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特開2024-142865構造物の免震支承構造、免震構造物の構築方法及び免震構造物の改修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142865
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】構造物の免震支承構造、免震構造物の構築方法及び免震構造物の改修方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/04 20060101AFI20241003BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20241003BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20241003BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20241003BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20241003BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E01D19/04 B
E01D22/00 A
E01D21/00 B
E04H9/02 331A
E04H9/02 331E
F16F15/04 P
F16F15/04 E
F16F15/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055229
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】宇野 州彦
【テーマコード(参考)】
2D059
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2D059AA37
2D059GG12
2D059GG39
2E139AA01
2E139AB10
2E139AC20
2E139CA02
2E139CA03
2E139CA22
2E139CA24
2E139CB04
2E139CB05
2E139CB15
2E139CB20
2E139CC02
3J048AA03
3J048AC01
3J048AD11
3J048BA08
3J048BG04
3J048CB05
3J048CB27
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】地震動により大きな外力が作用した場合であっても、構造物への衝撃が少なく、ゴム支承が破断せず、早期に復旧が可能な免震構造物の免震支承構造、免震構造物の構築方法及び免震構造物の改修方法の提供。
【解決手段】構造物の免震支承構造は、積層ゴム支承10と構造体3との間にすべり支承11が介在され、すべり支承11は、積層ゴム支承10の端部に固定された荷重伝達部材18を介して突設された滑動凸部19と、表面部に滑動凹部21が形成された台座部20と、荷重伝達部材18の水平方向移動を規制するストッパー部材22,22…とを備え、ストッパー部材22が荷重伝達部材18に所定の外力以上の水平力が作用すると固定解除されるようにしている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに水平方向で相対移動可能な構造体間に複数のゴム材が積層構造を成す揺動可能な積層ゴム支承が介在されてなる構造物の免震支承構造において、
前記積層ゴム支承と一方の前記構造体との間にすべり支承が介在され、
該すべり支承は、前記積層ゴム支承の端部に固定された荷重伝達部材と、該荷重伝達部材を介して前記積層ゴム支承の端部に突設された滑動凸部と、前記構造体に固定され、表面部に前記滑動凸部が滑動可能に挿入される滑動凹部が形成された台座部と、前記荷重伝達部材の周囲に配置され、前記荷重伝達部材の水平方向移動を規制するストッパー部材とを備え、
該ストッパー部材は、前記荷重伝達部材に所定の外力以上の水平力が作用すると固定解除されるように前記台座部に固定されていることを特徴としてなる構造物の免震支承構造。
【請求項2】
前記積層ゴム支承と他方の前記構造体との間に前記すべり支承部が介在されている請求項1に記載の構造物の免震支承構造。
【請求項3】
前記ストッパー部材は、前記荷重伝達部材の周囲に配置されたストッパー本体が固定用棒材を介して前記台座部に固定され、該固定用棒材が前記荷重伝達部材に所定の外力以上の水平力が作用すると破断するようにした請求項1又は2に記載の構造物の免震支承構造。
【請求項4】
前記滑動凹部は、外縁側より中央部が深い半球状、円弧状又はすり鉢状に形成されている請求項1又は2に記載の構造物の免震支承構造。
【請求項5】
前記台座部上の前記ストッパー部材より外側に前記所定の外力以上の耐力を有する滑落防止用ストッパー部材が固定されている請求項1又は2に記載の構造物の免震支承構造。
【請求項6】
前記上部構造体である複数の杭体に支持された杭支持構造物の上部工であって、前記下部構造体である杭体毎に前記積層ゴム支承及び前記すべり支承部が介在されている請求項1又は2に記載の構造物の免震支承構造。
【請求項7】
互いに水平方向で相対移動可能な構造体間に複数のゴム材が積層構造を成す揺動可能な積層ゴム支承が介在されてなる免震構造物の構築方法において、
表面部に滑動凹部が形成される台座部を下方の構造体に固定した後、
前記積層ゴム支承の下端部に荷重伝達部材を介して突設された滑動凸部を前記滑動凹部内に滑動可能に挿入して下側すべり支承を形成した後、
昇降可能な仮受け装置で支持させつつ、上方の構造体を前記積層ゴム支承上に配置し、前記積層ゴム支承の上端を前記上部構造体に接続し、
前記荷重伝達部材の周囲に前記荷重伝達部材に所定の外力以上の水平力が作用すると固定解除されるストッパー部材を前記台座部に固定し、
しかる後、前記仮受け装置を撤去することを特徴としてなる免震構造物の構築方法。
【請求項8】
前記下側すべり支承を介して前記下方の構造体に接続された前記積層ゴム支承の上端部に上側すべり支承用荷重伝達部材を介して上側すべり支承用滑動凸部を突設させておくとともに、
前記上方の構造体に表面部に滑動凹部が形成されてなる上側すべり支承用台座部を固定しておき、
前記仮受け装置で支持させつつ、前記上方の構造体を前記上側すべり支承用滑動凸部上に配置し、前記上側すべり支承用滑動凸部を前記上側すべり支承用台座部に形成された前記滑動凹部内に挿入して上側すべり支承を形成した後、
前記上側すべり支承用荷重伝達部材の周囲に該上側すべり支承用荷重伝達部材に所定の外力以上の水平力が作用すると固定解除されるストッパー部材を前記上側すべり支承用台座部に固定する請求項7に記載の免震構造物の構築方法。
【請求項9】
互いに水平方向で相対移動可能な構造体間に複数のゴム材が積層構造を成す揺動可能な積層ゴム支承が介在されてなる免震構造物の構築方法において、
表面部に滑動凹部が形成される台座部を上方の構造体に固定するとともに、
前記積層ゴム支承の上端部に荷重伝達部材を介して滑動凸部を突設させてなる支承ユニットの前記積層ゴム支承の下端を下方の構造体に固定し、
昇降可能な仮受け装置で支持させつつ、前記上方の構造体を前記支承ユニット上に配置し、前記滑動凸部を前記滑動凹部内に挿入して上側すべり支承を形成するとともに、
前記荷重伝達部材の周囲に該荷重伝達部材に所定の外力以上の水平力が作用すると固定解除されるストッパー部材を前記台座部に固定し、
しかる後、前記仮受け装置を撤去することを特徴としてなる免震構造物の構築方法。
【請求項10】
互いに相対移動可能な上部構造体と下部構造体上に設置された台座部との間に介在された支承装置を新たな免震支承装置に交換する免震構造物の改修方法において、
前記上部構造体と前記下部構造体との間に昇降可能な仮受け装置を設置し、前記下部構造体に前記仮受け装置を介して前記上部構造体を支持させた状態で、前記支承装置を前記上部構造体から取り外した後、
前記仮受け装置で前記上部構造体を所定の高さまで持ち上げ、前記支承装置を撤去し、
しかる後、前記台座部の上面部に滑動凹部を形成し、
複数のゴム材が積層構造を成す揺動可能な積層ゴム支承の下端に荷重伝達部材を介して突設された滑動凸部を前記滑動凹部内に滑動可能に挿入して下側すべり支承を形成した後、
前記荷重伝達部材の周囲に前記荷重伝達部材に所定の外力以上の水平力が作用すると固定解除されるストッパー部材を前記台座部に固定するとともに、
前記仮受け装置で支持させつつ、前記上部構造体を前記積層ゴム支承の上端に当接するまで下降させ、前記積層ゴム支承の上端を前記上部構造体に固定し、
しかる後、前記仮受け装置を撤去することを特徴としてなる免震構造物の改修方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁等の構造物における地震動による負担を軽減するための構造物の免震支承構造、免震構造物の構築方法及び免震構造物の改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高架道路や橋梁等の構造物、特に、B種の橋等の利用状況等から特に重要な構造物においては、兵庫県南部地震以降、レベル1の地震動によって構造物の健全性が損なわれないようにすることのみならず、レベル2の地震動による損傷が限定的なものに留まり、構造物としての機能の回復が速やかに行い得る性能等を満足するような設計が求められている。
【0003】
橋脚や基礎、上部構造等では、このような設計の要求に対応すべく高耐力化が進められているが、構造物の耐力のみでは要求を満足できない場合や施工条件や環境によって高耐力化が困難な場合があった。
【0004】
そこで、高架道路や橋梁等の構造物では、上記設計の要求に対応すべく構造物の免震化が広く行われている。
【0005】
この種の高架道路や橋梁等の構造物の免震構造としては、橋脚等の下部構造体と橋桁等の上部構造体との間にゴム材と鋼板とを積層させてなる高減衰積層ゴム支承(HDR)や鉛プラグ入り積層ゴム支承(LRB)等の積層ゴム支承を介在させた免震支承構造が一般的に用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
この免震支承構造は、ゴム材と鋼板とを積層させてなるゴム支承で鉛直荷重を保持しながら地震力のような水平荷重に対しゴム材が変形することで水平力を分散するとともに、地震動によるエネルギーを吸収するようになっている。また、このような免震支承構造は、高架道路や橋梁等の構造物の長周期化の役割も担っている。
【0007】
一方、近年の地震規模が巨大化しており、東北地方太平洋沖地震や熊本地震では、想定外の大きな地震力が作用したことや断層変位のような大きな変位が生じたこと等を要因の一つとしてゴム支承が破断する現象が発生している。
【0008】
この種の免震支承構造では、一般に、「せん断ひずみ」を基準に設計・照査され、レベル2地震動に対する設計上の許容変位に相当するせん断ひずみを250%以内として設計されることが多いが、せん断ひずみ250%を超えると直ちに破断するものではなく、実際には、せん断ひずみ250%を超えるとゴムの剛性が高くなる現象(ハードニング)が生じてせん断ひずみ300~400%以上になると破断するおそれがある。
【0009】
そこで、近年では、免震支承構造を補うために、ダンパー等を用いた制震構造やすべり支承等の制震と免震の中間的な役割を担う構造と免震支承構造とを組み合わせて併用する事例も多い。
【0010】
ダンパー等を用いた制震構造は、橋脚と橋桁とをダンパーを介して連結し、地震動が発生した際に、内部のピストンが移動する際に特殊充填材(ビンガム流体材料やオイル材など)の抵抗・流出入などによりエネルギーを吸収するようになっている。
【0011】
すべり支承は、橋脚等の下部構造体の上面部に設置されたすべり板上を滑動可能なすべり材を介して上部工を支持させ、地震動が発生した際にすべり材がすべり板上を滑動することで地震による変位を遮断しつつ、すべり変位に伴い発生する摩擦エネルギーにより地震動による外力を吸収し、揺れを低減するようになっている。
【0012】
一方、高架橋や橋梁等の構造物では、想定外の外力が発生した際の最悪の状況を回避するために、落橋防止構造や横変位拘束構造(以下、落橋防止構造等という)等のフェールセーフ機能を備えたものも広く知られている。
【0013】
落橋防止構造は、支承が破損した際に橋桁が落橋しないように橋脚と橋桁とを緩衝チェーン等によって連結し、主に橋軸方向に橋脚頂部からの逸脱を防止するようになっており、横変位拘束構造は、橋脚の両側部に橋桁の橋幅方向への移動を規制する構造体を設け、橋幅方向への落橋を防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008-232190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述の如き従来の免震支承構造では、ゴム支承が破損した場合、復旧のために橋桁等の上部構造体をジャッキアップした状態で破損したゴム支承を撤去し、その後、上部構造体を所定の位置まで戻し、その位置で新たなゴム支承との交換作業を終えてジャッキダウンしなければならず、復旧作業に長い時間を要し、その間、交通制限(通行止め)とせざるを得ないという問題があった。
【0016】
また、上述の如き免震支承構造と制震構造とを併用する従来技術では、制震構造が免震支承構造とは別個の構造であり、地震動によるエネルギーを吸収し、構造物の損傷を低減する効果を有するものの、構造物の長周期化による損傷低減効果を見込めず、また、免震支承構造のゴム支承が破損する問題に何ら寄与しないという問題があった。
【0017】
さらに、上述の如きすべり支承を併用する従来技術は、地震動等による外力が比較的小さく振幅が小さい場合にはゴム支承のみが動作し、大地震時には地震動による外力がゴム支承と滑り支承との両方に同時に作用するため、免震支承構造のゴム支承が破損する問題にすべり支承が寄与し難いという問題があった。
【0018】
また、すべり支承は、復元力を有しておらず、動作した場合、地震時の残留変位に留意する必要があるとともに、復旧作業に多大な時間と労力を要するという問題があった。
【0019】
一方、落橋防止構造等のフェールセーフ機能を備えた従来技術では、落橋防止構造等の設計が免震支承構造の設計とは別個に独立して行われ、その設計外力に橋脚の水平耐力或いは死荷重の数倍等といった非常に簡易な条件を設定していることから、ゴム支承が破断するような非常に大きな外力が構造物に作用した場合、これらのフェールセーフ機能が十分に機能を発揮しないおそれがあった。
【0020】
また、落橋防止構造等が動作する際には、橋桁等の上部構造体及び橋脚等の下部構造体の双方に衝撃力が作用するため、衝撃によって構造物が破損するおそれがあった。
【0021】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、地震動により大きな外力が作用した場合であっても、構造物への衝撃が少なく、ゴム支承が破断せず、早期に復旧が可能な免震構造物の免震支承構造、免震構造物の構築方法及び免震構造物の改修方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、互いに水平方向で相対移動可能な構造体間に複数のゴム材が積層構造を成す揺動可能な積層ゴム支承が介在されてなる構造物の免震支承構造において、前記積層ゴム支承と一方の前記構造体との間にすべり支承が介在され、該すべり支承は、前記積層ゴム支承の端部に固定された荷重伝達部材と、該荷重伝達部材を介して前記積層ゴム支承の端部に突設された滑動凸部と、前記構造体に固定され、表面部に前記滑動凸部が滑動可能に挿入される滑動凹部が形成された台座部と、前記荷重伝達部材の周囲に配置され、前記荷重伝達部材の水平方向移動を規制するストッパー部材とを備え、該ストッパー部材は、前記荷重伝達部材に所定の外力以上の水平力が作用すると固定解除されるように前記台座部に固定されていることにある。
【0023】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記積層ゴム支承と他方の前記構造体との間に前記すべり支承部が介在されていることにある。
【0024】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記ストッパー部材は、前記荷重伝達部材の周囲に配置されたストッパー本体が固定用棒材を介して前記台座部に固定され、該固定用棒材が前記荷重伝達部材に所定の外力以上の水平力が作用すると破断するようにしたことにある。
【0025】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記滑動凹部は、外縁側より中央部が深い半球状、円弧状又はすり鉢状に形成されていることにある。
【0026】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記台座部上の前記ストッパー部材より外側に前記所定の外力以上の耐力を有する滑落防止用ストッパー部材が固定されていることにある。
【0027】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記上部構造体である複数の杭体に支持された杭支持構造物の上部工であって、前記下部構造体である杭体毎に前記積層ゴム支承及び前記すべり支承部が介在されていることにある。
【0028】
請求項7に記載の発明の特徴は、互いに水平方向で相対移動可能な構造体間に複数のゴム材が積層構造を成す揺動可能な積層ゴム支承が介在されてなる免震構造物の構築方法において、表面部に滑動凹部が形成される台座部を下方の構造体に固定した後、前記積層ゴム支承の下端部に荷重伝達部材を介して突設された滑動凸部を前記滑動凹部内に滑動可能に挿入して下側すべり支承を形成した後、昇降可能な仮受け装置で支持させつつ、上方の構造体を前記積層ゴム支承上に配置し、前記積層ゴム支承の上端を前記上部構造体に接続し、前記荷重伝達部材の周囲に前記荷重伝達部材に所定の外力以上の水平力が作用すると固定解除されるストッパー部材を前記台座部に固定し、しかる後、前記仮受け装置を撤去することにある。
【0029】
請求項8に記載の発明の特徴は、請求項7の構成に加え、前記下側すべり支承を介して前記下方の構造体に接続された前記積層ゴム支承の上端部に上側すべり支承用荷重伝達部材を介して上側すべり支承用滑動凸部を突設させておくとともに、前記上方の構造体に表面部に滑動凹部が形成されてなる上側すべり支承用台座部を固定しておき、前記仮受け装置で支持させつつ、前記上方の構造体を前記上側すべり支承用滑動凸部上に配置し、前記上側すべり支承用滑動凸部を前記上側すべり支承用台座部に形成された前記滑動凹部内に挿入して上側すべり支承を形成した後、前記上側すべり支承用荷重伝達部材の周囲に該上側すべり支承用荷重伝達部材に所定の外力以上の水平力が作用すると固定解除されるストッパー部材を前記上側すべり支承用台座部に固定することにある。
【0030】
請求項9に記載の発明の特徴は、互いに水平方向で相対移動可能な構造体間に複数のゴム材が積層構造を成す揺動可能な積層ゴム支承が介在されてなる免震構造物の構築方法において、表面部に滑動凹部が形成される台座部を上方の構造体に固定するとともに、前記積層ゴム支承の上端部に荷重伝達部材を介して滑動凸部を突設させてなる支承ユニットの前記積層ゴム支承の下端を下方の構造体に固定し、昇降可能な仮受け装置で支持させつつ、前記上方の構造体を前記支承ユニット上に配置し、前記滑動凸部を前記滑動凹部内に挿入して上側すべり支承を形成するとともに、前記荷重伝達部材の周囲に該荷重伝達部材に所定の外力以上の水平力が作用すると固定解除されるストッパー部材を前記台座部に固定し、しかる後、前記仮受け装置を撤去することにある。
【0031】
請求項10に記載の発明の特徴は、互いに相対移動可能な上部構造体と下部構造体上に設置された台座部との間に介在された支承装置を新たな免震支承装置に交換する免震構造物の改修方法において、前記上部構造体と前記下部構造体との間に昇降可能な仮受け装置を設置し、前記下部構造体に前記仮受け装置を介して前記上部構造体を支持させた状態で、前記支承装置を前記上部構造体から取り外した後、前記仮受け装置で前記上部構造体を所定の高さまで持ち上げ、前記支承装置を撤去し、しかる後、前記台座部の上面部に滑動凹部を形成し、複数のゴム材が積層構造を成す揺動可能な積層ゴム支承の下端に荷重伝達部材を介して突設された滑動凸部を前記滑動凹部内に滑動可能に挿入して下側すべり支承を形成した後、前記荷重伝達部材の周囲に前記荷重伝達部材に所定の外力以上の水平力が作用すると固定解除されるストッパー部材を前記台座部に固定するとともに、前記仮受け装置で支持させつつ、前記上部構造体を前記積層ゴム支承の上端に当接するまで下降させ、前記積層ゴム支承の上端を前記上部構造体に固定し、しかる後、前記仮受け装置を撤去することにある。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る構造物の免震支承構造は、請求項1に記載の構成を具備することによって、設計上想定されるレベル1地震動又はレベル2地震動等による外力に対して積層ゴム支承によって鉛直荷重を保持しながら地震力のような水平荷重に対しゴム材が変形することで水平力を分散するとともに、地震動によるエネルギーを吸収し、レベル2地震動等を超える巨大な外力が作用した際には、ストッパー部材によるロックが解除されすべり支承が動作することによって、積層ゴム支承に過度なせん断ひずみを生じさせないようにすることで積層ゴム支承の破損を防止し、早期に復旧することができる。
【0033】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、上下両構造体と積層ゴム支承との接続部に過度な衝撃が生じないようにすることができる。
【0034】
さらに、本発明において、請求項3に記載の構成を具備することによって、好適にストッパー部材による固定を解除し、必要なタイミングですべり支承を動作させることができる。
【0035】
さらにまた、本発明において、請求項4に記載の構成を具備することによって、すべり支承が動作した後に積層ゴム支承及びすべり支承を好適に現位置に復帰させることができる。
【0036】
また、本発明において、請求項5に記載の構成を具備することによって、すべり支承の想定外の動作を規制し、落橋等を防止することができる。
【0037】
また、本発明において、請求項6に記載の構成を具備することによって、桟橋等の杭支持構造物にも適応することができる。
【0038】
本発明に係る免震構造物の構築方法は、請求項7に記載の構成を具備することによって、フェールセーフ機能を有する免震支承構造を下方の構造体側から順次構築することで効率的に構築することができる。
【0039】
また、本発明において、請求項8に記載の構成を具備することによって、積層ゴム支承と上下の構造体との間にすべり支承を介在させることができる。
【0040】
さらに、本発明において、請求項9に記載の構成を具備することによって、積層ゴム支承と上方の構造体との間にすべり支承を介在させることができる。
【0041】
また、本発明に係る免震構造物の改修方法では、請求項10に記載の構成を具備することによって、既存の構造物においても既存の支承装置に替えてフェールセーフ機能を有する免震支承構造を容易に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明に係る構造物の免震支承構造の実施態様の一例を示す正面図である。
図2】同上の免震支承構造部分を示す拡大断面図である。
図3図2中のA-A線矢視図である。
図4】同上のストッパー部分を示す拡大断面図であって、(a)は通常時の状態、(b)は想定の範囲外の外力が作用した際の状態を示す図である。
図5】本発明に係る免震構造物の構築方法の手順の一例を説明するための断面図である。
図6】同上の構造物の免震支承構造の作用効果を説明するための断面図であって、(a)は想定の範囲内の外力が作用した際の状態、(b)は同想定の範囲以上の外力が作用した際の状態を示す図である。
図7】本発明の他の実施態様における免震支承構造部分を示す拡大断面図である。
図8】本発明のさらに他の実施態様における免震支承構造部分を示す拡大断面図である。
図9図7に示す構造に係る免震構造物の構築方法の手順を説明するための断面図である。
図10図8に示す構造に係る免震構造物の構築方法の手順の前半を説明するための断面図である。
図11】同上の手順の後半を説明するための断面図である。
図12】本発明に係る免震構造物の改修方法の手順の前半を説明するための断面図である。
図13】同上の手順の後半を説明するための断面図である。
図14】本発明に係る構造物の免震支承構造の他の実施態様を示す正面図である。
図15】同上の免震支承構造部分を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、本発明に係る構造物の免震支承構造の実施態様を図1図4に示した実施例に基づいて説明する。尚、本実施例では、構造物として橋梁を例に説明し、符号1は橋梁、符号2は地盤である。
【0044】
橋梁1は、図1に示すように、下方の構造体(以下、下部構造体という)である複数の橋脚3と、この複数の橋脚3に支持された上方の構造体(以下、上部構造体という)である橋桁4とを備え、各橋脚3と橋桁4とが互いに水平方向で相対移動可能な構造であって、各橋脚3と橋桁4との間に複数のゴム材12,12…が積層構造を成す積層ゴム支承10が介在され、地震動等の外力に対応した免震支承構造が形成されている。
【0045】
この免震支承構造は、積層ゴム支承10と下部構造体である橋脚3との間にフェールセーフ機能付きのすべり支承11が介在され、橋脚3と橋桁4との間に積層ゴム支承10とすべり支承11とが直列に配置されている。
【0046】
積層ゴム支承10は、図2に示すように、円板状又は矩形状の複数のゴム材12,12…と、ゴム材12,12…と同じ円板状又は矩形板状の鋼板等からなる複数の剛性板13,13…とが交互に重ね合わされ、互いに固着された積層ゴム部の外周面がゴム材14によって被覆され、積層ゴム部の上面部及び下面部にそれぞれフランジ部15,16が固着されている。
【0047】
尚、積層ゴム支承10は、上述の実施例に限定されず、例えば、特に図示しないが、積層ゴム部内に上下に向けて貫通した1又は複数の鉛プラグ等の振動減衰部材を備え、地震動による外力を受けた際に、この振動減衰部材が塑性変形することによりせん断エネルギーを吸収し、積層ゴム部に作用するせん断振動を減衰させるようにしたものであってもよい。
【0048】
この積層ゴム支承10は、上側のフランジ部15がボルト17等によって上部構造体である橋桁4の下面に固定されるとともに、下側のフランジ部16がすべり支承11を構成する荷重伝達部材18の上面に固定され、橋桁4の下面と橋脚3の上面との間に介在されている。尚、積層ゴム支承10は、一般的にフランジ部15,16、ソールプレート等を含む複数枚の鋼板部品を具備しているが、本実施例では説明の便宜上フランジ部15,16のみを記載している。
【0049】
すべり支承11は、積層ゴム支承10の下端部に固定された荷重伝達部材18と、荷重伝達部材18を介して積層ゴム支承10の下端部に突設された滑動凸部19と、橋脚3の上面部に固定された台座部20とを備え、台座部20の表面部に形成された滑動凹部21内に滑動凸部19が挿入され、滑動凹部21内を滑動凸部19が滑動することによって積層ゴム支承10と台座部20とが互いに相対移動できるようになっている。
【0050】
また、このすべり支承11は、荷重伝達部材18の周囲に台座部20に固定された複数のストッパー部材22,22…が配置され、通常時には荷重伝達部材18の水平方向移動が規制されている。
【0051】
台座部20は、図2図3に示すように、コンクリートにより矩形台状に形成され、橋脚3の上面に固定されている。
【0052】
滑動凹部21は、中央が最も深い半球状、半楕円球状、又はすり鉢状に形成され、滑動凹部21に挿入される滑動凸部19が中央で最も安定して台座部20に支持されるようになっている。
【0053】
この滑動凹部21は、特に図示しないが、内側面がフッ素樹脂によって被覆すること等によって摩擦抵抗が抑えられている。
【0054】
尚、滑動凹部21の態様は、適用する構造物の態様によって形状や内面処理の条件を適宜設定することができ、例えば、橋梁1では、橋軸方向と橋軸直角方向のそれぞれの作用荷重に応じ、例えば、橋軸直角方向(橋幅方向)の変位量をより多く確保したい場合には橋軸直角方向に長い楕円球形状を設定すればよい。
【0055】
また、滑動凹部21の平面寸法、即ち、滑動凸部19の許容水平移動距離は、すべり支承11部に作用する外力によるが、内面の曲面形状や滑動凸部19や滑動凹部21の内面を被覆するフッ素樹脂等によって調整することができ、調整によって狭隘な橋座面においても設置可能となっている。
【0056】
荷重伝達部材18は、一定の厚みを有する鋼板等によって矩形状に形成され、上面部に積層ゴム支承10の下端部が固定され、下面に滑動凸部19が固定され、荷重伝達部材18を介して積層ゴム支承10の下端部に滑動凸部19が突設されている。
【0057】
荷重伝達部材18は、各辺が滑動凹部21の平面寸法よりも大きく、台座部20の上面に載置されることで滑動凹部21を塞ぐようになっており、滑動凹部21が荷重伝達部材18に塞がれることで内部へのゴミ等の侵入を防止でき、滑動凹部21の内面が滑らかな状態が維持できるようになっている。
【0058】
滑動凸部19は、ステンレス等の摩擦抵抗の少ない金属材によって構成され、半球状又は楕円半球状に形成され、下面部に一定の面積を有する接触面が形成されている。
【0059】
この滑動凸部19の高さは、滑動凹部21の中央部深さと同じ高さに形成され、滑動凸部19の下端が滑動凹部21の中央底部に当接し、滑動凸部19を介して積層ゴム支承10が台座部20に支持されるとともに、荷重伝達部材18が台座部20の上面に載置される。
【0060】
ストッパー部材22,22…は、荷重伝達部材18の周囲に配置され、その側縁に固定されるストッパー本体23と、台座部20に固定される固定用棒材24とを備え、ストッパー本体23が固定用棒材24を介して台座部20に固定されている。
【0061】
ストッパー本体23は、鋼材等の金属材によって駒状に形成され、下端部に固定用棒材24の上端部が埋設された状態で固定されている。
【0062】
固定用棒材24は、ボルト部材等によって構成され、台座部20に埋設されるネジ等からなる埋設固定部24aと、埋設固定部24aの一端に固定された24bとを備えている。
【0063】
この固定用棒材24は、24bと埋設固定部24aとが荷重伝達部材18に所定の外力以上の水平力、例えば、せん断ひずみが250%を超えるような外力が作用するとせん断力によって破断するようになっている。
【0064】
埋設固定部24aは、台座部20の所定の位置に削孔された固定孔25に挿入され、固定孔25の内面と埋設固定部24aの外面との間にグラウト等の充填材26が充填されていることによって台座部20に固定されている。
【0065】
次に、上述の如き免震支承構造を有する免震構造物の構築方法について図5に示す実施例に基づいて説明する。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
まず、図5(a)に示すように、既に構築された下方の構造体である橋脚3の上面部の所定の位置に型枠27を設置し、当該型枠27内にコンクリートを打設して上面が平坦な状態の台座部20を構築する。
【0067】
次に、コンクリートを養生・硬化させた後、図5(b)に示すように、平坦な上面部のコンクリートを斫り取り、台座部20の中央部に半球状、半楕円球状又はすり鉢状の滑動凹部21を形成する。
【0068】
そして、形成された滑動凹部21の内表面を滑動凸部19が滑動できるように滑らかに仕上げるとともに、内面にフッ素樹脂からなるシートを貼着する等して滑動凹部21内面の摩擦抵抗を低減する。
【0069】
また、台座部20のストッパー部材22,22…が配置される位置にドリル等によって上下方向に向けて固定孔25を削孔する。
【0070】
尚、台座部20の設置は、施工現場とは別の場所にある工場等において表面部の滑動凹部21が形成されてなる台座部20をプレキャストコンクリート部材として予め製作しておき、それを設置するようにしてもよい。
【0071】
次に、図5(c)に示すように、積層ゴム支承10の下端部に荷重伝達部材18を介して滑動凸部19が突設されてなる支承装置ユニットUをクレーン等によって台座部20上に移動させ、滑動凸部19を滑動凹部内に滑動可能に挿入するとともに、荷重伝達部材18を台座部20上に載置し、下側すべり支承11を形成する。
【0072】
尚、支承装置ユニットUには、荷重伝達部材18の外周縁の所定位置にストッパー部材22,22…が予め固定されており、支承装置ユニットUを台座部20に設置することで、固定用棒材24の埋設固定部24aが固定孔25に挿入されるので、固定孔25の内面と埋設固定部24aの外面との間にグラウト等の充填材26を充填し、ストッパー部材22,22…を台座部20に固定する。
【0073】
尚、ストッパー部材22,22…は、支承装置ユニットUとは別途に用意しておき、支承装置用ニットを設置した後、後述する積層ゴム支承10と上方の構造体である橋桁4との接続が完了した後の何れかのタイミングで荷重伝達部材18の周囲にストッパー部材22,22…を配置するとともに、固定用棒材24の埋設固定部24aを固定孔25に挿入し、固定孔25の内面と埋設固定部24aの外面との間にグラウト等の充填材26を充填し、ストッパー部材22,22…を台座部20に固定するようにしてもよい。
【0074】
そして、各橋脚3に支承装置ユニットUを設置したら、図5(d)に示すように、昇降可能な複数の仮受け装置28,28を橋脚3の座面に設置し、その後、上部構造体である橋桁4を橋脚3上に移動させ、仮受け装置28,28で支持させつつ、上部構造体を積層ゴム支承10上に配置する。
【0075】
そして、仮受け装置28,28で橋桁4と積層ゴム支承10との高さを調節し、積層ゴム支承10の上部フランジ部15を橋桁4の下縁に接触させ、フランジ部15をボルト17等によって橋桁4の下面部に固定し、積層ゴム支承10の上端を上部構造体である橋桁4に接続する。
【0076】
最後に、仮受け装置28,28を撤去すると、下部構造体である橋脚3に上部構造体である橋桁4が積層ゴム支承10及びフェールセーフ機能付きのすべり支承11を介して支持される。
【0077】
このように構成された構造物の免震支承構造では、滑動凸部19が台座部20の表面部に形成された滑動凹部21の底部に所定の接触面積を確保した状態で支持され、通常時において、橋梁1上を移動する車両等によって鉛直荷重が生じた場合には、当該鉛直荷重によって生じる衝撃を積層ゴム支承10が負担する。
【0078】
即ち、鉛直荷重によって、上下の構造体である橋脚3と橋桁4との間に上下方向の振動が生じた場合、積層ゴム支承10を構成する複数のゴム材12,12…が弾性変形することによってその衝撃を吸収するようになっている。
【0079】
また、この免震支承構造は、積層ゴム支承10を具備することによって、高架道路や橋梁1等の構造物の長周期化の役割も担っている。
【0080】
一方、この免震支承構造では、地震動によって設計で想定した範囲内の地震荷重(水平外力)、例えば、せん断ひずみが250%以下となる外力が作用した場合、荷重伝達部材18がストッパー部材22,22…によって水平移動が規制されているため、図6(a)に示すように、すべり支承11部が動作せず、積層されたゴム材12,12…が変形し、積層ゴム支承10が揺動することによって、地震動に伴う水平力を分散するとともに、地震動によるエネルギーを吸収するようになっている。
【0081】
そして、この免震支承構造では、設計で想定した範囲を超える地震荷重(水平荷重)、即ち、せん断ひずみが250%を超えるような外力が作用する場合、地震動による外力が積層ゴム支承10とすべり支承11との両方に同時に作用することがなく、まず、図4(b)に示すように、積層ゴム支承10のみが動作するとともに、その外力を受けてストッパー部材22,22…を構成する固定用棒材24が破断し、荷重伝達部材18の台座部20に対する固定が解除される。
【0082】
そして、荷重伝達部材18の台座部20に対する固定が解除されると、すべり支承11部も機能するようになり、図6(b)に示すように、設計で想定した範囲を超える外力に対して,外力の遮断およびすべり部でのエネルギー吸収を行うことで、積層ゴム支承10のハードニングを防止し、破損を防止することができる。
【0083】
また、地震後は,積層ゴム支承10を構成するゴム材12,12…の弾性による復元力と、中央が最も深い半球状、半楕円球状、又はすり鉢状に形成された滑動凹部21の内面に案内されて滑動凸部19が最も安定する中央部に復帰することによって、残留変位を極力小さくすることができる。
【0084】
よって、この構造物の免震支承構造を有する免震構造物では、レベル2地震動以上の想定の範囲を超える外力が作用した場合であっても、積層ゴム支承10が破損せずに残存し、且つ、すべり支承11の残留変位を極力小さくすることができるので、落橋を防止するとともに、構造物を地震前に近い状態で維持することができ、地震動による損傷が限定的なものに留まり、構造物としての機能の回復が速やかに行い得る性能を満足するようになっている。
【0085】
尚、上述の実施例では、下方の構造体である橋脚3と積層ゴム支承10との間にフェールセーフ機能付きのすべり支承11を介在させた場合について説明したが、図7に示すように、上方の構造体である橋桁4と積層ゴム支承10との間にフェールセーフ機能付きのすべり支承11を介在させてもよく、図8に示すように、積層ゴム支承10と橋脚3との間及び積層ゴム支承10と橋桁4との間の双方にフェールセーフ機能付きのすべり支承11を介在させてもよい。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0086】
図7に示す免震構造物を構築するには、図9(a)に示すように、積層ゴム支承10の上端部に荷重伝達部材18を介して滑動凸部19を突設させてなる支承装置ユニットUの積層ゴム支承10の下端を下方の構造体に固定した後、昇降可能な複数の仮受け装置28,28を橋脚3の座面に設置し、予めプレキャストコンクリート部材として製作しておいた表面部に滑動凹部21が形成される台座部20を固定した上方の構造体を昇降可能な仮受け装置28,28で支持させた状態で下方の構造体上に配置する。
【0087】
尚、本実施例では、台座部20をプレキャストコンクリート部材として予め製作しておく場合について説明したが、表面部に滑動凹部21が形成された台座部20は、昇降可能な仮受け装置28,28に支持された上方の構造体4の下面部に型枠を設置し、台座20全体を場所打ちコンクリートによって形成してもよく、予め製作しておいたプレキャスト部材を型枠にはめ込み、当該プレキャスト部材と上方の構造体とを場所打ちコンクリートによって一体化させるハーフプレキャスト構造としてもよい。その際、上方の構造体4の下面部には、多数のジベルや鉄筋等の接合部材を突出させておき、上方の構造体4と場所打ちコンクリートとの接合強度を増強することが望ましい。
【0088】
そして、図9(b)~(c)に示すように、仮受け装置28,28で支持させつつ、上方の構造体を支承ユニット上に配置し、滑動凸部19を滑動凹部21内に挿入して上側すべり支承11を形成するとともに、荷重伝達部材18の周囲にストッパー部材22,22…を配置し、それを台座部20に固定する。
【0089】
そして、仮受け装置28,28で橋桁4と支承装置ユニットUとの高さを調節し、滑動凸部19に滑動凹部21の内面とを接触させ、その後、仮受け装置28,28を撤去すると、下方の構造体である橋脚3に上方の構造体である橋桁4が積層ゴム支承10及びすべり支承11を介して支持される。
【0090】
また、図8に示す実施例の場合には、図10図11に示すように、上部構造体4に表面部に滑動凹部21が形成されてなる上側すべり支承用の台座部20を固定しておくとともに、支承装置ユニットUの積層ゴム支承10の上端側に上側すべり支承用の荷重伝達部材18を介して上側すべり支承用の滑動凸部19を突設させておき、図5に示す実施例と同様に、下側すべり支承11を介して下方の構造体に接続させた後に仮受け装置28,28で支持させつつ、上方の構造体を上側すべり支承用の滑動凸部19上に配置し、上側すべり支承用の滑動凸部19を上側すべり支承用の台座部20に形成された滑動凹部21内に挿入して上側すべり支承11を形成した後、上側すべり支承用の荷重伝達部材18の周囲に上側すべり支承用の荷重伝達部材18に所定の外力以上の水平力が作用すると固定解除されるストッパー部材22,22…を配置し、ストッパー部材22,22…を上側すべり支承用の台座部20に固定することによって構築することができる。
【0091】
さらに、上述の実施例では、新たに免震支承構造を構築する場合について説明したが、図12図13に示すように、上部構造体と下部構造体上に設置された既存の台座部30との間に介在された既存の支承装置31を新たな免震支承装置に交換することで免震構造物を改修することができる。
【0092】
この改修方法は、まず、図12(a)に示すように、上部構造体4と下部構造体3との間に昇降可能な仮受け装置28,28を設置し、下部構造体3に仮受け装置28,28を介して上部構造体4を支持させる。
【0093】
次に、既設の支承装置31を上部構造体4から取り外した後、図12(b)に示すように、仮受け装置28,28で上部構造体4を所定の高さまで持ち上げ、その状態で既存の支承装置31を撤去する。
【0094】
次に、図12(c)に示すように、既設の台座部30のコンクリートを斫り取り、台座部30の上面中央部に半球状、半楕円球状又はすり鉢状の滑動凹部21を形成する。
【0095】
そして、形成された滑動凹部21の内表面を滑動凸部19が滑動できるように滑らかに仕上げるとともに、内面にフッ素樹脂からなるシートを貼着する等して滑動凹部21内面の摩擦抵抗を低減する。
【0096】
また、台座部30のストッパー部材22,22…が配置される位置にドリル等によって上下方向に向けて固定孔25を削孔する。
【0097】
その後、図13(d)に示す世に、積層ゴム支承10の下端部に荷重伝達部材18を介して滑動凸部19が突設されてなる支承装置ユニットUを台座部30上に移動させ、滑動凸部19を滑動凹部21内に滑動可能に挿入するとともに、荷重伝達部材18を台座部30上に載置し、下側すべり支承11を形成する。
【0098】
また、荷重伝達部材18の周囲に配置したストッパー部材22,22…を、固定用棒材24の埋設固定部24aを固定孔25に挿入し、固定孔25の内面と埋設固定部24aの外面との間にグラウト等の充填材26を充填して台座部30に固定する。
【0099】
そして、図13(e)に示すように、仮受け装置28,28で支持させつつ、上部構造体4を積層ゴム支承10の上端に当接するまで下降させ、積層ゴム支承10の上端に配置された上部フランジ部15をボルト17等によって上部構造体4に固定する。
【0100】
最後に、仮受け装置28,28を撤去すると、下方の構造体である橋脚3に上方の構造体である橋桁4が積層ゴム支承10及びすべり支承11を介して支持される。
【0101】
尚、本発明は、新設、既設のいずれの橋梁においても適用することができる。
【0102】
また、上述の実施例では、構造物として橋梁1を例に説明したが、構造物の態様は橋梁に限定されず、例えば、ビルディング等の建築構造物を上部構造体とした場合にも適用することができる。
【0103】
また、図14図15に示すように、鋼管杭等の複数の杭体40,40に支持された杭支持構造物41の上部工42が上部構造体であって、下部構造体である杭体40毎に積層ゴム支承10及びフェールセーフ機能付きのすべり支承11が介在されているものであってもよい。上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0104】
この場合、図15に示すように、杭体40の上端部にコンクリートを打設し、台座部20を杭体40の上端部内に形成するようになっている。
【0105】
また、本発明においては、特に図示しないが、すべり支承の想定外の動作を規制し、落橋等を防止するために、台座部20上のストッパー部材22より外側に所定の外力以上の耐力を有する滑落防止用ストッパー部材を固定しておくようにしてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 橋梁
2 地盤
3 橋脚(下部構造体)
4 橋桁(上部構造体)
10 積層ゴム支承
11 すべり支承
12 ゴム材
13 剛性板
14 ゴム材
15 フランジ部
16 フランジ部
17 ボルト
18 荷重伝達部材
19 滑動凸部
20 台座部
21 滑動凹部
22 ストッパー部材
23 ストッパー本体
24 固定用棒材
25 固定孔
26 充填材
27 型枠
28 仮受け装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15