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特開2024-142824電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142824
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置
(51)【国際特許分類】
   H02B 3/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H02B3/00 K
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055170
(22)【出願日】2023-03-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】599063893
【氏名又は名称】株式会社高橋工業
(74)【代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】弁理士法人日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 登
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数のシートから目的のシートを選択的に引き下げられ、上記シートの選択およびその引下げ操作が容易な、電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置を提供すること。
【解決手段】第1表示を有する第1シート40と第2表示を有する第2シート70との内の一つを選択的に引き下げることが可能な安全防護装置100において、筐体110の前板114と底板116との間に前板114側が高く底板116側が低い、傾斜した開口面122を有する開口120を設け、第1シート40と第2シート70とが共に巻き上げられた状態で、第1シート40を引き下げるための第1引出具48と第2シート70を引き下げるための第2引出具78とが共に真下方向よりも前方側に傾斜した状態を維持すると共に、第2引出具78よりも第1引出具48が高い位置に維持される安全防護装置100。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器に取り付けられる筐体は、前板と後板を有し、さらに前記前板側から前記後板側を見た状態での左側に左板を、また右側に右板をそれぞれ有し、さらに底部に底板を有し、
前記筐体は前記前板と前記底板との間に、前記筐体における左右方向に長い形状の開口を有し、
前記電気機器の表面を覆うための第1シート及び第2シートが、前記開口から選択的に引出可能な状態で、前記筐体の内部に備えられ、
前記第1シートには第1表示が設けられ、また前記第2シートには第2表示が設けられ、
前記筐体はその内部に、前記第1シートの一端側から前記第1シートを巻き取るための第1巻取機と、前記第2シートの一端側から前記第2シートを巻き取るための第2巻取機と、を有し、
前記第1シートおよび前記第2シートの幅はそれぞれ前記開口の左右方向の長さより短く、前記第1シートおよび前記第2シートの他端がそれぞれ前記開口から前記筐体の外に突出し、
前記第1シートの前記他端に、前記左右方向における長さが、前記開口の前記左右方向の長さより長い形状を有する第1固定棒が設けられ、
また前記第2シートの前記他端に、前記左右方向の長さが、前記開口の前記左右方向の長さより長い形状を有する、第2固定棒が設けられ、
前記開口は、前記開口の前記左右方向に沿って伸びる前側の端部を形成する前開口端と、前記開口の前記左右方向に沿ってのびる後側の端部を形成する後開口端とを有し、
前記前開口端は、前記前板の下側端部で形成され、前記後開口端は、前記底板の前側端部で形成され、
前記前開口はさらに、前記左右方向において、前記前開口端と前記後開口端とをそれぞれ繋ぐ右開口端と左開口端とを有し、
前記前開口端が、前記後開口端に対して前方向の位置でさらに高い位置に設けられ、前記前開口端と前記後開口端との位置関係により、前記前開口端と前記後開口端とを繋ぐ前記右開口端及び前記左開口端はそれぞれ、その前記前開口端の側の方が、前記後開口端の側に対して高い位置となる状態で傾斜しており、
前記第1シート及び前記第2シートがそれぞれ、前記第1巻取機および前記第2巻取機で巻き取られた状態において、前記第1固定棒と前記第2固定棒がそれぞれその真下方向より前方方向に傾斜した状態で、さらに前記第1固定棒が前記第2固定棒より高い位置に保持され、
前記第1固定棒と前記第2固定棒は、それぞれその下側に、それぞれを引き下げるための第1引出具と第2引出具とを有しており、
前記第1シート及び前記第2シートがそれぞれ巻き取られた状態において、前記第1固定棒の下側に設けられた前記第1引出具と前記第2固定棒の下側に設けられた前記第2引出具とがそれぞれ、その真下方向よりも前記前方の方向に傾斜した状態で保持され、さらに前記第1引出具が前記第2引出具より高い位置に保持される、
ことを特徴とする、電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置において、
前記第1巻取機と前記第2巻取機は、前記筐体内において、前記第1巻取機が前側で前記第2巻取機が後側となる位置関係で、前記筐体の前後方向に沿って並べて配置されており、
前記第1巻取機は、その内部に、前記第1シートに巻取り方向の力を加える第1芯管を有しており、前記第1芯管で前記第1シートを巻き取ることにより、前記第1芯管の外周に、巻き取られた前記第1シートにより、第1ロールが形成され、
前記第2巻取機は、その内部に、前記第2シートに巻取り方向の力を加える第2芯管を有しており、前記第2芯管で前記第2シートを巻き取ることにより、前記第2芯管の外周に、巻き取られた前記第2シートにより、第2ロールが形成され、
前記第1引出具を引き下げることにより、前記第1ロールの前側から、前記開口を介して前記第1シートが前記筐体の外に引き出され、
また前記第2引出具を引き下げることにより、前記第2ロールの前側から、前記開口を介して前記第2シートが引き出され、
次に前記第1シートが前記第1芯管により巻き取られて前記第1固定棒が上昇している状態では、前記第1固定棒と前記開口との間の前記第1シートに対して前記左開口端及び前記右開口端がなす角度が90度より小さく、これにより前記第1固定棒が上昇して前記第1固定棒の両端がそれぞれ前記左開口端および前記右開口端に衝突した状態では、前記第1固定棒に前記前開口端の方向に移動させようとする力が作用し、
また前記第2シートが巻き取られることにより前記第2固定棒が上昇している状態では、前記第2シートは前記後開口端において折れ曲がり、前記第2ロールと前記後開口端との間に位置する前記第2シートと前記底板とのなす角度が90度より小さい角度であり、これにより前記第2固定棒が上昇して前記後開口端に衝突した状態では、前記第2固定棒には前記第2固定棒を前記後開口端に押付けようとする力が作用する、
ことを特徴とする、電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置において、
前記第2シートが巻き取られることにより前記第2固定棒が上昇している状態において、前記第2ロールと前記後開口端との間に位置する前記第2シートと前記筐体の前記底板とのなす角度θ5が75度より小さく、40度より大きい範囲の角度である、
ことを特徴とする、選択的に表示可能な電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置において、
前記開口と前記第1ロールとの間に位置する上昇状態の前記第1シートと、前記開口の前記左開口端あるいは前記右開口端と、のなす角度θ7が、90度より大きい、
ことを特徴とする電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置。
【請求項5】
請求項3に記載の電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置において、
前記開口の前記前開口端を、前記前板を内側に折り返して形成し、
前記開口の前記後開口端を、前記底板を内側に折り返して形成する、
ことを特徴とする電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の内の一に記載の電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置において、
前記第1シートに設けられた前記第1固定棒および前記第2シートに設けられた前記第2固定棒の前記開口からの最大引出し長さが、150cm以上である、ことを特徴とする電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器において、その電気機器に関係する情報を表示することにより人々に注意を喚起するために使用する、電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器に係る情報を表示することにより周囲の人達に注意喚起を行う安全防護装置が以下に記載の特許文献1や特許文献2に開示されている。電気機器において、その見易い面に、その電気機器に関する情報、例えばその機器の点検等を含むその機器の状況に関する情報を記載したシートを下げることにより、人々に注意を喚起することができる。また例えば電気機器が複数個存在する場合に、機器毎に例えば作業状況が異なる場合があり、特定の電気機器に対して、その電気機器に関係する状況を表す情報を、シートを用いて表示することにより、人々により具体的に安全性等に関する注意喚起を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3063735号公報
【特許文献2】登録実用新案第3166488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の安全防護装置を利用して注意喚起を行う電気機器において、その電気機器に関して伝えたい情報が1つに特定されるものではない。その電気機器におけるその時その時の状態等に応じて、伝えたい情報が異なる場合がある。上述した特許文献1や2に記載の安全防護装置では、一枚のシートを下げる構造を備えた安全防護装置である。一枚のシートを下げる構造の安全防護装置でも、安全性の喚起に於いて重要な効果を発揮する。しかし安全性の喚起を促す効果をさらに向上させるには、使用可能なシートを2枚以上有していて、それぞれのシートには異なる情報を表示するようにし、安全防護装置を使用する場合に、表示内容に応じてシートを選択できる構成とすることが望ましい。このようにすることにより、より適切に情報を伝えることができ、注意喚起の効果をより向上することができる。
【0005】
上述の特許文献1や特許文献2に記載されている安全防護装置において、シートの数を一枚から2枚等の複数枚に増やすことは、利用し易さの観点において、新たな課題が出てくる。上記複数のシートを構成する例えば第1シートや第2シートが共に巻き取られた状態である場合に、これらのシートの内の一枚のシートを選択的に引き下げようとした場合に、引き下げ対象のシートの選択操作が新たに必要となる。例えば選択シートの引下げのためにフック付きの引下げ棒を使用する場合に、上記引下げ棒のフックを希望するシートである、第1シートの第1引出具あるいは第2シートの第2引出具に引掛ける操作が、新たに必要となる。
【0006】
上述の希望するシートの引出具に選択的に上記引下げ棒のフックを引っ掛ける操作が簡単にしかも安全に行えることが望ましい。上記安全防護装置は長期間に渡って使用する物であり、使用し易さが重要である。使い勝手が悪い場合には、例えば安全防護装置のシートの引出しのために使用する引下げ棒が、誤って上述の電気機器の表面に接触する可能性が出てくる。上記電気機器に損傷を与えることは絶対に避けなければならない。そのためには、引き下げの操作、例えば上記引下げ棒のフックを、選択した上記シートの引出具に引掛ける操作が、たいへん容易にしかも安全に行えることがたいへん重要である。さらにこのために、上記安全防護装置の構造が複雑になることは、できるだけ避けたい。
【0007】
本発明の目的は、複数のシートの内の目的とするシートを選択的に引き下げることが可能な電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置において、目的とするシートの選択およびその引下げ操作が容易であり、しかもその操作が高い安全性を持って行える、電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置を、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔第1の発明〕
上述した発明の目的を達成する第1の発明は、
電気機器に取り付けられる筐体は、前板と後板を有し、さらに前記前板側から前記後板側を見た状態での左側に左板を、また右側に右板をそれぞれ有し、さらに底部に底板を有し、
前記筐体は前記前板と前記底板との間に、前記筐体における左右方向に長い形状の開口を有し、
前記電気機器の表面を覆うための第1シート及び第2シートが、前記開口から選択的に引出可能な状態で、前記筐体の内部に備えられ、
前記第1シートには第1表示が設けられ、また前記第2シートには第2表示が設けられ、
前記筐体はその内部に、前記第1シートの一端側から前記第1シートを巻き取るための第1巻取機と、前記第2シートの一端側から前記第2シートを巻き取るための第2巻取機と、を有し、
前記第1シートおよび前記第2シートの幅はそれぞれ前記開口の左右方向の長さより短く、前記第1シートおよび前記第2シートの他端がそれぞれ前記開口から前記筐体の外に突出し、
前記第1シートの前記他端に、前記左右方向における長さが、前記開口の前記左右方向の長さより長い形状を有する第1固定棒が設けられ、
また前記第2シートの前記他端に、前記左右方向の長さが、前記開口の前記左右方向の長さより長い形状を有する、第2固定棒が設けられ、
前記開口は、前記開口の前記左右方向に沿って伸びる前側の端部を形成する前開口端と、前記開口の前記左右方向に沿ってのびる後側の端部を形成する後開口端とを有し、
前記前開口端は、前記前板の下側端部で形成され、前記後開口端は、前記底板の前側端部で形成され、
前記前開口はさらに、前記左右方向において、前記前開口端と前記後開口端とをそれぞれ繋ぐ右開口端と左開口端とを有し、
前記前開口端が、前記後開口端に対して前方向の位置でさらに高い位置に設けられ、前記前開口端と前記後開口端との位置関係により、前記前開口端と前記後開口端とを繋ぐ前記右開口端及び前記左開口端はそれぞれ、その前記前開口端の側の方が、前記後開口端の側に対して高い位置となる状態で傾斜しており、
前記第1シート及び前記第2シートがそれぞれ、前記第1巻取機および前記第2巻取機で巻き取られた状態において、前記第1固定棒と前記第2固定棒がそれぞれその真下方向より前方方向に傾斜した状態で、さらに前記第1固定棒が前記第2固定棒より高い位置に保持され、
前記第1固定棒と前記第2固定棒は、それぞれその下側に、それぞれを引き下げるための第1引出具と第2引出具とを有しており、
前記第1シート及び前記第2シートがそれぞれ巻き取られた状態において、前記第1固定棒の下側に設けられた前記第1引出具と前記第2固定棒の下側に設けられた前記第2引出具とがそれぞれ、その真下方向よりも前記前方の方向に傾斜した状態で保持され、さらに前記第1引出具が前記第2引出具より高い位置に保持される、
ことを特徴とする、電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置、である。
【0009】
〔第1の発明の作用効果の説明〕
第1の発明では、前記第1シート及び前記第2シートがそれぞれ、前記第1巻取機及び前記第2巻取機により巻き取られた状態において、前記第1シートや前記第2シートを引き下げるための前記第1引出具や前記第2引出具が真下の方向ではなく、真下方向よりも前方方向に突き出すように傾斜した状態で、保持される。このため、前記第1引出具や前記第2引出具が、前記電気機器の前記表面に対して、前記表面から離れる方向に突き出した状態で保たれる。例えば引下げ棒のフックを第1引出具あるいは第2引出具に選択的に引掛けて引下げようとした場合に、前記第1引出具あるいは前記第2引出具が、前記電気機器の表面から距離的に離れる位置関係になると共に、その突き出し角度が真下方向ではなく、やや前方向に傾斜した方向の角度となる。このため前記フックによる引掛ける操作が容易となる。また前記引出具の前記フックが、前記電気機器の表面方向よりも前記引出具の傾斜角度により、前記表面方向よりも離れる方向となる。これにより前記電気機器の表面に前記フックが接触する危険性を大幅に低減できる。
【0010】
すなわち、前記第1引出具や前記第2引出具が、真下よりやや前方方向に傾斜した状態で維持されているので、例えば前記フックを前記第2引出具に引掛けようとした場合に、前記フックの突き出す方向を、前記傾斜した分、前記電気機器の表面から離れる方向となる。この結果、上述のとおり、前記電気機器の表面と前記フックとの接触の可能性を大幅に低減でき、電気機器の損傷を防止できる。さらに前記第1固定棒と前記第1引出具とが、前記第2固定棒や前記第2引出具に比べてそれぞれ高い位置となり、高さ関係において違いを保つことができる。このことにより、簡単な構造で、前記第1引出具や前記第2引出具の突出方向および高さを異にすることができ、操作性において大きな改善をもたらすと共に、操作の安全性においても大きな改善となる。
【0011】
〔第2の発明〕
第2の発明は、第1の発明の電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置において、
前記第1巻取機と前記第2巻取機は、前記筐体内において、前記第1巻取機が前側で前記第2巻取機が後側となる位置関係で、前記筐体の前後方向に沿って並べて配置されており、
前記第1巻取機は、その内部に、前記第1シートに巻取り方向の力を加える第1芯管を有しており、前記第1芯管で前記第1シートを巻き取ることにより、前記第1芯管の外周に、巻き取られた前記第1シートにより、第1ロールが形成され、
前記第2巻取機は、その内部に、前記第2シートに巻取り方向の力を加える第2芯管を有しており、前記第2芯管で前記第2シートを巻き取ることにより、前記第2芯管の外周に、巻き取られた前記第2シートにより、第2ロールが形成され、
前記第1引出具を引き下げることにより、前記第1ロールの前側から、前記開口を介して前記第1シートが前記筐体の外に引き出され、
また前記第2引出具を引き下げることにより、前記第2ロールの前側から、前記開口を介して前記第2シートが引き出され、
次に前記第1シートが前記第1芯管により巻き取られて前記第1固定棒が上昇している状態では、前記第1固定棒と前記開口との間の前記第1シートに対して前記左開口端及び前記右開口端がなす角度が90度より小さく、これにより前記第1固定棒が上昇して前記第1固定棒の両端がそれぞれ前記左開口端および前記右開口端に衝突した状態では、前記第1固定棒に前記前開口端の方向に移動させようとする力が作用し、
また前記第2シートが巻き取られることにより前記第2固定棒が上昇している状態では、前記第2シートは前記後開口端において折れ曲がり、前記第2ロールと前記後開口端との間に位置する前記第2シートと前記底板とのなす角度が90度より小さい角度であり、これにより前記第2固定棒が上昇して前記後開口端に衝突した状態では、前記第2固定棒には前記第2固定棒を前記後開口端に押付けようとする力が作用する、
ことを特徴とする、電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置である。
【0012】
〔第2の発明の作用効果の説明〕
第2発明の電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置では、前記第1固定棒と前記開口との間に位置する前記第1シートに対して前記左開口端及び前記右開口端が成す角度が90度より小さくなる。このため前記第1固定棒には、前記前開口端の方に向かって上昇させようとする力が生じる。実際に前記第1固定棒が前記前開口端の方向に移動するかどうかは、前記第1固定棒の前記両端と前記左開口端および前記右開口端との間の摩擦力や前記第1シートを巻き上げている力の大きさにより決まる。
【0013】
しかし、前記第1固定棒と前記第2固定棒との間隔が広がる方向に前記力が作用し、前記第1固定棒と前記第2固定棒との間隔が狭くなることが抑制される。このため例えば、前記第1固定棒と前記第2固定棒との間隔が何時の間にか狭くなり、その結果、前記フックがうまく操作できなくなり、前記電気機器の表面を傷つける等のことが生じるなどの問題の発生が抑制される。
【0014】
また前記第2シートには、前記第2芯管により巻取り方向の力が作用し、このため前記第2シートは前記後開口端の方に押し付けられた状態が保持される。このことからも上述したとおり、前記第1固定棒と前記第2固定棒との間隔が、何時の間にか狭くなってしまうことが生じない。また前記第2シートが前記後開口端に常に押し付けられていることで、前記第2固定棒に設けられた前記第2引出具は、真下方向よりも前方方向に傾斜した方向で維持される。例えばフックを備えた引下げ棒を使用する場合に、前記フックを引掛け易い状態となる。さらに上述のように、第2引出具が真下方向より前側に傾斜することにより、前記第2引出具が真下の方向を向く状態に比べて、前記フックの突出方向が前記電気機器の表面から離れた方向に突き出す状態となる。これにより、上記フックが前記電気機器の表面に接触する可能性を大きく低減できる。
【0015】
〔第3の発明〕
第2の発明の電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置において、
前記第2シートが巻き取られることにより前記第2固定棒が上昇している状態において、前記第2ロールと前記後開口端との間に位置する前記第2シートと前記筐体の前記底板とのなす角度θ5が75度より小さく、40度より大きい範囲の角度である、
ことを特徴とする、選択的に表示可能な電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置である。
【0016】
〔第3の発明の作用効果の説明〕
前記第1シートや前記第2シートを引き下げる場合に、前記第1シートや前記第2シートを、電気機器の表面にできるだけ近い位置で、引き下げることができて、さらに電気機器の表面に固定できることが望ましい。前記第1シートあるいは前記第2シートに関するシートの選択状態で、それぞれに設けられた前記第1表示あるいは前記第2表示の表示状態が変わってしまうことは、望ましくない。前記第1表示や前記第2表示の表示状態が変わるのを防ぐとの観点では、前記第1シートや前記第2シートと前記電気機器の前記表面との間の距離が、それぞれのシート毎に大きく変わることが無い方が、好ましい。また前記第1シートや前記第2シートを前記電気機器の前記表面に固定する場合に、前記第1シートや前記第2シートと前記電気機器の前記表面との間の距離が長いと、前記第1シートや前記第2シートを、前記電気機器の前記表面に固定する場合に色々問題が出てくる。
【0017】
しかし一方、前記第1シートや前記第2シートを選択的に引き下げる操作の観点からは、前記第1シートや前記第2シートと前記電気機器の表面との距離が長い方が、すなわち間隔が広い方が、操作し易い。さらに前記第1シートと、前記第2シートと、の間についてみても、前記第1シートと前記第2シートとの間隔が広い方が操作し易い。これらの相反する条件を考慮し、第3の発明では、前記第1シートや前記第2シートを引き下げる前の状態では、前記第1引出具や前記第2引出具ができるだけ前記電気機器の前記表面から離れる状態となるように、前記第1引出具や前記第2引出具は、真下ではなく前方に傾斜して突き出す状態で保持される。また前記第1シートや前記第2シートが巻き取られた状態に維持されている場合に、前記第1引出具や前記第2引出具の距離が、放置状態において何時の間にか縮まることがないように、それぞれの第1固定棒や第2固定棒が保持されることが望ましい。さらに本発明では、前記第1引出具や前記第2引出具の距離が縮まらないように、前記第1固定棒には前記前開口端の方向に移動する力が作用し、一方前記第2固定棒には前記後開口端の方向に移動させる力が作用するようになる。さらに加えて上述したように、上記第1引出具と上記第2引出具とは、高さ方向において異なる位置関係に保持される。
【0018】
選択された後の前記第2シートの引き下げられる前後方向の位置を、選択された後の前記第1シートの引き下げ位置に近づけるためには、前記開口の前記後開口端を前記第1芯管の下部に位置させ、前記第2シートを前記第1シートに近づけることが望ましい。すなわち前記第1シートと前記第2シートとから使用するシートを選択する操作状態では、前記第1引出具や前記第2引出具はできるだけ離れていた方が操作し易い。しかし一旦選択された後では、前記電気機器の前記表面に対する前記第1シートや前記第2シートの位置は、前記電気機器の前記表面に対して、近い位置であることが、表示条件の均一性や前記電気機器の前記表面への固定条件の均一性から、好ましい。前記第2ロールから引き出された前記第2シートを前記後開口端で折り曲げることにより、引き下げ時の前記電気機器の前記表面に対する前記第1シートや前記第2シートの位置を近づけることができる。
【0019】
前記第2ロールと前記後開口端との間に位置する前記第2シートと前記底板とのなす角度が90度では、前記第2固定棒を前記後開口端に接した状態で維持することが確実とはならない。従って前記第2ロールと前記後開口端との間に位置する前記第2シートと前記底板とのなす角度が90度よりできるだけ小さくすることが望ましい。しかし一方、前記第2ロールと前記後開口端との間に位置する前記第2シートと前記底板とのなす角度が小さいと、前記第2シートを上げ下げする状態で、前記第2シートと前記後開口端との間の摩擦力が増大し、前記第2シートの耐久性が問題となる。このため前記第2シートの耐久性の観点からは前記第2ロールと前記後開口端との間に位置する前記第2シートと前記底板とのなす角度ができるだけ大きい方が良い。これらの相反する関係から、前記第2ロールと前記後開口端との間に位置する前記第2シートと前記底板とのなす角度θ5が75度より小さく、40度より大きい角度であることが望ましい。
【0020】
〔第4の発明〕
第4の発明は、第3の発明の電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置において、
前記開口と前記第1ロールとの間に位置する上昇状態の前記第1シートと、前記開口の前記左開口端あるいは前記右開口端と、のなす角度θ7が、90度より大きい、
ことを特徴とする電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置である。
【0021】
〔第4の発明の作用効果の説明〕
第4の発明の作用効果として、上述したように前記第1シートが巻き取られた状態において、前記第1固定棒が前記第2固定棒に対して距離を保つことがたいへん重要である。前記開口と前記第1ロールとの間に位置する前記第1シートと、前記開口の前記左開口端および前記右開口端とのなす角度θ7が、90度より大きい角度となるように前記開口の前記左開口端および前記右開口端を設定することで、前記第1固定棒に前記前開口端の方に移動させようとする力を作用させることができる。
【0022】
例えば日本は地震国であり、安全防護装置に振動が加わることで、前記第1固定棒が前記第2固定棒に近づくなどして、使用し難い状態となることは避けたい。言い換えると、前記第1シートに設けられている前記第1固定棒の前記第1引出具と前記第2シートに設けられている前記第2固定棒の前記第2引出具とが、振動その他色々な予期しない出来事で、互いに近づく状態となることの無いようにすることが重要である。第4発明ではより具体的な条件を明確に規定することで、このような課題を確実に実現することができる。
【0023】
〔第5の発明〕
第5の発明は、第3の発明の電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置において、
前記開口の前記前開口端を、前記前板を内側に折り返して形成し、
前記開口の前記後開口端を、前記底板を内側に折り返して形成する、
ことを特徴とする電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置である。
【0024】
〔第5の発明の作用効果の説明〕
第5の発明では、前記第1シートと前記第2シートとが巻き上げられた状態で、前記第1固定棒が前記前開口端に接し、また前記第2固定棒が前記後開口端に接することにより、前記第1固定棒と前記第2固定棒との間ができるだけ広がるようにしている。これにより、前記第1固定棒や前記第1シートが前記前開口端と接する状態となる可能性が生まれる。また前記第2固定棒や前記第2シートが後開口端と接する状態となる。前記第1固定棒や前記第1シートが前記前開口端と接したとしても、できるだけ傷がつかないことが望ましい。また前記第2固定棒や前記第2シートが後開口端と接しても、きるだけ傷がつかないことが望ましい。この観点から、第5の発明では、前記前開口端は前記前板を内側に折り返して形成している。また前記後開口端は前記底板を内側に折り返して形成している。
【0025】
さらに上述したように、前記開口の開口面を傾斜させていることがたいへん重要である。さらにそれに加えて、前記開口の前記開口面が歪まないことがたいへん重要である。経年変化により前記開口面の傾斜の均一性が損なわれる心配がある。前記均一性が損なわれることにより、上述した効果が損なわれる恐れがある。第5の発明では、前記開口の前記前開口端を、前記前板を内側に折り返して形成しており、さらに前記開口の前記後開口端を、前記底板を内側に折り返して形成している。このように、折り返す形状とすることにより、経年変化による歪みを大きく低減できる。
【0026】
〔第6の発明〕
第6の発明は、第1の発明乃至第5の発明の内の一の発明の電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置において、
前記第1シートに設けられた前記第1固定棒および前記第2シートに設けられた前記第2固定棒の前記開口からの最大引出し長さが、150cm以上である、ことを特徴とする電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、複数のシートに関して選択的に引き出すことがたいへん容易な、電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置を得ることができる。操作が容易であることは単に使いやすい効果を奏するだけでなく、本発明の安全防護装置を使用することにより、使用対象となる電気機器への損傷などを抑制できるなど、大きな課題の解決につながる。具体的な作用効果は、安全防護装置に関する以下に記載の実施例の中で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明が適用された安全防護装置の使用状態を説明する説明図である。
図2図1に記載の説明図の左側面図である。
図3】安全防護装置の内部構造を説明するための説明図である。
図4】安全防護装置に収納されている第2シートを引き出して状態における第1シートと第2シートとの配置関係を説明する説明図である。
図5】第1シートと第2シートとが共に巻き取られた状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下で説明する実施例において、同一符号が付された構成は基本的に同様の構造であり、同様の作用を為し、ほぼ同様の効果を奏する。重複した説明を避けるために、同一符号の構成に関する説明を省略する場合がある。
【0030】
1.電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置100の使用例
図1は、本発明が適用された電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置100の使用状態の一例である。また図2図1に記載の電気機器26の左側面図である。安全防護装置100の使用状態の一例として、電気機器22乃至電気機器26に関する使用例を説明する。電気機器22乃至気機器26において、これらの機器に関係する情報を伝達することにより、周辺の関係者に注意を喚起することができ、しいては安全性を確保することに繋がる。電気機器22乃至気機器26に関係する情報は、特に特定の内容に限るものではなく、伝達が望ましい情報がその対象である。例えば、電気機器が動作中あるいは動作停止中などの情報もあれば、点検中、等の情報もあり、特にその内容は特定されるものではない。しかし、理解し易いように以下では電気機器の点検を例として、本願発明に係る安全防護装置100の使用状態を説明する。ここで図1の電気機器22乃至電気機器26は、例えば一例として、電力設備としての制御盤や配電盤、等の電気機器であると仮定する。電気機器22乃至電気機器26の内、電気機器24と電気機器26が点検対象であり、今実際に点検を行っている電気機器は電気機器26であると仮定する。電気機器24は点検対象であるが現時点ではまだ点検が行われていない状態で、通常運転を継続している状態であると仮定する。
【0031】
電気機器22乃至電気機器26には、それぞれに、例えばそれぞれ電気機器の上部28に、本発明に係る安全防護装置100が支持され固定されている。図2図3図4に記載のように、電気機器26の表面30に対して、安全防護装置100における第1シート40や第2シート70を引き出すための開口120は、電気機器26の表面30から前方に突出した状態となるように、安全防護装置100が固定されている。さらに開口120は、図3図4に基づき以下で詳細に説明するが、水平面に対して前側が高い状態に傾斜しており、前方側の位置に設けられた前開口端124が、後方側に位置する後開口端128より高い位置に設けられている。前開口端124と後開口端128とを繋ぐ面が開口面122となっていて、前側が高くなるように角度θ1の角度で傾斜している。
【0032】
電気機器22を含め電気機器24と電気機器26には、必要に応じていつでも注意を喚起するための表示が可能となるように、電気機器22乃至電気機器26のそれぞれの上部28に安全防護装置100が設けられている。注意喚起の表示を行っていない状態では、電気機器22を例として示すとおり、第1シート40や第2シート70を引き出すための第1引出具48や第2引出具78が、安全防護装置100の前側の下方に突出していて、表示内容が記載された第1シート40あるいは第2シート70は、安全防護装置100の内部に収納されている。
【0033】
図2に記載の、例えば引下げ棒190のフック194を第1引出具48または第2引出具78のどちらか一方に選択的に引掛けて引き下げることにより、図1において、電気機器24あるいは電気機器26に示す如く、第1シート40または第2シート70を下方に引き下げることができる。第1シート40の先端部には磁気材料を含む材料で作られた第1固定棒44が設けられ、同様に第2シート70の先端には磁気材料を含む材料で作られた第2固定棒74が設けられている。第1固定棒44が磁気吸引力により電気機器24の表面30に吸着することにより、あるいは第2固定棒74が磁気吸引力により電気機器24の表面30に吸着することにより、第1シート40または第2シート70が、電気機器の表面30に固定される。図1に示す如く、第1シート40には第1表示42が記載されており、また第2シート70には第2表示72が記載されており、記載内容を考慮して、第1シート40または第2シート70の第1引出具48または第2引出具78を選択的引き下げることにより、目的とする表示を行うことができる。
【0034】
なお図1において、第1シート40を引き下げるための第1引出具48と第2シート70を引き下げるための第2引出具78とを、第1シート40や第2シート70の幅方向である安全防護装置100の左右方向に、互いに重ならないようにずらして配置することが考えられる。しかしこの方法は、引き下げ時の力の掛かり具合がアンバランスとなり、好ましくない。すなわち第1シート40や第2シート70を引き下げる場合に、第1シート40や第2シート70には、以下で説明する第1シート40や第2シート70を巻き上げようとする力が作用している。以下で説明するが、第1シート40や第2シート70を巻き上げようとする力は、図3図4に記載の第1芯管140や第2芯管170が発生する。これらの力に逆らって、第1シート40や第2シート70を引き下げることになる。第1引出具48や第2引出具78の取り付け位置が、第1シート40や第2シート70の幅方向における中心位置からずれていると、第1シート40や第2シート70に作用する引下げ力が片寄ることになる。これは好ましいことではない。耐久性において問題が生じる。さらに第2シート70と後開口端128との間の後述する摩擦抵抗などにおいて、均一性が崩れてしまい、やはり耐久性の観点から好ましくない。
【0035】
図1に記載の電気機器22に示すように、一般的に電気機器22の表面30には、その動作状態を計測するためのメータや操作のための操作手段などの突起物32や突起物33、突起部34が設けられている。図2で示す電気機器26の例では、第2シート70が引き下げられて固定されることにより、これら突起物を覆うように第2シート70が設けられ、第2固定棒74により電気機器26の表面30に固定される。安全防護装置100の内部には、第1シート40や第2シート70を自動的に巻き上げるための第1巻取機150や第2巻取機180が設けられている。従って第1固定棒44あるいは第2固定棒74を電気機器の表面30から外すことにより、第1シート40あるいは第2シート70が自動的に巻き上げられる。さらに他の例として第1シート40あるいは第2シート70の巻上を、ロック式にしても良い。第1シート40あるいは第2シート70を一端少しだけ下側に引くことにより、巻上動作が行われるようにしても良い。
【0036】
図2において、第2固定棒74が電気機器26の表面30から人の手により外されると、第2シート70が図3に記載の第2巻取機180により、自動的に巻き上げられる。この巻上の状態では、第2固定棒74が電気機器26の表面30から外れると特別に手で移動させない限りは、第2シート70は電気機器26の表面30に対して、筐体110の開口120から垂直に下げられた位置関係となる。筐体110の後開口端128が電気機器26の表面30より前方に突出しているので、第2固定棒74が表面30から少し前側に移動する。このため第2固定棒74は、突起部33や突起部34の前方側を移動し、突起部33や突起部34にはぶつからない状態で巻き上げることができる。
【0037】
第1シート40の表面には、第2表示72と異なる表示である運転中と記載された第1表示42が設けられている。このように各安全防護装置100から第1表示42が設けられた第1シート40あるいは第2表示72が設けられた第2シート70を、選択的に引き下げることができ、2種類の表示を選択的に使用することができる。このことにより、作業内容により即した表示内容のシートを用いて対象の電気機器の表面を覆うことができる。より電気機器26の状態に即した情報を表することで、注意喚起を正確に伝達でき、注意喚起の効果を高めることができる。上述したように図2に記載の引下げ棒190はフック194を有しており、第1シート40あるいは第2シート70が巻き上げられた状態である、図1の電気機器22に記載の状態において、第1引出具48または第2引出具78に引下げ棒190のフック194を引っ掛けて引下げ棒190により引掛けた方の第1引出具48または第2引出具78を引き下げることにより、第1表示42または第2表示72を選択的に表示できる。
【0038】
2.安全防護装置100の概要
(1)安全防護装置100の基本構造
図3および図4に、安全防護装置100の内部の構成を示す。また図5に、第1シート40や第2シート70を巻き上げた状態での安全防護装置100を前面側から見た安全防護装置100の正面図を示す。図3および図4では、理解し易いように、安全防護装置100の筐体110の左側の金属板を取り除いたと仮定した場合の状態を記載している。安全防護装置100の筐体110は上板112や前板114、底板116、左側及び右側に位置する横板、背面に位置する後板118を有している。後板118は、簡単に取り外すことが可能であるように作られている。しかし横板は他の板と繋がっており、実際には簡単に取り外すことがではない。図3図4は、あくまでも内部構造の説明のための図である。
【0039】
第1シート40を巻き取るための第1巻取機150が第1支持機構152によって筐体110の上板112の前面側に取り付けられている。また第2シート70を巻き取るための第2巻取機180が第2支持機構182によって筐体110の上板112の背面側に取り付けられている。第1巻取機150と第2巻取機180は、筐体110の内部において、前後方向に並べて配置されている。
【0040】
第1巻取機150にはその内部に第1芯管140が設けられ、また第2巻取機180にはその内部に第2芯管170が設けられている。第1芯管140や第2芯管170はそれぞれ、その内部に、図示していないが、回転力を第1芯管140や第2芯管170に与えるためのバネがそれぞれ配置されている。それぞれのバネにより、第1芯管140には第1シート40を巻き取る方向の力が常に作用し、また第2芯管170には第2シート70を巻き取る方向の力が常に作用している。それぞれのバネの力は安全防護装置100の使用状態に関係なく作用しているので、第1シート40が巻き取られた状態であっても、第1シート40には第1芯管140による巻取り方向への力が作用している。同様に第2シート70には、第2シート70が巻き取られた状態であっても、第2芯管170による巻取り方向への力が作用している。
【0041】
従って、図3図5の状態は、第1シート40や第2シート70が巻き取られた状態を示している。この例では、第1シート40の先端に取り付けられた第1固定棒44が開口120の前板114側の下部に接触した状態で保持されている。なお、破線で示した第1シート40および第1固定棒44は、第1シート40を少し引き出した状態を示している。なお、第1シート40を巻き取っている状態でも、表面30に対してはほぼ同じ位置関係である。第1シート40は少し引き出された後は、開口120の周囲に接触することなく、下方に引き下げることができる。また第1芯管140により第1シート40が引き上げられている状態では、同様に第1シート40が開口120の周囲に触れることなく、図3の点線の位置で引き上げられる。
【0042】
(2)第1シート40や第2シート70の動作説明
開口120の左右方向の長さ、すなわち図3の表から裏に向かう方向の開口120の前開口端124や後開口端128の長さより、第1固定棒44や第2固定棒74の左右方向の長さが長いので、第1シート40や第2シート70が第1巻取機150や第2巻取機180により巻き取られたことにより第1固定棒44や第2固定棒74が上昇しても、開口120を通り抜けることができない。第1固定棒44や第2固定棒74の両端がそれぞれ開口120の左右端部である図5に記載の左開口端127や右開口端126に衝突したあと、接触を維持した状態で、第1シート40や第2シート70の巻取動作が停止する。しかし、第1芯管140や第2芯管170の巻取力が第1シート40や第2シート70にそれぞれ作用し続けているので、第1固定棒44や第2固定棒74は開口120の左右端部に接した状態で、第1固定棒44や第2固定棒74が開口120から下方に下がることがなく、維持される。
【0043】
図3から図5の記載に基づいて具体的に説明する。開口120はその前側の上部に前開口端124を有し、後方側の下部に後開口端128を有している。また図5に記載しているとおり、開口120の左側に左開口端127を有し、右側に右開口端126を有している。開口120の前開口端124が後開口端128に対して高くなっているので、開口面122が水平面に対して角度θ1の角度で傾斜している。開口面122の左右両側の左開口端127や右開口端126も、角度θ1の角度で、前板114側の方が高くなる状態で傾斜している。
【0044】
上述のように、第1シート40が巻き上げられる状態では、図3に示す点線に沿って上昇する。開口120の下側に位置している点線で示す第1シート40と開口面122とのなす角度が、角度θ3である。この角度θ3は90度より小さい角度である。このため第1シート40に設けられた第1固定棒44の両端部が、開口面122の左右に位置する左開口端127や右開口端126に衝突した状態では、第1シート40の他端に設けられた第1固定棒44は真下の方向ではなく、右開口端126や左開口端127の傾斜により、やや前方向を向くことになる。このため第1固定棒44に設けられた第1引出具48は真下ではなく、開口面122に垂直なやや前方向に突き出た角度となる。このことにより、例えば引下げ棒190のフック194を第1引出具48に引掛けようとした場合に、真下方向よりも前方向に突出する状態となるので、フック194を第1引出具48に引掛け易い。配置関係となる。またフック194が第1引出具48にひっかけるためのフック194の突き出し方向が、図3に記載の角度θ3によりさらに電気機器26の表面30からずれた方向となる。これにより、引下げ棒190のフック194が表面30に接触する可能性を大幅に低減できる。
【0045】
また前述の角度θ3により、あるいは開口120と第1ロール144との間の第1シート40と開口面122との傾斜角θ7により、言い換えると開口120と第1ロール144との間の第1シート40と右開口端126や左開口端127との間の傾斜角θ7により、第1固定棒44の両端部が開口面122の両サイドの左開口端127や右開口端126に衝突した時に、第1固定棒44は真下ではなく、前側に傾く。第1固定棒44が前側に傾斜することにより、第1固定棒44に設けられた第1引出具48もまた前側に傾斜し、第1引出具48は真下ではなく前側に突出する。上述したように引下げ棒190のフック194を引っ掛けやすくなる。さらに第1固定棒44の両端部が左開口端127や右開口端126に衝突することにより、第1固定棒44には、前開口端124の方向に移動させようとする力が働く。第1固定棒44が前開口端124の方向に移動するかどうかは、上述の第1固定棒44に作用する力の大きさと、第1固定棒44と左開口端127や右開口端126との間の摩擦力によって決まる。上述の角度θ7が90度を超えてさらに大きい場合、即ち角度θ3が90度より小さい場合、また加えて第1シート40に加わる第1芯管140の巻取力が大きい場合には、第1固定棒44を前開口端124の方向に移動させようとする力が大きくなり、摩擦を上回って第1固定棒44が前開口端124の方に移動する。第1固定棒44が摩擦などの関係から移動しない状態であっても、第1固定棒44には、前開口端124の方に移動させようとする力が作用する。このため第1固定棒44が図3に記載の第2固定棒74に近づくことが無い。すなわち第1引出具48と第2引出具78との間の距離L1が短いと、第1引出具48を引掛けようとするフック194が第2引出具78にも引っかかる可能性が出てくる。しかし角度θ1がゼロ度ではなく、大きい角度となると、これにより第1固定棒44には前開口端124の方向に移動しようとする力が作用するので、第1引出具48と第2引出具78との間の距離L1が維持でき、この距離L1が縮まるのを防止できる。例えば日本は地震が多い、自身による振動が加わっても距離L1が縮まることがない。むしろ第1固定棒44と左開口端127や右開口端126との間の摩擦力により、第1固定棒44が前開口端124の方向に移動できないまま、維持されていた場合であっても、振動により上述の摩擦が低減されると、距離L1が広がる傾向となる。その結果として引下げ棒190のフック194を第1引出具48や第2引出具78に引っ掛けやすい状態となる。その結果、操作のミスが低減され、上記フック194が電気機器26の表面30に接触する、などの事故が発生する可能性を大幅に低減できる。ここで角度θ7は90度より大きいことは当然であるが、上述した効果をより確実に奏するためには100度以上であることが望ましい。言い換えると角度θ3は90度より小さい角度であるが、上述の効果の観点から80度以下が望ましい。
【0046】
第2シート70に関しても同様のことが言える。図4で、第2シート70が巻き上げられ、第2固定棒74が矢印96の方向に移動し、第2固定棒74の左右両サイドが、開口120の左右に位置する左開口端127や右開口端126に衝突すると、後開口端128と第2ロール174との間に位置する第2シート70と底板116と、のなす角度である角度θ5が、90度より小さいので第2固定棒74は後開口端128に押付けられた状態となる。他の考え方で説明すると開口面122の左右両端の左開口端127や右開口端126は角度θ1で傾斜しており、第2固定棒74の両端が左開口端127や右開口端126に衝突した時に第2固定棒74が角度θ1で傾斜する。その結果、第2固定棒74に設けられている第2引出具78は真下ではなく、角度θ1に従って前方側に突き出す状態となる。また角度θ1により第2固定棒74が傾くことにより、図3に記載する距離L2が長くなる。距離L2は電気機器26の表面30と第2引出具78の先端部との間の距離である。図2に示すフック194は第2引出具78の先端部に近い部分を引っ掛けることとなる。このため上述したフック194を第2引出具78に引っ掛けることが容易となる。さらにフック194の突き出す方向が電気機器26の表面30の方向よりも角度θ1により前方向に変わり、フック194が表面30に接触する可能性が大幅に低減される。
【0047】
図5は、安全防護装置100の正面図であり、正面からは第1固定棒44の前面45だけでなく、第1固定棒44の下側面46が見えている。これは第1固定棒44が下向きよりも前方方向に傾いているためである。同様に第2固定棒74の前面75だけでなく下面76が見えている。これは第2固定棒74が下方向よりも前方方向に傾いているためである。これらは、第1引出具48と第2引出具78が前方に突き出す方向に傾斜した状態で保持されていることを表している。本実施例では、引下げ棒190のフック194をより引掛け易い状態で、第1引出具48や第2引出具78が保持される。
【0048】
安全防護装置100は電気機器22や電気機器24、電気機器26の上部に固定されている。第1シート40が設けられた第1固定棒44や、第2シート70に設けられた第2固定棒74の、開口120からの引出し長さは、第1巻取機150cm以上であり、200cmを超える場合が多い。このため、引下げ棒190のフック194を第1引出具48や第2引出具78に引掛ける場合に、下から上を見る状態でフック194を第1引出具48や第2引出具78に引掛ける状態となる。第1引出具48や第2引出具78が真下ではなく、前方に傾斜している方が、第1引出具48や第2引出具78で作られる孔が見易く、引掛けの操作が容易である。このため電気機器26の表面30に上述のフック194が接触するなどのミスが起こり難い。
【0049】
(3)第1巻取機150や第2巻取機180の説明
第1巻取機150と第2巻取機180は安全防護装置100の前後方向に沿って配置されている。前板114の側である筐体110の前側に、第1巻取機150が固定され、後板118の側である後側に第2巻取機180が固定されている。具体的には、図3図4に示す如く、安全防護装置100の上板112に、第1巻取機150が第1支持機構152により支持され固定されている。また第2巻取機180は第2支持機構182により上板112に支持され固定されている。
【0050】
第1巻取機150は、第1シート40を巻き取る為の第1芯管140を備え、第1芯管140は回転可能に、第1芯管140の両端に設けられた第1支持板154により支持されている。第1芯管140の内部には、第1芯管140により第1シート40を巻き取る方向の回転力を与えるための、バネが設けられている。上記バネの最低バネ力を調整するためのバネ力調整ネジ142が設けられており、バネ力調整ネジ142をドライバーで回転し調整することにより、第1芯管140の内部に設けられたバネが第1芯管140に加えるバネ力を調整することができる。第1芯管140には第1シート40の一端が固定され、第1芯管140で第1シート40を巻き取ることにより、第1芯管140の外周に第1シート40による第1ロール144が形成される。第1芯管140の巻取力に逆らって第1引出具48を引き下げることにより、第1ロール144から第1シート40が引き出され、開口120を介して下方に引き下げられる。
【0051】
第2芯管170は、第2シート70を巻き取る為の第2芯管170を備え、第2シート70は回転可能に、第2芯管170の両端に設けられた第2支持板184により支持されている。第2芯管170の内部には、第2芯管170により第2シート70を巻き取る方向の回転力を与えるための、バネが設けられている。上記バネの最低バネ力を調整するためのバネ力調整ネジ172が設けられており、バネ力調整ネジ172をドライバーで回転し調整することにより、第2芯管170の内部のバネが第2芯管170に加えるバネ力を調整することができる。第2芯管170には第2シート70の一端が固定され、第2芯管170で第2シート70を巻き取ることにより、第2芯管170の外周に第2シート70による第2ロール174が形成される。第2芯管170の巻取力に逆らって第2引出具78を引き下げることにより、第2ロール174から第2シート70が引き出され、開口120を介して下方に引き下げられる。
【0052】
(4)前板114の前開口端124の説明
前板114の下側端部である前開口端124が折り曲げられて形成されている。第1シート40が巻き取られた状態で、この実施例では、第1シート40が前開口端124に接して保持される。開口面122が角度θ1で傾斜していて角度θ1が大きいと、第1シート40が前開口端124に接触する可能性が大きくなる。第1シート40の巻取や引出時、あるいは第1シート40を巻き取った状態で保持しているときに、第1シート40と前開口端124が接触する可能性がある。地震等の振動が伴う場合に、第1シート40と前開口端124の接触面が激しくこすれ合う可能性がある。状態前板114の端部125を折り返して前開口端124を形成することで、前開口端124の第1シート40との接触面を大きな径を有する曲面とすることができる。このようにすることで第1シート40が前開口端124と接触し擦れあっても第1シート40に傷がつくのを防止できる。このことは次に説明する後開口端128においても同様である。
【0053】
さらにまた開口120の形が変形すると角度θ1の角度が経年変化で変化したり、開口120が歪む恐れがある。以下で説明するが後開口端128も折返しにより形成されている。前開口端124や後開口端128を折返しの形状とすることで、前開口端124や後開口端128の強度を高めることができ、歪みを防止することができる。このことにより、第1引出具48と第2引出具78との間の距離L1の経年変化を低減でき、角度θ1や角度θ3の経年変化を低減できる。さらにまた前開口端124の形状が曲面となると共にその曲面を形成する半径を大きくできる。そのことで第1シート40の前開口端124との接触部での応力集中を抑制できる。この効果は後開口端128においても同様である。
【0054】
(5)底板116の後開口端128の説明
開口120の端部である後開口端128が、底板116の端部129を後開口端128の位置で折り返すことにより形成されている。後開口端128は第2シート70が引出されるあるいは巻き取られるときに、第2シート70と後開口端128とは接触状態となり、第2シート70の耐久性に影響する。この実施例では後開口端128を折り曲げて形成する構造とすることで、第2シート70が後開口端128との摩擦により損傷するのを大幅に低減することができる。さらに上述したように後開口端128に歪が生じると、第2シート70と後開口端128との接触状態が不均一となり、第2シート70が摩耗する要因となる。このため経年変化による後開口端128の変形を防止することが望ましい。前開口端124や後開口端128を折り曲げ構造とすることで、開口120の強度が増し、後開口端128と第2シート70との接触面の経年変化による変形を防止できる。また後開口端128を、底板116の端部129の近傍を折り曲げて形成することで、後開口端128の曲面の半径を大きくできる。このことにより、第2シート70と後開口端128との間で発生する接触圧が集中するのを低減できる。このことは後開口端128の摩耗や傷付きの抑制につながる。結果的に耐久性が増大する。後開口端128における底板116の前端部の折り曲げ角度θ6を大きくすることで、後開口端128での第2シート70との接触部分の損傷を押さえることができる。従って底板116の後開口端128における折り曲げ角度θ6は、底板116と第2シート70とのなす角度θ5に近い角度が望ましい。
【0055】
本実施例では、後開口端128を第1芯管140の下方向の位置に設けている。後開口端128の位置を前板114に近づけると、第1シート40と第2シート70とを近づけることができ、図3に記載の距離L2と距離L3とを近づけることができる。このような配置により、第2シート70あるいは第1シート40が開口120から引き出された状態での電気機器26の表面30に対する第2シート70あるいは第1シート40の位置関係を近づけることができる。第1表示42や第2表示72の表示位置の条件が同じくなることでのメリットがある。しかし、第1シート40あるいは第2シート70と、電気機器26の表面30との距離を同じくすると、これに伴い新たな問題点が出てくる。問題点の一つは、図4に記載の角度θ5が小さくなり過ぎることである。ここでθ5は、後開口端128と第2ロール174との間に存在する第2シート70と底板116とに基づく角度である。角度θ5が小さくなると第2シート70の折れ曲がりの角度が鋭角となり、第2シート70は損傷を受けやすくなる。角度θ5が90度あるいはそれ以上であると第2シート70が後開口端128に接触しなくなり、巻き取られた状態での第2固定棒74の前後方向の位置が定まらなくなる。巻き取られた状態で第2固定棒74が後開口端128に接触した状態で維持されることが望ましい。これらの事から角度θ5は90度よりも小さい方ことが望ましいが、上述のとおり角度θ5が小さくなるに従って、第2シート70の後開口端128における曲げ応力が集中することになり、損傷を受けやすくなる。従って角度θ5に関して望ましい範囲が存在する。角度θ5の望ましい範囲は40度より大きい角度であり、75度より小さい角度である。
【0056】
上述したように、第1固定棒44や第2固定棒74がそれぞれ巻き取られて、開口120に保持された状態では、図3に示す第1引出具48と第2引出具78との間の距離L1が長い方が、第1引出具48や第2引出具78にフック194を引掛け易い。少なくとも第1引出具48と第2引出具78との間の距離L1が縮まらないことが望ましい。このためには、開口120と前板114との間に位置する上昇状態での第1シート40と、開口120の左開口端127および右開口端126とのなす角度θ7が、90度より大きいことがのぞましい。できれば110度以上であることが望ましい。
【0057】
3.上述した実施例における特徴及び作用効果の整理
(1)上述した実施例の特徴1およびその作用効果
〔特徴1の説明〕
上記実施例の電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置100の特徴1は、
電気機器22から電気機器26に取り付けられるための筐体110を有し、
筐体110は、前板114や後板118を有し、さらに前板114側から後板118側を見た状態での左側に左板113を、また右側に右板115をそれぞれ有し、さらに底部に底板116を有し、
筐体110は前板114と底板116との間に、筐体110における左右方向に長い形状の開口120を有し、
前記電気機器の表面30を覆うための第1シート40及び第2シート70が、開口120から選択的に引出可能な状態で、筐体110の内部に備えられ、
第1シート40には第1表示42が設けられ、また第2シート70には第2表示72がもうけられ、
筐体110はその内部に、第1シート40の一端側から第1シート40を巻き取るための第1巻取機150と、第2シート70の一端側から前記第2シート70を巻き取るための第2巻取機180と、を有し、
第1シート40および第2シート70の幅はそれぞれ開口120の左右方向の長さより短く、第1シート40および第2シート70の他端がそれぞれ開口120から筐体110の外に突出し、
第1シート40の他端に、左右方向における長さが、開口120の左右方向の長さより長い形状を有する第1固定棒44が設けられ、
また第2シート70の他端に、左右方向の長さが、開口120の左右方向の長さより長い形状を有する、第2固定棒74が設けられ、
開口120は、開口120の左右方向に沿って伸びる前側の端部を形成する前開口端124と、開口120の左右方向に沿って伸びる後側の端部を形成する後開口端128とを有し、
前開口端124は、前板114の下側端部で形成され、後開口端128は、底板116の前側端部で形成され、
前開口端124はさらに、左右方向において、前開口端124と後開口端128とをそれぞれ繋ぐ右開口端と左開口端とを有し、
前開口端124が、後開口端128に対して前方向の位置でさらに高い位置に設けられ、前開口端124と後開口端128とを繋ぐ右開口端126及び左開口端127はそれぞれ、その前開口端124の側の方が、後開口端128の側に対して高い位置となる状態で傾斜しており、
第1シート40及び第2シート70がそれぞれ、第1巻取機150とおよび第2巻取機180で巻き取られた状態において、第1固定棒44と第2固定棒74がそれぞれその真下方向より前方方向に傾斜した状態であり、さらに第1固定棒44が第2固定棒74より高い位置に保持され、
第1固定棒44と第2固定棒74は、それぞれその下側に、それぞれを引き下げるための第1引出具48と第2引出具78とを有しており、
第1シート40及び第2シート70がそれぞれ巻き取られた状態において、第1固定棒44の下側に設けられた第1引出具78と第2固定棒74の下側に設けられた第2引出具78とがそれぞれ、その真下方向よりも前方方向に傾斜した状態で保持され、さらに第1引出具48が第2引出具78より高い位置に保持される、
ことである。
【0058】
〔上述した特徴1による作用効果の説明〕
特徴1の構成では、第1シート40及び第2シート70がそれぞれ、第1巻取機150及び第2巻取機180により巻き取られた状態において、第1シート40や第2シート70を引き下げるための第1引出具48や第2引出具78が真下の方向ではなく、真下方向よりも前方方向に突き出すように傾斜した状態で、保持される。このため、第1引出具48や78第2引出具が、電気機器26の表面30に対して、表面30から離れる方向に突き出した状態で保たれる。例えば引下げ棒190のフック194を第1引出具48あるいは第2引出具78に選択的に引掛けて引下げようとした場合に、第1引出具48あるいは第2引出具78が、電気機器26の表面から距離的に離れる位置関係になると共に、その突き出し角度が真下方向ではなく、やや前方向に傾斜した方向の角度となる。このためフック194による引掛ける操作が容易となる。また引下げ棒190のフック194が、前記電気機器の表面方向よりも前記引出具の傾斜角度により、表面方向30よりも離れる方向となる。これにより前記電気機器26の表面30にフック194が接触する危険性を大幅に低減できる。
【0059】
すなわち、第1引出具48や第2引出具78が、真下より前方方向に傾斜した状態で維持されているので、例えばフック194を第2引出具78に引掛けようとした場合に、フック194の突き出す方向を、前記傾斜した角度分、電気機器26の表面30から離れる方向となる。この結果上述のとおり、電気機器26の表面30とフック194との接触の可能性を大幅に低減でき、電気機器26の損傷を防止できる。さらに第1固定棒44と第1引出具48とが、第2固定棒74や第2引出具78に比べてそれぞれ高い位置となり、高さ関係において違いを保つことができる。このことにより、簡単な構造で、第1引出具48や第2引出具78の高さを異にすることができ、操作性において大きな改善をもたらすと共に、操作の安全性においても大きな改善となる。
【0060】
(2)上述した実施例の特徴2およびその作用効果
〔特徴2の説明〕
特徴2は、上記第1の特徴を有する、電気機器に係る情報を表示するための安全防護装置100において、
第1巻取機150と第2巻取機180は、筐体110内において、第1巻取機150が前側で第2巻取機180が後側となる位置関係で、筐体110の前後方向に沿って並べて配置されており、
第1巻取機150は、その内部に第1シート40に巻取り方向の力を加える第1芯管140を有しており、第1芯管140で第1シート40を巻き取ることにより、第1芯管140の外周に、巻き取られた前記第1シートにより、は第1ロール144が形成され、
第2巻取機180は、その内部に、第2シート70に巻取り方向の力を加える第2芯管170を有しており、第2芯管170で第2シート70を巻き取ることにより、第2芯管170の外周に、巻き取られた前記第2シートにより、第2ロール174が形成され、
第1引出具48を下方に引くことにより、第1ロール144の前板114側から、開口120を介して第1シート40が筐体110の外に引き出され、
また第2引出具78を下方に引くことにより、第2ロール174の前板114側から、開口120を介して第2シート70が引き出され、
次に第1シート40が第1芯管140により巻き取られて第1固定棒44が上昇している状態では、第1固定棒44と開口120との間に位置する第1シート40に対して左開口端127及び右開口端126がなす角度θ3が90度より小さく、これにより第1固定棒44が上昇して第1固定棒44の前記両端がそれぞれ左開口端127および右開口端126に衝突した状態では、第1固定棒44に前開口端124の方向に移動させようとする力が作用し、
また第2シート70が巻き取られることにより第2固定棒74が上昇している状態では、第2シート70は後開口端128において折れ曲がり、第2ロール174と後開口端128との間に位置する第2シート70と底板116とのなす角度θ5が90度より小さい角度であり、これにより第2固定棒74が上昇して後開口端128に衝突した状態では、第2固定棒74を後開口端128に押付けようとする力が生じる、
ことである。
【0061】
〔特徴2に基づく作用効果の説明〕
上述した第2の特徴では、第1固定棒44と開口120との間に位置する第1シート40に対して左開口端127及び右開口端126がなす角度が90度より小さくなる。このため第1固定棒44には、前開口端124の方に向かって上昇させようとする力が生じる。実際には第1固定棒44が前開口端124の方向に移動するかどうかは、第1固定棒44の両端と左開口端127および右開口端126との間の摩擦力や第1シート40を力の大きさにより決まる。
【0062】
しかし、例えば第1巻取機150の第1芯管140は常時第1シート40を巻き取ろうとする力を発生しているので、第1固定棒44と第2固定棒74との間隔が広がる方向に力が作用し、第1固定棒44と第2固定棒74との間隔が狭くなることがない。例えば地震などの振動等が生じた場合であっても、第1固定棒44と第2固定棒74との間隔が狭くなることがない。むしろ振動により広がる傾向である。このため第1固定棒44と第2固定棒74との間隔が狭くなって、例えば引下げ棒190のフック194が掛かりにくくなることは生じない。このため例えば、いつの間にか第1固定棒44と第2固定棒74の間隔が狭くなりその結果、フック194がうまく操作できなくなり、電気機器26の表面を傷つける等のことが生じる、などの問題が生じることが無い。
【0063】
また第2シート70には、第2芯管170により巻取り方向の力が常時作用し、このため第2シート70は後開口端128の方に押し付ける状態が維持される。このことからも上述したとおり、第1固定棒44と第2固定棒74との間隔が狭くなることがないとの効果が維持される。また第2シート70が後開口端128に常に押し付けられていることで、第2固定棒74に設けられた第2引出具78は、真下方向よりも前方方向に傾斜した方向で維持される。例えばフック194を備えた引下げ棒190を使用する場合に、フック194を引掛け易い状態となる。さらに上述のように、第2引出具78が真下方向より前側に傾斜することにより、第2引出具78が真下を向く方向状態に比べて、フック194の突出方向が電気機器26の表面30の方向からより離れた方向に突き出す状態となる。これにより、フック194が電気機器26の表面30に接触する可能性を大きく低減できる。
【0064】
(3)上述した実施例の特徴3およびその作用効果
〔特徴3の説明〕
第3の特徴は、第2の特徴を有する気機器に係る情報を表示するための安全防護装置において、
第2シート70が巻き取られることにより第2固定棒74が上昇している状態において、第2ロール174と後開口端128との間に位置する第2シート70と筐体110の底板116とのなす角度θ5が75度より小さく、40度より大きい範囲の角度である、
ことである。
【0065】
〔特徴3に基づく作用効果の説明〕
第1シート40や第2シート70を引き下げた場合に、第1シート40や第2シート70を、電気機器26の表面30に、できるだけ近い固定状態で固定できることが望ましい。第1シート40あるいは第2シート70に関するシートの選択状態で、それぞれに記載されている第1表示42あるいは第2表示72の表示状態が変わってしまうことは、望ましくない。第1表示42や第2表示72の表示状態が変わるのを防ぐとの観点では、第1シート40や第2シート70と電気機器26の表面30との間の距離が、それぞれのシート毎に大きく変わることが無い方が、好ましい。また第1シート40や第2シート70を電気機器26の表面30に固定する場合に、第1シート40や第2シート70と電気機器26の表面30との間の距離が長いと色々問題である。
【0066】
しかし一方、第1シート40や第2シート70を選択的に引き下げる操作の観点からは、第1シート40や第2シート70と電気機器26の表面30との間の距離が長い方が操作し易く、また第1シート40や第2シート70との間についてみても、両者の間隔が広い方が操作し易い。これらの相反する条件を考慮し、第3の特徴では、第1シート40や第2シート70を引き下げる前の状態では、第1引出具48や第2引出具78ができるだけ電気機器26の表面30から離れる状態となるように、第1シート40や第2シート70を真下ではなくより前方に傾斜するように保持される。また第1シート40や第2シート70が巻き取られた状態に維持されている場合に、第1引出具48や第2引出具78の間の距離が縮まらないようにそれぞれが保持されることが望ましい。本特徴では、例えば地震などによる振動が加わっても、第1引出具48や第2引出具78との距離が縮まらないように、第1固定棒44には前開口端124の方向に移動する力が作用し、一方第2固定棒74には後開口端128の方向に移動させる力が加わるようになる。さらに加えて上述したように、第1引出具48と第2引出具78とは、高さ方向において異なる位置関係に保持される。
【0067】
選択された後の第2シート70の引き下げられる前後方向の位置を、選択された後の第1シート40の引き下げ位置に近づけるためには、開口120の後開口端128を第1芯管140の下部に位置させ、第2シート70を第1シート40に近づけることが望ましい。すなわち第1シート40と第2シート70とから、使用するシートを選択する操作状態では、第1引出具48や第2引出具78はできるだけ離れていた方が操作し易い。しかし一旦選択された後では、電気機器26の表面30に対する第1シート40や第2シート70の位置は、電気機器26の表面30に対して、互いに同じ距離関であることが、表示条件の均一性や電気機器26の前記表面30への固定条件の均一性から、好ましい。第2ロール174から引き出された第2シート70を後開口端128で折り曲げることにより、第2シート70の引き下げ時の電気機器26の表面30に対する第1シート40や第2シート70の位置関係の条件を近づけることができる。
【0068】
第2ロール174と後開口端128との間に位置する第2シート70と底板116とのなす角度が90度では、第2固定棒74を後開口端128に接した状態で維持することが確実とはならない。従って第2ロール174と後開口端128との間に位置する第2シート70と底板116とのなす角度が90度よれできるだけ小さくすることが望ましい。しかし一方第2ロール174と後開口端128との間に位置する第2シート70と底板116とのなす角度が小さいと、第2シート70を上げ下げする状態で、第2シート70と前後開口端128との間の摩擦力が増大し、第2シート70の耐久性が問題となる。このため第2シート70の耐久性の観点からは第2ロール174と後開口端128との間に位置する第2シート70と底板116とのなす角度θ5ができるだけ大きい方が良い。これらの相反する関係から、第2ロール174と後開口端128との間に位置する第2シート70と底板116とのなす角度θ5が75度より小さく、40度より大きい角度であることが望ましい。
【0069】
(4)上述した実施例の特徴4およびその作用効果
〔特徴4の説明〕
第4の特徴は、第3の特徴に加えて、
図3に記載する、開口120と第1ロール144との間に位置する上昇状態の第1シート40と、前記開口の前記左開口端および前記右開口端とのなす角度が、90度より大きい、ことである。
【0070】
〔特徴4に基づく作用効果の説明〕
特徴4の作用効果として、上述したように第1シート40が巻き取られた状態において、第1固定棒44が第2固定棒74に対して距離を保つことがたいへん重要である。開口120と第1ロール144との間に位置する第1シート40と、開口120の左開口端127および右開口端126とのなす角度θ7が、90度より大きい角度となるように開口120の左開口端127および右開口端126を設定することで、第1固定棒44に前開口端124の方に移動させようとする力を作用させることができる。
【0071】
例えば日本は地震国であり、安全防護装置100に振動が加わることで、第1固定棒44が第2固定棒74に近づくなどして、使用し難い状態となることは避けたい。言い換えると、第1シート40に設けられている第1固定棒44の第1引出具48と第2シート70に設けられている第2固定棒74の第2引出具78とが、振動その他色々な予期しない出来事で、互いに近づく状態となることの無いようにすることが重要である。第4特徴では、より具体的な条件を明確に規定することで、このような課題を確実に実現することができる。
【0072】
(5)上述した実施例の特徴5およびその作用効果
〔特徴5の説明〕
第5の特徴は、第3の特徴において、
開口120の前開口端124を、前板114を内側に折り返して形成し、
さらに開口120の後開口端128を、底板116を内側に折り返して形成する、
ことである。
【0073】
〔特徴5に基づく作用効果の説明〕
特徴5では、第1シート40と第2シート70とが巻き上げられた状態で、第1固定棒第1固定棒44が前開口端124に接し、また第2固定棒74が後開口端128に接することにより、第1固定棒44と第2固定棒74との間ができるだけ広がるようにしている。これにより、第1固定棒44や第1シート40が前開口端124と接する状態となる可能性が生まれる。また第2固定棒74や第2シート70が後開口端128と接する状態となる。第1固定棒44や第1シート40が前開口端124と接したとしても、できるだけ傷がつかないことが望ましい。また第2固定棒74や第2シート70が後開口端128と接しても、きるだけ傷がつかないことが望ましい。この観点から、特徴5では、前開口端124は前板114を内側に折り返して形成している。また後開口端128は底板底板116を内側に折り返して形成している。
【0074】
さらに上述したように、開口120の開口面を傾斜させていることがたいへん重要である。さらにそれに加えて、開口120の開口面が歪まないことがたいへん重要である。経年変化により開口面122の傾斜の均一性が損なわれる心配がある。前記均一性が損なわれることにより、上述した効果が損なわれる恐れがある。特徴5では、開口120の前開口端124を、前板114を内側に折り返して形成しており、さらに開口120の後開口端128を、底板116を内側に折り返して形成している。このように、折り返す形状とすることにより、経年変化による歪みを大きく低減できる。またシート等が接触しても傷等がつくなどの損傷を受ける恐れが無い。
【0075】
〔特徴6〕
特徴6は、特徴1乃至特徴5の内の一の特徴に加えて、
第1シート114に設けられた第1固定棒44および第2シート70に設けられた第2固定棒74の開口120からの最大引出し長さが、150cm以上である。
【0076】
〔特徴6に基づく作用効果の説明〕
上述した作用効果により、第1シート114や第2シート70の長さを150cm以上とすることができ、このように第1シート114や第2シート70を長くしても、引下げ操作を安全に行うことができる。また前開口端124や後開口端128に起因する第1シート114や第2シート70の損傷を抑制できる。
【符号の説明】
【0077】
22・・・電気機器、24・・・電気機器、26・・・電気機器、28・・・上部、30・・・表面、32・・・突起部、33・・・突起物、34・・・突起部、40・・・第1シート、42・・・第1表示、44・・・第1固定棒、45・・・前面、46・・・下面、48・・・第1引出具、70・・・第2シート、72・・・第2表示、74・・・第2固定棒、75・・・前面、76・・・下面、78・・・第2引出具、96・・・矢印、100・・・安全防護装置、110・・・筐体、112・・・上板、113・・・左板、114・・・前板、115・・・右板、116・・・底板、118・・・後板、120・・・開口、122・・・開口面、124・・・前開口端、125・・・端部、126・・・右開口端、127・・・左開口端、128・・・後開口端、129・・・端部、140・・・第1芯管、142・・・バネ力調整ネジ、144・・・第1ロール、150・・・第1巻取機、152・・・第1固定棒、154・・・第1支持板、170・・・第2芯管、172・・・バネ力調整ネジ、174・・・第2ロール、180・・・第2巻取機、182・・・第2固定棒、184・・・第2支持板、190・・・引下げ棒、194・・・フック。
図1
図2
図3
図4
図5