(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142796
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】光コヒーレンストモグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055127
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】三輪 珠美
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB03
4C316AB11
4C316AB16
4C316FY04
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】分光器に関する光コヒーレンストモグラフィ(OCT)計測条件の調整をシンプルな構成及び制御で実現する。
【解決手段】実施形態のOCT装置は、サンプルに投射された測定光の戻り光を参照光に重ね合わせて干渉光を生成し、分光器で検出する。分光器は、分散素子により入力光を複数の波長成分に分離し、光検出器によりこれら波長成分を別々に検出する。分散素子と光検出器との間には、レンズ移動機構により移動される可動レンズを含む結像レンズ系が設けられている。OCT装置は、光検出器からの出力に基づきレンズ移動機構を制御することによって可動レンズの位置を変える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルに投射された測定光の戻り光を参照光に重ね合わせて生成された干渉光を分光器で検出するように構成された光コヒーレンストモグラフィ装置であって、
前記分光器は、
入力光を複数の波長成分に分離する分散素子と、
前記複数の波長成分を別々に検出する光検出器と、
前記分散素子と前記光検出器との間に配置された複数のレンズからなる結像レンズ系と
を含み、
前記複数のレンズのうちの少なくとも1つのレンズである可動レンズを移動するためのレンズ移動機構と、
前記光検出器からの出力に基づいて前記レンズ移動機構の制御を行う第1の制御部と
を含む、
光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項2】
前記第1の制御部は、前記光検出器による検出光量に基づき前記レンズ移動機構の前記制御を行う、
請求項1の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項3】
前記第1の制御部は、前記可動レンズの光軸に対して垂直な方向に前記可動レンズを移動するように前記レンズ移動機構の前記制御を行う、
請求項1の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項4】
前記光検出器は、線状に配列された複数の受光素子からなる受光素子列を少なくとも1つ含み、
前記第1の制御部は、前記複数の受光素子の配列方向に対して垂直な第1の方向に前記可動レンズを移動するように前記レンズ移動機構の前記制御を行う、
請求項1の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項5】
前記第1の制御部は、前記測定光及び前記参照光を生成するための光源から出力された光を前記分光器により検出して取得されたスペクトルの強度情報に基づいて前記第1の方向に前記可動レンズを移動するように前記レンズ移動機構の前記制御を行う、
請求項4の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項6】
前記光検出器は、線状に配列された複数の受光素子からなる受光素子列を少なくとも1つ含み、
前記第1の制御部は、前記複数の受光素子の配列方向に平行な第2の方向に前記可動レンズを移動するように前記レンズ移動機構の前記制御を行う、
請求項1の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項7】
前記第1の制御部は、前記測定光及び前記参照光を生成するための光源から出力された光を前記分光器により検出して取得されたスペクトルの位置情報に基づいて前記第2の方向に前記可動レンズを移動するように前記レンズ移動機構の前記制御を行う、
請求項6の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項8】
前記第1の制御部は、前記可動レンズの光軸に平行な第3の方向に前記可動レンズを移動するように前記レンズ移動機構の前記制御を行う、
請求項1の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項9】
前記第1の制御部は、前記測定光及び前記参照光を生成するための光源から出力された光を前記分光器により検出して取得されたスペクトルの強度情報に基づいて前記第3の方向に前記可動レンズを移動するように前記レンズ移動機構の前記制御を行う、
請求項8の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項10】
前記結像レンズ系は、
前記分散素子と前記光検出器との間に配置された1つ以上のレンズからなる第1のレンズ群と、
前記分散素子と前記光検出器との間に挿脱される1つ以上のレンズからなる第2のレンズ群と
を含み、
前記第2のレンズ群が挿入されているときの前記結像レンズ系の焦点位置は、前記第2のレンズ群が退避されているときの前記結像レンズ系の焦点位置と同じであり、
前記第2のレンズ群が挿入されているときの前記結像レンズ系の焦点距離は、前記第2のレンズ群が退避されているときの前記結像レンズ系の焦点距離と異なる、
請求項1の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項11】
前記可動レンズは、前記第2のレンズ群における1つ以上のレンズを含む、
請求項10の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項12】
前記第2のレンズ群は、2つ以上のレンズを含む、
請求項10の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項13】
前記可動レンズは、前記第2のレンズ群における前記2つ以上のレンズのうちの一部のレンズである、
請求項12の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項14】
前記可動レンズは、前記第2のレンズ群における前記2つ以上のレンズの全てである、
請求項12の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項15】
前記結像レンズ系は、焦点距離が可変なズームレンズを含む、
請求項1の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項16】
前記光検出器を移動する光検出器移動機構と、
前記ズームレンズと前記光検出器移動機構との連係制御を行う第2の制御部と
を更に含む、
請求項15の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項17】
前記結像レンズ系は、焦点距離が可変な液体レンズを含む、
請求項1の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光コヒーレンストモグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:OCT)は、光の干渉性を利用してサンプル内部をマイクロメートルレベルの解像度で画像化する技術であり、医用イメージングや非破壊検査を含む様々な分野において実用化されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたOCT技術は、測定の高速化と、奥行方向の測定範囲(深さレンジ)の拡大との両立を目的としたものであり、分光器内の変倍レンズを光軸方向に移動して焦点距離を変更するとともに円柱レンズ及び受光素子(光検出器)も光軸方向に移動することによって深さレンジを変化させるように構成されている。そのため、この技術を実用化するには、複雑且つ大規模な駆動機構や、複雑且つ精緻な同期的駆動制御が要求される。なお、深さレンジを変更するために光学素子(変倍レンズ、円柱レンズ、光検出器)を移動したときに深さレンジ以外の条件も変化し、OCT計測に悪影響を与える可能性がある。しかしながら、特許文献1に記載された技術では、この問題を解決することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の1つの目的は、分光器に関するOCT計測条件の調整をシンプルな構成及び制御で実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置は、サンプルに投射された測定光の戻り光を参照光に重ね合わせて干渉光を生成し、生成された干渉光を分光器で検出するように構成されている。この分光器は、分散素子、光検出器、及び結像レンズ系を含んでいる。分散素子は、入力光を複数の波長成分に分離する。光検出器は、分散素子により入射光から生成された複数の波長成分を別々に検出する。結像レンズ系は、分散素子と光検出器との間に配置された複数のレンズからなる。結像レンズ系の複数のレンズのうちの少なくとも1つは可動レンズである。実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置は、レンズ移動機構及び第1の制御部を含んでいる。レンズ移動機構は、結像レンズ系の可動レンズを移動するように構成されている。第1の制御部は、光検出器からの出力に基づいてレンズ移動機構の制御を行うように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
実施形態によれば、分光器に関するOCT計測条件の調整をシンプルな構成及び制御で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図1B】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図2】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図3】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図4】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図5】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図6】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図7】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図8】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図9】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図10】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図11】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図12】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図13】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図14】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
【
図15】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の動作の一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係る実施形態のいくつかの非限定的な態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
本開示に係るいずれかの態様に任意の公知技術を組み合わせることができる。例えば、本明細書で引用する文献に開示されている任意の事項を、本開示に係るいずれかの態様に組み合わせることができる。また、本開示に関連する技術分野における任意の公知技術を、本開示に係るいずれかの態様に組み合わせることができる。例えば、本開示に関連する技術又は当該技術に応用可能な技術について本願の出願人により開示された任意の技術事項(特許出願、論文などにおいて開示された事項)を、本開示に係るいずれかの態様に援用することができる。
【0011】
本開示に記載された様々な態様のうちのいずれか2つ以上の態様を、少なくとも部分的に組み合わせることが可能である。
【0012】
本開示において説明される要素の機能の少なくとも一部は、回路構成(circuitry)又は処理回路構成(processing circuitry)を用いて実装される。回路構成又は処理回路構成は、開示された機能の少なくとも一部を実行するように構成及び/又はプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、従来の回路構成、及びそれらの任意の組み合わせのいずれかを含む。プロセッサは、トランジスタ及び/又は他の回路構成を含む、処理回路構成又は回路構成とみなされる。本開示において、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、開示された機能の少なくとも一部を実行するハードウェア、又は、開示された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されたハードウェアであってよく、或いは、記載された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラム及び/又は構成された既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが或るタイプの回路構成とみなされ得るプロセッサである場合、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、このソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサを構成するために使用される。
【0013】
本開示に係る実施形態のいくつかの態様を以下に挙げる。これらは単なる例示であり、本開示に係る実施形態を限定することを意図したものではない。また、本開示に係る任意の事項や任意の公知技術を、以下に例示するいずれかの態様に組み合わせることが可能である。
【0014】
前述したように、引用文献1に記載された発明は、OCT計測の深さレンジを変更するために分光器内の光学素子を移動する。この光学素子の移動は深さレンジ以外の条件を悪化させる可能性がある。例えば、レンズ(変倍レンズ、円柱レンズ)と光検出器との相対位置の変化が、光検出器に入射する光の強度の低下や、光検出器に対する光の投射位置のズレなどを引き起こす可能性がある。本開示に係る実施形態は、このようにして悪化した計測条件を修正するためのいくつかの技術を提供するものであり、特に、特許文献1に記載された発明よりもシンプルな構成及び制御でこれを実現するものである。
【0015】
実施形態の第1の非限定的な態様は、サンプルに投射された測定光の戻り光を参照光に重ね合わせて生成された干渉光を分光器で検出するように構成されている。分光器は、入力光を複数の波長成分に分離する分散素子と、これら複数の波長成分を別々に検出する光検出器と、分散素子と光検出器との間に配置された複数のレンズからなる結像レンズ系とを含んでいる。本態様の光コヒーレンストモグラフィ装置は、レンズ移動機構と第1の制御部とを含んでいる。レンズ移動機構は、結像レンズ系の複数のレンズのうちの少なくとも1つのレンズである可動レンズを移動するように構成されている。第1の制御部は、光検出器からの出力に基づいてレンズ移動機構の制御を行うように構成されている。
【0016】
第1の非限定的な態様によれば、光検出器からの出力に基づいて分光器内の可動レンズを移動することによって、深さレンジ以外の計測条件(分光器によるスペクトル検出状態を変化させる条件)を自動で調整することができる。特に、可動レンズを移動させるというシンプルな構成及び制御によって計測条件の自動調整を実現することが可能である。
【0017】
入力光は、分光器に入力された光であればその種類は問わない。いくつかの態様では、入力光は、光源により発生された光であってよい(例えば、後述の第5の非限定的な態様を参照)。この場合、OCT光学系のサンプルアームを無効化することによって、参照アームを通じて光源からの光を分光器に導くことができる。サンプルアームの無効化は、例えば、サンプルアームに設けられた光スキャナを制御することにより、又は、サンプルアームに遮光部材を配置することにより行われる。別のいくつかの態様では、入力光は、被検眼又は模型眼に投射された測定光の戻り光を参照光に重ね合わせて生成された干渉光であってよい。更に別のいくつかの態様では、入力光は、計測条件の調整のために外部光源から導かれた光であってもよい。
【0018】
実施形態の第2の非限定的な態様は、第1の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置であって、第1の制御部が、分光器の光検出器による検出光量に基づきレンズ移動機構の制御を行うように構成されていてよい。
【0019】
第2の非限定的な態様によれば、分光器の光検出器による検出光量を可動レンズの移動制御に利用したフィードバック制御を実行することができる。これにより、光検出器による検出光量の調整(キャリブレーション)を自動で行うことが可能になる。例えば、光検出器による検出光量を最大化するように自動調整を行うことが可能である。
【0020】
なお、検出光量を最大化すると検出光量が飽和することも想定されるが、一般的な光コヒーレンストモグラフィ装置には光量調整部材(アッテネータ)が設けられており、検出光量の飽和を防止することができる。光量調整部材が設けられていない場合や、検出光量の飽和が生じる場合、本態様は、光検出器による検出光量を「最適化」するように自動調整を行うことができる。
【0021】
実施形態の第3の非限定的な態様は、第1又は第2の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置であって、第1の制御部が、可動レンズの光軸に対して垂直な方向に可動レンズを移動するようにレンズ移動機構の制御を行うように構成されていてよい。
【0022】
第3の非限定的な態様によれば、分光器によるスペクトル検出状態の自動調整の1つの態様を提供することができる。より具体的には、可動レンズの光軸に対して垂直な方向に可動レンズを移動することで変化する計測条件の調整を自動で行うことができる。
【0023】
実施形態の第4の非限定的な態様は、第1~第3の非限定的な態様のいずれかの光コヒーレンストモグラフィ装置であって、分光器の光検出器は、線状に配列された複数の受光素子からなる受光素子列を少なくとも1つ含んでいる。更に、本態様の第1の制御部は、受光素子列をなす複数の受光素子の配列方向に対して垂直な方向(第1の方向)に可動レンズを移動するようにレンズ移動機構の制御を行うように構成されていてよい。
【0024】
第4の非限定的な態様によれば、光検出器に対する光の投射位置が適切な位置に対して第1の方向にずれている場合に、このズレを自動で補正することができる。これにより、1つ以上の受光素子列を有する光検出器にスペクトルを適切に検出させることが可能になる。より具体的には、光検出器に対する光の投射位置が適切な位置に対して第1の方向にずれている場合、分光器によって検出されるべき光の一部又は全部が受光素子から外れた位置に投射されるため分光器の検出効率が低下するが、第4の非限定的な態様を用いることによって分光器の検出効率を回復することが可能である。
【0025】
光検出器に対する光の投射位置を調整するための発明は、特開2008-203246号公報に開示されている。この公知発明は、Y軸オート調整などと呼ばれ、干渉光を分光器に導くための光ファイバの出射端を移動するように構成されている。第4の非限定的な態様は、このY軸オート調整の代替手段として採用可能である。
【0026】
第4の非限定的な態様においては、少なくとも、深さレンジを変更するための要素を用いて光投射位置の調整を行っている点において、公知のY軸オート調整と相違している。
【0027】
また、第4の非限定的な態様は、少なくとも、深さレンジの変更と光投射位置の変更とを共通の要素で行っている点において、公知のY軸オート調整よりも有利と言える。すなわち、第4の非限定的な態様によれば、専用のハードウェアを追加することなくY軸オート調整と同等の機能を付加することができるため、装置構成が複雑化したり大規模化したりすることがない。
【0028】
いくつかの非限定的な態様は、第4の非限定的な態様に係る機能を実施するための構成と、公知のY軸オート調整を実施するための構成との双方を具備していてよく、これら2つの機能を択一的に及び/又は同時に実施できるように構成されていてよい。
【0029】
第4の非限定的な態様の光検出器は、例えば、単一の受光素子列を有するラインセンサ(シングルラインセンサ、1次元センサ)、複数の受光素子列を有するマルチラインセンサ、及び、複数の受光素子が縦横に配列されたエリアセンサ(2次元センサ)のうちのいずれかであってよい。
【0030】
実施形態の第5の非限定的な態様は、第4の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置であって、第1の制御部が、測定光及び参照光を生成するための光源から出力された光を分光器により検出して取得されたスペクトルの強度を示す情報(強度情報)に基づいて、受光素子列をなす複数の受光素子の配列方向に対して垂直な方向(第1の方向)に可動レンズを移動するようにレンズ移動機構の制御を行うように構成されていてよい。
【0031】
第5の非限定的な態様によれば、光源から出力された光を用いて分光器の光検出器によりスペクトル強度情報を実際に取得して可動レンズの移動制御を行うことができるので、光検出器によって検出されるスペクトル強度が適切な値になるように可動レンズの位置を調整することが可能である。より具体的には、光検出器に対する光の投射位置が適切な位置に対して第1の方向にずれている場合には、光検出器の受光素子列における各受光素子による検出効率が低下するが、第5の非限定的な態様を用いることによって各受光素子の検出効率を回復することができ、それにより分光器の検出効率を回復することが可能になる。第5の非限定的な態様は、Y軸オート調整の代替手段の1つの具体例を提供する。
【0032】
実施形態の第6の非限定的な態様は、第1~第5の非限定的な態様のいずれかの光コヒーレンストモグラフィ装置であって、分光器の光検出器は、線状に配列された複数の受光素子からなる受光素子列を少なくとも1つ含んでいる。この光検出器は、第4の非限定的な態様のそれと同様である。更に、第1の制御部は、受光素子列をなす複数の受光素子の配列方向に平行な方向(第2の方向)に可動レンズを移動するようにレンズ移動機構の制御を行うように構成されていてよい。
【0033】
第2の方向は、第4及び第5の非限定的な態様における第1の方向に直交する方向である。第1の方向及び第2の方向をそれぞれY方向及びX方向と呼ぶことがある。なお、第3の非限定的な態様における「可動レンズの光軸に対して垂直な方向」は、X方向とY方向とにより張られる2次元座標系(XY座標系)により定義される任意の方向(換言すると、X方向の単位ベクトルとY方向の単位ベクトルとの線形結合で表現される任意のベクトルが示す方向)であってよい。可動レンズの光軸に対して垂直な方向をXY方向と呼ぶことがある。
【0034】
第6の非限定的な態様によれば、光検出器に対する光の投射位置が適切な位置から第2の方向にずれている場合に、このズレを自動で補正することができる。これにより、1つ以上の受光素子列を有する光検出器にスペクトルを適切に検出させることが可能になる。より具体的に説明する。受光素子列を有する光検出器が用いられる場合、受光素子列の各受光素子には特定のスペクトル成分(特定の波長、特定の周波数)が予め割り当てられており、それによりスペクトル強度分布(強度情報)が生成される。光検出器に対する光の投射位置が適切な位置に対して第2の方向にずれていると、各受光素子は、予め割り当てられたスペクトル成分とは別のスペクトル成分を検出してしまう。それにより、波長方向に偏移した不正確なスペクトル強度分布が生成されてしまう。第6の非限定的な態様を用いることにより、このようなスペクトル強度分布の波長方向への偏移を解消することができる。
【0035】
実施形態の第7の非限定的な態様は、第6の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置であって、第1の制御部は、測定光及び参照光を生成するための光源から出力された光を分光器により検出して取得されたスペクトルの位置を示す情報(位置情報)に基づいて、受光素子列をなす複数の受光素子の配列方向に平行な方向(第2の方向)に可動レンズを移動するようにレンズ移動機構の制御を行うように構成されていてよい。
【0036】
第7の非限定的な態様によれば、光源から出力された光を用いて分光器の光検出器によりスペクトル位置情報を実際に取得して可動レンズの移動制御を行うことができるので、光検出器の各受光素子が適切なスペクトル成分(適切な波長)を検出するように可動レンズの位置を調整することが可能である。また、第7の非限定的な態様には、光検出器の各受光素子に適切なスペクトル成分を検出させるために専用のハードウェアを設ける必要がないという有利な点がある。
【0037】
実施形態の第8の非限定的な態様は、第1~第7の非限定的な態様のいずれかの光コヒーレンストモグラフィ装置であって、第1の制御部は、可動レンズの光軸に平行な方向(第3の方向)に可動レンズを移動するようにレンズ移動機構の制御を行うように構成されていてよい。第3の方向は、第4及び第5の非限定的な態様における第1の方向(Y方向)と、第6及び第7の非限定的な態様における第2の方向(X方向)との双方に直交する方向である。第3の方向をZ方向と呼ぶことがある。
【0038】
第8の非限定的な態様によれば、光検出器(受光素子)に対して光の結像位置(焦点位置)がずれている場合に、このズレを自動で補正することができる。これにより、光の結像位置のズレに起因する分光器の検出効率の低下を回復することが可能になる。より具体的に説明する。光検出器に投射される光の結像状態が悪く、この光の結像位置が受光素子の位置からずれていると、この受光素子によって検出されるべき光の一部が検出されなくなり、その結果として分光器の検出効率が低下する。第8の非限定的な態様を用いることにより、光検出器に投射される光の結像状態を補正できるので、結像位置のずれに起因する検出効率の低下を解消することが可能になる。
【0039】
実施形態の第9の非限定的な態様は、第8の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置であって、第1の制御部は、測定光及び参照光を生成するための光源から出力された光を分光器により検出して取得されたスペクトルの強度情報に基づいて、可動レンズの光軸に平行な方向(第3の方向)に可動レンズを移動するようにレンズ移動機構の制御を行うように構成されていてよい。
【0040】
第9の非限定的な態様によれば、光源から出力された光を用いて分光器の光検出器によりスペクトル強度情報を実際に取得して可動レンズの移動制御を行うことができるので、光検出器によって検出されるスペクトル強度が適切な値になるように可動レンズの位置を調整することが可能である。
【0041】
なお、第5の非限定的な態様及び第9の非限定的な態様は、光源からの光を用いたスペクトル強度測定を行うことによって、分光器により得られるスペクトル強度の低下を回復する点において共通しているが、スペクトル強度の低下の原因の観点において互いに相違している。すなわち、第5の非限定的な態様は、光検出器に投射される光の位置ズレに起因するスペクトル強度の低下を回復するものである一方、第9の非限定的な態様は、光検出器に投射される光の結像状態の悪さに起因するスペクトル強度の低下を回復するものである。したがって、第5の非限定的な態様と第9の非限定的な態様とを組み合わせることにより、それらのいずれかを単体で適用する場合よりも好適にスペクトル強度の補正を行うことができる。同様に、第4の非限定的な態様と第8の非限定的な態様とを組み合わせることも可能である。
【0042】
より一般に、第4又は第5の非限定的な態様と第6又は第7の非限定的な態様とを組み合わせてもよいし、第4又は第5の非限定的な態様と第8又は第9の非限定的な態様とを組み合わせてもよいし、第6又は第7の非限定的な態様と第8又は第9の非限定的な態様とを組み合わせてもよいし、第4又は第5の非限定的な態様と第6又は第7の非限定的な態様と第8又は第9の非限定的な態様とを組み合わせてもよい。また、第4又は第5の非限定的な態様、第6又は第7の非限定的な態様、第8又は第9の非限定的な態様、及び、これらのうちのいずれか2つ以上の組み合わせに対して、第3の非限定的な態様を組み合わせてもよい。
【0043】
実施形態の第10の非限定的な態様は、第1~第9の非限定的な態様のいずれかの光コヒーレンストモグラフィ装置であって、結像レンズ系は、分散素子と光検出器との間に配置された1つ以上のレンズからなる第1のレンズ群と、分散素子と光検出器との間に挿脱される1つ以上のレンズからなる第2のレンズ群とを含んでいてよい。更に、分散素子と光検出器との間の光路に第2のレンズ群が挿入されているとき(配置されているとき)の結像レンズ系の焦点位置は、当該光路から第2のレンズ群が退避されているとき(当該光路に第2のレンズ群が配置されていないとき)の結像レンズ系の焦点位置と同じであってよい。加えて、当該光路に第2のレンズ群が挿入されているとき(配置されているとき)の結像レンズ系の焦点距離は、当該光路から第2のレンズ群が退避されているとき(当該光路に第2のレンズ群が配置されていないとき)の結像レンズ系の焦点距離と異なっていてよい。分光器光学系に追加可能な第2のレンズ群を追加レンズ群、レンズユニットなどと呼ぶことがある。また、第2のレンズ群に含まれる各レンズを追加レンズと呼ぶことがある。
【0044】
第10の非限定的な態様によれば、分光器光学系の焦点位置を変化させることなく分光器光学系の焦点距離を変化させるように設計され構成された第2のレンズ群を分光器の分散素子と光検出器との間の光路に挿脱することができるので、光検出器を移動することなく深さレンジを変化させることができる。これにより、複雑且つ大規模な駆動機構や、複雑且つ精緻な同期的駆動制御を用いることなくOCT計測の深さレンジを変化させることが可能である。
【0045】
実施形態の第11の非限定的な態様は、第10の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置であって、可動レンズは、分散素子と光検出器との間の光路に挿脱可能な第2のレンズ群における1つ以上のレンズを含んでいてよい。つまり、1つ以上の追加レンズを可動レンズとして用いることができる。
【0046】
第11の非限定的な態様によれば、分散素子と光検出器との間に挿入された第2のレンズ群の位置ズレを補正及び/又は補償することが可能である。この位置ズレは、分光器光学系の設計上の挿入位置に対する実際の挿入位置の誤差(偏位)である。第11の非限定的な態様は、可動レンズとして用いられる追加レンズを移動することにより、この追加レンズの位置ズレを補正することができ、及び/又は、別の追加レンズの位置ズレを補償することができる。
【0047】
実施形態の第12の非限定的な態様は、第10の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置であって、第2のレンズ群は2つ以上のレンズを含んでいてよい。
【0048】
第2のレンズ群に含まれるレンズの個数を少なくすることにより、第2のレンズ群の全体の寸法を小さくすることや、第2のレンズ群と光検出器との間の距離を大きくすることや、第2のレンズ群の移動距離を短くすることができる。これにより、第2のレンズ群を光路に挿入するときや光路から退避するときに発生する塵埃(ダスト)の飛散や舞い上がりを低減することが可能となり、それに起因する不都合を低減することが可能になる。例えば、光検出器の検出面に塵埃が付着するリスクを低減することが可能になる。第10の非限定的な態様に係る条件(つまり、第2のレンズ群の使用時と不使用時とで、結像レンズ系の焦点位置は等しく且つ焦点距離は異なること)を満足する第2のレンズ群は第12の非限定的な態様のように少なくとも2つのレンズを含むものであることが、発明者らの研究によって明らかになった。なお、第2のレンズ群は、2つ以上のレンズを一体形成したレンズ(例えば、接合レンズ)を含んでいてもよい。
【0049】
実施形態の第13の非限定的な態様は、第12の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置であって、可動レンズは、第2のレンズ群における2つ以上のレンズのうちの一部のレンズであってよい。換言すると、第2のレンズ群がN個のレンズを含んでいる場合(Nは2以上の整数)、本態様では、これらN個のレンズのうち高々N-1個のレンズが可動レンズとして用いられる。
【0050】
第13の非限定的な態様によれば、第2のレンズ群に含まれる全てのレンズを移動する場合と比較して、可動レンズを移動するための駆動力が小さくなるため、可動レンズを移動する動作の省力化を図ることができる。
【0051】
実施形態の第14の非限定的な態様は、第12の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置であって、可動レンズは、第2のレンズ群における2つ以上のレンズの全てであってよい。換言すると、第2のレンズ群がN個のレンズを含んでいる場合(Nは2以上の整数)、本態様では、これらN個のレンズの全てが可動レンズとして用いられる。
【0052】
第14の非限定的な態様によれば、第2のレンズ群を光路に対して挿脱するための機構と、可動レンズ(第2のレンズ群そのもの)を移動するための機構(レンズ移動機構)とを共通にすることができるので、装置構成の簡略化を図ることが可能である。
【0053】
ここで、第10~第14の非限定的な態様に関するいくつかの非限定的な事項(特徴、変形例など)について説明する。
【0054】
第10~第14の非限定的な態様に関する第1の非限定的な事項に係る光コヒーレンストモグラフィ装置は、レンズユニット(第2のレンズ群)と、機構とを含む。レンズユニットは、分光器光学系の焦点位置を変化させずに分光器光学系の焦点距離を変化させるように設計され構成されている。機構は、分散素子と光検出器との間にレンズユニットを挿脱するように構成されている。
【0055】
換言すると、レンズユニットは、次の2つの条件(1)及び(2)を満足するように設計され構成されている。
【0056】
条件(1):レンズユニットと結像レンズとを合成した光学系(合成光学系)の焦点距離(合成焦点距離)は、結像レンズ単体の焦点距離と異なる。
【0057】
条件(2):レンズユニットと結像レンズとの合成光学系の焦点位置(合成焦点位置)は、結像レンズ単体の焦点位置に等しい。換言すると、分散素子と光検出器との間にレンズユニットが配置されている状態における分光器光学系の焦点位置と、分散素子と光検出器との間にレンズユニットが配置されていない状態における分光器光学系の焦点位置とが一致する。更に換言すると、分散素子と光検出器との間の光路にレンズユニットを挿入する動作を行っても分光器光学系の焦点位置が変化せず、且つ、分散素子と光検出器との間の光路からレンズユニットを移動する動作を行っても分光器光学系の焦点位置が変化しない。
【0058】
このような第1の非限定的な事項によれば、分光器光学系の焦点位置を変化させることなく分光器光学系の焦点距離を変化させるように設計され構成されたレンズユニットを分光器の分散素子と光検出器との間に挿脱できるように構成されているので、光検出器を移動することなく深さレンジを変化させることが可能である。したがって、複雑且つ大規模な駆動機構や、複雑且つ精緻な同期的駆動制御を用いることなく光コヒーレンストモグラフィの深さレンジを変化させることができるという、従来の技術では為し得ない有利な効果を達成することが可能である。
【0059】
第10~第14の非限定的な態様に関する第2の非限定的な事項に係る光コヒーレンストモグラフィ装置は、第1の非限定的な事項に加えて、レンズユニットは、少なくとも2つのレンズを含んでいる。ここで、レンズユニットは、2つ以上のレンズを一体形成したレンズ(例えば、接合レンズ)を含んでいてもよい。
【0060】
レンズユニットに含まれるレンズの個数を少なくすることにより、レンズユニットの寸法を小さくすることや、レンズユニットと光検出器との間隔を大きくすることや、機構によるレンズユニットの移動距離を短くすることができるため、レンズユニットの移動による塵埃の飛散や舞い上がりを低減することが可能となり、それに起因する不都合を低減することが可能になる。その具体例として、光検出器の検出面に塵埃が付着するリスクを低減することが可能になる。
【0061】
第10~第14の非限定的な態様に関する第3の非限定的な事項に係る光コヒーレンストモグラフィ装置は、第2の非限定的な事項に加えて、レンズユニットに含まれている少なくとも2つのレンズが、機構により、結像レンズと光検出器との間に挿入されるように構成されている。
【0062】
第3の非限定的な態様によれば、分光器へのレンズユニットの挿入位置の1つの例を提供できる。第3の非限定的な態様に基づいて達成可能ないくつかの効果については後述する。
【0063】
第10~第14の非限定的な態様に関する第4の非限定的な事項に係る光コヒーレンストモグラフィ装置は、第3の非限定的な事項に加えて、レンズユニットに含まれている少なくとも2つのレンズが、第1の凸レンズと、この第1の凸レンズと光検出器との間に配置される凹レンズとを含んでいる。
【0064】
第4の非限定的な事項によれば、結像レンズを通過した光が凸レンズ及び凹レンズをこの順に通過して光検出器に導かれるため、これとは逆に凹レンズ及び凸レンズの順に光を通過させる場合と比較してレンズユニットの寸法を小さくすることができる。実際、第4の非限定的な事項とは逆に、結像レンズを通過した光が凹レンズ及び凸レンズをこの順に通過して光検出器に導かれる構成においては、凹レンズを通過した光を光検出器に入射させるために大きな径の凸レンズを設ける必要があり、その結果、レンズユニットの寸法が大きくなってしまう。また、結像レンズを通過した光が2つの凸レンズを通過して光検出器に導かれるように構成された光学系も考えられるが、2つの凸レンズの間隔が第4の非限定的な事項における凸レンズと凹レンズとの間隔よりも大きくなるため、やはりレンズユニットの寸法が大きくなってしまう。
【0065】
第10~第14の非限定的な態様に関する第5の非限定的な事項に係る光コヒーレンストモグラフィ装置は、第4の非限定的な事項に加えて、レンズユニットは、第2の凸レンズを更に含んでいる。第2の凸レンズは、凹レンズと光検出器との間に配置されており、光検出器に対する複数の波長成分の入射角を減少させるように設計され構成されている。
【0066】
第5の非限定的な事項によれば、光検出器に対する入射角を小さくすること(つまり、光検出器の検出面に対して垂直に近い方向から光を投射すること)ができるので、分光器の受光効率を向上させることが可能になる。例えば、光検出器に対してテレセントリックになるようにレンズユニットを設計し構成することで、分光器の受光効率を最適化することができる。
【0067】
第10~第14の非限定的な態様に関する第6の非限定的な事項に係る光コヒーレンストモグラフィ装置は、第3~第5の非限定的な事項に加えて、結像レンズの焦点距離f1と、レンズユニットの焦点距離f2と、結像レンズの後側主点とレンズユニットの前側主点との間の距離d1と、レンズユニットの後側主点と光検出器との間の距離d2と、結像レンズとレンズユニットとの合成焦点距離fとが、次の2つの式を満足するように設計され構成されている:d1=f1+f2-f1×f2/f、及び、f=d2+f×d1/f1。
【0068】
第6の非限定的な事項によれば、レンズユニットに含まれている少なくとも2つのレンズが結像レンズと光検出器との間に挿入される場合においてレンズユニットが前述の条件(1)及び(2)を満足するための1つの具体的な条件式を提供することができる。なお、第6の非限定的な事項に係る具体的な条件式は1つの例であり、これに限定されるものではない。
【0069】
第10~第14の非限定的な態様に関する第7の非限定的な事項に係る光コヒーレンストモグラフィ装置は、第2の非限定的な事項に加えて、レンズユニットに含まれている少なくとも2つのレンズが、機構により、分散素子と結像レンズとの間に挿入されるように構成されている。
【0070】
第7の非限定的な事項によれば、分光器へのレンズユニットの挿入位置の1つの例を提供できる。また、第7の非限定的な事項によれば、レンズユニットや機構を光検出器から離れた位置に配置することができるため、レンズユニットの移動による塵埃の飛散や舞い上がりを低減することが可能となり、それに起因する不都合を低減することが可能になる。その具体例として、光検出器の検出面に塵埃が付着するリスクを低減することが可能になる。
【0071】
第10~第14の非限定的な態様に関する第8の非限定的な事項に係る光コヒーレンストモグラフィ装置は、第7の非限定的な事項に加えて、レンズユニットに含まれている少なくとも2つのレンズが、凸レンズと、この凸レンズと結像レンズとの間に配置される凹レンズとを含んでいる。
【0072】
第8の非限定的な事項によれば、分散素子を通過(例えば、透過又は反射)した光が凸レンズ及び凹レンズをこの順に通過して結像レンズに導かれるため、これとは逆に凹レンズ及び凸レンズの順に光を通過させる場合と比較してレンズユニットの寸法を小さくすることができる。実際、第8の非限定的な事項とは逆に、分散素子を通過した光が凹レンズ及び凸レンズをこの順に通過して結像レンズに導かれる構成においては、凹レンズを通過した光を結像レンズに入射させるために大きな径の凸レンズを設ける必要があり、その結果、レンズユニットの寸法が大きくなってしまう。なお、第8の非限定的な事項とは逆の構成において、大きな径の凸レンズを設ける代わりに大きな径の結像レンズを設けることも考えられるが、分光器の寸法が大きくなるという別の問題が生じる。このように、第8の非限定的な事項によれば、分光器及びレンズユニットの双方のコンパクト化を図ることが可能である。また、分散素子を通過した光が2つの凸レンズを通過して結像レンズに導かれるように構成された光学系も考えられるが、2つの凸レンズの間隔が第8の非限定的な事項における凸レンズと凹レンズとの間隔よりも大きくなるため、やはりレンズユニットの寸法が大きくなってしまう。
【0073】
第10~第14の非限定的な態様に関する第9の非限定的な事項に係る光コヒーレンストモグラフィ装置は、第7又は第8の非限定的な事項に加えて、少なくとも2つのレンズはアフォーカル系として設計され構成されている。
【0074】
なお、第9の非限定的な事項では、分散素子を経由した直後の光は平行光であり、分光器光学系の光路にレンズユニットが配置されていない状態において結像レンズは平行光を収束光に変換する。
【0075】
第9の非限定的な事項によれば、分散素子を経由した平行光がレンズユニットに入射し、且つ、レンズユニットから平行光が出射されるため、分光器光学系の光路にレンズユニットを挿脱するだけで深さレンジを切り替えることが可能である。つまり、光検出器の移動や結像レンズの制御(例えば、結像レンズの移動、結像レンズに含まれている少なくとも1つのレンズの挿脱など)といった、レンズユニットの挿脱とは別の動作を行うことなく、深さレンジの切り替えを行うことが可能である。また、レンズユニットの偏心や倒れ(傾斜)に起因する分光器の光学性能の劣化を小さくすることができる。
【0076】
第10~第14の非限定的な態様に関する第10の非限定的な事項に係る光コヒーレンストモグラフィ装置は、第9の非限定的な事項に加えて、結像レンズの焦点距離f1と、レンズユニットの分散素子側の焦点距離fa及び結像レンズ側の焦点距離fbと、結像レンズとレンズユニットとの合成焦点距離fとが、次の式を満足するように設計され構成されている:f=(fa/|fb|)×f1。
【0077】
ここで、レンズユニットの結像レンズ側の焦点距離fbの絶対値は、凸レンズ及び凹レンズのいずれかを任意的に採用できることを意味する。凸レンズの場合、上記式は次のようになる:f=(fa/fb)×f1。一方、凹レンズの場合、上記式は次のようになる:f=[fa/(-fb)]×f1。
【0078】
第10の非限定的な事項によれば、レンズユニットに含まれている少なくとも2つのレンズが分散素子と結像レンズとの間に挿入される場合においてレンズユニットが前述の条件(1)及び(2)を満足するための1つの具体的な条件式を提供することができる。なお、第10の非限定的な事項に係る具体的な条件式は1つの例であり、これに限定されるものではない。
【0079】
本開示に係るいくつかの実施形態において、第3~第6の非限定的な事項のいずれかと、第7~第10の非限定的な事項のいずれかとを、少なくとも部分的に組み合わせた構成を採用することができる。
【0080】
例えば、第3の非限定的な事項と第7の非限定的な事項とを組み合わせた1つの実施形態は、レンズユニットは、1つ以上のレンズを含む第1のレンズ群と、別の1つ以上のレンズを含む第2のレンズ群とを含み、第1のレンズ群が、機構により、結像レンズと光検出器との間に挿入されるように構成されており、且つ、第2のレンズ群が、機構により、分散素子と結像レンズとの間に挿入されるように構成されている。このような実施形態によれば、第3の非限定的な事項と第7の非限定的な事項とを選択的に適用することができ、これらの有利な効果を選択的に提供することができる。また、この実施形態に対して、第4~第6の非限定的な事項のいずれか、第8~第10の非限定的な事項のいずれか、本開示に係る任意の事項、任意の公知技術などを組み合わせることができる。
【0081】
第3の非限定的な事項と第7の非限定的な事項とを組み合わせた別の実施形態は、レンズユニットに含まれている少なくとも2つのレンズを、機構により、結像レンズと光検出器との間及び分散素子と結像レンズとの間に選択的に挿入するように構成されている。このような実施形態によっても、第3の非限定的な事項と第7の非限定的な事項とを選択的に適用することができ、これらの有利な効果を選択的に提供することができる。また、この実施形態に対して、第4~第6の非限定的な事項のいずれか、第8~第10の非限定的な事項のいずれか、本開示に係る任意の事項、任意の公知技術などを組み合わせることができる。
【0082】
第10~第14の非限定的な態様に関する第11の非限定的な事項に係る光コヒーレンストモグラフィ装置は、第1~第10の非限定的な事項に加えて、結像レンズとレンズユニットとの合成焦点距離を結像レンズの焦点距離で除算した商βが1<β≦5を満足するように設計され構成されている。
【0083】
第11の非限定的な事項によれば、実施形態に係る有利な効果を達成するための1つの定量的条件を提供することができる。なお、深さレンジと解像度とは互いにトレードオフの関係にあるから、これら双方の観点から実施形態の有効性を評価することができる。
【0084】
第10~第14の非限定的な態様に関する第12の非限定的な事項に係る光コヒーレンストモグラフィ装置は、第11の非限定的な事項に加えて、結像レンズとレンズユニットとの合成焦点距離を結像レンズの焦点距離で除算した商βが1.5≦β≦3を満足するように設計され構成されている。
【0085】
第12の非限定的な事項によれば、実施形態に係る有利な効果を達成するためにより好ましい1つの定量的条件を提供することができる。
【0086】
第10~第14の非限定的な態様(及び、上記したそれらの変形例)の代替的な態様として、以下に説明する第15の非限定的な態様若しくは第16の非限定的な態様、又は第17の非限定的な態様を採用することができる。
【0087】
実施形態の第15の非限定的な態様は、第1~第9の非限定的な態様のいずれかの光コヒーレンストモグラフィ装置であって、結像レンズ系は、焦点距離が可変なズームレンズを含んでいてよい。
【0088】
実施形態の第16の非限定的な態様は、第15の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置であって、光検出器を移動する光検出器移動機構と、ズームレンズと光検出器移動機構との連係制御を行う第2の制御部とを更に含んでいてよい。
【0089】
第15又は第16の非限定的な態様には、追加的なハードウェア(ズームレンズ、光検出器移動機構など)を設ける必要があることや、光検出器を移動するための制御を行う必要があることなど、第10~第14の非限定的な態様と比較して不利な点はあるものの、第10~第14の非限定的な態様とは別の構成を用いてOCT計測の深さレンジを変化させることが可能である。
【0090】
第10~第14の非限定的な態様のいずれかに係る構成と、第15又は第16の非限定的な態様に係る構成とを、少なくとも部分的に組み合わせることが可能である。また、これら2つの構成を選択的に又は連係的に動作させるように制御を行うことが可能である。
【0091】
実施形態の第17の非限定的な態様は、第1~第16の非限定的な態様のいずれかの光コヒーレンストモグラフィ装置であって、結像レンズ系は、焦点距離が可変な液体レンズを含んでいてよい。液体レンズは、例えば、表面に電場を印加することによって濡れ性を変化させるエレクトロウェッティング技術を利用した公知の液体レンズであってよいが、これに限定されない。
【0092】
第17の非限定的な態様においては、液体レンズを動作させるための極めて精密な制御が要求されるものの、第2のレンズ群を小型化できる点、塵埃の飛散や舞い上がりを低減できる点など、いくつかの有利な点もある。
【0093】
第10~第16の非限定的な態様のいずれかに係る構成と、第17の非限定的な態様に係る構成とを、少なくとも部分的に組み合わせることが可能である。また、これら2つの構成を選択的に又は連係的に動作させるように制御を行うことが可能である。
【0094】
本開示に係る例示的な実施形態について説明する。以下の実施形態では、スペクトラルドメインOCTについて説明する。スペクトラルドメインOCTは、低コヒーレンス光源(広帯域光源)からの光を測定光と参照光とに分割し、サンプルからの測定光の戻り光を参照光と重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル強度分布を分光器で検出し、検出されたスペクトル強度分布にフーリエ変換などの信号処理を施して画像を構築するイメージング技術である。
【0095】
1つの実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置として機能する眼科装置の構成例を
図1Aに示す。眼科装置1は、生体眼のイメージングを行うものであり、光コヒーレンストモグラフィ装置と眼底カメラとが組み合わされたマルチモダリティ装置である。
【0096】
光コヒーレンストモグラフィ装置としての眼科装置1は、被検眼Eに対してOCTスキャンを適用することによって被検眼Eのデータを光学的に収集する。眼科装置1は、被検眼Eの対象部位(例えば、眼底、前眼部など)をスキャンすることによってOCTデータ(干渉信号)を収集する。眼科装置1は、収集されたOCTデータに基づいて対象部位の画像(OCT画像)を生成することができる。
【0097】
OCT画像の種類として、断層画像(断面画像)、3次元画像、正面画像、機能画像などがある。断層画像には、Bスキャン画像などがある。3次元画像には、スタックデータ、ボリュームデータ(ボクセルデータ)などがある。正面画像には、Cスキャン画像、en-face画像、シャドウグラム、プロジェクション画像などがある。機能画像には、モーションコントラスト画像(OCTアンジオグラフィ画像)、血流動態画像、位相画像、エラストグラフィ画像(OCTエラストグラフィ画像)などがある。
【0098】
眼底カメラとしての眼科装置1は、被検眼Eを撮影してデジタル写真を生成する。眼底Efを撮影して生成されるデジタル写真を眼底像と呼び、前眼部を撮影して生成されるデジタル写真を前眼部像と呼ぶ。眼底像には、静止画像である眼底写真、動画像である眼底観察画像などがある。前眼部像には、静止画像である前眼部写真、動画像である前眼部観察画像などがある。
【0099】
別の実施形態では、眼底カメラの代わりに、走査型レーザー検眼鏡(SLO)、スリットランプ顕微鏡、手術用顕微鏡などの眼科モダリティが設けられてよい。更に別の実施形態は、マルチモダリティ装置ではなく、シングルモダリティ装置(光コヒーレンストモグラフィ装置)であってよい。更に別の実施形態は、光コヒーレンストモグラフィ装置と、生体眼の光学特性を測定する装置(眼科測定装置)とが組み合わされた眼科装置であってよい。眼科測定装置には、レフラクトメーター、ケラトメーター、眼圧計、ウェーブフロントアナライザー、スペキュラーマイクロスコープ、視野計などがある。更に別の実施形態は、光コヒーレンストモグラフィ装置と、生体眼の治療に用いられる装置(眼科治療装置)とが組み合わされた眼科装置であってよい。眼科治療装置には、レーザー治療装置、白内障手術装置、硝子体手術装置などがある。
【0100】
図1Aに示すように、眼科装置1は、眼底カメラユニット2と、OCTユニット100と、演算制御ユニット200とを含んでいる。眼底カメラユニット2は、生体眼のデジタル写真を生成するための要素を含んでいる。OCTユニット100には、OCTスキャンを実行するための要素を含んでいる。演算制御ユニット200は、各種の処理を実行するための要素を含んでいる。演算制御ユニット200により実行される処理には、演算、制御、画像処理、解析処理などがある。
【0101】
図1Aに示す眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efの表面形態を表す2次元画像(眼底像)を取得するための光学系が設けられている。眼底観察画像は、例えば、近赤外光を照明光に用いた動画撮影で生成されるモノクロの動画像である。眼底写真は、例えば、フラッシュ発光される可視光を照明光に用いた静止画撮影で生成されるカラー画像、又は、フラッシュ発光される近赤外光若しくは可視光を照明光に用いた静止画撮影で生成されるモノクロ静止画像である。眼底カメラユニット2は、ここに例示した画像とは別の種類の画像を生成可能であってもよい。そのような画像には、フルオレセイン蛍光造影画像(FA画像)、インドシアニングリーン蛍光造影画像(ICGA画像)、自発蛍光造影画像などがある。
【0102】
眼底カメラユニット2には、被検者の顔を支持するための顎受けや額当てが設けられている。更に、眼底カメラユニット2には、照明光学系10と撮影光学系30とが設けられている。照明光学系10は、被検眼Eに照明光を投射する。撮影光学系30は、被検眼Eに投射された照明光の戻り光をイメージセンサ35又はイメージセンサ38に導く。イメージセンサ35及び38は、CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサであってよい。また、撮影光学系30は、OCTユニット100から眼底カメラユニット2に入射した測定光を被検眼Eに導くとともに、被検眼Eからの測定光の戻り光をOCTユニット100に導く。
【0103】
照明光学系10の観察光源11は、例えば、ハロゲンランプ又は発光ダイオード(LED)であってよい。観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14によって近赤外成分が抽出される。近赤外成分からなる観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17、リレーレンズ18、絞り19、及びリレーレンズ20を経由し、ホールミラー21(孔部の周囲のミラー)により反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eに投射される。観察照明光の戻り光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、ホールミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射され、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、結像レンズ34によってイメージセンサ35の受光面に結像される。イメージセンサ35は、例えば所定のフレームレートで戻り光を検出する。表示装置3には、イメージセンサ35からの出力に基づく画像(例えば、前眼部観察画像又は眼底観察画像)が表示される。
【0104】
撮影光源15は、例えば、キセノンランプ又はLEDであってよい。撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同じ経路を通って被検眼Eに投射される。撮影照明光の戻り光は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され結像レンズ37によってイメージセンサ38の受光面に結像される。表示装置3には、イメージセンサ38からの出力に基づく画像(例えば、前眼部写真又は眼底写真)が表示される。
【0105】
液晶ディスプレイ(LCD)39は、被検眼Eに提示される情報を表示する。この情報には、固視標、視力測定用指標などがある。LCD39から出力された光(その一部)は、ハーフミラー33Aにて反射され、ミラー32により反射され、合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、ホールミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投射される。固視標の表示位置を変更することによって固視の方向(固視位置)を変更できる。
【0106】
眼底カメラユニット2には、アライメント光学系50とフォーカス光学系60とが設けられている。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する装置光学系の位置合わせ(アライメント)を行うための指標(アライメント指標)を生成する。フォーカス光学系60は、被検眼Eに対してフォーカス(ピント)を合わせるための指標(スプリット指標)を生成する。
【0107】
アライメント光学系50のLED51から出力された光(アライメント光)は、絞り52、絞り53、及びリレーレンズ54を経由し、ダイクロイックミラー55により反射され、ホールミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22によって被検眼Eに投射される。アライメント光の戻り光(例えば、角膜反射光又は眼底反射光)は、対物レンズ22、ダイクロイックミラー46、及びホールミラー21の孔部を経由し、ダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を通過し、ミラー32により反射され、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、結像レンズ34によってイメージセンサ35の受光面に結像される。イメージセンサ35による受光像(アライメント指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。アライメント指標を用いてマニュアルアライメント及び/又はオートアライメントを実行することができる。
【0108】
フォーカス調整を行う際には、照明光学系10の光路上に反射棒67の反射面が斜設される。フォーカス光学系60のLED61から出力された光(フォーカス光)は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65により反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射され、リレーレンズ20を経由し、ホールミラー21により反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eに投射される。フォーカス光の戻り光(例えば、角膜反射光又は眼底反射光)は、アライメント光の戻り光と同じ経路を通ってイメージセンサ35に導かれて検出される。イメージセンサ35による受光像(スプリット指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。スプリット指標を用いてマニュアルフォーカシング及び/又はオートフォーカシングを実行することができる。
【0109】
ダイクロイックミラー46は、デジタル写真撮影用光路とOCT用光路(サンプルアーム)とを合成している。ダイクロイックミラー46は、OCTスキャンに用いられる波長帯の光を反射し、且つ、デジタル写真撮影に用いられる波長帯の光を透過させる。サンプルアームには、OCTユニット100側から順に、コリメートレンズユニット40と、光路長変更部41と、光スキャナ42と、合焦レンズ43と、ミラー44と、リレーレンズ45とが設けられている。合焦レンズ43は、サンプルアームの光軸に沿う方向に移動可能である。
【0110】
光路長変更部41は、
図1Aに示す矢印の方向に移動可能に構成されており、それによりサンプルアームの長さ(光路長)が変化する。サンプルアームの光路長の変更は、被検眼Eの眼軸長に応じた光路長補正や、干渉状態の調整などに利用される。光路長変更部41は、例えば、コーナーキューブと、これを移動する機構とを含む。
【0111】
光スキャナ42は、アライメントにより、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置に配置される。光スキャナ42は、サンプルアームを通過する測定光を偏向する。測定光を偏向する方向を変化させることによって、測定光を用いた被検眼Eのスキャンが実現される。光スキャナ42は、例えば、測定光をx方向(横方向)に偏向するガルバノミラーと、測定光をy方向(縦方向)に偏向するガルバノミラーとを含む。このような光スキャナ42により、xy平面上の任意の方向に測定光を偏向することが可能になる。
【0112】
OCTユニット100の1つの態様を
図1Bに示す。OCTユニット100には、被検眼EにOCTスキャンを適用するための要素(光学系、機構など)が設けられている。本実施形態のOCTユニット100は、公知のスペクトラルドメインタイプの光コヒーレンストモグラフィ装置と同様の要素群101~115に加えて、本実施形態に特有の要素群(レンズユニット120、レンズユニット移動機構130、レンズ移動機構140など)を含んでいる。なお、本態様のOCTユニット100に含まれる干渉計はマイケルソン型であるが、別のタイプの干渉計(例えば、マッハツェンダー型干渉計)を用いてもよい。
【0113】
スペクトラルドメインOCTを実行するために、OCTユニット100は、広帯域光源(低コヒーレンス光源)により発せられた光(低コヒーレンス光)を参照光LRと測定光LSとに分割し、測定光LSを眼底カメラユニット2に提供し、被検眼Eに投射された測定光LSの戻り光を眼底カメラユニット2から受け、測定光LSの戻り光と参照光路(参照アーム)を経由した参照光LSとを重ね合わせて干渉光LCを生成し、干渉光LCのスペクトル強度分布を検出するように構成されている。干渉光LCのスペクトル強度分布を検出した結果(検出信号、干渉信号)は演算制御ユニット200に送られる。
【0114】
光源ユニット101は広帯域の低コヒーレンス光L0を出力する。低コヒーレンス光L0は、例えば、近赤外領域の波長帯(約800nm~900nm程度)を含み、数十マイクロメートル程度の時間的コヒーレンス長を有する。なお、人眼では視認できない波長帯、例えば1040~1060nm程度の中心波長を有する近赤外光を低コヒーレンス光L0として用いてもよい。光源ユニット101は、任意の光出力デバイスを含んでおり、例えば、スーパールミネセントダイオード(SLD)、LED、及び半導体光増幅器(SOA)のいずれかを含む。
【0115】
光源ユニット101から出力された低コヒーレンス光L0は、光ファイバ102によりファイバカプラ103に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
【0116】
ファイバカプラ103により生成された参照光LRは、光ファイバ104を通じてアッテネータ105に導かれて光量が調整され、光ファイバ104を通じて偏波コントローラ106に導かれて偏波状態が調整されてファイバカプラ109に導かれる。
【0117】
ファイバカプラ103により生成された測定光LSは、光ファイバ107を通じてコリメートレンズユニット40に導かれて平行光として出射され、光路長変更部41、光スキャナ42、合焦レンズ43、ミラー44、及びリレーレンズ45を経由してダイクロイックミラー46に導かれて反射され、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eに投射される。測定光LSは、被検眼E(特に眼底Ef)の様々な深さ位置において散乱及び反射されて後方散乱光を生じる。被検眼Eからの測定光LSの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ103に導かれ、光ファイバ108を通じてファイバカプラ109に導かれる。
【0118】
ファイバカプラ109は、測定光LSの戻り光と、参照アームを経由した参照光LRとを重ね合わせて干渉光LCを生成する。干渉光LCは、光ファイバ110の出射端111から出射され、コリメートレンズ112により平行光に変換される。平行光に変換された干渉光LCは分光器に入射する。すなわち、平行光に変換された干渉光LCは、分散素子113により分光(スペクトル分解)され、結像レンズ114により平行光から収束光に変換される。スペクトル分解され且つ収束光に変換された干渉光LCは、分光器の光路にレンズユニット120が配置されている場合にはレンズユニット120を介してイメージセンサ115に導かれ、分光器の光路にレンズユニット120が配置されていない場合にはレンズユニット120を介さずにイメージセンサ115に導かれる。なお、本実施形態における分光器は、分散素子113、結像レンズ114、レンズユニット120、及びイメージセンサ115を含んでいる。
【0119】
分散素子113は、例えば、透過型の回折格子又は反射型の回折格子であってよい。結像レンズ114は、1枚以上のレンズからなり、結像レンズ系、ズームレンズ系、フーリエ変換レンズ系などとも呼ばれる。イメージセンサ115は、例えばラインセンサ、マルチラインセンサ、又はエリアセンサなどの光検出器であり、干渉光LCの複数のスペクトル成分(波長成分)を受光素子アレイにより別々に検出して検出信号を生成する。生成された検出信号は演算制御ユニット200に送られる。
【0120】
レンズユニット120は、少なくともレンズを含む光学ユニットであり、例えば2枚以上のレンズを含んでいる。レンズユニット120は、前述した条件(1)及び(2)を満足するように設計され構成されている。すなわち、レンズユニット120は、分光器光学系の焦点位置を変化させることなく分光器光学系の焦点距離を変化させるように設計され構成されている。
【0121】
換言すると、レンズユニット120は、結像レンズ114とレンズユニット120との合成光学系の焦点距離(合成焦点距離)が結像レンズ114の焦点距離と異なるように、且つ、この合成光学系の焦点位置(合成焦点位置)が結像レンズ114の焦点位置に一致するように設計され構成されている。
【0122】
更に換言すると、レンズユニット120は、結像レンズ114とレンズユニット120との合成焦点距離が結像レンズ114の焦点距離と異なるように、且つ、結像レンズ114とイメージセンサ115との間にレンズユニット120が配置されているか否かにかかわらず分光器光学系の焦点位置が同じになるように設計され構成されている。
【0123】
更に換言すると、レンズユニット120は、結像レンズ114とレンズユニット120との合成焦点距離が結像レンズ114の焦点距離と異なるように、並びに、結像レンズ114とイメージセンサ115の間の光路にレンズユニット120を挿入する動作を行っても分光器光学系の焦点が移動しないように、及び、結像レンズ114とイメージセンサ115の間の光路からレンズユニット120を退避させる動作を行っても分光器光学系の焦点が移動しないように設計され構成されている。
【0124】
レンズユニット120の移動はレンズユニット移動機構130によって実行される。レンズユニット移動機構130は、例えば、後述する制御部210の制御の下に動作するアクチュエータと、アクチュエータにより発生された駆動力を伝達してレンズユニット120を移動する伝達機構とを含んでいてよい。或いは、レンズユニット移動機構130は、ユーザーが印可した駆動力を伝達してレンズユニット120を移動する伝達機構を含んでいてもよい。
【0125】
眼科装置1の制御系及び処理系の構成例を
図2に示す。演算制御ユニット200には、制御部210、画像構築部220、及びデータ処理部230が設けられている。図示は省略するが、眼科装置1は、通信デバイス、ドライブ装置(リーダー/ライター)などを含んでいてもよい。
【0126】
制御部210は、各種の制御を実行する。制御部210は、主制御部211と記憶部212とを含む。主制御部211は、プロセッサを含み、眼科装置1の要素(
図1Aに示された要素及び
図1Bに示された要素)を制御する。主制御部211は、プロセッサを含むハードウェアと、制御ソフトウェアとの協働によって実現される。記憶部212は、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブなどの記憶装置を含み、データを記憶する。
【0127】
主制御部211は、眼底カメラユニット2に設けられた要素の制御を実行し、例えば、イメージセンサ35及び38、LCD39、光路長変更部41、光スキャナ42、合焦駆動部31A及び43Aなどを制御する。光路長変更部41は、主制御部211の制御の下に、サンプルアームの光路に設けられた反射器(リトロリフレクタ)を移動することにより、サンプルアームの光路長を変更する。合焦駆動部31Aは、主制御部211の制御の下に、撮影光路に設けられた合焦レンズ31と照明光路に設けられたフォーカス光学系60とを一体的に又は同期的に移動することにより、照明光学系10及び撮影光学系30を用いた撮影の合焦位置(焦点位置)を変更する。光スキャナ42は、予め設定されたスキャンパターンに応じたOCTスキャンを被検眼Eに適用するために、主制御部211の制御の下に、このスキャンパターンにしたがって測定光LSを逐次に偏向する。合焦駆動部43Aは、主制御部211の制御の下に、サンプルアームに設けられた合焦レンズ43を移動することにより、測定光LSの合焦位置(焦点位置)、つまり、測定光LSのビームウェストの深さ位置(z位置)を変更する。
【0128】
移動機構150は、眼科装置1の光学系を3次元的に移動するように構成されている。主制御部211は、例えばアライメントやトラッキングのために移動機構150の制御を実行する。トラッキングは、被検眼Eの動きに対応して装置光学系をリアルタイムで移動する動作であり、被検眼Eに対する好適なアライメント状態及び好適な合焦状態を維持するために実行される。
【0129】
主制御部211は、OCTユニット100に設けられた要素の制御を実行し、例えば、光源ユニット101、アッテネータ105、偏波コントローラ106、イメージセンサ115などを制御する。光源ユニット101は、主制御部211の制御の下に、点灯と非点灯との切り替え、出力される低コヒーレンス光L0の強度(光量)の変更、出力される低コヒーレンス光L0の波長の変更などを行う。アッテネータ105は、主制御部211の制御の下に、参照光LRの光量の調整を行う。偏波コントローラ106は、主制御部211の制御の下に、参照光LRの偏波状態の調整を行う。
【0130】
本態様のOCTユニット100は、更に、レンズユニット120、レンズユニット移動機構130、及びレンズ移動機構140を含んでいる。レンズユニット120は、前述したように、分光器光学系の焦点位置を変化させずに焦点距離を変化させるように構成されている。レンズユニット120のいくつかの例を後述する。レンズユニット移動機構130は、レンズユニット120を移動するように構成されており、これにより、分光器光学系の光路にレンズユニット120が挿入され、且つ、分光器光学系の光路からレンズユニット120が退避される。レンズ移動機構140は、レンズユニット120に含まれるレンズのうちの所定のレンズ(可動レンズと呼ぶ)を移動するように構成されている。
【0131】
可動レンズは、レンズユニット120に含まれる全てのレンズであってもよいし、一部のレンズのみであってもよい。レンズユニット120に含まれる全てのレンズが可動レンズである場合、すなわち、レンズユニット120に含まれる全てのレンズがレンズ移動機構140によって移動される場合、レンズ移動機構140とレンズユニット移動機構130とは共通の要素であってもよいし、互いに別々の要素であってもよい。前者の場合、OCTユニット100の構成が簡略化される。ここで、レンズ移動機構140とレンズユニット移動機構130とが共通の要素として構成された態様は、次の4つのケースに分類される:レンズ移動機構140の全体とレンズユニット移動機構130の全体とが共通の要素として構成された第1のケース;レンズ移動機構140の一部とレンズユニット移動機構130の全体とが共通の要素として構成された第2のケース;レンズ移動機構140の全体とレンズユニット移動機構130の一部とが共通の要素として構成された第3のケース;レンズ移動機構140の一部とレンズユニット移動機構130の一部とが共通の要素として構成された第4のケース。当業者であれば、各ケースにおいて採用可能な機構構成について、レンズ移動機構140が可動レンズの位置の微調整に利用されること、及び、レンズユニット移動機構130が分光器光学系の光路に対するレンズユニット120全体の挿入及び退避に利用されることに鑑みて、理解することができるであろう。
【0132】
レンズ移動機構140は、レンズユニット120の要素として構成されてもよいし、レンズユニット移動機構130の要素(レンズユニット移動機構130の少なくとも一部)として構成されてもよいし、別の態様として構成されてもよい。
【0133】
レンズ移動機構140によって可動レンズが移動される方向は、可動レンズの光軸(レンズユニット120の光軸、分光器の光軸)に対して垂直な方向(XY方向)、及び/又は、可動レンズの光軸に対して平行な方向(Z方向)であってよい。
【0134】
イメージセンサ115がラインセンサ(又は、マルチラインセンサ若しくはエリアセンサ)である場合、レンズ移動機構140によって可動レンズが移動される方向は、受光素子群の配列方向(ライン方向)に対応する方向(X方向)、及び/又は、ライン方向に垂直な方向に対応する方向(Y方向)であってよい。ここで、可動レンズの移動方向と、イメージセンサ115に対する干渉光LCの投射位置の移動方向との対応関係は、次のようになっている:可動レンズのX方向への移動と、干渉光LCの投射位置のライン方向への移動とが対応している;可動レンズのY方向への移動と、干渉光LCの投射位置のライン方向に垂直な方向への移動とが対応している。可動レンズとイメージセンサ115との間に光偏向器が配置されていない場合、X方向とライン方向とは空間的に一致し、Y方向とライン方向に垂直な方向とは空間的に一致する。これに対し、可動レンズとイメージセンサ115との間に光偏向器が配置されている場合には、X方向とライン方向とが空間的に一致しないことがあり、Y方向とライン方向に垂直な方向とが空間的に一致しないことがある。
【0135】
レンズユニット移動機構130は、主制御部211の制御の下にレンズユニット120を移動することにより、分光器光学系の光路にレンズユニット120を挿入し、及び、分光器光学系の光路からレンズユニット120を退避する。
【0136】
レンズ移動機構140は、主制御部211の制御の下に、レンズユニット120内の可動レンズを移動する。レンズユニット120の構成や、可動レンズの移動態様については、いくつかの非限定的な例を後述する。
【0137】
画像構築部220は、イメージセンサ115から提供される信号(スペクトル強度分布を表すOCTデータ)に基づいて、被検眼EのOCT画像データを構築する。構築されるOCT画像データは、1つ以上のAスキャン画像データであり、例えば、複数のAスキャン画像データからなるBスキャン画像データ(2次元断面像データ)である。画像構築部220は、プロセッサを含むハードウェアと、画像構築ソフトウェアとの協働によって実現される。
【0138】
イメージセンサ115から提供されるOCTデータからOCT画像データを構築するために、画像構築部220は、例えば、従来のスペクトラルドメインOCTと同様に、AラインごとのOCTデータに基づくスペクトル強度分布に信号処理を施してAラインごとの反射強度プロファイル(Aラインプロファイル)を生成し、各Aラインプロファイルを画像化して複数のAスキャン画像データを生成し、これらAスキャン画像データをスキャンパターン(複数のスキャン点の配置)にしたがって配列する。Aラインプロファイルを生成するための信号処理には、ノイズリダクション(デノイジング)、フィルタリング、高速フーリエ変換(FFT)などが含まれる。別の信号処理法を用いる場合には、その手法に応じた公知のOCT画像データ構築処理を採用することができる。
【0139】
画像構築部220は、被検眼Eの3次元領域(ボリューム)を表現した3次元画像データを構築するように構成されてもよい。3次元画像データは、3次元座標系により画素(ピクセル)の位置が定義された画像データであり、その例としてスタックデータやボリュームデータがある。スタックデータは、複数のスキャンラインに沿って得られた複数の断面像を、これらスキャンラインの位置関係にしたがって配列することによって構築される画像データである。ボリュームデータは、例えばスタックデータに補間処理やボクセル化処理などを適用することによって構築される、3次元的に配列されたボクセルを画素とする画像データであり、ボクセルデータとも呼ばれる。
【0140】
画像構築部220は、このようにして構築されたOCT画像データから新たなOCT画像データを作成することができる。いくつかの非限定的な態様において、画像構築部220は、3次元画像データにレンダリングを適用することができる。レンダリングの例として、ボリュームレンダリング、サーフェスレンダリング、最大値投影(MIP)、最小値投影(MinIP)、多断面再構成(MPR)などがある。
【0141】
いくつかの非限定的な態様において、画像構築部220は、3次元画像データからOCT正面画像を構築するように構成されてよい。例えば、画像構築部220は、3次元画像データをz方向(Aライン方向、深さ方向)に投影してプロジェクションデータを構築することができる。また、画像構築部220は、3次元画像データの部分データ(例えば、スラブ)からプロジェクションデータを構築することができる。この部分データは、例えば、画像セグメンテーション(単に、セグメンテーションとも呼ばれる)を用いて自動で指定され、又は、ユーザーによって手動で指定される。このセグメンテーションの手法は任意であってよく、例えば、エッジ検出等の画像処理、及び/又は、機械学習を利用したセグメンテーションを含んでいてよい。このセグメンテーションは、例えば、画像構築部220又はデータ処理部230により実行される。
【0142】
眼科装置1は、OCTモーションコントラスト撮影(motion contrast imaging)を実行可能であってよい。OCTモーションコントラスト撮影は、眼内に存在する液体や粒子の動きを抽出するための機能的イメージング技術である。OCTモーションコントラスト撮影は、例えば、血管の描出を描出するためのOCTアンジオグラフィ(OCT Angiography、OCTA)に用いられる。
【0143】
データ処理部230は、被検眼Eの画像に対して特定のデータ処理を適用するように構成されている。データ処理部230は、例えば、プロセッサを含むハードウェアと、データ処理ソフトウェアとの協働によって実現される。
【0144】
ユーザーインターフェイス240は、表示部241と操作部242とを含む。表示部241は、表示装置3を含む。操作部242は、各種の操作デバイスや入力デバイスを含む。ユーザーインターフェイス240は、例えばタッチパネルのような表示機能と操作機能とが一体となったデバイスを含んでいてもよい。ユーザーインターフェイス240の少なくとも一部を含まない実施形態を構築することも可能である。例えば、表示デバイスは、眼科装置1に接続された外部装置であってよい。
【0145】
レンズユニット120の1つの例であるレンズユニット120Aについて、
図3を参照しつつ説明する。
図3は、分光器の光路にレンズユニット120Aが配置されている状態を示している。レンズユニット120Aは、2つのレンズ121及び122を含み、レンズユニット移動機構130によって結像レンズ114とイメージセンサ115との間に退避可能に挿入される。
【0146】
分光器光学系の光路外に配置されているレンズユニット120Aを結像レンズ114とイメージセンサ115との間の位置に移動することによって、分光器光学系の焦点位置を移動することなく分光器光学系の焦点距離を変化させることができる。逆に、結像レンズ114とイメージセンサ115との間に配置されているレンズユニット120Aを分光器光学系の光路外に移動することによって、分光器光学系の焦点位置を移動することなく分光器光学系の焦点距離を変化させることができる。
【0147】
レンズユニット120Aに含まれる2つのレンズ121及び122は、凸レンズ121及び凹レンズ122である。すなわち、レンズユニット120Aは、凸レンズ121と、凸レンズ121とイメージセンサ115との間に配置される凹レンズ122と、を含んでいる。換言すると、結像レンズ114とイメージセンサ115との間に配置されるレンズユニット120Aに含まれる2つのレンズ121及び122のうち、結像レンズ114側に配置されるレンズ121は凸レンズであり、イメージセンサ115側に配置されるレンズ122は凹レンズである。このような構成を採用することで、レンズユニット120Aのコンパクト化を図ることができる。
【0148】
レンズユニット120Aに含まれる凸レンズ121及び凹レンズ122のいずれか一方又は双方が可動レンズである。可動レンズとしての凸レンズ121及び/又は凹レンズ122は、主制御部211の制御の下にレンズ移動機構140によって移動される。レンズ移動機構140による可動レンズの移動方向は、X方向、Y方向、及びZ方向のうちの、いずれか1つの方向、いずれか2つの方向、又は3つの方向であってよい。
【0149】
ここで、Z方向は、分光器光学系の光軸(レンズユニット120内のレンズ群の光軸、可動レンズの光軸)に平行な方向であり、X方向は、イメージセンサ115のライン方向に対応する方向であり、Y方向は、X方向及びZ方向の双方に直交する方向である。
【0150】
いくつかの態様では、分光器光学系の光軸の向きと可動レンズの光軸の向きとは実質的に一致していると仮定してよい。しかし、別のいくつかの態様では、分光器光学系の光軸の向きと可動レンズの光軸の向きとが実質的に相違していることが想定される。その場合、眼科装置1は、レンズユニット移動機構130、レンズ移動機構140、又は別の機構によって可動レンズの光軸の向きを変更して分光器光学系の光軸の向きに合わせるように構成されてよい。
【0151】
可動レンズの移動方向が2つ以上の方向を含む場合、移動される可動レンズは同じでもよいし、相違してもよい。例えば、レンズ移動機構140が可動レンズをX方向、Y方向、及びZ方向に移動可能に構成されている場合において、X方向に移動される可動レンズ(X可動レンズ)、Y方向に移動される可動レンズ(Y可動レンズ)、及び、Z方向に移動される可動レンズ(Z可動レンズ)のそれぞれは、凸レンズ121及び凹レンズ122からなるレンズ群から予め選択されてよい。具体的には、X可動レンズは凸レンズ121及び/又は凹レンズ122であってよく、Y可動レンズは凸レンズ121及び/又は凹レンズ122であってよく、Z可動レンズは凸レンズ121及び/又は凹レンズ122であってよい。なお、X可動レンズ、Y可動レンズ、及びZ可動レンズは固定的である必要はなく、それらのいずれかを補正時に選択するようにしてもよい。
【0152】
いくつかの態様では、主制御部211は、イメージセンサ115からの出力に基づいてレンズ移動機構140の制御を行うように構成されていてよい。イメージセンサ115は、干渉光LCの複数のスペクトル成分(波長成分)を受光素子アレイによって別々に検出するように構成されている。イメージセンサ115からの出力は、干渉光LCのスペクトル強度分布を表す電気信号(検出信号、干渉信号)である。
【0153】
主制御部211は、イメージセンサ115により生成された検出信号の所定のパラメータに基づきレンズ移動機構140の制御を行うように構成されている。このパラメータは、例えば、検出されたスペクトル強度分布の強度情報(光量情報)を示すパラメータ、波長情報を示すパラメータ、位相情報を示すパラメータなどであってよい。
【0154】
主制御部211は、イメージセンサ115から出力された検出信号に基づきレンズ移動機構140を制御して可動レンズを移動することにより、イメージセンサ115によるスペクトル強度分布の検出状態の最適化を図る。すなわち、主制御部211は、スペクトル強度分布の検出状態に基づき可動レンズの位置を調整することによって、スペクトル強度分布の検出状態を最適化するためのフィードバック制御を実行する。
【0155】
例えば、主制御部211は、光スキャナ42を制御して測定光LSの光路を遮断し、光源ユニット101を点灯する。これにより、光源ユニット101から出力された低コヒーレンス光L0が、参照アームを通じて分光器に導かれる。分光器は、低コヒーレンス光L0のスペクトル強度分布を検出して検出信号を出力する。
【0156】
可動レンズの移動方向にX方向が含まれている場合、主制御部211は、例えば、分光器により生成された検出信号からスペクトル位置情報を求め、このスペクトル位置情報に基づいて、X方向に可動レンズを移動するためのレンズ移動機構140の制御を実行するように構成されてよい。可動レンズをX方向に移動するための処理については、その具体例を後述する。
【0157】
可動レンズの移動方向にY方向が含まれている場合、主制御部211は、例えば、分光器により生成された検出信号からスペクトル強度情報を求め、このスペクトル強度情報に基づいて、Y方向に可動レンズを移動するためのレンズ移動機構140の制御を実行するように構成されてよい。可動レンズをY方向に移動するための処理については、その具体例を後述する。
【0158】
可動レンズの移動方向にZ方向が含まれている場合も同様に、主制御部211は、例えば、分光器により生成された検出信号からスペクトル強度情報を求め、このスペクトル強度情報に基づいて、Z方向に可動レンズを移動するためのレンズ移動機構140の制御を実行するように構成されてよい。可動レンズをZ方向に移動するための処理については、その具体例を後述する。
【0159】
なお、可動レンズをY方向に移動することは、イメージセンサ115に対する干渉光LCの投射位置のズレ(ライン方向に垂直な方向へのズレ)を補正することに相当するものである。これに対し、可動レンズをZ方向に移動することは、イメージセンサ115に対する干渉光LCのピントのズレを補正することに相当するものである。いずれの補正も、分光器により検出されるスペクトル強度情報を参照して行われるものであるが、スペクトル強度を悪化させる機序が異なっている点に注意されたい。
【0160】
レンズユニット120Aが用いられる分光器光学系の設計及び構成の1つの例について、
図4を更に参照して説明する。
図4は3つの図(上段図、中段図、下段図)を含んでいる。
図4の上段図は、分光器光学系の光路にレンズユニット120Aが配置されていない状態を表している。
図4の中段図は、分光器光学系の光路にレンズユニット120Aが配置されている状態を表している。
図4の下段図は、分光器光学系の光路にレンズユニット120Aが配置されている状態であって、結像レンズ114とレンズユニット120Aとを合成光学系として表現したときの状態を表している。
【0161】
図4の上段図及び中段図に示すように、結像レンズ114の前側主点の位置をH1で示し、結像レンズ114の後側主点の位置をH1´で示す。また、
図4の中段図に示すように、レンズユニット120A(レンズユニット120Aを構成するレンズ群)の前側主点の位置をH2で示し、レンズユニット120Aの後側主点の位置をH2´で示す。また、
図4の上段図、中段図、及び下段図に示すように、イメージセンサ115(その受光面)の位置をKで示す。
【0162】
図4Aの上段図に示すように、結像レンズ114の焦点距離(例えば、結像レンズ114を構成するレンズ群の合成焦点距離)をf1とする。分散素子113から出射された平行光をイメージセンサ115に集光する(結像する)ために、結像レンズ114の後側主点位置H1´とイメージセンサ115の受光面位置Kとの間の距離H1´Kが結像レンズ114の焦点距離f1に等しくなるように設計され構成されている。結像レンズ114の設計は、例えば、撮影範囲(例えば、深さレンジ)、コリメートレンズ112に関するパラメータ、分散素子113に関するパラメータなどに基づいてなされる。
【0163】
レンズユニット120Aの焦点距離(例えば、レンズユニット120Aを構成するレンズ群の合成焦点距離、より具体的には、凸レンズ121と凹レンズ122との合成焦点距離)をf2とする。
図4の中段図に示すように、結像レンズ114の後側主点位置H1´とレンズユニット120Aの前側主点位置H2との間の距離H1´H2をd1とする。また、
図4の中段図に示すように、レンズユニット120Aの後側主点H2´とイメージセンサ115の受光面位置Kとの間の距離H2´Kをd2とする。これらの距離d1及びd2は、レンズユニット120Aの光学的構成、分光器光学系の光路への挿入位置などに基づき決定される。
【0164】
図4の下段図に示すように、結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成光学系の焦点距離(合成焦点距離)をfとする。レンズユニット120Aによるズーム倍率をβとすると、ズーム倍率βは、結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成焦点距離fを結像レンズ114の焦点距離f1で除算した商で表される:β=f/f1。
【0165】
図4の中段図及び下段図から分かるように、結像レンズ114の焦点距離f1とレンズユニット120Aの焦点距離f2との合成焦点距離f、つまり、結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成光学系の焦点距離fは、次式のように表される:f=(f1×f2)/(f1+f2-d1)。また、レンズユニット120Aの後側主点位置H2´と、結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成光学系の後側主点位置H´との間の距離δ2は、次式のように表される:δ2=f×d1/f1。
【0166】
以上より、分光器光学系の光路にレンズユニット120Aが配置されていない状態における結像レンズ114の焦点位置と、分光器光学系の光路にレンズユニット120Aが配置されている状態における結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成光学系の焦点位置とが一致するための条件、換言すると、これら2つの焦点位置がともにイメージセンサ115の受光面位置Kに配置されるための条件、更に換言すると、分光器光学系の光路に対するレンズユニット120Aの挿脱によって分光器光学系の焦点位置が変化しないための条件は、次のように表される:f=H2´K+δ2=d2+f×d1/f1。
【0167】
また、結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成光学系の焦点距離についての上記の式f=(f1×f2)/(f1+f2-d1)を変形すると、d1=f1+f2-f1×f2/fとなる。
【0168】
したがって、本例に係る分光器の光学系は、分光器の光路に対するレンズユニット120Aの挿脱によって分光器の焦点位置を変化させることなく分光器の焦点距離を変化させるために、結像レンズ114の焦点距離f1と、レンズユニット120Aの焦点距離f2と、結像レンズ114の後側主点とレンズユニット120Aの前側主点との間の距離d1と、レンズユニット120Aの後側主点とイメージセンサ115との間の距離d2と、結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成焦点距離fとが、次の2つの式を満足するように設計され構成されている:d1=f1+f2-f1×f2/f、及び、f=d2+f×d1/f1。
【0169】
1つの具体例を
図5に示す。本具体例におけるパラメータは次のように設定されている:結像レンズ114の焦点距離f1=107.7ミリメートル;レンズユニット120Aの焦点距離f2=-58.4ミリメートル;結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成焦点距離f=214ミリメートル;結像レンズ114の後側主点とレンズユニット120Aの前側主点との間の距離d1=78.6ミリメートル;レンズユニット120Aの後側主点とイメージセンサ115との間の距離d2=57.8ミリメートル;レンズユニット120Aの後側主点位置H2´と、結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成光学系の後側主点位置H´との間の距離δ2=156.2ミリメートル。このとき、d2+δ2=214=fとなり、上記の条件式f=d2+f×d1/f1が満足されている。
【0170】
結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成焦点距離fを結像レンズ114の焦点距離f1で除算した商βの値、つまり、レンズユニット120Aのズーム倍率βは、1よりも大きく且つ5以下であってよい(1<β≦5)。前述したように深さレンジと解像度とはトレードオフの関係にあるが、双方のパラメータを勘案すると、ズーム倍率βがこの範囲(1<β≦5)を外れている場合には、例えば眼科診断用OCT計測において、一方のパラメータの条件が実用上不十分なものになるおそれがある。
【0171】
深さレンジ及び解像度の双方を実用上十分なものとするために、ズーム倍率βは、1.5以上且つ3以下であってよい(1.5≦β≦3)。このとき、レンズユニット120Aの焦点距離f2の範囲は、f2=-1.1×f1~-0.3×f1となる。また、凸レンズ121の焦点距離をf3とし、凹レンズ122の焦点距離をf4とすると、これら焦点距離f3及びf4の比率(f3/f4)の範囲は-1.5~5.0程度となる。ここで、結像レンズ114の焦点距離f1とズーム倍率βとを用いると、f1×f3/(f4×β)=-200~-150程度となる。なお、深さレンジの範囲や解像度の範囲は、サンプルの種類や、OCT計測で得られたデータの用途などに応じて任意に決定されてよい。
【0172】
OCT計測に使用される光の波長範囲(例えば、840±50ナノメートル)に基づいて、レンズユニット120Aを構成するレンズ121及び122のアッベ数を決定することができる。
【0173】
レンズユニット120の別の例であるレンズユニット120Bについて、
図6を参照しつつ説明する。
図6は、分光器の光路にレンズユニット120Bが配置されている状態を示している。レンズユニット120Bは、3つのレンズ123、124及び125を含み、レンズユニット移動機構130によって結像レンズ114とイメージセンサ115との間に退避可能に挿入される。
【0174】
分光器光学系の光路外に配置されているレンズユニット120Bを結像レンズ114とイメージセンサ115との間の位置に移動することによって、分光器光学系の焦点位置を変化させることなく分光器光学系の焦点距離を変化させることができる。逆に、結像レンズ114とイメージセンサ115との間に配置されているレンズユニット120Bを分光器光学系の光路外に移動することによって、分光器光学系の焦点位置を変化させることなく分光器光学系の焦点距離を変化させることができる。
【0175】
レンズユニット120Bに含まれる3つのレンズ123~125は、凸レンズ123、凹レンズ124、及び凸レンズ125である。すなわち、レンズユニット120Bは、凸レンズ123と、凸レンズ123とイメージセンサ115との間に配置される凹レンズ124と、凹レンズ124とイメージセンサ115との間に配置される凸レンズ125と、を含んでいる。換言すると、結像レンズ114とイメージセンサ115との間に配置されるレンズユニット120Bに含まれる3つのレンズ123~125のうち、結像レンズ114側に配置されるレンズ123は凸レンズであり、イメージセンサ115側に配置されるレンズ125も凸レンズであり、これらの間に配置されるレンズ124は凹レンズである。このような構成を採用することで、
図3の例と同様に、レンズユニット120Bのコンパクト化を図ることができる。
【0176】
凸レンズ121と凹レンズ122とからなる
図3のレンズユニット120Aと異なり、
図6のレンズユニット120Bは、凸レンズ123及び凹レンズ124に加えて、更なる凸レンズ125を含んでいる。凸レンズ125は、凹レンズ124とイメージセンサ115との間に配置され、イメージセンサ115に対する光の入射角を減少させるように作用する。イメージセンサ115に対する光の入射角を小さくすることにより、換言すると、イメージセンサ115の受光面に対して垂直に近い方向から光を投射することにより、分光器の受光効率が向上する。特に、イメージセンサ115に対してテレセントリックになるようにレンズユニット120Bを設計し構成することで、分光器の受光効率を最適化することができる。
【0177】
レンズユニット120Bに含まれる凸レンズ123、凹レンズ124、及び凸レンズ125のうちの少なくとも1つが可動レンズである。レンズユニット120B内の可動レンズは、主制御部211の制御の下にレンズ移動機構140によって、X方向、Y方向、及びZ方向のうちの少なくとも1つの方向に移動される。可動レンズの移動の態様は、特に言及しない限り、レンズユニット120Aの場合と同様であってよい。
【0178】
図6のレンズユニット120Bは、上記の条件式(d1=f1+f2-f1×f2/f、f=d2+f×d1/f1)を満足するように設計され構成されてよい。1つの具体例を
図7に示す。本具体例におけるパラメータは次のように設定されている:結像レンズ114の焦点距離f1=107.7ミリメートル;レンズユニット120Bの焦点距離f2=-388.7ミリメートル;結像レンズ114とレンズユニット120Bとの合成焦点距離f=214ミリメートル;結像レンズ114の後側主点とレンズユニット120Bの前側主点との間の距離d1=-85.4ミリメートル;レンズユニット120Bの後側主点とイメージセンサ115との間の距離d2=383.7ミリメートル;レンズユニット120Bの後側主点位置H2´と、結像レンズ114とレンズユニット120Bとの合成光学系の後側主点位置H´との間の距離δ2=169.7ミリメートル。このとき、d2+δ2=214=fとなり、上記の条件式f=d2+f×d1/f1が満足されている。
【0179】
結像レンズ114とレンズユニット120Bとの合成焦点距離fを結像レンズ114の焦点距離f1で除算した商βの値、つまり、レンズユニット120Bのズーム倍率βは、1よりも大きく且つ5以下であってよい(1<β≦5)。更に、ズーム倍率βは、1.5以上且つ3以下であってよい(1.5≦β≦3)。これにより、例えば眼科診断のための光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置1)において、深さレンジ及び解像度の双方が実用上十分なものとなる。
【0180】
OCTユニット100の別の態様を
図8に示す。
図1BのOCTユニット100は、結像レンズ114とイメージセンサ115との間にレンズユニット120が退避可能に挿入されるように構成されているが、本態様のOCTユニット100Aは、分散素子113と結像レンズ114との間にレンズユニット120が退避可能に挿入されるように構成されている。分散素子113と結像レンズ114との間にレンズユニット120を挿入するように構成された本態様によれば、結像レンズ114とイメージセンサ115との間にレンズユニット120を挿入する場合と比較して、イメージセンサ115とレンズユニット120との間の距離が大きくなるため、イメージセンサ115に塵埃が付着するリスクが低減される。
【0181】
レンズユニット120の挿入位置や、レンズユニット120の光学的構成(例えば、レンズのパラメータ、レンズの配置など)を除いて、本態様のOCTユニット100Aの構成は
図1BのOCTユニット100の構成と同様であってよい。
【0182】
図8のOCTユニット100Aに搭載されるレンズユニット120の1つの例であるレンズユニット120Cについて、
図9を参照しつつ説明する。
図9は、分光器の光路にレンズユニット120Cが配置されている状態を示している。レンズユニット120Cは、2つのレンズ126及び127を含み、レンズユニット移動機構130によって分散素子113と結像レンズ114との間に退避可能に挿入される。
【0183】
分光器光学系の光路外に配置されているレンズユニット120Cを分散素子113と結像レンズ114との間の位置に移動することによって、分光器光学系の焦点位置を変化させることなく分光器光学系の焦点距離を変化させることができる。逆に、分散素子113と結像レンズ114との間に配置されているレンズユニット120Cを分光器光学系の光路外に移動することによって、分光器光学系の焦点位置を変化させることなく分光器光学系の焦点距離を変化させることができる。
【0184】
レンズユニット120Cに含まれる2つのレンズ126及び127は、凸レンズ126及び凹レンズ127である。すなわち、レンズユニット120Cは、凸レンズ126と、凸レンズ126と結像レンズ114との間に配置される凹レンズ127と、を含んでいる。換言すると、分散素子113と結像レンズ114との間に配置されるレンズユニット120Cに含まれる2つのレンズ126及び127のうち、分散素子113側に配置されるレンズ126は凸レンズであり、結像レンズ114側に配置されるレンズ127は凹レンズである。このような構成を採用することで、レンズユニット120Cのコンパクト化を図ることができる。
【0185】
レンズユニット120Cに含まれる凸レンズ126及び凹レンズ127は、アフォーカル系として設計され構成されている。換言すると、レンズユニット120Cに入射する光は平行光であり、レンズユニット120Cから出射する光も平行光である。このように、本態様では、分散素子113から出射する光は平行光であり、この平行光がレンズユニット120Cに入射し、レンズユニット120Cから出射する光は平行光であり、レンズユニット120Cから出射した平行光が結像レンズ114に入射し、結像レンズ114から出射する光は収束光であり、結像レンズ114から出射した収束光はイメージセンサ115の受光面に結像する(集束する)。
【0186】
更に、レンズユニット120Cは、縮小倍のビームエキスパンダーとして作用するように設計され構成されてよい。この場合、レンズユニット120Cはアフォーカルレンズ系であり、出射平行光のビーム径は入射平行光のビーム径よりも小さい。
【0187】
分散素子113と結像レンズ114との間に退避可能に挿入されるレンズユニットに含まれるレンズ系の構成はアフォーカル系に限定されない。例えば、
図10に示すレンズユニット120Dに含まれる2つのレンズ128及び129(凸レンズ128及び凹レンズ129)は、アフォーカル系ではない。
【0188】
なお、
図9に示すように、分光器光学系の光路において平行光が案内される箇所(平行光部)にアフォーカル系のレンズユニット120Cを挿入する構成を採用することによって、縮小倍のビームエキスパンダーとして作用するレンズユニット120Cの偏心や倒れ(傾斜)による光学性能の劣化を小さくすることができる。よって、いくつかの態様において
図10のレンズユニット120Dのようなアフォーカル系ではないレンズユニットを採用することは可能であるが、
図9のレンズユニット120Cのようなアフォーカル系のレンズユニットを採用する利点は大きいと考えられる。
【0189】
レンズユニット120Cに含まれる凸レンズ126及び凹レンズ127のいずれか一方又は双方が可動レンズである。レンズユニット120C内の可動レンズは、主制御部211の制御の下にレンズ移動機構140によって、X方向、Y方向、及びZ方向のうちの少なくとも1つの方向に移動される。可動レンズの移動の態様は、特に言及しない限り、レンズユニット120Aの場合と同様であってよい。レンズユニット120Dが採用される場合、これに含まれる凸レンズ126及び凹レンズ127についても同様であってよい。
【0190】
レンズユニット120Cが付帯された分光器光学系の設計及び構成について、いくつかの例を説明する。
【0191】
図11は2つの図(上段図、下段図)を含んでいる。
図11の上段図は、分散素子113側に配置される焦点距離faの凸レンズと、結像レンズ114側に配置される焦点距離fbの凸レンズとを含む、分散素子113と結像レンズ114との間に退避可能に挿入されるアフォーカル系のレンズユニットを表している。本例のレンズユニットでは、2つの凸レンズの間の距離が2つの焦点距離の和fa+fbとなるため、レンズユニットの寸法が比較的大きくなってしまう。
【0192】
一方、
図11の下段図は、分散素子113側に配置される焦点距離fa(>0)の凸レンズと、結像レンズ114側に配置される焦点距離fb(<0)の凹レンズとを含む、分散素子113と結像レンズ114との間に退避可能に挿入されるアフォーカル系のレンズユニットを表している。ここで、凸レンズの焦点距離faは、凹レンズの焦点距離fbの絶対値よりも大きいとする(fa>|fb|)。本例のレンズユニットでは、2つのレンズの間の距離が凸レンズの焦点距離faと凹レンズの焦点距離fbの絶対値|fb|との差fa-|fb|となるため、
図11の上段図のように2つの凸レンズを含む場合よりもレンズユニットの寸法を小さくすることが可能になる。なお、
図9のレンズユニット120C及び
図10のレンズユニット120Dは、本例のレンズユニットの例である。
【0193】
図12は2つの図(上段図、下段図)を含んでいる。
図12の上段図は、レンズユニットが分光器光学系の光路に配置されていない状態を表している。
図12の下段図は、分光器光学系の光路にレンズユニットが配置されている状態を表している。
【0194】
本例のレンズユニットは、分散素子113側に配置される焦点距離fa(>0)の凸レンズと、結像レンズ114側に配置される焦点距離fb(<0)の凹レンズとを含む、分散素子113と結像レンズ114との間に退避可能に挿入されるアフォーカル系のレンズユニットである。
【0195】
以下、本例のレンズユニットは、
図9のレンズユニット120Cであるとする。レンズユニット120Cは、分散素子113側に配置される焦点距離fa(>0)の凸レンズ126と、結像レンズ114側に配置される焦点距離fb(<0)の凹レンズ127とを含む、分散素子113と結像レンズ114との間に退避可能に挿入されるアフォーカル系のレンズユニットである。
【0196】
結像レンズ114の焦点距離(例えば、結像レンズ114を構成するレンズ群の合成焦点距離)をf1とする。また、焦点距離f1の結像レンズ114と、焦点距離faの凸レンズ126及び焦点距離fbの凹レンズ127を含むレンズユニット120Cとの合成光学系の焦点距離(合成焦点距離)をfとする。
【0197】
レンズユニット120Cによるズーム倍率をβとすると、ズーム倍率βは、結像レンズ114とレンズユニット120Cとの合成焦点距離fを結像レンズ114の焦点距離f1で除算した商で表される:β=f/f1。また、縮小倍のエキスパンダーとしてのレンズユニット120Cの角倍率をγとすると、角倍率γはズーム倍率βに等しい:γ=β=f/f1。ここで、角倍率γは1よりも大きいとする:γ>1。つまり、本例では、分光器光学系の光路にレンズユニット120Cを挿入することによってOCT計測の深さレンジが拡大する。
【0198】
以上より、本例に係る分光器の光学系は、分光器の光路に対するレンズユニット120Cの挿脱によって分光器の焦点位置を変化させることなく分光器の焦点距離を変化させるために、結像レンズ114の焦点距離f1と、レンズユニット120Cの分散素子113側の焦点距離fa及び結像レンズ114側の焦点距離fbと、結像レンズ114とレンズユニット120Cとの合成焦点距離fとが、次の式を満足するように設計され構成されている:f=(fa/|fb|)×f1。前述したように、レンズユニット120Cの結像レンズ114側の焦点距離fbの絶対値は、凸レンズ及び凹レンズのいずれかを選択できることを意味している。
【0199】
1つの具体例を
図13に示す。本具体例におけるパラメータは次のように設定されている:結像レンズ114の焦点距離f1=107.7ミリメートル;レンズユニット120Cの分散素子113側の焦点距離fa=94.202;レンズユニット120Cの結像レンズ114側の焦点距離fb=-47.101;レンズユニット120Cの角倍率γ=fa/|fb|=2.0;結像レンズ114とレンズユニット120Cとの合成焦点距離f=γ×f1=215.4。本具体例によれば、分光器の光路に対するレンズユニット120Cの挿脱によって分光器の焦点位置を変化させることなく分光器の焦点距離を変化させることができる。
【0200】
結像レンズ114とレンズユニット120Cとの合成焦点距離fを結像レンズ114の焦点距離f1で除算した商βの値、つまり、レンズユニット120Bのズーム倍率βは、1よりも大きく且つ5以下であってよい(1<β≦5)。更に、ズーム倍率βは、1.5以上且つ3以下であってよい(1.5≦β≦3)。これにより、例えば眼科診断のための光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置1)において、深さレンジ及び解像度の双方が実用上十分なものとなる。また、OCT計測に使用される光の波長範囲(例えば、840±50ナノメートル)に基づいて、レンズユニット120Cを構成するレンズ126及び127のアッベ数を決定することができる。
【0201】
次に、可動レンズを移動するために実行される処理のいくつかの具体例を説明する。
【0202】
まず、分光器のイメージセンサ115のライン方向に対応するX方向に可動レンズを移動するために実行される処理の1つの具体例を説明する。本例において、主制御部211は、光スキャナ42を制御して測定光LSの光路を遮断し、光源ユニット101を点灯する。これにより、光源ユニット101から出力された低コヒーレンス光L0が、参照アームを通じて分光器に導かれる。分光器のイメージセンサ115は、低コヒーレンス光L0のスペクトル強度分布を検出する。主制御部211は、検出されたスペクトル強度分布からスペクトル位置情報を求め、このスペクトル位置情報に基づいてX方向に可動レンズを移動するためのレンズ移動機構140の制御を実行する。
【0203】
低コヒーレンス光L0を検出したイメージセンサ115から出力される検出信号の例を
図14に示す。符号SDで示された曲線は、低コヒーレンス光L0のスペクトル強度分布を表している。低コヒーレンス光L0のスペクトル強度分布、つまり光源ユニット101からの出力波長分布は予め決められている。特に、低コヒーレンス光L0の最短波長及び最長波長は予め決められている。最短波長は、強度が非ゼロの波長のうち最短の波長であり、最長波長は、強度が非ゼロの波長のうち最長の波長である。また、前述したように、イメージセンサ115は、ライン方向に配列された複数の受光素子を含んでおり、更に、各受光素子には検出波長が割り当てられている。したがって、低コヒーレンス光L0の最短波長に対応する受光素子及び最長波長に対応する受光素子は、予め決められている。
図14の符号P1及びP2は、それぞれ、低コヒーレンス光L0の最短波長に対応する受光素子の識別子(ピクセルアドレス)及び最長波長に対応する受光素子の識別子を示している。
【0204】
前述したように、イメージセンサ115のライン方向はX方向に対応している。分光器内の光学素子に位置ズレ(例えば、レンズの光軸ズレ)が生じている場合、イメージセンサ115に対する低コヒーレンス光L0のスペクトルの投射位置が既定位置に対してX方向に偏位し、各受光素子は予め割り当てられたスペクトル成分とは別のスペクトル成分を検出してしまう。この場合、検出されるスペクトル強度が実質的にゼロであるべきピクセルアドレスP1の受光素子、及び、検出されるスペクトル強度が実質的にゼロであるべきピクセルアドレスP2の受光素子の一方が、実質的に非ゼロのスペクトル強度を検出することになる。ここで、「実質的にゼロ」は、ゼロであってもよいし、所定の閾値以下の値であってもよい。また、「実質的に非ゼロ」は、所定の閾値を超える値であってよい。
【0205】
このような現象を利用することで分光器内の光学素子のX方向への位置ズレの検出や評価を行うことができる。例えば、主制御部211は、低コヒーレンス光L0を検出したイメージセンサ115により生成されたスペクトル強度分布から、ピクセルアドレスP1の受光素子の検出強度と、ピクセルアドレスP2の受光素子の検出強度とを取得し、これら検出強度が実質的にゼロであるか判定する。
【0206】
双方の検出強度が実質的にゼロであると判定された場合、主制御部211は、分光器内の光学素子のX方向への位置ズレは存在しないと判定する。この場合、可動レンズをX方向に移動するための制御は行われない。
【0207】
これに対し、一方の検出強度が実質的に非ゼロであると判定された場合には、主制御部211は、分光器内の光学素子のX方向への位置ズレが存在すると判定する。この場合、主制御部211は、可動レンズをX方向に移動するための制御を実行する。
【0208】
例えば、主制御部211は、検出強度が実質的に非ゼロと判定されたピクセルアドレスとは逆の方向に低コヒーレンス光L0のスペクトルの投射位置を移動させるように、可動レンズをX方向に移動するための制御を行う。具体例として、主制御部211は、ピクセルアドレスP1の受光素子による検出強度が実質的に非ゼロであった場合、低コヒーレンス光L0のスペクトルの投射位置(低コヒーレンス光L0のスペクトル強度分布)をピクセルアドレスP2の受光素子の方向に移動させるように、可動レンズをX方向に移動するための制御を行う。
【0209】
いくつかの態様では、可動レンズのX方向への移動距離は、予め決められた距離であってよい。X方向への移動距離を漸次的に小さくしながら可動レンズをX方向に移動するための処理及び制御を繰り返すことによって、可動レンズを最適位置(スペクトル強度分布のX方向への偏位が実質的にゼロになる可動レンズの位置)に導くことができる。つまり、可動レンズのX方向への移動と、可動レンズをX方向に移動するための処理及び制御とを、交互に、且つ、X方向への移動距離を徐々に小さくしながら実行することによって、可動レンズを最適位置に導くことができる。
【0210】
別のいくつかの態様では、主制御部211は、低コヒーレンス光L0のスペクトル強度分布SDと、検出された非ゼロの検出強度の値の大きさとに基づいてX方向への移動距離を決定することができる。この移動距離決定処理と、可動レンズをX方向に移動するための制御とを交互に行うことによって、可動レンズを最適位置に導くことができる。
【0211】
次に、分光器のイメージセンサ115のライン方向に垂直な方向に対応するY方向に可動レンズを移動するために実行される処理の1つの具体例を説明する。本例において、主制御部211は、光スキャナ42を制御して測定光LSの光路を遮断し、光源ユニット101を点灯する。これにより、光源ユニット101から出力された低コヒーレンス光L0が、参照アームを通じて分光器に導かれる。分光器のイメージセンサ115は、低コヒーレンス光L0のスペクトル強度分布を検出する。主制御部211は、検出されたスペクトル強度分布からスペクトル強度情報を求め、このスペクトル強度情報に基づいてY方向に可動レンズを移動するためのレンズ移動機構140の制御を実行する。
【0212】
スペクトル強度情報は、スペクトル強度分布から生成される、信号強度を表す任意の情報であってよく、例えば、スペクトル強度分布における最大強度値、スペクトル強度分布の積分値、所定のピクセルアドレスの受光素子により検出されたスペクトル成分の強度値などであってよい。
【0213】
いくつかの態様では、特開2008-203246号公報に開示されたY軸オート調整と同様の処理及び制御を行うことによって、Y方向に可動レンズを移動する動作が実行される。例えば、主制御部211は、Y方向への移動距離を漸次的に小さくしながら可動レンズをY方向に移動するための処理及び制御を繰り返すことによって、可動レンズを最適位置(イメージセンサ115に対する低コヒーレンス光L0の投射位置のY方向への偏位が実質的にゼロになる可動レンズの位置、スペクトル強度情報が示す値が最大になる可動レンズの位置)に導くことができる。つまり、可動レンズのY方向への移動と、可動レンズをY方向に移動するための処理及び制御とを、交互に、且つ、Y方向への移動距離を徐々に小さくしながら実行することによって、可動レンズを最適位置に導くことができる。
【0214】
次に、分光器の光軸(レンズユニット120の光軸、可動レンズの光軸)に平行なZ方向に可動レンズを移動するために実行される処理の1つの具体例を説明する。本例において、主制御部211は、光スキャナ42を制御して測定光LSの光路を遮断し、光源ユニット101を点灯する。これにより、光源ユニット101から出力された低コヒーレンス光L0が、参照アームを通じて分光器に導かれる。分光器のイメージセンサ115は、低コヒーレンス光L0のスペクトル強度分布を検出する。主制御部211は、検出されたスペクトル強度分布からスペクトル強度情報を求め、このスペクトル強度情報に基づいてZ方向に可動レンズを移動するためのレンズ移動機構140の制御を実行する。
【0215】
可動レンズをZ方向に移動するためのスペクトル強度情報は、スペクトル強度分布から生成される、信号強度を表す任意の情報であってよく、例えば、可動レンズをY方向に移動するためのスペクトル強度情報と同じ情報であってよい。
【0216】
いくつかの態様では、主制御部211は、Z方向への移動距離を漸次的に小さくしながら可動レンズをZ方向に移動するための処理及び制御を繰り返すことによって、可動レンズを最適位置(イメージセンサ115に対する低コヒーレンス光L0のフォーカスの偏位が実質的にゼロになる可動レンズの位置、スペクトル強度情報が示す値が最大になる可動レンズの位置)に導くことができる。つまり、可動レンズのZ方向への移動と、可動レンズをZ方向に移動するための処理及び制御とを、交互に、且つ、Z方向への移動距離を徐々に小さくしながら実行することによって、可動レンズを最適位置に導くことができる。
【0217】
本実施形態に係る眼科装置1が実行する動作について説明する。
図15は、眼科装置1の動作の1つの例を表す。
【0218】
まず、眼科装置1は、被検眼E(眼底Ef)に対するアライメント及びフォーカス調整を実行する(S1)。
【0219】
次に、OCT計測の深さレンジの設定が行われる(S2)。
【0220】
或る態様では、ユーザーインターフェイス240を用いて深さレンジの設定が行われる。主制御部211は、操作画面を表示部241に表示する。操作画面には、深さレンジを設定するためのグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)が設けられている。ユーザーは、このGUI及び操作部242を用いて深さレンジを設定することができる。
【0221】
別の態様では、深さレンジを変更するためのハードウェア(例えば、レバー、ボタンなど)が眼科装置1に設けられている。ユーザーは、このハードウェアを操作することによって深さレンジを設定することができる。
【0222】
更に別の態様では、眼科装置1は、深さレンジを自動で設定するためのソフトウェアを備えており、例えば、被検者の属性、被検者の検査データ、被検者の診断データ、被検眼の属性、被検眼の検査データ、被検眼の診断データなどに基づいて深さレンジの設定を実行するように構成される。これらの参照データは、例えば、電子カルテデータ、読影レポート、画像データなどから取得される。
【0223】
本動作例では、レンズユニット120が分光器光学系の光路に配置されている状態が広い深さレンジ(広レンジ)に対応し、レンズユニット120が分光器光学系の光路に配置されていない状態が狭い深さレンジ(狭レンジ)に対応するものとする。
【0224】
ステップS2の深さレンジ設定において広レンジが選択された場合(S3:広レンジ)、主制御部211は、レンズユニット移動機構130を制御することによってレンズユニット120を分光器光学系の光路に挿入する(S4)。レンズユニット120が光路に挿入されたら、処理はステップS5に進む。
【0225】
ステップS2の深さレンジ設定において狭レンジが選択された場合(S3:狭レンジ)、レンズユニット120が光路から退避されている状態で、処理はステップS7に進む。
【0226】
ステップS2の深さレンジ設定で広レンジが選択され、ステップS4でレンズユニット120が分光器光学系の光路に挿入されたら、主制御部211は、レンズユニット120内の可動レンズの位置調整を行うか否か判断する(S5)。
【0227】
例えば、主制御部211は、光スキャナ42を制御してサンプルアームを遮断するとともに光源ユニット101を点灯することよって、光源ユニット101から出力された低コヒーレンス光L0を分光器に導く。更に、主制御部211は、分光器のイメージセンサ115によって取得されたスペクトル強度分布からスペクトル強度情報及び/又はスペクトル位置情報を求める。主制御部211は、スペクトル位置情報に基づいて可動レンズのX方向の位置調整を行うか否かの判断を行うことができ、また、スペクトル強度情報に基づいて可動レンズのY方向の位置調整を行うか否かの判断及び/又は可動レンズのZ方向の位置調整を行うか否かの判断ことができる。これらの判断は、例えば、閾値処理(所定の閾値との比較)を含んでいる。
【0228】
ステップS5において可動レンズの位置調整を行わないと判断された場合(S5:No)、処理はステップS7に進む。一方、ステップS5において可動レンズの位置調整を行うと判断された場合(S5:Yes)、主制御部211は、前述した要領で可動レンズの位置調整を行う(S6)。可動レンズの位置調整が完了したら、処理はステップS7に進む。
【0229】
次に、眼科装置1は、被検眼E(眼底Ef)にOCTスキャンを適用する(S7)。このOCTスキャンは、ステップS2において設定された深さレンジで実行されるものであり、且つ、ステップS6において達成された好適なOCT計測条件で実行されるものである。
【0230】
次に、眼科装置1は、ステップS7のOCTスキャンで収集されたデータに基づいてOCT画像データを生成する(S8)。
【0231】
次に、眼科装置1は、ステップS8で生成されたOCT画像データに基づいて、表示部241にOCT画像を表示する(S9)。以上で、本動作例は終了となる(エンド)。
【0232】
本実施形態に係る眼科装置1のいくつかの作用及びいくつかの効果について説明する。
【0233】
眼科装置1は、被検眼E(サンプル)に投射された測定光LSの戻り光と参照光LRとを重ね合わせて生成された干渉光LCを分光器で検出するように構成された光コヒーレンストモグラフィ装置として機能する。分光器は、分散素子113、イメージセンサ115(光検出器)、及び結像レンズ系(結像レンズ114及びレンズユニット120)を含んでいる。分散素子113は、入力光を複数の波長成分に分離する。結像レンズ系は、分散素子133とイメージセンサ115との間に配置された、分散素子113により生成された複数の波長成分をイメージセンサ115の受光面に結像するための複数のレンズを含んでいる。イメージセンサ115は、分散素子113により生成された複数の波長成分を別々に検出する。更に、眼科装置1は、レンズ移動機構140と主制御部211(第1の制御部)とを含んでいる。レンズ移動機構140は、分光器の結像レンズ系における複数のレンズのうちの少なくとも1つのレンズである可動レンズを移動するように構成されている。主制御部211は、イメージセンサ115からの出力に基づいてレンズ移動機構140の制御を行う。
【0234】
このような眼科装置1によれば、分光器内のレンズの光軸ズレや、分光器のフォーカスのズレを、イメージセンサ115からの出力に基づき可動レンズを移動することによって補正することができるので、分光器に関するOCT計測条件の調整をシンプルな構成及び制御で実現することが可能である。
【0235】
本実施形態において、主制御部211は、イメージセンサ115による検出光量に基づいてレンズ移動機構140の制御を行うように構成されていてよい。
【0236】
本実施形態において、主制御部211は、可動レンズの光軸に対して垂直な方向(XY方向)に可動レンズを移動するようにレンズ移動機構140の制御を行うように構成されていてよい。
【0237】
本実施形態において、イメージセンサ115は、線状に配列された複数の受光素子からなる受光素子列を少なくとも1つ含んでいてよい。この場合、主制御部211は、複数の受光素子の配列方向(ライン方向)に対して垂直な第1の方向(Y方向)に可動レンズを移動するようにレンズ移動機構140の制御を行うように構成されていてよい。更に、主制御部211は、測定光LS及び参照光LRを生成するための光源ユニット101から出力された低コヒーレンス光L0を分光器により検出して取得されたスペクトル強度情報に基づいてY方向に可動レンズを移動するようにレンズ移動機構140の制御を行うように構成されていてよい。
【0238】
本実施形態において、イメージセンサ115は、線状に配列された複数の受光素子からなる受光素子列を少なくとも1つ含んでいてよい。この場合、主制御部211は、複数の受光素子の配列方向(ライン方向)に平行な第2の方向(X方向)に可動レンズを移動するようにレンズ移動機構140の制御を行うように構成されていてよい。更に、主制御部211は、測定光LS及び参照光LRを生成するための光源ユニット101から出力された低コヒーレンス光L0を分光器により検出して取得されたスペクトル位置情報に基づいてX方向に可動レンズを移動するようにレンズ移動機構140の制御を行うように構成されていてよい。
【0239】
本実施形態において、主制御部211は、可動レンズの光軸に平行な第3の方向(Z方向)に可動レンズを移動するようにレンズ移動機構140の制御を行うように構成されていてよい。この場合、主制御部211は、測定光LS及び参照光LRを生成するための光源ユニット101から出力された低コヒーレンス光L0を分光器により検出して取得されたスペクトル強度情報に基づいてZ方向に可動レンズを移動するようにレンズ移動機構140の制御を行うように構成されていてよい。
【0240】
本実施形態において、分光器の結像レンズ系は、分散素子113とイメージセンサ115との間に配置された1つ以上のレンズからなる結像レンズ114(第1のレンズ群)と、分散素子113とイメージセンサ115との間の光路に挿脱される1つ以上のレンズからなるレンズユニット120(第2のレンズ群)とを含んでいてよい。ここで、レンズユニット120が光路に挿入されているときの結像レンズ系の焦点位置は、レンズユニット120が光路から退避されているときの結像レンズ系の焦点位置と同じであり、且つ、レンズユニット120が光路に挿入されているときの結像レンズ系の焦点距離は、レンズユニット120が光路から退避されているときの結像レンズ系の焦点距離と異なる。つまり、レンズユニット120は、分光器の焦点位置を変化させずに分光器の焦点距離を変化させるように構成されている。光路に対するレンズユニット120の挿入及び退避は、レンズユニット移動機構130によって行われる。
【0241】
本実施形態において、可動レンズは、レンズユニット120における1つ以上のレンズを含んでいてよい。
【0242】
本実施形態において、レンズユニット120は、2つ以上のレンズを含んでいてよい。この場合、可動レンズは、レンズユニット120における当該2つ以上のレンズのうちの一部のレンズ(1つ以上のレンズ)であってよい。或いは、可動レンズは、レンズユニット120における当該2つ以上のレンズの全てであってもよい。
【0243】
本実施形態に係る眼科装置のいくつかの変形例について説明する。
【0244】
上記実施形態に係る眼科装置1(光コヒーレンストモグラフィ装置)は、分光器光学系の焦点位置を移動することなく焦点距離を変化させる新規なレンズユニット120を用いることによって、光検出器(イメージセンサ115)を移動させずにOCT計測の深さレンジを変化させるように構成されている。一方、本開示に係る実施形態の1つの特徴は、光検出器からの出力に基づいて可動レンズの移動制御を行う点にある。この特徴を有する光コヒーレンストモグラフィ装置は、上記実施形態のようなレンズユニットを備えたものに限定されない。
【0245】
例えば、特許文献1に記載された眼科装置は、サンプルに投射された測定光の戻り光を参照光に重ね合わせて生成された干渉光を分光器で検出するように構成された光コヒーレンストモグラフィ装置であって、この分光器は、入力光を複数の波長成分に分離する分散素子と、これら波長成分を別々に検出する光検出器と、分散素子と光検出器との間に配置された焦点距離が可変なズームレンズ(変倍レンズ系)とを含んでいる。更に、特許文献1に記載された眼科装置は、光検出器を移動する光検出器移動機構と、第2の制御部とを含んでいる。第2の制御部は、分光器のズームレンズの制御と光検出器移動機構の制御とを連係して実行するように構成されている。このような従来の眼科装置に対して、本開示に係る実施形態の1つの特徴的な事項「光検出器からの出力に基づく可動レンズの移動制御」を組み合わせることが可能であることは、当業者であれば理解することができるであろう。すなわち、このような従来の眼科装置に対して、可動レンズを移動するためのレンズ移動機構と、光検出器からの出力に基づいてレンズ移動機構の制御を行う第1の制御部とを組み合わせることによって、上記実施形態に係る眼科装置1と同様の作用及び効果を達成することが可能になる。
【0246】
本開示において説明した実施形態及び態様は例示に過ぎない。本開示に係る発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形(省略、置換、付加等)を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0247】
1 眼科装置(光コヒーレンストモグラフィ装置)
101 光源ユニット
113 分光素子
114 結像レンズ
115 イメージセンサ
120 レンズユニット
130 レンズユニット移動機構
140 レンズ移動機構
211 主制御部