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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142849
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】バタフライ弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/226 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F16K1/226 B
F16K1/226 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055205
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 克哉
(72)【発明者】
【氏名】竹政 理晴
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA02
3H052BA02
3H052CA01
3H052CB01
3H052CB23
3H052EA02
(57)【要約】
【課題】弾性シートの周方向における止水面圧のバラつきを低減させること。
【解決手段】バタフライ弁(1)は、真円状の内周面(11)を有する弁箱(10)と、流路中心線と直交する軸心を有する弁軸と、弁箱内において軸心周りを回転自在に配置される平面視真円の円盤状の弁体(20)と、弁箱の内周面に設けられ、弁軸が挿通される弁孔(34)を有する環状の弾性シート(30)とを備える。弾性シートは、軸方向両側に位置し、弁孔を取り囲む第1の領域(32a,32b)と、軸直方向両側に位置する円弧状の第2の領域(33)とを含み、全閉状態において弁体が弾性シートの第1の領域を押し付ける押し付け寸法は、第2の領域を押し付ける押し付け寸法よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真円状の内周面を有し、流体の流路を形成する円筒状の弁箱と、
流路中心線と直交する軸心を有する弁軸と、
前記弁箱内において前記軸心周りを回転自在に配置される平面視真円の円盤状の弁体と、
前記弁箱の前記内周面に設けられ、前記弁軸が挿通される弁孔を有する環状の弾性シートとを備え、
前記弾性シートは、軸方向両側に位置し、前記弁孔を取り囲む第1の領域と、軸直方向両側に位置する円弧状の第2の領域とを含み、
全閉状態において前記弁体が前記弾性シートの前記第1の領域を押し付ける押し付け寸法は、前記第2の領域を押し付ける押し付け寸法よりも大きい、バタフライ弁。
【請求項2】
前記弾性シートのシート面のリング形状が、無負荷状態において、前記軸方向を短辺とし、前記軸直方向を長辺とする楕円形状である、請求項1に記載のバタフライ弁。
【請求項3】
前記弁体は、仮想真円球に一致するように形成された環状の弁体シート面を有しており、
前記弾性シートのシート面は、前記軸方向を短辺とし、前記軸直方向を長辺とする仮想楕円球に一致するように形成されている、請求項1に記載のバタフライ弁。
【請求項4】
前記長辺を1とした場合における、前記第1の領域と前記第2の領域の押し付け寸法の差は、1/1000~1/100である、請求項2または3に記載のバタフライ弁。
【請求項5】
前記弁箱の前記内周面に、真円状の底面を有する環状溝が設けられており、
前記弾性シートは、前記環状溝に嵌め込まれている、請求項1に記載のバタフライ弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バタフライ弁に関し、特に、弾性シートを備えたバタフライ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
バタフライ弁は、水道等の管路に据え付けられる開閉バルブであり、円筒状流路を有する弁箱と、流路中心線と直交する軸心を有する弁軸と、弁箱内において軸心周りを回転自在に配置された円盤状弁体と、弁箱内周に設けられた弁箱弁座とを備えている。弁箱弁座を、弾性材料からなる環状のシート(以下「弾性シート」という)で構成したバタフライ弁が、特開2008-25802号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特許文献1では、弾性シートが弁箱の内周面の環状溝に嵌め込まれており、弁体の周縁部(弁体シート)が弾性シートに押し付けられた状態(全閉状態)となることで、流路が閉鎖される。弾性シートは、鋳込み形成によって所望の形状とされる。この手法では、未加硫ゴムを、対の金型によって形成された湯道(未加硫ゴムの注入路)を介してキャビティ内に圧入し、未加硫ゴムが圧入された状態で、所定の加硫工程を経ることによって、真円状の環状の弾性シートが形成される。一般的な弾性シートのリング形状は、弁箱および弁体と同心の真円とされる。
【0004】
三重偏心構造のバタフライ弁においては、平面視楕円状の保持面を有する剛性材料からなる保持リングと、シール面を形成する弾性材料からなる封止リングとを備え、封止リングが、保持面に沿うように弾性変形した状態で保持リングに保持される構造が提案されている(特開2012-107716号公報(特許文献2))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-25802号公報
【特許文献2】特開2012-107716号公報(特許第5586023号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、弁体が平面視真円状であり、弾性シートが(流路中心線の方向に見て)真円状に形成される場合、弁体取り付け前の無負荷状態における弾性シートの径方向の厚みは周方向において一定である。一方、弁軸の軸心方向を上下方向と仮定すると、弁体の外周部の厚みは、弁孔開口のある上下端部の方が両側部(左右の円弧部分)よりも大きい。そのため、全閉状態における弾性シートと弁体のシート面との接触幅(接触面積)は、両側部よりも上下端部の方が広い。
【0007】
このような接触幅の違いは、止水面圧に影響を与える。すなわち、上下端部における止水面圧が両側部における止水面圧よりも低くなる。両側部における止水面圧を基準に、弁体(弁体シート)の外径寸法と弾性シートの内径寸法との差、すなわち弁体が弾性シートを押しる「押し付け寸法」を設定すると、全閉状態であっても、上下端部における接触箇所から流体が漏出するおそれがある。また、反対に、押し付け寸法を比較的大きくして上下端部における止水面圧不足を補う場合、両側部における弁体の押し付け寸法が必要以上に大きくなるため、使用により弾性シートが損傷するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、弾性シートの周方向における止水面圧のバラつきを低減させることのできるバタフライ弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面に従うバタフライ弁は、真円状の内周面を有し、流体の流路を形成する円筒状の弁箱と、流路中心線と直交する軸心を有する弁軸と、弁箱内において軸心周りを回転自在に配置される平面視真円の円盤状の弁体と、弁箱の内周面に設けられ、弁軸が挿通される弁孔を有する環状の弾性シートとを備える。弾性シートは、軸方向両側に位置し、弁孔を取り囲む第1の領域と、軸直方向両側に位置する円弧状の第2の領域とを含み、全閉状態において弁体が弾性シートの第1の領域を押し付ける押し付け寸法は、第2の領域を押し付ける押し付け寸法よりも大きい。
【0010】
好ましくは、弾性シートのシート面のリング形状が、無負荷状態において、軸方向を短辺とし、軸直方向を長辺とする楕円形状である。
【0011】
より好ましくは、弁体は、仮想真円球に一致するように形成された環状の弁体シート面を有しており、弾性シートのシート面は、軸方向を短辺とし、軸直方向を長辺とする仮想楕円球に一致するように形成されている。
【0012】
長辺を1とした場合における、第1の領域と第2の領域の押し付け寸法の差は、1/1000~1/100であることが望ましい。
【0013】
典型的には、弁箱の内周面に、真円状の底面を有する環状溝が設けられており、弾性シートは、環状溝に嵌め込まれている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、弾性シートの周方向における止水面圧のバラつきを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態における弁箱(弾性シート付き)を正面から見た片側断面図である。
図2】本発明の実施の形態における弁体の形状を示す正面図(平面図)である。
図3図2のIII-III線に沿う弁体の断面図である。
図4図2のIV-IV線に沿う弁体の断面図である。
図5】本発明の実施の形態における弁箱(弾性シート付き)を側方から見た片側断面図である。
図6図5のVI線で囲む部分の拡大図であり、弾性シートの上側領域を拡大して示す。
図7図5のVII-VII線に沿う部分断面図であり、弾性シートの中央領域を拡大して示す。
図8】本発明の実施の形態において弾性シートの上側領域と弁体とが密着した状態を模式的に示す図である。
図9】本発明の実施の形態において弾性シートの中央領域と弁体とが密着した状態を模式的に示す図である。
図10】公知のバタフライ弁の正面図である。
図11】公知のバタフライ弁の概略構成を示す縦断面図である。
図12】公知のバタフライ弁における弾性シートの形成方法を示す図である。
図13】公知のバタフライ弁における弾性シートを形成する際に用いる金型を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0017】
本実施の形態に係るバタフライ弁は、円筒状流路を有する円筒状の弁箱と、流路中心線と直交する軸心を有する弁軸と、弁箱内において軸心周りを回転自在に配置される円盤状の弁体とを備えており、弁箱弁座がゴムなどの弾性材料により形成された環状の弾性シートにより構成されている。
【0018】
本実施の形態におけるバタフライ弁の説明に先立ち、弾性シートを採用した公知のバタフライ弁の構造について説明する。
【0019】
<公知のバタフライ弁について>
図10および図11を参照して、公知のバタフライ弁100の概略構成について説明する。図10は、バタフライ弁100の正面図であり、図11は、バタフライ弁100の概略構成を示す断面図である。
【0020】
バタフライ弁100は、円筒状流路90を形成する円筒状の弁箱10と、流路中心線(流路90の中心線)Pと直交する軸心Oを有する弁軸60と、弁箱10内において軸心O周りを回転自在に配置される円盤状の弁体20と、ゴムなどの弾性材料により形成された環状の弾性シート(弁箱弁座)130とを備えている。弁箱10の内周面11は真円状であり、流路中心線Pは内周面11の軸線に一致する。円盤状の弁体20は、その中心が軸心Oと流路中心線Pとの交差点に一致するように弁箱10内に設けられており、全閉状態において、流路中心線Pに直交するように配置される。
【0021】
以下の説明では、軸心Oの延在方向を軸方向(矢印A1で示す)といい、軸方向を上下方向ともいう。軸方向に直交する方向を軸直方向(矢印A10)という。また、流路中心線P方向に見て軸心Oに直交する方向を左右方向(矢印A2で示す)、流路中心線Pに沿う方向(流体の流れ方向)を奥行方向(矢印A3で示す)ともいう。
【0022】
弾性シート130は、弁箱10の内周面11に形成された環状溝12に嵌め込まれており、全閉状態において弁体20の外周部のシート面20aの全体に接触する。弾性シート130の奥行き方向の幅は弁箱10の筒軸長さ(奥行き方向の長さ寸法)よりも短く、弾性シート130は弁箱10の開口縁まで至らない範囲となっている。弾性シート130は、図11に示すように、弁軸60の軸心Оに対して奥行き方向において線対称となっており、その上部及び下部に弁軸60を挿通可能な弁孔130a,130bがそれぞれ形成されている。
【0023】
弁箱10内に弾性シート130を形成する方法について、図12および図13を参照して簡単に説明する。弁箱10の両側開口から第一の金型110aと第二の金型110bをそれぞれ挿入するとともに、弁箱10の上下弁軸保持部13,14内にそれぞれ弁軸支持部用金型111,112を挿入する。弁軸支持部用金型111,112は、それぞれ円柱状を成す棒状金型111a,112aと、その一端に固定されたフランジ部111b,112bとからなり、上下弁軸保持部13,14内には棒状金型111a,112aが挿入されて、前記対の金型110a,110bとの間に入れ子113,113を介在させる。入れ子113,113は円盤状であり、半割ピース113a,113aを合わせて成る。その中央部に、前記棒状金型111a,112aの先端がぴったりと嵌り込む凹部を備えている。
【0024】
対の金型110a,110bの前面同士は、図12(b)に示すように、鉤状部が噛み合った状態で密着し、その状態でスペーサ117を介して弁箱10に固定される。対の金型110a,110b、両棒状金型111a,112a及び入れ子113,113によって、弁箱10の内面との間に弾性シート130用のキャビティが形成される。
【0025】
次に、第一の金型110aの背面側に形成された凹部114に、未加硫ゴムGを充填する。金型110のラム110cを筒軸方向へ押すと、未加硫ゴムGは、対の金型110a,110bによって形成された湯道(未加硫ゴムGの注入路)116a,116bを介して前記キャビティ内に圧入される。未加硫ゴムGが圧入された状態で、所定の加硫工程を経て弾性シート130が形成される。
【0026】
再び図10を参照して、弁箱10の内周面11は、流路中心線P方向に見て(正面から見て)真円状である。また、弁箱10内に取り付けられる弁体20も平面視真円状である。そのため、公知のバタフライ弁100では、弾性シート130の無負荷状態におけるシート面(内周面)のリング形状も、「真円状」とされる。無負荷状態とは、弁箱10に弁体20を取り付ける前の状態であり、弾性シート130が弁体20によって押し付けられていない状態をいう。
【0027】
弁体20と弾性シート130との寸法関係は、弾性シート130の真円形状のシート面直径を“B”とすると、弁体20の外径寸法は“B+β”とされる。この押し付け寸法“β”は、一般的に、弁体20の開閉動作によって弾性シート130に接離する弁体20の両側部23(図2参照)を基準に定められる。後述するように、弁体20と弾性シート130との接触幅は周方向に一定ではないことから、真円形状の弾性シート130を用いると止水面圧にバラツキが生じてしまう。
【0028】
これに対し、本実施の形態のバタフライ弁は、止水面圧のバラつきを軽減することのできる弾性シートを備えている。以下に、本実施の形態に係るバタフライ弁について詳細に説明する。
【0029】
<本実施の形態のバタフライ弁について>
本実施の形態に係るバタフライ弁は、公知のバタフライ弁100と同様に、円筒状の弁箱10および円盤状の弁体20を備えている。ここでまず、これらの構造および形状について具体的に説明する。
【0030】
(弁箱の形状)
図1および図5を参照して、本実施の形態における弁箱10の形状について説明する。図1は、本実施の形態に係るバタフライ弁1の弁箱10(弾性シート30付き)を正面から(流路中心線P方向に)見た片断面図であり、軸心Oを境にして弁箱10の正面図と横断面図とが半分ずつ示されている。図5は、弁箱10(弾性シート30付き)を側方から見た片断面図であり、軸心Oを境にして弁箱10の側面図と縦断面図とが半分ずつ示されている。
【0031】
弁箱10は、流路90を形成する円筒部10aと、円筒部10aの筒軸方向(流路中心線P方向)の両端に設けられた環状フランジ部10bとを有している。図1に示されるように、円筒部10aの内周面11は真円状の円筒面である。内周面11には、円筒部10aと同心の環状溝12が設けられている。
【0032】
環状溝12は、内周面11の位置よりも径方向外側に凹んだ底面12aを有している。図1に示されるように、底面12aは、内周面11と同様に、真円状の円筒面である。なお、環状溝12の幅は、上下弁軸保持部13,14に重なる部分を除いて、周方向にわたり略一定である。上下弁軸保持部13,14に重なる部分の幅は、他の部分よりも大きく、かつ、底面12aが円環状とされている(図12参照)。本実施の形態では、当該部分の底面12aは、図1に示されるように、他の部分よりも径方向外側にさらに凹んでいてもよい。また、後述の図6および図7に示されるように、底面12aの両側部に、内周面11の位置よりも径方向内側に若干突出させた凸部15が設けられていてもよい。
【0033】
(弁体の形状)
図2図4を参照して、弁体20の形状について説明する。図2は、弁体20の形状を示す正面図(平面図)である。図3は、図2のIII-III線に沿う弁体20の断面図(軸方向に沿って切断した縦断面図)であり、図4は、図2のIV-IV線に沿う弁体20の断面図(軸直方向に沿って切断した断面図)である。なお、これらの図では、弁体20が全閉姿勢をとったときの各種方向(奥行き方向、左右方向など)を表記している。
【0034】
弁体20は、図2に示されるように、平面視真円状に形成されている。弁体20の外径寸法φbは、弁箱10の内径寸法φa(図1)よりも若干小さい。弁体20の外径寸法φbは、後述するように、弾性シート30のシート面(内周面)31の短軸LAおよび長軸LBよりも大きい。
【0035】
図3および図4に示されるように、弁体20には軸方向に貫通する軸挿通孔26が設けられており、弁体20の軸方向両端部(上下端部)には、弁孔開口26a,26bが露出する。弁体20の外周部21の厚みは、軸方向両側に位置し、弁軸60が通る上端部22aおよび下端部22bの方が、軸直方向両側に位置する円弧状部分(以下「側部」または「両側部」という)23よりも大きい。
【0036】
弁体20の上端部22aの端面(上端面)は、弁孔開口26aと、弁孔開口26aを取り囲む環状のシート面24aとを有している。弁体20の下端部22bの端面(下端面)は、弁孔開口26bと、弁孔開口26bを取り囲む輪状のシート面24bとを有している。弁体20の両側部23は、シート面24a,24bの幅D1,D2よりも小さい幅D3を有するシート面25を含む。これらのシート面24a,24b,25により、環状の弁体シート面20sが構成される。なお、幅D1~D3は、奥行き方向の幅であり、弾性シート30(シート面31)との接触幅に相当する。
【0037】
本実施の形態では、弁体シート面20sは、“φb”を直径とする「仮想真円球C20」に一致する形状となっている。そのため、各シート面24a,24b,25の断面形状は、円弧形状となっている。
【0038】
(弾性シートの形状)
図1および図5を参照して、弾性シート30の形状について説明する。弾性シート30は、内周側に、使用状態において環状の弁体シート面20sと接触するシート面31を有している。本実施の形態におけるシート面31は、軸方向(軸心O方向)を短辺(短軸)LAとし、軸直方向を長辺(長軸)LBとする仮想楕円球C10に一致するように形成されている。
【0039】
そのため、図1に示されるように、流路中心線P方向に見た場合(または弾性シート30を幅方向中央で切断した場合)、無負荷状態の弾性シート30のシート面31がなす円形状は、真円形状ではなく、軸方向を短軸とする楕円形状である。また、図5に示されるように、弾性シート30を軸方向に沿って半分に切断した横断面に表われるシート面31の形状は、真円の円弧形状ではなく、軸方向を短軸とする楕円の円弧形状である。なお、図面上、シート面31の楕円形状を誇張して記載している。
【0040】
弾性シート30は、弁孔34を含む上側領域32aおよび下側領域32b(第1の領域)と、左右に位置する円弧状の中央領域33(第2の領域)とを含む。図6は、図5のVI線で囲む部分の拡大図であり、弾性シート30の上側領域32aを拡大して示す。図7は、図5のVII-VII線に沿う部分断面図であり、弾性シート30の中央領域33を拡大して示す。中央領域33は、上側領域32aおよび下側領域32bを除く領域である。
【0041】
弾性シート30の上側領域32aにおけるシート面31aは、使用状態において、弁体20の上端部22aのシート面24aに接触する。弾性シート30の中央領域33におけるシート面31bは、使用状態において、弁体20の側部23のシート面25に接触する。上述のように、シート面24aの幅D1はシート面25の幅D3より大きいので、上側領域32aにおけるシート面31aのシート幅D4の方が、中央領域33におけるシート面31bのシート幅D5よりも大きい。弾性シート30の下側領域32bにおけるシート面のシート幅は、上側領域32aにおけるシート幅D4と略等しい。
【0042】
再び図1を参照して、弁箱10に形成された環状溝12の底面12aは真円状の円筒面であり、弾性シート30の外周面は真円状であるため、弾性シート30の厚みは、弁孔34付近の上側領域32aおよび下側領域32bにおいて最大となっている。なお、弾性シート30のシート面31は、環状溝12の範囲内に設けられており、弾性シート30は、シート面31の幅方向両側に位置し、凸部15に固着された鍔部を有している。
【0043】
ここで、仮想楕円球C10の長辺LBは、図11に示した公知の弾性シート130の真円形状のシート面直径と同等の長さ(“B”)に設定されており、短辺LAを、この直径よりも短くしている。そのため、全閉状態において弁体20が弾性シート30を押し付ける押し付け寸法が、上側領域32aおよび下側領域32bと中央領域33とで異なる。すなわち、図8および図9に示すように、上側領域32a(下側領域32b)に対する押し付け寸法Daは、中央領域33に対する押し付け寸法Dbよりも大きい。
【0044】
以下に、各種寸法を定義する。
・仮想楕円球C10の長辺LB=“B”
・仮想楕円球C10の短辺LA=“A”=B-α
・弁体20の外径寸法φb=“B1”=B+β
・長辺側の押し付け寸法Da=“B1-B”=β
・短辺側の押し付け寸法Db=“B1-A”=β+α
【0045】
なお、長辺側の押し付け寸法“β”は、公知のバタフライ弁100における周方向に一定の押し付け寸法“β”と同じであってよい。押し付け寸法Da,Dbとの差、すなわち、仮想楕円球C10の長辺LBと短辺LAとの差“α”は、製造誤差を超える数値であり、少なくとも0.002mm以上であることが望ましい。たとえば、長辺LBを1とすると、差“α”は、1/1000~1/100の範囲で設定可能であり、1/1000以上1/800以下であることが望ましい。
【0046】
上述のように、弾性シート30のシート面31を仮想楕円球C10に一致する形状とすることで、弁体20の押し付け寸法を、接触面積が大きい上側領域32aおよび下側領域32bと、接触面積が小さい中央領域33とにおいて異ならせることができる。すなわち、弾性シート30のシート面31を、弁体シート面20sと同様の「仮想真円球」に一致する形状とするよりも、上側領域32aおよび下側領域32bに対する押し付け寸法Daを、中央領域33に対する押し付け寸法Dbよりも大きくすることができる。
【0047】
したがって、本実施の形態によれば、上側領域32aおよび下側領域32bにおける止水面圧不足を抑制することができるができるので、弾性シート30の周方向における止水面圧のバラつきを低減することができる。また、中央領域33に対する押し付け寸法Dbを必要以上に大きくする必要がない(必要最小値にできる)ので、使用により弾性シート30が損傷する可能性を低減することができる。
【0048】
上述のように、弁箱10および弁体20の形状を変えることなく、弾性シート30の形状を変えるだけの簡単な構成で、流体漏れのリスクを軽減できるため、汎用性が高い。また、製造コストを安価に抑えることができる。
【0049】
なお、このような弾性シート30は、図12および図13に示した金型110a,110bや入れ子113の形状を部分的に変更することにより、鋳込み形成可能である。
【0050】
(変形例)
本実施の形態では、弾性シート30のシート面31が、軸方向(軸心O方向)を短辺(短軸)LAとし、軸直方向を長辺(長軸)LBとする「仮想楕円球C10」に一致するように形成されていることとしたが、このような例に限定されない。ただし、流路中心線P方向に見た場合のシート面31のリング形状は、軸方向(軸心O方向)を短辺(短軸)LAとし、軸直方向を長辺(長軸)LBとする「楕円形状」であることが望ましい(図1参照)。つまり、図6図7に示したシート面31(31a,31b)の横断面形状は、楕円の円弧形状でなくてもよく、たとえば平坦に形成されていてもよい。この場合、弁体シート面20sも、長辺LBに所定寸法(β)だけ加算した長さ(B1)を径とする「仮想真円球C20」に一致する形状でなくてもよい。
【0051】
あるいは、弾性シート30のシート面31のリング形状が楕円形状でなくてもよく、少なくとも、全閉状態において弁体20が弾性シート30の上側領域32aおよび下側領域32bを押し付ける押し付け寸法が、中央領域33を押し付ける押し付け寸法よりも大きければよい。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1,100 バタフライ弁、10 弁箱、12 環状溝、20 弁体、20s 弁体シート面、31,31a,31b シート面、30,130 弾性シート、32a 上側領域(第1の領域),32b 下側領域(第1の領域)、33 中央領域(第2の領域)、34 弁孔、60 弁軸、90 円筒状流路、C10 仮想楕円球、C20 仮想真円球、LA 短辺、LB 長辺、O 軸心、P 流路中心線。
図1
図2
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図5
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図13