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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142861
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】光加熱装置、光源ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H01L21/26 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055225
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 和雅
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真司
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被処理基板の面内における加熱条件の設定の自由度が高い光加熱装置及び光源ユニットを提供する。
【解決手段】光加熱装置1は、被処理基板10を収容するチャンバ16と、チャンバ内で被処理基板を支持する支持ユニット17と、支持ユニットに支持された被処理基板の主面10aに対向して配置され、主面に向かって加熱光L1を出射する複数の加熱群を含む光源ユニット11と、複数の加熱群の夫々に対して供給する電力を制御する制御ユニット15と、を備える。被処理基板と光源ユニットのうちいずれか一方が、他方に対して被処理基板の主面を法線方向に通過する回転軸を中心に回転可能であり、加熱群が、回転軸からの距離が略同一の複数の光源からなり、回転軸方向に見たときに、第(n)加熱群の第(n)回転軌跡の一部と、第(n)加熱群の次に前記回転軸に近い第(n+1)回転軌跡の一部とが、互いに重複する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱対象の被処理基板を収容するチャンバと、
前記チャンバ内において、前記被処理基板を支持する支持ユニットと、
前記支持ユニットに支持された前記被処理基板の主面に対向して配置され、前記主面に向かって加熱用の光を出射する複数の加熱群を含む光源ユニットと、
前記複数の加熱群のそれぞれに対して供給する電力を制御する制御ユニットと、を備え、
前記被処理基板と前記光源ユニットのうちいずれか一方が、他方に対して前記被処理基板の前記主面を法線方向に通過する回転軸を中心に回転可能に構成され、
前記加熱群は、前記回転軸からの距離が略同一の複数の光源からなり、
前記回転軸方向に見たときに、第(n)加熱群に属する前記光源の発光領域を、前記回転軸を中心に仮想的に回転させて描かれる環状の第(n)回転軌跡の一部と、前記第(n)加熱群の次に前記回転軸に近い第(n+1)加熱群に属する前記光源の発光領域を、前記回転軸を中心に仮想的に回転させて描かれる環状の第(n+1)回転軌跡の一部とが、互いに重複することを特徴とする光加熱装置。
【請求項2】
前記第(n)回転軌跡と前記第(n+1)回転軌跡を前記回転軸方向に見たときに、双方の前記回転軌跡が重複する重複領域が、前記第(n+1)回転軌跡の面積の50%以上を占めることを特徴とする、請求項1に記載の光加熱装置。
【請求項3】
前記第(n)加熱群に属する前記光源の数は、前記第(n+1)加熱群に属する前記光源の数以上であることを特徴とする、請求項1に記載の光加熱装置。
【請求項4】
前記第(n+1)加熱群に属する前記光源は、前記回転軸を中心とする円の周方向に関して、前記第(n)加熱群に属する前記光源の間に配置されたことを特徴とする、請求項1に記載の光加熱装置。
【請求項5】
前記第(n+1)加熱群に属する全ての前記光源が連続して、前記回転軸を中心とする円の周方向に関して、前記第(n)加熱群に属する前記光源の間に配置されたことを特徴とする、請求項4に記載の光加熱装置。
【請求項6】
前記第(n)加熱群及び前記第(n+1)加熱群は、それぞれ前記回転軸を中心とする円周上で偏在して配置された複数の前記光源で構成されたことを特徴とする、請求項1に記載の光加熱装置。
【請求項7】
複数の前記光源は、前記光源から出射されて、前記被処理基板とは異なる方向に向かって進行する加熱用の前記光を、前記被処理基板側へと進行するように導光する導光部材を備えることを特徴とする、請求項1に記載の光加熱装置。
【請求項8】
前記光源は、
複数のLED素子と、
前記回転軸方向に見たときに前記LED素子の周囲を覆い、前記光源から出射されて前記被処理基板とは異なる方向に向かって進行する加熱用の前記光を前記被処理基板側へと進行するように導光する導光部材と、を備えることを特徴とする、請求項1に記載の光加熱装置。
【請求項9】
前記光源の前記導光部材は、他の前記光源の前記導光部材と互いに離間して配置されたことを特徴とする、請求項8に記載の光加熱装置。
【請求項10】
複数の前記光源において、それぞれの前記LED素子の配置及び前記導光部材の形状が略同一に構成されたことを特徴とする、請求項8に記載の光加熱装置。
【請求項11】
前記光源ユニットは、前記回転軸上に配置された補助光源を含み、
前記補助光源は、複数の前記光源よりも多くのLED素子を有することを特徴とする、請求項8に記載の光加熱装置。
【請求項12】
請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の光加熱装置に用いられる、光源ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光加熱装置及び光源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは、半導体ウェハ等の被処理基板に対して、成膜処理、酸化拡散処理、改質処理、アニール処理といった様々な熱処理が行われる。そして、これらの処理は、非接触での処理が可能な光照射による加熱処理方法が多く採用されている。下記特許文献1では、被処理基板の高速昇温のために、LEDが高密度で配置された光加熱装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-58722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から、被処理基板に加熱用の光を照射する装置は、被処理基板の全体が均一に処理されるように、被処理基板の表面(特に主面)全体にわたって温度を均一にできることが求められてきた。これは、熱処理のプロセスが完了した被処理基板が複数に切断されることによって、複数の素子が製造されることによるものであり、面内バラつきを抑制し、より高い歩留まりを確保するためである。なお、「主面」とは、板状の物体を構成する表面のうち、他の面よりもはるかに面積の大きい面を指す。
【0005】
従来の光加熱装置では、被処理基板の処理に必要な熱エネルギーを十分に供給するため、例えば特許文献1に記載の光加熱装置のように、被処理基板に加熱用の光(以下、便宜上、「加熱光」という。)を照射する光源が高密度で配置される。光源が高密度で配置された装置において、被処理基板の面内の温度を均一にすべく、被処理基板の面内の加熱条件を設定する場合には、被処理基板の主面に対して加熱光を照射する各光源の出力を異ならせることが考えられる。この場合、被処理基板の面内方向に関する加熱条件の自由度は、光源のサイズに依存する。光源のサイズの設計には一定の限界があるため、従来の光加熱装置は、被処理基板の面内における加熱条件の設定の自由度に課題があった。
【0006】
一方、近年、半導体プロセスは多様化し、被処理基板を処理する薬液やガス(以下、便宜上、「処理液等」という)が、被処理基板の主面上に接触する場合がある。この場合、被処理基板は、処理液等と接触することで熱の授受が発生し温度の変動が生じ得る。また、被処理基板は、中央部側に比べて周端部側が放熱しやすいため、中央部側よりも周端部側により高い照度で加熱光を照射したい場合もある。さらに、被処理基板が回転されながら処理される場合には、当該温度影響の程度は、被処理基板の回転速度にも依存する。このように、被処理基板の面内の加熱条件は、被処理基板に適用されるプロセスごとに異なるという事情がある。
【0007】
しかしながら、プロセスごとに各工程で用いる処理装置を個別に導入しようとすると、莫大な導入コストや、装置を配置するための広大なスペースが必要となる。したがって、複数のプロセスに対応できるように、被処理基板の面内における加熱条件の設定の自由度が高い光加熱装置が求められている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みて、被処理基板の面内における加熱条件の設定の自由度が高い光加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光加熱装置は、
加熱対象の被処理基板を収容するチャンバと、
前記チャンバ内において、前記被処理基板を支持する支持ユニットと、
前記支持ユニットに支持された前記被処理基板の主面に対向して配置され、前記主面に向かって加熱用の光を出射する複数の加熱群を含む光源ユニットと、
前記複数の加熱群のそれぞれに対して供給する電力を制御する制御ユニットと、を備え、
前記被処理基板と前記光源ユニットのうちいずれか一方が、他方に対して前記被処理基板の前記主面を法線方向に通過する回転軸を中心に回転可能に構成され、
前記加熱群は、前記回転軸からの距離が略同一の複数の光源からなり、
前記回転軸方向に見たときに、第(n)加熱群に属する前記光源の発光領域を、前記回転軸を中心に仮想的に回転させて描かれる環状の第(n)回転軌跡の一部と、前記第(n)加熱群の次に前記回転軸に近い第(n+1)加熱群に属する前記光源の発光領域を、前記回転軸を中心に仮想的に回転させて描かれる環状の第(n+1)回転軌跡の一部とが、互いに重複することを特徴とする。
【0010】
上記光加熱装置では、被処理基板の主面に対向して配置された複数の光源が、被処理基板に対して加熱光を照射する。ここで、光源が「配置された」とは、例えば光源がLED素子の場合には、LED基板上にLED素子が載置されたことを指し、光源がランプの場合には、任意の面にランプが取り付けられたことを指す。
【0011】
また、本明細書において、「複数の光源の回転軸からの距離が略同一」とは、各光源と回転軸との距離の差異が平均値から±1%以内にあることを示す。これは、回転軸を中心とする円の径方向に関する光源の配置の誤差を許容する趣旨である。
【0012】
また、「発光領域」とは、それぞれの加熱群を構成する光源において、被処理基板と光源が対向する方向に関して、被処理基板の主面に対して実質的に加熱光を出射する領域を指す。なお、「発光領域」については、後段の「発明を実施するための形態」の項で詳述される。
【0013】
本発明者らは、被処理基板の加熱条件の設定の自由度を高める観点から、光源ユニットにおいて、被処理基板に加熱光を照射する光源を、複数の加熱群に分類して配置した。このとき、被処理基板、又は光源ユニットのいずれか一方を、他方に対して前記回転軸を中心に回転させながら加熱することで、被処理基板の温度の周方向に関する均一性を高めた。つまり、被処理基板が前記回転軸を中心として、光源ユニットに対して相対的に回転することで、各加熱群に属する光源の発光領域から出射された加熱光は、被処理基板の周方向に関して均一に照射される。
【0014】
また、本発明者らは、鋭意検討の結果、上記光源ユニットにおいて、第(n)加熱群に属する光源の発光領域と、第(n)加熱群の次に回転軸に近い第(n+1)加熱群に属する光源の発光領域を、前記回転軸を中心に仮想的に回転させて描かれる環状の第(n)回転軌跡及び第(n+1)回転軌跡を、前記回転軸方向に見たときに、第(n)回転軌跡が第(n+1)回転軌跡と部分的に重なるように配置すれば、被処理基板の径方向に関して、加熱群の数を多く配置できることを見出した。発光領域を、前記回転軸を中心に仮想的に回転させて環状の回転軌跡を描くという過程については、「発光領域」と同様に「発明を実施するための形態」の項で詳述される。
【0015】
上記構成によれば、光源を径方向に関して同一の直線上に並べた場合よりも、径方向に関する加熱群の数を多く配置できる。径方向の加熱群の数を多く配置することで、加熱光の照射条件を細かく設定することが可能となる。つまり、上記構成によって、上記光加熱装置の被処理基板の加熱条件の設定の自由度が高められる。
【0016】
なお、各加熱群は、前記回転軸からの距離が略同一の複数の光源で構成される。つまり、回転軸との距離が略同一の複数の光源が、周方向に分散して配置される。これにより、例えば光源自体のサイズを大きくすることなく、被処理基板の周方向に関する加熱光の照射量を高めることができる。また、回転軸の径方向に関する発光領域のサイズが大きくなることが抑制される結果、径方向の加熱群の数を多く配置することが可能となり、加熱条件の設定の自由度が高められる。
【0017】
なお、光源ユニットが上記加熱群とは別の補助光源を含む場合も、本発明の射程範囲内である。
【0018】
また、上記光加熱装置において、前記第(n)回転軌跡と前記第(n+1)回転軌跡を前記回転軸方向に見たときに、双方の前記回転軌跡が重複する重複領域が、前記第(n+1)回転軌跡の面積の50%以上を占めることが好ましく、75%以上を占めることがより好ましい。この回転軌跡の重複領域が大きい程、被処理基板の径方向に関して加熱群を多く配置することが可能である。
【0019】
また、上記光加熱装置において、
前記第(n)加熱群に属する前記光源の数は、前記第(n+1)加熱群に属する前記光源の数以上であっても構わない。
【0020】
前述の通り、被処理基板は、中央部側に比べて周端部側が放熱しやすい。したがって、基板が一回転する間に照射される加熱光の積算照射量を高める観点から、第(n)加熱群の光源の数は、より内側に位置する第(n+1)加熱群に属する光源の数以上であることが好ましい。
【0021】
上記光加熱装置において、
前記第(n+1)加熱群に属する前記光源は、前記回転軸を中心とする円の周方向に関して、前記第(n)加熱群に属する前記光源の間に配置されても構わない。
【0022】
上記構成によれば、第(n)回転軌跡と第(n+1)回転軌跡が互いに重複する領域を大きくすることが容易となり、被処理基板の径方向に関してより多くの加熱群を配置できる。なお、各光源に電力を供給する配線等の設計を容易にする観点から、当該周方向に関して、第(n+1)加熱群に属する全ての前記光源が連続して、第(n)加熱群に属する前記光源の間に配置されても構わない。
【0023】
また、上記光加熱装置において、
前記第(n)加熱群及び前記第(n+1)加熱群は、それぞれ前記回転軸を中心とする円周上で偏在して配置された複数の前記光源で構成されても構わない。
【0024】
なお、「円周上で偏在して配置された」とは、同周円上で配置された光源の発光領域の中心を通過する円の円周に対して、各光源の発光領域の中心を前記円の周方向に結んだ円弧の長さが50%以内であることを意味する。
【0025】
上記構成によれば、光源ユニットにおいて、各加熱群に属する光源が配置された領域が偏在するため、各光源に電力を供給するための配線等の設計が容易となる。
【0026】
上記光加熱装置において、
複数の前記光源は、前記光源から出射されて、前記被処理基板とは異なる方向に向かって進行する加熱用の前記光を、前記被処理基板側へと進行するように導光する導光部材を備えても構わない。
【0027】
加熱光は、光源の発光領域から一定の広がりをもって出射される。そのため、被処理基板とは異なる方向に向かって進行する加熱光も存在する。これに対し、上記構成によれば、被処理基板とは異なる方向に進行する加熱光の割合が低減する。したがって、加熱光を被処理基板に対して効率良く照射することが可能となる。
【0028】
上記光加熱装置において、
前記光源は、
複数のLED素子と、
前記回転軸方向に見たときに前記LED素子の周囲を覆い、前記光源から出射されて前記被処理基板とは異なる方向に向かって進行する加熱用の前記光を前記被処理基板側へと進行するように導光する導光部材と、を備えても構わない。
【0029】
また、上記光加熱装置において、
前記光源の前記導光部材は、他の前記光源の前記導光部材と互いに離間して配置されても構わない。
【0030】
上記光加熱装置は、
複数の前記光源において、それぞれの前記LED素子の配置及び前記導光部材の形状が略同一に構成されても構わない。
【0031】
各光源を構成するLED素子の配置、及び導光部材の形状が略同一であることにより、複数の光源を製造することが容易となる。このため、上記の構成は、光加熱装置の光源ユニットの製造コストが低減され、好適である。
【0032】
上記光加熱装置において、
前記光源ユニットは、前記回転軸上に配置された補助光源を含み、
前記補助光源は、複数の前記光源よりも多くのLED素子を有しても構わない。
【0033】
回転軸上に、複数の光源を配置することはできないため、被処理基板において回転軸が通過する領域部分に照射される加熱光の照射量を高めにくい場合がある。これに鑑みて、回転軸上に補助光源を配置しても構わない。さらに、光源及び補助光源がLED素子で構成される場合には、回転軸上に配置された補助光源は、他の光源よりもLED素子が多く配置されても構わない。なお、回転軸上に光源を配置するとは、後述する補助光源の発光領域内に、回転軸が含まれることを意味する。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、被処理基板の面内における加熱条件の設定の自由度が高い光加熱装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】光加熱装置の模式的な側面断面図である。
図2図1に示す光加熱装置における、支持ユニットの構造を模式的に示す斜視図である。
図3A】光源ユニットを-Z方向に見たときの図面である。
図3B図3Aの光源ユニットにおけるB-B断面図である。
図3C】LED基板と導光部材とを分解して表示した斜視図である。
図3D図3Aの回転軸付近の光源を拡大して示した図面である。
図4A図3Aに示した光源ユニットの第1加熱群~第6加熱群、及び補助光源を示した図面である。
図4B図3Aに示した光源ユニットの第7加熱群~第12加熱群に属する光源を示した図面に対応する。
図5】各加熱群に属する光源と回転軸との距離を示す図面である。
図6】第1加熱群に属する光源の発光領域と、第2加熱群に属する光源の発光領域を、回転軸を中心に仮想的に回転させたときの概念図である。
図7】第1加熱群と第2加熱群の関係を示す別の図面である。
図8】比較の例として、光源の発光領域を近接して同一の径方向上に並ぶように配置した場合の光源ユニットを示す模式的な図面である。
図9A図4Aの各加熱群に属する光源の配置の関係を示す図面である。
図9B図9Aにおいて、第1加熱群及び第2加熱群の配置の関係を示す別の図面である。
図10図4Aの各加熱群に属する光源の配置の関係を示す別の図面である。
図11】制御ユニットの構成を模式的に示すブロック図である。
図12A】表2に示す制御パターンに基づいて、各加熱群に供給する電力を制御した場合の、被処理基板の加熱条件をシミュレーションしたグラフである。
図12B図12Aとは別の制御パターンに基づいて、各加熱群に供給する電力を制御した場合の、被処理基板の加熱条件をシミュレーションしたグラフである。
図13図3Bに倣って、導光部材に設けられた貫通孔の別の例を示す断面図である。
図14A図3Aに倣って、導光部材の別の構成例を示す模式図である。
図14B図3Cに倣って、導光部材の別の構成例を示す模式図である。
図15A】光加熱装置の変形例の模式的な側面断面図である。
図15B図11Aにおいて、図3Aに倣って、基板の第一主面から、光源ユニットを-Z方向に見たときの図面である。
図15C】光源を構成するランプを拡大して示した断面図である。
図16】光源ユニットにおける、光源の配置の別例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る光加熱装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0037】
(光加熱装置1)
図1は、光加熱装置1の模式的な側面断面図である。図1に示すように、光加熱装置1は、加熱対象の被処理基板10を収容するチャンバ16と、チャンバ16内で被処理基板10を支持する支持ユニット17と、光源ユニット11と、制御ユニット15と、を備える。
【0038】
以下の説明において、被処理基板10の主面と平行な面をX-Y平面とし、被処理基板10の主面に直交する方向をZ方向とする、X-Y-Z座標系が適宜参照される。また、方向を表現する際に正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。また、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「X方向」と記載されている場合には、「+X方向」と「-X方向」の双方が含まれる。Y方向及びZ方向についても同様である。
【0039】
(チャンバ16)
チャンバ16は、図1に示すように、被処理基板10と、被処理基板10の-Z側の主面(以下、便宜上、「第一主面10a」とする。)に対して加熱光L1を照射する光源ユニット11を収容する。そして、チャンバ16は、加熱光L1が、被処理基板10の第一主面10aに対して照射されるように、被処理基板10を支持する支持ユニット17を備える。なお、説明の便宜上、被処理基板10の+Z側の主面を第二主面10bとする。
【0040】
(支持ユニット17)
図2は、図1に示す光加熱装置1における、支持ユニット17の構造を模式的に示す斜視図である。図1及び図2に示す例では、支持ユニット17は、回転レール17bと、回転レール上を回転可能な複数の挟持部17aを備える。被処理基板10は、それぞれの挟持部17aに挟持されて支持される。そして、挟持部17aが回転レール17b上を回転することで、被処理基板10は、第二主面10bの法線方向(Z方向)に通過する回転軸20を中心に、光源ユニット11に対して回転される。なお、本実施形態では、回転軸20は被処理基板10の中心を通過する。ただし、本発明は、回転軸20が被処理基板10の中心を通過するか否かに限定されない。
【0041】
(光源ユニット11)
図3Aは、光源ユニット11を-Z方向に見たときの図面である。図3Bは、図3Aの光源ユニット11におけるB-B断面図である。図3Cは、LED基板12bと導光部材13とを分解して表示した斜視図である。また、図3Dは、図3Aの回転軸20付近を拡大して示した図面である。
【0042】
図3Aに示すように、光源ユニット11は、加熱光L1を出射する複数の光源12,12,…と、導光部材13を備える。なお、図3Aにおいては、各光源12が有するLED素子12aの図示が省略され、後述する配置領域21が示されている。
【0043】
図3Bに示すように、光源12は、LED基板12bと、LED基板12b上に載置されたLED素子12aと、導光部材13で構成される。LED素子12aが載置されたLED基板12bの載置面12cは、被処理基板10の第一主面10aと対向する(図1参照)。
【0044】
図3Bでは、光源12における、LED素子12aから出射された加熱光L1の進行の態様が模式的に示されている。図3Bに示すように、導光部材13は、貫通孔13bの内面(反射面13a)で加熱光L1を反射することで、加熱光L1を+Z方向に導光する。
【0045】
また、図3Bに示すように、それぞれの光源12において、加熱光L1を出射する発光領域31が定義される。ここで、「発光領域31」は、+Z側から、光源ユニット11を見たときに、Z方向に関して、実質的に加熱光L1を出射する領域をいう。
【0046】
LED素子12aから出射された加熱光L1は、一定の広がりをもって進行する。これに対し、図3Bに示すように、導光部材13が配置された場合には、加熱光L1は導光部材13が有する反射面13aによって反射されることで+Z側へと導光されて、被処理基板10に照射される。したがって、実質的に加熱光L1は、導光部材13の貫通孔13bから出射される。つまり、図3Bに示す例では、導光部材13に設けられた貫通孔13bの+Z側に係る端面における開口範囲が、発光領域31に対応する。
【0047】
また、導光部材13が配置されない場合も、本発明の射程範囲内である。この場合、被処理基板10の第一主面10aから光源ユニット11を見たときの、各光源におけるLED素子12aの配置領域21の外縁が、発光領域31に対応する。
【0048】
図3Cに示すように、導光部材13は、加熱光L1を反射する部材からなる板状部材に対して、それぞれの光源12の位置と対応するように貫通孔13bが設けられたプレートである。貫通孔13bは、他の光源12に対応する貫通孔13bと互いに離間して配置される。前述したように、貫通孔13bの内面が反射面13aに対応する。
【0049】
導光部材13がプレートで構成され、LED基板12b上に載置されたLED素子12aの配置領域21に合わせて貫通孔13bが設けられることで、Z方向に見たときにそれぞれの配置領域21の周囲を反射面13aで覆うことが容易となる。これにより、光源ユニット11の製造工程が簡略化される。導光部材13としては、例えば、アルミニウム、金、銅、又はロジウムなどの金属が利用できる。
【0050】
本実施形態では、図3Dに示すように、それぞれの光源12,12,…に、面発光する0.5mm径のLED素子12aが6×7個、すなわち42個配置されている。つまり、LED素子12aが配置された領域の外縁に対応する配置領域21の面積は、110mm2とされている。また、LED素子12aの周囲を覆う、貫通孔13bの直径は20mmとされている。なお、導光部材13の直径は33cmである。
【0051】
それぞれの光源12において、LED素子12aの配置及び導光部材13の形状は略同一に構成されても構わない。なお、「LED素子の配置が略同一である」とは、それぞれの光源12において、LED素子12aの配置領域21が同形状を呈し、配置領域21の面積の差異が平均値から±5%以内にあることを示す。また、ここでいう「導光部材の形状が略同一である」とは、被処理基板10の第一主面10aの法線方向(Z方向)に光源ユニット11を見たときの、それぞれの光源12における貫通孔13bが同形状を呈し、開口範囲の面積の差異が平均値から±5%以内にあることを示す。なお、この場合、それぞれの光源12におけるLED素子12aの配置数の差異が平均値から±10%以内にあることが好ましい。
【0052】
なお、本実施形態では、回転軸20は第一主面10aの中心を通過する。このため、被処理基板10の中央部分に照射される加熱光L1の照射量を高める観点から、回転軸20上に補助光源S1が配置される。また、補助光源S1においては、他の光源12よりもLED素子12aが多く配置されても構わない。より詳細には、補助光源S1には、LED素子12aが6×7×2個、すなわち84個配置され、他の光源12よりも2倍の数のLED素子12aが配置されている。また、当該LED素子12aの周囲を覆う貫通孔13bの直径は35mmである。
【0053】
ここで、回転軸20上に補助光源S1を配置するとは、補助光源S1の発光領域31内に、回転軸20が含まれることを意味する。なお、補助光源S1の発光領域31については、図3Bを参照して述べた、光源12の発光領域31と同様の議論が可能である。
【0054】
なお、回転軸20上に配置された補助光源S1におけるLED素子12aの配置数は、他の光源12と同数であっても構わない。さらに、本発明において、補助光源S1が、回転軸20上に配置されるか否かは限定されない。
【0055】
本実施形態では、光源ユニット11は、第1加熱群G1~第12加熱群G12を含む。図4Aは、図3Aに示した光源ユニット11の第1加熱群G1~第6加熱群G6に属する光源12、及び回転軸20上に配置された補助光源S1を示した図面である。また、図4Bは、第7加熱群G7~第12加熱群G12に属する光源12を示した図面である。図4A及び図4Bにおいては、図3Bを参照して上述した各光源12及び補助光源S1の発光領域31に対して実線のハッチングが施されている。
【0056】
また、図5は、各加熱群に属する光源12と回転軸20との距離を示す図面である。なお、当該距離は、被処理基板10の径方向に関する回転軸20と光源12の発光領域31の中心との距離である。図5では、図示の便宜上、第1加熱群G1~第3加熱群G3に属する光源12のみが図示され、各発光領域31の中心と回転軸20との距離(D1~D3)が図示されている。図5に示すように、各加熱群(G1~G3)は、回転軸20からの距離が略同一の複数の光源12で構成される。具体的には、回転軸20との距離がD1の光源12が第1加熱群G1を構成する、第2加熱群G2以降も同様の議論が可能である。第2加熱群G2は、第1加熱群G1に属する光源12の次に、回転軸20に近い。つまり、この場合、第1加熱群G1が「第(n)加熱群」に対応し、第2加熱群G2が「第(n+1)加熱群」に対応する。
【0057】
下記表1に、被処理基板10の径方向に関する回転軸20と各加熱群に属する光源12の発光領域31の中心との距離、及び各加熱群に属する光源12の数を示す。なお表1では、便宜上、回転軸20上に配置された補助光源S1が併記されている。
【0058】
【表1】
【0059】
表1からも理解できるように、第(n+1)加熱群は、第(n)加熱群の次に回転軸20に近い光源12で構成される。また、本実施形態では、回転軸20上に補助光源S1が配置される。このように、光源ユニット11は、複数の光源12からなる加熱群とは別の補助光源S1を含んでも構わない。なお、補助光源S1が配置される位置は任意である。
【0060】
図6は、第1加熱群G1に属する光源12の発光領域31と、第2加熱群G2に属する光源12の発光領域31を、回転軸20を中心に仮想的に回転させたときの概念図である。図6に示すように、各加熱群に属する光源12の発光領域31は、回転軸20を中心に仮想的に回転されたときに環状の回転軌跡を描く。図6では、第1加熱群G1に属する光源12の発光領域31の環状の回転軌跡(以下、「第1回転軌跡A1」という。)が破線で示され、第2加熱群G2に属する光源12の発光領域31の環状の回転軌跡(以下、「第2回転軌跡A2」という。)が一点鎖線で示されている。前述したように、被処理基板10は回転軸20を中心に光源ユニット11に対して回転されるため、各加熱群の回転軌跡から、被処理基板10に向かって加熱光L1が出射されるといえる。
【0061】
図6に示すように、第1回転軌跡A1と第2回転軌跡A2は、Z方向に見たときに部分的に重複する。図6では、各回転軌跡(A1,A2)が重複する重複領域32に対して、ハッチングが施されている。つまり、この例では、第1回転軌跡A1が第(n)回転軌跡に対応し、第2回転軌跡A2が第(n+1)回転軌跡に対応する。
【0062】
図6では、第1回転軌跡A1と第2回転軌跡A2を例に説明したが、第3加熱群G3以降においても同様の議論が可能である。なお、本発明において、各加熱群の発光領域31を、回転軸20を中心に仮想的に回転させて回転軌跡を描いたときに、回転軌跡が他の加熱群の回転軌跡と重ならない加熱群が存在しても構わない。
【0063】
図7は、第1加熱群G1と第2加熱群G2の関係を示す別の図面である。本実施形態では、第1回転軌跡A1と第2回転軌跡A2が重なることは、図7に示すように、第1加熱群G1の発光領域31と、第2加熱群G2の発光領域31を、回転軸20を中心に仮想的に回転させて、同一の径方向に並べたときに、それぞれの発光領域31が部分的に重なることを意味する。図7では、発光領域31同士が重なった領域に破線のハッチングが施されている。
【0064】
なお、各加熱群の発光領域31を仮想的に回転させて径方向に並べるときに(図7参照)、同一の加熱群に属する光源12において、例えば導光部材13の形状に差異がある場合には、当該加熱群内の光源12のうち、径方向に関して一番大きい導光部材13の貫通孔13bの開口範囲を、当該加熱群の発光領域31としても構わない。
【0065】
また、図6に示す例では、第1回転軌跡A1と第2回転軌跡A2が重複する重複領域32は、第2回転軌跡A2の面積の50%以上を占める構成である。この点は、図7において、仮想的に回転して並べられた第1加熱群G1と第2加熱群G2の双方の発光領域31が重複する領域が、被処理基板10の径方向に関して、第2加熱群G2の発光領域31に対して略50%重複する点にも表れている。前述の通り、被処理基板の径方向に関してより多くの加熱群を配置する観点から、回転軸20に近い側の加熱群の回転軌跡に対して重複領域32が占める割合が高いことが好ましい。ただし、本発明において、重複領域32が回転軸20に近い側の加熱群の回転軌跡に対して占める割合は任意である。
【0066】
図8は、図6で述べた構成に対する比較の例として、光源12の発光領域31を近接して同一の径方向に並ぶように配置した場合の光源ユニット11を示す模式的な図面である。なお、ここでいう「近接」とは、光源12の発光領域31が径方向に関して互いに離間する距離30が、1mm以下であることを指す。図8では、図6の場合と同様に、周方向に回転する被処理基板10に対して加熱光L1を照射することが想定されており、各光源12の発光領域31を、回転軸20を中心に回転したときの回転軌跡Anが示されている。なお、図示の便宜上、回転軌跡Anには、実線によるハッチングと破線によるハッチングが径方向に関して交互に用いられている。また、図8では、周方向に関して配列される光源12は省略されている。
【0067】
図8に示すように、光源12を同一の径方向に並ぶように配置する場合には、光源12の発光領域31は、回転軸20を中心として回転軌跡Anを描いても他の光源12の回転軌跡Anと重ならない。一方で、図6を参照して述べたように、本実施形態では、光源12の発光領域31の回転軌跡が、回転軸20に近い側の加熱群に含まれる他の光源12の発光領域31の回転軌跡と仮想的に重なる。このため、光源12を径方向に関して同一の直線上に並べた場合(図8)よりも、径方向に関する加熱群の数が多くなる。径方向に関する加熱群の数を多く配置することで、加熱光L1の照射条件を細かく設定することが可能となる。つまり、図6の構成によれば、図8と比較して、被処理基板10に対する加熱条件の設定の自由度が高められる。
【0068】
再び図4Aを参照すると、第1加熱群G1に属する光源12の数は、第2加熱群G2に属する光源12の数以上である(表1も参照)。前述の通り、被処理基板10は、中央部側に比べて周端部側、すなわち径方向に関して外側の方が放熱しやすい。したがって、径方向に関して外側に位置する加熱群においては、内側の加熱群以上に、光源12を多く配置して、被処理基板10が一回転する間に照射される加熱光L1の積算照射量を高めることが好ましい。
【0069】
なお、加熱光L1の積算照射量を高める方法としては、光源12に供給する電力を高めることが想定される。しかし、光源12に供給する電力が高められることで、光源12の構成要素であるLED素子12aや後述するランプの劣化が進行しやすくなるという懸念がある。したがって、各加熱群に対して複数の光源12を配置して、発光領域31を仮想的に回転したときの回転軌跡に複数の光源12の発光領域31が含まれることが好ましい。これにより、光源12単体に供給される電力を抑制しつつ、被処理基板10に対する加熱光L1の積算照射量を高めることができる。
【0070】
また、図9Aは、図4Aの各加熱群に属する光源12の配置の関係を示す図面である。図9Aに示すように、第2加熱群G2に属する光源12は、周方向に関して、第1加熱群G1に属する光源12の間に配置されている。この構成によれば、第1回転軌跡A1と第2回転軌跡A2とが重複する重複領域32を大きくすることが容易となり、被処理基板の径方向に関してより多くの加熱群を配置できる。図9Aでは、第1加熱群G1及び第2加熱群G2のみが示されているが、他の加熱群、例えば第2加熱群G2と第3加熱群G3においても同様である(図4A参照)。
【0071】
図9Bを用いて、図9Aで述べた構成の効果について詳細に説明する。図9Bは、図9Aにおいて、第1加熱群G1及び第2加熱群G2の配置の関係を示す別の図面である。図9Bでは、図示の便宜上、第1加熱群G1に属する光源12の一部が省略されている。上記の通り、第2加熱群に属する光源12が、周方向に関して、第1加熱群G1に属する光源12の間に配置されることは、図9Bに示すように、第1加熱群G1に属する光源12の各発光領域31と回転軸20とを仮想的な2つの接線で結んで形成される仮想領域33の外側に、第2加熱群G2の光源12が配置されることを意味する。
【0072】
この構成によれば、第1加熱群G1に属する光源12と、第2加熱群G2に属する光源12とを径方向に関して近づけて配置できる。これにより、第1回転軌跡A1と第2回転軌跡A2の重複領域32がより大きくなる結果、被処理基板10の径方向に関してより多くの加熱群を配置することができる。一方で、図示は省略するが、仮に第2加熱群G2に属する光源12の発光領域31を、仮想領域33と重なるように配置すると、第1加熱群G1に属する光源12と、第2加熱群G2に属する光源12とが径方向に関して遠くなるため、第1回転軌跡A1と第2回転軌跡A2の重複領域32が小さくなる。
【0073】
したがって、第2加熱群G2に属する光源12は、周方向に関して第1加熱群G1に属する光源12の間、すなわち、仮想領域33の外側に配置されることが好ましい。
【0074】
また、各光源12に電力を供給するための配線等の設計を容易にする観点から、図9Aに示すように、第2加熱群G2に属する全ての光源12が連続して、第1加熱群G1に属する光源12の間に配置されることが好ましい。
【0075】
なお、本実施形態では、発光領域31は円形であるため、仮想領域33は、回転軸20を通る発光領域31の接線で形成された。しかし、発光領域31が例えば多角形を呈する場合は、仮想領域33は、回転軸20を通る、発光領域31の外接円の接線で形成されても構わない。
【0076】
また、本実施形態では、各加熱群における複数の光源12は、回転軸20を中心とした円周上に偏在して配置される。図10は、図4Aの各加熱群に属する光源12の配置の関係を示す別の図面である。図10では、第1加熱群G1に属する光源12の発光領域31の中心を通過する円41と、円41の直径43と、第1加熱群G1に属する光源12の発光領域31の中心を円41の周方向に結んだ円弧42が示されている。図10に示すように、円41の円周に対して、円弧42の長さは50%以内である。なお、円41は、図示の便宜上、一部が省略されている。
【0077】
また、図10では、第2加熱群G2に属する光源12の発光領域31の中心を通過する円44と、第2加熱群G2に属する光源12の発光領域31の中心を円44の周方向に結んだ円弧45が示されている。円44の円周に対して、円弧45の長さは50%以内である。
【0078】
このように、隣接する加熱群において、光源12が偏在して配置されることによって、各光源12に電力を供給するための配線等の設計が容易となる。
【0079】
より詳細には、本実施形態では、第1加熱群G1に属する光源12は、第1加熱群内で隣り合う光源12との距離R1が、円41の円周に対して1%以内となるように配置されている(図10参照)。同様に、第2加熱群G2に属する光源12は、第2加熱群内で隣り合う光源12との距離R2が、円44の円周に対して2%以内となるように配置されている。このように、光源12を偏在して配置する観点からは、同一の加熱群に属する光源12同士の周方向に関する距離は、当該光源12の発光領域31の中心を通過する円の円周に対して5%以内であることが好ましい。
【0080】
(制御ユニット15)
図11は、制御ユニット15の構成を模式的に示すブロック図である。図11に示すように、制御ユニット15は、点灯回路18と、プロセッサ19を備える。プロセッサ19は、各加熱群に属する光源12に供給する電力値を含む制御信号19aを、点灯回路18に送信する。点灯回路18は、制御信号19aに基づいて、各加熱群に属する光源12に供給する電力を個別に制御する。なお、図11では、ひとつの点灯回路18が図示されているが、これは図示を簡略化したものであり、例えば複数の点灯回路18が加熱群毎に構成されても構わない。
【0081】
点灯回路18は、各加熱群に属する複数の光源12に対して、同じ電力を供給するように、それぞれの光源12と電気的に接続される。なお、図1に示す制御ユニット15の配置位置は、模式的に示したものであって、制御ユニット15の配置位置はこれに限定されない。
【0082】
また、本実施形態では、被処理基板10の中央部に補助光源S1が配置されている。補助光源S1は、供給される電力が他の加熱群とは別に制御されて、各加熱群と異なる電力が供給されても構わない。さらに、補助光源S1は、他の加熱群と共通の制御が可能なように構成されても構わない。例えば、補助光源S1は、第12加熱群G12と共通の点灯回路18と接続されて、第12加熱群と同様の制御が行われるものとしても構わない。また、補助光源S1に対して電力を供給する点灯回路18を個別に構成した上で、第12加熱群G12に属する光源12と同じ電力が供給されるものとしても構わない。
【0083】
[検証]
以下、各加熱群に供給する電力を制御した場合の、被処理基板10の加熱条件をシミュレーションした結果について説明する。
【0084】
本検証は、加熱対象の被処理基板10の直径が300mmであり、厚みが0.775mmであるものとして行われた。また、光源ユニット11は、図3A~3Dを参照して上述した構成が用いられた。また、被処理基板10と、光源ユニット11が備える導光部材13の+Z側の端面との距離は20mmとされ、被処理基板10は、100rpmの速度で回転するものとされた。
【0085】
下記表2は、本検証においてシミュレーションされた制御パターンを示す表である。各加熱群に供給する電力を個別に制御した例を示す表である。表2では、それぞれの制御パターンにおいて、各加熱群に供給される電力の相対比が示されている。
【0086】
【表2】
【0087】
後述する通り、制御パターンP1は、被処理基板10の周端部側、すなわち径方向に関して外側の領域を他の領域よりも優先して加熱することを意図している。したがって、制御パターンP1は、第1加熱群G1に属するそれぞれの光源12に入力される電力を基準としている。また、制御パターンP2は、被処理基板10の中央部側、すなわち径方向に関して内側の領域を他の領域よりも優先して加熱することを意図している。したがって、制御パターンP2は、第12加熱群G12に属する各光源12に入力される電力を基準としている。
【0088】
図12Aは、表2に示す制御パターンP1に基づいて、各加熱群に供給する電力を制御した場合の、被処理基板10の加熱条件をシミュレーションしたグラフである。図12Aでは、横軸に被処理基板10の中心を基準とする径方向の距離が示され、縦軸に被処理基板10に対して照射される加熱光L1の照度の相対強度が示されている。なお、相対強度は、被処理基板10の中心における照度が基準とされている。図12Aに示すように、制御パターンP1に基づいた場合には、被処理基板10の径方向に関して外側の領域を他の領域よりも優先して加熱できる。例えば、被処理基板10の周端部の温度の低下が顕著な場合には、当該制御パターンP1を採用することで、被処理基板10の第一主面10a内の温度を均一にすることができる。
【0089】
また、図12Bは、図12Aに倣って、表2に示す制御パターンP2に基づいて、各加熱群に供給する電力を制御した場合の、被処理基板10の加熱条件をシミュレーションしたグラフである。図12Bに示すように、制御パターンP2に基づいた場合には、被処理基板10の径方向に関して内側の領域を他の領域よりも優先して加熱できる。例えば、被処理基板10の中央部に対して、被処理基板10の第二主面10bを処理する処理液が供給されるプロセス等において、被処理基板10の内側の領域の温度の低下が顕著な場合には、当該制御パターンP2を採用することで、被処理基板10の温度を均一にすることができる。
【0090】
本発明に係る光加熱装置1は、回転される被処理基板10の径方向に関して、従来よりも加熱群が多く設置されるので、被処理基板10の加熱条件の設定の自由度が高い。図12A及び図12Bに示した被処理基板10の加熱条件はあくまで例示であるが、このように、各加熱群に属する光源12に供給する電力を調整することで、被処理基板10の加熱条件を設計できる。
【0091】
(変形例)
以下、光加熱装置1の変形例について説明する。
【0092】
〈1〉 図13は、図3Bに倣って、導光部材13に設けられた貫通孔13bの別の例を示す断面図である。図13に示すように、貫通孔13bは、+Z方向に進むにつれて、内径が大きくなるように構成されても構わない。これにより、反射面13aが、+Z方向に対して傾くことから、反射面13aで反射された加熱光L1が、被処理基板10の第一主面10aに入射する際の入射角を小さくすることができる。
【0093】
つまり、加熱光L1の指向性が高められて、第一主面10aに照射される加熱光L1が増加する。したがって、加熱光L1を被処理基板10に対してより効率良く照射することが可能となる。
【0094】
〈2〉 上記においては、導光部材13が、貫通孔13bが設けられたプレートで構成される例を示した。しかし、導光部材13は、任意の部材からなる板状部材に貫通孔13bを設けて、当該貫通孔13bの内面に対して、加熱光L1を反射するシートを貼る、又は加熱光L1を反射する反射膜を形成することで、構成することもできる。当該シートの材料としては、例えばアルミニウム、金、銅、又はロジウムなどの金属が利用できる。また、当該反射膜についても、上記シートと同様の金属で形成できる。
【0095】
〈3〉 また、図14A及び図14Bは、図3A及び図3Cに倣って、導光部材13の別の構成例を示す模式図である。図14A及び図14Bに示すように、導光部材13として、貫通孔13bの内面に加熱光L1を反射する反射面13aを有する筒状の部材を、それぞれの光源12に対して設置しても構わない。この構成によれば、導光部材13は、他の光源12の導光部材13と互いに離間して配置される。なお、導光部材13を構成する材料については、図3Cを参照して上述した議論と同様である。
【0096】
〈4〉 上記実施形態と異なり、光源12をランプで構成することも可能である。図15Aは、光加熱装置1の変形例の模式的な側面断面図である。また、図15Bは、図3Aに倣って、被処理基板10の第一主面10aから、光源ユニット11を-Z方向に見たときの図面である。図15Bでは、各ランプ14,14,…の発光領域31に対して実線のハッチングが施されている。また、図15Cは、ランプ14を拡大して示した断面図である。
【0097】
図15Cに示すように、ランプ14は、一端が被処理基板10の第一主面10aに対向する取付面14bに対して取り付けられ、加熱光L1を第一主面10aに対して照射する。このとき、加熱光L1は、一定の発散角で発散しながら進行するが、被処理基板10と光源12が対向する方向(Z方向)に進行する。つまり、図15Cに示すように、光源12がランプ14で構成される場合には、「発光領域31」は、被処理基板10の第一主面10aから、光源ユニット11を見た際の、ランプ14の発光管14aの領域に対応する(図15Bも参照)。
【0098】
上記図4A及び図4Bを参照して述べたのと同様に、ランプ14は、回転軸20からの距離に基づいて複数の加熱群(G1~G12)に分類される。また、ランプ14の発光領域31を、回転軸20を中心に仮想的に回転した際に描かれる回転軌跡が、回転軸20に近い側で隣り合う加熱群の発光領域31の回転軌跡と重なる点は、上記実施形態と同様である。
【0099】
〈5〉 また、図16は、光源ユニット11における、光源12の配置の別例を示す模式図である。例えば、図16に示すように、第1加熱群G1に属する光源12は、第1加熱群内で隣り合う光源12との距離R1が等しくなるように配置されても構わない。さらに、第2加熱群G2に属する光源12は、第2加熱群内で隣り合う光源12との距離R2が等しくなるように配置されても構わない。図16では、第1加熱群G1に属する光源12にハッチングが施されている。なお、第3加熱群G3以降の加熱群の図示が省略されているが、他の加熱群についても同様である。
【0100】
なお、図16において、第2加熱群G2に属する光源12が、周方向に関して第1加熱群G1に属する光源12の間に配置される点については、図9A及び図9Bを参照して述べたのと同様の議論が可能である。
【0101】
〈6〉 上記実施形態に示すように、被処理基板10の加熱条件を補助的に調整する観点から、補助光源S1を配置しても構わない。なお、補助光源S1のサイズ、配置個数、配置位置等はそれぞれ任意である。例えば、加熱群を構成する他の光源12とは異なるサイズの補助光源S1が、第1回転軌跡A1の領域内に重なるよう配置されても構わない。また、補助光源S1に供給される電力は任意であるが、典型的には、補助光源S1は、径方向に関して当該補助光源S1に近い光源12と同じ電力、又は当該電力以下の電力が供給される。
【0102】
〈7〉 上記においては、光源ユニット11が、チャンバ16内に配置されるものとして説明した(図1等参照)。しかし、光源ユニット11は、チャンバ16の外側に配置されて、例えばチャンバ16が備える光入射窓を介して、チャンバ16の外側から被処理基板10に対して加熱光L1を照射するものとしても構わない。
【0103】
〈8〉 また、上記においては、光源ユニット11に対して被処理基板10が回転される例を示したが、被処理基板10に対して光源ユニット11を回転させる構成としても構わない。
【0104】
〈9〉 さらに、上記においては、光源12のZ方向に関する位置は同一であるものとして説明したが、光源12は、加熱群毎にZ方向に関して異なる位置に配置されても構わない。
【0105】
〈10〉 上述した光加熱装置1が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0106】
1 : 光加熱装置
10 : 被処理基板
10a : 第一主面
10b : 第二主面
11 : 光源ユニット
12 : 光源
12a : LED素子
12b : LED基板
12c : 載置面
13 : 導光部材
13a : 反射面
13b : 貫通孔
14 : ランプ
14a : 発光管
14b : 取付面
15 : 制御ユニット
16 : チャンバ
17 : 支持ユニット
17a : 挟持部
17b : 回転レール
18 : 点灯回路
19 : プロセッサ
19a : 制御信号
20 : 回転軸
21 : 配置領域
31 : 発光領域
32 : 重複領域
41,44 : 円
42,45 : 円弧
A1,A2,An : 回転軌跡
G1~G12 : 加熱群
S1 : 補助光源
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16