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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142823
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】物流支援システム、端末
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20241003BHJP
   G08G 1/123 20060101ALI20241003BHJP
   G16Y 40/60 20200101ALI20241003BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20241003BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20241003BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/123 A
G16Y40/60
G16Y20/20
G16Y10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055169
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】504239766
【氏名又は名称】ダイセーエブリー二十四株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】栗脇 悠一
(72)【発明者】
【氏名】佐古 幸友
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA06
2F129CC12
2F129CC15
2F129CC16
2F129CC17
2F129CC25
2F129DD03
2F129DD13
2F129DD14
2F129DD15
2F129DD29
2F129DD36
2F129DD47
2F129DD63
2F129DD64
2F129DD66
2F129EE02
2F129EE54
2F129EE78
2F129EE79
2F129EE80
2F129EE84
2F129FF12
2F129FF15
2F129FF32
2F129FF62
2F129FF63
2F129FF64
2F129FF68
5H181AA15
5H181BB04
5H181FF13
5H181FF27
5H181MA42
(57)【要約】
【課題】CO排出量を考慮した配送ルートの選択を可能にする技術の提供。
【解決手段】対象荷主の荷物の出発地と目的地を含む荷物情報を取得する荷物情報取得部と、複数の荷主の荷物を混載可能に運行する路線を示す路線情報を取得する路線情報取得部と、前記荷物情報と前記路線情報とに基づいて、前記対象荷主の荷物を前記出発地から前記目的地に配送するための配送ルートであって1以上の前記路線の少なくとも一部区間を含んで構成される配送ルートの候補を取得する配送ルート取得部と、前記路線情報に基づいて、前記配送ルートの候補のそれぞれについて推定されるCO排出量を算出する排出量算出部と、算出結果を出力する出力部と、を備える物流支援システムを構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象荷主の荷物の出発地と目的地を含む荷物情報を取得する荷物情報取得部と、
複数の荷主の荷物を混載可能に運行する路線を示す路線情報を取得する路線情報取得部と、
前記荷物情報と前記路線情報とに基づいて、前記対象荷主の荷物を前記出発地から前記目的地に配送するための配送ルートであって1以上の前記路線の少なくとも一部区間を含んで構成される配送ルートの候補を取得する配送ルート取得部と、
前記路線情報に基づいて、前記配送ルートの候補のそれぞれについて推定されるCO排出量を算出する排出量算出部と、
算出結果を出力する出力部と、
を備える物流支援システム。
【請求項2】
前記路線情報は、候補の前記配送ルートを構成する区間毎に、当該区間を担当する配送車両の種類を示す情報を含み、
前記排出量算出部においては、前記区間の前記配送車両の種類に基づいて前記区間のCO排出量が算出され、前記配送ルートを構成する全ての前記区間について算出されたCO排出量が合算されることで、前記配送ルートのCO排出量が算出される、
請求項1に記載の物流支援システム。
【請求項3】
前記荷物情報は、前記対象荷主の荷物の量を含み、
前記排出量算出部においては、前記区間を前記配送車両が走行する場合のCO排出量を前記対象荷主の荷物の量に基づいて按分したCO排出量が、前記区間のCO排出量として算出される、
請求項2に記載の物流支援システム。
【請求項4】
前記路線情報は、前記区間における運転を担当するドライバの運転技術評価を示す情報を含み、
前記排出量算出部においては、前記区間における運転を担当する前記ドライバの前記運転技術評価に基づいて前記区間のCO排出量が算出される、
請求項1または請求項2に記載の物流支援システム。
【請求項5】
前記路線情報は、前記区間の道路特性を示す情報を含み、
前記排出量算出部においては、前記区間の前記道路特性に基づいて前記区間のCO排出量が算出される、
請求項1または請求項2に記載の物流支援システム。
【請求項6】
請求項1に記載の物流支援システムと通信を行い、前記出力部から出力された前記算出結果に基づいて前記配送ルートの候補を表示する端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物流支援システム、端末に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の配送者の中から適切な配送者を選定して物品の配送管理を支援するシステムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7026980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、配送者の選定の際に、CO排出量については考慮されていない。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、CO排出量を考慮した配送ルートの選択を可能にする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、物流支援システムは、対象荷主の荷物の出発地と目的地を含む荷物情報を取得する荷物情報取得部と、複数の荷主の荷物を混載可能に運行する路線を示す路線情報を取得する路線情報取得部と、荷物情報と路線情報とに基づいて、対象荷主の荷物を出発地から目的地に配送するための配送ルートであって1以上の路線の少なくとも一部区間を含んで構成される配送ルートの候補を取得する配送ルート取得部と、路線情報に基づいて、配送ルートの候補のそれぞれについて推定されるCO排出量を算出する排出量算出部と、算出結果を出力する出力部と、を備える。
【0006】
すなわち、物流支援システムでは、配送ルートの候補について推定されるCO排出量が算出され、算出結果が出力される。そのため、算出結果に基づいてCO排出量を考慮した配送ルートの選択を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】物流支援システムの構成を示すブロック図。
図2図2Aは荷物情報の一例を示す図、図2Bから図2Eは路線情報の一例を示す図。
図3図3AはCO排出量係数を説明する図、図3Bは車両の重量および車両に搭載される荷主の荷物の重量の一例を説明する図。
図4図4Aから図4Cは路線と配送ルートの一例を示す図。
図5】算出結果の出力例を示す図。
図6】物流支援処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)物流支援システムの構成:
(2)物流支援処理:
(3)他の実施形態:
【0009】
(1)物流支援システムの構成:
図1は、本発明にかかる物流支援システム10の構成を示すブロック図である。物流支援システム10は、荷主が指定する出発地から目的地まで荷物を配送する配送ルートを提案するためのシステムである。本実施形態において、物流支援システム10には複数の物流会社が参加登録をしており、荷物の配送ルートは、複数の物流会社の路線を組み合わせたルートとなり得る。
【0010】
荷主が荷主端末100を操作して荷物の出発地と目的地を含む荷物情報を入力すると、物流支援システム10は、荷物情報30aを取得し、荷物を出発地から目的地まで配送するための路線や物流拠点を組み合わせた配送ルートの候補を取得する。物流支援システム10は、配送ルートの各候補について、荷主の荷物の配送に関わるCO排出量を算出し、CO排出量が最小の配送ルートを荷主に提案する機能を有する。荷主端末100は、配送ルートの提案を依頼する荷主(対象荷主)が操作する端末であり、PCやタブレット、スマートフォン等で構成される。また、200,300,400は物流支援システム10に参加登録している物流会社各社の担当者がそれぞれ操作する端末であり、PCやタブレット、スマートフォン等で構成される。
【0011】
このような機能を実現するための物流支援システム10の構成について説明する。物流支援システム10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20、記録媒体30、通信部41を備えており、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態において制御部20は、このプログラムとして物流支援プログラム21を実行可能である。通信部41は、他の装置と通信を行う回路を備えており、制御部20は、荷主端末100や物流会社各社の端末(200、300、400)と通信を行うことが可能である。なお、図1に記載されている荷主端末100や、物流会社各社の端末の個数は一例に過ぎない。荷主端末100は、本実施形態における配送ルート提案機能を利用する荷主毎に複数存在しうる。物流会社の端末も、物流支援システム10に参加する物流会社毎に存在しうる。
【0012】
記録媒体30には、荷物情報30aと、路線情報30bが記録される。荷物情報30aは、図2Aに示すように、荷物を識別するための荷物IDと、当該荷物の配送を依頼した荷主を識別するための荷主IDと、荷物の出発地および目的地と、荷物の量と、荷物の出発希望時間帯や到着希望時間帯が含まれている。荷物の量として、本実施形態では例えば重量を想定している。荷物の出発希望時間帯や到着希望時間帯は、任意であり、荷主が希望する場合にいずれか一方あるいは両方が入力される。
【0013】
路線情報30bは、物流支援システム10に配送業務を行う会社として参加する各物流会社の路線を示す情報である。路線情報30bに記録された路線は、複数の荷主の荷物を混載可能に運行される定期便の路線である。路線情報30bは、図2Bに示すように、路線を識別するための路線ID毎に、当該路線の始点・経由地点・終点を示す路線ルート、路線の運転を担当するドライバを示すドライバID、路線の走行に用いられる配送車両を示す配送車両IDが対応付けられた情報である。なお各路線IDの路線ルートには始点となる物流拠点や経由地点となる物流拠点や終点となる物流拠点の到着予定時刻や出発予定時刻が対応付けられている。始点となる物流拠点の出発予定時刻、経由地となる各物流拠点における到着予定時刻や出発予定時刻、終点となる物流拠点の到着予定時刻の時間的な順番は、路線ルートに含まれる各物流拠点の到着順を示している。始点と、経由地の到着順と、終点が同じ路線であっても、出発予定時刻や到着予定時刻が異なる場合はそれぞれの路線に異なる路線IDが付される。
【0014】
本実施形態において、路線ルートに到着順が示された各物流拠点間の詳細な経路は予め決められている。当該経路を示す経路情報(例えば通過順のノードの列)は、例えば図示しない経路探索サーバにおいて探索された経路情報を物流支援システム10が経路探索サーバから取得することで構成されている。
【0015】
また路線情報30bは、図2Cに示すように、各ドライバの運転技術評価値を含んでいる。すなわちドライバIDに対応付けて運転技術評価値が記録されている。運転技術評価値は、運転技術によるCO排出量の差を区別するために設けられる指標である。
【0016】
また路線情報30bは、図2Dに示すように、各配送車両の種類を示す情報を含んでいる。配送車両の種類は、CO排出量の差によって配送車両を区別するために設けられる区分であり、具体的な区分の態様は適宜設計されてよい。例えばガソリン・燃料電池等のようなエネルギー源の種類と車体重量とに応じて配送車両の種類が区分されてもよいし、車種や型式によって配送車両の種類が区分されてもよい。なお図示は省略するが、配送車両の種類に対応付けて、当該配送車両の車体重量Mtruck、最大積載量Mmaxが記録媒体30に記録されている。車体重量Mtruckは荷物が全く積み込まれていない場合の配送車両の重量である。最大積載量Mmaxは、配送車両に積み込むことができる荷物の総重量の最大値である。
【0017】
また路線情報30bには、図2Eに示すように、各物流拠点を結ぶ区間の経路の道路特性を示す情報と、区間長、所要時間等を含んでいる。道路特性は、対象の区間を走行する場合のCO排出量に影響を及ぼす道路の形状などの特性を示す情報である。例えば、予め決めた標準とする道路特性(例えば平坦で定速で走行可能な直線道路)と比較して、走行に際してCO排出量を増加させうる要素(例えば上り坂、カーブ、ストップ&ゴーの発生しやすさ等)の多さや程度を多段階で示す値が道路特性として記録されてもよい。区間長は、対象の区間について予め決められた走行経路の経路長である。所要時間は、当該区間を走行するのに要する時間である。
運転技術評価値や配送車両の種類や物流拠点間の経路の道路特性は、配送ルートの区間毎のCO排出量を算出するためのCO排出量係数cを取得する際に参照される。
【0018】
図3Aは、本実施形態におけるCO排出量係数cを説明するための図である。CO排出量係数cは、単位重量および単位距離当たりのCO排出量である。CO排出量を算出したい区間の区間長をd、荷物を積載した状態の配送車両の重量をMとすると、当該区間のCO排出量Eは、式(1)で算出される。
【数1】
図3Aは、CO排出量係数cが、ドライバの運転技術評価値と配送車両の種類と道路特性とに応じて決定されることを示している。例えば、標準とする運転技術評価値のドライバが標準とする種類の配送車両で標準とする道路特性の道路を走行する場合のCO排出量(単位重量、単位距離)を標準排出量とする。そして、運転技術評価値がVで配送車両の種類がTで道路特性がLC1の場合のCO排出量(単位重量、単位距離)の統計値の標準排出量に対する比率が、運転技術評価値がVで配送車両の種類がTで道路特性がLC1の場合のCO排出量係数cとして記録される。他の条件が同じであれば、運転技術評価値が、運転技術が高いことを示す値であるほど、CO排出量係数cは小さい値となる。また、他の条件が同じであれば、CO排出量が少ない種類の車両であるほど、CO排出量係数cは小さい値となる。また、他の条件が同じであれば、区間の経路の道路特性が、CO排出量が少ないと推定される道路特性であるほど、CO排出量係数cは小さい値となる。
【0019】
物流支援プログラム21を実行することにより、制御部20は、荷物情報取得部21a、路線情報取得部21b、配送ルート取得部21c、排出量算出部21d、出力部21eとして機能する。荷物情報取得部21aの機能により、制御部20は、対象荷主の荷物の出発地と目的地を含む荷物情報を取得する。本実施形態において、荷物の出発地および目的地は、物流支援システム10に参加登録している物流会社の物流拠点であり、発荷主が出発地の物流拠点に荷物を持ち込み、着荷主が物流拠点で荷物を受け取ることを想定している。本実施形態においては、発荷主が配送ルートの提案を依頼する対象荷主である。荷物情報30aには、荷物の出発地および目的地の他に、図2Aに示すように、荷物の量を示す情報が含まれ、出発希望時間帯、到着希望時間帯等も含まれうる。荷物の依頼者である荷主が、例えば物流支援システム10が提供するWEBアプリケーション等を利用して荷主端末100に荷物情報30aを入力すると、荷主端末100は入力された荷物情報30aを物流支援システム10に送信する。制御部20は、荷主端末100から送信された荷物情報30aを取得し記録媒体30に記録する。
【0020】
路線情報取得部21bの機能により、制御部20は、複数の荷主の荷物を混載可能に運行する路線を示す路線情報を取得する。配送業務を行う会社として参加する各物流会社の担当者は、例えば物流支援システム10が提供するWEBアプリケーション等を利用して自社の定期便の路線を示す路線情報30bを、端末(200,300,400)に入力すると、端末は入力された路線情報30bを物流支援システム10に送信する。制御部20は、物流会社の端末から送信された路線情報30bを取得し記録媒体30に記録する。
【0021】
配送ルート取得部21cの機能により、制御部20は、荷物情報30aと路線情報30bとに基づいて、対象荷主の荷物を出発地から目的地に配送するための配送ルートの候補を取得する。配送ルートは、路線情報30bに含まれる1以上の路線の少なくとも一部区間を含んで構成される。本実施形態においては、図2Eに示すように区間毎に、区間長dや所要時間等のコストを示す情報が記録されている。制御部20は、区間毎のコストを参照して出発地の物流拠点から目的地の物流拠点までの間の配送ルートを取得する。制御部20は、物流拠点間の区間を1つのリンクと見なして、ダイクストラ法等により経路探索を行う。制御部20は、探索条件を変更し、各探索条件での探索で得られた配送ルートを取得する。探索条件は、例えば距離優先、時間優先等であってもよいし、積み替え回数の少なさ、料金の少なさ、等であってもよい。また例えば、荷主が指定した到着希望時間帯や出発希望時間帯等の条件を満たす範囲内で出発地を出発する時間帯や目的地に到着する時間帯を変更して探索されてもよい。制御部20は、このようにして得られた複数の配送ルートを配送ルートの候補として取得する。
【0022】
配送ルートは、例えば、路線IDが示す路線ルートのうちの利用する区間を示す物流拠点を通過順に示すことで表現することができる。具体的には例えば、図4Aに示すように物流拠点Pを出発して物流拠点P,Pを経由し物流拠点Pを目的地とする路線#005が存在する場合であって、Pを出発地としてPを目的地とする配送ルートを構成したい場合、制御部20は、その候補の1つとして、路線#005の一部区間であるP-Pによって当該配送ルートを構成することができる。
【0023】
また例えば、図4Bに示すように、物流拠点P,P,Pを通過する路線#006と物流拠点P,P,Pを通過する路線#007が存在する場合であって、Pを出発地としPを目的地とする配送ルートを構成したい場合、路線#006の一部区間であるP-Pと路線#006の一部区間であるP-Pを組み合わせて当該配送ルートを構成することができる。なおこの例では物流拠点Pで荷物が積み替えられることを示している。
【0024】
なお、定期便の路線が利用できない区間について、制御部20は、専用便を作成する。例えば、図4Cに示すように、物流拠点P10,P11を通過する路線#008と、物流拠点P12,P13を通過する路線#009が存在するが、P11とP12を結ぶ路線が存在しない場合であって、出発地がP10で目的地がP13である配送ルートを構成したい場合、制御部20は、P11とP12を結ぶ専用便Xを作成する。専用便は、荷物の配送を依頼した荷主以外の他の荷主の荷物が積み込まれない状態で配送車両が走行する便である。制御部20は、路線#008のP10-P11と専用便Xと路線#009のP12-P13とを組み合わせて当該配送ルートを構成することができる。
なお図4Cに示すように、出発地が定期便の路線の物流拠点であり、目的地が定期便の路線の物流拠点であり、その間に定期便の路線が存在しない場合、例えば次のようにして専用便を取得することができる。例えば制御部20は、出発地を含む前半の配送ルートの終点の物流拠点あるいはその所定個前の物流拠点を専用便の始点候補とし、目的地を含む後半の配送ルートの始点の物流拠点あるいはその所定個後の物流拠点を専用便の終点候補として、始点候補から終点候補までの経路探索を各組み合わせについて行うように図示しない経路探索サーバに依頼し、各組み合わせによる専用便の候補経路を取得する。そして、制御部20は、出発地を含む前半の配送ルート(終点は専用便の始点候補によって異なりうる)と、専用便の候補経路と、目的地を含む後半の配送ルート(始点は専用便の終点候補によって異なりうる)とを組み合わせて構成される配送ルートのうち全体のコストが最小となる配送ルートの専用便の始点候補と候補経路と終点候補を専用便の始点、専用便の経路、専用便の終点として取得する。制御部20は、前半の配送ルートの終点を専用便の始点とし、後半の配送ルートの始点を専用便の終点とする。
【0025】
以上のようにして、複数の配送ルートの候補を取得すると、制御部20は、排出量算出部21dの機能により、路線情報30bに基づいて、配送ルートの候補のそれぞれについて推定されるCO排出量を算出する。本実施形態において、制御部20は、配送ルートを構成する各区間について、CO排出量を算出し、当該配送ルートを構成する全ての区間について算出されたCO排出量を合算することで、当該配送ルートのCO排出量を算出する。各区間のCO排出量Eは、当該区間が専用便である場合は、式(1)を用いて算出される。Mは対象荷主の荷物を積載した状態の当該区間の配送車両の重量である。cは当該区間の配送車両の種類と当該区間における配送車両の運転を担当するドライバの運転技術評価と当該区間の道路特性に応じたCO排出量係数(図3Aを参照)である。専用便の区間の道路特性は、専用便の経路におけるCO排出量を増加させうる要素の多さや程度に基づいて設定される。dは、当該区間の区間長(図2Eを参照)であり、専用便の経路を構成する各リンクの長さの合計値である。
【0026】
各区間のCO排出量Eは、当該区間が専用便でない場合、すなわち、他の荷主の荷物を混載可能に運行される路線である場合、制御部20は、当該区間を配送車両が走行する場合のCO排出量を対象荷主の荷物の量に基づいて按分したCO排出量を、区間のCO排出量として算出する。具体的には、制御部20は、式(2)または式(3)を用いて当該区間のCO排出量Eを算出する。
【数2】
式(2)において、cとdは式(1)と共通である。式(2)において第1項が式(1)と異なる。式(1)において、mは対象荷主の荷物の重量、Mtruckは車体重量、m~mは他の荷主の荷物の重量であり、Nは任意の自然数である(図3Bを参照)。式(2)に示すように、制御部20は、対象荷主の荷物と他の荷主の荷物が積み込まれた状態の配送車両の重量に、対象荷主の荷物の重量が積載される荷物全体に占める割合を乗算することで、区間におけるCO排出量全体に対する対象荷主の負担分に相当するCO排出量Eを算出し、当該区間のCO排出量として算出する。
【0027】
なお、対象荷主の負担分に相当するCO排出量Eは式(3)のように概算で算出されてもよい。式(3)において、Mmaxは配送車両に積み込むことができる荷物の総重量の最大値である。
【数3】
制御部20は、配送ルートを構成する全ての区間について以上のようにして算出されたCO排出量を合算することで、配送ルートの候補のそれぞれについてのCO排出量を算出する。
【0028】
出力部21eの機能により、制御部20は、各配送ルートの候補について算出したCO排出量の算出結果を出力する。本実施形態において、制御部20は、配送ルートの候補毎の算出結果を含み、そのうちCO排出量が最小の配送ルートを最小であることを示す表示データを生成し、対象荷主の荷主端末100に返信する。荷主端末100では表示データに基づいて算出結果が表示される。図5は、このようにして生成された表示データに基づいて荷主端末100にて荷主に通知される算出結果の一例を示す図である。算出結果については、複数の配送ルートの候補のうち最もCO排出量が少ない配送ルートのみが表示されていても良いが、複数の配送ルートのすべてが表示されても良く、複数の配送ルートのうちCO排出量が少ない順の複数もしくは1つのみが表示されても良い。
【0029】
図5の例では、複数の配送ルートの候補のうち最もCO排出量が少ない配送ルートが太枠で示されている。このようにすることで、CO排出量が最小の配送ルートを対象荷主に認識させることができる。また、他の配送ルートについてのCO排出量を通知することで、全ての配送ルートの候補のそれぞれのCO排出量を対象荷主に認識させることができる。さらに、本実施形態によれば、対象荷主の荷物の量に基づいて按分されたCO排出量が算出されるため、対象荷主は自身の荷物の配送分に相当するCO排出量を配送ルート毎に認識することができる。このように、本実施形態によれば、複数の物流会社の路線を組み合わせて構成された配送ルートのいずれかを選択する場合に、対象荷主は、CO排出量を考慮して配送ルートを選択することが可能である。また、各配送ルートについて、経由地の個数や、出発地の出荷時刻や目的地の到着時刻が通知されることにより、対象荷主は、CO排出量を考慮しつつ、経由地の個数や荷物の出荷時刻や到着時刻が最も希望に合う配送ルートを選択することも可能である。なお、さらに配送にかかる費用など他の情報も配送ルート毎に通知されてもよい。
【0030】
(2)物流支援処理:
次に、制御部20が実行する物流支援処理を、図6を参照しながら説明する。物流支援処理は、荷主が荷物の配送ルートの提案を物流支援システム10に依頼する場合に実行される。物流支援処理が開始されると、制御部20は、荷物情報取得部21aの機能により、荷物情報30aを取得する(ステップS100)。すなわち、制御部20は、荷物情報の入力画面の表示データを荷主端末100に送信して荷主端末100に入力画面を表示させ、荷主が入力した荷物情報30aを荷主端末100から取得する。
【0031】
続いて、制御部20は、配送ルート取得部21cの機能により、配送ルートの候補を取得する(ステップS105)。すなわち制御部20は、路線情報30bに記録されている各路線における各区間をリンクと見なして、荷物の出発地から目的地までの経路探索を行って配送ルートの候補を取得する。路線が存在しない区間が存在する場合、制御部20は専用便を生成して出発地から目的地までの配送ルートを構成する。制御部20は探索条件を変更して複数の配送ルートの候補を取得する。
【0032】
続いて、制御部20は、排出量算出部21dの機能により、配送ルートの候補毎にCO排出量を算出する(ステップS110)。すなわち、制御部20は、複数の配送ルートの候補毎に、当該配送ルートを構成する各区間のCO排出量を式(2)または式(3)を用いて算出し(区間が専用便の場合は式(1)を用いて算出)、当該配送ルートの全区間のCO排出量を合算することで、当該配送ルートのCO排出量を算出する。
【0033】
続いて、制御部20は、出力部21eの機能により、算出結果とともに配送ルートを提案する(ステップS115)。すなわち、制御部20は、算出結果を示す表示データを対象荷主の荷主端末100に送信し、荷主端末100において算出結果を表示させる。本実施形態においては、例えば図5に示すように、CO排出量が最小の配送ルートが当該配送ルートのCO排出量とともに通知される。CO排出量が最小でない配送ルートについても当該配送ルートのCO排出量とともに通知される。
【0034】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、物流支援システム10を構成する荷物情報取得部21a、路線情報取得部21b、配送ルート取得部21c、排出量算出部21d、出力部21eの少なくとも一部が複数の装置に分かれて存在していても良いし、21aから21eは1個の装置で実現されてもよい。上述の実施形態の一部の構成が省略されてもよいし、処理の順序が変動または省略されてもよい。
【0035】
荷主が指定する出発地や目的地は、物流拠点以外の地点であってもよい。例えば、出発地は発荷主の施設、目的地は着荷主の施設などであってもよい。このような場合、荷主は、出発地の最寄りの物流拠点を選択し当該物流拠点から集荷されるように構成されてもよい。また、目的地の最寄りの物流拠点を荷主が選択し当該物流拠点から目的地に荷物が配送されるように構成されてもよい。荷主が指定する出発地や目的地が定期便の物流拠点以外の場合、荷主が指定する出発地や目的地と、定期便の路線の最寄りの物流拠点までの間は上述の専用便で配送が行われても良いし、専用便でなくてもよい。
【0036】
上記実施形態においては、荷物を単に出発地から目的地までを配送すればよい例を示したが、出発地から目的地の間に必須経由地点が複数存在していてもよい。その場合、依頼情報には、必須経由地点の情報が含まれる。必須経由地点を予め決められた順序通りに発着する場合、出発地から1番目の必須経由地点までの路線や物流拠点、続く必須経由地点間の路線や物流拠点、最後の必須経由地点から目的地までの路線や物流拠点は、例えばダイクストラ法等によって取得可能である。複数の必須経由地点を巡る順序が決まっていない場合、例えばVRPの手法によって、出発地と複数の必須経由地点と目的地の間の路線や物流拠点を取得可能である。上述の必須経由地点の少なくともいずれかで荷物のピックアップおよびデリバリの少なくとも一方が行われてもよい。
【0037】
荷物の量は、重量で表現されてもよいし、他にも例えば、荷物の体積や、荷物を載せるパレットのサイズおよび個数等で荷物の量が表現されてもよい。
【0038】
配送ルート取得部は、出発地から目的地までの、少なくとも路線の一部区間を利用した配送ルートを取得することができればよく、様々な手法を採用してよい。例えば、配送ルートの探索は、CO排出量に影響を及ぼす道路特性をコストとして用いて行われても良い。
【0039】
排出量算出部は、荷物を積載した車両が配送ルートを走行する場合の全体のCO排出量を算出し、出力する構成であってもよい。対象荷主の荷物の量に基づいて按分した排出量は出力されなくてもよいし、上述の全体のCO排出量と対象荷主の荷物の量に基づいて按分したCO排出量の両方が出力されてもよい。
【0040】
また、上記実施形態においては、単位距離、単位重量当たりのCO排出量係数cに路線の区間の長さと荷物を積載した状態の車両の重量を乗算してCO排出量を算出する構成であったが、各路線について路線全体のCO排出量が予め算出されていてもよい。その場合、路線全体のCO排出量に基づいて対象荷主の荷物の配送分に相当するCO排出量を算出するようにしてもよい。例えば図4Aの例において、路線#005の全体のCO排出量Ewholeが、路線#005を担当する配送車両やドライバや配送車両の最大積載量Mmax等を考慮して予め算出されているとして説明を続ける。対象荷主の荷物の配送に路線#005のP-Pの区間を利用する場合、当該区間における対象荷主の荷物(重量をmとする)の配送分のCO排出量Eは次式(4)によって簡易的に算出することができる。
【数4】
ここで、Dは路線#005の全体距離(路線#005の起点から終点までの距離)であり、dは対象荷主の荷物が移動する距離である。
【0041】
出力部は、配送ルートのCO排出量の算出結果を出力することができればよい。従って、例えば、最もCO排出量の少ない配送ルートのみを対象荷主に対して出力するように構成されてもよい。算出結果の出力は荷主端末に対して行われても良いし、他のシステムに対して行われても良い。出力部から出力された算出結果に基づく情報(配送ルートの候補等)を表示する端末は、荷主端末100に限定されない。当該情報は物流会社各社の端末(200,300,400)やその他の端末において表示されてもよい。
【0042】
上記実施形態では、物流支援システム10から荷主端末100に対してCO排出量の算出値を出力し、その算出値が荷主端末100に表示されるようにした。これに対して、物流支援システム10において、CO排出量の算出値の大きさに応じたレベル分けを行い、そのレベルが荷主端末100に出力されるようにし、そのレベルに合わせて荷主端末100で表示が行われても良い。また、物流支援システム10から出力されたCO排出量の算出値について、荷主端末100側で大きさに応じたレベル分けを行うと共に、そのレベルに合わせた表示を行うようにしても良い。レベルに合わせた表示としては、例えばレベルを数値の大小、もしくは色分けした表示などが挙げられる。また、図5に示した一覧表の形態での表示に限らず、例えば荷主端末100がナビゲーションシステムの経路情報表示を行えるものであれば、複数の配送ルートを地図上に表示しつつ、各配送ルートについてレベルに合せた色分けを行うという形態でも良い。勿論、最もCO排出量の少ない配送ルートのみが経路案内されるようにしても構わない。
【0043】
上記実施形態では、CO排出量を考慮しつつ、経由地の個数や荷物の出荷時刻や到着時刻が最も希望に合う配送ルートを選択すること、さらには配送にかかる費用など他の情報も加味して配送ルートを選択できるようにすることについて説明した。ここでいう他の情報として、NOx排出量を加えることができる。例えば、荷主端末100においてNOx排出量も考慮可能な表示を行い、荷主がNOx排出量も考慮して配送ルートを選択できるようする。NOx排出量の算出方法は、概ねCO排出量の算出方法と同様であり、単位距離、単位重量当たりのCO排出量係数cを単位距離、単位重量当たりのNOx排出量係数に置き換えれば良い。
【0044】
NOx排出量を考慮可能な表示を行う場合、荷主は、複数の配送ルートの候補の中からCO排出量のみに着目して配送ルートを選択することもできるし、CO排出量とNOx排出量の両方を考慮にいれて配送ルートを選択することもできる。表示形態としては、CO排出量とNOx排出量の算出値を直接表示する形態でも良いし、CO排出量とNOx排出量とに重み付けを行った表示を行う形態でも良い。重み付けを行う場合、例えばCO排出量の重み付け係数を高く、それと比較してNOx排出量の重み付け係数を低く設定する。そして、CO排出量やNOx排出量をそれぞれレベルに合せた数値に換算すると共に、各レベルに合せた数値と各排出量の重み付け係数を掛け合わせ、それらの合計値を荷主端末100に表示するなどの表示形態とすることができる。
【0045】
さらに、本発明の手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0046】
10…物流支援システム、20…制御部、21…物流支援プログラム、21a…荷物情報取得部、21b…路線情報取得部、21c…配送ルート取得部、21d…排出量算出部、21e…出力部、30…記録媒体、30a…荷物情報、30b…路線情報、41…通信部、100…荷主端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6