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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014279
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/209 20170101AFI20240125BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240125BHJP
   B29C 64/321 20170101ALI20240125BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20240125BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20240125BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240125BHJP
【FI】
B29C64/209
B33Y30/00
B29C64/321
B33Y40/00
B29C64/295
B29C64/106
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116982
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】合津 昌幸
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AP02
4F213AP05
4F213AP19
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL74
(57)【要約】
【課題】制御が容易になる三次元造形装置を提供する。
【解決手段】材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部、および前記可塑化材料を吐出するノズルを有する吐出部と、前記可塑化材料が積層されるステージと、前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変化させる移動部と、前記ステージに積層された前記可塑化材料を加熱するヒーターを有し、貫通孔が形成されたプレート形状の加熱部と、前記加熱部と別体であり、前記貫通孔の内壁および周縁の少なくとも一方を覆う被覆部材と、を含み、三次元造形物の造形時において、前記ノズルの少なくとも一部は、前記貫通孔内に位置し、前記加熱部は、前記ノズルの前記ステージに対する相対的な移動に連動して移動するように構成されている、三次元造形装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部、および前記可塑化材料を吐出するノズルを有する吐出部と、
前記可塑化材料が積層されるステージと、
前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変化させる移動部と、
前記ステージに積層された前記可塑化材料を加熱するヒーターを有し、貫通孔が形成されたプレート形状の加熱部と、
前記加熱部と別体であり、前記貫通孔の内壁および周縁の少なくとも一方を覆う被覆部材と、
を含み、
三次元造形物の造形時において、前記ノズルの少なくとも一部は、前記貫通孔内に位置し、
前記加熱部は、前記ノズルの前記ステージに対する相対的な移動に連動して移動するように構成されている、三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1において、
三次元造形物の造形時において、前記ノズルのノズル開口は、前記可塑化材料の積層方向において、前記加熱部と前記ステージとの間に位置する、三次元造形装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記被覆部材は、前記貫通孔に嵌合する形状を有して、前記周縁を被覆し、
前記被覆部材と前記内壁との間には、隙間が形成されている、三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記加熱部は、第1プレートと、前記ヒーターを有する第2プレートとが、積層された積層構造を有し、
前記第1プレートは、前記ステージと前記第2プレートとの間に設けられ、
前記被覆部材は、前記第2プレートで構成された前記周縁を被覆する、三次元造形装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記被覆部材の熱膨張率は、前記第1プレートの熱膨張率以下である、三次元造形装置。
【請求項6】
請求項1または2において、
前記可塑化材料が流れる流路に設けられ、前記流路内の前記可塑化材料の圧力を検出する圧力センサーを含む、三次元造形装置。
【請求項7】
請求項1または2において、
前記ステージの上方に配置され、前記ステージに積層された前記可塑化材料の温度を検出する温度センサーを含む、三次元造形装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記加熱部には、
前記貫通孔としての第1貫通孔および第2貫通孔と、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との間に位置する第3貫通孔と、
が形成され、
前記ノズルとして第1ノズルおよび第2ノズルが設けられ、
前記第1ノズルによる三次元造形物の造形時において、前記第1ノズルの少なくとも一部は、前記第1貫通孔内に位置し、
前記第2ノズルによる三次元造形物の造形時において、前記第2ノズルの少なくとも一部は、前記第2貫通孔内に位置し、
前記温度センサーの少なくとも一部は、前記第3貫通孔内に位置する、三次元造形装置。
【請求項9】
請求項1または2において、
発光部および受光部を有し、前記周縁における前記可塑化材料の付着を検出する付着物センサーを含む、三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可塑化された材料を、ステージに向けて吐出して、硬化させることによって三次元造形物を造形する三次元造形装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、3次元物体を支持するように構成されたプラットフォームと、熱可塑性材料を堆積する押出しヘッドと、支持アームを介して押出しヘッドに連結されたエネルギー源と、を含む装置が記載されている。特許文献1に記載された装置では、エネルギー源によってプラットフォームに堆積された層を加熱した後に、当該層上に後続の層を堆積して、2層の間の結合強度を増大させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-523063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、加熱した層上に後続の層を積層するために、押出しヘッドのノズルの前方を、エネルギー源で加熱する必要がある。そのため、ノズルの移動方向を変化させるたびに、ノズルの前方を加熱できる位置にエネルギー源を移動させなくてはならない。したがって、装置の制御が複雑になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る三次元造形装置の一態様は、
材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部、および前記可塑化材料を吐出するノズルを有する吐出部と、
前記可塑化材料が積層されるステージと、
前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変化させる移動部と、
前記ステージに積層された前記可塑化材料を加熱するヒーターを有し、貫通孔が形成されたプレート形状の加熱部と、
前記加熱部と別体であり、前記貫通孔の内壁および周縁の少なくとも一方を覆う被覆部材と、
を含み、
三次元造形物の造形時において、前記ノズルの少なくとも一部は、前記貫通孔内に位置し、
前記加熱部は、前記ノズルの前記ステージに対する相対的な移動に連動して移動するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る三次元造形装置を模式的に示す斜視図。
図2】本実施形態に係る三次元造形装置を模式的に示す断面図。
図3】本実施形態に係る三次元造形装置のフラットスクリューを模式的に示す斜視図。
図4】本実施形態に係る三次元造形装置のバレルを模式的に示す平面図。
図5】本実施形態に係る三次元造形装置を模式的に示す断面図。
図6】本実施形態に係る三次元造形装置を模式的に示す断面図。
図7】本実施形態に係る三次元造形装置の被覆部材を模式的に示す斜視図。
図8】本実施形態に係る三次元造形装置を模式的に示す断面図。
図9】本実施形態に係る三次元造形装置の制御部の処理を説明するためのフローチャート。
図10】本実施形態に係る三次元造形装置の造形層形成処理を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1. 三次元造形装置
1.1. 全体の構成
まず、本実施形態に係る三次元造形装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る三次元造形装置100を模式的に示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る三次元造形装置100を模式的に示す図1のII-II線断面図である。
【0010】
なお、図1および図2では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を示している。X軸方向およびY軸方向は、例えば、水平方向である。Z軸方向は、例えば、鉛直方向である。
【0011】
三次元造形装置100は、図1および図2に示すように、例えば、吐出部10と、ステージ20と、移動部30と、支持部材40と、加熱部50と、被覆部材60と、圧力センサー70と、温度センサー72と、付着物センサー74と、制御部80と、を含む。
【0012】
三次元造形装置100は、吐出部10からステージ20に向けて可塑化された可塑化材料を吐出させつつ、移動部30を駆動して、吐出部10とステージ20との相対的な位置を変化させる。これにより、三次元造形装置100は、ステージ20上に所望の形状の三次元造形物を造形する。
【0013】
三次元造形装置100は、吐出部10として、第1吐出部10aおよび第2吐出部10bを含む。図示の例では、第1吐出部10aおよび第2吐出部10bは、X軸方向に並んでいる。第1吐出部10aおよび第2吐出部10bの構成は、例えば、同じである。第1吐出部10aおよび第2吐出部10bは、ともに三次元造形物を構成する可塑化材料を吐出してもよいし、一方が可塑化材料を吐出し、他方が三次元造形物を支持するサポート材を吐出してもよい。なお、図示はしないが、第1吐出部10aおよび第2吐出部10bのうちの一方は、設けられていなくてもよい。
【0014】
吐出部10は、例えば、材料供給部110と、可塑化部120と、ノズル160と、を有している。
【0015】
材料供給部110には、ペレット状や粉末状の材料が投入される。材料供給部110は、可塑化部120に原料となる材料を供給する。材料供給部110は、例えば、ホッパーによって構成されている。材料供給部110によって供給される材料は、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂である。
【0016】
材料供給部110と可塑化部120とは、図2に示すように、材料供給部110の下方に設けられた供給路112によって接続されている。材料供給部110に投入された材料は、供給路112を介して、可塑化部120に供給される。
【0017】
可塑化部120は、例えば、スクリューケース122と、駆動モーター124と、フラットスクリュー130と、バレル140と、ヒーター150と、を有している。可塑化部120は、材料供給部110から供給された固体状態の材料を可塑化し、流動性を有するペースト状の可塑化材料を生成して、ノズル160に供給する。なお、図示はしないが、可塑化部120は、フラットスクリュー130ではなく、側面部分に螺旋溝を有する長尺のインラインスクリューを備え、インラインスクリューの回転によって材料を可塑化してもよい。
【0018】
なお、可塑化とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0019】
スクリューケース122は、フラットスクリュー130を収容する筐体である。スクリューケース122の下面には、バレル140が設けられている。スクリューケース122とバレル140とによって囲まれた空間に、フラットスクリュー130が収容されている。
【0020】
駆動モーター124は、スクリューケース122の上面に設けられている。駆動モーター124は、例えば、サーボモーターである。駆動モーター124のシャフト126は、フラットスクリュー130の上面131に接続されている。駆動モーター124は、制御部80によって制御される。なお、図示はしないが、減速機を介して、駆動モーター124のシャフト126と、フラットスクリュー130の上面131とが、接続されていてもよい。
【0021】
フラットスクリュー130は、回転軸R方向の大きさが、回転軸R方向と直交する方向の大きさよりも小さい略円柱形状を有している。図示の例では、回転軸Rは、Z軸と平行である。駆動モーター124が発生させるトルクによって、フラットスクリュー130は、回転軸Rを中心に回転する。
【0022】
フラットスクリュー130は、上面131と、上面131とは反対側の溝形成面132と、上面131と溝形成面132とを接続する側面133と、を有している。溝形成面132には、第1溝134が形成されている。側面133は、例えば、溝形成面132に対して垂直である。ここで、図3は、フラットスクリュー130を模式的に示す斜視図である。なお、便宜上、図3では、図2に示した状態とは上下の位置関係を逆向きとした状態を示している。
【0023】
フラットスクリュー130の溝形成面132には、図3に示すように、第1溝134が形成されている。第1溝134は、例えば、中央部135と、接続部136と、材料導入部137と、を有している。中央部135は、バレル140に形成された連通孔146と対向している。中央部135は、連通孔146と連通している。接続部136は、中央部135と材料導入部137とを接続している。図示の例では、接続部136は、中央部135から溝形成面132の外周に向かって渦状に設けられている。材料導入部137は、溝形成面132の外周に設けられている。すなわち、材料導入部137は、フラットスクリュー130の側面133に設けられている。材料供給部110から供給された材料は、材料導入部137から第1溝134に導入され、接続部136および中央部135を通って、バレル140に形成された連通孔146に搬送される。第1溝134は、例えば、2つ設けられている。
【0024】
なお、第1溝134の数は、特に限定されない。図示はしないが、第1溝134は、3つ以上設けられていてもよいし、1つだけ設けられていてもよい。
【0025】
バレル140は、図2に示すように、フラットスクリュー130の下方に設けられている。バレル140は、フラットスクリュー130の溝形成面132に対向する対向面142を有している。対向面142の中心には、第1溝134と連通する連通孔146が形成されている。ここで、図4は、バレル140を模式的に示す平面図である。
【0026】
バレル140の対向面142には、図4に示すように、第2溝144と、連通孔146と、が形成されている。第2溝144は、複数形成されている。図示の例では、6つの第2溝144が形成されているが、第2溝144の数は、特に限定されない。複数の第2溝144は、Z軸方向からみて、連通孔146の周りに形成されている。第2溝144は、一端が連通孔146に接続され、連通孔146からバレル140の外周148に向かって渦状に延びている。第2溝144は、可塑化された可塑化材料を連通孔146に導く機能を有している。
【0027】
なお、第2溝144の形状は、特に限定されず、例えば、直線状であってもよい。また、第2溝144は、一端が連通孔146に接続されていなくてもよい。さらに、第2溝144は、対向面142に形成されていなくてもよい。ただし、連通孔146に可塑化された材料を効率よく導くことを考慮すると、第2溝144は、対向面142に形成されていることが好ましい。
【0028】
ヒーター150は、図2に示すように、バレル140に設けられている。ヒーター150は、フラットスクリュー130とバレル140との間に供給された材料を加熱する。ヒーター150の出力は、制御部80によって制御される。可塑化部120は、フラットスクリュー130、バレル140、およびヒーター150によって、材料を連通孔146に向かって搬送しながら加熱して可塑化された可塑化材料を生成する。そして、可塑化部120は、生成された可塑化材料を連通孔146から流出させる。
【0029】
なお、Z軸方向からみて、ヒーター150の形状は、リング形状であってもよい。また、ヒーター150は、バレル140ではなく、例えば、ノズル160に設けられていてもよい。
【0030】
ノズル160は、バレル140の下方に設けられている。ノズル160には、ノズル流路162が形成されている。ノズル流路162は、連通孔146に連通している。ノズル流路162には、連通孔146から可塑化材料が供給される。ノズル流路162は、ノズル開口164を有している。ノズル開口164は、ノズル160の先端に形成されている。図示の例では、ノズル開口164は、ノズル160の-Z軸方向の端に形成されている。ノズル160は、ノズル開口164から可塑化材料をステージ20に向けて吐出する。
【0031】
ステージ20は、図1および図2に示すように、ノズル160の下方に設けられている。図示の例では、ステージ20の形状は、直方体である。ステージ20は、可塑化材料が堆積される堆積面22を有している。堆積面22は、ステージ20の上面の領域である。堆積面22には、可塑化材料が積層される。図示の例では、可塑化材料の積層方向は、Z軸方向である。
【0032】
ステージ20の材質は、例えば、アルミニウムなどの金属である。ステージ20は、金属板と、金属板に設けられた密着シートと、によって構成されていてもよい。この場合、堆積面22は、密着シートによって構成される。密着シートは、ステージ20と、吐出部10から吐出される可塑化材料と、の密着性を向上させることができる。
【0033】
ステージ20は、図示はしないが、溝が形成された金属板と、溝を埋めるように設けられた下地層と、によって構成されていてもよい。この場合、堆積面22は、下地層によって構成される。下地層の材質は、例えば、可塑化材料と同じである。下地層は、ステージ20と、吐出部10から吐出される可塑化材料と、の密着性を向上させることができる。
【0034】
移動部30は、ステージ20を支持している。移動部30は、ノズル160とステージ20との相対的な位置を変化させる。図示の例では、移動部30は、ステージ20をX軸方向およびY軸方向に移動させることによって、X軸方向およびY軸方向において、ノズル160とステージ20との相対的な位置を変化させる。さらに、移動部30は、吐出部10をZ軸方向に移動させることによって、Z軸方向において、ノズル160とステージ20との相対的な位置を変化せる。
【0035】
移動部30は、例えば、第1電動アクチュエーター32と、第2電動アクチュエーター34と、第3電動アクチュエーター36と、を有している。第1電動アクチュエーター32は、ステージ20をX軸方向に移動させる。第2電動アクチュエーター34は、ステージ20をY軸方向に移動させる。第3電動アクチュエーター36は、吐出部10をZ軸方向に移動させる。
【0036】
なお、移動部30は、ノズル160とステージ20との相対的な位置を変化させることができれば、その構成は、特に限定されない。移動部30は、例えば、ステージ20をZ軸方向に移動させ、吐出部10をX軸方向およびY軸方向に移動させる構成であってもよい。または、移動部30は、ステージ20または吐出部10をX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に移動させる構成であってもよい。
【0037】
支持部材40は、第3電動アクチュエーター36に接続されている。支持部材40は、吐出部10および加熱部50を支持している。移動部30は、第3電動アクチュエーター36によって支持部材40をZ軸方向に移動させることにより、吐出部10および加熱部50をZ軸方向に移動させる。
【0038】
加熱部50は、ステージ20の上方に設けられている。加熱部50は、支持部材40に接続されている。加熱部50は、ノズル160のステージ20に対する相対的な移動に連動して移動するように構成されている。加熱部50の形状は、プレート形状である。図1に示す例では、加熱部50の形状は、直方体である。Z軸方向からみて、加熱部50の面積は、ステージ20の面積よりも大きい。
【0039】
加熱部50は、図2に示すように、例えば、第1プレート52と、第2プレート54と、を有している。加熱部50は、第1プレート52と第2プレート54とが積層された積層構造を有している。
【0040】
第1プレート52は、ステージ20と第2プレート54との間に設けられている。第1プレート52の材質は、アルミニウムである。図示の例では、第1プレート52の厚さは、第2プレート54の厚さよりも大きい。
【0041】
第2プレート54は、第1プレート52上に設けられている。第2プレート54は、ヒーター55を有している。ヒーター55は、ステージ20上に堆積された可塑化材料を加熱する。これにより、ステージ20上に堆積された可塑化材料と、当該可塑化材料上に堆積された後続の可塑化材料と、の間の密着性を向上できる。図示の例では、第2プレート54は、ヒーター55で構成されている。ヒーター55は、例えば、シリコンラバーヒーターである。ヒーター55の出力は、制御部80によって制御される。なお、図示はしないが、第2プレート54上に断熱部材が設けられていてもよい。
【0042】
加熱部50には、貫通孔56が形成されている。貫通孔56は、第1プレート52および第2プレート54をZ軸方向に貫通している。三次元造形物の造形時において、ノズル160の少なくとも一部は、貫通孔56内に位置する。図示の例では、ノズル160の一部は、貫通孔56内に位置している。三次元造形物の造形時において、ノズル160のノズル開口164は、Z軸方向において、加熱部50とステージ20との間に位置している。図示の例では、ノズル開口164は、加熱部50よりも-Z軸方向に位置している。ノズル開口164は、ステージ20よりも+Z軸方向に位置している。
【0043】
加熱部50には、貫通孔56として、例えば、第1貫通孔56aおよび第2貫通孔56bが形成されている。第1吐出部10aのノズル160による三次元造形物の造形時において、第1吐出部10aのノズル160の少なくとも一部は、第1貫通孔56a内に位置している。第2吐出部10bのノズル160による三次元造形物の造形時において、第2吐出部10bのノズル160の少なくとも一部は、第2貫通孔56b内に位置している。図示の例では、第1吐出部10aのノズル160の一部は、第1貫通孔56a内に位置している。第2吐出部10bのノズル160の一部は、第2貫通孔56b内に位置している。
【0044】
なお、図示はしないが、第1吐出部10aのノズル160による三次元造形物の造形時において、第2吐出部10bのノズル160は、第2貫通孔56b内に位置しておらず、第2貫通孔56bの+Z軸方向に位置していてもよい。また、第2吐出部10bのノズル160による三次元造形物の造形時において、第1吐出部10aのノズル160は、第1貫通孔56a内に位置しておらず、第1貫通孔56aの+Z軸方向に位置していてもよい。
【0045】
加熱部50には、さらに、第3貫通孔58が形成されている。第3貫通孔58は、第1プレート52および第2プレート54をZ軸方向に貫通している。第3貫通孔58は、第1貫通孔56aと第2貫通孔56bとの間に位置している。
【0046】
被覆部材60は、加熱部50に設けられている。被覆部材60は、加熱部50の移動に伴って移動する。ここで、図5および図6は、被覆部材60を模式的に示す断面図である。図7は、被覆部材60を模式的に示す斜視図である。なお、図5は、図2の拡大図である。図6は、図5の拡大図である。
【0047】
被覆部材60は、図5および図6に示すように、貫通孔56の内壁57aおよび周縁57bの少なくとも一方を被覆している。内壁57aおよび周縁57bは、加熱部50によって構成されている。図示の例では、被覆部材60は、周縁57bを被覆している。被覆部材60は、周縁57bと接している。周縁57bは、Z軸方向からみて、貫通孔56からの距離が、加熱部50の厚さの3倍以内の領域である。
【0048】
被覆部材60と貫通孔56の内壁57aとは、例えば、図6に示すように、離隔している。被覆部材60と内壁57aとの間には、例えば、隙間2が形成されている。図示の例では、被覆部材60は、加熱部50の上面を被覆している。具体的には、被覆部材60は、第2プレート54で構成された周縁57bを被覆している。図示の例では、被覆部材60は、加熱部50の下面を被覆していない。
【0049】
なお、図示はしないが、被覆部材60は、周縁57bを被覆せずに、内壁57aを被覆していてもよい。また、被覆部材60は、内壁57aおよび周縁57bを被覆していてもよい。
【0050】
被覆部材60は、図5図7に示すように、貫通孔56に位置する第1部分62と、貫通孔56に位置しない第2部分64と、を有している。第1部分62および第2部分64が互いに接続されることにより、被覆部材60は、貫通孔56に嵌合する形状を有している。図示の例では、第1部分62は、Z軸方向に延在している。第2部分64は、Z軸方向と直交する方向に延在している。第1部分62のZ軸方向の大きさは、例えば、加熱部50の厚さの半分よりも大きく、加熱部50の厚さ以下である。図示はしないが、第1部分62のZ軸方向の大きさは、加熱部50の厚さより大きくてもよい。Z軸方向からみて、被覆部材60の形状は、例えば、リング形状である。
【0051】
被覆部材60は、加熱部50と別体である。被覆部材60は、加熱部50と一体的に設けられていない。被覆部材60は、加熱部50に着脱可能である。被覆部材60は、ねじや接着剤によって、加熱部50に接続されていない。
【0052】
被覆部材60の熱膨張率は、例えば、第1プレート52の熱膨張率以下である。被覆部材60の熱膨張率は、第1プレート52の熱膨張率より小さくてもよい。被覆部材60の材質は、例えば、SUS(Steel Use Stainless)、アルミニウムなどである。
【0053】
圧力センサー70は、図2に示すように、吐出部10に形成された流路12に設けられている。流路12には、可塑化材料が流れる。流路12は、例えば、バレル140に形成された連通孔146と、ノズル160に形成されたノズル流路162と、によって構成されている。なお、連通孔146と、ノズル流路162とをつなぐ接続流路が設けられる場合には、流路12は、連通孔146と、接続流路と、ノズル流路162と、によって構成される。圧力センサー70は、水晶を有し、水晶の圧電効果を利用して、圧力を電気信号として検出する。圧力センサー70は、例えば、他の圧電素子を有する圧力センサーであってもよいし、静電容量式の圧力センサー等であってもよい。圧力センサー70は、ノズル開口164よりも上流に設けられている。図示の例では、圧力センサー70は、連通孔146に設けられている。圧力センサー70は、流路12を通る可塑化材料の圧力を検出する。圧力センサー70は、流路12内の可塑化材料の圧力を検出する。圧力センサー70による検出結果は、例えば、制御部80に送信される。なお、図示はしないが、圧力センサー70は、ノズル流路162または接続流路に設けられていてもよい。
【0054】
温度センサー72は、ステージ20の上方に配置されている。温度センサー72の少なくとも一部は、第3貫通孔58内に位置している。図示の例では、温度センサー72の一部は、第3貫通孔58内に位置している。温度センサー72は、加熱部50の移動に伴って移動する。温度センサー72は、例えば、加熱部50に支持されている。温度センサー72は、ステージ20に積層された可塑化材料の温度を検出する。本実施形態では、温度センサー72は、例えば、熱電対、サーミスター、赤外線センサーなどである。温度センサー72による検出結果は、例えば、制御部80に送信される。
【0055】
付着物センサー74は、例えば、ステージ20よりも+Z軸方向に位置している。付着物センサー74は、加熱部50の移動に伴って移動する。付着物センサー74は、例えば、加熱部50に支持されている。付着物センサー74は、Z軸方向からみて、加熱部50と重ならない位置に設けられている。これにより、加熱部50の移動に伴って付着物センサー74が移動しても、付着物センサー74がステージ20に衝突することを防止できる。
【0056】
付着物センサー74は、例えば、発光部76と、受光部78と、を有している。図示の例では、発光部76は、加熱部50よりも-X軸方向に設けられている。受光部78は、加熱部50よりも+X軸方向に設けられている。発光部76は、受光部78に向けて、光を射出する。発光部76は、例えば、レーザー素子を含んで構成されている。受光部78は、発光部76からの光を受光する。受光部78は、例えば、フォトダイオードを含んで構成されている。
【0057】
ここで、図8は、図2に示すVIII-VIII線断面図である。発光部76は、図8に示すように、例えば、2つの射出面77を有する。射出面77は、光を射出する。ノズル開口164は、Z軸方向からみて、2つの射出面77から射出される光の間に位置している。
【0058】
付着物センサー74では、発光部76で射出された光を受光部78で受光する。付着物センサー74は、受光部78で受光した光の強度によって、周縁57bにおける可塑化材料の付着を検出する。例えば、付着物センサー74は、受光部78で受光した光の強度によって、周縁57bにおける可塑化材料の付着の有無を検出する。可塑化材料が周縁57bに付着している場合、受光部78で受光した光の強度は、標準値よりも小さくなる。付着物センサー74は、例えば、光電センサー、レーザーセンサーである。
【0059】
制御部80は、例えば、プロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースと、を有するコンピューターによって構成されている。制御部80は、例えば、主記憶装置に読み込んだプログラムをプロセッサーが実行することによって、種々の機能を発揮する。具体的には、制御部80は、吐出部10、移動部30、および加熱部50を制御する。なお、制御部80は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0060】
1.2. 動作
図9は、三次元造形装置100の動作を説明するためのフローチャートである。具体的には、図9は、制御部80の処理を説明するためのフローチャートである。
【0061】
ユーザーは、例えば、図示せぬ操作部を操作して、制御部80に処理を開始するための処理開始信号を出力する。操作部は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネルなどによって構成されている。制御部80は、処理開始信号を受けると処理を開始する。
【0062】
1.2.1. 造形データ取得処理
まず、制御部80は、図9に示すように、ステップS1として、三次元造形物を造形するための造形データを取得する造形データ取得処理を行う。
【0063】
造形データは、例えば、材料供給部110に供給される材料の種類、ステージ20に対する吐出部10の移動経路、吐出部10から吐出される可塑化材料の量などに関する情報を含む。
【0064】
造形データは、例えば、三次元造形装置100に接続されたコンピューターにインストールされたスライサーソフトに、形状データを読み込ませることによって作成される。形状データは、三次元CAD(Computer Aided Design)ソフトや三次元CG(Computer Graphics)ソフトなどを用いて作成された三次元造形物の目標形状を表すデータである。形状データとしては、例えば、STL(Standard Triangulated Language)形式やAMF(Additive Manufacturing File Format)などのデータを用いる。スライサーソフトは、三次元造形物の目標形状を所定の厚さの層に分割して、層ごとに造形データを作成する。造形データは、GコードやMコードなどによって表される。制御部80は、三次元造形装置100に接続されたコンピューターや、USB(Universal Serial Bus)メモリーなどの記録媒体から造形データを取得する。
【0065】
1.2.2. 造形層形成処理
次に、制御部80は、ステップS2として、ステージ20の堆積面22に、可塑化材料を吐出して造形層を形成する造形層形成処理を行う。
【0066】
具体的には、制御部80は、駆動モーター124およびヒーター150を駆動させ、フラットスクリュー130とバレル140との間に供給された材料を可塑化して可塑化材料を生成させる。そして、制御部80は、ノズル160のノズル開口164から可塑化材料を吐出させる。制御部80は、例えば、造形層形成処理が終了するまで可塑化材料を生成させ続ける。ここで、図10は、造形層を形成する処理を説明するための断面図である。
【0067】
制御部80は、図10に示すように、取得した造形データに基づいて、移動部30を制御してノズル160とステージ20との相対的な位置を変化させつつ、吐出部10を制御してノズル160からステージ20に向けて可塑化材料を吐出させる。
【0068】
具体的には、造形層を形成する処理が開始される前、すなわち、第1層目の造形層である造形層L1の形成が開始される前では、ノズル160は、ステージ20の-X軸方向の端部よりも-X軸方向の初期位置に配置されている。造形層を形成する処理が開始されると、図10に示すように、制御部80は、移動部30を制御することによって、例えば、ステージ20に対してノズル160を+X軸方向に相対移動させる。ノズル160がステージ20上を通過する際、ノズル160から可塑化材料が吐出される。これにより、造形層L1が形成される。図10では、nを任意の自然数として、第n層目の造形層Lnまでを図示している。
【0069】
制御部80は、造形層形成処理において、圧力センサー70、温度センサー72、および付着物センサー74からの検出結果を取得する。そして、制御部80は、取得した検出結果を図示せぬ表示部に表示させる。これにより、ユーザーは、圧力センサー70、温度センサー72、および付着物センサー74の検出結果を知ることができる。制御部80による検出結果の取得および表示は、例えば、ユーザーによって設定されたタイミングで行われる。表示部は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ、EPD(Electrophoretic Display)などによって構成されている。
【0070】
1.2.3. 判定処理
次に、制御部80は、図9に示すように、ステップS3として、造形データに基づいて、全ての造形層の形成が完了したか否か判定する判定処理を行う。
【0071】
全ての造形層の形成が完了していないと判定した場合(ステップS3で「NO」)、制御部80は、処理をステップS2に戻す。制御部80は、ステップS3において、全ての造形層の形成が完了したと判定するまで、ステップS2とステップS3とを繰り返す。
【0072】
一方、全ての造形層の形成が完了したと判定した場合(ステップS3で「YES」)、制御部80は、処理を終了する。
【0073】
1.3. 作用効果
三次元造形装置100では、ステージ20に積層された可塑化材料を加熱するヒーター55を有し、貫通孔56が形成されたプレート形状の加熱部50を含む。加熱部50は、ノズル160のステージ20に対する相対的な移動に連動して移動するように構成されている。そのため、三次元造形装置100では、ノズル160の移動方向を変化させても、加熱部50の移動方向をノズル160とは別に変化させることなく、加熱部50によってステージ20に積層された可塑化材料を加熱できる。その結果、三次元造形装置100の制御が容易になる。
【0074】
さらに、三次元造形装置100では、加熱部50と別体であり、貫通孔56の内壁57aおよび周縁57bの少なくとも一方を覆う被覆部材60を含む。そのため、三次元造形装置100では、例えば吐出不良によって、加熱部50に可塑化材料が付着することを抑制できる。さらに、被覆部材60に可塑化材料が付着したとしても、被覆部材60を交換することにより、付着した可塑化材料を除去できる。そのため、例えば加熱部を交換することにより付着した可塑化材料を除去する場合に比べて、コストを低くできる。
【0075】
三次元造形装置100では、三次元造形物の造形時において、ノズル160のノズル開口164は、可塑化材料の積層方向において、加熱部50とステージ20との間に位置する。そのため、三次元造形装置100では、ノズル開口164から吐出された可塑化材料が加熱部50に付着する可能性を小さくできる。
【0076】
三次元造形装置100では、被覆部材60は、貫通孔56に嵌合する形状を有して、周縁57bを被覆する。被覆部材60と内壁57aとの間には、隙間2が形成されている。そのため、三次元造形装置100では、例えば被覆部材60および加熱部50の少なくとも一方が熱膨張したとしても、熱膨張に起因して加熱部50に生じる応力を低減できる。
【0077】
三次元造形装置100では、加熱部50は、第1プレート52と、ヒーター55を有する第2プレート54とが、積層された積層構造を有する。第1プレート52は、ステージ20と第2プレート54との間に設けられている。被覆部材60は、第2プレート54で構成された周縁57bを被覆する。そのため、三次元造形装置100では、第2プレート54に可塑化材料が付着することを抑制できる。
【0078】
三次元造形装置100では、被覆部材60の熱膨張率は、第1プレート52の熱膨張率以下である。そのため、三次元造形装置100では、被覆部材の熱膨張率が第1プレートの熱膨張率より大きい場合に比べて、被覆部材60が熱膨張したとしても、熱膨張に起因して加熱部50に生じる応力を低減できる。
【0079】
三次元造形装置100では、可塑化材料が流れる流路12に設けられ、流路12内の可塑化材料の圧力を検出する圧力センサー70を含む。そのため、三次元造形装置100のユーザーは、可塑化材料によって流路12が塞がれているか否か、知ることができる。可塑化材料によって流路12が塞がれている場合、圧力センサー70で検出される圧力は、基準値よりも高くなる。
【0080】
三次元造形装置100では、ステージ20の上方に配置され、ステージ20に積層された可塑化材料の温度を検出する温度センサー72を含む。そのため、三次元造形装置100のユーザーは、ノズル160から吐出された可塑化材料がステージ20に積層されている否か、知ることができる。ノズル160から吐出された可塑化材料がステージ20に積層されていない場合、温度センサー72で検出される温度は、基準値よりも低くなる。
【0081】
三次元造形装置100では、加熱部50には、貫通孔56としての第1貫通孔56aおよび第2貫通孔56bと、第1貫通孔56aと第2貫通孔56bとの間に位置する第3貫通孔58と、が形成されている。第1ノズルとして、第1吐出部10aのノズル160が設けられている。第2ノズルとして、第2吐出部10bのノズル160が設けられている。第1ノズルによる三次元造形物の造形時において、第1ノズルの少なくとも一部は、第1貫通孔56a内に位置する。第2ノズルによる三次元造形物の造形時において、第2ノズルの少なくとも一部は、第2貫通孔56b内に位置する。温度センサー72の少なくとも一部は、第3貫通孔58内に位置する。そのため、三次元造形装置100では、第1ノズルで三次元造形物の造形している場合における温度センサー72の検出温度と、第2ノズルで三次元造形物の造形している場合における温度センサー72の検出温度と、の差を小さくできる。
【0082】
三次元造形装置100では、周縁57bにおける可塑化材料の付着を検知する付着物センサー74を含む。そのため、三次元造形装置100のユーザーは、周縁57bに可塑化材料が付着したか否か、知ることができる。
【0083】
2. 三次元造形装置の変形例
次に、本実施形態の変形例に係る三次元造形装置について説明する。以下、本実施形態の変形例に係る三次元造形装置において、上述した本実施形態に係る三次元造形装置100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0084】
上述した三次元造形装置100では、材料供給部110から供給される材料は、ABS樹脂であった。
【0085】
これに対し、本実施形態の変形例に係る三次元造形装置では、材料供給部110から供給される材料は、ABS樹脂以外の材料、または、ABS樹脂に他の成分が加えられた材料である。
【0086】
材料供給部110から供給される材料としては、熱可塑性を有する材料、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料とした材料を挙げることができる。ここで、「主材料」とは、三次元造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、三次元造形物において50質量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0087】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、汎用エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
【0088】
汎用エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM )、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0089】
スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が挙げられる。
【0090】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、可塑化部120において、フラットスクリュー130の回転と、ヒーター150の加熱と、によって可塑化されて溶融した状態に転化される。また、そのように生成された可塑化材料は、ノズル160から堆積された後、温度の低下によって硬化する。熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル160から吐出されることが望ましい。
【0091】
可塑化部120では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、金属材料を粉末状にした粉末材料に、可塑化材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、可塑化部120に投入されることが望ましい。
【0092】
金属材料としては、例えば、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム (Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金、また、マルエージング鋼、ステンレス鋼、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金が挙げられる。
【0093】
可塑化部120においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックなどが挙げられる。
【0094】
材料供給部110から供給される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上述の熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、可塑化部120において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0095】
材料供給部110から供給される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、溶剤を添加することもできる。溶剤としては、例えば、水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等が挙げられる。
【0096】
その他に、材料供給部110から供給される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、バインダーが添加されていてもよい。バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂またはPLA、PA、PPS、PEEK、あるいはその他の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0097】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0098】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成できる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0099】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0100】
三次元造形装置の一態様は、
材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部、および前記可塑化材料を吐出するノズルを有する吐出部と、
前記可塑化材料が積層されるステージと、
前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変化させる移動部と、
前記ステージに積層された前記可塑化材料を加熱するヒーターを有し、貫通孔が形成されたプレート形状の加熱部と、
前記加熱部と別体であり、前記貫通孔の内壁および周縁の少なくとも一方を覆う被覆部材と、
を含み、
三次元造形物の造形時において、前記ノズルの少なくとも一部は、前記貫通孔内に位置し、
前記加熱部は、前記ノズルの前記ステージに対する相対的な移動に連動して移動するように構成されている。
【0101】
この三次元造形装置によれば、制御が容易になる。
【0102】
三次元造形装置の一態様において、
三次元造形物の造形時において、前記ノズルのノズル開口は、前記可塑化材料の積層方向において、前記加熱部と前記ステージとの間に位置してもよい。
【0103】
この三次元造形装置によれば、ノズル開口から吐出された可塑化材料が加熱部に付着する可能性を小さくできる。
【0104】
三次元造形装置の一態様において、
前記被覆部材は、前記貫通孔に嵌合する形状を有して、前記周縁を被覆し、
前記被覆部材と前記内壁との間には、隙間が形成されていてもよい。
【0105】
この三次元造形装置によれば、熱膨張に起因して加熱部に生じる応力を低減できる。
【0106】
三次元造形装置の一態様において、
前記加熱部は、第1プレートと、前記ヒーターを有する第2プレートとが、積層された積層構造を有し、
前記第1プレートは、前記ステージと前記第2プレートとの間に設けられ、
前記被覆部材は、前記第2プレートで構成された前記周縁を被覆してもよい。
【0107】
この三次元造形装置によれば、第2プレートに可塑化材料が付着することを抑制できる。
【0108】
三次元造形装置の一態様において、
前記被覆部材の熱膨張率は、前記第1プレートの熱膨張率以下であってもよい。
【0109】
この三次元造形装置によれば、熱膨張に起因して加熱部に生じる応力を低減できる。
【0110】
三次元造形装置の一態様において、
前記可塑化材料が流れる流路に設けられ、前記流路内の前記可塑化材料の圧力を検出する圧力センサーを含んでもよい。
【0111】
この三次元造形装置によれば、ユーザーは、可塑化材料によって流路が塞がれているか否か、知ることができる。
【0112】
三次元造形装置の一態様において、
前記ステージの上方に配置され、前記ステージに積層された前記可塑化材料の温度を検出する温度センサーを含んでもよい。
【0113】
この三次元造形装置によれば、ユーザーは、ノズルから吐出された可塑化材料がステージに積層されている否か、知ることができる。
【0114】
三次元造形装置の一態様において、
前記加熱部には、
前記貫通孔としての第1貫通孔および第2貫通孔と、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との間に位置する第3貫通孔と、
が形成され、
前記ノズルとして第1ノズルおよび第2ノズルが設けられ、
前記第1ノズルによる三次元造形物の造形時において、前記第1ノズルの少なくとも一部は、前記第1貫通孔内に位置し、
前記第2ノズルによる三次元造形物の造形時において、前記第2ノズルの少なくとも一部は、前記第2貫通孔内に位置し、
前記温度センサーの少なくとも一部は、前記第3貫通孔内に位置してもよい。
【0115】
この三次元造形装置によれば、第1ノズルで三次元造形物の造形している場合における温度センサーの検出温度と、第2ノズルで三次元造形物の造形している場合における温度センサーの検出温度と、の差を小さくできる。
【0116】
三次元造形装置の一態様において、
発光部および受光部を有し、前記周縁における前記可塑化材料の付着を検出する付着物センサーを含んでもよい。
【0117】
この三次元造形装置によれば、ユーザーは、周縁に可塑化材料が付着したか否か、知ることができる。
【符号の説明】
【0118】
2…隙間、10…吐出部、10a…第1吐出部、10b…第2吐出部、12…流路、20…ステージ、22…堆積面、30…移動部、32…第1電動アクチュエーター、34…第2電動アクチュエーター、36…第3電動アクチュエーター、40…支持部材、50…加熱部、52…第1プレート、54…第2プレート、55…ヒーター、56…貫通孔、56a…第1貫通孔、56b…第2貫通孔、57a…内壁、57b…周縁、58…第3貫通孔、60…被覆部材、62…第1部分、64…第2部分、70…圧力センサー、72…温度センサー、74…付着物センサー、76…発光部、77…射出面、78…受光部、80…制御部、100…三次元造形装置、110…材料供給部、120…可塑化部、122…スクリューケース、124…駆動モーター、126…シャフト、130…フラットスクリュー、131…上面、132…溝形成面、133…側面、134…第1溝、135…中央部、136…接続部、137…材料導入部、140…バレル、142…対向面、144…第2溝、146…連通孔、148…外周、150…ヒーター、160ノズル、162ノズル流路、164ノズル開口
図1
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図10