(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014282
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
F03G 3/00 20060101AFI20240125BHJP
F03G 3/08 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F03G3/00 A
F03G3/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116988
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】512091523
【氏名又は名称】JOP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】平野 旬
(57)【要約】
【課題】発電機の発電出力を簡単な構成で安定させることができる、発電装置を提供する。
【解決手段】発電装置10は、重力による位置エネルギを発生させる錘12と、錘12を昇降可能に支持する錘支持部14と、錘12の昇降動作に連動して回転される回転部16と、回転部16の回転エネルギを電気エネルギに変換する発電機18と、駆動部22とを備える。駆動部22は、ウォームギア48によって錘12の降下に伴う回転部16の正方向への回転を抑えつつ、駆動モータ46の回転力によって回転部16を一定の回転速度で正方向へ回転させる。錘12は、錘支持部14のプーリ28に巻き掛けられた線状部材30に接続される。錘12が重力で降下すると、プーリ28が正方向へ回転され、回転部16の回転力が発電機18に与えられる。回転部16は、駆動部22によって一定の低速度で回転されるため、発電機18の発電出力は長時間にわたって安定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重力による位置エネルギを発生させる錘と、
前記錘を昇降可能に支持する錘支持部と、
前記錘の昇降動作に連動して回転される回転部と、
前記回転部の回転エネルギを電気エネルギに変換する発電機と、
駆動モータを有し、前記錘の降下に伴う前記回転部の正方向への回転を抑えつつ、前記駆動モータの回転力によって前記回転部を一定の回転速度で正方向へ回転させる駆動部とを備える、発電装置。
【請求項2】
前記駆動部は、
前記回転部の回転に連動して回転されるウォームホイールと、
前記ウォームホイールに噛み合わされ、前記駆動モータによって回転されるウォームギアとを有する、請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記錘を上昇させる際に前記回転部に逆方向の回転力を付与するように構成される、請求項2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記回転部は、正方向への回転時に前記発電機に対する回転力の伝達を許容し、逆方向への回転時に前記発電機に対する回転力の伝達を遮断するクラッチを有する、請求項3に記載の発電装置。
【請求項5】
前記発電機で生成された電力を蓄電するとともに、蓄電した電力を前記駆動モータに供給する蓄電器を備える、請求項4に記載の発電装置。
【請求項6】
前記錘支持部は、前記回転部に回転力を入力するプーリと、前記プーリに巻き掛けられた線状部材とを有し、
前記線状部材に前記錘が接続される、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項7】
前記錘支持部は、前記回転部に回転力を入力するピニオンと、前記ピニオンに噛み合わされるとともに、前記ピニオンに対して上下方向へ移動可能に構成されたラックとを有し、
前記ラックに前記錘が設けられる、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項8】
2つの前記ラックが、互いに反対側に向けて一体的に形成されるとともに、2つの前記ピニオンが、2つの前記ラックを挟んで互いに対向して設けられる、請求項7に記載の発電装置。
【請求項9】
前記錘は、複数の錘片と、複数の前記錘片を収容する収容空間を構成する収容部とを有する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項10】
前記錘は、金属、石、セラミック、土、コンクリートおよび水からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の位置エネルギを利用して発電する、発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された発電用駆動装置は、バネの弾性力による位置エネルギを利用して発電する従来の発電装置の一例である。この発電用駆動装置は、バネと、バネの弾性力で回転駆動される回転増幅装置と、回転増幅装置の最終段ギアの回転軸に連結された発電機と、回転増幅装置の最終段ギアに噛み合わされたウォームギアと、ウォームギアを回転させるモータとを備えている。バネの復元力が回転増幅装置に入力されると、最終段ギアが回転され、その回転力が発電機に与えられて発電される。このとき、最終段ギアは、ウォームギアの回転速度に応じた速度で回転されるので、ウォームギアの回転速度を制御することによって、最終段ギアの回転速度を制御でき、発電機の発電出力を制御できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された発電用駆動装置では、バネの復元力が回転増幅装置に与えられるので、発電機の発電出力が安定しないという問題があった。つまり、バネの復元力は、きつく巻かれた状態で最大となり、その状態が解除されるにつれて小さくなるため、発電機の発電出力が時間の経過に伴って徐々に小さくなるという問題があった。また、この問題を解決するために、特別な機構を組み込んだ場合には、製造コストが高くなるおそれがあった。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、発電機の発電出力を簡単な構成で安定させることができる、発電装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る発電装置の特徴は、重力による位置エネルギを発生させる錘と、前記錘を昇降可能に支持する錘支持部と、前記錘の昇降動作に連動して回転される回転部と、前記回転部の回転エネルギを電気エネルギに変換する発電機と、駆動モータを有し、前記錘の降下に伴う前記回転部の正方向への回転を抑えつつ、前記駆動モータの回転力によって前記回転部を一定の回転速度で正方向へ回転させる駆動部とを備えることにある。
【0007】
この構成では、錘に作用する重力で回転部が回転されるので、特別な機構を必要とすることなく、回転部の回転力を一定に保持できる。また、駆動部は、錘の降下に伴う回転部の正方向への回転を抑えつつ、駆動モータの回転力によって回転部を一定の回転速度で正方向へ回転させるので、発電機を長時間にわたって一定の回転速度で稼働させることができる。したがって、発電機の発電出力を簡単な構成で長時間にわたって安定させることができる。
【0008】
本発明に係る発電装置の他の特徴は、前記駆動部は、前記回転部の回転に連動して回転されるウォームホイールと、前記ウォームホイールに噛み合わされ、前記駆動モータによって回転されるウォームギアとを有することにある。
【0009】
この構成において、ウォームギアの回転力をウォームホイールに伝達することは可能であるが、ウォームホイールの回転力をウォームギアに伝達することはできない。したがって、ウォームギアを回転部の回転動作に対するストッパとして機能させることが可能であり、回転部の回転速度を簡単に抑えることができる。また、ウォームギアの回転を停止させることによって、回転部の回転を停止させることができるので、発電停止状態における錘が重力で降下することを防止できる。
【0010】
本発明に係る発電装置の他の特徴は、前記駆動部は、前記錘を上昇させる際に前記回転部に逆方向の回転力を付与するように構成されることにある。
【0011】
この構成では、駆動部で回転部を逆方向へ回転させることによって錘を上昇させることができるので、錘を上昇させるための特別な機構を設ける必要がなく、安価に製造できる。
【0012】
本発明に係る発電装置の他の特徴は、前記回転部は、正方向への回転時に前記発電機に対する回転力の伝達を許容し、逆方向への回転時に前記発電機に対する回転力の伝達を遮断するクラッチを有することにある。
【0013】
この構成では、駆動モータの回転力で錘を上昇させる際に、回転部から発電機に対する回転力の伝達を遮断できるので、駆動モータの負担を軽減でき、錘を効率よく上昇させることができる。
【0014】
本発明に係る発電装置の他の特徴は、前記発電機で生成された電力を蓄電するとともに、蓄電した電力を前記駆動モータに供給する蓄電器を備えることにある。
【0015】
この構成では、発電機で生成された電力を駆動モータの電源として有効に利用できる。
【0016】
本発明に係る発電装置の他の特徴は、前記錘支持部は、前記回転部に回転力を入力するプーリと、前記プーリに巻き掛けられた線状部材とを有し、前記線状部材に前記錘が接続されることにある。
【0017】
この構成では、プーリと線状部材(ワイヤ、紐など)とを用いた簡単な機構で錘を昇降させることが可能であり、錘支持部を安価に製造できる。
【0018】
本発明に係る発電装置の他の特徴は、前記錘支持部は、前記回転部に回転力を入力するピニオンと、前記ピニオンに噛み合わされるとともに、前記ピニオンに対して上下方向へ移動可能に構成されたラックとを有し、前記ラックに前記錘が設けられることにある。
【0019】
この構成では、ラックとピニオンとを用いた簡単な機構で錘を昇降させることが可能であり、錘支持部を安価に製造できる。また、線状部材のように、ねじれたり、切断されたりするおそれがないので、長期にわたって安定して使用できる。
【0020】
本発明に係る発電装置の他の特徴は、2つの前記ラックが、互いに反対側に向けて一体的に形成されるとともに、2つの前記ピニオンが、2つの前記ラックを挟んで互いに対向して設けられることにある。
【0021】
この構成では、互いに反対側に向けて一体的に形成された2つのラックが2つのピニオンの間に配置されるので、2つのラックの昇降動作を安定させることができる。また、一方のラックまたは一方のピニオンが損傷した場合でも、他方のラックまたは他方のピニオンが動作する限り、回転部を回転させることができるので、動作の安定性を高めることができる。
【0022】
本発明に係る発電装置の他の特徴は、前記錘は、複数の錘片と、複数の前記錘片を収容する収容空間を構成する収容部とを有することにある。
【0023】
この構成では、収容空間に収容される錘片の数を増減させることによって、錘の重量を簡単に調整できる。
【0024】
本発明に係る発電装置の他の特徴は、前記錘は、金属、石、セラミック、土、コンクリートおよび水からなる群から選択される少なくとも1種を含むことにある。
【0025】
この構成では、入手が容易な材料を適宜選択することによって錘を安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態に係る発電装置(発電停止状態)の構成を示す正面から見た概略図である。
【
図2】第1実施形態に係る発電装置における錘支持部の構成を示す一部を断面にした正面図である。
【
図3】第1実施形態に係る発電装置の「発電状態」を示す図であり、(A)は正面から見た概略図、(B)はブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係る発電装置の「発電準備状態」を示す図であり、(A)は正面から見た概略図、(B)はブロック図である。
【
図5】第2実施形態に係る発電装置の構成を示す正面から見た概略図である。
【
図6】第3実施形態に係る発電装置の構成を示す平面から見た概略図である。
【
図7】第3実施形態に係る発電装置における錘支持部の構成を示す一部を断面にした正面図である。
【
図8】第4実施形態に係る発電装置の構成を示す正面から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る発電装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
(第1実施形態に係る発電装置の構成)
図1は、第1実施形態に係る発電装置10の構成を示す正面から見た概略図である。
図2は、発電装置10における錘支持部14の構成を示す一部を断面にした正面図である。
【0029】
図1に示す発電装置10は、錘12に作用する重力による位置エネルギを利用して発電する装置であり、ビルや山などの高低差を確保できる場所に設置された状態で使用される。つまり、ビルや山などの高所に錘12が持ち上げられることによって、重力による位置エネルギが生成され、この錘12が低所へ降下する際に、重力による位置エネルギが電気エネルギに変換されて、発電出力として取り出される。
【0030】
図1に示すように、発電装置10は、重力による位置エネルギを発生させる錘12と、錘12を昇降可能に支持する錘支持部14と、錘12の昇降動作に連動して回転される回転部16と、発電機18と、蓄電器20と、駆動部22とを備えている。
【0031】
図2に示すように、錘12は、鉄等の金属で直方体状に形成された部材であり、錘12の互いに反対側に位置する2つの側面12a,12bには、水平方向へ延びる回転軸(図示省略)を有する複数のガイドローラ24が設けられている。
【0032】
図2に示すように、錘支持部14は、錘12の昇降動作をガイドするガイド部26と、回転部16(
図1)に回転力を入力するプーリ28と、プーリ28に巻き掛けられた線状部材30とを有している。
【0033】
ガイド部26は、錘12を収容する収容空間Sを構成する箱状の部材であり、ガイド部26の内面には、錘12に設けられたガイドローラ24が接触するガイド面26a,26bが設けられている。プーリ28は、回転部16(
図1)の入力部となる部材であり、ガイド部26の上方において、水平方向へ延びる回転軸32に取り付けられている。つまり、プーリ28は、錘支持部14の部品であると同時に、回転部16の部品でもある。
【0034】
線状部材30は、プーリ28に巻き掛けられた状態で錘12を吊るすことによって、錘12に作用する重力をプーリ28に伝達する部材である。本実施形態の線状部材30は、金属製のワイヤロープであり、線状部材30の一方端部にプーリ28が接続されており、線状部材30の他方端部に錘12が接続されている。なお、線状部材30の種類は、金属製のワイヤロープに限定されるものではなく、例えば、合成樹脂製の紐が用いられてもよい。
【0035】
図1に示す回転部16は、錘12に作用する重力による位置エネルギを回転エネルギに変換する部分であり、プーリ28および回転軸32と、回転軸32に取り付けられた第1スパーギア34と、第1スパーギア34に噛み合わされた第2スパーギア36とを有している。
【0036】
プーリ28および回転軸32は、錘12の昇降動作に連動して回転される。つまり、錘12が降下するとき、プーリ28および回転軸32は正方向へ回転され、錘12が上昇するとき、プーリ28および回転軸32は逆方向へ回転される。
【0037】
第1スパーギア34は、正方向への回転時に発電機18に対する回転力の伝達を許容し、逆方向への回転時に発電機18に対する回転力の伝達を遮断するクラッチ38を内蔵している。つまり、本実施形態の第1スパーギア34は、ワンウェイクラッチ内蔵スパーギアである。したがって、錘12が降下するときには、回転部16の回転力が発電機18に伝達されるが、錘12が上昇するときには、回転部16の回転力が発電機18に伝達されない。
【0038】
第2スパーギア36は、第1スパーギア34の回転力を増速して発電機18に伝達する増速ギアであり、第2スパーギア36の歯数は、第1スパーギア34の歯数よりも少なく定められている。
【0039】
図1に示す発電機18は、回転部16の回転エネルギを電気エネルギに変換する電気機器であり、ハウジング40と、ハウジング40に取り付けられた固定子(図示省略)と、回転軸42と、回転軸42に取り付けられた回転子(図示省略)と、出力端子44とを有している。本実施形態では、発電機18の回転軸42に上記の第2スパーギア36が取り付けられている。
【0040】
蓄電器20は、発電機18で生成された電力を蓄電するとともに、蓄電した電力を駆動モータ46に供給する電気機器であり、発電機18および駆動モータ46に対して電気的に接続されている。発電機18で生成された電力を、出力端子44に接続された外部機器に供給するか、或いは、蓄電器20に蓄電するかは、使用者が操作スイッチ(図示省略)を操作することによって選択される。
【0041】
駆動部22は、錘12の降下に伴う回転部16の正方向への回転を抑えつつ、駆動モータ46の回転力によって回転部16を一定の回転速度で正方向へ回転させる部分である。また、駆動部22は、錘12を上昇させる際に回転部16に逆方向の回転力を付与する部分である。駆動部22は、具体的には、駆動モータ46と、ウォームギア48と、ウォームホイール50と、第3スパーギア52と、第4スパーギア54と、減速機56とを有している。
【0042】
駆動モータ46は、回転部16に付与される回転力を生成する電気機器である。駆動モータ46には、蓄電器20が接続されており、さらに、入力端子58を介して外部電源が接続されている。なお、外部電源は、太陽光、風力および水力などの自然エネルギを利用する発電装置であることが望ましい。
【0043】
駆動モータ46の電源として、蓄電器20を使用するか、或いは、外部電源を使用するかは、使用者が操作スイッチ(図示省略)を操作することによって、或いは、制御装置(図示省略)が制御プログラムを実行することによって選択される。また、駆動モータ46の回転方向や回転速度は、使用者が操作スイッチ(図示省略)を操作することによって、或いは、制御装置(図示省略)が制御プログラムを実行することによって選択される。
【0044】
ウォームギア48は、駆動モータ46の回転軸(図示省略)に接続されており、ウォームホイール50は、ウォームギア48に噛み合わされている。第3スパーギア52は、回転部16の回転軸32に取り付けられており、第4スパーギア54は、第3スパーギア52に噛み合わされている。減速機56は、ウォームホイール50の回転軸50aと第4スパーギア54の回転軸54aとの間に設けられている。減速機56は、回転軸50aの回転力を減速して回転軸54aに伝達できるように構成されている。
【0045】
図1に示すように、回転部16のプーリ28および回転軸32と、駆動部22の第3スパーギア52、第4スパーギア54、減速機56およびウォームホイール50とは、正方向および逆方向において互いに連動して回転される関係にある。一方、ウォームギア48とウォームホイール50とは、ウォームギア48の回転力をウォームホイール50に伝達することはできるが、ウォームホイール50の回転力をウォームギア48に伝達することはできない関係にある。
【0046】
したがって、駆動部22は、回転部16に対して正方向または逆方向の回転力を低速で付与することが可能であり、発電装置10は、駆動モータ46の動作を切り替えることによって、「発電停止状態」、「発電状態」および「発電準備状態」を取ることができる。
【0047】
(第1実施形態に係る発電装置の作動)
図1は、発電装置10の「発電停止状態」を示している。
図3は、発電装置10の「発電状態」を示す図であり、(A)は正面から見た概略図、(B)はブロック図である。
図4は、発電装置10の「発電準備状態」を示す図であり、(A)は正面から見た概略図、(B)はブロック図である。
【0048】
図1に示すように、「発電停止状態」は、錘12を一定の高さで保持する状態である。「発電停止状態」では、駆動モータ46が停止され、ウォームギア48が回転部16の回転動作に対するストッパとして機能する。つまり、錘12に作用する重力で回転部16が回転しようとすると、その動作に連動して駆動部22のウォームホイール50が回転しようとするが、ウォームホイール50はウォームギア48に噛み合って回転しないので、回転部16は回転しない。これにより、プーリ28の回転が阻止され、錘12が一定の高さで保持される。
【0049】
図3(A)に示すように、「発電状態」は、錘12を重力で降下させて発電機18を稼働させる状態である。「発電状態」では、駆動モータ46の回転力によって、回転部16が一定の回転速度で正方向へ回転される。したがって、回転部16の回転力が発電機18に伝達されて、電力が生成される。
図3(B)に示すように、発電機18で生成された電力は、外部機器に供給されてもよいし、蓄電器20に蓄電されてもよい。駆動モータ46は、蓄電器20から供給される電力で駆動されてもよいし、外部電源から供給される電力で駆動されてもよい。
【0050】
図4(A)に示すように、「発電準備状態」は、錘12を上昇させて重力による位置エネルギを生成する途中の状態である。「発電準備状態」では、駆動モータ46が「発電状態」とは逆の方向へ回転され、駆動モータ46の回転力によって、回転部16が逆方向へ回転される。これにより、プーリ28が逆方向へ回転され、線状部材30がプーリ28に巻き取られて、錘12が上昇される。「発電準備状態」では、クラッチ38の作用によって、回転部16の回転力が発電機18に伝達されないため、
図4(B)に示すように、発電機18は稼働されず、電力は生成されない。
【0051】
(実施形態に係る発電装置の効果)
本実施形態によれば、上記構成により以下の各効果を奏することができる。すなわち、錘12に作用する重力で回転部16が回転されるので、特別な機構を必要とすることなく、回転部16の回転力を一定に保持できる。また、駆動部22は、錘12の降下に伴う回転部16の正方向への回転を抑えつつ、駆動モータ46の回転力によって回転部16を一定の回転速度で正方向へ回転させるので、発電機18を長時間にわたって一定の回転速度で稼働させることができる。したがって、発電機18の発電出力を簡単な構成で長時間にわたって安定させることができる。
【0052】
ウォームギア48の回転力をウォームホイール50に伝達することは可能であるが、ウォームホイール50の回転力をウォームギア48に伝達することはできないため、ウォームギア48を回転部16の回転動作に対するストッパとして機能させることが可能であり、回転部16の回転速度を簡単に抑えることができる。また、ウォームギア48の回転を停止させることによって、回転部16の回転を停止させることができるので、発電停止状態における錘12が重力で降下することを防止できる。
【0053】
駆動部22で回転部16を逆方向へ回転させることによって錘12を上昇させることができるので、錘12を上昇させるための特別な機構を設ける必要がなく、安価に製造できる。
【0054】
駆動モータ46の回転力で錘12を上昇させる際には、クラッチ38によって回転部16から発電機18に対する回転力の伝達を遮断できるので、駆動モータ46の負担を軽減でき、錘12を効率よく上昇させることができる。
【0055】
発電機18で生成された電力を蓄電器20に蓄電するとともに、蓄電した電力を駆動モータ46に供給するので、発電機18で生成された電力を有効に利用できる。
【0056】
プーリ28と線状部材30とを用いて錘支持部14を簡単に構成できるので、錘支持部14を安価に製造できる。
【0057】
(変形例)
なお、本発明の実施にあたっては、上記第1実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。すなわち、上記第1実施形態では、錘12が鉄等の金属で形成されているが、錘12の材料は、金属、石、セラミック、土、コンクリートおよび水からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。この構成では、入手が容易な材料を適宜選択することによって、錘12を安価に製造できる。また、上記第1実施形態では、錘12が直方体状に形成されているが、錘12の形状は、球状、円盤状および異形状などであってもよい。この構成では、成形が容易な形状を適宜選択することによって、錘12を安価に製造できる。
【0058】
上記第1実施形態では、錘12が1つの塊状に形成されているが、錘12は、複数の錘片(図示省略)に分割して形成されてもよいし、複数の錘片を収容する収容空間を構成する収容部(図示省略)を有していてもよい。この構成では、収容空間に収容される錘片の数を増減させることによって、錘の重量を簡単に調整できる。
【0059】
上記第1実施形態では、回転部16と発電機18との間で回転力の伝達を遮断する手段として、第1スパーギア34に組み込まれたクラッチ38が用いられているが、このクラッチ38に代えて、メカクラッチや電磁クラッチ(図示省略)が用いられてもよい。
【0060】
上記第1実施形態では、錘12が駆動モータ46の動力で上昇されるが、錘12は人の力で上昇されてもよい。
【0061】
図5は、第2実施形態に係る発電装置60の構成を示す正面から見た概略図である。
図6は、第3実施形態に係る発電装置70の構成を示す平面から見た概略図である。
図7は、第3実施形態に係る発電装置70における錘支持部76の構成を示す一部を断面にした正面図である。
【0062】
上記第1実施形態では、錘12を昇降可能に支持する「錘支持部」として、プーリ28と線状部材30とを有する錘支持部14が用いられているが、「錘支持部」の構成は、適宜変更されてもよい。例えば、
図5に示す第2実施形態に係る発電装置60のように、1つのラック62と1つのピニオン64とを有する錘支持部66が用いられてもよい。また、
図6および
図7に示す第3実施形態に係る発電装置70のように、2つのラック72a,72bと2つのピニオン74a,74bとを有する錘支持部76が用いられてもよい。
【0063】
図5に示すように、第2実施形態に係る発電装置60では、回転部16が、入力部としてのピニオン64を有しており、錘支持部66が、ピニオン64とラック62とを有している。ピニオン64は、回転部16の部品であると同時に、錘支持部66の部品でもある。ラック62は、ピニオン64に噛み合わされるとともに、ピニオン64に対して上下方向へ移動可能に構成されており、ラック62の下端部に錘12が設けられている。したがって、「発電状態」では、錘12およびラック62に作用する重力でピニオン64が正方向へ回転されることによって、発電機18が稼働される。一方、「発電準備状態」では、駆動部22でピニオン64が逆方向へ回転されることによって、錘12およびラック62が上昇される。
【0064】
この構成では、ラック62とピニオン64とを用いた簡単な機構で錘12を昇降させることが可能であり、錘支持部66を安価に製造できる。また、線状部材30のように、ねじれたり、切断されたりするおそれがないので、長期にわたって安定して使用できる。なお、ラック62と錘12とは、互いに一体的に形成されてもよい。
【0065】
図6に示すように、第3実施形態に係る発電装置70では、回転部16が、入力部としての2つのピニオン74a,74bを有しており、錘支持部76が、2つのピニオン74a,74bと2つのラック72a,72bとを有している。2つのピニオン74a,74bは、回転部16の部品であると同時に、錘支持部76の部品でもある。2つのラック72a,72bは、2つのピニオン74a,74bのそれぞれに噛み合わされるとともに、ピニオン74a,74bに対して上下方向へ移動可能に構成されている。そして、2つのラック72a,72bの下端部に錘12が設けられている。
【0066】
図7に示すように、2つのラック72a,72bは、互いに反対側に向けて一体的に形成されており、2つのピニオン74a,74bは、2つのラック72a,72bを挟んで互いに対向して設けられている。
図6に示すように、2つのピニオン74a,74bの回転軸78a,78bには、減速機80a,80bを介して、駆動部22のウォームホイール51a,51bが取り付けられており、一方のウォームホイール51bには、発電機18の回転軸42に取り付けられたスパーギア82が噛み合わされている。
【0067】
この構成では、互いに反対側に向けて一体的に形成された2つのラック72a,72bが2つのピニオン74a,74bの間に配置されているので、2つのラック72a,72bの昇降動作を安定させることができる。また、一方のラック72aまたは一方のピニオン74aが損傷した場合でも、他方のラック72bまたは他方のピニオン74bが動作する限り、回転部16(
図6)を回転させることができるので、動作の安定性を高めることができる。なお、ラック72a,72bと錘12とは、互いに一体的に形成されてもよい。
【0068】
図8は、第4実施形態に係る発電装置84の構成を示す正面から見た概略図である。上記の各実施形態では、駆動部22がウォームホイール50とウォームギア48とを有しているが、「駆動部」の構成は、適宜変更されてもよい。例えば、
図8に示す発電装置84のように、ボールネジ86を有する駆動部88が用いられてもよい。
【0069】
図8に示すように、第4実施形態に係る発電装置84では、ラック62とピニオン64とを有する錘支持部66が用いられている。そして、ラック62に対して平行となるようにボールネジ86のネジ軸86aが設けられており、ラック62の下端部に設けられた錘12の側面には、ネジ軸86aが螺合されるナット86bが取り付けられている。そして、ネジ軸86aの下端部に駆動モータ90の回転軸90aが接続されている。
【0070】
この構成では、ボールネジ86として汎用のボールネジを用いることができるので、駆動部88を安価に製造できる。また、回転部16と駆動部88とが分離されているので、これらの構成を簡素化でき、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0071】
10,60,70,84…発電装置、12…錘、14,66,76…錘支持部、16…回転部、18…発電機、20…蓄電器、22,88…駆動部、24…ガイドローラ、26…ガイド部、28…プーリ、30…線状部材、34…第1スパーギア、36…第2スパーギア、38…クラッチ、46,90…駆動モータ、48…ウォームギア、50…ウォームホイール、52…第3スパーギア、54…第4スパーギア、56…減速機、62,72a,72b…ラック、64,74a,74b…ピニオン、86…ボールネジ。