(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142836
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】熱電発電装置
(51)【国際特許分類】
H02N 11/00 20060101AFI20241003BHJP
F24B 1/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02N11/00 A
F24B1/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055187
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】523117904
【氏名又は名称】株式会社東光通商
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】沖崎 金光
(72)【発明者】
【氏名】出浦 康次
(57)【要約】
【課題】熱電発電で蓄電するときの充電量を従来に比べ増やすことができる熱電発電装置を提供する。
【解決手段】外表面が高温となる熱源装置である固形燃料ストーブ13を有し、固形燃料ストーブ13の熱から電気を得る熱電発電装置11であって、固形燃料ストーブ13の外表面に密着する接触面を一方の面に有し、他方の面が平滑な平坦面とされ、固形燃料ストーブ13の熱を蓄積する蓄熱体15と、蓄熱体15の平坦面に吸熱面を密着させる熱電発電素子17と、熱電発電素子17の放熱面に密着して熱電発電素子17の熱を逃がす放熱部19と、熱電発電素子17に接続されてバッテリー51を充電する充電部21と、を設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面が高温となる熱源装置を有し、前記熱源装置の熱から電気を得る熱電発電装置であって、
前記熱源装置の外表面に密着する接触面を一方の面に有し、他方の面が平滑な平坦面とされ、前記熱源装置の熱を蓄積する蓄熱体と、
前記蓄熱体の平坦面に吸熱面を密着させる熱電発電素子と、
前記熱電発電素子の放熱面に密着して前記熱電発電素子の熱を逃がす放熱部と、
前記熱電発電素子に接続されてバッテリーを充電する充電部と、
を具備することを特徴とする熱電発電装置。
【請求項2】
前記熱源装置が、固形燃料ストーブであることを特徴とする請求項1に記載の熱電発電装置。
【請求項3】
前記熱源装置の煙突に設けられて水を加熱する給湯部が備えられることを特徴とする請求項2に記載の熱電発電装置。
【請求項4】
前記熱源装置が、ボイラーであることを特徴とする請求項1に記載の熱電発電装置。
【請求項5】
前記蓄熱体と前記熱電発電素子と前記放熱部とが板厚方向に積層されて一体の蓄熱電発電ユニットを構成し、
前記蓄熱電発電ユニットは、前記固形燃料ストーブの下面に前記蓄熱体が密着され、
前記蓄熱電発電ユニットには、前記下面に前記蓄熱体を密着させるためのアジャスト機構を有したアジャスト脚が備えられることを特徴とする請求項2または3に記載の熱電発電装置。
【請求項6】
前記放熱部には、前記熱源装置の熱で駆動する熱電ファンが備えられることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の熱電発電装置。
【請求項7】
前記放熱部には、前記熱源装置の熱で駆動する熱電ファンが備えられることを特徴とすることを特徴とする請求項5に記載の熱電発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薪ストーブ本体と、熱電発電素子が薪ストーブ本体に取り付けられた熱電発電ユニットと、循環冷却水により熱電発電素子を冷却する冷却ユニットと、熱電発電素子で暖められた循環冷却水を冷却する過程で当該循環冷却水の熱エネルギーから温水を作り出す熱交換器と、熱電発電ユニットで発電された電力を蓄えるバッテリーと、熱発電ユニットで発電された電力をバッテリーに充電する動作、及び、バッテリーに充電された電力を外部に出力する動作を制御する制御装置とを備えた発電する薪ストーブが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の発電する薪ストーブは、発電・蓄電する時間が、ストーブの燃焼している時間、すなわち、稼働時間に限られていた。一般的に固形燃料ストーブは、熱伝導率の高い金属でつくられている。このため、消火されると同時に外表面から周囲の空気に熱が移動し、温度が急激に降下する。およそ30分程度で約60度を下回り、発電量が減って充電には適さない。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、熱電発電で蓄電するときの充電量を従来に比べ増やすことができる熱電発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の熱電発電装置11は、外表面が高温となる熱源装置13を有し、前記熱源装置13の熱から電気を得る熱電発電装置11であって、
前記熱源装置13の外表面に密着する接触面を一方の面に有し、他方の面が平滑な平坦面とされ、前記熱源装置13の熱を蓄積する蓄熱体15と、
前記蓄熱体15の平坦面に吸熱面を密着させる熱電発電素子17と、
前記熱電発電素子17の放熱面に密着して前記熱電発電素子17の熱を逃がす放熱部19と、
前記熱電発電素子17に接続されてバッテリー51を充電する充電部21と、
を具備することを特徴とする。
【0007】
この熱電発電装置11では、熱源装置(例えば、固形燃料ストーブ)13が稼働されると、熱源装置13の外表面が高温となる。すなわち、外表面から周囲へ熱が伝わる。外表面から周囲へ伝わる熱は、熱伝導、熱輻射、熱対流を含む熱伝達により伝わる。
高温の外表面から周りの空気への伝熱においては、熱は外表面のごく近傍の空気へはまず熱伝導で伝わる。その空気は熱を得ることにより温度が上昇し対流を起こす。この熱対流によりより多くの熱を空気に伝えることになる。また、外表面と空気の間には熱輻射による熱の授受も同時に行われる。つまり、熱源装置の外表面と空気との間の熱移動は、この3形態が混ざり合った熱伝達となる。熱伝達により移動する熱の多くは暖房に使用される。
一方、熱電発電装置11では、外表面の一部分、好ましくは下面31には蓄熱体15が密着して設けられる。蓄熱体15への熱源装置からの伝熱は、主に熱伝導と熱輻射とによる。外表面(下面31)に、一方の面である接触面が密着した蓄熱体15には、熱源装置からの熱が蓄熱される。
蓄熱体15には、熱容量の大きい材質が選ばれる。この蓄熱体15には、一例として耐熱レンガや耐火レンガを好適に用いることができる。
熱電発電素子17は、熱源装置13と熱電発電素子17との間に蓄熱体15が介装されることにより、熱電発電素子17における吸熱面と放熱部19の温度差を従来よりも長引かせることができる。すなわち、発電時間を長引かせて、充電時間を延ばすことができる。その結果、蓄熱体15を搭載しない従来装置に比べ充電量を多く得ることが可能となる。
この熱電発電装置11は、暖房装置と兼用される低コストリカバー型の小さな発電所を構成する。熱電発電装置11は、家庭、ビニールハウス等の農業施設、寒冷地の避難施設などに好適に用いることができる。
【0008】
本発明の請求項2記載の熱電発電装置11は、請求項1に記載の熱電発電装置11であって、
前記熱源装置が、固形燃料ストーブ13であることを特徴とする。
【0009】
この熱電発電装置11では、熱源装置が、固形燃料ストーブ13となる。固形燃料としては、薪、木質性ペレット、もみがら、石炭、木炭などが挙げられる。固形燃料は、石油などの液体燃料に比べ、安価であり、取り扱いも容易となる。また、これらの固形燃料は、石油などの液体燃料に比べ、保存が容易であり、長期にわたる保存であっても変質が生じにくい。
【0010】
本発明の請求項3記載の熱電発電装置11は、請求項2に記載の熱電発電装置11であって、
前記熱源装置13の煙突29に設けられて水を加熱する給湯部23が備えられることを特徴とする。
【0011】
この熱電発電装置11では、熱源装置である固形燃料ストーブ13の煙突29を覆うように、給湯部23が備えられる。煙突29には、固形燃料ストーブ13の燃焼で発生した高温空気が通る。給湯部23は、その煙突29の周囲に直接あるいは配管を介してその中を通る水を接触させる。煙突29を通る高温空気の熱は、温度の低い水へと移動する。これにより、熱電発電装置11では、暖房、蓄電に加えて給湯も可能となる。
【0012】
給湯部23は、煙突29に加えて蓄熱体15の上面に給湯部下面37が接触して設けられてもよい。この場合、蓄熱体15と熱電発電素子17と放熱部19とは、固形燃料ストーブ13の下面31から給湯部下面37へ延出して設けられてもよい。つまり、給湯部23には、煙突29からの熱と、固形燃料ストーブ13の下面31からの熱とが伝熱される。また、この場合、蓄熱体15は、給湯部下面37へ延出させることにより質量が増すので熱容量が増大する。なお、蓄熱体15と熱電発電素子17と放熱部19とは、固形燃料ストーブ13と給湯部23とで分離可能とし、設置時に連結する構造とされてもよい。
【0013】
本発明の請求項4記載の熱電発電装置11は、請求項1に記載の熱電発電装置11であって、
前記熱源装置13が、ボイラーであることを特徴とする。
【0014】
この熱電発電装置11では、熱源装置13が、ボイラーとなる。ボイラーとしては、例えば農業用ハウスに設置される暖房用のものが挙げられる。ボイラーに密着して設けられた熱電発電素子17から得られた電気は、バッテリー51に蓄電される。蓄電された電気は、ボイラーの停止後であっても、ハウス内の電気機器、例えば空気循環ファンや散水装置、照明(調光装置)を動かす電力源とすることが可能となる。
【0015】
本発明の請求項5記載の熱電発電装置11は、請求項2または3に記載の熱電発電装置11であって、
前記蓄熱体15と前記熱電発電素子17と前記放熱部19とが板厚方向に積層されて一体の蓄熱電発電ユニット41を構成し、
前記蓄熱電発電ユニット41は、前記固形燃料ストーブ13の下面31に前記蓄熱体15が密着され、
前記蓄熱電発電ユニット41には、前記下面31に前記蓄熱体15を密着させるためのアジャスト機構を有したアジャスト脚43が備えられることを特徴とする。
【0016】
この熱電発電装置11では、蓄熱体15と熱電発電素子17と放熱部19とが板厚方向に積層されて一体の蓄熱電発電ユニット41となる。蓄熱電発電ユニット41は、固形燃料ストーブ13とは別体である。蓄熱電発電ユニット41は、蓄熱体15が、固形燃料ストーブ13の下面31に密着される。蓄熱電発電ユニット41には、固形燃料ストーブ13の下面31に、蓄熱体15を密着させるためのアジャスト機構を有したアジャスト脚43が備えられる。
床面35は、必ずしも平坦でない。蓄熱体15は、固形燃料ストーブ13の下面31に密着していないと効率のよい熱伝導で固形燃料ストーブ13からの熱が移動しない。蓄熱電発電ユニット41は、すくなくとも4本以上の複数のアジャスト脚43を備えることにより、床面35の不陸を吸収して、蓄熱体15を固形燃料ストーブ13の下面31に平行に密着させることが可能となる。
また、熱電発電装置11は、蓄熱電発電ユニット41が固形燃料ストーブ13の下面31に配置されることで、アジャスト脚43のアジャスト機構を用いて所定の押し上げ荷重を加え、固形燃料ストーブ13の質量を利用して蓄熱電発電ユニット41を下面31へ押圧することができる。一方、固形燃料ストーブ13の側面や上面に蓄熱電発電ユニット41を密着させる場合では、固形燃料ストーブ13の質量を利用することができない。これに対し、本発明の熱電発電装置11によれば、簡素な構造で、別体の蓄熱電発電ユニット41をしっかり固形燃料ストーブ13の外表面である下面31に密着させることができる。
さらに、固形燃料ストーブ13の側面や上面に蓄熱電発電ユニット41を取り付ける場合では、火傷の虞が生じやすくなるため、熱電発電装置11の全体を囲う必要が生じ、意匠性が低下する。これに対し、本発明の熱電発電装置11によれば、固形燃料ストーブ13の四隅の脚33に囲まれた下面31と床面35との間に蓄熱電発電ユニット41を収納するようにして配置できるので、蓄熱電発電ユニット41を簡素な構造でしっかりと固形燃料ストーブ13に密着でき、安全性を保ち、外観としての意匠性も損ねることがない。
【0017】
本発明の請求項6記載の熱電発電装置11は、請求項1~4のいずれか1つに記載の熱電発電装置11であって、
前記放熱部19には、前記熱源装置の熱で駆動する熱電ファン25が備えられることを特徴とする。
【0018】
この熱電発電装置11では、放熱部19に、熱源装置13の熱で駆動する熱電ファン25が備えられる。熱電ファン25は、別途に専用の熱電発電素子を備える。熱電ファン25は、熱源装置13からの熱で駆動される。熱電ファン25は、熱源装置13の下面31に蓄熱電発電ユニット41を取り付けた場合、この取り付けられた蓄熱電発電ユニット41の下方、または給湯部23に延長された蓄熱電発電ユニット41の下方に設けることができる。
いずれの場合も、放熱部19、熱電発電素子17を介さずに蓄熱体15または固形燃料ストーブ(熱源装置)13の下面31に接触して設けられることが好ましい。
熱電ファン25は、送風方向が、板状となった蓄熱電発電ユニット41の最下層、すなわち放熱部19における放熱フィン39の延在方向に沿う方向とすることが好ましい。これにより、熱電ファン25は、放熱面の熱を効率よく放熱させることができ、また、同時に周囲へ暖気を送風することも可能となる。
これに加え、熱電発電素子17は、熱電ファン25により放熱面の温度が低くなれば、吸熱面と放熱面との温度差が大きくなり、より高い熱電変換性能が得られるようにもなる。
【0019】
本発明の請求項7記載の熱電発電装置11は、請求項5に記載の熱電発電装置11出会って、
前記放熱部19には、前記熱源装置の熱で駆動する熱電ファン25が備えられることを特徴とすることを特徴とする。
【0020】
この熱電発電装置11では、請求項6と同じ作用が得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る請求項1記載の熱電発電装置によれば、熱源装置に密着する蓄熱体が、この熱源装置からの熱を蓄熱することで、熱源装置が稼働を停止した後も蓄熱状態であることで熱電発電素子が発電を続け、これにより、発電時間を長引かせ、充電時間を延ばすことができ、熱電発電で蓄電するときのバッテリーへの充電量を従来に比べ増やすことができる。
【0022】
本発明に係る請求項2記載の熱電発電装置によれば、安価で取り扱いやすい燃料を使うことを可能とする熱源装置である固形燃料ストーブの安定的な使用が長期にわたって可能となる。また、固形燃料ストーブであることから、一般的に家屋内で使用される暖房機器であり、この暖房機器の暖房機能にバッテリーの充電機能を付加でき、電気が使用可能な環境を提供することができる。
【0023】
本発明に係る請求項3記載の熱電発電装置によれば、熱源装置である固形燃料ストーブの熱を、暖房や蓄電以外に、給湯や温水器の加温に利用できる。このようなことから、例えば災害発生時に、暖房として固形燃料ストーブが稼働すれば、電気を蓄えることが可能となり電気機器の使用を継続でき、且つ温水を利用することが可能となる。
【0024】
本発明に係る請求項4記載の熱電発電装置によれば、熱源装置をボイラーとすることにより農業用ハウスなどで使用でき、ハウス内の散水機や送風機などの電気設備の電源とすることができる。また、熱源装置をバイオマスボイラーなどとすれば、産業廃棄物扱いになっているもみがらなどを燃料として熱源装置を使用でき、再資源化を可能とし環境への配慮を行いながら電気の蓄電を行うことが可能となる。
【0025】
本発明に係る請求項5記載の熱電発電装置によれば、熱源装置である固形燃料ストーブの下面に蓄熱体と熱電発電素子と放熱部との蓄熱電発電ユニットをユニット化して密着させて構成していることから、固形燃料ストーブとしての一般的な構造である床面からストーブ本体を浮かせた脚のある構造、つまりストーブ本体の下面と床面との間に空間を有する構造において、この空間を活かし大きく目立つことなく配置が可能となり、固形燃料ストーブとしての使用の邪魔とならず、ストーブの意匠性を損ねることがない。また、ストーブ本体に対して大きく突出するような構造ではないことから、安全な位置で効率よく蓄熱、熱電変換することができる。さらに、ストーブ本体としては底部における内部が燃焼部分であることから、熱源として、発電位置として、有効である。
【0026】
本発明に係る請求項6記載の熱電発電装置によれば、別途電源を使用せずに、放熱部に対して送風を行うことができ、すなわち、放熱面の熱を効率よく放熱させることができる。また同時にファンによって周囲へ暖気として送風することも可能となり、例えば暖房装置となる固形燃料ストーブによる暖房効率を高めることが可能となる。さらに、この熱電ファンによって、熱電発電素子に温度差を生じさせ、すなわち、熱電ファンにより放熱面の温度が低くなれば、吸熱面と放熱面との温度差が大きくなり、高い熱電変換性能が得られるようにもなる。その結果、別途電源を使用せずに、暖房効率を高めながら、熱電発電素子に温度差を生じさせ、高い熱電変換性能を得ることができる。
【0027】
本発明に係る請求項7記載の熱電発電装置によれば、請求項6と同じ効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態に係る熱電発電装置の側面図である。
【
図3】ストーブ本体と給湯部とで蓄熱電発電ユニットが別体となる変形例の下面図である。
【
図4】蓄熱温度の時間経過を蓄熱体ある場合と蓄熱体が無い場合とで比較した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る熱電発電装置11の側面図である。
本実施形態に係る熱電発電装置11は、外表面が高温となる熱源装置を有し、熱源装置の熱から電気を得ることができるものである。
【0030】
熱電発電装置11は、熱源装置である固形燃料ストーブ13と、蓄熱体15と、熱電発電素子17と、放熱部19と、充電部21と、給湯部23と、熱電ファン25とを備える。
【0031】
熱源装置は、一例として固形燃料ストーブ13である。固形燃料ストーブ13は、燃料を薪とすることができる。
固形燃料ストーブ13の燃料は、薪の他の固形燃料として、木質性ペレット、もみがら、石炭、木炭などを挙げることができる。
固形燃料ストーブ13は、ストーブ本体27を例えば直方体の外形状とすることができる。ストーブ本体27の大きさは一例として奥行550mm、横650mm、高さ500mm程度とすることができる。
【0032】
ストーブ本体27には、内部(燃焼室)の燃焼ガスを外部へ排気する煙突29が側面に接続される。ストーブ本体27には、この他、図示しないが、外気を内部に取り込む吸気口や固形燃料を投入する投入口、燃えかす(灰)を取り出す排出口などが設けられる。
【0033】
ストーブ本体27は、下面31の四隅に合計4つの脚33を有する。脚33の長さは一例として250mmとすることができる。したがって、ストーブ本体27の下面31は、床面35から250mmの位置となる。つまり、固形燃料ストーブ13は、下面31と床面35との間に高さ250mmの空間を有する。ストーブ本体27は、使用時に外表面の温度が200℃~500℃となる。底部において内部は800℃~1000℃となる。
【0034】
蓄熱体15は、熱源装置である固形燃料ストーブ13の熱を蓄積する。蓄熱体15は、固形燃料ストーブ13の外表面に密着する接触面を一方の面に有する。蓄熱体15の他方の面は、平滑な平坦面となる。蓄熱体15は、一例として縦500mm、横はストーブ本体27と給湯部23の合計長(950mm)よりも短く設定される。なお、後述するが、蓄熱体15は、ストーブ本体27の下面31に密着させる部分と、給湯部下面37に密着させる部分とが別体となっていてもよい(
図3参照)。
【0035】
蓄熱体15は、ストーブ本体27の下面31に接する面が、ストーブの形状にもよるが、例えば平坦面である。ストーブ本体27の下面31が凸曲面などの場合には、その面に密着する凹曲面で蓄熱体15は構成される。
また、蓄熱体15は、熱電発電素子17の吸熱面に対向する面が平滑な平坦面となる。これにより、熱電発電素子17の吸熱面に隙間無く密着させることを可能としている。
【0036】
蓄熱体15の素材の一例としては、酸化マグネシウム(マグネシア)よりなる耐火レンガ、すなわちマグネシアレンガを挙げることができる。
他に、鉄鉱石レンガ、酸化鉄レンガ、かんらん岩レンガなどが挙げられ、蓄熱性を有するレンガであれば、その他の素材よりなるレンガ、耐火レンガ、耐火断熱レンガ、断熱レンガとしてもよい。
【0037】
マグネシアブロックは、例えば、厚さが80mm、縦500mm、横500mmのブロック状となる。マグネシアブロックは、一体構造の1枚でもよいし、縦、横、高さを複数で組み合わせて構成してもよい。本実施形態としては、矩形平板である。
例えば、蓄熱体15を構成する耐火ブロックとなる耐火レンガを複数で組み合わせる場合に、各耐火レンガのサイズは、例えば縦85mm、横255mm、高さ95mmであり、これを敷きつめることとしてもよい。つまり、互いを連結させることで板状(面状)に構成することができる。
また、上記したようにストーブ本体27の下面31が曲面である場合にはブロック外形に曲面加工を施すなど、或いは下面31にリブなどを有するような場合にはリブを避ける凹溝をブロックに設けるなど、所望の形状としてもよく、ストーブ本体27の下面31に密着するように接触面が形成される。
【0038】
蓄熱体15は、理想としてストーブ本体27の下面31(脚33を除く)にすべて設置することが望ましい。すなわち、蓄熱体15は、ストーブ本体27の下面31に対して、それを覆うように構成される。蓄熱体15は、熱源装置に対する設置面が多いほど蓄熱効率が上がる。
また、ストーブ本体27の下面31のみではなく、この下面31の周縁から各側面にかけて覆うように、蓄熱体15の接触面を窪ませ縁が立ち上がるような皿状に形成することとしてもよい。
【0039】
熱電発電素子17は、蓄熱体15の平坦面に、吸熱面を密着させて設けられる。熱電発電素子17は、例えば厚みが15mm程度となる。熱電発電素子17の縦横の大きさは、蓄熱体15と同じである。熱電発電素子17を構成する熱電発電エレメントは、ゼーベック効果を利用することにより、熱を電気へ変換可能とする。ここで、熱電発電エレメントにおける熱電変換の効率は、熱電発電エレメントの材料の性能指数Z=S2 σ/κで決定される。但し、Sはゼーベック係数、σは電気伝導率、κは熱伝導率とする。高い熱電変換性能を実現するためには、高い温度差を維持する必要がある。
【0040】
熱電発電素子17は、矩形状の板状であり、P型の熱電発電エレメントとN型の熱電発電エレメントとからなる。熱電発電エレメントは、例えば約7.1mm四方の両面と、高さ約11mmの大きさで、吸熱面と放熱面を備える。各面は、平らな平滑な面で形成される。吸熱面(吸熱板)と放熱面(放熱板)の間には、金属粉末射出成形で得られるFeSi2 を素材とした所定形状の部品が使用される。この部品は、例えば円柱形状や角柱形状となる。なお、熱電発電エレメントは、形状、外観に限定はないが、「MIM(Metal Injection Molding:金属粉末射出成形)によって成形されることが好ましい。
【0041】
熱電発電素子17を構成する熱電発電エレメントでは、熱電発電エレメントが縦横にマトリクス状となって例えば16個程度で並べられる。固形燃料ストーブ13では、ストーブ本体27の外表面である下面31の面積に対応して複数個が並べられる。
【0042】
熱電発電エレメントは、これまでの主な熱電材料が、ビスマス・テルル化合物/鉛・テルル合金/シリコン・ゲルマニウム合金/コバルト・アンチモン化合物/亜鉛・アンチモン化合物であった。
これら従来使用されていたレアメタルの金属は、稀少で入手がしにくい、コストが高い、毒性元素が含まれるといったマイナス要素があった。
【0043】
本発明での熱電発電素子17に用いられる熱電発電エレメントは、鉄とシリコンベースの素材である。すなわち、鉄シリサイド半導体の熱電発電エレメントとなる。
この熱電発電エレメントは、レアメタルを使用しないため、レアメタルと比較した際、材料の入手がしやすく、安価で、さらには人体に影響の少ない安全な材料となる。
【0044】
また、従来の熱電発電エレメントの製法は、ホットプレス製法が主流であった。一方、本発明の熱電発電装置11に用いられる熱電発電素子17の熱電発電エレメントは、MIM(金属粉末射出成型法)で生産される。これにより、熱電発電エレメントは、金型での製造が可能となり、量産性が高められている。また、金型製造であることから所望の形状で得ることも可能である。
【0045】
放熱部19は、熱電発電素子17の放熱面に密着して設けられる。放熱部19は、熱電発電素子17における放熱面からの熱を効率的に逃がす。放熱部19は、例えばアルミ製とされ、放熱フィン39(
図2参照)を有する。
放熱フィン39は、例えばストーブ本体27の横方向に延在し、ストーブ本体27の縦方向に複数枚が間隙を有して平行に配置される。つまり、放熱部19は、空冷ヒートシンクを構成する。放熱部19は、熱電発電素子17の放熱面の全面に構成される。
【0046】
なお、この放熱部19は、放熱フィン39による空冷ではなく、冷却媒体を循環させる冷却装置にて構成させることとしてもよい。例えば冷却媒体として水を循環させ、所謂水冷方式としてもよい。この循環させる水をさらに利用することによって、床暖房などを構成させることとしてもよい。
【0047】
蓄熱体15と熱電発電素子17と放熱部19とは、板厚方向に積層されて一体の蓄熱電発電ユニット41を構成することができる。蓄熱電発電ユニット41は、固形燃料ストーブ13の下面31に蓄熱体15が密着される。蓄熱電発電ユニット41には、ストーブ本体27の下面31に蓄熱体15を密着させるためのアジャスト機構を有したアジャスト脚43が備えられる。アジャスト脚43は、アジャスト機構を用いて所定の押し上げ荷重を加え、固形燃料ストーブ13の質量を利用して蓄熱電発電ユニット41を下面31へ押圧させ密着状態を維持することができる。
【0048】
蓄熱電発電ユニット41は、連続して1枚の構成で、ストーブ本体27の下面31から給湯部下面37までのサイズとすることができる。また、蓄熱電発電ユニット41は、ストーブ本体27と、給湯部23とのそれぞれに分割して付設し、それぞれを接続する構成としてもよい。
例えば上記したように、ストーブ本体27の下面31から給湯部下面37までの合計長のサイズとすれば横を約950mm、縦を約500mmとすることができ、ストーブ本体の下面31では約500×500mm、給湯部下面37が約300×300mmなどの分割サイズとでき、また、それぞれの厚さは、蓄熱体15が例えば80mm、熱電発電素子17が例えば15mm、放熱部19が例えば20mmとすると、蓄熱電発電ユニット41としての厚さが例えば115mmである。
さらに、蓄熱電発電ユニット41は、細かなモジュールに分割し、複数のモジュールを接続して構成されるものであってもよい。
【0049】
つまり、蓄熱電発電ユニット41のモジュール化である。モジュール化では、モジュールの基本サイズが設定される。モジュールから成る蓄熱電発電ユニット41によれば、ストーブ本体27の大きさによって複数のモジュールを連結して蓄熱電発電ユニット41を形成し、その蓄熱電発電ユニット41をストーブ本体27の下面31に密着させることができる。つまり、固形燃料ストーブ13(熱源装置)の外形状を限定せず、蓄熱電発電ユニット41の汎用性を高めることができる。
【0050】
この場合、蓄熱電発電ユニット41は、小面積とした個々のモジュールの集合体で構成され、それを縦横に並べるように連結し、所望の面積・大きさに組み立て、ストーブ本体27の下面31に密着させる。蓄熱体15と熱電発電素子17と放熱部19とが1つのモジュールに構成される。
例えば、上記の例では蓄熱電発電ユニット41の大きさが500mm×500mmなので、例えば、250mm×250mmの1モジュールを4組縦横に並べ互いを連結する。1モジュールのサイズを、例えば200mm×200mmで基本サイズとすることもでき、この場合、蓄熱電発電ユニット41は、1ユニット当たりに複数個のモジュールで構成できる。各モジュールには、熱電発電素子17同士を容易に連結させることを可能とする接続端子などがあると好ましい。そして、このモジュールを並べ連結した蓄熱電発電ユニット41をストーブ本体27の下面31に密着させる。これにより、蓄熱電発電ユニット41は、ストーブ本体27の大小や下面31の形状に関わらず、蓄熱体15の面形状を変えて対応させ、効率よく熱を得ることができるようになる。
【0051】
熱電発電装置11は、水を加熱する給湯部23が、固形燃料ストーブ13の煙突29に設けられてもよい。給湯部23は、給水された水が100℃になる。いわゆる給湯器である。
給湯部23は、ストーブ本体27に銅製やホーロー製の温水タンク45を付設して構成してもよい。温水タンク45は、給湯部脚47によって床面35に支持される。温水タンク45には、蛇口49が取り付けられる。
【0052】
図2は、熱電発電装置11の下面図である。
上述の蓄熱電発電ユニット41は、ストーブ本体27の下面31から延長されて、給湯部下面37に密着するように配置されてもよい。給湯部23を備えた熱電発電装置11によれば、温水タンク45にも蓄熱電発電ユニット41の蓄熱体15が密着するので、ストーブ本体27が消火された後であっても、加温状態を保つことができる。つまり、煙突29からの熱だけではなく、蓄熱体15からも熱を得ることができる。これにより、お湯を使うことが可能な時間を延ばすことができる。給湯部23に保温機能を付与することができる。
【0053】
図3は、ストーブ本体27と給湯部23とで蓄熱電発電ユニットが別体となる変形例の下面図である。
蓄熱体15と熱電発電素子17と放熱部19とは、ストーブ本体27と給湯部23とで分離可能とし、設置時に連結する構造とされてもよい。上述のように、蓄熱体15と熱電発電素子17と放熱部19とは、一体の蓄熱電発電ユニット41として構成することができる。この場合、蓄熱電発電ユニット41は、ストーブ本体27の蓄熱電発電ユニット41と、給湯部用の蓄熱電発電ユニット41の2つに分離される。2つの蓄熱電発電ユニット41は、ストーブ本体27に給湯部23が接続されて設置される際に連結される。
【0054】
分離構造の蓄熱電発電ユニット41の場合、それぞれの蓄熱電発電ユニット41には、相互を接続するための電気的な接続部(コネクタ)57が設けられることが望ましい。なお、この場合には、2つの蓄熱電発電ユニット41の接続端面は、ストーブ本体27の下面31に密着させた蓄熱電発電ユニット41から、給湯部下面37に密着させた蓄熱電発電ユニット41に熱を伝えるため、端面同士が密着して接続されることが好ましい。密着させることで、蓄熱体15を介して熱源装置13の熱を給湯部23へと伝え、給湯部23の保温も行うことも可能となる。
また、ストーブ本体27の下面31と給湯部23下面37とに床面35からの高さに差がある場合に、このような分離構造はそれぞれのアジャスト脚43で調整が可能となり、それぞれに密着が行える。
【0055】
充電部21は、熱電発電素子17に接続される。
充電部21は、熱電発電素子17から得た電気をバッテリー51に充電する。充電部21は、制御装置53を有する。
制御装置53は、発電された電気を安定させてバッテリー51に供給し充電する。
制御装置53は、例えばDC-DCコンバーター(昇圧型DC-DCユニット)である。スペック・効果の一例としては、4.5~12Vの入力電圧を12.6Vに昇圧させて充電を安定させる。
他の例として、充放電のための制御装置53には、過充電保護回路と過放電保護回路が設けられる。これらは、バッテリー51の過充電や過放電を防止し、バッテリー51の寿命が極端に短くなることを抑制できる。
【0056】
バッテリー51は、スペックの一例として、完全密閉型、メンテナンスフリー、ディープサイクルバッテリー、長寿命タイプとすることができる。ディープサイクルバッテリーとは、繰り返しの充放電に強く、完全放電に近くまで使うことを前提に作られたバッテリーである。ディープサイクルバッテリーとしては、例えば、電圧:12V、定格容量:100Ah(10時間率)、最大充電電流:30Aタイプのバッテリーを用いることができる。
【0057】
また、充電部21には、給電用の端子(出力端子)55が備えられることが好ましい。出力端子55は、バッテリー51に充電された電気を使用する際に、所望の電気機器へ接続される。
【0058】
熱電発電装置11は、放熱部19に、固形燃料ストーブ(熱源装置)13の熱で駆動する熱電ファン25が備えられてもよい。熱電ファン25は、基部の吸熱面が蓄熱電発電ユニット41の蓄熱体15または固形燃料ストーブ(熱源装置)13の下面31に接触して設けられる。本実施形態では、吸熱面が上端となるように基部から回転羽根が吊り下げ状態で設けられる。回転羽根は、放熱部19と床面35との間となる空間部分に位置する。熱電ファン25の配置位置は、ストーブ本体27の下面側、給湯部23の給湯部下面側のいずれであってもよい。
【0059】
なお、熱源装置は、固形燃料ストーブ13の他に、ボイラーであってもよい。熱源装置をボイラーとすることによって、例えば農業用ハウスなどで使用でき、ハウス内の散水機や送風機など電気設備の電源にすることができる。この場合、充電を行えることから、ボイラーによる暖房をオフにした際にも蓄熱された熱で充電でき、充電部21によって長時間の電源使用に対応できる。
【0060】
また、熱源装置は、ボイラーの他、バーナー、焼却炉、焼結炉、など、高温な外表面である発熱体、熱源であればよい。熱源装置は、もみがらの燃焼装置であるバイオマスボイラーに取り付けてもよい。もみがらは近年、産業廃棄物扱いになっていることから、熱源装置はこれを燃料にして熱を得てもよく、再資源化を可能としている。
【0061】
次に、上記した構成の作用を説明する。
【0062】
本実施形態に係る熱電発電装置11では、固形燃料ストーブ13が稼働されると、固形燃料ストーブ13の外表面が高温となる。すなわち、外表面から周囲へ熱が伝わる。外表面から周囲へ伝わる熱は、熱伝導(heat conduction)、熱輻射(heat radiation)、熱対流(heat convection)を含む熱伝達(heat transfer)により伝わる。
【0063】
高温の外表面からまわりの空気への伝熱においては、熱は外表面のごく近傍の空気へはまず熱伝導で伝わる。その空気は熱を得ることにより温度が上昇し対流を起こす。この熱対流によりより多くの熱を空気に伝えることになる。また、外表面と空気の間には熱輻射による熱の授受も同時に行われる。つまり、固形燃料ストーブ13の外表面と空気との間の熱移動は、この3形態が混ざり合った熱伝達となる。熱伝達により移動する熱の多くは暖房に使用される。
【0064】
一方、熱電発電装置11では、固形燃料ストーブ13の外表面の一部分である例えば下面31には蓄熱体15が密着して設けられる。蓄熱体15への固形燃料ストーブ13からの伝熱は、主に熱伝導と熱輻射とによる。外表面である下面31に、一方の面である接触面が密着した蓄熱体15には、固形燃料ストーブ13からの熱が蓄熱される。
【0065】
蓄熱体15には、熱容量の大きい材質が選ばれる。熱容量[J/K]は、物体全体の温度を1K上げるのに必要な熱量である。熱容量は、質量[kg]に比例する。なお、単位質量の温度を1K上げるのに必要な熱容量は、比熱[J/kg・K]である。1J=1N・mである。この蓄熱体15には、一例として酸化マグネシウム(マグネシア)よりなる耐熱レンガや耐火レンガを好適に用いることができる。
【0066】
熱電発電素子17は、固形燃料ストーブ13と熱電発電素子17との間に蓄熱体15が介装されることにより、熱電発電素子17における吸熱面と放熱部19の温度差を従来よりも長引かせることができる。すなわち、固形燃料ストーブ13の稼働中に蓄熱を行うとともに、その熱は固形燃料ストーブ13の稼働を停止した後も蓄えられており、このことから発電時間を長引かせることとなり、充電時間を延ばすことができる。その結果、蓄熱体15を搭載しない従来装置に比べ充電量を多く得ることが可能となる。
【0067】
図4は、蓄熱温度の時間経過を蓄熱体15がある場合と蓄熱体15が無い場合とで比較した説明図である。
蓄熱体15の無いストーブ本体の冷え方と、蓄熱体15を備えたストーブ本体27の冷え方を比較した。
【0068】
蓄熱体15を有することで、300℃を超える稼働停止直後の温度から、ストーブが冷え、蓄熱体15が60℃までに冷えるのに2時間かかった。すなわち、ストーブ消火後、2時間の吸熱作用が持続可能であった。
【0069】
一方、蓄熱体15が無い場合は、ストーブが冷え約60度になってしまうのに30分であった。熱電発電装置11では、冷めにくいことで、発電がすぐに(ストーブ消火後)終わらずに続き、蓄電可能(充電可能)な時間が長くなることが知見できた。
本発明の熱電発電装置11によれば、熱電発電素子17の発電の能力が、より長時間化するメリットが得られる。また、付随する給湯部23の保温性の長時間化も得られる。
【0070】
この熱電発電装置11は、暖房装置と兼用される低コストリカバー型の小さな発電所を構成する。熱電発電装置11は、家庭、ビニールハウス等の農業施設、寒冷地の避難施設などに好適に用いることができる。
【0071】
また、この熱電発電装置11では、熱源装置が、固形燃料ストーブ13となる。固形燃料としては、薪、木質性ペレット、もみがら、石炭、木炭などが挙げられる。固形燃料は、石油などの液体燃料に比べ、安価であり、取り扱いも容易となる。また、これらの固形燃料は、石油などの液体燃料に比べ、保存が容易であり、長期にわたる保存であっても変質が生じにくい。その結果、安価で取り扱いやすい燃料を使って、固形燃料ストーブ13の安定的な使用が長期にわたって可能となる。
【0072】
また、この熱電発電装置11では、固形燃料ストーブ13の煙突29を覆うように、給湯部23が備えられる。煙突29には、固形燃料ストーブ13の燃焼で発生した高温空気が通る。給湯部23は、その煙突29の周囲に直接あるいは配管を介してその中を通る水を接触させる。煙突29を通る高温空気の熱は、温度の低い水へと移動する。これにより、熱電発電装置11では、暖房、蓄電に加えて給湯も可能となる。
【0073】
給湯部23は、煙突29に加えて蓄熱体15の上面に給湯部下面37が接触して設けられてもよい。この場合、蓄熱体15と熱電発電素子17と放熱部19とは、固形燃料ストーブ13の下面31から給湯部下面37へ延出して設けられてもよい。つまり、給湯部23には、煙突29からの熱と、固形燃料ストーブ13の下面31からの熱とが伝熱される。この場合、蓄熱体15は、給湯部下面37へ延出させることにより質量が増すので熱容量が増大する。
【0074】
なお、蓄熱体15と熱電発電素子17と放熱部19とは、固形燃料ストーブ13と給湯部23とで分離可能とし、設置時に連結する構造とされてもよい。その結果、固形燃料ストーブ13の熱を蓄電以外に、給湯や温水器の加温に利用できる。
このようなことから、例えば災害発生時に、暖房として固形燃料ストーブが稼働できれば、電気を蓄えることが可能となり電気機器の使用を継続でき、且つ温水を利用することが可能となる。
【0075】
また、この熱電発電装置11では、熱源装置が、ボイラーであってもよい。ボイラーとしては、例えば農業用ハウスに設置される暖房用のものが挙げられる。ボイラーに密着して設けられた熱電発電素子17から得られた電気は、バッテリー51に蓄電される。蓄電された電気は、ボイラーの停止後であっても、ハウス内の電気機器、例えば空気循環ファンや散水装置、照明(調光装置)を動かす電力源とすることが可能となる。その結果、熱源装置をボイラーとすることにより農業用ハウスなどで使用でき、ハウス内の散水機や送風機などの電気設備の電源とすることができる。
【0076】
また、熱源装置をバイオマスボイラーなどとすれば、産業廃棄物扱いになっているもみがらなどを燃料として熱源装置を使用でき、再資源化を可能とし環境への配慮を行いながら電気の蓄電を行うことが可能となる。
【0077】
また、この熱電発電装置11では、蓄熱体15と熱電発電素子17と放熱部19とが板厚方向に積層されて一体の蓄熱電発電ユニット41となる。蓄熱電発電ユニット41は、固形燃料ストーブ13とは別体である。蓄熱電発電ユニット41は、蓄熱体15が、固形燃料ストーブ13の下面31に密着される。蓄熱電発電ユニット41には、固形燃料ストーブ13の下面31に、蓄熱体15を密着させるためのアジャスト機構を有したアジャスト脚43が備えられる。
【0078】
固形燃料ストーブ13は、例えば直方体の外形を有する。長方形の下面31の四隅には、ストーブ本体27を床面35に支持する脚33を備える。ストーブ本体27は、4本の脚33によって床面35から250mm程度の高さに下面31が配置される。蓄熱電発電ユニット41は、例えば板厚方向の距離(厚み)が115mm程度となる。したがって、蓄熱電発電ユニット41の放熱部19から床面35までの距離は135mm程度の空間となり、放熱のための空間を確保できる。
【0079】
床面35は、必ずしも平坦でない。蓄熱体15は、固形燃料ストーブ13の下面31に密着していないと効率のよい熱伝導で固形燃料ストーブ13からの熱が移動しない。蓄熱電発電ユニット41は、すくなくとも4本以上の複数のアジャスト脚43を備えることにより、床面35の不陸を吸収して、蓄熱体15を固形燃料ストーブ13の下面31に平行に密着させることが可能となる。
【0080】
また、熱電発電装置11は、蓄熱電発電ユニット41が固形燃料ストーブ13の下面31に配置されることで、アジャスト脚43のアジャスト機構を用いて所定の押し上げ荷重を加え、固形燃料ストーブ13の質量を利用して蓄熱電発電ユニット41を下面31へ押圧することができる。一方、固形燃料ストーブ13の側面や上面に蓄熱電発電ユニット41を密着させる場合では、固形燃料ストーブ13の質量を利用することができない。これに対し、熱電発電装置11では、簡素な構造で、別体の蓄熱電発電ユニット41をしっかり固形燃料ストーブ13の外表面に密着させることができる。
【0081】
さらに、固形燃料ストーブ13の側面や上面に蓄熱電発電ユニット41を取り付ける場合では、火傷の虞が生じやすくなるため、熱電発電装置11の全体を囲う必要が生じ、意匠性が低下する。これに対し、熱電発電装置11では、固形燃料ストーブ13の四隅の脚33に囲まれた下面31と床面35との間に蓄熱電発電ユニット41を収納するようにして配置できるので、蓄熱電発電ユニット41を簡素な構造でしっかりと固形燃料ストーブ13に密着でき、安全性、意匠性も損ねることがない。その結果、固形燃料ストーブ13の使用の邪魔とならず、意匠性を損ねることなく、安全な位置で効率よく蓄熱、熱電変換することができる。
【0082】
また、この熱電発電装置11では、放熱部19に、固形燃料ストーブ13の熱で駆動する熱電ファン25が備えられる。熱電ファン25は、別途に専用の熱電発電素子を備える。熱電ファン25は、固形燃料ストーブ13からの熱で駆動される。熱電ファン25は、固形燃料ストーブ13の下面31に取り付けられた蓄熱電発電ユニット41の下方、または給湯部23に延長された蓄熱電発電ユニット41の下方の床面35との間の空間に設けることができる。いずれの場合も、放熱部19、熱電発電素子17を介さずに蓄熱体15または固形燃料ストーブ13の下面31に接触して設けられることが好ましい。
【0083】
熱電ファン25は、送風方向が、板状となった蓄熱電発電ユニット41の最下層、すなわち放熱部19における放熱フィン39の延在方向に沿う方向とすることが好ましい。これにより、熱電ファン25は、放熱面の熱を効率よく放熱させることができ、また、同時に周囲へ暖気を送風することも可能となる。これに加え、熱電発電素子17は、熱電ファン25により放熱面の温度が低くなれば、吸熱面と放熱面との温度差が大きくなり、高い熱電変換性能が得られるようにもなる。その結果、別途電源を使用せずに、暖房効率を高めながら、熱電発電素子17の吸熱面と放熱面との温度差を生じさせ、高い熱電変換性能を得ることができる。
【0084】
したがって、本実施形態に係る熱電発電装置11によれば、熱電発電で蓄電するときの充電量を従来に比べ増やすことができる。
【符号の説明】
【0085】
11…熱電発電装置
13…熱源装置(固形燃料ストーブ)
15…蓄熱体
17…熱電発電素子
19…放熱部
21…充電部
23…給湯部
25…熱電ファン
29…煙突
31…下面
41…蓄熱電発電ユニット
43…アジャスト脚
51…バッテリー