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特開2024-142841光共振器、量子計算ユニット、および分散型量子計算システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142841
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】光共振器、量子計算ユニット、および分散型量子計算システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20241003BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20241003BHJP
   G02F 3/00 20060101ALI20241003BHJP
   G06N 10/40 20220101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B6/02 416
G02B6/02 411
B82Y20/00
G02F3/00
G06N10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055195
(22)【出願日】2023-03-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(CREST)「超低損失ナノファイバー共振器の開発と光学的量子計算の要素技術実証」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願、 令和4年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、ムーンショット型研究開発事業「ナノファイバー共振器QED方式ハードウェアの原理実証、大規模化・分散化」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】523117915
【氏名又は名称】株式会社Nanofiber Quantum Technologies
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】青木 隆朗
(72)【発明者】
【氏名】碁盤 晃久
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真也
【テーマコード(参考)】
2H250
2K102
【Fターム(参考)】
2H250AC32
2H250AC33
2H250AC51
2H250AG02
2H250AG17
2K102AA21
2K102AA37
2K102BA08
2K102BA11
2K102BA31
2K102BB10
2K102BC04
2K102BC06
2K102BC10
2K102BD03
2K102DA06
2K102DA16
2K102DB01
2K102EA25
2K102EB08
2K102EB20
2K102EB22
2K102EB25
2K102EB26
(57)【要約】
【課題】 所望の共振周波数を動作中も安定して維持するナノ光ファイバー型共振器を提供する。
【解決手段】光共振器214は、光子を伝搬する光ファイバーとテーパー部を介して接続するナノ光ファイバー212を有し、テーパー部の両外側の端部221aおよび221bには、ブラッグ回折格子223aとブラッグ回折格子223bとが設けられ、光共振器が形成されている。プローブ光ωpによる共振器内での伝達の位相のシフトに応じて、共振周波数制御部270の制御により、レーザー250bの光出力を制御し、レーザー250bの光によりシリコン基板230bが加熱され、ブラッグ回折格子223bの格子間隔が調整されて、共振周波数が所定の範囲に維持される。
【選択図】図9

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光子を伝搬する光ファイバーを備え、
前記光ファイバーの第1の部分および第2の部分には、それぞれ、第1のブラッグ回折格子と第2のブラッグ回折格子とが設けられ、
前記第1のブラッグ回折格子と前記第2のブラッグ回折格子との間で光共振器が形成されており、
前記第1の部分に対して少なくとも伸長または圧縮のいずれか一方の変形をさせるための第1の変形機構と、
前記第1および第2のブラッグ回折格子間を伝搬した光の位相のシフト量を検出するための検知器と、
前記検知器の検知結果に応じて、前記光共振器の共振周波数が所定の範囲に維持されるように前記第1の変形機構を制御する制御部とを備える、光共振器。
【請求項2】
前記光ファイバーは、前記第1の部分および前記第2の部分の間に設けられ、テーパー部を介して前記光子を伝搬可能に前記光ファイバーに接続するナノ光ファイバーを含む、請求項1記載の光共振器。
【請求項3】
前記第2の部分に対して少なくとも伸長または圧縮のいずれか一方の変形をさせ、前記第2の部分の反射率を所望の値とするための第2の変形機構をさらに備え、
前記第1の変形機構および前記第2の変形機構は、各々、前記第1の部分および前記第2の部分の対応する部分を、前記制御部の制御にしたがって、加熱または冷却する温度制御機構を含む、請求項1または2記載の光共振器。
【請求項4】
前記温度制御機構は、前記制御部の制御に応じて、発熱または吸熱を行うペルチェ素子である、請求項3記載の光共振器。
【請求項5】
前記温度制御機構は、
前記光ファイバーに接するように配置される半導体基板と、
前記半導体基板を支持するセラミック台と、
前記温度制御機構に対して、前記半導体基板に吸収される光を照射する光源とを含む、請求項3記載の光共振器。
【請求項6】
前記第2の部分の前記共振周波数での反射率の調整時において、
前記第1の変形機構は、前記第1の部分の前記共振周波数近傍の透過率のディップの領域を、前記第1の部分の前記共振周波数近傍の透過率のディップの領域と重ならない領域まで移動させるだけの伸長または圧縮を行い、
前記第2の変形機構は、前記第2の部分の反射率を所望の値となるように、伸長量または圧縮量を制御する、請求項3記載の光共振器。
【請求項7】
前記第1の部分の前記共振周波数での反射率の調整時において、
前記第1の変形機構は、前記第1の部分の反射率を所望の値となるように、伸長量または圧縮量を制御する、請求項6記載の光共振器。
【請求項8】
前記第2の部分に対して少なくとも伸長または圧縮のいずれか一方の変形をさせ、前記第2の部分の反射率を所望の値とするための第2の変形機構をさらに備え、
前記第1の変形機構および前記第2の変形機構は、それぞれ、第1および第2の応力生成機構を含み、前記第1および第2の応力生成機構は、前記制御部の制御にしたがって、前記第1の部分および前記第2の部分に、伸長または圧縮する方向の応力を加える、請求項1または2記載の光共振器。
【請求項9】
前記第1および第2の応力生成機構は、前記第1の部分および前記第2の部分の導波方向に沿ってそれぞれ設けられ、前記制御部により制御されて収縮または伸長する第1および第2のピエゾ素子を含む、請求項8記載の光共振器。
【請求項10】
前記応力生成機構は、
前記第1の部分および前記第2の部分の導波方向にそれぞれ沿って設けられる第1および第2の金属部材と、
前記第1および第2の金属部材を湾曲させる力を発生するように前記制御部により制御される第1および第2のピエゾ素子とを含み、
前記第1の部分および前記第2の部分は、前記第1および第2の金属部材の湾曲により、伸長または圧縮する方向の応力を受ける、請求項8記載の光共振器。
【請求項11】
前記第2の部分の前記共振周波数での反射率の調整時において、
前記第1の変形機構は、前記第1の部分の前記共振周波数近傍の透過率のディップの領域を、前記第1の部分の前記共振周波数近傍の透過率のディップの領域と重ならない領域まで移動させるだけの伸長または圧縮を行い、
前記第2の変形機構は、前記第2の部分の反射率を所望の値となるように、伸長量または圧縮量を制御する、請求項8記載の光共振器。
【請求項12】
前記第1の部分の前記共振周波数での反射率の調整時において、
前記第1の変形機構は、前記第1の部分の反射率を所望の値となるように、伸長量または圧縮量を制御する、請求項11記載の光共振器。
【請求項13】
光子を伝搬する光ファイバーとテーパー部を介して接続するナノ光ファイバーを備え、
前記テーパー部の両外側の前記光ファイバーの第1の部分および第2の部分には、それぞれ、第1のブラッグ回折格子と第2のブラッグ回折格子とが設けられ、
前記第1のブラッグ回折格子と前記第2のブラッグ回折格子との間で光共振器が形成されており、前記第1のブラッグ回折格子は、光子の入出力側であり、
前記ナノ光ファイバー近傍に、前記ナノ光ファイバーと光子の授受が可能なように配置された量子系をさらに備え、
前記量子系は、第1の周波数の光子に対応するエネルギー差を有する少なくとも2つのエネルギー準位を有し、
前記第1のブラッグ回折格子の設けられる前記光ファイバーの部分を伸長または圧縮するための第1の変形機構と、
前記第1および第2のブラッグ回折格子間を伝搬した光の位相のシフト量を検出するための検知器と、
前記検知器の検知結果に応じて、前記光共振器の共振周波数が所定の範囲に維持されるように前記第1の変形機構を制御する制御部とを備える、量子演算ユニット。
【請求項14】
前記第2の部分に対して少なくとも伸長または圧縮のいずれか一方の変形をさせ、前記第2の部分の反射率を所望の値とするための第2の変形機構をさらに備え、
前記第1の変形機構および前記第2の変形機構は、各々、前記第1の部分および前記第2の部分の対応する部分を、前記制御部の制御にしたがって、加熱または冷却する温度制御機構を含む、請求項13記載の量子演算ユニット。
【請求項15】
前記第2の部分に対して少なくとも伸長または圧縮のいずれか一方の変形をさせ、前記第2の部分の反射率を所望の値とするための第2の変形機構をさらに備え、
前記第1の変形機構および前記第2の変形機構は、それぞれ、第1および第2の応力生成機構を含み、前記第1および第2の応力生成機構は、前記制御部の制御にしたがって、前記第1の部分および前記第2の部分に、伸長または圧縮する方向の応力を加える、請求項13記載の量子演算ユニット。
【請求項16】
複数の量子演算ユニットと、
前記複数の量子演算ユニットを順次結合して、光子を伝搬するための複数の光ファイバーと、
前記量子演算ユニットと対応する光ファイバーとの結合部に設けられ、前段の前記量子演算ユニットから対応する前記量子演算ユニットへ前記光子を伝搬させ、あるいは、次段の前記量子演算ユニットに前記光子を伝搬させるかを選択的に切り替える複数のスイッチとを備え、
各前記複数の量子演算ユニットは、
光子を伝搬する光ファイバーとテーパー部を介して接続するナノ光ファイバーを含み、
前記テーパー部の両外側の前記光ファイバーの第1の部分および第2の部分には、それぞれ、第1のブラッグ回折格子と第2のブラッグ回折格子とが設けられ、
前記第1のブラッグ回折格子と前記第2のブラッグ回折格子との間で光共振器が形成されており、前記第1のブラッグ回折格子は、光子の入出力側であり、
前記ナノ光ファイバー近傍に、前記ナノ光ファイバーと光子の授受が可能なように配置された量子系をさらに含み、
前記量子系は、第1の周波数の光子に対応するエネルギー差を有する少なくとも2つのエネルギー準位を有し、
前記第1のブラッグ回折格子の設けられる前記光ファイバーの部分を伸長または圧縮するための第1の変形機構と、
前記第1および第2のブラッグ回折格子間を伝搬した光の位相のシフト量を検出するための検知器と、
前記検知器の検知結果に応じて、前記光共振器の共振周波数が所定の範囲に維持されるように前記第1の変形機構を制御する制御部とを含む、分散型量子計算システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光共振器の構成および共振特性の制御に関し、より特定的には、量子ゲートや単一光子源に適した光共振器、それを用いた量子ゲートおよび量子計算技術に関する。
【背景技術】
【0002】
(光ファイバー共振器)
【0003】
光ファイバーのコア内に一対のブラッグ回折格子を設けることで光共振器を作成し、誘導ブリルアン散乱レーザーの発振を実現した例が報告されている(たとえば、非特許文献1を参照)。
(共振器量子電気力学(CQED:Cavtiy Quantum ElectroDynamics)系)
【0004】
このような光ファイバー共振器の技術のさらなる応用例として、共振器に閉じ込められた光と原子が量子力学的に相互作用するCQED系がある。CQED系では、共振器内の量子ダイナミクスを光と原子のコヒーレントな相互作用が支配し、通常の系では散逸過程に阻まれて困難な、純度の高い量子状態の生成や特異な現象の観測が可能になる。
【0005】
CQED系は量子計算の実現に有力な系であると期待されている。
【0006】
特に近年では、光共振器の代わりに超伝導電気回路を自然原子の代わりに人工原子を用いた、回路量子電気力学(circuit QED)系が考案され、世界中の多くのグループがcircuit QED系に基づいた量子計算機の実現を目指した研究を進めている。
【0007】
しかし、circuit QED 系に限らずどの物理系を用いた実験でも、現在実装できている量子ビットの数は数ビット~数十ビット程度に留まっており、現在の技術の延長では将来的にも数百ビット程度が限界であると考えられている。この限界を打ち破り、大規模な量子計算を実現する方法として、多数の小規模な量子計算機を接続してネットワーク化する「分散型量子計算」の手法が提案されている。すなわち、量子ネットワークによる量子計算である。
【0008】
ここで、量子ネットワークのためには系全体を極低温に維持する必要があるcircuit QED系に対して、室温でも量子性を失わない光領域の光子と直接相互作用するイオントラップ系を用いた手法が分散型量子計算の実装として有力視されている。
【0009】
光領域のCQED系を用いた手法は、ユニット間の接続が決定論的に動作するという大きな利点をもち、光ファイバーによって光子を長距離伝送できるという利点をもつ。
【0010】
この中でも、光共振器としてナノ光ファイバーを用いた「ナノ光ファイバーCQED 系」は、ファイバー光学との整合性が高く、スケーラビリティに優れる。さらに、共振器との結合レートを保ったまま多数の原子を結合可能という特長ももつ(非特許文献2、非特許文献3を参照)。
【0011】
そこで、上述したような実装可能な量子ビット数の限界を打ち破る「分散型量子計算」を実現するために、従来技術として、ナノ光ファイバー共振器量子電気力学系を用いた量子演算ユニットの提案がある(特許文献1、特許文献2を参照)。これらの構成では、複数個の量子系を配置した量子計算ユニットを決定論的に動作させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2016-153850号公報明細書
【特許文献2】WO2022/009950A1公報明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Shinya Kato AND Takao Aoki, “Single-frequency fiber Fabry-Perot Brillouin laser”, Vol. 47, No. 19 / 1 October 2022 / Optics Letters
【非特許文献2】S. Kato et al., "Observation of dressed states of distant atoms with delocalized photons in coupled-cavities quantum electrodynamics", Nature Communications volume 10, Article number: 1160 (2019) |https://doi.org/10.1038/s41467-019-08975-8| www.nature.com/naturecommunications
【非特許文献3】青木隆朗 : “分散型量子計算に向けたナノ光ファイバー共振器量子電気力学系”, 物理学会誌 No.6 Vol.76, 2021, pp.339-348
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、共振周波数を安定的に制御することが必要な光ファイバー共振器を利用するシステムの安定的な運用、たとえば、上述したような「ナノ光ファイバー共振器量子電気力学系を用いた量子演算ユニット」による量子演算を実現するためには、反射ミラーの反射率、入出力結合ミラーの透過率を所望の値に設定した上で、所定の期間(少なくとも、所望の量子演算を実行するのに要する時間)にわたって、光共振器の共振周波数を所望の値に安定的に制御する必要がある。
【0015】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、所望の共振周波数を動作中も安定して維持することが可能な光共振器を提供することである。
【0016】
また、この発明の目的は、より特定的には、ナノ光ファイバー型共振器において、所望の共振周波数を動作中も安定して維持することが可能な光共振器を提供することである。
【0017】
この発明の他の目的は、単一光子源または量子演算ユニットとして使用する際に、量子系(原子)の所望の準位間エネルギー(励起エネルギー)またはその近傍に相当する共鳴周波数を有し、かつ、光共振器のパラメータ(ミラー反射率)を所望の値に設定することが可能な光共振器を提供することである。
【0018】
この発明のさらに他の目的は、上記光共振器を用いた量子演算ユニット、及びこれを用いた分散型量子演算システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明の1つの局面に従うと、光共振器であって、光子を伝搬する光ファイバーを備え、光ファイバーの第1の部分および第2の部分には、それぞれ、第1のブラッグ回折格子と第2のブラッグ回折格子とが設けられ、第1のブラッグ回折格子と第2のブラッグ回折格子との間で光共振器が形成されており、第1の部分に対して少なくとも伸長または圧縮のいずれか一方の変形をさせるための第1の変形機構と、第1および第2のブラッグ回折格子間を伝搬した光の位相のシフト量を検出するための検知器と、検知器の検知結果に応じて、光共振器の共振周波数が所定の範囲に維持されるように第1の変形機構を制御する制御部とを備える。
【0020】
好ましくは、光ファイバーは、第1の部分および第2の部分の間に設けられ、テーパー部を介して光子を伝搬可能に光ファイバーに接続するナノ光ファイバーを含む。
【0021】
好ましくは、光共振器は、第2の部分に対して少なくとも伸長または圧縮のいずれか一方の変形をさせ、第2の部分の反射率を所望の値とするための第2の変形機構をさらに備え、第1の変形機構および第2の変形機構は、各々、第1の部分および第2の部分の対応する部分を、制御部の制御にしたがって、加熱または冷却する温度制御機構を含む。
【0022】
好ましくは、温度制御機構は、制御部の制御に応じて、発熱または吸熱を行うペルチェ素子である。
【0023】
好ましくは、温度制御機構は、光ファイバーに接するように配置される半導体基板と、半導体基板を支持するセラミック台と、温度制御機構に対して、半導体基板に吸収される光を照射する光源とを含む。
【0024】
好ましくは、第2の部分の共振周波数での反射率の調整時において、第1の変形機構は、第1の部分の共振周波数近傍の透過率のディップの領域を、第1の部分の共振周波数近傍の透過率のディップの領域と重ならない領域まで移動させるだけの伸長または圧縮を行い、第2の変形機構は、第2の部分の反射率を所望の値となるように、伸長量または圧縮量を制御する。
【0025】
好ましくは、第1の部分の共振周波数での反射率の調整時において、第1の変形機構は、第1の部分の反射率を所望の値となるように、伸長量または圧縮量を制御する。
【0026】
好ましくは、光共振器は、第2の部分に対して少なくとも伸長または圧縮のいずれか一方の変形をさせ、第2の部分の反射率を所望の値とするための第2の変形機構をさらに備え、第1の変形機構および第2の変形機構は、それぞれ、第1および第2の応力生成機構を含み、第1および第2の応力生成機構は、制御部の制御にしたがって、第1の部分および第2の部分に、伸長または圧縮する方向の応力を加える。
【0027】
好ましくは、第1および第2の応力生成機構は、第1の部分および第2の部分の導波方向に沿ってそれぞれ設けられ、制御部により制御されて収縮または伸長する第1および第2のピエゾ素子を含む。
【0028】
好ましくは、応力生成機構は、第1の部分および第2の部分の導波方向にそれぞれ沿って設けられる第1および第2の金属部材と、第1および第2の金属部材を湾曲させる力を発生するように制御部により制御される第1および第2のピエゾ素子とを含み、第1の部分および第2の部分は、第1および第2の金属部材の湾曲により、伸長または圧縮する方向の応力を受ける。
【0029】
好ましくは、第2の部分の共振周波数での反射率の調整時において、第1の変形機構は、第1の部分の共振周波数近傍の透過率のディップの領域を、第1の部分の共振周波数近傍の透過率のディップの領域と重ならない領域まで移動させるだけの伸長または圧縮を行い、第2の変形機構は、第2の部分の反射率を所望の値となるように、伸長量または圧縮量を制御する。
【0030】
好ましくは、第1の部分の共振周波数での反射率の調整時において、第1の変形機構は、第1の部分の反射率を所望の値となるように、伸長または圧縮量を制御する。
【0031】
この発明の他の局面に従うと、量子演算ユニットであって、光子を伝搬する光ファイバーとテーパー部を介して接続するナノ光ファイバーを備え、テーパー部の両外側の光ファイバーの第1の部分および第2の部分には、それぞれ、第1のブラッグ回折格子と第2のブラッグ回折格子とが設けられ、第1のブラッグ回折格子と第2のブラッグ回折格子との間で光共振器が形成されており、第1のブラッグ回折格子は、光子の入出力側であり、ナノ光ファイバー近傍に、ナノ光ファイバーと光子の授受が可能なように配置された量子系をさらに備え、量子系は、第1の周波数の光子に対応するエネルギー差を有する少なくとも2つのエネルギー準位を有し、第1のブラッグ回折格子の設けられる光ファイバーの部分を伸長または圧縮するための第1の変形機構と、第1および第2のブラッグ回折格子間を伝搬した光の位相のシフト量を検出するための検知器と、検知器の検知結果に応じて、光共振器の共振周波数が所定の範囲に維持されるように第1の変形機構を制御する制御部とを備える。
【0032】
好ましくは、第2の部分に対して少なくとも伸長または圧縮のいずれか一方の変形をさせ、第2の部分の反射率を所望の値とするための第2の変形機構をさらに備え、第1の変形機構および第2の変形機構は、各々、第1の部分および第2の部分の対応する部分を、制御部の制御にしたがって、加熱または冷却する温度制御機構を含む。
【0033】
好ましくは、第2の部分に対して少なくとも伸長または圧縮のいずれか一方の変形をさせ、第2の部分の反射率を所望の値とするための第2の変形機構をさらに備え、第1の変形機構および第2の変形機構は、各々、第1の部分および第2の部分の対応する部分を、制御部の制御にしたがって、伸長または圧縮する方向の応力を加える応力生成機構を含む。
【0034】
この発明のさらに他の局面に従うと、分散型量子計算システムであって、複数の量子演算ユニットと、複数の量子演算ユニットを順次結合して、光子を伝搬するための複数の光ファイバーと、量子演算ユニットと対応する光ファイバーとの結合部に設けられ、前段の量子演算ユニットから対応する量子演算ユニットへ光子を伝搬させ、あるいは、次段の量子演算ユニットに光子を伝搬させるかを選択的に切り替える複数のスイッチとを備え、各複数の量子演算ユニットは、光子を伝搬する光ファイバーとテーパー部を介して接続するナノ光ファイバーを含み、テーパー部の両外側の光ファイバーの第1の部分および第2の部分には、それぞれ、第1のブラッグ回折格子と第2のブラッグ回折格子とが設けられ、第1のブラッグ回折格子と第2のブラッグ回折格子との間で光共振器が形成されており、第1のブラッグ回折格子は、光子の入出力側であり、ナノ光ファイバー近傍に、ナノ光ファイバーと光子の授受が可能なように配置された量子系をさらに含み、量子系は、第1の周波数の光子に対応するエネルギー差を有する少なくとも2つのエネルギー準位を有し、第1のブラッグ回折格子の設けられる光ファイバーの部分を伸長または圧縮するための第1の変形機構と、第1および第2のブラッグ回折格子間を伝搬した光の位相のシフト量を検出するための検知器と、検知器の検知結果に応じて、光共振器の共振周波数が所定の範囲に維持されるように第1の変形機構を制御する制御部とを含む。
【発明の効果】
【0035】
本発明の光共振器の構成および制御方法によれば、所望の共振周波数を動作中も安定して維持することが可能である。より特定的には、ナノ光ファイバー型共振器において、所望の共振周波数を動作中も安定して維持することが可能となる。
【0036】
また、本発明の光共振器の構成および制御方法によれば、単一光子源または量子演算ユニットとして使用する際に、量子系(原子)の所望の準位間エネルギー(励起エネルギー)またはその近傍に相当する共鳴周波数を有し、かつ、光共振器のパラメータを所望の値に設定することが可能となる。
【0037】
また、本発明の光共振器の構成および制御方法によれば、光共振器を用いた量子演算ユニット、及びこれを用いた分散型量子演算システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】実施形態1の量子計算装置1000の構成を示す概念図である。
図2】実施形態1の単一光子源11の構成を示す概念図である。
図3】実施形態1の量子計算ユニット13-mの構成を示す概念図である。
図4】Λ型3準位原子をトラップした光共振器の模式図である。
図5】ファブリペロー型光共振器と共振周波数の関係を示す図である。
図6】ファブリペロー型光共振器と透過率の周波数依存性を示す図である。
図7】生成されるファイバーブラッグ回折格子の光学特性を説明するための概念図である。
図8】Geドープシングルモードシリカファイバーについて、ブラッグ回折格子を形成した場合の光学特性を説明する図である。
図9】ブラッグ回折格子の透過率と共振周波数を制御する制御機構200の構成を示す機能ブロック図である。
図10】制御機構200による制御の一例を示すタイミングチャートである。
図11】ファイバーブラッグ回折格子223aの反射率の設定と制御について説明するための概念図である。
図12】ファイバーブラッグ回折格子223bの反射率の設定と制御について説明するための概念図である。
図13】ブラッグ回折格子223bの共振周波数を微動制御するための制御機構200の構成を示すブロック図である。
図14】ECLD3010の構成と飽和吸収分光系3040の動作を説明するための概念図である。
図15】ロックインアンプ2706からの出力を説明するための図である。
図16】セパレータ240の構成の一例を示す図である。
図17】原子-光子間で実現される量子ゲートの一例を示す概念図である。
図18】原子-光子間で実現される量子ゲートの他の例を示す概念図である。
図19】ブラッグ回折格子の透過率と共振周波数を制御する制御機構200´の構成を示す機能ブロック図である。
図20】ブラッグ回折格子223bの共振周波数を微動制御するための制御機構200´の構成を示すブロック図である。
図21】ブラッグ回折格子の透過率と共振周波数を制御する制御機構200´´の構成を示す機能ブロック図である。
図22】金属部材235aとファイバーブラッグ回折格子223aが設けられる領域に対応する端部221aの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態の光ファイバー共振器の構成について、ナノ光ファイバー共振器を例として、その構成およびその制御方法を説明し、ナノ光ファイバー共振器を単一光子源や量子ゲートに応用する場合を例として説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素および処理工程は、同一または相当するものであり、必要でない場合は、その説明は繰り返さない。
【0040】
なお、以下では、本発明における制御方法は、単体のコンピュータ装置にインストールされ、光共振器の特性制御を実行するコンピュータプログラムにより実行されるものとして説明する。
【0041】
ただし、制御方法の処理は、複数のコンピュータ装置で分散処理されるものであってもよいし、コンピュータ処理を実行する演算装置も単数でも複数でもよい。また、制御方法の処理は、このようなコンピュータ装置にインストールされるプログラムに限らず、一般的には、演算装置と記憶装置が組み合わされた専用のIC回路、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、その他の電子回路に実装された装置により実行される構成であってもよい。
[実施の形態1]
(量子計算装置1000)
【0042】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0043】
図1は、実施の形態1の量子計算装置1000の構成を示す概念図である。
【0044】
図1を参照して、本実施形態の量子計算装置1000は、量子計算のための単一光子源11と、M個の量子計算ユニット13-1~13-Mと、M個の光スイッチ14-1~14-Mと、半波長板15-1~15-(M+1)と、偏光状態測定器16と、光ファイバー12とを有する。ただし、Mは2以上の整数である。
【0045】
なお、量子計算装置1000は、一例として、量子計算ユニット13-1~13-Mを個別の領域内に設けて、光ファイバー12の長さをこれらを接続可能な程度の所定の長さ以上として、分散型量子計算のために用いることができる。もっとも、これは本実施形態を限定するものではない。量子計算装置1000は、非分散型の量子計算のために用いることもできる。
(光ファイバー12)
【0046】
光ファイバー12は、単一光子源11、量子計算ユニット13-1~13-M、光スイッチ14-1~14-M、および偏光状態測定器16を光学的に接続し、これらの間で光子を伝搬する。
【0047】
本実施形態では、単一光子源11の一端は光ファイバー12を介して光スイッチ14-1の一端に光学的に接続され、光スイッチ14-i(ただし、i=1,…,(M-1))は光ファイバー12を介して光スイッチ14-(i+1)および量子計算ユニット13-iの一端にそれぞれ光学的に接続され、光スイッチ14-Mは光ファイバー12を介して偏光状態測定器16および量子計算ユニット13-Mの一端にそれぞれ光学的に接続されている。
【0048】
光ファイバー12は、光子を1つのモードに留まらせるために、シングルモード光ファイバーであることが望ましい。
(単一光子源11)
【0049】
図2は、実施形態1の単一光子源11の構成を示す概念図である。
【0050】
図2に例示すように、本実施形態の単一光子源11は、ナノ光ファイバー111、光ファイバー12の端部121a-0、光ファイバーの端部121b-0、テーパー部122a-0,122b-0、原子112(複数の準位を持つ量子系)、およびそれらを真空状態の内部に収納する真空チャンバ113を有する。
【0051】
ナノ光ファイバー111は、光の波長以下の直径を持つ極細の光ファイバーであり、ファイバー全体がコア、それを取り囲む真空がクラッドとして機能する。
【0052】
このようなナノ光ファイバー111の製造方法は、特に限定されないが、たとえば、特許文献1に開示されている。
【0053】
ナノ光ファイバー111の一端は、テーパー部122a-0を介して光ファイバー12の端部121a-0に光学的に接続されている。同様に、ナノ光ファイバー111の他端は、テーパー部122b-0を介して光ファイバーの端部121b-0に光学的に接続されている。すなわち、構造としては、光ファイバー12の端部121a-0からナノ光ファイバー111に至り、さらに光ファイバー12の端部121b-0に至るまで、テーパー部122a-0およびテーパー部122b-0を含むファイバー全体にわたって、コア径とクラッド径の比が一定またはほぼ一定である。
【0054】
端部121a-0,121b-0のコアは、それぞれ、テーパー部122a-0,122b-0のコアを介してナノ光ファイバー111のコアにつながっている。端部121a-0および端部121b-0のクラッドは、それぞれ、テーパー部122a-0,122b-0のクラッドを介してナノ光ファイバー111のクラッドにつながっている。例えば、ナノ光ファイバー111のコアは、テーパー部122a-0,122b-0および端部121a-0,121b-0のコアと一体である。
【0055】
ナノ光ファイバー111のクラッドは、テーパー部122a-0,122b-0および端部121a-0,121b-0のクラッドと一体である。ここで、端部121a-0のコアおよびクラッドの直径は、それぞれ、ナノ光ファイバー131-0のコアおよびクラッドの直径よりも大きく、テーパー部122a-0でのコアおよびクラッドの直径は、ナノ光ファイバー111側から端部121a-0側に向かうにつれて徐々に大きくなっている。同様に、端部121b-0のコアおよびクラッドの直径は、それぞれ、ナノ光ファイバー131-0のコアおよびクラッドの直径よりも大きく、テーパー部122b-0でのコアおよびクラッドの直径も、ナノ光ファイバー111側から端部121b-0側に向かうにつれて徐々に大きくなっている。
【0056】
このような構造により、光ファイバー12ではコアとクラッドの屈折率差によって光が閉じ込められ、ナノ光ファイバー111ではクラッドと真空の屈折率差によって光が閉じ込められ、それらをつなぐテーパー部122a-0およびテーパー部122b-0ではコア・クラッド・真空の三層すべてが光の閉じ込めに寄与する。
【0057】
端部121a-0および端部121b-0のコアには、生成する光子(単一光子)の波長を反射帯域に含んだファイバーブラッグ回折格子123a-0および123b-0がそれぞれ設けられている。ファイバーブラッグ回折格子123a-0および123b-0はミラーとして機能する。
【0058】
原子112は、公知のトラップ方法で、ナノ光ファイバー111の外側に配置される。原子112は、中性原子であってもよいし、イオンであってもよい。以下では、原子112は、例えば、セシウム原子であるものとして説明する。
【0059】
単一光子源11による決定論的単一光子源の実現方法として最も簡単なのは、基底状態である1つの下準位|g〉と、励起状態である1つの上準位|e〉とを持つ2準位原子のパーセル効果に基づく方法である。
【0060】
すなわち、図示していないレーザー照射装置によってコントロール光を原子112に照射する等の方法で原子112を上準位|e〉に励起させるだけで、端部121a-0から光ファイバー12に光子111(単一光子)が自然放出される。しかし、2準位原子のパーセル効果に基づく方法では、光子111の波形を制御できない。
【0061】
そこで、後述するようなΛ型3準位原子を用いると、光子111の波形を自在に制御可能となる。すなわち、初期状態としてコントロール光の振幅Ω=0での暗状態|u,0〉(原子が状態uで光子数が0)としておき、Ωを十分ゆっくり0から∞に向けて変化させると、系の状態は暗状態のまま断熱的に|g,1〉(原子が状態gで光子数が1)となり、単一光子源11内に光子111(単一光子)が生成され、端部121a-0から光ファイバー12に光子111が放出される。ここで、コントロール光の振幅Ωの時間変化を介して光子の波形を制御できる。
【0062】
なお、本明細書における他の記載事項から分かるように、本明細書において「決定論的な構成」とは、理想的な条件下(実験的損失が無視できる状況)において100%の確率を実現できる構成のことを指す。一例として、単一光子源11は、理想的な条件下であれば100%の確率で1光子状態を生成することができるため、単一光子源11を「決定論的単一光子源」と呼ぶ。
(量子計算ユニット13-m)
【0063】
図3は、実施形態1の量子計算ユニット13-mの構成を示す概念図である。
【0064】
量子計算ユニット13-mを例示して説明するものとし、他の量子計算ユニットも基本的な構成は同様である。
【0065】
図3を参照して、本実施形態の量子計算ユニット13-mは、ナノ光ファイバー131-mと、光ファイバー12の端部121a-mと、光ファイバーの端部121b-mと、テーパー部122a-mと、テーパー部122b-mと、K(m)個の原子132-m(光子の状態と相互作用する量子ビットとして機能する量子系)と、それらを真空状態の内部に収納する真空チャンバ133-mとを有する。ただし、m=1,…,Mであり、Mは2以上の自然数である。K(m)は2以上の自然数であり、K(m)個の原子132-mをそれぞれ、原子a-m,…,aK(m)-mと表現する。原子132-mは、特に限定されないが、レーザー冷却原子である。
【0066】
ナノ光ファイバー131-mの構成については、図2に示した単一光子源11におけるナノ光ファイバー111の構成と基本的に同様であって、光の波長以下の直径を持つ極細の光ファイバーであり、ファイバー全体がコア、それを取り囲む真空がクラッドとして機能する。
【0067】
したがって、ナノ光ファイバー131-mが、ナノ光ファイバー111に対応し、テーパー部122a-mおよび122b-mが、それぞれ、テーパー部122a-0およびテーパー部122b-0に対応し、ナノ光ファイバー131-mの一端は、テーパー部122b-mを介して光ファイバー12の端部121b-mに光学的に接続されている。同様に、ナノ光ファイバー131-mの他端は、テーパー部122a-mを介して光ファイバーの端部121a-mに光学的に接続されている。
【0068】
なお、ナノ光ファイバーについては、上述した非特許文献2の他、以下の参考文献1にも記載されている。これらの文献は参照によって本願明細書に取り込まれる。
参考文献1: S. Kato and T. Aoki, "Strong coupling between a trapped single atom and an all-fiber cavity", Physical Review Letters 115, 093603 (2015), DOI: 10.1103/PhysRevLett.115.093603.
【0069】
端部121b-mおよび端部121a-mのコアには、光ファイバー12を伝搬する光子の波長を反射帯域に含むファイバーブラッグ回折格子(FBG:fiber Bragg gratings)123b-mおよび123a-mがそれぞれ設けられている。ファイバーブラッグ回折格子123b-mおよび123a-mは、光子を反射する光共振器におけるミラーとして機能する。そこで、以下では、ファイバーブラッグ回折格子123b-mをフロントミラー、ファイバーブラッグ回折格子123a-mを、エンドミラーと呼ぶ場合がある。
【0070】
端部121b-mおよび端部121a-mのコアに、ファイバーブラッグ回折格子123b-mおよび123a-mをそれぞれ設け、後述するような構成と方法で、それぞれのファイバーブラッグ回折格子による透過率及び反射率を調整し、回折格子の格子間隔を所定の値に維持するように制御して、端部121b-m側からナノ光ファイバー131-mに入射させた光子を、端部121b-m側から出射させることができる。
【0071】
K(m)個の原子132-m(複数個の原子a-m,…,aK(m)-m)は、公知のトラップ方法で、ナノ光ファイバー131-mの外側に配置され、ナノ光ファイバー131-mの長手方向に沿って間隔を置いて配置される。
【0072】
例えば、K(m)個の原子132-m(複数個の原子a-m,…,aK(m)-m)は、ナノ光ファイバー131-mの長手方向に沿って一列に並べられる。特に限定されないが、原子a-m,…,aK(m)-mは、それぞれナノ光ファイバー131-m内にできる定常波の腹部分または腹部分の近傍に対応する位置に配置されることが望ましい。
【0073】
しかし、定常波の設定に応じ、定常波の節部分または節部分の近傍に対応する位置でも、原子a-m,…,aK(m)-mと、量子計算ユニット13-mとで構成されるナノ光ファイバー共振器QED(quantum electrodynamics)系(以下、単に「光共振器」)との結合が十分得られるのであれば、定常波の節部分または節部分の近傍に対応する位置に原子a-m,…,aK(m)-mが配置されてもよい。
【0074】
原子132-mは、中性原子であってもよいし、イオンであってもよい。原子132-mは、例えば、上述のとおり、セシウム原子である。例えば、原子132-mが中性原子である場合には公知の双極子トラップ等で原子132-mがトラップされ、イオンである場合には公知のイオントラップ方法で原子132-mがトラップされる。
【0075】
原子132-mのトラップ位置の条件は、原子112が原子132-mに置換され、ナノ光ファイバー111がナノ光ファイバー131-mに置換されること以外、例えば、図2に示した単一光子源におけるトラップ位置の条件と同じである。
【0076】
このような原子とナノ光ファーバー内の光子との相互作用は、いわゆるエバネッセント場を介して行われることになる。
(Λ型3準位原子)
【0077】
図4は、Λ型3準位原子をトラップした光共振器の模式図である。
【0078】
図4では、ナノ光ファイバー131-mを伝搬する光子と相互作用する各原子ak-m(ただし、k=1,…,K(m))のCQED系のΛ型3準位原子の電子準位が模式的に示される。
【0079】
現実の原子ak-mは複雑なエネルギー準位構造を持つが、CQED系のダイナミクスに実際に関与するのは、少数の準位に限られる(例えば、共振器の共鳴周波数や外部から原子ak-mに照射するコントロール光(レーザー光)の周波数に近く、遷移の選択則を満たす準位など)。ここで、原子のエネルギー準位構造を、一つの励起状態と2つの安定状態との間に許容な光学遷移がある量子系として、モデル化したものを3準位原子という。
【0080】
そして、図4のような3準位原子をΛ型3準位原子という。
【0081】
特に限定されないが、以下では、「量子ゲート」としての動作の説明にあたっては、このΛ型3準位原子を例として説明することとする。
【0082】
図4に例示するように、Λ型3準位原子は、基底状態である2つの下準位|u〉および|g〉と、励起状態である1つの上準位|e〉とを持つ。
【0083】
|g〉から|e〉への遷移|g〉→|e〉では、原子ak-mが共振器と結合レートgで結合しており、一方、|u〉から|e〉への遷移|u〉→|e〉では(遷移の偏光が共振器モードの偏光と直交する、或いは共振器に対して十分に非共鳴であり実効的に結合が無視できる等の理由で)、原子ak-mが共振器と結合していない。以下では、共振器と結合する側の|g〉→|e〉のエネルギー差に相当する光が角周波数ωaであるものとする。
【0084】
ただし、遷移|u〉→|e〉は、図示していないレーザー照射装置によって共振器外から照射したコントロール光によって駆動できるものとし、そのコントロール光の振幅をラビ周波数で表してΩとする。
【0085】
なお、ナノ光ファイバー131-mを伝搬する光子と相互作用するΛ型3準位原子は、遷移|g〉→|e〉と遷移|u〉→|e〉にそれぞれ共鳴するコントロール光Θg,Θuが、図示していないレーザー照射装置によって共振器外から原子ak-mに照射されることで、コヒーレントなラマン遷移による2つの基底状態の準位(基底準位)|g〉,|u〉間のラビ振動を起こしたり、これらの任意の重ね合わせ(ρ|g〉+ρ|u〉)に制御したりできる。ここで、ρおよびρは|ρ2+|ρ2=1を満たす複素数の係数(|ρ2および|ρ2は、各状態の確率を表す)である。
(量子ゲートとしての操作)
(コントロール光なし(Ω=0)の場合)
【0086】
まず、コントロール光なし(Ω=0)の場合を考える。原子ak-mが基底準位|g〉にあるとき、系の光学応答は下準位|g〉と上準位|e〉とを持つ2準位原子の場合と同じであり、協同係数Cが1よりも十分大きければ、入射した光子はほとんど損失することなく反射し、その位相はシフトしない(振幅反射率が1)。
【0087】
ここで共振器の協同係数CはC=g2/2κγで表される。κは共振器の外部損失および内部損失による振幅緩和レートであり、γ=Γ/2であり、Γは共振器からの自然放出によるエネルギーの緩和レートである。一方、原子ak-mがもう1つの基底準位|u〉にあるとき、原子ak-mは共振器と結合していないので、系の光学応答は原子なし(空の共振器)の場合と同じであり、入射した光子はほとんど損失することなく反射し、その位相がπシフトする(振幅反射率が-1)。
【0088】
すなわち、原子ak-mの状態(量子状態)を制御することで系の光学応答を切り替えることができる。原子が2つの基底状態|g〉および|u〉の重ね合わせ状態(ρ|g〉+ρ|u〉)の場合は、系は上記2つの応答の「重ね合わせの応答」を示す。
すなわち、入射した光子がCQED系と相互作用した後の状態は、
i)原子が基底準位|g〉にあり、入射した光子が振幅反射率1で反射した状態と
ii)原子が基底準位|u〉にあり、入射した光子が振幅反射率-1で反射した状態と
の重ね合わせとなる。つまり、光子をCQED系に反射させるだけで、原子ak-mと光子のエンタングルメントを生成できる。この応答によって量子ゲートを実現できる。
(コントロール光あり(Ω≠0)の場合)
【0089】
次に、コントロール光あり(Ω≠0)の場合を考える。この場合には原子ak-mは準位の組{|u,n―1〉,|e,n―1〉,|g,n〉}の間でのみに結合を起こし、固有状態はこれらの重ね合わせで表される。
【0090】
ここで|i,n〉はCQED系全体の状態|i>A(×)|n>Cを表す。ただし、(×)はテンソル積を表し、|i>Aは原子ak-mの何れかの基底状態|u>または|g>もしくは励起状態|e>を表し、nは共振器内の光子の数を表し、|n>Cは共振器の状態を表す。
【0091】
特に、この系の固有状態には、上準位|e>を含まない「暗状態」と呼ばれ、自然放出による緩和を受けない状態が存在する。
【0092】
また、この「暗状態」の重ね合わせ状態を構成している|u>および|g>の係数は、コントロール光の振幅Ωに依存し、特に、Ω=0のときは、|u,n-1>であり、Ω→∞のときは、|g,n>である。
【0093】
したがって、Ωを十分ゆっくり0→∞と変化させることで、系の状態を暗状態に保ったまま(上準位|e〉に励起させることなく)断熱的に|u,n-1>から|g,n>へと変化させることができる。また、Ωを十分ゆっくり∞→0と変化させることでその逆の時間発展も可能である。
【0094】
さらに、これに基づいて、原子と光子の量子状態変換も実現できることが知られている。CQED系におけるこのような断熱的な状態変化は、真空場誘導ラマン断熱通過(Vacuum STImulated Raman Adiabatic Passage, vSTIRAP)と呼ばれ、単一光子生成や波形制御などにも使用される。
(光共振器のパラメータ)
【0095】
図5は、ファブリペロー型光共振器と共振周波数の関係を示す図である。
【0096】
図5(a)に示すように、簡単な光共振器の構成として、合わせ鏡にして光を閉じ込めるファブリペロー(Fabry-Perot)共振器を考える。
【0097】
この共振器では電磁波がミラーの間を往復して戻ってくるときに電磁波の振動の位相が2πの整数倍進んでいる時に電磁場が強め合って共振する。それ以外のときは、多数回往復したすべての電場の重ね合わせはゼロになってしまうため共振器の内部に電場が存在することができなくなる。共振条件は上記の条件を「共振器一往復の光路長が電磁波の波長λの整数倍である」と表現することができる。
【0098】
言い換えると、共振条件は、以下の式のようになる。
【数1】

L:共振器長、c:光速、λ:光の波長
【0099】
したがって、図5(b)に示すように、周波数軸上で見ると共振モードはc/2Lで等間隔に並んでいる。この周波数間隔をフリースペクトラルレンジ(FSR:Free spectral range)という。
【0100】
共振モードが損失を持つ場合にはこの周波数軸上の櫛状のスペクトル一本一本が、ローレンツ型になる。この半値全幅2κcが共振モードの損失レートである。
【0101】
図6は、ファブリペロー型光共振器とその透過率の周波数依存性を示す図である。
【0102】
まず、図6(a)に示すように、ファブリペロー型光共振器に光が入射した場合、反射率に応じて反射光が生じるとともに、透過率に応じて透過光が生じる。
【0103】
図6(b)に示すように、この透過率は、共鳴周波数ωcにおいて極大値をとるほか、共鳴周波数からフリースペクトラルレンジの整数倍だけ離れた周波数においても周期的に極大値をとる。
【0104】
共振器の縦モード間隔であるフリースペクトラルレンジΔFSRは、以下の式で表される。
【数2】
【0105】
また、透過光強度のピークの半値全幅ΔFWHMは、以下のようにあらわすことができる。
【数3】
【0106】
ここで、κは、共振器の全振幅緩和レートであり、外部損失レートκexと内部損失レートκiの和で表される。Tは、入出力結合ミラーの透過率であり、αは、共振器1往復当たりの内部損失率である。すなわち、共振スペクトルの半値全幅ΔFWHMは、全エネルギー緩和レート2κに等しい。
【0107】
なお、光子の入出力に用いられる入出力結合ミラーに対向する反射ミラーの透過率については、共振器の内部損失に含まれることになる。
【0108】
フリースペクトラルレンジΔFSRと透過光強度のピークの半値全幅ΔFWHMとの比は、共振の鋭さを表し、フィネスと呼ばれ、以下の式で表される。
【数4】
【0109】
したがって、フィネスは、共振器1往復当たりの全損失率(T+α)で決まることになる。そこで、内部損失率αの値を事前に決定できていれば、共振スペクトルのフィネスをモニタすれば、入出力結合ミラーの透過率Tを算出できる。
【0110】
特に限定されないが、共振器の内部損失率αについては、上述した参考文献1(再掲:DOI: 10.1103/PhysRevLett.115.093603)および以下の参考文献2に記載の方法により決定することができる。
参考文献2:S. K. Ruddell, K. E. Webb, M. Takahata, S. Kato, and T. Aoki, “Ultra-low-loss nanofiber Fabry-Perot cavities optimized for cavity quantum electrodynamics”, Optics Letters Vol. 45, Issue 17, pp. 4875-4878 (2020), DOI: 10.1364/OL.396725
【0111】
すなわち、要約すると、入出力結合ミラー側から入射する光をオフにした後に、このミラーからの反射光強度の減衰の時間変化を観測することで、内部損失率αを決定することが可能である。
<ブラッグ回折格子を用いた光共振器のパラメータの制御>
【0112】
光ファイバーのコア中にブラッグ回折格子を形成すると、ブラッグ回折格子の格子間隔と実効屈折率で規定される周波数の光に対して、ミラーとして機能する。
【0113】
したがって、光ファイバー中において、所定の共振器長に相当する間隔を置いた2か所のコアの領域に、所定の格子間隔のブラッグ回折格子を形成すると、光共振器を構成することができる。
【0114】
このような光ファイバー中へのブラッグ回折格子の生成方法については、以下の公知文献に開示されている。以下では、簡単に、その生成方法について述べる。
公知文献1:Shinya Kato AND Takao Aoki, “Single-frequency fiber Fabry-Perot Brillouin laser”, Vol. 47, No. 19 / 1 October 2022 / Optics Letters
【0115】
光ファイバー中に生成するブラッグ回折格子は、「ファイバブラッググレーティング(FBG:fiber Bragg grating))」と呼ばれる。これは、紫外光誘起屈折率変化を用いて、コア内にブラッグ回折格子を形成したものであって、以下の式で表される特定の波長λBの光を選択的に反射させることができる。
【数5】

(nc:光ファイバーの実効屈折率、LB:屈折率変動の1周期の長さ)
【0116】
FBGを生成するためには、集光した深紫外レーザー光を位相マスクを通すことで2つのビームに分けて干渉を起こさせたビームで、GeドープシングルモードシリカファイバーのコアのFBGを生成したい領域を走査する。
【0117】
本実施の形態では、後述するように、ブラッグ回折格子を加熱することで、一定の温度において所望の格子間隔とすることができるようにブラッグ回折格子を作成する。
【0118】
図7は、生成されるファイバーブラッグ回折格子の光学特性を説明するための概念図である。
【0119】
図7(a)は、単一のブラッグ回折格子をファイバーに設けた場合の透過率の周波数依存性を示す。図7(a)に示すように、上述したようなブラッグ回折格子では、特定の波長の光が選択的に反射されること対応して、特定の周波数の光については、透過率が極小となる。
【0120】
一方で、図7(b)は、FBGを所定の共振器長に相当する間隔を置いて生成した場合の透過率の周波数依存性を示す。
【0121】
図6(b)のファブリペロー光共振器の場合と同様に、2つのFBGにより構成される光共振器の共振周波数ωcおよびこれとフリースペクトラルレンジ分だけ離れた位置で、透過率が極大となるような特性を示す。もっとも、ファブリペロー光共振器では、たとえば、多層誘電膜を用いたミラーを使用することで、広い周波数領域にわたって、ミラーの反射率を所定値以上に設定することが可能であるのに対して、FBGにより構成される光共振器では、ブラッグ回折格子は、反射率の高い周波数領域が比較的限定された領域であるために、図7(b)に示すように、ブラッグ回折格子の透過率の周波数依存性をバックグラウンドにして、共振器周波数およびこれとフリースペクトラルレンジ分だけ離れた透過率ピークが重なったような周波数依存性を示すことになる。
【0122】
図8は、上述した非特許文献1において、Geドープシングルモードシリカファイバーについて、ブラッグ回折格子を形成した場合の光学特性を説明する図である。
【0123】
図8においては、光ファイバーについては、光ファイバーにおいて一対のFBG形成した間の領域をナノ光ファイバーとするような加工は行っていないものの、その光学特性の基本的な特徴は、ナノ光ファイバーの場合と同様である。
【0124】
図8(a)は、単一のブラッグ回折格子をファイバーに設けた場合の透過率(実測値)であり、FBGがミラーとして機能することにより、透過率としては、所望の周波数範囲では、40dB程度の透過率の変化が実現していることがわかる。ここでは、伝送信号がヘテロダイン法を用いて測定された。
【0125】
図8(b)は、このようにして製作したブラッグ回折格子による光ファイバー共振器の透過スペクトルとして上記非特許文献1に開示された特性を示している。ここでは、約50dBという高いS/N比が実現されていることがわかる。
(ブラッグ回折格子の透過率制御と共振周波数制御の構成)
【0126】
なお、以下では、ブラッグ回折格子の透過率制御のために、光ファイバーを外部からの光(たとえば、レーザ光)の照射を利用して加熱する構成について説明する。ただし、光ファイバーにおけるブラッグ回折格子の格子間隔を変位(伸長または圧縮)させる、あるいは実効屈折率を変化させることが可能である限り、他の加熱方法あるいは冷却方法で、光ファイバーを加熱または冷却する構成としてもよい。熱電効果を利用する素子、たとえば、ペルチェ素子を用いれば、外部から供給する電流とその極性の制御により、加熱または冷却を行う構成とすることができる。
【0127】
図9は、ブラッグ回折格子の透過率と共振周波数を制御する制御機構200の構成を示す機能ブロック図である。
【0128】
制御機構200は、光供給機構200.1と加熱機構200.2とを含む。以下では、光供給機構200.1と加熱機構200.2とを総称して、制御機構200と呼ぶ。
【0129】
なお、図9において、光共振器214は、図2で説明した単一光子源にも、図3で説明した量子計算ユニットのいずれにも適用可能なものである。
【0130】
以下では、量子系としては、一例として複数個の中性原子が、ナノ光ファイバーの近傍にトラップされ、ナノ光ファイバーのエバネッセント場と相互作用が可能な量子ビットとして機能する構成として説明をする。ただし、図9において、原子212は、中性原子であってもよいし、イオンであってもよい。原子212は、例えば、セシウム原子とすることができる。
【0131】
図9を参照して、制御機構200の制御対象となる光共振器214は、ナノ光ファイバー210と、光ファイバーの端部221a、光ファイバーの端部221b、テーパー部222a、テーパー部222b、K個の原子212、およびそれらを真空状態の内部に収納する真空チャンバ213を有する。原子212は、たとえば、レーザー冷却原子であり、公知のトラップ方法で、ナノ光ファイバー210の外側の真空中に配置され、ナノ光ファイバー210の長手方向に沿って間隔を置いて配置される。
【0132】
ナノ光ファイバー210の構成については、図2に示した単一光子源11におけるナノ光ファイバー111の構成と基本的に同様であって、光の波長以下の直径を持つ極細の光ファイバーであり、上述した通り、ファイバー全体がコア、それを取り囲む真空がクラッドとして機能する。
【0133】
また、上述した通り、光ファイバー部分では、コア211aおよび211bを囲んでいるクラッド212a、212bならびに真空が伝搬する光の閉じ込めの機能を果たす。
【0134】
端部221aおよび端部221bのコア211aおよび211bには、光ファイバーを伝搬する光子の波長を反射帯域に含むファイバーブラッグ回折格子(FBG)223aおよび223bがそれぞれ設けられている。ファイバーブラッグ回折格子223aおよび223bは、それぞれ、設定された反射率で、光子を反射するミラーとして機能する。
【0135】
ファイバーブラッグ回折格子223aおよび223bについて、制御機構200により、ファイバーブラッグ回折格子による透過率及び反射率、ブラッグ回折格子の格子間隔を調整し維持するように制御して、端部221b側からナノ光ファイバー210に入射させた光子を、端部221b側から出射させることができる。
【0136】
真空チャンバ213内の加熱機構200.2では、セラミック基板232aとセラミック基板232bとが、支持台234上に固定され、セラミック基板232aとセラミック基板232bとのそれぞれの上に、シリコン基板230aとシリコン基板230bとが固定される。
【0137】
セラミック基板は、シリコン基板を物理的に固定するとともに熱的に支持台から分離して、加熱の効率を上げるためのものである。高真空中で所定温度以上に加熱してもガスの発生等がなく、加工がしやすい素材が望ましい。
【0138】
シリコン基板230aとシリコン基板230bとは、それぞれ、ファイバーブラッグ回折格子223aおよび223bが設けられる領域に対応する端部221aおよび端部221bに、それぞれ、接している。ここで、「接している」とは、物理的に接触している場合だけでなく、後述するように、ファイバーブラッグ回折格子223aおよび223b部分と熱の交換が可能な状態で保持されていることも含む。また、均一に加熱するという観点からは、シリコン基板230aとシリコン基板230bとは、少なくとも、ファイバーブラッグ回折格子223aおよび223bが設けられる領域の全域にわたって、対応する端部221aおよび端部221bに接していることが望ましい。
【0139】
制御機構200の光供給機構200.1は、端部221aから入射し共振器を透過するプローブ光(角周波数ωp)と端部221bから出射する量子演算用の光子(角周波数ωa)とを分離するセパレータ240と、セパレータ240からの分離されたプローブ光の強度を検出するためのフォトディテクター(以下、PDと呼ぶ)242とを含む。特に限定されないが、PDとしては、プローブ光の周波数領域で動作するアバランシェフォトダイオードを用いることができる。
【0140】
光供給機構200.1は、後述するような制御に従って、端部221a側のシリコン基板230aに光を照射するためのレーザーダイオード(以下、LDと呼ぶ)250aと、LD250aを駆動して出力光の強度を制御するためのレーザードライバ252aと、レーザードライバ252aを制御するための制御コンピュータ260とを含む。
【0141】
なお、後述するように、ファイバーブラッグ回折格子223aについては、可能な限り高い反射率(可能な限り反射率100%に近く)となるように設定した後、ファイバーブラッグ回折格子223bについては反射率(または透過率)として、光の入出力に適した反射率(たとえば、97%)となるように設定した後は、これらの反射率(または透過率)の値は、比較的長時間にわたって、そのような設定値の所定の範囲に維持するための制御を行うので、これを「粗動制御」と呼ぶ。すなわち、「粗動制御」とは、少なくとも、後述するような量子演算の処理を複数回実行することが可能な期間にわたって、制御量を一定とするような制御のことをいう。
【0142】
光供給機構200.1は、さらに、後述するような制御に従って、端部221b側のシリコン基板230bに光を照射するためのLD250bと、LD250bを駆動して出力光の強度を制御するためのレーザードライバ252bと、光共振器の共振周波数が一定値を維持するように、ブラッグ回折格子223bの格子間隔を制御するために、粗動制御に比べて比較的短い時間間隔でレーザードライバ252bを動的に制御する共振周波数制御部270とを含み、制御コンピュータ260は、共振周波数制御部270も制御する。
【0143】
ここで、ブラッグ回折格子223bの格子間隔を光共振器の共振周波数が一定値を維持するように、粗動制御に比べて比較的短い時間間隔で動的に制御することを、「微動制御」と呼ぶ。したがって、「微動制御」とは、量子演算の処理に必要な時間に比べて、同程度ないし、望ましくは、より短い制御時間のサイクルで、共振器の共振周波数を所定の値に維持するための制御のことをいう。
【0144】
ここで、LD250a,LD250bの出射光は、シリコン基板230a,230bを加熱するための波長の光を照射するためのものであるので、シリコンのバンドギャップ以上のエネルギーに相当する波長の光を生成するものである。なお、加熱用の基板としては、その材料は、シリコンに限られず、真空中で光を吸収して温度を上昇させ、ファイバーブラッグ回折格子223aおよび223b部分を加熱できるものであれば、他の材質のものであっても構わない。このときは、LD250a,250bからの光の波長も、このような材質に応じて、加熱が可能な波長に変更するものとする。また、光による加熱が可能であれば、必ずしもレーザーダイオードに限られず、他のレーザーやLED(Light Emitting Diode)などの光源であってもよい。
【0145】
なお、以下では、微動制御は、ブラッグ回折格子223b側だけで実施するものとして説明する。ただし、必ずしもこのような構成に限定されず、ブラッグ回折格子223a側でも実施するとの構成とすることも可能である。
【0146】
図10は、制御機構200による制御の一例を示すタイミングチャートである。
【0147】
図10参照して、制御機構200は、以下では、微動制御のホールド状態の期間を除き、所定の強度のプローブ光を共振器に一定期間にわたり入射し続けているものとする。
【0148】
図10では、明示的には示されていないが、後述するように、プローブ光は、所定の周波数で変調されている。
【0149】
まず、制御機構200は、時刻t1~t2において、粗動制御として、ファイバーブラッグ回折格子223aおよび223bの反射率の設定を、後述する方法により実行する。
【0150】
その後、ファイバーブラッグ回折格子223aおよび223bの反射率を設定値に維持するために、制御機構200によりLD250aとLD250bの出力光の強度が制御される。特に、エンドミラー側のファイバーブラッグ回折格子223aについては、所定の温度が維持されるように出力光の強度としては基本的には固定される。
【0151】
時刻t2以降は、制御機構200は、ファイバーブラッグ回折格子223bについて所定の反射率に維持される温度となるように、LD250bの出力光の強度を粗動制御するとともに、後述するように、プローブ光の強度変化をモニタすることで、共振器の共振周波数が所定の値を維持するように、微動制御を実行する。
【0152】
たとえば、時刻t2以降の期間t3~t4の期間において、単一光子源11から出射される光子を用いて量子演算が実行される。
【0153】
すなわち、粗動制御において設定された制御量(この場合は、加熱用のレーザー光強度の直流成分に相当)は、量子演算を実行するために要する時間よりも、時定数が十分に長いため、少なくとも1回の量子演算の実行に要する時間の間は、固定値として制御することが可能である。
【0154】
なお、図10においては、量子演算の期間中は、プローブ光をオフとして、微動制御をホールド状態とし、その量子演算の終了後には、プローブ光をオンとして、微動制御を再開するとの構成としている。
【0155】
特に限定されないが、量子演算の期間中もプローブ光を常時オンとして、微動制御を継続してもよい。この場合は、プローブ光の角周波数ωpは、共振器の共鳴周波数ωcに対して、特に限定されないが、共振器の共振周波数から所定の数のFSRだけずれた別のモードの周波数に対応したものとすることができる。
【0156】
また、特に限定されないが、共振器の共鳴周波数ωcを、原子の|g〉→|e〉の励起周波数ωaと同じになるように制御するものとして以下は説明する。なお、共振器の共鳴周波数ωcは、この励起周波数ωaからずれた周波数に制御されてもよい。
【0157】
また、粗動制御については、動作の開始時点だけでなく、適宜、粗動制御の期間を設けてもよい。また、微動制御は、上述のとおり、量子演算に要する時間等に応じて、量子演算中は、微動制御を停止する構成であってもよく、あるいは、量子演算中も継続して実行する構成であってもよい。
(ファイバーブラッグ回折格子223a(エンドミラー)の反射率の設定と粗動制御)
【0158】
図11は、ファイバーブラッグ回折格子223aの反射率の設定と制御について説明するための概念図である。
【0159】
図7図8で説明したように、ファイバーブラッグ回折格子223aおよび223bは、共振器の共鳴周波数ωcに対して、ほぼ同様の反射率を有するように製作されている。
【0160】
そこで、まず、光共振器のエンドミラーに相当する機能を有するファイバーブラッグ回折格子223aの反射率の設定について図11を参照して説明する。
【0161】
ファイバーブラッグ回折格子223aの反射率を単独に設定するために、まず、フロントミラーに相当する機能を有するファイバーブラッグ回折格子223bについては、制御機構200は、所定レベル以上の加熱を行うように、LD250bの出力強度の調整を行って反射率のピーク(図11では、透過率を測定しているので、透過率のディップ)を、共鳴周波数ωcに対する調整のための周波数領域から外す。
【0162】
このようにすることで、共鳴周波数ωcの近傍では、ファイバーブラッグ回折格子223aの反射率のピーク(透過率のディップ)のみを観測する状態とできる。
【0163】
この状態で、制御機構200は、制御コンピュータ260が、レーザードライバ252aに対して粗動制御を行って、ファイバーブラッグ回折格子223aの透過率を所望の値に設定するように、LD250aの出力強度を調整する。この場合は、理想的には、ファイバーブラッグ回折格子223aの反射率は100%となることが望ましいので、透過率を最大限に低下した値となるように調整することになる。
【0164】
図10において説明した通り、制御機構200は、粗動制御としては、以後は、基本的には、LD250aの出力強度を制御し、ファイバーブラッグ回折格子223aの温度を維持制御して、ファイバーブラッグ回折格子223aの格子間隔を所望の反射率が維持されるように制御する。
【0165】
ファイバーブラッグ回折格子223aの反射率(透過率)の設定が終了した後は、ファイバーブラッグ回折格子223bについての加熱を元のレベルまで復帰させ、またはファイバーブラッグ回折格子223aと同等レベルに設定する。
【0166】
このようなファイバーブラッグ回折格子223bの制御レベルの復帰または変更で、ファイバーブラッグ回折格子223aおよび223bは、光共振器として動作する状態となる。
(ファイバーブラッグ回折格子223b(フロントミラー)の反射率の設定と粗動制御)
【0167】
図12は、ファイバーブラッグ回折格子223bの反射率の設定と制御について説明するための概念図である。
【0168】
まず、図12(a)は、図7(b)に示したファイバーブラッグ格子を所定の共振器長に相当する間隔を置いて生成した場合の透過率の周波数依存性において、共振器としての共鳴角周波数ωaを示す。共鳴周波数ωaの周りに、フリースペクトラルレンジの間隔で、いくつかのサブモードの共鳴も発生している。
【0169】
図12(b)は、共振器の透過率の周波数依存性を示し、周波数依存性のピークの半値全幅で定義されるフィネスを説明するための図である。
【0170】
すなわち、上述のとおり、フィネスは、フロントミラーとエンドミラーの反射率(透過率)および内部損失αにより決定される。
【0171】
したがって、図11に示した処理によりエンドミラー(ファイバーブラッグ回折格子223a)の反射率は調整済みであるので、透過スペクトルのフィネスを計測することでフロントミラー(ファイバーブラッグ回折格子223b)の反射率も、所望の値に調整できる。
【0172】
なお、ファイバーブラッグ回折格子223bの反射率(透過率)は、この回折格子223bの側が光子の入出力に利用されるため、反射率100%よりも所定の値だけ小さな値(たとえば、97%)に設定される。
【0173】
この設定の後には、ファイバーブラッグ回折格子223aの制御と同様にして、制御機構200は、以後は、LD250bの出力強度を、粗動制御として制御して、ファイバーブラッグ回折格子223bの温度を維持制御して、ファイバーブラッグ回折格子223bの格子間隔を所望の反射率が維持されるように制御する。
(ファイバーブラッグ回折格子223bの反射率の設定と微動制御)
【0174】
図13は、ブラッグ回折格子223bの共振周波数を微動制御するための制御機構200の構成を示すブロック図である。
【0175】
図13を参照して、制御機構200は、微動制御のための構成として、プローブ光を生成するプローブ光生成機構300と、共振周波数制御部270と、セパレータ240と、フォトディテクター242と、レーザードライバ252bと、レーザー250bと、シリコン基板230bと、セラミック基板232bとを含む。
(プローブ光生成機構300の構成)
【0176】
以下、まず、プローブ光生成機構300の構成について説明する。
【0177】
プローブ光生成機構300は、所定の範囲で出力波長を可変とすることが可能な外部共振器型レーザーダイオード(ECLD:External Cavity Laser Diode)3010と、ECLD3010の発振と出力波長を制御するためのECLD制御系3050と、ECLD3010からの出力光に対して、電気光学効果を示す信号制御素子によりビームを変調する電気光学変調器(EOM:electro‐optic modulator)3020と、EOM3020からの光を分割し一方のビームを光共振器に入射させるビームスプリッター3030と、ビームスプリッター3030の他方のビームを受けて、後述するように飽和吸収分光により、原子の励起角周波数ωaに対する周波数基準を得るための分光を行う飽和吸収分光系3040とを含む。
【0178】
後述するように、ECLD制御系3050は、飽和吸収分光系3040からの周波数基準を用いることで、ECLD3010からの出力光の周波数を安定化する。
【0179】
図14は、ECLD3010の構成と飽和吸収分光系3040の動作を説明するための概念図である。
【0180】
図14(a)に示すように、ECLD3010は、回折格子の0次光を外部に出射するとともに、1次光を半導体レーザーに戻すことにより、回折格子と半導体レーザーの間で外部共振器を構成している。また、回折格子の裏にピエゾ素子を装着して電圧を調整することによって、外部共振器の共振器長を微調整することができる。なお、図14(a)は、いわゆるLittrow 型の構成を示しているが、ECLD3010の構成はこれに限定されるものではない。
【0181】
回折格子は、たとえば、反射型回折格子を使用することができる。光が回折格子に入射角θで入射したときに、回折の0次光は反射角θで反射し、m次光は光が入射した方向に反射する。
【0182】
回折格子の波長と回折角の関係式は、以下のとおりである。
【数6】
【0183】
ここで、d:格子定数、θ:回折角、m:回折次数、λ:波長である。したがって、回折格子での回折角θを微調整することで発振波長λを選択することができる。
【0184】
次に、飽和吸収分光系について、簡単に説明する。
【0185】
上述のとおり、レーザーの周波数を安定化させるにあたり、その周波数基準を得るために分光を行う。そこで、たとえば、量子系の原子としてセシウムCsを用いるのであれば、Cs原子気体のガスセルを用意する。Cs原子気体のガスセルとしては、様々な可能性があるものの、飽和吸収分光では、原子の速度分布が大きく、分光のスペクトル線幅が非常に太くなっているような原子気体のガスセルを使用する場合も、スペクトル線幅を狭窄化する構成とすることができる。
【0186】
なお、量子系の原子やイオンの励起角周波数の基準となる光源を準備するための構成は、このようなものに限定されるものではない。
【0187】
対象となる原子気体のガスセルに光を入射して、周波数を共鳴周波数付近で掃引する場合を考える。この場合、図14(b)に示すように、透過した光の強度をフォトディテクターで測定すると、線形吸収信号が得られる。
【0188】
気化したCs原子は速度分布を持っているため、ドップラー効果により原子の感じる光の周波数がシフトしてスペクトル線幅が広がる。光の透過率減少のグラフは、共鳴周波数を中心に正規分布の形となる。
【0189】
飽和吸収分光を行うには、原子気体のガスセルの左右2方向から同じ周波数の光を、重なるように入射する。一方の光は、原子による光の吸収が飽和する程度の強度にし、もう一方の光は、それよりも十分に弱い強度にする。前者をポンプ光、後者を飽和吸収プローブ光と呼び、飽和吸収プローブ光をフォトディテクターで測定する。
【0190】
掃引している光の周波数ωが共鳴周波数ωaではない間は、ポンプ光はある速度vの原子と共鳴するが、飽和吸収プローブ光は速度-vの原子と共鳴する。従って、このときのプローブ光の透過率は線形吸収分光を行った場合の透過率と等しくなる。
【0191】
一方で、光の周波数ωが共鳴周波数ωaと等しい瞬間は、ポンプ光、飽和吸収プローブ光ともに速度v=0の原子と共鳴するものの、ポンプ光がv=0の原子の一部を励起するため、飽和吸収プローブ光の透過率は線形吸収分光の場合の透過率より高くなる。
【0192】
以上より、周波数を掃引した場合のプローブ光の透過率は図14(c)に示すようになる。中心付近にあるくぼみのことは「ラムディップ」と呼ばれる。このラムディップの線幅は自然幅程度となるので、線形吸収分光よりも十分に細い線幅であると言える。
【0193】
飽和吸収分光系では、このラムディップから、レーザーに対するフィードバック信号を得る。
【0194】
なお、図13に示した構成では、特に限定されないが、ECLD3010の出力周波数を、飽和吸収分光系3040からのフィードバックにより、共鳴周波数(励起周波数)ωaに調整する。
(共振周波数制御部270の構成)
【0195】
図13に戻って、共振周波数制御部270は、所定の周波数で発振し発振信号をEOM3020に変調信号として出力する発振器2702と、発振器2702の出力について90度だけ位相をずらせる位相シフタ2704と、フォトディテクター242からの出力と位相シフタ2704からの信号を受けて、ロックイン制御のための信号を生成するロックインアンプ2706とを含む。
【0196】
ロックインアンプ2706は、フォトディテクター242からの出力と位相シフタ2704からの信号を乗算するミキサ2708と、ミキサ2708からの出力を受けて、ロックイン信号を生成するためのローパスフィルタ(以下、LPFと呼ぶ)2710とを含む。
【0197】
LPF2710からの信号は、フィードバック回路2720に入力され、後述するような信号によりレーザードライバ252bを制御する。
【0198】
図15は、ロックインアンプ2706からの出力を説明するための図である。
【0199】
図15(a)に示すように、EOM3020で変調されたプローブ光の透過光を検知することになるため、PD242の出力Vの復調信号は、所望の周波数ωp(たとえば、セシウム原子の共鳴周波数ωa)において、ピークとなる信号である。
【0200】
図15(b)に示すように、ロックインアンプで微分をとることで、周波数ωpで0を横切る波形となる。
【0201】
この微分信号をエラー信号としてフィードバック回路2720からレーザードライバ252bを経由して、フィードバックをレーザー250bにかけることで、共振器の共振周波数が周波数ωaにロックされる。
【0202】
図16は、図13に示したセパレータ240の構成の一例を示す図である。
【0203】
図13では、セパレータ240は、プローブ光を分離するための素子である。
【0204】
特に限定されないが、セパレータ240は、量子演算中はプローブ光をオフにする構成の場合は、プローブ光が照射されている微動制御の期間について、プローブ光を選択的にフォトダイオード242に導くスイッチであってもよい。
【0205】
あるいは、たとえば、図16では、周波数ωaの光とこれとは異なる周波数ωpの光が、量子演算中も、共振器に同時に入射している場合について、セパレータ240の構成の一例を示す。
【0206】
すなわち、セパレータ240は、周波数ωaの光と周波数ωpの光を含む共振器からの出射光を受けるサーキュレータ2402と、サーキュレータ2402からの一方の出力を受けて、周波数ωaの光のみを通過させる共振器2404とを含む。周波数ωpの光は、共振器2404で反射されて、サーキュレータの他方出力から出力される。
【0207】
なお、共振器2404の共振周波数を、周波数ωaに制御する構成としては、特に限定されないが、図13において説明した飽和吸収分光系を用いる制御とすることができる。
【0208】
また、共振器2404としては、このように動的に共振周波数を制御することは、必ずしも必須ではなく、所定の共振器長を有するパッシブな共振器を用いることも可能である。
【0209】
以上の説明では、共振器内を往復する光の位相のシフト量の評価ために、プローブ光により、ブラッグ回折格子による共振器の光の透過率を計測するものとして、微動制御を説明した。ただし、光学系を、プローブ光によりブラッグ回折格子による共振器の反射率を計測するように構成して、微動制御を実行する構成としてもよい。
(量子ゲート)
【0210】
図17は、原子-光子間で実現される量子ゲートの一例を示す概念図である。
【0211】
図17に示す構成において、共振器モードの偏光をh(水平偏光)とし、偏光量子ビットとしての光子パルスjを共振器に入射させる。このとき、選択された原子の状態が|u>であり、かつ、光子が|h>の状態であれば、反射率r=―1である。それ以外の場合は、反射率r=1となる。
【0212】
したがって、光子が反射した後の原子212と光子jの状態は、光子の入射前の状態に対し、以下の式で表されるように、制御位相フリップ(CPF:controlled phase-flip)ゲートとしての操作に対応することになる。添え字aが、原子の状態のブラ・ケットでり、添え字jが光子の状態のブラ・ケットであることを示す。
【数7】
【0213】
図18は、原子-光子間で実現される量子ゲートの他の例を示す概念図である。
(分散型量子演算に用いる量子演算ユニットの選択の構成)
【0214】
図1の構成において、図示していない制御部で光スイッチ14-m(m=1,…,M)を操作することで、M個の量子計算ユニット13-1~13-Mから選択された複数個の量子計算ユニット13-mを光学的に接続し、選択された複数個の量子計算ユニット13-mを含む光回路に単一光子源11から出射された光子(単一光子)111を入射することで分散型量子計算を行う構成とすることができる。
【0215】
例えば、光スイッチ14-m(m=1,…,M)を操作することで、2個の量子計算ユニット13-m1および13-m2(m1,m2∈{1,…,M})(第1量子計算ユニットおよび第2量子計算ユニット)を光学的に接続し、これらの2個の量子計算ユニット13-m1および13-m2を含む光回路に光子111を入射することで分散型量子計算を行う。
【0216】
図18の例では、光スイッチ14-m(m=1,…,M)を操作することで、量子計算ユニット13-1および13-Mが選択されている。
【0217】
以下、図18を参照して、分散型量子計算の操作の一例を説明する。
(各量子演算ユニットにおける量子演算に用いる原子の選択の構成)
【0218】
つぎに、各量子計算ユニットにおいて、量子演算に用いる原子を選択するためには、「光シフト光」の照射による。
【0219】
たとえば、量子計算ユニット13-mでトラップされたK(m)個の原子132-mから量子計算に使用するx個の原子(以下、「選択原子」という)を選択するために、光シュタルクシフトを生じさせるための光シフト光を照射することで選択原子のみを共振器に結合させ、光子111を量子計算ユニット13-mに入射させる。
【0220】
ここで、光シフト光は、遷移|e>→|g>の共鳴周波数から十分に離れた周波数の光(例えば、レーザー光)である。この光シフト光を原子に当てることで、原子の各準位のエネルギーをずらすことができ、このエネルギーのずれを「光シフト」という。
【0221】
遷移|e>→|g>の共鳴周波数から十分に離れた周波数の光シフト光を原子に照射すると、|g>と|e>のエネルギーがずれるので、それに合わせて遷移|e>→|g>の共鳴周波数も変化する。光シフトなしで遷移|e>→|g>が光共振器に共鳴(結合)している場合、光シフト光を当てた原子だけ遷移|e>→|g>が光共振器に共鳴しなくなるので、それらの原子と光共振器との結合を選択的に「切る」ことができる。逆に、光シフト光を当てない状態での遷移|e>→|g>の共鳴周波数に対して光共振器の共鳴周波数をずらしておき、光シフト光を当てたときに遷移|e>→|g>の共鳴周波数が光共振器に共鳴(結合)するように光シフト光の強度等を調整してもよい。
(分散型量子演算における操作)
【0222】
以上を前提として、図示していないレーザー照射装置が光シフト光を照射し、量子計算ユニット13-1にトラップされた複数の原子132-1から選択されたx個の選択原子sa、および量子計算ユニット13-Mにトラップされた複数の原子132-Mから選択されたx個の選択原子saを各光共振器に結合させる。
【0223】
したがって、この分散型量子計算で使用される量子ビット数はx+xである。x≧1,x≧1であるが、x≧1かつx≧2であってもよいし、x≧2かつx≧1であってもよいし、x≧2かつx≧2であってもよい。
【0224】
まず、量子計算ユニット13-1および13-Mにそれぞれトラップされた複数個の原子について光シフト光による選択処理を行う(ステップS10)。
【0225】
この状態で以下の一連の操作を行う。
【0226】
(1)単一光子源11で所定の状態(例えば、水平偏光|h〉)の光子111(単一光子)を生成して端部121a-0から出射させる(ステップS11)。
【0227】
(2)ステップS11で単一光子源11から出射された光子111を半波長板15-1に入射させ、光子111の状態をπ/2回転させて出射させる(ステップS12)。
【0228】
(3)ステップS12で半波長板15-1から出射された光子を量子計算ユニット13-1の端部121a-1に入射させる(ステップS13)。
【0229】
(4)ステップS13の操作に対して量子計算ユニット13-1の端部121a-1から出射された光子を半波長板15-Mに入射させ、当該光子の状態をπ/2回転させて出射させる(ステップS14)。
【0230】
(5)ステップS14で半波長板15-Mから出射された光子を量子計算ユニット13-Mの端部121a-Mに入射させる(ステップS15)。
【0231】
(6)ステップS15の操作に対して量子計算ユニット13-Mの端部121a-Mから出射された光子を半波長板15-(M+1)に入射させ、当該光子の状態をπ/2回転させて出射させる(ステップS16)。
【0232】
(7)ステップS16で半波長板15-(M+1)から出射された光子を偏光状態測定器16に入射させ、当該光子の偏光状態を測定する。
【0233】
このような測定により、光子の状態が或る偏光状態に収縮し、この光子の状態と絡み合いの状態にある選択原子saおよびsaの状態も当該光子の偏光状態の測定結果に応じて収縮する。
【0234】
そして、量子計算ユニット13-1にトラップされた選択原子saに対し、当該光子の偏光状態の測定結果に応じた回転操作を施す。すなわち、測定された光子の偏光状態がステップS11の所定の状態(例えば、水平偏光|h〉)であれば選択原子saにπ回転操作(Zゲート操作)を行う。この回転操作は選択原子saにコントロール光を照射することで実現できる。測定された光子の偏光状態がステップS11の所定の状態でなければ(例えば、垂直偏光|v〉であれば)選択原子saに何の操作も行わない(ステップS17)。
【0235】
上述のステップS11~S17の操作を施した選択原子saおよび選択原子saの状態は、当該操作を施す前の選択原子saおよび選択原子saの状態に対して、CPFゲート(x+x=2の場合)またはx+xビットのToffoliゲート(x+x≧3の場合)を作用させたものとなる。
【0236】
以上説明したように、本実施の形態の光共振器の構成および制御方法によれば、光ファイバー型共振器において、所望の共振周波数を動作中も安定して維持することが可能となる。
【0237】
また、本実施の形態のナノ光ファイバー型共振器の構成および制御方法によれば、単一光子源または量子演算ユニットとして使用する際に、量子系(原子)の所望の準位間エネルギー(励起エネルギー)またはその近傍に相当する共鳴周波数を有し、かつ、光共振器のパラメータ(ミラー反射率)を所望の値に設定することが可能となる。
【0238】
また、本実施の形態のナノ光ファイバー型共振器の構成および制御方法によれば、このような光共振器を用いた量子演算ユニット、及びこれを用いた分散型量子演算システムを実現することができる。

[実施の形態2]
【0239】
以下では、実施の形態1の図9および図13において説明した、「ブラッグ回折格子の透過率制御と共振周波数制御の構成」の他の実施の形態について説明する。
【0240】
図19は、ブラッグ回折格子の透過率と共振周波数を制御する制御機構200´の構成を示す機能ブロック図である。
【0241】
図19は、実施の形態1の図9の構成に対応する。
【0242】
なお、図19においても、光共振器214は、図2で説明した単一光子源にも、図3で説明した量子計算ユニットのいずれにも適用可能なものである。
【0243】
光共振器214の構成は以下に説明する点を除いて、図9で説明したものと同様であるので、同一部分には、同一符号を付して、説明は繰り返さない。
【0244】
真空チャンバ213内には、セラミック基板232aとセラミック基板232bとが、支持台234上に固定され、セラミック基板232aとセラミック基板232bとのそれぞれの上に、ピエゾ素子236aおよびピエゾ素子236bとが固定される。
【0245】
セラミック基板は、ピエゾ素子の位置を物理的に固定するためのものである。
【0246】
ピエゾ素子236aおよびピエゾ素子236bは、それぞれ、ファイバーブラッグ回折格子223aおよび223bが設けられる領域に対応する端部221aおよび端部221bに接着されている。ピエゾ素子236aおよびピエゾ素子236bとは、それぞれ、端部221aおよび端部221bの光路の方向(導波の方向)に沿って、収縮または伸長することが可能である。ここで、「接着されている」とは、高真空中で固着が可能な接着剤238aおよび238bにより物理的に接着している場合だけでなく、他の物理的な構成により、ピエゾ素子の変形により生じる応力を端部221aおよび端部221bに与えることが可能な構成を含む。ピエゾ素子への入力に応じて、引張または圧縮の応力を端部221aおよび端部221bに印加することが可能である。また、均一に応力を印加するという観点からは、ピエゾ素子236aおよびピエゾ素子236bとは、少なくとも、ファイバーブラッグ回折格子223aおよび223bが設けられる領域の全域にわたって、対応する端部221aおよび端部221bに応力を印加できる構成となっていることが望ましい。
【0247】
また、上述のような接着剤としては、高真空中で上記のような応力を印加するのに十分な接着強度を有するものを使用する。
【0248】
制御機構200は、端部221aから入射し共振器を透過するプローブ光(角周波数ωp)と端部221bから出射する量子演算用の光子(角周波数ωa)とを分離するセパレータ240と、セパレータ240からの分離されたプローブ光の強度を検出するためのフォトディテクター(以下、PDと呼ぶ)242とを含む。特に限定されないが、PDとしては、プローブ光の周波数領域で動作するアバランシェフォトダイオードを用いることができる。
【0249】
制御機構200は、端部221a側のピエゾ素子236aに印加する電圧を制御するためのPID(Proportional-Integral-Differential)制御器254aと、PID制御器254aを制御するための制御コンピュータ260とを含む。
【0250】
なお、実施の形態1と同様に、ファイバーブラッグ回折格子223aについては、可能な限り高い反射率となるように設定した後、ファイバーブラッグ回折格子223bについても反射率(または透過率)としては、光の入出力に適した反射率となるように設定する。このような設定をした後は、これらの反射率(または透過率)の値は、比較的長時間にわたって、そのような設定値の所定の範囲に維持するための粗動制御が行われる。
【0251】
制御機構200は、さらに、端部221b側のピエゾ素子236bに印加する電圧を制御するためのPID制御器254bに対して設けられ、ブラッグ回折格子223bの格子間隔を光共振器の共振周波数が一定値を維持するように、粗動制御に比べて比較的短い時間間隔でPID制御器254bを動的に制御するための共振周波数制御部270を含み、制御コンピュータ260は、共振周波数制御部270も制御する。
【0252】
実施の形態1と同様に、共振周波数制御部270は、ブラッグ回折格子223bの格子間隔を光共振器の共振周波数が一定値を維持するように、粗動制御に比べて比較的短い時間間隔で動的に微動制御を実行する。
【0253】
制御のタイミングチャートは、実施の形態1の図10で説明したものと同様である。
(ファイバーブラッグ回折格子223bの反射率の設定と微動制御)
【0254】
図20は、ブラッグ回折格子223bの共振周波数を微動制御するための制御機構200´の構成を示すブロック図である。
【0255】
図20を参照して、制御機構200は、微動制御のための構成として、プローブ光を生成するプローブ光生成機構300と、共振周波数制御部270と、セパレータ240と、PID制御器254bと、ピエゾ素子236bと、セラミック基板232bとを含む。
【0256】
プローブ光生成機構300の構成および共振周波数制御部270の構成については、実施の形態1と同様であるので、説明は繰り返さない。
【0257】
実施の形態1と同様にして、LPF2710からの信号は、フィードバック回路2720に入力され、PID制御器254bを制御する。
【0258】
実施の形態2の光共振器の構成および制御方法によっても、光ファイバー型共振器において、所望の共振周波数を動作中も安定して維持することが可能となる。
【0259】
また、実施の形態2のナノ光ファイバー型共振器の構成および制御方法によれば、単一光子源または量子演算ユニットとして使用する際に、量子系(原子)の所望の準位間エネルギー(励起エネルギー)またはその近傍に相当する共鳴周波数を実現するとともに、光共振器のパラメータ(ミラー反射率)を所望の値に設定することが可能となる。
【0260】
また、実施の形態2のナノ光ファイバー型共振器の構成および制御方法によれば、このような光共振器を用いた量子演算ユニット、及びこれを用いた分散型量子演算システムを実現することができる。
【0261】
なお、実施の形態2においても、微動制御は、ブラッグ回折格子223b側だけで実施するものとして説明した。ただし、必ずしもこのような構成に限定されず、ブラッグ回折格子223a側でも実施するとの構成とすることも可能である。
【0262】
また、実施の形態2においても、共振器内を往復する光の位相のシフト量の評価ために、プローブ光により、ブラッグ回折格子による共振器の光の透過率を計測するものとして、微動制御を説明した。ただし、光学系を、プローブ光によりブラッグ回折格子による共振器の反射率を計測するように構成して、微動制御を実行する構成としてもよい。
[実施の形態3]
【0263】
以下では、実施の形態2の図19および図20において説明した、「ブラッグ回折格子の透過率制御と共振周波数制御の構成」のさらに他の実施の形態について説明する。
【0264】
図21は、ブラッグ回折格子の透過率と共振周波数を制御する制御機構200´´の構成を示す機能ブロック図である。
【0265】
ここでも、同一部分には、同一符号を付して、説明は繰り返さない。
【0266】
図19の構成と異なる点は、以下のとおりである。
【0267】
図21の制御機構200´´では、ピエゾ素子236aおよびピエゾ素子236bに代えて、金属部材235aと235bとが、それぞれ、ファイバーブラッグ回折格子223aおよび223bが設けられる領域に対応する端部221aおよび端部221bに接着されている。
【0268】
そして、金属部材235aと235bが、ピエゾ素子237aおよびピエゾ素子237bから受ける力によって、それぞれ、端部221aおよび端部221bに対して、圧縮応力または引張応力を与えることが可能な構成となっている。また、均一に応力を印加するという観点からは、金属部材235aと235bとは、少なくとも、ファイバーブラッグ回折格子223aおよび223bが設けられる領域の全域にわたって、対応する端部221aおよび端部221bに応力を印加できる構成となっていることが望ましい。
【0269】
ピエゾ素子237aおよびピエゾ素子237bは、PID制御器254aとPID制御器254aとにより、それぞれ制御される点は、実施の形態2と同様である。
【0270】
図22は、金属部材235aとファイバーブラッグ回折格子223aが設けられる領域に対応する端部221aの構成を示す図である。
【0271】
なお、金属部材235bとファイバーブラッグ回折格子223bが設けられる領域に対応する端部221bの構成についても、同様の構成である。
【0272】
図22を参照して、金属部材235aは、光ファイバーの導波方向に沿う形状を有する金属片235aaと、支持部材235abと、固定部材235acとを含む。ここでは、金属片235aaと支持部材235abと固定部材235acとは、一体の金属から構成されているものとして説明する。
【0273】
固定部材235acは、セラミック基板232aなどを介して真空チャンバ側に固定されている。その結果、支持部材235abにより支持される金属片235aaは、一種のカンチレバーとして機能する。金属片235aaが、光ファイバーの端部221aの下面側に接着されている。
【0274】
ここでも、「接着されている」とは、高真空中で固着が可能な接着剤により物理的に接着している場合だけでなく、他の物理的な構成により、ピエゾ素子の変形により生じる応力を端部221aおよび端部221bに与えることが可能な構成を含む。
【0275】
ピエゾ素子237aおよびピエゾ素子237bへの入力に応じて、金属片235aaが湾曲することで、引張または圧縮の応力を端部221aおよび端部221bに印加することが可能である。
【0276】
そして、ピエゾ素子237aおよびピエゾ素子237bの変形による力が、金属片235aaまたは金属片235ba(図示せず)を介して、間接的に、端部221aおよび端部221bに応力として印加される構成となることで、端部221aおよび端部221bへ均等に応力が印加される。この結果、ピエゾ素子237aおよびピエゾ素子237bの変形によって、端部221aおよび端部221bに印加される応力のダイナミックレンジを大きくとることが可能となる。
【0277】
なお、以上の説明では、金属片235aaと支持部材235abと固定部材235acとは、一体の金属から構成されているものとして説明したが、必ずしも、このような構成に限定されない。ピエゾ素子の変形による力を、金属片235aaのような金属部材にいったん印加して、この金属部材の変形による引張または圧縮の応力を端部221aおよび端部221bに均等に印加することが可能な構成であれば、他の構成とすることが可能である。
【0278】
実施の形態3の光共振器の構成および制御方法によっても、光ファイバー型共振器において、所望の共振周波数を動作中も安定して維持することが可能となる。
【0279】
また、実施の形態3のナノ光ファイバー型共振器の構成および制御方法によれば、単一光子源または量子演算ユニットとして使用する際に、量子系(原子)の所望の準位間エネルギーまたはその近傍に相当する共鳴周波数を実現するとともに、光共振器のパラメータ(ミラー反射率)を所望の値に設定することが可能となる。
【0280】
また、実施の形態3のナノ光ファイバー型共振器の構成および制御方法によれば、このような光共振器を用いた量子演算ユニット、及びこれを用いた分散型量子演算システムを実現することができる。
【0281】
なお、実施の形態3においても、微動制御は、ブラッグ回折格子223b側だけで実施するだけでなく、ブラッグ回折格子223a側でも実施するとの構成とすることも可能である。
【0282】
また、実施の形態3においても、共振器内を往復する光の位相のシフト量の評価ために、プローブ光により、ブラッグ回折格子による共振器の光の透過率を計測するものとして、微動制御を説明した。ただし、光学系を、プローブ光によりブラッグ回折格子による共振器の反射率を計測するように構成して、微動制御を実行する構成としてもよい。
【0283】
今回開示された実施の形態は、本発明を具体的に実施するための構成の例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲および均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0284】
100 量子計算ユニット、200 制御機構、210 ナノ光ファイバー、212 原子、213 真空チャンバ、214 光共振器、221a,221b光ファイバーの端部、222a,222b テーパー部、223a,223b ファイバーブラッグ回折格子、232a,232b セラミック基板、234 支持台、230a,230b シリコン基板、240 セパレータ、242 フォトディテクター、260 制御コンピュータ、270 共振周波数制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22