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  • 特開-クロセチン含有組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142801
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】クロセチン含有組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20241003BHJP
   A23L 33/175 20160101ALI20241003BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20241003BHJP
   A23L 29/262 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/175
A23L5/00 D
A23L29/262
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055133
(22)【出願日】2023-03-30
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 瑞季
(72)【発明者】
【氏名】足立 知基
(72)【発明者】
【氏名】屋敷 哲良
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4B041
【Fターム(参考)】
4B018LE01
4B018MD08
4B018MD19
4B018MD35
4B018ME02
4B018ME14
4B018MF02
4B035LC04
4B035LC06
4B035LE01
4B035LG04
4B035LG14
4B035LG26
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP31
4B041LC04
4B041LD01
4B041LE01
4B041LH11
4B041LK05
4B041LK13
4B041LP01
4B041LP03
4B041LP14
(57)【要約】
【課題】水への溶解性が高いクロセチン含有組成物を提供する。
【解決手段】クロセチンと、アルギニンと、セルロース誘導体と、を含み、クロセチンに対するアルギニンの質量比(アルギニン/クロセチン)は1~10であるクロセチン含有組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロセチンと、アルギニンと、セルロース誘導体と、を含み、
前記クロセチンに対する前記アルギニンの質量比(前記アルギニン/前記クロセチン)は1~10であるクロセチン含有組成物。
【請求項2】
前記クロセチンに対する前記アルギニンの質量比(前記アルギニン/前記クロセチン)は1.25~10である請求項1に記載のクロセチン含有組成物。
【請求項3】
さらに、オルニチンを含む請求項1又は2に記載のクロセチン含有組成物。
【請求項4】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及び/又はヒドロキシプロピルセルロース(HPC)である請求項1又は2に記載のクロセチン含有組成物。
【請求項5】
前記クロセチン含有組成物が、サプリメント用である請求項1又は2に記載のクロセチン含有組成物。
【請求項6】
前記クロセチン含有組成物が、タブレット状である請求項1又は2に記載のクロセチン含有組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロセチン含有組成物に関する。より詳しくは、本発明はサプリメント用クロセチン含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クロセチンは、動植物に広く存在する黄色または赤色の色素(カロテノイド)の一種である。強い抗酸化作用を持つことから食用色素の他に健康補助食品としても期待されている。クロセチンは、疎水部と親水部を併せ持ち、親水部よりも疎水部が多いことから水への溶解性が低いという使い勝手の悪さが指摘されていた。
上述の課題を解決する手段としていくつかの技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
特許文献1には、クロセチンを、アラビアガムを含有する水溶液中に分散して分散液を調製する際に、分散液中のクロセチンの粒子径をメジアン径で0.4μm未満とするクロセチン製剤の製造方法が開示されている。この製造方法により得られた製剤を食品の着色料として用いた場合、飲料の沈殿が抑制される。しかし、クロセチンの分散性の向上には寄与するものの、クロセチンの水への溶解度を向上させるためにはまだ開発の余地が残っていた。
【0004】
特許文献2にはpHを一旦アルカリ性にし、溶解したカルテノイド色素にサイクロデキストリン類を混合後、pHを中性に戻すカルテノイド色素の可溶化方法が開示されている。この方法によれば、カルテノイド色素の水への溶解性が向上する。しかし、pHの調整等の作業が煩雑であるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5600513号公報
【特許文献2】特開平7-23736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上より、クロセチンの水への溶解性を簡易に向上させることができる解決手段が求められていた。
本発明の目的は、水への溶解性が高いクロセチン含有組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]
クロセチンと、アルギニンと、セルロース誘導体と、を含み、クロセチンに対するアルギニンの質量比(アルギニン/クロセチン)は1~10であるクロセチン含有組成物。
[2]
クロセチンに対する前記アルギニンの質量比(前記アルギニン/前記クロセチン)は1.25~10である[1]に記載のクロセチン含有組成物。
[3]
さらに、オルニチンを含む[1]又は[2]に記載のクロセチン含有組成物。
[4]
セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及び/又はヒドロキシプロピルセルロース(HPC)である[1]~[3]のいずれかに記載のクロセチン含有組成物。
[5]
クロセチン含有組成物が、サプリメント用である[1]~[4]のいずれかに記載のクロセチン含有組成物。
[6]
クロセチン含有組成物が、タブレット状である[1]~[5]のいずれかに記載のクロセチン含有組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水への溶解性が高いクロセチン含有組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1はクロセチン含有組成物のラット血中動態試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本発明者等は、上記課題を解決するために誠意検討した結果、所定の組成を備えるクロセチン含有組成物によれば、溶解性の改善が見られることを見出した。
【0011】
〔クロセチン含有組成物〕
本発明は、クロセチンと、アルギニンと、セルロース誘導体と、を含み、クロセチンに対する前記アルギニンの質量比(アルギニン/クロセチン)が1~10であるクロセチン含有組成物に関する。以下、クロセチン含有組成物の各成分や製造方法等について説明する。
【0012】
〔A.クロセチン〕
クロセチンは、次式
【化1】
で表される化合物である。
【0013】
クロセチンは、天然色素の一群であり、カロテノイドに分類される成分の一つである。クロセチンは、強い抗酸化作用を持つ成分であり、クチナシの果実、サフランの柱頭から高純度に抽出することができる。クロセチンは、通常、カロテノイド系の黄色色素であるクロシン(クロセチンのジゲンチオビオースエステル)を加水分解することにより得られる。クロシンを得るための工業的原料としてはクチナシの果実が好ましく用いられる。
【0014】
クロセチンとしては、上述のように植物等の天然物に含まれるクロシンを加水分解することによって得ることもできるし、化学的に合成したものを用いてもよい。また、クチナシ果実、クチナシエキス、サフランエキス等の天然物に含まれているものを用いてもよい。安全性や純度の観点からは、クロセチンをクチナシ黄色素(食品表示例)から得ることがより望ましい。
【0015】
クロセチンとしては、クロセチンそのものの他に、クロセチンの薬理学的に許容される塩も含まれる。クロセチンの薬理学的に許容される塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩; ピリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン等の医薬的に許容される有機アミノ化合物の塩等が挙げられる。
【0016】
クロセチンとしては、特に制限なく、市販のクロセチンを使用することができる。例えば、理研ビタミン株式会社製の商品名「クロビットP」、「クロビット2.5WD」を用いることができる。
【0017】
〔B.アルギニン〕
クロセチン含有組成物には、アルギニンが含まれることが好ましい。クロセチン含有組成物の顆粒化が促進され、オルニチン存在下であってもクロセチンの水への溶出が促進されるからである。
アルギニンとしては、アルギニンそのものの他に、アルギニンの薬理学的に許容される塩も含まれる。アルギニンの塩としては、例えばアルギニン塩酸塩が挙げられる。
アルギニンとしては、特に制限なく種々のもの、例えば市販のアルギニンを使用することができる。具体的には、プロテインケミカル株式会社製の商品名「L-アルギニンパウダー」のアルギニンを用いることができる。
【0018】
〔C.セルロース誘導体〕
クロセチン含有組成物には、セルロース誘導体が含まれることが好ましい。セルロース誘導体が結合剤として機能することで、クロセチン含有組成物の形態維持に役立つからである。
セルロース誘導体としては、結合剤として機能するものであれば特に制限はなく種々のもの、例えば市販のセルロース誘導体を使用することができる。具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下「HPMC」ともいう)(信越化学工業株式会社製、商品名「メトローズ SE-03」、「メトローズ SE-06」)、ヒドロキシプロピルセルロース(以下「HPC」ともいう)(日本曹達株式会社、商品名「セルニー SSL」、「セルニー SL」を用いることができる。
【0019】
〔D.オルニチン〕
クロセチン含有組成物には、さらにオルニチンが含まれることが好ましい。クロセチンとオルニチンの相乗効果により、サプリメントとして使用した際の疲労回復効果の増加が期待できるからである。
オルニチンはタンパク質を構成しない遊離アミノ酸として体内を循環し、主に尿素サイクルに関与するアミノ酸である。オルニチンは様々な食品に幅広く存在し、しじみに比較的多く含まれていることが知られているアミノ酸である。肝機能改善、疲労回復、ストレス改善などの有効性が知られることから食品原料として幅広く使用されている。
オルニチンとしては、オルニチンそのものの他に、オルニチンの薬理学的に許容される塩も含まれる。オルニチンの塩としては、例えばオルニチン塩酸塩が挙げられる。
オルニチンとしては、特に制限なく種々のもの、例えば市販のオルニチンを使用することができる。例えば、上海協和アミノ酸有限公司製の商品名「L-オルニチン」のオルニチンを用いることができる。
【0020】
〔E.その他〕
更に、クロセチン含有組成物は、所望の製剤形態に調製するために、必要に応じて、添加剤等が含まれていてもよい。このような添加剤としては、食品や医薬品に使用可能なものであれば特に制限されないが、例えば、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの添加成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの基剤や添加剤の含有量については、使用する添加成分の種類や組成物の用途等に応じて適宜設定される。
【0021】
〔成分比〕
クロセチン含有組成物は、クロセチンに対するアルギニンの質量比(アルギニン/クロセチン)が1~10が好ましく、1.25~10がより好ましい。下限値が1よりも小さいと水への溶解性が低下するからである。上限値が10よりも大きくなると水への溶解性に変化はないことから、アルギニンの添加量が増えるほど経済的でなくなるからである。
【0022】
〔製造方法〕
クロセチン含有組成物の製造方法は、上述の(A)~(C)成分又は上述の(A)~(D)成分と、必要に応じて配合されるその他の成分とを用いて、各種製剤形態及び性状、並びに使用目的に応じ、従来公知の通常の製剤手順に従えばよい。
【0023】
クロセチン含有組成物の剤型については、経口摂取又は経口投与が可能であれば特に限定されず、固体状、半固体状、又は液体状のいずれであってもよく、クロセチン含有組成物の種類や用途に応じて適宜設定すればよい。
【0024】
クロセチン含有組成物を飲食品の製剤形態にする場合、上記(A)~(C)成分又は上記(A)~(D)成分を、そのまま又は他の食品素材や添加成分と組み合わせて所望の形態に調製すればよい。このような飲食品としては、一般の飲食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性表示食品、病者用食品等が挙げられる。
これらの飲食品の形態として、特に制限はないが、具体的には顆粒剤、錠剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤)、散錠、ゼリー剤等のサプリメント;栄養ドリンク、果汁飲料、炭酸飲料、乳酸飲料等の飲料;団子、アイス、シャーベット、グミ、キャンディー等の嗜好品等が挙げられる。
これらの飲食品の中でも、サプリメントが好ましく、サプリメントの中でも、錠剤、顆粒剤が好ましい。錠剤とする場合は、本願の組成物及び任意の他の添加成分を含む成分を、一定の形状、例えば(凸)レンズ状、円板状、だ円形等といったタブレット状に圧縮成形されることが好ましい。
【0025】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【実施例0026】
[1.試料調製例]
(1-1)材料
材料として以下のものを用意した。
クロセチン(理研ビタミン株式会社製、商品名「クロビットP」(クロセチン80質量%含有品))
アルギニン(プロテインケミカル株式会社製、商品名「L-アルギニンパウダー」)
オルニチン(上海協和アミノ酸有限公司製、商品名「L-オルニチン」)
セルロース誘導体(HPMC)(信越化学工業株式会社製、商品名「メトローズ SE-03」)
セルロース誘導体(HPMC)(信越化学工業株式会社製、商品名「メトローズ SE-06」)
セルロース誘導体(HPC)(日本曹達株式会社製、商品名「セルニー SL」)
【0027】
(1―2)試料作製条件・熱乾燥の場合
(実施例1)
クロビットP10質量部(クロセチン8質量部)、アルギニン10質量部、セルロース誘導体(HPMC)(SE-03)80質量部をそれぞれ量り、三成分の合計を100質量部とした。これらを70%エタノール240質量部に加えながら乳鉢、乳棒ですりつぶし、溶解、分散させた。上述の三成分が70%エタノールに十分分散した後、ホットプレート上にアルミホイルを敷き、溶液をアルミホイルの上に薄く広げた。その後、ホットプレートを200℃に設定し、溶媒が十分に蒸発するまで加熱した。そして、加熱終了後、板状になったサンプルをアルミホイルから取り出した後、ミキサーで粉砕し、30メッシュの篩で分別しパス品を溶出試験に使用した。
なお、実施例2、3及び比較例1は、三成分の添加量を表1に示す内容に変更したことを除き、実施例1と同様に熱乾燥により作製した。
【0028】
(1-3)試料作製条件・凍結乾燥の場合
(実施例4)
セルロース誘導体(SE-03)80質量部を熱湯1000質量部に入れ、撹拌し、分散させた。セルロース誘導体(SE-03)を分散させた水を十分に冷ました後、クロビットP10質量部(クロセチン8質量部)、アルギニン10質量部をそこに加えて、三成分の合計を100質量部とした。これらを撹拌し、ダマがなくなるまで分散させた。作成した溶液を50mlチューブに約30mlずつ入れ、蓋をし-30℃にて凍結させた。凍結させたサンプルをチューブごと凍結乾燥機に約5日間かけ、溶媒を完全に蒸発させた。
凍結乾燥機から取り出し、チューブ内からサンプルを回収し、30メッシュの篩で分別し、パス品を溶出試験に使用した。
なお、実施例5、比較例4は、三成分の添加量を表1に示す内容に変更したことを除き、実施例4と同様に凍結乾燥法で作製した。
【0029】
(実施例6)
セルロース誘導体(セルニーSL)80質量部を熱湯1000質量部に入れ、撹拌し、分散させた。セルロース誘導体(セルニーSL)を分散させた水を十分に冷ました後、クロビットP10質量部(クロセチン8質量部)、アルギニン10質量部をそこに加えて、三成分の合計を100質量部とした。これらを撹拌し、ダマがなくなるまで分散させた。作成した溶液を50mlチューブに約30mlずつ入れ、蓋をし-30℃にて凍結させた。凍結させたサンプルをチューブごと凍結乾燥機に約5日間かけ、溶媒を完全に蒸発させた。
凍結乾燥機から取り出し、チューブ内からサンプルを回収し、30メッシュの篩で分別し、パス品を溶出試験に使用した。
【0030】
(比較例2,3)
比較例2は、原料粉末を単純混合して調製した。比較例3は、原料粉末そのものを検体とした。
【0031】
[2.溶出試験]
(2-1) 溶出試験器(富山産業株式会社製、商品名「NTR-6400A」)と、試験液として日本薬局方試薬・試液の溶出試験第1液(pH1.2、37℃)900mL + 0.1%tween20とを用意した。
クロセチンの質量が8mgになるように実施例1の試料を秤量し試験液に投入した。その後、パドル回転数を100rpmとし、試験液採取を試料投入後、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間(0.45umのフィルターでろ過して回収した。)に行った。
【0032】
比較例1~4、実施例2~5の試料についても上記(2-1)と同様に溶出試験を行った。
【0033】
(2-2)超高速液体クロマトグラフ(HPLC)分析
超高速液体クロマトグラフ(HPLC)(島津製作所製商品名「Nexera XR」)と、フォトダイオードアレイ検出器(島津製作所製商品名「SPD-M30A」)と、逆相カラム(ジーエルサイエンス株式会社製商品名「InerSustain C18」、HP 3μm、3.0×100mm)とを用意した。そして、カラム温度:40℃、移動相A:1%酢酸、移動相B:アセトニトリル、グラジエント:0-6mim(A/B=80/20)→6-9min(A/B=20/80)→9.01(A/B=80/20)→9.01→10(A/B=80/20)、流速:0.6mL/min、UV波長:420nmの条件で実験を行った。
【0034】
実施例1~5と比較例1~4の組成と溶出試験結果をまとめて表1に示す。
表中、各溶出試験において、120分経過時の溶出量が1000ng/ml以上のものを「○」、それ未満のもの「×」と評価した。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例1~6では、いずれにおいても良好な溶出結果が得られた。一方、比較例1~4では、いずれにおいても良好な溶出結果は得られなかった。
実施例1と比較例2の対比より、アルギニンを添加することによりクロセチンの溶出効果が向上することが示された。
実施例1と比較例1の対比より、クロセチンに対するアルギニンの質量比(アルギニン/クロセチン)は1.25において良好な溶出結果が得られることが示された。
実施例3、5より、クロセチンに対するアルギニンの質量比(アルギニン/クロセチン)が10において良好な溶出結果が得られることが示された。
実施例1と比較例3の対比より、アルギニンやHPMCを添加することで、クロセチンの溶出効果が向上することが示された。
実施例1と比較例4の対比より、HPMCを添加することで、クロセチンの溶出効果が向上することが示された。
実施例6と比較例3の対比より、アルギニンやHPCを添加することで、クロセチンの溶出効果が向上することが示された。
実施例6と比較例4の対比より、HPCを添加することで、クロセチンの溶出効果が向上することが示された。
【0037】
[3.溶出試験(オルニチンの添加効果)]
(3-1)オルニチンなしの場合
溶出試験器(富山産業株式会社製、商品名「NTR-6400A」)と、試験液として日本薬局方試薬・試液の溶出試験第2液(pH6.8 37℃)900mL + 0.1%tween20とを用意した。
クロセチンの質量が8mgになるように実施例1の試料を秤量し試験液に投入した。その後、パドル回転数を100rpmとし、試験液採取を試料投入後、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間(0.45umのフィルターでろ過して回収した。)に行った。
【0038】
(3-2)オルニチンありの場合
オルニチン塩酸塩900質量部と実施例1の試料をポリエチレン袋で事前に混合した後に、各試験液に投入したことを除き、上記(3-1)と同様にして溶出試験を行った。
【0039】
比較例1、実施例2、3の試料についても(3-1)(3-2)と同様に溶出試験を行った。
【0040】
得られた結果をまとめて表2に示す。実施例1~3より、オルニチンを添加することにより、クロセチンの溶出性が向上することが示された。一方、比較例1では、オルニチンを添加することにより、クロセチンの溶出性が向上したものの、実施例1~3よりも溶出性は劣る結果となった。
【0041】
【表2】
【0042】
[4.ラット血中動態試験]
(4-1)試験条件
SDラットを用意し、夕刻から絶食させた。絶食は被検物質の投与前日から16時間以上行った。その後、クロセチンの投与量が40mg/kg、投与容量が5mL/kgになるように被験物質を水で懸濁して、麻酔下でゾンデを用いて各群に経口胃内投与した。各群の詳しい投与条件は後述の通りである。
被検物質の投与後、麻酔下で任意のタイムポイント(0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間)にて尾静脈より採血した。8時間採血終了時から再給餌した。
群1:クロセチンを水で懸濁して投与(クロセチン40mg/5mL/kg)
群2:実施例1(クロセチン+アルギニン+HPMC)を水で懸濁して投与した(クロセチン40mg/5mL/kg)。
群3:クロセチン+オルニチン塩酸塩2000mg/kgを水で懸濁して投与した(クロセチン40mg/5mL/kg)。
群4:実施例1(クロセチン+アルギニン+HPMC)+オルニチン塩酸塩2000mg/kg水で懸濁して投与した(クロセチン40mg/5mL/kg)。
【0043】
(4-2)超高速液体クロマトグラフ(HPLC)分析
超高速液体クロマトグラフ(HPLC)(島津製作所製商品名「Nexera X2」)と、フォトダイオードアレイ検出器(島津製作所製商品名「SPD-M30A」)と、逆相カラム(ジーエルサイエンス株式会社製商品名「Inertsil,ODS-3」、HP3μL、3.0×150mm)とを用意した。そして、カラム温度:40℃、移動相A:アセトニトリル、移動相B:0.5%酢酸、グラジエント:0.01分(20%)→1分(20%)→6分(80%)→8分(80%)→8.01(20%)→10分(stop)、流速:0.6 mL/min、UV波長(クロセチン):420nm、リテンションタイム(クロセチン):6.9分の条件で実験を行った。得られた結果を図1に示す。
【0044】
図1に示すように、群1~群4のうち、群4がクロセチンの吸収性が最も高いことが示された。群1、群3を比較してわかるように、クロセチンはオルニチンの共存下では水への溶解性が低いという常識からすると、実施例1のみ懸濁して投与した群2よりも、オルニチン塩酸塩と実施例1を懸濁して投与した群4の吸収性が高いことが示されたことは驚きであった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
クロセチン含有組成物は水への溶解性が高いことから、サプリメントとして利用可能である。
図1