所に対し、巻始め部分11と同じ巻き方を用いてテープ巻きが行われた部分である。
【0015】
巻始め部分11、斜め巻き部分12、及び巻終り部分13の何れについても、テープ巻きは、互いに同じテープ幅T11の2つのテープ21がテープ間隔W11を開けて巻軸方向D12に並べられたテープセット2を用いて行われる。このテープセット2における2つのテープ21の相互間隔であるテープ間隔W11は、斜め巻き部分12における巻付けテープ間隔P11が次のような距離となるように調節されている。即ち、巻付けテープ間隔P11が、2つのテープ21のテープ幅T11が同じ場合は当該テープ幅T11の3倍以下でゼロ以上、異なる場合は最大テープ幅の3倍以下でゼロ以上の距離となるようにテープ間隔W11が調節されている。本実施形態では、2つのテープ21のテープ幅T11が同じであるので、巻付けテープ間隔P11がテープ幅T11の3倍以下でゼロ以上、具体的にはテープ幅T11と等距離となるように、テープ幅T11よりも短い間隔に調節されている。テープセット2を用いたテープ巻きは、巻始め部分11及び巻終り部分13では、巻軸方向D12が長さ方向D11に沿うようにテープ巻き対象1aに対してテープセット2が配置され、テープセット2を移動させずに行われる。斜め巻き部分12では、各テープ21がテープ巻き対象1aの長さ方向D11に対して所定角度をなすようにテープセット2が傾けられて行われる。このときの斜め巻きは、テープセット2が、傾けられたままで、テープ巻き対象1aの周りを回転方向D13に回されながらテープ巻き対象1aの長さ方向D11に沿った移動方向D14に動かされることで行われる。
【0016】
以下、このようなワイヤーハーネス1を形成するためのテープ巻き方法について説明する。
【0017】
図2は、
図1に示されているワイヤーハーネスを形成するためのテープ巻き方法における処理を示す模式図である。
【0018】
こ
図2に示されているテープ巻き方法におけるステップS11では、テープ巻き対象1aにおける巻き始め箇所に対し次のような巻き方によってテープ巻きを行う巻始め工程が行われる。このステップS11の巻始め工程では、移動方向D14についてテープセット2を移動させずにテープ巻きを行う不動テープ巻きがテープ巻き対象1aに対して2回以上(本実施形態では2回)行われる。不動テープ巻きは、上述したように、巻軸方向D12が長さ方向D11に沿うようにテープ巻き対象1aに対してテープセット2が配置されて行われる。この巻始め工程での不動テープ巻きにより、2つのテープ21が、テープ間隔W1を開けて2重巻きされることとなる。このステップS11の巻始め工程により、
図1に示されている巻始め部分11が形成される。
【0019】
次のステップS12及びステップS13では、次のような斜め巻き工程が行われる。斜め巻き工程では、まず、ステップS12において、ステップS11の巻始め工程における巻軸方向D12が長さ方向D11に沿った状態のテープセット2が、移動方向D14の前方側へと傾け方向D15に傾けられる。このステップS12での傾けは、2つのテープ21をテープ巻き対象1aに巻き付けながらテープセット2を、傾け方向D15に徐々に動かすことで行われる。続くステップS13では、テープ幅T11と等しい巻付けテープ間隔P11で、テープセット2における2つのテープ21が斜め巻きされる。
【0020】
ここで、ステップS12及びステップS13の斜め巻き工程における巻付けテープ間隔P11や、テープセット2におけるテープ間隔W11や、テープ巻き対象1aに巻き付けられた各テープ21の巻付けテープ幅は、テープ幅T11と次のような関係にある。
【0021】
図3は、
図2示されている斜め巻き工程における巻付けテープ間隔、テープセットにおけるテープ間隔、及び、テープ巻き対象に巻き付けられた各テープの巻付けテープ幅と、テープ幅との関係を説明するための図である。
【0022】
まず、テープ巻き対象1aの長さ方向D11に沿った巻付けテープ間隔P11は、テープセット2における各テープ21のテープ幅T11と等距離となっている。ここで、2つのテープ21における互いに等しいテープ幅T11を第1基準距離d1とし、巻付けテープ間隔P11を第2基準距離d2とする。ただし、本実施形態では、巻付けテープ間隔P11がテープ幅T11と等距離なので、第1基準距離d1=第2基準距離d2である。まず、テープセット2におけるテープ間隔W11は、テープ巻き対象1aの長さ方向D11に対する各テープ21の傾き角度θ1と第2基準距離d2を用いた以下の数1で表される。
【0023】
【0024】
この数1で表されるテープ間隔W11は、巻付けテープ間隔P11(つまり、第2基準距離d2)よりも短くなる。本実施形態では、巻付けテープ間隔P11がテープ幅T11と等距離で、第1基準距離d1=第2基準距離d2なので、テープ間隔W11は、テープ幅T11(つまり、第1基準距離d1)よりも短くなる。テープセット2においてテープ間隔W11がこのような距離に調節されることで、傾き角度θ1での斜め巻き工程では、巻付けテープ間隔P11が第2基準距離d2(=第1基準距離d1)となるようにテープ21が斜めに巻き付けられることとなる。そして、この斜めに巻き付けられた各テープ21の巻付けテープ幅T12は、以下の数2で表される。
【0025】
【0026】
この数2で表される巻付けテープ幅T12は、テープ幅T11(つまり、第1基準距離d1=第2基準距離d2)よりも長くなる。
【0027】
図2におけるステップS12及びステップS13の斜め巻き工程では、各テープ21が、第2基準距離d2(=第1基準距離d1)に等しい巻付けテープ間隔P11を空けながら数2の巻付けテープ幅T12で巻き付けられていく。また、本実施形態では、斜め巻き工程は、巻付けテープ間隔P11を第2基準距離d2で一定にして斜め巻きを行う工程となっている。このとき、長さ方向D11に沿った移動方向D14について、斜め巻きの一回当たりのテープセット2の移動量は、次のようなものとなる。
【0028】
図4は、
図2示されている斜め巻き工程における斜め巻きの一回当たりのテープセットの移動量を説明するための図である。
【0029】
この
図4に示されているように、テープ巻き対象1aの長さ方向D11に沿った移動方向D14についての、斜め巻きの一回当たりのテープセット2の移動量L1は、2つのテープ21それぞれの巻付けテープ幅T12と、2箇所の巻付けテープ間隔P11(即ち、第2基準距離d2=第1基準距離d1)と、の合計となる。この移動量L1は、以下の数3で表される。
【0030】
【0031】
数3で表されるように、テープセット2の移動量L1は、テープ21の1つ分の長さ方向D11との交差幅である巻付けテープ幅T12と、第2基準距離d2で一定となった巻付けテープ間隔T12と、の合計のテープ数倍(本実施形態では2倍)となる。
図2におけるステップS12及びステップS13の斜め巻き工程では、テープセット2をこの移動量L1で移動させながら斜め巻きが行われることとなる。この移動量L1は、
図1に示されているワイヤーハーネス1において、各テープ21における斜め巻きの一巻き当たりの長さ方向D11に沿った巻付け長となる。
【0032】
斜め巻き工程では、この斜め巻きが、テープ巻き対象1aにおける巻き終わり箇所まで進むと、テープセット2の傾きを解消して巻軸方向D12が長さ方向D11に沿うようにテープセット2が配置される。このときの傾き解消は、巻き始め工程の後のテープセット2の傾けと同様に、2つのテープ21をテープ巻き対象1aに巻き付けながらテープセット2を、傾け方向D15とは逆向きの解消方向に徐々に動かして行われる。この傾き解消を以てステップS12及びステップS13の斜め巻き工程が終了し、
図1に示されている斜め巻き部分12が形成される。
【0033】
そして、この傾き解消後に、巻き終わり箇所に対し、巻始め工程と同じ巻き方による巻終り工程が行われる。即ち、巻軸方向D12が長さ方向D11に沿った状態のテープセット2によって、移動方向D2についてテープセット2を移動させずに行う不動テープ巻きが2回行われる。この巻終り工程により、
図1に示されている巻終り部分13が形成されてワイヤーハーネス1におけるテープ巻きを行うテープ巻き方法が終了する。
【0034】
以上に説明した実施形態のテープ巻き方法によれば、斜め巻きによる荒巻きを要求される箇所については、巻付けテープ間隔P11が次のような間隔となるように斜め巻きが行われる。即ち、テープセット2における2つのテープ21のテープ幅T11が同じ場合は当該テープ幅T11の3倍以下でゼロ以上、異なる場合は最大テープ幅の3倍以下でゼロ以上となるように斜め巻きが行われる。本実施形態では、テープ幅T11が同じであるので、巻付けテープ間隔P11がテープ幅T11の3倍以下でゼロ以上(本実施形態では、テープ幅T11と等しい第1基準距離d1=第2基準距離d2)となるように斜め巻きが行われる。この巻付けテープ間隔P11は、テープセット2におけるテープ間隔W11の調節によって設定される。そして、この斜め巻きが、巻付けテープ幅T12及び巻付けテープ間隔P11の合計のテープ数倍(2倍)を、斜め巻きの一回当たりの移動量L1としてテープセット2を移動させながら行われる。このような移動が可能となることで、例えば巻き付け1回当たりのテープの移動量が最大でもテープ幅の2倍程度に制限されるテープ巻き等と比較して、テープ巻き作業を効率化することができる。このように上記のテープ巻き方法によれば、巻付けテープ間隔P11を所望の間隔としつつテープ巻き作業の作業効率を向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、テープ巻き方法において、巻始め工程と巻終り工程の間で、作業の大部分を占める工程部分が、テープ21がテープ巻き対象1aの長さ方向D11に対して傾き角度θ1をなして斜め巻きされる斜め巻き工程となっている。このようにテープ巻きの際に傾き角度θ1を付けることで、巻き付けられたテープ21にしわが寄ることを抑制することが可能となっている。
【0036】
例えば、19mm幅のテープを1つ使用して傾き角度を50°とした斜め巻きを行う場合、巻き付け1回当たりのテープの移動量は最大で38mmとなる。
【0037】
これに対し、本実施形態のテープ巻き方法によれば、斜め巻きの1回当たりの移動量L1は、19mm幅の2つのテープ21で傾き角度を50°とした斜め巻きで、87.6mmとなり、作業効率をおよそ300%に向上させることができる。また、25mm幅の2つのテープ21を用いた場合には移動量L1が150mmとなり、作業効率を450%に向上させることができる。
【0038】
ここで、本実施形態では、巻始め工程及び巻終り工程が、何れも、巻軸方向D12が長さ方向D11に沿った状態のテープセット2による不動テープ巻きを2回以上行う工程となっている。また、斜め巻き工程は、巻始め工程の終了後にテープセット2を傾けて斜め巻きを行うとともに、巻き終わり箇所で傾きを解消して巻軸方向D12が長さ方向D11に沿うようにテープセット2を配置する工程となっている。この構成によれば、テープ巻きの巻始めと巻終りで、テープセット2における巻軸方向D12が長さ方向D11に沿い、各テープ21がテープ巻き対象1aと略直交した状態で、2回の不動テープ巻きが行われる。このような不動テープ巻きにより、巻き始めと巻終りの巻き付け状態を安定させることができる。
【0039】
また、本実施形態では、斜め巻き工程におけるテープセットの傾け及び傾き解消が、各テープ21を巻き付けながらテープセット2を徐々に動かすことで行われる。この構成によれば、テープセット2の傾け及び傾き解消を、各テープ21をテープ巻き対象1aに密着させて、良好な巻き付け状態を維持しつつ行うことができる。
【0040】
また、本実施形態では、斜め巻き工程は、巻付けテープ間隔P11を一定にして斜め巻きを行う工程となっている。この構成によれば、上述のテープセット2の移動量も一定となるので、安定したテープ巻きを行うことができる。
【0041】
また、本実施形態のワイヤーハーネス1は、テープ巻き対象1aに対する上述のテープ巻き方法によるテープ巻きで形成される。即ち、このワイヤーハーネス1によれば、その製造に上述のテープ巻き方法が採用されることから、巻付けテープ間隔P11を所望の間隔としつつテープ巻き作業の作業効率を向上させることができる。
【0042】
尚、以上に説明した実施形態は、テープ巻き方法及びワイヤーハーネスの代表的な形態を示したに過ぎない。テープ巻き方法及びワイヤーハーネスは、これに限定されるものではなく種々変形して実施することができる。
【0043】
例えば、上述した実施形態では、ワイヤーハーネスの一例として、車両等に搭載されて配策されるワイヤーハーネス1が例示されている。しかしながら、ワイヤーハーネスは、これに限るものではなく、その具体的な適用対象を問うものではない。
【0044】
また、上述した実施形態では、テープ巻き方法に用いるテープセットの一例として、2つのテープ21が巻き軸方向D12に並べられたテープセット2が例示されている。しかしながら、テープセットは、これに限るものではなく、テープの数は、複数であれば任意の数を採用し得るものである。
【0045】
また、上述した実施形態では、テープ巻き方法に用いるテープセット、及び、そのテープセットを用いた斜め巻き工程の各一例として、次のようなテープセット2及び斜め巻き工程が例示されている。即ち、テープセットの一例として、テープ幅が互いに同じ複数(本実施形態では2つ)のテープ21を有するテープセット2が例示されている。また、斜め巻き工程の一例として、巻付けテープ間隔P11が、テープ幅T11の3倍以下でゼロ以上(本実施形態ではテープ幅T11と等距離)となる斜め巻き工程が例示されている。しかしながら、テープセット及び斜め巻き工程は、これに限るものではない。テープセットは、テープ幅が互いに異なるテープを有するものであってもよい。そして、その場合に、斜め巻き工程を、巻付けテープ間隔が、最大テープ幅の3倍以下でゼロ以上となるように斜め巻きを行う工程としてもよい。
【0046】
また、上述した実施形態では、斜め巻き工程の一例として、傾き角度θ1を50°とした斜め巻き工程が例示されている。しかしながら、斜め巻き工程におけるテープの傾きは、具体的な角度値を問うものではない。
【0047】
また、上述した実施形態では、巻始め工程及び巻終り工程の各一例として、巻軸方向D12が長さ方向D11に沿った状態のテープセット2による不動テープ巻きを2回行うステップS12の工程が例示されている。しかしながら、巻始め工程及び巻終り工程は、これに限るものではなく、その具体的な巻き方を問うものではない。ただし、不動テープ巻きを2回行うステップS12の工程によれば、巻き始めと巻終りの巻き付け状態を安定させることができる点は上述した通りである。尚、不動テープ巻きの回数は2回以上であれば、任意の回数を設定し得るものである。
【0048】
また、本実施形態では、斜め巻き工程の一例として、テープセットの傾け及び傾き解消が、各テープ21を巻き付けながらテープセット2を徐々に動かすことで行われるステップS12の工程を備えた斜め巻き工程が例示されている。しかしながら、斜め巻き工程は、これに限るものではなく、例えばテープの巻き付けは行わずに一気にテープセットを傾ける、あるいは傾きを一気に解消する工程等であってもよい。ただし、テープ21を巻き付けながらテープセット2を徐々に動かすことで、テープセット2の傾け及び傾き解消を、各テープ21をテープ巻き対象1aに密着させて、良好な巻き付け状態を維持しつつ行うことができる点は上述した通りである。
【0049】
また、本実施形態では、テープ巻き方法の一例として、巻付けテープ間隔P11がテープ幅T11と等しくし、テープ間隔W11がテープ幅T11よりも短い間隔に調節されたテープセット2を用いるテープ巻き方法が例示されている。しかしながら、テープ巻き方法は、これに限るものではなく、巻付けテープ間隔はテープ幅以下であれば任意の間隔に設定可能であり、テープセットのテープ間隔は、その設定された巻付けテープ間隔に応じた間隔に調節されることとしてもよい。ただし、巻付けテープ間隔P11がテープ幅T11と等しくなるようにテープ間隔W11を調節することで、テープセット2の移動量を最大限に延ばして作業効率を一層向上させることができる点は上述した通りである。
【0050】
また、本実施形態では、テープ巻き方法における斜め巻き工程の一例として、巻付けテープ間隔P11を一定にして斜め巻きを行う斜め巻き工程が例示されている。しかしながら、斜め巻き工程は、これに限るものではなく、巻付けテープ間隔を変えながら斜め巻きを行う工程であってもよい。例えば、複数のテープのテープ幅が互いに同じ場合に、巻付けテープ間隔について、ある巻き付け箇所ではゼロとし、別の箇所ではテープ幅と等距離にし、更に別の箇所ではテープ幅の2倍の距離とする等というように斜め巻きを行ってもよい。同様に、複数のテープのテープ幅が互いに異なる場合に、巻付けテープ間隔について、ある巻き付け箇所ではゼロとし、別の箇所では最大テープ幅と等距離にし、更に別の箇所では最大テープ幅の2倍の距離とする等というように斜め巻きを行ってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 ワイヤーハーネス
1a テープ巻き対象
2 テープセット
11 巻始め部分
12 斜め巻き部分
13 巻終り部分
21 テープ
D11 長さ方向
D12 巻軸方向
D13 回転方向
D14 移動方向
D15 傾け方向
d1 第1基準距離
d2 第2基準距離
L1 移動量
P11 巻付けテープ間隔
T11 テープ幅
T12 巻付けテープ幅
W11 テープ間隔
θ1 傾き角度