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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142842
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】分離システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 59/38 20060101AFI20241003BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20241003BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B01D59/38
H01M8/04 Z
G21F9/06 591
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055196
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】古澤 宏一朗
(72)【発明者】
【氏名】上野臺 浅雄
(72)【発明者】
【氏名】村田 尚貴
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和幸
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB16
5H127BA02
5H127BA14
5H127BA52
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB32
5H127BB37
(57)【要約】
【課題】エネルギー効率よく、迅速に起動できる分離システムの提供。
【解決手段】連結された複数の分離装置と、熱交換回路50と、を備える分離システム1であって、前記複数の分離装置は、水素同位体を含む流体が流入され、前記流体よりも水素同位体含有率が低い流体を流出する第一の分離装置10と、前記第一の分離装置10の下流に設けられ、前記第一の分離装置10から流出した前記流体により発電を行う第二の分離装置20とを含み、前記熱交換回路50は、前記第二の分離装置20から前記第一の分離装置10に熱交換媒体を供給する第一の接続回路51を有する、分離システム1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結された複数の分離装置と、
熱交換回路と、を備える分離システムであって、
前記複数の分離装置は、水素同位体を含む流体が流入され、前記流体よりも水素同位体含有率が低い流体を流出する第一の分離装置と、前記第一の分離装置の下流に設けられ、前記第一の分離装置から流出した前記流体により発電を行う第二の分離装置とを含み、
前記熱交換回路は、前記第二の分離装置から前記第一の分離装置に熱交換媒体を供給する第一の接続回路を有する、分離システム。
【請求項2】
前記第一の分離装置に供給される流体を加湿する加湿器をさらに備え、
前記熱交換回路は、前記第一の分離装置又は前記第二の分離装置から、前記加湿器に前記熱交換媒体を供給する第二の接続回路をさらに有する、請求項1に記載の分離システム。
【請求項3】
前記第一の分離装置の上流に設けられ、水を電気分解する水電気分解装置と、
制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記分離システムの起動時に前記水電気分解装置を起動した後に、前記第二の分離装置を起動する、請求項2に記載の分離システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記分離システムの起動時に、前記第一の分離装置、前記加湿器及び前記熱交換回路の少なくとも1つが所定の温度に到達するまで、前記第二の分離装置を、前記第一の分離装置、前記加湿器及び前記熱交換回路の少なくとも1つが前記所定の温度に到達した後の前記第二の分離装置の運転状態よりも発熱を優先する暖気モードとする、請求項3に記載の分離システム。
【請求項5】
前記熱交換回路は、前記加湿器から前記第二の分離装置に前記熱交換媒体を供給する第三の接続回路と、前記第三の接続回路に設けられたラジエータとをさらに有し、
前記制御部は、前記第一の分離装置、前記加湿器及び前記熱交換回路の少なくとも1つが前記所定の温度に到達した後に、前記ラジエータを起動し、前記第二の分離装置を前記暖気モードから発電を優先する発電モードとしつつ、前記第一の分離装置を起動する、請求項4に記載の分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する燃料電池に関する研究開発が行われている。
例えば、水素同位体である重水素・トリチウムの濃縮技術として、直列に連結した複数の燃料電池を用い、各燃料電池において独立に発電を行いつつ、水素同位体を含むガスから水素同位体を分離して、水素同位体を含有する液水として取り出す方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/194182号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水素同位体を分離するシステムにおいては、エネルギー効率よく、迅速にシステムを起動することが求められる。
本発明は、エネルギー効率よく、迅速に起動できる分離システムを提供することを目的とする。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 本発明の一態様に係る分離システムは、連結された複数の分離装置と、熱交換回路と、を備える分離システムであって、前記複数の分離装置は、水素同位体を含む流体が流入され、前記流体よりも水素同位体含有率が低い流体を流出する第一の分離装置と、前記第一の分離装置の下流に設けられ、前記第一の分離装置から流出した前記流体により発電を行う第二の分離装置とを含み、前記熱交換回路は、前記第二の分離装置から前記第一の分離装置に熱交換媒体を供給する第一の接続回路を有する。
この構成によれば、分離システムの起動時に、発電を行う第二の分離装置から第一の分離装置へ廃熱を供給でき、エネルギー効率よく迅速に分離システムを起動ができる。
【0006】
[2] 上記[1]の態様において、前記第一の分離装置に供給される流体を加湿する加湿器をさらに備え、前記熱交換回路は、前記第一の分離装置又は前記第二の分離装置から、前記加湿器に前記熱交換媒体を供給する第二の接続回路をさらに有していてもよい。
この構成によれば、第二の分離装置にて発生する廃熱を第一の分離装置に加えて加湿器にも供給できるので、廃熱をより有効に活用できる。
【0007】
[3] 上記[2]の態様において、前記第一の分離装置の上流に設けられ、水を電気分解する水電気分解装置と、制御部と、をさらに備え、前記制御部は、前記分離システムの起動時に前記水電気分解装置を起動した後に、前記第二の分離装置を起動してもよい。
この構成によれば、水の電気分解により生じた気体により第二の分離装置の発電を行うことができ、効率的な分離システムの起動が可能となる。
【0008】
[4] 上記[3]の態様において、前記制御部は、前記分離システムの起動時に、前記第一の分離装置、前記加湿器及び前記熱交換回路の少なくとも1つが所定の温度に到達するまで、前記第二の分離装置を、前記第一の分離装置、前記加湿器及び前記熱交換回路の少なくとも1つが前記所定の温度に到達した後の前記第二の分離装置の運転状態よりも発熱を優先する暖気モードとしてもよい。
この構成によれば、分離システムの起動時に効率的に第一の分離装置、第二の分離装置及び加湿器を温めることができ、より迅速に分離システムを起動できる。
【0009】
[5] 上記[4]の態様において、前記熱交換回路は、前記加湿器から前記第二の分離装置に前記熱交換媒体を供給する第三の接続回路と、前記第三の接続回路に設けられたラジエータとをさらに有し、前記制御部は、前記第一の分離装置、前記加湿器及び前記熱交換回路の少なくとも1つが前記所定の温度に到達した後に、前記ラジエータを起動し、前記第二の分離装置を前記暖気モードから発電を優先する発電モードとしつつ、前記第一の分離装置を起動してもよい。
この構成によれば、分離システムの運転に適した温度帯で分離システムを稼働することができ、第一の分離装置での分離性能を確保しつつ、第二の分離装置での発電を行うことができる。
【0010】
また、本発明の別の側面は、以下の通りである。
[6] 本発明の一態様に係る分離システムの起動方法は、連結された複数の分離装置と、熱交換回路と、水を電気分解する水電気分解装置と、制御部とを備え、前記複数の分離装置は、水素同位体を含む流体が流入され、前記流体よりも水素同位体含有率が低い流体を流出する第一の分離装置と、前記第一の分離装置の下流に設けられ、前記第一の分離装置から流出した前記流体により発電を行う第二の分離装置とを含み、前記熱交換回路は、前記第二の分離装置から前記第一の分離装置に熱交換媒体を供給する第一の接続回路を有し、前記水電気分解装置は前記第一の分離装置の上流に設けられている分離システムの起動方法であって、前記制御部により、前記分離システムの起動時に前記水電気分解装置を起動した後に、前記第二の分離装置を起動し、前記第二の分離装置から前記第一の分離装置に熱交換媒体を供給する。
この構成によれば、分離システムの起動時に、発電を行う第二の分離装置から第一の分離装置へ廃熱を供給でき、エネルギー効率よく迅速に分離システムを起動できる。また、水の電気分解により生じた気体により第二の分離装置の発電を行うことができ、効率的な分離システムの起動が可能となる。
【0011】
[7] 上記[6]の態様において、前記分離システムは、前記第一の分離装置に供給される流体を加湿する加湿器をさらに備え、前記熱交換回路は、前記第一の分離装置又は前記第二の分離装置から、前記加湿器に前記熱交換媒体を供給する第二の接続回路をさらに有し、前記制御部により、前記分離システムの起動時に、前記第一の分離装置又は前記第二の分離装置から、前記加湿器に前記熱交換媒体を供給してもよい。
この構成によれば、第二の分離装置にて発生する廃熱を第一の分離装置に加えて加湿器にも供給できるので、廃熱をより有効に活用できる。
【0012】
[8] 上記[7]の態様において、前記制御部により、前記分離システムの起動時に、前記第一の分離装置、前記加湿器及び前記熱交換回路の少なくとも1つが所定の温度に到達するまで、前記第二の分離装置を、前記第一の分離装置、前記加湿器及び前記熱交換回路の少なくとも1つが前記所定の温度に到達した後の前記第二の分離装置の運転状態よりも発熱を優先する暖気モードとしてもよい。
この構成によれば、分離システムの起動時に効率的に第一の分離装置、第二の分離装置及び加湿器を温めることができ、より迅速に分離システムを起動できる。
【0013】
[9] 上記[8]の態様において、前記熱交換回路は、前記加湿器から前記第二の分離装置に前記熱交換媒体を供給する第三の接続回路と、前記第三の接続回路に設けられたラジエータとをさらに有し、前記制御部により、前記第一の分離装置、前記加湿器及び前記熱交換回路の少なくとも1つが前記所定の温度に到達した後に、前記ラジエータを起動し、前記第二の分離装置を前記暖気モードから発電を優先する発電モードとしつつ、前記第一の分離装置を起動してもよい。
この構成によれば、分離システムの運転に適した温度帯で分離システムを稼働することができ、第一の分離装置での分離性能を確保しつつ、第二の分離装置での発電を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エネルギー効率よく、迅速に起動できる分離システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の分離システムの一例を模式的に示す構成図である。
図2】本発明の分離システムの起動方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る分離システム及び起動方法について、図1、2を適宜参照しながら詳述する。
なお、本発明において、水素の三種の同位体のうち、質量数2のデューテリウム(H又はD)と質量数3のトリチウム(H又はT)を総称して「水素同位体」といい、質量数1の水素(H又はH)を「軽水素」という。
また、気体及び液体を総称して「流体」という。本発明においては、気体中に液体を含むものや、液体中に気体を含むものも、流体に含まれる。流体としては、気体、又は気体中に液体を含むものが好ましい。
また、本発明の分離システムを起動するに際して行われる一連の操作が完了するまでを「分離システムの起動」とする。具体的には、後述の水電気分解装置が起動してから、後述の第一の分離装置が起動するまでを「分離システムの起動」とする。また、起動後の分離システムの運転を「分離システムの稼働」とする。
また、以下の説明で用いる各図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0017】
「分離システム」
図1は、本発明の分離システムの一例を模式的に示す構成図である。
図1に示す分離システム1は、連結された第一の分離装置10及び第二の分離装置20と、水電気分解装置30と、加湿器40と、熱交換回路50と、制御部80とを備える。
水電気分解装置30、加湿器40、第一の分離装置10及び第二の分離装置20は、上流側からこの順に、水素供給流路60及び酸素供給流路70にて連結されている。
【0018】
<第一の分離装置>
第一の分離装置10は、水素同位体を含む流体(以下、「第一流体」ともいう。)が流入され、第一流体よりも水素同位体含有率が低い流体(以下、「第二流体」ともいう。)を流出する装置である。
第一の分離装置10は、第一の燃料電池11を備える。また、第一の分離装置10は、第一の燃料電池11を加温又は冷却するための熱交換媒体が通過する流路(図示略)を有する。なお、本明細書において、熱交換媒体が通過する流路の入口を「媒体入口」ともいい、流路の出口を「媒体出口」ともいう。
【0019】
第一の燃料電池11は、第一流体から水素同位体を分離するためのものである。
第一の燃料電池11としては、公知の燃料電池を使用できる。具体例として、第一の燃料電池11は、電解質膜を備え、電解質膜の両面のうち、第一の面にアノード触媒層及びアノード流路がこの順に設けられ、第二の面にカソード触媒層及びカソード流路がこの順に設けられている。また、第一の燃料電池11は、電解質膜と、アノード触媒層及びアノード流路と、カソード触媒層及びカソード流路とを挟み込む1対のセパレータとを有する。
【0020】
電解質膜は電解質を有しており、第一の分離装置10が稼働すると、第一流体に含まれる軽水素及び水素同位体が電解質膜を介してアノード触媒層からカソード触媒層へ拡散する。
電解質膜としては、電解質を有するものであれば特に制限されないが、軽水素及び水素同位体が拡散しやすく、電解質膜とカソード触媒層との界面において同位体交換反応(HD+HO⇔H+HDO)が起こりやすくなり、反応効率も上がる点から、固体高分子膜が好ましい。
固体高分子膜としては、例えばプロトン導電性固体高分子膜、アニオン導電性固体高分子膜などが挙げられる。
【0021】
アノード触媒層は、電解質膜の第一の面に設けられている。
アノード触媒層に含まれる触媒としては、例えば白金、ルテニウム等の貴金属、ニッケル、コバルト等の遷移金属、及びそれらの合金や酸化物などが挙げられる。これらの中でも、同位体置換反応(H+D⇔2DH)が起こりやすくなり、反応効率も上がる点から、白金が好ましい。
アノード流路は、アノード触媒層の電解質膜とは反対側の面に設けられている。アノード流路は、アノード触媒層とセパレータとの間の領域である。
【0022】
カソード触媒層は、電解質膜の第二の面に設けられている。
カソード触媒層に含まれる触媒としては、例えば白金、ルテニウム等の貴金属、ニッケル、コバルト等の遷移金属、及びそれらの合金や酸化物などが挙げられる。これらの中でも、カソード触媒層中、及び電解質膜とカソード触媒層との界面において同位体交換反応が起こりやすくなり、反応効率も上がる点から、白金が好ましい。
特に、同位体交換反応がより起こりやすくなり、反応効率もより上がる点から、電解質膜が固体高分子膜であり、アノード触媒層及びカソード触媒層が白金を含むことが好ましい。
カソード流路は、カソード触媒層の電解質膜とは反対側の面に設けられている。カソード流路は、カソード触媒層とセパレータとの間の領域である。
【0023】
セパレータは、アノード流路及びカソード流路の外側にそれぞれ設けられている。
セパレータは、例えばスチレン、チタン、カーボンなどが挙げられる。
【0024】
電解質膜、アノード触媒層、アノード流路、カソード触媒層、カソード流路及びセパレータを1つのセル(燃料電池セル)としたときに、第一の燃料電池11は1つの燃料電池セルで構成されたものであってもよいし、複数の燃料電池セルの集合体(燃料電池スタック)であってもよい。
【0025】
<第二の分離装置>
第二の分離装置20は、第一の分離装置10の下流に設けられ、第一の分離装置10から流出した第二流体により発電を行う装置である。すなわち、図1に示す分離システム1は、分離・発電システムでもある。
第二の分離装置20は、第二の燃料電池21を備える。また、第二の分離装置20は、第二の燃料電池21を加温又は冷却するための熱交換媒体が通過する流路(図示略)を有する。
【0026】
第二の燃料電池21は、第二流体と酸素を利用して発電しつつ、水を生成するためのものである。発電の際に、第二流体から水素同位体が分離される。
第二の燃料電池21としては、公知の燃料電池を使用できる。具体例として、第二の燃料電池21は、電解質膜を備え、電解質膜の両面のうち、第一の面にアノード触媒層及びアノード流路がこの順に設けられ、第二の面にカソード触媒層及びカソード流路がこの順に設けられている。また、第二の燃料電池21は、電解質膜と、アノード触媒層及びアノード流路と、カソード触媒層及びカソード流路とを挟み込む1対のセパレータとを有する。
【0027】
第二の燃料電池21を構成する、電解質膜、アノード触媒層、アノード流路、カソード触媒層、カソード流路及びセパレータは、第一の分離装置10に備わる第一の燃料電池11を構成する電解質膜、アノード触媒層、アノード流路、カソード触媒層、カソード流路及びセパレータとそれぞれ同様のものが挙げられる。
第二の燃料電池21は1つの燃料電池セルで構成されたものであってもよいし、複数の燃料電池セルの集合体(燃料電池スタック)であってもよい。
【0028】
<水電気分解装置>
水電気分解装置30は、第一の分離装置10の上流に設けられ、水を電気分解する装置である。
水電気分解装置30としては、公知の水電気分解装置を用いることができ、例えば固体高分子型水電気分解装置、アルカリ型水電気分解装置などが挙げられる。これらの中でも、多量の水素ガスを発生できる点から、アルカリ型水電気分解装置が好ましい。
【0029】
分離システム1の起動時に水電気分解装置30で分解される原料、すなわち水としては特に制限されず、水素同位体を含む水でもよいし、水素同位体を含まない水でもよい。具体的には、水道水、純水、水素同位体を含む廃水、水素同位体を含まない廃水等が挙げられる。
【0030】
<加湿器>
加湿器40は、水電気分解装置30と第一の分離装置10との間に設けられ、第一の分離装置10に供給される流体を加湿するものである。具体的には、加湿器40は、水電気分解装置30において水の電気分解により発生した水素及び酸素のうち、水素を含む流体を加湿するものである。加湿器40にて加湿された水素を含む流体は、第一の燃料電池11のアノード流路、第二の燃料電池21のアノード流路の順に供給される。
加湿器40としては、水蒸気を発生させることができるものであれば特に制限されない。なお、加湿器40は、加湿器40を加温又は冷却するための熱交換媒体が通過する流路(図示略)を有する。
【0031】
加湿器40では、水素を含む流体に加えて、酸素を含む流体を加湿してもよい。加湿器40にて加湿された酸素を含む流体は、第一の燃料電池11のカソード流路、第二の燃料電池21のカソード流路の順に供給される。
水素を含む流体と酸素を含む流体の両方を加湿する場合、各流体は別々の加湿器にて加湿することが好ましい。なお、加湿器内にて水素を含む流体と酸素を含む流体が混合されないように、例えばそれぞれの流路が加湿器内に設けられている場合は、1つの加湿器にて水素を含む流体と酸素を含む流体を加湿してもよい。
【0032】
<熱交換回路>
熱交換回路50は、第一の接続回路51と、第二の接続回路52と、第三の接続回路53と、ラジエータ54と、第一のポンプ55とを有する。
第一の接続回路51は、第二の分離装置20から第一の分離装置10に熱交換媒体を供給するための配管である。すなわち、第二の分離装置20と第一の分離装置10とは、第一の接続回路51により接続されている。第一の接続回路51の一端は第二の分離装置20の媒体出口に接続され、他端は第一の分離装置10の媒体入口に接続されている。
この例の第二の接続回路52は、第一の分離装置10から加湿器40に熱交換媒体を供給するための配管である。すなわち、第一の分離装置10と加湿器40とは、第二の接続回路52により接続されている。第二の接続回路52の一端は第一の分離装置10の媒体出口に接続され、他端は加湿器40の媒体入口に接続されている。
第三の接続回路53は、加湿器40から第二の分離装置20に熱交換媒体を供給するための配管である。すなわち、加湿器40と第二の分離装置20とは、第三の接続回路53により接続されている。第三の接続回路53の一端は加湿器40の媒体出口に接続され、他端は第二の分離装置20の媒体入口に接続されている。
ラジエータ54は、第三の接続回路53に設けられている。ラジエータ54としては、熱交換媒体の放熱を行うことができるものであれば特に制限されず、公知のラジエータを使用できる。
第一のポンプ55は、第三の接続回路53のラジエータ54よりも下流に設けられている。
【0033】
熱交換媒体は、熱交換回路50を介して、第二の分離装置20、第一の分離装置10及び加湿器40の間を循環する。
熱交換媒体としては、例えば水、空気、エチレングリコール等が挙げられる。
【0034】
<水素供給流路>
水素供給流路60は、水電気分解装置30において水の電気分解により発生した水素及び酸素のうち、水素を含む流体(以下、「流体(F1)」ともいう。)を第二の分離装置20に供給するための配管である。
水素供給流路60は、第一の水素供給流路61と、第二の水素供給流路62と、第三の水素供給流路63と、第二のポンプ64とを有する。
第一の水素供給流路61は、水電気分解装置30から加湿器40に、水電気分解装置30において発生した流体(F1)を供給するための配管である。すなわち、水電気分解装置30と加湿器40とは、第一の水素供給流路61により接続されている。
第二の水素供給流路62は、加湿器40から第一の分離装置10に流体(F1)を供給するための配管である。すなわち、加湿器40と第一の分離装置10とは、第二の水素供給流路62により接続されている。第二の水素供給流路62の一端は加湿器40に接続され、他端は第一の燃料電池11のアノード流路の入口に接続されている。
第三の水素供給流路63は、第一の分離装置10から第二の分離装置20に流体(F1)を供給するための配管である。すなわち、第一の分離装置10と第二の分離装置20とは、第三の水素供給流路63により接続されている。第三の水素供給流路63の一端は第一の燃料電池11のアノード流路の出口に接続され、他端は第二の燃料電池21のアノード流路の入口に接続されている。
第二のポンプ64は、第一の水素供給流路61に設けられている。
なお、水電気分解装置30にて水素が生成するので、そのときの圧力差で流体は下流へと流れていく。よって、第二のポンプ64を必ずしも設ける必要はなく、水素供給流路60は第二のポンプ64を有していなくてもよい。
【0035】
<酸素供給流路>
酸素供給流路70は、水電気分解装置30において水の電気分解により発生した水素及び酸素のうち、酸素を含む流体(以下、「流体(F2)」ともいう。)を第二の分離装置20に供給するための配管である。
酸素供給流路70は、第一の酸素供給流路71と、第二の酸素供給流路72と、第三の酸素供給流路73と、第三のポンプ74とを有する。
第一の酸素供給流路71は、水電気分解装置30から加湿器40に、水電気分解装置30において発生した流体(F2)を供給するための配管である。すなわち、水電気分解装置30と加湿器40とは、第一の酸素供給流路71により接続されている。
第二の酸素供給流路72は、加湿器40から第一の分離装置10に流体(F2)を供給するための配管である。すなわち、加湿器40と第一の分離装置10とは、第二の酸素供給流路72により接続されている。第二の酸素供給流路72の一端は加湿器40に接続され、他端は第一の燃料電池11のカソード流路の入口に接続されている。
第三の酸素供給流路73は、第一の分離装置10から第二の分離装置20に流体(F2)を供給するための配管である。すなわち、第一の分離装置10と第二の分離装置20とは、第三の酸素供給流路73により接続されている。第三の酸素供給流路73の一端は第一の燃料電池11のカソード流路の出口に接続され、他端は第二の燃料電池21のカソード流路の入口に接続されている。
第三のポンプ74は、第一の酸素供給流路71に設けられている。
なお、水電気分解装置30にて酸素が生成するので、そのときの圧力差で流体は下流へと流れていく。よって、第三のポンプ74を必ずしも設ける必要はなく、酸素供給流路70は第三のポンプ74を有していなくてもよい。
また、本実施形態の分離システム1では、流体(F2)は加湿器40及び第一の分離装置10を通過して第二の分離装置20に供給されるが、水電気分解装置30から流体(F2)を直接、第二の分離装置20に供給してもよい。また、加湿器40を通過した流体(F2)を第一の分離装置10を介さずに第二の分離装置20に供給してもよいし、加湿器40を介さずに、流体(F2)を第一の分離装置10、第二の分離装置20の順で供給してもよい。
【0036】
<制御部>
制御部80は、第一の分離装置10、第二の分離装置20、水電気分解装置30、ラジエータ54、第一のポンプ55、第二のポンプ64及び第三のポンプ74等の作動を制御するものである。
具体的に、制御部80は、分離システム1の起動時に水電気分解装置30を起動した後に、第二の分離装置20を起動する。このとき、第二のポンプ64及び第三のポンプ74も起動する。
【0037】
また、制御部80は、分離システム1の起動時に、第一の分離装置10、加湿器40及び熱交換回路50の少なくとも1つが所定の温度(以下、「温度T」ともいう。)に到達するまで、第二の分離装置20を通常運転よりも発熱を優先する暖気モードとする。そして、第一のポンプ55を起動して、熱交換媒体を第二の分離装置20、第一の分離装置10及び加湿器の間で循環させる。
本発明において、第二の分離装置20の通常運転とは、第一の分離装置10、加湿器40及び熱交換回路50の少なくとも1つが温度Tに到達した後の、第二の分離装置20の運転状態、すなわち、発電が優先される「発電モード」のことである。なお、暖気モードにおいても発電は行われる。
また、第一の分離装置10、加湿器40及び熱交換回路50の少なくとも1つが温度Tに到達するとは、例えば第一の接続回路51、第二の接続回路52及び第三の接続回路53の少なくとも1つを流れる熱交換媒体の温度が、温度Tに到達することである。
【0038】
また、制御部80は、第一の分離装置10、加湿器40及び熱交換回路50の少なくとも1つが温度Tに到達した後に、ラジエータ54を起動し、第二の分離装置20暖気モードから発電を優先する発電モードとしつつ、第一の分離装置10を起動する。
【0039】
<分離システムの起動方法>
上述した分離システム1の起動方法の一例について、図2を用いて以下に説明する。
図2は、分離システム1の起動方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【0040】
まず、制御部80により、水電気分解装置30を起動する(ステップS1)。
また、制御部80により第二のポンプ64を起動させて、水電気分解装置30において発生した水素を含む流体(F1)を水素供給流路60を介して、加湿器40、第一の分離装置10、第二の分離装置20の順に供給する。
流体(F1)は、加湿器40、第一の燃料電池11のアノード流路、第二の燃料電池21のアノード流路の順に通過する。なお、流体(F1)が加湿器40を通過する際には、流体(F1)を加湿することが好ましい。流体(F1)を加湿することで、第二の燃料電池21の劣化を抑制できる。
流体(F1)に含まれる水素は軽水素でもよいし、水素同位体でもよいし、両方でもよい。
【0041】
また、制御部80により第三のポンプ74を起動させて、水電気分解装置30において発生した酸素を含む流体(F2)を酸素供給流路70を介して、加湿器40、第一の分離装置10、第二の分離装置20の順に供給する。
流体(F2)は、加湿器40、第一の燃料電池11のカソード流路、第二の燃料電池21のカソード流路の順に通過する。なお、流体(F2)が加湿器40を通過する際には、流体(F2)を加湿することが好ましい。流体(F2)を加湿することで、第二の燃料電池21の劣化を抑制できる。
【0042】
次に、第二の分離装置20において、第二の燃料電池21の電解質膜を挟んでアノード側の圧力(アノード圧力)が所定値に到達したか否かを判定する(ステップS2)。具体的には、第二の燃料電池21のアノード側の圧力が発電可能な圧力に達しているか否かを判定する。
アノード側及びカソード側の圧力は、流体(F1)及び流体(F2)の流量を第二のポンプ64及び第三のポンプ74にて調節することで制御できる。例えば、流体(F1)の流量を流体(F2)の流量よりも多くすることで、アノード側がカソード側よりも高圧になりやすくなる。
【0043】
アノード圧力が所定値に到達した場合、制御部80により、第二の分離装置20を起動する(ステップS3)。また、制御部80により第一のポンプ55を起動させて、熱交換回路50を介して、第二の分離装置20から第一の分離装置10、第一の分離装置10から加湿器40、加湿器40から第二の分離装置20の順に、熱交換媒体を供給して熱交換媒体を循環させる。
【0044】
次に、第二の分離装置20の発電量が所定値に到達したか否かを判定する(ステップS4)。
【0045】
第二の分離装置20の発電量が所定値に到達した場合、制御部80により、第一の分離装置10、加湿器40及び熱交換回路50の少なくとも1つが所定値(温度T)に到達するまで、第二の分離装置20を暖気モードとする(ステップS5)。
第二の分離装置20を暖気モードとするには、例えば、流体(F1)の流量を流体(F2)の流量よりも多くすればよい。また、流体(F2)の流量を発電モード時の流量よりも減らしたり、第二の分離装置20にヒーター等を取り付けて温めたりする方法でも、暖気モードとすることができる。
第二の分離装置20を暖気モードとすることで、第二の分離装置20に供給された熱交換媒体が速やかに加温されて第二の分離装置20から排出され、第一の分離装置10及び加湿器40の順に供給されるので、第一の分離装置10及び加湿器40が迅速に温められる。
【0046】
次に、第一の分離装置10、加湿器40及び熱交換回路50の少なくとも1つが温度Tに到達したか否かを判定する(ステップS6)。具体的には、第一の接続回路51、第二の接続回路52及び第三の接続回路53の少なくとも1つを流れる熱交換媒体の温度が、所定値(温度T)に到達したか否かを判定する。
【0047】
第一の分離装置10、加湿器40及び熱交換回路50の少なくとも1つが温度Tに到達した場合、制御部80により、ラジエータ54を起動し、第二の分離装置20を暖気モードから発電を優先する発電モードとする(ステップS7)。
ラジエータ54を起動することで、熱交換媒体がラジエータ54を通過する際に冷却されるので、第一の分離装置10、加湿器40及び熱交換回路50が過剰に温められるのを抑制できる。第三の接続回路53のラジエータ54よりも上流を通過するときの熱交換媒体の温度が温度T以下を維持できるように、熱交換媒体を冷却することが好ましい。
【0048】
次に、制御部80により、第一の分離装置10を起動する(ステップS8)。
第一の分離装置10の起動により、分離システム1の起動を完了とする。
【0049】
<分離システムの稼働>
第一の分離装置10を起動することで、分離システム1が稼働する。
まず、水電気分解装置30にて、例えば水素同位体を含む水を電気分解する。この電気分解により得られた、水素同位体を含む流体(第一流体)を第一の分離装置10の第一の燃料電池11のアノード流路の入口から流入する。このとき、第一流体を加湿器40に通過させてから第一の燃料電池11のアノード流路に流入させてもよいし、水電気分解装置30から直接、第一の燃料電池11のアノード流路に流入させてもよい。
別途、電気分解により得られた、酸素を含む流体(F2)を第一の分離装置10の第一の燃料電池11のカソード流路の入口から流入する。このとき、流体(F2)を加湿器40に通過させて、加湿してから第一の燃料電池11のカソード流路に流入させるのが好ましい。この場合、流体(F2)は酸素と水蒸気とを含む。また、流体(F2)に窒素を含有させてもよい。
【0050】
第一の分離装置10において、アノード流路に流入した第一流体に含まれる軽水素及び水素同位体の一部は、アノード流路からアノード触媒層へ移動し、さらにアノード触媒層から電解質膜を通過してカソード触媒層へと移動する。
カソード触媒層へ移動した軽水素及び水素同位体は、カソード触媒層中、及び電解質膜とカソード触媒層との界面において、カソード流路からカソード触媒層へと移動した流体(F2)に含まれる水蒸気(HO)と同位体交換反応し、DO及びHDOが生成する。
カソード触媒層へ移動しなかった第一流体に含まれる軽水素及び水素同位体は、第一流体よりも水素同位体含有率が低い流体である第二流体としてアノード流路の出口から流出される。
なお、同位体交換反応は、アノード触媒層の表面でも起こる。
【0051】
第一の燃料電池11のアノード流路から流出した第二流体は、その一部が第一の燃料電池11のアノード流路に返送されてもよいし、全てが第二の分離装置20に供給されて発電に利用されてもよい。第二流体を発電に利用すれば、第二流体に含まれる軽水素及び水素同位体を消費できる。
【0052】
上記の同位体交換反応に利用されずに第一の燃料電池11のカソード流路を通過する流体(F2)と、同位体交換反応により生成し、カソード流路へ移動したDO、HDO及びHとは、流体(F3)として第一の燃料電池11のカソード流路の出口から流出される。
第一の燃料電池11のカソード流路から流出した流体(F3)を気液分離してもよし、DOを含む水として回収してもよい。
流体(F3)を気液分離する場合、流体(F3)から分離した気体は排出される。流体(F3)から分離した液体は、水電気分解装置30に供給されてもよいし、DOを含む水として回収されてもよい。
【0053】
第二の分離装置20では、まず、第一の燃料電池11のアノード流路から流出した第二流体の少なくとも一部を、第二の燃料電池21のアノード流路の入口から流入する。
別途、酸素を第二の燃料電池21のカソード流路の入口から流入する。分離システム1の稼働時に第二の燃料電池21のカソード流路に流入される酸素としては、水電気分解装置30により生成した酸素を含む流体(F2)を用いることができる。この場合、水電気分解装置30から第二の燃料電池21のカソード流路に直接、流体(F2)を供給する。
【0054】
第二の燃料電池21のアノード流路に流入した第二流体に含まれる軽水素及び水素同位体の一部は、イオンの状態でアノード流路からアノード触媒層へ移動し、さらにアノード触媒層から電解質膜を通過してカソード触媒層へと移動する。
第二の燃料電池21のカソード触媒層へ移動した軽水素イオン及び水素同位体イオンは、カソード触媒層中、及び電解質膜とカソード触媒層との界面において、カソード流路からカソード触媒層へと移動した酸素と反応して水(HO及びDO)を生成する。このときの反応により第二の分離装置20は発電する。
このように、第一の燃料電池11のアノード流路から流出した第二流体は発電に利用され、消費される。
【0055】
発電に使用されなかった、第二流体よりも水素同位体含有率が低い流体(F4)は、第二の燃料電池21のアノード流路の出口から流出される。流出した流体(F4)は、排出してもよいし、流体(F4)の少なくとも一部を第二の燃料電池21のアノード流路に返送してもよい。
一方、第二の燃料電池21のカソード触媒層等にて生成し、カソード流路へ移動した水(HO及びDO)を流体(F5)として第二の燃料電池21のカソード流路の出口から流出する。第二の燃料電池21のカソード流路から流出した流体(F5)である水(HO及びDO)は、水電気分解装置30に供給してもよいし、排出してもよいし、DOを含む水として回収してもよい。
なお、本発明において排出される流体は、排出後に適切に処理される。
【0056】
<作用効果>
以上説明した、本実施形態の分離システム及びその起動方法では、分離システムの起動時に、第二の分離装置で温められた熱交換媒体を第一の分離装置に供給する。分離システムの稼働時において、第一流体から水素同位体を効率よく分離するには、第一の分離装置を同位体交換反応に適した温度に加温する必要があるが、本実施形態であれば、第二の分離装置にて発生する廃熱を第一の分離装置の加温に利用して、第一の分離装置を速やかに加温できる。このとき、第一の分離装置、加湿器及び熱交換回路の少なくとも1つが温度Tに到達するまで第二の分離装置を暖気モードにすることで、第二の分離装置から第一の分離装置に供給される熱交換媒体が速やかに加温され、第一の分離装置をより迅速に加温できる。しかも、第二の分離装置も発電に適した温度に速やかに加温でき、より迅速に分離システムを起動できる。また、第一の分離装置、加湿器及び熱交換回路の少なくとも1つが温度Tに到達した後は、第二の分離装置を暖気モードから発電モードに切り替えることで、分離システムの運転に適した温度帯で分離システムを稼働することができ、第一の分離装置での分離性能を確保しつつ、第二の分離装置での第二流体による発電を行うことができる。
よって、本実施形態の分離システム及びその起動方法によれば、エネルギー効率よく、迅速に分離システムを起動できる。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与できる。
【0057】
また、分離システムの起動時に、第一の分離装置及び第二の分離装置に順次供給される流体(流体(F2))を加湿しておけば、各分離装置に備わる燃料電池を構成する電解質膜の劣化を抑制できる。加えて、第一の分離装置を起動した後の同位体交換反応が進行しやすくなり、第一流体から水素同位体を分離する分離係数が向上し、分離効率が高まる。分離システムの起動時に、第二の分離装置で温められた熱交換媒体を加湿器にも供給し、予め加湿器も加温しておけば、加温された流体(F2)を第一の分離装置に供給できるので、第一の分離装置をより迅速に加温でき、また、第一の分離装置を起動した後の同位体交換反応がより進行しやすくなり、分離効率がより高まる。
このように、第二の分離装置にて発生する廃熱を第一の分離装置及び加湿器の加温に有効に活用できる。
【0058】
<他の実施形態>
本発明の分離システム及びその起動方法は上述したものに限定されない。
例えば、図1に示す分離システム1では、第二の接続回路が52の一端が第一の分離装置10の媒体出口に接続されているが、第二の接続回路が52の一端は第二の分離装置20の媒体出口に接続されていてもよい。すなわち、第二の分離装置20と加湿器40とが、第二の接続回路52により接続されていてもよい。
また、第一の接続回路51が途中で分岐し、第一の接続回路51の一端が第二の分離装置20の媒体出口に接続され、他端の一方が第一の分離装置10の媒体入口に接続され、他端の他方が加湿器40の媒体入口に接続されていてもよい。
【0059】
また、分離システム1の起動時においては、流体(F1)及び流体(F2)を、第一の分離装置10を通過せずに、水電気分解装置30又は加湿器40から直接、第二の分離装置20に供給してもよい。
【0060】
また、図1に示す分離システム1では、2つの分離装置を備えるものであるが、分離システム1は、3つ以上の分離装置を連結して備えていてもよい。この場合、3つ以上の分離装置のうち、少なくとも最上流の分離装置が第一の分離装置10であり、最下流の分離装置が第二の分離装置20であれば、残りの分離装置は第一の分離装置10であってもよいし、第二の分離装置20であってもよい。特に、最下流のみに第二の分離装置20が備わることがより好ましい。
【符号の説明】
【0061】
1 分離システム
10 第一の分離装置
11 第一の燃料電池
20 第二の分離装置
21 第二の燃料電池
30 水電気分解装置
40 加湿器
50 熱交換回路
51 第一の接続回路
52 第二の接続回路
53 第三の接続回路
54 ラジエータ
55 第一のポンプ
60 水素供給流路
61 第一の水素供給流路
62 第二の水素供給流路
63 第三の水素供給流路
64 第二のポンプ
70 酸素供給流路
71 第一の酸素供給流路
72 第二の酸素供給流路
73 第三の酸素供給流路
74 第三のポンプ
80 制御部
図1
図2