(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142871
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】断熱シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 59/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F16L59/02
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055241
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】391029509
【氏名又は名称】イソライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(72)【発明者】
【氏名】青山 知弘
(72)【発明者】
【氏名】上道 健太郎
【テーマコード(参考)】
3H036
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB13
3H036AB15
3H036AB18
3H036AB23
3H036AC03
(57)【要約】
【課題】 熱膨張による圧縮応力で損壊しない圧縮強さと優れた断熱性とを兼ね備えているうえ、施工に際して機器の曲面に沿って曲げても破損しにくい施工性に優れた断熱シートを提供する。
【解決手段】 主材としての金属酸化物からなる無機微粒子に有機樹脂が含有率3~40質量%の範囲内で混在した成形体からなり、厚さ5mmのものをスパン100mmで曲げ強さ測定を行なったときの破断時の撓み量が3.0mm以上であり、600℃での熱伝導率が0.05W/(m・K)以下であり、好ましくは耐熱温度が1200℃以下であって、圧縮強さが0.55MPa以上である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主材としての金属酸化物からなる無機微粒子に有機樹脂が含有率3~40質量%の範囲内で混在した成形体からなり、厚さ5mmのものをスパン100mmで曲げ強さ測定したときの破断時の撓み量が3.0mm以上であり、600℃での熱伝導率が0.05W/(m・K)以下であることを特徴とする断熱シート。
【請求項2】
耐熱温度が1200℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載の断熱シート。
【請求項3】
圧縮強さが0.55MPa以上であることを特徴とする、請求項2に記載の断熱シート。
【請求項4】
かさ密度が200~500kg/m3であることを特徴とする、請求項3に記載の断熱シート。
【請求項5】
前記有機樹脂が熱融着により前記無機微粒子に接着していることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の断熱シート。
【請求項6】
主材としての金属酸化物からなる無機微粒子に有機樹脂を混合して圧縮成形した後、得られた成形体を加熱圧縮成形することで前記有機樹脂を前記無機微粒子に熱融着させることを特徴とする断熱シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱シート及び該断熱シートの製造方法に関し、特に曲面への施工が可能な可撓性の断熱シート及び該断熱シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属を一時的に保持する有底円筒形状の溶湯容器の鉄皮の内張りや小型加熱炉の炉体の断熱、高温の流体が内部を流れる大口径配管の保温等の様々な用途に断熱材が用いられている。例えば断熱材を加熱炉の炉体に施工する場合は、炉体からの放熱の大幅な抑制及び炉体を構成する鉄皮への熱負荷軽減の目的で、シリカ等の無機微粒子を主材とした低熱伝導率材料からなる断熱材が使用されている。低熱伝導率材料は一般的に熱伝導率が800℃で0.08W/(m・K)以下であり、最高使用温度が約1000℃であり、最高使用温度1200℃程度の高温用の断熱材製品もある。また、低熱伝導率材料からなる断熱材は、厚さ3~5mmで用いられることが多い。
【0003】
しかしながら、低熱伝導率材料は非常に脆弱であるため、上記の溶湯容器や大口径配管等のように曲面を有する機器や配管等に断熱材を施工する際、厚さ3~5mmの断熱材をかかる曲面に沿って曲げたときに破損することがあった。このため、例えば有底円筒状の溶湯容器1の内壁面に低熱伝導率材料からなる断熱材2を施工するときは、
図1に示すように、短冊状の複数の断熱材を溶湯容器1の曲面に合わせて多角形状に組み合わせて施工する必要があった。特に、混鉄車や小径容器等のように曲面の曲率半径が小さい部分を含むものの場合は、面積の小さな短冊状の断熱材を多数用いる必要があるため、施工に時間と手間が掛かるうえ、目地が増えるので断熱性が低下するおそれがあった。なお、溶湯容器の内面側に断熱材を施工するときは、必要に応じて該断熱材の内側に更に耐火材を施工することがある。
【0004】
そこで、曲面に沿わせて施工できるように工夫された断熱材が各種提案されている。例えば非特許文献1や非特許文献2には、ナノサイズのシリカ粒子(ヒュームドシリカ)からなる低熱伝導率材料を袋に収納した後に縫製することで、断熱材を布団状、キルト状、分節状等の様々な形態に製造する技術が開示されている。また、特許文献1には、低熱伝導率材料からなる成形体の少なくとも片面に無機繊維又は有機繊維からなる抗張力60N/25cm以上の強化材を接着した複合断熱材が提案されており、特許文献2には、テキスタイル生地層にヒュームドシリカ粉末を含有させた断熱生地が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】カタログ「高性能断熱材マイクロサーム」、日本マイクロサーム株式会社、2004年2月、第5頁
【非特許文献2】カタログ「Porextherm WDS」、黒崎播磨株式会社、2005年10月01日、第5頁
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-205728号公報
【特許文献2】特公表2022-508727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の非特許文献1や非特許文献2の断熱材を用いることで曲面に沿った施工は可能になるものの、断熱材を袋に入れて縫製した断熱材は、施工時の継ぎ目部分に加えて、縫製部分において低熱伝導率材料が途切れるか厚みが薄くなるので、局所的に断熱性が不十分になるいわゆる熱漏れが発生するのを避けることができなかった。また、ナノサイズの粒子を主材とする低熱伝導率材料は強度が比較的弱いため、取扱い中に袋内で損壊したり、施工後に静鉄圧や耐火物の熱膨張による圧縮応力で損壊したりする問題が生ずることもあった。
【0008】
特許文献1の複合断熱材は、熱膨張による圧縮応力で損壊しない圧縮強さと優れた断熱性とを兼ね備えることが可能になると考えられるが、最大曲率半径が1500mmまでの制限があった。特許文献2の断熱生地は、実施例1~4の全てにおいてガラス繊維がテキスタイル生地の主材に用いられているため、耐熱温度にはガラス転移温度を考慮する必要があると考えられる。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、熱膨張による圧縮応力で損壊しない圧縮強さと優れた断熱性とを兼ね備えていることに加えて、施工に際して機器の曲面に沿って曲げても破損しにくい施工性に優れた断熱シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ねたところ、主材としてのシリカ等の無機微粒子に有機樹脂を配合することで得た低熱伝導率材料の成形体を加熱圧縮したところ、有機樹脂が溶融して無機微粒子に熱融着することでバインダーとして機能し、これにより断熱シートを曲げたときの撓み量が増加することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る断熱シートは、主材としての金属酸化物からなる無機微粒子に有機樹脂が含有率3~40質量%の範囲内で混在した成形体からなり、厚さ5mmのものをスパン100mmで曲げ強さ測定したときの破断時の撓み量が3.0mm以上であり、600℃での熱伝導率が0.05W/(m・K)以下であることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る断熱シートの製造方法は、主材としての金属酸化物からなる無機微粒子に有機樹脂を混合して圧縮成形した後、得られた成形体を加熱圧縮成形することで前記有機樹脂を前記無機微粒子に熱融着させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱膨張による圧縮応力で損壊しない圧縮強さと優れた断熱性とを兼ね備えているうえ、施工に際して機器の曲面に沿って曲げても破損しにくいので極めて効率よく施工することが可能な断熱シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】従来の断熱材を溶湯容器の内壁面に施工した状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態の断熱シートを溶湯容器の内壁面に施工する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る断熱シートの実施形態について説明する。本発明の実施形態の断熱シートは、主材としての無機酸化物の無機微粒子に有機樹脂が混在した成形体の形態を有しており、この成形体には必要に応じて更に耐火繊維や赤外線散乱材が含まれている。また、本発明の実施形態の断熱シートは、小型容器等の断熱材として施工する際に要求される厚さ3~5mm程度まで薄く成形することが可能であり、厚さ5mmのものをスパン100mmで曲げ強さ測定したときの破断時の撓み量が3.0mm以上である。従って、本発明の実施形態の断熱シートであれば、厚さ5mmのものを曲率半径500mmの曲面に沿わせて曲げても破損させることなく施工することができる。なお、配合する有機樹脂の種類や形態、配合量、加熱圧縮成形時の加熱温度や保持時間を調整することによって、曲げ撓み量を変えることができる。また、上記の撓み量の上限は約10mmであり、この場合は厚さ5mmの断熱シートを曲率半径125mmの曲面に沿わせて曲げても破損させることなく施工することができる。
【0015】
本発明の実施形態の断熱シートは、その製造方法によるものの、一般的に幅600mm以上のシート形状に製造することが可能であるので、
図2に示すように、有底円筒の溶湯容器11の内壁面に本発明の実施形態の断熱シート12を丸めた状態で施工できるので、作業性を高めることができるうえ、施工時の継ぎ目箇所を最小限に抑えることができるので、熱漏れの問題を防ぐことができる。
【0016】
加えて、本発明の実施形態の断熱シートにおいては無機微粒子にシリカに代えて、あるいはシリカに加えてアルミナを用いることで、耐熱温度を1200℃程度まで高めることができるので、常用の使用温度1000℃において長期間使用することができる。また、本発明の実施形態の断熱シートは、600℃での熱伝導率を0.05W/(m・K)以下にできるので、放熱量を低く抑えることができ、よって熱エネルギー消費量の削減効果が得られる。
【0017】
次に、上記の断熱シートに含まれる各材料について具体的に説明する。無機微粒子は、1000~1200℃程度の高温での耐熱温度を有する金属酸化物からなる。この金属酸化物には、シリカ、アルミナ、マグネシア、ムライト、及びジルコニアからなる群より選択される1種以上を使用するのが好ましい。また、上記無機微粒子は平均粒径0.5μm以下のものを用いるのが好ましい。これにより、断熱シート内の空隙サイズ小さくすることができ、特に断熱シートに耐火繊維や赤外線散乱材が含まれる場合は、これらと無機微粒子との粒子間の空隙サイズを小さくできるので、高温での気体の対流伝熱を抑制することができる。なお、本明細書内において平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した体積基準の50%径(D50)である。
【0018】
耐火繊維は、600~1600℃程度の耐熱温度を有する無機組成物からなる繊維であり、代表的な耐火繊維としては、限定するものではないが、例えばガラス繊維、アルミナ質繊維、ムライト質繊維、CaO・6Al2O3(カルシアアルミネート)繊維、ジルコニア繊維、生体溶解性繊維、及びAES(アルカリアースシリケート)繊維を挙げることができ、これら繊維からなる群より選択される1種以上を使用するのが好ましい。この耐火繊維は平均繊維径が1μm以上13μm以下であるのが好ましく、2μm以上10μm以下であるのがより好ましい。なお、本明細書内において平均繊維径とは、測定対象の繊維群を電子顕微鏡で撮影し、得られた画像の中から任意に選択した200本以上の繊維の幅方向の距離を計測し、これらを算術平均したものである。
【0019】
上記の耐火繊維には同じ材質の非繊維粒子が含まれていてもよい。この場合の非繊維粒子の含有量は、耐火繊維100質量部に対して60質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましい。特に平均粒径425μm以上の非繊維粒子は3質量部以下であるのが好ましく、1質量部以下であるのがより好ましい。
【0020】
赤外線散乱材は、800℃以上の耐熱温度を有し、ふく射による伝熱を低減可能な組成物からなるものであれば特に限定はないが、赤外線反射性のあるものが好ましい。このような組成物としては、例えば炭化ケイ素、二酸化チタン、鉄、珪酸ジルコニウム、ジルコニア等を挙げることができ、これら組成物からなる群より選択される1種以上を使用するのが好ましい。また、上記の赤外線散乱材は、平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下であるのが好ましく、特に上限値は、ふく射伝熱をもたらす赤外線の1200℃のピーク波長と同程度の平均粒径である2.0μm以下であるのがより好ましい。
【0021】
有機樹脂は、150℃以下で溶融するものが好ましく、このような有機樹脂としては、特に限定するものではないが、例えばポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン又はそれらの2種以上の複合体を挙げることができ、複合体の場合はポリエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP)の芯鞘構造繊維が好ましい。有機樹脂の形態は粒子状でも構わないし、繊維状でも構わない。特にPE/PP等の芯鞘構造繊維の場合は、溶融後でも芯部分が残るので、優れた曲げ性能を維持できる点においてより好ましい。なお、上記の芯鞘構造繊維とは、ポリプロピレンからなる芯部と、これを略同芯軸状に囲むポリエチレンからなる鞘部との二重構造を有する繊維のことである。粒子状の場合は、良好な分散性を確保する点から平均粒径0.5mm以下が好ましい。一方、繊維状の場合は、測定した長さL(m)及び重量W(g)をT=(10000×W)/Lに代入することよって求まる繊維太さの尺度T(dtex)が1.0~20の範囲内にあるのが好ましく、電子顕微鏡により測定した繊維長が3~20mmの範囲内にあるのが好ましい。
【0022】
上記の有機樹脂の形態が粒子状の場合は、その平均粒径や粒度分布、加熱圧縮成形時の加熱温度や保持時間を調整することで、断熱シートを曲げたときの撓み量を変えることができる。一方、上記の有機樹脂が繊維状の場合は、その繊維径や繊維長、加熱圧縮成形時の加熱温度や保持時間を調整することで、断熱シートを曲げたときの撓み量を変えることができる。断熱シートにおける上記有機樹脂の含有率は、3~40質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。この含有率が3質量%より少ないと、加熱圧縮成形時に該有機樹脂が溶融することで生じるバインダー力が小さくなりすぎ、断熱シートにおいて十分な曲げ応力が得られない。逆にこの含有率が40質量%より多いと、施工後の加熱で分解したときに大きな空隙が生じるので、圧縮強さが著しく低下し、圧縮強さ0.55MPa以上を確保するのが困難になる。更に、大きな空隙が生じると、断熱性も著しく低下する。すなわち、本発明の実施形態の断熱シートは、気体分子の自由行程を阻害する程度に小さな空隙(マイクロポーラス)を無数に含むことで静止空気よりも断熱性が優れているため、気体分子の自由行程が可能になる程度に大きな空隙ができると断熱性が著しく低下する。
【0023】
本発明の実施形態の断熱シートに含まれる上記の構成要素は、上記した各構成要素の作用・効果を考慮したうえで断熱シートとして所望の特性が得られるように配合割合(含有率)の調整が適宜行なわれる。具体的には、本発明の実施形態の断熱シートを構成する上記の各構成要素の含有率は、無機微粒子では好ましくは35~75質量%、より好ましくは40~60質量%であり、耐火繊維では好ましくは10~30質量%であり、赤外線散乱材では好ましくは8~20質量%であり、有機樹脂では好ましくは3~40質量%である。これらが合計98質量%以上含まれているのが好ましく、不可避不純物や成形助剤が含まれていてもよい。
【0024】
本発明の実施形態の断熱シートは、かさ密度が200~500kg/m3であるのが好ましく、250~300kg/m3であるのがより好ましい。これにより、熱膨張による圧縮応力で容易に損壊することのない圧縮強さと優れた断熱性とを兼ね備えた断熱シートを提供することが可能になる。このかさ密度が200kg/m3未満では、十分な圧縮強度が得られず、ハンドリング性も不十分になるおそれがある。逆にこのかさ密度が500kg/m3を超えると、強度が大きすぎて良好な撓み性が得られない。
【0025】
次に、上記した本発明の実施形態の断熱シートの製造方法について説明する。この断熱シートの製造方法は、先ず、上記した含有率となるように、無機微粒子、耐火繊維、赤外線散乱材、及び有機樹脂を配合して混合機で混合し、得られた混合物を圧縮成形機に装入して上記のかさ密度となるように圧縮成形することで成形体を形成する。次に、得られた成形体を加熱プレス機に装入し、130~150℃程度に加熱処理しながら圧力をかけて加熱圧縮成形する。これにより、繊維状又は粒子状の有機樹脂の一部又は全体が溶融することで、無機微粒子、耐火繊維、及び赤外線散乱材が有機樹脂を介して互いに熱溶着するので、断熱シートの撓み量を向上させることができる。
【実施例0026】
本発明の実施例及び比較例の断熱シートを作製し、それらの各々を下記の方法で求めたかさ密度、撓み性、曲率半径、圧縮強さ、断熱性、及び耐熱性の点から評価した。すなわち、かさ密度は、質量を体積で除算することで求めた。撓み性は、強度試験機を用いた3点曲げ試験において、距離(スパン)100mmで互いに離間する2つの支点の上に載置した厚さ5mmの試験片に対して、その中央部を押し下げて破断させた時の最大撓み量を測定して求めた。曲率半径は、厚さ5mmの試験片を撓ませていったときに破断が生じたときの曲率半径として求めた。圧縮強さは、「圧縮強さ[N/mm2]=(試験片を10%圧縮させたときの最大荷重(N))/面積(mm2)」で定義し、強度試験機を用いて圧縮させて歪10%となったときの最大荷重から求めた。断熱性は、平板比較法(JIS A1412-2 付属書A)に準拠して600℃での熱伝導率を測定することで求めた。耐熱性は、試験片を24時間加熱したときの加熱線収縮率が3%以下となる最高温度として求めた。
【0027】
[実施例1]
無機微粒子としてのシリカ質微粒子(平均粒径0.2μm)を65質量%、耐火繊維としてのガラス繊維(Eガラス 平均繊維径13μm)を10質量%、赤外線散乱材としての炭化ケイ素粒子(平均粒径2μm)を15質量%、及び有機樹脂としてのポリエチレン粒子(平均粒径0.5mm)を10質量%の配合割合で混合機に装入して混合した。得られた混合物を金型に装入して圧縮成形することで薄片シート状の成形体を成形した後、この成形体を150℃で加熱圧縮成形して厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、かさ密度300kg/m3、撓み量4.9mm、曲率半径258mm、圧縮強さ0.78MPa、熱伝導率0.03W/(m・K)、耐熱温度1000℃であった。
【0028】
[実施例2]
かさ密度が実施例1と比べて2/3倍となるように圧縮成形した以外は実施例1と同様にして、かさ密度200kg/m3、厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、撓み量3.1mm、曲率半径405mm、圧縮強さ0.64MPa、熱伝導率0.03W/(m・K)、耐熱温度1000℃であった。
【0029】
[実施例3]
かさ密度が実施例1と比べて5/3倍となるように圧縮成形した以外は実施例1と同様にして、かさ密度500kg/m3、厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、撓み量3.0mm、曲率半径418mm、圧縮強さ1.56MPa、熱伝導率0.04W/(m・K)、耐熱温度1000℃であった。
【0030】
[実施例4]
有機樹脂の配合割合を3質量%とし、シリカ質微粒子の配合割合を72質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてかさ密度300kg/m3、厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、撓み量3.5mm、曲率半径359mm、圧縮強さ0.85MPa、熱伝導率0.03W/(m・K)、耐熱温度1000℃であった。
【0031】
[実施例5]
有機樹脂の配合割合を40質量%とし、シリカ質微粒子の配合割合を35質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてかさ密度300kg/m3、厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、撓み量5.3mm、曲率半径238mm、圧縮強さ0.62MPa、熱伝導率0.04W/(m・K)、耐熱温度1000℃であった。
【0032】
[実施例6]
有機樹脂に粒子状のものに変えて同材質の繊維状(繊維径1.7dtex、繊維長5mm)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてかさ密度300kg/m3、厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、撓み量9.1mm曲率半径142mm、圧縮強さ0.78MPa、熱伝導率0.03W/(m・K)、耐熱温度は1000℃であった。
【0033】
[実施例7]
有機樹脂にポリエチレン粒子に代えてポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘構造繊維(繊維径1.7dtex、繊維長5mm)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてかさ密度300kg/m3、厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、撓み量9.8mm、曲率半径132mm、圧縮強さ0.78MPa、熱伝導率0.03W/(m・K)、耐熱温度1000℃であった。
【0034】
[実施例8]
無機微粒子にシリカ質微粒子に代えてアルミナ質微粒子(平均粒径0.2μm)を用いたこと以外は実施例6と同様にしてかさ密度300kg/m3、厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、撓み量4.4mm、曲率半径286mm、圧縮強さ0.77MPa、熱伝導率0.03W/(m・K)、耐熱温度1200℃であった。
【0035】
[実施例9]
無機微粒子にシリカ質微粒子に代えてマグネシア質微粒子(平均粒径0.2μm)を用いると共にかさ密度が実施例1に比べて4/3倍となるように圧縮成形したこと以外は実施例1と同様にしてかさ密度400kg/m3、厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、撓み量4.8mm、曲率半径260mm、圧縮強さ0.58MPa、熱伝導率0.05W/(m・K)、耐熱温度1100℃であった。
【0036】
[実施例10]
無機微粒子にシリカ質微粒子に代えてムライト質微粒子(平均粒径0.2μm)を用いると共にかさ密度が実施例1に比べて4/3倍となるように圧縮成形したこと以外は実施例1と同様にしてかさ密度400kg/m3、厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、撓み量4.8mm、曲率半径262mm、圧縮強さ0.65MPa、熱伝導率0.05W/(m・K)、耐熱温度1100℃であった。
【0037】
[実施例11]
無機微粒子にシリカ質微粒子に代えてジルコニア質微粒子(平均粒径0.2μm)を用いると共にかさ密度が実施例1に比べて4/3倍となるように圧縮成形したこと以外は実施例1と同様にしてかさ密度400kg/m3、厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、撓み量5.0mm、曲率半径242mm、圧縮強さ0.62MPa、熱伝導率0.03W/(m・K)、耐熱温度1100℃であった。
【0038】
[実施例12]
炭化ケイ素の含有率をゼロとし、代わりに有機粒子の配合割合を3質量%に代えて8質量%にすると共に同材質の繊維状の有機樹脂(1.7dtex、繊維長5mm)の配合割合を10質量%としたこと以外は実施例4と同様にしてかさ密度300kg/m3、厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、撓み量5.0mm、曲率半径230mm、圧縮強さ0.60MPa、熱伝導率0.05W/(m・K)、耐熱温度1000℃であった。
【0039】
[実施例13]
ガラス繊維の含有率をゼロとし、代わりに有機樹脂としてポリエチレン粒子(粒子粒径0.5mm)の配合割合を10質量%としたこと以外は実施例6と同様にしてかさ密度300kg/m3、厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、撓み量3.0mm、曲率半径400mm、圧縮強さ0.60MPa、熱伝導率0.04W/(m・K)、耐熱温度1000℃であった。
【0040】
[実施例14]
ガラス繊維の代わりにAES(アルカリアースシリケート)繊維(非繊維粒子の含有量は、耐火繊維100質量部に対して50質量部、平均粒径425μm以上の非繊維粒子は1質量部)の配合割合を10質量%としたこと以外は実施例6と同様にしてかさ密度300kg/m3、厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、撓み量4.4mm、曲率半径288mm、圧縮強さ0.77MPa、熱伝導率0.05W/(m・K)、耐熱温度1000℃であった。上記の実施例1~14の断熱シートの配合割合、製法、及び物性をまとめたものを下記表1に示す。
【0041】
【0042】
[比較例1]
かさ密度が180kg/m3となるように圧縮成形することで得た成形体を加熱圧縮することなくそのまま断熱シートとしたこと以外は実施例1と同様にしてかさ密度180kg/m3、厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、撓み量1.8mm、曲率半径695mm、圧縮強さ0.58MPa、熱伝導率0.03W/(m・K)、耐熱温度1000℃であった。
【0043】
[比較例2]
かさ密度が510kg/m3となるように圧縮成形した以外は実施例1と同様にしてかさ密度510kg/m3、厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、撓み量2.1mm、曲率半径596mm、圧縮強さ1.65MPa、熱伝導率0.04W/(m・K)、耐熱温度1000℃であった。
【0044】
[比較例3]
有機樹脂の配合割合を2質量%とし、シリカ質微粒子の配合割合を73質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてかさ密度300kg/m3、厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、撓み量2.4mm、曲率半径545mm、圧縮強さ0.87MPa、熱伝導率0.03W/(m・K)、耐熱温度1000℃であった。
【0045】
[比較例4]
有機樹脂の配合割合を41質量%とし、シリカ質微粒子の配合割合を34質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてかさ密度300kg/m3、厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、撓み量5.5mm、曲率半径230mm、圧縮強さ0.50MPa、熱伝導率0.06W/(m・K)、耐熱温度1000℃であった。
【0046】
[比較例5]
AES(アルカリアースシリケート)繊維において、非繊維粒子の含有量は、耐火繊維100質量部に対して65質量部、平均粒径425μm以上の非繊維粒子は3質量部の繊維としたこと以外は実施例14と同様にしてかさ密度300kg/m3、厚さ5mmの断熱シートを作製した。得られた断熱シートは、撓み量3.5mm、曲率半径355mm、圧縮強さ0.85MPa、熱伝導率0.03W/(m・K)、耐熱温度1000℃であった。上記の比較例1~5の断熱シートの配合割合、製法、及び物性をまとめたものを下記表2に示す。
【0047】