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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142806
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20241003BHJP
   G01B 7/16 20060101ALI20241003BHJP
   G01B 7/24 20060101ALI20241003BHJP
   H01M 50/242 20210101ALI20241003BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241003BHJP
   H01M 50/233 20210101ALI20241003BHJP
   H01M 50/284 20210101ALN20241003BHJP
【FI】
H01M50/204 401D
G01B7/16 C
G01B7/24
G01B7/16 Z
H01M50/242
H01M10/48 Z
H01M50/233
H01M10/48 301
H01M50/284
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055143
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 真一
(72)【発明者】
【氏名】浅川 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】北村 厚
【テーマコード(参考)】
2F063
5H030
5H040
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063BA19
2F063BC05
2F063BD11
2F063CA09
2F063DA02
2F063DA05
2F063DC08
2F063DD02
2F063EC03
2F063EC06
2F063EC09
2F063EC13
2F063EC15
2F063EC26
5H030AA09
5H030AS06
5H030FF31
5H030FF51
5H040AA03
5H040AS04
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY05
5H040AY08
5H040CC23
5H040DD08
5H040DD26
5H040JJ02
5H040JJ03
5H040LL01
5H040NN00
5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】本開示は、電池の状態を精度よく検出することが可能な電池パックを提供することを目的とする。
【解決手段】電池を収容する筐体と、前記筐体に貼り付けられ、前記筐体のひずみを検出するセンサと、を備え、前記筐体の少なくとも1面には、当該1面を覆うように前記筐体よりも高剛性の板状部材が接着されており、前記センサは、前記少なくとも1面以外の他の面の表面に1つ以上貼り付けられている電池パック。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を収容する筐体と、
前記筐体に貼り付けられ、前記筐体のひずみを検出するセンサと、を備え、
前記筐体の少なくとも1面には、当該1面を覆うように前記筐体よりも高剛性の板状部材が接着されており、
前記センサは、前記少なくとも1面以外の他の面の表面に1つ以上貼り付けられている、電池パック。
【請求項2】
前記板状部材は前記筐体の上面及び/又は下面に設けられる、請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記板状部材は前記筐体の側面のうち2面以上に設けられる、請求項1に記載の電池パック。
【請求項4】
電池および前記電池の状態を監視する監視部を収容する筐体と、
前記筐体に貼り付けられ、前記筐体のひずみを検出するセンサと、を備え、
前記監視部は前記筐体との間に空隙ができるよう収容され、
前記センサは、前記空隙の近傍に1つ以上貼り付けられている、
電池パック。
【請求項5】
前記筐体の前記センサが貼り付けられた面には薄肉部が設けられている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項6】
前記筐体における隣接する側面の間の辺に沿って並んで設けられ、前記隣接する側面にわたって開口する複数のスリットを備える、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項7】
前記筐体は、底板と、前記底板と一体に形成され、前記底板と交差する方向に延びる側板と、を有し、
前記側板は、前記底板と前記側板との接続部分における弾性により、前記電池を内側に押す、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項8】
前記センサは、
絶縁層と、
前記絶縁層の一方の面に直接、金属、合金、又は、金属の化合物から形成された機能層と、
前記機能層の一方の面に直接、Cr、CrN、及びCrNを含む膜から形成された抵抗体と、を有し、
前記電池の状態を前記抵抗体の抵抗値の変化として検出し、
前記抵抗体は、α-Crを主成分とし、
前記機能層は、前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を成膜する機能を有する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項9】
前記抵抗体は、α-Crを80重量%以上含む、
請求項8に記載の電池パック。
【請求項10】
前記センサは、前記筐体のひずみによって生じる磁気変化を検出する検出素子を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項11】
前記検出素子は磁性体を含み、
前記検出素子は、前記筐体のひずみによって前記磁性体に圧力が加わったときの前記磁性体の磁化の強さの変化を検出する検出素子である、請求項10に記載の電池パック。
【請求項12】
前記検出素子は、磁性膜で絶縁膜を挟んだ磁気トンネル接合の構造を含んでおり、
前記検出素子は、前記筐体のひずみによって前記構造で発生する磁気変化を検出する検出素子である、請求項10に記載の電池パック。
【請求項13】
前記センサは半導体式のひずみゲージである、請求項1~7のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項14】
前記センサは、静電容量式の圧力センサである、請求項1~7のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項15】
前記センサは、光ファイバ式のひずみゲージである、請求項1~7のいずれか一項に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電池と、電池の状態を検出するセンサと、を備える電池パックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7008618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池の状態、例えば電池本体の膨張を、より精度よく検出することが求められている。
【0005】
本開示は、電池の状態を精度よく検出することが可能な電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電池パックは、電池を収容する筐体と、前記筐体に貼り付けられ、前記筐体のひずみを検出するセンサと、を備え、前記筐体の少なくとも1面には、当該1面を覆うように前記筐体よりも高剛性の板状部材が接着されており、前記センサは、前記少なくとも1面以外の他の面の表面に1つ以上貼り付けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の電池パックによれば、電池の状態を精度よく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る電池パックを例示する図である。
図2】第1実施形態に係る電池パックにおける筐体を例示する図である。
図3】第1実施形態に係る電池パックに搭載されるひずみゲージを例示する平面図である。
図4】第1実施形態に係る電池パックに搭載されるひずみゲージを例示する断面図である。
図5】第1実施形態に係る電池パックに搭載される回路基板について説明するブロック図である。
図6】第2実施形態に係る電池パックを例示する図である。
図7】第3実施形態に係る電池パックを例示する図である。
図8】第3実施形態に係る電池パックの他の例を例示する図である。
図9】本実施形態に係る電池パックにおける筐体の第1変形例を例示する図である。
図10】本実施形態に係る電池パックにおける筐体の第1変形例を例示する図である。
図11】本実施形態に係る電池パックにおける筐体の第1変形例を例示する図である。
図12】本実施形態に係る電池パックにおける筐体の第1変形例を例示する図である。
図13】本実施形態に係る電池パックにおける筐体の第2変形例を例示する図である。
図14】本実施形態に係る電池パックにおける筐体の第3変形例を例示する図である。
図15】本実施形態に係る電池パックにおける筐体の第3変形例を例示する図である。
図16】本実施形態に係る電池パックにおける筐体の第4変形例を例示する図である。
図17】本実施形態に係る電池パックにおける筐体の第4変形例を例示する図である。
図18】第4実施形態に係る電池パックを例示する図である。
図19】第5実施形態に係る電池パックを例示する図である。
図20】第5実施形態に係る電池パックを例示する断面図である。
図21】第5実施形態に係る電池パックの使用状態を例示する図である。
図22】第5実施形態に係る電池パックの製造方法を例示する図である。
図23】第5実施形態に係る電池パックの製造方法を例示する図である。
図24】第5実施形態に係る電池パックの変形例を例示する図である。
図25】第6実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例を示す平面図および断面図である。
図26】第7実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
図27】第7実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の他の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
図28】第7実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の、更に他の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
なお、以下の各実施の形態や変形例では、主に電地の膨張を検出する例を示すが、これには限定されず、各実施の形態や変形例に係るひずみゲージやセンサは、電池の様々な状態を検出することができる。電池の様々な状態とは、電池の膨張以外には、例えば、電池の収縮、凸部や凹部の有無、形状分布、温度等が挙げられる。
【0011】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係る電池パックの一例である電池パック1を示す図である。電池パック1は、例えば、電気自動車のバッテリとして用いられる。電池パック1は、ひずみゲージ10と、1つ以上の電池20と、筐体30と、1つ以上の(図1の例では、板状部材41及び板状部材42)と、を備える。また、ひずみゲージ10は、後述する回路基板60(図4参照)に接続されていてもよい。
【0012】
[電池20]
電池20は、例えば、リチウムイオン電池等の2次電池である。電池20は、適宜並列及び/又は直列に接続されて筐体30の内部に複数個配列される。なお、図1では5個の電池20を図示しているが、電池20の個数は必要に応じて適宜決定することができる。また、図1の例では筐体30にちょうど収まるように(すなわち、筐体30を隙間無く満たすように)電池20が筐体30に搭載されている。しかしながら、筐体30には、電池20を配置していない隙間が存在してもよい。また、電池20の形状は、図1に示すような角形に限らず、例えば円筒形でもよい。また、電池20は、ラミネート型(パウチ型)の電池でもよい。
【0013】
[筐体30]
筐体30は、電池20を収容する部材である。筐体30は、例えば、金属又は樹脂により形成される。図2は、第1実施形態に係る電池パックの一例である電池パック1における筐体30を例示する図である。筐体30は、外観が六面体状の形状を有する。また、筐体30は、内部に電池20を収納可能な空間を有する。筐体30は、箱部31と、蓋部32と、を備える。また、図2の説明では、便宜上、筐体30の面30Tを上面、面30Bを下面、面30S1~30S4を側面と称することとする。
【0014】
箱部31は、上部が開放した箱状の形状を有する。蓋部32は、箱部31の上部の開放部分を閉塞する。蓋部32が箱部31の上部を閉塞することにより、筐体30は六面体状の形状となる。
【0015】
なお、第1実施形態に係る電池パックにおいて筐体の形状は、筐体30の形状に限らない。例えば、筐体30において、蓋部32を備えずに、箱部31の上部を開放した状態で、電池20を収納するようにしてもよい。また、例えば、箱の内部を複数の部屋に分割して、それぞれの部屋に電池20を収納するようにしてもよい。箱の内部を複数の部屋に分割して、それぞれの部屋に電池20を収納する場合、それぞれの部屋を構成する壁を筐体として捉えてもよい。また例えば、筐体を、電池20をシールするフィルムにより構成してもよい。
【0016】
[板状部材41及び板状部材42]
再び図1を参照して説明する。板状部材41及び板状部材42のそれぞれは、筐体30より高剛性の部材である。板状部材41及び板状部材42のそれぞれは、例えば、金属により形成される。板状部材41は、筐体30の上面30Tを覆うように接着される。板状部材42は、筐体30の下面30Bを覆うように接着される。なお、図1の例では2枚の板状部材をそれぞれ筐体30の2面(上面30Tおよび下面30B)に接着しているが、本実施形態に係る電池パックにおいて、筐体の少なくとも1面を覆うことができれば、板状部材の数および接着面は問わない。
【0017】
ひずみゲージ10は、筐体30のひずみを検出するセンサの一例である。ひずみゲージ10は、筐体30に貼り付けられている。より具体的には、ひずみゲージ10は、筐体30の、板状部材(図1の例では、板状部材41又は板状部材42)が接着されている面以外の面(以下、便宜上「板状部材の無い面」とも称する)に貼り付けられている。
【0018】
なお、図1の例では、ひずみゲージ10は側面30S1の中央部分に貼り付けられている。しかしながら、ひずみゲージ10は、板状部材の無い面のうち1面以上に、1個以上が貼り付けられているならば、その貼り付け面、貼り付け面におけるひずみゲージ10の貼り付け位置、および貼り付け個数は限定されない。例えば、ひずみゲージ10は、側面30S2、側面30S3及び側面30S4のいずれか一面に貼り付けられてもよい。また、ひずみゲージ10は、側面30S1、側面30S2、側面30S3及び側面30S4の2面以上に貼り付けられてもよい。
【0019】
[ひずみゲージ10]
ひずみゲージ10について詳細に説明する。図3は、第1実施形態に係る電池パックの一例である電池パック1に搭載されるひずみゲージ10の平面図である。図4は、第1実施形態に係る電池パックの一例である電池パック1に搭載されるひずみゲージ10の断面図である。具体的には、図4は、図2のA-A線に沿う断面を示す断面図である。図3及び図4を参照するに、ひずみゲージ10は、基材11と、抵抗体12と、端子部13とを有している。ひずみゲージ10は、例えば、基材11の下面11bに接着剤を塗布して筐体30に貼り付けることができる。
【0020】
なお、本実施の形態では、便宜上、ひずみゲージ10において、基材11の抵抗体12が設けられている側を上側又は一方の側、抵抗体12が設けられていない側を下側又は他方の側とする。又、各部位の抵抗体12が設けられている側の面を一方の面又は上面、抵抗体12が設けられていない側の面を他方の面又は下面とする。但し、ひずみゲージ10は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。又、平面視とは対象物を基材11の上面11aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基材11の上面11aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0021】
基材11は、抵抗体12等を形成するためのベース層となる絶縁性の部材であり、可撓性を有する。基材11の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材11の厚さが5μm~200μmであると、抵抗体12のひずみ感度誤差を少なくすることができる点で好ましい。
【0022】
基材11は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成することができる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0023】
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材11が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材11は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
【0024】
但し、基材11が可撓性を有する必要がない場合には、基材11に、SiO、ZrO(YSZも含む)、Si、Si、Al(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO、BaTiO)等の材料を用いても構わない。
【0025】
抵抗体12は、基材11上に所定のパターンで形成された薄膜であり、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体12は、基材11の上面11aに直接形成されてもよいし、基材11の上面11aに他の層を介して形成されてもよい。なお、図3では、便宜上、抵抗体12を梨地模様で示している。
【0026】
抵抗体12は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体12は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0027】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、CrN等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。
【0028】
抵抗体12の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体12の厚さが0.1μm以上であると、抵抗体12を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましい。又、抵抗体12の厚さが1μm以下であると、抵抗体12を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材11からの反りを低減できる点で更に好ましい。
【0029】
例えば、抵抗体12がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上することができる。又、抵抗体12がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ10のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50質量%以上を占めることを意味するが、ゲージ特性を向上する観点から、抵抗体12はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0030】
端子部13は、抵抗体12の両端部から延在しており、平面視において、抵抗体12よりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部13は、ひずみにより生じる抵抗体12の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のフレキシブル基板やリード線等が接合される。
【0031】
抵抗体12は、例えば、端子部13の一方からジグザグに折り返しながら延在して他方の端子部13に接続されている。端子部13の上面を、端子部13よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗体12と端子部13とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。
【0032】
抵抗体12を被覆し端子部13を露出するように基材11の上面11aにカバー層15(絶縁樹脂層)を設けても構わない。カバー層15を設けることで、抵抗体12に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層15を設けることで、抵抗体12を湿気等から保護することができる。なお、カバー層15は、端子部13を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0033】
カバー層15は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成することができる。カバー層15は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層15の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。
【0034】
電池パック1において、電池20が膨張すると、それに対応して筐体30が変形する(筐体30がひずむ)。ひずみゲージ10は、筐体30のひずみを抵抗体12の抵抗値の変化として検出し、一対の電極である端子部13から出力することができる。
【0035】
なお、筐体30が膨張すると、ひずみゲージ10の抵抗体12が細く長くなり抵抗値が増える。又、筐体30が収縮すると、ひずみゲージ10の抵抗体が太く短くなり抵抗値が減る。従って、ひずみゲージ10の抵抗体の抵抗値の増減を監視することで、筐体30が膨張しているか否かを判別できる。すなわち、筐体30に格納されている電池20が膨張しているか否かを判別することができる。
【0036】
ひずみゲージ10を製造するためには、まず、基材11を準備し、基材11の上面11aに図3に示す平面形状の抵抗体12及び端子部13を形成する。抵抗体12及び端子部13の材料や厚さは、前述の通りである。抵抗体12と端子部13とは、同一材料により一体に形成することができる。
【0037】
抵抗体12及び端子部13は、例えば、抵抗体12及び端子部13を形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィによってパターニングすることで形成できる。抵抗体12及び端子部13は、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
【0038】
ゲージ特性を安定化する観点から、抵抗体12及び端子部13を成膜する前に、下地層として、基材11の上面11aに、例えば、コンベンショナルスパッタ法により膜厚が1nm~100nm程度の機能層を真空成膜することが好ましい。なお、機能層は、機能層の上面全体に抵抗体12及び端子部13を形成後、フォトリソグラフィによって抵抗体12及び端子部13と共に図3に示す平面形状にパターニングされる。
【0039】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である抵抗体12の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材11に含まれる酸素や水分による抵抗体12の酸化を防止する機能や、基材11と抵抗体12との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0040】
基材11を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に抵抗体12がCrを含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層が抵抗体12の酸化を防止する機能を備えることは有効である。
【0041】
機能層の材料は、少なくとも上層である抵抗体12の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0042】
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。又、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si、TiO、Ta、SiO等が挙げられる。
【0043】
機能層は、例えば、機能層を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜することができる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材11の上面11aをArでエッチングしながら機能層が成膜されるため、機能層の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
【0044】
但し、これは、機能層の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層を成膜してもよい。例えば、機能層の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材11の上面11aを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層を真空成膜する方法を用いてもよい。
【0045】
機能層の材料と抵抗体12及び端子部13の材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、機能層としてTiを用い、抵抗体12及び端子部13としてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜することが可能である。
【0046】
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、抵抗体12及び端子部13を成膜することができる。或いは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、抵抗体12及び端子部13を成膜してもよい。
【0047】
これらの方法では、Tiからなる機能層がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。又、機能層を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。例えば、ひずみゲージ10のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。なお、機能層がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
【0048】
なお、抵抗体12がCr混相膜である場合、Tiからなる機能層は、抵抗体12の結晶成長を促進する機能、基材11に含まれる酸素や水分による抵抗体12の酸化を防止する機能、及び基材11と抵抗体12との密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
【0049】
このように、抵抗体12の下層に機能層を設けることにより、抵抗体12の結晶成長を促進することが可能となり、安定な結晶相からなる抵抗体12を作製できる。その結果、ひずみゲージ10において、ゲージ特性の安定性を向上することができる。又、機能層を構成する材料が抵抗体12に拡散することにより、ひずみゲージ10において、ゲージ特性を向上することができる。
【0050】
抵抗体12及び端子部13を形成後、必要に応じ、基材11の上面11aに、抵抗体12を被覆し端子部13を露出するカバー層15を設けることで、ひずみゲージ10が完成する。カバー層15は、例えば、基材11の上面11aに、抵抗体12を被覆し端子部13を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製することができる。カバー層15は、基材11の上面11aに、抵抗体12を被覆し端子部13を露出するように液状又はペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、加熱して硬化させて作製してもよい。
【0051】
図5は、第1実施形態に係る電池パックの一例である電池パック1のひずみゲージ10と接続される回路基板60について説明するブロック図である。図5に示すように、ひずみゲージ10は、回路基板60に実装されたアナログフロントエンド部61に接続され、アナログフロントエンド部61の出力が外部出力端子62に接続されている。これにより、ひずみゲージ10の検出した情報(電池20の膨張の程度を示す情報)は、外部出力端子62からデジタル信号として出力可能となる。
【0052】
なお、回路基板60に他の機能を有する回路(電子部品等)が搭載されてもよい。他の機能を有する回路とは、例えば、電池20の電圧監視回路、保護回路、電流検出回路等である。また、回路基板60の取り付け先は特に限定されない。例えば、回路基板60は、電池パック1が搭載されている機器(例えば、車両の特定箇所)の近傍に取り付けられる。なお、回路基板60は、回路基板60に含まれる回路の駆動に必要な電源を搭載していてもよいし、別途電源から電気を供給されていてもよい。
【0053】
ひずみゲージ10の1対の端子部13は、例えば、フレキシブル基板やリード線等を用いて、アナログフロントエンド部61に接続されている。
【0054】
アナログフロントエンド部61は、例えば、ブリッジ回路、増幅器、アナログ/デジタル変換回路(A/D変換回路)、外部通信機能(例えば、IC等のシリアル通信機能)等を備えている。アナログフロントエンド部61は、温度補償回路を備えていてもよい。アナログフロントエンド部61は、IC化されていてもよいし、個別部品により構成されていてもよい。
【0055】
アナログフロントエンド部61では、例えば、ひずみゲージ10の1対の端子部13は、ブリッジ回路に接続される。すなわち、ブリッジ回路の1辺が1対の端子部13間の抵抗体12で構成され、他の3辺が固定抵抗で構成される。これにより、ブリッジ回路の出力として、抵抗体12の抵抗値に対応した電圧(アナログ信号)を得ることができる。
【0056】
ブリッジ回路から出力された電圧は、増幅器で増幅された後、A/D変換回路によりデジタル信号に変換され、外部出力端子62から出力可能とされる。アナログフロントエンド部61が温度補償回路を備えている場合には、温度補償されたデジタル信号が外部出力端子62から出力可能とされる。
【0057】
例えば、電池パック1において、電池20の寿命の低下等に起因して電池20が膨張し、液漏れ等を引き起こす場合がある。そこで、電池パック1では電池20の膨張を、筐体30を介してひずみゲージ10で検出し、検出結果(電池20の膨張の程度を示す情報)をアナログフロントエンド部61からのデジタル信号として、外部出力端子62から出力している。
【0058】
例えば、電池パック1の外部において、外部出力端子62に充電回路を接続することが可能である。この場合、接続された充電回路は、アナログフロントエンド部61からのデジタル信号に基づいて、充電電流を多くしたり少なくしたりすることができる。又、接続された充電回路は、電池20の膨張の程度が許容値を超えていると判定した場合に、充電を停止して警告音を発したり『充電不能』等を表示したりすることができる。
【0059】
又、電池パック1の内部にCPU(Central Processing Unit)等を含む制御回路を設けることも可能である。制御回路は、例えば、回路基板60に実装することができる。この場合、例えば、電池20の正極側及び/又は負極側のラインに電流遮断スイッチを挿入すると共に、アナログフロントエンド部61が出力するデジタル信号を制御回路に入力する。制御回路は、アナログフロントエンド部61からのデジタル信号に基づいて、電池20の膨張の程度が許容値を超えていると判定した場合には、電流遮断スイッチを遮断して電池パック1の動作を停止することができる。
【0060】
このように、電池パック1では、ひずみゲージ10を設けたことで、電池20の膨張の程度を抵抗体12の抵抗値の変化として検出することができる。これにより、電池20の膨張の程度に応じて充電電流の多少を制御したり、電池パック1の動作を停止したりすることができる。その結果、電池20の膨張の程度が許容値を超えている場合に、無理に充電したり、使用を継続したりすることを防止可能となり、電池パック1の破損を回避すると共に電池パック1の安全性を向上できる。
【0061】
特に、抵抗体12がCr混相膜から形成されている場合は、抵抗体12がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、電池20の膨張に対する抵抗値の感度(同一の電池20の膨張に対する抵抗体12の抵抗値の変化量)が大幅に向上する。抵抗体12がCr混相膜から形成されている場合、電池20の膨張に対する抵抗値の感度は、抵抗体12がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、おおよそ5~10倍程度となる。そのため、抵抗体12をCr混相膜から形成することで、電池20の膨張を精度よく検出することが可能となる。
【0062】
又、電池20の膨張に対する抵抗値の感度が高いことで、電池20の膨張の程度により行う動作を分けることができる。例えば、電池20の膨張が小であることを検出した場合には所定の動作を行い、電池20の膨張が中であることを検出した場合には他の動作を行い、電池20の膨張が大であることを検出した場合には更に他の動作を行うような制御の実現が可能となる。
【0063】
又、電池20の膨張に対する抵抗値の感度が高いと、S/Nの高い信号を得ることができる。そのため、アナログフロントエンド部61のA/D変換回路において平均化を行う回数を低減しても精度よく信号検出ができる。A/D変換回路において平均化を行う回数を低減することで、1回のA/D変換に必要な時間を短縮できる。
【0064】
又、抵抗体12がCr混相膜から形成されている場合は、ひずみゲージ10を小型化できるため、小型の電池パック1にも使用可能となる。又、ひずみゲージ10を小型化できるため、配置する場所の選択の自由度を向上することが可能となる。
【0065】
電池パック1において、ひずみゲージ10は、筐体30における板状部材41及び板状部材42のそれぞれが貼り付けられている面以外の面(板状部材の無い面)に貼り付けられる。
【0066】
前述の通り、板状部材は筐体よりも高剛性である。したがって、筐体において板状部材の無い面は、板状部材が貼り付けられている面に対して相対的に低剛性となる。具体的には、上面30T及び下面30Bに対して、板状部材の無い面である側面30S1、側面30S2、側面30S3及び側面30S4は、相対的に低剛性になる。
【0067】
したがって、側面30S1、側面30S2、側面30S3及び側面30S4は上面30T及び下面30Bと比較して、電池20の膨張による面のひずみが生じ易くなる。言い換えれば、電池20が膨張したとき、その膨張による筐体30のひずみは、板状部材の無い面である側面に集中するといえる。したがって、側面30S1、側面30S2、側面30S3及び側面30S4におけるひずみ量が増加するため、これらの少なくとも1つの面に1つ以上のひずみゲージ10を貼り付けておくことにより、精度良く筐体30のひずみを検出することができる。したがって、第1実施形態に係る電池パックは、電池の状態を精度よく検出できるという効果を奏する。
【0068】
≪第2実施形態≫
本開示に係る電池パックにおいて、板状部材は筐体の側面のうち2面以上に設けられていてもよい。以下、第2実施形態に係る電池パックについて説明する。第2実施形態に係る電池パックは、第1実施形態に係る電池パックに対して、板状部材を接着する面が異なる。図6は、第2実施形態に係る電池パックの一例である電池パック2を示す図である。以下では、第1実施形態に係る電池パックと異なる点を中心に説明する。
【0069】
電池パック2は、ひずみゲージ10と、1つ以上の電池20と、筐体30と、板状部材141、板状部材142、板状部材143及び板状部材144と、を備える。電池パック2のひずみゲージは、図示しない回路基板60と接続されていてもよい。
【0070】
[板状部材141、板状部材142、板状部材143及び板状部材144]
板状部材141、板状部材142、板状部材143及び板状部材144のそれぞれは、第1実施形態に係る板状部材41および板状部材42と同様の材質から成る。すなわち、板状部材141~144は、筐体30より高剛性の部材であり、金属等により形成される部材である。
【0071】
図6の例では、板状部材141は、筐体30の側面30S1を覆うように接着される。板状部材142は、筐体30の側面30S2を覆うように接着される。板状部材143は、筐体30の側面30S3を覆うように接着される。板状部材144は、筐体30の側面30S4を覆うように接着される。
【0072】
電池パック2において、ひずみゲージ10は、筐体30に板状部材が貼り付けられている面以外の面(すなわち、上面30Tまたは下面30B)に貼り付けられる。図6の例では、筐体30の上面30Tにひずみゲージ10が貼り付けられている。
【0073】
なお、図6における電池パック2の例において、ひずみゲージ10は上面30Tに貼り付けられているが、ひずみゲージ10が貼り付けられる面は下面30Bでもよい。また、例えば、ひずみゲージ10は、上面30T及び下面30Bの両方に、それぞれ1つ以上貼り付けられてもよい。
【0074】
本実施形態に係る電池パックにおいて、筐体の上下面(図6の例では、上面30Tおよび下面30B)は板状部材の無い面であるため、板状部材が貼り付けられている筐体側面に対して相対的に低剛性となる。したがって、本実施形態に係る電池パックによれば、上面30T及び下面30Bは筐体側面の4面と比較して、電池20の膨張による面のひずみが生じ易くなる。言い換えれば、電池20が膨張したとき、その膨張による筐体30のひずみは、板状部材の無い面である側面に集中するといえる。
【0075】
したがって、上面30T及び/又は下面30Bに1つ以上のひずみゲージ10を貼り付けておくことにより、精度良く筐体30のひずみを検出することができる。したがって、第2実施形態に係る電池パックは、電池の状態を精度よく検出できるという効果を奏する。
【0076】
なお、本開示に係る電池パックにおける、板状部材およびひずみゲージの配置例は第1実施形態および第2実施形態の例に限られない。これらの実施形態で説明した以外にも、例えば、筐体の下面のみに板状部材を配置し、筐体の側面の少なくとも一面にひずみゲージを貼り付けることとしてもよい。また例えば、筐体の6面のうち5面を板状部材で覆い、残った1面にひずみゲージを貼り付けることとしてもよい。
【0077】
≪第3実施形態≫
本開示に係る電池パックにおいて、筐体に貼り付けるひずみゲージの数は限定されない。また、ひずみゲージの貼付け場所は、筐体の形状、板状部材の接着されている面の位置および数、ならびに、ひずみゲージで筐体の「圧縮ひずみ」と「膨張ひずみ」のいずれを検出するかに応じて、適宜定められてよい。
【0078】
一例として、電池パックの筐体として、第1実施形態および第2実施形態にて説明したような箱型の筐体を採用した場合について説明する。電池パックに搭載されている電池が膨張するとき、筐体の形状と製品強度の関係から、筐体のうち板状部材が無い面の中央部分は、それぞれの面の4隅の辺および角近傍の部分と比較して、膨張の度合が大きくなり易い。すなわち、電池パックの筐体の板状部材が無い面の中央部分は膨張ひずみが大きくなり易い。同様に電池パックの電池が膨張するとき、筐体のうち板状部材の無い面の角近傍の部分には、同面の中央部が膨張することによる圧縮ひずみが生じ易い。ただし、各面の最外周(すなわち、筐体各面の「辺」にあたる部分)のうち他面と接合している部分は高剛性であるため、同面の他の箇所と比較して膨張ひずみも圧縮ひずみも生じづらい。
【0079】
したがって、ひずみゲージで筐体の膨張ひずみを検出したい場合は、板状部材の無い面の中央付近にひずみゲージ(より詳細には、ひずみゲージの検出素子である抵抗体のグリッド)を配置することが望ましい。一方、ひずみゲージで圧縮ひずみを検出したい場合は、板状部材の無い面の辺部分の近傍(または、四隅の角部分の近傍)であって、かつ、他面と接合している部分を除く位置に、ひずみゲージ(より詳細にはひずみゲージの抵抗体のグリッド)を配置することが望ましい。膨張ひずみの場合についても、圧縮ひずみの場合についても、以上説明したひずみゲージの配置とすることで、精度よく筐体のひずみを検出することができる。
【0080】
以下、第3実施形態に係る電池パックについて説明する。第3実施形態に係る電池パックは、第1実施形態に係る電池パックと比べ、筐体に貼り付けるひずみゲージの数が異なる。また、第3実施形態に係る電池パックは、第1実施形態に係る電池パックと比べ、ひずみゲージの貼り付け位置が異なる。
【0081】
図7は、第3実施形態に係る電池パックの一例である電池パック3を示す図である。ここでは、第1実施形態に係る電池パックと異なる点を中心に説明し、第1実施形態に係る電池パックと同様の構成については説明を省略する場合がある。
【0082】
電池パック3の筐体30の上面30Tには、板状部材41が上面30Tを覆うように接着される。筐体30の下面30Bには、板状部材42が筐体30の下面30Bを覆うように接着される。そして、1つ以上のひずみゲージ10が、筐体30の、板状部材が接着されていない面の角部分の近傍に貼り付けられる。
【0083】
例えば図7に示す電池パック3では、筐体30の側面30S1の四隅の近傍に1つずつ、合計4個のひずみゲージ10が貼り付けられている。なお、本実施形態に係る電池パックにおいて、ひずみゲージ10の個数は図7の例に限られない。
【0084】
以上の構成によれば、電池パックの筐体の、板状部材の無い面の角近傍にひずみゲージが貼り付けられていることとなる。したがって、前述のように、圧縮ひずみが集中する(圧縮ひずみの量がより多くなる)箇所にひずみゲージを貼り付けているため、ひずみゲージにより筐体のひずみを精度よく検出することができる。したがって、電池パック3は、電池20の膨張を精度良く検出することができる。
【0085】
板状部材が筐体側面に接着されている場合も同様のことが言える。図8は、本実施形態に係る電池パックの他の例である電池パック4を示す図である。電池パック4は、第2実施形態に係る電池パック2と比較して、貼り付けるひずみゲージの数および貼り付け位置が異なる。なお、電池パック4においてひずみゲージ10の個数は2個に限らず、1個でもよいし、3個以上でもよい。
【0086】
電池パック4は、上面30Tの四隅の角部分のうち、対角となる2つの角部分の近傍にひずみゲージ10を備える。以上の構成によれば、図7の例と同様に、電池パックの筐体の、板状部材の無い面の角近傍にひずみゲージが貼り付けられていることとなる。したがって、前述のように、圧縮ひずみが集中する(圧縮ひずみの量がより多くなる)箇所にひずみゲージを貼り付けているため、ひずみゲージにより筐体のひずみを精度よく検出することができる。したがって、電池パック4は、電池20の膨張を精度良く検出することができる。
【0087】
≪第1実施形態~第3実施形態に係る電池パックにおける筐体の変形例≫
次に、前述した第1~第3実施形態に係る電池パックの筐体についての、種々の変形例を説明する。
【0088】
<第1変形例>
本実施形態に係る電池パックの作成において、筐体を作った後に電池を筐体に入れる手法をとる場合、筐体は電池より大きめに作る場合がある。筐体を電池より大きめに作ると、筐体と電池の間に隙間ができ、筐体と電池が密着しない場合がある。筐体と電池が密着していない場合、電池が膨張しても筐体との隙間が埋まるのみで筐体にひずみが生じない(または、ひずみが生じたとしても微弱になる)場合がある。したがって、電池パックにおいて筐体と電池が密着していない場合、筐体にひずみゲージを貼り付けたとしても、電池の膨張を検出しづらい場合がある。
【0089】
以下、筐体の第1変形例として、電池を筐体に入れてから電池と筐体との密着性を高めるための構成を示す。具体的には、筐体は、電池を筐体に入れた後にかしめるための、スリットを備える。
【0090】
図9から図12のそれぞれは、本実施形態に係る電池パックにおける筐体の第1変形例である筐体130を例示する図である。図9から図11のそれぞれは、筐体130の斜視図である。図12は、筐体130の上面図である。
【0091】
筐体130に電池20を取り付ける手順について説明する。最初に、電池20より大きめに作成された角筒状の筐体130を形成する。筐体130は、スリット131が形成された板状の部材を曲げ加工して、角筒状に形成して、端を結合することにより形成される。図9は、角筒状に形成した筐体130を示す図である。筐体130における隣接する側面の間の辺に沿って並んで設けられる複数のスリット131を備える。複数のスリット133のそれぞれは、隣接する側面にわたって開口する。
【0092】
次に、筐体130の内部に電池20を挿入する。図10は、筐体130の内部に電池20を挿入した状態を示す図である。筐体130は、電池20に対して、内部が大きめに形成される。したがって、筐体130の内部に電池20を挿入した状態では、筐体130と電池20との間に隙間がある。
【0093】
次に、筐体130における隣接する側面との間における角となる辺の部分をかしめて、筐体130を電池20に密着させる。前述のように、筐体130は、筐体130の角となる辺の部分にスリット131を備えている。このスリット構造の存在により、筐体130の角となる辺の部分をかしめたときに、筐体130と電池20とを密着させることができる。具体的には、筐体130の角となる辺の部分をかしめると、筐体130の外形が小さくなり、筐体130に電池20を密着させることができる。図11は、筐体130をかしめた状態を示す図である。図12は、筐体130をかしめた状態を示す平面図である。第1変形例においては、角を両側から(図12の矢印の方向から)かしめる。
【0094】
なお、上記の説明では、筐体130に電池20を挿入してからかしめているが、筐体130をかしめてから、または、かしめつつ、電池20を挿入するようにしてもよい。また、スリットの数、位置、形状等は、筐体130の材料特性、ならびにかしめる力の強さおよび方向等に応じて適宜定められてよい。
【0095】
<第2変形例>
筐体の第2変形例は、筐体の第1変形例に対して、かしめる方法が異なる。第2変形例においては、角において、一方がずれるようにかしめる。
【0096】
図13は、本実施形態に係る電池パックにおける筐体の第2変形例である筐体230を例示する図である。図13は、筐体230をかしめた状態を示す平面図である。図13に示すように、かしめる方向を変えることにより、角における形状が第1変形例とは異なる。
【0097】
<第3変形例>
筐体の第3変形例は、底板と側板を有する筐体であって、側板が電池を内側に押すように構成される。
【0098】
図14及び図15のそれぞれは、本実施形態に係る電池パックにおける筐体の第3変形例である筐体330を例示する図である。図14は、筐体330を展開した状態の金属板330mを示す平面図である。図15は、金属板330mを組み上げて筐体330を形成する場合の、途中の状態を示す図である。
【0099】
筐体330は、金属板330mを曲げ加工することにより形成される。筐体330は、底板330SBと、側板330SS1、側板330SS2、側板330SS3及び側板330SS4と、を備える。金属板330mは、一枚の金属板から形成されてもよいし、複数の金属板を接着することで形成されてもよい。
【0100】
金属板330mにおいて、底板330SBと側板330SS1との接続部分である接続部330L1において、側板330SS1を図14の紙面の手前側に曲げて谷折りにする。側板330SS1を谷折りにする際には、側板330SS1が、上面から見て底板330SBの内側に傾斜するようにする。側板330SS1が、上面から見て底板330SBの内側に傾斜するようにすることにより、側板330SS1が底板330SBに載置された電池を接続部330L1における弾性により押すことができる。
【0101】
同様に、底板330SBと側板330SS2との接続部分である接続部330L2において、側板330SS2を谷折りにする。また、底板330SBと側板330SS3との接続部分である接続部330L3において、側板330SS3を谷折りにする。さらに、底板330SBと側板330SS4との接続部分である接続部330L4において、側板330SS4を谷折りにする。
【0102】
そして、金属板330mから、筐体330を形成する。上述のように、筐体330を形成することにより、側板330SS2が底板330SBに載置された電池を接続部330L2における弾性により押すことができる。また、側板330SS3が底板330SBに載置された電池を接続部330L3における弾性により押すことができる。側板330SS4が底板330SBに載置された電池を接続部330L4における弾性により押すことができる。
【0103】
<第4変形例>
本実施形態に係る電池パックにおいて、筐体がひずみ易いように、第4変形例の筐体において、筐体の一部に、筐体を形成する部材が薄い薄肉部を設ける。
【0104】
図16は、本実施形態に係る電池パックにおける筐体の第4変形例の一例である筐体35を例示する図である。筐体35は、筐体30に対して、ひずみゲージ10が貼り付けられる側面30S1において、薄肉部36が設けられている点が異なる。薄肉部36は、ひずみゲージ10が貼り付けられる側面30S1を形成する部材が薄くなっている。筐体35は、側面35S1において、ひずみゲージ10が貼り付けられる部分に、薄肉部36が設けられている。
【0105】
特に、ひずみゲージ10において膨張ひずみを検出する場合、側面35S1における中心付近に薄肉部36を設けて、薄肉部36にひずみゲージ10を貼り付けるとよい。
【0106】
なお、上記の例では、側面35S1にひずみゲージ10が貼り付けられる例について説明しているが、ひずみゲージ10が貼り付けられる場所は側面35S1に限らず、他の面に貼り付けられてもよい。また、本変形例で説明した薄肉部を、第1実施形態~第2実施形態に係る電池パックの筐体のひずみゲージの貼り付け位置に設けてもよい。そして、その薄肉部にひずみゲージを貼り付けてもよい。このように、薄肉部と板状部材という2つの構成を組み合わせることより、電池の膨張による筐体のひずみを、ひずみゲージがより一層検出し易くなる。
【0107】
<第5変形例>
筐体の第5変形例は、筐体の第4変形例に対して、薄肉部の位置が異なる。筐体の第5変形例は、ひずみゲージが貼り付けられる面の貼り付けられていない部分に薄肉部が設けられる。
【0108】
図17は、本実施形態に係る電池パックにおける筐体の第5変形例の一例である筐体37を例示する図である。筐体37は、筐体35に対して、ひずみゲージ10が貼り付けられる側面37S1において、ひずみゲージ10に対して薄肉部36が設けられている場所が異なる。薄肉部38は、ひずみゲージ10が貼り付けられる側面37S1を形成する部材が薄くなっている。筐体37は、側面37S1において、ひずみゲージ10が貼り付けられていない部分に、薄肉部38が設けられている。
【0109】
特に、ひずみゲージ10において圧縮ひずみを検出する場合、側面37S1における中央付近に薄肉部38を作成し、ひずみゲージ10を側面37S1の隅に貼り付けるとよい。薄肉部38を中央部に設けることにより、破損等を防止できる。
【0110】
なお、上記の例では、側面37S1にひずみゲージ10が貼り付けられる例について説明しているが、ひずみゲージ10が貼り付けられる場所は側面37S1に限らず、他の面に貼り付けられてもよい。また、本変形例で説明した薄肉部を、第3実施形態に係る電池パックの筐体の、ひずみゲージを貼り付ける面の中央部分に設けてもよい。このように、薄肉部と板状部材という2つの構成を組み合わせることより、電池の膨張による筐体のひずみをより大きくすることができる。したがって、ひずみゲージを用いてより精度良く筐体のひずみを検出することができる。
【0111】
≪第4実施形態≫
上述の例では、箱型の筐体一杯に電池を搭載していたが、筐体に、電池と、電池の状態を監視する監視部を、筐体に一緒に搭載してもよい。筐体と監視部との間に空隙ができる場合は、筐体と監視部との間に空隙の近傍にひずみゲージ10を貼り付ける。
【0112】
図18は、第4実施形態に係る電池パックの一例である電池パック5を例示する図である。電池パック5は、ひずみゲージ10と、1つ以上の電池20と、筐体30と、監視部65と、を備える。電池パック5においては、電池20を収容する部分に敢えて電池20を収容せずに、電池20より小型の監視部65を収容する。電池20より小型の監視部65を電池20の代わりに収容することにより、空洞部分を形成する。
【0113】
ひずみゲージ10、電池20及び筐体30のそれぞれについては、第1実施形態の説明を参照することとして、ここでは説明を省略する。なお、電池パック5は、電池パック1に対して電池20の数が1つ少ない。電池パック5は、電池20が収容されていた部分に、監視部65が収納される。
【0114】
[監視部65]
監視部65は、電池20の状態を監視するためのECU(Electronic Control Unit)及び前述の回路基板60等の回路等を備える。監視部65は、電池20と比較して小型の形状を有する。したがって、監視部65と筐体30との間には、空隙SP1ができる。
【0115】
電池パックにおいて、筐体と電池(複数の場合は、1まとめの電池)との間に、全周囲にわたって空隙が空いている場合、前記実施形態で述べたように、電池が膨張しても筐体がひずみにくくなってしまうことがある。しかしながら、電池と筐体が密着しており、筐体内側の一部のみに空隙が存在する場合、電池が膨張すると、その膨張によるひずみ(膨張ひずみおよび圧縮ひずみ)は、前記空隙において顕著に表出する。
【0116】
したがって、本実施形態に係る電池パック5のように、監視部65と筐体30との間に一部分の空隙SP1があり、その空隙に対応する面および位置にひずみゲージ10を設けた場合、ひずみゲージ10による筐体のひずみの検出精度が向上する。例えば、筐体30における空隙SP1部分にひずみゲージ10を貼り付けると膨張ひずみを検出しやすい。また、空隙SP1の近傍に電池20がある場合、筐体30における空隙SP1の近傍にある電池20の部分に、ひずみゲージ10を貼ると圧縮ひずみを検出しやすい。
【0117】
≪第5実施形態≫
本開示に係る電池パックは、筐体の内部に電池を配置した後、筐体と電池との空隙を不活性液体で満たすことで、電池を不活性液体に浸漬する構成であってもよい。そして、本開示に係る電池パックは、筐体外側に貼り付けたひずみゲージで、不活性液体の液位及び/又は、電池の膨張による不活性液体からの内圧を測定する構成であってもよい。以下、第5実施形態に係る電池パックについて説明する。
【0118】
図19は、第5実施形態に係る電池パックの一例である電池パック6を例示する図である。図20は、第5実施形態に係る電池パックの一例である電池パック6を例示する断面図である。電池パック6は、1つ以上のひずみゲージ10と、1つ以上の電池120と、筐体430と、を備える。
【0119】
筐体430は、ケース431と、フィルム432と、を備える。ケース431は、箱状の形状を有する。ケース431は、底面に電池120が載置される。電池120は、不活性液体FILにより浸漬される。不活性液体FILは、例えば、フッ素系不活性液体である。
【0120】
図21は、第5実施形態に係る電池パックの一例である電池パック6の使用状態を例示する図である。電池パック6において、電池120が通常の状態である場合を図21の(a)に示す。電池120が通常の状態の場合、不活性液体FILの液位はHである。次に、電池120が膨張した状態を図21の(b)に示す。電池120が膨張すると、不活性液体FILの液位がΔH上昇する。
【0121】
電池パック6は、(1)不活性液体FILの液位を検出する、及び/又は、(2)不活性液体FILの液位の変化により変化する、筐体430の内圧、を検出することで、電池120の膨張を検出する。なお、筐体430の内圧を検出する場合、例えば、筐体430の一部の肉厚を薄くして、ひずみゲージ10を用いて筐体430にかかる応力の変化を検出するようにしてもよい。
【0122】
次に、電池パック6の製造方法について説明する。図22及び図23のそれぞれは、第5実施形態に係る電池パックの一例である電池パック6の製造方法を例示する図である。
【0123】
最初に、筐体430のケース431に、電池120を載置する。そして、ケース431に、電池120を浸漬する不活性液体FILを充填する。図22は、電池120が載置されたケース431に不活性液体FILを充填する工程を示す。
【0124】
次に、ケース431の上面をフィルム432でシールする。図23は、ケース431の上面をフィルム432でシールした状態を示す。
【0125】
なお、筐体430の内部に外部から不活性液体FILを循環させるようにしてもよい。例えば、図24に示すように、矢印付き線に沿って不活性液体FILを流すことにより、不活性液体FILを循環させるようにしてもよい。
【0126】
〈第6実施形態〉
以上説明した実施形態およびその変形例では、本開示に係るセンサが抵抗体を用いたひずみゲージである例について説明した。すなわち、前述の実施形態では、本開示に係るセンサが電気抵抗式の金属ひずみゲージである場合について説明した。しかしながら、本開示に係るセンサは金属ひずみゲージに限定されない。例えば、本開示に係るセンサは、当該ひずみゲージに含まれる検出素子によって、筐体のひずみによって引き起こされる磁気変化を検出するひずみゲージであってもよい。
【0127】
具体的には、本開示に係るセンサは、ビラリ現象(後述)を利用した検出素子を含んだひずみゲージであってもよい。また、本開示に係るセンサは、磁気トンネル接合(後述)の構造を有する検出素子を含んだひずみゲージであってもよい。以下、第6実施形態では、ビラリ現象を利用した検出素子を含むひずみゲージについて説明する。また、第7実施形態では、磁気トンネル接合の構造を有する検出素子を含んだひずみゲージについて説明する。
【0128】
なお、本明細書の各実施形態では、同様の機能を有する部材には同様の名称および部材番号を付し、説明を繰り返さないこととする。また、図25以降の各図面におけるx軸、y軸、およびz軸の方向は、図25で示したx軸、y軸、およびz軸の方向と同一である。また、以降の説明では、z軸の正方向を「上」、z軸の負方向を「下」と称する。すなわち、以降の説明において「上側」とはz軸の正方向側であり、「上面」はz軸の正方向側にある面を示す。また、「下側」とはz軸の負方向側であり、「下面」とはz軸の負方向側にある面を示す。
【0129】
図25は、第6実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子300の一例を示す図である。図25の(a)は検出素子300をz軸の正方向から負方向(すなわち、上面から下面側)に見下ろしたときの平面図である。一方、図25の(b)は、図25の(a)に示す検出素子300のα-α´直線での断面図を示している。なお、図25の(a)および(b)では、検出素子300から延びる配線は図示していない。しかしながら、検出素子300には、後述する駆動コイル320と電源とを接続する配線と、感知コイル380によって検出された電流を伝達するための配線が接続されていてもよい。
【0130】
図25の(a)に示す通り、検出素子300は、駆動コイル320と、感知コイル380と、ベース層310とを含む。ベース層310は駆動コイル320および感知コイル380の芯材となる層である。感知コイル380は、ベース層310(より厳密には、後述するベース金属370)の磁化の強さを検出するためのコイルである。駆動コイル320は、磁界を発生させるためのコイルである。検出素子300は、ベース層310を芯材として、感知コイル380が内側、そして駆動コイル320が外側に巻かれた2重構造を有している。なお、駆動コイル320および感知コイル380の材料は、Cu、Ag、Al、およびAu等の導電性金属、ならびに、これらの金属の合金であることが望ましい。また、駆動コイル320および感知コイル380の巻き数および断面積の大きさは、検出素子300に要求されるひずみの検知感度に応じて適宜設計されてよい。
【0131】
後で詳述するが、ベース層310に応力が加わると、ベース層310に含まれるベース金属370(後述)の磁化の強さが変化する。検出素子300は、感知コイル380でこの磁化の強さの変化を検出することによって、ベース層310にかかる応力の強さ(すなわち、ひずみ度合)を特定することができる。
【0132】
図25の(b)の断面図を参照して、検出素子300の構成について更に説明する。なお、図25の(b)において、駆動コイル320、感知コイル380、および3つの絶縁層340、350、および360はそれぞれ、芯材であるベース金属370を取り囲むように形成されている。すなわち、図25の(b)において同じ部材番号を付した層は、ベース金属370を取り囲んで繋がっている。
【0133】
ベース金属370は、各種コイルおよび絶縁層の芯材となる部材である。ベース金属370は、例えば略平板状の金属板であってよい。ベース金属370は絶縁層360で取り囲むように被覆されている。ベース金属370は、例えば、センダスト等のFe-Si-Al系合金、および、パーマロイ等のNi-Fe系合金等の軟磁性体材料で構成されることが望ましい。前述のベース層310は、図25の(b)に示す通り、このベース金属370と絶縁層360から成る。
【0134】
絶縁層360の外側には、絶縁層360を取り囲むように絶縁層350が形成される。そして、絶縁層350の外側には、更に絶縁層340が形成されている。絶縁層350は、感知コイル380を含む層であり、感知コイル380の間隙を絶縁材料で充填した層である。絶縁層340は、駆動コイル320を含む層であり、駆動コイル320の間隙を絶縁材料で充填した層である。絶縁層340、350、および360は、磁界に影響しないドライフィルムまたは感光性ポリイミド等のレジスト硬化物から成ることが望ましい。
【0135】
検出素子300の一面は、図25の(b)に示すように、基材110に貼り付けられていてよい。基材110は、検出素子300を固定する部材である。例えば、基材110は、プラスチックフィルム等で構成されるフレキシブル基板であってよい。また、基材110と前記各実施形態で述べた基材11は同じものであってもよい。検出素子300は基材110を介して電池パックの筐体に貼り付けられる。なお、検出素子300は、全体として平板または薄膜状の検出素子であってもよい。検出素子300が平板または薄膜状である場合、検出素子300を基材110により容易に貼り付けることができる。また、検出素子300において基材110は必須の構成ではない。例えば、検出素子300に基材110を設けず、検出素子300の下面を電池パックの筐体に直接貼り付けて使用してもよい。
【0136】
本実施形態に係る電池パックの筐体は、基本的には第1実施形態~第5実施形態およびこれらの実施形態の変形例に係る筐体と同様の構成および材料であってよい。しかしながら、本実施形態において、電池パックの筐体は、非磁性体から成ることがより望ましい。本実施形態に係る電池パックの筐体は、例えば、非磁性ステンレスを材料として作製することができる。
【0137】
次に、検出素子300を用いてひずみを検出する原理を概説する。検出素子300は、磁性体であるベース金属370を含んでいる。電源から駆動コイル320に交流電流が供給されると、駆動コイル320はその周囲に交番磁界を生じさせる。これにより磁界が発生し、ベース金属370は磁化される。この状態で電池パックの筐体が変形すると、ひずみが生じる。ひずみは基材110を伝わり、ベース金属370に応力が加わる。なお、検出素子300を、基材110を介さずに筐体に貼り付けている場合は、筐体からベース金属370(およびそれを被覆する絶縁層340~360)に直接応力が伝わる。
【0138】
ベース金属370に応力が加わると、その応力に応じてベース金属370の透磁率が変化する。したがって、ベース金属370の磁化の強さ(磁化の程度)が変化する。このように、磁性体に応力がかかると磁性体の透磁率および磁化の強さが変化する現象のことを「ビラリ現象」という。検出素子300の構成によれば、ピックアップコイルである感知コイル380には、ベース金属370の磁化の強さに応じた交流電圧が誘起される。したがって、ビラリ現象の原理に基づけば、この交流電圧の値から、ベース金属370にかかる応力を算出することができる。そして、当該算出した応力から、電池パックの筐体のひずみ度合を特定することができる。なお、検出素子300が図25の(a)および(b)に示す形状である場合、検出素子300のグリッド方向は、図25の(a)におけるα-α´方向に等しい。以上説明した原理に基づいて、検出素子300は、電池パックの筐体のひずみを検出することができる。すなわち、検出素子300は、ひずみゲージの検出素子として機能する。
【0139】
なお、駆動コイル320は、感知コイル380の外側、かつ当該感知コイル380が存在している領域全体に、できる限り均一に巻き付けられることが望ましい。これにより、ベース金属370の、感知コイル380が存在する領域全体に、より均一に交番磁界を加えることができる。これにより、ビラリ現象によるベース金属370の磁化の強さの変化をより精密に検出することができる。したがって、検出素子300の性能が向上する。
【0140】
また、絶縁層360は、ベース金属370の全部ではなく一部に形成されていてもよい。例えば、ベース金属370のうち、感知コイル380および駆動コイル320を巻き付ける領域の部分を絶縁層360で覆い、絶縁層360の上から感知コイル380を含む絶縁層350で覆い、更に、絶縁層350の上から駆動コイル320を含む絶縁層340で覆うような構成であってもよい。
【0141】
また、ベース金属370が略平板状である場合、絶縁層360はベース金属370の、コイルを巻く方向のみ取り囲んで形成されていてもよい。すなわち、図25の(b)において、ベース金属370のx方向の両端部は絶縁層360で覆われていなくてもよい。
【0142】
本実施形態に係る電池パックにおいて、電池パックの筐体が変形する(すなわち、筐体にひずみが生じる)と、ひずみゲージの基材110(または、検出素子300自体)がひずむ。検出素子300は、このひずみによって生じる磁性変化を、前述のビラリ現象の原理に基づき検出することができる。
【0143】
本実施形態に係る検出素子300を含んだひずみゲージは、第1実施形態~第5実施形態、およびこれらの実施形態の変形例で示した、あらゆる配置パターンで電池パックの筐体に配置可能である。すなわち、本実施形態に係る検出素子300を用いて、電気抵抗式のひずみゲージを用いたときと同様に電池パックの筐体のひずみを検出することができる。したがって、本実施形態に係るひずみゲージは、第1実施形態~第5実施形態、およびこれらの実施形態の変形例に係るひずみゲージ10と同様の効果を奏する。
【0144】
〈第7実施形態〉
図26は、第7実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例である検出素子500を示す図である。図27は、第7実施形態に係る検出素子の他の一例である検出素子600を示す図である。また、図28は、第7実施形態に係る検出素子の更に他の一例である検出素子700を示す図である。図26図28の(a)はそれぞれ、検出素子500、600、および700の斜視図である。図26図28の(b)はそれぞれ、検出素子500、600、および700をz軸の正方向から負方向に見下ろしたときの平面図である。図26図28の(c)は、検出素子500、600、および700の、zx平面に平行な面での断面図である。なお、図26図28のいずれの図も、検出素子から延びる配線は図示していない。しかしながら、これらの検出素子500、600、および700には、後述する上流電極510と電源とを接続する配線と、下流電極520と電源とを接続する配線とが接続されていてもよい。
【0145】
図26図28の(a)に示す通り、検出素子500、600、および700は、上流電極510と、下流電極520と、磁性膜530と、絶縁膜540と、を含む。絶縁膜540は、図示のように磁性膜530で挟まれている。この磁性膜530と絶縁膜540によって、磁気トンネル接合が形成される。すなわち、検出素子500、600、および700は、磁気トンネル接合の構造に電極を接続した構造である。
【0146】
なお、検出素子500、600、および700の下面は、第6実施形態に係る基材11と同様の基材に貼り付けられていてもよい。そして、検出素子500は基材を介して電池パックの筐体に貼り付けられてよい。また、検出素子500、600、および700は、全体として平板または薄膜状の検出素子であってもよい。検出素子500、600、および700が平板または薄膜状である場合、検出素子500、600、および700を基材または筐体に、より容易に貼り付けることができる。また例えば、検出素子500、600、および700の下面を筐体に直接貼り付けて使用してもよい。
【0147】
磁性膜530は磁性ナノ薄膜である。絶縁膜540は絶縁体のナノ薄膜である。磁気トンネル接合の構造が形成可能であれば、磁性膜530と、絶縁膜540の材料は特に限定されない。例えば、磁性膜530としてコバルト鉄ボロン、または、Fe、Co、Niなどの3d遷移金属強磁性体及びそれらを含む合金等を用いることができる。また、絶縁膜540として、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムや酸化マグネシウム等を用いることができる。
【0148】
上流電極510および下流電極520は、磁気トンネル接合の構造に対し電圧を印加するための電極である。図26図28の例では、電流は上流電極510から下流電極520へと流れる。例えば図26の(c)の場合、上流電極510と下流電極520の間に電圧を印加すると、電子は上側(z軸正方向側)の磁性膜530から、絶縁膜540を超えて下側(z軸負方向側)の磁性膜530に流れ込む。これは「トンネル効果」と呼ばれている現象であり、電子が絶縁膜540を通過するときの電気抵抗は、「トンネル抵抗」と呼ばれている。なお、図26図28の例では、電極の各部の接合部は、磁気トンネル接合の構造をショートパスする電流が流れない様に端部が処理された構造となっている。
【0149】
ところで、基材11等を介して検出素子500にひずみがかかると、トンネル接合の構造において、磁気変化が起こる。より具体的には、上側と下側の磁性膜530の磁化方向がずれる。このように、上下の磁性膜530の磁化方向がずれると、磁化方向が平行な場合に比べて、トンネル抵抗が大きくなる(トンネル磁気抵抗効果)。したがって、前述の構成を備えた検出素子500では、検出素子500(より厳密には、磁気トンネル接合の部分)のひずみの大きさに応じて、電極間を流れる電流が小さくなる。すなわち、ひずみが大きくなるにつれ、電気抵抗が大きくなる。検出素子500は、このように、印加した電圧に対する電流値に基づきひずみを検出することができる。したがって、検出素子500を電池パックの筐体に貼り付けることによって、筐体にかかるひずみを測定することができる。
【0150】
磁気トンネル接合の構造を有する検出素子は、図26に示した例に限定されない。例えば、図27および図28に示すような検出素子600および700を採用することも可能である。図27に示す検出素子600も、図28に示す検出素子700も、上流電極510、下流電極520、磁性膜530、および絶縁膜540で構成されること、および、これらの構成によってひずみを検出する原理については、検出素子500と同様である。また、検出素子600および700の基本的な動作についても、検出素子500と同様である。なお、検出素子500、600、および700のグリッド方向は、それぞれ図26図28におけるx軸方向(x軸の正方向およびx軸の負方向)に相当する。図27に示す検出素子600は図示の通り、上側の磁性膜530と下側の磁性膜530が、一部繋がった構造をしている。すなわち、磁性膜530の一部の領域においてのみ、磁気トンネル接合の構造が形成されており、当該構造においてトンネル磁気抵抗効果が生じる。一方、図28に示す検出素子700は、基板710を介して基材11に貼り付けられる。図26図28に示すように、検出素子は前述の原理を超えない範囲であれば、要求されるサイズ、耐久性、および検出すべき応力の大きさ等に応じて、適宜その設計が変更されてよい。
【0151】
なお、本実施形態に係る電池パックの筐体は、基本的には第1実施形態~第5実施形態およびこれらの変形例に係る筐体と同様の構成および材料であってよい。しかしながら、本実施形態において、筐体は、非磁性体から成ることがより望ましい。本実施形態に係る筐体は、例えば、非磁性ステンレスを材料として作製することができる。また、検出素子500、600、および700は素子全体として、フィルム型などの略平板状の形状であってよい。これにより、電池パックの筐体に、検出素子500を容易に貼り付けることができる。また、検出素子500、600、および700は、駆動コイル等、磁気トンネル接合の構造部分に対して、微弱な磁界を印加するための構造を有していてもよい。磁気トンネル接合の構造部分に対して磁界を印加することにより、前述のトンネル磁気抵抗効果をより安定して測定することができるため、安定してひずみを検出することができる。
【0152】
また、検出素子500、600、および700における「上流電極」および「下流電極」は便宜上の名称であり、電流の流れる方向は逆であってもよい。つまり、図26図28で示した検出素子500、600、および700において、下流電極520の方から、上流電極510の方へと電流が流れる設計であってもよい。
【0153】
本実施形態に係る電池パックにおいて、電池パックの筐体が変形する(すなわち、筐体にひずみが生じる)と、ひずみゲージの基材(または、検出素子500、600、または700自体)がひずむ。検出素子500、600、または700は、このひずみによって生じる磁性変化を、前述のトンネル磁気抵抗効果の原理に基づき検出することができる。
【0154】
本実施形態に係る検出素子500、600、および700を含んだひずみゲージは、第1実施形態~第5実施形態、およびこれらの実施形態の変形例に示したあらゆる配置パターンで電池パックの筐体に配置可能である。すなわち、本実施形態に係る検出素子500、600、および700を用いて、電気抵抗式のひずみゲージを用いたときと同様に電池パックの筐体のひずみを検出することができる。したがって、本実施形態に係るひずみゲージは、第1実施形態~第5実施形態及びこれらの実施形態の変形例に係るひずみゲージ10と同様の効果を奏する。
【0155】
〈第8実施形態〉
本開示に係るセンサは、半導体式のひずみゲージ、静電容量式の圧力センサ、または光ファイバ式のひずみゲージであってもよい。また、本開示に係るセンサは、機械式圧力センサ、振動式圧力センサ、または圧電式圧力センサであってもよい。以下、各種ひずみゲージ及び圧力センサの原理を説明する。
【0156】
(半導体式のひずみゲージ)
半導体式のひずみゲージは、半導体の圧抵抗効果を利用してひずみを検出するひずみゲージである。すなわち、半導体式のひずみゲージは、半導体をひずみの検出素子として用いるひずみゲージである。
【0157】
半導体に応力が印加されると、半導体の結晶格子にひずみが生じて半導体中のキャリアの数及び移動度が変化するため、結果として電気抵抗が変化することが知られている。半導体式のひずみゲージは、電気抵抗式の金属ひずみゲージと同様、電池パックの筐体に直接貼り付けて使用することができる。この場合、筐体が伸縮すると、貼り付けられた半導体(より詳しくは、半導体の結晶格子)がひずみ電気抵抗が変化する。そのため、当該電気抵抗を測定することで筐体のひずみ量を特定することができる。
【0158】
また、半導体式のひずみゲージは、ダイアフラム構造を備えたひずみセンサとして構成することもできる。この場合、ひずみセンサは例えば、非金属のダイアフラム(又は、金属ダイアフラム上に電気絶縁層を形成したもの)と、当該ダイアフラムの上に形成された半導体(例えば、シリコン薄膜の半導体)と、を有する。そして、この様にダイアフラムを含む構造において、ダイアフラムに印加された垂直応力によりダイアフラムがひずむと、半導体の電気抵抗が変化する。そのため、当該電気抵抗を測定することでダイアフラムのひずみ量(ひいては、電池パックの筐体のひずみ量)を特定することができる。
【0159】
(静電容量式の圧力センサ)
静電容量式の圧力センサは、ダイアフラムにかかる圧力を一対の電極の静電容量の変化として計測する圧力センサである。すなわち、静電容量式の圧力センサは、一対の電極を検出素子として用いる圧力センサである。静電容量式の圧力センサは例えば、可動電極としてのダイアフラムと、1つ以上の固定電極と、を備える。ダイアフラムは例えば不純物を含んだシリコン(すなわち、導体として機能するシリコン)等で形成される。
【0160】
ダイアフラムに圧力が印加されると、当該ダイアフラムが変位し、固定電極と可動電極との間の距離が変化する。電極間の静電容量は、電極間媒質の誘電率と電極の面積が一定ならば、電極間の距離に応じて定まることが知られている。したがって、静電容量を計測することで、ダイアフラムの変位量(すなわち、圧力の大きさ)を特定することができる。
【0161】
(光ファイバ式のひずみゲージ)
光ファイバ式のひずみゲージとは、ファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG)が形成されている光ファイバを用いてひずみを検出するひずみゲージである。すなわち、光ファイバ式のひずみゲージは、光ファイバをひずみの検出素子として用いるひずみゲージである。FBGは光ファイバの他の部分とは異なる光の反射を起こす回折格子であり、この格子の一つ一つは一定間隔で形成されている。光ファイバがひずんで伸びると、FBGの格子間隔が広がるため、光ファイバに入射した光(例えば、レーザ光)の反射光の波長が変化する。また、光ファイバがひずんで縮むと、FBGの格子間隔は狭くなるため、ファイバに入射した光(例えば、レーザ光)の反射光の波長が変化する。
【0162】
このような特性を有する光ファイバを電池パックの筐体に貼り付けておき、光ファイバの反射光の波長スペクトルを計測することで、光ファイバのひずみ量(すなわち、筐体のひずみ量)を特定することができる。なお、光ファイバ式のひずみゲージは、光ファイバ内で生じるブリルアン散乱光の周波数の変化から当該光ファイバのひずみ量を特定するひずみゲージであってもよい。
【0163】
(機械式圧力センサ)
機械式圧力センサは機械的構造物の変位量を計測することで、当該構造物にかかる圧力を特定するセンサである。機械式圧力センサは、例えば、ばね又は曲げた管を備えており、このばねの伸縮量又は曲げた管の伸縮量を計測する。これらの伸縮量(すなわち、変位量)は、ばね又は曲げた管にかかる圧力の大きさに応じて変化する。したがって、当該伸縮量を計測することで、ばね又は曲げた管にかかる圧力を特定することができる。なお、ばね又は曲げた管の形状や大きさは、機械式圧力センサの取り付け対象の大きさ及び形状に応じて適宜定められてよい。
【0164】
(振動式圧力センサ)
振動式圧力センサは、弾性梁の固有振動数が、当該弾性梁の軸に沿って生じる圧力(すなわち、軸力)によって変化するという現象を利用して圧力を検出するセンサである。振動式圧力センサは、電気抵抗式の金属ひずみゲージと同様、電池パックの筐体に直接貼り付けて使用することができる。また例えば、振動式圧力センサは、基板上に形成されたダイアフラムと、当該ダイアフラムの表面に形成された梁状の振動子と、で構成される圧力センサであってもよい。
【0165】
いずれの場合でも、電池パックの筐体がひずむと、その圧力は直接または間接的に振動子に伝わり、振動子に軸力が生じる。振動子の固有振動数は、軸力に応じて変化する。したがって、振動子の固有振動数を計測することで、電池パックの筐体に対する圧力の大きさを特定することができる。
【0166】
(圧電式圧力センサ)
圧電式圧力センサとは、圧電素子(ピエゾ素子とも称する)を含んでおり、この圧電素子の特性を用いて圧力を検出するセンサである。圧電素子は、力が加わり変形する(ひずむ)と、その力に応じた起電力を発生する特性を持っている。また、圧電素子は、電圧をかけると、その電圧に応じた力を発生させて伸縮する特性を持っている。
【0167】
圧電式圧力センサは、圧電素子の起電力を測定することで、圧電素子にかかった力(すなわち、圧電素子のひずみ量)を特定することができる。したがって、圧電式圧力センサを電池パックの筐体に貼り付けておくことで、電池パックの筐体のひずみ量を特定することができる。
【0168】
以上の説明の通り、半導体式のひずみゲージ、静電容量式の圧力センサ、光ファイバ式のひずみゲージ、機械式圧力センサ、振動式圧力センサ、および圧電式圧力センサを用いた場合でも、第1実施形態~第5実施形態、およびこれらの実施形態の変形例に係るひずみゲージ10と同様の効果を得ることができる。
【0169】
以上、好ましい実施形態等について詳説した。しかしながら、本開示に係る電池パックは、上述した実施形態および変形例等に限定されない。例えば、上述した実施形態等に係る電池パックについて、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0170】
1、2、3、4、5、6 電池パック、10、10A、10B ひずみゲージ、12、12A、12B 抵抗体、12Aa、12Ab、12Ba、12Bb 抵抗部、20、120 電池、30、130、230、330、430 筐体、30B 下面、30S1、30S2、30S3、30S4 側面、30T 上面、35 筐体、35S1 側面、36 薄肉部、37 筐体、37S1 側面、38 薄肉部、41 板状部材、42 板状部材、65 監視部、141、142、143、144 板状部材、330L1、330L2、330L3、330L4、 接続部、330SB 底板、330SS1、330SS2、330SS3、330SS4 側板、500、600、700 検出素子、530 磁性膜、540 絶縁膜
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