(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142807
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電池ユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 50/202 20210101AFI20241003BHJP
G01B 7/24 20060101ALI20241003BHJP
G01B 7/16 20060101ALI20241003BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241003BHJP
H01M 50/105 20210101ALN20241003BHJP
【FI】
H01M50/202 401D
G01B7/24
G01B7/16 R
H01M10/48 301
H01M50/202 501P
H01M50/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055144
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 真一
(72)【発明者】
【氏名】浅川 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】北村 厚
【テーマコード(参考)】
2F063
5H011
5H030
5H040
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063BA30
2F063EC03
2F063EC05
5H011AA13
5H011CC02
5H011CC06
5H030AA06
5H030AS08
5H030FF32
5H030FF51
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040DD26
5H040LL01
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】本開示は、電池の状態を精度よく検出することが可能な電池ユニットを実現する。
【解決手段】電池本体と、前記電池本体を覆い、かつ開口を有する外装と、前記電池本体と前記外装との間に、少なくとも前記開口を覆うように設けられるフィルム層と、前記フィルム層の前記開口からの露出面に貼り付けられ、前記フィルム層のひずみを検出するひずみゲージと、を含み、前記外装と前記フィルム層とは強度が異なる電池ユニット。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池本体と、
前記電池本体を覆い、かつ開口を有する外装と、
前記電池本体と前記外装との間に、少なくとも前記開口を覆うように設けられるフィルム層と、
前記フィルム層の前記開口からの露出面に貼り付けられ、前記フィルム層のひずみを検出するひずみゲージと、を含み、
前記外装と前記フィルム層とは強度が異なる、電池ユニット。
【請求項2】
少なくとも前記露出面において、前記フィルム層は、一部が折り重ねられた折り目構造を有する、請求項1に記載の電池ユニット。
【請求項3】
前記外装は積層フィルムであり、
前記積層フィルムの前記電池本体と接する層は他の層よりも熱収縮率が小さい、請求項1または2に記載の電池ユニット。
【請求項4】
電池本体と、
前記電池本体を覆うフィルム状の外装と、
前記外装の表面に貼り付けられ、前記外装のひずみを検出するひずみゲージと、を含み、
前記外装の前記ひずみゲージが貼り付けられた部分は、一部が折り重ねられた折り目構造を有する、電池ユニット。
【請求項5】
前記ひずみゲージは、
絶縁層と、
前記絶縁層の一方の面に直接、金属、合金、又は、金属の化合物から形成された機能層と、
前記機能層の一方の面に直接、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体と、を有し、
前記電池本体の状態を前記抵抗体の抵抗値の変化として検出し、
前記抵抗体は、α-Crを主成分とし、
前記機能層は、前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を成膜する機能を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電池ユニット。
【請求項6】
前記抵抗体は、α-Crを80重量%以上含む、
請求項5に記載の電池ユニット。
【請求項7】
電池本体と、
前記電池本体を覆い、かつ開口を有する外装と、
前記電池本体と前記外装との間に、少なくとも前記開口を覆うように設けられるフィルム層と、
前記フィルム層の前記開口からの露出面に貼り付けられ、前記フィルム層のひずみを検出する検出部と、を含み、
前記外装と前記フィルム層とは強度が異なる、電池ユニット。
【請求項8】
電池本体と、
前記電池本体を覆うフィルム状の外装と、
前記外装の表面に貼り付けられ、前記外装のひずみを検出する検出部と、を含み、
前記外装の前記検出部が貼り付けられた部分は、一部が折り重ねられた折り目構造を有する、電池ユニット。
【請求項9】
前記検出部は、前記ひずみによって生じる磁気変化を検出する検出素子を有する、請求項7または8に記載の電池ユニット。
【請求項10】
前記検出素子は磁性体を含み、
前記検出素子は、前記ひずみによって前記磁性体に圧力が加わったときの前記磁性体の磁化の強さの変化を検出する検出素子である、請求項9に記載の電池ユニット。
【請求項11】
前記検出素子は、磁性膜で絶縁膜を挟んだ磁気トンネル接合の構造を含んでおり、
前記検出素子は、前記電池本体の膨張によって前記構造で発生する磁気変化を検出する検出素子である、請求項9に記載の電池ユニット。
【請求項12】
前記検出部は半導体式のひずみゲージである、請求項7または8に記載の電池ユニット。
【請求項13】
前記検出部は静電容量式の圧力センサである、請求項7または8に記載の電池ユニット。
【請求項14】
前記検出部は光ファイバ式のひずみゲージである、請求項7または8に記載の電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電池と、電池の状態を検出するセンサと、を備える電池パックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池の寿命が短くなると、電池が膨張して液漏れまたは発火を引き起こす可能性がある。そのため、電池の膨張を、より精度よく検出する技術が求められている。
【0005】
本開示は、電池の膨張を精度よく検出することが可能な電池ユニットを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電池ユニットは、電池本体と、前記電池本体を覆い、かつ開口を有する外装と、前記電池本体と前記外装との間に、少なくとも前記開口を覆うように設けられるフィルム層と、前記フィルム層の前記開口からの露出面に貼り付けられ、前記フィルム層のひずみを検出するひずみゲージと、を含み、前記外装と前記フィルム層とは強度が異なる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の電池ユニットによれば、電池の膨張を精度よく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る電池ユニットを例示する図である。
【
図2】第1実施形態に係る電池ユニットを例示する拡大断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る電池ユニットに搭載されるひずみゲージを例示する平面図である。
【
図4】第1実施形態に係る電池ユニットに搭載されるひずみゲージを例示する断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る電池ユニットに搭載される回路基板について説明するブロック図である。
【
図6】第2実施形態に係る電池ユニットを例示する図である。
【
図7】第2実施形態に係る電池ユニットの他の一例を示す図である。
【
図8】第3実施形態に係る電池ユニットを例示する図である。
【
図9】第4実施形態に係る電池ユニットを例示する図である。
【
図10】第5実施形態に係る電池ユニットを例示する図である。
【
図11】第5実施形態に係る電池ユニットの他の一例を示す図である。
【
図12】第5実施形態に係る電池ユニットの他の一例を示す図である。
【
図13】第6実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例を示す平面図および断面図である。
【
図14】第7実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
【
図15】第7実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の他の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
【
図16】第7実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の、更に他の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係る電池ユニットの一例である電池ユニット1を示す図である。
図2は、第1実施形態に係る電池ユニットの一例である電池ユニット1を示す拡大断面図である。具体的には、
図2は、
図1における外装30が有する開口30h付近の拡大断面図である。電池ユニット1は、例えば、電気自動車のバッテリとして用いられる。電池ユニット1は、ひずみゲージ10と、フィルム層20と、外装30と、電池本体40と、を備える。また、電池ユニット1は、一対の電極70を備える。
【0011】
なお、以下の各実施形態で角型の電池ユニットについて説明する場合、電極70が露出している方を「上面」、上面の反対側の面を「下面」、その他の4面を「側面」と称する。
【0012】
電池ユニット1は、六面体状の角形の形状を有する。電池ユニット1における外装30は、上面に開口30hを有する。
【0013】
[ひずみゲージ10]
ひずみゲージ10は、電池本体40の膨張(電池本体40の膨張の有無および/または膨張の程度)によるひずみを検出する検出部の一例である。ひずみゲージ10は、フィルム層20に貼り付けられている。より具体的には、ひずみゲージ10は、フィルム層20のうち、外装30の開口30hから露出している部分(すなわち、露出面20S)に貼り付けられる。ひずみゲージ10は、電池本体40の膨張によるフィルム層20のひずみを検出することで、電池本体40の膨張の有無および/または程度を検出する。
【0014】
なお、ひずみゲージ10の形状および大きさは、露出面20Sに収まる形状および大きさであれば、特に限定されない。また、本実施形態ではひずみゲージ10はシングルゲージであるが、ひずみゲージ10は2ゲージや4ゲージのひずみセンサであってもよい。
【0015】
[フィルム層20]
フィルム層20は、外装30が有する開口30hを少なくとも覆うように設けられる。フィルム層20は、例えば、樹脂によって形成される。フィルム層20を形成する樹脂としては、例えば、2軸延伸ナイロン、CPP(無延伸ポリプロピレン)またはPE(ポリエチレン)などのシーラントフィルム、ならびに、ナイロンやPET(ポリエチレンテレフタレート)などの単層膜または多層膜が挙げられる。
【0016】
[外装30]
外装30は、電池本体40を覆って設けられる。外装30は、電池ユニット1の一番外側の部材である。外装30は、例えば、金属又は樹脂により形成される。外装30は、上面に開口30hを備える。
【0017】
電池ユニット1において、フィルム層20の強度は、外装30の強度と異なる。例えば、フィルム層20の強度は、外装30の強度より弱いことが好ましい。フィルム層20の強度を外装30の強度より弱くすることにより、電池本体40からの内圧によるフィルム層20の変形を大きくすることができる。このフィルム層20の変形をひずみゲージ10が検出することになるため、より微小な電池の膨張もひずみとして検出することが可能になる。したがって、本開示の電池ユニット1によれば、電池の膨張を精度よく検出できる。
【0018】
なお、フィルム層20および外装30の強度の具体的な値は、電池ユニット1の用途、形状、使用環境、および電池ユニット1の取り付け先などに応じて適宜定められる。
【0019】
[電池本体40]
電池本体40は、例えば、リチウムイオン電池等の2次電池の電池本体の部分である。電池本体40は、例えば、
図1に示すような角形の形状であってよい。電池本体40は、内部に、正極、陰極、セパレータ及び電解液等を備える。
【0020】
[ひずみゲージ10の詳細]
次に、ひずみゲージ10についてより詳細に説明する。
図3は、第1実施形態に係る電池ユニットの一例である電池ユニット1に搭載されるひずみゲージ10の平面図である。
図4は、第1実施形態に係る電池ユニットの一例である電池ユニット1に搭載されるひずみゲージ10の断面図である。具体的には、
図4は、
図3のA-A線に沿う断面を示す断面図である。
図3及び
図4を参照するに、ひずみゲージ10は、基材11と、抵抗体12と、端子部13とを有している。ひずみゲージ10は、例えば、基材11の下面11bに接着剤を塗布してフィルム層20の露出面20Sに貼り付けることができる。
【0021】
なお、本実施の形態でひずみゲージ10について説明する場合、便宜上、ひずみゲージ10の基材11の抵抗体12が設けられている側を上側又は一方の側、抵抗体12が設けられていない側を下側又は他方の側とする。又、各部位の抵抗体12が設けられている側の面を一方の面又は上面、抵抗体12が設けられていない側の面を他方の面又は下面とする。但し、ひずみゲージ10は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。又、平面視とは対象物を基材11の上面11aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基材11の上面11aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0022】
基材11は、抵抗体12等を形成するためのベース層となる絶縁性の部材であり、可撓性を有する。基材11の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材11の厚さが5μm~200μmであると、抵抗体12のひずみ感度誤差を少なくすることができる点で好ましい。
【0023】
基材11は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成することができる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0024】
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材11が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材11は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
【0025】
但し、基材11が可撓性を有する必要がない場合には、基材11に、SiO2、ZrO2(YSZも含む)、Si、Si2N3、Al2O3(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO3、BaTiO3)等の材料を用いても構わない。
【0026】
抵抗体12は、基材11上に所定のパターンで形成された薄膜であり、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体12は、基材11の上面11aに直接形成されてもよいし、基材11の上面11aに他の層を介して形成されてもよい。なお、
図3では、便宜上、抵抗体12を梨地模様で示している。
【0027】
抵抗体12は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体12は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0028】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、Cr2N等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。
【0029】
抵抗体12の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体12の厚さが0.1μm以上であると、抵抗体12を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましい。又、抵抗体12の厚さが1μm以下であると、抵抗体12を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材11からの反りを低減できる点で更に好ましい。
【0030】
例えば、抵抗体12がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上することができる。又、抵抗体12がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ10のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50質量%以上を占めることを意味するが、ゲージ特性を向上する観点から、抵抗体12はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0031】
端子部13は、抵抗体12の両端部から延在しており、平面視において、抵抗体12よりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部13は、ひずみにより生じる抵抗体12の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のフレキシブル基板やリード線等が接合される。
【0032】
抵抗体12は、例えば、端子部13の一方からジグザグに折り返しながら延在して他方の端子部13に接続されている。端子部13の上面を、端子部13よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗体12と端子部13とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。
【0033】
抵抗体12を被覆し端子部13を露出するように基材11の上面11aにカバー層15(絶縁樹脂層)を設けても構わない。カバー層15を設けることで、抵抗体12に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層15を設けることで、抵抗体12を湿気等から保護することができる。なお、カバー層15は、端子部13を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0034】
カバー層15は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成することができる。カバー層15は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層15の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。
【0035】
電池ユニット1において、電池本体40が膨張すると、それに対応してフィルム層20が変形する。ひずみゲージ10は、電池本体40の膨張(電池本体40の膨張の有無や膨張の程度)を、フィルム層20を介して抵抗体12の抵抗値の変化として検出し、一対の電極である端子部13から出力することができる。
【0036】
なお、電池本体40が膨張すると、ひずみゲージ10の抵抗体12が細く長くなり抵抗値が増える。又、電池本体40が収縮すると、ひずみゲージ10の抵抗体が太く短くなり抵抗値が減る。従って、ひずみゲージ10の抵抗体の抵抗値の増減を監視することで、電池本体40が膨張しているか収縮しているかを区別できる。
【0037】
ひずみゲージ10を製造するためには、まず、基材11を準備し、基材11の上面11aに
図3に示す平面形状の抵抗体12及び端子部13を形成する。抵抗体12及び端子部13の材料や厚さは、前述の通りである。抵抗体12と端子部13とは、同一材料により一体に形成することができる。
【0038】
抵抗体12及び端子部13は、例えば、抵抗体12及び端子部13を形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィによってパターニングすることで形成できる。抵抗体12及び端子部13は、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
【0039】
ゲージ特性を安定化する観点から、抵抗体12及び端子部13を成膜する前に、下地層として、基材11の上面11aに、例えば、コンベンショナルスパッタ法により膜厚が1nm~100nm程度の機能層を真空成膜することが好ましい。なお、機能層は、機能層の上面全体に抵抗体12及び端子部13を形成後、フォトリソグラフィによって抵抗体12及び端子部13と共に
図3に示す平面形状にパターニングされる。
【0040】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である抵抗体12の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材11に含まれる酸素や水分による抵抗体12の酸化を防止する機能や、基材11と抵抗体12との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0041】
基材11を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に抵抗体12がCrを含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層が抵抗体12の酸化を防止する機能を備えることは有効である。
【0042】
機能層の材料は、少なくとも上層である抵抗体12の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0043】
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。又、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si3N4、TiO2、Ta2O5、SiO2等が挙げられる。
【0044】
機能層は、例えば、機能層を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜することができる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材11の上面11aをArでエッチングしながら機能層が成膜されるため、機能層の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
【0045】
但し、これは、機能層の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層を成膜してもよい。例えば、機能層の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材11の上面11aを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層を真空成膜する方法を用いてもよい。
【0046】
機能層の材料と抵抗体12及び端子部13の材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、機能層としてTiを用い、抵抗体12及び端子部13としてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜することが可能である。
【0047】
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、抵抗体12及び端子部13を成膜することができる。或いは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、抵抗体12及び端子部13を成膜してもよい。
【0048】
これらの方法では、Tiからなる機能層がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。又、機能層を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。例えば、ひずみゲージ10のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。なお、機能層がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
【0049】
なお、抵抗体12がCr混相膜である場合、Tiからなる機能層は、抵抗体12の結晶成長を促進する機能、基材11に含まれる酸素や水分による抵抗体12の酸化を防止する機能、及び基材11と抵抗体12との密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
【0050】
このように、抵抗体12の下層に機能層を設けることにより、抵抗体12の結晶成長を促進することが可能となり、安定な結晶相からなる抵抗体12を作製できる。その結果、ひずみゲージ10において、ゲージ特性の安定性を向上することができる。又、機能層を構成する材料が抵抗体12に拡散することにより、ひずみゲージ10において、ゲージ特性を向上することができる。
【0051】
抵抗体12及び端子部13を形成後、必要に応じ、基材11の上面11aに、抵抗体12を被覆し端子部13を露出するカバー層15を設けることで、ひずみゲージ10が完成する。カバー層15は、例えば、基材11の上面11aに、抵抗体12を被覆し端子部13を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製することができる。カバー層15は、基材11の上面11aに、抵抗体12を被覆し端子部13を露出するように液状又はペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、加熱して硬化させて作製してもよい。
【0052】
[ひずみゲージ10の配線および信号出力]
図5は、電池ユニット1のひずみゲージ10の接続先の回路基板60について説明するブロック図である。
図5を参照するに、ひずみゲージ10(より詳しくは、ひずみゲージ10の端子部13)は、回路基板60に実装されたアナログフロントエンド部61に接続され、アナログフロントエンド部61の出力は、外部出力端子62に接続されている。これにより、ひずみゲージ10の検出した情報(電池本体40の膨張の程度を示す情報)は、外部出力端子62からデジタル信号として出力可能となる。
【0053】
なお、回路基板60に他の機能を有する回路(電子部品等)が搭載されてもよい。他の機能を有する回路とは、例えば、電池本体40の電圧監視回路、保護回路、電流検出回路等である。また、回路基板60の取り付け先は特に限定されない。例えば、回路基板60は、電池ユニット1の近傍に取り付けられる。なお、回路基板60は、回路基板60に含まれる回路の駆動に必要な電源を搭載していてもよいし、別途電源から電気を供給されていてもよい。
【0054】
ひずみゲージ10の1対の端子部13は、例えば、フレキシブル基板やリード線等を用いて、アナログフロントエンド部61に接続されている。
【0055】
アナログフロントエンド部61は、例えば、ブリッジ回路、増幅器、アナログ/デジタル変換回路(A/D変換回路)、外部通信機能(例えば、I2C等のシリアル通信機能)等を備えている。アナログフロントエンド部61は、温度補償回路を備えていてもよい。アナログフロントエンド部61は、IC化されていてもよいし、個別部品により構成されていてもよい。
【0056】
アナログフロントエンド部61では、例えば、ひずみゲージ10の1対の端子部13は、ブリッジ回路に接続される。すなわち、ブリッジ回路の1辺が1対の端子部13間の抵抗体12で構成され、他の3辺が固定抵抗で構成される。これにより、ブリッジ回路の出力として、抵抗体12の抵抗値に対応した電圧(アナログ信号)を得ることができる。
【0057】
ブリッジ回路から出力された電圧は、増幅器で増幅された後、A/D変換回路によりデジタル信号に変換され、外部出力端子62から出力可能とされる。アナログフロントエンド部61が温度補償回路を備えている場合には、温度補償されたデジタル信号が外部出力端子62から出力可能とされる。
【0058】
例えば、電池ユニット1において、電池本体40の寿命の低下等に起因して電池本体40が膨張し、液漏れ等を引き起こす場合がある。そこで、電池ユニット1では電池本体40の膨張を、フィルム層20を介してひずみゲージ10で検出し、検出結果(電池本体40の膨張の程度を示す情報)をアナログフロントエンド部61からのデジタル信号として、外部出力端子62から出力している。
【0059】
例えば、電池ユニット1の外部において、外部出力端子62に充電回路を接続することが可能である。この場合、接続された充電回路は、アナログフロントエンド部61からのデジタル信号に基づいて、充電電流を多くしたり少なくしたりすることができる。又、接続された充電回路は、電池本体40の膨張の程度が許容値を超えていると判定した場合に、充電を停止して警告音を発したり『充電不能』等を表示したりすることができる。
【0060】
又、電池ユニット1の内部にCPU(Central Processing Unit)等を含む制御回路を設けることも可能である。制御回路は、例えば、回路基板60に実装することができる。この場合、例えば、電池本体40の正極側及び/又は負極側のラインに電流遮断スイッチを挿入すると共に、アナログフロントエンド部61が出力するデジタル信号を制御回路に入力する。制御回路は、アナログフロントエンド部61からのデジタル信号に基づいて、電池本体40の膨張の程度が許容値を超えていると判定した場合には、電流遮断スイッチを遮断して電池ユニット1の動作を停止することができる。
【0061】
このように、電池ユニット1では、ひずみゲージ10を設けたことで、電池本体40の膨張の程度を抵抗体12の抵抗値の変化として検出することができる。これにより、電池本体40の膨張の程度に応じて充電電流の多少を制御したり、電池ユニット1の動作を停止したりすることができる。その結果、電池本体40の膨張の程度が許容値を超えている場合に、無理に充電したり、使用を継続したりすることを防止可能となり、電池ユニット1の破損を回避すると共に電池ユニット1の安全性を向上できる。
【0062】
特に、抵抗体12がCr混相膜から形成されている場合は、抵抗体12がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、電池本体40の膨張に対する抵抗値の感度(同一の電池本体40の膨張に対する抵抗体12の抵抗値の変化量)が大幅に向上する。抵抗体12がCr混相膜から形成されている場合、電池本体40の膨張に対する抵抗値の感度は、抵抗体12がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、おおよそ5~10倍程度となる。そのため、抵抗体12をCr混相膜から形成することで、電池本体40の膨張を精度よく検出することが可能となる。
【0063】
又、電池本体40の膨張に対する抵抗値の感度が高いことで、電池本体40の膨張の程度により行う動作を分けることができる。例えば、電池本体40の膨張が小であることを検出した場合には所定の動作を行い、電池本体40の膨張が中であることを検出した場合には他の動作を行い、電池本体40の膨張が大であることを検出した場合には更に他の動作を行うような制御の実現が可能となる。
【0064】
又、電池本体40の膨張に対する抵抗値の感度が高いと、S/Nの高い信号を得ることができる。そのため、アナログフロントエンド部61のA/D変換回路において平均化を行う回数を低減しても精度よく信号検出ができる。A/D変換回路において平均化を行う回数を低減することで、1回のA/D変換に必要な時間を短縮できる。
【0065】
又、抵抗体12がCr混相膜から形成されている場合は、ひずみゲージ10を小型化できるため、小型の電池ユニット1にも使用可能となる。又、ひずみゲージ10を小型化できるため、配置する場所の選択の自由度を向上することが可能となる。
【0066】
≪第2実施形態≫
第1実施形態に係る電池ユニット1では、外装30の開口30hは電池ユニット1の上面に設けられていた。しかしながら、本開示に係る電池ユニットの外装の開口位置は、電池ユニットの上面に限られない。例えば、開口30hは電池ユニット1の下面に設けられていてもよい。また、開口30hは電池ユニット1の側面に設けられていてもよい。
【0067】
図6は、第2実施形態に係る電池ユニットの一例である電池ユニット2を示す図である。電池ユニット2は、ひずみゲージ10と、フィルム層20と、外装130と、電池本体40と、を備える。電池ユニット2における外装130は、側面に開口130hを備える。ひずみゲージ10は、フィルム層20のうち、外装130の開口130hから露出している部分(すなわち、露出面)に貼り付けられる。
【0068】
このように、開口130hの位置が異なる以外は、ひずみゲージ10、フィルム層20、外装130、および電池本体40の積層関係は、電池ユニット1と同様である。また、フィルム層20と外装130の強度が異なる(望ましくは、フィルム層20の方が、強度が小さい)ことも、電池ユニット1と同様である。以上の構成によれば、電池ユニット2は、電池ユニット1と同様に、電池本体40の膨張を精度よく検出することができる。
【0069】
図7は、第2実施形態に係る電池ユニットの他の一例である電池ユニット3を示す図である。電池ユニット3は、電池ユニット2において開口130hが設けられた側面と異なる側面に、外装230の開口230hを備える。ひずみゲージ10は、フィルム層20のうち、外装230の開口230hから露出している部分(すなわち、露出面)に貼り付けられる。外装の開口位置が異なる以外は、電池ユニット3は電池ユニット1および2は同様である。以上の構成によれば、電池ユニット3は、電池ユニット1および2と同様に、電池本体40の膨張を精度よく検出することができる。
【0070】
≪第3実施形態≫
第1~第2実施形態に係る電池ユニット1~3は角形の電池ユニットであった。しかしながら、本開示に係る電池ユニットの形状は角形に限られない。
【0071】
図8は、第3実施形態に係る電池ユニットの一例である電池ユニット4を示す図である。電池ユニット4は、ラミネート型(パウチ型とも称する)の電池ユニットである。電池ユニット4は、ひずみゲージ10と、フィルム層20と、外装330と、電池本体(不図示)と、を備える。また、電池ユニット4は、一対の電極372を備える。外装330のある一面は、開口330hを備える。ひずみゲージ10は、フィルム層20のうち、外装330の開口330hから露出している部分(すなわち、露出面)に貼り付けられる。以上の構成によれば、電池ユニット4は、電池ユニット1~3と同様に、電池本体40の膨張を精度よく検出することができる。
【0072】
≪第4実施形態≫
第1~第3実施形態に係る電池ユニット(すなわち、角型の電池ユニットおよびラミネート型の電池ユニット)の外装は、2層以上から成ってもよい。
【0073】
図9は、第4実施形態に係る電池ユニットの一例である電池ユニット5を示す断面図である。電池ユニット5は、ひずみゲージ10と、フィルム層20と、外装430と、電池本体40と、を備える。また、外装430は、開口430hを有する。外装430は例えば、電池本体40に接している内側の層433と、外気に触れる外側の層432との2層構造から成る。更に言えば、内側の層433の熱収縮率は、外側の層534の熱収縮率よりも大きいことが望ましい。この条件を満たす材料の組み合わせの一例としては、内側の層433の材料が樹脂、外側の層534の材料が金属である場合が挙げられる。
【0074】
上述のように外装の内側(電池本体が存在する側)の層433を、外装の外側の層432よりも熱収縮率の大きい材料とし、以下の手順で電池ユニットを製造することで、電池の膨張をより精度よく検出することができる。
【0075】
まず始めに、電池本体40(および電極70)を外装430で覆って加熱することで、外装430を電池本体40に圧着する。このとき、内側の層433の方が外側の層432よりも熱収縮率が大きいため、内側の層433が電池本体40により密着することとなる。
図9における黒塗りの矢印は、電池本体40に対して外装430が密着することにより生じる圧力(以下、密着圧とも称する)を示す。
【0076】
このように製造された電池ユニット5の電池本体40が膨張すると、外装430およびフィルム層20に対する膨張圧が生じる。
図9における白塗りの矢印は、電池本体40が膨張したときの膨張圧の一例である。前述の通り、電池ユニット5の製造時に、外装430は電池本体40に密着される。そのため、
図9に示すように、密着圧は膨張圧に対する反発力となる。一方、開口430hには外装430が存在しないため、密着圧が生じない(または、生じても外装430が存在する箇所にくらべて、小さい)。したがって、開口430hでは、外装430の存在する箇所に比べ反発力が小さい。ゆえに、電池ユニット5において電池本体40の膨張圧は開口430hに集中することとなる。
【0077】
さらに、開口430hに配されているフィルム層20は外装430よりも強度が小さい(すなわち、よくひずむ)部材である。したがって、集中した膨張圧でフィルム層20が
図9に例示するようにひずみ、ひずみゲージ10がこのひずみを検出することができる。以上の構成によれば、電池本体のより微細な膨張も検出することが可能となる。したがって、電池本体40の膨張をより精度よく検出することができる。
【0078】
≪第5実施形態≫
本開示に係る電池ユニットのフィルム層および/または外装は、その一部が折り重ねられた折り目構造を有していてもよい。以下、第5実施形態に係る電池ユニットとして、フィルム層および/または外装が上記折り目構造を有する電池ユニットについて、いくつか例を挙げて説明する。
【0079】
図10は、第5実施形態に係る電池ユニットの一例である電池ユニット6を示す拡大図である。電池ユニット6は、フィルム層20に換えて、フィルム層120を備える。なお、
図10の例では電池ユニット2の外装130を例にとり説明しているが、電池ユニット6の
図10に示す以外の構成(例えば、電池ユニット6全体の形状、電池本体の大きさおよび形、外装およびフィルム層の材料等)は、前述した第1~第4実施形態のいずれの電池ユニットの構成と同様であってもよい。また、電池本体、フィルム層120、および外装130の積層関係ならびに強度の差異についても、第1~第4実施形態に係る電池ユニット1~5と同様である。
【0080】
フィルム層120は、ひずみゲージ10が貼り付けられる部分に、一部が折り重ねられた折り目構造121を有する。例えば、電池ユニット6の製造時に、フィルム層120を折り畳んで折り目構造121を形成してから電池本体に密着させることで、
図10に示すような構成が可能となる。
【0081】
図10に示す構成によれば、電池本体が膨張すると、開口130hのフィルム層120が他の部位に比べ大きくひずむ。さらに、電池ユニット6の場合、フィルム層120が折り目構造121を有しているため、この折り目が広がることで、フィルム層120のひずみがより大きくなる。したがって、ひずみゲージ10で電池本体のより微細な膨張も検出することが可能となる。ゆえに、電池ユニット6の構成によれば、電池本体の膨張をより精度よく検出することができる。
【0082】
図11は、第5実施形態に係る電池ユニットの他の一例である電池ユニット7を示す拡大図である。電池ユニット7は、外装30に換えて、外装530を備える。外装530は、金属箔等で形成されるフィルム状の外装である。図示の通り、電池ユニット7はフィルム層を有していない。そして、電池ユニット7は、外装530のある一面の一部分において、外装の一部が折り重ねられた折り目構造531を有している。また、電池ユニット7において、ひずみゲージ10は外装530のひずみを検出する。
【0083】
なお、電池ユニット7について、外装530の折り目構造531と、フィルム層を有していないこと以外の構成は、前述した各実施形態のいずれの電池ユニットの構成と同様であってもよい。
【0084】
図11の例では、ひずみゲージ10は、折り目構造531を有する外装530に直接貼り付けられる。外装530は、ひずみゲージ10が貼り付けられる部分に、折り目構造531を有する。例えば、電池ユニット7の製造時に、外装530の一部の箔部分を冗長に構成し、皺が出来るように電池本体に圧着することで、
図11に示すような構成が可能となる。
【0085】
図11に示す構成によれば、電池本体が膨張すると、外装530の折り目構造531の折り目が広がることで、折り目構造531のある部分が、外装530の他の部分よりもひずみがより大きくなる。したがって、この折り目構造531の箇所にひずみゲージ10を配置しておくことで、電池本体の膨張により生じる、外装530のひずみを検出することができる。
【0086】
図12は、第5実施形態に係る電池ユニットの他の一例である電池ユニット8を示す拡大図である。電池ユニット8は外装630を備える。外装630は、外装530と同様、金属箔等で構成されるフィルム状の外装である。また、電池ユニット8は、フィルム層20に換えて、フィルム層220を備える。なお、電池ユニット8の
図12に示す以外の構成(例えば、電池ユニット8全体の形状、電池本体の大きさおよび形、外装およびフィルム層の材料等)は、前述した第1~第4実施形態のいずれの電池ユニットの構成と同様であってもよい。
【0087】
外装630は、開口630hを有する。電池ユニット8は、開口630hにフィルム層220を備える。フィルム層220と外装630の積層関係および強度の差異については、第1~第4実施形態に係る電池ユニット1~5と同様である。
【0088】
図12に示すように、電池ユニット8においては、外装630の一部がフィルム層220の一部とともに織り込まれている。これにより、外装630は一部が折り重ねられた折り目構造631を有し、フィルム層220は一部が折り重ねられた折り目構造221を有する。
【0089】
図12に示す構成によれば、電池本体が膨張すると、開口630hのフィルム層220が他の部位に比べ大きくひずむ。さらに、電池ユニット6の場合、外装630もフィルム層220も折り目構造を有しているため、これらの折り目が広がることで、ひずみゲージ10の配置位置周辺のひずみがより大きくなる。したがって、ひずみゲージ10で電池本体のより微細な膨張も検出することが可能となる。ゆえに、電池ユニット8の構成によれば、電池本体の膨張をより精度よく検出することができる。
【0090】
なお、上記の説明では、電池ユニットの形状として、角形とラミネート型について説明したが、電池ユニットは、例えば、円筒形の形状をしていてもよい。また、円筒形の電池ユニットの場合、外装の開口(すなわち、ひずみゲージ10の貼付け場所)はいずれの面にあってもよいが、円筒の周面にあることがより望ましい。
【0091】
また、電池ユニット1~6および8において、外装の開口の位置(すなわち、ひずみゲージ10の貼付け位置)は、図示の例に限定されない。同様に、電池ユニット7において、外装530の折り目構造531を設ける位置(すなわち、ひずみゲージ10の貼付け位置)は、図示の例に限定されない。
【0092】
例えば、電池本体の膨張による膨張ひずみは、電池ユニットの各面の中央部分の方が各面の角部分よりも大きくなる。したがって、ひずみゲージ10で電池本体の膨張による膨張ひずみを検出したい場合は、外装の開口(または外装530の折り目構造531)を、各電池ユニットの面の中央部分に設け、そこにひずみゲージ10を配置することが望ましい。
【0093】
また例えば、電池本体の膨張により各面の中央部が膨張するとき、電池ユニットの各面の角部分には逆に圧縮ひずみが生じることがある。したがって、ひずみゲージ10でこの圧縮ひずみを検出したい場合は、外装の開口(または外装530の折り目構造531)を、各電池ユニットの面の角部分の近傍に設け、そこにひずみゲージ10を配置することが望ましい。
【0094】
〈第6実施形態〉
以上説明した実施形態およびその変形例では、本開示に係る検出部が、抵抗体を用いたひずみゲージである例について説明した。すなわち、前述の実施形態では、本開示に係る検出部が電気抵抗式の金属ひずみゲージである場合について説明した。しかしながら、本開示に係る検出部は金属ひずみゲージに限定されない。例えば、本開示に係る検出部は、当該ひずみゲージに含まれる検出素子によって、フィルム層または外装のひずみによって引き起こされる磁気変化を検出するひずみゲージであってもよい。
【0095】
具体的には、本開示に係る検出部は、ビラリ現象(後述)を利用した検出素子を含んだひずみゲージであってもよい。また、本開示に係る検出部は、磁気トンネル接合(後述)の構造を有する検出素子を含んだひずみゲージであってもよい。以下、第6実施形態では、ビラリ現象を利用した検出素子を含むひずみゲージについて説明する。また、第7実施形態では、磁気トンネル接合の構造を有する検出素子を含んだひずみゲージについて説明する。
【0096】
なお、本明細書の各実施形態では、同様の機能を有する部材には同様の名称および部材番号を付し、説明を繰り返さないこととする。また、
図13以降の各図面におけるx軸、y軸、およびz軸の方向は、
図13で示したx軸、y軸、およびz軸の方向と同一である。また、以降の説明では、z軸の正方向を「上」、z軸の負方向を「下」と称する。すなわち、以降の説明において「上側」とはz軸の正方向側であり、「上面」はz軸の正方向側にある面を示す。また、「下側」とはz軸の負方向側であり、「下面」とはz軸の負方向側にある面を示す。
【0097】
図13は、第6実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子300の一例を示す図である。
図13の(a)は検出素子300をz軸の正方向から負方向(すなわち、上面から下面側)に見下ろしたときの平面図である。一方、
図13の(b)は、
図13の(a)に示す検出素子300のα-α´直線での断面図を示している。なお、
図13の(a)および(b)では、検出素子300から延びる配線は図示していない。しかしながら、検出素子300には、後述する駆動コイル320と電源とを接続する配線と、感知コイル380によって検出された電流を伝達するための配線が接続されていてもよい。
【0098】
図13の(a)に示す通り、検出素子300は、駆動コイル320と、感知コイル380と、ベース層310とを含む。ベース層310は駆動コイル320および感知コイル380の芯材となる層である。感知コイル380は、ベース層310(より厳密には、後述するベース金属370)の磁化の強さを検出するためのコイルである。駆動コイル320は、磁界を発生させるためのコイルである。検出素子300は、ベース層310を芯材として、感知コイル380が内側、そして駆動コイル320が外側に巻かれた2重構造を有している。なお、駆動コイル320および感知コイル380の材料は、Cu、Ag、Al、およびAu等の導電性金属、ならびに、これらの金属の合金であることが望ましい。また、駆動コイル320および感知コイル380の巻き数および断面積の大きさは、検出素子300に要求されるひずみの検知感度に応じて適宜設計されてよい。
【0099】
後で詳述するが、ベース層310に応力が加わると、ベース層310に含まれるベース金属370(後述)の磁化の強さが変化する。検出素子300は、感知コイル380でこの磁化の強さの変化を検出することによって、ベース層310にかかる応力の強さ(すなわち、ひずみ度合)を特定することができる。
【0100】
図13の(b)の断面図を参照して、検出素子300の構成について更に説明する。なお、
図13の(b)において、駆動コイル320、感知コイル380、および3つの絶縁層340、350、および360はそれぞれ、芯材であるベース金属370を取り囲むように形成されている。すなわち、
図13の(b)において同じ部材番号を付した層は、ベース金属370を取り囲んで繋がっている。
【0101】
ベース金属370は、各種コイルおよび絶縁層の芯材となる部材である。ベース金属370は、例えば略平板状の金属板であってよい。ベース金属370は絶縁層360で取り囲むように被覆されている。ベース金属370は、例えば、センダスト等のFe-Si-Al系合金、および、パーマロイ等のNi-Fe系合金等の軟磁性体材料で構成されることが望ましい。前述のベース層310は、
図13の(b)に示す通り、このベース金属370と絶縁層360から成る。
【0102】
絶縁層360の外側には、絶縁層360を取り囲むように絶縁層350が形成される。そして、絶縁層350の外側には、更に絶縁層340が形成されている。絶縁層350は、感知コイル380を含む層であり、感知コイル380の間隙を絶縁材料で充填した層である。絶縁層340は、駆動コイル320を含む層であり、駆動コイル320の間隙を絶縁材料で充填した層である。絶縁層340、350、および360は、磁界に影響しないドライフィルムまたは感光性ポリイミド等のレジスト硬化物から成ることが望ましい。
【0103】
検出素子300の一面は、
図13の(b)に示すように、基材110に貼り付けられていてよい。基材110は、検出素子300を固定する部材である。基材110は実施形態1にて説明した基材11と同様の構成であってもよい。例えば、基材110は、プラスチックフィルム等で構成されるフレキシブル基板であってよい。また、基材110と前記各実施形態で述べた基材11は同じものであってもよい。検出素子300は基材110を介して、外装の開口部のフィルム層(ただし、電池ユニット7の場合は、外装)に貼り付けられる。なお、検出素子300は、全体として平板または薄膜状の検出素子であってもよい。検出素子300が平板または薄膜状である場合、検出素子300を基材110により容易に貼り付けることができる。また、検出素子300において基材110は必須の構成ではない。例えば、検出素子300に基材110を設けず、検出素子300の下面をフィルム層または外装に直接貼り付けて使用してもよい。
【0104】
本実施形態に係るフィルム層または外装は、基本的には前記各実施形態に係るフィルム層および外装と同様の構成および材料であってよい。しかしながら、本実施形態において、フィルム層および外装は、非磁性体から成ることがより望ましい。
【0105】
次に、検出素子300を用いてひずみを検出する原理を概説する。検出素子300は、磁性体であるベース金属370を含んでいる。電源から駆動コイル320に交流電流が供給されると、駆動コイル320はその周囲に交番磁界を生じさせる。これにより磁界が発生し、ベース金属370は磁化される。この状態で電池本体が膨張すると、外装およびフィルム層にひずみが生じる。ひずみは基材110を伝わり、ベース金属370に応力が加わる。なお、検出素子300を、基材110を介さずにフィルム層または外装に貼り付けている場合は、フィルム層または外装からベース金属370(およびそれを被覆する絶縁層340~360)に直接応力が伝わる。
【0106】
ベース金属370に応力が加わると、その応力に応じてベース金属370の透磁率が変化する。したがって、ベース金属370の磁化の強さ(磁化の程度)が変化する。このように、磁性体に応力がかかると磁性体の透磁率および磁化の強さが変化する現象のことを「ビラリ現象」という。検出素子300の構成によれば、ピックアップコイルである感知コイル380には、ベース金属370の磁化の強さに応じた交流電圧が誘起される。したがって、ビラリ現象の原理に基づけば、この交流電圧の値から、ベース金属370にかかる応力を算出することができる。そして、当該算出した応力から、フィルム層または外装のひずみ度合を特定することができる。なお、検出素子300が
図13の(a)および(b)に示す形状である場合、検出素子300のグリッド方向は、
図13の(a)におけるα-α´方向に等しい。以上説明した原理に基づいて、検出素子300は、フィルム層または外装のひずみを検出することができる。すなわち、検出素子300は、ひずみゲージの検出素子として機能する。
【0107】
なお、駆動コイル320は、感知コイル380の外側、かつ当該感知コイル380が存在している領域全体に、できる限り均一に巻き付けられることが望ましい。これにより、ベース金属370の、感知コイル380が存在する領域全体に、より均一に交番磁界を加えることができる。これにより、ビラリ現象によるベース金属370の磁化の強さの変化をより精密に検出することができる。したがって、検出素子300の性能が向上する。
【0108】
また、絶縁層360は、ベース金属370の全部ではなく一部に形成されていてもよい。例えば、ベース金属370のうち、感知コイル380および駆動コイル320を巻き付ける領域の部分を絶縁層360で覆い、絶縁層360の上から感知コイル380を含む絶縁層350で覆い、更に、絶縁層350の上から駆動コイル320を含む絶縁層340で覆うような構成であってもよい。
【0109】
また、ベース金属370が略平板状である場合、絶縁層360はベース金属370の、コイルを巻く方向のみ取り囲んで形成されていてもよい。すなわち、
図13の(b)において、ベース金属370のx方向の両端部は絶縁層360で覆われていなくてもよい。
【0110】
本実施形態に係る電池ユニットにおいて、フィルム層および/または外装にひずみが生じると、ひずみゲージの基材110(または、検出素子300自体)がひずむ。検出素子300は、このひずみによって生じる磁性変化を、前述のビラリ現象の原理に基づき検出することができる。
【0111】
本実施形態に係る検出素子300を含んだひずみゲージは、前述した各実施形態で示したあらゆる配置パターンで、フィルム層(または外装)に配置可能である。すなわち、本実施形態に係る検出素子300を用いて、電気抵抗式のひずみゲージを用いたときと同様にフィルム層(または外装)のひずみを検出することができる。したがって、本実施形態に係る電池ユニットは、前述の各実施形態に係る電池ユニットと同様の効果を奏する。
【0112】
〈第7実施形態〉
図14は、第7実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例である検出素子500を示す図である。
図15は、第7実施形態に係る検出素子の他の一例である検出素子600を示す図である。また、
図16は、第7実施形態に係る検出素子の更に他の一例である検出素子700を示す図である。
図14~
図16の(a)はそれぞれ、検出素子500、600、および700の斜視図である。
図14~
図16の(b)はそれぞれ、検出素子500、600、および700をz軸の正方向から負方向に見下ろしたときの平面図である。
図14~
図16の(c)は、検出素子500、600、および700の、zx平面に平行な面での断面図である。なお、
図14~
図16のいずれの図も、検出素子から延びる配線は図示していない。しかしながら、これらの検出素子500、600、および700には、後述する上流電極510と電源とを接続する配線と、下流電極520と電源とを接続する配線とが接続されていてもよい。
【0113】
図14~
図16の(a)に示す通り、検出素子500、600、および700は、上流電極510と、下流電極520と、磁性膜550と、絶縁膜540と、を含む。絶縁膜540は、図示のように磁性膜550で挟まれている。この磁性膜550と絶縁膜540によって、磁気トンネル接合が形成される。すなわち、検出素子500、600、および700は、磁気トンネル接合の構造に電極を接続した構造である。
【0114】
なお、検出素子500、600、および700の下面は、第6実施形態に係る基材110と同様の基材に貼り付けられていてもよい。そして、検出素子500は基材を介してフィルム層または外装に貼り付けられてよい。また、検出素子500、600、および700は、全体として平板または薄膜状の検出素子であってもよい。検出素子500、600、および700が平板または薄膜状である場合、検出素子500、600、および700を基材(または、フィルム層もしくは外装)により容易に貼り付けることができる。また例えば、検出素子500、600、および700の下面をフィルム層または外装に直接貼り付けて使用してもよい。
【0115】
磁性膜550は磁性ナノ薄膜である。絶縁膜540は絶縁体のナノ薄膜である。磁気トンネル接合の構造が形成可能であれば、磁性膜550と、絶縁膜540の材料は特に限定されない。例えば、磁性膜550としてコバルト鉄ボロン、または、Fe、Co、Niなどの3d遷移金属強磁性体及びそれらを含む合金等を用いることができる。また、絶縁膜540として、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムや酸化マグネシウム等を用いることができる。
【0116】
上流電極510および下流電極520は、磁気トンネル接合の構造に対し電圧を印加するための電極である。
図14~
図16の例では、電流は上流電極510から下流電極520へと流れる。例えば
図14の(c)の場合、上流電極510と下流電極520の間に電圧を印加すると、電子は上側(z軸正方向側)の磁性膜550から、絶縁膜540を超えて下側(z軸負方向側)の磁性膜550に流れ込む。これは「トンネル効果」と呼ばれている現象であり、電子が絶縁膜540を通過するときの電気抵抗は、「トンネル抵抗」と呼ばれている。なお、
図14~
図16の例では、電極の各部の接合部は、磁気トンネル接合の構造をショートパスする電流が流れない様に端部が処理された構造となっている。
【0117】
ところで、基材110等を介して検出素子500にひずみがかかると、トンネル接合の構造において、磁気変化が起こる。より具体的には、上側と下側の磁性膜550の磁化方向がずれる。このように、上下の磁性膜550の磁化方向がずれると、磁化方向が平行な場合に比べて、トンネル抵抗が大きくなる(トンネル磁気抵抗効果)。したがって、前述の構成を備えた検出素子500では、検出素子500(より厳密には、磁気トンネル接合の部分)のひずみの大きさに応じて、電極間を流れる電流が小さくなる。すなわち、ひずみが大きくなるにつれ、電気抵抗が大きくなる。検出素子500は、このように、印加した電圧に対する電流値に基づきひずみを検出することができる。したがって、検出素子500をフィルム層または外装に貼り付けることによって、フィルム層または外装に生じるひずみを測定することができる。
【0118】
磁気トンネル接合の構造を有する検出素子は、
図14に示した例に限定されない。例えば、
図15および
図16に示すような検出素子600および700を採用することも可能である。
図15に示す検出素子600も、
図16に示す検出素子700も、上流電極510、下流電極520、磁性膜550、および絶縁膜540で構成されること、および、これらの構成によってひずみを検出する原理については、検出素子500と同様である。また、検出素子600および700の基本的な動作についても、検出素子500と同様である。なお、検出素子500、600、および700のグリッド方向は、それぞれ
図14~
図16におけるx軸方向(x軸の正方向およびx軸の負方向)に相当する。
図15に示す検出素子600は図示の通り、上側の磁性膜550と下側の磁性膜550が、一部繋がった構造をしている。すなわち、磁性膜550の一部の領域においてのみ、磁気トンネル接合の構造が形成されており、当該構造においてトンネル磁気抵抗効果が生じる。一方、
図16に示す検出素子700は、基板710を介して基材110に貼り付けられる。
図14~
図16に示すように、検出素子は前述の原理を超えない範囲であれば、要求されるサイズ、耐久性、および検出すべき応力の大きさ等に応じて、適宜その設計が変更されてよい。
【0119】
なお、本実施形態に係るフィルム層および外装は、基本的には前述の各実施形態に係るフィルム層および外装と同様の構成および材料であってよい。しかしながら、本実施形態において、フィルム層および外装は、非磁性体から成ることがより望ましい。例えば、本実施形態に係る外装は、非磁性ステンレスを材料として作製することができる。また、検出素子500、600、および700は素子全体として、フィルム型などの略平板状の形状であってよい。これにより、フィルム層および外装に、検出素子500を容易に貼り付けることができる。また、検出素子500、600、および700は、駆動コイル等、磁気トンネル接合の構造部分に対して、微弱な磁界を印加するための構造を有していてもよい。磁気トンネル接合の構造部分に対して磁界を印加することにより、前述のトンネル磁気抵抗効果をより安定して測定することができるため、安定してひずみを検出することができる。
【0120】
また、検出素子500、600、および700における「上流電極」および「下流電極」は便宜上の名称であり、電流の流れる方向は逆であってもよい。つまり、
図14~
図16で示した検出素子500、600、および700において、下流電極520の方から、上流電極510の方へと電流が流れる設計であってもよい。
【0121】
本実施形態に係る電池ユニットにおいて、フィルム層および/または外装にひずみが生じると、ひずみゲージの基材(または、検出素子500、600、または700自体)がひずむ。検出素子500、600、または700は、このひずみによって生じる磁性変化を、前述のトンネル磁気抵抗効果の原理に基づき検出することができる。
【0122】
本実施形態に係る検出素子500、600、および700を含んだひずみゲージは、前述した各実施形態で示したあらゆる配置パターンでフィルム層(または外装)に配置可能である。すなわち、本実施形態に係る検出素子500、600、および700を用いて、電気抵抗式のひずみゲージを用いたときと同様にフィルム層(または外装)のひずみを検出することができる。したがって、本実施形態に係る電池ユニットは、前述の各実施形態に係る電池ユニットと同様の効果を奏する。
【0123】
〈第8実施形態〉
本開示に係る検出部は、半導体式のひずみゲージ、静電容量式の圧力センサ、または光ファイバ式のひずみゲージであってもよい。また、本開示に係る検出部は、機械式圧力センサ、振動式圧力センサ、または圧電式圧力センサであってもよい。以下、各種ひずみゲージ及び圧力センサの原理を説明する。
【0124】
(半導体式のひずみゲージ)
半導体式のひずみゲージは、半導体の圧抵抗効果を利用してひずみを検出するひずみゲージである。すなわち、半導体式のひずみゲージは、半導体をひずみの検出素子として用いるひずみゲージである。
【0125】
半導体に応力が印加されると、半導体の結晶格子にひずみが生じて半導体中のキャリアの数及び移動度が変化するため、結果として電気抵抗が変化することが知られている。半導体式のひずみゲージは、電気抵抗式の金属ひずみゲージと同様、フィルム層または外装に直接貼り付けて使用することができる。この場合、フィルム層または外装が伸縮すると、貼り付けられた半導体(より詳しくは、半導体の結晶格子)がひずみ電気抵抗が変化する。そのため、当該電気抵抗を測定することでフィルム層または外装のひずみ量を特定することができる。
【0126】
また、半導体式のひずみゲージは、ダイアフラム構造を備えたひずみセンサとして構成することもできる。この場合、ひずみセンサは例えば、非金属のダイアフラム(又は、金属ダイアフラム上に電気絶縁層を形成したもの)と、当該ダイアフラムの上に形成された半導体(例えば、シリコン薄膜の半導体)と、を有する。そして、この様にダイアフラムを含む構造において、ダイアフラムに印加された垂直応力によりダイアフラムがひずむと、半導体の電気抵抗が変化する。そのため、当該電気抵抗を測定することでダイアフラムのひずみ量(ひいては、フィルム層または外装のひずみ量)を特定することができる。
【0127】
(静電容量式の圧力センサ)
静電容量式の圧力センサは、ダイアフラムにかかる圧力を一対の電極の静電容量の変化として計測する圧力センサである。すなわち、静電容量式の圧力センサは、一対の電極を検出素子として用いる圧力センサである。静電容量式の圧力センサは例えば、可動電極としてのダイアフラムと、1つ以上の固定電極と、を備える。ダイアフラムは例えば不純物を含んだシリコン(すなわち、導体として機能するシリコン)等で形成される。
【0128】
ダイアフラムに圧力が印加されると、当該ダイアフラムが変位し、固定電極と可動電極との間の距離が変化する。電極間の静電容量は、電極間媒質の誘電率と電極の面積が一定ならば、電極間の距離に応じて定まることが知られている。したがって、静電容量を計測することで、ダイアフラムの変位量(すなわち、圧力の大きさ)を特定することができる。
【0129】
(光ファイバ式のひずみゲージ)
光ファイバ式のひずみゲージとは、ファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG)が形成されている光ファイバを用いてひずみを検出するひずみゲージである。すなわち、光ファイバ式のひずみゲージは、光ファイバをひずみの検出素子として用いるひずみゲージである。FBGは光ファイバの他の部分とは異なる光の反射を起こす回折格子であり、この格子の一つ一つは一定間隔で形成されている。光ファイバがひずんで伸びると、FBGの格子間隔が広がるため、光ファイバに入射した光(例えば、レーザ光)の反射光の波長が変化する。また、光ファイバがひずんで縮むと、FBGの格子間隔は狭くなるため、ファイバに入射した光(例えば、レーザ光)の反射光の波長が変化する。
【0130】
このような特性を有する光ファイバをフィルム層または外装に貼り付けておき、光ファイバの反射光の波長スペクトルを計測することで、光ファイバのひずみ量(すなわち、フィルム層または外装のひずみ量)を特定することができる。なお、光ファイバ式のひずみゲージは、光ファイバ内で生じるブリルアン散乱光の周波数の変化から当該光ファイバのひずみ量を特定するひずみゲージであってもよい。
【0131】
(機械式圧力センサ)
機械式圧力センサは機械的構造物の変位量を計測することで、当該構造物にかかる圧力を特定するセンサである。機械式圧力センサは、例えば、ばね又は曲げた管を備えており、このばねの伸縮量又は曲げた管の伸縮量を計測する。これらの伸縮量(すなわち、変位量)は、ばね又は曲げた管にかかる圧力の大きさに応じて変化する。したがって、当該伸縮量を計測することで、ばね又は曲げた管にかかる圧力を特定することができる。なお、ばね又は曲げた管の形状や大きさは、機械式圧力センサの取り付け対象の大きさ及び形状に応じて適宜定められてよい。
【0132】
(振動式圧力センサ)
振動式圧力センサは、弾性梁の固有振動数が、当該弾性梁の軸に沿って生じる圧力(すなわち、軸力)によって変化するという現象を利用して圧力を検出するセンサである。振動式圧力センサは、電気抵抗式の金属ひずみゲージと同様、フィルム層または外装に直接貼り付けて使用することができる。また例えば、振動式圧力センサは、基板上に形成されたダイアフラムと、当該ダイアフラムの表面に形成された梁状の振動子と、で構成される圧力センサであってもよい。
【0133】
いずれの場合でも、フィルム層または外装がひずむと、その圧力は直接または間接的に振動子に伝わり、振動子に軸力が生じる。振動子の固有振動数は、軸力に応じて変化する。したがって、振動子の固有振動数を計測することで、電池の膨張により生じるフィルム層または外装に対する圧力の大きさを特定することができる。
【0134】
(圧電式圧力センサ)
圧電式圧力センサとは、圧電素子(ピエゾ素子とも称する)を含んでおり、この圧電素子の特性を用いて圧力を検出するセンサである。圧電素子は、力が加わり変形する(ひずむ)と、その力に応じた起電力を発生する特性を持っている。また、圧電素子は、電圧をかけると、その電圧に応じた力を発生させて伸縮する特性を持っている。
【0135】
圧電式圧力センサは、圧電素子の起電力を測定することで、圧電素子にかかった力(すなわち、圧電素子のひずみ量)を特定することができる。したがって、圧電式圧力センサをフィルム層または外装に貼り付けておくことで、フィルム層または外装のひずみ量を特定することができる。
【0136】
以上の説明の通り、電池ユニットにおいて、半導体式のひずみゲージ、静電容量式の圧力センサ、光ファイバ式のひずみゲージ、機械式圧力センサ、振動式圧力センサ、および圧電式圧力センサを用いた場合でも、前述の各実施形態に係る電池ユニットと同様の効果を得ることができる。
【0137】
以上、好ましい実施形態等について詳説した。しかしながら、本開示に係る電池ユニットは、上述した実施形態および変形例等に限定されない。例えば、上述した実施形態等に係る電池ユニットについて、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0138】
1、2、3、4、5、6、7、8 電池ユニット、10 ひずみゲージ、12 抵抗体、20、120、220 フィルム層、20S 露出面、30、130、230、330、430、530、630 外装、30h、131h、230h、330h、430h、630h 開口、40 電池本体、121、221、531、631 折り目構造、432 外側の層、433 内側の層、500、600、700 検出素子、540 絶縁膜、550 磁性膜